説明

ポリシロキサン組成物及びその製造方法

本発明は、反応性含ケイ素有機基を表面に備える金属又は金属酸化物の微粒子を含有するポリシロキサン組成物、及び、その製造方法に関する。前記ポリシロキサン組成物は平均組成式(A)で表されるポリシロキサン、及び、一般式(B)で表される含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子を含む。上記ポリシロキサン組成物の製造方法では、含ケイ素化合物と金属塩の水溶液又は水分散液とを300℃以上の温度、10MPa以上の圧力の条件下で反応させ、ポリシロキサン及び金属又は金属酸化物の微粒子を同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素有機基を表面に備える金属又は金属酸化物の微粒子を含有するポリシロキサン組成物に関する。本願は、2007年10月31日に日本国に出願された特願2007−283860号及び2008年7月23日に日本国に出願された特願2008−190012号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般にナノ粒子と称される超微粒子は、表面エネルギーが大きいために従来の微粉末とは異なった特性、例えば、量子サイズ効果による光学特性の変化、融点の低下、高触媒特性、高磁気特性等を示すことから、電子材料、光学材料、触媒材料、発光体材料、医薬品等の様々な分野での応用が期待されている。そして、ナノ粒子の製造方法としては、特開2007−51188号公報、特開2006−282503号公報、及び、特開平10−183207号公報に記載されるように様々な手法が知られている。
【0003】
ナノ粒子の有用な特性を高分子材料中で発現させるためには、ナノ粒子を凝集させること無く高分子材料中に分散させる必要があり、そのために種々の方法が提案されている。例えば、粉体工学会誌、40(7)、487−496(2003)には、表面修飾シリカナノ粒子を二軸押出機により高分子中に分散させる方法が提案されており、また、Macromol. Mater. Eng., 2003, 288, 717-723には、加水分解性基を有する高分子とナノ粒子前駆体のゾルゲル反応によりナノ粒子生成と高分子中への分散を同時に行う方法が報告されている。しかしながら、これらの手法は、予め粒子表面を適切に修飾する必要がある、加水分解反応性高分子の合成が煩雑である等の課題がある。
【0004】
一方、特開平9−302257号公報には、加水分解・縮合反応により高分子と複合化された複合微粒子が記載されており、また、特開2002−210356号公報には、高圧の二酸化炭素を使用して高分子と複合化した複合微粒子が記載されている。しかしながら、これらの技術についても、高分子の合成、微粒子生成の両過程を完了するためには長時間を要する、被覆する高分子層の均一性制御が困難である等の課題があった。
【0005】
このように、現在のところ、高分子合成反応とナノ粒子生成反応を同時に行うことにより、該粒子が高分子中に良好に分散した組成物を得ることは報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−51188号公報
【特許文献2】特開2006−282503号公報
【特許文献3】特開平10−183207号公報
【特許文献4】特開平9−302257号公報
【特許文献5】特開2002−210356号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】粉体工学会誌、40(7)、487−496(2003)
【非特許文献2】Macromol. Mater. Eng., 2003, 288, 717-723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、微粒子が高分子中に良好に分散した組成物を提供することをその第1の目的とする。また、本発明は、そのような組成物の簡便な製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の目的は、下記平均組成式(A):

(RO)SiO[(4−m−n)/2] (A)

(式中、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の一価炭化水素基又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、
m及びnは、それぞれ、0<m、0<n、且つ、m+n<3を満たす数である)
で表されるポリシロキサン、及び下記一般式(B):

−LSiR[(4−p−q)/2] (B)

〔式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Lは、式:-(YCxH2x)t(CxH2x-yZzOw)v-{Yは−O−、−S−又は式:−NR−(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基であり、Zは−NH−又は−N(CH)−であり、xは3〜20の整数であり、yは0〜5の整数であり、zは0又は1であり、wは0〜5の整数であり、tは0〜50の整数であり、vは0又は1である}の二価連結基であり、
p及びqは、0<p≦2、0≦q<2、且つ、0<p+q≦2を満たす数である〕
で表される含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子からなるポリシロキサン組成物によって達成される。
【0010】
前記ポリシロキサン、及び前記金属又は金属酸化物の微粒子の含有量(重量)の比は、5:95〜95:5の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、含ケイ素化合物と金属塩の水溶液又は水分散液とを300℃以上の温度、10MPa以上の圧力の条件下で反応させ、ポリシロキサン、及び含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子を同時に形成することによって達成される。
【0012】
前記含ケイ素化合物は、下記一般式(C):

SiR(4−a−b) (C)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基又は縮合反応性基を表し、
a及びbは、0<a≦2、0≦b<2、且つ、0<a+b≦2を満たす数である}で表される反応性シラン、及び/又は、下記一般式(D):

SiO−(SiRO)−SiR (D)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基若しくは縮合反応性基、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、但し、Rの少なくとも一個は前記の加水分解性基若しくは縮合反応性基、又は前記の一価有機基であり、
sは1以上の数である}で表される直鎖状の反応性オルガノシロキサンオリゴマーであることが好ましい。
【0013】
また、一般式(C)及び(D)における前記反応性官能基は、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、及びイソシアネート基からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0014】
また、前記金属塩は、元素周期表の第IV族〜第XV族の金属の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、又は塩化酸化物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリシロキサン組成物では、ポリシロキサン中に金属又は金属酸化物の微粒子が良好に分散しているので、当該ポリシロキサン組成物は、前記微粒子由来の特性を良好に発揮することができる。特に、ポリシロキサンの有する優れた光透過性、電気絶縁性、光安定性、熱安定性、耐寒性に加えて、該粒子の特性を発現することができる。
【0016】
本発明のポリシロキサン組成物の製造方法は、多量の有機溶媒を使用することがないので環境負荷が小さく、且つ、安全である。また、簡便な装置で実施できるので、製造コストを抑制することができる。また、酸触媒又は塩基触媒を使用することなくポリシロキサンを合成することができる。
【0017】
そして、本発明のポリシロキサン組成物の製造方法では、高分子合成反応と微粒子生成反応を同時に行うことにより、ポリシロキサンと親和性を有する金属又は金属酸化物の微粒子及びポリシロキサンを一度に製造することができ、しかも、ポリシロキサン中に微粒子を良好に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の製造方法を行うバッチ式の反応装置の一例を示す図
【図2】実施例1で得られた本発明の微粒子のSEM写真
【図3】実施例1で得られた本発明の微粒子の他のSEM写真
【図4】実施例2で得られた本発明の微粒子のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリシロキサン組成物は、
(a)下記平均組成式(A):

(RO)SiO[(4−m−n)/2] (A)

(式中、
は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、
m及びnは、それぞれ、0<m、0<n、且つ、m+n<3を満たす数である)
で表されるポリシロキサン、及び、
(b)下記一般式(B):

−LSiR[(4−p−q)/2] (B)

〔式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Lは、式:-(YCxH2x)t(CxH2x-yZzOw)v-{Yは−O−、−S−又は式:−NR−(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基であり、Zは−NH−又は−N(CH)−であり、xは3〜20の整数であり、yは0〜5の整数であり、zは0又は1であり、wは0〜5の整数であり、tは0〜50の整数であり、vは0又は1である}の二価連結基であり、
p及びqは、0<p≦2、0≦q<2、且つ、0<p+q≦2を満たす数である〕
で表される含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子を必須に含むものである。
【0020】
前記(a)ポリシロキサンを表す平均組成式(A)において、Rの一価炭化水素基としては、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の一価の飽和炭化水素基、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基、又は、炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基である。
【0021】
炭素数1〜20の一価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基、並びに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0022】
炭素数6〜20の一価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等のアリール基が挙げられる。フェニル基が好ましい。なお、本明細書において芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素のみからなる基以外に、芳香族炭化水素と脂肪族飽和炭化水素が複合した基をも含む。芳香族炭化水素と飽和炭化水素が複合した基の例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0023】
炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、1−プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐状のアルケニル基、並びに、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、更には、シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基が挙げられる。ビニル基、シクロヘキセニルエチル基が好ましい。
【0024】
上記の一価炭化水素基上の水素原子は、1以上の置換基によって置換されていてもよく、当該置換基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)から選択される。
【0025】
また、Rの反応性官能基を有する一価有機基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される反応性官能基を有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基が挙げられる。好ましいRは、上記の反応性官能性基を有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基である。
【0026】
また、Rの炭素数4以下の置換又は非置換の一価炭化水素基は特に限定されるものではないが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基、並びに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。これらの一価炭化水素基上の水素原子は、1以上の置換基によって置換されていてもよく、当該置換基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)から選択される。好ましいRは、水素原子、又はメチル基である。
【0027】
前記(a)ポリシロキサンは、線状、分岐状又は網状のいずれであってもよい。前記(a)ポリシロキサンを表す平均組成式(A)において、m及びnは、それぞれ、0<m、0<n、且つ、m+n<3を満たす数であり、m+nの値が2以上であれば線状であり、2より小さければ分岐状又は網状となる。このような(a)ポリシロキサンは、例えば、ケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有するものである。前記(a)ポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端にケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、分子鎖片末端にケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、分子鎖末端及びペンダント位置にケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、ペンダント位置にケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有する環状ジオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合のアルコキシ基又は水酸基を有するシリコーンレジン等が挙げられる。
【0028】
前記(b)含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子は、下記一般式(B):

−LSiR[(4−p−q)/2] (B)

〔式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Lは、式:-(YCxH2x)t(CxH2x-yZzOw)v-{Yは−O−、−S−又は式:−NR−(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基であり、Zは−NH−又は−N(CH)−であり、xは3〜20の整数であり、yは0〜5の整数であり、zは0又は1であり、wは0〜5の整数であり、tは0〜50の整数であり、vは0又は1である}の二価連結基であり、
p及びqは、0<p≦2、0≦q<2、且つ、0<p+q≦2を満たす数である〕
で表される含ケイ素有機基が化学結合により金属又は金属酸化物の微粒子の表面に固定化されていれば、特に限定されるものではない。
【0029】
前記金属又は金属酸化物の微粒子を構成する金属は、特に限定されるものではなく、任意の金属元素を使用することができるが、典型的には、元素周期表で第IV族の元素及びその右側に位置し、第XIII族のホウ素(B)-第XIV族のケイ素(Si)-第XV族のヒ素(As)の線上にある元素並びにその線より、元素周期表において左側乃至下側にあるものが挙げられ、例えば、第IV族の元素ではTi、Zr等、第V族の元素ではV等、第VI族の元素ではCr、Mo等、第VII族の元素ではMn等、第VIII族〜第X族の元素ではFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt等、第XI族の元素ではCu、Ag、Au等、第XII族の元素ではZn等、第XIII族の元素ではAl、Ga、In等、第XIV族の元素ではSi、Ge、Sn、Pb等、第XV族の元素ではSb、Bi等が挙げられる。Ti、Zr、V、Fe、Ni、Cu、Ag、Au、Zn、Al、Ge、Snが好ましく、Cu、Ag、Fe、Znが特に好ましい。これらの金属元素は単体で使用されてもよく、2種類以上の混合物として使用されてもよい。したがって、金属酸化物としては、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Ti、Zr、Mn等の酸化物が挙げられ、例えば、SiO、TiO、ZnO、SnO、Al、AlOOH、MnO、NiO、Fe、Fe、Co、ZrO、BaTiO、LiCoO、LiMn、CuO、CuO、並びに、これらの混合物が挙げられる。Al、AlOOH、CuO、及び、CuOが好ましい。
【0030】
前記微粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、紡錘状、角柱状、円柱状、板状、針状等の任意の形状であってよい。球状のものが好ましい。
【0031】
前記微粒子は、その平均粒子径が1μm以下のサイズのものが好ましく、特にナノ粒子であることが好ましい。ナノ粒子とは、一般的にはその平均粒子径が200nm以下の粒子を意味しており、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、更により好ましくは50nm以下である。前記微粒子は、異なる粒子径の微粒子の混合物であってよいが、粒子径が均一なものが好ましい。平均粒子径の測定は当該分野で通常の測定方法により行うことができ、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等により粒子径を測定し、平均値を求めることができる。
【0032】
前記微粒子では、含ケイ素有機基は金属又は金属酸化物の微粒子の表面上に化学結合により固定されている。ここで、化学結合とは、共有結合、イオン結合等による強固な結合を意味しており、単なる物理吸着等による結合を含まない。
【0033】
一般式(B)において、Rの置換又は非置換の一価炭化水素基は特に限定されるものではないが、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の一価の飽和炭化水素基、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基、又は、炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基である。Rとしては、前記Rで例示した置換又は非置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0034】
の反応性官能基を有する一価有機基は、水酸基、メルカプト基(−SH)、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、イソシアネート基等を有する一価有機基を意味する。前記有機基としては、前記一価炭化水素基又は少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を主鎖中に有する一価炭化水素基が好ましい。Rの反応性官能基を有する一価有機基の例としては、例えば、前記Rについて説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0035】
また、Lは、式:-(YCxH2x)t(CxH2x-yZzOw)v-{Yは−O−、−S−又は式:−NR−(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基であり、Zは−NH−又は−N(CH)−であり、xは3〜20の整数であり、yは0〜5の整数であり、zは0又は1であり、wは0〜5の整数であり、tは0〜50の整数であり、vは0又は1である}の二価連結基を表す。式中、Rの一価炭化水素基としては、前記Rで例示した置換又は非置換の一価炭化水素基が挙げられる。このような二価連結基Lとしては、-(OCH2CH2)cOCH2CH2CH2-(cは0〜50の整数)、-(OCH(CH3)CH2)dOCH2CH2CH2-(dは1〜51の整数)、-SCH2CH2CH2-、-NHCH2CH2CH2-、-N(CH3)CH2CH2CH2-、-NHCH2CH2NHCH2CH2CH2-、-OCH2CH(OH)CH2OCH2CH2CH2-、-OCH2CH(OH)[CH2]e-(eは2〜10の整数)、
【化1】

(fは2又は3)、
【化2】

(fは前記のとおり)、
【化3】

(fは前記のとおり)、
【化4】

(fは前記のとおり)、-OCH2CH2CH2CH(CH2CH=O)(CH2)f-(fは前記のとおり)等が挙げられる。
【0036】
また、p及びqは、0<p≦2、0≦q<2、且つ、0<p+q≦2を満たす数である。
【0037】
このような一般式(B)で表される含ケイ素有機基としては、これらに限定されるものではないが、例えば、-SCH2CH2CH2Si(OH)(OCH3)OSi(OH)(OCH3)CH2CH2CH2SH、-SCH2CH2CH2Si(OH)(OSi(OH)(OCH3)CH2CH2CH2SH)2、 -NHCH2CH2CH2Si(OH)2(OSi(OH)2CH2CH2CH2NH2)2、-N(CH3)CH2CH2CH2Si(OH)(OSi(OH)2CH2CH2CH2NH(CH3))2、 -OCH2CH(OH)CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OH)(OCH3)CH2CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、 -OCH2CH(OH)CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)(OSi(OH)(OCH3)CH2CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH)2、 -OCH2CH(OH)(CH2)4Si(OCH3)2OSi(OH)(OCH3)(CH2)4CH(OH)CH2OH、 -OCH2CH(OH)(CH2)4Si(OCH3)(OH)OSi(OH)(OCH3)(CH2)4CH(OH)CH2OH、 -OCH2CH(OH)(CH2)4Si(OH)(OSi(OH)2(CH2)4CH(OH)CH2OH)2、-OCH2CH(OH)(CH2)4Si(OH)(OSi(OH)2(CH2)4CH(OH)CH2OH)OSi(OH)((CH2)4CH)OH)CH2OH)OSi(OH)2(CH2)4CH(OH)CH2OH、
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

-OCH2CH2CH2CH(CH2CH=O)(CH2)2Si(OH)(OCH3)(CH2)2CH(CH2CH=O)CH2CH2CH2OH、 -OCH2CH2CH2CH(CH2CH=O)(CH2)2Si(OH)(OSi(OH)2(CH2)2CH(CH2CH=O)CH2CH2CH2OH)2等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリシロキサン組成物中における、ポリシロキサン、及び含ケイ素有機基が化学結合により固定化された金属または金属酸化物の微粒子との含有量(重量)の比は特に限定されないが、好ましくは、5:95〜95:5の範囲内となる量であり、特に好ましくは、15:85〜85:15の範囲内となる量である。これは、微粒子の重量比率が上記範囲の下限より少なくなると、該微粒子による有用な特性が十分に付与されなくなり、一方、上記範囲の上限を超える場合は、ポリシロキサンの有する良好な光透過性、電気絶縁性、成形加工性等の特性を得ることができなくなるからである。
【0039】
本発明のポリシロキサン組成物は、含ケイ素化合物と金属塩の水溶液又は水分散液とを300℃以上の温度、10MPa以上の圧力の条件下で反応させ、ポリシロキサン、及び、含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子を同時に形成することによって製造することができる。
【0040】
含ケイ素化合物は、ケイ素を含むものである限り特に限定されるものではないが、オルガノシラン、オルガノシロキサンオリゴマー等のケイ素原子を含む有機化合物が好ましい。これらのケイ素原子含有有機化合物は1種類のものを単独で使用してもよく、または、2種類以上のものを混合して使用してもよい。
【0041】
オルガノシランとしては、下記一般式(C):

SiR(4−a−b) (C)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び、式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基又は縮合反応性基を表し、
a及びbは、0<a≦2、0≦b<2、0<a+b≦2を満たす数である}で表される反応性シランが好ましい。1種類のオルガノシランを単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0042】
一般式(C)において、Rの置換又は非置換の一価炭化水素基は特に限定されるものではないが、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の一価の飽和炭化水素基、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基、又は、炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基である。Rとしては、前記Rで例示した置換又は非置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0043】
の反応性官能基を有する一価有機基とは、水酸基、メルカプト基(−SH)、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、イソシアネート基等を有する一価有機基を意味しており、当該有機基としては、上記の反応性官能基を有する、一価炭化水素基、又は酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子を主鎖中に少なくとも1つ含む一価炭化水素基が好ましい。Rの反応性官能基を有する一価有機基としては、例えば、3−ヒドロキシプロピル基、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−メルカプトプロピル基、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、アミノプロピル基、N−ブチルアミノプロピル基、N−メチルアミノプロピル基、N,N−ジブチルアミノプロピル基、3−(2−アミノエトキシ)プロピル基、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル基、3−カルボキシプロピル基、10−カルボキシデシル基、3−イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
【0044】
Xの加水分解性基又は縮合反応性基としては、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び、式:−ONHで表される基からなる群から選択される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R、R及びRの一価炭化水素基としては、前記と同様である。このようなXの加水分解性基又は縮合反応性基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子、−OH、−OCH、−OCHCH、−OC(O)CH、−OC(O)CHCH、−O−N=C(CH)、−O−N=C(CH)CHCH、−NH−C(O)CH、−N(CH)−C(O)CH、−N(CH)−C(O)CHCH、−ONH等が挙げられる。
【0045】
また、a及びbは、0<a≦2、0≦b<2、0<a+b≦2を満たす数である。
【0046】
好ましい反応性シランとしては、例えば、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
オルガノシロキサンオリゴマーとしては、下記一般式(D):

SiO−(SiRO)−SiR (D)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び、式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基若しくは縮合反応性基、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、但し、Rの少なくとも一個は前記の加水分解性基若しくは縮合反応性基、又は前記の一価有機基であり、
sは1以上の数である}で表される直鎖状の反応性オルガノシロキサンオリゴマーが好ましい。1種類のオルガノシロキサンを単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0048】
一般式(D)において、Rの置換又は非置換の一価炭化水素基は特に限定されるものではないが、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の一価の飽和炭化水素基、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基、又は、炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基である。Rとしては、前記Rで例示した置換又は非置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0049】
の加水分解性基又は縮合反応性基としては、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び、式:−ONHで表される基からなる群から選択される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R、R及びRの一価炭化水素基としては、前記と同様である。このようなRの加水分解性基又は縮合反応性基としては、前記Xと同様の基が例示される。
【0050】
の置換又は非置換の一価炭化水素基は特に限定されるものではないが、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4の一価の飽和炭化水素基、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基、又は、炭素数2〜20の一価の不飽和脂肪族炭化水素基である。Rとしては、前記Rで例示した置換又は非置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0051】
の反応性官能基を有する一価有機基とは、水酸基、メルカプト基(−SH)、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、イソシアネート基等を有する一価有機基を意味しており、当該有機基としては、上記の一価炭化水素基、又は、酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子を主鎖中に少なくとも1つ含む一価炭化水素基が好ましい。Rの反応性官能基を有する一価有機基としては、前記Rと同様の基が例示される。
【0052】
なお、一般式(D)において、Rの少なくとも一個は前記の加水分解性基若しくは縮合反応性基、又は前記の一価有機基である。
【0053】
好ましい反応性シロキサンオリゴマーとしては、例えば、分子鎖両末端及びペンダント位置にケイ素原子結合メトキシ基を有するジメチルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端及びペンダント位置に水酸基を有するジメチルシロキサンオリゴマー等が挙げられる。
【0054】
金属塩の水溶液又は水分散液中に含まれる金属塩の種類は特に限定されるものではなく、任意の金属塩を使用することが可能である、金属塩としては、水溶性の塩が好ましく、元素周期表の第IV族〜第XV族の金属の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、塩化酸化物であることが好ましい。具体例としては、三塩化チタン、塩化酸化ジルコニウム、硫酸バナジル、硝酸鉄、硫酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、酢酸パラジウム、硝酸銅、酢酸銅、酢酸銀、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、硝酸アルミニウム、酢酸スズ等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0055】
含ケイ素化合物と金属塩の水溶液又は水分散液との反応量比は、ポリシロキサン組成物中におけるポリシロキサン、及び含ケイ素有機基が化学結合により固定化された金属または金属酸化物の微粒子との含有量(重量)の比が5:95〜95:5の範囲内になるように混合することが好ましく、特に好ましくは、15:85〜85:15の範囲内になるような量である。これは、該微粒子の重量比率が上記範囲の下限より少なくなると、該微粒子による有用な特性が十分に付与されなくなり、一方、上記範囲の上限を超える場合は、ポリシロキサンの有する良好な光透過性、電気絶縁性、成形加工性等の特性を得ることができなくなるからである。
【0056】
本発明の製造方法では、反応系に水が存在することが必須である。すなわち、本発明では、300℃以上の温度下、且つ、10MPa以上の圧力下の水中で、含ケイ素化合物及び金属塩を反応させることを特徴とする。好ましい反応温度は330℃以上であり、水の臨界温度である374℃以上がより好ましい。また、好ましい反応圧力は15MPa以上であり、水の臨界圧力である22MPa以上がより好ましい。
【0057】
300℃以上、且つ10MPa以上の条件下では、水は超臨界或いは亜臨界状態となり、特異な反応系が形成される。ここで、超臨界状態とは、臨界温度以上且つ臨界圧力以上の状態である。亜臨界状態とは、臨界温度以上且つ臨界圧力未満、或いは、臨界温度未満且つ臨界圧力以上の状態を意味する。
【0058】
なお、金属塩の水溶液又は水分散液中には、必要に応じて、メタノール、エタノール等のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、蟻酸、酢酸等のカルボン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、メタンチオール等のチオール、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン、アンモニア、または、界面活性剤を加えてもよい。これらの添加量は水溶液又は水分散液の全重量の0.1〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更により好ましい。
【0059】
本発明の製造方法を実施する装置は特に限定されるものではなく、当該分野で汎用のものを使用することができる。
【0060】
図1は、本発明の製造方法を行うバッチ式の反応装置の一例を示す図である。図1に示す装置では、SUS316等の強固な材質からなる反応管内に金属塩の水溶液又は水分散液及び含ケイ素化合物を仕込み、ソルトバス等の加熱手段により反応管を水の臨界温度以上(例えば400℃)に加熱して、反応系内の水を超臨界状態又は亜臨界状態とする。そして、超臨界状態又は亜臨界状態にある水、金属塩、および含ケイ素化合物を所定時間反応させた後、反応管を冷却して反応を停止させて、反応管内の生成物を回収する。
【0061】
本発明の製造方法では、基本的に水を使用し、多量の有機溶媒を使用しないので、環境への影響が小さく、且つ、安全である。しかも、複雑な製造装置を必要としないので、低コストで、且つ、大量に本発明のポリシロキサン組成物を製造することができる。
【0062】
本発明のポリシロキサン組成物は、単独で、或いは、他の成分が配合されて、塗料、顔料、化粧品、触媒、ガラス、医薬品等の分野で使用することができる。例えば、銅からなる微粒子を含む本発明のポリシロキサン組成物は、電極材料、配線材料、触媒材料として使用することができる。
【実施例】
【0063】
本発明のポリシロキサン組成物及びその製造方法を実施例・比較例により詳細に説明する。なお、ポリシロキサン組成物中のポリシロキサンの同定は次のようにして行った。また、含ケイ素有機基が表面に固定化された金属又は金属酸化物微粒子の同定は下記のようにして行った。
【0064】
[ポリシロキサンの化学構造]
生成物であるポリシロキサンの化学構造は、日本分光株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−5300を用いる赤外吸収スペクトル、及びブルカーバイオスピン株式会社製の高分解能核磁気共鳴装置AC300Pを用いて固体状態での29Si−NMRスペクトル測定により行った。NMR測定での共鳴周波数シフト値を算出する基準物質には3−トリメチルシリル−1−プロパンスルホン酸ナトリウムを使用した。
【0065】
[微粒子の形状・サイズ]
生成物であるポリシロキサン組成物中の含ケイ素有機基が表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子のサイズは、日本電子株式会社製走査電子顕微鏡(以下SEMと略)JSM−5600を用いて観察された粒子より算出した。
【0066】
[微粒子の元素分析]
上記微粒子の元素分析は、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のSEM及びTEM用EDX分析装置 Oxford Link ISIS(以下EDXと略)を用いて行った。さらに金属種を同定するためにマックサイエンス社製 M03Xを使用し、X線回折(以下XRDと略)測定を行った。
【0067】
[実施例1]
内径10mm、内容積12.5cm3のSUS316製反応管に0.1mol/L硝酸銅水溶液5.5ml、メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.26mlを仕込み、閉栓した。この混合物を385℃に加熱したソルトバスに投入し、10分間加熱後水浴にて急冷し、開栓した。生成物は黒色固体と淡黄色液体の相分離混合物であった。下記にまとめたスペクトルデータから、この固体生成物中の高分子成分は平均組成式:(HSCH2CH2CH2)1.0(CH3O)0.05(HO)0.05SiO1.45を有するポリシロキサンであることが確認された。出発原料の重量から換算したこの生成物の単離収率は90%であった。
IR(cm-1):3,425、2,960、2,881、1,635、1,080
29Si NMR:−65.7、−56.2
【0068】
生成物のSEM測定により、生成物中の金属成分は二種の微粒子からなることが分かった。大きいサイズの微粒子のSEM写真を図2に示す。平均粒子径は300nmであった。一方、図3に示したように、多量に観察された小さなサイズの微粒子の平均粒子径は60nmであった。
【0069】
EDXで分析した結果、微粒子全体から銅、ケイ素が観察され、含ケイ素有機基が微粒子全体に存在することが確認された。また、XRD測定の結果、生成物は金属銅であることが分かった。さらにポリシロキサン成分を抽出除去後の固体のIR測定の結果、下記の吸収ピークが観察され、式:-(SCH2CH2CH2)1.0(CH3O)0.05(HO)0.05SiO1.45で表される含ケイ素有機基が確認された。
ピーク位置(cm-1):3,425、2,960、2,881、1,635、1,080
さらにこのポリシロキサン組成物中の含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された銅微粒子とポリシロキサンの重量比率は20:80であった。
【0070】
[実施例2]
メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.26mlの代わりに2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.23mlを使用した以外は、実施例1と同様に反応を行い、褐色固体と淡黄色液体の相分離混合物を得た。下記にまとめたスペクトルデータから、この固体生成物中の高分子成分は平均組成式:
【化11】

を有するポリシロキサンであることが確認された。出発原料の重量から換算したこの生成物の単離収率は88%であった。
IR(cm−1):3,431、2,929、2,881、1,713、1,125、929
29Si NMR:−65.6、−56.1
【0071】
生成物のSEM測定により、生成物は不定形微粒子からなることが分かった。SEM写真を図4に示す。大きな粒子径分布が確認されたが、最小のものは約50nmであった。
【0072】
EDXで分析した結果、微粒子全体から銅、ケイ素が観察され、含ケイ素有機基が微粒子全体に存在することが確認された。また、XRD測定の結果、生成物は金属銅であることが分かった。さらにポリシロキサン成分を抽出除去後の固体のIR測定の結果、下記の吸収ピークが観察され、式:
【化12】

で表される含ケイ素有機基が確認された。
ピーク位置(cm−1):3,430、2,929、2,881、1,713、1,124、929
さらにこのポリシロキサン組成物中の含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された銅微粒子とポリシロキサンの重量比率は20:80であった。
【0073】
[実施例3]
メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.26mlの代わりにフェニルトリメトキシシラン0.13ml及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.11mlの混合物を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行い、褐色固体と褐色液体の相分離混合物を得た。下記にまとめたスペクトルデータから、この固体生成物中の高分子成分は平均組成式:
【化13】

を有するポリシロキサンであることが確認された。出発原料の重量から換算したこの生成物の単離収率は87%であった。
IR(cm−1):3,660、3,305、2,932、2,882、1,702、1,105、943
29Si NMR:−107.4、−97.9、−65.7、−56.2
【0074】
生成物のSEM測定により、生成物は大きな粒子径分布を有する不定形微粒子からなることが分かった。最小粒子径は約50nmであった。
【0075】
EDXで分析した結果、微粒子全体から銅、ケイ素が観察され、含ケイ素有機基が微粒子全体に存在することが確認された。また、XRD測定の結果、生成物は金属銅であることが分かった。さらにポリシロキサン成分を抽出除去後の固体のIR測定の結果、下記の吸収ピークが観察され、式:
【化14】

で表される含ケイ素有機基であることが確認された。
ピーク位置(cm−1):3,430、2,932、2,882、1,703、1,105、943
さらにこのポリシロキサン組成物中の含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された銅微粒子とポリシロキサンの重量比率は20:80であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(A):

(RO)SiO[(4−m−n)/2] (A)

(式中、
は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、
m及びnは、それぞれ、0<m、0<n、且つ、m+n<3を満たす数である)
で表されるポリシロキサン、及び
下記一般式(B):

−LSiR[(4−p−q)/2] (B)

〔式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Lは、式:-(YCxH2x)t(CxH2x-yZzOw)v-{Yは−O−、−S−又は式:−NR−(Rは水素原子、又は、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基であり、Zは−NH−又は−N(CH)−であり、xは3〜20の整数であり、yは0〜5の整数であり、zは0又は1であり、wは0〜5の整数であり、tは0〜50の整数であり、vは0又は1である}の二価連結基であり、
p及びqは、0<p≦2、0≦q<2、且つ、0<p+q≦2を満たす数である〕
で表される含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子からなるポリシロキサン組成物。
【請求項2】
ポリシロキサン、及び、金属又は金属酸化物の微粒子の含有量(重量)の比が、5:95〜95:5である、請求項1記載のポリシロキサン組成物。
【請求項3】
含ケイ素化合物と金属塩の水溶液又は水分散液とを300℃以上の温度、10MPa以上の圧力の条件下で反応させ、ポリシロキサン、及び含ケイ素有機基が化学結合により表面に固定化された金属又は金属酸化物の微粒子を同時に形成することを特徴とする請求項1記載のポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項4】
含ケイ素化合物が下記一般式(C):

SiR(4−a−b) (C)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を有する一価有機基を表し、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基又は縮合反応性基を表し、
a及びbは、0<a≦2、0≦b<2、且つ、0<a+b≦2を満たす数である}で表される反応性シランである、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
含ケイ素化合物が下記一般式(D):

SiO−(SiRO)−SiR (D)

{式中、
は、それぞれ独立して、置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水素原子、式:−OR(Rは水素原子、又は炭素数4以下の置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)で表される基、式:−OC(O)R(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−O−N=CR(Rは前記のとおりである)で表される基、式:−NR−C(O)R(Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは前記のとおりである)で表される基、及び、式:−ONHで表される基からなる群から選択される加水分解性基若しくは縮合反応性基、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、又は反応性官能基を有する一価有機基を表し、但し、Rの少なくとも一個は前記の加水分解性基若しくは縮合反応性基、又は前記の一価有機基であり、
sは1以上の数である}で表される直鎖状の反応性オルガノシロキサンオリゴマーである、請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
反応性官能基が、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
金属塩が元素周期表の第IV族〜第XV族の金属の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、又は塩化酸化物である、請求項3記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−502180(P2011−502180A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516314(P2010−516314)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/JP2008/070242
【国際公開番号】WO2009/057817
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】