説明

ポリオレフィン重合プロセス用の添加剤

重合反応器中で少なくとも1種のオレフィンを重合させてオレフィンベースポリマーを生成させること;及びこの重合反応器に少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を供給することを含む重合方法が開示される。前記エチレンイミン添加剤は、ポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含むことができる。この方法は、重合反応器の静電気を監視し、少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を用いて静電気を所望のレベルに保つことをさらに含むことができ、製造されるポリマーの重量を基準として約0.1〜約50ppmの範囲で少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を前記反応器中に存在させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年1月8日付け米国仮出願第61/204608号の恩恵を主張するものであり、その開示すべてを参照用に取り入れる。
【0002】
本明細書に開示される具現化物(本発明)は一般的に、重合プロセスにおける添加剤の使用に関する。より詳細には、本明細書に開示される具現化物は、添加剤としてのポリエチレンイミン又はエチレンイミンコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
メタロセン触媒は、狭い分子量分布及び狭い化学組成等のような独特な特性を有するポリオレフィンの製造を可能にする。これらの特性は、このポリマーを用いて作られた製品における改善された構造性能、例えばより大きい衝撃強さ及びフィルムの透明性をもたらす。メタロセン触媒は改善された特徴を有するポリマーをもたらしたが、これらは伝統的な重合システムにおいて用いた時に、新たな課題を示した。
【0004】
例えば、メタロセン触媒を流動床反応器中で用いた場合、「シーティング」及び関連現象の「ドローリング(垂れ落ち)」が起こることがある。米国特許第5436304号及び同第5405922号の両明細書を参照されたい。「シーティング」とは、溶融した触媒及び樹脂粒子が反応器の壁に付着することである。「ドローリング」又はドームシーティングは、反応器の壁上に、通常は反応器の拡張区画又は「ドーム」に、溶融ポリマーのシートが形成し、反応器の壁に沿って流れ、反応器の底部に蓄積した時に起こる。ドームシートは典型的には、反応器中の高い箇所、ドームの円錐形区画上、又は反応器頂部の半球状ヘッド上に、形成される。
【0005】
シーティング及びドローリングは、商業的気相ポリオフェフィン製造反応器において、リスクが適切に軽減されていない場合に、問題となることがある。この問題は、反応器の壁にポリマーの大きい固体塊が形成することによって特徴付けられる。これらの固体塊又はポリマー(シート)は、最後には壁から取り除かれて反応区画に落ちてしまうことがあり、そこで流動化を妨害したり、生成物排出口を塞いだりして、通常はクリーニングのために反応器の停止を強いることがある。
【0006】
シーティングを制御するための様々な方法が開発されている。これらはしばしば、反応器の壁近くのシーティングが展開することが知られている領域で静電荷を監視し、静電気レベルが一定範囲を超えた時に反応器中に静電気調整剤を導入するというものである。例えば米国特許第4803251号及び同第5391657号の両明細書には、反応器中の静電荷を調整するために流動床反応器中に様々な化学添加剤を用いることが開示されている。正電荷が負の場合には正電荷発生添加剤が用いられ、正電荷が正の場合には負電荷発生添加剤が用いられる。
【0007】
米国特許第4803251号及び同第5391657号の両明細書には、チーグラー・ナッタ触媒についてのシーティングプロセスにおいて静電気が重要な役割を果たすことが開示されている。触媒及び樹脂粒子上の正電荷レベルが臨界レベルを超えた時に、該粒子は静電力によって反応器の接地金属壁に付着するようになる。もしも反応性環境下で壁に充分長く存在させると、過剰の温度が粒子の焼結及び溶融をもたらし、シートやドロールを発生させることがある。
【0008】
米国特許第4532311号明細書には、流動床の帯電度の指標を得るために反応器静電プローブ(電圧プローブ)を用いることが開示されている。米国特許第4855370号明細書では、反応器中の静電気のレベルを調整するために、静電プローブと反応器への水の添加(エチレン供給物の1〜10ppmの量で)とが組み合わされている。この方法は、チーグラー・ナッタ触媒については効果的であることが証明されたが、メタロセン触媒については効果的ではなかった。
【0009】
従来のチーグラー・ナッタ触媒やクロム系(クロムをベースとする)触媒のような慣用の触媒系については、通常は流動床の下方部分においてシート形成が起こる。チーグラー・ナッタ触媒についてはドームシートの形成は滅多に起こらない。この理由で、従来は反応器の下方部分に静電プローブ又は電圧計が配置されてきた。例えば米国特許第5391657号明細書では、反応器の分配板付近に電圧計が配置された。また、米国特許第4855370号明細書も参照されたい。また、反応器の壁近く、通常は壁から2cm未満にも、電圧計が配置されている。
【0010】
米国特許第6548610号明細書には、ファラデードラムを用いて静電荷を測定し、測定された電荷を所定範囲内に保つのに必要ならば静電気調整剤を反応器に供給することによって、ドームシーティング(又は「ドローリング」)を防ぐ方法が記載されている。従来の静電プローブが、米国特許第6008662号、同第5648581号及び同第4532311号の各明細書に記載されている。その他の背景文献には、国際公開WO99/61485号、国際公開WO2005/068507号、欧州特許公開第0811638A号公報、欧州特許公開第1106629A号公報、並びに米国特許出願公開第2002/103072号及び同第2008/027185号の両明細書がある。
【0011】
メタロセン触媒を用いた時の反応器の不連続性の問題に関連する危険性の結果として、改善された操作性をもたらすと言われる様々な技術が開発されてきた。例えば、ファウリング(汚れ付着)の傾向が軽減されて良好な操作性を有するメタロセン触媒系を製造するための様々な担持手順又は方法が米国特許第5283278号明細書に議論されており、これにはメタロセン触媒の予重合が開示されている。その他の担持方法は、米国特許第5332706号、同第5473028号、同第5427991号、同第5643847号、同第5492975号及び同第5661095号の各明細書、並びに国際公開WO97/06186号、国際公開WO97/15602号及び国際公開WO97/27224号に開示されている。
【0012】
その他の文献にも、メタロセン触媒及び従来のチーグラー・ナッタ触媒についての反応器の連続性を改善するための様々なプロセス変更が議論されている。国際公開WO96/08520号、国際公開WO97/14721号、並びに米国特許第5627243号、同第5461123号、同第5066736号、同第5610244号及び同第5126414号の各明細書並びに欧州特許公開第0549252A1号公報を参照されたい。その他にも、操作性を改善するための様々な既知の方法があり、その中には、重合装置をコーティングするもの、重合速度、特に始動時の重合速度を制御するもの、反応器のデザインを構造変更するもの、及び反応器中に様々な添加剤を注入するもの等がある。
【0013】
反応器中への様々な添加剤の注入に関しては、静電気防止剤及びプロセス「連続性添加剤」が様々な刊行物の主題となっている。例えば欧州特許公開第0453116号公報には、シート及び凝集物の量を減らすために反応器に静電気防止剤を導入することが開示されている。米国特許第4012574号明細書には、ファウリングを減らすために反応器にペルフルオロカーボン基を有する界面活性化合物を添加することが開示されている。国際公開WO96/11961号には、ガス、スラリー又は液体プール重合プロセスにおいてファウリング及びシーティングを減らすための担持触媒系の成分としての静電気防止剤が開示されている。米国特許第5034480号及び同第5034481号の両明細書には、超高分子量エチレンポリマーを製造するための慣用のチーグラー・ナッタチタン触媒と静電気防止剤との反応生成物が開示されている。例えば、国際公開WO97/46599号には、立体規則性ポリマーを製造するための重合反応器中の希薄ゾーン中に供給される可溶性メタロセン触媒を用いた気相プロセスにおける可溶性メタロセン触媒の使用が開示されている。国際公開WO97/46599号にはまた、触媒供給流に汚れ付着防止剤又は静電気防止剤、例えばATMER 163(米国メリーランド州ボルチモア所在のICI Specialty Chemicals社)を含有させることができるということも開示されている。これらの文献の多くは静電気防止剤に言及しているが、しかし大抵の場合、静電気は決して完全には取り除かれない。むしろ、重合系中に現在存在しているものとは反対の電荷を発生することによって許容できるレベルまで低下される。この意味において、「静電気防止」剤は実は、反応器中の正味の静電荷を減らす相殺剤を発生する「プロスタティック(pro-static)」剤である。本明細書においては、これらの化合物を静電気調整剤と称する。
【0014】
上に挙げた文献の内のいくつかは、流動床反応器中に導入した時に流動床中の静電荷に作用し又はこの静電荷を所望の方向に動かすことができる静電気調整剤を使用することを開示している。用いる静電気調整剤に応じて、流動床中で得られる静電荷は負電荷、正電荷又は中性電荷であることができる。静電気調整剤には、例えば、MgO、ZnO、CuO、アルコール、酸素、窒素酸化物等の正電荷発生種、及びV25、SiO2、TiO2、Fe23、水及びケトン等の負電荷発生種が包含される。また、欧州特許公開第0229368号公報並びに米国特許第5283278号、同第4803251号及び同第4555370号の各明細書他にもその他の静電気調整剤が開示されている。米国特許出願公開第2008/027185号明細書に記載されたように、ステアリン酸アルミニウム、二ステアリン酸アルミニウム、エトキシル化アミン、OCTASTAT 2000、混合物としてのポリスルホンコポリマー、ポリマー状ポリアミン及び油溶性スルホン酸、並びにカルボキシル化金属塩とアミン含有化合物との混合物、例えばKEMAMINE及びATMERの商品名で販売されているものもまた、反応器中の静電気レベルを調整するために用いることができる。米国特許出願公開第2005−0148742号明細書にも、その他の静電気調整剤が開示されている。
【0015】
上記のものの内のいくつかを含めて、静電気調整剤は、触媒生産性の低下をもたらすことがある。生産性の低下は添加剤中の残留水分の結果として起こることがある。さらに、生産性の低下は重合触媒と静電気調整剤との相互作用、例えば静電気調整剤化合物中のヒドロキシル基との反応又は錯化の結果として起こることもある。用いる静電気調整剤及びシーティングを抑制するために必要とされる静電気調整剤の量に応じて、40%又はそれを超える触媒活性の低下が観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5436304号明細書
【特許文献2】米国特許第5405922号明細書
【特許文献3】米国特許第4803251号明細書
【特許文献4】米国特許第5391657号明細書
【特許文献5】米国特許第4532311号明細書
【特許文献6】米国特許第4855370号明細書
【特許文献7】米国特許第6548610号明細書
【特許文献8】米国特許第6008662号明細書
【特許文献9】米国特許第5648581号明細書
【特許文献10】国際公開WO99/61485号
【特許文献11】国際公開WO2005/068507号
【特許文献12】欧州特許公開第0811638A号公報
【特許文献13】欧州特許公開第1106629A号公報
【特許文献14】米国特許出願公開第2002/103072号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2008/027185号明細書
【特許文献16】米国特許第5283278号明細書
【特許文献17】米国特許第5332706号明細書
【特許文献18】米国特許第5473028号明細書
【特許文献19】米国特許第5427991号明細書
【特許文献20】米国特許第5643847号明細書
【特許文献21】米国特許第5492975号明細書
【特許文献22】米国特許第5661095号明細書
【特許文献23】国際公開WO97/06186号
【特許文献24】国際公開WO97/15602号
【特許文献25】国際公開WO97/27224号
【特許文献26】国際公開WO96/08520号
【特許文献27】国際公開WO97/14721号
【特許文献28】米国特許第5627243号明細書
【特許文献29】米国特許第5461123号明細書
【特許文献30】米国特許第5066736号明細書
【特許文献31】米国特許第5610244号明細書
【特許文献32】米国特許第5126414号明細書
【特許文献33】欧州特許公開第0549252A1号公報
【特許文献34】欧州特許公開第0453116号公報
【特許文献35】米国特許第4012574号明細書
【特許文献36】国際公開WO96/11961号
【特許文献37】米国特許第5034480号明細書
【特許文献38】米国特許第5034481号明細書
【特許文献39】国際公開WO97/46599号
【特許文献40】欧州特許公開第0229368号公報
【特許文献41】米国特許第4555370号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2008/027185号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2005−0148742号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、流動床反応器中の静電気レベルを調整するため、従ってシーティングを制御するために有用な添加剤、特にメタロセン触媒系と共に用いるのに有用な添加剤についての要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの局面において、本明細書に開示される具現化物は、重合反応器中で少なくとも1種のオレフィンを重合させてオレフィン系ポリマー(即ちオレフィンを主体とするポリマー)を生成させること;及びこの重合反応器に少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を供給することを含み、前記エチレンイミン添加剤がポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含む、重合方法に関する。
【0019】
別の局面において、本明細書に開示される具現化物は、気相反応器中でメタロセン触媒、活性剤及び担体を用いてエチレンと1種以上のα−オレフィンとを共重合させる方法であって、メタロセン触媒、活性剤及び担体の存在下でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン又は1−オクテンの内の1種以上とを一緒にすること;少なくとも1つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも1つの上方床(upper bed)静電プローブ、少なくとも1つの環状ディスク(annular disk)静電プローブ又は少なくとも1つの分配板(distributor plate)静電プローブによって前記反応器の静電荷を監視すること;上記の一緒にすることによって製造されるポリマーの重量を基準として約0.1〜約50ppmの範囲でポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含む少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を前記反応器中に存在させることによって前記静電荷を所望レベルに保つこと:を含む、前記共重合方法に関する。
【0020】
別の局面において、本明細書に開示される具現化物は、流動床重合反応器システムの少なくとも1つの内側表面を処理するための方法であって、床の壁、分配板及び気体リサイクルラインの内の少なくとも1つにポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含むエチレンイミン添加剤を接触させてその上にエチレンイミン添加剤を含むコーティングを形成させること;該コーティングを含む流動床重合反応器システム中で重合反応を実施すること:を含む前記処理方法に関する。
【0021】
別の局面において、本明細書に開示される具現化物は、重合反応器中で用いるための連続性添加剤を選別する(screening)ための方法であって、少なくとも1種の連続性添加剤と重合触媒系とを一緒にすること;及びこの一緒にしたことの結果として起こる発熱を測定すること:を含む、前記方法に関する。
別の局面において、本明細書に開示される具現化物は、少なくとも1種の重合触媒;及びポリエチレンイミン又はエチレンイミンコポリマーを含む触媒系に関する。
【0022】
本発明の化合物、成分、組成物及び/又は方法が開示されて記載される前には、特段の記載がない限り、本発明は特定の化合物、成分、組成物、反応成分、反応条件、リガンド、メタロセン構造等に限定されるものではなく、特段の記載がない限り変更することができるということを理解されたい。また、本明細書において用いられる用語は、特定実施形態を説明するためだけのものであり、限定的な意図を持つものではないということも、理解すべきである。
【0023】
また、本明細書及び添付した特許請求の範囲において用いた場合の単数表現は、特段の記載がない限り複数物を包含するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示される具現化物は、概括的には、エチレン系ポリマー(即ちエチレンを主体とするポリマー)及びプロピレン系ポリマー(即ちプロピレンを主体とするポリマー)の製造のためのものような重合プロセスにおいてエチレンイミン添加剤を使用することに関する。より特定的には、本明細書に開示される具現化物は、エチレン系ポリマー又はプロピレン系ポリマーの製造の際の重合反応器中の静電気レベルを調整するためにポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含むエチレンイミン添加剤を使用することに関する。かかるエチレンイミン添加剤は、例えば重合がメタロセン触媒によって触媒される場合に、有用であることができる。このエチレンイミン添加剤は、反応器中の静電気レベルを調整して、過剰な静電気レベルの結果として起こるシーティング、ドローリング及びその他の不連続性事象を防ぎ、減らし又は一変(逆転)させるために、重合反応器に加えることができる。
【0025】
エチレンイミン添加剤
本明細書に開示される具現化物において有用なエチレンイミン添加剤には、次の一般式を有するポリエチレンイミンが包含され得る。
−(CH2−CH2−NH)n
ここで、nは約10〜約10000であることができる。このポリエチレンイミンは直鎖状、分岐鎖状又は多分岐鎖状(即ち樹木状(dendritic)若しくは樹枝状(arborescent)ポリマー構造を形成するもの)であることができる。これらは、エチレンイミンのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物であることができる(以下、ポリエチレンイミンと称する)。このポリエチレンイミンとして化学式−[CH2CH2NH]−で表される線上ポリマーを用いることができるが、第1級分岐を持つもの、第2級分岐を持つもの及び第3級分岐を持つものを用いることもできる。商品として入手できるポリエチレンイミンは、エチレンイミンポリマーの分岐を有する化合物であることができる。
【0026】
好適なポリエチレンイミンは、BASF社よりLupasolの商品名で入手できるものである。これらの化合物は、広範囲の分子量及び製品活性として調製することができる。本発明において用いるのに適したBASF社より販売されている商品としてのポリエチレンイミンの例には、Lupasol FG及びLupasol WFがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
本明細書に開示されるポリエチレンイミンは、約500000ダルトンまでの分子量を有することができる。このポリエチレンイミンは、ある実施形態においては約50000ダルトン未満;別の実施形態においては約25000ダルトン未満、別の実施形態においては約10000ダルトン;別の実施形態においては5000ダルトン未満;別の実施形態においては約2500ダルトン未満;そしてさらに別の実施形態においては約1500ダルトン未満:の数平均分子量を有することができる。本明細書に開示される具現化物において有用なポリエチレンイミンは、ある実施形態においては約250〜約1500ダルトンの範囲;さらに別の実施形態においては約5000約1000ダルトンの範囲の数平均分子量を有することができる。かかるポリエチレンイミンはまた、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃において測定して、ある実施形態においては約100〜約200000cPの範囲、別の実施形態においては約2000〜約200000cPの範囲;別の実施形態においては約2000〜約10000cPの範囲の粘度をも有することができる。
【0028】
本明細書に開示されるポリエチレンイミンは、10℃未満、又は5℃未満、又は0℃未満、又は2℃未満の流動点を有することができる。このポリエチレンイミンは、ある実施形態においては−50℃〜10℃の範囲、又は−40℃〜5℃の範囲、又は−30℃〜0℃の範囲の流動点を有する。このポリエチレンイミンは、ある実施形態においては−15℃〜5℃、又は−10℃〜0℃、又は−7℃〜−1℃の範囲の流動点を有することができ、別の実施形態においてはこの流動点は−40℃〜0℃、又は−30℃〜−5℃、又は−20℃〜−10℃の範囲であることができる。この流動点は、ASTM法D97によって測定することができる。
【0029】
本明細書に開示されるポリエチレンイミンは、0.90〜1.20g/cm3、又は1.00〜1.15g/cm3、又は1.02〜1.12g/cm3の範囲の20℃における密度を有することができる。
【0030】
ポリエチレンイミンは、重合反応器に供給された時に、多機能性添加剤であることが見出されている。構成ブロック当たりにアミン窒素1個及び炭素基2個を含むというポリエチレンイミンの構造のせいで、本明細書に開示される具現化物に従うエチレンイミン添加剤は、分子当たりの高い密度のカチオン電荷を有することができる。従って、本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤は、静電気調整剤と同様に機能することができる。
【0031】
電荷特徴に加えて、ポリエチレンイミンは、金属等の様々な表面に付着することが見出されている。従って、重合反応器に添加した時に、本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤は、反応器壁及び反応器の他の部分、例えば供給ラインやリサイクルラインの表面及び反応器中のその他の露出面をコーティングする薄いフィルムを形成することができる。かかるコーティングは、当該表面上のポリマーのシーティングを防ぐことができ、ある実施形態においては、前に起こったものであることができる(起こることがあった)シーティングを一変させることができる。
【0032】
本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤はまた、様々な酸素化物(oxygenates)と反応性であることもわかった。従って、該ポリエチレンイミン添加剤は、活性触媒部位の毒となり得る化合物に対する掃去剤(スカベンジャー)としての働きを追加的にすることができる。従って、触媒毒となり得るヒドロキシル基を有する伝統的な静電気調整剤とは対照的に、本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤は、静電気調整及び反応器コーティングの働きに加えて、例えば触媒毒を掃去することによって触媒活性を高めることができる。
【0033】
前記ポリエチレンイミン添加剤は、溶液として又はスラリーとして重合反応器に供給することができ、効果的な輸送媒体を提供する。例えば、ポリエチレンイミン添加剤は、最初に鉱油と混合し又は一緒にして、重合反応器に供給することができるスラリーを形成させることができる。ポリエチレンイミンは脂肪族化合物中に不溶性であり、鉱油と混合された時にポリエチレンイミンの微細分散懸濁液を形成する。驚くべきことに、この分散液は形成された時に非常に安定であり、一度形成されたら、撹拌される限り、はっきりわかる程度まで鉱油から沈降するのに時間がかかる。別の実施形態において、ポリエチレンイミン添加剤は、反応器に供給する前にトルエンやキシレン等のような芳香族炭化水素溶媒と混合し又は一緒にすることができる。前記ポリエチレンイミンはまた、追加の混合成分なしで、その純粋な又は生の形で反応器に加えることもできる。
【0034】
ある実施形態においては、前記ポリエチレンイミン添加剤及び重合触媒を重合反応器に供給する前にこれらを一緒にして混合することができる。別の実施形態においては、重合触媒及びポリエチレンイミン添加剤を別々に重合反応器に供給することができる。一緒にした供給物として反応器に供給する時、このような触媒/ポリエチレンイミン添加剤組合せ物又は混合物は、供給容器中で形成させることもでき、反応器に輸送する際に供給ライン内で混合することもできる。他の連続性添加剤及び静電気調整剤と比較して、ポリエチレンイミンは触媒と混合した際の発熱量が非常に低いことがわかった。これらの低い発熱量は、かかる添加剤が触媒生産性に対して有する影響の指標となることができ、発熱量が低いポリエチレンイミンの使用は、より高い発熱量をもたらす他の連続性添加剤ほど有意には触媒生産性に影響を及ぼさない。従って、本明細書に開示される具現化物は、連続性添加剤と重合触媒系とを混合し又は一緒にする際に発生する熱を測定することにより、潜在的連続性添加剤を選別する方法を提供することができる。
【0035】
反応器システムに加えられるポリエチレンイミンの量は、用いる触媒系、並びに反応器プレコンディショニング(静電気蓄積を調整するためのコーティング等)及び当業者に周知の他のファクターに依存し得る。ある実施形態においては、ポリマー製造速度を基準として0.01〜200ppmwの範囲の量でポリエチレンイミン添加剤を反応器に添加することができる。別の実施形態においては0.02〜100ppmwの範囲;別の実施形態においては0.05〜50ppmwの範囲;そしてさらに別の実施形態においては1〜40ppmwの範囲の量で、ポリエチレンイミン添加剤を反応器に添加することができる。別の実施形態においては、ポリマー製造速度を基準として2ppmw又はそれ以上の量でポリエチレンイミン添加剤を反応器に添加することができる。ポリマー製造重量を基準としたポリエチレンイミン添加剤についての他の好適な範囲は、0.01、0.02、0.05、0.1、0.5、1、2,3、4、5、10、12、15又はそれ以上の下限と200、150、100、75、50、40、30、25、20又はそれ未満の上限とを含み、この範囲は上記の任意の下限と任意の上限との組合せから成る。
【0036】
ある実施形態においては、ポリエチレンイミン添加剤は、反応器内で重合反応を実施する間又は前に据え付けられる反応器コーティングとして用いることもでき、該反応器コーティング中に用いることもできる。反応器コーティング中に又はポリマー製造の際に連続性添加剤を使用するための様々な方法が、例えば国際公開WO2008/108913号、国際公開WO2008/108931号、国際公開WO2004/029098号、米国特許第6335402号及び同第4532311号並びに米国特許出願公開第2002/026018号の各明細書に記載されている。例えば、重合反応器の床壁、分配板及び気体リサイクルラインの内の少なくとも1つをポリエチレンイミン添加剤と接触させてそれらの上にコーティングを形成させることができる。反応器内で重合反応を実施する前にポリエチレンイミンを含むコーティングを形成させることにより、その後の重合反応の間に反応器システム中でシートが形成するのを減らし又は防止することができる。さらに、かかるコーティングは、添加された連続性添加剤又は静電気調整剤の不在下でも反応器内で有意にシートが形成することなく重合反応を実施することを可能にするのに充分であり得る。もちろん、所望ならばコーティングされた反応器に追加の連続性添加剤及び静電気調整剤を供給することもできる。本明細書において用いた場合、「添加された連続性添加剤又は静電気調整剤の不在下」とは、(連続性添加剤又は静電気調整剤としての働きをすることができるポリエチレンイミン以外の)追加の連続性添加剤又は静電気調整剤を反応器に意図的に添加していないこと、及び存在していてもポリマー製造速度を基準として0.02ppmw未満、又は0.01ppmw、又は0.005ppmw未満しか存在しないことを意味する。
【0037】
別の実施形態において、本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤は、流動床中の粒子及び他の成分と相互作用して、触媒とポリマー粒子との摩擦的相互作用に関連する静電荷を減らし又は中和し、反応器中に存在し又は反応器中で生成する様々な電荷含有化合物と反応し又は錯化し、酸素化物及び他の触媒毒と反応し又は錯化することができる。
【0038】
追加の連続性添加剤
上記のポリエチレンイミン添加剤に加えて、反応器中の静電気レベルの調整を補助するための1種以上の追加の連続性添加剤を追加的に用いることが望ましいこともある。本明細書において用いた時の「追加の連続性添加剤」には、当技術分野において「静電気調整剤」と通常称される化学組成物も包含される。上記のポリエチレンイミン添加剤を使用したことの結果として得ることができる反応器システム及び触媒の高められた性能のおかげで、この追加の連続性添加剤は、追加の連続性添加剤を単独で用いる場合と比較して低い重合反応器中の濃度で用いることができる。従って、追加の連続性添加剤が触媒の生産性に対して有する影響は、本明細書に開示される具現化物に従う連続性添加剤と組み合わせて用いた時には、大したものではないことができる。
【0039】
本明細書において用いた場合、静電気調整剤は、流動床反応器中に導入された時に流動床の静電荷に影響を及ぼし又は(負の方向に、正の方向に若しくは0に)動かすことができる化学組成物である。用いられる特定静電気調整剤は静電荷の性状に依存することができ、静電気調整剤の選択は導入されるポリマー及び用いられる触媒に応じて変化し得る。例えば、静電気調整剤の使用は欧州特許公開第0229368号公報及び米国特許第5283278号明細書に開示されている。
【0040】
例えば、静電荷が負である場合には、正電荷を発生する化合物のような静電気調整剤を用いることができる。正電荷を発生する化合物には、例えばMgO、ZnO、Al23及びCuOが包含される。さらに、負の静電荷を調整するためにアルコール、酸素及び窒素酸化物を用いることもできる。米国特許第4803251号及び同第4555370号の両明細書を参照されたい。
【0041】
正の静電荷については、V25、SiO2、TiO2及びFe23のような負電荷を発生する無機化合物を用いることができる。さらに、正電荷を減らすために水又は7個までの炭素原子を有するケトンを用いることができる。
【0042】
ある実施形態において、循環式流動床反応器中でメタロセン触媒のような触媒を用いる場合には、ステアリン酸アルミニウムのような追加の連続性添加剤を用いることもできる。用いられる追加の連続性添加剤は、生産性に悪影響を及ぼすことなく流動床中で静電荷を受け取る能力について、選択することができる。また、好適な追加の連続性添加剤には、ジステアリン酸アルミニウム、エトキシル化アミン及びOCTASTATの商品名でInnospec Inc.社より提供されるもののような静電気防止組成物が包含され得る。OCTASTAT 2000は例えばポリスルホンコポリマー、ポリマー状ポリアミン及び油溶性スルホン酸の混合物である。
【0043】
前記の追加の連続性添加剤、並びに例えばカルボン酸金属塩の見出しで挙げられた国際公開WO01/44322号に記載されたもの(静電気防止剤として挙げられた化合物及び組成物を含む)を、単独で又は組合せとして、追加の連続性添加剤として用いることができる。例えば、カルボン酸金属塩とアミン含有調整剤とを(例えば、カルボン酸金属塩とKEMAMINE(Crompton Corporation社から入手可能)又はATMER(ICI Americas Inc.社から入手可能)類の製品とを)組み合わせることができる。
【0044】
本明細書に開示される具現化物において有用なその他の追加の連続性添加剤は、当業者においてよく知られている。どの追加の連続性添加剤を用いるかに拘わらず、反応器中に毒が導入されるのを防止するために適切な追加の連続性添加剤を選択するように注意を払うべきである。さらに、選択される実施形態において、静電荷を所望の範囲内にするのに必要最少量の追加の連続性添加剤を用いるべきである。
【0045】
ある実施形態においては、上に挙げた追加の連続性添加剤の内の2種若しくはそれ以上の組合せ、又は追加の連続性添加剤と本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤との組合せとして、追加の連続性添加剤を反応器に加えることができる。別の実施形態においては、追加の連続性添加剤を、溶液若しくはスラリーの形で反応器に加えることができ、個別の供給流として反応器に加えることができ、又は反応器に加える前に別の供給物と一緒にすることもできる。例えば、一緒にされた触媒−静電気調整剤の混合物を反応器に供給する前に、追加の連続性添加剤を触媒又は触媒スラリーと一緒にすることができる。
【0046】
ある実施形態においては、追加の連続性添加剤を反応器に0.05〜200ppmw、又は2〜100ppm、又は2〜50ppmwの範囲の量で加えることができる。別の実施形態においては、追加の連続性添加剤を反応器にポリマー製造速度を基準として2ppmwまたそれ以上の量で加えることができる。
【0047】
重合プロセス
本明細書に開示されるポリオレフィンポリマーを製造するための実施形態は、任意の懸濁、溶液、スラリー又は気相プロセスを含めてオレフィン重合のための任意の好適な方法を用いることができ、しかも既知の装置及び反応条件を用いることができ、特定タイプの重合システムに限定されない。一般的にオレフィン重合温度は、大気圧、大気圧より低い圧力又は大気圧より高い圧力において、約0〜約300℃の範囲であることができる。特に、スラリー又は溶液重合システムは、大気圧より低い圧力又は大気圧より高い圧力及び約40〜約300℃の範囲の温度を採用することができる。
【0048】
ある実施形態においては、米国特許第3324095号明細書に記載されたもののような液相重合システムを用いることができる。液相重合システムは一般的に、オレフィンモノマー及び触媒組成物が添加される反応器を含む。この反応器は、ポリオレフィン生成物を溶解又は懸濁させることができる液状反応媒体を含む。この液状反応媒体は、採用する重合条件下において非反応性の不活性液状炭化水素、多量の液状モノマー又はそれらの混合物を含むことができる。かかる不活性液状炭化水素は触媒組成物又は本方法によって得られるポリマーについての溶剤としての働きをすることができないことがあるが、通常は重合において用いられるモノマーについての溶剤としての働きをする。この目的のために好適な不活性液状炭化水素には、イソブタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン並びにそれらの混合物及び異性体が包含され得る。オレフィンモノマーと触媒組成物との間の反応性接触は、撹拌し続けることによって維持することができる。オレフィンポリマー生成物及び未反応オレフィンモノマーを含有する液状反応媒体は、反応器から連続的に取り出される。オレフィンポリマー生成物は分離され、未反応オレフィンモノマー及び液状反応媒体は典型的には反応器にリサイクルされて戻される。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態は、気相重合システムについて、0.07〜68.9バール(1〜1000psig)、ある実施形態においては3.45〜27.6バール(50〜400psig)、別の実施形態においては6.89〜24.1バール(100〜350psig)の範囲の大気圧超圧力で、30〜130℃の範囲、又は65〜110℃の範囲の温度、別の実施形態においては75〜120℃の範囲、又は別の実施形態においては80〜120℃の範囲の温度において、特に有用であることができる。ある実施形態においては、操作温度は112℃未満であることができる。実施形態においては、撹拌床又は流動床気相重合システムが有用であり得る。
【0050】
本明細書に開示されるポリオレフィンポリマーを製造するための実施形態はまた、流動床反応器を用いた気相重合プロセスを採用することもできる。このタイプの反応器及び該反応器の操作のための手段はよく知られており、例えば米国特許第3709853号、同第4003712号、同第4011382号、同第4302566号、同第4543399号、同第4882400号、同第5352749号及び同第5541270号の各明細書、欧州特許公開第0802202A号公報並びにベルギー国特許第839380号明細書に記載されている。これらの特許文献には、重合媒体が機械的に撹拌されるか又は気体状モノマー及び希釈剤の連続流によって流動化されるかのいずれかである気相重合法が開示されている。上記のように、静電荷レベルを測定及び調整するための方法及びやり方は、用いる反応器システムのタイプに依存し得る。
【0051】
企図されるその他の気相プロセスには、一連(シリーズ)又は多段(マルチステージ)重合プロセスが包含される。米国特許第5627242号、同第5665818号及び同第5677375号の各明細書、並びに欧州特許公開, and 欧州特許公開第0794200A号公報、欧州特許公開第0649992B1号公報、欧州特許公開第0802202A号公報及び欧州特許公開第634421B号公報を参照されたい。
【0052】
一般的に、本発明の重合プロセスは、流動床プロセスのような連続式気相プロセスであることができる。本発明の方法において用いるための流動床反応器は、典型的には反応ゾーン及びいわゆる減速ゾーン(解放ゾーン)を有する。反応ゾーンは、成長中のポリマー粒子、生成したポリマー粒子及び少量の触媒粒子の床を含み、この床は前記反応ゾーンに通される気体状モノマー及び重合熱を取り除くための希釈剤の連続流によって流動化される。随意に、再循環気体の一部を冷却及び圧縮して液体を形成させ、この液体によって、反応ゾーンに再び入れられる時の再循環気体流の熱除去能力を高めることもできる。好適な気体流量は、簡単な実験によって容易に決定することができる。再循環気体への気体状モノマーの補給は、粒状ポリマー生成物及びそれに関連するモノマーが反応器から取り出される速度に等しい速度で行い、反応器に通す気体の組成は反応ゾーン内で本質的に定常状態の気体組成を保つように調節する。反応ゾーンから出てくる気体は、減速ゾーンに通され、そこで同伴されてきた粒子が取り除かれる。より微細な同伴粒子及びごみは、サイクロン及び/又は微細フィルターで除去することができる。前記気体は、重合熱が取り除かれる熱交換器を通され、圧縮機中で圧縮され、次いで反応ゾーンに戻される。
【0053】
ここに記載される方法は、オレフィン(エチレンを含む)のホモポリマー、及び/又はエチレン及び少なくとも1種若しくはそれより多くのその他のオレフィン(群)を含むポリマー群をすくめたオレフィン群のコポリマー、ターポリマー等の製造に好適である。オレフィンは、α−オレフィンであることができる。オレフィンは例えば、1つの実施形態においては2〜16個の炭素原子を有することができる。別の実施形態においては、エチレンと、3〜12個の炭素原子又は4〜10個の炭素原子又は4〜8個の炭素原子を有するコモノマーとを用いることができる。
【0054】
ある実施形態においては、本発明の方法によってポリエチレンを調製することができる。かかるポリエチレンは、エチレンのホモポリマー及びエチレンと少なくとも1種のα−オレフィンとのインターポリマーを含むことができ、ここで、エチレン含有率は用いられる全モノマーの少なくとも約50重量%である。用いることができるオレフィンには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン等が包含される。また、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネンのようなポリエン並びに重合媒体中で現場で生成するオレフィンも、利用可能である。オレフィンが重合媒体中で現場で生成するものである場合、長鎖枝分かれを含有するポリオレフィンの生成が起こることがある。
【0055】
ここに記載される方法において有用なその他のモノマーには、エチレン性不飽和モノマー群、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン群、共役又は非共役ジエン群、ポリエン群、ビニルモノマー群及び環状オレフィン群が包含される。本発明において有用な比限定的モノマーには、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンが包含され得る。ここに記載される方法の別の実施形態においては、エチレン又はプロピレンを少なくとも2種の異なるコモノマー(随意にその一方はジエンであることができる)と重合させてターポリマーを生成させることができる。
【0056】
1つの実施形態において、コポリマー中に組み込まれるα−オレフィンの含有量は、合計30モル%以下、別の実施形態においては3〜20モル%であることができる。ここで用いた場合の用語「ポリエチレン」とは、一般的に上記の任意の又はすべてのエチレン含有ポリマーを指す。
【0057】
別の実施形態においては、ここに開示される方法によって、プロピレン系ポリマーを調製することができる。かかるプロピレン系ポリマーには、プロピレンのホモポリマー及びプロピレンと少なくとも1種のα−オレフィンとのインターポリマー(プロピレン含有率が用いられる全モノマーの少なくとも約50重量%であるもの)が包含され得る。用いることができるコモノマーには、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン等が包含され得る。1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネンのようなポリエン並びに重合媒体中で現場で生成するオレフィンも、利用可能である。オレフィンが重合媒体中で現場で生成するものである場合、長鎖枝分かれを含有するポリオレフィンの生成が起こることがある。1つの実施形態において、プロピレン系ポリマー中に組み込まれるα−オレフィンコモノマーの含有量は、合計49モル%以下、別の実施形態においては3〜35モル%であることができる。
【0058】
ポリオレフィンの最終特性を調整するために、オレフィン重合においてしばしば水素ガスが用いられる。水素の濃度(分圧)を高めることにより、生成するポリオレフィンのメルトフローインデックス(MFI)及び/又はメルトインデックス(MI)を高くすることができる。従って、MFI及びMIは水素濃度によって影響を受けることがある。重合における水素の量は、全重合性モノマー(例えばエチレン又はエチレンとヘキセン若しくはプロピレンとのブレンド)に対するモル比として表わすことができる。本発明の重合プロセスにおいて用いられる水素の量は、最終ポリオレフィン樹脂の所望のMFI又はMIを達成するのに必要な量である。例えば、ポリプロピレンのメルトフローインデックスは、ASTM法D−1238(230℃、2.16kg重量)に従って測定することができ;ポリエチレンについてのメルトインデックス(I2)は、ASTM法D−1238(190℃、2.16kg重量)に従って測定することができる。
【0059】
さらに、2個以上の反応器を直接で用いる段階式反応器を用いることができ、その内の1つの反応器は例えば高分子量成分を製造し、別の1つの反応器は低分子量成分を製造するものであることができる。本発明の1つの実施形態においては、段階式気相反応器を用いてポリオレフィンが製造される。係る工業的重合システムは、例えば2 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 366-378(John Scheirs及びW. Kaminsky著、John Wiley and Sons社編集、2000年);米国特許第5665818号明細書、米国特許第5677375号明細書及び欧州特許公開第0794200A号公報に記載されている。
【0060】
1つの実施形態において、気相又は流動床重合プロセスにおける1個以上の反応器は、約0.7〜約70バール(約10〜1000psia)、又は約14〜約42バール(約200〜約600psia)の範囲の圧力を有することができる。1つの実施形態において、1個以上の反応器は、約10℃〜約150℃、又は約40℃〜約125℃の範囲の温度を有することができる。1つの実施形態において、反応器温度は、反応器内のポリマーの焼結温度を考慮に入れて実行可能な最も高い温度において運転することができる。1つの実施形態において、1個以上の反応器中の見掛け気体速度は、約0.2〜1.1m/秒(0.7〜3.5フィート/秒)、又は約0.3〜0.8m/秒(1.0〜2.7フィート/秒)の範囲であることができる。
【0061】
1つの実施形態において、重合プロセスは、次の工程:
(a)反応器にリサイクル流(エチレン及びα−オレフィンモノマーを含むもの)を導入し;
(b)担持された触媒系を導入し;
(c)反応器から前記リサイクル流を取り出し;
(d)前記リサイクル流を冷却し;
(e)重合したモノマーの代わりとなる追加のモノマーを反応器中に導入し;
(f)この反応器中にリサイクル流又はその一部を再導入し;そして
(g)この反応器からポリマー生成物を取り出す:
を含む連続気相プロセスである。
【0062】
ある実施形態においては、主重合の前に上記のメタロセン触媒系の存在下で1種以上のオレフィン、C2〜C30オレフィン又はα−オレフィン(エチレン若しくはプロピレン又はそれらの組合せ物を含む)を予重合させることができる。予重合は、気相、溶液相又はスラリー相中で(高圧を含む)、バッチ式で又は連続式で実施することができる。この予重合は、任意のオレフィンモノマー又は組合せを用い、且つ/又は水素のような任意の分子量調整剤の存在下で、行うことができる。予重合手順の例については、米国特許第4748221号、同第4789359号、同第4923833号、同第4921825号、同第5283278号及び同第5705578号の各明細書並びに欧州特許公開第0279863B号公報及び国際公開WO97/44371号を参照されたい。
【0063】
本発明は、特定タイプの流動床又は気相重合反応に限定されず、単一の反応器中で又は直列の2個若しくはそれ以上の反応器のような複数の反応器中で実施することができる。ある実施形態において、本発明は、上記のものと同様に、流動床重合(機械的に撹拌され且つ/又は気体流動化されていることができる)において又は気相を利用するものについて、実施することができる。よく知られた慣用の気相重合プロセスに加えて、本発明の範囲内で、「凝縮モード」運転(「誘発凝縮モード」及び「液体モノマー」運転を含む)の気相重合を用いることもできる。
【0064】
ある実施形態では、米国特許第4543399号、同第4588790号、同第4994534号、同第5352749号、同第5462999号及び同第6489408号の各明細書に開示されたもののような凝縮モード重合を用いることができる。凝縮モードプロセスは、高い冷却能力を達成し、従って高い反応器生産性を達成するために、用いることができる。米国特許第5436304号明細書に記載されたプロセスによるように、凝縮モード運転を誘発するために、重合プロセス自体の凝縮性流体に加えて、重合に対して不活性なその他の凝縮性流体を導入することもできる。
【0065】
また、別の実施形態では、米国特許第5453471号明細書、米国特許出願第08/510,375号の明細書、国際公開WO95/09826号(米国)及び国際公開WO95/09827号(米国)に開示されたもののような液体モノマー重合モードを用いることもできる。液体モノマーモードで運転する場合、液体はポリマー床全体に存在することができるが、但し、床中に存在する液体モノマーは、製造されているポリマーや不活性粒状材料(例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク及びそれらの混合物)のような床中に存在する固体粒状物質の上又は中に吸着され、自由な液体モノマーは実質的な量では存在しない。液体モノマーモードでの運転はまた、従来のポリオレフィンが製造される温度よりはるかに高い凝縮温度を有するモノマーを用いた気相反応器中でポリマーを製造することを可能にすることもできる。
【0066】
液体形状の触媒、固体触媒及び不均一又は担持触媒を含む任意のタイプの重合触媒を用いることができ、液体、スラリー(液体/固体混合物)又は固体(典型的には輸送された気体)として反応器に供給することができる。本明細書に開示される具現化物において有用な液体形状の触媒は、安定であり且つ吹付又は噴霧可能であるべきである。これらの触媒は、単独で用いることもでき、様々な組合せ又は混合物として用いることもできる。例えば、1つ以上の液体触媒、1種以上の固体触媒、1種以上の担持触媒、又は液体触媒及び/若しくは固体若しくは担持触媒の混合物、又は固体触媒と担持触媒との混合物を用いることができる。これらの触媒は、当技術分野においてよく知られた助触媒、活性剤及び/又は促進剤と一緒に用いることもできる。好適な触媒の例には、次のものが包含される:
A.チーグラー・ナッタ触媒(チタンをベースとする触媒を含む)、例えば米国特許第4376062号明細書又は同第4379758号明細書に記載されたもの。チーグラー・ナッタ触媒は当技術分野においてよく知られており、典型的にはオルガノアルミニウム助触媒と組み合わせて用いられるマグネシウム/チタン/電子供与体錯体である。
B.クロム系触媒、例えば米国特許第3709853号明細書、同第3709954号明細書又は同第4077904号明細書に記載されたもの。
C.バナジウム系触媒、例えば米国特許第5317036号明細書に記載されたようなオキシ塩化バナジウム及びバナジウムアセチルアセトネート。
D.メタロセン触媒、例えば米国特許第6933258号明細書又は同第6894131号明細書に記載されたもの。
E.カチオン形態の金属ハライド、例えばトリハロゲン化アルミニウム。
F.コバルト触媒及びその混合物、例えば米国特許第4472559号明細書又は同第4182814号明細書に記載されたもの。
G.ニッケル触媒及びその混合物、例えば米国特許第4155880号明細書又は同第4102817号明細書に記載されたもの。
H.希土類金属触媒、即ち周期表の原子番号57〜103の金属を含有するもの、例えばセリウム、ランタン、プラセオジム、ガドリニウム又はネオジムの化合物。かかる金属のカルボン酸塩、アルコラート、アセチルアセトネート、ハライド(三塩化ネオジムのエーテル及びアルコール錯体を含む)及びアリル誘導体が特に有用である。様々な実施形態において、ネオジム化合物、特にネオデカン酸ネオジム、オクタン酸ネオジム及びネオジムベルサテートが特に有用な希土類金属触媒である。希土類触媒は、例えばブタジエン又はイソプレンを重合させるために用いることができる。
I.上記の1種以上の触媒の任意の組合せ。
【0067】
記載される触媒化合物、活性剤及び/又は触媒系はまた、上記のように、1種以上の担体材料又はキャリヤーと組み合わせることもできる。例えば、ある実施形態においては、活性剤と担体とを接触させて担持された活性剤を形成させ、この活性剤を担体又はキャリヤー上に付着させ、それらと接触させ、それらと共に蒸発させ、それらに結合させ、それらの中に組み込み、或はそれらの中又は上に吸着させ又は吸収させる。
【0068】
担体材料には、多孔質担体材料のような無機又は有機担体材料が包含され得る。無機担体材料の非限定的な例には、無機酸化物及び無機塩化物が包含される。他のキャリヤーには、ポリスチレンのような樹脂状担体材料、ポリスチレンジビニルベンゼン、ポリオレフィン若しくはポリマー状化合物のような官能化若しくは架橋させた有機担体、又は他の任意の有期若しくは無期担体材料等、又はそれらの混合物が包含される。
【0069】
担体材料には、第2、3、4、5、13又は14族金属酸化物、例えばシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ及びそれらの混合物を含む無機酸化物が包含され得る。他の有用な担体には、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム、モンモリロナイト、また、これらの担体材料の組合せ物、例えばシリカ−クロム、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等を用いることもできる。追加の担体材料には、欧州特許公開第0767184号公報に記載された多孔質アクリルポリマーが包含され得る。その他の担体材料には、国際公開WO99/47598号に記載されたようなナノ複合材料、国際公開WO99/48605号に記載されたようなエーロゲル、米国特許第5972510号明細書に記載されたようなスフェルライト、及び国際公開WO99/50311号に記載されたようなポリマービーズが包含される。
【0070】
無機酸化物のような担体材料は、約10〜約700m2/gの範囲の表面積、約0.1〜約4cc/gの範囲の細孔容積及び約0.1〜約1000μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。別の実施形態において、担体の表面積は約50〜約500m2/gの範囲であることができ、細孔容積は約0.5〜約3.5cc/g、そして平均粒子寸法は約1〜約500μmである。さらに別の実施形態において、担体の表面積は約100〜約1000m2/gの範囲であり、細孔容積は約0.8〜約5.0cc/g、平均粒子寸法は約1〜約100μm、又は約1〜約60μmである。担体材料の平均孔寸法は、10〜1000Å、又は約50〜約500Å、又は約75〜約450Åの範囲であることができる。
【0071】
担持された活性剤を製造するため又は活性剤と担体材料とを一緒にするための当技術分野において周知の様々な方法が存在する。ある実施形態において、担体材料は、触媒化合物、活性剤及び/又は触媒系と一緒にする前に、化学的に処理され且つ/又は脱水される。ある類の実施形態において、担体材料は、様々な脱水レベルを有することができ、例えば約100℃〜約1000℃の範囲の温度において担体材料を乾燥させることによって達成できる。
【0072】
ある実施形態においては、脱水されたシリカをオルガノアルミニウム 又はアルモキサン化合物と接触させることができる。特にオルガノアルミニウム化合物を用いる実施形態においては、例えばトリメチルアルミニウム及び水の反応の結果として担体材料中でその場で活性剤を生成させる。
【0073】
さらに別の実施形態においては、ルイス塩基含有担体基材をルイス酸性活性剤と反応させて担体結合ルイス酸化合物を生成させる。シリカのルイス塩基ヒドロキシル基は、この担体への結合方法を行う場合の金属/メタロイド酸化物の例である。これらの実施形態は、例えば米国特許第6147173号明細書に記載されている。
【0074】
活性剤担持の別の実施形態は、米国特許第5427991号明細書に記載されており、トリスペルフルオロフェニルホウ素から誘導される担持された非配位アニオンが記載されている。米国特許第5643847号明細書には、第13族ルイス酸化合物とシリカのような金属酸化物との反応が論じられ、トリスペルフルオロフェニルホウ素とシラノール基とを反応させて遷移金属オルガノ金属触媒化合物をプロトン化させることができる結合したアニオンをもたらし、結合したアニオンによってカウンターバランスされた(counter-balanced)触媒活性カチオンを生成させるものが例示されている。米国特許第5288677号明細書には、カルボカチオン重合に適した固定化された第IIIA族ルイス酸触媒が記載されている。そして、James C. W. Chien, Jour. Poly. Sci.: Pt A: Poly. Chem, Vol. 29, 1603-1607 (1991)には、シリカ及びメタロセンと反応させたメチルアルモキサン(MAO)のオレフィン重合有用性が記載され、シリカの表面ヒドロキシル基中の酸素原子を介してシリカにアルミニウム原子を共有結合させることが記載されている。
【0075】
ある実施形態においては、撹拌されて温度及び圧力を制御された容器中で、活性剤及び好適な溶剤の溶液を作り、次いで0℃〜100℃の温度において担体材料を加え、担体と活性剤溶液とを接触させ、次いで熱と圧力との組合せを用いて溶剤を除去して自由流動性粉体を作ることによって、担持された活性剤を形成させる。温度は40〜120℃の範囲であることができ、圧力は5psia〜20psia(34.5〜138kPa)の範囲であることができる。また、溶剤除去の補助として不活性ガス掃去を用いることもできる。担体材料を適当な溶剤中でスラリー化し、次いで活性剤を加えるという交互の添加順序を用いることもできる。
【0076】
ある実施形態において、担体材料に対する活性剤の重量%は、約10重量%〜約70重量%の範囲、又は約15重量%〜約60重量%の範囲、又は約20重量%〜約50重量%の範囲、又は約20重量%〜約40重量%である。
【0077】
本明細書に開示される具現化物において有用な慣用の担持触媒系には、担体材料、活性剤及び触媒化合物を触媒供給装置外で様々な方法で様々な条件下で接触させることによって形成される担持触媒系が包含される。メタロセン触媒系を担持させる慣用の方法の例は、米国特許第4701432号、同第4808561号、同第4912075号、同第4925821号、同第4937217号、同第5008228号、同第5238892号、同第5240894号、同第5332706号、同第5346925号、同第5422325号、同第5466649号、同第5466766号、同第5468702号、同第5529965号、同第5554704号、同第5629253号、同第5639835号、同第5625015号、同第5643847号、同第5665665号、同第5698487号、同第5714424号、同第5723400号、同第5723402号、同第5731261号、同第5759940号、同第5767032号、同第5770664号、同第5846895号、同第5939348号、同第546872号及び同第6090740号の各明細書、並びに国際公開WO95/32995号、国際公開WO95/14044号、国際公開WO96/06187号及び国際公開WO97/02297号、並びに欧州特許公開第0685494B1号公報に記載されている。
【0078】
触媒成分、例えば触媒化合物、活性剤及び担体は、鉱油スラリーとして重合反応器中に供給することができる。オイル中の固体濃度は、約1〜約50重量%、又は約10〜約25重量%の範囲であることができる。
【0079】
ここで用いられる触媒化合物、活性剤及び/又は随意としての担体はまた、反応器中に注入する前に別々に又は一緒に噴霧乾燥することもできる。噴霧乾燥された触媒は、粉体若しくは固体として用いることもでき、また、希釈剤中に入れて反応器中にスラリー化することもできる。別の実施形態において、ここで用いられる触媒化合物及び活性剤は、担持されていないものである。
【0080】
本明細書に開示される様々な具現化物において有用な触媒には、慣用のチーグラー・ナッタ触媒及びクロム触媒が包含され得る。例示的なチーグラー・ナッタ触媒化合物は、ZIEGLER CATALYSTS 363-386(G. Fink, R. Mulhaupt and H. H. Brintzinger, eds., Springer-Verlag 1995)に; 又は欧州特許公開第103120号公報、欧州特許公開第102503号公報、欧州特許公開第0231102号公報、欧州特許公開第0703246号公報、再発行特許第33683号、米国特許第4302565号明細書、同第5518973号明細書、同第5525678号明細書、同第5288933号明細書、同第5290745号明細書、同第5093415号明細書及び同第6562905号に開示されている。かかる触媒の例には、第4、5若しくは6族遷移金属の酸化物、アルコキシド若しくはハライドを持つもの、又はチタン、ジルコニウム若しくはバナジウムのオキシド、アルコキシド及びハライド化合物を持つもの{随意にマグネシウム化合物、内部及び/若しくは外部電子供与体(アルコール、エーテル、シロキサン等)、アルミニウム若しくはホウ素アルキル及びアルキルハライド、並びに無機酸化物担体と組み合わされたもの}が包含される。
【0081】
1つ以上の実施形態において、慣用のタイプの遷移金属触媒を用いることができる。慣用のタイプの遷移金属触媒には、米国特許第4115639号、同第4077904号、同第4482687号、同第4564605号、同第4721763号、同第4879359号及び同第4960741号の各明細書の伝統的なチーグラー・ナッタ触媒が包含される。慣用のタイプの遷移金属触媒は、式MRxで表わすことができる。ここで、Mは第3〜17族からの金属、又は第4〜6族からの金属、又は第4族からの金属、又はチタンであり、Rはハロゲン又はヒドロカルビルオキシ基であり、xは金属Mの原子価である。Rの例には、アルコキシ、フェノキシ、ブロミド、クロリド及びフルオリドが包含される。好ましい慣用のタイプの遷移金属触媒化合物には、第3〜17族、又は第4〜12族、又は第4〜6族からの遷移金属化合物が包含される。
【0082】
マグネシウム/チタン電子供与性錯体をベースとする慣用のタイプの遷移金属触媒化合物は、例えば米国特許第4302565号及び同第4302566号の両明細書に記載されている。また、Mg/Ti/Cl/THFから誘導される触媒も企図され、これは当業者によく知られたものである。
【0083】
好適なクロム触媒には、二置換クロム酸塩、例えばCrO2(OR)2が包含される。ここで、Rはトリフェニルシラン又は第3級脂肪族多環式アルキルである。 このクロム触媒系にはさらに、CrO3、クロモセン、シリルクロメート、塩化クロミル(CrO2Cl2)、クロム2−エチルヘキサノエート、クロムアセチルアセトネート(Cr(AcAc)3)等が包含される。例示的なクロム触媒にはさらに、米国特許第3709853号、同第3709954号、同第3231550号、同第3242099号及び同第4077904号の各明細書に記載されたものがある。
【0084】
メタロセンは一般的に、例えば1 and 2 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS(John Scheirs及びW. Kaminsky編集、John Wiley and Sons社、2000年);G.G. Hlatky、181 COORDINATION CHEM. REV. 243-296(1999)に全体にわたって記載されており、特にポリエチレンの合成における使用については1 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 261-377(2000)に記載されている。メタロセン触媒化合物には、少なくとも1つの第3族〜第12族金属原子に結合した1つ又はそれより多くのCpリガンド(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド)と前記の少なくとも1つの金属原子に結合した1つ又はそれより多くの脱離基とを有する「ハーフサンドイッチ」化合物及び「フルサンドイッチ」化合物が包含され得る。以下においては、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」と称する。
【0085】
Cpリガンドは、1つ又はそれより多くの環又は環系であり、その少なくとも一部はシクロアルカジエニルリガンド及びヘテロ環式類似体のようなπ結合系を含む。この環又は環系は典型的には第13〜16族原子から選択される原子を含み、又はCpリガンドを構成する原子は炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、ゲルマニウム、ホウ素及びアルミニウム並びにそれらの組合せから選択することができ、ここで、環員の少なくとも50%は炭素が構成する。Cpリガンドはまた、置換及び非置換のシクロペンタジエニルリガンド及びシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンドから選択され、その非限定的な例には、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル及びその他の構造が包含される。かかるリガンドのさらなる非限定的な例には、シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンゾインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントルインデニル、3,4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタ[a]アセナフチレニル、7H−ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2−9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化物版(例えば4,5,6,7−テトラヒドロインデニル、又は「H4Ind」)、それらの置換体及びそれらのヘテロ環版が包含される。
【0086】
1つ以上の実施形態において、「混合」触媒系又は「マルチ触媒」系を用いることができる。混合触媒系は、少なくとも1種のメタロセン触媒成分及び少なくとも1種の非メタロセン成分を含む。混合触媒系は、二元金属触媒組成物又はマルチ触媒組成物として記載することができる。ここで用いた場合、用語「二元金属触媒組成物」及び「二元金属触媒」には、2種又はそれより多くの異なる触媒成分を含む任意の組成物、混合物又は系であって、それぞれの触媒成分が同一の又は異なる金属基を有ししかし少なくとも1種の異なる触媒成分(例えば異なるリガンド又は一般的触媒構造)を有するものが包含される。有用な二元金属触媒の例は、米国特許第6271325号、同第6300438号及び同第6417304号の各明細書に見出すことができる。用語「マルチ触媒組成物」及び「マルチ触媒」には、その金属に拘らず2種又はそれより多くの異なる触媒成分を含む任意の組成物、混合物又は系が包含される。従って、用語「二元金属触媒組成物」、「二元金属触媒」、「マルチ触媒組成物」及び「マルチ触媒」は、特に別途記載がなければ本明細書においてはまとめて「混合触媒系」と称する。任意の1種又はそれ以上の異なる触媒成分は、担持されていても担持されていなくてもよい。
【0087】
ここに開示される方法は、随意に不活性粒状材料を流動化助剤として用いることができる。これらの不活性粒状材料には、カーボンブラック、シリカ、タルク及びクレー並びに不活性ポリマー材料が包含され得る。カーボンブラックは例えば、約10〜約100nmの一次粒子寸法、約0.1〜約30ミクロンの凝集物平均寸法及び約30〜約1500m2/gの比表面積を有する。シリカは、約5〜約50nmの一次粒子寸法、約0.1〜約30ミクロンの凝集物平均寸法及び約50〜約500m2/gの比表面積を有する。クレー、タルク及びポリマー材料は、約0.01〜約10ミクロンの平均粒子寸法及び約3〜30m2/gの比表面積を有する。これらの不活性粒状材料は、最終製品の重量を基準として約0.3〜約80%、又は約5〜約50%の範囲の量で用いることができる。これらは、米国特許第4994534号及び同第5304588号の両明細書に開示されたような粘着性ポリマーの重合に特に有用である。
【0088】
ここに開示される重合プロセスにおいて、連鎖移動剤、促進剤、掃去剤及び他の添加剤を用いてもよく、これらはしばしば用いられる。連鎖移動剤はしばしば、ポリマーの分子量を調節するために用いられる。これらの化合物の例には、水素及び一般式Mxyの金属アルキルがある。ここで、Mは第3〜12族金属であり、xは前記金属の酸化状態であり、典型的には1、2、3、4、5又は6であり、各Rは独立してアルキル又はアリールであり、そしてyは0、1、2、3、4、5又は6である。ある実施形態においては、ジエチル亜鉛のような亜鉛アルキルが用いられる。典型的な促進剤には、CHCl3、CFCl3、CH3−CCl3、CF2Cl−CCl3及びトリクロロ酢酸エチルのようなハロゲン化炭化水素が包含され得る。かかる促進剤は当業者によく知られており、例えば米国特許第4988783号明細書に開示されている。また、触媒活性を高めるために、その他の有機金属化合物、例えば毒掃去剤を用いることもできる。これらの化合物の例には、アルミニウムアルキル、例えばトリイソブチルアルミニウムのような金属アルキルが包含される。流動床反応器中の静電気を中和するために、ある種の化合物を用いることができ、静電気防止剤よりむしろドライバーと称されるその他のものは、静電気を正から負へ又は負から正へ着実に動かすことができる。これらの添加剤の使用は当業者の技能内でよく知られている。これらの添加剤は、循環ループ、上昇管及び/又は下降管に、固体である場合には液体触媒とは別個に若しくは独立して、又は望まれる噴霧を妨げない限りは触媒の一部として、加えることができる。触媒溶液の一部であるためには、添加剤は液体又は触媒溶液中に溶解させることができるものであるべきである。
【0089】
本発明の方法の1つの実施形態において、気相プロセスは、メタロセンタイプの触媒系の存在下で、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム及びトリ−n−ヘキシルアルミニウム及びジエチルアルミニウムクロリド、ジブチル亜鉛等のような掃去剤の不在下又は実質的に存在しない状態で、運転することができる。「実質的に存在しない」とは、これらの化合物が故意に反応器又は反応器成分に添加されないこと及び存在する場合にも反応器中に1ppm未満しか存在しないことを意味する。
【0090】
ある実施形態においては、ここに記載される反応器内で主重合の前に、エチレン若しくはプロピレン又はそれらの組合せを含む1種以上のオレフィンを上記の触媒系の存在下で予重合させることができる。予重合は、気相、液相又はスラリー相中(高圧におけるものを含む)で、バッチ式で又は連続式で、実施することができる。この予重合は、任意のオレフィンモノマー若しくは組合せを用い、且つ/又は水素のような任意の分子量調節剤の存在下で、行うことができる。予重合手順の例については、米国特許第4748221号、同第4789359号、同第4923833号、同第4921825号、同第5283278号及び同第5705578号の各明細書並びに欧州特許公開第0279863B号公報及び国際公開WO97/44371号を参照されたい。
【0091】
ある類の実施形態において、ここに開示される反応器は、500ポンド/時間(227Kg/時間)超〜約300000ポンド/時間(136000Kg/時間)若しくはそれ以上、好ましくは1000ポンド/時間(455Kg/時間)超、より一層好ましくは10000ポンド/時間(4540Kg/時間)超、さらにより一層好ましくは25000ポンド/時間(11300Kg/時間)超、さらにより一層好ましくは35000ポンド/時間(15900Kg/時間)超、さらにより一層好ましくは50000ポンド/時間(22700Kg/時間)超、特に好ましくは65000ポンド/時間(29000Kg/時間)超〜150000ポンド/時間(68100Kg/時間)超のポリマーを製造することができる。
【0092】
ここに記載される方法によって製造されるポリマーは、様々な製品及び最終用途に用いることができる。製造されるポリマーは、線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、中庸密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレンコポリマー(ランダムコポリマー及びインパクト(耐衝撃性)コポリマーを含む)が包含され得る。
【0093】
ポリマー、典型的にはエチレン系ポリマーは、0.86g/cc〜0.97g/ccの範囲、好ましくは0.88g/cc〜0.965g/ccの範囲、より一層好ましくは0.900g/cc〜0.96g/ccの範囲の密度を有する。密度はASTM法D−1238に従って測定される。
【0094】
さらに別の実施形態においては、プロピレン系ポリマーが製造される。これらのポリマーには、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンが包含される。他のプロピレンポリマーには、プロピレンブロックコポリマー、ランダムコポリマー又はインパクトコポリマーが包含される。これらのタイプのプロピレンポリマーは、当技術分野においてよく知られている。例えば米国特許第4794096号、同第3248455号、同第4376851号、同第5036034号及び同第5459117号の各明細書を参照されたい。
【0095】
前記ポリマーは、他の任意のポリマーとブレンドし且つ/又は同時押出することができる。他のポリマーの非限定的な例には、慣用のチーグラー・ナッタ及び/又はバルキーリガンドメタロセン触媒反応によって製造される線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が包含される。
【0096】
ここに開示される方法によって製造されるポリマー及びそのブレンドは、フィルム、シート及び繊維押出及び同時押出並びに吹込成形、射出成形及び回転成形のような成形操作において有用である。フィルムには、食品接触及び食品非接触用途における収縮フィルム、食品包装用ラップ(cling film)、ストレッチ・フィルム、密封フィルム、延伸フィルム、スナック菓子包装、丈夫な袋(heavy duty bags)、買物袋(grocery sacks)、焼いた食品や冷凍食品の包装、医療用包装、工業用ライナー、膜等として有用な、同時押出やラミネーションによって成形されるインフレートフィルム又はキャストフィルムが包含される。
【0097】
凝縮モード運転
ここに開示される方法の実施形態はまた、米国特許第4543399号、同第4588790号、同第4994534号、同第5352749号、同第5462999号及び同第6489408号並びに米国特許出願公開第2005−0137364号の各明細書に開示されたものと同様の凝縮モードで運転することもできる。凝縮モードプロセスは、より高い冷却能力及び従ってより高い反応器生産性を達成するために用いることができる。凝縮モード運転を引き起こすために、モノマー及びコモノマーを含めた重合プロセス自体の凝縮性流体に加えて、米国特許第5436304号明細書に記載された方法によるように、重合に対して不活性な他の凝縮性流体を導入することができる。
【0098】
重合反応器中での運転の凝縮モードは、循環気体中の凝縮液が蒸発することによって追加の熱除去能力を提供することによって、製造速度又は空時収率を有意に高めることができる。誘発凝縮剤(「ICA」)を反応器中に加えることによって、凝縮モード運転の有用性を拡大するために、追加の凝縮がしばしば促進される。
【0099】
循環成分中の液体の凝縮量は、例えば約90重量%までに保つことができる。この凝縮度は、混合物の露点以下の必要な冷却度を達成するように熱交換からの出口温度を保つことによって、達成される。
【0100】
一般的に、反応器からの熱除去を高めるためには、気体流中の誘発凝縮剤の割合を高くするのが望ましい。ポリマー粒子内に、溶解したICA、コモノマー、他の炭化水素、及びさらにモノマーが、それらの種及びガス組成に応じた量で存在する。通常、循環流中のICAの量は、ポリマー中の溶解種の全体量に影響を及ぼす最も重要なファクターの1つである。所定レベルのICAにおいて、過剰量のICAがポリマー粒子中に溶解して、ポリマーを粘着性にする。従って、反応器中に導入することができるICAの量は、それ以上では循環する材料が粘着性になりすぎて排出したり所望の流動状態を維持したりできなくなる「粘着限界」より低く保たれなければならない。各ICAは各ポリマー生成物中で異なる溶解性を有し、一般的に、粘着限界に達する前に気体流中でより多くのICAが利用できるようにするために、製造されるポリマー中で比較的低い溶解性を有するICAを利用するのが望ましい。所定のポリマー生成物及び所定のICAについては、このような「粘着限界」は全く存在しないことがある。
【0101】
好適なICAは、低い標準沸点及び/又はポリマー中での低い溶解性を有する材料である。例えば、好適なICAは、ある実施形態において、25℃未満、又は20℃未満、又は15℃未満、又は10℃未満、又は0℃未満の標準沸点を有することができる。
【0102】
好適なICAには、反応器中でポリエチレン100kg当たりICA1.5kg未満の「典型溶解度」を有するものが包含される。ある実施形態において、好適なICAには、ポリエチレン100kg当たりICA1.25kg未満、又はポリエチレン100kg当たりICA1.0kg未満、又はポリエチレン100kg当たりICA0.8kg未満、又はポリエチレン100kg当たりICA0.5kg未満の典型溶解度を有するもの、又は別の実施形態においてはポリエチレン100kg当たりICA0.3kg未満の典型溶解度を有するものが包含される。「典型溶解度」は、メルトインデックス=1.0dg/分及び樹脂密度=918Kg/m3のポリエチレンについて、90℃の反応器温度及び25psi(1.72×105Pa)のICA分圧下で測定される。これらの実施形態において、メルトインデックスはASTM法D−1238に従って測定される。
【0103】
ある実施形態において、好適なICAには、シクロブタン、ネオペンタン、n−ブタン、イソブタン、シクロプロパン、プロパン及びそれらの混合物が包含される。本明細書に開示される具現化物の範囲内で、プロパン、ブタン、イソブタン又はイソペンタンのような比較的揮発性のある溶剤はイソペンタン、ヘキサン、ヘキセン又はヘプタンのような重質溶剤又は凝縮剤に対して適合することができ、溶剤の揮発性が循環ループ中でそれほどは低下しないということが認識される。逆に、樹脂の凝集を増やすため又は樹脂粒子寸法を調節するためには、重質の溶剤を用いることもできる。
【0104】
静電気の測定及び調整
同伴ゾーンは、反応器システム中の濃密相ゾーンの上又は下の任意の領域と定義される。泡立ち床(bubbling bed)を有する流動化容器は2つのゾーンを含み、濃密泡立ち相の上面がこの相を希薄又は分散相から隔てる。前記容器の濃密床の(上)面と(リサイクル流への)出口ガス流との間の部分は、「フリーボード」と称される。従って、同伴ゾーンは、フリーボード、循環(リサイクル)ガスシステム(配管及びコンプレッサー/冷却器を含む)及び分配板の頂部までの反応器の下部を含む。同伴ゾーン中のどこででも測定される静電活性はここでは「キャリーオーバー静電気」と称され、そのままで、慣用の静電プローブ又は流動床中のプローブによって測定される静電活性とは区別される。
【0105】
同伴ゾーン中のキャリーオーバー粒子上の「0又は0付近」レベル(ここで定義される通り)より上で測定される静電活性(キャリーオーバー又は同伴静電気)は、ポリマー反応システム中におけるシーティング、チャンキング又はその始まりに関連することがあり、1以上の「慣用の」静電プローブによって測定される静電活性より信頼性が高いシーティング又は不連続性事象の指標となり得る。さらに、同伴ゾーン中のキャリーオーバー粒子の静電活性の監視は、ポリエチレンイミン添加剤及び用いた場合の追加の連続性添加剤の量を劇的に調節することができる反応器パラメーター、及び不連続性事象を減らし又はなくすために得られる最適レベルを提供することができる。
【0106】
同伴ゾーン中の静電活性のレベルが反応進行中に大幅に増加した場合には、反応器システム中のポリエチレンイミン添加剤の量は、ここにさらに記載したようにそれに応じて調節することができる。
【0107】
静電プローブ
同伴ゾーンにおけるものとしてここに記載される静電プローブには、少なくとも1つのリサイクルラインプローブ、少なくとも1つの環状ディスクプローブ、少なくとも1つの分配板静電プローブ又は少なくとも1つの上方反応器静電プローブの内の1つ以上が包含され、この後者は,慣用のプローブ(群)の分配板上の反応器直径の1/4〜3/4の高さの外側又は上である。これらのプローブは、個々に又は上に挙げた各グループからの1つ以上の追加のプローブと共に、同伴静電気を測定するために用いることができる。静電プローブのタイプ及び配置は、例えば米国特許出願公開第2005−0148742号明細書に記載されたようなものであることができる。
【0108】
慣用の反応器プローブで測定される典型的な電流レベルは、±0.1〜10、又は±0.1〜8、又は±0.1〜6、又は±0.1〜4、又は±0.1〜2ナノアンペア/cm2の範囲である。ここで論じられるすべての電流測定について、これらの値は一般的に経時的な平均であり、また、これらは2乗平均平方根値(RMS)を表わすこともでき、その場合にはこれらはすべて正の値である。しかしながら、大抵の場合、メタロセン触媒を用いる反応器では、慣用の反応器プローブは、シーティング事象の最初又は中程で0又は0付近を記録するだろう。0又は0付近とは、慣用の静電気反応器プローブ並びに同伴ゾーン中のプローブについて、≦±0.5、又は≦±0.3、又は≦±0.1、又は≦±0.05、又は≦±0.03、又は≦±0.01、又は≦±0.001、又は0ナノアンペア/cm2であることが意図される。例えば、−0.4の測定値は「±0.5」「より小さい(以内)」であり、+0.4の測定値も同様である。電圧プローブを用いて静電気を測定した場合、典型的な測定電圧レベルは、±0.1〜15,000、又は±0.1〜10,000ボルトの範囲であることができる。本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤の使用は、≦±500、又は≦±200、又は≦±150、又は≦±100、又は≦±50、又は≦±25ボルトの測定電圧値をもたらすことができる。
【0109】
慣用の静電プローブは、0又は0付近の静電気又は電流(ここで規定される通りのもの)を記録するのに対して、同伴ゾーンの少なくとも1つの位置にある少なくとも1つの別の静電プローブは、慣用の静電プローブによって測定されたもの(これはメタロセン触媒については大抵の場合0又は0付近であることができる)より高い静電活性又は電流を記録することがある。この場合、慣用の静電プローブによって測定された電流と1つ以上の他のもの(慣用ではない静電プローブ)によって測定された電流との間の差が≧±0.1、又は≧±0.3、又は≧±0.5ナノアンペア/cm2、又はそれ以上である場合に、1つ以上の同伴ゾーンプローブで検出される静電荷を減らし又は取り除くための処置がとられる。このような処置は、本明細書に開示される具現化物に従う少なくとも1つのポリエチレンイミン添加剤の添加(又は本明細書に開示される具現化物に従う少なくとも1つのポリエチレンイミン添加剤の反応器中における存在の正味の増加)、又は触媒供給速度の低下、又は気体流量の低下又はそれらの組合せであることができる。これらの処置は、キャリーオーバー静電気及び反応器静電気を0又は0付近に保ち、減らし又は取り除くための手段を構成する。
【0110】
上で論じた1つ以上の静電プローブが0以上又は0以下(それぞれ「0又は0付近」以上又は以下と定義される)の静電活性を記録し始めたら、静電活性を0又は0付近のレベルに保ち又は戻すための処置(反応器連続性事象を防止し、減らし又はなくすことがここに示したもの)を取るべきである。意図される処置は、1種以上のポリエチレンイミン添加剤の添加を包含する。かかる添加は,反応器中にポリエチレンイミン添加剤がすでにある程度存在する場合にはその割合を増やす作用を有するものであることができる。
【0111】
反応器中のポリエチレンイミン添加剤(群)及び任意の追加の連続性添加剤又は静電気調整剤(用いる場合)の合計量は、一般的に250又は200又は150又は125又は100又は90又は80又は70又は60又は50又は40又は30又は20又は10ppm(製造されるポリマーの百万重量部に対する重量部)を超えないものとする。ポリエチレンイミン添加剤(群)及び任意の追加の連続性添加剤又は静電気調整剤(用いる場合)の合計量は、ポリエチレンイミン添加剤(群)及び任意の追加の連続性添加剤又は静電気調整剤(用いる場合)の合計量は、製造されるポリマーの重量を基準として0.01又は1又は3又は5又は7又は10又は12又は14又は15又は17又は20ppm超である(通常は単位時間当たりのポンド又はkgとして表わされる)。これらの任意の下限と上記の任意の上限とを組み合わせることができる。ポリエチレンイミン添加剤は、専用の供給ラインから反応器に直接加えることもでき、且つ/又は任意の手頃な供給流、例えばエチレン供給流、モノマー供給流、触媒供給ライン、又はリサイクルラインに加えることもできる。1種以上のポリエチレンイミン添加剤及び追加の連続性添加剤又は静電気調整剤を用いる場合、それぞれを別々の供給流として又は別々の供給流の組合せ若しくは混合物として反応器に加えることができる。ポリエチレンイミン添加剤を反応器に加えるやり方は重要ではなく、添加剤が流動床内によく分散し、それらの供給速度(又は濃度)が最小レベルのキャリーオーバー静電気をもたらす態様で調節されさえすればよい。
【0112】
すぐ上で論じた添加剤の合計量は、任意の供給源からのポリエチレンイミン添加剤、例えば触媒と一緒に加えられるもの、専用の連続性添加剤ラインに加えられるもの、任意のリサイクル材料中に含有されるもの又はそれらの組合せ、を含むことができる。1つの実施形態においては、ポリエチレンイミン添加剤の一部を、測定可能な静電活性の前に予防処置として反応器に加え、かかる場合、1つ以上の静電プローブが「0又は0付近」より高い静電活性を記録した時に、静電活性を記録した1個以上のプローブを0又は0付近に戻すためにポリエチレンイミン添加剤を増やす。
【0113】
また、反応器不連続性事象を防止し又はなくすのに充分な濃度の少なくとも1種のポリエチレンイミン添加剤が反応器中に導入されるように、触媒混合物中に少なくとも1種のポリエチレンイミン添加剤を導入すること、触媒混合物(少なくとも1種のポリエチレンイミン添加剤を含有するもの)を反応器システム中に注入すること、さらに又は別法として、触媒混合物とは独立した専用の添加剤供給ラインから反応器システム中に少なくとも1種のポリエチレンイミン添加剤を導入することも、本発明の実施形態の範囲内である。これらの供給スキームのいずれかを採用することもでき、両方とも採用することもできる。触媒/ポリエチレンイミン添加剤混合物中のポリエチレンイミン添加剤と別個の添加剤供給ラインから加えられるポリエチレンイミン添加剤とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0114】
別の実施形態において、本明細書に開示される具現化物に従うポリエチレンイミン添加剤は、不溶性成分又は反溶剤成分に加えることによって微細分散液滴の懸濁液を形成させることができる。これらの液滴は、10ミクロン又はそれ未満の範囲の非常に小さいものであり、非常に安定であり、撹拌によってこの状態を維持することができる。反応器に加えられた時に、液滴は高い表面積状態でよく分散し、容器の壁及びポリマー粒子をより効率よくコーティングすることができる。また、前記粒子はこの状態でより高度に荷電され、静電気駆動剤としてより効果的であると信じられる。
【0115】
反応器システムへのポリエチレンイミン添加剤の最適供給速度の決定は、ここに記載されるように0又は0付近のキャリーオーバー静電気の値によって証明される。例えば、反応器中のキャリーオーバー静電気読み取り値が安定化した後に、もしも追加(即ちより高い)レベルのポリエチレンイミン添加剤が添加されてもしも反応器の同伴ゾーン中の1種以上の静電プローブが大幅な静電気読み取り値の増大を示したら、これは最適連続性レベルを超えたことの定性的指標である。この場合、静電活性の安定化が再び達成されるまで又は静電活性が0付近に下がり若しくは0に戻るまで、ポリエチレンイミン添加剤のレベルを下げるべきである。かくして、最適濃度範囲に達するためにポリエチレンイミン添加剤の量を動的に調節するのが望ましく、本発明の実施形態の手法の内である。最適濃度とは、本明細書においては有効量を意図する。従って、少なくとも1種のポリエチレンイミン添加剤の有効量は、1つ以上の静電プローブで測定した時に静電荷を減らし、取り除き又は安定性を達成する量である。かくして、ここに記載されるように、添加されるポリエチレンイミン添加剤が多すぎると、再び静電荷が現れる。このような量のポリエチレンイミン添加剤は、有効量の外と定義される。
【実施例】
【0116】
以上、特定実施形態と関連づけて本発明を説明してきたが、上記の説明は本発明を例示するためのものであって、その範囲を限定するものではないということを理解されたい。当業者には、他の局面、利点及び変更は明らかであろう。
【0117】
従って、以下の実施例は、当業者に完全な開示及び説明を提供するためのものであり、発明者が発明と見なすものの範囲を限定するものではない。
【0118】
以下の実施例で用いた添加剤には、以下のものが含まれる:
・ジステアリン酸アルミニウム。
・ジステアリン酸アルミニウムとエトキシル化アミンタイプの化合物(Huntsman社(以前のCiba Specialty Chemicals社)から入手可能なIRGASTAT AS-990)との混合物:実施例を通じて連続性添加剤混合物又はCA混合物と称する。
・LUPASOL FG。BASF社から入手可能な低分子量(800ダルトン)エチレンイミンコポリマー。
・LUPASOL WF。BASF社から入手可能な中庸分子量(25000ダルトン)エチレンイミンコポリマー。
【0119】
以下の実施例で用いた触媒は、次の通りである:
・XCAT(商品名)EZ 100メタロセン触媒:米国テキサス州ヒューストン所在のUnivation Technologies LLC社から入手可能なメタロセン触媒。
・PRODIGY(商品名)BMC-200触媒:米国テキサス州ヒューストン所在のUnivation Technologies LLC社から入手可能な触媒。
・PRODIGY(商品名)BMC-300触媒:米国テキサス州ヒューストン所在のUnivation Technologies LLC社から入手可能な触媒。
【0120】
以下の実施例に記載する重合反応は、0.35mの内径及び2.3mの床高さの連続式パイロットスケール気相流動床反応器中で実施した。流動床はポリマー粒子から成るものだった。液状コモノマーと一緒にされた水素及びエチレンの気体供給流を反応器床の下でリサイクルガスライン中に導入した。コモノマーとしてはヘキセンを用いた。エチレン、水素及びコモノマーの個々の流量は、一定組成目標を維持するように調節した。エチレン濃度は、一定エチレン分圧を維持するように調節した。水素は、一定の水素対エチレンのモル比を維持するように調節した。すべての気体の濃度は、リサイクルガス流中で比較的一定の組成となるように、オンラインガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0121】
固体触媒XCAT EZ 100メタロセン触媒は、キャリヤーとして精製窒素を用いて流動床中に直接注入した。その速度は、一定製造速度を維持するように調節した。PRODIGY BMC-200及びPRODIGY BMC-300触媒の場合には、触媒を精製鉱油中のスラリーとして反応器中に直接注入し、スラリー触媒供給速度は、一定のポリマー製造速度を維持するように調節した。反応ゾーンに補充供給及びリサイクルガスを連続的に流すことによって、成長するポリマー粒子の反応する床を流動状態に保った。これを達成するために、0.6〜0.9m/秒の見掛け気体速度を用いた。反応器を2240kPaの全圧で運転した。望まれる生成物に応じて、反応器を85℃又は100℃の一定反応温度で運転した。
【0122】
粒状生成物の生成速度に等しい速度で床の一部を取り出すことによって、流動床を一定の高さに保った。生成物生成速度(ポリマー製造速度)は、15〜25kg/時間の範囲だった。一連の弁を経由して半連続的に生成物を定容量チャンバー中に取り出した。この生成物をパージして同伴された炭化水素を除去し、湿った窒素細流で処理して痕跡量の残留触媒を奪活した。
【0123】
例1
反応器性能に対するLUPASOL FGの効果を、連続性添加剤なしでの運転及びジステアリン酸アルミニウム用いた運転と比較して評価するために、上記の重合反応器中で試験を実施した。メタロセン触媒(XCAT EZ 100メタロセン触媒)を用いて次の反応条件:反応温度85℃、ヘキセン対エチレンモル比0.009及びH2濃度830ppm:で反応器を運転して、約1.4〜1.8のメルトインデックス及び0.925g/cm3の密度を有するフィルム製品を製造した。鉱油中の連続性添加剤スラリーをポリマー製造速度を基準とした速度で反応器に計量供給した。最初に、ジステアリン酸アルミニウムを連続性添加剤として用いた。ポリマー中の連続性添加剤濃度は、ポリマー製造速度を基準として平均して約17ppmwだった。次いで反応器を連続性添加剤を使用しない定常状態の運転に移行(遷移)させ、次いで連続性添加剤としてLUPASOL FGを用いた運転に移行させた。
【0124】
LUPASOL FGを用いた運転については、LUPASOL FGを鉱油中のスラリーにした(鉱油中にLUPASOL FG7重量%)。最初に、鉱油スラリー中のLUPASOL FGを製造速度を基準として3ppmwの濃度で反応器に供給した。静電気レベルのバンドが狭くなるのが観察され、次いで同伴静電気レベルが低下した。小さいスキン熱電対(skin thermocouple)偏位(excursions)を観察した後にLUPASOL FGのレベルが1.5ppmに低下した。試験の終わり(約4回の床ターンオーバー(BTO))まで反応器は円滑にラインアウト(lined out)した。
【0125】
驚くべきことに、下記の表1に示されたように、ジステアリン酸アルミニウムを用いた場合や連続性添加剤を用いない場合と比較して、LUPASOL FGを用いた場合には触媒生産性が高いことが観察された。LUPASOL FGについての平均粒子寸法(APS)や細粒レベルのはっきりした変化はなかった。
【表1】

【0126】
例2
トルエン中に希釈されたLUPASOL FG(2重量%)を溶液として反応器中に供給した場合を評価するために、試験を実施した。試験は、XCAT EZ 100メタロセン触媒を用いて実施した。最初に製造速度を基準として約20ppmwの供給速度でジステアリン酸アルミニウムを連続性添加剤として用いて、反応器をラインアウトさせた。次いで約4ppmwの低いレベルでのLUPASOL FGの供給のスイッチを入れ、徐々に50ppmwに増やした。
【0127】
表2に示したように、ジステアリン酸アルミニウムを用いた運転と比較して20%の触媒生産性増大が観察された。ジステアリン酸アルミニウムについての多少軽微な冷時バンディング(cold banding)と比較して、LUPASOL FGを用いた運転の際にはスキン熱電対活性は穏やかだった。より安定な流動化嵩密度信号も観察された。
【表2】

例3
【0128】
鉱油中でスラリーにしたLUPASOL FGをPRODIGY BMC-300触媒系について評価するために、試験を実施した。最初に連続性添加剤を供給せずに定常状態で次の反応条件:反応温度85℃、エチレン分圧220psia、ヘキセン対エチレンモル比0.0015及びH2対エチレンモル比0.0015:で反応器を運転して、35.8のFI及び0.957g/ccの密度を有する2モード吹込成形タイプの製品を製造した。次いで反応器にLUPASOL FGスラリーをポリマー製造速度を基準として1.9ppmwの速度で6時間供給して、反応器を移行(遷移)させた。試験の第2の部は、LUPASOL FGをもっと高いレベル、即ち14.2ppmwで用いて12時間実施した。両方の場合において、円滑な反応器の運転が達成され、静電気又はスキン熱電対活性に対する影響は無視できるほど小さかった。また、下記の表3に示したように、触媒生産性に対する影響も無視できるほど小さかった。
【表3】

【0129】
Zr XRFを用いて測定したPRODIGY BMC-200触媒生産性は、Zrを含有するものだけではなく、触媒中に存在する触媒種の合計量を斟酌して補正される。
【0130】
例4
鉱油中でスラリーにしたLUPASOL FGをPRODIGY BMC-200触媒系について評価するために、試験を実施した。この試験では、LUPASOL FGを鉱油中の2重量%混合物として反応器に供給した。連続性添加剤としてLUPASOL FGスラリーを供給しながら定常状態で次の反応条件:反応温度100℃、エチレン分圧220psia、ヘキセン対エチレンモル比0.0055及びH2対エチレンモル比0.002:で反応器を運転して、6〜7のFI及び0.949g/ccの密度を有する2モードタイプの製品を製造した。LUPASOL FGは、製造速度を基準として2ppmw及び10ppmwの名目上2つの濃度レベルで反応器に供給した。スキン熱電対活性は観察されず、上方静電プローブ及びキャリーオーバープローブ信号はベースライン(下記の例5に示すような添加剤なし)条件と同様だった。LUPASOL FGは、表4に示すように、試験したレベルにおいて触媒活性に対して無視できる程度の影響しか持たないようである。
【0131】
比較例5
連続性添加剤としてLUPASOL FG供給(例4)からジステアリン酸アルミニウムとエトキシル化アミンタイプの化合物(Huntsman社(以前のCiba Specialty Chemicals社)から入手可能なIRGASTAT AS-990)を含む連続性添加剤混合物(CA混合物)への直接移行を実施した。CA混合物同時供給は、製造速度を基準として36ppmwの名目濃度で確立された。反応条件は上記例4に記載したものと同様だった。反応器の拡大区画についてのスキン熱電対信号は、CA混合物供給開始後に多少の冷時バンディングを示した。床の下方に配置された他のスキン熱電対は、活性を示さなかった。CA混合物を用いた運転では、上方及び下方静電プローブが約−200Vまで負の方向に動き始めた。表4に示したように、CA混合物同時供給試験の間に触媒生産性が、質量収支を基準として約7700ポンド/ポンド及びZr XRFを基準として7800ポンド/ポンドに低下した。また、床静電気及び同伴静電気共に、LUPASOL FGと比較してCA混合物によって負の影響を受けた。
【表4】

例6
【0132】
鉱油中でスラリーにしたLUPASOL FGをPRODIGY BMC-200触媒系について評価するために、同様の上記のUNIPOL(商品名)PE反応器中で試験を実施し、連続性添加剤なしの運転及びジステアリン酸アルミニウムとエトキシル化アミンタイプの化合物(Huntsman社(以前のCiba Specialty Chemicals社)から入手可能なIRGASTAT AS-990)を用いた運転と比較した。この試験では、精製窒素をキャリヤーとして用いてPRODIGY BMC-200触媒(噴霧乾燥したもの)を乾燥触媒として反応器に供給した。乾燥触媒供給速度は、この試験において一定の製造速度を保つように調節した。
【0133】
連続性添加剤としてCA混合物(上記)を供給しながら定常状態で次の反応条件:反応温度85℃、エチレン分圧210psia、ヘキセン対エチレンモル比0.003及びH2対エチレンモル比0.0019:で反応器を最初に運転して、0.9〜1.5のFI及び0.944〜0.946g/ccの密度を有する2モードタイプの製品を製造した。CA供給速度は製造速度を基準として約26.6ppmwだった。この反応器を後に連続性添加剤なしで運転し、その後に連続性添加剤としてLUPASOL FGを用いた運転に移行させた。鉱油中のLUPASOL FGの供給は、製造速度を基準として3ppmwの速度で開始した。運転は、スキン熱電対活性のはっきりした変化なしで、円滑に続けられた。
【0134】
添加剤なしの場合やCA混合物を用いた場合と比較した触媒生産性に対する効果を表5に示す。LUPASOL FGは連続性添加剤なしと比較して触媒生産性に対して無視できる程度の効果を示すだけであることがわかった。LUPASOL FGについては平均粒子寸法のはっきりした変化はなかった。しかしながら、微粉レベルに関しては、添加剤なしについての約14%からLUPASOL FG同時供給についての約11.6%までの僅かな低下があった。
【表5】

【0135】
例7
もっと大きい寸法、即ち直径0.57m、床高さ3.8mの連続式パイロットプラント反応器中で、100〜150ポンド/時間の製造速度で、次の試験を実施した。
【0136】
上記の重合反応器中で、Lupasol FGを用いた運転及びジステアリン酸アルミニウムを用いた運転と比較した時のLUPASOL WFの反応器性能に対する効果を評価するために、試験を実施した。LUPASOL WFは、LUPASOL FGと同じ群の化合物(即ちポリエチレンイミン)であるが、はるかに高いMW及び粘度を有する。LUPASOL WFは約25000の平均MW及び約200000cPの粘度を有する。メタロセン触媒(XCAT EZ 100 メタロセン触媒)を用いて、次の反応条件:反応温度85℃、ヘキセン対エチレンモル比0.0045及びH2濃度826ppm、エチレン分圧191psia:で反応器を運転して、約1.0メルトインデックス及び0.921の密度を有するフィルム製品を製造した。イソヘキサン中の連続性添加剤溶液をポリマー製造速度を基準とした速度で反応器に計量供給した。最初にジステアリン酸アルミニウムを連続性添加剤として用いた。ポリマー中の連続性添加剤の濃度は、ポリマー製造速度を基準として平均して約5.6ppmwだった。次いで反応器を、連続性添加剤としてLUPASOL WFを用いた定常状態の運転に移行させた。
【0137】
LUPASOL WFを用いた運転については、最初にLUPASOL WFを鉱油中のマスターブレンドとして7%懸濁液として調製して、スラリーミックスタンクに加えることができる低粘度ブレンドを作った。これを次いでスラリーミックスタンク中に鉱油1362gと一緒に加えて、鉱油中の最終懸濁液(鉱油中1.4重量%LUPASOL WF)を作った。鉱油スラリー中のLUPASOL WF を製造速度を基準として1.5ppmwの濃度で反応器に供給した。静電気レベルのバンド幅が狭くなり、同伴静電気レベルが低下するのが観察された。また、スキン熱電対バンドも小さくなり、反応器の壁へのポリマーの付着が少ないことを示した。試験の終わり(約5回の床ターンオーバー(BTO))まで反応器は円滑ににラインアウト(lined out)した。
【0138】
下記の表6に示したように、ジステアリン酸アルミニウムを使用した場合と比較してLUPASOL WFを使用した場合には触媒生産性が26%高くなるのが観察された。LUPASOL WFについては粒状嵩密度、平均粒子寸法(APS)又は微粉レベルによって測定した時の粒子形態のはっきりした変化はなかった。
【表6】

例8
【0139】
例7におけるように同じ触媒及び反応器を用いて試験を実施した。しかし、Lupasol添加剤は用いなかった。反応器は、反応器の拡張区画及びドーム区画に置いたいくつかの熱電対で温度偏位が観察されるまで、同じ反応器条件において数時間うまく運転された。反応器頂部の覗き窓からの視覚的観察はドームシートの形成を示した。反応器を停止して開いた。大きいドームシートが頂部のドーム区画に頑固に付着しているのが見つかった。高圧水噴射によってこのドームシートを取り除くのに数日を要した。この例は、Lupasol WFの連続性の利点を示す。
【0140】
LUPASOL FGの工業的評価
以下の試験は、直径2.4mの半商業的気相反応器中で10000〜12000ポンド/時間の製造速度で実施した。
【0141】
例9
半商業的反応器中でPRODIGY BMC-200触媒を用いて試験を実施して、パイプ用途用の2モード製品を製造した。最初に製造速度を基準として46ppmwの濃度でCA混合物を連続性添加剤として用いて運転した。触媒供給及びCA混合物同時供給を停止し、反応を減衰させることによって、反応器をアイドリング状態にした。この工程は、技術者にCA混合物の連続性添加剤供給装置を空にしてLUPASOL FG及び鉱油スラリーで再充填するための時間を与えるために行った。鉱油中のLUPASOL FG濃度は約2重量%だった。
【0142】
上記の反応器を最初に連続性添加剤としてCA混合物(上記のもの)を供給しながら反応器にスラリーとして供給されるPRODIGY BMC-200触媒を用いて定常状態で次の反応条件:反応温度105℃、エチレン分圧220psia、ヘキセン対エチレンモル比0.0042及びH2対エチレンモル比0.0019:で運転して、6.5〜8のFI及び0.9495g/ccの密度を有する2モードタイプのパイプ製品を製造した。CA混合物供給速度は、エチレン供給速度を基準として約50ppmwだった。この反応器を次いで、反応器へのPRODIGY BMC-200触媒供給及びCA混合物同時供給を停止して、LUPASOL FGを連続性添加剤として用いた運転に移行した。反応を停止させた後に、残った床を重量を基準として10ppmwのLUPASOL FGで前処理した。床をLUPASOL FGスラリーで前処理している間に、スキン熱電対低温偏位(冷時バンディングと称される)が改善し始める。PRODIGY BMC-200触媒供給を再開した後に、反応は円滑になった。LUPASOL FG供給も、エチレン供給速度を基準として約10ppmwの供給速度で確立させた。移行の間に現れたスキン熱電対低温偏位(冷時バンディング)は消えて、反応器は試験の最後までシートやチャンク形成なしにエチレン供給速度を基準として約3ppmwの低いLUPASOL FG同時供給レヘルで運転された。表7に示すように、触媒生産性はCA混合物と比較してLUPASOL FGについては約18%の改善を示した。
【表7】

【0143】
Zr XRFを用いて測定したPRODIGY BMC-200触媒生産性は、Zrを含有するものだけではなく、触媒中に存在する触媒種の合計量を斟酌して補正される。
【0144】
前記のように、本明細書に開示される具現化物は、ポリオレフィンを製造するための気相反応器のような重合反応器に用いるための、ポリエチレンイミンを含む連続性添加剤を提供することができる。本明細書に開示される具現化物に従う連続性添加剤の使用は、有利なことに、シーティング及び他の不連続性事象を防ぎ、減らし又は一変させることができる。本明細書に開示される具現化物に従う連続性添加剤はまた、慣用の静電気調整剤について起こることが通常見出されているような重合触媒活性に対する負の影響なしに、電荷の消散又は中和をもたらすこともできる。さらに、本明細書に開示される具現化物に従う連続性添加剤は、有利なことに、静電気調整特性に加えて、掃去剤としての働きをすることもできる。
【0145】
特定範囲だけを本明細書に明示的に開示したが、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限と任意の上限とを組み合わせることができ、同様に、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限を他の任意の下限と組み合わせることができ、同様に、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の上限と他の任意の上限とを組み合わせることができる。
【0146】
本明細書で引用したすべての文献は、その取り込みを許可するすべての管轄区域については、言及することによって、そして本発明の記載と整合性がある限りにおいて、すべてここに取り込まれる。
【0147】
本発明を多くの実施形態及び実施例に関して説明してきたが、この開示の利益を得る当業者であれば、本明細書に開示された本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の実施態様を考え出すことができることが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応器中で少なくとも1種のオレフィンを重合させてオレフィンを主体とするポリマーを生成させること;及び
この重合反応器に少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を供給することを含み、
前記エチレンイミン添加剤がポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含む、重合方法。
【請求項2】
ポリマー製造速度を基準として0.01〜200ppmwの範囲の量で前記エチレンイミン添加剤を前記反応器に供給する、請求項1に記載の重合方法。
【請求項3】
ポリマー製造速度を基準として0.05〜50ppmwの範囲の量で前記エチレンイミン添加剤を前記反応器に供給する、請求項1又は2に記載の重合方法。
【請求項4】
前記エチレンイミン添加剤が約100000ダルトン未満の数平均分子量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の重合方法。
【請求項5】
前記エチレンイミン添加剤が約500〜約25000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の重合方法。
【請求項6】
前記エチレンイミン添加剤がブルックフィールド粘度計を用いて20℃において測定して約2000〜約200000cPの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の重合方法。
【請求項7】
前記エチレンイミン添加剤と鉱油又は芳香族炭化水素とを一緒にしたものを供給物中に用いるエチレンイミン添加剤の少なくとも一部とすることをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の重合方法。
【請求項8】
前記エチレンイミン添加剤を少なくとも1つの懸濁液又は溶液として前記反応器に供給する、請求項7に記載の重合方法。
【請求項9】
前記重合反応器が流動床反応器、同伴ゾーン、ポリマーを製造することができる触媒系を導入するための触媒供給口、触媒混合物とは独立して少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を供給するための少なくとも1つのエチレンイミン添加剤供給口を含み、該方法が、
(a)流動床反応器中で重合条件下で少なくとも1種のオレフィンを前記触媒系と接触させ;そして
(b)重合反応開始の前、間又は後の任意の時点で反応器システム中に前記の少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を導入する:
ことを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
さらに
(c)前記同伴ゾーン中の静電気活性レベルを監視し;そして
(d)前記同伴ゾーン中の静電気活性のレベルを0又は0付近に保つために反応器システム中に導入される少なくとも1種のエチレンイミン添加剤の量を調節する:
ことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重合がメタロセン触媒、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒又は混合触媒系を重合反応器に供給することを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の重合方法。
【請求項12】
前記触媒系が少なくとも1種のメタロセン触媒を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記混合触媒系が二元金属触媒系である、請求項11に記載の重合方法。
【請求項14】
前記重合反応器が気相反応器を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記の少なくとも1種のオレフィンがエチレン及びプロピレンの内の少なくとも1つを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記の少なくとも1種のオレフィンがさらに少なくとも1種のC4〜C8α−オレフィンを含む,請求項15に記載の方法。
【請求項17】
気相反応器中でメタロセン触媒、活性剤及び担体を用いてエチレンと1種以上のα−オレフィンとを共重合させる方法であって、
メタロセン触媒、活性剤及び担体の存在下でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン又は1−オクテンの内の1種以上とを一緒にすること;
少なくとも1つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも1つの上方床静電プローブ、少なくとも1つの環状ディスク静電プローブ又は少なくとも1つの分配板静電プローブによって前記反応器の静電荷を監視すること;
上記の一緒にすることによって製造されるポリマーの重量を基準として約0.1〜約50ppmの範囲でポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含む少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を前記反応器中に存在させることによって前記静電荷を所望のレベルに保つこと:
を含む、前記共重合方法。
【請求項18】
流動床重合反応器システムの少なくとも1つの内側表面を処理するための方法であって、
床の壁、分配板及び気体リサイクルラインの内の少なくとも1つにポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含むエチレンイミン添加剤を接触させてその上にエチレンイミン添加剤を含むコーティングを形成させること;
該コーティングを含む流動床重合反応器システム中で重合反応を実施すること:
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記重合反応が添加された連続性添加剤の不在下で実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ポリエチレンイミン、エチレンイミンコポリマー又はそれらの混合物を含む少なくとも1種のエチレンイミン添加剤を重合反応器に供給することをさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
重合反応器中に用いるための連続性添加剤を選別するための方法であって、
少なくとも1種の連続性添加剤と重合触媒系とを一緒にすること;及び
この混合の結果として起こる発熱を測定すること:
を含む、前記方法。
【請求項22】
測定した発熱に基づいて重合触媒生産性に対する連続性添加剤の影響を測定することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の重合触媒;及び
ポリエチレンイミン又はエチレンイミンコポリマー:
を含む触媒系。
【請求項24】
活性剤をさらに含む、請求項23に記載の触媒系。
【請求項25】
担体をさらに組む、少なくとも1種の重合触媒及び活性剤がこの担体に担持された、請求項24に記載の触媒系。
【請求項26】
前記の少なくとも1種の重合触媒がメタロセン触媒、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒又は混合触媒系を含む、請求項23〜25のいずれかに記載の触媒系。
【請求項27】
前記混合触媒系が二元金属触媒系である、請求項26に記載の触媒系。

【公表番号】特表2012−514685(P2012−514685A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545416(P2011−545416)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020312
【国際公開番号】WO2010/080870
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】