説明

ポリシリコン製造装置及びポリシリコンの製造方法

【課題】大気圧から超臨界雰囲気において行うプラズマCVDによりポリシリコンを製造する。
【解決手段】ポリシリコン製造装置であって、高周波電力が印加される電極と、前記電極に前記高周波電力を供給する電力供給部と、前記電極にハロゲン化ケイ素化合物及び不活性ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、を備え、前記電極に前記高周波電力を印加し当該電極の間に電界を発生させた状態で前記反応ガスをプラズマ化させ当該電極の表面にシリコンを析出させることを特徴とするポリシリコン製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン製造装置及びポリシリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の多結晶体(ポリシリコン)を得る製造方法の一つとして、CVD法(Chemical Vapour Deposition:化学気相成長法)が知られている。例えば、特許文献1には、半導体装置のポリシリコン膜をCVD法により形成している。また、特許文献2には、ハロゲン化ケイ素化合物の超臨界流体状態においてプラズマ放電を行うポリシリコンの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−183529号公報
【特許文献2】特開2010−37174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマCVDは、通常、減圧下で行われる。このため、原料ガスの濃度が極めて低く、ポリシリコンの結晶成長速度が遅いという問題がある。また、超臨界流体状態におけるプラズマ放電では、ポリシリコンが高速で得られるものの、高圧反応器の設置等、装置が大型化する傾向がある。
本発明の目的は、プラズマCVDによりポリシリコンを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記請求項1〜請求項6に係る発明が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、ポリシリコン製造装置であって、高周波電力が印加される電極を備えた反応容器と、前記電極に前記高周波電力を供給する電力供給部と、前記反応容器中にハロゲン化ケイ素化合物及び不活性ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、を備え、前記反応容器中において前記電極に前記高周波電力を印加し当該電極の間に電界を発生させた状態で前記反応ガスをプラズマ化させ当該電極の表面にシリコンを析出させることを特徴とするポリシリコン製造装置である。
[2]請求項2に係る発明は、前記反応ガス中に水素を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリシリコン製造装置である。
[3]請求項3に係る発明は、前記電極の表面に析出した前記シリコンを粒状形態で貯蔵するポリシリコン貯蔵部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリシリコン製造装置である。
【0006】
[4]請求項4に係る発明は、ポリシリコンの製造方法であって、電極を備えた反応容器中にハロゲン化ケイ素化合物及び不活性ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス導入工程と、前記反応容器の前記電極に高周波電力を印加し当該電極の間に電界を発生させるとともに前記反応ガスをプラズマ化させ当該電極の表面にシリコンを析出させるプラズマ反応工程と、前記電極の表面に析出した前記シリコンを粒状形態で貯蔵するポリシリコン貯蔵工程と、を有することを特徴とするポリシリコンの製造方法である。
[5]請求項5に係る発明は、前記反応ガス導入工程において、前記反応容器中に水素を供給することを特徴とする請求項4に記載のポリシリコンの製造方法である。
[6]請求項6に係る発明は、前記ハロゲン化ケイ素化合物が四塩化ケイ素であることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリシリコンの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プラズマCVDによりポリシリコンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態が適用されるポリシリコン製造装置の一例を説明する図である。
【図2】図1のポリシリコン製造装置に設けた反応容器の一例を説明する図である。
【図3】図2の反応容器に取り付けた電極の先端部の一例を説明する図である。
【図4】実施例1で用いた反応容器を説明する図である。
【図5】実施例2で用いた反応容器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0010】
<ポリシリコン製造装置>
図1は、本実施の形態が適用されるポリシリコン製造装置1の一例を説明する図である。
図1に示すように、ポリシリコン製造装置1は、内部でプラズマを発生させる反応容器10と、反応容器10中に反応ガス10gを供給する反応ガス供給部20と、反応容器10中に設けられた電極(給電電極14,グランド電極15)に高周波電力を供給する電力供給部としての高周波電源30を備えている。ポリシリコン製造装置1は、反応ガス供給部20から反応容器10中に反応ガス10gを導入するための反応ガス供給管16を備えている。反応容器10は、電極が取り付けられる容器本体11と、反応ガス10gが導入される反応ガス導入部12と、ポリシリコン10sが排出されるポリシリコン排出部13を有している。
【0011】
図1に示すように、ポリシリコン製造装置1は、並列に設置された複数の反応容器10を備え、ポリシリコンの量産が可能となるように構成されている。複数の反応容器10と反応ガス供給管16は、アルゴン等の不活性ガスによりシールされた筐体100内に収容されている。また、ポリシリコン製造装置1は、反応容器10から落下する粒状のポリシリコン10sを貯蔵するポリシリコン貯蔵部40を備えている。
【0012】
(反応ガス供給部20)
反応ガス供給部20は、原料となるハロゲン化ケイ素化合物を貯蔵する反応ガス貯槽21と、キャリアガスを貯蔵するキャリアガス貯槽22と、水素ガスを貯蔵する水素ガス貯槽23を有している。反応ガス供給部20は、各貯槽に設けられた連結管21L,22L,23Lと筐体100内に設けられた反応ガス供給管16とを結合する反応ガス連結管24を有している。
【0013】
反応ガス貯槽21に貯蔵されるハロゲン化ケイ素化合物としては、例えば、フッ化ケイ素、塩化ケイ素、臭化ケイ素、ヨウ化ケイ素が挙げられる。これらの中でも、塩化ケイ素、臭化ケイ素が好ましい。
塩化ケイ素としては、例えば、四塩化ケイ素(SiCl)、ヘキサクロルジシラン、オクタクロルトリシラン、デカクロルトリシラン、ドデカクロルペンタシラン等が挙げられる。また、クロルシラン(SiHCl)、ジクロルシラン(SiHCl)、トリクロルシラン(SiHCl)等のシラン誘導体が挙げられる。臭化ケイ素としては、四臭化ケイ素(SiBr)、六臭化二ケイ素、八臭化三ケイ素、十臭化四ケイ素等が挙げられる。さらに、臭化三塩化ケイ素、二臭化二塩化ケイ素、三臭化塩化ケイ素、ヨウ化三塩化ケイ素、塩化硫化水素ケイ素、ヘキサクロルジシロキサン等も挙げられる。
これらのなかでも、四塩化ケイ素(SiCl)が特に好ましい。
【0014】
尚、本実施の形態において、原料として使用するハロゲン化ケイ素化合物が固体の場合、予め、原料を所定の温度に加温してガス化した状態で反応容器10に供給することもできる。
【0015】
キャリアガス貯槽22に貯蔵されるキャリアガスは、原料として使用するハロゲン化ケイ素化合物に対し不活性であるものが好ましい。キャリアガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。本実施の形態では、アルゴン、ヘリウムを使用している。
【0016】
本実施の形態では、水素ガス貯槽23から反応ガス10gの一部として水素ガスが供給されている。後述するように、水素ガスを反応容器10中に導入すると、水素ガスを導入しない場合と比較してポリシリコン10sの生成量が増大する。
【0017】
(反応容器10)
図2は、図1のポリシリコン製造装置1に設けた反応容器10の一例を説明する図である。図2に示すように、反応容器10は、容器本体11と、容器本体11の内部に収容された電極(給電電極14,グランド電極15)と、反応ガス10gの導入口である反応ガス導入部12と、大気圧プラズマ反応により生成したポリシリコン10sが排出されるポリシリコン排出部13とを備えている。尚、図2中の電極(給電電極14,グランド電極15)は複数組の電極構造にすることを制限するものではない。
【0018】
電極(給電電極14,グランド電極15)は、所定の間隔を設けた各電極の先端部14e,15e(図3参照)が容器本体11の略中央部分に配置されるように容器本体11に取り付けられている。先端部14e,15eの間は、プラズマを発生させるプラズマエリア(PA)である。
【0019】
電極(給電電極14,グランド電極15)を構成する材料は、大気圧においてプラズマ放電が可能な材料であれば特に限定されない。例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、アルミニウム、タングステン、白金、金、炭素、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン、及びこれらの混合物等が挙げられる。被めっき電極を構成する材料としては、銀めっき鉄、亜鉛めっき鉄、スズめっき鉄等が挙げられる。合金電極を構成する材料としては、真鍮、鉄ニッケル合金、鉄コバルト合金、マグネシウム合金等が挙げられる。これらの中でも、マンガン、銅、亜鉛、白金、金、亜鉛めっき鉄、真鍮、が好ましい。複合材料としては、Si、SiC、C、W、WC、NSi、NB、BZr等が少なくとも一つ混合されたものが好ましい。さらに、これらの複合材料にメッキ処理をすることを制限するものではない。
【0020】
また、本実施の形態では、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eが取り外し可能な構造とすることもできる。この場合、先端部14e,15eは、例えば、炭素、炭化ケイ素(SiC)等の電極(給電電極14,グランド電極15)を構成する材料を用いて形成されている。
尚、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eを取り付ける部分(電極ロッド)は導電性を有する材料により構成される。例えば、シリコン(Si)または、SiにSiC;W、WC、BZr等が少なくとも一つ混合された複合材料を用いることができる。
【0021】
電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eの電極間距離は、反応容器10内の温度、放電条件によって適宜選択され、特に限定されない。本実施の形態では、通常、5mm〜20mmの範囲内で設定される。
【0022】
反応ガス導入部12は、反応ガス10gが電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eの間に形成されるプラズマエリア(PA)に供給されるように、容器本体11の略中央部分であって容器本体11の上側に形成されている。
【0023】
ポリシリコン排出部13は、プラズマエリア(PA)において生じたプラズマ反応により生成したポリシリコン10sが容器本体11から排出されるように容器本体11の下側に形成されている。
【0024】
図2に示すように、反応ガス10gは、反応ガス導入部12から反応容器10中に導入され、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eのプラズマエリア(PA)に供給される。次に、反応容器10中において電極(給電電極14,グランド電極15)に高周波電力を印加し、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eの間に電界を発生させた状態で反応ガス10gをプラズマ化させ、電極の先端部14e,15eの表面にシリコンを析出させる。そして、析出したシリコンが、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eの表面から落下し、粒状のポリシリコン10sとしてポリシリコン排出部13から排出され、ポリシリコン貯蔵部40に貯蔵される。
【0025】
図3は、図2の反応容器10に取り付けた電極の先端部14e,15eの一例を説明する図である。
図3(a)は、プラズマエリア(PA)における電極(給電電極14,グランド電極15)の各先端部14e,15eが先端突起型の形状を有する例を説明する図である。プラズマエリア(PA)に供給された反応ガス10g(図2参照)中のハロゲン化ケイ素化合物は、プラズマ(P)により分解し、電極の各先端部14e,15eの表面に熔融シリコン10pが析出する(図3(a)の右側の図)。
電極の各先端部14e,15eの表面に析出した熔融シリコン10pは、プラズマ(P)の熱により下方向に移動する。析出した熔融シリコン10pは、粒状のポリシリコン10sとなって電極の各先端部14e,15eの表面から落下する。
【0026】
図3(b)は、プラズマエリア(PA)における電極(給電電極14,グランド電極15)の各先端部14e,15eが先端鏃型の形状を有する例を説明する図である。反応ガス10g(図2参照)中のハロゲン化ケイ素化合物の分解により、先端鏃型の形状を有する電極の各先端部14e,15eの表面に熔融シリコン10pが析出する(図3(b)の右側の図)。析出した熔融シリコン10pは、粒状のポリシリコン10sとなって電極の各先端部14e,15eの表面から落下する。
【0027】
<ポリシリコンの製造方法>
次に、上述したポリシリコン製造装置1を用いてポリシリコンを製造する方法について説明する。本実施の形態では、ハロゲン化ケイ素化合物として四塩化ケイ素(SiCl)を使用し、キャリアガスとしてアルゴンを使用し、ポリシリコンを製造する例について説明する。
【0028】
先ず、反応ガス供給部20から反応ガス10gが反応ガス供給管16を介し、複数の反応容器10の各反応ガス導入部12から容器本体11中に供給される(反応ガス導入工程)。反応ガス10gは、四塩化ケイ素(SiCl)と不活性なキャリアガスであるアルゴン、ヘリウムと、水素ガスとを含む。
【0029】
反応ガス導入部12から供給される反応ガス10gの供給量、キャリアガスの供給量は、反応容器10の容量、プラズマ(P)の性状、四塩化ケイ素(SiCl)の処理量等に応じて適宜選択され、特に限定されない。また、本実施の形態では、四塩化ケイ素(SiCl)は、反応容器10に供給される前に、所定の温度に加熱されることが好ましい。加熱される四塩化ケイ素(SiCl)の温度は特に限定されないが、本実施の形態では、通常、300K(27℃)〜570K(297℃)、好ましくは、330K(57℃)〜520K(247℃)の範囲である。
【0030】
また、反応容器10に供給する反応ガス10g中の四塩化ケイ素(SiCl)とキャリアガスであるアルゴンとの割合は特に限定されない。本実施の形態では、通常、アルゴン50ml〜1000mlに対し、四塩化ケイ素(SiCl)0.1ml〜100,000ml、好ましくは、10ml〜5,000ml、より好ましくは、20ml〜200mlの範囲である。アルゴンに対する四塩化ケイ素(SiCl)の割合が過度に小さいと、ポリシリコンの生成速度が遅くなる傾向がある。アルゴンに対する四塩化ケイ素(SiCl)の割合が過度に大きいと、大気圧雰囲気下においてプラズマ(P)の形成が不安定となる傾向がある。
【0031】
次に、反応容器10に取り付けた電極(給電電極14,グランド電極15)に高周波電力を印加し、電極の先端部14e,15eの間に電界を発生させるとともに反応ガス10gをプラズマ化させ、電極の先端部14e,15eの表面にシリコンを析出させる(プラズマ反応工程)。
電極(給電電極14,グランド電極15)に印加される高周波電源30の高周波(周波数)及び電圧(または電力)は適宜選択され、特に限定されない。本実施の形態では、電極(給電電極14,グランド電極15)に印加される高周波電圧の高周波(周波数)は1〜20kHzであり、消費電力は0.1kW〜1kWである。
【0032】
反応ガス導入部12から供給される反応ガスの供給量、キャリアガスの供給量は、反応容器10の容量、プラズマ(P)の性状、反応ガスの処理量等に応じて適宜選択され、特に限定されない。また、本実施の形態では、四塩化ケイ素(SiCl)は、反応容器10に供給される前に、所定の温度に加熱されることが好ましい。加熱される四塩化ケイ素の温度は特に限定されないが、本実施の形態では、通常、300K(27℃)〜570K(297℃)、好ましくは、330K(57℃)〜520K(247℃)の範囲である。
【0033】
本実施の形態では、反応容器10中に、四塩化ケイ素(SiCl)を含む反応ガスを導入する際、同時に、水素ガスを反応容器10中に供給することが好ましい。反応容器10中に水素を供給することにより、プラズマ(P)によって分解した四塩化ケイ素(SiCl)から発生する塩素を捕捉することが可能となる。反応容器10中に供給する水素の量は、四塩化ケイ素(SiCl)の供給量に応じ適宜選択され、特に限定されない。本実施の形態では、四塩化ケイ素(SiCl)1モルに対し、水素2モル以上、好ましくは、20モル以上、より好ましくは100モル以上が反応容器10に供給される。
【0034】
上述したように、四塩化ケイ素(SiCl)はプラズマ(P)により分解し、生成したシリコンは、電極(給電電極14,グランド電極15)の先端部14e,15eの表面に析出し、その後、粒状のポリシリコン10sとなって下方に落下し、ポリシリコン貯蔵部40に貯蔵される。
【0035】
本実施の形態では、プラズマ反応は、通常、大気圧雰囲気下(約0.1MPa)で行うことが好ましい。但し、ポリシリコン製造装置1が備える反応容器10を保温し、又は外部から加熱し、あるいは、加圧した反応ガス10gを反応容器10内に供給し、ハロゲン化ケイ素化合物の濃度を増大する等の処理により、シリコンの生成が促進される。この場合、反応部の圧力は、0.1MPa〜2.9MPa、好ましくは0.1MPa〜1MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.3MPaに加圧される。
反応容器10を加熱する手段としては、例えば、電気ヒータ等の抵抗加熱、磁気材料を用いた誘導加熱、マイクロ波照射、赤外線(近赤外線、遠赤外線を含む)照射、レーザ照射、燃焼炎等が挙げられる。
また、プラズマ近傍に、例えば、Si、炭素、SiC等のSi成長の種を配置してシリコンの生成を促すことを妨げるものではない。
【0036】
反応容器10内に加圧した反応ガス10gを供給し、プラズマ反応を発生させる圧力の条件を大気圧雰囲気下から超臨界雰囲気未満の範囲から適宜選択される。
ここで超臨界雰囲気とは、物質がその物質固有の気液の臨界温度を超えた非凝縮性の流体状態に至る雰囲気と定義される。即ち、密閉容器内に気体と液体とが存在すると、温度上昇とともに液体は熱膨張しその密度は低下する。一方、気体は、蒸気圧の増加によりその密度が増大する。そして最後に、両者の密度が等しくなり、気体とも液体とも区別の付かない均一な状態になる。物質の温度−圧力線図(図示せず)では、このような状態になる点を臨界点といい、臨界点の温度を臨界温度(Tc)、臨界点の圧力を臨界圧力(Pc)という。超臨界雰囲気とは、物質の温度及び圧力が臨界点を超えた超臨界状態にあることをいう。
【0037】
本実施の形態の場合、四塩化ケイ素の臨界温度(Tc)は506.75K(233.6℃)、臨界圧力(Pc)は3.73MPaである。また、アルゴンの臨界温度(Tc)は87.45K(−185.7℃)、臨界圧力(Pc)は4.86MPaである。
四塩化ケイ素とアルゴンとの混合物の場合、混合物の臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)とは、四塩化ケイ素とアルゴンの組成により、それぞれの物質の臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)との間で適宜調整することができる。
【0038】
尚、四塩化ケイ素(SiCl)のプラズマ処理により分解した塩素は、所定の排気浄化装置(図示せず)により回収され、アルゴン等のキャリアガスは排気される。さらに、未反応の四塩化ケイ素(SiCl)は、所定の回収装置(図示せず)により回収され、反応ガス供給部20へリサイクルされる。
【0039】
また、ポリシリコン貯蔵部40に貯蔵された粒状のポリシリコン10sは、例えば、坩堝等の所定の耐熱容器内に移され、ポリシリコン10sの融点(約1,687K(1,414℃))より高温の約1,800K以上の温度で融解され、例えば、インゴッドに成形される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。尚、本発明は実施例に限定されない。
【0041】
(実施例1)
図4は、実施例1で用いた反応容器を説明する図である。図4に示す反応容器は、反応容器本体としての石英ガラス管10e、突起型の先端電極部14eを設けた給電電極14、同様に突起型の先端電極部15eを設けたグランド電極15、高周波電源30を備えている。
【0042】
石英ガラス管10eは、厚さ4mmの石英ガラス板を用いて形成した管状構造を有し、外径φ48mm×内径φ44mm×長さ500mmである。電極(給電電極14、グランド電極15)は、10mm角のシリコン製であって、抵抗1mΩ〜1MΩである。先端電極部14eと先端電極部15eとの電極間距離は5mm〜20mmである。
【0043】
高周波電源30により電極に印加される電力は、周波数5kHz〜20kHz、電力10W〜1000Wである。石英ガラス管10e内に供給される反応ガス10gの成分と供給量とは、四塩化ケイ素(SiCl)(0.01リットル/分〜0.1リットル/分)−水素ガス(H)(0.2リットル/分〜1リットル/分)−アルゴン(Ar)(0.2リットル/分〜1リットル/分)−ヘリウム(He)(0.1リットル/分〜1リットル/分)である。反応ガス10gは、石英ガラス管10eの給電電極14側から石英ガラス管10e内に供給され、グランド電極15側から排出される(evac)。
上記の条件下、10時間に亘る大気圧のプラズマ(P)により、粒状のポリシリコン10sが10g得られた。
【0044】
(実施例2)
図5は、実施例2で用いた反応容器を説明する図である。図4に示した反応容器と同様の構成は同じ符号を用い、その説明を省略する。
図5に示す反応容器は、石英ガラス管10eと、その内側に設けた内管10eとを備えた二重管構造を有している。内管10eは、厚さ3mmの石英ガラス板を用いて形成した管状構造を有し、外径φ32mm×内径φ29mm×長さ140mmである。尚、反応容器の構造は二重管に限定するものではなく、三重管以上の多重管構造を採用してもよい。
【0045】
図5に示す反応容器では、電極(給電電極14、グランド電極15)は、先端電極部14eと先端電極部15eが内管10e内に収容されるように配置され、さらに、先端電極部14eと先端電極部15eの間にバイポーラ電極10beが独立した電極として設けられている。バイポーラ電極10beは、炭素及び炭化ケイ素(SiC)から構成されている。バイポーラ電極10beを設けることにより、先端電極部15eとバイポーラ電極10beの間で大気圧プラズマ放電(P)が生じ、さらに、先端電極部14eとバイポーラ電極10beの間で大気圧プラズマ放電(P)が生じる。
【0046】
先端電極部14eとバイポーラ電極10beとの電極間距離と、バイポーラ電極10beと先端電極部15eとの電極間距離は、いずれも5mm〜20mmである。
電極に印加される電力、反応ガス10gの成分と供給量は実施例1と同様の条件下、6時間に亘る大気圧におけるプラズマ放電により、粒状のポリシリコン10sが3g〜5g得られた。
【符号の説明】
【0047】
1…ポリシリコン製造装置、10…反応容器、11…容器本体、12…反応ガス導入部、13…ポリシリコン排出部、14…給電電極、15…グランド電極、16…反応ガス供給管、20…反応ガス供給部、30…高周波電源、40…ポリシリコン貯蔵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリコン製造装置であって、
高周波電力が印加される電極を備えた反応容器と、
前記電極に前記高周波電力を供給する電力供給部と、
前記反応容器中にハロゲン化ケイ素化合物及び不活性ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス供給部と、を備え、
前記反応容器中において前記電極に前記高周波電力を印加し当該電極の間に電界を発生させた状態で前記反応ガスをプラズマ化させ当該電極の表面にシリコンを析出させる
ことを特徴とするポリシリコン製造装置。
【請求項2】
前記反応ガス中に水素を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリシリコン製造装置。
【請求項3】
前記電極の表面に析出した前記シリコンを粒状形態で貯蔵するポリシリコン貯蔵部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリシリコン製造装置。
【請求項4】
ポリシリコンの製造方法であって、
電極を備えた反応容器中にハロゲン化ケイ素化合物及び不活性ガスを含む反応ガスを供給する反応ガス導入工程と、
前記反応容器の前記電極に高周波電力を印加し当該電極の間に電界を発生させるとともに前記反応ガスをプラズマ化させ当該電極の表面にシリコンを析出させるプラズマ反応工程と、
前記電極の表面に析出した前記シリコンを粒状形態で貯蔵するポリシリコン貯蔵工程と、を有する
ことを特徴とするポリシリコンの製造方法。
【請求項5】
前記反応ガス導入工程において、前記反応容器中に水素を供給することを特徴とする請求項4に記載のポリシリコンの製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化ケイ素化合物が四塩化ケイ素であることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリシリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−180233(P2012−180233A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43219(P2011−43219)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(508179615)株式会社 シリコンプラス (10)
【Fターム(参考)】