説明

ポリオレフィン系樹脂発泡シート

【課題】厚みが薄くて軽量であるにもかかわらず、コシが強くて取扱い性に優れ、ガラス基板等の電子精密機器の間紙や、容器の仕切り材や、組立て容器の厚紙代替材などに好適に使用可能なポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、見かけ密度60〜350g/L、厚み0.2〜1.5mm、坪量50〜200g/mのポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該発泡シートを構成する基材樹脂の曲げ弾性率が300MPa以上であると共に、該発泡シートの厚み方向の気泡数が1〜3個である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂発泡シートに関し、詳しくはガラス基板等の電子精密機器の間紙、容器の仕切り材、厚紙代替材などとして好適に使用可能なポリオレフィン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、電気回路が組み込まれたガラス基板の間紙として使用されてきた。この間紙に使用される発泡シートは、嵩張ることがないと共に取扱い性にも優れていなければならないことから、厚みが薄いと共に軽量で、且つ緩衝性に優れると共に片持ち時の垂れ下がり量が小さい(コシが強い)ことが要求される。しかし、近年のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、従来の陶器等の一般物品の包装に使用されてきたポリエチレン系樹脂発泡シートに比較すると、気泡の配向などを利用することにより多少のコシの改善がなされたものであり、ガラス基板の間紙等に使用されてはいるものの、厚みが薄くて軽いことと、コシが強いこととは相反する特性であるため、それらを同時に満足できるほど十分にコシが強いものではない。
【0003】
具体的には、包装用緩衝材として周知の発泡倍率15〜40倍の低密度ポリエチレン系樹脂発泡シートは、軽くて緩衝性には優れるが、コシが弱く取扱い性が悪いという欠点を有している。また、発泡倍率5〜15倍の低密度ポリエチレン系樹脂発泡シートは、コシの強さは向上しているものの、用途にもよるがコシの強さが未だ不十分なものである。また、発泡倍率5〜15倍のポリプロピレン系樹脂発泡シートは、コシはポリエチレン系樹脂製のものよりは強いが、発泡シート全体の厚みムラが大きいという解決すべき課題を有しており、ガラス基板用の間紙等として使用すると積み高さが大きくなりすぎて積載効率が低下してしまうという欠点を有している。また、発泡倍率5倍以下のポリプロピレン系樹脂発泡シートや特許文献1に記載の剛性と緩衝性を有する発泡シート(低密度ポリエチレン系樹脂と高密度ポリエチレン系樹脂からなる発泡シート)は、コシの強さは向上しているものの、厚みが薄く、軽くて緩衝性に優れると共にコシが強いという観点からは未だ不十分なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−43813号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、厚みが薄くて軽量であるにもかかわらず、コシが強くて取扱い性に優れ、ガラス基板等の電子精密機器の間紙や、容器の仕切り材や、組立て容器の厚紙代替材などに好適に使用可能なポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示すポリオレフィン系樹脂発泡シートが提供される。
[1] 見かけ密度60〜350g/L、厚み0.2〜1.5mm、坪量50〜200g/mのポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該発泡シートを構成する基材樹脂の曲げ弾性率が300MPa以上であると共に、該発泡シートの厚み方向の気泡数が1〜3個であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[2] 前記発泡シートを構成する基材樹脂中に、2〜20重量%の高分子型帯電防止剤が配合されていることを特徴とする前記1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[3] 前記発泡シートの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層が積層されており、該樹脂層を構成する基材樹脂中に、5〜55重量%の高分子型帯電防止剤が配合されていることを特徴とする前記1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[4] 前記発泡シートを構成する基材樹脂が、190℃における溶融張力が15〜400mNのポリプロピレン系樹脂である前記1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[5] 前記発泡シートを構成する基材樹脂が、190℃における溶融張力が15〜400mN、密度が930〜970g/Lのポリエチレン系樹脂である前記1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
[6] 前記発泡シートを構成する基材樹脂が、密度が930g/L以下のポリエチレン系樹脂(L)15〜70重量%と、密度が930g/L超970g/L以下のポリエチレン系樹脂(H)85〜30重量%(但し、ポリエチレン系樹脂(L)とポリエチレン系樹脂(H)の合計が100重量%である。)とからなる前記1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、特定の見かけ密度、厚み、および坪量の発泡シートであって、基材樹脂の曲げ弾性率が高い値を示すものであると共に、該発泡シートの厚み方向の気泡数を少なくして気泡壁の厚みを大きくすることにより、軽量であってもコシが強く、取扱い性に優れるものである。また、発泡シートの厚み方向の気泡数が少ないことにより、組立て包装材等として被包装物を包んだ際には、被包装物の視認性も向上するものである。従って、ガラス基板等の電子精密機器の間紙や容器の仕切り材や包装材として好適に使用可能な発泡シートである。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートにおいては、発泡シートまたは発泡シートに積層される樹脂層に帯電防止剤を含有させて帯電防止機能を付与することができる。このような発泡シートは、電子精密機器の間紙、仕切り材、厚紙代替材などとして好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の発泡シートの幅方向断面拡大写真である。
【図2】図2は、従来の発泡シートの幅方向断面拡大写真である。
【図3】図3は、片持ち垂れ下がりの測定法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートともいう。)は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、薄く、軽いシートであるにもかかわらず、従来の発泡シートが発現することができなかった剛性を有するものである。
【0010】
本発明の発泡シートは、見かけ密度が60〜350g/L、厚みが0.2〜1.5mm、坪量が50〜200g/mである。
該見かけ密度が低すぎると、十分なコシの強さを発揮できない虞がある。一方、該見かけ密度が高すぎるとガラス基板等の包装材に要求される緩衝性を損なう虞がある。このような観点から、該見かけ密度は、好ましくは70〜250g/Lであり、より好ましくは80〜200g/L、更に好ましくは100〜180g/L、特に好ましくは120〜170g/Lである。
【0011】
また、上記厚みが薄すぎると、電子精密機器に対する緩衝性、表面保護性が不十分になり、厚みが厚すぎると電子精密機器の積載量が損なわれる。このような観点から、該発泡シートの厚みは、好ましくは0.3〜1.2mm、更に好ましくは0.4〜1.1mm、特に好ましくは0.6〜1.0mmである。
【0012】
また、上記坪量が小さすぎると、コシの強さを発揮できない虞がある。一方、大きすぎると、取扱い性が低下し、過大なコストアップに繋がる虞もある。このような観点から、該坪量は、好ましくは60〜190g/mであり、より好ましくは65〜180g/m、更に好ましくは70〜170g/mである。
【0013】
本発明の発泡シートを構成する基材樹脂はポリオレフィン系樹脂を主成分とするものである。該ポリオレフィン系樹脂は50モル%以上のオレフィン成分を含む樹脂である。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、表面硬度が低く柔軟性に優れ、被包装体の表面保護に優れることから好ましく用いられる。なお、本明細書における基材樹脂の主成分とは、基材樹脂の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上含有することをいう。
【0014】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分が50モル%以上の樹脂が挙げられ、具体的には高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体,エチレン−ヘキセン−1共重合体,エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体,エチレン−オクテン−1共重合体などの直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、さらにそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0015】
また、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィン等の成分との共重合体が挙げられる。プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン,イソブチレン,1−ペンテン,3−メチル−1−ブテン,1−ヘキセン,3,4−ジメチル−1−ブテン,1−ヘプテン,3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体等であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他の成分は、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましい。なお、該共重合可能な他の成分の含有量の下限値としては共重合体を選択する理由等を勘案して概ね0.3重量%である。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明の発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂の曲げ弾性率は300MPa以上であり、好ましくは400MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上である。該曲げ弾性率が300MPa未満であると、曲げ剛性が低くなり、コシの強さが不足し取扱い性が低下する虞がある。一方、その上限値は2000MPaが好ましく、より好ましくは1800MPaであり、更に好ましくは1500MPaである。該曲げ弾性率が高すぎると、緩衝性が低下してしまう虞れがある。
【0017】
尚、基材樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171(1994年)に準じ、厚み2mm×幅25mm×長さ40mmの試験片を用いて、スパン間距離30mm、圧子の半径R1が5.0mm、支持台の半径R2が2.0mm、試験速度が2mm/minの条件で測定され、算出された値を採用する。なお、試験片としては、発泡シート(樹脂層が設けてある積層発泡シートの場合には、樹脂層を取り除いた発泡シート)を加熱プレス、冷却プレスを使用して脱泡して非発泡の樹脂とし、該非発泡の樹脂を複数重ね合わせて、加熱プレス、冷却プレスを使用して前記した試験片の厚みの非発泡樹脂シートを得、該非発泡樹脂シートから上記試験片寸法に切り出されたものを使用する。
【0018】
発泡シートを構成する曲げ弾性率が300MPa以上の基材樹脂としては、基材樹脂の発泡適性を加味して以下の(i)〜(iii)の樹脂を主成分とするものが好ましい。
(i)190℃における溶融張力が15〜400mNの高溶融張力ポリプロピレン系樹脂(以下、単にHMS−PPともいう。)、
(ii)190℃における溶融張力が15〜400mN、密度が930〜970g/Lの高溶融張力高密度ポリエチレン系樹脂(以下、単にHMS−HDPEともいう。)、
(iii)密度が930g/L以下のポリエチレン系樹脂(以下、単にL−ポリエチレンともいう。)15〜70重量%と、密度が930g/L超970g/L以下の高密度ポリエチレン系樹脂(以下、単にH−ポリエチレンともいう。)30〜85重量%(但し、L−ポリエチレンとH−ポリエチレンの合計が100重量%である。)とのポリエチレン系樹脂組成物。
【0019】
前記(i)のHMS−PPの具体例としては、特開平7−53797号公報に記載されているような、(1)1未満の枝分かれ指数と著しい歪み硬化伸び粘度とを有するポリプロピレン、(2)(a)Z平均分子量(Mz)が1.0×10以上であるか、またはZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が3.0以上であり、(b)かつ平衡コンプライアンスJが12×10−5cm/ダイン以上であるか、または単位応力当たりの剪断歪み回復Sr/Sが毎秒5×10−5cm/ダイン以上であるポリプロピレン(3)スチレン等のラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤や添加剤などを含む配合物を、ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつラジカル重合開始剤の分解温度において溶融混練することによって改質されたポリプロピレン系樹脂、あるいは(4)ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0020】
前記(ii)のHMS−HDPEとしては、エチレンを重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン重合体、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン共重合体であって、数平均分子量Mnが2000以上、数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mw/Mnが2以上5以下であり、マクロモノマーの存在下に、エチレンおよび任意に炭素数3以上のオレフィンを重合することによって得られたものが挙げられる。ここで、マクロモノマーとは、末端にビニル基を有するオレフィン重合体であり、好ましくはエチレンを重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン重合体、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン共重合体であり、さらに好ましくは任意に用いられる炭素数3以上のオレフィンに由来する分岐以外の分岐のうち、長鎖分岐(すなわち、13C−NMR測定で検出されるヘキシル基以上の分岐)が、主鎖メチレン炭素1000個当たり0.01個未満である、末端にビニル基を有する直鎖状エチレン重合体または直鎖状エチレン共重合体である。
なお、HMS−HDPEの詳細については、特開2006−96910号公報、特開2006−199872号公報に記載されている。
【0021】
なお、HMS−PP、HMS−HDPEの溶融張力が低すぎる場合には、発泡適性が不十分となる虞れがある。かかる観点より、該溶融張力は17mN以上であることがより好ましく、20mN以上であることが更に好ましい。
一方、該溶融張力が高すぎる場合には、押出発泡する際にダイ圧の上昇による発泡により連続気泡化しやすいことから、剛性が低下する虞れがある。かかる観点より、該溶融張力は400mN以下であることが好ましく、300mN以下であることがより好ましい。
【0022】
本明細書における溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定される。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.000mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とし、試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、4分で引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。ここで、試料の必要量を該シリンダー内に入れ4分間放置してから溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出した理由、引取り速度が0m/分から200m/分に達するまでの時間を4分とした理由は、樹脂の熱劣化を抑えるとともに得られる値の再現性を高めるためである。上記操作を異なる試料を使用し、計10回の測定を行い、10回で得られた上記極大値の最も大きな値から順に3つの値と、上記極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を溶融張力(mN)とする。
【0023】
但し、上記した方法で溶融張力の測定を行い、引取り速度が200m/分に達しても紐状物が切れない場合には、引取り速度を200m/分の一定速度にして得られる溶融張力(mN)の値を採用する。詳しくは、上記測定と同様にして、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を張力検出用プーリーに掛け、4分間で0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーを回転させ、回転速度が200m/分になるまで待つ。回転速度が200m/分に到達してから溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られたテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を本発明方法における溶融張力とする。
ここで、上記Tmaxとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
尚、当然のことながら上記測定において溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が入らないようにする。また、発泡シートから原料の溶融張力を推定するために発泡シートから測定試料を調整する場合には、発泡シートを真空オーブンにて加熱し脱泡したものを試料とし、その際の真空オーブンでの脱泡条件は、発泡シートの基材樹脂を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度、かつ減圧下とする。
【0024】
前記(iii)のポリエチレン系樹脂組成物においては、前記H−ポリエチレンの含有量が85重量%以下であれば、発泡シートの連続気泡率が増加しすぎることがなく、見掛け密度が高くなるすぎる虞れがない。またH−ポリエチレンの割合が30重量%以上であれば、発泡シートの片側の端を持った際に垂れ下がり量が大きくなりすぎることがなく、所謂コシの強さが低下しすぎる虞れがない。かかる観点から、L−ポリエチレン15〜50重量%とH−ポリエチレン85〜50重量%(但し、L−ポリエチレンとH−ポリエチレンの合計が100重量%である。)とからなるポリエチレン系樹脂組成物がより好ましく、更に好ましくはL−ポリエチレン30〜50重量%とH−ポリエチレン70〜50重量%(但し、L−ポリエチレンとH−ポリエチレンの合計が100重量%である。)とからなるポリエチレン系樹脂組成物である。
【0025】
前記L−ポリエチレンとしては、所謂、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン等が挙げられる。中でも、低い見かけ密度の発泡シートとなる等の発泡性が良好な低密度ポリエチレンが好ましい。L−ポリエチレンの密度の下限は、通常、880g/L程度である。
【0026】
更に、L−ポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)は、発泡シートの表面に凹凸がない等の外観を向上させる観点から、0.3〜20.0g/10分が好ましく、1.0〜15.0g/10分がより好ましく、2.0〜10.0g/10分以下がさらに好ましい。また、L−ポリエチレンの190℃における溶融張力は、20mN〜400mNであることが低い見かけ密度の発泡シートを容易に得ることができるので好ましい。
【0027】
前記H−ポリエチレンとしては、所謂、直鎖状ポリエチレンが挙げられ、具体的には高密度ポリエチレン等が挙げられる。該H−ポリエチレンの密度は、発泡シートの剛性をより高める観点から密度が940g/L以上が好ましく、950g/L以上がより好ましく、955g/L以上がさらに好ましい。
【0028】
また、H−ポリエチレンのMFRは、表面に凹凸がない等の外観を向上させる観点から、MFRは1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましく、3.0g/10分以上がさらに好ましい。一方、MFRの上限値は、剛性を低下させずに低温雰囲気下での耐衝撃性を高いものとする観点から20.0g/10分が好ましく、15.0g/10分がより好ましく、10.0g/10分がさらに好ましい。
【0029】
また、該H−ポリエチレンの190℃における溶融張力は5mN以上、60mN未満であるため発泡倍率にもよるが単独で気泡を維持することが難しい。H−ポリエチレンの溶融張力不足はLポリエチレンをブレンドすることで補うことができる。
【0030】
また、前記(iii)のポリエチレン系樹脂組成物の190℃における溶融張力は、15〜400mN程度であることが好ましい。なお、融解張力が概ね15mN〜400mNとなるポリエチレン系樹脂組成物は、前記重量比の範囲内でL−ポリエチレンとH−ポリエチレンを混合して調整される。該溶融張力が低すぎる場合には、発泡性が低下するので軽量な発泡シートとならない虞れがあるため、該溶融張力は17mN以上であることがより好ましく、20mN以上であることが更に好ましい。一方、溶融張力が高すぎる場合には、押出発泡する際にダイ圧の上昇による発泡により連続気泡化しやすいことから、剛性、熱成形性が低下する虞れがあるため、溶融張力は300mN以下であることがより好ましい。
【0031】
また、前記(iii)のポリエチレン系樹脂組成物のMFRは、概ね0.3g/10分以上が好ましい。なお、概ねMFRが0.3g/10分以上となるポリエチレン系樹脂組成物は、前記重量比の範囲内でL−ポリエチレンとH−ポリエチレンを混合して調整される。該MFRが上記の範囲であることにより得られる発泡シートは独立気泡率が高いものとなり、発泡シートの曲げ剛性において特に優れたものとなり、該発泡シートを熱成形する場合には、発泡シートの伸びが良化し熱成形性が向上する。このような観点から、該MFRは1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましく、3.0g/10分以上がさらに好ましい。一方、該MFRの上限値は、20.0g/10分が、低密度の発泡シート、或いは熱成形性が良好な発泡シートを得る上で好ましい。このような観点から、該MFRは15.0g/10分以下がより好ましく、10.0g/10分以下がさらに好ましい。
【0032】
本明細書においてメルトフローレイト(MFR)は、ポリエチレン系樹脂においてはJIS K7210(1976年)に基づいて、190℃、荷重21.18Nの条件で測定するものとし、ポリプロピレン系樹脂においてはJIS K7210(1976年)に基づいて、230℃、荷重21.18Nの条件で測定するものとする。
【0033】
尚、上記溶融張力及びMFRは、発泡シートを製造する際に使用する原料樹脂に関する値であり混合樹脂を原料とする場合には、混合樹脂の正確な溶融張力及びMFRを事前に求めることは困難である。したがって、予備的な混合実験を行い混合樹脂の溶融張力及びMFRの凡その値を求めることにより原料混合樹脂の溶融張力及びMFRを調整すればよい。また、得られた発泡シートを前述の方法にて脱泡して溶融張力及びMFRを測定することにより、好ましい混合樹脂の溶融張力及びMFRを推定することができる。
【0034】
発泡シートを構成する基材樹脂には、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のエラストマー等が含まれていてもよい。その場合の含有量は40重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
【0035】
本発明の発泡シートは、前記基材樹脂中に各種の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の機能性添加剤、無機充填剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の発泡シートにおける優れた剛性は、主に、発泡シートを構成する基材樹脂の曲げ弾性率が300MPa以上であると共に、発泡シートの厚み方向の気泡数が1〜3個であるという構成の組合せにより発現するものである。即ち、厚み方向の気泡数が1〜3個の発泡シートは発泡シートの見かけ密度との兼ね合いから気泡膜の厚みが厚いものとなっている。その気泡膜は曲げ弾性率が大きな樹脂からなるので、該発泡シートを曲げるには、気泡と気泡を大きな力で曲げなければならないので、曲げに対するコシが強いものとなる。かかる観点から、発泡シートの厚み方向の気泡数は、好ましくは1〜2個、より好ましくは1〜1.7個、更に好ましくは1〜1.5個である。
【0037】
該厚み方向の気泡数の測定は、発泡シートの全幅に亘って幅方向に10cm間隔で測定箇所を定め、該測定箇所の厚み方向の気泡数(個)を求め、各測定箇所の厚み方向の気泡数の算術平均値を、本発明における厚み方向の気泡数(個)とする。なお、上記各測定箇所の厚み方向の気泡数は、測定箇所の図1に示すような100倍の発泡シート幅方向断面写真を撮影し、得られた写真上の発泡シート厚み方向に直線を引き、該直線と交わる気泡の数を全てカウントすることにより求められる値である。なお、該断面拡大写真において、写真上の大部分を占める気泡と明らかに異なる微細な泡が見られる場合は、その微細な泡は気泡数としてカウントしないこととする。
【0038】
また、本発明の発泡シートにおいて、厚み方向の平均気泡径は0.2〜1.5mm、更に0.3〜1.2mmが好ましく。特に0.3〜0.9mmが好ましい。また、発泡シートの引張等の機械的物性、外観、表面平滑性、被包装物の表面保護性などの観点から押出方向の平均気泡径は0.2〜1.7mm、更に0.3〜1.5mmが好ましく、幅方向の平均気泡径は0.2〜1.7mm、更に0.3〜1.5mmが好ましい。
【0039】
前記発泡シートの厚み方向の平均気泡径は、発泡シートの平均厚み(mm)を前記厚み方向の気泡数にて除することにより求められる値である。
また、前記発泡シートの幅方向及び押出方向の平均気泡径は、発泡シートを、幅方向断面、及び幅方向と直交する押出方向断面に基づき夫々測定される。具体的には、発泡シートの幅方向断面拡大写真に発泡シートの厚みを2等分する長さ3mm(拡大写真の拡大率を考慮して3mmに拡大率を乗じた長さの線分)の中心線を引き、該線分と交わる気泡数(n)を求める。線分の長さ3mmと求められた気泡数(n)に基づき、幅方向の気泡径の平均値を3/(n−1)の計算式により求める。同様の操作を発泡シートの他の幅方向断面において繰り返して計5箇所の幅方向の気泡径の平均値を求め、これらの算術平均値を本発明における幅方向の平均気泡径とする。また、発泡シートの押出方向断面拡大写真に基づき測定する以外は、幅方向の平均気泡径の測定方法と同様にして求められる値を、本発明における押出方向の平均気泡径とする。
【0040】
また、本発明の発泡シートの独立気泡率は発泡シートの柔軟性、被包装物の表面保護性、適切な滑り性などの観点から25〜85%、更に35〜80%が好ましい。
【0041】
前記独立気泡率は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して測定(発泡シートから25mm×25mm×20mmに切断したカットサンプルをサンプルカップ内に収容して測定する。なお、発泡シートが薄すぎて前記サイズのカットサンプルを切り出すことができない場合には、25mm×25mm×発泡シート厚みのサンプルを複数枚切り出し、積み重ねることにより、25mm×25mm×約20mmの測定用カットサンプルとする。)された発泡シート(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算する。
【0042】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (1)
Vx:上記方法で測定されたカットサンプルの真の体積(cm)であり、カットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
Va:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)。
ρ:発泡シートを脱泡して求められる樹脂の密度(g/cm
【0043】
本発明の発泡シートにおいては、高分子型帯電防止剤を添加することにより、発泡シートの表面抵抗率を1×10〜1×1014(Ω)にすることができる。
該表面抵抗率が大きすぎる場合には、帯電防止特性が不十分となり、発泡シートの表面に静電荷が蓄積し、埃が付着しやすくなる。埃がより付着しにくくするためには、該表面抵抗率は、5×1013Ω以下が好ましく、1×1013Ω以下がさらに好ましい。一方、表面抵抗率が小さすぎる場合には、帯電防止性能においては問題ないが、場合によっては包装材に要求される帯電防止性能が過剰となりコストが高くなる。
【0044】
本明細書における表面抵抗率は、下記の試験片の状態調節を行った後、JIS K6271(2001)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である発泡シートまたは積層発泡シートから切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:測定対象物厚み)を温度20℃、相対湿度30%の雰囲気下に36時間放置することにより試験片の状態調節を行ってから、JIS K6271(2001)に準拠して印加電圧500kVの条件にて電圧印加を開始して1分経過後の表面抵抗率を求める。
【0045】
発泡シートの表面抵抗率を1×10〜1×1014Ωにするためには、高分子型帯電防止剤が発泡シート中に2〜20重量%の割合で配合されていることが好ましい。該配合量が少なすぎると、所望の帯電防止性能を発揮できない虞がある。一方、該配合量が多すぎても帯電防止性能の面では何ら問題ないが、発泡の妨げにならない範囲内で使用される。かかる観点から、発泡シート中の帯電防止剤の配合量は、3〜15重量%が好ましく、4〜12重量%がより好ましい。
【0046】
高分子型帯電防止剤の数平均分子量は、2000以上、好ましくは2000〜100000、更に好ましくは5000〜60000、特に好ましくは8000〜40000である。従って、該帯電防止剤は、界面活性剤からなる帯電防止剤とは区別される高分子型の帯電防止剤である。尚、該高分子型帯電防止剤の数平均分子量の上限は概ね1000000である。高分子型の帯電防止剤の数平均分子量を前記の範囲とすることにより、被包装物へ帯電防止剤が移行して被包装物表面を汚染することが防止される。
【0047】
なお、前記数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求められる。例えば、高分子型帯電防止剤がポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とする親水性樹脂の場合にはオルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定される値である。なお、前記溶媒の種類、カラム温度は、高分子型帯電防止剤の種類に応じて適宜変更される。
【0048】
本発明で使用される高分子型帯電防止剤としては、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの親水性樹脂と、ポリオレフィンとの共重合体が挙げられる。
該親水性樹脂としては、ポリエーテルジオール,ポリエーテルジアミン,及びこれらの変性物等のポリエーテル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタン等のポリエーテル含有親水性樹脂、非イオン性分子鎖で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基を分子内に有するカチオン性ポリマー、及びスルホニル基を有するジカルボン酸とジオール又はポリエーテルとを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが使用できる。
【0049】
また高分子型帯電防止剤としては、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、優れた帯電防止効果を与えると共に、帯電防止剤を添加することによる物性低下を抑制する効果を得るために、ポリオレフィン系樹脂と同種或いは相溶性の高い樹脂をブロック共重合させたものが好ましく、例えば、ポリオレフィンのブロックと、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの上記親水性樹脂のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロック共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体が前記相溶性にも優れているので好ましい。
尚、上記ポリオレフィンのブロックと親水性樹脂のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。
【0050】
また、高分子型帯電防止剤として好ましく用いられる前記共重合体のポリオレフィンのブロックとしては、カルボキシル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィンが好ましい。
【0051】
更に詳しくは、上記のような高分子型帯電防止剤として、特開平3−103466号公報、特開2001−278985号公報に記載の組成物が挙げられる。特開平3−103466号公報記載の組成物は、(I)熱可塑性樹脂、(II)ポリエチレンオキサイドまたは50重量%以上のポリエチレンオキサイドブロック成分を含有するブロック共重合体、及び(III)上記(II)中のポリエチレンオキサイドブロック成分と固溶する金属塩からなるものであり、特開2001−278985号公報記載の組成物は、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積抵抗率が1×10〜1×1011Ω・cmの親水性樹脂(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロック共重合体である。上記(a)のブロックと(b)のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものである。このような高分子型帯電防止剤は、例えば三井・デュポンポリケミカル株式会社製「SD100」、三洋化成工業株式会社製「ペレスタット300」などの商品名で市販されている。
【0052】
本発明の発泡シートにおいては、前記発泡シートの少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層(以下、樹脂層ともいう。)を積層することができる。樹脂層を積層することにより、発泡シートの機械的強度が向上し、さらに樹脂層に前記高分子型帯電防止剤を添加すれば、発泡シートに添加する場合に比較して少量の添加量であっても、表面抵抗率を1×10〜1×1014(Ω)にすることができる。この場合には、発泡シートに帯電防止剤を配合しなくでも優れた帯電防止性能を有する積層発泡シートが得られる。
【0053】
但し、高分子型帯電防止剤を樹脂層に添加する場合には、発泡シートに添加する場合とは異なり、押出発泡時の延伸による高分子型帯電防止剤の導電ネットワーク構造の形成強化が期待できないので、高分子型帯電防止剤を10〜50重量%含有させることが好ましい。該添加量が少なすぎると、所望の帯電防止特性を発揮できない虞がある。一方、該添加量が多すぎても帯電防止性能の面では何ら問題ないが、帯電防止性能が頭打ちになるためコストパフォーマンスに劣る。かかる観点から、樹脂層への帯電防止剤の添加量は、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜35重量%である。
【0054】
前記樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂、これに配合される他の樹脂や添加剤等は、発泡シートについて前記したものと同様のものである。但し、発泡シートと樹脂層の構成は同一である必要はなく、両者が積層可能でありさえすれば、前記ポリオレフィン系樹脂の範疇の中で異なる構成を採用することもできる。
【0055】
該樹脂層の坪量は一方の面あたり、0.5g/m以上が好ましく、より好ましくは0.7g/m以上であり、更に好ましくは1g/m以上である。該樹脂層の坪量が0.5g/m以上であれば、樹脂層を形成することができる。坪量の上限は制限されるものではないが、緩衝性や軽量性の観点からはその上限は100g/m以下であることが好ましく、より好ましくは60g/mであり、さらに好ましくは50g/m以下である。特に、樹脂層が共押出により形成されてなる場合には、樹脂層の厚みを薄くすることができるので、樹脂層の坪量は0.5〜10g/mであることが好ましく、より好ましくは0.7〜5g/mであり、更に好ましくは1〜3g/mである。
【0056】
また、樹脂層の厚みは、均一であることが好ましいが、本発明の目的、効果が達成される範囲内であれば、多少の厚みむらがあってもかまわない。本発明における樹脂層の坪量は、以下の方法で求めることができる。
【0057】
該坪量測定の方法は、積層発泡シートの垂直断面を顕微鏡などで適宜拡大して、樹脂層の厚みを等間隔に幅方向に10点測定し、得られた値の算術平均値を樹脂層の平均厚みとし、該平均厚みに樹脂層を構成している基材樹脂の密度を乗じ、単位換算して樹脂層の坪量(g/m)を求めることができる。ただし、この方法は樹脂層と発泡層の界面が明確な場合に限られる。
【0058】
樹脂層と発泡層の界面が不明な場合の坪量測定は、積層発泡シートが共押出や押出ラミネーションによって製造される場合、積層発泡シートを製造する際に、押出発泡条件の内、樹脂層の吐出量X[kg/時]と、得られる積層発泡シートの幅W[m]、積層発泡シートの単位時間あたりの長さL[m/時]から、以下の(2)式にて樹脂層の坪量[g/m]を求めることができる。なお、発泡シートの両面に樹脂層を積層する場合には、それぞれの樹脂層の吐出量からそれぞれの樹脂層の坪量を求める。
坪量[g/m]=〔1000X/(L×W)〕・・・(2)
【0059】
なお、熱ラミネーションによりフィルムを積層して樹脂層を設ける場合、樹脂層の坪量は積層前に既知のフィルムの坪量が樹脂層の坪量に相当する。
【0060】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法について説明する。
本発明の発泡シートは、押出発泡により製造することができる。
例えば、ポリオレフィン系樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤と気泡調整剤などの添加剤とを押出機に供給し、加熱溶融し混練し、次いで物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡シート形成用樹脂溶融物とし、押出機内において該樹脂溶融物を発泡可能な温度に調整し、環状ダイを通して大気中に押出して該樹脂溶融物を発泡させて筒状発泡体を形成し、該筒状積層発泡体の内面を、円柱状冷却装置に沿わせて冷却しつつ引取りながら切開くことにより、発泡シートを得ることができる。なお、前記環状ダイ、押出機、円柱状冷却装置、筒状発泡体を切開く装置等は、従来から押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
なお、環状ダイの代わりにフラットダイを用いて押出発泡することもできる。
【0061】
前記物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられ、アゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤を併用することもできる。上記した物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、特にポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0062】
主要な添加剤として、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見かけ密度に応じて調整する。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節する。例えば、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物を用いて前密度範囲の発泡シートを得るためには、ブタン混合物の添加量はポリオレフィン系樹脂100重量部当たり0.3〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部である。また気泡調整剤の添加量はポリオレフィン系樹脂100重量部当たり、0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜3重量部である。
【0064】
前記発泡シート形成用樹脂溶融物には、前記の通り、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、スチレン系樹脂やエラストマー等の他の樹脂や、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0065】
発泡シートの厚み方向の気泡数を1〜3個にコントロールする方法としては、気泡調整剤の添加量を少なく調整し、環状ダイ先端に平行ランドをもつリップを設け、発泡シート形成用樹脂溶融物の厚み方向への膨張(スエル)を押えながら押出すことによりコルゲートの発生を防ぎながら、平行ランドにおいて若干せん断発熱を誘発させて、気泡同士の結合を図ることで厚み方向のセル数をコントロールする方法が挙げられる。
【0066】
樹脂層を発泡シートに積層する場合には、予め製造した発泡シートの表面にフィルムを熱ラミネーションにより積層する方法や、押出ラミネーションにより積層する方法で製造することができる。また、積層発泡シートを共押出発泡法により製造することもできる。これらの方法の中では、積層発泡シートを共押出発泡法により製造することが、樹脂層の厚みを薄くできると共に、樹脂層と発泡シートとの間の接着力が強い積層発泡体を得ることができることから好ましい。
【0067】
共押出発泡法により積層発泡シートを製造する方法には、共押出用フラットダイを用いてシート状に共押出発泡させて積層する方法と、共押出用環状ダイを用いて筒状積層発泡体を共押出発泡し、次いで筒状発泡シートを切り開いてシート状の積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、コルゲートと呼ばれる波状模様の発生を抑えることや、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡体を容易に製造することができるので、好ましい方法である。
【0068】
前記環状ダイを用いて共押出しする場合、共押出用ダイに発泡シート形成用押出機と樹脂層形成用押出機とが接続された装置を用いる。
まず、前記したように、発泡シート形成用押出機に原料を供給して、発泡シート形成用樹脂溶融物を形成する。同時に、樹脂層形成用押出機に、ポリオレフィン系樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤を供給し、加熱溶融し混練した後、必要に応じて揮発性可塑剤を添加し溶融混練して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。
【0069】
尚、共押出方法においては、環状ダイ内で発泡シート形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを積層合流することもできれば、押出された上記溶融物同士をダイの出口の外で積層合流することもできる。なお、前記共押出用環状ダイ等は、従来から押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0070】
共押出方法においては、樹脂層形成用樹脂溶融物に揮発性可塑剤を添加することが好ましい。揮発性可塑剤としては、樹脂層形成用樹脂溶融物の溶融粘度を低下させる機能を有すると共に、樹脂層形成後に、該樹脂層より揮発して樹脂層中に存在しなくなるものが用いられる。揮発性可塑剤を樹脂層形成用樹脂溶融物中に添加することにより、積層発泡体を共押出しする際に、樹脂層形成用樹脂溶融物の押出温度を発泡シート形成用樹脂用樹脂溶融物の押出温度に近づけることができると共に、溶融状態の樹脂層の溶融伸びを著しく向上させることができる。そうすると、発泡時に樹脂層の熱によって発泡シートの気泡構造が破壊されにくくなり、さらに該樹脂層の伸びが発泡シートの発泡時の伸びに追随するので、樹脂層の伸び不足による亀裂発生が防止される。
【0071】
揮発性可塑剤としては、炭素数2〜7の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、又は炭素数2〜8の脂肪族エーテルから選択される1種、或いは2種以上のものが好ましく用いられる。滑剤のように揮発性の低いものを可塑剤として用いた場合、滑剤等は樹脂層に残存し、被包装体の表面を汚染することがある。これに対し揮発性可塑剤は、樹脂層の樹脂を効率よく可塑化させ、得られる樹脂層に揮発性可塑剤自体が残り難いという点から好ましいものである。
【0072】
前記炭素数2〜7の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタンなどが挙げられる。
【0073】
前記炭素数1〜4の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0074】
前記炭素数2〜8の脂肪族エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルアミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルアミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルなどが挙げられる。
【0075】
揮発性可塑剤の沸点は、樹脂層から揮発し易いことから、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。揮発性可塑剤の沸点がこの範囲であれば、共押出しした後、得られた積層発泡シートを放置しておけば、共押出し直後の熱により、更に後の室温下でのガス透過により、揮発性可塑剤は樹脂層から自然に揮散して、自然に除去される。該沸点の下限値は、概ね−50℃である。
【0076】
揮発性可塑剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤の混練物100重量部に対して0.5重量部〜7重量部であることが好ましい。揮発性可塑剤の添加量が概ね0.5重量部以上であれば、樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂等の混練時のせん断による発熱を十分に抑制できるので、樹脂層が積層される発泡シートとなる発泡シート形成用樹脂溶融物の樹脂温度の上昇が抑えられる(温度低下効果)。従って、発泡シート形成用樹脂溶融物が発泡する際に、気泡が破泡する等の弊害が防止される。さらに、揮発性可塑剤は、発泡シート形成用樹脂溶融物が発泡する際における樹脂層形成用樹脂溶融物が追随する伸張性を向上させ(伸張性改善効果)、樹脂層の厚みを均一に薄く形成する効果も有する。かかる観点から、揮発性可塑剤の添加量は、0.7重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。
【0077】
一方、揮発性可塑剤の添加量がポリオレフィン系樹脂と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤の合計100重量部に対して概ね7重量部以下であれば、樹脂層自体の物性低下を引き起こすことがなく、揮発性可塑剤が樹脂層形成用樹脂溶融物中に浸透して十分に混練されるので、ダイリップから揮発性可塑剤が噴き出したりすることがなく、樹脂層に穴が開いたり、表面が凹凸状となることを十分に押さえられるので、表面平滑性に優れた積層発泡シートとなる。かかる観点から、揮発性可塑剤の添加量は、4重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、2.5重量部以下が更に好ましい。揮発性可塑剤の添加量を上記範囲とすることで、共押出時の脂層形成用樹脂溶融物の温度低下効果と伸張性改善効果が確保される。
【0078】
また、樹脂層形成用樹脂溶融物には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物を形成するポリオレフィン系樹脂に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。その場合の添加量は、該樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が特に好ましい。下限は概ね0.01重量部である。ただし、ガラス基板等の間紙等として本発明の発泡シートを使用する場合は、発泡シートにブロッキング防止剤や界面活性剤型帯電防止剤等の低分子量有機物質が含まれていると、該低分子量有機物質が被包装物の表面に付着して被包装物の汚染の原因となるので、当該物質は添加量を減らすか、或いは無添加とすることが望ましい。
【0079】
積層発泡体を共押出によって製造する場合には、前記したように、発泡シート形成用押出機を用いて発泡シート形成用樹脂溶融物を形成し、樹脂層形成用押出機を用いて樹脂層形成用樹脂溶融物を形成し、発泡シート形成用押出機内において発泡シート形成用樹脂溶融物を発泡可能な温度に調整し、樹脂層形成用押出機内において樹脂層形成用樹脂溶融物を共押出可能な温度に調整してから、発泡シート形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用環状ダイに導入して両者を積層合流し、更に大気中に共押出して、発泡シート形成用樹脂溶融物を発泡させて、発泡シートに樹脂層が積層された筒状積層発泡体を形成し、該筒状積層発泡体の内面を、円柱状冷却装置に沿わせて冷却しつつ引取りながら切開くことにより、積層発泡シートを得ることができる。
【実施例】
【0080】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0081】
発泡シート形成用のポリオレフィン系樹脂、樹脂層形成用のポリオレフィン系樹脂として、表1に示すものを用いた。
【0082】
【表1】

【0083】
気泡調整剤として、低密度ポリエチレン樹脂80重量%に対してタルク(松村産業株式会社製商品名「ハイフィラー#12」)を20重量%配合してなる気泡調整剤マスターバッチを用いた。
【0084】
高分子型帯電防止剤として、三洋化成工業株式会社製のポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体を主成分とする「ぺレスタット300」(融点136℃、数平均分子量14000、密度990g/L)を用いた。
【0085】
物理発泡剤として、ノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%とからなる混合ブタンを用いた。
【0086】
実施例1,2、比較例1
ポリオレフィン系樹脂発泡シート形成用の押出装置として、スクリュー径90mmの第一押出機とスクリュー径120のmmの第二押出機からなるタンデム押出機を用い、リップ径175mmの環状ダイを第二押出機の出口に取り付け、直径350mmの冷却管をダイ先端に取り付けた装置を用いた。なお、実施例1,2においては樹脂押出先端部に長さ2mmの平行ランド部(樹脂流路間隔が同じになっている部分)を有する環状ダイを使用し、比較例1においては、該平行ランド部を持たない、樹脂押出先端部の樹脂流路間隔が次第に狭くなる従来の環状ダイを使用した。
【0087】
表2に示す種類、量のポリオレフィン系樹脂と、表2に示す量の気泡調整剤マスターバッチを、タンデム押出機の第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。次に、該溶融樹脂混合物に、表2に示す量の物理発泡剤を圧入し、次いで前記第一押出機の下流側に連結された第二押出機に導入して、表2に示す押出樹脂温度に温調して発泡シート形成用樹脂溶融物とし、該発泡シート形成用樹脂溶融物を表2に示す吐出量で押出発泡させて、筒状発泡体を形成した。押出された筒状発泡体を冷却された円柱状冷却装置(マンドレル)に沿わせて引き取りながら切開いて、発泡シートを得た。得られたシートを加熱炉内を通して矯正し、幅1000mm、長さ2000mmの平版状サンプルを得た。その時、加熱炉内でシートを保持した両端部を50mm程度スリットして、最終製品とした。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例3〜7、比較例2〜6
ポリオレフィン系樹脂発泡シート形成用の押出装置として、スクリュー径90mmの第一押出機とスクリュー径120mmの第二押出機からなるタンデム押出機を用い、ポリオレフィン系樹脂層形成用の押出機として直径50mm、L/D=50の第三押出機を用いた。更に、共押出用環状ダイに、第二押出機と第三押出機の夫々の出口を連結し、夫々の溶融樹脂を環状ダイ中で積層可能にした。
【0090】
表2に示す種類、量のポリオレフィン系樹脂と、表2に示す量の気泡調整剤マスターバッチとを、タンデム押出機の第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。次に、該溶融樹脂混合物に、表2に示す量の物理発泡剤を圧入し、次いで前記第一押出機の下流側に連結された第二押出機に供給して、表2に示す押出樹脂温度に温調して発泡シート形成用樹脂溶融物とし、該発泡シート形成用樹脂溶融物を表2に示す吐出量で共押出用環状ダイに導入した。
【0091】
同時に、表2に示す種類、量のポリオレフィン系樹脂と、表2に示す種類、量の高分子型帯電防止剤を第三押出機に供給して加熱混練し、更に混練し、表2に示す押出樹脂温度に調節して樹脂層形成用樹脂溶融物とし、該樹脂層形成用樹脂溶融物を表2に示す吐出量で共押出用環状ダイに導入した。なお、実施例3〜7においては樹脂押出先端部に長さ2mmの平行ランド部(樹脂流路間隔が同じになっている部分)を有する共押出用環状ダイを使用し、比較例2〜6においては、該平行ランド部を持たない、樹脂押出先端部の樹脂流路間隔が次第に狭くなる従来の共押出用環状ダイを使用した。
【0092】
共押出用環状ダイ内を流動する発泡シート形成用樹脂溶融物の外側と内側に、樹脂層形成用樹脂溶融物を積層合流し、積層溶融物をダイから大気中に押出して、樹脂層/発泡体/樹脂層からなる3層構成の筒状積層発泡体を形成した。押出された筒状積層発泡体を冷却された円柱状冷却装置(マンドレル)に沿わせて引き取りながら切開いて、積層発泡シートを得た。得られたシートを実施例1と同様に加熱矯正した後、幅1000mm、長さ2000mmの平版状サンプルとした。
【0093】
実施例、比較例で得られた積層発泡シートの諸物性を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
表3の片持ち垂れ下がりの測定法及び評価基準
<測定方法>
縦方向測定用サンプルとして、得られたシートの押出方向と試験片の長さ方向を一致させて、実施例、比較例で得られた発泡シート、或いは積層発泡シートから幅25mm×長さ150mmの試験片を5枚切り出した。同様に、得られたシートの幅方向と試験片の長さ方向を一致させてた試験片を5枚切り出した。
切り出した試験片を、図3に示すように、土台から100mmほど出した状態で、土台上に乗せ其の上に錘を載せて固定した。
試験片の先端と土台からの距離を測定した。(垂れ下がらない場合は測定値100mmとなり、測定値が低い程垂れ下がりが大きいことを示す)
測定データを算術平均化し、垂れ下がり量とした。
【0096】
評価基準
上記方法で、まずは垂れ下がり量を測定した。そして、さらに厚みの因子を考慮するため、以下の方法で垂れ下がり量を換算し、その結果を用いて評価を行った。
(1)測定値が100mm(全く垂れ下がらない場合)の場合には、データーをそのまま採用し、換算垂れ下がり量とした。
(2)測定値が99mm以下の場合には、測定値を厚みで除し、その値を換算垂れ下がり量とした。(但し、換算垂れ下がり量が100mmを超えた場合は換算垂れ下がり量を100mmとした。
【0097】
上記、方法で得た換算垂れ下がり量を以下の評価基準で評価した。
◎ 換算垂れ下がり量 95〜100mm
○ 換算垂れ下がり量 86mm以上、95mm未満
× 換算垂れ下がり量 86mm未満
【0098】
表3の積み重ね性の測定法及び評価基準
評価法
実施例および比較例にて得られた発泡シート、或いは積層発泡シートを端部から端部までの厚みを10mmピッチで厚み計を用いて測定し、測定値の最大と最小の差が0.2mm以内であることを確認した。次にシート端部から全幅の25%、50%、75%の位置を基点とし、幅10mm×長さ25mmの試験片を順に10枚(発泡シート幅方向に計100mmに亘り)切り出した。本例で得られた発泡シートは、1000mm幅であるため、端部より250mm、500mm、750mmの位置を基点とし発泡シート幅方向に計100mmに亘り順次連続的に幅10mm×長さ25mmの試験片を10枚切り出した。この操作により、端部より250mm、500mm、750mmの各位置を基点として各10枚(計30枚)のサンプルを切り出した。そして、同じ作業を10回繰り返し計300枚のサンプルを切り出した。切り出されたサンプルを幅方向の切り出し位置を合わせて各10枚重ねの束とし、30個の10枚重ねの束を測定試料とした。次に、30個の測定試料の各々の積み重ね高さを測定した。得られた積み重ね高さを算術平均し平均値を得た。次いで、30個の測定試料の積み重ね高さの標準偏差を計算により求めた。得られた標準偏差値を以下の基準にて評価した。
【0099】
評価基準
◎:0.15以下
○:0.15超0.2未満
△:0.2以上0.25未満
×:0.25以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見かけ密度60〜350g/L、厚み0.2〜1.5mm、坪量50〜200g/mのポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該発泡シートを構成する基材樹脂の曲げ弾性率が300MPa以上であると共に、該発泡シートの厚み方向の気泡数が1〜3個であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記発泡シートを構成する基材樹脂中に、2〜20重量%の高分子型帯電防止剤が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記発泡シートの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂層が積層されており、該樹脂層を構成する基材樹脂中に、5〜55重量%の高分子型帯電防止剤が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記発泡シートを構成する基材樹脂が、190℃における溶融張力が15〜400mNのポリプロピレン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記発泡シートを構成する基材樹脂が、190℃における溶融張力が15〜400mN、密度が930〜970g/Lのポリエチレン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記発泡シートを構成する基材樹脂が、密度が930g/L以下のポリエチレン系樹脂(L)15〜70重量%と、密度が930g/L超970g/L以下のポリエチレン系樹脂(H)85〜30重量%(但し、ポリエチレン系樹脂(L)とポリエチレン系樹脂(H)の合計が100重量%である。)とからなる請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6567(P2011−6567A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150766(P2009−150766)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】