説明

ポリカーボネート樹脂組成物及び位相差フィルム

【課題】 所望の波長分散特性をもち、高度な透明性、溶融加工性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる位相差フィルムを提供する。
【解決手段】 (A)下記一般式[1]


[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、またはハロゲン原子である。]で表される繰り返し単位(A1)及び一般式で表される繰り返し単位(A2)よりなり、全カーボネート繰り返し単位における単位(A1)と単位(A2)の割合がモル比で(A1):(A2)=5:95〜95:5の範囲である芳香族ポリカーボネート共重合体100重量部に対して(B)テルペンフェノール樹脂5〜90重量部を配合して得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は所望の波長分散特性をもち、高度な透明性、加工性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる位相差フィルムに関する。
かかる位相差フィルムは、例えば液晶表示装置、記録装置に用いられる光ピックアップ、光記録媒体等の光学装置、発光素子、光演算素子、光通信素子、タッチパネルに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、位相差フィルムは、液晶表示装置等の表示装置に用いられ、色補償、視野角拡大、反射防止等の機能を有している。この位相差フィルムの材料としては、一般にビスフェノールAを重縮合したポリカーボネートやポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリビニールアルコール、ノルボルネン樹脂の熱可塑性ポリマーが用いられる。
位相差フィルムは、例えば、スーパーツイストネマチック(STN)モードの液晶表示装置においては、通常、色補償や視野角拡大を目的として用いられる。この位相差フィルムとしては、次のようなものが知られている。
【0003】
例えば、正の複屈折を生じるポリマーと負の複屈折を生じるポリマーとを混合した樹脂よりなる位相差フィルムが報告されている。具体的には、ポリ(2,6ジメチル−1,4フェニレンオキサイド)とポリスチレンまたは、ポリ塩化ビニルとポリメチルメタクリレートとを混合した樹脂を用いて成形したフィルムを一軸延伸し、それぞれ視野角依存性が小さい位相差フィルムが得られたことがそれぞれ報告されている。(例えば特許文献1参照)
【0004】
また、フルオレン構成単位を有するポリカーボネート樹脂フィルムがキャストフィルム法により得られ、高屈折率で且つ低複屈折性を有することも報告されている。(例えば特許文献2参照)
このようなフルオレン系ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂は、溶融加工する場合、溶融温度が高いため分解によるゲル物が発生しやすいという問題がある。また、高いTg(ガラス転移温度)を有しているためフィルムの延伸加工等のために高い温度を必要とし、従来と異なる特別な加工設備を必要とする等、加工性が必ずしも十分なものとはいえない。
【0005】
また、反射型液晶表示装置、特に偏光板を一枚のみ用いた反射型液晶表示装置においては、位相差フィルムは偏光板と組み合わせて円偏光を発生させる機能を発現させるように光学的に設計されている場合がある。このような液晶表示装置においては、通常、装置全体としての光学的な特徴を最適化するために位相差フィルムの光学設計を行なう。しかしながら、光学的な特性の一つである位相差の波長分散特性は位相差フィルムを構成する材料によりほぼ決定されてしまうため使用できる材料は限られたものとなる。また、一般にポリマー同士は相溶性が悪いので、それらを混合した場合には相分離する。したがって得られた混合物を光学的に観察するとヘーズが高く位相差フィルムには不適当である。そのため実用可能な材料が限られており、互いに相溶するポリマーの組み合わせは、前記したポリ(2,6ジメチル−1,4フェニレンオキサイド)とポリスチレン又は、ポリ塩化ビニルとポリメチルメタクリレートなど非常に少ない。
【0006】
このため、位相差フィルムの位相差の波長分散を液晶セルの位相差の波長分散と合わせるという光学的設計を行なうのは、実用可能なポリマー材料の種類が限られるので難しいのが現状である。また、多くの液晶表示装置メーカーの要求する位相差の波長分散特性を有する種々の位相差フィルムを提供するには、位相差フィルムの製造業者としては、非常に多数の材料を保有し、フィルム化することを考えなくてはならないといった問題があった。さらに、上記したような相溶しうるポリマーの組み合わせは異種のポリマーの組み合わせであるが、熱的耐久性や生産性の点で問題があった。
【0007】
また、位相差の波長分散が制御された位相差フィルムとしては、2枚のフィルムを積層するという下記の技術が知られている。
例えば、位相差の波長依存性が異なる特定の2枚以上の複屈折性フィルムを特定の角度で積層して製造することが報告されている。(例えば特許文献3参照)これらの場合、位相差フィルムを複数枚用いるので、それらを貼り合わせたり、貼り合わせる角度を調整する工程が必要であり、生産性に問題がある。また、位相差フィルム全体の厚さが大きくなるために、光線透過率が低下して、装置に組み込んだときに厚くなったり暗くなるという問題もある。
【0008】
本発明の主たる目的は、位相差の波長分散特性を容易に且つ高度に制御し、高度な透明性、優れた溶融加工性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、同種のポリマーから溶融成形された一枚の位相差フィルムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、光学特性に優れた光学部品を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】特開平4−194902号公報
【特許文献2】特開2001−253960号公報
【特許文献3】特開平2−120804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの問題を解決することを課題とするものである。
即ち、本発明は、所望の波長分散特性をもち、高度な透明性、溶融加工性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる位相差フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、特殊ポリカーボネートにテルペンフェノール樹脂を適量混合することによって優れた透明性、光学特性、加工性を付与出来ることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、(A)下記一般式[1]
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、またはハロゲン原子である。]で表される繰り返し単位(A1)及び下記一般式[2]
【0013】
【化2】

[式中、R5〜R8は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO、CO又はCOO基である。]
で表される繰り返し単位(A2)よりなり、全カーボネート繰り返し単位における単位(A1)と単位(A2)の割合がモル比で(A1):(A2)=5:95〜95:5の範囲である芳香族ポリカーボネート共重合体100重量部に対して(B)テルペンフェノール樹脂5〜90重量部を配合して得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる位相差フィルムである。
【0014】
なお、上記の位相差フィルムは波長450nm及び550nmにおける位相差をそれぞれR(450)及びR(550)としたとき下記の式を満足する事が好ましい。
R(450)/R(550)≦1
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリカーボネート共重合体]
本発明のポリカーボネート共重合体(A)は、それを構成する芳香族ジヒドロキシ成分として、フルオレン系ビスフェノールの割合が全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%、好ましくは10〜95モル%、さらに好ましくは30〜85モル%である。5モル%未満の場合、本発明の目的である光学用材料として不満足な性質となり好ましくない。なお、フルオレン系ビスフェノールは9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンであるのが好ましい。
【0016】
前記9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンは、その10gをエタノール50mlに溶解した溶液を光路長30mmで測定したb値が好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。b値が上記範囲内であれば、得られるポリカーボネート共重合体から形成される成形体は色相が良好で強度が高く、延伸フィルム特性も良好となり好ましい。
【0017】
通常、この9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンはo−クレゾールとフルオレノンの反応によって得られる。前記特定のb値を有する9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンは、特定の処理を行い不純物を除去することによって得ることができる。具体的には、o−クレゾールとフルオレノンの反応後に、未反応のo−クレゾールを留去した後、残さをアルコール系、ケトン系またはベンゼン誘導体系の溶媒に溶解し、これに活性白土または活性炭を加えてろ過後、ろ液から結晶化した生成物をろ過して精製された9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを得ることができる。除去される不純物としては、2,4′−ジヒドロキシ体、2,2′−ジヒドロキシ体および構造不明の不純物等である。かかる精製に用いるアルコール系の溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、ケトン系の溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等の低級脂肪族ケトン類およびこれらの混合物が好ましく、ベンゼン誘導体系の溶媒としてはトルエン、キシレン、ベンゼンおよびこれらの混合物が好ましい。溶媒の使用量はフルオレン化合物が十分に溶解する量であれば足り、通常フルオレン化合物に対して2〜10倍量程度である。活性白土としては市販されている粉末状または粒状のシリカ−アルミナを主成分とするものが用いられる。また、活性炭としては市販されている粉末状または粒状のものが用いられる。
【0018】
本発明のポリカーボネート共重合体において用いられる他のジヒドロキシ成分としては、通常芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンなどが挙げられ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
【0019】
本発明のポリカーボネート共重合体は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0020】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0021】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。
【0022】
また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0023】
本発明のポリカーボネート共重合体は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート共重合体は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
【0024】
本発明のポリカーボネート共重合体は、そのポリマーを塩化メチレンに溶解した溶液での20℃における比粘度をηspとしたとき、
0.18 ≦ ηsp ≦ 0.90
であることが好ましい。より好ましくは、
0.20 ≦ ηsp ≦ 0.75
である。
【0025】
ηspが0.18よりも小さい場合、樹脂が脆く、成形品が非常に割れやすくなるため好ましくない。ηspが0.90よりも大きい場合、樹脂の溶融流動性が非常に低くなり、成形が困難となるため好ましくない。
【0026】
〔テルペンフェノール樹脂〕
本発明ではテルペンフェノール樹脂として、テルペン化合物とフェノール類をフリーデルクラフト触媒のもとで、カチオン重合したものが使用できる。
テルペンフェノール樹脂の原料の1つであるテルペン化合物について説明する。テルペン化合物とは一般に、イソプレン(C)の重合体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)等に分類される。テルペン化合物とは、これらを基本骨格とする化合物である。この中で、本発明では、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペン、モノテルペンが最も好ましく用いられる。これらテルペン化合物の具体的な例として、例えば次のようなものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
テルペン化合物としては、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、カンフェン、トリシクレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等が挙げられる。これらの化合物の中で、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、α−テルピネンが本発明では特に好ましく用いられる。
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0028】
本発明のテルペンフェノール樹脂の分子量は好ましくは500〜1200、さらに好ましくは600〜1100である。
また、本発明のテルペンフェノール樹脂は好ましくはOH価150(KOHmg/g)以下のテルペンフェノール樹脂であり、さらに好ましくは120(KOHmg/g)以下、最も好ましくは100(KOHmg/g)以下のテルペンフェノール樹脂である。
市販されるテルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル(株)製のポリスターシリーズやマイテイーエースシリーズが挙げられる。
【0029】
本発明のテルペンフェノール樹脂の配合量は、ポリカーボネート化合物100重量部に対して5〜90重量部である。好ましくは、5〜70重量部である。90重量部より多いいとテルペンフェノール自体の分解が促進され製膜が難しく、5重量部以下では所望の特性が得られない。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、位相差フィルム、プラセル基板、光ディスクの保護フィルム、導光板又は拡散板等のフィルムまたは、シートとして好適である。
また、本発明の樹脂組成物は、ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズなどのレンズ、プリズム及び光ファイバーなどの光路変換部品、リフローハンダ付け部品、光ディスク、プラスチックミラー、各種筐体、トレイ又は容器のような光学部品(成形品)としても最適である。
【0031】
[添加剤]
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を添加することができる。
添加剤としては、例えば、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、シリコンオイルなどの離型剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料を挙げることができる。
【0032】
熱安定剤は、リン系安定剤が好ましく、このようなリン系安定剤には、例えば、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスフェート化合物などが含まれる。ホスファイト化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0033】
ホスフェート化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
【0034】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
これらの中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
【0035】
これらの熱安定剤は、単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。熱安定剤の含有量(又は添加量)は、前記樹脂組成物全体に対して、例えば、0.001〜0.5重
量%、好ましくは0.005〜0.3重量%程度の範囲であってもよい。
【0036】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、およびサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0037】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、中でも2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンが好ましい。
【0038】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシ−α−クミル)−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0039】
中でも2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好ましく、さらには2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0040】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ブトキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられ、市販品ではチヌビン400、チヌビン1577(チバスペシャルティーケミカル社製)などが挙げられる。中でもチヌビン400が好ましい。
【0041】
ベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤としては、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼンなどが挙げられるが、中でも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好ましい。
【0042】
サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤としては、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤は、単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。これらの紫外線吸収剤の含有量(又は添加量)は、ポリカーボネート樹脂と紫外線吸収剤との合計量を100重量%として、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.02〜3重量%程度であり、特に好ましくは0.05〜2重量%程度であってもよい。0.01重量%未満では紫外線吸収性能が不十分の場合があり、5重量%を超えると樹脂の色相が悪化することがあるので好ましくない。
【0044】
離型剤としては、シリコーンオイル、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル等が挙げられ、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。このような離型剤としては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、中でもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましい。離型剤は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0045】
離型剤の配合量(添加量、含有量)は、前記樹脂組成物に対して、例えば、0.01〜2重量%、好ましくは0.015〜0.5重量%、さらに好ましくは0.02〜0.2重量%程度であってもよい。配合量がこの範囲内であれば離型性に優れ、また該離型剤が金型汚染を起こすこともないため好ましい。
【0046】
また、本発明の目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド;熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂;軟質熱可塑性樹脂、例えばエチレン/酢ビ共重合体、ポリエステルエラストマ、エポキシ変性ポリオレフィンを添加することができ、さらに他の充填剤、例えば、タルク、カオリン、ワラストナイト、クレー、シリカ、セリサイト、酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ガラス繊維を添加することができる。
【0047】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は上記(A)、(B)成分を任意の配合方法により配合することにより得ることができる。これらの成分の割合は成分(A)100重量部に対し成分(B)が5〜90重量部が好ましく、5〜70重量部がより好ましく、10〜50重量部が最も好ましい。通常これらの配合成分はより均一に分散させることが好ましく、その全部もしくは一部を同時にあるいは別々に均一に分散させることが好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、その成分の全部もしくは一部を同時にあるいは別々に例えばブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の混合機で混合し均質化させる方法を用いることができる。
更に、予めドライブレンドされた組成物を加熱した押出機で溶融混練して均質化した後針金状に押出し、次いで所望の長さに切断して粒状化する方法を用いることもできる。
【発明の効果】
【0049】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、所望の波長分散特性を持ち、高度な透明性、加工性に優れた位相差フィルムを提供することができる。
【実施例】
【0050】
以下実施例により本発明を説明する。実施例において使用した使用樹脂及び評価方法は以下のとおりである。配合量に関して表1の単位は重量%である。
1.使用樹脂
各種樹脂は以下のものを使用した。
・ポリカーボネート共重合体(PC(1))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930部を入れ、エタノール溶液でのb値が3.0の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある。)3231部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある。)1949部およびハイドロサルファイト15部を溶解した後、塩化メチレン14530部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール163.1部および48%水酸化ナトリウム水溶液705部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPAの比がモル比で50:50の比粘度が0.297、Tgが197℃である黄白色のポリマー5350部を得た(収率94%)。
【0051】
・ポリカーボネート共重合体(PC(2))
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930部を入れ、エタノール溶液でのb値が3.0の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン4523部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1169部およびハイドロサルファイト15部を溶解した後、塩化メチレン14530部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、クミルフェノール174部および48%水酸化ナトリウム水溶液705部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPAの比がモル比で70:30の比粘度が0.263、Tgが216℃である黄白色のポリマー5640部を得た(収率90%)。
【0052】
・ポリスチレン樹脂(PS(1))
PSジャパン(株)製 ポリスチレンHH102
・ポリスチレン樹脂(PS(2))
日本油脂(株)製 モディパーCL130
(ポリカーボネートにポリスチレンをグラフト化したもの)
・テルペンフェノール樹脂(1)
ヤスハラケミカル(株)製 S145
OH価:110(KOHmg/g)
・テルペンフェノール樹脂(2)
ヤスハラケミカル(株)製 T115
OH価:70(KOHmg/g)
・テルペンフェノール樹脂(3)
ヤスハラケミカル(株)製 K125
OH価:210(KOHmg/g))
・テルペンフェノール樹脂(4)
ヤスハラケミカル(株)製 N125
OH価:160(KOHmg/g)
【0053】
2.ヘイズ測定
フィルムから長さ50mm、幅50mm、厚み180μmの試験片を切り出し、日本電色工業(株)製 Haze Meter NDH2000を用いてヘイズを測定した。
【0054】
3.光弾性係数測定
フィルムから長さ60mm、幅10mm、厚み180μmの試験片を切り出し、日本分光(株)製 Spectroellipsometer M-200を使用し光弾性係数を測定した。
【0055】
4.波長分散性測定
フィルムから長さ75mm、幅15mm、厚み180μmの試験片を切り出し、Tg+15℃の延伸温度で1.5倍たて延伸し、得られたフィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M-200を使用し波長分散性を測定した。
【0056】
5.Tg(ガラス転移温度)測定
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定した。
【0057】
6.溶融押出フィルムのロール巻取り性
下記フィルム装置及び引取りロール(直径120mm、幅230mm)、巻取りロール(直径60mm、幅200mm)を用い、下記条件にて製膜の際、フィルム(厚み150〜200μm)の巻取り性を評価した。
使用装置:テクノベル(株)製 KZW15−30MG 2軸押出機
テクノベル(株)製 Tダイ(吐出口 幅150mm 厚み0.5mm)
実施条件:シリンダー温度Tg+100℃〜Tg+170℃
Tダイ温度Tg+100℃〜Tg+170℃
引取りロール温度Tg±30℃(巻取りロールは未温調)
スクリュー回転数200〜300rpm
なお、評価基準は下記の通りである。
○:特に問題なく巻取りロールで巻取り可能。
△:巻取りロールで巻取り可能であるが、破断が30分間当り、3回以上発生する。
×:巻取りロールでの巻き取り不可。
【0058】
[実施例1]
各樹脂を表1に記載の割合で予め均一ドライブレンドした後、テクノベル(株)製 KZW15−30MG 2軸押出機、テクノベル(株)製Tダイ(吐出口 幅150mm 厚み0.5mm)及び引取りロール(直径120mm、幅230mm)、巻取りロール(直径60mm、幅200mm)を用い、厚みが150μm〜200μmの範囲に入りかつ180μmの試験片が採取でき、また、透明であるフィルムを作成できるようにシリンダー温度をTg+100℃〜Tg+170℃、Tダイ温度をTg+100℃〜Tg+170℃、引取りロール温度をTg±30℃、スクリュー回転数を200〜300rpmの範囲で調節しながら溶融製膜し、必要な大きさにフィルムを切断後評価した。
【0059】
[実施例2〜4及び比較例1〜4]
各種樹脂を表1に記載の量割合で予め均一ドライブレンドした後、実施例1と同様の方法で溶融製膜し、必要な大きさにフィルムを切断後評価した。
【0060】
[実施例5及び6]
各種樹脂を表1に記載の量割合で予め均一ドライブレンドした後、塩化メチレンに溶解(ポリマー溶液濃度20wt%)、キャスティングすることによりフィルムを作成した。その後、必要な大きさにフィルムを切断し評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように本樹脂組成物は良好な溶融加工性、高度な透明性、良好な光学特性を示した。また、実施例1〜3、5及び6の波長分散性は単独フィルムで下記に示すようにフラットな分散性を有することが確認できた。
(波長450nmの位相差)÷(波長550nmの位相差)≒0.99
(波長650nmの位相差)÷(波長550nmの位相差)≒1.01
【0063】
さらに、実施例4の波長分散性は単独フィルムで下記に示すように逆分散性を示すことが確認できた。
(波長450nmの位相差)÷(波長550nmの位相差)≒0.70
(波長650nmの位相差)÷(波長550nmの位相差)≒1.10
【0064】
一方、比較例1に示すように合成したPC単独はゲル状物が発生し、Tgが高く、良好なフィルムを得ることは出来ない。
比較例2、3に示すようにポリスチレンとのアロイでは、フィルム透明性がなく光学フィルムとして適さない。
比較例4に示すように過剰のテルペンフェノール樹脂を添加すると分解が激しく製膜性が非常に悪くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、またはハロゲン原子である。]で表される繰り返し単位(A1)及び下記一般式[2]
【化2】

[式中、R5〜R8は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO、CO又はCOO基である。]
で表される繰り返し単位(A2)よりなり、全カーボネート繰り返し単位における単位(A1)と単位(A2)の割合がモル比で(A1):(A2)=5:95〜95:5の範囲である芳香族ポリカーボネート共重合体100重量部に対して(B)テルペンフェノール樹脂5〜90重量部を配合して得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
繰り返し単位(A1)が下記式(3)で表される繰り返し単位である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化3】

【請求項3】
繰り返し単位(A2)が下記式(4)〜(8)で表される繰り返し単位である請求項1又は2記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【請求項4】
テルペンフェノール樹脂(B)の合成に用いられるテルペン化合物が、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、カンフェン、トリシクレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類からなる群から選ばれる一種類以上の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
テルペンフェノール樹脂(B)の合成に用いられるフェノール類がフェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールAからなる群から選ばれる一種類以上の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
テルペンフェノール樹脂(B)のOH価が150(KOHmg/g)以下である請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルム又はシート。
【請求項8】
フィルム又はシートが溶融押出法又はキャストフィルム法により成形されたフィルム又はシートである請求項7記載のフィルム又はシート。
【請求項9】
フィルムまたはシートが位相差フィルムである請求項7または8記載のフィルム又はシート。
【請求項10】
位相差フィルムが下記の特性を満足する位相差フィルムである請求項9記載の位相差フィルム。
R(450)/R(550)≦1
[式中、R(450)及びR(550)はそれぞれ波長450nm及び550nmにおける位相差フィルムの位相差を表す。]
【請求項11】
フィルムまたはシートがプラセル基板、光ディスクの保護フィルム、導光板又は拡散板である請求項7または8記載のフィルム又はシート。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項13】
成形品がピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズなどのレンズ、プリズム及び光ファイバーなどの光路変換部品、リフローハンダ付け部品、光ディスク、プラスチックミラー、各種筐体、トレイ又は容器である請求項12記載の成形品。

【公開番号】特開2006−104321(P2006−104321A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292381(P2004−292381)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】