説明

ポリオレフィン系積層フィルム

【課題】
帯電防止性能に著しく優れ、機械強度、とりわけ低温での引裂き強度にも優れた屋外で使用することもできるポリオレフィン系積層フィルムを提供すること
【解決手段】
少なくとも、プロピレン系共重合体を主成分として帯電防止剤を含んでなる表層と、高密度ポリエチレンを主成分とする中間層とを有する積層フィルムであって、表層の表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1013Ω/mの範囲であり、当該積層フィルムの23℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに200gf以上で、0℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに150gf以上であるポリオレフィン系積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系積層フィルムに関し、さらに詳しくは、クリーンルームの仕切り、壁及びカーテン、クリーンルーム内の機器等のカバー、並びに屋外広告に使用される印刷用基材等に適した、表面固有抵抗と強度に優れたポリオレフィン系積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年精密電子部品或いは半導体デバイスの高集積化に伴い回路が高詳細化しており、精密電子部品や半導体デバイスの製造工程で使用されるプラスチックの製品・材料等については、帯電による製品の破壊、静電気を防止する観点から、帯電防止性能が強く求められている。
【0003】
また、精密電子部品や半導体関連部品は、一般環境に存在する埃やヒトの髪の毛等が部品に付着・混入することを防止するために、塵埃を遮断したクリーンルーム或いはクリーンブース(以下、まとめて「クリーンルーム」という)内で製造されるが、上記クリーンルームには、その清浄性を維持する目的で塵埃の混入を防ぐための仕切り、壁及びカーテンなどが設けられている。
【0004】
上記クリーンルームの仕切り、壁及びカーテンなどとして用いられるフィルム(シート)としては、従来、ポリ塩化ビニルを主成分とするフィルムが多く用いられてきた。このようなフィルムとしては、例えば、特許文献1に、塩化ビニル系樹脂100重量部あたり、可塑剤20〜80重量部を含む樹脂組成物をシート化し、このシートの少なくとも片面に、真空下、プラズマ重合性を有しない不活性ガスのプラズマと、プラズマ重合性を有する有機化合物とを接触させて、シート表面に有機化合物重合体の皮膜を形成してなる塩化ビニル系樹脂製カーテンが開示されている。
【0005】
また、上記塩化ビニル系樹脂製カーテンは、カーテン中に含有されている可塑剤が揮発又は分解してアウトガスが発生し、クリーンルーム内に放出されてしまうことから、クリーンルーム内を清浄に保ち且つクリーンルーム内で製造される製品の汚染の原因となるアウトガスの発生量を低減させたクリーンルーム用フィルムを提供するため、エチレン−α−オレフィン共重合体及び帯電防止剤を500〜5000ppm含有してなるクリーンルーム用フィルムが提案されている(特許文献2)。当該クリーンルーム用フィルムは、汚染物質の発生を低減することが可能であるものの、十分な帯電防止性能を未だ達成できていない。特に、近年の精密電子部品或いは半導体デバイスの高集積化に伴う回路の高詳細化から、より高い帯電防止性能を有するクリーンルーム用フィルムが要望されている。
【0006】
本発明者は、かかる要望に対して検討を重ねたところ、特定のポリマー型帯電防止剤を含有させた積層フィルムが表面固有抵抗と強度に優れることを見出し、当該積層フィルムについて特許出願を行った(特許文献4及び5)。これら特許文献に記載の積層フィルムは上記の要望に対して十分高い性能を示すものである。
一方、優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐寒性が要求される屋外用途、例えば、屋外広告に使用される印刷用基材においても使用できる帯電防止フィルムに対する要望もある。このような用途には低温における高い強度が必要とされ、機械強度を更に向上させた帯電防止フィルムが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−225131号公報
【特許文献2】特開2008−69273号公報
【特許文献3】特開2001−278985号公報
【特許文献4】特開2010−188609号公報
【特許文献5】特開2010−201924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明は、帯電防止性能に著しく優れ、機械強度、とりわけ低温での引裂き強度に優れた屋外で使用することもできるポリオレフィン系積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は、
(1)少なくとも、プロピレン系共重合体を主成分として帯電防止剤を含んでなる表層と、高密度ポリエチレンを主成分とする中間層とを有する積層フィルムであって、表層の表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1013Ω/mの範囲であり、当該積層フィルムの23℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに200gf以上で、0℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに150gf以上であるポリオレフィン系積層フィルム、
(2)前記中間層は10〜50質量%のプロピレン系共重合体と50〜90質量%の高密度ポリエチレンの混合樹脂組成物を主成分とする(1)に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(3)前記帯電防止剤がポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を構成成分とするポリマー型帯電防止剤である(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(4)前記プロピレン系共重合体がプロピレンとエチレンまたは炭素数4以上のαオレフィンとのブロック共重合体である(1)〜(3)のいずれか1に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(5)前記プロピレン系共重合体は−20℃でのシャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上、かつ23℃でのシャルピー衝撃強度が7kJ/m以上のブロック共重合体である(1)〜(4)のいずれか1に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(6)さらにプロピレン系共重合体を主成分とする裏層を有し、少なくとも表層/中間層/裏層の3層から構成される(1)〜(5)のいずれか1に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(7)前記中間層にさらに酸化チタンを含んでなる(1)〜(6)のいずれか1に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
(8)厚みが150〜200μmである(1)〜(7)のいずれか1に記載のポリオレフィン系積層フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、優れた帯電防止性能を保持しながら、低温での強度も良好であるポリオレフィン系積層フィルムが提供される。本発明が提供する積層フィルムは、クリーンルームの仕切り、壁及びカーテン、クリーンルーム内の機器等のカバーやデスクマット等に加えて、屋外広告に使用される印刷用基材に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明が提供するポリオレフィン系積層フィルムは、少なくとも、プロピレン系共重合体を主成分として帯電防止剤を含んでなる表層と、高密度ポリエチレンを主成分とする中間層とを有する積層フィルムであって、表層の表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1013Ω/mの範囲であり、当該積層フィルムの23℃におけるエレメンドルフ引裂き強度が縦方向(MD),横方向(TD)ともに200gf以上で、0℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに150gf以上であるポリオレフィン系積層フィルムである。
【0012】
フィルム構成
本発明におけるポリオレフィン系積層フィルムは、少なくとも表層と中間層を有しており、全体として2以上の層から構成される。具体的には、表層と中間層のみから構成される2層フィルム、表層/中間層/裏層から構成される3層フィルムなどがあげられる。また、裏層は表層と同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。また、本発明における積層フィルムは、表層と中間層との間、中間層と裏層との間等、各層の間に他の層(例えば、接着層等)を有するように3以上の層から構成されていてもよい。
【0013】
本発明において、表層は、プロピレン系共重合体を主成分として帯電防止剤を含んでなる。本発明の表層は、プロピレン系共重合体と帯電防止剤を、夫々、好ましくは60〜90質量%及び40〜10質量%で含んでなる。
【0014】
本発明において、中間層は、高密度ポリエチレンを主成分とする。好ましくは中間層はプロピレン系共重合体と高密度ポリエチレンの混合樹脂組成物を主成分とする。当該混合樹脂組成物を主成分とする場合、当該混合樹脂組成物は、プロピレン系共重合体と高密度ポリエチレンを、夫々、好ましくは10〜50質量%及び90〜50質量%、より好ましくは30〜50質量%及び70〜50質量%含んでなる。当該樹脂組成物中のプロピレン系共重合体の量が、50質量%以下であれば低温での引裂き性に優れ好ましい。
【0015】
本発明において、裏層は、好ましくはプロピレン系共重合体を主成分とする。裏層は、表層と同様に帯電防止剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。裏層が帯電防止剤を含有する場合は、裏層は、好ましくはプロピレン系共重合体と帯電防止剤を、夫々、60〜100質量%及び40〜0質量%で含んでなる。
【0016】
本発明のポリオレフィン系積層フィルムの全体の厚みは、使用用途により適宜選択され、特に限定されるものではないが、強度と取り扱い易さの点から、50〜500μm程度であるのがよく、特に好ましくは150〜200μmである。
【0017】
また、本発明のポリオレフィン系積層フィルムにおいて、表層の厚みは、優れた表面固有抵抗を維持するために、積層フィルム全体の厚みに対して10%〜30%の範囲にあることが好ましく、また、15μm以上であることが好ましい。また、積層フィルムが裏層を有し、裏層が帯電防止剤を含有している場合、積層フィルムのもう一方の表面(裏層の表面)が優れた表面固有抵抗を維持するためには、裏層の厚みが積層フィルム全体の厚みに対して10%〜30%の範囲にあることが好ましく、また、15μm以上であることが好ましい。
【0018】
プロピレン系共重合体
本発明のポリオレフィン系積層フィルムにおいて、表層に用いられるプロピレン系共重合体と中間層に用いられるプロピレン系共重合体とは、同じであっても異なっていてもよい。また、表層に使用されるプロピレン系共重合体と裏層に使用されるプロピレン系共重合体とは、同じであっても異なっていてもよい。表層に使用されるプロピレン系共重合体のMFR(230℃、2.16kgfで測定)は、フィルムの製膜性の観点から、好ましくは1〜20g/10分、更に好ましくは5〜12g/10分である。
【0019】
本発明に使用されるプロピレン系共重合体は、好ましくは、−20℃でのシャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上、かつ23℃でのシャルピー衝撃強度が7kJ/m以上の特性を有する。−20℃及び23℃でのシャルピー衝撃強度がかかる範囲であれば、屋外で想定される低温から常温までの温度範囲において優れた引裂き強度を有する積層フィルムの設計が容易となる。
【0020】
ここでプロピレン系共重合体とは、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のαオレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体を挙げることができ、これらの混合物であってもよく、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のαオレフィンとのブロック共重合体が好ましい。また、プロピレンと共重合させるエチレンもしくは炭素数4以上のαオレフィンであるコモノマーは、1種でもそれ以上であっても良い。
【0021】
炭素数4以上を有するαオレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。
【0022】
高密度ポリエチレン
本発明に使用される高密度ポリエチレンとしては、密度が0.95g/cm以上の高密度ポリエチレンが好適に用いられる。密度が0.95g/cm以上であればフィルムに剛性を持たせることが可能となる。また、本発明における高密度ポリエチレンのMFR(230℃、2.16kgfで測定)は、フィルムの製膜性の観点から、好ましくは1〜20g/10分、更に好ましくは5〜12g/10分である。
【0023】
上記高密度ポリエチレン樹脂としては、具体的にホモポリマーポリエチレンあるいはαオレフィンコモノマーとの共重合体が好ましい。
【0024】
ポリエチレンの重合触媒には制限は無く、チーグラー型触媒、フィリップス触媒、カミンスキー型触媒等いずれのものでも高密度ポリエチレンに適合する。重合については一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法でもよい。
【0025】
帯電防止剤
本発明においては、帯電防止剤として、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を構成成分とするポリマー型帯電防止剤を用いることが好ましい。当該ポリマー型帯電防止剤とは、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が10〜1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有することを特徴とするポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(例えば、特許文献3参照。)を構成成分とし、帯電防止性能を有し、溶融加工可能なものをいう。
【0026】
このようなポリマー型帯電防止剤は、一般的には、高濃度のポリエーテルブロックを含む種々の高分子物質であり、ポリエーテルに沿ったイオン導電により、10〜1013Ω/cmの表面固有抵抗を生じる。このようなイオン導電性のポリマー型帯電防止剤のイオン種としては、ナトリウム、リチウム、カリウムなどが一般的であるが、本発明においてはナトリウム又はカリウムを主成分とするものが好ましく使用される。
【0027】
本発明で用いられるポリマー型帯電防止剤の製品例として、三洋化成社製のペレスタット230、VH230、303、300、三光化学社製のサンコノールTBX35,TBX25,TBX310,TBX320などを挙げることができる。
【0028】
また、本発明の積層フィルムにおいては、表層以外に、中間層、裏層も帯電防止剤を含有することができる。この場合、表層において使用する帯電防止剤と同じ又は異なる帯電防止剤を使用することができる。
更に、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の帯電防止剤や他のポリマー型帯電防止剤を併用しても良い。
【0029】
本発明の表層においては、プロピレン系共重合体と帯電防止剤を、夫々、好ましくは、60〜90質量%及び40〜10質量%で含んでなる。帯電防止剤の含有量が10質量%以上であれば十分な表面固有抵抗を得ることができ、40質量%以下であれば製膜性に優れ、実用的なフィルムを得ることが容易となる。
【0030】
他の添加剤
本発明では、必要に応じて、ポリオレフィン系樹脂に配合される公知の酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてよく、ポリオレフィン系樹脂以外の他の材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、AS、ABS、EPR、EPDM、SEBS、NBRなどを添加することも可能である。この中でも、透明性を向上するために、結晶核剤を添加することが好ましい。
【0031】
また、本発明においては中間層に染料や顔料を含有させることができ、好ましくは、酸化チタンを含有させることができる。中間層に酸化チタンを添加することにより積層フィルムに隠蔽性をもたせることができ、印刷用基材として用いる際に好ましい態様となる。
【0032】
成分の混合方法
本発明の表層に用いるプロピレン系共重合体と帯電防止剤、およびその他添加剤を配合する方法としては、特に制限されるものではなく、プロピレン系共重合体に帯電防止剤を均一に分散させることができる公知の方法が挙げられる。例えば、プロピレン系共重合体をペレット状態のままスーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどでドライブレンドし、後述する成形機のホッパーに直接供給する方法や、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等で混合し、その混合物を、押出機で一度溶融混練する方法が挙げられる。また、中間層に用いるプロピレン系共重合体と高密度ポリエチレンの混合樹脂組成物、およびその他添加剤を配合する方法も上記と同様の方法で行うことができる。
【0033】
フィルムの特性
本発明のポリオレフィン系積層フィルムは、表層の表面抵抗値が好ましくは1.0×1010〜1.0×1013Ω/mの範囲にある。また、本発明の積層フィルムの23℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに200gf以上で、0℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに150gf以上である。これらの特性を有することにより、本発明の積層フィルムは、帯電防止性及び低温における機械的特性に極めて優れたものとなっている。
【0034】
フィルムの成形方法
本発明のポリオレフィン系積層フィルムの加工法としては、公知の成形方法を利用できる。例えば、Tダイによる押出成形、インフレーションフィルム成形、カレンダー成形などが挙げられ、連続的に積層フィルムを製造する方法としては、一般的な方法として、押出成形法が挙げられるが、特に本発明で用いるポリオレフィン系樹脂は、樹脂の粘度、得られるフィルム厚みの点から押出し成形法が適している。以下、押出成形法による積層フィルムの製造方法に関して詳細に述べる。
【0035】
複数台の押出機に上記に記載の方法でブレンドした原料を投入し、押出機を通って溶融状態となった樹脂原料を、フィードブロック等の合流装置部分で合流させ、ダイスなどから平板状に押し出し、これを表面が平滑に回転する一対のロールで挟み込みながら連続的に冷却固化と表面への平滑性賦与を行う方法、ロールの代わりに表面が平滑なベルトを1つあるいは2つ用いる方法、一旦表面の平滑性にかまわず平板状に固化させたものを再度加熱した上で表面が平滑なロールやベルトを押し当て、最終的に表面が平滑なシートを得る方法、さらに溶融状態の樹脂材料を円筒状に押し出し周囲から水流や気流によって冷却固化する方法等が挙げられる。
【0036】
また、非連続的に製造する方法としては、一旦何らかの方法で平板状にした表面が平滑でないシートを、表面が平滑な一対の板の間に置き熱を加えながら板同士を押しつけることによって表面を平滑にする方法、溶融状態の樹脂原料を表面が平滑な一対の板の間に供給し板で圧力を加えながら冷却固化させる方法等が挙げられる。
【0037】
以上に述べた製造方法のうち、品質の安定性や生産性の面からは、表面が平滑なロールやスチールベルトで連続的に成形する方法が好ましい。
【0038】
本発明の積層フィルムは、帯電防止性及び低温における機械的特性に極めて優れているので、クリーンルームの仕切り、壁及びカーテン、クリーンルーム内の機器等のカバーやデスクマット等の用途に加えて、屋外広告に使用される印刷用基材に好適に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0040】
[使用材料]
プロピレン系共重合体:プロピレン・エチレンブロック共重合体 ノバテックBC3HF(日本ポリプロ社製)
高密度ポリエチレン:ノバテックHF560(日本ポリエチレン社製)
帯電防止剤:ペレスタットVH230(三洋化成社製)
【0041】
[表面固有抵抗測定]
ダイアインスツルメンツ社製ハイレスタUP高抵抗率計(MCP−HT450)を用いて表層の表面抵抗値を測定した。印加電圧10V、電極:2重リング法(URSプローブ)。電圧印加後、10秒後の値を測定値として採用した。尚、「×」は、10の14乗より高い値を持つため、測定不可であることを示す。
【0042】
[エレメンドルフ引裂き強度]
JIS K 7128−2図3に記載の形状・寸法の試験片を用い、JIS K 7128−2に従い、東洋精機社製のエレメンドルフ引裂き試験機を用いて測定した。
【0043】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
各々表1に記載されている配合により、ペレット状態でドライブレンドし、3台の東芝機械製単軸押出機(外層(表層、裏層)用:35φmm、L/D=25、中間層用:50φmm、L/D=32)のホッパーに、ブレンドした原料を投入し、表層及び裏層用、中間層用押出機温度をC1:190℃、C2:200℃、C3:200℃、C4:200℃、C5:200℃のように設定し、セレクターを通し、フィードブロック部(温度設定200℃)にて、表層/中間層/裏層の3種3層構成に合流させ、550mm幅Tダイ(温度設定200℃ リップ開度0.3mm)から押出した。厚み構成は、16.5μm/132μm/16.5μmになるよう各押出機回転数を設定した。押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、巻取りし、0.165mmの実施例1〜2および比較例1〜3の積層フィルムを各々得た。
【0044】
得られた積層フィルムを用いて、上記記載の方法にてフィルムの表面固有抵抗およびエレメンドルフ引裂強度(23℃、0℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、本発明の構成により得られる積層フィルムは、優れた帯電防止性能を有しており、かつ低温における引裂き強度などの機械特性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリオレフィン系積層フィルムは、帯電防止性に極めて優れているので、非常に高い帯電防止性が要求される各種精密電子部品或いは半導体デバイスを製造する工程において好適に用いることができ、また、クリーンルーム用フィルムとしても使用することができる。更に、本発明のポリオレフィン系積層フィルムは、低温での機械強度にも優れているので、屋外広告に使用される印刷用基材にも好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、プロピレン系共重合体を主成分として帯電防止剤を含んでなる表層と、
高密度ポリエチレンを主成分とする中間層とを有する積層フィルムであって、
表層の表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1013Ω/mの範囲であり、
当該積層フィルムの23℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに200gf以上で、0℃におけるエレメンドルフ引裂き強度がMD,TDともに150gf以上であるポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項2】
前記中間層は10〜50質量%のプロピレン系共重合体と50〜90質量%の高密度ポリエチレンの混合樹脂組成物を主成分とする請求項1に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止剤がポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を構成成分とするポリマー型帯電防止剤である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項4】
前記プロピレン系共重合体がプロピレンとエチレンまたは炭素数4以上のαオレフィンとのブロック共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項5】
前記プロピレン系共重合体は−20℃でのシャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上、かつ23℃でのシャルピー衝撃強度が7kJ/m以上のブロック共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項6】
さらにプロピレン系共重合体を主成分とする裏層を有し、少なくとも表層/中間層/裏層の3層から構成される請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項7】
前記中間層にさらに酸化チタンを含んでなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系積層フィルム。
【請求項8】
厚みが150〜200μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系積層フィルム。

【公開番号】特開2012−171283(P2012−171283A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37179(P2011−37179)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】