説明

ポリカーカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた熱線遮蔽成形体

【課題】ヘイズが低く透明性に優れ、かつ日射透過率が低く十分な熱線遮蔽性を有し、さらに機械的強度、溶融熱安定性にも優れ、一般建築物の窓ガラス、自動車の窓ガラス等に好適なポリカーボネート樹脂組成物及びその熱線遮蔽成形体を提供する。
【解決手段】特定の粘度平均分子量を有し、かつ、特定の末端水酸基濃度を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に無機系近赤外線吸収剤として微量のタングステン酸化物微粒子を配合することにより、ヘイズが低く透明性に優れ、かつ日射透過率が低く十分な熱線遮蔽性を有する熱線遮蔽成形体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射透過率が低く十分な熱線遮蔽の機能を有し、かつ、特にヘイズが低く透明性に優れ、さらには機械的強度、溶融熱安定性にも優れ、一般建築物の窓ガラス、自動車の窓ガラス等に好適なポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた熱線遮蔽成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般建築物の窓ガラス、自動車の窓ガラスを透過して室内に進入する近赤外線は、室内の温度を過度に上昇させる原因になっている。これを防止するため、日射透過率が低く十分な熱線遮蔽の機能を有し、かつ特にヘイズが低く透明性に優れた熱線遮蔽性樹脂組成物及び熱線遮蔽成形体の提供が強く求められている。このような要求に対し、特許文献1及び2には、ポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と略記することがある)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂または塩化ビニル樹脂に、フタロシアニン化合物を配合した熱線遮蔽材が開示されているが、十分な熱線遮蔽性を付与するには多量のフタロシアニン化合物を配合しなければならず、多量に配合するとヘイズが高くなり透明性が低下し、耐候性も不十分なものであった。
【0003】
また、特許文献3及び4には、金属や金属酸化物を蒸着した熱線反射フィルムを透明樹脂板に積層した熱線遮蔽性樹脂板も開示されているが、熱線反射フィルムが高価で、煩雑な積層工程が必要であり、実用性の低いものであった。
【0004】
さらに、本出願人は、特許文献5に、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂およびフッ素系樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂に、6ホウ化物を配合した熱線遮蔽樹脂成形体を提案しているが、ヘイズや透明性の調整が必要であり、一般建築物の窓ガラスや自動車の窓ガラス用としては課題を有していた。
特許文献6には、タングステン酸を加水分解して得られた酸化タングステンを用い、該酸化タングステンに、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加することにより、太陽光が照射されると、光線中の紫外線が酸化タングステンに吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線量により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなると共に、光を遮断することによって、5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が速くなる特性を用い、太陽光に対する着色および消色反応が速く、着色時近赤外域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することができる太陽光可変調光断熱材料が得られることが提案されている。
【0005】
また、本出願人は、特許文献7に、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま溶媒を蒸発させるか、または加熱還流した後溶媒を蒸発させ、その後100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステンまたはその水和物または両者の混合物からなる粉末を得ること、該酸化タングステン微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることができること、等を提案している。
【0006】
また、特許文献8には、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩を原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度で加熱し、この加熱中に不活性ガス(添加量;約50vol %以上)または水蒸気(添加量;約15vol %以下)を添加した水素ガスを供給することにより、Mx WO3 (M;アルカリ、アルカリ土類、希土類などの金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを作製する方法が提案されている。また、同様の操作を支持体上で行わせ、種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造する方法が提案され、燃料電池等の電極触媒材料として用いることが提案されている。
【0007】
さらに、本出願人は、特許文献9に、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体の光学特性や導電性、製造方法について開示している。
【特許文献1】特開平6−240146号公報
【特許文献2】特開平6−264050号公報
【特許文献3】特開平10−146919号公報
【特許文献4】特開2001−179887号公報
【特許文献5】特開2004−162020号公報
【特許文献6】特開平9−127559号公報
【特許文献7】特開2003−121884号公報
【特許文献8】特開平8−73223号公報
【特許文献9】国際公開WO2005/37932号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、新たな無機系近赤外線吸収剤を用い、ヘイズが低く透明性に優れ、かつ日射透過率が低く十分な熱線遮蔽性(特に、可視光には透過性を有し、選択的に赤外線を遮蔽する機能)を有し、さらに機械的強度、溶融熱安定性にも優れ、一般建築物の窓ガラス、自動車の窓ガラス等に好適なポリカーボネート樹脂組成物及びこれを用いた熱線遮蔽成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の粘度平均分子量を有し、かつ、特定の末端水酸基濃度を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に無機系近赤外線吸収剤として微量のタングステン酸化物微粒子を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、粘度平均分子量が12、000〜50、000であり、末端水酸基濃度が100〜1800ppmの範囲内である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、900〜2600nmの波長域の太陽光を吸収する無機系近赤外線吸収剤(B)0.001〜5重量部を含むポリカーボネート樹脂組成物であって、
無機系近赤外線吸収剤(B)が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物からなる無機微粒子であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の第2の発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルからエステル交換反応により重合されたものであることを特徴とする第1の発明に記載のポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の第3の発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が300〜1500ppmであることを特徴とする第1の発明または第2の発明に記載のポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明の第4の発明は、第1〜3の発明いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる熱線遮蔽成形体であって、厚み0.2〜10mmの板状部分を有し、かつ、該板状部分における、ヘイズが5%未満であり、日射透過率が70%以下であることを特徴とする熱線遮蔽成形体を提供する。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記成形体の板状部分の片面または両面に、ハードコート層及び反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上有することを特徴とする第4の発明に記載の熱線遮蔽成形体を提供する。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記板状部分の色相が、L***表色系で評価したとき、L*値=93〜35、a*値=0〜−12及びb*値=3〜−7で表される範囲内にあることを特徴とする第4または5発明に記載の熱線遮蔽成形体を提供する。
【0016】
本発明の第7の発明は、上記成形体が一般建築物用または車両用の窓若しくは窓部品であることを特徴とする第4〜6の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽成形体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びこれを用いた熱線遮蔽成形体は、特定の粘度平均分子量を有し、かつ、特定の末端水酸基濃度を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に無機系近赤外線吸収剤として微量のタングステン酸化物微粒子を配合することにより、特にヘイズが低く透明性に優れ、かつ日射透過率が低く十分な熱線遮蔽性(特に、可視光には透過性で選択的に赤外線を遮蔽する機能)を有し、さらに機械的強度や溶融熱安定性にも優れているので、一般建築物や自動車の窓ガラス、アーケードやカーポート等の屋根材、赤外線カットフィルター等の光学材、農業用フィルム等として使用でき、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が12、000〜50、000であり、末端水酸基濃度が100〜1800ppm(重量基準)である芳香族ポリカーボネート樹脂である。末端水酸基濃度は100〜1800ppm(重量基準)であればよいが、好ましくは、末端水酸基濃度が300〜1500ppmであれば良く、特に好ましくは、末端水酸基濃度が400〜1200ppmの芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0019】
また、本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、12、000〜50、000であることが必要であり、好ましくは15、000〜40、000、特に好ましくは17、000〜32、000である。粘度平均分子量が12、000未満では機械的強度が低く、50、000を超えると成形性が低下する傾向にある。
【0020】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂を本発明に用いることにより、特にヘイズが低く、透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂の製造法には、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法があるが、本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造法は、特に制限はないが、エステル交換法で製造されることが好ましい。詳しくは、本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、好ましくは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換触媒の存在下、溶融状態でエステル交換、重合することにより製造されるものである。
【0022】
以下、本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂について、具体的に説明する。
【0023】
(a)芳香族ジヒドロキシ化合物
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の原料の一つである芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとして、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0024】
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。さらに、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン(THPE)、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン等の分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を分岐化剤として少量併用することもできる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物のなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」とも言い、「BPA」と略記することもある。)が好ましい。
【0025】
(b)炭酸ジエステル
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造のための、他の原料の一つである炭酸ジエステルは、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表されるジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記することもある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0026】
上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0027】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端水酸基濃度が100〜1800ppm(重量基準)であり、好ましくは300〜1500ppm、さらに好ましくは400〜1200ppmである。
【0028】
該芳香族ポリカーボネート樹脂を得るためには、上記炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸またはジカルボン酸のエステルを含む。以下同じ。)を芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、過剰に用いる。すなわち、炭酸ジエステルを、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して1.001〜1.3、好ましくは1.01〜1.2の範囲内のモル比で用いる。モル比が1.001より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端水酸基が増加して、特に1800ppmを超えると熱安定性、耐加水分解性が悪化する。また、モル比が1.3より大きくなると、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基は減少するが、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望の分子量のポリカーボネートポリマー及びオリゴマーの製造が困難となる傾向があり、さらに末端水酸基濃度が100ppm未満では、ポリカーボネート樹脂組成物のヘイズが高くなり、透明性が低下するので好ましくない。
【0029】
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものである。末端水酸基の測定方法は特に制限は無いが、四塩化チタン/酢酸法(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)が一般的である。
【0030】
エステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が、ヘイズが良好となる理由は明確ではないが、エステル交換反応に伴って生成する異種骨格構造が、構造単位中にOH基、COOH基等の官能基を有し、これらの官能基が末端OH基と類似の作用をすることに起因すると推定される。
【0031】
下記式(1)で表される正常な構造単位モル数に対する、下記式(2)及び(3)で表される異種構造単位の合計モル数の百分率(モル%)で、異種骨格構造の量(以下、「異種構造量」という。)を表示するが、本発明においては、エステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂の異種構造量は、通常、0.01〜1モル%であり、好ましくは、0.1〜0.5モル%である。異種構造量が、少なすぎるとヘイズの改善効果が不十分であり、多すぎると架橋反応によるゲル生成、色相悪化を招き好ましくない。
【0032】
【化1】

(式中、Xは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、または、−O−、−S−、−CO−、−SO−及び−SO2 −からなる群から選ばれる2価の基である。)
上記異種骨格構造の分析は、芳香族ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し、ナトリウムメトキシドメタノール溶液と純水の混合液で、室温で加水分解を行い、液体クロマトグラフ法で、検出波長280nmのUV検出器によって行う。定量は、各成分の吸光係数より求める。簡便法としては、ビスフェノールAのピーク面積に対する各成分のピーク面積の比率から算出することもできる。
【0033】
(c)エステル交換触媒
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、溶融状態でエステル交換反応させて芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造においては、使用するエステル交換触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して0.05〜200μモル、好ましくは0.08〜10μモル、さらに好ましくは0.1〜2μモルの範囲内で用いられる。触媒の使用量が上記量より少なければ、所望の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られず、この量より多い場合は、ポリマー色相が悪化する傾向がある。
【0035】
上記エステル交換触媒は、通常、溶媒に溶解した触媒溶液の形態で用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、アセトン、アルコール、トルエン、フェノールの他、原料芳香族ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステル等を溶解する溶媒が挙げられる。これらの溶媒のなかでは水が好ましく、特にアルカリ金属化合物を触媒とする場合には、水溶液とすることが好適である。
【0036】
(d)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、エステル交換法であれば、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法が採用される。
例えば、原料混合槽等で、上記両原料を均一に撹拌した後、触媒を添加して重合を行い、芳香族ポリカーボネート樹脂が製造される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式を組み合わせた何れの形式でも良い。
【0037】
芳香族ポリカーボネート樹脂の重合反応(エステル交換反応と記す場合もある)は、一般的には2以上の重合槽を用いて、2段階以上、通常3〜7段の多段工程で連続的に実施されることが好ましい。具体的な反応条件としては、温度150〜320℃、圧力常圧〜2Pa、平均滞留時間5〜150分の範囲とし、各重合槽においては、反応の進行とともに副生するフェノールの排出をより効果的なものとするために、上記反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。なお、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、できるだけ短い滞留時間の設定が好ましく、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂の品質に合わせて、適宜調整すればよい。
【0038】
上記エステル交換反応において使用する装置は、竪型、横型、管型または塔型のいずれの形式であってもよい。通常、タービン翼、パドル翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立製作所製)等を具備した1以上の竪型重合槽に引き続き、円盤型、かご型等の横型一軸タイプの重合槽やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、メガネ翼、格子翼((株)日立製作所製)、またはメガネ翼とポリマーの送り機能を持たせた、例えばねじりやひねり等の入った翼、及び/または、傾斜がついている翼等を組み合わせたもの等を具備した、横型二軸タイプの重合槽を用いることができる。
【0039】
エステル交換法で製造した芳香族ポリカーボネート樹脂中には、通常、原料モノマー、触媒、エステル交換反応で副生する芳香族ヒドロキシ化合物等の低分子量化合物が残存している。なかでも、原料モノマーと芳香族ヒドロキシ化合物は、残留量が多く、耐熱老化性、耐加水分解性等の物性に悪影響を与えるので、製品化に際して除去されることが好ましい。
【0040】
具体的には、ポリカーボネート樹脂中の残存モノマー量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が150重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下、さらに好ましくは重量50ppm以下であり、芳香族モノヒドロキシ化合物は重量100ppm以下である。さらに炭酸ジエステル残存量は300重量ppm以下、好ましくは200重量ppm以下、さらに好ましくは150重量ppm以下である。
【0041】
上記芳香族モノヒドロキシ化合物や炭酸ジエステルを除去する方法は、特に制限はなく、例えば、ベント式の押出機により連続的に脱気することにより除去することができる。その際、あらかじめ酸性化合物またはその前駆体をポリカーボネート樹脂中に添加し、樹脂中に残留している塩基性エステル交換触媒を失活させておくことにより、脱気中の副反応を抑え、効率よく原料モノマー及び芳香族ヒドロキシ化合物を除去することができる。
【0042】
添加する酸性化合物またはその前駆体には特に制限はなく、重縮合反応に使用する塩基性エステル交換触媒を中和する効果のあるものであれば良く、具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸性化合物またはその前駆体のうち、スルホン酸化合物またはそのエステル化合物、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等が、特に好ましい。
【0043】
上記酸性化合物またはその前駆体の添加量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和量に対して、0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モルの範囲で添加すれば良い。上記酸性化合物またはその前駆体を添加する時期としては、重縮合反応後であれば、いつでもよく、添加方法にも特別な制限はなく、酸性化合物またはその前駆体の性状や所望の条件に応じて、直接添加する方法、適当な溶媒に溶解して添加する方法、ペレットやフレーク状のマスターバッチを使用する方法等のいずれの方法でもよい。
【0044】
脱気に用いられる押出機は、単軸でも二軸でもよい。二軸押出機としては、噛み合い型二軸押出機が好ましく、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。脱気の目的には、酸性化合物添加部の後にベント部を有するものが好ましい。ベント数に制限は無いが、通常は2段から10段の多段ベントが用いられる。また、上記押出機では、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等の添加剤を添加し、樹脂と混練することもできる。
(B)タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子
本発明で用いる無機系近赤外線吸収剤(B)は、太陽エネルギー由来の熱線をカットする観点から、900〜2600nmの波長域の太陽光を吸収することが必要である。
【0045】
この条件を満たす無機系近赤外線吸収剤として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物からなる無機微粒子が必要である。
【0046】
なお、900〜2600nmの波長域の太陽光を吸収するものであっても、フタロシアニン系化合物その他の有機金属化合物では、安定性に乏しく、PC樹脂中への練り込みや、成形、過酷な使用環境下で変質し品質に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0047】
本発明においては、無機系近赤外線吸収剤を含む混合物を用いることもでき、例えば、複合タングステン酸化物(Cs0.33WO3)25質量%とアクリル系分散剤の混合物などが挙げられる。複合タングステン酸化物を含むPC樹脂マスターバッチを用いることもでき、例えば、Cs0.33WO3 1.5質量%含有のPC樹脂マスターバッチなどが挙げられる。
【0048】
一般に、WO3中には有効な自由電子が存在しないため、WO3は近赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線遮蔽材料としては有効ではない。ここで、WO3のタングステンに対する酸素の比率を3より低減することによって、WO3中に自由電子が生成されることが知られているが、本発明者等は、該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線遮蔽材料として特に有効な範囲があることを見出した。
【0049】
該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3以下であり、さらには、当該赤外線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。このz/yの値が、2.2以上であれば、当該赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され、効率よい赤外線遮蔽材料となる。
【0050】
また、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子において、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、近赤外線領域の吸収特性も良いので、赤外線遮蔽材料として好ましい。
【0051】
さらに、当該WO3に、元素M(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、Ba、In、Li、Sn、Ca、Sr、Naのうちから選択される1種類以上の元素)を添加することで、当該WO3中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるため好ましい。ここで、元素Mが添加された当該WO3における安定性の観点からは、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、Ba、In、Li、Sn、Ca、Sr、Naのうちから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。
【0052】
ここで、当該WyOzに対し、上述した酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用することで、より効率の良い赤外線遮蔽材料を得ることが出来る。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用した赤外線遮蔽材料の一般式を、MxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0の関係を満たす赤外線遮蔽材料が望ましい。
【0053】
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。
【0054】
x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線遮蔽効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線遮蔽材料中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
【0055】
また、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上であることが好ましい。
【0056】
ここで、元素Mを添加された当該MxWyOzにおける、安定性の観点からは、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。そして、赤外線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点からは、前記元素Mにおいて、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものが、さらに好ましい。
【0057】
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される赤外線遮蔽材料においても、上述したWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
【0058】
さらに、上述の複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。図1において、符号1で示すWO6単位にて形成される8面体が、6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号2で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
【0059】
本実施形態における、可視光領域の透過率を向上させ、近赤外領域の吸収特性を向上させる効果を得るためには、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1で説明した単位構造(WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に元素Mが配置した構造)が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が、結晶質であっても非晶質であっても構わない。
【0060】
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過率が向上し、近赤外領域の吸収特性が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Snを添加したとき六方晶が形成されやすく好ましい。勿論これら以外の上記元素でも、WO6単位で形成される六角形の空隙に添加元素Mが存在できるので問題ない。
【0061】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、xの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。xの値が0.33となることで、添加元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0062】
また、六方晶以外で、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも赤外線遮蔽材料として有効である。結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、吸収位置は、正方晶が立方晶よりも長波長側に移動し、さらに六方晶が正方晶よりも長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光領域の吸収特性は、六方晶が最も少なく、次に正方晶であり、立方晶はこの中では最も大きい。よって、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0063】
本実施形態における、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となるものが多い。
【0064】
また、当該赤外線遮蔽材料の粒子の粒子径は、その使用目的によって、各々選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合には、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0065】
この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。理由は、粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱またはミー散乱による、400nm〜780nmの可視光領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましい、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
【0066】
上記粒子径を800nm以下に選択することにより、赤外線遮蔽材料微粒子を媒体中に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体のヘイズ値は可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
【0067】
上記タングステン酸化物、複合タングステン酸化物は、可視光領域の吸収が少なく、近赤外線領域の吸収が大きいので、可視光透過型の赤外線遮蔽材料として、窓等の断熱用に有効である。
(C)タングステン酸化物、複合タングステン酸化物の製造方法
上記一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0068】
タングステン化合物出発原料には、三酸化タングステン粉末、ニ酸化タングステン粉末、または酸化タングステンの水和物、または、六塩化タングステン粉末、またはタングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、またはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
【0069】
ここで、タングステン酸化物微粒子を製造する場合には製造工程の容易さの観点より、タングステン酸化物の水和物粉末、三酸化タングステン、またはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、を用いることがさらに好ましい。また、複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料が溶液である各元素は容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や、六塩化タングステン溶液を用いることがさらに好ましい。これら原料を用い、これを不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子を得ることができる。
【0070】
また、上記元素Mを含む一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子は、上述した一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子のタングステン化合物出発原料と同様であり、さらに元素Mを、元素単体または化合物のかたちで含有するタングステン化合物を出発原料とする。
ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
【0071】
ここで、不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線吸収力を有し赤外線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N2等の不活性ガスを用いることがよい。また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100℃以上650℃以下で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。この時の還元ガスは、特に限定されないが、H2が好ましい。また、還元ガスとしてH2を用いる場合は、還元雰囲気の組成として、例えば、Ar、N2等の不活性ガスにH2が体積比で0.1%以上を混合することが好ましく、更に好ましくは0.2%以上を混合することが良い。H2が体積比で0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0072】
水素で還元された原料粉末はマグネリ相を含み、良好な赤外線遮蔽特性を示し、この状態で赤外線遮蔽微粒子として使用可能である。しかし、酸化タングステン中に含まれる水素が不安定であるため、耐候性の面で応用が限定される可能性がある。そこで、この水素を含む酸化タングステン化合物を、不活性雰囲気中、650℃以上で熱処理することで、さらに安定な赤外線遮蔽微粒子を得ることができる。この650℃以上の熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、工業的観点から、N2、Arが好ましい。当該650℃以上の熱処理により、赤外線遮蔽微粒子中にマグネリ相が得られ耐候性が向上する。
【0073】
本発明において、無機系近赤外線吸収剤(B)成分である上記一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子に加えて、更にB成分100重量部当たり0.0001〜0.1重量部のSi、Zr、TiおよびAlの群から選択される少なくとも1種または2種以上の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物(B'成分)を含有することが好ましい。
【0074】
また、本発明において、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子は、その表面をシラン化合物、チタン化合物、ジルコニア化合物等によって被覆処理されているものを使用することができ、これ等化合物で微粒子表面を被覆処理することで、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子の耐水性を向上させることが可能となる。
【0075】
さらに、本発明において、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子は、均一な分散性と作業性を向上させるために、高分子系分散剤中に分散させることが好ましい。このような高分子系分散剤は、透明性が高く可視光領域の光線透過率が高いものが使用できる。具体的な高分子系分散剤として、ポリアクリレート系分散剤、ポリウレタン系分散剤、ポリエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤、ポリエステルウレタン系分散剤等が挙げられ、好ましくはポリアクリレート系分散剤、ポリエーテル系分散剤、ポリエステル系分散剤である。高分子系分散剤のタングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子に対する配合割合は、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子1重量部に対して、0.3重量部以上50重量部未満であり、好ましくは1重量部以上15重量部未満である。
【0076】
タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を高分子系分散剤中に分散させる方法は、例えば、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子は、有機溶剤及び高分子系分散剤を適量混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いて5時間ビーズミル混合し、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子分散液(タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子は:15重量%)を調製する。さらに、上記分散液に高分子系分散剤を適量添加し、撹拌しながら60℃減圧下で有機溶剤を除去して、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得ることができる。
【0077】
芳香族ポリカーボネート樹脂とタングステン酸化物との配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子0.001〜5重量部であり、さらに好ましくは0.005〜1重量部である。タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子はの配合割合が0.001重量部未満では熱線遮蔽効果が小さく、5重量部を超えるとヘイズが高くなって透明性が低下し、コスト的にも不利になるので好ましくない。
【0078】
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、下記する耐候性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、染顔料を配合することが、成形時、または窓若しくは窓部品として使用する上で、色相安定性が向上するので好ましい。
(D)耐候性改良剤
耐候性改良剤としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0079】
本発明では、これらのうち有機紫外線吸収剤が好ましく、特にベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2'−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルが挙げられる。
【0080】
ベンゾトリアゾール化合物としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレン ビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等を挙げることができる。
【0081】
耐候性改良剤として特に好ましいものは、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2'−メチレン ビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕が挙げられる。
【0082】
耐候性改良剤の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部である。5重量部を超えるとモールドデボジット等の問題があり、0.01重量部未満では耐候性の改良効果が不十分である。耐候性改良剤は1種でも使用可能であるが、複数種併せて使用することもできる。
(E)熱安定剤
本発明で好ましく使用される熱安定剤は、分子中の少なくとも1つのエステルが、フェノール及び/または炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物、亜リン酸及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトから選ばれた少なくとも1種である。
亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジノリルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジラウリルフェニルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)フェニルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイオト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、(フェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(フェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,4−ブタンジオール)ホスファイト等、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,3,6−トリメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ビフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジナフチルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0083】
熱安定剤の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部であり、好ましくは0.001〜0.4重量部である。1重量部を超えると耐加水分解性が悪化する等の問題がある。
(F)酸化防止剤
本発明で好ましく使用される酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。具体例としては、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3',3",5,5',5"−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a"−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。上記のうちで,特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系酸化防止剤は,チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社よりイルガノックス1010及びイルガノックス1076の名称で市販されている。
【0084】
フェノール系酸化防止剤の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部である。フェノール系酸化防止剤の配合量は0.01重量部未満であると、抗酸化剤としての効果が不十分であり、1重量部を超えても抗酸化剤として更なる効果は得られない。
(G)離型剤
本発明で好ましく使用される離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物及びポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0085】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族1価、2価若しくは3価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価または2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0086】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。この脂肪族カルボン酸と反応しエステルを形成するアルコールとしては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール、または多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0087】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0088】
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスまたは炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中で好ましいものは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンワックスの部分酸化物であり、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。数平均分子量は200〜15000であるが、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記範囲内であればよい。
【0089】
また、ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても二種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
離型剤の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部である。離型剤の配合率が1重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
(H)染顔料
本発明で使用される染顔料としては、無機顔料 、有機顔料、有機染料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばカーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料、群青等の珪酸塩系顔料、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料、紺青等のフェロシアン系等が挙げられる。有機顔料及び有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料、ニッケルアゾイエロー等のアゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等が挙げられる。中でも熱安定性の点から酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物等が好ましく、カーボンブラック、アンスラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物がさらに好ましい。それらの具体例としては、MACROLEX Blue RR、MACROLEX Violet 3R、MACROLEX Violet B(バイエル社製)、Sumiplast Violet RR、Sumiplast Violet B、Sumiplast Blue OR(住友化学工業(株)製)、Diaresin Violet D、Diaresin Blue G、Diaresin Blue N(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0091】
染顔料の配合率は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1重量部以下であり、好ましくは0.3重量部以下、さらに好ましくは0.1重量部以下である。該着色剤は1種でも使用可能であるが、複数種併用することもできる。
本発明において、染顔料の配合は、本来、透過光による視認性を調整する目的で行われる。すなわち、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子の配合量が増加すると、成形体の色相が変化し視認性を低下させる(具体的には、L*値を低下させ、a*値及びb*値の絶対値を増大させる)傾向があるので、配合する染顔料の種類及び/または配合率を選定して適正な色相にすることにより、透過光による視認性が改善される。もちろん、成形体の用途によっては、例えば、サンルーフ等では、熱線遮蔽性を損なわない範囲で、カーボンブラック等の黒色顔料を配合して、意図的にL値を低下させることもできる。
(I)赤外線吸収剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、熱線遮蔽性能をさらに改善する目的で必要に応じて、さらにアンチモンドープ酸化錫微粒子、In、Ga、Al及びSbよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有する酸化亜鉛微粒子、錫ドープ酸化インジウム微粒子、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、硫化銅、銅イオン等の他の有機、無機系赤外線吸収剤を配合することもできる。
(J)その他の添加剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、ABS、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の他の熱可塑性樹脂、リン系、金属塩系、シリコン系等の難燃剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状強化材、マイカ、タルク、ガラスフレーク等の板状強化材あるいはチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、ワラストナイト等のウィスカー等無機系充填剤等の添加剤を配合することができる。
(K)ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えば、(1)芳香族ポリカーボネート樹脂の重合反応の途中または重合反応終了時に、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子やその他の添加剤を混合する方法、(2)混練途中等、芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融した状態で、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子やその他の添加剤を混合する方法、(3)ペレット等、芳香族ポリカーボネート樹脂が固体状態にあるものに、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子やその他の添加剤を混合後、押出機等で溶融・混練する方法等が挙げられる。
(L)熱線遮蔽成形体
(a)成形方法及び成形体
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から熱線遮蔽成形体を成形する方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂について一般的に用いられている成形法、例えば、射出成形、射出ブロー成形、射出圧縮成形、ブロー成形、フィルムやシート等の押出成形、異型押出成形、熱成形、回転成形等の何れをも適用できる。さらに、ガスまたは水等の流体アシスト成形、超臨界または亜臨界ガスを使用した成形、各種印刷等の機能化処理されたフィルムまたはシートのインサート成形、2色成形、インモールド成形、他樹脂または紫外線吸収層等の共押し出し、ラミネート等も可能である。成形可能な形状の自由度から、好ましくは射出成形または射出圧縮成形がよい。さらに射出成形または射出圧縮成形ではホットランナーを使用することもできる。
【0092】
成形体の形状は、必要に応じて任意の形状に成形可能であるが、平面状または曲面状の板状部分を有することが好ましい。板状部分の厚みは特に制限は無いが、本発明の熱線遮蔽成形体は、0.2mm以上10mm以下の板状部分が存在するものである。板状部分の厚みは好ましくは1mm以上10mm以下、もっとも好ましくは3mm以上8mm以下である。板状部分の厚みが0.2mm以下では、十分な熱線遮蔽性能を得るために、タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を高濃度で配合する必要があり透明性が得難い。このような熱線遮蔽成形体は必要に応じてさらにアニール処理等を行い、他部品と接着することも可能である。接着方法も特に制限は無いが、溶剤による接着のほか、振動溶着、レーザー溶着等公知の方法を使用することができる。
【0093】
また、本発明の熱線遮蔽成形体は、厚み0.2〜10mmの板状部分を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形体であって、該熱線遮蔽成形体中の板状部分における、ヘイズが5%未満であり、好ましくは3%未満、より好ましくは2.5%以下であり、かつ、日射透過率が70%以下、好ましくは60%以下であるのが好ましく、全光線透過率と日射透過率の比(全光線透過率/日射透過率)が好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上、さらには1.9以上である。全光線透過率と日射透過率の比が大きいことは、可視光に比べて熱線を選択的に吸収することを示し、この値が大きいことが好ましい。
(b)ハードコート層、反射防止層
本発明の熱線遮蔽成形体に、窓若しくは窓部品として要求される性能を付与するため、該板状部分の片面もしくは両面にハードコート層、反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上有する熱線遮蔽成形体であるのが好ましい。
【0094】
厚み0.2〜10mmの板状部分を有する該熱線遮蔽成形体の片面または両面にハードコート層及び反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上積層する方法は、特に限定されるものでなく、従来公知の種々の方法が用いられる。
【0095】
反射防止層は、例えば、(A)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着法等の各種真空蒸着法;(B)プラズマ蒸着法;(C)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法;(D)DC法、RF法、多陰極法、活性化反応法、HCD法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法;(E)CVD法等によって形成することができる。さらに、反射防止層は、ZrO2 ゾル、TiO2 ゾル、Sb2 5 ゾル、WO3 ゾルのような高屈折率を有する金属酸化物ゾルをシリコン系ハードコート剤やプライマー中に分散させ、塗布・熱硬化させることによって形成することもできる。
【0096】
ハードコート層の形成には、所望によりアンダーコート層を設けた上に、エポキシ系、アクリル系、アミノ樹脂系、ポリシロキサン系、コロイダルシリカ系、有機・無機ハイブリッド系等のハードコート剤を、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フローコート法等の各種塗布法により塗布し、熱または紫外線等の手段により硬化する方法を用いることができる。
【0097】
これらのハードコート層は、熱線遮蔽成形体上に1層以上設けることができる。例えば、熱線遮蔽成形体上に直接ハードコート剤を塗付することも可能であるが、基材上に予め形成されたアンダーコート層の上に塗布してもよい。さらに、ハードコート層の表面を、プラズマ重合等によりSiO2 等の無機化合物処理の他、防曇処理、反射防止膜塗布等を行うことも可能である。また、ハードコート層は、成形品表面にハードコート剤を塗付して形成するだけではなく、ハードコート層を有するシートまたはフィルムを金型内にセットし、そこへポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することでハードコート層を有する一体成形体を作成することも可能である。
【0098】
これらハードコート層中には、諸種の処理剤、例えばトリアゾール系、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤や、ホウ化物、ITO、ATO、ZnO、アンチモン酸亜鉛等の金属・金属酸化物微粒子系熱線遮蔽剤、銅系化合物、有機錯体系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、アミニウム系、シアニン系、アゾ化合物系、キノン系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系等の有機系熱線遮蔽剤等の各種熱線遮蔽剤を含有させることもできる。これらの添加剤は、ハードコート層及び/またはアンダーコート層のいずれに添加してもよい。
【0099】
反射防止層やハードコート層の厚さは1μm〜20μm、好ましくは2μm〜10μmである。1μm未満では反射防止層やハードコート層の耐久性が不足し、20μmを超えると反射防止層やハードコート層にクラックが発生し易くなる。本発明の熱線遮蔽成形体の表面被覆層としては、窓若しくは窓部品としての観点から、ハードコート層であることが好ましい。
【0100】
本発明に関わる熱線遮蔽成形体が有する厚み0.2〜10mmの板状部分は、ヘイズが5%未満であり、好ましくは3%未満、より好ましくは2.5%以下であり、かつ、日射透過率が70%以下であることが好ましく、60%以下が特に好ましい。ヘイズが5%以上では透明性が低下し、一般建築物や車両の窓ガラスとして不適である。また、日射透過率が70%を超えると、一般建築物や車両の室内温度が過度に上昇することがあるので本発明から除外される。
【0101】
本発明の熱線遮蔽成形体は、被覆層上またはポリカーボネート樹脂上に任意の部分加飾を施すことが可能であり、ブラックアウト、各種マーク、キャラクター等により意匠性を付与することができるが、熱線遮蔽成形体中の板状部分であってこれら加飾が施されていない部分の色相は、L***表色系で評価したとき、L*値が93〜35、a*値が0〜−12、b*値が3〜−7であることが好ましい。L値が35未満であると、a*値及びb*値が、それぞれ、0〜−12及び3〜−7の所定範囲内であっても、黒ずんで透明感が低下する。また、L*値が80以上であっても、a*値及びb*値が、それぞれ、−12及び−7より小さいと緑〜青味の強い色になり、0及び3より大きいと赤〜黄味の強い色となり好ましくない。さらに、L*値、a*値及びb*値が上記範囲から外れる場合には、ポリカーボネート樹脂組成物の色相熱安定性も低くなる傾向にある。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、使用した原材料の詳細は、以下のとおりである。
〔原材料〕
(1)芳香族ポリカーボネート
*PC−1: エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量=21、000、末端水酸基濃度=1000ppm、異種構造量=0.30モル%)
*PC−2: エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量=21、000、末端水酸基濃度=150ppm、異種構造量=0.35モル%)
*PC−3: 界面法で製造されたポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量=21、000、末端水酸基濃度=150ppm、異種構造量=0モル%)
*PC−4: 界面法で製造されたポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ノバレックス7022pj、粘度平均分子量=21、000、末端水酸基濃度=50ppm、異種構造量=0モル%)
(2)複合タングステン酸化物微粒子1:Cs0.33WO3微粒子分散物、Cs0.33WO3微粒子含量20重量%
(3)耐候性改良剤: 2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、シプロ化成(株)製、商品名シーソーブ709(以下、「紫外線吸収剤1」と略記)
(4)熱安定剤: トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、旭電化工業(株)製、商品名アデカスタブAS2112(以下、「リン系安定剤1」と略記)
(5)酸化防止剤: ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名イルガノックス1010(以下、「フェノール系安定剤1」と略記)
(6)離型剤1: ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本油脂(株)製、商品名ユニスターH476)

また、以下の実施例において、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、熱線遮蔽成形体の評価法は、以下のとおりである。
〔評価法〕
(1)ヘイズ・全光線透過率: JIS K−7136に準じ、3mm厚の平板を試験片とし、(株)村上色彩技術研究所製、HM−150W型ヘイズメーターで測定した。
(2)日射透過率: 3mm厚の平板を試験片とし、(株)日立作所製のU−4000型分光光度計を使用して測定した波長域200〜2600nmの光線の透過率の値から、JIS R−3106に従って日射透過率を算出した。
(3)L*値、a*値、b*値: 3mm厚の平板を試験片とし、日立製作所製のU−4000型分光光度計を用いて色調(L*、a*、b*表色系)を算出した。
【0103】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表1に記載の原料及び添加剤を混合後、混合物を40mm単軸押出機に供給し、280℃で混練、ペレット化した。
【0104】
得られたペレットを120℃、5時間乾燥後、名機製作所製のM150AII−SJ型射出成形機を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒の条件で、3mm厚の平板を成形した。この平板表面上に、アクリル系アンダーコート、シリコン系ハードコートの順に、それぞれ塗付・UV硬化を行い、10μm厚のアンダーコート層及び5μm厚のハードコート層を形成したものを、上記評価法(1)〜(3)用試験片とした。評価結果を表1に示した。
【0105】
【表1】



「評価」
上記表1において、実施例1〜3と比較例1、実施例4と比較例2の間では、複合タングステン酸化物の配合量が同一で比較するとき、末端水酸基濃度が所定の範囲から小さく外れているポリカーボネート樹脂を使用した場合は、ヘイズが高くなり、透明性が低下し、所定の範囲のポリカーボネート樹脂を使用した場合は、ヘイズが低く透明性に優れていることが明らかである。
また、実施例1〜3により、使用したポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度によって、ヘイズの低下効果に差があることが明らかである。
また、本発明の実施例の成形体は、ヘイズも低く、熱線遮蔽機能も十分優れており、色相も安定していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態における六方晶を有する複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 WO6単位
2 M元素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量が12、000〜50、000であり、末端水酸基濃度が100〜1800ppmの範囲内である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、900〜2600nmの波長域の太陽光を吸収する無機系近赤外線吸収剤(B)0.001〜5重量部を含むポリカーボネート樹脂組成物であって、
無機系近赤外線吸収剤(B)が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物からなる無機微粒子であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルからエステル交換反応により重合されたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が300〜1500ppmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる熱線遮蔽成形体であって、厚み0.2〜10mmの板状部分を有し、かつ、該板状部分における、ヘイズが5%未満であり、日射透過率が70%以下であることを特徴とする熱線遮蔽成形体。
【請求項5】
上記成形体の板状部分の片面または両面に、ハードコート層及び反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上有することを特徴とする請求項4に記載の熱線遮蔽成形体。
【請求項6】
上記板状部分の色相が、L***表色系で評価したとき、L*値=93〜35、a*値=0〜−12及びb*値=3〜−7で表される範囲内にあることを特徴とする請求項4または5に記載の熱線遮蔽成形体。
【請求項7】
上記成形体が一般建築物用または車両用の窓若しくは窓部品であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の熱線遮蔽成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−214596(P2008−214596A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58122(P2007−58122)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】