説明

ポリカーボネートポリオールに基づくポリウレタン−ポリウレア分散体

本発明は、ポリカーボネート−ポリオールに基づく新規な加水分解安定性ポリウレタン−ポリウレア水性分散体、その製造方法および被覆材料中でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル−ポリカーボネート−ポリオールに基づく、新規な加水分解安定性ポリウレタンポリウレア水性分散体、その製造方法および被覆材料中でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基材を、水性バインダー、特にポリウレタン−ポリウレア(PU)分散体を用いて被覆することが増えつつある。PU水性分散体の調製は、当業者に知られている。
【0003】
軟質基材、特に繊維製品および皮革の被覆物においては、溶媒含有系は、低溶媒系または溶媒不含水性系にますます置き換わりつつある。ポリウレタン分散体は、繊維製品被覆物および皮革被覆物の要件、例えば高い化学薬品耐性、高い機械耐性ならびに高い引張強度および柔軟性等をほとんど満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、軟質基材用の被覆組成物として新規なPU分散体を提供することであり、該PU分散体は、上記のPU分散体の要件を満たすだけでなく、優れた熱安定性、加水分解安定性および保色性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリカーボネートポリオールに基づくイオン性/または非イオン性親水性ポリウレタン−ポリウレア水性分散体(PUD)により、上記の特性の範囲を有する被覆物を基材上に製造できることを見出した。本発明による被覆物は、上昇した温度下で長期間、向上した加水分解耐性、熱安定性および優れた保色性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従って、本発明は、以下の合成成分:
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2)1000〜3000g/molの数平均分子量を有し、18〜56mgKOH/gのヒドロキシル価および1.8〜2.2のOH官能価を有する1以上のポリカーボネートポリオール、
I.3)62〜400g/molの分子量を有し、合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.5)1以上のイソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物、および
I.6)必要に応じて、1以上のイソシアネート反応性の非イオン的に親水性化する化合物
を含み、ポリオール成分I.2)が、成分I.2)の合計重量を基準として60重量%〜100重量%のポリテトラメチレングリコール系ポリカーボネートポリオールを含有し、但し、該ポリカーボネートポリオールは、ポリテトラメチレングリコールポリオールに基づかない、ポリウレタン−ポリウレア水性分散体を提供する。
【0007】
本発明は、
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2)1000〜3000g/molの数平均分子量を有し、18〜56mgKOH/gのヒドロキシル価および1.8〜2.2のOH官能価を有する1以上のポリカーボネートポリオール、
I.3)62〜400g/molの分子量を有し、合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.5)1以上のイソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物、
I.6)必要に応じて、1以上のイソシアネート反応性の非イオン的に親水性化する化合物
を反応させて、ウレア基不含イソシアネート官能性プレポリマーを調製する工程であって、イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比が1.0〜3.5である工程、
b)該反応生成物を水中に分散する工程、および
c)水中での分散前、分散中または分散後に、残存するイソシアネート基をアミノ官能性鎖延長または連鎖停止する工程であって、前記プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する鎖延長のために用いる化合物のイソシアネート反応性基の当量比が40%〜150%の間である工程
を含む、本発明のポリウレタンポリウレア水性分散体の製造方法を提供する。
【0008】
他に特記のない限り、明細書および特許請求の範囲における「分子量」に対する全ての参照は、数平均分子量である。
【0009】
成分I.1)の適当なポリイソシアネートは、当技術分野において知られている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである。これらは、単独でまたは任意の所望の互いの混合物中に用いることができる。
【0010】
適当なポリイソシアネートの例は、ブチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)−メタンまたは任意の所望の異性体含有量を有するこれらの混合物、シクロへキシレン1,4−ジイソシアネート、フェニレン1,4−ジイソシアネート、トリレン2,4−および/または2,6−ジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−または4,4’−ジイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)および1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)である。比例的に、官能価≧2を有するポリイソシアネートを用いることも可能である。これらには、ウレットジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する変性ジイソシアネート、並びに1分子あたり2を越えるNCO基を有する未変性ポリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチルオクタン1,8−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートが含まれる。
【0011】
本発明のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、好ましくは、2〜4、好ましくは2〜2.6、より好ましくは2〜2.4の平均官能価を有する、専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を含有する上記の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0012】
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびこれらの混合物が特に好ましい。
【0013】
適当なポリカーボネートI.2)は、炭素酸誘導体、例えば炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲンとジオールとの反応により得られる。このようなジオールの適当な例として、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAならびにラクトン変性ジオールが挙げられる。ジオール成分は、好ましくは、40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体を含有する。より好ましくは、ジオール成分として、末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を示す例が挙げられる。
【0014】
ヒドロキシルポリカーボネートは、実質上直鎖であるべきである。しかしながら必要に応じて、ヒドロキシルポリカーボネートは、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの組み込みにより、やや分枝していてもよい。適当な例として、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、およびソルビトール、メチルグリコシド、1,3,4,6−ジアンヒドロヘキサイトが挙げられる。
【0015】
ポリウレタン樹脂を合成するのに用いる低分子量ポリオールI.3)は、ポリマー鎖を強固にし、および/または分枝させる効果を通常有する。分子量は好ましくは、62および299g/molの間である。適当なポリオールI.3)は、脂肪族基、脂環式基または芳香族基を含有し得る。その例として、1分子あたり約20個までの炭素原子を有する低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、並びにトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリトリトール、およびこれらと必要に応じて他の低分子量ポリオールI.3)との混合物を挙げることができる。α−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸β−ヒドロキシエチルエステルまたはテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルのようなエステルジオールを使用してもよい。好ましい合成成分ii)は、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールである。1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0016】
ジアミンまたはポリアミン並びにヒドラジドは、I.3)として用いてもよく、その例は、エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドである。
【0017】
I.3)として原理上適当なものは、NCO基に対して異なった反応性を有する活性水素を含有する化合物、例えば第一級アミノ基および第二級アミノ基を両方含有するか、あるいはアミノ基(第一級または第二級)の他にOH基も含有する化合物等である。そのような化合物の例は、第一級/第二級アミン、例えば3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、ならびにアルカノールアミン、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン、特に好ましくはジエタノールアミンである。本発明のPU分散体の製造では、これらを、鎖延長剤としておよび/または連鎖停止剤として用いることができる。
【0018】
本発明のPU分散体は、必要に応じて、いずれの場合にも鎖末端に位置し、該末端を封鎖する、単位I.4)を含有してもよい。該単位は、NCO基と反応性の単官能性化合物、例えばモノアミン、特に第二級モノアミン、またはモノアルコールに由来する。本発明では、その例として、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンおよび/またはこれらの適当な置換誘導体、第一級アミンおよびモノカルボン酸から形成されたアミドアミン、ジ第一級アミンのモノケチム、第一級/第三級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0019】
イオン的にまたは潜在的イオン的に親水性化する化合物I.5)とは、少なくとも1つのイソシアネート反応性基並びに少なくとも1つの官能基、例えば−COOY、−SOY、−PO(OY)(Yは、例えばH、NH、金属カチオンである)、−NR、−NR(Rは、H、アルキル、アリールである)等を含有する全ての化合物を意味し、これらは、水性媒体との相互作用に際して、pH依存性解離平衡状態になり、かくして、負電荷、正電荷または中性電荷を有し得る。好ましいイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基またはアミノ基である。
【0020】
成分I.5)の定義に対応する適当なイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物は、例えば、モノ−およびジ−ヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジ−アミノカルボン酸、モノ−およびジ−ヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジ−アミノスルホン酸並びにモノ−およびジ−ヒドロキシホスホン酸またはモノ−およびジ−アミノホスホン酸およびこれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−または−ブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸との付加物(EP−A0916 647、実施例1)およびそのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩;重亜硫酸ナトリウムとブタ−2−エン−1,4−ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールとNaHSOとのプロポキシル化付加物(例えば、DE−A2446440(5〜9頁、式I〜III)に記載)ならびに親水性合成成分として、カチオン性基に変換し得る単位、例えば、アミン系単位(例えばN−メチルジエタノールアミンなど)を含有する化合物である。また、例えば、成分I.5)の定義に対応する化合物として、WO−A01/88006中のシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)を使用することもできる。
【0021】
好ましいイオン性化合物または潜在的イオン性化合物I.5)は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有するものである。特に好ましいイオン性化合物I.5)は、イオン性基または潜在的イオン性基としてカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有するもの、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩またはIPDIとアクリル酸との付加生成物の塩(EP−A0916647、実施例1)並びにジメチロールプロピオン酸の塩等である。
【0022】
成分I.6)の定義に対応する適当な非イオン的に親水性化する化合物は、例えば少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、30重量%〜100重量%のエチレンオキシド由来の単位の画分を含有する。
【0023】
エチレンオキシド単位を含有する末端親水性鎖を組み込むための親水性合成成分I.6)は、好ましくは、式(I):
H−Y’−X−Y−R (I)
〔式中、
Rは、1〜12個の炭素原子を有する1価炭化水素基、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する未置換アルキル基であり、
Xは、少なくとも40%、好ましくは少なくとも65%の程度のエチレンオキシド単位に構成され得、およびエチレンオキシド単位に加えてプロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはスチレンオキシド単位から構成され得る(後述の単位は、好ましくはプロピレンオキシド単位である)、5〜90個、好ましくは20〜70個の鎖構成要素(chain members)を有するポリアルキレンオキシドであり、および
Y/Y’は、酸素であるか、または−NR’−であり、R’は、定義においてRまたは水素に相当する〕
で示される化合物である。
【0024】
特に好ましい合成成分I.6)は、50%を越える、より好ましくは55%〜89%のエチレンオキシド質量分率を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーである。
【0025】
ある好ましい実施態様では、合成成分I.6)として、少なくとも400g/mol、好ましくは少なくとも500g/mol、より好ましくは1200〜4500g/molの分子量を有する化合物を用いる。
【0026】
成分I.1)5重量%〜30重量%、成分I.2)の合計60重量%〜90重量%、化合物I.3)およびI.4)の合計0.5重量%〜30重量%、成分I.5)0.1重量%〜5重量%、成分I.6)0重量%〜10重量%を用いることが好ましく、I.5)およびI.6)の合計は0.1重量%〜15重量%であり、全成分の合計は100重量%となる。
【0027】
成分I.1)5重量%〜25重量%、成分I.2)の合計65重量%〜85重量%、化合物I.3)およびI.4)の合計0.5重量%〜25重量%、成分I.5)0.1重量%〜4重量%、成分I.6)0重量%〜10重量%を用いることが特に好ましく、I.5)およびI.6)の合計は0.1重量%〜14重量%であり、全成分の合計は100重量%となる。
【0028】
成分I.1)13重量%〜20重量%、成分I.2)の合計65重量%〜80重量%、化合物I.3)およびI.4)の合計0.5重量%〜14重量%、成分I.5)0.1重量%〜3.5重量%、成分I.6)1重量%〜6重量%を用いることが極めて特に好ましく、I.5)およびI.6)の合計は0.1重量%〜13.5重量%であり、全成分の合計は100重量%となる。
【0029】
PU水性分散体(I)の製造方法は、1以上の段階において均質相中で、または多段階反応の場合には、部分的に分散相中で行うことができる。I.1)〜I.6)の重付加に続いて、完全にまたは部分的に、分散工程、乳化工程または溶解化工程を行う。その後、必要に応じて、さらなる重付加または変性を分散相中で行う。
【0030】
本発明のPU水性分散体を調製するために、当技術分野において知られている全ての方法、例えばプレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法等を用いることができる。本発明のPU分散体は、好ましくはアセトン法により製造する。
【0031】
アセトン法によりPU分散体(I)を製造するために、第一級または第二級アミノ基を含有してはならない成分I.2)〜I.6)およびイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを製造するためのポリイソシアネート成分I.1)は、通常、初期投入として、全部または一部を投入し、必要に応じてイソシアネート基に対して不活性であるが水混和性の溶媒で希釈し、50〜120℃の範囲の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を促進させるために、ポリウレタン化学において知られている触媒を用いることが可能である。ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0032】
適当な溶媒は、従来法による脂肪族ケト官能性溶媒、例えばアセトンまたはブタノン等であり、例えば、溶媒は、調製の開始時だけでなく、必要に応じて開始後に少しずつ添加するこができる。アセトンおよびブタノンが好ましい。例えばキシレン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、エーテル単位またはエステル単位を有するN−メチルピロリデン溶媒のような他の溶媒も同様に使用し、蒸留によって全てまたは一部を除去し得、または分散体中に完全に残留させ得る。
【0033】
次いで、反応の開始時に添加しなかったI.1)〜I.6)からの任意の成分を計量投入する。
【0034】
ポリウレタンプレポリマーの調製に対して、イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比は、1.0〜3.5、好ましくは1.2〜3.0、より好ましくは1.3〜2.5である。
【0035】
プレポリマーを形成するための成分I.1)〜I.6)の反応を、部分的または完全に、好ましくは完全に行う。このようにして、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを、バルク中(溶媒を含有しない)または溶液中に得る。
【0036】
ポリウレタンプレポリマーの調製は、これが出発分子中で未だ行われていない場合には、アニオン的および/またはカチオン的分散性基の塩の部分的または完全な形成に付随してまたは続いて行う。
【0037】
第三級アミン、例えば各アルキル基中に1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するトリアルキルアミンのような塩基を用いる。これらの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。該アルキル基は、例えば、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のようにヒドロキシル基を有してもよい。中和剤として、適切な場合には、無機塩基、例えばアンモニア水溶液または水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどを用いてもよい。
【0038】
アニオン性基の場合には、上記の目的のために、例えば第三級アミン等の塩基が用いられ、その例は、各アルキル基中に1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するトリアルキルアミンである。これらの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。該アルキル基は、例えば、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のようにヒドロキシル基を有してもよい。中和剤として、必要に応じて、無機塩基、例えばアンモニアまたは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム等を用いることもできる。トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンが好ましい。
【0039】
塩基のモル量は、アニオン性基のモル量の50%と125%の間、好ましくは70%と100%の間である。
【0040】
カチオン性基の場合には、硫酸ジメチルまたはコハク酸ジメチルまたはリン酸ジメチルを用いる。中和は、中和剤を予め含有する分散水によって、分散と同時に行ってもよい。
【0041】
次いで、さらなる方法段階において、未だ行われていないか、または部分的にのみ行われている場合には、得られたプレポリマーを脂肪族ケトン、例えばアセトンまたはブタノンを用いて溶解させる。
【0042】
次いで、可能なNH−官能性および/またはNH−官能性成分を、残存するイソシアネート基と反応させる。鎖延長/連鎖停止は、溶媒中で分散前、分散中または水中で分散後に行い得る。鎖延長は、分散前に水中で好ましく行う。
【0043】
鎖延長を、I.5)の定義に相当するNH基またはNH基を有する化合物を用いて行う場合には、該プレポリマーは、好ましくは、分散操作前に鎖延長する。
【0044】
鎖延長度、言い換えれば、プレポリマーの遊離NCO基に対する鎖延長のために用いた化合物のNCO反応性基の当量比に100%を乗じた値が、40%〜150%の間、好ましくは50%〜120%の間、より好ましくは60%〜120%の間である。
【0045】
アミン成分[I.3)、I.4)、I.5)]を、水希釈形態で、または溶媒希釈形態で、本発明の方法において、単独でまたは混合物中に必要に応じて用いてよく、任意の添加順序が可能である。
【0046】
水または有機溶媒を希釈剤として用いる場合には、該希釈剤含有量は、好ましくは70重量%〜95重量%である。
【0047】
プレポリマーからのPU分散体の調製を、鎖延長に続いて行う。この目的のために、溶解および鎖延長したポリウレタンポリマーを、激しい剪断力、例えば強撹拌等により分散水中に投入するか、または反対に、分散水を、該プレポリマー溶液中に撹拌投入する。好ましくは、水を、溶解プレポリマー中に投入する。
【0048】
次いで、分散工程後に分散体中になお存在する溶媒を、通常、蒸留によって除去する。その除去は、分散中でも可能である。
【0049】
本発明のPU分散体の固形分は、20重量%〜70重量%、好ましくは30重量%〜65重量%の間である。
【0050】
本発明のPU分散体は、抗酸化剤および/または光安定剤および/または他の補助剤および添加剤、例えば乳化剤、消泡剤、増粘剤等を含み得る。最後に、充填剤、可塑剤、顔料、カーボンブラックゾルおよびシリカゾル、アルミニウム分散体、粘度分散体およびアスベスト分散体、流れ調整剤または揺変剤を存在させることも可能である。本発明のPU分散体の特性の所望のパターンおよび使用目的に応じて、全乾燥物質含有量を基準として、70%までの上記の充填剤を、最終生成物中に存在させることが可能である。
【0051】
本発明はまた、本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体を含む被覆材料を提供する。
【0052】
被覆基材を製造するための被覆材料としての本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体の使用を、本発明によりさらに提供する。
【0053】
本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体は、サイズ系または接着剤系を製造するのにも適している。
【0054】
適当な基材の例として、織布および不織布、皮革、紙、硬質繊維、藁、紙状物質、木材、ガラス、任意の極めて幅広い種類のプラスチック、セラミック、石、コンクリート、ビチューメン、磁器、金属またはガラス繊維または炭素繊維が挙げられる。好ましい基材は、とりわけ、軟質基材、例えば繊維製品、皮革、プラスチック、金属基材およびガラス繊維または炭素繊維であり、特に好ましいものは繊維製品および皮革である。
【0055】
本発明はまた、本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体を含む被覆材料で被覆された基材を提供する。
【0056】
本発明のPU分散体は、安定性、貯蔵可能および輸送可能であり、任意の所望のその後の時点で処理することができる。本発明のPU分散体を、120〜150℃の比較的低い温度で2〜3分以内に硬化させ、極めて優れた湿潤結合強度を有する被覆物を得る。
【0057】
高い引張強度と併せて優れた伸縮性のために、本発明のPU分散体は、加水分解条件下でさえ、被覆物および皮革被覆物の分野における用途に特に適している。
【実施例】
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1
279.2gのDesmophen C−2200および14.9gのPolyether LB 25の混合物を、35.6gのDesmodur Iおよび26.9gのDesmodur Hと70℃で組み合わせ、105℃に加熱し、4.13%の一定のNCO値(理論値が4.18%である)が得られるまで105℃で撹拌した。該プレポリマーを631.7gのアセトンにより105℃で溶解し、20分間撹拌した。1.1gのヒドラジン水和物、6.8gのジアミノスルホネートおよび25gの水の混合物を42℃で6分間にわたり添加し、10分間撹拌した。12.7gのIPDAおよび63.6gの水の混合物を40℃で15分以内に添加し、10分間撹拌した。278.6gの水を40℃で15分以内に添加し、5分間、2.8gのIrganox 1010および2.8gのTinuvin 765の添加前に混合した。該混合物を10分間、アセトンを蒸留する前に混合した。最終分散体を50ミクロンフィルターによりろ過した。
【0060】
52.8%の固形分(Mettler moisture Analyzer HR 73、方法 14−007)、23℃で120cpsの粘度(Brookfield 型 RVT、スピンドル 3番、100 rpm、方法 15−003)、0.604ミクロンの平均粒度(Horiba particle size Analyzer 型LA−910、方法 04−003)を有する分散体を得た。
【0061】
比較例1
Impranil DLU(Bayer AG、レーバークーゼン)のような、固形分60%および以下の物理特性を有するアニオン性脂肪族C4ポリエーテルポリカーボネートポリウレタン分散体:100%での弾性率=350psi、引張強度=3500psi、23℃での粘度(AFAM 2008/105、0304−00 D法に従う4mmカップ)<90秒。
【0062】
比較例2
Impranil DLN(Bayer AG、レーバークーゼン)のような、固形分40%および以下の物理特性を有するアニオン性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体:100%での弾性率=300psi、引張強度=2900psi、23℃での粘度(AFAM 2008/105、0304−00 D法に従う4mmカップ)<70秒。
【0063】
【表2】

【0064】
試験の結果
上記の表に示された結果に基づいて、100%ポリカーボネートに基づく分散体は、市販の分散体、例えばImpranil DLUおよびImpranil DLN等よりも向上した加水分解安定性および保色性(ナイロン型編織布について)を示すと言うことができる。Impranil DLUは、C4ポリエーテルポリカーボネートジオールを用いて調製され、非常に良好な加水分解安定性を示すが、ナイロン型編織布についての保色性が低い。Impranil DLNは、ポリエステルジオールを用いて調製され、低い加水分解安定性および低い保色性を有する。
【0065】
例示の目的で本発明を上記に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の合成成分:
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2)1000〜3000g/molの数平均分子量を有し、18〜56mgKOH/gのヒドロキシル価および1.8〜2.2のOH官能価を有する1以上のポリカーボネートポリオール、
I.3)62〜400g/molの分子量を有し、合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.5)1以上のイソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物、および
I.6)必要に応じて、1以上のイソシアネート反応性の非イオン的に親水性化する化合物
を含むポリウレタン−ポリウレア水性分散体であって、該分散体は、前記合成成分の合計重量を基準として60重量%〜90重量%の成分I.2)を含有し、但し、前記ポリカーボネートポリオールは、ポリテトラメチレングリコールポリオールに基づかない、ポリウレタン−ポリウレア水性分散体。
【請求項2】
成分I.1)5重量%〜40重量%、成分I.2)の合計60重量%〜90重量%、化合物I.3)およびI.4)の合計0.5重量%〜20重量%、成分I.5)0.1重量%〜5重量および成分I.6)0重量%〜20重量%を含み、I.5)およびI.6)の合計が0.1重量%〜25重量%の間であり、全ての成分の合計が100重量%となる、請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア水性分散体。
【請求項3】
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2)1000〜3000g/molの数平均分子量を有し、18〜56mgKOH/gのヒドロキシル価および1.8〜2.2のOH官能価を有する1以上のポリカーボネートポリオール、
I.3)62〜400g/molの分子量を有し、合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、
I.5)1以上のイソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的に親水性化する化合物、
I.6)必要に応じて、1以上のイソシアネート反応性の非イオン的に親水性化する化合物
を反応させて、ウレア基不含イソシアネート官能性プレポリマーを調製する工程であって、イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基のモル比が1.0〜3.5である工程、
b)該反応生成物を水中に分散する工程、および
c)水中での分散前、分散中または分散後に、残存するイソシアネート基をアミノ官能性鎖延長または連鎖停止する工程であって、前記プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する鎖延長のために用いる化合物のイソシアネート反応性基の当量比が、40%〜150%の間である工程
を含む、請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア水性分散体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア分散体を含む被覆材料。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆材料を基材に塗布する工程を含む、被覆基材の製造方法。
【請求項6】
基材は、繊維製品および皮革からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4に記載の被覆材料で被覆された基材。

【公表番号】特表2011−523672(P2011−523672A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511632(P2011−511632)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/003239
【国際公開番号】WO2009/148529
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】