ポリゴンミラーの製造方法
【課題】低コストで生産性良く製造できるポリゴンミラーの製造方法を提供する。
【解決手段】反射面上に膜を有しているポリゴンミラーの製造方法であって、(1)該膜を形成する物質を含む溶液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、(2)該工程(1)に引き続く、該反射面を半径方向に取り、該ポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、を有するポリゴンミラーの製造方法において、該工程(1)が、該反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布する工程を含むことを特徴とするポリゴンミラーの製造方法。
【解決手段】反射面上に膜を有しているポリゴンミラーの製造方法であって、(1)該膜を形成する物質を含む溶液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、(2)該工程(1)に引き続く、該反射面を半径方向に取り、該ポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、を有するポリゴンミラーの製造方法において、該工程(1)が、該反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布する工程を含むことを特徴とするポリゴンミラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーに関し、特にポリゴンミラーの反射面に形成される膜に関するものである。また、光走査装置および電子写真機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりレーザービームプリンター等の光走査装置においては、特公昭62−36210号公報で開示されているように回転多面鏡(ポリゴンミラー)を介して像担持体面上を光変調された光束(レーザ光束)で光走査することにより画像情報の書き込みや読み出し等を行なっている。
【0003】
図8は光走査装置の要部構成例を示す概略図である。 図8において半導体レーザ等の光源部1より射出した光束をコリーターレンズ2により平行光束とし副走査方向にのみ屈折力を持つシリンドリカルレンズ83で集光し、ポリゴンミラー等からなる光偏向器4の偏向反射面4aへ線状に入射させている。コリーターレンズ2とシリンドリカルレンズ83は結像光学系を構成している。該偏向反射面4aで反射偏向させた光束を走査レンズ87を構成する球面よりなる負の屈折力のレンズ87aと直行する2方向で互いに屈折力が異なるトーリック面を有するレンズ87bとによって被走査面89上に導光しスポットを形成する。そして前記偏向器4を回転軸82を中心にモーター85により矢印86方向に回転させることにより被走査面89上における偏向走査面を矢印90方向(主走査方向)に光走査している。
【0004】
ポリゴンミラーには多くの場合、材質としてアルミニウム、プラスチック、ガラス等が用いられている。そして、その反射面に蒸着膜や陽極酸化膜を施すことによって反射率を増加させたり、角度依存性をなくしたり、酸化を防止したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−36210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの場合、光偏向器としてのポリゴンミラーの反射面には真空蒸着法によって反射増加膜等を施しているためその製造誤差による膜厚の違いや製造方法による部分的な膜厚の違いが反射特性のバラつきとなっており、高精度の蒸着装置を必要としたり多層膜構造にして基本の反射率を上げることにより影響を少なくしたり、または、特殊な蒸着法を行なったりする必要があった。このためコストアップに繋がったり膜の自由度を下げる要因ともなっていた。
【0007】
陽極酸化膜の上に非晶質フッ素樹脂膜を施す手法においては陽極酸化膜で反射率の角度依存性を小さくし、非晶質フッ素樹脂膜で結露に対する耐久性を上げている。この陽極酸化工程ではポリゴンミラーの十分な洗浄が必要なため大掛りな装置が必要であり、コストの面での課題があった。
【0008】
上記課題を解決するため回転湿式成膜法により単層膜で上記2例の成膜法より安価に成膜できることが提案されている。ただし、ポリゴンミラーを回転湿式成膜法で成膜する際、反射面全面を塗布液に浸しており、そのために反射面以外にも塗布液が塗られていた。結果的に回転成膜時に反射面以外に付着した塗布液が反射面に集中し、膜厚のバラつきが大きくなる傾向や偶発的な膜の乱れが発生する傾向がみられた。そこで回転湿式成膜法の生産性を向上させ、コストを下げることが課題となっていた。
【0009】
また、近年、光走査装置をコンパクト化する要望からポリゴンミラーに入射する光の入射角範囲は広がる傾向にある。一方反射率の角度一様性のためにポリゴンミラーの反射面には様々な光学膜が形成されているが、それら光学膜にはp偏光の光を全透過する角度(ブリュースタ角)が存在する、つまり、ブリュースタ角を挟んで入射角範囲をとると下層の反射率と一致する角度が必ず存在する。入射角範囲に対して一定の反射率であることが望ましいポリゴンミラーにおいて、一様な膜厚を形成することを前提とすると、特にブリュースタ角より広角側に入射角が広がる場合、反射率の振れ幅は広がり、反射率の角度一様性が得にくい傾向があった。このため、これまでの技術では、広い入射角範囲にも対応できるポリゴンミラーを得るのが難しく、その結果、コンパクトな光走査装置を得るのも難しかった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、低コストで生産性良く製造できるポリゴンミラーとその製造方法を提供すること、低コストで広い入射角範囲において反射率変化が小さいポリゴンミラーとその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、安価で、さらにはコンパクトな光走査装置および電子写真機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、該反射面が、1.45以下の屈折率を有する物質からなる単層膜が基材上に形成されてなることを特徴とするポリゴンミラーである。
【0013】
このポリゴンミラーにおいては、該1.45以下の屈折率を有する物質が非晶質フッ素樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、該単層膜の厚さが85〜110nmであることが好ましい。
【0015】
さらに、該単層膜が湿式成膜法により形成されてなることが好ましい。
【0016】
該単層膜が、該1.45以下の屈折率を有する物質を含む溶液を反射面に塗布後、反射面を半径方向に取る回転を行なう回転湿式成膜法により形成されてなることも好ましい。
【0017】
本発明はまた、反射面に膜が形成されたポリゴンミラーの製造方法であって、該膜を形成する物質を含む溶液を反射面に塗布する塗布工程と、これに引き続く、反射面を半径方向に取りポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程とを有するポリゴンミラーの製造方法において、
該塗布工程において、反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布することを特徴とするポリゴンミラーの製造方法である。
【0018】
この方法においては、該塗布工程において、溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面と該回転の軸との距離をRとし、反射面内の該軸から最も遠い点と該軸との距離をRoとしたとき、Ri≦R≦Roとして回転を行うことにより塗布を行うことが好ましい。
【0019】
また、塗布液面が激しく波立たない回転数以下で回転を行うことにより塗布を行うことが好ましい。
【0020】
さらに、該塗布工程において、溶液を槽に溜め、この槽内に形成される液面に反射面を順次接するようにポリゴンミラーを溶液に浸すことによって塗布を行うことが好ましい。
【0021】
あるいはまた、該塗布工程において、溶液を含浸した柔らかな媒体を反射面に押し付けることによって塗布を行うことが好ましい。
【0022】
該塗布工程において、反射面のみに塗布液を噴きつけることによって塗布を行うことも好ましい。
【0023】
本発明はまた、上記方法によって製造されたポリゴンミラーである。
【0024】
さらに本発明は、光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、該反射面に膜厚分布を持つ膜を有するポリゴンミラーである。
【0025】
このポリゴンミラーにおいて、該膜厚分布が、10〜70°の入射角に対応する位置においてブリュースタ角における反射率が得られる膜厚であることが好ましい。
【0026】
また、該膜厚分布が、ブリュースタ角以下の入射角に対応する位置においては膜厚が均一であり、ブリュースタ角を超える入射角に対応する位置においてはブリュースタ角における反射率が得られる膜厚であることも好ましい。
【0027】
あるいはまた、該膜厚分布が、10°から70°の入射角に対応する位置にかけて、一様に薄くなるような傾斜を持つことも好ましい。
【0028】
本発明は、また、光源、光源から出射された光を集光して結像する結像光学系、結像された光を反射して偏向する光偏向器、および偏向された光を被走査面に導く走査レンズを備える光走査装置において、該光偏向器が上述のポリゴンミラーを備えることを特徴とする光走査装置である。
【0029】
本発明は、さらに、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有する電子写真装置において、
該露光手段として上記光走査装置を備えることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーにおいて、ポリゴンミラーの反射面に1.45以下の屈折率を有する物質、特に低屈折率膜材料である非晶質フッ素樹脂を回転湿式成膜法により単層で形成することで、真空蒸着法や陽極酸化法に比べ、より安価にポリゴンミラーを製造することが可能である。
【0031】
また、本発明によれば、ポリゴンミラーの回転湿式成膜法において、反射面と塗布時の回転軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーのRi以上の領域のみに塗布液を塗布することで膜厚のバラツキや偶発的な膜の乱れを抑制することが可能であり、ポリゴンミラーの生産性を向上させることができ、従って、ポリゴンミラーを安価にすることが可能となる。
【0032】
このようなポリゴンミラーを備える本発明の光走査装置、さらにはこの光走査装置を備える電子写真機器は、安価に生産することができる。
【0033】
さらに、ポリゴンミラーの反射面に形成される膜に適切な膜厚分布を持たせることで広範囲の入射角に対して反射率の角度一様性が得られる。またこのことより、光走査装置のコンパクト化に貢献し、光走査装置をより安価に製造することが可能である。さらにこのような光走査装置を備える本発明の電子写真機器は、コンパクト化が可能であり、また低コスト化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実験例1に係る膜厚と入射角および反射率の関係を説明するグラフである。
【図2】実験例1に係る膜厚と15〜56°の入射角における反射率の差の関係を説明するグラフである。
【図3】実施例1に係るディッピングを説明する図である。
【図4】実施例2に係る回転湿式成膜法を説明する図である。
【図5】実施例3に係る「液溜り跡」および「流れシミ跡」を説明する写真である。
【図6】実施例3に係る「液溜り跡」および「流れシミ跡」を説明する模式図である。
【図7】実施例4に係る非晶質フッ素樹脂溶液濃度と15〜56°の入射角における反射率の差の関係を説明する図である。
【図8】光走査装置の要部構成例を示す概略図である。
【図9】実施例7に係る膜形状の乱れの模式図である。
【図10】実施例8に係る塗布方法の概略を表した図である。
【図11】実施例9に係る塗布例IIの概略を表した図である。
【図12】実施例9に係る塗布例IIIの概略を表した図である。
【図13】実施例9に係る塗布例IVの概略を表した図である。
【図14】実施例9に係る塗布例Vの概略を表した図である。
【図15】実施例10に係る、アルミ基材にSiO2を形成したとき均一膜厚としたときの入射角と反射率の関係を説明する図である。
【図16】実施例10に係る、アルミ基材にSiO2を形成したとき所望の膜厚分布にしたときの膜厚、入射角および反射率の関係を説明する図である。ア)は入射角に対する膜厚分布状態、イ)はこのときの入射角に対する反射率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
すなわち、本発明は電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーにおいて、ポリゴンミラーの反射面に1.45以下の屈折率を有する物質の単層膜が形成されたポリゴンミラーである。
【0036】
上記単層膜を反射面に形成することにより反射面に入射する光の入射角度による反射率の依存性を抑えることができる。これによって、膜厚形成時の厳密な制御が不要となる。
【0037】
前記単層膜は蒸着やスパッタリングに代表される真空成膜法や溶液を用いる湿式成膜法により形成されることが可能であるが、真空成膜法で用いられる装置は設備費が高いため、設備費が安価となり得る湿式成膜法が特に望ましい。
【0038】
湿式成膜法とは所望の膜質または膜質の前駆体を含む溶液を基材に塗布し、前記溶液の溶媒を除去あるいは前駆体を反応させて基材に所望の膜を形成する方法、または溶液中で基材と溶液中の物質との反応により所望の膜を形成する方法である。
【0039】
湿式成膜法としてはディップコートやスピンコートに代表される溶液湿式成膜法や、特にポリゴンミラー基材がアルミニウムの場合には陽極酸化法を用いて酸化アルミの薄膜を形成することも可能であるが、特にコート設備費の負担の少ない溶液湿式成膜法を用いることが望ましい。
【0040】
溶液湿式成膜法とは、膜を形成する物質を溶媒に溶解した溶液を、膜を形成しようとする面に塗布し、これを乾燥または焼成して膜を得る方法である。
【0041】
上記ディップコートやスピンコートは一面もしくは平行した二面を成膜することに向いているが、上記ポリゴンミラーにみられる多面体の成膜には反射面を回転の半径方向にとる回転成膜法が最も望ましい。反射面を回転の半径方向に取るという意味は、反射面の法線が回転半径方向に一致することである。
【0042】
ポリゴンミラーの反射面に成膜する膜材料は、使用条件における耐久性を考慮して適宜決定できるが、例えば非晶質フッ素樹脂、フルオロアクリレート、二酸化珪素などを使用することができる。中でも、オゾンや水に対して不活性であり、水分の影響による腐蝕および基材の腐蝕がみられない非晶質フッ素樹脂が特に望ましい。非晶質フッ素樹脂としては例えば構造式(1),構造式(2)で示される物質を用いることができる。
【0043】
【化1】
【0044】
【化2】
【0045】
上記非晶質フッ素樹脂の屈折率は680nmの波長の光に対して1.34の屈折率を持ち、この非晶質フッ素樹脂がポリゴンミラーの反射面に88〜109nmに成膜された場合、入射角15〜56°での反射率の変化が±1.0%以内に抑えることができる。
【0046】
上記膜厚の膜を上記回転成膜法で形成する際、成膜過程で溶媒の蒸発速度は遅い方が望ましい。溶媒の蒸発速度は溶媒の沸点が高いほど遅くなるため、特に溶媒の沸点は180℃以上が望ましい。また基材に変形を与えることのない温度で蒸発する溶媒が望ましい。例えばアルミニウム基材を用いた場合には溶媒の沸点は280℃以下であることが望ましい。
【0047】
溶媒に関する他の物性としては、環境による構造の変化が少ないこと、また作業環境上無臭であることがが好ましい。
【0048】
溶媒としては、例えば構造式(3)で示される物質を好ましく用いることができる。
【0049】
【化3】
【0050】
単層膜が形成される基材としては、アルミニウム、プラスチック、ガラス等、ポリゴンミラーに用いることのできるものであれば、本発明による特段の制限はない。
【0051】
上記基材上に非晶質フッ素樹脂の単層膜が形成されるポリゴンミラーにおいて、回転成膜後に反射面端部に溶液が残ったり、溶液が反射面を筋状に流れた跡が残ったりせず均一な膜を生産性良く形成するには、特に2000〜4000rpm付近で回転させ、更に60秒以上回転させ続けることが望ましい。
【0052】
上記基材上にOLE_LINK1非晶質フッ素樹脂OLE_LINK1の単層膜が形成されるポリゴンミラーに対する回転成膜法において、上記回転数および回転時間で成膜する際、所望の膜厚を生産性良く形成するには1.5〜3.0%の溶液を用いることが最も望ましい。
【0053】
上記のような手法により成膜したポリゴンミラーは反射率の角度依存性が少なく、反射面の結露に対する耐久性に優れたポリゴンミラーを極めて安価に製造することが可能となる。つまり、上記のような手法により成膜したポリゴンミラーを搭載した光走査装置や電子写真機器等は従来のそれより安価に製造することができる。
【0054】
回転湿式成膜は、塗布液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、これに引き続いて、ポリゴンミラーを回転数を制御しつつ回転させ、所望の膜厚を得る膜厚制御工程とを有する。また通常、塗布液に含まれる溶剤をとばして膜を乾燥・定着させる焼成工程も有する。回転湿式成膜法の塗布工程においては、反射面と回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの回転軸からRi以上の領域に塗布液を塗布することが好ましい。塗布領域を支配するのは膜厚を制御する回転に入る前に所望の塗布液を反射面に塗布する過程にある。塗布工程においてRi未満の領域まで塗布したとしても反射面に十分に塗布できていれば膜厚を制御することは可能である。しかし、膜厚のバラツキおよび偶発的な膜の乱れを抑制するという点で、前記Ri以上の領域のみに塗布することが特に望ましい。
【0055】
塗布液を反射面に塗布する方法の一例として、ポリゴンミラーを回転しながら塗布液に反射面を浸すことが挙げられる。この場合、回転軸からRi以上の領域のみに塗布するためには、反射面内の該軸から最も遠い点と該軸との距離をRoとしたとき、回転軸と塗布液面との距離がRo以下で且つRi以上である必要がある。反射面が正n角柱状をなす正n角柱ポリゴンミラーを、正n角柱の中心軸を回転軸として回転させて塗布を行う場合には、Riは反射面に内接する円筒の半径であり、Roは反射面に外接する円筒の半径であり、溶液面と回転軸との距離をRとしたとき、Ri≦R≦Roとなる領域は内接円筒と外接円筒の間の領域となる。このときRo、Riの関係はRi/Ro=cos(円周率/n)となる。
【0056】
また、ポリゴンミラーを回転しながら塗布液に反射面を浸す場合の回転数は塗布液面が激しく波立たないことが好ましい。ここで激しく波立たないとは回転軸からRi未満の領域に塗布液が触れないということである。例えば外接円筒半径20mmの、反射面が六角柱状をなす6面ポリゴンミラーの場合、200rpm以下であることが望ましい。
【0057】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、反射面を順次塗布液面に平行にして反射面を塗布液面に接するように浸すことで反射面のみに塗布することが挙げられる。この場合、塗布液が重力に引かれて回転軸からRi未満の領域(正n角柱ポリゴンミラーの場合は内接円筒内側)へ広がらないように一定の回転を保ちながら反射面を塗布液面に接することが特に望ましい。
【0058】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、塗布液を含浸した柔らかな媒体を反射面に押し付けることが挙げられる。この場合、前記媒体を反射面に押し付ける際、反射面にキズがつかないように十分に柔らかく、且つ、塗布液を十分に含むことができる媒体を適宜選ぶことができるが、このような媒体として特に発泡スポンジが好適である。
【0059】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、塗布液を反射面に吹き付けることが挙げられる。この場合、前記ポリゴンミラーの回転軸に垂直に向けて吹き付け、且つ、塗布液を吹きつける角度は仰角であることが特に望ましい。
【0060】
前記のような手法により反射面に塗布液を塗布するならば、ポリゴンミラー上の塗布領域は回転軸からRi以上の領域(正n角柱ポリゴンミラーの場合は反射面の内接円筒の外側)のみとなり、膜厚のバラつきが小さくなり、高品質な膜が安定して得られ、偶発的な膜の乱れの発生が抑制され、製造不良損失が低下し、ポリゴンミラーを生産性良く、総合的に安価に製造することが可能となる。また、前記のような手法により成膜したポリゴンミラーを搭載した光走査装置や電子写真機器等は従来のそれより高品質で安価に製造することができる。
【0061】
また、反射面に形成する膜に意図的に適切な膜厚分布を持たせることによって、反射率の角度依存性をより一層抑制することができ、よりコンパクトな光走査装置を得ることができ、好ましい。
【0062】
一般的に、膜内で多重反射を起こさないような膜厚であれば、ブリュースタ角より狭い入射角範囲では膜厚が厚くなると反射率は低くなる傾向にある。一方、ブリュースタ角より広い入射角範囲では膜厚が厚くなると反射率は高くなる傾向にある。本発明ではこのことを利用している。
【0063】
つまり、ブリュースタ角の反射率を得られる膜厚は各入射角に対して理論的に求められるため、その膜厚を反射面に忠実に形成させることが、反射率の角度依存性を抑制するという観点から、特に望ましい。
【0064】
P偏光の入射角をブリュースタ角より狭い範囲に限定した場合、均一膜厚で反射率の一様性を実現することは容易である。このとき、ブリュースタ角より広角側では急激に反射率が上昇する。そこで、所望の均一膜厚でブリュースタ角より狭角側の反射率一様性を保証し、ブリュースタ角より広角の光が照射する領域のみ膜厚を薄くすることで理想的な膜形状に近似することができる。膜の全範囲にわたって膜厚を変化させるより成膜が容易であるという点で、この技術も特に望ましい。
【0065】
ポリゴンミラーの成膜法として一般に用いられている成膜法では、任意の膜厚を得るには高度な成膜技術が必要があったり、工数の増加が伴うことが多い。そこで、一様な傾斜の膜厚分布を持たせることで理想的な膜形状に近似することが実生産の観点から望ましい。
【0066】
このような膜厚分布を持つ膜を形成するには、引上げ速度を制御したディッピング法により可能であるが、多面体であるポリゴンミラーには回転湿式成膜法が特に望ましい。回転湿式成膜法においては、溶液を反射面に塗布した後、回転する工程でポリゴン回転の抜け側(回転方向の上流側)に溶液を集め、入り側(回転方向の下流側)から抜け側にかけて膜厚の勾配を持った膜を形成することができる。この勾配は回転数、溶液濃度などで制御することが可能である。
【0067】
本発明において光偏向器の形態としては、本発明のポリゴンミラーを有すること以外は、本発明による特段の制限は無く、電子写真機器に用いることのできる光走査装置であれば、いかなる形態もとり得る。
【0068】
本発明の光走査装置の形態としては、上記光偏向器を備える以外は、特に本発明による制限は無く、電子写真機器に用いることのできる光走査装置であれば、いかなる形態もとり得る。
【0069】
一般的に、光走査装置は、光源、光源から出射された光を集光して結像する結像光学系、結像された光を反射して偏向する光偏向器、および偏向された光を被走査面に導く走査レンズを備える。本発明の光走査装置は、このような構成において光偏向器が上述のポリゴンミラーを備えるものである。
【0070】
本発明の電子写真機器の形態としては、上記光走査装置を備える以外は、特に本発明による制限は無く、例えば、本発明の電子写真機器は電子写真装置を含み、その構成としては、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有するものであり、該露光手段として上記光走査装置を備えるものである。
【実施例】
【0071】
(実験例1)
本実験例においては、ポリゴンミラーの基材をエリプソメーターで測定して前記ポリゴンミラーの反射面の光学物性を推定し、更にガラス板上にディップにより塗布液を塗布した後乾燥させて形成した膜を同様にエリプソメーターで測定して膜材料の光学物性を推定したのち、前記ポリゴンミラーに前記膜材料を塗布した際の反射率を数値解析した。
【0072】
ポリゴンミラー基材にはアルミニウムを用い、塗布液としてはフルオロアクリレートを構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)に2質量%溶解したものを用いた。
【0073】
図1および 図2は上記のようにポリゴンミラーへ膜材料を成膜した場合についての数値解析結果である。 図1の横軸は光の入射角であり縦軸は反射率を表す。図2の横軸はポリゴンミラー反射面上の膜の厚さであり、縦軸は入射角15°と56°の反射率の差を表す。図2により反射率の差がゼロとなる膜厚は93nmと166nmとが確認されるが 図1より166nmの膜厚では入射角により反射率が大きく変化していることがわかる。したがって反射率の角度差が1%以下である膜厚は84〜104nmであると言える。
【0074】
上記結果とあわせ、同様にして得た他の膜材料についての数値解析結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から解るように屈折率が小さいものほど角度差1%以下となる膜厚の幅は広く、反射率の角度依存性を少なくするには屈折率の低いものが適していると言える。より好ましくは非晶質フッ素樹脂が本発明の趣旨に最も適している。
【0077】
〔実施例1〕
本実施例においては、非晶質フッ素樹脂をアルミ基材に塗布し、反射率の角度依存性が抑えられることを示す。
【0078】
代表的な湿式成膜法であるディッピングを行なった。図3に示すように、二つの平行した反射面4aを有するアルミニウムからなるポリゴンミラー(成膜前)4bを塗布液5に全部分浸し、これを引き上げ、焼成して非晶質フッ素樹脂膜を形成し、反射面の反射率を測定した。
【0079】
塗布液には非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)に2.0質量%溶解した溶液を用い、引上げ速度を80mm/minで引き上げ、170℃で30分間焼成するとおよそ100nmの膜厚が形成され、そのときの15〜56°の入射角における反射率の変化は1.0%以内に抑えられていた。
【0080】
〔実施例2〕
本実施例においては、多面体のポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂を塗布する場合、本発明における回転湿式成膜法が有効であることを示す。
【0081】
外接円筒直径40mmで、6つの反射面が正六角柱をなすアルミニウムからなる成膜前のポリゴンミラー4bを6枚、図4に示すように軸に通す。2.9%の非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)溶液(溶媒は構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))を満たした槽内の溶液にポリゴンミラーの反射面を40rpmで回転しながら、1.2mmの深さで浸し、溶液から反射面を離した後2000rpmで120秒間回転させて薄膜を形成し、170℃で30分間焼成をかけた。反射面にはおよそ100nmの非晶質フッ素樹脂膜が6面とも均一に形成され、15〜56°の入射角における反射率の変化は1.0%以内となった。
【0082】
また、このようにして得たポリゴンミラーを結露耐久試験およびオゾン耐久試験を行なった結果から非晶質フッ素樹脂膜が耐湿性・耐オゾン性に優れる膜であることを示す。
【0083】
結露耐久試験において前記非晶質フッ素樹脂を形成したポリゴンミラーを60℃・90%の炉の中で10時間放置し、これを繰返し3回実験を行なった。それぞれの試験の前後での反射率の変化を観たところ、3回目の試験後においても反射率の低下が2.0%以下でありほとんど反射率の変化がないものと言える。また、オゾン耐久試験においては、前記非晶質フッ素樹脂を形成したポリゴンミラーを45℃・95%かつオゾン濃度1ppmの環境下で100時間放置し、実験の前後での反射率を測定した。反射率の低下は全く観られなかった。
【0084】
つまり、結露試験を繰り返し行なった後でさえ2.0%以下の反射率低下に留まり、オゾン耐久試験においては全く変化が観られなかったことから、前記非晶質フッ素樹脂は耐湿性・耐オゾン性に優れており、ポリゴンミラーの反射面の塗布膜として非常に有効である。
【0085】
〔実施例3〕
本実施例においては、外接円筒直径40mmかつアルミニウムからなる6つの反射面が正六角柱をなすポリゴンミラーへ非晶質フッ素樹脂を塗布する場合、均一な膜を形成するのに最適な回転数・回転時間を求めるための手法を示す。
【0086】
回転数・回転時間のみをパラメータにとり、実施例2と同様に回転湿式成膜を行なった。
【0087】
図5は1500rpmかつ120secで回転成膜(ア)し、また2500rpmかつ120secで回転成膜(イ)させた時の前記ポリゴンミラーの反射面の写真であり、 図5を補足するイメージ図である。
【0088】
回転時間を120secで固定し、かつ、回転数を1000〜3000rpmで500rpm刻みで回転成膜してみると1500rpm以下では図5−アのような液が反射面端部に残る「液溜り跡」60が現れる場合があった。2500rpm以上では 図5−イのような液が前記反射面上を素早く流れていった跡(「流れシミ跡」61)が現れる場合があった。2000rpmで回転させた場合、前記「液溜り跡」は0.5mm以下に抑えられ、前記「流れシミ跡」も確認されなかった。表2に結果をまとめて示す。表中、例えば0/10は、10回試験して0回液溜り跡あるいは流れシミ跡が認められたことを示す。
【0089】
【表2】
【0090】
1000rpm、1500rpmで120秒間回転させたときに見られる液溜り跡は、120秒回転させた後2000rpmで10秒間回転させることにより防止することができる。また2500rpm、3000rpmで120秒間回転させたときに見られる流れシミ跡は2500rpmで20秒、あるいは3000rpmで15秒回転させた後2000rpmで120秒間回転させることにより防止できる。
【0091】
また、回転数を2000rpmで固定し、回転数を30〜150secで30sec刻みで回転成膜してみたところ90sec以下では前記「液溜り跡」は0.5mm以上確認されることがあり、120sec以上では0.5mm以下となることが確認された。結果を表3にまとめて示す。
【0092】
【表3】
【0093】
2000rpmで30秒、60秒、90秒回転させたときに発生する液溜り跡は回転時間をのばすことにより防止できる。また30秒、60秒、90秒回転させた後、3000rpmで15秒間回転させても防止することができる。本実施例より装置制作上最も安価な機構を考え、外接円筒直径40mmかつアルミニウムからなる6面ポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂の回転成膜法を適用する場合、回転数を固定した場合には2000rpmで120秒以上回転することが望ましいと言える。上記条件で回転を行うことにより、安価な装置を用いて均一な膜をきわめて安定的に形成することが可能である。
【0094】
〔実施例4〕
本実施例においては、溶液の濃度のみをパラメータにとり、実施例2と同様に反射率の角度差を測定することで最適な液濃度の割り出しを行なった。
【0095】
液濃度を1.5〜4.0wt%の範囲で回転湿式成膜法を適用し(作成された膜の膜厚はそれぞれ異なる)、反射率の角度差を測定した結果を 図7に示す。データには若干バラつきが見られたものの大まかな傾向として上に凸の曲線を描き、反射率の角度依存性が最も少なくなると思われる濃度は2.9〜3.0wt%であった。
【0096】
なお、本例において液濃度が1.5%の場合のように角度依存性が大きい場合でも、他の製造条件、例えば回転速度を調整すれば、角度依存性を抑えることが可能である。
【0097】
〔実施例5〕
実施例1〜3のポリゴンミラーをスキャナーモータに装備して回転可能な光偏向器、光源(半導体レーザー)、結像光学系、走査レンズとともに図8に示すように配置して光走査装置を構成した。さらに、この光走査装置を用いて電子写真機器を構成した。ここで電子写真機器としては、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有する電子写真装置とし、該露光手段として上記光走査装置を用いた。
【0098】
この電子写真装置を用いて、繰り返し、パターン画像及び写真画像を出力したところ、画質、耐久性ともに従来のポリゴンミラーを用いたレベルに達していた。すなわち、本発明のポリゴンミラーは、従来のポリゴンミラーに要求される性能を満足しており従来のポリゴンミラーに代わって使用しても何ら問題はなかった。
【0099】
〔実施例6〕
本実施例においては、ポリゴンミラーに塗布液を塗布する領域を回転軸からRi以上の領域(反射面内接円筒の外側)のみに塗布することで、膜厚および反射率の角度依存性のバラツキを抑制することができることを示す。
【0100】
外接円筒半径20mm(内接円筒半径Ri=17.3mm)の、反射面が正六角柱をなす6面ポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂を回転成膜法で塗布し、膜厚を制御する回転に入る前に、反射面に塗布液を塗布する為に回転軸と塗布液面との距離をRとした時、表4の条件で実験した。その時の結果を表5に示す。測定回数は各条件につき30である。塗布液は非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を2.7質量%含む構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))である。
【0101】
塗布工程の手順としては、40rpmで回転させ、表4に示す距離で10秒間保持した。
【0102】
塗膜形成工程における回転数および回転時間は、2000rpmで120秒とした。
【0103】
塗膜を焼成する条件としては、180℃の加熱炉で40分とした。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
反射面内接円筒半径Ri(=17.3mm)を境に各入射角度15°、35°、56°で条件AおよびBが条件CおよびDより反射率のバラツキが小さいと言える。つまり、反射率のバラツキが膜厚のバラツキに他ならないことから、塗布領域が内接円筒の外側に限定されているときが膜厚のバラツキを抑えられ、好ましいことがわかる。また、入射角度15°、35°、56°の反射率の中で最大値と最小値の差を表した「P−P」で比較すると、条件AおよびBが条件CおよびDよりバラツキが半分以下であると言える。つまり、塗布領域が反射面内接円筒の外側に限定されているとき、反射率の角度依存性のバラツキが抑えられ、好ましい。
【0107】
また条件CおよびDにおいて発生した反射率のバラツキ、膜厚のバラツキは反射面内接円の内側に塗布された溶液を除去した後に回転を開始すれば防止することができるが、より安価で簡単な装置構成を考えた場合、上記のような溶液除去手段を用いるよりも反射面内接円外側にのみ溶液を塗布することが望ましい。
【0108】
〔実施例7〕
本実施例においては、ポリゴンミラーヘの塗布領域を回転軸からRi以上の領域(反射面内接円筒の外側)のみに塗布することで偶発的な膜の乱れを抑制することができることを示す。
【0109】
外接円筒半径10mmの、反射面が正四角柱をなす4面ポリゴンミラーにSiO2のゾルケル膜を回転湿式成膜法で塗布し、反射面上に 図9(イ)のような液が流れたような跡である「流れシミ」61、或いは反射面端部に液が端部から0.3mm領域に液が残った跡である「液溜り」60が現れる発生率を比較した。塗布液はエチルシリケートを2質量%含むイソプロピルアルコールである。実験条件は表6の通りとした。測定回数は各条件につき120である。
【0110】
塗布工程の手順としては、表6の距離で40rpmで10秒間回転させた。
【0111】
塗膜形成工程における回転数および回転時間は、2000rpmで120秒とした。
【0112】
塗膜を焼成する条件としては、180℃の加熱炉で40分とした。
【0113】
【表6】
【0114】
表6から分かるように、塗布領域が反射面内接円筒の外側のみの場合(条件AおよびB)の方が反射面内接円筒内側まで塗布領域がある場合(条件CおよびD)よりも、「流れシミ」、「液溜り」共に発生率が低いことが分かる。つまり、膜形状の偶発的な乱れが塗布領域を反射面内接円筒の外側に限定することで抑制され、好ましい。
【0115】
また条件CおよびDにおいて多く発生した流れシミ、液溜り等は、反射面内接円の内側に塗布された溶液を除去した後に回転を開始すれば、それぞれ1.5%以下に抑制することができるが、より安価で簡単な装置構成を考えた場合、上記のような溶液除去手段を用いるよりも反射面内接円外側にのみ溶液を塗布することが望ましい。
【0116】
〔実施例8〕
本実施例においては、回転湿式成膜法において膜厚を制御する回転に入る前に塗布液を反射面に塗布する方法の最も好ましい1例を示す。
【0117】
外接円筒半径20mmの、反射面が正六角柱をなす6面ポリゴンミラーにおいて、回転数を40rpmとし、回転軸と塗布液面との距離Rをパラメータにとり、反射面全面に塗布できるまでの塗布時間をみた。
【0118】
手順を図10では簡単のために、4面ポリゴンミラーを示してある。まず成膜しようとするポリゴンミラーをRi<R<Roとなるように、かつここではポリゴンミラーが塗布液に接しないように塗布液上にセットする。次にポリゴンミラーを回転させると、ポリゴンミラーの角部に液が塗布される(図中10で示す部分)。また回転によってこの液が濡れ広がり、最終的に反射面4a全面に塗布液が塗布される。塗布液は非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)(構造式(1))を2.0質量%含む構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))である。
【0119】
表7に示した結果から、反射面が塗布液面に完全には浸ることがなくとも、反射面に塗布液が完全に塗れ広がることが分かる。
【0120】
【表7】
【0121】
次に塗布時間を5sec、回転軸と塗布液面との距離を18.0、19.0mmに固定し、回転数をパラメータにとって上記と同様に塗布した結果を表8に示す。表中、○は塗布液が反射面全体に良好に濡れ広がることを示し、△は5〜20秒でぬれ広がることを示し、×は20秒以内では濡れ広がらないことを示す。この表から分かるようにR=18.0mmでは300rpm以下で塗れ広がることが確認され、R=19.0mmでは160rpm以下で塗れ広がることが確認された。R=18.0mmであっても回転数を300rpm超とすると塗布液面が激しく波立ち、所望の量を塗布できないことが確認され、本実験条件においては、回転数としては200rpm以下とするのが妥当だと言える。
【0122】
【表8】
【0123】
〔実施例9〕
本実施例においては、回転湿式成膜法において膜厚を制御する回転に入る前に塗布液を反射面に塗布する方法で考えうる代表的な例を以下に示し、塗布状況を表9に示した。ポリゴンミラーは外接円筒半径10.0mm、反射面が正四角柱をなす4面ポリゴンミラー(内接円筒半径7.1mm)とし、塗布液は非晶質フツ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を2.0質量%含む構造式(3)で示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)である。また試験回数はそれぞれ10である。
【0124】
塗布例Iは実施例7で述べた方法とし、回転数40rpm、塗布時間5sec、回転軸と塗布液面との距離Rを8.0mmとした。
【0125】
塗布例IIは、図11に概略を示すように、まず反射面が塗布液面と平行し、反射面が塗布液面と接するように浸す。一旦反射面を水平にした後塗布液面に近づけて接しさせることも考えられるが、ここでは、塗布された液が反射面内接円筒内側の領域に広がらないようにポリゴンミラーに一定の回転(30rpm)をさせながら反射面が水平になるタイミングで塗布液面を上昇させ、反射面を塗布液面に接しさせて塗布した。
【0126】
塗布例IIIでは、図12に概略を示すように、塗布液を十分に含んだ媒体6を反射面に順次押し付けて反射面のみに塗布液を塗布する。ここでは、前記媒体が十分に塗布液を含有し、反射面にキズを付けないために十分な柔らかさを有した発泡スポンジ(ブリジストン製ホワイトワイパ一)を用いた。
【0127】
塗布例IVでは、図13に概略を示すように、塗布液をノズル7から反射面に噴射することにより、塗布液を反射面に塗布した。ここでは、噴流の流量を10ml/sec、吹き出し断面直径1mmとし、吹き出し方向を仰角70°、ホリゴンミラーを10rpmで回転させながら塗布した。
【0128】
塗布例Vは、塗布例Iと同じ塗布方法で、ただし 図14に示すように、回転軸と塗布液面との距離を6.0とした。
【0129】
上記の方法で塗布を行い、回転数2000rpm、回転時間120秒で塗膜形成工程を行い、180℃で焼成して膜を形成し、実施例6と同様に入射角度15°、35°、56°の反射率の中で最大値と最小値の差を表した「P−P」を求めてその標準偏差を算出し(P−Pバラツキ)、流れシミを観察した結果を表9に示す。
【0130】
【表9】
【0131】
表9からも分かるように、反射面内接円筒の内倒まで塗布領域が存在する塗布例V以外であれば、塗布領域が反射面内接円筒の外側となり、反射率のバラツキ、偶発的な膜厚の乱れ共に極めて良く抑制することができ、好ましいことが確認された。
【0132】
〔実施例10〕
本実施例においては、広範囲のp偏光入射角に対して膜厚分布を持たせることで反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0133】
図15は、均一膜厚を形成した場合の膜厚と入射角および反射率の関係を示した一例として、アルミ基材の上にSiO2の均一膜を形成した場合を示した図である。膜厚に関係なく一定の反射率を示す入射角、ブリュースタ角が存在することが確認される。このときブリュースタ角よりも狭角側では膜厚が厚くなるに従い反射率が低下し、逆に、ブリュースタ角よりも広角側では膜厚が厚くなるに従い反射率が増加することが言える。
【0134】
図16ア)はアルミ基材の反射面にSiO2の膜を形成したときの膜厚分布である。ポリゴンミラーの反射面上の位置と光の入射角とは1対1の関係であるので横軸には対応する入射角で表している。この膜厚分布は、次のようにして決めた。すなわち、10〜70°の入射角に対応する各反射面位置において、ブリュースタ角(55°)における反射率(78.8%)が得られる膜厚を算出した。
【0135】
図16イ)はこの膜厚分布のときの反射率を示した図である。この図から上記膜厚分布を形成した場合に入射角に対して反射率が一定であることが確認される。
【0136】
表10は、アルミ基材の上にTiO2、Al2O3、SiO2および非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)の膜を均一膜厚でディッピングにより形成した膜について、入射角10〜70°での反射率を示したものである。表中B.A.とはブリュースタ角である。各膜に対してブリュースタ角より狭角側では比較的反射率が一様であるが、ブリュースタ角より広角側では反射率が急激に変化していることがわかる。
【0137】
【表10】
【0138】
表11はアルミ基材の上に単層で種種の膜をディッピングにより膜厚分布をもって形成し、そのときの反射率を測定した結果である。このとき、ブリュースタ角の反射率と同じ反射率を示す膜厚を計算し、反射面の各位置でその膜厚が形成されるように引き上げ速度を制御して成膜した。表11から分かるように、上記膜厚分布を設けることで反射率が角度に依存せず一様であることが確認された。
【0139】
表10および表11から分かるように、P偏光の入射角範囲が広範囲の場合は上記のような膜厚分布を設けることで反射率の角度一様性が得られることが確認された。
【0140】
【表11】
【0141】
ブリュースタ角の反射率は、反射面に形成される表層の膜厚に全く依存せず、下層までの反射率を示す。つまり、層数が1層であれば基材の、複数層であれば表層を除いた残りの層としての反射率となる。したがって、下層の材質、層数に関わらず、反射率の角度一様性は表11と同様に上記のような膜厚分布を形成することで実現することができる。
【0142】
〔実施例11〕
本実施例では反射面に形成される膜に対して、P偏光がブリュースタ角より広角に入射する領域の膜厚を薄くすることで反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0143】
表12はアルミ基材のポリゴンミラーに種々の膜を形成したとき、ブリュースタ角より狭角側を均一膜厚とし、ブリュースタ角より広角側でその均一膜厚より若干薄くして形成したときの反射率を示している。ブリュースタ角より広角側における膜厚の決め方は、ブリュースタ角における反射率が得られる膜厚とする。ここでは、入射角70°において、ブリュースタ角における反射率が得られる膜厚とした。
【0144】
このとき、表10の場合(全面均一膜厚)よりも反射率の角度一様性が得られていることが確認された。
【0145】
【表12】
【0146】
〔実施例12〕
本実施例では反射面に形成される光学膜に一様な傾斜の膜厚を設けて反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0147】
表13はアルミ基材のポリゴンミラーに種々の膜を形成したとき、膜厚分布に一様な傾斜を設けたときの反射率を示している。この傾斜の決め方は各々の膜材料に応じて反射率変化が最小となる勾配を求める。例えばここでは非晶質フッ素樹脂について膜厚勾配を40%(膜の最も薄い部分を1としたとき、最も厚い部分が1.4)とした。
【0148】
このとき、表10に示す均一膜厚の場合よりも反射率の角度一様性が得られていることが確認された
【0149】
【表13】
【0150】
〔実施例13〕
実施例5と同様に、実施例10〜12のポリゴンミラーを用いて光走査装置、さらには電子写真機器を構成し、評価を行った。画質、耐久性ともに従来のポリゴンミラーを用いたレベルに達していた。
【符号の説明】
【0151】
1 光源
2 コリーターレンズ
4 光偏向器
4a 反射面
4b ポリゴンミラー(成膜前)
5 塗布溶液
6 塗布液を含んだ媒体(発泡スポンジ)
7 塗布液噴射ノズル
10 塗布液が塗布された反射面の部分
60 液溜り
61 流れシミ
82 回転軸
83 シリンドリカルレンズ
85 モーター
86 回転方向
87 走査レンズ
89 被走査面
90 走査方向
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーに関し、特にポリゴンミラーの反射面に形成される膜に関するものである。また、光走査装置および電子写真機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりレーザービームプリンター等の光走査装置においては、特公昭62−36210号公報で開示されているように回転多面鏡(ポリゴンミラー)を介して像担持体面上を光変調された光束(レーザ光束)で光走査することにより画像情報の書き込みや読み出し等を行なっている。
【0003】
図8は光走査装置の要部構成例を示す概略図である。 図8において半導体レーザ等の光源部1より射出した光束をコリーターレンズ2により平行光束とし副走査方向にのみ屈折力を持つシリンドリカルレンズ83で集光し、ポリゴンミラー等からなる光偏向器4の偏向反射面4aへ線状に入射させている。コリーターレンズ2とシリンドリカルレンズ83は結像光学系を構成している。該偏向反射面4aで反射偏向させた光束を走査レンズ87を構成する球面よりなる負の屈折力のレンズ87aと直行する2方向で互いに屈折力が異なるトーリック面を有するレンズ87bとによって被走査面89上に導光しスポットを形成する。そして前記偏向器4を回転軸82を中心にモーター85により矢印86方向に回転させることにより被走査面89上における偏向走査面を矢印90方向(主走査方向)に光走査している。
【0004】
ポリゴンミラーには多くの場合、材質としてアルミニウム、プラスチック、ガラス等が用いられている。そして、その反射面に蒸着膜や陽極酸化膜を施すことによって反射率を増加させたり、角度依存性をなくしたり、酸化を防止したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−36210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの場合、光偏向器としてのポリゴンミラーの反射面には真空蒸着法によって反射増加膜等を施しているためその製造誤差による膜厚の違いや製造方法による部分的な膜厚の違いが反射特性のバラつきとなっており、高精度の蒸着装置を必要としたり多層膜構造にして基本の反射率を上げることにより影響を少なくしたり、または、特殊な蒸着法を行なったりする必要があった。このためコストアップに繋がったり膜の自由度を下げる要因ともなっていた。
【0007】
陽極酸化膜の上に非晶質フッ素樹脂膜を施す手法においては陽極酸化膜で反射率の角度依存性を小さくし、非晶質フッ素樹脂膜で結露に対する耐久性を上げている。この陽極酸化工程ではポリゴンミラーの十分な洗浄が必要なため大掛りな装置が必要であり、コストの面での課題があった。
【0008】
上記課題を解決するため回転湿式成膜法により単層膜で上記2例の成膜法より安価に成膜できることが提案されている。ただし、ポリゴンミラーを回転湿式成膜法で成膜する際、反射面全面を塗布液に浸しており、そのために反射面以外にも塗布液が塗られていた。結果的に回転成膜時に反射面以外に付着した塗布液が反射面に集中し、膜厚のバラつきが大きくなる傾向や偶発的な膜の乱れが発生する傾向がみられた。そこで回転湿式成膜法の生産性を向上させ、コストを下げることが課題となっていた。
【0009】
また、近年、光走査装置をコンパクト化する要望からポリゴンミラーに入射する光の入射角範囲は広がる傾向にある。一方反射率の角度一様性のためにポリゴンミラーの反射面には様々な光学膜が形成されているが、それら光学膜にはp偏光の光を全透過する角度(ブリュースタ角)が存在する、つまり、ブリュースタ角を挟んで入射角範囲をとると下層の反射率と一致する角度が必ず存在する。入射角範囲に対して一定の反射率であることが望ましいポリゴンミラーにおいて、一様な膜厚を形成することを前提とすると、特にブリュースタ角より広角側に入射角が広がる場合、反射率の振れ幅は広がり、反射率の角度一様性が得にくい傾向があった。このため、これまでの技術では、広い入射角範囲にも対応できるポリゴンミラーを得るのが難しく、その結果、コンパクトな光走査装置を得るのも難しかった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、低コストで生産性良く製造できるポリゴンミラーとその製造方法を提供すること、低コストで広い入射角範囲において反射率変化が小さいポリゴンミラーとその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、安価で、さらにはコンパクトな光走査装置および電子写真機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、該反射面が、1.45以下の屈折率を有する物質からなる単層膜が基材上に形成されてなることを特徴とするポリゴンミラーである。
【0013】
このポリゴンミラーにおいては、該1.45以下の屈折率を有する物質が非晶質フッ素樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、該単層膜の厚さが85〜110nmであることが好ましい。
【0015】
さらに、該単層膜が湿式成膜法により形成されてなることが好ましい。
【0016】
該単層膜が、該1.45以下の屈折率を有する物質を含む溶液を反射面に塗布後、反射面を半径方向に取る回転を行なう回転湿式成膜法により形成されてなることも好ましい。
【0017】
本発明はまた、反射面に膜が形成されたポリゴンミラーの製造方法であって、該膜を形成する物質を含む溶液を反射面に塗布する塗布工程と、これに引き続く、反射面を半径方向に取りポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程とを有するポリゴンミラーの製造方法において、
該塗布工程において、反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布することを特徴とするポリゴンミラーの製造方法である。
【0018】
この方法においては、該塗布工程において、溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面と該回転の軸との距離をRとし、反射面内の該軸から最も遠い点と該軸との距離をRoとしたとき、Ri≦R≦Roとして回転を行うことにより塗布を行うことが好ましい。
【0019】
また、塗布液面が激しく波立たない回転数以下で回転を行うことにより塗布を行うことが好ましい。
【0020】
さらに、該塗布工程において、溶液を槽に溜め、この槽内に形成される液面に反射面を順次接するようにポリゴンミラーを溶液に浸すことによって塗布を行うことが好ましい。
【0021】
あるいはまた、該塗布工程において、溶液を含浸した柔らかな媒体を反射面に押し付けることによって塗布を行うことが好ましい。
【0022】
該塗布工程において、反射面のみに塗布液を噴きつけることによって塗布を行うことも好ましい。
【0023】
本発明はまた、上記方法によって製造されたポリゴンミラーである。
【0024】
さらに本発明は、光を反射する複数の反射面を有するポリゴンミラーにおいて、該反射面に膜厚分布を持つ膜を有するポリゴンミラーである。
【0025】
このポリゴンミラーにおいて、該膜厚分布が、10〜70°の入射角に対応する位置においてブリュースタ角における反射率が得られる膜厚であることが好ましい。
【0026】
また、該膜厚分布が、ブリュースタ角以下の入射角に対応する位置においては膜厚が均一であり、ブリュースタ角を超える入射角に対応する位置においてはブリュースタ角における反射率が得られる膜厚であることも好ましい。
【0027】
あるいはまた、該膜厚分布が、10°から70°の入射角に対応する位置にかけて、一様に薄くなるような傾斜を持つことも好ましい。
【0028】
本発明は、また、光源、光源から出射された光を集光して結像する結像光学系、結像された光を反射して偏向する光偏向器、および偏向された光を被走査面に導く走査レンズを備える光走査装置において、該光偏向器が上述のポリゴンミラーを備えることを特徴とする光走査装置である。
【0029】
本発明は、さらに、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有する電子写真装置において、
該露光手段として上記光走査装置を備えることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーにおいて、ポリゴンミラーの反射面に1.45以下の屈折率を有する物質、特に低屈折率膜材料である非晶質フッ素樹脂を回転湿式成膜法により単層で形成することで、真空蒸着法や陽極酸化法に比べ、より安価にポリゴンミラーを製造することが可能である。
【0031】
また、本発明によれば、ポリゴンミラーの回転湿式成膜法において、反射面と塗布時の回転軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーのRi以上の領域のみに塗布液を塗布することで膜厚のバラツキや偶発的な膜の乱れを抑制することが可能であり、ポリゴンミラーの生産性を向上させることができ、従って、ポリゴンミラーを安価にすることが可能となる。
【0032】
このようなポリゴンミラーを備える本発明の光走査装置、さらにはこの光走査装置を備える電子写真機器は、安価に生産することができる。
【0033】
さらに、ポリゴンミラーの反射面に形成される膜に適切な膜厚分布を持たせることで広範囲の入射角に対して反射率の角度一様性が得られる。またこのことより、光走査装置のコンパクト化に貢献し、光走査装置をより安価に製造することが可能である。さらにこのような光走査装置を備える本発明の電子写真機器は、コンパクト化が可能であり、また低コスト化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実験例1に係る膜厚と入射角および反射率の関係を説明するグラフである。
【図2】実験例1に係る膜厚と15〜56°の入射角における反射率の差の関係を説明するグラフである。
【図3】実施例1に係るディッピングを説明する図である。
【図4】実施例2に係る回転湿式成膜法を説明する図である。
【図5】実施例3に係る「液溜り跡」および「流れシミ跡」を説明する写真である。
【図6】実施例3に係る「液溜り跡」および「流れシミ跡」を説明する模式図である。
【図7】実施例4に係る非晶質フッ素樹脂溶液濃度と15〜56°の入射角における反射率の差の関係を説明する図である。
【図8】光走査装置の要部構成例を示す概略図である。
【図9】実施例7に係る膜形状の乱れの模式図である。
【図10】実施例8に係る塗布方法の概略を表した図である。
【図11】実施例9に係る塗布例IIの概略を表した図である。
【図12】実施例9に係る塗布例IIIの概略を表した図である。
【図13】実施例9に係る塗布例IVの概略を表した図である。
【図14】実施例9に係る塗布例Vの概略を表した図である。
【図15】実施例10に係る、アルミ基材にSiO2を形成したとき均一膜厚としたときの入射角と反射率の関係を説明する図である。
【図16】実施例10に係る、アルミ基材にSiO2を形成したとき所望の膜厚分布にしたときの膜厚、入射角および反射率の関係を説明する図である。ア)は入射角に対する膜厚分布状態、イ)はこのときの入射角に対する反射率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
すなわち、本発明は電子写真機器等に用いられる光走査装置に搭載される反射型ポリゴンミラーにおいて、ポリゴンミラーの反射面に1.45以下の屈折率を有する物質の単層膜が形成されたポリゴンミラーである。
【0036】
上記単層膜を反射面に形成することにより反射面に入射する光の入射角度による反射率の依存性を抑えることができる。これによって、膜厚形成時の厳密な制御が不要となる。
【0037】
前記単層膜は蒸着やスパッタリングに代表される真空成膜法や溶液を用いる湿式成膜法により形成されることが可能であるが、真空成膜法で用いられる装置は設備費が高いため、設備費が安価となり得る湿式成膜法が特に望ましい。
【0038】
湿式成膜法とは所望の膜質または膜質の前駆体を含む溶液を基材に塗布し、前記溶液の溶媒を除去あるいは前駆体を反応させて基材に所望の膜を形成する方法、または溶液中で基材と溶液中の物質との反応により所望の膜を形成する方法である。
【0039】
湿式成膜法としてはディップコートやスピンコートに代表される溶液湿式成膜法や、特にポリゴンミラー基材がアルミニウムの場合には陽極酸化法を用いて酸化アルミの薄膜を形成することも可能であるが、特にコート設備費の負担の少ない溶液湿式成膜法を用いることが望ましい。
【0040】
溶液湿式成膜法とは、膜を形成する物質を溶媒に溶解した溶液を、膜を形成しようとする面に塗布し、これを乾燥または焼成して膜を得る方法である。
【0041】
上記ディップコートやスピンコートは一面もしくは平行した二面を成膜することに向いているが、上記ポリゴンミラーにみられる多面体の成膜には反射面を回転の半径方向にとる回転成膜法が最も望ましい。反射面を回転の半径方向に取るという意味は、反射面の法線が回転半径方向に一致することである。
【0042】
ポリゴンミラーの反射面に成膜する膜材料は、使用条件における耐久性を考慮して適宜決定できるが、例えば非晶質フッ素樹脂、フルオロアクリレート、二酸化珪素などを使用することができる。中でも、オゾンや水に対して不活性であり、水分の影響による腐蝕および基材の腐蝕がみられない非晶質フッ素樹脂が特に望ましい。非晶質フッ素樹脂としては例えば構造式(1),構造式(2)で示される物質を用いることができる。
【0043】
【化1】
【0044】
【化2】
【0045】
上記非晶質フッ素樹脂の屈折率は680nmの波長の光に対して1.34の屈折率を持ち、この非晶質フッ素樹脂がポリゴンミラーの反射面に88〜109nmに成膜された場合、入射角15〜56°での反射率の変化が±1.0%以内に抑えることができる。
【0046】
上記膜厚の膜を上記回転成膜法で形成する際、成膜過程で溶媒の蒸発速度は遅い方が望ましい。溶媒の蒸発速度は溶媒の沸点が高いほど遅くなるため、特に溶媒の沸点は180℃以上が望ましい。また基材に変形を与えることのない温度で蒸発する溶媒が望ましい。例えばアルミニウム基材を用いた場合には溶媒の沸点は280℃以下であることが望ましい。
【0047】
溶媒に関する他の物性としては、環境による構造の変化が少ないこと、また作業環境上無臭であることがが好ましい。
【0048】
溶媒としては、例えば構造式(3)で示される物質を好ましく用いることができる。
【0049】
【化3】
【0050】
単層膜が形成される基材としては、アルミニウム、プラスチック、ガラス等、ポリゴンミラーに用いることのできるものであれば、本発明による特段の制限はない。
【0051】
上記基材上に非晶質フッ素樹脂の単層膜が形成されるポリゴンミラーにおいて、回転成膜後に反射面端部に溶液が残ったり、溶液が反射面を筋状に流れた跡が残ったりせず均一な膜を生産性良く形成するには、特に2000〜4000rpm付近で回転させ、更に60秒以上回転させ続けることが望ましい。
【0052】
上記基材上にOLE_LINK1非晶質フッ素樹脂OLE_LINK1の単層膜が形成されるポリゴンミラーに対する回転成膜法において、上記回転数および回転時間で成膜する際、所望の膜厚を生産性良く形成するには1.5〜3.0%の溶液を用いることが最も望ましい。
【0053】
上記のような手法により成膜したポリゴンミラーは反射率の角度依存性が少なく、反射面の結露に対する耐久性に優れたポリゴンミラーを極めて安価に製造することが可能となる。つまり、上記のような手法により成膜したポリゴンミラーを搭載した光走査装置や電子写真機器等は従来のそれより安価に製造することができる。
【0054】
回転湿式成膜は、塗布液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、これに引き続いて、ポリゴンミラーを回転数を制御しつつ回転させ、所望の膜厚を得る膜厚制御工程とを有する。また通常、塗布液に含まれる溶剤をとばして膜を乾燥・定着させる焼成工程も有する。回転湿式成膜法の塗布工程においては、反射面と回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの回転軸からRi以上の領域に塗布液を塗布することが好ましい。塗布領域を支配するのは膜厚を制御する回転に入る前に所望の塗布液を反射面に塗布する過程にある。塗布工程においてRi未満の領域まで塗布したとしても反射面に十分に塗布できていれば膜厚を制御することは可能である。しかし、膜厚のバラツキおよび偶発的な膜の乱れを抑制するという点で、前記Ri以上の領域のみに塗布することが特に望ましい。
【0055】
塗布液を反射面に塗布する方法の一例として、ポリゴンミラーを回転しながら塗布液に反射面を浸すことが挙げられる。この場合、回転軸からRi以上の領域のみに塗布するためには、反射面内の該軸から最も遠い点と該軸との距離をRoとしたとき、回転軸と塗布液面との距離がRo以下で且つRi以上である必要がある。反射面が正n角柱状をなす正n角柱ポリゴンミラーを、正n角柱の中心軸を回転軸として回転させて塗布を行う場合には、Riは反射面に内接する円筒の半径であり、Roは反射面に外接する円筒の半径であり、溶液面と回転軸との距離をRとしたとき、Ri≦R≦Roとなる領域は内接円筒と外接円筒の間の領域となる。このときRo、Riの関係はRi/Ro=cos(円周率/n)となる。
【0056】
また、ポリゴンミラーを回転しながら塗布液に反射面を浸す場合の回転数は塗布液面が激しく波立たないことが好ましい。ここで激しく波立たないとは回転軸からRi未満の領域に塗布液が触れないということである。例えば外接円筒半径20mmの、反射面が六角柱状をなす6面ポリゴンミラーの場合、200rpm以下であることが望ましい。
【0057】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、反射面を順次塗布液面に平行にして反射面を塗布液面に接するように浸すことで反射面のみに塗布することが挙げられる。この場合、塗布液が重力に引かれて回転軸からRi未満の領域(正n角柱ポリゴンミラーの場合は内接円筒内側)へ広がらないように一定の回転を保ちながら反射面を塗布液面に接することが特に望ましい。
【0058】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、塗布液を含浸した柔らかな媒体を反射面に押し付けることが挙げられる。この場合、前記媒体を反射面に押し付ける際、反射面にキズがつかないように十分に柔らかく、且つ、塗布液を十分に含むことができる媒体を適宜選ぶことができるが、このような媒体として特に発泡スポンジが好適である。
【0059】
塗布液を反射面に塗布する方法の別の例として、塗布液を反射面に吹き付けることが挙げられる。この場合、前記ポリゴンミラーの回転軸に垂直に向けて吹き付け、且つ、塗布液を吹きつける角度は仰角であることが特に望ましい。
【0060】
前記のような手法により反射面に塗布液を塗布するならば、ポリゴンミラー上の塗布領域は回転軸からRi以上の領域(正n角柱ポリゴンミラーの場合は反射面の内接円筒の外側)のみとなり、膜厚のバラつきが小さくなり、高品質な膜が安定して得られ、偶発的な膜の乱れの発生が抑制され、製造不良損失が低下し、ポリゴンミラーを生産性良く、総合的に安価に製造することが可能となる。また、前記のような手法により成膜したポリゴンミラーを搭載した光走査装置や電子写真機器等は従来のそれより高品質で安価に製造することができる。
【0061】
また、反射面に形成する膜に意図的に適切な膜厚分布を持たせることによって、反射率の角度依存性をより一層抑制することができ、よりコンパクトな光走査装置を得ることができ、好ましい。
【0062】
一般的に、膜内で多重反射を起こさないような膜厚であれば、ブリュースタ角より狭い入射角範囲では膜厚が厚くなると反射率は低くなる傾向にある。一方、ブリュースタ角より広い入射角範囲では膜厚が厚くなると反射率は高くなる傾向にある。本発明ではこのことを利用している。
【0063】
つまり、ブリュースタ角の反射率を得られる膜厚は各入射角に対して理論的に求められるため、その膜厚を反射面に忠実に形成させることが、反射率の角度依存性を抑制するという観点から、特に望ましい。
【0064】
P偏光の入射角をブリュースタ角より狭い範囲に限定した場合、均一膜厚で反射率の一様性を実現することは容易である。このとき、ブリュースタ角より広角側では急激に反射率が上昇する。そこで、所望の均一膜厚でブリュースタ角より狭角側の反射率一様性を保証し、ブリュースタ角より広角の光が照射する領域のみ膜厚を薄くすることで理想的な膜形状に近似することができる。膜の全範囲にわたって膜厚を変化させるより成膜が容易であるという点で、この技術も特に望ましい。
【0065】
ポリゴンミラーの成膜法として一般に用いられている成膜法では、任意の膜厚を得るには高度な成膜技術が必要があったり、工数の増加が伴うことが多い。そこで、一様な傾斜の膜厚分布を持たせることで理想的な膜形状に近似することが実生産の観点から望ましい。
【0066】
このような膜厚分布を持つ膜を形成するには、引上げ速度を制御したディッピング法により可能であるが、多面体であるポリゴンミラーには回転湿式成膜法が特に望ましい。回転湿式成膜法においては、溶液を反射面に塗布した後、回転する工程でポリゴン回転の抜け側(回転方向の上流側)に溶液を集め、入り側(回転方向の下流側)から抜け側にかけて膜厚の勾配を持った膜を形成することができる。この勾配は回転数、溶液濃度などで制御することが可能である。
【0067】
本発明において光偏向器の形態としては、本発明のポリゴンミラーを有すること以外は、本発明による特段の制限は無く、電子写真機器に用いることのできる光走査装置であれば、いかなる形態もとり得る。
【0068】
本発明の光走査装置の形態としては、上記光偏向器を備える以外は、特に本発明による制限は無く、電子写真機器に用いることのできる光走査装置であれば、いかなる形態もとり得る。
【0069】
一般的に、光走査装置は、光源、光源から出射された光を集光して結像する結像光学系、結像された光を反射して偏向する光偏向器、および偏向された光を被走査面に導く走査レンズを備える。本発明の光走査装置は、このような構成において光偏向器が上述のポリゴンミラーを備えるものである。
【0070】
本発明の電子写真機器の形態としては、上記光走査装置を備える以外は、特に本発明による制限は無く、例えば、本発明の電子写真機器は電子写真装置を含み、その構成としては、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有するものであり、該露光手段として上記光走査装置を備えるものである。
【実施例】
【0071】
(実験例1)
本実験例においては、ポリゴンミラーの基材をエリプソメーターで測定して前記ポリゴンミラーの反射面の光学物性を推定し、更にガラス板上にディップにより塗布液を塗布した後乾燥させて形成した膜を同様にエリプソメーターで測定して膜材料の光学物性を推定したのち、前記ポリゴンミラーに前記膜材料を塗布した際の反射率を数値解析した。
【0072】
ポリゴンミラー基材にはアルミニウムを用い、塗布液としてはフルオロアクリレートを構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)に2質量%溶解したものを用いた。
【0073】
図1および 図2は上記のようにポリゴンミラーへ膜材料を成膜した場合についての数値解析結果である。 図1の横軸は光の入射角であり縦軸は反射率を表す。図2の横軸はポリゴンミラー反射面上の膜の厚さであり、縦軸は入射角15°と56°の反射率の差を表す。図2により反射率の差がゼロとなる膜厚は93nmと166nmとが確認されるが 図1より166nmの膜厚では入射角により反射率が大きく変化していることがわかる。したがって反射率の角度差が1%以下である膜厚は84〜104nmであると言える。
【0074】
上記結果とあわせ、同様にして得た他の膜材料についての数値解析結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から解るように屈折率が小さいものほど角度差1%以下となる膜厚の幅は広く、反射率の角度依存性を少なくするには屈折率の低いものが適していると言える。より好ましくは非晶質フッ素樹脂が本発明の趣旨に最も適している。
【0077】
〔実施例1〕
本実施例においては、非晶質フッ素樹脂をアルミ基材に塗布し、反射率の角度依存性が抑えられることを示す。
【0078】
代表的な湿式成膜法であるディッピングを行なった。図3に示すように、二つの平行した反射面4aを有するアルミニウムからなるポリゴンミラー(成膜前)4bを塗布液5に全部分浸し、これを引き上げ、焼成して非晶質フッ素樹脂膜を形成し、反射面の反射率を測定した。
【0079】
塗布液には非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)に2.0質量%溶解した溶液を用い、引上げ速度を80mm/minで引き上げ、170℃で30分間焼成するとおよそ100nmの膜厚が形成され、そのときの15〜56°の入射角における反射率の変化は1.0%以内に抑えられていた。
【0080】
〔実施例2〕
本実施例においては、多面体のポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂を塗布する場合、本発明における回転湿式成膜法が有効であることを示す。
【0081】
外接円筒直径40mmで、6つの反射面が正六角柱をなすアルミニウムからなる成膜前のポリゴンミラー4bを6枚、図4に示すように軸に通す。2.9%の非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)溶液(溶媒は構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))を満たした槽内の溶液にポリゴンミラーの反射面を40rpmで回転しながら、1.2mmの深さで浸し、溶液から反射面を離した後2000rpmで120秒間回転させて薄膜を形成し、170℃で30分間焼成をかけた。反射面にはおよそ100nmの非晶質フッ素樹脂膜が6面とも均一に形成され、15〜56°の入射角における反射率の変化は1.0%以内となった。
【0082】
また、このようにして得たポリゴンミラーを結露耐久試験およびオゾン耐久試験を行なった結果から非晶質フッ素樹脂膜が耐湿性・耐オゾン性に優れる膜であることを示す。
【0083】
結露耐久試験において前記非晶質フッ素樹脂を形成したポリゴンミラーを60℃・90%の炉の中で10時間放置し、これを繰返し3回実験を行なった。それぞれの試験の前後での反射率の変化を観たところ、3回目の試験後においても反射率の低下が2.0%以下でありほとんど反射率の変化がないものと言える。また、オゾン耐久試験においては、前記非晶質フッ素樹脂を形成したポリゴンミラーを45℃・95%かつオゾン濃度1ppmの環境下で100時間放置し、実験の前後での反射率を測定した。反射率の低下は全く観られなかった。
【0084】
つまり、結露試験を繰り返し行なった後でさえ2.0%以下の反射率低下に留まり、オゾン耐久試験においては全く変化が観られなかったことから、前記非晶質フッ素樹脂は耐湿性・耐オゾン性に優れており、ポリゴンミラーの反射面の塗布膜として非常に有効である。
【0085】
〔実施例3〕
本実施例においては、外接円筒直径40mmかつアルミニウムからなる6つの反射面が正六角柱をなすポリゴンミラーへ非晶質フッ素樹脂を塗布する場合、均一な膜を形成するのに最適な回転数・回転時間を求めるための手法を示す。
【0086】
回転数・回転時間のみをパラメータにとり、実施例2と同様に回転湿式成膜を行なった。
【0087】
図5は1500rpmかつ120secで回転成膜(ア)し、また2500rpmかつ120secで回転成膜(イ)させた時の前記ポリゴンミラーの反射面の写真であり、 図5を補足するイメージ図である。
【0088】
回転時間を120secで固定し、かつ、回転数を1000〜3000rpmで500rpm刻みで回転成膜してみると1500rpm以下では図5−アのような液が反射面端部に残る「液溜り跡」60が現れる場合があった。2500rpm以上では 図5−イのような液が前記反射面上を素早く流れていった跡(「流れシミ跡」61)が現れる場合があった。2000rpmで回転させた場合、前記「液溜り跡」は0.5mm以下に抑えられ、前記「流れシミ跡」も確認されなかった。表2に結果をまとめて示す。表中、例えば0/10は、10回試験して0回液溜り跡あるいは流れシミ跡が認められたことを示す。
【0089】
【表2】
【0090】
1000rpm、1500rpmで120秒間回転させたときに見られる液溜り跡は、120秒回転させた後2000rpmで10秒間回転させることにより防止することができる。また2500rpm、3000rpmで120秒間回転させたときに見られる流れシミ跡は2500rpmで20秒、あるいは3000rpmで15秒回転させた後2000rpmで120秒間回転させることにより防止できる。
【0091】
また、回転数を2000rpmで固定し、回転数を30〜150secで30sec刻みで回転成膜してみたところ90sec以下では前記「液溜り跡」は0.5mm以上確認されることがあり、120sec以上では0.5mm以下となることが確認された。結果を表3にまとめて示す。
【0092】
【表3】
【0093】
2000rpmで30秒、60秒、90秒回転させたときに発生する液溜り跡は回転時間をのばすことにより防止できる。また30秒、60秒、90秒回転させた後、3000rpmで15秒間回転させても防止することができる。本実施例より装置制作上最も安価な機構を考え、外接円筒直径40mmかつアルミニウムからなる6面ポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂の回転成膜法を適用する場合、回転数を固定した場合には2000rpmで120秒以上回転することが望ましいと言える。上記条件で回転を行うことにより、安価な装置を用いて均一な膜をきわめて安定的に形成することが可能である。
【0094】
〔実施例4〕
本実施例においては、溶液の濃度のみをパラメータにとり、実施例2と同様に反射率の角度差を測定することで最適な液濃度の割り出しを行なった。
【0095】
液濃度を1.5〜4.0wt%の範囲で回転湿式成膜法を適用し(作成された膜の膜厚はそれぞれ異なる)、反射率の角度差を測定した結果を 図7に示す。データには若干バラつきが見られたものの大まかな傾向として上に凸の曲線を描き、反射率の角度依存性が最も少なくなると思われる濃度は2.9〜3.0wt%であった。
【0096】
なお、本例において液濃度が1.5%の場合のように角度依存性が大きい場合でも、他の製造条件、例えば回転速度を調整すれば、角度依存性を抑えることが可能である。
【0097】
〔実施例5〕
実施例1〜3のポリゴンミラーをスキャナーモータに装備して回転可能な光偏向器、光源(半導体レーザー)、結像光学系、走査レンズとともに図8に示すように配置して光走査装置を構成した。さらに、この光走査装置を用いて電子写真機器を構成した。ここで電子写真機器としては、感光体を帯電させる手段、帯電した感光体を露光して潜像を形成する露光手段、該潜像にトナーを供給してトナー像を形成するトナー像形成手段、該トナー像を転写材に転写する転写手段、および該感光体表面の残留物や異物を除去するクリーニング手段を有する電子写真装置とし、該露光手段として上記光走査装置を用いた。
【0098】
この電子写真装置を用いて、繰り返し、パターン画像及び写真画像を出力したところ、画質、耐久性ともに従来のポリゴンミラーを用いたレベルに達していた。すなわち、本発明のポリゴンミラーは、従来のポリゴンミラーに要求される性能を満足しており従来のポリゴンミラーに代わって使用しても何ら問題はなかった。
【0099】
〔実施例6〕
本実施例においては、ポリゴンミラーに塗布液を塗布する領域を回転軸からRi以上の領域(反射面内接円筒の外側)のみに塗布することで、膜厚および反射率の角度依存性のバラツキを抑制することができることを示す。
【0100】
外接円筒半径20mm(内接円筒半径Ri=17.3mm)の、反射面が正六角柱をなす6面ポリゴンミラーに非晶質フッ素樹脂を回転成膜法で塗布し、膜厚を制御する回転に入る前に、反射面に塗布液を塗布する為に回転軸と塗布液面との距離をRとした時、表4の条件で実験した。その時の結果を表5に示す。測定回数は各条件につき30である。塗布液は非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を2.7質量%含む構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))である。
【0101】
塗布工程の手順としては、40rpmで回転させ、表4に示す距離で10秒間保持した。
【0102】
塗膜形成工程における回転数および回転時間は、2000rpmで120秒とした。
【0103】
塗膜を焼成する条件としては、180℃の加熱炉で40分とした。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
反射面内接円筒半径Ri(=17.3mm)を境に各入射角度15°、35°、56°で条件AおよびBが条件CおよびDより反射率のバラツキが小さいと言える。つまり、反射率のバラツキが膜厚のバラツキに他ならないことから、塗布領域が内接円筒の外側に限定されているときが膜厚のバラツキを抑えられ、好ましいことがわかる。また、入射角度15°、35°、56°の反射率の中で最大値と最小値の差を表した「P−P」で比較すると、条件AおよびBが条件CおよびDよりバラツキが半分以下であると言える。つまり、塗布領域が反射面内接円筒の外側に限定されているとき、反射率の角度依存性のバラツキが抑えられ、好ましい。
【0107】
また条件CおよびDにおいて発生した反射率のバラツキ、膜厚のバラツキは反射面内接円の内側に塗布された溶液を除去した後に回転を開始すれば防止することができるが、より安価で簡単な装置構成を考えた場合、上記のような溶液除去手段を用いるよりも反射面内接円外側にのみ溶液を塗布することが望ましい。
【0108】
〔実施例7〕
本実施例においては、ポリゴンミラーヘの塗布領域を回転軸からRi以上の領域(反射面内接円筒の外側)のみに塗布することで偶発的な膜の乱れを抑制することができることを示す。
【0109】
外接円筒半径10mmの、反射面が正四角柱をなす4面ポリゴンミラーにSiO2のゾルケル膜を回転湿式成膜法で塗布し、反射面上に 図9(イ)のような液が流れたような跡である「流れシミ」61、或いは反射面端部に液が端部から0.3mm領域に液が残った跡である「液溜り」60が現れる発生率を比較した。塗布液はエチルシリケートを2質量%含むイソプロピルアルコールである。実験条件は表6の通りとした。測定回数は各条件につき120である。
【0110】
塗布工程の手順としては、表6の距離で40rpmで10秒間回転させた。
【0111】
塗膜形成工程における回転数および回転時間は、2000rpmで120秒とした。
【0112】
塗膜を焼成する条件としては、180℃の加熱炉で40分とした。
【0113】
【表6】
【0114】
表6から分かるように、塗布領域が反射面内接円筒の外側のみの場合(条件AおよびB)の方が反射面内接円筒内側まで塗布領域がある場合(条件CおよびD)よりも、「流れシミ」、「液溜り」共に発生率が低いことが分かる。つまり、膜形状の偶発的な乱れが塗布領域を反射面内接円筒の外側に限定することで抑制され、好ましい。
【0115】
また条件CおよびDにおいて多く発生した流れシミ、液溜り等は、反射面内接円の内側に塗布された溶液を除去した後に回転を開始すれば、それぞれ1.5%以下に抑制することができるが、より安価で簡単な装置構成を考えた場合、上記のような溶液除去手段を用いるよりも反射面内接円外側にのみ溶液を塗布することが望ましい。
【0116】
〔実施例8〕
本実施例においては、回転湿式成膜法において膜厚を制御する回転に入る前に塗布液を反射面に塗布する方法の最も好ましい1例を示す。
【0117】
外接円筒半径20mmの、反射面が正六角柱をなす6面ポリゴンミラーにおいて、回転数を40rpmとし、回転軸と塗布液面との距離Rをパラメータにとり、反射面全面に塗布できるまでの塗布時間をみた。
【0118】
手順を図10では簡単のために、4面ポリゴンミラーを示してある。まず成膜しようとするポリゴンミラーをRi<R<Roとなるように、かつここではポリゴンミラーが塗布液に接しないように塗布液上にセットする。次にポリゴンミラーを回転させると、ポリゴンミラーの角部に液が塗布される(図中10で示す部分)。また回転によってこの液が濡れ広がり、最終的に反射面4a全面に塗布液が塗布される。塗布液は非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)(構造式(1))を2.0質量%含む構造式(3)に示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製))である。
【0119】
表7に示した結果から、反射面が塗布液面に完全には浸ることがなくとも、反射面に塗布液が完全に塗れ広がることが分かる。
【0120】
【表7】
【0121】
次に塗布時間を5sec、回転軸と塗布液面との距離を18.0、19.0mmに固定し、回転数をパラメータにとって上記と同様に塗布した結果を表8に示す。表中、○は塗布液が反射面全体に良好に濡れ広がることを示し、△は5〜20秒でぬれ広がることを示し、×は20秒以内では濡れ広がらないことを示す。この表から分かるようにR=18.0mmでは300rpm以下で塗れ広がることが確認され、R=19.0mmでは160rpm以下で塗れ広がることが確認された。R=18.0mmであっても回転数を300rpm超とすると塗布液面が激しく波立ち、所望の量を塗布できないことが確認され、本実験条件においては、回転数としては200rpm以下とするのが妥当だと言える。
【0122】
【表8】
【0123】
〔実施例9〕
本実施例においては、回転湿式成膜法において膜厚を制御する回転に入る前に塗布液を反射面に塗布する方法で考えうる代表的な例を以下に示し、塗布状況を表9に示した。ポリゴンミラーは外接円筒半径10.0mm、反射面が正四角柱をなす4面ポリゴンミラー(内接円筒半径7.1mm)とし、塗布液は非晶質フツ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)を2.0質量%含む構造式(3)で示す物質(商品名:CT−solv.180:旭硝子社製)である。また試験回数はそれぞれ10である。
【0124】
塗布例Iは実施例7で述べた方法とし、回転数40rpm、塗布時間5sec、回転軸と塗布液面との距離Rを8.0mmとした。
【0125】
塗布例IIは、図11に概略を示すように、まず反射面が塗布液面と平行し、反射面が塗布液面と接するように浸す。一旦反射面を水平にした後塗布液面に近づけて接しさせることも考えられるが、ここでは、塗布された液が反射面内接円筒内側の領域に広がらないようにポリゴンミラーに一定の回転(30rpm)をさせながら反射面が水平になるタイミングで塗布液面を上昇させ、反射面を塗布液面に接しさせて塗布した。
【0126】
塗布例IIIでは、図12に概略を示すように、塗布液を十分に含んだ媒体6を反射面に順次押し付けて反射面のみに塗布液を塗布する。ここでは、前記媒体が十分に塗布液を含有し、反射面にキズを付けないために十分な柔らかさを有した発泡スポンジ(ブリジストン製ホワイトワイパ一)を用いた。
【0127】
塗布例IVでは、図13に概略を示すように、塗布液をノズル7から反射面に噴射することにより、塗布液を反射面に塗布した。ここでは、噴流の流量を10ml/sec、吹き出し断面直径1mmとし、吹き出し方向を仰角70°、ホリゴンミラーを10rpmで回転させながら塗布した。
【0128】
塗布例Vは、塗布例Iと同じ塗布方法で、ただし 図14に示すように、回転軸と塗布液面との距離を6.0とした。
【0129】
上記の方法で塗布を行い、回転数2000rpm、回転時間120秒で塗膜形成工程を行い、180℃で焼成して膜を形成し、実施例6と同様に入射角度15°、35°、56°の反射率の中で最大値と最小値の差を表した「P−P」を求めてその標準偏差を算出し(P−Pバラツキ)、流れシミを観察した結果を表9に示す。
【0130】
【表9】
【0131】
表9からも分かるように、反射面内接円筒の内倒まで塗布領域が存在する塗布例V以外であれば、塗布領域が反射面内接円筒の外側となり、反射率のバラツキ、偶発的な膜厚の乱れ共に極めて良く抑制することができ、好ましいことが確認された。
【0132】
〔実施例10〕
本実施例においては、広範囲のp偏光入射角に対して膜厚分布を持たせることで反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0133】
図15は、均一膜厚を形成した場合の膜厚と入射角および反射率の関係を示した一例として、アルミ基材の上にSiO2の均一膜を形成した場合を示した図である。膜厚に関係なく一定の反射率を示す入射角、ブリュースタ角が存在することが確認される。このときブリュースタ角よりも狭角側では膜厚が厚くなるに従い反射率が低下し、逆に、ブリュースタ角よりも広角側では膜厚が厚くなるに従い反射率が増加することが言える。
【0134】
図16ア)はアルミ基材の反射面にSiO2の膜を形成したときの膜厚分布である。ポリゴンミラーの反射面上の位置と光の入射角とは1対1の関係であるので横軸には対応する入射角で表している。この膜厚分布は、次のようにして決めた。すなわち、10〜70°の入射角に対応する各反射面位置において、ブリュースタ角(55°)における反射率(78.8%)が得られる膜厚を算出した。
【0135】
図16イ)はこの膜厚分布のときの反射率を示した図である。この図から上記膜厚分布を形成した場合に入射角に対して反射率が一定であることが確認される。
【0136】
表10は、アルミ基材の上にTiO2、Al2O3、SiO2および非晶質フッ素樹脂(商品名:サイトップCTL−802:旭硝子社製)の膜を均一膜厚でディッピングにより形成した膜について、入射角10〜70°での反射率を示したものである。表中B.A.とはブリュースタ角である。各膜に対してブリュースタ角より狭角側では比較的反射率が一様であるが、ブリュースタ角より広角側では反射率が急激に変化していることがわかる。
【0137】
【表10】
【0138】
表11はアルミ基材の上に単層で種種の膜をディッピングにより膜厚分布をもって形成し、そのときの反射率を測定した結果である。このとき、ブリュースタ角の反射率と同じ反射率を示す膜厚を計算し、反射面の各位置でその膜厚が形成されるように引き上げ速度を制御して成膜した。表11から分かるように、上記膜厚分布を設けることで反射率が角度に依存せず一様であることが確認された。
【0139】
表10および表11から分かるように、P偏光の入射角範囲が広範囲の場合は上記のような膜厚分布を設けることで反射率の角度一様性が得られることが確認された。
【0140】
【表11】
【0141】
ブリュースタ角の反射率は、反射面に形成される表層の膜厚に全く依存せず、下層までの反射率を示す。つまり、層数が1層であれば基材の、複数層であれば表層を除いた残りの層としての反射率となる。したがって、下層の材質、層数に関わらず、反射率の角度一様性は表11と同様に上記のような膜厚分布を形成することで実現することができる。
【0142】
〔実施例11〕
本実施例では反射面に形成される膜に対して、P偏光がブリュースタ角より広角に入射する領域の膜厚を薄くすることで反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0143】
表12はアルミ基材のポリゴンミラーに種々の膜を形成したとき、ブリュースタ角より狭角側を均一膜厚とし、ブリュースタ角より広角側でその均一膜厚より若干薄くして形成したときの反射率を示している。ブリュースタ角より広角側における膜厚の決め方は、ブリュースタ角における反射率が得られる膜厚とする。ここでは、入射角70°において、ブリュースタ角における反射率が得られる膜厚とした。
【0144】
このとき、表10の場合(全面均一膜厚)よりも反射率の角度一様性が得られていることが確認された。
【0145】
【表12】
【0146】
〔実施例12〕
本実施例では反射面に形成される光学膜に一様な傾斜の膜厚を設けて反射率の角度一様性が得られることを示す。
【0147】
表13はアルミ基材のポリゴンミラーに種々の膜を形成したとき、膜厚分布に一様な傾斜を設けたときの反射率を示している。この傾斜の決め方は各々の膜材料に応じて反射率変化が最小となる勾配を求める。例えばここでは非晶質フッ素樹脂について膜厚勾配を40%(膜の最も薄い部分を1としたとき、最も厚い部分が1.4)とした。
【0148】
このとき、表10に示す均一膜厚の場合よりも反射率の角度一様性が得られていることが確認された
【0149】
【表13】
【0150】
〔実施例13〕
実施例5と同様に、実施例10〜12のポリゴンミラーを用いて光走査装置、さらには電子写真機器を構成し、評価を行った。画質、耐久性ともに従来のポリゴンミラーを用いたレベルに達していた。
【符号の説明】
【0151】
1 光源
2 コリーターレンズ
4 光偏向器
4a 反射面
4b ポリゴンミラー(成膜前)
5 塗布溶液
6 塗布液を含んだ媒体(発泡スポンジ)
7 塗布液噴射ノズル
10 塗布液が塗布された反射面の部分
60 液溜り
61 流れシミ
82 回転軸
83 シリンドリカルレンズ
85 モーター
86 回転方向
87 走査レンズ
89 被走査面
90 走査方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面上に膜を有しているポリゴンミラーの製造方法であって、
(1)該膜を形成する物質を含む溶液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、
(2)該工程(1)に引き続く、該反射面を半径方向に取り、該ポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
を有するポリゴンミラーの製造方法において、
該工程(1)が、該反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布する工程を含むことを特徴とするポリゴンミラーの製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)が、前記溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面と前記軸との距離をRとし、前記反射面内の前記軸から最も遠い点と前記軸との距離をRoとしたとき、Ri≦R≦Roとして前記ポリゴンミラーを回転させることにより塗布を行う工程を含む請求項1に記載のポリゴンミラーの製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)が、前記溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面に前記反射面を順次接するようにポリゴンミラーを溶液に浸すことによって塗布を行う工程を含む請求項1に記載のポリゴンミラーの製造方法。
【請求項1】
反射面上に膜を有しているポリゴンミラーの製造方法であって、
(1)該膜を形成する物質を含む溶液をポリゴンミラーの反射面に塗布する塗布工程と、
(2)該工程(1)に引き続く、該反射面を半径方向に取り、該ポリゴンミラーを回転させることによって反射面上に溶液からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
を有するポリゴンミラーの製造方法において、
該工程(1)が、該反射面と該回転の軸との最短距離をRiとしたとき、ポリゴンミラーの該回転の軸からRi以上の部分のみに溶液を塗布する工程を含むことを特徴とするポリゴンミラーの製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)が、前記溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面と前記軸との距離をRとし、前記反射面内の前記軸から最も遠い点と前記軸との距離をRoとしたとき、Ri≦R≦Roとして前記ポリゴンミラーを回転させることにより塗布を行う工程を含む請求項1に記載のポリゴンミラーの製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)が、前記溶液を槽に溜め、この槽内に形成される溶液面に前記反射面を順次接するようにポリゴンミラーを溶液に浸すことによって塗布を行う工程を含む請求項1に記載のポリゴンミラーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−191470(P2010−191470A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118260(P2010−118260)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2000−327138(P2000−327138)の分割
【原出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2000−327138(P2000−327138)の分割
【原出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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