説明

ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法

【課題】豆腐用凝固製剤に配合した場合に、凝固速度が適度に遅効化され、品質の良い豆腐を製造できるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを製造できる方法を提供する。
【解決手段】リシノール酸を重縮合反応させて縮合リシノール酸を得る工程(I)と、工程(I)で得られた縮合リシノール酸とポリグリセリンとをエステル化反応させる工程(II)とを有するポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法であって、工程(I)で得られる縮合リシノール酸が、所定の高分子量比が1以上の縮合リシノール酸である、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法、及び該製造方法により得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する豆腐用凝固製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆腐用凝固剤としては、主に塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム又は硫酸カルシウム等の無機塩、あるいはグルコノデルタラクトン等の有機酸が用いられてきた。しかしながら、これらの無機塩を豆腐用凝固剤として使用した場合、豆乳の凝固速度が速く相当な熟練者でなければ豆腐の内相のきめが細かく均質で、保水性に富み、且つ食感及び風味に優れた豆腐を造ることは困難であった。とりわけ塩化マグネシウムは古くから苦汁として豆腐の製造に用いられ、これを用いた豆腐は独特のおいしさを有することから消費者に好まれてきたが、その凝固速度は極めて速く、例えば二次的な成形を行わない「絹ごし豆腐」では内相が細かく均質な豆腐を造ることは困難であった。従って、苦汁は手造りの豆腐店等で一部用いられているのみで、工場規模での大量生産でこれを用いることは極めて難しかった。そこで、硫酸カルシウムが比較的凝固速度が遅いことから、今日広く用いられているが、これを用いた豆腐の風味は塩化マグネシウムを用いた豆腐の風味には及ばず、必ずしも消費者に受け入れられているとは言い難い。一方、グルコノデルタラクトンは、凝固作業が容易で内相の均質な豆腐が得られることから、近年「絹ごし豆腐」等に多用されるようになってきたが、出来上がった豆腐に酸味が残ることから風味の点で問題がある。
【0003】
このように苦汁等の無機塩系豆腐用凝固剤を使用した豆腐の製造法では、苦汁等の凝固剤の凝固反応が著しく速いため、凝固速度の制御がしにくく、安定した品質の豆腐を得ることが難しかった。苦汁を乳化させて苦汁の凝固反応を遅効化させる方法について開示されている(特許文献1、2、3)。また、これら文献以外にも、苦汁の乳化物を調製するために、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等を用いる技術が特許文献4、5に開示されている。
【特許文献1】特公昭62−5581号公報
【特許文献2】特開平10−57002号公報
【特許文献3】特開2000−32942号公報
【特許文献4】特開2006−101848号公報
【特許文献5】特開2006−204184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3の技術は、苦汁乳化物の乳化安定化には、効果があるものの、きめの細かく、弾力のある高品質の豆腐調製には、豆乳中に苦汁乳化物をより細かく分散混合させるために、大きな分散剪断力が必要となる。また、豆腐の凝固速度を適切にするという点では、特許文献1〜5の何れも更なる向上が望まれる。
【0005】
本発明の課題は、豆腐用凝固製剤に配合した場合に、凝固速度が適度に遅効化され、品質の良い豆腐を製造できるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リシノール酸を重縮合反応させて縮合リシノール酸を得る工程(I)と、工程(I)で得られた縮合リシノール酸とポリグリセリンとをエステル化反応させる工程(II)とを有するポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法であって、工程(I)で得られる縮合リシノール酸が、下記式(1)から求められる高分子量比が1以上の縮合リシノール酸である、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法に関する。
高分子量比=S1/S2 式(1)
S1:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が2000以上に相当するピーク面積
S2:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が100以上2000未満に相当するピーク面積
【0007】
また、本発明は、上記本発明の製造方法により得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(b)塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤を含有する豆腐用凝固製剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、豆腐用凝固製剤に用いられる乳化剤として優れた性能を示すポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法>
<工程(I)>
工程(I)は、リシノール酸を重縮合反応させて縮合リシノール酸を得る工程である。
【0010】
リシノール酸の重縮合反応の温度は、反応速度、品質面の観点から、170℃〜260℃が好ましく、より好ましくは180℃〜250℃、さらに好ましくは190℃〜230℃である。反応には触媒を用いても用いなくても良いが、用いる場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが好ましい。使用する触媒量はリシノール酸に対して0.1〜2重量%が好ましく、0.2〜1.5重量%がより好ましい。反応時間は、リシノール酸の縮合度の観点から、2〜20時間が好ましく、より好ましくは3〜20時間である。反応圧力は常圧あるいは減圧で行うが、生成水の除去の観点から、減圧で行うのが好ましく、より好ましくは66.6kPa以下の圧力である。着色防止と生成水の除去の観点から、反応系内に窒素を導入することが好ましく、窒素流量としては10〜200mL/min・kgが好ましく、20〜100mL/min・kgがより好ましい。
【0011】
本発明では、豆腐の凝固性の観点から、工程(I)で得られる縮合リシノール酸が、下記式(1)から求められる高分子量比が1以上、好ましくは1.5〜4である必要がある。
高分子量比=S1/S2 式(1)
S1:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が2000以上に相当するピーク面積
S2:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が100以上2000未満に相当するピーク面積
【0012】
ここで、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)の条件は以下の通りである。
*GPC条件
カラム:G4000HXL+2000HXL(アニオン)
カラム温度:40℃
移動相:50mmol/L CH3COOH/THF
流速:1.0ml/min
検出器:RI
試料濃度:5ml/mL(THF溶媒)
注入量:100μL
【0013】
工程(I)で得られる縮合リシノール酸の高分子量比を1以上にするには、特に限定されるものではないが、反応温度、窒素導入量、反応圧力、反応時間等を調整することが好ましく、例えば、リシノール酸の重合反応温度を170〜250℃、窒素を10〜100mL/min・kgで気流し、10〜100kPaの減圧下で生成水を除去しながら加熱し、6〜19時間後に冷却する。このような操作を行うことが好ましい。
【0014】
工程(I)により得られる縮合リシノール酸は、平均重合度が約3〜10程度のものが挙げられる。好ましくは平均重合度が約4〜7程度のものである。
【0015】
<工程(II)>
工程(II)は、工程(I)で得られた縮合リシノール酸とポリグリセリンとをエステル化反応させる工程である。
【0016】
ポリグリセリンとしては、平均重合度が約2〜15程度のものが挙げられる。好ましくは平均重合度が約3〜10程度のものである。具体的には、例えば、トリグリセリン、テトラグリセリン又はヘキサグリセリン等が好ましく挙げられる。
【0017】
縮合リシノール酸とポリグリセリンとのエステル化反応では、縮合リシノール酸をポリグリセリンに対して2〜5倍モル用いるのが好ましく、より好ましくは2.5〜4.5倍モルである。反応温度は反応速度と品質の観点から170〜260℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは190〜230℃である。反応時間はエステル化進行度の観点から、5〜15時間、より好ましくは6〜15時間である。エステル化後の酸価は5以下が好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。反応促進のために触媒を用いても用いなくても良いが、用いる場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが好ましい。使用する触媒量は全仕込み量に対して0.1〜2重量%が好ましく、0.15〜1.5重量%がより好ましい。反応時間は、凝固速度が適度に遅効化され、品質の良い豆腐を製造できるとの理由から、2〜20時間が好ましく、より好ましくは3〜20時間である。反応圧力は常圧あるいは減圧で行うが、生成水の除去の観点から、減圧で行うのが好ましく、より好ましくは66.6kPa以下の圧力である。反応系内に窒素は着色防止と生成水の除去の観点から流すことが好ましく、窒素流量としては10〜200mL/min・kgが好ましく、20〜100mL/min・kgがより好ましい。
【0018】
<豆腐用凝固製剤>
本発明の豆腐用凝固製剤は、(a)上記本発明の製造方法により得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステル〔以下、(a)成分という〕、(b)塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤〔以下、(b)成分という〕を含有する。
【0019】
本発明で用いられる無機塩系凝固剤としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムが挙げられる。これら無機塩は無水物、結晶水含有物(例.塩化マグネシウム・6水和物、硫酸マグネシウム・7水和物、塩化カルシウム・2水和物等)のどちらでもよい。又、これらの無機塩系凝固剤は1種又は2種以上の混合物で用いることができるが、豆腐の風味の点からは塩化マグネシウムの単独使用が好ましい。
【0020】
本発明の豆腐用凝固製剤は、特に限定されるものではないが、例えば(a)成分を0.1〜5重量%、更に0.5〜3重量%含有することが好ましく、0.5〜2.5重量%が特に好ましい。また、(b)成分を5〜30重量%、更に8〜28重量%、特に好ましくは10〜25重量%含有することが好ましい。
【0021】
本発明の豆腐用凝固製剤は、(a)成分、(b)成分以外の成分を含有することもできる。
【0022】
本発明の豆腐用凝固製剤は、(c)油脂〔以下、(c)成分という〕を含有することが好ましい。(c)成分の油脂は、常温(例えば25℃)において流動性を有する多価アルコール脂肪酸エステルであり、トリグリセリド、ジグリセリド等がある。トリグリセリドとしては、例えば、ナタネ油、大豆油、魚油、サフラワー油、コーン油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、あるいは、炭素数8〜10の中鎖脂肪酸からなるトリグリセリド、これらを分別した油、これらのエステル交換油、硬化油、あるいは、これらを任意に混合したトリグリセリドが挙げられ、コーン油、ナタネ油、大豆油が特に好ましい。ジグリセリドとしては、構成脂肪酸の炭素数が6〜24のものが好ましく、特に構成脂肪酸としてオレイン酸を含むジグリセリドが好ましい。本発明の凝固製剤は、特に限定されるものではないが、例えば(c)成分を10〜60重量%、更に30〜60重量%含有することが好ましい。
【0023】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(d)ポリグリセリン脂肪酸エステル〔以下、(d)成分という〕を含有することができる。本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。前記ポリグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。本発明で用いられるポリグリセリンとしては平均重合度が約2〜10程度のもの、例えば、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)又はデカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びエルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物、好ましくはカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の群から選ばれる1種又は2種以上を脂肪酸全体に対して約50重量%以上、好ましくは約70重量%以上、更に好ましくは約90重量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物が挙げられる。
【0025】
本発明の豆腐用凝固製剤における(d)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0026】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(e)プロピレングリコール脂肪酸エステル〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。本発明で用いられるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。該エステルはモノエステルであってもジエステルであってもよいし、あるいはそれらの混合物であってもよい。好ましくはジエステルであり、混合物であればジエステルを約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むものがよい。本発明の豆腐用凝固製剤における(e)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0027】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(f)ソルビタン脂肪酸エステル〔以下、(f)成分という〕を含有することができる。ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール又はソルビタンと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。本発明の豆腐用凝固製剤における(f)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0028】
(e)成分のプロピレングリコール脂肪酸エステル又は(f)成分のソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられる。好ましくはカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の群から選ばれる1種又は2種以上を脂肪酸全体に対して約50重量%以上、好ましくは約70重量%以上、更に好ましくは約90重量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物が挙げられる。
【0029】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(g)糖類、糖アルコール及び多価アルコールの群から選ばれる1種又は2種以上〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。
【0030】
本発明で用いられる糖類としては、例えばキシロース、ブドウ糖又は果糖等の単糖、ショ糖、乳糖又は麦芽糖等のオリゴ糖、デキストリン又は水飴等の澱粉分解物、あるいはマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース又はマルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖等が挙げられ、好ましくはデキストリン又は水飴等の澱粉分解物である。
【0031】
本発明で用いられる糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、マルチトール又は還元水飴等があげられ、好ましくはソルビトール又は還元水飴である。
【0032】
本発明で用いられる多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン又はポリグリセリン等が挙げられ、好ましくはグリセリンである。
【0033】
上記した(g)成分は、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。好ましくは多価アルコール単独での使用である。上記した(g)成分は、例えば水等の溶媒で溶解又は混合した溶液を用いてもよい。溶媒で溶解又は混合する場合、使用する糖類等によっても異なるが、例えばグリセリンの場合、水1重量部に対し、グリセリン約1〜20重量部、好ましくは約2〜15重量部、更に好ましくは約5〜10重量部程度である。
【0034】
本発明の豆腐用凝固製剤における(g)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば1〜20重量%、更に5〜15重量%が好ましい。
【0035】
本発明の豆腐用凝固製剤にはさらに、必要に応じて水を適宜加えることもできる。
【0036】
本発明の豆腐用凝固製剤の製造方法は特に限定されるものではないが、以下に、好ましい豆腐用凝固製剤の製造方法を例示する。例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルに本発明の製造方法で得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを加え、該混合物を約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱する。加熱した該混合物を攪拌しながら、この中に無機塩類系凝固剤(例えば塩化マグネシウム)及びグリセリン−水混合溶液(例えばグリセリン:水=約9:1)を順次加えた後、高速回転式ホモジナイザー等を用いて、回転数約6000〜20000回転/分にて、約10〜60分間撹拌して無機塩類系凝固剤が均一に分散した分散液を得る。得られる分散液を好ましくは湿式粉砕機等で微粒化することにより、本発明による豆腐用凝固製剤を製造することができる。このようにして製造される本発明の豆腐用凝固製剤は、分散媒に無機塩類系凝固剤の微粒子(粒子径約0.01〜50μm)が超微分散された均一で、安定な組成物となり得る。
【0037】
本発明による豆腐用凝固製剤は、各成分を混合することにより製造されるが、本発明の豆腐用凝固製剤を製造するための装置としては、特に限定されず、例えば攪拌機、加熱用ジャケット又はジャマ板等を備えた通常の攪拌混合槽を用いることができる。用いられる攪拌機としては、例えばプロペラ攪拌機、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)又はクリアミックス(エムテクニック株式会社製)等が挙げられ、好ましくはクリアミックスである。攪拌機により撹拌されて得られた分散液をさらに、湿式粉砕機等を用いて分散液中の粒子を微粒化するのが好ましい。湿式粉砕機は、粉砕機の粉砕室内に充填されたガラスビーズ又はジルコニアビ−ズ等を分散メディアとして分散液中の粒子を微粒化するものである。湿式粉砕機としては、例えばサンドミル(新東工業株式会社製)、ビーズミル(ファインテック株式会社製)或いはダイノーミル(スイスWAB社製)等が挙げられ、これらを好ましく使用することができる。
【0038】
本発明による豆腐用凝固製剤中の超微分散される無機塩類系凝固剤の最大粒子径は好ましくは約50μm以下、より好ましくは約40μm以下、更に好ましくは約30μm以下である。豆腐用凝固製剤中の無機塩類系凝固剤の粒子を微粒子化することにより無機塩類系凝固剤の微粒子表面に、豆腐用凝固製剤中の他成分が効果的に吸着される。その結果、豆腐製造時、豆乳中に本発明の豆腐用凝固製剤が加えられ、混合されると、豆乳中に無機塩類系凝固剤の微粒子が均一に分散し、該無機塩類系凝固剤が豆乳中で徐々に且つ均一に溶解して豆乳の凝固が進められるため、豆腐の内相のきめが細かく均質で、保水性の良好な食感に優れた豆腐が得られる。また、無機塩類系凝固剤自体の沈殿の発生も抑制される。
【0039】
また、本発明による豆腐用凝固製剤中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば澱粉、寒天又はゼラチン等の増粘安定剤等を配合しても良い。ここで澱粉としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、又はそれらのエステル化処理(例えば、酢酸澱粉等)、エーテル化処理(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉等)、架橋処理(例えば、リン酸架橋澱粉等)、酸化処理(例えば、ジアルデヒド澱粉等)もしくは湿熱処理等の処理を単一で又は組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられる。
【0040】
本発明による豆腐用凝固製剤の豆乳に対する添加量は、本発明の凝固製剤中の無機塩系凝固剤量を通常豆乳に使用する量、すなわち、無機塩系凝固剤(無水物換算)として好ましくは約0.05〜0.5重量%の範囲で用いればよい。
【実施例】
【0041】
実施例1
〔1〕ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造
工程(I):攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水冷却管を備えた2リットルの四ツ口フラスコにリシノール酸を1200g入れ、窒素を60ml/min導入し、圧力53.3kPaの減圧下で生成水を除去しながら210℃で6時間反応を行い、縮合リシノール酸を得た。得られた縮合リシノール酸はGPC分析から高分子量比は1.9であることを確認した。
工程(II):攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水冷却管を備えた0.5リットルの四ツ口フラスコにヘキサグリセリンを40g、工程(I)で得られたに縮合リシノール酸を300g(モル比3.0)仕込み、水酸化ナトリウム0.6gを入れ、窒素を20ml/min導入し、圧力53.3kPaの減圧下で生成水を除去しながら190℃で12時間反応を行い、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを得た。このものの酸価は2以下でありエステル化されていることを確認した。
【0042】
〔2〕凝固製剤の調製
コーン油に、上記で得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを80℃にて溶解して、60重量%塩化マグネシウム6水塩水溶液を、油層中にホモミキサー5000rpm、温度65℃下で乳化しながら添加した後、回転数を10000rpmに設定し、1分間本乳化を行った。乳化終了後ただちに5℃まで冷却を行い、1昼夜5℃で保存し、乳化物の凝固製剤とした。
【0043】
〔3〕豆腐の製造と評価
豆乳は大豆ビントンを用い常法によって得られたBrix12の豆乳を用いた。80℃に調製し、定量ポンプにより750g/分で送液されている該豆乳に、上記で得られた凝固製剤を豆乳中の塩化マグネシウム濃度が0.3重量%になる様に定量ポンプを用いてライン中で混合し、さらにマイルダー(荏原製作所製)を用いて5000rpmの回転数で機械的分散を行った。分散処理液を型枠(8cm×7cm×3cm(高さ))に150g充填した。充填されてから凝固が始まるまでの時間を計測し、この時間を豆乳の凝固開始時間として記録した。さらに、充填されてから20分間熟成した後、1晩5℃保存した。また、得られた豆腐の内相についてカッター刃で切り、その断面を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
実施例1の工程(I)の反応時間を19時間に、また、工程(II)の反応時間を10時間にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
実施例1の工程(I)の反応温度を190℃、反応時間を12時間にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
実施例1の工程(I)の反応温度を230℃、反応時間を4時間にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0047】
実施例5
実施例1の工程(II)でヘキサグリセリン88.3gに縮合リシノール酸を630g(モル比2.7)にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0048】
実施例6
実施例1の工程(II)のヘキサグリセリン59.5gに縮合リシノール酸を654g(モル比4.2)にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
実施例1の工程(I)の反応時間を1.5時間に、また、工程(II)の反応時間を10時間にする以外は実施例1と同じ操作を行った。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
*モル比:縮合リシノール酸/ポリグリセリンのモル比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リシノール酸を重縮合反応させて縮合リシノール酸を得る工程(I)と、工程(I)で得られた縮合リシノール酸とポリグリセリンとをエステル化反応させる工程(II)とを有するポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法であって、工程(I)で得られる縮合リシノール酸が、下記式(1)から求められる高分子量比が1以上の縮合リシノール酸である、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法。
高分子量比=S1/S2 式(1)
S1:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が2000以上に相当するピーク面積
S2:縮合リシノール酸のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量分布における分子量が100以上2000未満に相当するピーク面積
【請求項2】
工程(I)でのリシノール酸の重縮合反応の反応時間が2〜20時間である積1記載のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法。
【請求項3】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが、豆腐用凝固製剤の乳化剤用である請求項1又は2記載のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの製造方法。
【請求項4】
(a)請求項1〜3の何れか1項記載の製造方法により得られたポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(b)塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤を含有する豆腐用凝固製剤。
【請求項5】
更に(c)油脂を含有する請求項4記載の豆腐用凝固製剤。

【公開番号】特開2008−94805(P2008−94805A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281218(P2006−281218)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】