説明

ポリオール組成物及び軟質ポリウレタン発泡成形体

【課題】 耐湿熱圧縮特性と共振周波数特性とを高度な次元で両立した軟質ポリウレタン発泡成形体、及び当該軟質ポリウレタン発泡成形体を形成し得るポリオール組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、(B)有機化ケイ酸塩、を含むポリオール組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分との組合せが、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に測定される長周期間隔(d値)として35Å以上となる組合せであることを特徴とするポリオール組成物、及び、当該ポリオール組成物に、更に(C)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、を配合したポリウレタン発泡原液を金型内で発泡させて形成される軟質ポリウレタン発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振周波数特性及び耐湿熱圧縮特性に優れた軟質ポリウレタン発泡成形体、及び当該軟質ポリウレタン発泡成形体を形成し得るポリオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用内装材として用いられる軟質ポリウレタン発泡成形体においては、硬度が高いものは耐湿熱圧縮特性が低く、耐湿熱圧縮特性を向上させると硬度が低下することが広く知られており、硬度と耐湿熱圧縮特性の向上という相反する課題を解決する方法が望まれていた(非特許文献1:Macromolecules,2001年,34号,p.337〜339参照)。
本願出願人は先に、無機充填材をポリウレタン発泡原液に配合して得た軟質ポリウレタンフォームが、高硬度でかつ耐湿熱圧縮特性に優れたものであることを見出している(特許文献1:特開2004−210976号公報参照)。
【0003】
ここで、自動車用内装材として用いられる軟質ポリウレタンフォームには、硬度が高く、耐湿熱圧縮特性に優れるのみならず、共振周波数特性に優れる(共振周波数が低い)ことも要求される。より高硬度でかつ耐湿熱圧縮性に優れ、しかも共振周波数特性に優れる軟質ポリウレタン発泡成形体の開発が望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】Ruijian Xu、他3名,Macromolecules,2001年,34号,p.337〜339
【特許文献1】特開2004−210976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、耐湿熱圧縮特性と共振周波数特性とを高度な次元で両立した軟質ポリウレタン発泡成形体、及び当該軟質ポリウレタン発泡成形体を形成し得るポリオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、ポリオール成分とケイ酸塩とを含むポリウレタン発泡原液を用いて軟質ポリウレタン発泡成形体を形成するに際し、特定の指標に従ってポリオール成分とケイ酸塩との組合せを選定することにより、得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の耐湿熱圧縮特性及び共振周波数特性を調整し得ること、ひいては、得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の耐湿熱圧縮特性及び共振周波数特性とを高度な次元で両立し得ることを見出した。
即ち、ポリオール成分とケイ酸塩とを混合した場合に後述の長周期構造が観察される場合があり、この長周期間隔(d値)と、得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の耐湿熱圧縮特性及び共振周波数特性とが良好に相関することを本発明者は見出した。そして、このd値を指標として軟質ポリウレタン発泡成形体を設計することが上記両特性を高度な次元で両立した軟質ポリウレタン発泡成形体を設計するに際して適切であることを本発明者は知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、以下のポリオール組成物及び軟質ポリウレタン発泡成形体を提供する。
請求項1:
次の(A)成分及び(B)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
を含むポリオール組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分との組合せが、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に測定される長周期間隔(d値)として35Å以上となる組合せであることを特徴とするポリオール組成物。
請求項2:
前記(A)成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリマーポリオールよりなる群から選択された1種または2種以上である請求項1記載のポリオール組成物。
請求項3:
前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対し0.1〜30質量部配合される請求項1又は2記載のポリオール組成物。
請求項4:
次の(A)〜(C)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
(C)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
を含むポリウレタン発泡原液を金型内で発泡させて形成される軟質ポリウレタン発泡成形体であって、前記(A)成分と前記(B)成分との組合せが、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に測定される長周期間隔(d値)として35Å以上となる組合せであることを特徴とする軟質ポリウレタン発泡成形体。
請求項5:
前記(A)成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリマーポリオールよりなる群から選択された1種または2種以上である請求項4記載の軟質ポリウレタン発泡成形体。
請求項6:
前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対し0.1〜30質量部配合される請求項4又は5記載の軟質ポリウレタン発泡成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、共振周波数特性及び耐湿熱圧縮特性に優れた軟質ポリウレタン発泡成形体、及び当該軟質ポリウレタン発泡成形体を形成し得るポリオール組成物が提供される。本発明の軟質ポリウレタン発泡成形体は特に車両用内装材等(自動車用シート材や自動車用パッド材等を含む)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明のポリオール組成物は、次の(A)成分及び(B)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
からなるポリオール組成物であり、また、本発明の軟質ポリウレタン発泡成形体は次の(A)〜(C)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
(C)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
を含むポリウレタン発泡原液を金型内で発泡させて形成される軟質ポリウレタン発泡成形体である。
そして、本発明において上記ポリオール組成物及び軟質ポリウレタン発泡成形体はいずれも、各々を構成する前記(A)成分と前記(B)成分との組合せとして、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に後述の方法にて測定される長周期間隔(d値)が35Å以上となる組合せを用いることに特徴を有するものである。
【0010】
上記(A)ヒドロキシル基を供給するポリオールとしては、ポリウレタンフォーム用として常用のポリオールが使用可能であり、特に限定されないが、例えば2価〜6価等の多価アルコール、ポリオキシアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオール)、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、ポリエーテルポリオールを用いることが更に好ましい。これらのポリオールは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記ポリエーテルポリオールとしては、反応性の観点から、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。このようなアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0012】
中でも原料活性の観点から、上記ポリエーテルポリオールとしては上記POと上記EOとを共重合して得られたポリエーテルポリオールであることが好適である。重合開始剤としては、例えばペンタエリスリトールやグリセリン等が挙げられる。
共重合の際のPOとEOとの配合比としては、EO/PO(モル比)として通常8/92〜18/82(モル比)、好ましくは13/87〜15/85(モル比)である。EO/PO(モル比)が上記範囲を逸脱すると、ポリエーテルポリオールの生成が困難になる場合がある。
【0013】
なお、上記ポリエーテルポリオールがEOを含むモノマー組成物の重合により得られたものである場合、当該EO由来の分子鎖ユニットがポリエーテルポリオール中に占める割合としては通常0〜25質量%、好ましくは10〜20質量%である。
【0014】
上記ポリエーテルポリオールの一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が多すぎると原料粘度が上昇する場合があり、少なすぎると物性が低下する場合がある。
【0015】
上記ポリエーテルポリオールとしては、不飽和度の小さなものを用いることが好ましい。より具体的には、不飽和度として通常0.07ミリ当量/g以下、好ましくは0.04ミリ当量/g以下であるポリエーテルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオール中の不飽和度が0.07ミリ当量/gを超えると、本発明の軟質ポリウレタン発泡成形体の耐久性や硬度が損なわれる場合がある。なお、本発明において「不飽和度」とは、JIS K 1557−1970に準拠し、試料中の不飽和結合に酢酸第二水銀を作用させて遊離する酢酸を水酸化カリウムで滴定する方法にて測定した総不飽和度(ミリ当量/g)を意味するものである。
【0016】
上記ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、通常9000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下、更に好ましくは5000以下、下限として通常1000以上、好ましくは2000以上である。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が9000を超えると、(A)成分の粘度が大きくなりすぎてポリウレタン発泡原液の攪拌効率が劣る場合がある。一方、ポリエーテルポリオールの数平均分子量が1000未満であると、得られるポリウレタンフォームの反発弾性が大きく低下する場合がある。なお、本発明において数平均分子量とは、GPC法によりポリスチレン換算値として算出した値である。
【0017】
一方、上記ポリマーポリオールとしては、ポリウレタン発泡成形体用として汎用のポリマーポリオールを用いることが可能である。より具体的には、例えばポリアルキレンオキシドからなる好ましくは数平均分子量が3000以上8000以下、好ましくは4000以上7000以下のポリエーテルポリオールに、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオール(ポリアルキレンオキシド)の原料となるアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシドを含むことが好ましく、プロピレンオキシド単独のもの、又はプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを共に含むものであることが特に好ましい。また、上記ポリマーポリオール中に占める上記のようなグラフトポリマー成分の割合としては通常25〜50質量%である。
【0018】
上記(A)成分において、ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとを配合して用いる場合、その配合比としては、(ポリエーテルポリオール)/(ポリマーポリオール)(質量比)として通常30/70〜100/0、好ましくは40/60〜80/20である。両者の配合比が上記範囲を逸脱すると、本発明のポリウレタン発泡成形体の物性が低下したり、反応不具合を生じたりする場合がある。
【0019】
なお、上記(A)成分としては市販品を用いることができ、例えば、KC282(三洋化成(株)製)、KC264(三洋化成(株)製)等を使用することができる。
【0020】
上記(B)有機化ケイ酸塩を構成するケイ酸塩としては、例えば単位骨格中にケイ素原子を1つ含むネソケイ酸塩、数個含むソロケイ酸塩、多数のケイ素原子を含むイソケイ酸塩、フェロケイ酸塩等が挙げられ、具体的にはマガディアナイト、カネマイト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーキュライト、ハロイサイト、又はマイカなどが挙げられる。これらは天然品でも人工合成品でもよい。また、有機化ケイ酸塩は1種を単独で、あるいは2種以上を併用することも可能である。なお、上記(B)成分は、ポリオール成分への分散性の観点から上記ケイ酸塩が有機化処理されたものである。
【0021】
上記有機化処理方法としては特に限定されるものではなく、ケイ酸の対イオンのナトリウムイオンをイオン交換することによりケイ酸塩を有機オニウム塩化する方法や、化学結合やイオン結合等によりケイ酸塩表面に有機基を導入する方法等を挙げることができる。中でもポリオールへの分散性の観点から、ケイ酸の対イオンのナトリウムイオンをイオン交換することによりケイ酸塩を4級アンモニウム塩化する方法が好適である。
【0022】
有機オニウムイオンとしては、例えばヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンといった有機アンモニウムイオン;アルキルビピリジニウムイオンといった有機ピリジニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ポリオール成分中での安定性の観点から有機アンモニウムイオンが好適である。これらは4級アンモニウムイオンであることが好ましいが、1級、2級、3級アミンをプロトン化したものでもよい。
【0023】
また、上記有機アンモニウムイオンとしては、窒素原子に結合する有機基がアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基であるものが好ましく、特にジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンが好ましい。前記アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。一方、ヒドロキシアルキル基としてはOH基を1つ有するもの、2つ以上のOH基を有するもののいずれでもよく、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基等の末端の炭素原子に結合するOH基を有するもの、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基等の炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するもの、1,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基のように末端及び炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するものなどが挙げられる。中でも、製造される軟質ポリウレタンフォームの強度の観点から末端にOH基を有するものが好ましい。窒素原子に結合する有機基としてはアルキル基、ヒドロキシアルキル基等の炭素鎖の途中にエステル結合、ウレタン結合などを有するものであってもよい。ポリオール成分中での分散状態の安定性の観点から、ケイ酸塩表面のOH基がフッ素原子で置換されたフッ素化ケイ酸塩を使用することも好適である。
【0024】
なお、上記(B)成分としては市販品を用いても良く、例えばソマシフMEE、ソマシフME−100、ソマシフMAE、ソマシフMTE(いずれもコープケミカル(株)製)が挙げられる。
【0025】
上記(B)成分の配合量としては、特に限定されるものではないが、上記(A)成分100質量部に対し通常0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部である。0.1質量部未満であると、耐湿熱圧縮性と硬度の向上がほとんど発現しない場合があり、一方、30質量部を超えると上記(A)成分が高粘度化してしまい、混合液が均一化できず、上記(B)成分をウレタンフォーム中に均一に分散させることができない場合がある。
【0026】
上記(C)イソシアネート基を供給するポリイソシアネートとしては、成形密度領域の観点から、トリレンジイソシアネート(TDI)及び/又はジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むことが好適である。
ここで、上記TDIとしては、特に限定されるものではないが、2,4−TDIと2,6−TDIとの配合比が80/20〜50/50(質量比)の混合物であることが好ましく、80/20〜65/35(質量比)の混合物であることが特に好ましい。
MDIとしても特に限定されるものではなく、その分子量分布の広狭を問わず用いることができ、例えば、純(ピュア)MDI(4,4’−MDI)、ポリメリックMDI、粗(クルード)MDIなどを好適に用いることができる。
【0027】
このようなTDI、MDIとしては市販品を使用することができ、TDIとしては、例えばT−80(住友バイエルウレタン(株)製)、MDIとしては、例えば44V20(住友バイエルウレタン(株)製 クルードMDI)を用いることができる。
【0028】
上記TDIとMDIとを併用する場合、両者の配合比としては、TDI/MDI(質量比)の値として通常20/80〜90/10(質量比)、好ましくは50/50〜80/20(質量比)である。
【0029】
上記(C)成分が上記ポリウレタン発泡原液中に占める割合(2種以上のイソシアネートを併用する場合には、その総量が上記ポリウレタン発泡原液中に占める割合)としては、その目安としてのイソシアネート当量(軟質ポリウレタン発泡原液中の活性水素量(モル)を100とした時の、軟質ポリウレタン発泡原液中のイソシアネ−ト基の当量(モル)比)値として通常80以上、好ましくは95以上、上限として通常120以下、好ましくは115以下である。イソシアネート当量が80未満であると得られるポリウレタンフォームの収縮不良が起こる場合があり、一方120を超えるとフォームダウンする場合がある。
【0030】
本発明において上述した(A)成分と(B)成分との組合せとしては、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に以下の方法にて測定される長周期間隔(d値)として35Å以上、好ましくは35〜80Å、より好ましくは50〜80Åとなる組合せである。
そして、このようなd値という指標を基に(A)成分と(B)成分との組合せを選定し、更に上述した(C)成分を配合してポリウレタン発泡原液を構成し、金型内で発泡硬化させて軟質ポリウレタン発泡成形体を形成することにより、本発明において耐湿熱圧縮特性及び共振周波数特性を高度な次元で両立した軟質ポリウレタン発泡成形体を実現し得たものである。これは、詳細は詳らかでないが、得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の耐湿熱圧縮特性及び共振周波数特性と上記d値とが良好に相関することを本発明者が見出したことによる。
【0031】
[d値の測定方法]
理学電機(株)製RINT2200Vを用い、管球をCu,加速条件を40kV×50mA,走査速度を4°/分として行なう広角X線回折法により測定される長周期間隔をd値として評価する。
なお、「長周期」とは、高分子辞典,高分子学会,1971年,第431頁の記載を参照し、(B)成分の層間の周期を意味する。
【0032】
本発明における上記ポリウレタン発泡原液には、更に(D)成分として発泡剤、好ましくは水が含まれても良い。水はポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生させることから、本発明において発泡剤として用いることができ、環境への負荷低減、及び製造コスト削減の観点からも好適に用いられる。
ポリウレタン発泡原液中の(D)成分の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して通常1〜7質量部、好ましくは2〜5質量部である。(D)成分の配合量が上記範囲を逸脱すると、得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の熱圧縮残留歪み特性に劣る場合がある。
【0033】
本発明における前記ポリウレタン発泡原液中には更に(E)成分として触媒、(F)成分として整泡剤、が含まれても良い。これらの各成分は軟質ポリウレタン発泡成形体の製造サイクルタイムの短縮に寄与し得る。
前記(E)触媒としてはポリウレタンフォーム用として常用のものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えばトリエチレンジアミン、ジエタノールアミン等のアミン触媒が挙げられる。ポリウレタン発泡原液中の(E)成分の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して通常0.3〜2質量部である。
このような(E)成分としては市販品を用いることができ、例えばトリエチレンジアミン(花王(株)製)、ジエタノールアミン(日本触媒製)等を挙げることができる。
【0034】
前記(F)整泡剤としては、軟質ポリウレタン発泡成形体用のものとして汎用のものを用いることができ、例えば、各種シロキサン−ポリエーテルブロック共重合体等のシリコーン系整泡剤を用いることができる。このような整泡剤としては市販品を用いることができ、例えば、L 5309(日本ユニカー(株)製)、SRX 274C(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)等を用いることができる。上記ポリウレタン発泡原液中の(F)成分の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して通常0.3〜2質量部である。
【0035】
本発明において、ポリウレタン発泡原液を金型内で発泡させて成形体を得る際の条件としては通常の条件を用いることができ、常圧下で発泡硬化させても良いし、減圧下で発泡硬化(減圧工法)させても良い。ここでいう減圧工法としては、ポリウレタン発泡原液を金型のキャビティ内に充填し、これを発泡、成形する際にキャビティ内を減圧する方法であれば特に制限されず、公知の方法が適用できる。
【0036】
本発明の軟質ポリウレタン発泡成形体の、JIS K 6400に準拠して測定した硬度(成形体表皮部の25%硬度、kgf)としては通常5kgf以上、好ましくは10kgf以上、上限として通常40kgf以下、より好ましくは30kgf以下である。
また、本発明の軟質ポリウレタン発泡成形体の、JIS K 6400に準拠して測定した湿熱圧縮残留歪み(%)としては通常30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。
更に、本発明の製造方法により得られる軟質ポリウレタン発泡成形体の、JASO B 407に準拠して測定した共振周波数(Hz)としては通常5Hz以下、好ましくは4.5Hz以下、より好ましくは4Hz以下である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1〜5,比較例1〜5]
表1に示すポリオールを用い、表2に示す配合比にてポリウレタン発泡原液を調製した。ポリウレタン発泡原液の調製に際しては、まず(A)、(B)、(E)及び(F)成分を配合して1800rpmで10分間攪拌し(ポリオール組成物の調製)、その後(C)成分(イソシアネート組成物)及び(D)成分(水)を配合して5000〜7000rpmで5〜10秒間攪拌し、ポリウレタン発泡原液を調製した。
得られたポリウレタン発泡原液を金型(型温60℃、容積20L)のキャビティに注入し常圧下で発泡硬化させた。ポリウレタン発泡原液の仕込み量は、1.2kgであった。
得られた軟質ポリウレタン発泡成形体の諸物性を評価した。結果を表1に併記した。なお、評価結果を基にd値に対して湿熱圧縮残留歪み比及び共振周波数をプロットしたものを図1,2に示した。
【0039】
【表1】


EO質量%
ポリオール中に占めるエチレンオキシド(EO)由来の分子鎖ユニットの含有量(質量%)
【0040】
【表2】

【0041】
アミン触媒
Dabco33LV(三共エアープロダクツ社製)
シリコーン系整泡剤
SRX274C(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
有機化マイカ
ソマシフMEE(コープケミカル(株)製)
イソシアネート1
T−80(三井武田ケミカル(株)製)
イソシアネート2
44V20(住友バイエルウレタン(株)製)
【0042】
d値(Å)
ポリオール((A)成分)と有機化マイカ((B)成分)との混合物(有機化マイカを5質量%含む)を測定対象とした。理学電機(株)製RINT2200Vを用い、管球をCu,加速条件を40kV×50mA,走査速度を4°/分として行なう広角X線回折法により、長周期間隔(d値)を測定した。
湿熱圧縮残留歪み(%)
JIS K 6400に記載の圧縮残留ひずみの測定方法により、湿熱圧縮残留歪みの測定を実施した。ただし、測定に際しては成形した軟質フォームのコア部を50×50×25mm切り抜き、これを試験片として使用した。試験片を50%の厚みまで圧縮し、平行平面板に挟み、50℃、相対湿度95%の条件下に、22時間放置した。そして、22時間放置後、この試験片を取り出して30分後、その厚みを測定し、試験前の厚みの値と比較し、歪み率を測定し、この歪み率を湿熱圧縮残留歪みとした。
湿熱圧縮残留歪み比
対応する比較例(同一の(A)成分(ポリオール)を用いた比較例。例えば、実施例1に対しては比較例1、実施例2に対しては比較例2、等である。)の湿熱圧縮残留歪み値を1とした場合の指数を算出した。
共振特性(共振周波数(Hz),共振倍率)
JASO B 407に準拠して測定した。サンプルに41kgの加圧板を載せ、周波数を1Hz〜10Hzまで加振させた。最大の伝達率を示した時の周波数を共振周波数(Hz)、共振周波数の時の伝達率を共振倍率とした。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】d値に対して湿熱圧縮残留歪み比をプロットしたグラフである。
【図2】d値に対して共振周波数をプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)成分及び(B)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
を含むポリオール組成物であって、前記(A)成分と前記(B)成分との組合せが、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に測定される長周期間隔(d値)として35Å以上となる組合せであることを特徴とするポリオール組成物。
【請求項2】
前記(A)成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリマーポリオールよりなる群から選択された1種または2種以上である請求項1記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対し0.1〜30質量部配合される請求項1又は2記載のポリオール組成物。
【請求項4】
次の(A)〜(C)成分、
(A)ヒドロキシル基を供給するポリオール、
(B)有機化ケイ酸塩、
(C)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、
を含むポリウレタン発泡原液を金型内で発泡させて形成される軟質ポリウレタン発泡成形体であって、前記(A)成分と前記(B)成分との組合せが、(A)成分と(B)成分のみを混合した場合に測定される長周期間隔(d値)として35Å以上となる組合せであることを特徴とする軟質ポリウレタン発泡成形体。
【請求項5】
前記(A)成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリマーポリオールよりなる群から選択された1種または2種以上である請求項4記載の軟質ポリウレタン発泡成形体。
【請求項6】
前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対し0.1〜30質量部配合される請求項4又は5記載の軟質ポリウレタン発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−219508(P2006−219508A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31310(P2005−31310)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】