説明

ポリシランの精製方法

【課題】ポリシランに含まれる不純物を分離除去し、ポリシランを効率よく精製する方法、及びこの方法により得られたポリシランを提供する。
【解決手段】溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離する。この方法では、溶媒に溶解したポリシランと固体状態の金属塩とを接触させてもよい。また、前記方法では、代表的には、ポリシランを溶解可能な溶媒中で、ポリシランと固体状態の金属塩とを混合し、撹拌してポリシランと金属塩とを接触させてもよい。溶媒に溶解したポリシラン溶液を固体状態の金属塩に流通させて接触させてもよい。また、溶媒に溶解したポリシラン溶液を、金属塩が敷設された濾過用部材に流通させてもよい。前記金属塩は、硫酸金属塩(硫酸ナトリウムなど)であってもよい。この方法では、不純物を含みやすい分岐状構造を有するポリシランであっても効率よく精製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシランを精製する方法、及びこの精製方法により得られたポリシランに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシランは、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)などとして注目されている。
【0003】
ポリシランの代表的な合成方法として、金属ナトリウムなどのアルカリ金属を用いてトルエン溶媒中のジアルキルジハロシランあるいはジハロテトラアルキルジシランを100℃以上の温度で強力に撹拌し、還元的にカップリングさせる方法[J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352(非特許文献1)、通称「Kipping法」]が知られている。しかし、この合成方法では、高分子化したポリシラン、架橋構造を有するポリシランなどの不純物が生じやすく、ポリシランの透明性や成膜性が低く、分子量分布が多峰性となる。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、WO98/29476号公報(特許文献1)及び特開2003−277507号公報(特許文献2)には、マグネシウム成分を用いてハロシラン類を重合してポリシランを得る方法が開示されている。これらの文献に記載の方法は、マグネシウム成分単独、又はマグネシウム成分及び金属ハロゲン化物を触媒として用いることによって重合を行う方法であり、汎用の化学合成装置を用いて安定で安価な原料を用いて合成でき、安全性、コスト面で優位性があり、高収率であるなどの優れた特徴を有する。
【0005】
この合成方法は、反応が穏やかであるため、前記不純物の生成を幾分か抑制できるものの、トリハロシラン類などを重合成分として得られる分岐構造を有するポリシランなどでは、その分岐構造に由来するためか、依然として不純物が生成しやすい。このような不純物は、ポリシランの透明性を低下させるものの、微粒子状であるため、除去することは困難である。例えば、ポリシランを含む溶液を単純に濾過しても、目詰まりを発生させ、前記のような不純物を効率よく除去できない。また、再沈殿、再結晶などの操作により不純物を除去する方法も考えられるが、このような方法では、精製物の収率が大幅に低下し、また、精製前後においてポリシランの物性が変化する場合が多い。
【0006】
なお、特許文献1及び2の実施例では、抽出操作後に、ポリシランを含むトルエン層に残存する水を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを留去することが記載されている。このような無水硫酸マグネシウムの添加は、トルエン層に残存する水を無水硫酸マグネシウムにより乾燥除去することを目的とした操作であり、ポリシランに含まれる不純物について何ら想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO98/29476号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−277507号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ポリシランを効率よく精製する方法、及びこの方法により得られたポリシランを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、分岐状ポリシランを用いても、ポリシランに含まれる不純物の含有量を簡便に低減できる精製方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、不純物の含有量が低減された透明性が高いポリシランを提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、ポリシランに含まれる不純物を除去してポリシランの透明性を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離すると、金属塩(例えば、金属塩の表面)にポリシラン中の不純物[又は不溶成分もしくは濁りの原因となる成分(例えば、高分子量化したポリシラン、過度に架橋したポリシランなど)]が吸着されるためか、不純物の含有量が低減され、透明性に優れたポリシランが得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の精製方法は、ポリシランを精製する方法であって、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離する方法である。前記方法では、溶媒に溶解したポリシランと固体状態の金属塩とを接触させてもよい。前記金属塩を固体状態で接触させると、ポリシランと、金属塩とを分離しやすい。代表的には、前記方法は、溶媒に溶解したポリシランと固体状態の金属塩とを接触させる方法であって、ポリシランと金属塩とを以下の方法(i)及び/又は方法(ii)により接触させる精製方法であってもよい。
(i)ポリシランを溶解可能な溶媒中で、ポリシランと固体状態の金属塩とを混合し、撹拌して(又は撹拌下で混合し)ポリシランと金属塩とを接触させる方法
(ii)溶媒に溶解したポリシラン溶液を固体状態の金属塩に流通させて接触させる方法。
【0014】
上記方法(i)において、撹拌手段の撹拌速度は、例えば、70rpm以上であってもよく、10分以上ポリシランと金属塩とを接触(撹拌下で混合)させてもよい。また、前記方法(i)において、ポリシランと、ポリシラン100重量部に対して20重量部以上の金属塩とを接触させてもよい。代表的には、前記方法(i)において、撹拌手段の撹拌速度100rpm以上で30分以上、ポリシランと、ポリシラン100重量部に対して30重量部以上の金属塩とを接触させてもよい。
【0015】
また、前記方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液を、金属塩が敷設された濾過用部材に流通させて接触させてもよい。前記方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する距離は、例えば、5mm以上であってもよい。また、前記方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する流通量は10000ml/分以下であってもよい。
【0016】
前記方法では、前記金属塩は、硫酸金属塩であってもよい。前記ポリシランは、分岐状構造を有するポリシランであってもよい。また、前記ポリシランは、少なくとも式(2)で表される構造単位を有するポリシランであってもよい。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Rは、水素原子、有機基又はシリル基を示し、sは1以上の整数を示す。)
前記ポリシランは、式(2)において、RがC1−4アルキル基、C5−10シクロアルキル基、又はC6−10アリール基である構造単位を有するポリシランであってもよい。また、前記ポリシランは、式(2)において、Rが少なくともC1−4アルキル基である構造単位を有するポリシランであってもよい。また、前記ポリシランは、式(2)で表される分岐状構造単位を、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、ポリシラン全体に対して40モル%以上含むポリシランであってもよい。このような構造を有するポリシランは、分岐状構造を形成しやすく、不純物が含まれやすいにもかかわらず、本発明では、このようなポリシランであっても、効率よくポリシランを精製できる。
【0019】
本発明には、前記精製方法により得られるポリシラン、すなわち、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離して得られるポリシランも含まれる。また、本発明には、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離し、ポリシランの透明性を改善する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離すると、金属塩にポリシラン中の不純物が吸着されるためか、ポリシランを精製することができる。また、不純物を含有しやすい分岐状ポリシランであっても、ポリシランを効率よく精製することができる。このような方法で得られたポリシランは、不純物の含有量が低減されるためか、透明性が高く、濾過性に優れている。また、このような方法では、ポリシランに含まれる不純物を効率よく除去できるため、ポリシランの透明性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の精製方法では、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離し、ポリシランを精製する。
【0022】
(ポリシラン)
ポリシランは、Si−Si結合を有する直鎖状、環状、分岐状、又は網目状の化合物であれば特に限定されないが、通常、前記ポリシランは、下記式(1)〜(3)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランで構成されている場合が多い。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、R〜Rは、水素原子、有機基又はシリル基を示し、r、s、及びtはそれぞれ1以上の整数を示す。)
前記式(1)及び(2)において、R〜Rで表される有機基としては、炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基など)、これらの炭化水素基に対応するエーテル基(アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など)、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアミノ基[例えば、アミノ基(−NH)、置換アミノ基(前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基など)など]などが挙げられる。なお、これらの置換基は、さらに1又は複数の他の置換基[例えば、アルキル基(例えば、C1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)などの炭化水素基、アルコキシ基(例えば、C1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ基)などの置換基、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−10アルキル−カルボニル基、好ましくはC1−6アルキル−カルボニル基、さらに好ましくはC1−4アルキル−カルボニル基など)など]で置換されていてもよい。
【0025】
前記式(1)及び(2)のR〜Rにおいて、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1−14アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基)が挙げられる。
【0026】
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシなどのC1−14アルコキシ基(好ましくはC1−10アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基)などが挙げられる。
【0027】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどのC2−14アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−6アルケニル基)などが挙げられる。
【0028】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−14シクロアルキル基(好ましくはC5−10シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキル基)などが挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC5−14シクロアルキルオキシ基(好ましくはC5−10シクロアルキルオキシ基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキルオキシ基)などが挙げられる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどのC5−14シクロアルケニル基(好ましくはC5−10シクロアルケニル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルケニル基)などが挙げられる。
【0029】
アリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC6−20アリール基(好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−12アリール基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6−20アリールオキシ基(好ましくはC6−15アリールオキシ基、さらに好ましくはC6−12アリールオキシ基)などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどのC6−20アリール−C1−4アルキルオキシ基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキルオキシ基)などが挙げられる。
【0030】
シリル基(シラニル基)としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)などが挙げられる。
【0031】
通常、基R〜Rは、炭化水素基(置換基を有していてもよい炭化水素基)又は炭化水素基に対応するエーテル基(置換基を有していてもよい炭化水素基が結合又は置換したエーテル基)であってもよい。好ましい基R、R、及びRには、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などの炭化水素基が含まれ、特にアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基など)又はアリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)が好ましい。
【0032】
ポリシランが非環状構造(直鎖状、分岐鎖状、網目状)の場合、末端基(末端置換基)は、通常、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基、アルコキシ基、シリル基などであってもよい。
【0033】
具体的なポリシランとしては、例えば、前記式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシラン、前記式(2)又は(3)で表される構造単位を有する分岐状ポリシラン(又は網目状ポリシラン)、前記式(1)〜(3)で表される構造単位を組み合わせて有する分岐状ポリシランなどが挙げられる。また、ポリシランがコポリマーである場合、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーのいずれであってもよい。さらに、前記ポリシランは、前記式(1)〜(3)で表される構造単位のそれぞれを単独で又は二種以上組み合わせて有するポリシランであってもよい。
【0034】
なお、前記式(2)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも1つの分岐状構造単位を有する分岐状ポリシランは、後述するように、前記式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシランなどに比べて、分岐状構造を有しているためか、不純物を多く含んでいるようである。本発明では、このような分岐状構造を有するポリシランであっても、効率よく精製することができる。
【0035】
代表的なポリシランとしては、例えば、ポリジアルキルシラン[例えば、ポリジメチルシラン、ポリメチルプロピルシラン、ポリメチルブチルシラン、ポリメチルペンチルシラン、ポリジブチルシラン、ポリジヘキシルシラン、ジメチルシラン−メチルへキシルシラン共重合体などのポリジC1−6アルキルシラン、好ましくはポリジC1−4アルキルシラン]、ポリアルキルアリールシラン[例えば、ポリメチルフェニルシラン、メチルフェニルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体などのポリC1−6アルキルC6−15アリールシラン、好ましくはポリC1−4アルキルC6−10アリールシラン]、ポリジアリールシラン(例えば、ポリジフェニルシランなどのポリジC6−15アリールシラン、好ましくはポリジC6−10アリールシラン)、ジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体(例えば、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−ヘキシルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体などのジC1−6アルキルシラン−C1−6アルキルC6−15アリールシラン共重合体、好ましくはジC1−6アルキルシラン−C1−4アルキルC6−10アリールシラン共重合体)などの前記式(1)で表される構造単位を有するポリシラン;ポリアルキルシラン(例えば、ポリメチルシラン、ポリプロピルシラン、ポリブチルシラン、ポリペンチルシラン、ポリヘキシルシランなどのポリC1−6アルキルシラン、好ましくはポリC1−4アルキルシランなど)、ポリシクロアルキルシラン(例えば、ポリシクロペンチルシラン、ポリシクロへキシルシランなどのC5−10シクロアルキルシラン、好ましくはC5−8シクロアルキルシラン、さらに好ましくはC5−6シクロアルキルシランなど)、ポリアリールシラン[例えば、ポリフェニルシラン(ポリフェニルシリン)などのポリC6−15アリールシラン、好ましくはポリC6−10アリールシラン]、アルキルシラン−アリールシラン共重合体[例えば、メチルシラン−フェニルシラン共重合体(メチルシリン−フェニルシリン共重合体)などのC1−6アルキルシラン−C6−15アリールシラン共重合体、好ましくはC1−4アルキルシラン−C6−10アリールシラン共重合体]などの前記式(2)で表される構造単位又は前記式(3)で表される構造単位を有する分岐状ポリシラン;ジアルキルシラン−アリールシラン共重合体(例えば、ジメチルシラン−フェニルシラン共重合体などのジC1−6アルキルシラン−C6−15アリールシラン共重合体、好ましくはジC1−6アルキルシラン−C6−10アリールシラン共重合体)、アルキルアリールシラン−アリールシラン共重合体(例えば、メチルフェニルシラン−フェニルシラン共重合体などのC1−6アルキルC6−15アリールシラン−C6−15アリールシラン共重合体、好ましくはC1−6アルキルC6−15アリールシラン−C6−10アリールシラン共重合体)などの前記式(1)で表される構造単位と前記式(2)で表される構造単位又は前記式(3)で表される構造単位とを有する分岐状ポリシランなどが挙げられる。このようなポリシランの詳細は、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)などに例示されている。これらのポリシランは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
なお、分岐状ポリシラン(又は分岐状構造を有するポリシラン、例えば、前記式(2)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも1つの分岐構造単位を有する分岐状ポリシラン)は、前記式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシランなどに比べて、分岐状構造を有しているためか、ポリシランの透明性や膜特性を低下させる要因となる微粒子状の不純物を生じやすい。本発明では、このような分岐状構造を有するポリシランであっても、効率よく不純物を分離除去して精製することができる。
【0037】
このような分岐状ポリシランとしては、前記のように、前記式(2)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位から選択された少なくとも1つの分岐構造単位を有する分岐状ポリシラン(特に、前記式(2)において、RがC1−4アルキル基、C5−10シクロアルキル基、又はC6−10アリール基である構造単位を有するポリシランなどの少なくとも前記式(2)で表される構造単位を有するポリシラン)が挙げられる。
【0038】
これらの分岐状ポリシランの中でも、特に、前記式(2)において、Rがアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)である構造単位を有するポリシラン(例えば、ポリアルキルシラン、アルキルシラン−アリールシラン共重合体など)は、不純物を生じやすい傾向にあるが、本発明では、このような分岐状ポリシランであっても、不純物を効率よく除去できる。
【0039】
分岐状ポリシランにおいて、前記分岐状構造単位の割合は、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、例えば、ポリシラン全体の1モル%以上(例えば、3〜100モル%)、好ましくは5モル%以上(例えば、10〜95モル%)、さらに好ましくは15モル%以上(例えば、20〜90モル%)、特に30モル%以上(例えば、40〜85モル%程度)であってもよい。
【0040】
特に、分岐状ポリシランにおいて、前記式(2)で表される分岐状構造単位(例えば、Rがアルキル基である単位など)の割合は、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、ポリシラン全体に対して10モル%以上(例えば、15〜100モル%)、好ましくは20モル%以上(例えば、25〜95モル%)、さらに好ましくは30モル%以上(例えば、35〜90モル%)、特に40モル%以上(例えば、45〜85モル%程度)含んでいてもよい。
【0041】
ポリシランの数平均重合度(例えば、構造単位(1)〜(3)におけるr、s及びtの合計)は、2以上であればよく、例えば、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度であってもよい。
【0042】
ポリシランの分子量は、重量平均分子量で200〜100,000、好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは800〜30,000程度であってもよく、通常1,000〜20,000(例えば、1,500〜15,000)程度であってもよい。なお、ポリシランは環状構造を有するポリシランであってもよいが、通常、非環状ポリシラン(例えば、分岐鎖状ポリシラン)であってもよい。ポリシランが環状である場合、環状ポリシランの環の員数は、通常、4〜12程度であってもよく、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜10(特に5〜8)程度であってもよい。
【0043】
前記ポリシランは、通常、不純物を含有している。このような不純物は、通常、ポリシランを溶解する溶媒に非溶解性又は難溶性の成分であり、詳細は定かではないが、架橋構造を有するポリシラン、高分子化したポリシランなどであることが推定される。このような不純物は、ポリシランの透明性などを低下させるものの、微粒子状であり、また、分子量などにおいても通常のポリシランと同様である場合も多く、溶媒に完全には溶解しないにもかかわらず、通常の精製方法(例えば、濾過など)では除去することは困難である。本発明の精製方法では、このような通常の方法では除去しがたい不純物のポリシラン中の含有量を簡便に著しく低減することができる。
【0044】
なお、ポリシランは、市販品を用いてもよく、種々の公知の方法を用いて調製してもよい。ポリシランの代表的な合成方法としては、金属ナトリウムなどのアルカリ金属を用いてトルエン溶媒中のジアルキルジハロシランあるいはジハロテトラアルキルジシランを100℃以上の温度で強力に撹拌し、還元的にカップリングさせる方法[J.Am.Chem.Soc.,103(1981)7352]が知られている。しかし、この方法は、空気中で発火するアルカリ金属を加熱し、強力に攪拌・分散させる必要があるため、工業的規模での生産における安全性が懸念され、また、得られるポリシランの分子量分布が多峰性となり品質的にも十分でない場合が多い。
【0045】
ポリシランの製造方法として、他にも(a)ビフェニルなどでマスクしたジシレンをアニオン重合させる方法(特開平1−23063号公報)、(b)環状シラン類を開環重合させる方法(特開平5−170913号公報)、(c)ヒドロシラン類を遷移金属錯体触媒により脱水素縮重合させる方法(特公平7−17753号公報)、(d)ジハロシラン類を室温以下の温度で電極還元してポリシランを製造する方法(特開平7−309953号公報)、(e)マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(いわゆる「マグネシウム還元法」、例えば、WO98/29476号公報、特開2003−277507号公報、特開2005−36139号公報に記載の方法など)が挙げられる。
【0046】
特に、マグネシウム還元法では、汎用の化学合成装置により安定で安価な原料を用いて合成でき、安全性、コスト面で優位性があり、ポリシランが高収率で得られるなどの優れた特徴を有する。
【0047】
そのため、ポリシランは、マグネシウム還元法により得られるポリシランを好適に使用してもよい。このようなマグネシウム還元法では、少なくともマグネシウム金属成分の存在下で、ハロシラン類を重合させることによりポリシランを合成できる。特に、マグネシウム還元法では、より効率よく高性能のポリシランを得るため、触媒として、マグネシウム金属成分と他の金属成分[例えば、リチウム化合物、金属ハロゲン化物(リチウム化合物(リチウムハロゲン化物、ハロゲン化リチウム)ではない金属ハロゲン化物)]とを併用する場合が多い。
【0048】
以下に、マグネシウム還元法について詳述する。
【0049】
マグネシウム還元法では、少なくともマグネシウム金属成分の存在下、ハロシラン類(ハロシラン化合物)を反応させることによりポリシランを得る。
【0050】
ハロシラン類としては、ジハロシラン類、トリハロシラン類、テトラハロシラン類などが挙げられる。ポリシランが前記式(1)〜(3)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランである場合には、これらのジ乃至テトラハロシラン類は、それぞれ、下記式で表されるハロシランのうち少なくとも1つのハロシラン(ジ乃至テトラハロシラン類)で構成してもよい。
【0051】
【化3】

【0052】
(式中、X〜Xはハロゲン原子、R〜R、r、s、及びtは前記と同じ。)
上記式(1A)〜(3A)において、X〜Xで表されるハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)は、塩素原子及び臭素原子(特に塩素原子)が好ましく、同一又は異なるハロゲン原子であってもよい。また、上記式(1A)〜(3A)において、r、s及びtは、それぞれ、前記と同様に1以上であればよく、単量体(r=s=t=1)であってもよく、多量体(r、s及びtが2以上)であってもよい。例えば、式(1A)で表されるジハロシランにおいて、rは、1〜1000、好ましくは1〜500、さらに好ましくは1〜100(例えば、1〜10)程度であってもよい。rが大きい多量体を用いると、ブロックコポリマーを得やすく、単量体又はrが小さい多量体を用いるとランダムコポリマーを得やすい。コポリマーの製造効率の点からは、単量体又はrが小さい多量体(例えば、rが1〜2程度のハロシラン)を好適に用いてもよい。なお、トリハロシラン類およびテトラハロシラン類は、通常、単量体(s=t=1)で使用する場合が多い。
【0053】
代表的なハロシランとしては、例えば、ジハロシラン類[例えば、ジアルキルジハロシラン(例えば、ジメチルジクロロシランなどのジC1−4アルキルジハロシラン及びその多量体)、アルキル−アリールジハロシラン(例えば、メチルフェニルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C6−10アリールジハロシラン及びその多量体)、アルキル−シクロアルキルジハロシラン(例えば、メチルシクロヘキシルジクロロシランなどのC1−4アルキル−C5−10シクロアルキルジハロシラン及びその多量体)、ジアリールジハロシラン(例えば、ジフェニルジハロシラン、ジトリルジハロシラン、ジキシリルジハロシラン、フェニルトリルジハロシラン、ジメトキシフェニルジハロシランなどのジC6−10アリールジハロシラン及びその多量体など)などの式(1A)で表されるジハロシラン類など]、トリハロシラン類[例えば、アルキルトリハロシラン(例えば、メチルトリクロロシランなどのC1−4アルキルトリハロシラン)、シクロアルキルトリハロシラン(例えば、シクロヘキシルトリクロロシランなどのC5−10シクロアルキルトリハロシラン及びその多量体)、アリールトリハロシラン(例えば、フェニルトリクロロシランなどのC6−10アリールトリハロシラン及びその多量体)などの式(2A)で表されるトリハロシラン類]、テトラハロシラン類(例えば、テトラクロロシランなどのテトラハロシランなどの式(3A)で表されるテトラハロシラン類)などが例示できる。これらのハロシランは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0054】
また、前記ハロシラン類は、ポリシランの末端を封鎖するため、必要に応じて、さらにモノハロシラン類[例えば、トリアルキルハロシラン(例えば、トリメチルクロロシランなどのトリC1−4アルキルハロシラン)、トリアリールハロシラン(例えば、トリフェニルクロロシランなどのトリC6−10アリールハロシラン)など]で構成してもよい。
【0055】
なお、ハロシラン類は、できるだけ高純度であるのが好ましい。例えば、液体のハロシラン類については、水素化カルシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥し、蒸留して使用するのが好ましく、固体のハロシラン類については、再結晶法などにより、精製して使用するのが好ましい。
【0056】
なお、ハロシラン類の反応は、通常、反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、非プロトン性溶媒(不活性溶媒)が広く使用でき、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状C4−6エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの鎖状C4−6エーテル)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが挙げられ、これらの溶媒は混合溶媒として使用してもよい。溶媒としては、極性溶媒単独(テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなど)、二種以上の極性溶媒の混合物、極性溶媒と非極性溶媒との混合物などが好ましい。極性溶媒と非極性溶媒との混合物を使用する場合、非極性溶媒の割合は、極性溶媒1重量部に対して、0.001〜50重量部、好ましくは0.005〜30重量部、さらに好ましくは0.01〜20重量部(例えば、0.1〜15重量部)程度であってもよい。
【0057】
溶媒(反応液)中のハロシラン類の濃度は、通常、20モル/L以下(例えば、0.05〜20モル/L)、好ましくは10モル/L以下(例えば、0.2〜10モル/L)、特に5モル/L以下(例えば、0.3〜5モル/L)程度である。
【0058】
(マグネシウム金属成分)
前記ハロシラン類の反応は、マグネシウム金属成分の存在下で好適に行うことができ、マグネシウム金属成分を作用させることにより、ポリシランを効率よく生成できる。
【0059】
マグネシウム金属成分は、少なくともマグネシウムが含まれていればよく、マグネシウム金属単体又はマグネシウム系合金、あるいは前記マグネシウム金属又は合金を含む混合物などであってもよい。マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。これらのマグネシウム金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
マグネシウム金属成分の形状は、ハロシラン化合物の反応を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、板状体(平板状など)などが例示され、特に表面積の大きい形状(粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体など)であるのが好ましい。マグネシウム金属成分が粉粒状の場合、平均粒径は、1〜10,000μm、好ましくは10〜5,000μm、さらに好ましくは20〜1,000μm程度である。
【0061】
なお、マグネシウム金属成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削や溶出(塩酸洗浄などの酸洗)などの適当な方法によって除去してもよい。
【0062】
マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン類のハロゲン原子に対して、マグネシウム換算で、1〜20当量であり、好ましくは1.1〜14当量、さらに好ましくは1.2〜10当量(例えば、1.2〜5当量)程度である。また、マグネシウム金属成分の使用量は、通常、ハロシラン化合物に対してモル数でマグネシウムとして1〜20倍であり、好ましくは1.1〜14倍であり、より好ましくは1.2〜10倍(例えば、1.2〜5倍)程度である。
【0063】
マグネシウム金属成分は、前記ハロシラン類を還元して、ポリシランを形成させるとともに、マグネシウム自身は酸化されてハロゲン化物を形成する。
【0064】
反応は、少なくとも前記マグネシウム金属成分の存在下で行えばよいが、ハロシランの重合を促進するため、リチウム化合物及び金属ハロゲン化物から選択された少なくとも一種(促進剤又は触媒)の共存下、特に、マグネシウム金属成分及び金属ハロゲン化物の存存下で行うのが有利である。
【0065】
(リチウム化合物)
リチウム化合物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなど)、無機酸塩(硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩酸リチウム、硫酸リチウム、過塩素酸リチウム、リン酸リチウムなど)などが使用できる。これらのリチウム化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいリチウム化合物は、ハロゲン化リチウム(特に塩化リチウム)である。
【0066】
溶媒(反応液)中のリチウム化合物の濃度は、通常、0.05〜5モル/L、好ましくは0.1〜4モル/L、特に0.15〜3モル/L程度である。
【0067】
リチウム化合物の割合は、ハロシラン類の総量100重量部に対して、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜100重量部(例えば、5〜75重量部)程度であり、通常、10〜80重量部程度である。
【0068】
(金属ハロゲン化物)
金属ハロゲン化物(リチウムハロゲン化物を除く金属ハロゲン化物)としては、多価金属ハロゲン化物、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)が挙げられる。金属ハロゲン化物を構成する前記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
金属ハロゲン化物としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、コバルト、バナジウム、チタン、パラジウム、サマリウムなどから選択された少なくとも一種の金属の塩化物又は臭化物が好ましい。
【0070】
このような金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl、FeClなどの塩化鉄;AlCl、ZnCl、SnCl、CoCl、VCl、TiCl、PdCl、SmClなど)、臭化物(FeBr、FeBrなどの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmIなど)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化物(例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などの塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。通常、塩化鉄及び/又は塩化亜鉛、特に塩化亜鉛などが使用される。
【0071】
溶媒中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.001〜6モル/L程度であり、好ましくは0.005〜4モル/L程度であり、より好ましくは0.01〜3モル/L程度である。
【0072】
金属ハロゲン化物の割合は、前記ハロシラン類の総量100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
【0073】
[精製方法]
本発明の精製方法では、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離し、ポリシランを精製する。
【0074】
(溶媒)
前記溶媒としては、特に制限されず、ポリシランを溶解しない溶媒であってもよいが、特にポリシランを溶解する溶媒が好ましい。ポリシランを溶解する溶媒としては、非プロトン性溶媒が広く使用でき、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状C4−6エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの鎖状C4−6エーテル)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ハロゲン含有化合物(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素など)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0075】
前記溶媒のうち、ポリシランを溶解しやすく、金属塩を溶解しにくい極性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン,2−メチル−テトラヒドロフランなどのエーテル類;トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素類;クロロホルムなどハロゲン含有化合物など)などが好ましい。特にポリシランと相互作用を起こさないという観点から、環状エーテル類(テトラヒドロフランなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)などが好適に使用できる。
【0076】
これらの溶媒は、混合溶媒として使用してもよい。溶媒としては、極性溶媒単独(一種又は二種以上の前記例示の極性溶媒)、極性溶媒と非極性溶媒(例えば、ベンゼン、ヘキサンなどの一種又は二種以上の非極性溶媒)との混合物などが好ましい。極性溶媒と非極性溶媒との混合物を使用する場合、非極性溶媒の割合は、極性溶媒1重量部に対して、0.001〜50重量部、好ましくは0.005〜30重量部、さらに好ましくは0.01〜20重量部(例えば、0.1〜15重量部)程度であってもよい。
【0077】
溶媒中のポリシランの濃度は、1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%程度であってもよい。溶媒中のポリシランの濃度が低すぎると、後に溶媒を除去(又は留去)する場合に、多大な時間及びエネルギーを要し、釜効率が低下する場合がある。また、ポリシランの濃度が高すぎると、分離効率(特に濾過効率)が低下する場合がある。
【0078】
(金属塩)
金属塩(又は金属化合物)を構成する金属としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第4A族金属(チタン、ジルコニウムなど)、周期表第6A族金属(クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表第7A族金属(マンガンなど)、周期表第8族金属(鉄、ニッケルなど)、周期表第1B族金属(銅、銀など)、周期表第2B族(亜鉛など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)、周期表第4B族金属(スズなど)などが挙げられる。金属塩は、これらの金属を複数有する複合金属塩であってもよい。前記金属のうち、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;ナトリウムなどのアルカリ金属;銅、銀などの周期表第1B族金属などが好ましい。
【0079】
前記金属塩は、不純物を除去できる限り、特に限定されず、正塩、中性塩、酸性塩、塩基性塩のいずれであってもよく、単塩、複塩、錯塩などであってもよい。なお、金属塩は、含水物(又は水和物)であっても、無水物であってもよい。代表的な前記金属塩としては、例えば、硫酸金属塩(硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸銅、無水硫酸マグネシウムなど)、硝酸金属塩(硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸銀など)、炭酸金属塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなど)、炭酸水素金属塩(例えば、炭酸水素ナトリウムなど)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなど)、金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなど)、金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウムなど)などが含まれる。
【0080】
好ましい金属塩には、硫酸金属塩(例えば、硫酸ナトリウムなどの硫酸アルカリ金属塩、硫酸マグネシウムなどの硫酸アルカリ土類金属塩など)が挙げられる。
【0081】
金属塩は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0082】
金属塩の比表面積は、例えば、1m/g以上(例えば、2〜1000m/g)、好ましくは3m/g以上(例えば、4〜700m/g)、さらに好ましくは5m/g以上(例えば、7〜500m/g)程度であってもよい。
【0083】
前記金属塩を使用することにより、ポリシランに含まれる不純物を高レベルで除去できる理由は定かではないが、ポリシラン中の不純物が、溶媒存在下における金属塩との接触により、吸着により、金属塩に不純物が取り込まれるようである。
【0084】
(接触方法)
前記のように、本発明では、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させ、金属塩を分離することにより、ポリシランを精製する。
【0085】
溶媒の存在下で、ポリシランは固体状態であってもよく、溶媒に溶解していてもよい。また、溶媒の存在下で、金属塩は固体状態であってもよく、溶媒に溶解していてもよい。ポリシランと金属塩との接触において、いずれか一方の成分が溶媒に溶解し、他方の成分が固体状態であることが好ましく、特に、ポリシランが溶媒に溶解し、金属塩が固体状態であることが好ましい。すなわち、溶媒に溶解したポリシランと、固体状態の金属塩(溶媒に溶解していない金属塩)とを接触させることが好ましい。ポリシランが溶媒に溶解しており、金属塩が固体状態であると、ポリシランと金属塩(不純物を含む金属塩)とを分離しやすい。
【0086】
ポリシランと金属塩とを接触させる代表的な方法としては、(i)ポリシランと金属塩とをポリシランを溶解可能な溶媒(詳細には、ポリシランを溶解可能であって、かつ金属塩を溶解しない溶媒)中で混合して接触させる(又は接触させつつ混合する)方法、(ii)溶媒に溶解したポリシラン溶液を固体状態の金属塩に流通させて(又は流して又は通して)接触させる方法などが挙げられる。
【0087】
混合して接触させる方法(i)では、混合は、単純な物理的混合であってもよいが、通常、撹拌力(又は衝撃力)を作用させて混合させることが好ましい。このような混合は、機械的手段{例えば、分散機(超音波分散機など)、撹拌機[撹拌子(マグネチックスターラ、メカニカルスターラなど)、撹拌棒などの撹拌手段を有する攪拌機など]など}を用いて行ってもよい。前記のような撹拌力を利用すると、金属塩の表面にポリシラン中の不純物を十分に吸着させることができるためか、ポリシランを効率よく精製することができる。撹拌下でポリシランと金属塩とを接触させる場合、撹拌手段の撹拌速度(回転速度)は、撹拌手段の種類などにもよるが、10rpm以上(例えば、30〜7000rpm)の範囲から選択でき、例えば、50rpm以上(例えば、60〜5000rpm)、好ましくは70rpm以上(例えば、80〜4000rpm)、さらに好ましくは100rpm以上(例えば、120〜3500rpm)、特に150rpm以上(例えば、200〜3000rpm)であってもよい。
【0088】
このような接触方法(i)において、前記金属塩の使用割合は、ポリシラン100重量部に対して、例えば、5重量部以上(例えば、7〜1000重量部)、好ましくは10重量部以上(例えば、15〜800重量部)、さらに好ましくは20重量部以上(例えば、25〜600重量部)、特に30重量部以上(例えば、30〜500重量部)程度であってもよい。
【0089】
また、接触方法(i)において、ポリシランと金属塩との接触時間(混合時間)は、例えば、5分以上(例えば、5分〜24時間)の範囲から選択でき、例えば、10分以上(例えば、10分〜12時間)、好ましくは15分以上(例えば、20分〜8時間)、さらに好ましくは30分以上(例えば、30分〜6時間)、特に40分以上(例えば、40分〜3時間)程度であってもよい。このように長時間、ポリシランと金属塩とを接触させると、金属塩の表面にポリシラン中の不純物を十分に吸着させることができるためか、ポリシランを高度に精製することができる。
【0090】
接触方法(i)において、接触操作後、得られた混合系(混合物)からのポリシラン(又はポリシランを含む溶液)の分離は、用いた溶媒の種類などに応じて、慣用の方法、例えば、濾過、抽出などを用いて行うことができる。
【0091】
なお、前記特許文献2などに記載されている水分の乾燥を目的とする無水硫酸マグネシウムの混合は、一般的に、溶液中に無水硫酸マグネシウムを添加し、静置する又は手動で軽く振り混ぜる程度の混合である。このような混合では、通常、ポリシランの種類にもよるが、不純物を除去することはできない。
【0092】
方法(ii)では、例えば、溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通可能な部材(又は器具)に配置(又は固定)された金属塩に対して、溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通させて接触させることができる。例えば、金属塩が配置された(例えば、敷かれた又は敷設された)固液分離可能な部材[例えば、漏斗(ブフナー漏斗、ガラス製漏斗、ガラスフィルターなど)などの濾過用部材(又は濾過器)]に対して、溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通させてもよい。このような方法では、前記濾材の種類や金属塩の粒径などに応じて、金属塩の移動を規制するため、濾材(又はフィルター)を介して、漏斗に金属塩を配置してもよい。濾材としては、例えば、濾紙、ガラス繊維濾紙、メンブレンフィルター、濾過板、不織布(綿、ガラスウールなど)などが挙げられる。これらの濾材は、単独で又は二種以上組みあわせてもよい。代表的には、金属塩が濾材を介して配置された漏斗に、前記溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通させることにより、金属塩とポリシランとを接触させてもよい。このような漏斗又は濾材を用いた方法では、濾過を利用して金属塩とポリシランとを接触させることができるため、金属塩の分離が容易であるとともに、ポリシランとの接触効率も高い。なお、濾過は、自然濾過であってもよく、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過などであってもよい。
【0093】
前記部材又は濾材に配置する(又は置く)金属塩の形状は、特に限定されず、層状、フィルタ状、山型状、錐体状などであってもよく、通常、層状であってもよい。前記部材(漏斗など)に配置する金属塩の厚みは、例えば、3mm〜30cm、好ましくは5mm〜20cm、さらに好ましくは1〜10cm程度であってもよい。
【0094】
また、方法(ii)では、溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通可能な容器(袋状、箱状、筒状などの容器など)などに金属塩が充填された充填体に対して、流通させてもよい。さらに、方法(ii)では、前記金属塩を適当な担体に混合又は分散させて成形した成形体に前記溶媒に溶解したポリシラン溶液を流通させてもよい。
【0095】
溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する距離(流通距離)は、溶媒に溶解したポリシラン溶液と固体状態の金属塩とが十分に接触できる範囲から選択され、例えば3mm以上(例えば、4mm〜30cm)、好ましくは5mm以上(例えば、8mm〜20cm)、さらに好ましくは1cm以上(例えば、1.5〜10cm)であってもよい。流通する距離が短すぎると、溶媒に溶解したポリシラン溶液との接触が十分に行われず、ポリシランに含まれる不純物を十分に除去できない場合がある。
【0096】
また、溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する流通量は、10000ml/分以下(例えば、1〜10000ml/分)、好ましくは7000ml/分以下(例えば、5〜5000ml/分)、さらに好ましくは3000ml/分以下(例えば、10〜2000ml/分)程度であってもよい。
【0097】
なお、溶媒に溶解したポリシランが、固体状態の金属塩を流通する方向は、金属塩内部を通過できる方向であれば、特に制限されないが、通常、配置された固体状態の金属塩の厚み方向であってもよい。
【0098】
接触方法(ii)では、溶媒に溶解したポリシラン溶液と固体状態の金属塩とを流通により接触させながら分離することができる。また、溶媒に溶解したポリシラン溶液の固体状態の金属塩に対する流通は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。前記接触方法(ii)は、溶媒に溶解したポリシラン溶液と固体状態の金属塩とを十分に接触させることができるため、より効率よくポリシランを精製することができる。
【0099】
なお、ポリシランと金属塩との接触(及びポリシランの分離)は、1回の接触操作であっても、効率よく高いレベルでポリシランを精製できるが、さらに精製するために、少なくとも一種の接触操作を2回以上行ってもよい。また、ポリシランを合成後、溶媒を除去する前に前記接触操作を行ってもよく、溶媒を除去してポリシランを単離した後、必要により再度溶媒に溶解して接触操作を行ってもよい。
【0100】
また、方法(i)と方法(ii)とは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、方法(i)と(ii)との順序は特に限定されず、方法(i)を行ったのち、方法(ii)を行ってもよく、方法(i)を複数繰り返した後、方法(ii)を行ってもよい。
【0101】
なお、混合系から分離されたポリシラン(又はポリシランを含む溶液)は、用途に応じて溶液状のまま使用してもよく、蒸留(減圧蒸留など)などにより溶媒を除去(又は留去)して使用してもよい。
【0102】
本発明の方法により得られたポリシランは、ポリシランに含まれる不純物の含有量が低減され、高度に精製されているため、透明性が高い。また、本発明の方法では、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離して、ポリシランを精製するため、ポリシランの透明性を改善することができ、さらに成膜性を向上させることもできる。また、ポリシランに含まれる不純物を除去する過程で、ポリシランと金属塩との分離性、特に濾過性を改善することができる。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0104】
精製されたポリシランの特性は以下の方法により評価した。
【0105】
(透明性の判断基準)
ろ過後のポリシラン溶液に含まれる溶媒を留去して得られたポリシランを、20重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解して目視にて透明性を判断した。
【0106】
◎:濁りが肉眼では全く見られない
○:ほぼ透明で濁りが改善できている
△:溶解して均一であり、ほぼ透明だが、溶液を厚くすると濁りが見られる
×:溶解して均一であるが、明らかに濁りが見られる
−:測定不能。
【0107】
(溶液濾過性)
溶液濾過性を、以下の基準で評価した。
【0108】
◎:目詰まりがない
○:濾過速度がやや遅くなったが、濾過終了時における濾過速度が濾過開始時の濾過速度の1/2以上となる程度であり、問題なく濾過できる
△:濾過終了時における濾過速度が濾過開始時の濾過速度の1/2未満となり、濾過速度が遅くなったが、濾過は可能である
×:目詰まりがあり、途中で濾過が止まる
××:目詰まりが酷く、ほとんど濾過できない。
【0109】
(実施例1)
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化リチウム(LiCl)10g、無水塩化亜鉛(ZnCl)10gを仕込み、50℃で1mmHg(=133kPa)に加熱減圧して、反応混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この混合物に、予め蒸留により精製したメチルトリクロロシラン(分子量149.5)37.38g(0.25mol)、フェニルトリクロロシラン52.9g(0.25mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。濾液を純水200mlで10回洗浄し、無機分を除去した。ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含むトルエン層に不純物除去を行うための金属塩として、無水硫酸マグネシウムを10g加え、マグネチックスターラを用い、回転速度500rpmで1時間撹拌した後、硫酸マグネシウムを5μmの濾紙を用いた減圧濾過により除去した。なお、溶液濾過性は、この濾過における濾過性を評価した。ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含む濾液からトルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体30gを得た。
【0110】
(実施例2)
実施例1で水洗により無機分を除去した後、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合を含むトルエン層を、4μmの濾紙上に無水硫酸マグネシウム20gを厚さ2cmで敷設した漏斗で、濾過速度又は流通速度50ml/分で減圧濾過し、濾液から溶媒を留去してポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体30gを得た。なお、溶液濾過性は、この濾過における濾過性を評価した。
【0111】
(実施例3)
無水硫酸マグネシウムに代えて、硫酸ナトリウムを用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体31gを得た。
【0112】
(実施例4)
実施例1で水洗により無機分を除去した後、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含むトルエン層に不純物除去を行うための金属塩として、無水硫酸マグネシウムを10g加えて、撹拌したのちすぐに静置し、硫酸マグネシウムを5μmの濾紙を用いた減圧濾過により除去した。なお、溶液濾過性は、この濾過における濾過性を評価した。ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含む濾液からトルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体30gを得た。
【0113】
(比較例1)
無水硫酸マグネシウムに代えて、活性炭を用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体32gを得た。
【0114】
(比較例2)
無水硫酸マグネシウムに代えて、シリカゲルを用いる以外は実施例2と同様に行い、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体31gを得た。
【0115】
(比較例3)
無水硫酸マグネシウムに代えて、セライトを用いる以外は実施例2と同様に合成を行い、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体28gを得た。
【0116】
(比較例4)
実施例1で水洗により無機分を除去した後、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含むトルエン層に不純物除去を行うための金属塩を投入せず、そのまま5μmの濾紙を用いて減圧濾過した。なお、溶液濾過性は、この濾過における濾過性を評価した。ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を含む濾液からトルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体14gを得た。なお、濾過が途中で止まったため、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体の収量は、濾過が止まるまでの収量である。
【0117】
(比較例5)
5μmの濾紙に代えて、0.1μmの濾紙を用いる以外は比較例4と同様に行ったが、濾過がすぐに止まり、ポリメチルシリン−ポリフェニルシリン共重合体を濾過することができなかった。
【0118】
実施例で精製されたポリシランについて、透明性及び濾過性を評価した結果を表1に示す。なお、PGMEAは、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」を示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から明らかなように、比較例では、ポリシランの透明性が低いが、金属塩を投入することにより、高度に精製された透明性が高いポリシランが得られた。また、実施例では、減圧濾過時の濾過性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の方法では、ポリシランを効率よく精製できるため、本発明の方法により得られるポリシランは、透明性が高い。そのため、慣用のポリシランの用途、例えば、セラミックス前駆体、光電子材料(例えば、フォトレジスト、有機感光体などの光電子写真材料、光導波路などの光伝送材料、光メモリなどの光記録材料、エレクトロルミネッセンス素子用材料など)、光学用部材(例えば、光学フィルタ、ミラー、レンズ、遮光膜、回折素子、偏光ビームスプリッタ、マイクロレンズなど)、樹脂添加剤(難燃剤など)などの用途に利用できる。特に、高レベルで不純物が除去された透明性が高いポリシランは、透明性が要求される用途、例えば、光電子材料用途などにおいて極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシランを精製する方法であって、溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離するポリシランの精製方法。
【請求項2】
溶媒に溶解したポリシランと固体状態の金属塩とを接触させる方法であって、ポリシランと金属塩とを以下の方法(i)及び/又は方法(ii)により接触させる請求項1記載の精製方法。
(i)ポリシランを溶解可能な溶媒中で、ポリシランと固体状態の金属塩とを混合し、撹拌してポリシランと金属塩とを接触させる方法
(ii)溶媒に溶解したポリシラン溶液を固体状態の金属塩に流通させて接触させる方法
【請求項3】
方法(i)において、撹拌手段の撹拌速度70rpm以上で10分以上ポリシランと金属塩とを接触させる請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
方法(i)において、ポリシランと、ポリシラン100重量部に対して20重量部以上の金属塩とを接触させる請求項2又は3のいずれかに記載の精製方法。
【請求項5】
方法(i)において、撹拌手段の撹拌速度100rpm以上で30分以上、ポリシランと、ポリシラン100重量部に対して30重量部以上の金属塩とを接触させる請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液を、金属塩が敷設された濾過用部材に流通させる請求項2記載の製造方法。
【請求項7】
方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する距離が5mm以上である請求項2又は6記載の製造方法。
【請求項8】
方法(ii)において、溶媒に溶解したポリシラン溶液が固体状態の金属塩を流通する流通量が10000ml/分以下である請求項2、6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
金属塩が硫酸金属塩である請求項1〜8のいずれかに記載の精製方法。
【請求項10】
ポリシランが、分岐状構造を有するポリシランである請求項1〜9のいずれかに記載の精製方法。
【請求項11】
ポリシランが、少なくとも式(2)で表される構造単位を有するポリシランである請求項1〜10のいずれか記載の精製方法。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、有機基又はシリル基を示し、sは1以上の整数を示す。)
【請求項12】
ポリシランが、式(2)において、RがC1−4アルキル基、C5−10シクロアルキル基、又はC6−10アリール基である構造単位を有するポリシランである請求項11記載の精製方法。
【請求項13】
ポリシランが、式(2)において、Rが少なくともC1−4アルキル基である構造単位を有するポリシランである請求項11又は12記載の精製方法。
【請求項14】
ポリシランが、式(2)で表される分岐状構造単位を、ポリシランを構成するケイ素原子換算(モル換算)で、ポリシラン全体に対して40モル%以上含むポリシランである請求項11〜13のいずれかに記載の精製方法。
【請求項15】
溶媒の存在下で、ポリシランと金属塩とを接触させたのち、金属塩を分離し、ポリシランの透明性を改善する方法。

【公開番号】特開2011−208057(P2011−208057A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78307(P2010−78307)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】