説明

ポリテトラアルカノールアミン分散剤

本発明によれば、一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることによりつくられる水溶性の生成物が提供され、該生成物は最終用途において分散剤として有用であり、また該分散剤を使用することが知られた組成物に有用である。また本発明によれば一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることを特徴とする方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2004年5月13日出願の米国暫定特許願第60/570,600号の優先権を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は一般に表面活性剤に関し、特にエポキシ樹脂および一官能性のアミン末端ポリエーテルから誘導されるポリエーテルアルカノールアミン表面活性剤に関する。
【背景技術】
【0003】
当業界の専門家によりしばしば「櫛形ポリマー(comb polymer)」と呼ばれている重合体の種類がある。何故ならこのような重合体は、比較的長い疎水性または親水性の骨格を含んで成り、この骨格に多数の枝分れが付随しており、該枝分れは櫛の歯に似ているからである。枝分れ自身は疎水性または親水性であることができる。これらの櫛形ポリマーにおいては、櫛のベース部分(the base of the comb)の化学的性質は枝分れした櫛の歯の部分の化学的性質とかなり異なっていることが多い。このような場合、これらのポリマーは表面活性をもち、従って広い範囲の最終用途において分散剤ポリマーとして有用である。
【0004】
特許文献1には、芳香族ポリエポキシドをポリオキシアルキレンアミンと3.6:1〜10:1の当量比(エポキシの当量:アミンの当量)で反応させて得られるエポキシ樹脂が記載されている。これらの樹脂はエポキシド基の含量が多いから、水に不溶であり、顔料の分散剤としては不適当である。特許文献2には、(1)一官能性または多官能性の芳香族ポリエポキシドを(2)ポリオキシアルキレンモノアミンと反応させることによりつくられる分散剤が記載されている。この際エポキシド基の90〜100%を反応させる。本発明のポリマーも脂肪族ポリエポキシドを一官能性のアミン末端ポリエーテルと反応させることにより得られる。しかし本発明においては予想外にも、過剰のエポキシ樹脂を使用すると、顔料を加えた組成物の粘度が当業界の専門家が通常予測するよりも遥かに低下することが見出された。
【特許文献1】米国特許第6,506,821 B1号明細書。
【特許文献2】米国特許出願第20050020735号明細書。
【発明の開示】
【0005】
本発明の概要
本発明の一具体化例においては、下記構造および該構造の混合物によって定義される分散剤ポリマーが提供される。
【0006】
【化1】

【0007】
ここでRはC〜C100のヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【0008】
【化2】

【0009】
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができる。ここでRはC〜約C24のヒドロカルビル基であり;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではない。またnは1〜約50の任意の整数である。本発明の好適な形においては、ヒドロカルビル基が芳香族の場合nは1〜約10の任意の整数である。他の具体化例においては、ヒドロカルビル基が脂肪族の場合nは約1〜50の任意の整数である。
【0010】
本発明の他の具体化例においては、下記構造および該構造の混合物によって定義される水溶性の分散剤ポリマーが提供される:
【0011】
【化3】

【0012】
ここでRはC1〜C100の脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【0013】
【化4】

【0014】
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができる。ここでRは水素およびC〜約C24のヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく;またnは1〜約50の任意の整数であり、sは0または1である。本発明の好適な形においては、ヒドロカルビル基が芳香族の場合nは1〜約10の任意の整数である。他の具体化例においては、ヒドロカルビル基が脂肪族の場合nは約1〜20の任意の整数である。
【0015】
本発明の詳細な説明
本発明によれば、一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることにより櫛形ポリマーを製造することができる。このような方法で得られる生成物は便宜上ポリエーテルアルカノールアミンと呼ぶことができる。本発明の一好適具体化例に従えば、アミン末端ポリエーテル(ATP)反応物は、アミンの窒素原子上に存在する反応性水素原子の総数が、存在するすべてのポリオールエーテル中に存在するエポキシド基の量に少なくとも化学量論的に等しくなるのを保証するのに十分な量で存在している。
【0016】
他の広義の観点において、本発明によれば一官能性のアミン末端ポリエーテル(「ATP」)をポリオールのグリシジルエーテルと反応させることを含んで成る方法が提供される。本発明の他の具体化例による方法は、1種またはそれ以上のエポキシ樹脂を親水性の骨格をもったATPと高温において反応させ、多数の親水性の枝分れをもった熱可塑性ポリエタノールアミンを得ることを特徴とする方法である。このような生成物の重合体分子量および物理的性質は、原料の選択、2種の原料の割合、および混合温度によって制御することができる。
【0017】
本発明のポリエタノールアミン組成物は、ビスフェノールA(またはビスフェノールF)のジグリシジルエーテルを分子量250〜3500の一官能性のポリエーテルアミンと反応させることにより製造することができる。ポリエーテル(即ちポリオキシアルキレン)の重合鎖はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはこれらの材料の任意の組み合わせの重合体をベースにしており、またシアノエチル化されたポリオキシアルキレングリコールから誘導される材料を含んでいることができる。
【0018】
本明細書に記載された水溶性の櫛形材料を製造するための本発明の反応は、好ましくは約50〜150℃の範囲の任意の温度で行われる。反応時間は、反応物の性質(即ち存在する立体障害の程度)に依存して、約2〜約10時間の間の任意の時間であることができ、同様に原料の性質に依存する好適な反応時間とは独立に変化する。
【0019】
本発明の一好適具体化例によりつくられる櫛形ポリマーは該ポリマーの少なくとも5重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも10重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも15重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも20重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも25重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも30重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも35重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも40重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも45重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも50重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例のポリマーはすべての割合で水と混じり合うことができる。
【0020】
本発明の一具体化例による櫛形ポリマーを製造する一般的な反応図式は次の通りである:
【0021】
【化5】

【0022】
この場合少なくとも2個のエポキシ官能末端基を含むエポキシ樹脂を1級アミンと反応させる。上記反応においてRはC〜C100のヒドロカルビル基であり、従ってエポキシ反応物は官能性が少なくとも2のエポキシ樹脂であることができ、本明細書の下記のグリシジルエーテルの項に列記された材料を何の制限もなく含んでいる。さらに当業界の通常の専門家は、本発明による分散剤をつくるのに使用される原料の量を容易にコントロールすることができよう。一具体化例においては、エポキシ樹脂が過剰に存在しており、その結果末端がエポキシ樹脂でキャッピングされた分散剤の分子が得られる。他の具体化例においては、分散剤を製造するために過剰のアミンを使用し、その結果アミン基で末端がキャッピングされた分散剤の分子が得られる。
【0023】
上記式において、nは約1〜約50の整数であり;Rは分子構造の一部として互いに連結された少なくとも2個のアルコキシ基を含むヒドロカルビル基であることができる。即ち基Rは基
【0024】
【化6】

【0025】
であることができる。ここでRはC〜約C24のヒドロカルビル基であり;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく、sは0または1である。
【0026】
アミン成分
上記のような基Rは、構造
【0027】
【化7】

【0028】
を有するアミンを、前記のような少なくとも二官能性のエポキシ基と反応させることによ
って本発明の重合体分散剤の中に導入することができる。上記の構造式で種々の変数は前記定義のとおりである。即ち上記の構造は、制限なしにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドの1種またはそれ以上の、単独の、または任意の割合の互いの混合物のランダム重合体およびブロック重合体の両方並びに共重合体を含む基Rを含んでいる。本発明の一つの好適な形に従えば、アミン反応物の分子量は約100〜12,000の間の任意の分子量である。好適な一具体化例においては、アミン末端ポリエーテルは約1,000〜約3,000の分子量をもっている。他の具体化例においては、アミン末端ポリエーテルは約250〜約3,500の分子量をもっている。さらに他の具体化例においてはこの分子量は約1,500〜約2,000である。
【0029】
このようなアミンの混合物を用いて本発明で提供される重合体を製造する場合、当業界の専門家には公知のように好適な分子量は実際には存在するすべてのアミンの平均分子量であり、このようなアルコキシル化されたアミンの製造ではその工程の種類によって固有なアミン混合物が得られる。
【0030】
従って本発明に使用されるモノアミン官能基をもったアミン末端ポリエーテルは米国テキサス州、The WoodlandsのHuntsman LLCからJEFFAMINE(R)およびSURFONAMINE(R)の商品名で市販されているもの、並びにポリオキシアルキレン化された1級アミンを含んで成る他社から提供された同様な化合物を制限なく含んでいる。適当なモノアミンにはJEFFAMTNE(R)M−1000、JEFFAMINE(R)M−500,JEFFAMINE(R)M−600、JEFFAMINE(R)M−2070、およびJEFFAMTNE(R)M−2005が含まれる。JEFFAMINE(R)M−1000、M−2070、およびM−2005は下記の構造をもっている。
【0031】
【化8】

【0032】
ここでRはHまたはCH、mは約3〜32、nは約10〜32である。これらの化合物はメトキシ末端であるが、本発明を実施するのに使用されるアミン末端ポリエーテルは他の基でキャッピングされていることができ、この場合メトキシ基のメチル基を高級炭化水素基、例えばエチル、プロピル、ブチル、または置換基を含めて炭素数最高約18の任意の基で置き換えることができる。アミンの末端基は典型的には1級アミン基である。本発明を実施するのに使用される適当なアミン末端ポリエーテルの本発明を限定しないさらに他の代表的な例には、PO/EO比が9/1で分子量が600のメチルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)B−60;PO/EO比が3/19で分子量が1000のメチルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R
L−100;PO/EO比が29/6で分子量が2000のメチルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)B−200;PO/EO比が10/31で分子量が2000のメチルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)L−207;PO/EOが8/58で分子量が3000のメチルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)L−300;2〜3個のPO基をもつ分子量が325のC13アルキルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)B−30;および13.5部のPOを有する分子量が1004のノニルフェニルでキャッピングされたアミンであるSURFONAMINE(R)B−100が含まれる。
【0033】
アミン末端ポリエーテルをつくるのに適したポリエーテルブロックにはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレングリコール)が含まれる。グリコールは公知方法を用いてアミン化してアミン末端ポリエーテルにすることができる。一般にグリコールはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの組み合わせから公知方法、例えばメトキシまたはヒドロキシで開始される反応を用いてつくられる。EOおよび/またはPOの量を変えることにより得られる生成物の親水性を変えることができる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの両方を使用する場合、ランダム・ポリエーテルが望ましい時にはこれらのオキシドを同時に使用し、或いはブロック・ポリエーテルが望ましい時にはオキシドを逐次反応させることができる。
【0034】
本発明の一具体化例においては、アミン末端ポリエーテルはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの組み合わせからつくられる。一般に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの組み合わせからアミン末端ポリエーテルをつくる場合、エチレンオキシドの量はモル基準でアミン末端ポリエーテルの約50%以上であり、好ましくは約75%以上、さらに好ましくは約90%以上である。本発明の一具体化例においてはジアミンおよびトリアミンを組成物から除外することができる。同様にエーテル結合およびアミン基以外の官能基、例えばヒドロキシ基をアミン末端ポリエーテルの中に存在させないことができる。本発明を実施するのに使用される一官能性アミン末端アミンは公知のアミン化の方法、例えば米国特許第3,654,370号明細書;同第4,152,353号明細書;同第4,618,717号明細書;同第4,766,245号明細書;同第4,960,942号明細書;同第4,973,761号明細書;同第5,003,107号明細書;同第5,352,835号明細書;同第5,422,042号明細書;および同第5,457,147号明細書記載の方法を使用して製造することができる。一般に一官能性アミン末端アミンは、ニッケル含有触媒、例えばNi/Cu/Cr触媒の存在下においてポリエーテルモノオールをアンモニアと反応させてつくられる。
【0035】
特に好適なアミン末端ポリエーテルは約1,000〜3,000の分子量をもっている(特記しない限りすべての分子量は原子質量単位(「a.m.u.」)で表される)。これらの特定の材料はメトキシ末端であるが、本発明を実施するのに使用されるアミン末端ポリエーテルはメトキシ基のメチル基が水素または高級炭化水素、例えば炭素数最高18の置換基を含んで成るエチル、プロピル、ブチル等で置き換えられた他の基でキャッピングされていることができる。アミン末端基が1級アミン基であることが特に好適である。即ち、本発明の一具体化例に有用な一官能性のアミン末端ポリエーテルは一般的な構造
【0036】
【化9】

【0037】
をもっている。ここでRおよびRはそれぞれ独立に水素およびC〜C−ヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;Rは独立に水素、メチル、メトキシ、エトキシ、およびヒドロキシから成る群から選ばれ;nは約5〜100の範囲の整数であり、またこの構造にはその異性体が含まれるものとする。このような材料は市場において最高の品質とバッチ間の整合性をもったものが米国、テキサス州のHuntsman LLCから入手できる。
【0038】
グリシジルエーテル成分
本発明の組成物をつくるのに用いられるグリシジルエーテルは一般に「エポキシ樹脂」として知られており、通常の市販のエポキシ樹脂を含む種々のエポキシ樹脂を含んでいる。これに加えて、2種またはそれ以上のエポキシ樹脂を含む混合物を互いに任意の割合で組み合わせて使用し、これを本明細書に記載されたアミンと反応させることができる。一般に、エポキシ樹脂はグリシド化した(glycidated)樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化した油(oils)等であることができる。グリシド化した樹脂はしばしばグリシジルエーテル、例えばエピクロロヒドリンとビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAとの反応生成物としてつくられる。C〜C28−アルキルグリシジルエーテル;C〜C28−アルキル−および−アルケニル−グリシジルエステル;C〜C28−アルキル−、モノ−およびポリ−フェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニルメタン)のポリグリシジルエーテル;NOVOLAC(R)樹脂のポリグリシジルエーテル;芳香族のヒドロカルボン酸(hydrocarboxylic acid)の塩をジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルでエステル化して得られたジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2個のハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィンを縮合させて得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’−ジグリシジルアニリン;4−グリシジルオキシ−N,N’−ジグリシジルアニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N’−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;およびこれらの組合せである。本発明を実施するのに使用し得る市販のエポキシ樹脂には、これだけには限定されないが、ARALDITE(R)GY6010樹脂(Huntsman Advanced Materials)、ARALDITE(R)6010樹脂(Huntsman Advanced Materials)、EPON(R)828樹脂(Resolution Polymers)、およびDER(R)331樹脂(the Dow Chemical Co.)、HeloxyTM68、EponexTM1510、およびARALDITE(R)MV 0500が含まれる。
【0039】
櫛形ポリマー
一般に本発明のポリマーは芳香族ポリエポキシドと一官能性のアミン末端ポリエーテルとを当量基準で芳香族ポリエポキシドを過剰に存在させて反応させることにより得ることができ、この場合原料のエポキシド基の約40〜約75%を反応させ、エポキシ対アミンの当量比は1.10:1〜2.5:1の間の任意の値にする。一好適具体化例においては、本発明の分散剤をつくるのに使用される反応混合物中のエポキシ基対アミノ水素原子(1級アミンの窒素原子に結合した水素)の比は約1.1:1〜2.5:1の範囲にある。このようにすることより反応混合物中においてエポキシ基が90%より少ない量しか反応しないようにすることができるが、このことはエポキシ成分が芳香族の場合、本発明の材料を製造する上において特に有利である。
【0040】
このように当業界の専門家には、本発明の分散剤の基Rが上記のような材料から誘導されたヒドロカルビル残基であることが理解且つ認識されるであろう。
【0041】
一般に、アミン末端ポリエーテルおよびポリオールのグリシジルエーテルは、ポリエーテルのアミン基が実質的にすべてのグリシジルエーテルのエポキシド官能基と反応して消費され得るような量で存在していることが好適である。即ち、反応の際アミン末端ポリエーテルの量はポリオールのグリシジルエーテル中のエポキシドの量に化学量論的に等しいかまたはそれより多い。反応後に未反応のエポキシド官能基が残っているとしても、得られる反応生成物はそれを殆ど含んでいない。
【0042】
1級アミンの最初に使用される量に依存して、最終生成物の中に2級または3級アミンのいずれかが生成することが可能である。従ってATPが2個のエポキシド基と反応して3級アミンを生じた場合におけるような反復単位を含んだ生成物が生じる可能性がある。この結果は下記の代表的な式で記述することができる。
RNHCHCHOHCH−[−O−A−O−CHCHOHCHNRCHCHOHCH−O−]−A−O−CHCHOHCH−NRH
ここでRはATPのキャッピングされたポリエーテルの部分であり、Aはヒドロカルビル基、例えばビスフェノールAの炭化水素部分を表し;xは0(3級アミンが存在しない場合)から約100の間で変動することができる。このような生成物を生じる反応は好ましくは周囲圧力において約80〜約150℃の範囲で行われる。
【0043】
従って、広義の観点において本発明は、一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることにより生じる生成物に関する。アミン成分およびグリシジルエーテル成分はそれぞれアミンおよびグリシジルエーテルの混合物を含んで成っていることができる。与えられるアミン末端ポリエーテルは一般にポリオールのグリシジルエーテル中のエポキシドの量に化学量論的に等量であるかそれよりも多い量で与えられることが好ましい。一具体化例においては最大10%過剰な量のポリオールのグリシジルエーテルを使用する。
【0044】
他の広義の観点においては、本発明は一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと接触させることを含んで成る方法から成っている。アミン末端ポリエーテルはポリオールのグリシジルエーテル中のエポキシドの量に化学量論的に当量であるかそれよりも多い量で使用される。同様に、一具体化例においては最大約10%過剰のポリオールのグリシジルエーテルが使用される。
【0045】
本発明により提供される付加重合体は、その可能な組成に依存して、水溶液、炭化水素および他の有機溶媒中において表面活性剤として使用することができる。これらの重合体は成分として分散剤が含まれていることが知られているすべての最終用途並びに組成物に有用である。
【0046】
アミン末端ポリエーテルとポリオールのグリシジルエーテルとの反応は1種またはそれ以上の溶媒を用い、或いは溶媒を用いないで行うことができる。一般に、この反応は溶媒を存在させずにほぼ純粋な形の1種またはそれ以上の反応物を用いて行うことができる。溶媒を使用する場合には、溶媒はアミン末端ポリエーテル、エポキシ樹脂、またはアミン末端ポリエーテルとエポキシ樹脂との反応生成物に対し反応しない溶媒でなければならない。このような溶媒の本発明を限定しない代表的な例には、アルコール、例えばイソプロパノール、ケトン、例えばメチルイソブチルケトン、および芳香族炭化水素、例えばトルエン、および他のアルコール、ケトン、エーテルおよび炭化水素が含まれる。水も溶媒と
して使用することができる。
【0047】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例はいかなる方法においても本発明を限定するものではない。これらの実施例において特記しない限りすべての割合は重量による。
【実施例1】
【0048】
Resolution Polymers,Inc.から市販されているEPONTM828、またはHuntsman Advanced Materialsの製品であるARALDITETM6010のような標準的なエポキシ樹脂の混合物をモル的に僅かに過剰なATP、例えばJEFFAMTNE(R)M−2070と混合する。得られた混合物は非常に粘度が低く、透明な溶液になる。これを3〜4時間最高100℃に加熱する。その結果この間に重合が起こってポリエーテルアルカノールアミンが生じ、時間と共に粘度が増加する。得られる重合体は透明で粘稠な液体であり、水に溶解する。この溶液を撹拌すると発泡が起こり、安定な状態に保たれる。
【0049】
他の一官能性ATP生成物、例えばJEFFAMINE(R)M−1000(XTJ−506)および実験により得られる生成物XTJ−580(分子量500)も、上記実施例において同様な方法でエポキシ樹脂と反応させた場合、同様な生成物を生じた。
【実施例2】
【0050】
小さいガラス瓶に10g(0.04モル当量(当量で割った値))のXTJ−580(分子量が500のATP、250当量)および5g(0.0266モル当量)のEPON 828(188当量のビスフェノールAのジグリシジルエーテル)を加える。アミンの当量はアミンの活性水素の数で割ることによって計算される。この実施例ではXTJ−580対EPON 828の当量の比として1.5を用いた。得られた混合物を混合して透明な溶液にし、次いで50℃の炉の中に1時間入れた。この時間後、混合物はなお透明であり易動性をもっていたので、さらに5時間の間100℃の炉の中に入れた。櫛形のポリエタノールアミンが生じた。これは水に可溶な透明な粘稠な液体であった。この水溶液は振盪すると僅かに発泡する。
【実施例3】
【0051】
小さいガラス瓶に10g(0.040モル当量)のXTJ−580および6g(0.0319モル当量)のEPON 828を加える。振盪すると二つの層は透明な無色の溶液になった。これを100℃の炉の中に1時間入れた。この実施例ではXTJ−580対EPON 828のモル当量の比として1.25を用いた。水に完全に溶解する櫛形のポリエタノールアミンが生じた。これは振盪すると僅かに発泡する。
【実施例4】
【0052】
小さいガラス瓶に9g(0.036モル当量)のXTJ−580および6.4g(0.034モル当量)のEPON 828を加える。振盪すると二つの層は透明な無色の溶液になった。これを100℃の炉の中に3時間入れた。この実施例ではXTJ−580対EPON 828のモル当量の比として1.06を用いた。得られた混合物を混合して透明な溶液にし、次いでこれを2.5時間の間100℃の炉の中に入れた。生成物は殆ど水に可溶であった。この混合物をさらに15時間の間100℃の炉の中に戻した。この櫛形のポリエタノールアミンは粘稠であり、100℃では易動性をもっていたが、20℃では易動性もっていない。水に可溶であり、振盪すると泡を生じる。
【実施例5】
【0053】
1パイントの広口ガラス容器に50℃で200g(0.2モル当量)のJEFFAMI
NETM M−2070を加えた。EPON 828(30g、0.16モル当量)を50℃において加えた。得られた混合物を均一になるまで振盪し、100℃で約6時間加熱した後、室温に冷却した。得られたポリエタノールアミン生成物のアセチル化し得る成分は全部で1.28ミリ当量/g、また全アミンは0.379ミリ当量/gであり、該生成物の分子量は2009であった。
【実施例6】
【0054】
500mLの広口瓶にXTJ−580(200g、0.4モル当量)およびp−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルであるHELOXY 65(184g、0.89モル当量)を加えた。得られた混合物を撹拌して透明な均一の溶液にし、きつく栓をして50℃の炉の中に1時間入れた。この溶液を100℃の炉の中に3.5時間入れた後、炉から取り出して室温に冷却する前に約1時間の間85℃に冷却した。生成物の分析値は次の通りである:アセチル化し得る全成分 2.29ミリ当量/g;全アミン 1.046ミリ当量/g;2級アミン 0.0474ミリ当量/g;3級アミン 0.09965ミリ当量/g;1級アミン 0.003ミリ当量/g;25℃における粘度 1959cps;エポキシドの当量 0.0130。
【実施例7】
【0055】
小さい広口ガラス瓶にJEFFAMINETM M−1000(XTJ−506、50g、0.1モル当量)およびEPON 828(15g、0.08モル当量)を加えた。この混合物をかき回して均一な灰色がかった白色の溶液にし、これを5時間の間100℃の炉の中に入れた。生成物は25℃において軟らかいワックス状の半固体であった。生成物の分析値は次の通りである:アセチル化し得る全成分 1.79ミリ当量/g;全アミン 0.75ミリ当量/g;2級および3級アミン 0.3759ミリ当量/g;3級アミン 0.770ミリ当量/g。この生成物は完全に水に溶解した。水溶液を振盪すると安定な泡を生じる。
【実施例8】
【0056】
小さい広口瓶にXTJ−534(t−ブチルでキャッピングしたポリエーテルモノアミン、50g、0.2モル当量)およびEPON 828(30g、0.161モル当量)を加えた。得られた混合物を均一且つ透明になるまで振盪した後、栓をして4時間100℃の炉の中に入れた。この生成物は主として5部のエポキシ、および6部のXTJ−534(2部の2級アミンおよび4部の3級アミン)から成る分子を含んでいると思われる。生成物の分析値は次の通りである:アセチル化し得る全成分 2.44ミリ当量/g;全アミン 1.15ミリ当量/g。
【実施例9】
【0057】
1パイントの広口ジャーにXTJ−580(100g)およびEPON 828(60g、0.319モル当量)を加えた。得られた混合物を均一になるまで混合した後、4時間の間100℃の炉の中に入れ、次いで室温に冷却した。生成物の分析値は次の通りである:アセチル化し得る全成分 2.4ミリ当量/g;水酸価 137.5;全アミン 1.25ミリ当量/g。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の分散剤を含んで成る、分散剤として有用な物質組成物において、該分散剤は構造
【化1】

但し式中RはC〜C100の脂肪族ヒドロカルビル基であることができ;Rは独立に構造
【化2】

但し式中Rは独立に水素、およびC〜約C24−ヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく;sは0または1であることができる、
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができ、またnは1〜約50の整数である、
を有することを特徴とする物質組成物。
【請求項2】
さらに溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該溶媒成分は水を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項4】
該溶媒は多価アルコール;グリコール;ジオール;グリコールエステル;グリコールエーテル;ポリアルキルグリコール;多価アルコールの低級アルキルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子を有するアルコール;ケトン;エーテル;エステル;およびラクタムから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項5】
該溶媒はエチレングリコール;プロピレングリコール;ブタンジオール;ペンタンジオール;グリセリン;プロピレングリコールラウレート;ポリエチレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル;エチレングリコールモノエチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;アセトン;ジオキサン;酢酸エチル;酢酸プロピル;酢酸t−ブチル;および2−ピロリドンから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項6】
存在する該溶媒成分の量は該組成物の全量に関して約50〜99重量%の間の量である
請求項1−5のいずれか一つに記載された組成物。
【請求項7】
水溶性の分散剤を含んで成る物質組成物において、該分散剤は構造
【化3】

但し式中RはC〜C100の脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であることができ;Rは独立に構造
【化4】

但し式中Rは水素、およびC〜約C24−ヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく;sは0または1であることができる、
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができ、またnは2〜約20の整数である、
を有することを特徴とする物質組成物。
【請求項8】
さらに溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】
該溶媒成分は水を含んで成ることを特徴とする請求項8記載の組成物。
【請求項10】
該溶媒は多価アルコール;グリコール;ジオール;グリコールエステル;グリコールエーテル;ポリアルキルグリコール;多価アルコールの低級アルキルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子を有するアルコール;ケトン;エーテル;エステル;およびラクタムから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項8記載の組成物。
【請求項11】
該溶媒はエチレングリコール;プロピレングリコール;ブタンジオール;ペンタンジオール;グリセリン;プロピレングリコールラウレート;ポリエチレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル;エチレングリコールモノエチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;アセトン;ジオキサン;酢酸エチル;酢酸プロピル;酢酸t−ブチル;および2−ピロリドンから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項8記載の組成物。
【請求項12】
存在する該溶媒成分の量は該組成物の全量に関して約50〜99重量%の間の量である
請求項1−11のいずれか一つに記載された組成物。

【公表番号】特表2007−537338(P2007−537338A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513288(P2007−513288)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/016369
【国際公開番号】WO2005/113676
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505318547)ハンツマン ペトロケミカル コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】