説明

ポリオール/ポリエステルブロックポリマーを有する化粧剤組成物

ポリエーテル、ダイマージオール、ダイマージオールから得られる誘導体、及びジカルボン酸とジオールのポリエステルの中から選択されるポリオールに相当する少なくとも1つの第1ブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンのポリエステルに相当する少なくとも2つのさらなるブロックとから成るブロックポリマーという特定成分を含有する化粧剤組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
検討中の本発明の目的は、ポリオールブロックとポリエステルブロックを含む特有のブロックポリマーを含有する化粧剤組成物であり、さらなる目的は、前記ブロックポリマーを用いる毛髪処理方法である。
毛髪の成形では、通常、一時的及び持続的な永久的ヘアスタイリング間で差が生じる。原則として、一時的なヘアスタイリングは、毛髪固定ポリマーの溶液又は分散系を主成分とする組成物の使用によって行われる。この種の製品は、ポリマーの添加によって毛髪により多いか又は少ない保持力、ボリューム、弾性、跳躍性及び艶を与える。例えば、ゲルの形態では、これらスタイリング製品はヘアスタイルの成形と創作を容易にし;ヘアスプレーの形態では、それらは創作ヘアスタイルの状態を改善し、かつ、固定フォームの形態では、毛髪のボリュームを増やす。好ましくないのは、所望の効果が比較的短時間しか持続せず、梳毛、風、高い気湿、水との接触又は該ヘアスタイルのままの睡眠のような外部からの影響の結果として急速に所望効果が再び失われることである。原則として、このような影響により、時間のかかるヘアスタイルの創作を再び始め、スタイリング製剤を新しく適用することを余儀なくされる。原則として、永久的ヘアスタイリングは永久的ウェーブ処理によって達成される。この場合、毛髪内のジスルフィド結合を還元的に切断し、毛髪を新しい形状に変え、この新しい形状を酸化的プロセスで新しいジスルフィド結合を形成することによって固定する。好ましくないのは、毛髪を還元剤及び酸化剤で化学的に処理する必要がある結果として、毛髪構造に対するダメージを回避できないことである。現在までに知られているヘアリスタイリング方法のさらなる欠点は、リスタイリングを比較的簡単な様式で可逆的にできない、すなわち、複雑な再創作なしで、あるヘアスタイルから別のヘアスタイルに変えられないことである。
【0002】
検討中の本発明の根底にある主題は、第1ヘアスタイルの創作後、ヘアスタイルの簡単な複雑でなく、かつ迅速なリスタイリング又は回復を容易にする組成物(リスタイリングの間にはこの組成物を絶対に再適用しないで)を提供することだった。さらなる主題は、毛髪構造を傷つける措置なしで取る戻せるヘアリスタイリングを可能にする方法、特に外部からの影響で導入された、最初に調製したヘアスタイルの変形後に再びヘアスタイルを調製することを容易にする方法を提供することだった。
本発明の目的は、適切な化粧基剤中に、ポリエーテル、オリゴエーテル、炭化水素(少なくとも400g/モルの分子量と少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシル基を有する)、オリゴエステルジオール及びジカルボン酸とジオールのポリエステルから選択されるポリオールである少なくとも1つの第1ブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンのポリエステルである少なくとも2つのさらなるブロックとを有する少なくとも1種のブロックポリマーを含有する化粧剤組成物である。本発明の文脈では、ポリオールは少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物である。前記炭化水素は、線状、分岐、飽和、一不飽和又は多不飽和でよい。ポリエーテル及びオリゴエーテルは、その有機反復単位がエーテル官能性(C-O-C)によって一緒に維持されているポリマー又はオリゴマー化合物である。本発明の文脈では、ポリエーテルは少なくとも4個のエーテル基と少なくとも5個の反復単位を有し、オリゴエーテルは1、2又は3個のエーテル基と2〜4個の反復単位を有する。
本発明に好適なブロックポリマーは、好ましくは少なくとも1つの硬セグメントと、少なくとも1つの軟セグメントから成り、好ましくは少なくとも2つの転移温度Ttrans及びT'transを有する。ここで、T'transは室温(25℃)以上にあり、TtransはT'trans未満にある。
【0003】
ポリマーセグメントは、好ましくはオリゴマー又はジヒドロキシ炭化水素、特に例えば400〜30,000、好ましくは1,000〜20,000又は1,500〜15,000の分子量を有する直鎖分子である。ブロックポリマーの分子量は、例えば30,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜700,000又は70,000〜400,000でよい。これらは、好ましくは3〜80%、特に好ましくは3〜60%の結晶化度を有する。2つの転移温度は、例えば、融点Tm又はガラス転移温度Tgでよい。Ttrans以上では、ポリマーはTtrans未満の場合より低い弾性率を有する。Ttrans未満とTtrans以上の弾性率の比は、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも20である。より低い転移温度Ttransは、好ましくは室温(25℃)より高く、特に少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも35℃又は少なくとも40℃であり、その温度を超えると、変形した形状又は一時的形状からの永久的形状の自発的回復が見られる当該温度である。周囲温度では、有意な、故意でない熱的に誘導される一時的ヘアスタイルの再成形が起こらないので、Ttransは、好ましくは、通常想定される周囲温度より高い。Ttransの好適な範囲は、例えば25〜100℃、30〜75℃、35〜70℃又は40〜60℃である。高い方の転移温度T'transは、Ttransより高く、当該温度以上で永久的形状の刻印又は永久的形状の新しい永久的形状への再刻印が起こり、当該温度未満で永久的形状が固定される。T'transは、好ましくはTtransよりずっと高いので、永久的ヘアスタイルを維持しながら、永久的ヘアスタイルの回復のため又は一時的ヘアスタイルの再形成のためにTtrans以上の温度にヘアスタイルを加熱している間に、ヘアスタイルの有意な、故意でない熱的に誘導される変形が起こらない。好ましくは、T'transは、Ttransより少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも20℃又は少なくとも30℃高い。T'transとTtransの差は、例えば、10〜80℃、20〜70℃又は30〜60℃でよい。T'transの適切な範囲は、例えば、40〜150℃、50〜100℃又は70〜95℃である。
【0004】
好適なポリマーPは、例えば下記一般式を有するポリマーである。
A(B)n (I)
式中、Aは、n価のポリマー又はオリゴマー、炭化水素(少なくとも400g/モルの分子量とn個のアルコール性ヒドロキシル基を有する)、又はオリゴエステルジオール、又はジカルボン酸と1つのジオールのポリエステルから誘導され、Bは、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)ブロックを表し、nは2以上の数、好ましくは2、3又は4を表す。B-A-Bトリブロックポリマー、特に中間ブロックとしての単一のポリオールブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンと末端アルコール性ヒドロキシル基の2つの末端ポリエステルブロックとを有するブロックポリマーが好ましい。
【0005】
Aは、好ましくは多価アルコール由来のポリアルキレングリコールエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)、ダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル及びオリゴエステルジオール(ジヒドロキシオリゴエステル)を意味する。ポリアルキレングリコールエーテルは、1つのアルキレン基について好ましくは2〜6個のC原子を有し;特に好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(プロピレングリコール)(PPG)である。ダイマージオールは、オレイルアルコールのダイマー化又はダイマー脂肪酸の水素化によって生成しうるα、ωC36ジオールの名称である。ダイマー脂肪酸は、分岐又は環状脂肪族C36ジカルボン酸(ダイマー酸)の混合物であり、オレイン酸又はトール油脂肪酸(TOFA)のダイマー化によって生成しうる。ダイマージオールは、例えば、商標名Sovermol(登録商標)908で入手可能である。ダイマージオールオリゴエーテルはダイマージオールのオリゴマーであり、ダイマージオールの酸触媒脱水によって生成しうる。ダイマージオールのダイマー、トリマー及びテトラマーが好ましい。好適な市販製品は、例えば、Sovermol(登録商標)909(約1,000の分子量)又はSovermol(登録商標)910(約2,000の分子量)である。オリゴエステルジオール(ジヒドロキシオリゴエステル)は、ジカルボン酸とジオールのオリゴマー化の反応生成物であり、該反応生成物は2個のヒドロキシル基を有する。好適なジカルボン酸は、例えば、C3〜C20ジカルボン酸、好ましくは脂肪族のC4〜C10ジカルボン酸である。脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、二酢酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸及びフマル酸である。芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸及びテレフタル酸である。オリゴエステルジオールのジオール成分は、例えば、C2〜C30ジオール、好ましくは脂肪族のC5〜C20ジオールである。グリセロールモノエステル、特にグリセロールと脂肪族のC2〜C30モノカルボン酸、特にC5〜C20モノカルボン酸のモノエステルも好適である。
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)ブロックBは、ヒドロキシカルボン酸、特に30個までのC原子を有するモノヒドロキシモノカルボン酸及びそのラクトン又はラクチドで形成されうる。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)ブロックBは、2種以上の異なるヒドロキシカルボン酸のコポリマーでもよい。ヒドロキシカルボン酸は、飽和若しくは不飽和の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、α-ヒドロキシカルボン酸、β-ヒドロキシカルボン酸、ω-ヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシ脂肪酸でよい。α-ヒドロキシカルボン酸は、例えば、グリコール酸、乳酸又はマンデル酸である。β-ヒドロキシカルボン酸は、例えば、β-ヒドロキシ酪酸又はβ-ヒドロキシ吉草酸のようなβ-ヒドロキシアルキル酸である。ヒドロキシ脂肪酸は、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸又はリシノール酸である。芳香族ヒドロキシ酸は、例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばサリチル酸である。
【0006】
Bは、好ましくはポリ(ε-カプロラクトン)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(ペンタデカラクトン)、ポリ(カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリ(ペンタデカラクトン-コ-ラクチド)又はポリ(ペンタデカラクトン-コ-カプロラクトン)を意味する。本発明で使用するのに特に好ましいポリエステルは、ラクチド単位又はペンタデカラクトン単位を主成分とするポリエステルである。
好ましいブロックコポリマーは、下記一般式を有するものである。
HO-[B1-C(=O)O-]n1[Y-O-]n2[C(=O)-B2-O-]n3H (Ia)
B1及びB2は同一又は異なり、1〜40、好ましくは2〜20個のC原子を有する分岐、環状又は線状アルキレン基を意味する。Yは、2〜30個のC原子を有する分岐、環状又は線状アルキレン基を意味し、好ましくはエチレン基及び/又はプロピレン基を意味し、或いはダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル又はオリゴエステルジオールを含むブロックを意味し、n1、n2及びn3は、ゼロに等しいかゼロより大きい同一又は異なる数であり、n2及び和n1+n2は両方ともゼロより大きい。
【0007】
式(Ia)のポリマーであって、式中、B1及びB2が2〜20個のC原子を有する分岐若しくは線状アルキレン基を意味し、Yがエチレン基であり、n1、n2及びn3がゼロより大きく、かつ該ポリマーの分子量が2,000以上であるように選択されるポリマーが特に好ましい。好適なポリマーのいくつかの例は、ポリエチレングリコール中間ブロックと、ポリ乳酸又はポリ-ε-カプロラクトンの末端ブロックを有するブロックコポリマー(末端ブロックはヒドロキシル基で末端が置換され、中間ブロックは500〜20,000、好ましくは2,000〜10,000の範囲の分子量を有し、かつブロックコポリマーの平均分子量は2,000〜50,000、好ましくは3,000〜25,000である)である。
ブロック構造を有するコポリマーの利点は、1つのポリマーでブロックの種々の特性と機能を組み合わせられることである。疎水性、毛髪への親和性又は転移温度のような、ブロックの特性を相互独立的に選択することができる。
例えば、ブロックコポリマーを製造するため、開環重合(ROP)用の二官能性開始剤としてオリゴマージオール又はポリマージオールを使用できる。この場合、開始剤はAブロックに相当する。好ましくは、種々の分子量で市販されているポリエーテルジオールを開始剤として使用する。Aブロック長に対応する分子量が4,000〜8,000g/モル、特に好ましくは分子量が6,000〜8,000g/モルのPEO又はPEGの使用が好ましい。
【0008】
さらに好ましいジオールは以下のとおりである。
−商標名Sovermol(登録商標)908(550g/モルの分子量)で市販されているダイマージオール(ダイマー脂肪ジオール)。ダイマージオールの製造は公知である。例えば、独国の印刷された特許明細書DE-B 17 68 313に従い、ダイマーオレイン酸及び/又はそのエステルの水素化によってダイマージオールを製造できる。一般式はHO-CH2-C3466-CH2-OHである。
−商標名Sovermol(登録商標)909(約1,000g/モルの分子量)及びSovermol(登録商標)910(約2,000g/モルの分子量)で市販されているダイマージオールオリゴエーテル。一般式はHO-CH2-C3466-CH2-O-[CH2-C3466-CH2-O-]nH(nは1〜5の数、好ましくは1、2又は3)である。
−ジカルボン酸と脂肪主成分のジオールから出発して合成した、分子量が1,000〜6,000g/モルのオリゴエステルジオール。脂肪主成分のジオールは、特に、1,000〜2,000の分子量を有する線状若しくは分岐した脂肪族C2〜C14ジオール、12-ヒドロキシステアリルアルコール、ダイマー脂肪ジオール、ダイマー脂肪ジオールオリゴエーテル、及びオレイン酸、ステアリン酸又はラウリン酸とのグリセロールモノエステルである。ジカルボン酸は、好ましくはダイマー脂肪酸、アジピン酸及びアゼライン酸である。
【0009】
以下の一般式を有するオリゴエステルジオールが好適である。
ダイマージオールのオリゴエステルジオール:
HO-CH2-C3466-CH2-O-[(O=)C-R-C(=O)-O-CH2-C3466-CH2-O-]n
12-ヒドロキシステアリルアルコールのオリゴエステルジオール:
HO-(CH2)11-CH(C613)-O-[(O=)C-R-C(=O)-O-(CH2)11-CH(C613)-O-]n
特に好ましくは、ヒドロキシステアリルアルコール-アジペート-ジオール及びヒドロキシステアリルアルコール-アゼラート-ジオールである。
グリセロールモノステアレートのオリゴエステルジオール:
HO-CH(CH2-O-C(=O)(C1735))-CH2O-[(O=)C-R-C(=O)-O-CH2-CH-(CH2O-C(=O)-(C1735))-CH2O-]n
これらすべての式中、Rは、4〜36個のC原子を有する線状の脂肪族炭化水素を意味し、nは1以上の数、好ましくは2以上の数を意味する。
ジオールとジカルボン酸からのオリゴエステルジオールの製造は、最新技術で公知である。触媒を使用して或いは使用せずに製造を行うことができる。触媒として、硫酸、リン酸又はp-トルエンスルホン酸のようなすべてのエステル化触媒を使用できる。ジオクチル酸スズ、酸化スズ及びシュウ酸スズのようなスズ化合物、チタニウム(IV)イソプロポキシドのようなチタン化合物も考えられる。p-トルエンスルホン酸及びチタニウム(IV)イソプロポキシドが好ましい。
【0010】
Bブロックを導入するため、環状エステル又はジエステル、例えば、ジラクチド、ジグリコリド、p-ジオキサノン、ε-カプロラクトン、ω-ペンタデカラクトン又はそれらの混合物を使用できる。ジラクチド、L,L-ジラクチド又はω-ペンタデカラクトンの使用が好ましい。好ましくは、反応は、任意にジブチルスズ(IV)オキシド、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、スズ(II)ジラウレート、スズ(II)オクタノエート、チタニウム(IV)イソプロポキシド又は塩化リチウムのような触媒を添加して塊で行われる。ジブチルスズ(IV)オキシド及びスズ(II)オクタノエート、特にジブチルスズ(IV)オキシドが好ましい。触媒を使用する場合、触媒は0.1〜0.3モル%の量でよい。可能な触媒の多く、特にスズ化合物は毒性なので、化粧剤分野又は医療分野用の原料でトリブロックコポリマーを使用する場合、コポリマー中に残存する触媒残渣を除去しなければならない。適切な操作条件は熟練者には公知であり、後述する実施例で説明する。
Bブロック長は、開始剤に対するモノマーのモル関係によって可変的に調整することができる。Aブロック中の質量%は、好ましくはブロックコポリマーの40〜90%に達する。
さらに好適なブロックコポリマーは、例えば、マルチ-ブロックコポリマーであり、開始剤(ブロックA)としてのジオールの、まず第1モノマー(ブロックB)、次いで第2モノマー(ブロックC)との反応によって得られる。
好適なブロックコポリマーは、例えば、星状ブロックコポリマーであり、ジオールに代えてトリオール又はテトラオールを開始剤として使用すると得られる。三官能性開始剤としての使用では、分子量が200〜6,000g/モルの市販のグリセロールエトキシレート又はグリセロールプロポキシレート又はグリセロール-プロポキシレート-b-エトキシレートが好ましく、特に好ましくは分子量が1,000及び6,000g/モルである。四官能性開始剤としての使用では、分子量が200〜3,000g/モルの市販のペンタエリトリット-エトキシレート又はペンタエリトリット-プロポキシレート又はペンタエリトリット-プロポキシレート-b-エトキシレートが好ましく、特に好ましくは分子量が500〜2,000g/モルである。原則として、ジブロックコポリマーも好適である。
述べたブロックポリマーは、好ましくは末端にヒドロキシル基を備える。
【0011】
本発明の毛髪処理用組成物は、適切な、好ましくは液状の粘性又は半固形媒体中、好ましくは0.01〜25質量%、特に好ましくは0.1〜15質量%の量で少なくとも1種の上記ブロックポリマーを含有する。本組成物は、溶液、分散系、エマルジョン、懸濁液又はラテックスとして存在しうる。液状媒体は、好ましくは化粧用として許容でき、かつ生理的に無害である。
本発明の組成物は、通常、適切な溶媒中の溶液又は分散系の形態で存在する。水性、アルコール性又は水性-アルコール性溶媒が特に好ましい。好適な溶媒は、例えば、脂肪族のC1〜C4アルコール又は水とこれらアルコールの1種との混合物である。しかし、他の有機溶媒も利用でき、特に、ペンタン、ヘキサン、イソペンタンのような不分岐若しくは分岐炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサンのような環状炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)のような有機線状若しくは環状エーテル;又は酢酸エチルのような液状有機エステルが挙げられる。さらに、シリコーン系溶媒も適し、特に、線状若しくは環状ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン油(ジメチコーン又はシクロメチコーン)が好適である。溶媒は、好ましくは0.5〜99質量%の量、特に好ましくは40〜90質量%の量で存在する。
本発明の組成物は、さらに0.01〜25質量%の少なくとも1種の毛髪ケア活性成分、毛髪固定活性成分及び/又は毛髪着色活性成分を含有しうる。毛髪固定活性成分は、特に、公知の通常の膜形成及び毛髪固定ポリマーである。膜形成及び毛髪固定ポリマーは、合成源又は天然源のポリマーでよく、また非イオン性、カチオン性、アニオン性又は両性の特性を有するポリマーでよい。このようなポリマー添加剤は、0.01〜25質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜15質量%の量で存在してよく、1種より多くのポリマーの混合物から成ることもあり、この添加剤に濃化効果のあるポリマーをさらに添加して毛髪固定特性についてさらに改変することができる。本発明の膜形成、毛髪固定ポリマーは、水溶液、アルコール溶液又は水-アルコール溶液中0.01〜5%の濃度で利用した場合、ポリマー膜を毛髪上に沈着させ、それによってこの方法で毛髪を固定できるポリマーである。
【0012】
本発明の毛髪処理組成物中の適切な合成の非イオン性膜形成、毛髪固定ポリマーとして、800〜20,000g/モルの分子量を有する、ビニルピロリドンのホモポリマー、N-ビニルホルムアミドのホモポリマー、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルのターポリマー、ポリアクルアミド、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールを利用することができる。好適な合成のアニオン性膜形成ポリマーは、クロトン酸/酢酸ビニルコポリマーと、アクリル酸、酢酸エチル及びN-t-ブチルアクリルアミドのターポリマーである。天然の膜形成ポリマー又はそれから化学変換によって得られるポリマーも本発明の毛髪処理組成物に使用できる。分子量が30,000〜70,000g/モルの低分子キトサン又は高分子キトサン、キトサンの有機-可溶性誘導体、オリゴ糖、単糖類及び二糖類の混合物、チャイニーズバルサム樹脂、セルロース誘導体(分子量30,000〜50,000g/モルのヒドロキシプロピルセルロースのような)、又は中和又は非中和形態のセラックが良好であることが判った。本発明の毛髪処理組成物では両性ポリマーも使用できる。例えば、オクチルアクリルアミド、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、及びアクリル酸、メタクリル酸及びその単一エステルから成る群より選択される2種以上のモノマーのコポリマーが好適である。本発明で使用しうるカチオン性ポリマーでは、ビニルピロリドンのジアルキルアミノアクリレート及びジアルキルアミノメタクリレートの四級化誘導体とのコポリマー(硫酸ジエチルで四級化したビニルピロリドン/ジメチルアミノメタクリレートコポリマーのような)を挙げることができる。さらなるカチオン性ポリマーは、例えば、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウムメトクロライド(methochloride)のコポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アクリル酸ナトリウム及びアクリルアミドからのターポリマー、ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びビニルカプロラクタムからのターポリマー、ヒドロキシエチルセルロースと、トリメチルアンモニウムで置換されたエポキシドとから生成される四級アンモニウム塩、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー及びジ四級ポリジメチルシロキサンである。
【0013】
増粘剤を添加して、本発明の毛髪処理組成物の粘稠度を高めることができる。この関連では、例えば、2,000,000〜6,000,000g/モルの分子量を有するアクリル酸のホモポリマーが適する。2,000,000〜6,000,000g/モルの分子量を有する、アクリル酸とアクリルアミドのコポリマー(ナトリウム塩)、菌核ゴム及びアクリル酸とメタクリル酸のコポリマーも好適である。
本発明の化粧剤組成物は、種々の適用形態で使用することができ、例えば、ローション、スプレーローション、クリーム、ゲル、フォームゲル、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、エアロゾルフォーム、非エアロゾルフォーム、o/wエマルジョン若しくはw/oエマルジョン、マイクロエマルジョン又はヘアワックスとして使用できる。
本発明の毛髪処理組成物をエアロゾルスプレーの形態で提供する場合、本組成物は、さらに15〜85質量%、好ましくは25〜75質量%の噴霧剤を含有し、かつ該組成物をスプレーヘッドを有する加圧容器に詰める。噴霧剤としては、低級アルカン(例えば、n-ブタン、イソブタン及びプロパン並びにその混合物)、及びジメチルエーテル又はフルオロ炭化水素(例えば、F 152a(1,1-ジフルオロエタン)又はF 134(テトラフルオロエタン))、及びN2、N2O及びCO2のような問題の圧力でガス状態で存在する噴霧剤、並びに上述した噴霧剤の混合物が好適である。
【0014】
本発明の毛髪処理組成物を噴霧可能な非エアロゾルヘアスプレーの形態で提供する場合、適切な機械式噴霧装置を用いて本組成物を噴霧する。機械タイプの噴霧装置は、噴霧剤を使用せずに組成物を噴霧できる装置である。適切な機械式噴霧装置は、例えば、スプレーポンプ、又はスプレーバルブを備えた弾性容器であり、その中に加圧下で本発明の化粧剤組成物を詰めると前記弾性容器が膨張し、バルブを開けると弾性容器の収縮のため化粧剤組成物が連続的に放出される。
本発明の毛髪処理組成物をヘアフォーム(ムース)の形態で提供する場合、組成物は、この目的で技術的に知られている少なくとも1種の通常の発泡物質を含有する。噴霧ガス又は化学的噴霧剤の助けによって、又は助けなしで組成物を泡立て、フォームとして毛髪中に挿入してから洗い流さずに毛髪中に残す。本発明の製品は、追加要素として組成物を泡立てる道具を有する。泡立てるための道具として、噴霧剤を使用して、又は使用せずに液体を泡立てることができる道具が考えられる。例えば、市販のフォームポンプ又はエアロゾル発泡ヘッドを適切な機械式発泡具として使用することができる。
本発明の毛髪処理組成物をヘアゲルの形態で提供する場合、本組成物は、さらに少なくとも1種の好ましくは0.05〜10、特に好ましくは0.1〜2質量%の量のゲル形成物質を含有する。ゲルの粘度は、25℃にて好ましくは100〜50,000mm2/秒、特に好ましくは1,000〜15,000mm2/秒(50秒-1のせん断速度でBohlin Rheometer CS、測定体C25を用いて動粘度として測定)に達する。
【0015】
本発明の毛髪処理組成物をヘアワックスの形態で提供する場合、本組成物は、水-不溶性の脂肪物質若しくは蝋様物質、又は組成物に蝋様粘稠度を与える物質を好ましくは0.5〜30質量%の量で含有する。好適な水-不溶性物質は、例えば、7未満のHLB-値を有する乳化剤、シリコーン油、シリコーン蝋、蝋原料(例えば、蝋アルコール、蝋酸、蝋エステル、及び特に蜜蝋、カルナウバ蝋などのような天然蝋)、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル又は800〜20,000、好ましくは2,000〜10,000g/モルの分子量を有する高分子ポリエチレングリコールである。
本発明の毛髪処理組成物をヘアローションの形態で提供する場合、実質的に非粘性又は低粘性の溶液、分散系又はエマルジョンとして存在し、それぞれ流動でき、少なくとも10質量%、好ましくは20〜95質量%の化粧剤適合性アルコールを含む。アルコールとして使用するためには、特に、例えばエタノール及びイソプロパノールのような化粧用目的で通常用いられる低級のC1〜C4アルコールが好適である。
本発明の毛髪処理組成物をヘアクリームの形態で提供する場合、好ましくはエマルジョンの形態で提供し、さらに0.1〜10質量%の量で粘性供給成分を含有し、或いは適宜の乳化剤、脂肪酸、脂肪アルコール、蝋などの助けでミセル形成による常法で、必要な粘度及びクリーム状粘稠度を築き上げる。
【0016】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、ヘアスタイル創作の改良と毛髪着色の供給の両方を同時に促進することができる。着色毛髪処理組成物として、例えば、着色固定剤、着色クリーム、着色フォーム等として本組成物を調製する。本組成物は、少なくとも1種の着色物質を含む。この着色物質成分は、有機着色剤、特にいわゆる直接染料でよく、或いは無機顔料も含みうる。
本発明の物質中、着色物質の総量は約0.01〜7質量%、好ましくは約0.2〜4質量%である。本発明の組成物で使用しうる適切な直接染料は、例えば、トリフェニルメタン着色剤、芳香族ニトロ着色剤、アゾ着色剤、キノン着色剤又はカチオン性若しくはアニオン性着色剤である。毛髪を着色するため、かつ本発明の着色物質で使用可能なさらなる公知かつ通常の着色剤は、とりわけ、E. Sagarin, “Cosmetics, Science and Technology“, Interscience Publishers Inc., New York (1957), pages 503 ff. and H. Janistyn, “Handbuch der Kosmetika und Riechstoffe“, Band 3 (1973), pages 388 ff. and K. Schrader “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika“, 2nd edition (1989), pages 782-815に記載されている。
適切な毛髪着色顔料は、適用媒体中で実際的に不溶性の着色剤であり、これら顔料は有機又は無機特質のものでよい。無機-有機混合相顔料も可能である。顔料は、好ましくはナノ顔料でない。好ましい粒径は1〜200μm、特に3〜150μm、特に好ましくは10〜100μmである。無機顔料が好ましい。
【0017】
本発明の毛髪処理組成物は、好ましくはさらに0.01〜10、特に好ましくは0.05〜5質量%の量で少なくとも1種の毛髪ケア物質を含有する。好ましい毛髪ケア物質は、シリコーン化合物及びカチオン性物質であり、これら物質は、カチオン性基又はカチオン性を与えうる基、特に一級、二級、三級又は四級アミン基のため、人毛への直接染色性を有する。好適なカチオン性物質は、カチオン性テンシド、ベタイン性、両性テンシド、カチオン性ポリマー、カチオン性基又はカチオン性を与えうる基を有するシリコーン化合物、カチオン誘導体化タンパク質又はタンパク質加水分解物及びベタインから選択される。
好適なシリコーン化合物は、例えば、ポリジメチルシロキサン(INCI:ジメチコーン)、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリオキシジメチルシリレン(INCI:ジメチコノール)、環状ジメチルポリシロキサン(INCI:シクロメチコーン)、トリメチル(オクタデシルオキシ)シラン(INCI:ステアロキシ(stearoxy)トリメチルシラン)、ジメチルシロキサン/グリコールコポリマー(INCI:ジメチコーンコポリオール)、末端ヒドロキシル基を有するジメチルシロキサン/アミノアルキルシロキサンコポリマー(INCI:アモジメチコーン)、ラウリル側鎖と末端ポリオキシエチレン鎖及び/又は末端ポリオキシプロピレン鎖を有するモノメチルポリシロキサン(INCI:ラウリルメチコーンコポリオール)、ジメチルシロキサン/グリコールコポリマーアセテート(INCI:ジメチコーンコポリオールアセテート)、末端トリメチルシリル基を有するジメチルシロキサン/アミノアルキルシロキサンコポリマー(INCI:トリメチルシリルアモジメチコーン)である。好ましいシリコーンポリマーは、ジメチコーン、シクロメチコーン及びジメチコノールである。シリコーンポリマーの混合物、例えば、ジメチコーンとジメチコノールの混合物も好適である。括弧内に与えた名称は、化粧剤用活性成分及び添加剤の命名で採用されているINCI(国際化粧品成分(International Cosmetic Ingredients))命名法に対応する。
【0018】
原則として、本発明の毛髪処理組成物には、公知の化粧用添加剤、例えば、ポリエチレングリコールのような非固定性の非イオン性ポリマー;非固定性のアニオン性ポリマー及び天然ポリマー、並びにその混合物を、好ましくは0.01〜50質量%の量でさらに添加することができる。0.01〜5質量%の量で香油、0.01〜5質量%の量でエチレングリコールジステアレートのような乳白剤、0.1〜30質量%の量で、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性テンシド、例えば脂肪アルコールスルフェート、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸アルカノールアミド、例えばヒマシ油から得られる含水脂肪酸のエステルの分類の湿潤剤又は乳化剤、並びに0.01〜10質量%の量でモイスチャライザー、染料受容性改良剤、光保護剤、抗酸化剤及び保存剤を添加することもできる。
【0019】
本発明のさらなる目的は、
−上述した本発明の組成物を毛髪に適用し、
−適用前、適用と同時又は適用後、加熱下で、所定形状に毛髪を整え、かつ
−その後に冷却して前記形状を固定する、
毛髪処理方法である。
毛髪の成形は、少なくともT'transの温度への加熱下で適切に起こり、T'trans未満の温度に冷却することによって毛髪の形状を固定する。通常、室温は周囲温度を指し、好ましくは少なくとも20℃であり、温かい気候では、好ましくは少なくとも25℃である。組成物の毛髪上への適用は、種々の方法で行うことができ、例えば、直接噴霧して、或いはまず手又は適切な道具、例えば、くし、ブラシ等に組成物を適用し、その後毛髪内又は毛髪上に分布させることによって間接的に適用することができる。組成物の粘稠度は、例えば、溶液、分散系、ローション、濃厚ローション、ゲル、フォーム又は半固形化合物の粘稠度でよく、或いはクリーム様又は蝋様でよい。
本発明のさらなる目的は、プログラム化した回復可能な第1ヘアスタイルの上に第2ヘアスタイルを刻印する方法である。この関係では、まず、上記方法でプログラム化したヘアスタイル(永久的形状)をTtrans以上の温度又はT'transとTtransの間の温度に加熱する。次に、毛髪を所望の第2(一時的)形状にし、Ttrans未満の温度に冷却して第2形状を固定する。
本発明のさらなる目的は、上記方法でプログラム化した第1ヘアスタイル(永久的形状)を回復する方法に関する。この目的のため、一次的形状のヘアスタイル又は低温成形で変形したヘアスタイルをTtrans以上の温度に加熱する。永久的形状が再び自発的かつ自動的に生じる。
本発明は、さらに、上記方法で予めプログラム化した永久的ヘアスタイルを異なった新しい永久的形状に再プログラム化する方法に関する。この目的のため、最初のヘアスタイルをT'trans以上の温度に加熱し、毛髪を新しい形状にする。その後に、T'trans未満の温度に冷却することによって新しい形状を固定する。
【0020】
本発明の文脈における用語“ヘアスタイル”は広く解釈するものとし、例えば、毛髪のウェーブの程度又は毛髪のストレートさの程度をも含む。本発明の文脈では、プログラム化ヘアスタイルは、架橋して永久的形状に固定した形状記憶ポリマーによる特有の形状を示す1群のヘアである。本発明の文脈では、プログラム化ヘアスタイルの回復は、プログラム化ヘアスタイルが、第1緩和サイクル後に起こる形状について、変形後に検出できる程度まで、好ましくは少なくとも60%の程度まで、特に好ましくは少なくとも80%の程度まで回復することを意味する。回復度は、例えば、ヘアカール又はヘアストランドの長さを測定して決定することができる。ヘアスタイルの低温形成は、ヘアドライヤー又は同様の装置を用いてさらなる熱を供給しないで、周囲温度でヘアスタイルを変えることを意味する。この変形は、例えば、機械的、例えば、重力の影響下で単にカールを掛けることによって、毛髪を櫛で梳き又はブラッシングして、風又は湿度の結果として、或いは睡眠又は横になっている間の物理的影響の結果として起こりうる。
【0021】
本発明の文脈における形状記憶ポリマーは、ポリマーにいずれの形状(永久的形状)も刻印できるという特性を有する原料を生成でき、変形後又は第2形状(一時的形状)の刻印後、単に加熱又は別のエネルギー刺激の結果として、自発的かつ外力を加えずに形状が回復するポリマーである。同時に、変形と回復は複数回可能である。最初の永久的形状が達成される度合は、原則として第1緩和サイクルではその後のサイクルにおけるよりいくらか低く、おそらく初めにまだ存在している欠陥スポット、テクスチャー等の排除のためだろう。しかし、その後の緩和サイクルでは特に高い回復度が達成される。第1緩和サイクルでの回復度は、好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%であり、次の緩和サイクルでは、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも80%である。しかし、この度合は90%以上でもよい。回復度は、処理したヘアカールの長さを測定することによって、又は公知の適切な応力-ひずみ実験を用いて、普通のカール保持力測定法に従って測定することができる。
【0022】
本発明の文脈では、物理的に架橋可能な形状記憶ポリマーは、架橋によって刻印された永久的形状の固定が物理的相互作用によって起こるポリマーである。ポリマー鎖の特有セグメントが結晶領域中に集合する時、物理的相互作用による架橋が達成されうる。物理的相互作用は、高分子電解質セグメントの電荷移動錯体、水素結合、双極子相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用又はイオン相互作用でよい。相互作用は、1つのポリマー鎖内(分子内)及び/又は異なるポリマー鎖間(分子間)で、異なるセグメント間で起こりうる。相互作用の形成は、例えば、冷却(特に、結晶化の場合)及び/又は乾燥、すなわち溶媒の除去によって惹起することができる。
【0023】
図1は、毛髪の処理方法を概略的に示す。ヘアストランドをヘアカーラー上に巻き付け、ブロックポリマーを含有する本発明の液状組成物を噴霧する。適切なエネルギー源、例えば、ヘアドライヤーで熱処理して所望形状を固定する。その後カーラーをはずす。
図2は、最初に調製したヘアスタイルの変形とその回復を示す。最初の(永久的)形状のヘアカールは長さl0を有する。変形した形状のカールは長さl1を有する。回復した形状のカールは長さl2を有する。以下のように回復度を計算できる:
回復=(l1−l2)/(l1−l0)。
【0024】
組成物の形状記憶特性の評価の尺度として記憶係数を利用できる。この記憶係数は永久的ヘアスタイルの一時的形状への形成能(成形係数)、及び一時的形状から開始する永久的形状の回復(回復係数、回復度)を考察する。カーリー形状が永久的形状として刻印され、その後にその上に第2のストレート形状が一時的形状として刻印されているストレートヘアストランドで開始する場合、以下の基準に従って成形係数を決定できる。





【0025】
【表1】

【0026】
以下の基準に従って回復係数を決定できる。
【表2】

【0027】
成形係数f、最大成形係数F=4、特定の回復係数r及び最大回復係数R=6を用いて下記方程式で記憶係数Mを計算できる。
M=(f/F)*(r/R)*100
理想的には、記憶係数は20未満でなく、好ましくは少なくとも25又は少なくとも30、特に好ましくは35〜100であるべきだ。
以下の実施例は、本発明の対象をさらに説明することを意図している。
【0028】
〔実施例〕
以下の実施例で使用するトリブロックコポリマーの製造は、開始剤として中間ブロックを形成するそれぞれのジオール及び普通のエステル化反応で末端ブロックを形成するそれぞれのポリエステルとのエステル化を用いて行う。
〔オリゴエステルジオールの製造〕
ジカルボン酸(1モル)とジオール(1.2〜1.5モル)を100℃で撹拌して混合する。次にp-トルエンスルホン酸(総質量に対して1〜5質量%)を添加してエステル化反応を開始させる。反応終了後、温度を40℃に冷まし、塩化メチレンを加えて反応塊を溶かす。生成物をメタノール中で沈殿させ、メタノールで洗浄し、真空乾燥チャンバー内で乾燥させる。GPC(ポリスチレンで較正)を用いて平均モル質量を決定する。
【0029】
〔実施例1〜56〕
組成物、約2〜3%の以下のブロックコポリマーをエタノール/水(50:50)又はエタノール/水/アセトン(45:45:10)中で製造する。
【表3】






【0030】
【表4】

【0031】
〔実施例57〜100〕
組成物、約2〜3%の以下のブロックコポリマーをエタノール/水/アセトン(25:25:50)中で製造する。
【表5】













【0032】
【表6】















【0033】
実施例:トリブロックコポリマーによる毛髪処理
【表7】

Ac=アセトン、W=水、Et=エタノール
【0034】
ヘアコーティング及び永久的形状の生成:
水で湿らせた長さ20cmのヘアストランドをカーラーに巻き付け、その上にポリマー溶液を塗布する(20〜30mg(ポリマー)/g(ヘア))。処理したヘアストランドを30分間70℃に加熱する。室温(約25℃)に冷却後、ヘアカーラーをはずす。カールしたストランド(刻印された永久的形状)は約4.5cmの長さだった。
一時的形状の生成と永久的形状の回復:
一時的形状(例えば、ストレート)を生成するため、カールしたストランドを約55℃に加熱し、最初の全長(20cm)に伸ばし、再び室温に冷ます。このストレートストランドを約55℃に加熱することによって永久的形状を回復させうる。この温度で、ストランドは自発的に永久的(カーリー)形状に収縮する。
一時的形状(例えば、ストレート)を再び生成するため、カールしたストランドを再び55℃に加熱し、その全長(20cm)に伸ばし、室温に冷ます。
【0035】
〔化粧用ヘア組成物の実施例〕
実施例1:エアロゾルヘアブローローション
【表8】

活性成分溶液を、噴霧剤としてDMEと共に比45:55でエアロゾル缶に詰める。







【0036】
実施例2:エアロゾルヘアブローローション
【表9】

活性成分溶液を、噴霧剤としてDMEと共に比45:55でエアロゾル缶に詰める。
【0037】
実施例3:エアロゾルヘアブローローション
【表10】

活性成分溶液を、噴霧剤としてプロパン/ブタン(2.7バール)と共に比65:35でエアロゾル缶に詰める。
【0038】
実施例4:ヘアスプレー
【表11】

活性成分溶液を、噴霧剤としてDMEと共に比45:55でエアロゾル缶に詰める。










【0039】
実施例5:エアロゾル固定フォーム
【表12】

【0040】
実施例6:エアロゾル固定フォーム
【表13】

【0041】
実施例7:エアロゾル固定フォーム
【表14】



【0042】
実施例8:エアロゾル固定フォーム
【表15】

【0043】
実施例9:エアロゾル固定フォーム
【表16】

【0044】
実施例10:エアロゾル固定フォーム
【表17】




【0045】
実施例11:非エアロゾルヘアブローローション
【表18】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0046】
実施例12:非エアロゾルヘアブローローション
【表19】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0047】
実施例13:非エアロゾルヘアブローローション
【表20】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0048】
実施例14:非エアロゾルヘアブローローション
【表21】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0049】
実施例15:非エアロゾルヘアブローローション
【表22】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0050】
実施例16:非エアロゾルヘアブローローション
【表23】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。




【0051】
実施例17:スプレー固定剤
【表24】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0052】
実施例18:スプレー固定剤
【表25】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0053】
実施例19:スプレーゲル
【表26】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。






【0054】
実施例20:スプレーゲル
【表27】

組成物をポンプスプレー装置を備えたパッケージに詰めて非エアロゾルスプレーとして使用することができる。
【0055】
実施例21:ポンプ固定フォーム
【表28】

【0056】
実施例22:ポンプ固定フォーム
【表29】









【0057】
実施例23:ポンプ固定フォーム
【表30】

【0058】
実施例24:ポンプ固定フォーム
【表31】

【0059】
前述した各化粧用毛髪組成物では、ブロックポリマー番号1〜100の別のブロックポリマーを代わりに或いは追加して使用することができる。
実施例で使用した略号は以下の意味を有する。
PEG-4k、PEG-6k、PEG-8k:それぞれ分子量が4,000、6,000又は8,000のポリエチレングリコール
PDL:ペンタデカラクトン;15-ヒドロキシペンタデカン酸のラクトン
PPDL:ポリ(ペンタデカラクトン)、ポリ(15-ヒドロキシペンタデカン酸)
P-LL-LA:ポリ(L-乳酸)
P-DL-LA:ポリ(DL-乳酸)
PCL:ポリ(ε-カプロラクトン)
P (CL-co-LA):ポリ(ε-カプロラクトン-コ-DL-乳酸)
PCL-b-PPDL:ポリ(ε-カプロラクトン)-ブロック-ポリ(ペンタデカラクトン)
PEG(4k)-DMA、PEG(8k)-DMA、PEG(10k)-DMA:
ポリ(エチレングリコール)-ジメタクリレート
PLGA(7k)-DMA:ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)-ジメタクリレート
PCl (10k)-DMA:ポリ(ε-カプロラクトン)-ジメタクリレート
D-OEt 1000:ダイマージオール-オリゴエーテル Mn=1000(Sovermol 909)
D-OEt 2000:ダイマージオール-オリゴエーテル Mn=2000(Sovermol 910)
D-OEs 1000:オリゴエステル-ジオール Mn=1000
グリセロールモノステアレートとアゼライン酸から
D-OEs 2000:オリゴエステル-ジオール Mn=2000
ヒドロキシステアリルアルコールとアジピン酸から
D-OEs 3000:オリゴエステル-ジオール Mn=3000
ヒドロキシステアリルアルコールとアゼライン酸から
D-OEs 4000:オリゴエステル-ジオール Mn=4000
ヒドロキシステアリルアルコールとアゼライン酸から
D-OEs 5000:オリゴエステル-ジオール Mn=5000
ヒドロキシステアリルアルコールとアゼライン酸から
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】毛髪の処理方法を概略的に示す。
【図2】最初に調製したヘアスタイルの変形とその回復を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切な化粧基剤中に、ポリエーテル、オリゴエーテル、炭化水素(少なくとも400g/モルの分子量と少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシル基を有する)、オリゴエステルジオール及びジカルボン酸とジオールのポリエステルから選択されるポリオールである少なくとも1つの第1ブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンのポリエステルである少なくとも2つのさらなるブロックとを有する少なくとも1種のブロックポリマーを含有する化粧剤組成物。
【請求項2】
前記ブロックポリマーが、
a)室温以上にある第1転移温度T'transを有する少なくとも1つの硬セグメントを有し、かつ
b)T'trans未満にある第2転移温度Ttransを有する少なくとも1つの軟セグメントを有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ブロックポリマーが式A(B)nを有し、式中、Aは、n価のポリエーテル若しくはオリゴエーテル、又は炭化水素(少なくとも400g/モルの分子量とn個のアルコール性ヒドロキシル基を有する)、又はオリゴエステルジオール、又はジカルボン酸と1つのジオールのポリエステルから誘導され、Bはポリ(ヒドロキシカルボン酸)ブロックを表し、かつnは2以上の数を表すことを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
Aが、多価アルコールのポリアルキレングリコールエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)、ダイマージオール、ダイマージオールオリゴエーテル、オリゴエステルジオールから選択され、
Bが、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ペンタデカノラクトン)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)から選択され、かつ
nが2、3又は4であることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロックポリマーが、中間ブロックとして単一のポリオールブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンと末端アルコール性ヒドロキシル基の2つの末端ポリエステルブロックとを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロックポリマーが下記一般式を有することを特徴とする請求項5記載の組成物。
HO-[B1-C(=O)O-]n1[Y-O-]n2[C(=O)-B2-O-]n3
(式中、B1及びB2は同一又は異なり、1〜40個のC原子を有する分岐、環状又は線状アルキレン基を意味し、Yは、2〜30個のC原子を有する分岐、環状又は線状アルキレン基、或いはジカルボン酸とジオールのポリエステルブロックを意味し、かつn1、n2及びn3は、同一又は異なるゼロより大きい数である。)
【請求項7】
B1及びB2が、2〜20個のC原子を有する分岐、環状又は線状アルキレン基を意味し、かつYがエチレン基及び/又はプロピレン基を意味することを特徴とする請求項6記載の組成物。
【請求項8】
B1及びB2が、2〜20個のC原子を有する分岐又は線状アルキレン基を意味し、Yがエチレン基を意味し、かつn1、n2及びn3が、前記ブロックポリマーの分子量が2,000以上になるように選択されることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記ブロックポリマーが3〜80%の結晶化度を有し、かつTtrans未満とTtrans以上の弾性率の比が少なくとも20であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ブロックポリマーが0.01〜25質量%の量で含まれることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種のさらなる活性成分が0.01〜25質量%の量で含まれ、前記活性成分が毛髪ケア物質、毛髪固定物質及び毛髪着色物質から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ローション、スプレーローション、クリーム、ゲル、フォームゲル、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、エアロゾルフォーム、非エアロゾルフォーム、o/w若しくはw/oエマルジョン、マイクロエマルジョン又はヘアワックスの形態で存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を含有する化粧用物質。
【請求項13】
ポリエーテル、炭化水素(少なくとも400g/モルの分子量と少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシル基を有する)、ダイマージオール又はダイマージオールから得られる誘導体及びジカルボン酸とジオールのポリエステルから選択されるポリオールである少なくとも1つの第1ブロックと、ヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンのポリエステルである少なくとも2つのさらなるブロックとのブロックポリマーの、毛髪処理の目的のための使用。
【請求項14】
毛髪処理方法であって、
−請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を毛髪に適用し、
−適用前、適用と同時又は適用後に、毛髪を加熱下で所定形状に整え、
−その後に冷却して毛髪を固定する、
毛髪処理方法。
【請求項15】
毛髪の成形が、少なくともT'transの温度への加熱下で起こり、かつその後の毛髪の形状の固定が、T'trans未満の温度に冷却することによって達成されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
毛髪処理方法であって、
−請求項14又は15記載の方法で創作した第1ヘアスタイル(永久的形状)をT'transとTtransの間の温度に加熱し、
−毛髪を第2(一時的)形状にし、かつ
−Ttrans未満の温度に冷却することによって第2形状を固定する、
毛髪処理方法。
【請求項17】
請求項14又は15記載の方法で予めプログラム化したヘアスタイル(永久的形状)の回復方法であって、請求項15記載の一時的形状のヘアスタイル又は低温成形によって変形したヘアスタイルをTtrans以上の温度に加熱する、前記方法。
【請求項18】
請求項14又は15記載の方法で予め創作したヘアスタイルを変える方法であって、
−ヘアスタイルをT'trans以上の温度に加熱し、
−ヘアスタイルを新しい形状にし、かつ
−その後にT'trans未満の温度に冷却することによって、新しい形状を固定する、
前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−500141(P2007−500141A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521440(P2006−521440)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007799
【国際公開番号】WO2005/012388
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506032794)ムネモサイエンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】