ポリヌクレオチドサンプル調製装置
ポリヌクレオチドサンプルを調製するための方法及びシステムを開示する。本発明は、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該ポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体システムであって、カートリッジ受取要素、挿入可能かつ除去可能なカートリッジ、カートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成された加熱要素、及び制御回路を含み、前記挿入可能カートリッジは、サンプル及び1つ以上の試薬を受け入れ、かつサンプルと試薬を反応させて、1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成されているマイクロ流体構成要素を含む。本発明は、それぞれ1つ以上のポリヌクレオチドを含有するいくつかのサンプルを該ポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換するための、少なくとも第1のマイクロ流体構成要素と第2のマイクロ流体構成要素を含んでなるマルチサンプルカートリッジをさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号の優先権の利益を主張し、かつこの明細書全体を本明細書で援用する。
【技術分野】
【0002】
この明細書で述べる技術は、ポリヌクレオチド含有サンプルを調製するための方法及び装置、さらに詳細には、サンプルに含まれるポリヌクレオチドの引き続く分析用のサンプルを調製するためのマイクロ流体構成要素を利用する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの実験技術はポリヌクレオチドの検出、定量分析、又は増幅を含む。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA含有サンプル中のDNAを増幅するための確立した日常的実験プラクティスである。それにもかかわらず、日常的プラクティスでさえ、処理能力を高め、分析の一貫性を向上させ、かつ使い方が簡単であるのみならず、個々のサンプルの処理及び分析時間を節約するであろう自動化レベルから利益を得るだろう。
PCRのような分析の全体的な時間を信頼性に有害な影響を与えずに有意に短縮できる一局面はヌクレオチド含有サンプルの初期処理である。PCRのような分析技術は業界内では既に、あるレベルの自動化に依存しているので、生の臨床サンプルから、現存する機械に即座に入力できる形態のDNA抽出物を供給するサンプル調製の効率的手段を開発することが要望されている。
PCRのような分析法が有効であるためには、個々のDNA分子をその宿主細胞核から遊離させなければならない。従って、細胞含有サンプルにおいて、細胞壁と核膜を両方とも破壊してDNA分子が周囲環境に入れるようにしなければならない。細胞含有サンプルから使用できるDNAを抽出するためには、通常、全部で数工程が必要である。このような工程を日常的かつ効率的に実行できる簡単な装置の開発は、自動化の現在の試みがロボット工学のような複雑かつ高価な技術に関与していることから、少なからず現存するPCRプロトコルを実施する者にとって非常に有益だろう。
【0004】
マイクロフルイディクスは、診断上の分析と、PCRのような方法によるマイクロリットルスケールのサンプルの分析の両サンプル調製を行うための実用的技術であることが判っている。例えばPCT出願、PCT/US2005/015345、及び米国仮出願第60/567,174号及び第60/645,784号を参照されたい(これらすべての全体を本明細書で援用する)。しかし、今日までに開発されていないツールは、PCRで用いる熱サイクルを含め、現存する実験装置によって便利に分析できる形態でヌクレオチドサンプルを送達できるマイクロ流体構成要素(マイクロフルイディクス構成要素)である。
種々の構成要素を備えたマイクロ流体装置は、2004年3月17日にParunakらによって提出された米国仮出願第60/553,553号(本明細書で援用する)に記載されている。
【発明の開示】
【0005】
〔概要〕
本明細書で述べるシステムは、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体システム(マイクロフルイディクスシステム)であって、以下の要素:挿入可能かつ除去可能なカートリッジと連絡しているカートリッジ受取要素;前記カートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成された前記カートリッジ受取要素と連絡している加熱要素;及び前記加熱要素と連絡している制御回路;を含み、前記挿入可能カートリッジが以下の構成要素:前記加熱要素及び前記制御回路と共同して、前記サンプル及び1つ以上の試薬を受け入れ、かつ前記サンプルと前記試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成された少なくとも1つのマイクロ流体構成要素;を含む、前記マイクロ流体システムを包含する。
他の実施形態では、前記挿入可能カートリッジがさらに以下の要素:前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;及び調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;を含む。さらに他の実施形態では、前記マイクロ流体構成要素が、0.1〜50μlの範囲の体積の流体を伝達するように構成された1つ以上のチャネルを含み、ここで、前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、試薬入口、及び出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にする。
【0006】
本明細書でさらに述べるようなマイクロ流体システムによって生成された調製サンプルを、PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を実行するように構成された機械によって引き続き分析することができる。本マイクロ流体システムによって生成された調製サンプルをさらに処理し、種々のターゲット増幅及び/又はシグナル増幅法によって分析することができ、また、制限消化後のキャピラリー電気泳動及び/又は質量分析によって、並びに一般にゲノミクス及びプロテオミクス技術と呼ばれる方法の他の例によって分析することもできる。
マイクロ流体システムの好ましい実施形態は、さらに1つ以上の計算機類、例えば、該システムの現在の状態、サンプル調製の進行、及びシステム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージといったシステム情報をユーザーに伝達するビジュアルディスプレイ;該システムをコンピューター又はコンピューターネットワークに連結するためのインターフェイス;前記制御回路を操作するための命令を記憶させるコンピューター読取り可能メモリー;前記命令を実行するための処理装置;及びユーザーからの情報を受け入れるための入力装置を含む。
本明細書で述べるシステムの他の好ましい実施形態は、2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されたカートリッジを利用する。本システムのさらに別の好ましい実施形態は、2つ以上、好ましくは3つのカートリッジを受け入れるように構成され、いずれのカートリッジも2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されている。
【0007】
ここで、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体構成要素の実施形態についてもさらに述べる。この構成要素は以下を含む:前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;及び0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネル。前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、試薬入口、及び出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にし;かつ前記マイクロ流体構成要素は、外部熱源と共同して、前記サンプルと試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成されている。
他の実施形態は、なおさらに、ある数、特定の実施形態では8つのサンプルを受け入れるように構成されたマルチサンプルカートリッジを含み、ここで、前記サンプルは少なくとも第1のサンプルと第2のサンプルを含み、前記第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチドを含む。各サンプルは、1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換されうる。前記マルチサンプルカートリッジは、相互別々に添付された少なくとも第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、前記第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素はそれぞれ本明細書で前述したとおりであり、かつ前記第1のマイクロ流体構成要素は前記第1のサンプルを受け入れ、前記第2のマイクロ流体構成要素は前記第2のサンプルを受け入れる。隣接するカートリッジの各サンプル入口は、ユーザーがサンプルをいずれか一方のカートリッジに導入するとき、一方のサンプル入口の他方のサンプルの如何なる混入をも阻止するため相互に妥当な間隔が置かれている。
好ましい実施形態では、前記マルチサンプルカートリッジは、本技術で常用されている96-ウェルプレートの大きさと実質的に同じ大きさを有する。そこで、有利には、該カートリッジは、本技術の他のどこかで使用されるプレートハンドラーと併用される。しかし、なおさらに好ましくは、本マルチサンプルカートリッジは、PCRチューブの取り付け台の重心間の間隔が、業界承認規格である9mmとなるように設計される。これは、特定の実施形態では、本明細書でさらに述べるように、隣接するPCRチューブに材料を送達するカートリッジ内のノズル間の中心と中心との距離が9mmであることを意味する。さらに他の好ましい実施形態では、マルチサンプルカートリッジは、前記第1のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第1のPCRチューブと、前記第2のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第2のPCRチューブとを含む。各PCRチューブは、好ましくは前記カートリッジに取り外し可能に取り付けられている。
【0008】
本明細書ではさらに方法について述べる。方法としては、限定するものではないが、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するいくつかの細胞を含むサンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する方法が挙げられる。この方法は以下の工程を含む:約0.1〜2.0mLの前記サンプルと過剰量の空気をバルク溶解チャンバーに導入する工程;前記バルク溶解チャンバーに熱を加えて前記サンプルを第1の温度に上昇させて前記サンプル内の細胞を溶解させることによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを含有するライセートを生成する工程;前記ライセート中の1つ以上のポリヌクレオチドをアフィニティーマトリックス、例えば1つ以上のビーズ上に捕獲する工程;前記ビーズを前記バルク溶解チャンバーから出させてフィルター上に捕捉させる工程;前記ビーズを洗浄試薬で洗浄する工程;前記洗浄試薬を遊離緩衝液と置き換える工程;前記ビーズを第2の温度に加熱することによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離する工程;及び前記1つ以上の中和されたポリヌクレオチドをPCRチューブに移動させる工程。好ましい実施形態では、バルク溶解チャンバーに熱を加える前に該バルク溶解チャンバー内で1つ以上の溶解試薬中で前記サンプルが溶解される。他の好ましい実施形態では、前記ビーズを前記第2の温度に加熱した後、前記方法は、中和緩衝液を前記1つ以上のポリヌクレオチドと混ぜ合わせて1つ以上の中和されたポリヌクレオチドを生成してから前記PCRチューブに移す。
本明細書ではさらに、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するいくつかの細胞を含むサンプルを分析する方法であって、前述したとおりの方法を用いて、前記サンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する工程;及びPCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を用いて、前記サンプルを分析する工程を含む方法についても述べる。
1つ以上の実施形態のさらなる詳細は添付図面、及び以下の詳細な説明に示される。その他の特徴、目的、及び利点は、詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【0009】
〔詳細な説明〕
種々の図面の同等の参照記号は同等の要素を表示する。
生物学的サンプルの分析は、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、tRNA、mRNA、又はrRNA)が該サンプル内に存在するかを判定することを含むことが多い。例えば、サンプルを分析して特定抗原の存在を示すポリヌクレオチド指標が存在するかを判定することができる。本明細書では、用語ポリヌクレオチド及び核酸化合物は相互交換可能に使用され、天然に存在する核酸、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルの1つ以上の反復性又は非反復性配列で形成されたポリマー有機分子を意味すると解釈される。
典型的には生物学的サンプルは複雑な混合物である。本明細書で使用するため、サンプルはいずれのマトリックスとして供給されてもよく、限定するものではないが、例えば、血液、組織サンプル(例えば、鼻、頬、肛門、又は膣の組織のスワブ)、生検吸引物、ライセートとして、真菌として、細菌として、又は食品検査で使用する物のような食物サンプルとして供給されうる。食物サンプルで見つける場合、食品には、チーズやミルク等の乳製品、及び穀物、コーン、コメ、又はトウモロコシ等の主要食料が含まれる。判定すべきポリヌクレオチドは、粒子(例えば、白血球及び/又は赤血球等の細胞)、組織フラグメント、細菌(例えば、グラム陽性細菌及び/又はグラム陰性細菌、真菌、胞子)内に含まれてよい。典型的には、1つ以上の液体(例えば、水、緩衝液、血液、血漿、唾液、尿、髄液、又は有機溶媒)はサンプルの一部であり、及び/又は処理工程中にサンプルに添加される。
【0010】
生物学的サンプルを分析する方法は、実験室で取り扱える形態(例えば、スワブの形態)で生物学的サンプルを得る工程、該サンプル内の粒子(例えば、細菌又は他の細胞)からポリヌクレオチドを遊離する工程、1つ以上の遊離されたポリヌクレオチドを増幅する工程(例えば、PCRで)、及び増幅されたポリヌクレオチドの存在(又は非存在)を判定する工程(例えば、蛍光検出で)を含む。
生物学的サンプルは、典型的には阻害因子(例えば、粘膜化合物、ヘモグロビン、糞便化合物、及びDNA結合タンパク質)をも含む。このような化合物は、サンプル内のポリヌクレオチドの存在を判定するための試みを阻害する。例えば、該阻害因子は、PCR及びポリヌクレオチドの存在を判定するための他の酵素的技法によるポリヌクレオチドの増幅効率を減少させうる。判定すべきポリヌクレオチドに対して阻害因子の濃度が少なくない場合、分析は偽陰性結果をもたらしうる。従って、生物学的サンプル(例えば、判定すべき1つ以上のポリヌクレオチドを有するサンプル)を調製するための好ましい方法及び関連システムは、判定すべきポリヌクレオチドの濃度に対して阻害因子の濃度を減らす。
【0011】
(システム)
図1は、例えば本明細書の方法に従って、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するための例示的なマイクロ流体システム10を示す。図2A〜2Fは、例示的システム10の種々の局面の分解図を示す。
図1には4つのカートリッジ受取要素12が示されているが、装置10の他の好適な実施形態は、より多いか又は少ない受取要素を有してよく、限定するものではないが、例えば1、2、3、6、8、10、12、16、又は20個の受取要素を有しうることが理解されよう。システム10は、場合により、前記カートリッジ受取要素が位置している前記システム10の領域を覆う、閉じられるドア22を有してよい。ドア22は、ユーザーがシステムの活動を視覚的にモニターできるように透明であってよく、例えば、Perspex又は同様の何らかの材料製でよい。カートリッジ受取要素12は、独立して、本明細書でさらに述べるようなマイクロ流体カートリッジのような、また本明細書でさらに述べるようなマルチサンプルカートリッジのような挿入可能かつ取り外し可能なカートリッジを受け入れる。ここで、機械的キー(図示せず)はカートリッジの正確な挿入を容易にしうる。図1は、サンプルの調製中、前記任意的なドア22が閉じていることが好ましいことを示す。ドア22は、ドアの上縁にて1つ以上のヒンジ24で取り付けられていることが示されているが、システム10の全体的な作動と矛盾しなければ、ドアの下縁、又はその左若しくは右縁にてヒンジで取り付けられていてもよい。さらに、ドア22は、開閉の容易さのため任意的なハンドル26を備えて図示されている。図1ではさらになお、1つ以上のヒンジ28で達成されるような、任意的にヒンジ式の中間部を備えたドア22が示されている。このような任意的なヒンジ式の中間部はドアを部分的に開くことを容易にするのみならず、開いているときにドアの扱いやすい折りたたみ構成を創り易くする。
【0012】
システム10は、好ましくは試薬を貯蔵するための領域35をも含む。該領域は、システム10のハウジング33内に位置してよいが、図1に示されるように、ハウジング33の外面にあってもよい。図1には、ハウジング33の外部に1つ以上の取付けブラケット34によって取り付けられた3つの試薬ビン36が示されている。試薬ビン36は、それぞれ、遊離緩衝液、洗浄緩衝液、及び中和緩衝液を含み、サンプル調製中、それぞれの試薬をサンプルに送達するように構成されている。試薬ビン36を外部に取付けると、有利なことに、1つ以上のビンのいずれかの補充が必要であれば、そのことがユーザーに容易に分かる。システム10内に試薬ビンを組み入れると、システムの外部の試薬貯蔵部から送達管の接続をはずして再び接続することを要せずに、実験室内のある位置から別の位置にシステム10を容易に移動できるので有利である。しかし、試薬ビンを補充するためにユーザーが頻繁に介入することなく、長期間システム10を操作することが望ましい他の実施形態では、システム10に取り付けられず、又はシステム10に含まれないが、どこか他の場所に置かれてシステム10に試薬を送達するように構成された、より大きな容器から1つ以上の管、供給管路、又はパイプを介して試薬を供給してもよい。
システム10は、システム10が配置される面の上方にハウジング33を上昇させることによって、システム10の下の換気を可能にし、かつユーザーにシステム10を持ち上げる改良された能力をも提供する1つ以上の安定化足部30を含んでもよい。システム10の大きさによって、2、3、4、5、若しくは6、又はそれより多くの足部30がありうる。足部30は、好ましくはゴム、又はプラスチック、又は金属製であり、システム10が置かれる面の上方に約2〜約10mmシステム10のハウジング33を持ち上げる。
【0013】
マイクロ流体システム10は、さらに場合により、該システムのユーザーに情報を伝達するディスプレイを含んでよい。このような情報としては、限定するものではないが、システムの現在の状態;サンプル調製の進行;及びシステム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージが挙げられる。ディスプレイ20は、好ましくはユーザーがシステム10に命令を伝達できる入力装置32と共に使用される。入力装置は、タッチスクリーン、キーパッド、又はカードリーダーでよい。入力装置32はさらに、例えば、限定するものではないが、フラッシュメモリーカード、メモリースティック、USB-スティック、CD、又はフロッピー(登録商標)ディスク等のフォーマットされた電子媒体のリーダーを含みうる。入力装置32はさらに、予めロードした許可ユーザー確認のための特徴に従い、システム10のユーザーが実際に許可されたユーザーであることを保証するためのセキュリティー機能、例えば、指紋リーダー、網膜スキャナー、磁気帯リーダー、バーコードリーダーを含みうる。入力装置32は、ユーザーの命令を受け入れるための外部入力装置(図1には示されない)、例えばコンピューターキーボード、又はコンピューターマウスにさらに連結されうる。入力装置32は、さらに−かつ同時に−サンプル分析と関連するデータを書き出すための出力装置としても機能しうる。例えば、入力装置32がフォーマットされた電子媒体のリーダーである場合、入力装置32は該媒体の書き出す装置でもありうる。装置32によって該媒体に書き込まれるデータとして、限定するものではないが、温度又は湿度などの分析に関係がある環境情報、並びに診断結果、及び問題のサンプルの同定データが挙げられる。
システム10は、好ましくは、入力装置32及びディスプレイ20と連絡して、ユーザーの命令を受け入れ、かつサンプルの分析を制御するマイクロプロセッサー回路を含む。システム10は、さらに、パーソナルコンピューター、携帯情報端末などの遠隔ロケーション、又はコンピューターサーバー若しくはディスクファーム等のネットワーク記憶装置へのデータの抽出を可能にするコンピューターネットワーク接続を含みうる。コンピューターネットワーク接続はワイヤレスでよく、又は例えばイーサネット(登録商標)、ファイヤーワイヤー、又はUSB接続を利用してよい。システム10は、直接専用プリンターケーブルを介して、又はワイヤレスで、或いはネットワーク接続によって、プリンターに接続されていてもよい。システム10は、さらに、ユーザーが何らかの他の関係者、例えばヘルスケアプロバイダー、又は診断施設、又は患者に分析結果を直接e-メールできるように構成されうる。
【0014】
図2Aは、システム10の例示的なカートリッジ受取要素12の分解図を示す。この実施形態では、受取要素12は、8つのサンプルレーンを有するマルチサンプルカートリッジを受け入れるように構成されている。8本のPCRチューブ42は、該カートリッジの各レーン内のサンプルと別々に反応するための試薬を含有しうる。該試薬は典型的に、PCR酵素、プローブ及び/又はプライマー等の凍結乾燥試薬である。該試薬は室温以上のような温度にさらされると、有意な変性を経験しうるので、好ましくはPCRチューブ42を保冷して試薬寿命を延長する。該管を保冷する好ましい方法はペルチェ(Peltier)装置(図2Aに示されない)による。PCRチューブ42は、好ましくは集団的な取付けの容易さのためPCR-ストリップ44に取り付けられる。また、PCRチューブ42は、該PCRチューブを受け入れるように構成されたいくつかの凹部43を有する棚上に置かれるように示されている。凹部43をペルチェクーラー等の冷却装置内に配置して、該凹部内に管が位置しているときPCRチューブを冷たく保つことができる。いくつの実施形態では、凹部は、そのリムと同じ深さにPCRチューブを受け入れるのに十分な深さの穴である。
【0015】
以下、カートリッジ受取要素の残部について、システム10のカートリッジ受取要素12にマルチサンプルカートリッジ18を挿入する手段を示す図2Bとからめて述べる。挿入可能カートリッジ18は、少なくとも1つのマイクロ流体構成要素を含み、これは、受取要素12に挿入されると、加熱要素及び制御回路と関連して、1つ以上のポリヌクレオチド含有サンプルと1つ以上の試薬を受け入れて該サンプルと該試薬を反応させて、その中の1つ以上のポリヌクレオチドの引き続く分析に適した調製サンプルの形態で1つ以上のPCRチューブに送達する。カートリッジ18の特徴は、本明細書の別のところでさらに記載される。
カートリッジ受取要素12は、好ましくは登録機構によって、カートリッジの効率的な登録を保証する手段を含む。本明細書でさらに述べるように、カートリッジ上の機械的キーは登録を容易にし、かつ1つ以上の他の機械的機能と共に使用されうる。図2A及び2B中、調整可能レバー40は、カートリッジを確実にカートリッジ受取要素12内にしっかり接触させる手段である。このような接触を達成できる多くの構成のレバーがあるが、図2A及び2Bに示される実施形態では、カートリッジを矢印で示される方向にカートリッジ受取要素に水平に挿入し、受取要素の後方に押して、機械的キーとかみ合わせてから、カートリッジを支持する様にレバー40をカートリッジの下側に上昇させる。レバー40はカム上で旋回して、カートリッジとかみ合ったときにさらに硬直にすることができる。図2Aに示される実施形態では、レバー40に取り付けられた棚49がカートリッジのさらなる支持を与えうる。他の登録機構も想定され、例えば、1つ以上のクリップ、磁気引力、カートリッジを置くための陥凹穴、及び例えばねじれ運動によって可逆的にカートリッジが固定されるようになるスナップ-フィット部品の利用、雄型付属品、例えば相補的な1つ以上の雌型付属品に挿入されるときのカートリッジ又は受取要素のどちらかの1つ以上の可撓性突出部のわずかな変形によって達成されるカートリッジのロッキングが想定される。他の実施形態では、カートリッジを水平に対して10°のような角度で配置して、カートリッジのマイクロ流体構成要素内への溶解チャンバーからのサンプルの流れを促進する。該実施形態では、図4A及び4Bを参照して本明細書でさらに述べるように、溶解チャンバー内の197のような傾斜のあるロート構造を配備することはあまり重要でない。
カートリッジ受取要素は、好ましくは、制御可能かつカートリッジの選択した部分に局在化される熱を送達できる熱源をも含む。図2A及び2B中のプラットフォーム46は、分析中にカートリッジが留まり、かつカートリッジと熱的連絡をする複数の熱アクチュエーターを有する領域である。複数の熱アクチュエーター、例えば抵抗ヒーターはカートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成される。図示しないマイクロプロセッサー制御回路はプラットフォーム46と連絡し、ユーザーの命令を受け取ると、選択された熱アクチュエーターに電流を流して、該選択された熱アクチュエーターに隣接するカートリッジの1つ以上の領域を熱くさせる。他の好ましい実施形態では、熱源46がPCボード47上に留まる。従って、総じて、要素46及び47は、カートリッジを加熱する典型的手段に過ぎない。
【0016】
別の好ましい実施形態では、保護バリア48が種々の内部の仕組み及びその内部成分からシステム10のユーザーを保護する。
図2C及び2Dは、例示的なカートリッジ受取要素12の断面図を示し、カートリッジ18への試薬と熱の送達を促進する種々の構成要素を示している。特に、熱源46とカートリッジ18との間の良い熱接触を維持するための1つの方法は、カートリッジ18に圧力を加えることができるユーザー作動型ハンドル51を組み入れることである。図2Cに示される実施形態では、ハンドル51はカム軸52に取り付けられている。このカム軸52は、固定出っ張り53に対して旋回すると、プランジャー54を押し下げ、該プランジャーに取り付けられたプラットフォーム55をカートリッジ18に反して押下する。図示される実施形態では、プラットフォーム55は、本明細書でさらに述べるように、カートリッジ18の溶解チャンバー内の液体サンプルに熱を加えさせうる接触熱源を有する。プラットフォーム55上に及ぼされる圧力は、プラットフォーム55内の熱源とカートリッジ18の上面との間に良い接触を生じさせるのみならず、熱源46と、カートリッジ18の下側のマイクロ流体構成要素との間の良い熱接触をも生じさせる。カムとプランジャー54の作用も働いて、処理中のカートリッジ18の位置の安定を確実にする。好ましい実施形態では、プラットフォーム55と連絡しているセンサーが、過度の圧力、例えば過度の歪み、応力、又は損傷を生じさせるであろう圧力がカートリッジ18に加えられないように、プランジャー54の微調整をもたらす。当業者には、カムとプランジャーの組立てだけが、良い熱接触を生じさせる目的でカートリッジ18に圧力を印加できる機械的配置でないことが分かるだろう。レバーと同様の機構を含む他の配置が想定されるように、例えば、プレスが想定され、カートリッジ上の該プレスの高さを変えるための調整用ネジを利用する。
【0017】
好ましい実施形態では、システム10の各カートリッジ受取領域は、それ自体独立して制御可能な、接触加熱されるマイクロ流体カートリッジの領域に圧力を加えるための機構を有する。従って、図1中、各カートリッジ受取領域上の各ハンドルは、ユーザーによって他のハンドルと独立して押し下げられる。図2A〜2Cからは分からないカートリッジ受取領域の他の局面は、加圧しながらカートリッジを強固に保つためにカートリッジ下のプラットフォームの使用を含む。
当業者には分かるように、固定サンプルに正確な体積の液体試薬を繰り返し送達するため多くの機構が存在する。一実施形態では、機構は純粋に手動であり、ユーザーが能動的に分配ヘッドを上げ下げすることを含む。好ましい実施形態では、分配ヘッドはロボット制御下にある。さらに別の実施形態では、分配ヘッドは水力学を利用する。
図2Dは、マイクロ流体カートリッジに試薬を送達するための例示的な機構を示す。ロボット制御下であって、かつ例えばユーザーの命令下で、前記ヘッドを操作するように構成されたマイクロプロセッサーから制御シグナルを受信する分配ヘッド61は、1つ以上の試薬源と連絡している。1つ以上のキャピラリー32が1つ以上のノズル63に、それぞれ遊離緩衝液、洗浄緩衝液、及び中和緩衝液などの1つ以上の試薬を供給する。ここで、前記1つ以上の試薬は、好ましくは図1に示されるように、システム10の外側ハウジング上に貯蔵される。図2D中の矢印で示されるように、分配ヘッド61は垂直方向の自由度を有し、試薬を送達する前と後にそれぞれカートリッジの内部に分配ヘッドが入り込むこととカートリッジから取り出すことを可能にする。図2Dの2枚のパネルは、カートリッジから離れた位置にあるノズルと、試薬を送達しているときのノズルを示す。さらに、かつ好ましくは、分配ヘッド61は、分配ヘッドが、例えば、1つより多くのレーン又はマルチサンプルカートリッジの1つより多くのカートリッジに試薬を送達できるように、横向き−図2Dの紙面に垂直−の自由度を有する。さらに、横向きの動きは、分配ヘッドを1つより多くのカートリッジ位置、例えば1つより多くのカートリッジ受取要素に行かせるという目的のためでありうる。
【0018】
試薬分配器は、好ましくは、かつ場合により、それが下がり過ぎてノズル63若しくはカートリッジ、又は両者を破損するのを阻止する検出機構を有する。多くの検出機構が本発明の実施と調和し、例えば、接触検出(例えば、電流の発生又は中断を検出することによって)、磁気検出、光学検出を使用でき、或いは分配ヘッドが移動し過ぎるのを停止させる機械的スペーサーを利用しうる。さらに図2Eに示されるように、例示的な検出機構は光学断流器を用いる。該機構は分配ヘッドとカートリッジとの間に、どちらも破損することなく良いシールを確実に得るのに有効である。この実施形態では、固定組立品に取り付けられたスクリュー66、フラグ65及び光学断流器64が分配ヘッドと協働する。分配器がマイクロ流体カートリッジに接触すると、スクリューが光学断流器の検出位置にフラグを押し上げ、分配ヘッドを制御するモーターにフィードバックを供給し、ヘッドの動きを止めさせる。
前述したように、分配ヘッドのノズルがマイクロ流体カートリッジ上の試薬入口との良い接触を生じさせることが好ましい。これは、技術上既知のいくつかの異なるアプローチで達成される。図2Fに例示的な実施形態が示され、図2Eと関連して見ることができる。図2Fの左側パネルには、ガスケット67がマイクロ流体カートリッジ18の1対の隣接試薬入口の上(例えば隣接レーン上)に平衡を保って示されている。照準要素68はガスケットの自動位置決めを容易にしうる。図2Fの右側パネルは、マイクロ流体カートリッジの1対の隣接試薬入口と接触しているガスケット67の破断図を示す。試薬入口間の水平離隔距離は1〜2mmでよい。カートリッジの下側のノッチ69は、カートリッジ受取要素内で位置決めするためカートリッジによって使用される機械的キーを例示する。試薬分配器の管、例えばキャピラリーも破断図に示され、それぞれの試薬入口に沈められる先端63を有する。図2Fの右側パネルに示される構成は分配器とカートリッジとの間の良いシールを例示し、試薬サンプルの漏れを回避する目的のため望ましい。システム10の内部における試薬の反復性の漏れは、錆による構成部品の急速な分解、カビの蓄積、及び水に基づく他の被害をもたらしうることから望ましくない。漏れは、最終的にマイクロ流体装置に不正確(不十分)な量の試薬が配備され、不良のサンプル調製品質をもたらしうることからも望ましくない。
【0019】
(マルチサンプルカートリッジ)
本明細書で述べる方法は、それぞれ図3A、3B、及び3Cに示されるように、マルチサンプルカートリッジ700又は720を用いて実施される。マルチサンプルカートリッジを用いて、少なくとも第1のサンプルと第2のサンプル(ここで、前記第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチド(相互に同一又は異なってよい)を含有する)を前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換することができる。
マイクロ流体回路708、710の概要が示されているマルチサンプルカートリッジ700は、相互別々に添付されている、少なくとも第1のマイクロ流体カートリッジ704と第2のマイクロ流体カートリッジ706を含む。マルチサンプルカートリッジ720は別の実施形態であり、723と725のようなサンプルレーンが対になって群化し、かつ第1のサンプルレーン対を有する少なくとも第1のマイクロ流体カートリッジ724と、第2のサンプルレーン対を有する少なくとも第2のマイクロ流体カートリッジ724とを含む、前記第1及び第2のマイクロ流体カートリッジは相互別々に添付されている。サンプルレーンは、本明細書で述べる方法でサンプルを調製できる、独立して制御可能な一組の要素である。レーンは、少なくとも試薬入口、サンプルルアー、マイクロ流体構成要素、及び廃棄物チャンバーを含む。このことは、マイクロ流体カートリッジと関連して本明細書でさらに述べる。
「別々に添付される」とは、両カートリッジが一緒にマイクロ流体システムのカートリッジ受取要素内に置かれるが、少なくとも第1カートリッジと第2カートリッジをばらばらにして別々に使用できるように、一方のカートリッジが他方のカートリッジにつながれていることを意味する。切り離しを容易にするため、例えば、2つのカートリッジ間に切り目線を作製してもよい。
図3Aにおいて、好ましくは第1のマイクロ流体カートリッジ704と第2のマイクロ流体カートリッジ706はそれぞれ本明細書でさらに述べるとおりであり(例えば図4参照)、第1のマイクロ流体カートリッジは第1のサンプルを受け入れ、かつ第2のマイクロ流体カートリッジは第2のサンプルを受け入れる。従って、第1のカートリッジ704は、少なくとも第1のマイクロ流体構成要素708を含み、かつ第2のカートリッジ706は少なくとも第2のマイクロ流体構成要素710を含む。
図3Bにおいて、好ましくは第1のマイクロ流体カートリッジ714の各サンプルレーンと第2のマイクロ流体カートリッジ716の各サンプルレーンはそれぞれ本明細書でさらに述べるとおりであり(例えば図4参照)、第1のマイクロ流体カートリッジは第1及び第2のサンプルを受け入れ、かつ第2のマイクロ流体カートリッジは第3及び第4のサンプルを受け入れる。従って、第1のカートリッジ714は、少なくとも第1及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、かつ第2のカートリッジ716は少なくとも第3及び第4のマイクロ流体構成要素を含む。
好ましくは、マルチサンプルカートリッジは、本技術で使用されるような96-ウェルプレートと同じ大きさである。好ましくは、マルチサンプルカートリッジは、図3Aに示されるように8つのカートリッジを有し、又は図3Bに示されるように対になって配置される8つのレーンを有する。異なる数の独立したカートリッジ及び/又はレーンを有する他のマルチサンプルカートリッジが本明細書で述べる発明及び装置と矛盾しないことが分かるだろう:このような数として、4、6、10、12、又は16の単レーンカートリッジ、及び2、3、5、6、又は8の2-レーンカートリッジが挙げられる。さらに、4、6、又は8のレーンでカートリッジを構成することもでき、本明細書の説明と一致する。
なおさらに好ましくは、マルチレーンカートリッジの各カートリッジは、各カートリッジ用のPCRチューブを有して構成され、各管は相互に、重心と重心が9mm、又は約9mm離れており、かつ好ましくは個々のPCRチューブは相互にストリップで連結されているので、すべての管を同時にマルチレーンカートリッジから取り外すことができる。
本マルチサンプルカートリッジは、さらにかつ場合により、ユーザーが誤ってマイクロ流体システム内にマルチサンプルカートリッジを挿入することを防止し、かつ図1のシステム10のカートリッジ受取要素12のような器具とのカートリッジの正確なかみ合いをも保証する機械的キーを有してよい。好ましくは、機械的キーは、まずシステム10に挿入される、カートリッジ700の縁又はカートリッジ720の縁上に設計される。該キーは、例えば、図3Aに示されるようなマルチサンプルカートリッジの単一の切り欠き角702を含んでもよく、或いは図3Bのカートリッジ720の縁にカットされた数個、例えば2個以上のノッチ722を含んでもよい。キーが1つ以上のノッチを含む場合、図3Bに示されるように、又は各カートリッジの各レーンと関係する少なくとも1つのノッチがあることが好ましい。
マルチサンプルカートリッジ700及び720は、それぞれ、サンプルを導入するための1つ以上のルアーを有する。図3Aには、それぞれ第1のカートリッジ及び第2のカートリッジと関連するルアー712及びルアー714がある。図3Bには、ルアー732と734がそれぞれ第1のレーン723および第のレーン725と関連している。図3A及び図3Bにおいて、隣接するカートリッジ又はレーンのルアーは相互に片寄っている。このような片寄りは、ある実施形態の設計の特徴であり、マイクロ流体回路の効率的な構成を助長するが、マルチサンプルカートリッジの必要条件ではない。
マルチサンプルカートリッジ700は、第1のカートリッジ704及び第2のカートリッジ706の各カートリッジ用のそれぞれ第1の試薬入口716及び第2の試薬入口718をも有する。マルチサンプルカートリッジ720も各サンプルレーンに関係する試薬入口736を有する。
マルチサンプルカートリッジ720は、さらにかつ任意に、カートリッジに試薬を分配するとき、液体試薬分配器ヘッドの位置決めを容易にする1つ以上の照準要素730を含んでよい。分配器ヘッドとからめて使用され、かつ当業者によってシステム10に組み込まれうるような光学位置決めシステムと共に該照準要素を使用することができる。
【0020】
図3C-1、3C-2、3C-3を含む図3Cは、マルチサンプルカートリッジの代替実施形態を示し、単一のマイクロ流体基板内に複数のレーン(8レーンが図示)が作製されている。この実施形態では、チャンバーと基板も必須であることが好ましい。図示される実施形態では、チャンバーが2対の列に配置され、4つのサンプル溶解チャンバー742が別個の入口と共にあり、列毎に1つの廃棄物チャンバー744がある。従って、各列のチャンバーは4つのサンプルレーンとして働きうる。好ましくはこのカートリッジは各溶解チャンバー内に傾斜したロートを持たない(本明細書でさらに述べるように)ので、分析中、水平に対してある角度傾けられる。図3C-1は、試薬入口746を示す、上から見たカートリッジの斜視図である(溶解チャンバーとサンプルチャンバーが保護カバーで覆い隠され、個々のサンプル入口は示されていない)。図3C-2は、概略的なマイクロ流体ネットワーク748を示す、下側から見た斜視図である。図3C-3は、カートリッジの上面の平面図を示し、各サンプル入口750とサンプルチャンバーが別個のマイクロ流体ネットワークと連絡することを示している。当業者には分かるように、本明細書でさらに述べるような図3Cの例のため、熱アクチュエーターネットワークとの連絡のようなマルチサンプルカートリッジの他の局面が達成されるだろう。図3Cの実施形態は、図3A及び3Bの実施形態と関連して示し、かつ述べたような機械的キーをも利用しうる。
【0021】
(マイクロ流体カートリッジ)
本明細書で述べるようなマイクロ流体カートリッジは、本明細書の別のところで述べるような分析方法の精神から逸脱せずに、いくつかの異なる構成の成分を採用することができる。該カートリッジは、別々にサンプルと試薬を受け入れ、該サンプルを溶解させ、該サンプルをマイクロ流体ネットワークに導入し、かつポリヌクレオチドを含有する抽出物を出口に送達するように構成される。例えば、典型的な実施形態は、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号の図1に示されており、本明細書で援用する。
図4を参照すると、典型的なマルチサンプルカートリッジ200が断面図で示されている。以下の説明は、マルチサンプルカートリッジで見られるような単一のカートリッジ又はレーンに関する。カートリッジ200は、第1の層205及び第2の層209を含む。第1の層205はマイクロ流体基板として働き、内側にマイクロ流体ネットワークが見られる。第1の層内に、マイクロ流体ネットワーク201の種々の構成要素を相互に上昇させるさらなる層207があってよい。第2の層209はしばしばマイクロ流体基板と呼ばれる。その中にマイクロ流体基板内の通気口と整列して連絡する1つ以上の穴を有するからである。第1の層205の外面には通常保護ラミネートコーティング206がある。
マイクロ流体構成要素201は、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを受け入れて調製するように構成される。カートリッジ200は、典型的には、該サンプル内の細胞を溶解させ、引き続く分析に適した形態の前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離することによって、サンプルを調製する。カートリッジ200は、該サンプル内の1つ以上のポリヌクレオチドの濃度に対して、1つ以上のポリヌクレオチドの濃度を増やし、及び/又は阻害因子の濃度を減らすこともできる。
好ましくは射出成形によって、所望のマイクロ流体カートリッジ200を作製することができる。典型的に、層205、207、及び209はポリマー材料で形成される。構成要素201の要素は、典型的に層207、205を成形(例えば、射出成形で)することによって形成される。層206は、典型的には、層205に固定され(例えば、接着的及び/又は熱的に)、構成要素201の要素をシールする可撓性のポリマー材料(例えば、ラミネート)である。接着剤を用いて層205と層209を相互に固定してよい。
例示的なカートリッジ200は、バルク溶解チャンバー264と廃棄物チャンバー269をも含む。好ましくは、この2つのチャンバーを単体として作製し、バリア199で隔てる。図4Bは、典型的に作製されるような種々のその要素と共にカートリッジ200の例示的な分解図を示す。内部のロート197は任意であり、重力下で出口穴282に向けて液体を下流に流させる傾斜面を有する。ロートの側壁195は任意であり、特定の処理プロセスを容易にする。
カートリッジ200は、さらにサンプル入口202を含み、この入口202によって、サンプル材料、好ましくは細胞を含有する液体溶液の形態のサンプル材料をバルク溶解チャンバー264に導入することができる。図4には、相互に片寄り、かつマルチサンプルカートリッジ200の隣接するカートリッジ又はレーン上に位置する2つのルアーが示されている。好ましくは、サンプル入口202は、一方向弁203を有するルアーの形態を取る。サンプル入口はサンプルをバルク溶解チャンバー264に向ける。チャンバー264内でサンプル中の細胞がバルク溶解試薬ペレット(図示せず)と接触するか、又はチャンバー264に熱を加えるか、又は熱と試薬ペレットとの接触の両適用の組合せによって、前記細胞が溶解する。サンプル入口202は、好ましくは、材料(例えば、サンプル材料と気体)をチャンバー264に入れるが、該サンプル入口によって材料がチャンバー264を出るのを制限(例えば、阻止)する一方向弁を含む。典型的には、入口は、サンプル入力装置(例えば、注射器)と番わせて気体漏れのないシールを形成するように構成された付属品(例えば、ルアー付属品)を含む。溶解チャンバー264は、典型的には約5ml以下(例えば、4ml以下)の容積を有する。典型的には、使用する前に溶解チャンバー264を気体(例えば、圧縮空気263)で満たす。
【0022】
一般に、導入されるサンプルの体積は溶解チャンバー264の総容積より少ない。例えば、サンプルの体積はチャンバー264の総容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)でよい。典型的なサンプルは、約3ml以下(例えば、約2.0ml以下、又は約1.5ml以下)の体積を有する。通常、ある体積の気体(例えば、空気)がサンプルと共にチャンバー264に導入される。典型的に、導入される気体の体積は、チャンバー264の総容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)である。サンプルと気体の体積を合わせて、チャンバー264内に既に存在する気体を加圧する。
使用する場合、バルク溶解試薬ペレットは、好ましくは、ポリヌクレオチド分子を保持するように設計されたDNA捕獲ビーズ(図示せず)のような1つ以上の粒子を含有する。粒子は、好ましくはポリヌクレオチドを(例えば、阻害因子に比べて優先的に)保持する少なくとも1つのリガンドで修飾されている。優先的にポリヌクレオチドを保持するための例示的なリガンドとして、例えばポリアミド(例えば、ポリカチオン性ポリアミド、例えばポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリ-DL-オルニチン、及びポリ-エチレン-イミン、ポリヒスチジン)が挙げられる。ポリホウ酸酸のようなリガンドもRNAを保持するために使用できる。他のリガンドとして、例えば、インターカレーター(intercalator)、ポリ-インターカレーター、副溝結合剤、ポリアミン(例えば、スペルミジン)、複数のアミノ酸を含むホモポリマー及びコポリマー、並びにその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、リガンドは少なくとも約5,000Da(例えば、少なくとも約7,500Da、又は少なくとも約15,000Da)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、リガンドは約50,000Da以下(例えば、約35,000以下、約27,500Da以下)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、リガンドはアミド結合によって粒子の表面に付着したポリ-リジンリガンドである。
特定の実施形態では、リガンドは酵素的分解、例えば、ペプチド結合を切断するプロテアーゼ酵素(例えば、エンド-及びエキソ-プロテアーゼの混合物、例えばプロナーゼ)による分解に耐性である。例示的なプロテアーゼ耐性リガンドとして、例えば、酵素攻撃に感受性のリガンドのエナンチオマーであるポリ-D-リジン及び他のリガンドが挙げられる。
【0023】
ポリヌクレオチドを保持するための粒子は、典型的に、リガンドが結合できる材料で形成される。粒子を形成できる例示的な材料として、リガンドに結合するように修飾できるポリマー材料が挙げられる。典型的なポリマー材料は、リガンドに付着するために利用できるカルボキシル基及び/又はアミノ基を供給し、或いは供給するように修飾されうる。典型的なポリマー材料として、例えば、ポリスチレン、ラテックスポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、及びそれらの誘導体が挙げられる。粒子218を形成するために使用できるポリマー材料は、米国特許第6,235,313号(Mathiowitzら;本明細書で援用する)に開示されている。他の材料として、ガラス、シリカ、アガロース、及びアミノ-プロピル-トリ-エトキシ-シラン(APES)修飾材料が挙げられる。
適切なリガンドで修飾できる例示的な粒子として、カルボキシレート粒子(例えば、カルボキシレート修飾磁気ビーズ、例えばSera-Mag磁気カルボキシレート修飾ビーズ,Part #3008050250, Seradyn、及びPolybeadカルボキシレート修飾ミクロスフェア,Polyscienceから入手可能,カタログ番号09850)が挙げられる。いくつかの実施形態では、リガンドがポリ-D-リジンを含み、ビーズがポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)を含む。
一般に、粒子の質量の、該粒子によって保持されるポリヌクレオチドの質量に対する比率は約25以下(例えば、約20以下、約10以下)である。例えば、いくつかの実施形態では、約1グラムの粒子は約100ミリグラムのポリヌクレオチドを保持する。
粒子は、典型的に約20ミクロン以下(例えば、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下)の平均径を有する。いくつかの実施形態では、粒子218は、少なくとも約4ミクロン(例えば、少なくとも約6ミクロン、少なくとも約8ミクロン)の平均径を有する。
溶解ペレット内の粒子218の密度は、典型的に少なくとも約108粒子/ml(例えば、約109粒子/ml)である。
いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が磁性である。これとは別の実施形態では、ほとんど(例えば、すべて)の粒子が磁性でない。
いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が固体である。いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が多孔性である(例えば、粒子が少なくとも部分的に粒子内に伸長するチャネルを有しうる)。
【0024】
バルク溶解チャンバー264内でサンプルに熱を加える実施形態では、チャンバー264内のサンプルの体積は、該液体の上面がチャンバー264の領域266の内面283と接触するような量である。領域266は、好ましくは平坦であり、かつ熱源から熱を受け取ることによって、その熱が該液体サンプル内の細胞の溶解を実現するように構成される。好ましくは、加熱は接触加熱により、かつ好ましくは加熱によりサンプルを55〜85℃、なおさらに好ましくは65〜75℃の温度にする。カートリッジが作られる材料は典型的に良い絶縁体なので、カートリッジの外側はサンプルの所望温度より20〜40℃、例えば30℃高い温度に達しなければならないことに注意する。
サンプルが溶解チャンバー264内で溶解した後、溶解したサンプルは出口282を通じてマイクロ流体ネットワーク201内に流れる。
なおさらに、カートリッジ200はマイクロ流体ネットワーク201と連絡する試薬入口280を含む。典型的に試薬入口280は、セプタムのような貫通可能な(pierceable)形態の入口である。システム10と関連して本明細書でさらに述べるように、試薬送達ヘッドのノズルと堅固なシールを生じさせるように、試薬入口280を構成してもよい。
カートリッジ200はさらに、調製サンプルを取り出すこと(例えば、遊離又は抽出)できる出口236を含む。出口236は、好ましくは、本技術で使用されるようなPCRチューブ(図4に示さず)内に調製サンプルを向けるように構成される。好ましくは、該PCRチューブ237は、カートリッジ200から取り外すことができ、典型的にバイオテクノロジー業界全体で使用されるものの1つであり、典型的にポリプロピレン等のプラスチック材料で製造され、かつPCRを実行するためのサーマルサイクラー等の他の実験設備、又はTMA、SDA、及びNASBA等の分析を行うための他の設備と適合するように構成される。ここで使用するようなPCRチューブは典型的に0.2mlの有効容積を有するが、0.6mlの有効容積を有することもある。本明細書で述べる方法及び装置で使うための代表的なPCRチューブは供給業者から入手可能であり、供給業者としてはUSP, Inc., San Leandro, CAが挙げられる(http://www.uspinc.com/PCRtubes.htm参照)。好ましくは、本発明で使うPCRチューブは、8本が相互に帯状に連結され、本明細書でさらに述べるようなマルチサンプルカートリッジと共に使用される。
カートリッジ200は廃棄物チャンバー269をも有し、これは入口穴270を介してマイクロ流体ネットワーク201から廃棄物を受け取る。液体が穴270を介してマイクロ流体構成要素201から廃棄物チャンバー269に流れ、穴270を通じて空気が放出されるとき、液体は泡立つ傾向を有し、通気口262からオーバーフローする。この現象を減らすため、廃棄物チャンバー269は、消泡剤(例えば、限定するものではないが、Simeticone)の1つ以上の錠剤を含んでよい。使用する場合、錠剤は典型的に直径が1〜4mmである。
【0025】
図5は、マルチサンプルカートリッジ200の下側の斜視図を示し、代表的なマイクロ流体チャネル285を有するマイクロ流体構成要素201を示す。出口236の回りにノズル284が位置し、PCRチューブのトップと番わせるように構成されることによって、マイクロ流体ネットワークからPCRチューブへのポリヌクレオチド含有サンプルの遊離中の廃棄物を最小限にする。
図6は、例示的なノズル284のクローズアップを示し、ノズル284の外輪に対して同心的な位置にある隆起した円錐状部286を示す。当業者には、本技術で使用されるようなPCRチューブの多くの異なる形状及び幾何学に合わせてこの構成をあつらえうることが分かるだろう。従って、図6に示される構成に限定されない。
【0026】
動作中、マイクロ流体構成要素201はヒーターのアレイに厳密に近接した位置にあるので、マイクロ流体構成要素の種々の要素を制御可能かつ選択的に加熱することができる。図7は、概観して、接触加熱層内に配置されたヒーターのアレイ501の概略を示し、マイクロ流体カートリッジ200のマイクロ流体構成要素201内の種々のマイクロ流体チャネル285に関連して配置されている。アレイ501の各固体要素はヒーターウェーハの伝導要素であり、外部の制御回路に直接又は間接的に連結されており、この回路は特定時間に伝導要素が電流を受け取るように制御する。中にヒーターアレイ501があるヒーターウェーハは、好ましくは、接触する等、マイクロ流体構成要素201と熱伝達状態で配置される。当業者が精通している設計及び製造技術を用いてヒーターアレイ501を作製することができ、例えばPCT/US2005/015345、並びに米国仮出願第60/567,174号、及び第60/645,784号に記載されている(すべてその全体を本明細書で援用する)。
ヒーターアレイ501は、好ましくはマルチサンプルカートリッジ200の個々のカートリッジ又はレーンが別々かつ相互独立に加熱されるように構成されうる。他の実施形態では、ヒーターアレイ501は、カートリッジ又はレーンが対又は集団で、例えば8-レーンカートリッジで一度に4レーンが加熱されるように構成される。
図8は、マイクロ流体ネットワーク201の一部の上に重ねられたヒーターアレイ501の一部の拡大図を示す。図8で分かるように、ヒーターアレイ501の異なる部分は異なる厚さを有する。抵抗加熱の原理によれば、アレイ501の薄い部分は、所定電流で最も熱くなるだろう。505のような要素は加熱を必要とするマイクロ流体要素を持たない、マイクロ流体構成要素201の領域を横切るスペーサーとして働く電流キャリアである。その結果、505のような要素は、アレイ501の全要素の中で最も少ない量の熱を発生する。要素503は中程度の加熱を達成し、典型的に300μmの厚さであるが、280〜320μmの範囲、また250〜350μmの範囲でもよい。要素507及び509は最高の加熱を達成し、ゲート及び弁のようなマイクロ流体構成要素と直接隣接して配置される。要素507及び509は図9でさらに詳細に示される。
図9は、図8の一部のさらなる拡大図を示し、要素507の構造を示す。この構造は、ヒーターアレイ要素の単位長さ当たり最大量の熱を生成する、微小寸法の抵抗ヒーターを有する。ワイヤーの厚さは、典型的に40〜120μm、好ましくは50〜100μm、さらに好ましくは60〜90μm、なおさらに好ましくは70〜80μmである。
【0027】
(マイクロ流体構成要素)
図10に示されるように、マイクロ流体構成要素201は、典型的にいくつかのチャネル、例えば、0.1〜50μlの範囲の体積の液体を送達するように構成されたチャネル234を含む。構成要素201は、好ましくは少なくとも1つの弁又はアクチュエーター、少なくとも1つのゲート、少なくとも1つの穴、少なくとも1つの通気口、少なくとも1つのフィルター、及び少なくとも1つの廃棄物チャンバーから成る群より選択される1つ以上のマイクロ流体要素をも含む。このようなマイクロ流体要素の種々な構成が本明細書で述べる方法の実施に適したマイクロ流体ネットワークと調和するので、図10に示される実施形態に限定する意図ではない。従って、当業者には、図10のマイクロ流体要素の構成は本発明を実施するために立証される1つの構成に過ぎず、本明細書内では明瞭に示していないが、マイクロ流体要素の他の変形が本発明の範囲内であることが分かるだろう。例えば、マイクロ流体構成要素の別の構成が図2に示され、かつ2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号(本明細書で援用する)の添付テキストに記載されている。
図10は構成要素201の平面図を示し、種々のマイクロ流体要素に以下のように符号が付されている:弁(Vi)、ゲート(Gi)、穴(Hi)、通気口(V)、及びフィルター(C.)。ここで、iは、特定タイプの要素の例が1つより多くある場合の整数を表す。図10中、他の図15〜17と同様に、マイクロ流体回路のいくつかの部分は寸法が微小すぎてはっきり現われず、ギャップが明白である。このようなギャップを埋める例示的な構造は、例えば、図21、22、及び24の種々のパネル図を見ることから明らかになる。構成要素201とカートリッジ200との関係は少なくとも以下のとおりである。サンプル入口282は穴H2の上(必ずしも直接上でない)に位置づけられて穴H2と連通している。試薬入口280は穴H1の上に位置づけられて穴H1と連通している。出口270は穴H4の上に位置づけられて穴H4と連通している。出口236は穴H3の上に位置づけられて穴H3と連通している。
マイクロ流体構成要素201の種々の要素は実質的に層207と層205の間に規定されるが、適用可能な場合、層209と連通するように構成される。
チャネル204は穴H1とゲートG5の間をゲートG4経由で伸長する。チャネル206はゲートG5と弁V4の間を伸長する。チャネル208とチャネル211は穴H1とゲートG5の間を伸長し、チャネル206とも連結される。チャネル208とチャネル211はゲートG3と弁V3で相互に隔てられている。ゲートG2はチャネル208上に位置する。
チャネル213はゲートG5から接合部259まで伸長する。チャネル239は接合部259からフィルターC.まで伸長する。フィルターは典型的にビーズカラムである。
チャネル210はフィルターC.から接合部215まで伸長する。ゲートG6は接合部215を混合チャネル212から隔てる。混合チャネル212はゲートG6から穴H3まで伸長する。従って、組み合わせて、チャネル210とチャネル212が、ろ過されたサンプルを穴H3に進ませ、図6に示されるようなノズル284を介して穴236を通ってPCRチューブ(図示せず)内に進ませる。混合チャンバー212は10〜15μlのサンプルを保持するための容量を有し、該チャネル内のターンの数を変えることによって、当該範囲内の特定体積を保持するように構成されうる。
チャネル234は、穴H2から弁V1を経由して一方向に接合部259まで伸長し、穴H2からゲートG2を経由して他方向に穴H4まで伸長する。
チャネル236は接合部257から、弁V2とゲートG1で隔てられている接合部215まで伸長する。
【0028】
ここで、マイクロ流体構成要素201の種々の要素について順次説明する。
(ろ過要素)
図11は、本明細書で述べるようなマイクロ流体構成要素で使うためのろ過要素250、例えばビーズ捕獲フィルター又はビーズカラムを示す。図3を参照すると、マイクロ流体構成要素201の層205、207、及び209が示される。ろ過要素250は、第1セットの条件(例えば、第1の温度及び/又は第1のpH)下でサンプルのポリヌクレオチドを保持し、かつ第2セットの条件(例えば、第2の、より高い温度及び/又は第2の、より塩基性のpH)下で前記ポリヌクレオチドを遊離するように構成された複数の粒子218(例えば、ビーズ、DNA捕獲ビーズ、又は微粒子、例えばミクロスフェア)を保持する。典型的に、ポリヌクレオチドはサンプル中に存在しうる阻害因子に比べて優先的に保持される。粒子218は保持部材216(例えば、カラム)によって拘束され、入口265と出口267との間を移動するとき、ポリヌクレオチド分子が前記保持部材216(例えば、カラム)を通過しなければならない。
典型的には、粒子218上のリガンドは約9.5以下(例えば、約9.0以下、約8.75以下、約8.5以下、好ましくは7.0より高い)のpHを有する液体からポリヌクレオチドを保持する。サンプル溶液がろ過要素250を通じて移動するので、ポリヌクレオチドは保持されるが、液体及び他の溶液成分(例えば、阻害因子)はほとんど保持されず(例えば全く保持されず)、ろ過要素を出る。一般に、pHが約10以上(例えば、約10.5以上、約11.0以上)のとき、リガンドはポリヌクレオチドを遊離する。結果として、リガンド修飾粒子からポリヌクレオチドが周囲の液体中に遊離されうる。
フィルター219は、典型的にはポリカーボネートで製造され、かつ典型的には、用いる最小粒子より約1〜2μm小さい細孔サイズを有し、粒子218がろ過要素の下流に通過するのを阻止する。チャネル287はフィルター219を出口267と連結する。フィルター219は入口265の断面積より大きい表面積を有する。例えば、いくつかの実施形態では、フィルター219の表面積の入口265の断面積(断面積は通常チャネル214の断面積とほぼ同じ)に対する比率は少なくとも約5(例えば、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約50)μm2である。いくつかの実施形態では、フィルター219の断面積は少なくとも1mm2(例えば、少なくとも約2mm2、少なくとも約3mm2)である。
いくつかの実施形態では、入口265及び/又はチャネル214の断面積は約0.25mm2以下(例えば、約0.2mm2以下、約0.15mm2以下、約0.1mm2以下)である。ろ過要素を通って流れる材料にフィルター219によって提供される大きな表面積は、処理領域のボイドボリューム(後述する)の有意な増加を回避しながら目詰まり防止を助ける。
典型的には、入口265とフィルター219との間の総容積(粒子218を含む)は約15μl以下(例えば、約10μl以下、約5μl以下、約2.5μl以下、約2μl以下)である。例示的な実施形態では、総容積は約2.3μlである。いくつかの実施形態では、粒子218はろ過要素の総容積の少なくとも10%(例えば、少なくとも約15%)を占める。いくつかの実施形態では、粒子218は処理チャンバー220の総容積の約75%以下(例えば、約50%以下、約35%以下)を占める。
【0029】
いくつかの実施形態では、液体によって占有され得るろ過要素の容積(例えば粒子218間の隙間を含む、処理領域220のボイドボリューム)は総容積から粒子によって占有される容積を引いた容積にほぼ等しい。典型的に、ろ過要素のボイドボリュームは約10μl以下(例えば、約7.5μl以下、約5μl以下、約2.5μl以下、約2μl以下)である。いくつかの実施形態では、ボイドボリュームは約50ナノリットル以下(例えば、約100ナノリットル以下、約250ナノリットル以下)である。例示的な実施形態では、ろ過要素の総容積は約2.3μlである。例えば、例示的な実施形態では、ろ過要素の総容積が約2.3μlで、粒子によって占有される容積が約0.3μlで、かつ液体に占有され得る容積(ボイドボリューム)が約2μlである。
いくつかの実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は、ろ過要素のボイドボリュームより実質的に小さい。例えば、いくつかの実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は、ボイドボリュームの約35%以下(例えば、約25%以下、約20%以下)である。例示的な実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は約500ナノリットルである。
フィルター219は典型的に幅が粒子218の直径より小さい細孔を有する。例示的な実施形態では、フィルター219は約8ミクロンの平均幅を有する細孔を有し、かつ粒子218は約10ミクロンの平均径を有する。
複数の表面修飾粒子で形成された保持部材を有するとしてろ過要素について述べたが、他の構成も使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、ろ過要素は、ポリヌクレオチドが通過する複数の開口(例えば、細孔及び/又はチャネル)を有する多孔性部材(例えば、フィルター、多孔性膜、又はゲルマトリックス)として構成される保持部材を含む。多孔性部材の表面は、優先的にポリヌクレオチドを保持するように修飾される。例えばOsmonicsから入手可能なフィルター膜は、表面修飾して処理領域220内でポリヌクレオチドを保持するために使用しうるポリマーで形成される。いくつかの実施形態では、処理領域220は、サンプルが通過する複数の面(例えば、壁又はバッフル)として構成される保持部材を含む。壁又はバッフルは優先的にポリヌクレオチドを保持するように修飾される。
【0030】
(チャネル)
マイクロ流体構成要素201のチャネルは、典型的に少なくとも1つの1mm以下の断面寸法を有する。例えば、ネットワーク201のチャネルは約1mm以下(例えば、約750ミクロン以下、約500ミクロン以下、約250ミクロン以下)の幅及び/又は深さを有し、かつ少なくとも1μmの厚さ、好ましくは少なくとも10μmの厚さ、さらに好ましくは少なくとも100μmの厚さである。構成要素201のチャネルは典型的に少なくとも約0.375μl(例えば、少なくとも約0.750μl、少なくとも約1.25μl、少なくとも約2.5μl)の液体を保持する。いくつかの実施形態では、チャネルは約7.5μl以下(例えば、約5μl以下、約4μl以下、約3μl以下)の液体を保持する。
【0031】
(弁)
弁は、弁の一方の側(例えば、弁の上流)の位置からチャネルに沿って材料を弁の他方の側(例えば、弁の下流)の位置に通過させる、通常は開いた状態を有する構成部品である。作動時、弁は、弁の一方の側から他方の側へチャネルに沿って材料が通過するのを阻止する閉じた状態に移行する。例えば、図12に示される弁V1は、第1の温度では相対的に不動性で、第2の温度で可動性である、熱に反応する物質(thermally responsive substance)(TRS)の塊251を含む単弁である。チャンバー253は塊251と気体連絡する。チャンバー253内の気体(例えば、空気)を加熱し、かつTRSの塊251を前記第2の温度に加熱すると(両方とも例えば図7〜9に示されるようなヒーターアレイの抵抗ヒーターを利用して)、チャンバー253の気体圧力が塊251をチャネル204内に動かして、材料がチャネルに沿って通過するのを妨げる。構成要素201の他の弁はV1と同一構造を有し、同一様式で作動する。
TRSの塊は本質的に固体の塊でよく、又は協力して通過を妨げる、より小さい粒子の凝集物でよい。TRSに好適な材料の例として、共晶合金(例えば、はんだ)、ワックス(例えば、オレフィン)、ポリマー、プラスチック、及びその組合せが挙げられる。第1及び第2の温度は、カートリッジ200のポリマー層のような材料を傷つけるには不十分な高さである。通常、第2の温度は約90℃未満であり、第1の温度は第2の温度未満(例えば、約70℃以下)である。
本発明で使うための弁は、二重弁又は単弁でよい。図13A及び13Bで見られるように、二重弁Vi'も弁の一方の側(例えば、弁の上流)の位置からチャネルに沿って材料を弁の他方の側(例えば、弁の下流)の位置に通過させる、通常は開いた状態を有する構成部品である。例として図13A及び13Bの二重弁V11'を考えると、二重弁Vi'は、相互にチャネルのどちらかの側に隔てられたTRS(例えば、共晶合金又はワックス)の第1及び第2の塊314、316を含む。典型的に、TRS塊314、316は相互に片寄っている(例えば、TRS塊の幅の50%以下の距離で)。開いた弁を通って移動する材料は第1及び第2のTRS塊314、316の間を通過する。各TRS塊314、316は、典型的に気体(例えば、空気)を含むそれぞれのチャンバー318、320と関係づけられる。
二重弁Vi'のTRS塊314、316及びチャンバー318、320は、好ましくは図7〜9に示されるような熱源ネットワークの対応する熱源と熱接触している。対応する熱源を作動させると、TRS塊314、316がより可動性の第2の状態(例えば、部分的に溶融した状態)に移行し、チャンバー318、320内の気体の圧力が高まる。この気圧がTRS塊314、316にチャネルC11を横切らせて弁HV11'を閉じる(図13B)。典型的には、塊314、316は少なくとも部分的に結合して塊322を形成し、チャネルC11を遮断する。
8ほどの多くのサンプルレーン又はカートリッジをマルチサンプルカートリッジに適合させるため、カートリッジ上に、有効空間を少なく取るように設計することができる。これは、TRSを含有するチャネルに通気口を加えることによって達成される。
【0032】
(ゲート)
ゲートは、ゲートの一方の側の位置からチャネルにゲートの他方の側の位置に材料を通さない、通常は閉じた状態を有する構成要素である。典型的には、ゲートは作動して(例えば、開いて)、アクチュエーターのチャンバー内に生じた圧力をマイクロ流体構成要素に入らせる。作動時、ゲートは開いた状態に移行し、材料がゲートの一方の側(例えば、ゲートの上流)からゲートの他方の側(例えば、ゲートの下流)に通される。例示的なゲート構造はアクチュエーターと共に図12に示されている。例えば、ゲート242は、接合部255とチャネル240の間の材料の通過を遮断するように位置づけられたTRSの塊271を含む。塊271を第2の温度に加熱すると、塊の状態が変化して(例えば、融解、分散、断片化、及び/又は溶解によって)、接合部255とチャネル240の間の材料の通過を許容する。
ゲートは、典型的には技術上公知のマイクロ流体装置内のアクチュエーターで活性化される。本発明では、ゲートは、好ましくは試薬入口のような入口からの圧力によって作動する。アクチュエーターは、構成要素201の1つの場所と別の場所の間で材料(例えば、サンプル材料及び/又は試薬材料)を動かせる気圧を供給する構成要素である。例えば、図12を参照すると、アクチュエーター244は、中に熱膨張性材料(thermally expansive material)(TEM)の塊273を有するチャンバー272を含む。加熱されると、TEMが膨張することによってチャンバー272内の自由容積を減らし、チャンバー272内の塊273の周囲の気体(例えば、空気)を加圧する。いくつかの実施形態では、アクチュエーター244は、アクチュエーターと接合部255の間に約2.1×104Pa(3psi)(例えば、少なくとも約2.8×104Pa(4psi)、少なくとも約3.4×104Pa(5psi))より高い差次的な圧力を生成できる。
外部源からの圧力を用いて、本発明のマイクロ流体構成要素のゲートを閉じた状態から開いた状態に開かせることができる。本発明では、ゲートは、好ましくは本システムで供給される外部圧力を用いて試薬入口から種々の緩衝液を押し通すことによって開かれる。
【0033】
TEMは、好ましくは図12に示されるように担体277内に分散した複数の密閉された液体レザバー(例えば、球体)275を含む。典型的に、液体はケーシング(例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレート等のモノマーで形成されたポリマーケーシング)内に密閉された高蒸気圧の液体(例えば、イソブタン及び/又はイソペンタン)である。担体277は、レザバー275をチャネル240に沿って通過させずに該レザバー275の膨張を可能にする特性(例えば、より高温で軟化(例えば、融解)するための可撓性及び/又は能力)を有する。いくつかの実施形態では、担体277はワックス(例えば、オレフィン)又は適切なガラス転移温度を有するポリマーである。典型的に、レザバーは、TEMの少なくとも約25質量%(例えば、少なくとも約35質量%、少なくとも約50質量%)を構成する。いくつかの実施形態では、レザバーがTEMの約75質量%以下(例えば、約65質量%以下、約50質量%以下)を構成する。好適な密閉液体レザバーはExpancel(Akzo Nobel)から得られる。
TEMが加熱されると(例えば、少なくとも約50℃の温度に(例えば、少なくとも約75℃、少なくとも約90℃に))、液体が気化して各シールレザバー及び塊273の体積を増やす。担体277が軟化し、塊273を膨張させる。典型的に、TEMは作動中約150℃未満(例えば、約125℃以下、約110℃以下、約100℃以下)の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、TEMの体積は少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍)ほど膨張する。
本発明で使うゲートは単ゲート、又は混合ゲートでよい。混合ゲートは2容量の液体を合わせる(例えば、混合させる)ことのできる構成要素である。
【0034】
(通気口)
通気口は、気体(例えば、空気)、例えば構成要素201内の液体の移動によって置換された気体をチャネルから出させ、同時にチャネルに液体が入るのを制限(例えば、阻止)する構造である。こうして通気口は構成要素201の排気を可能にするので、圧力強化は液体の所望の運動を阻害しない。
典型的に、通気口は疎水性通気口であり、チャネルの壁を画定する多孔性の疎水性材料(例えば、多孔性フィルター、例えばOsmonicsから入手可能な多孔性の疎水性材料)の層を含む。前述したように、疎水性通気口を用いて構成要素201内の所望の場所にサンプルの微小液滴を位置づけることができる。
疎水性通気口は、典型的にチャネルに沿って少なくとも約2.5mm(例えば、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm)の長さを有する。疎水性通気口の長さは典型的に疎水性通気口内のチャネルの深さより少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍)長い。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性通気口内のチャネル深さが約300ミクロン以下(例えば、約250ミクロン以下、約200ミクロン以下、約150ミクロン以下)である。
疎水性通気口内のチャネルの深さは、典型的に疎水性通気口のチャネルの上流と下流の深さの約75%以下(例えば、約65%以下、約60%以下)である。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性通気口内のチャネルの深さは約150ミクロンで、疎水性通気口のチャネルの上流と下流の深さが約250ミクロンである。
疎水性通気口内のチャネルの幅は、典型的に通気口からチャネルの上流と通気口からチャネルの下流の幅より少なくとも約25%広い(例えば、少なくとも約50%広い)。例えば、典型的な実施形態では、疎水性通気口内のチャネルの幅が約400ミクロンで、通気口からチャネルの上流と下流の幅が約250ミクロンである。
【0035】
(廃棄物チャンバー)
廃棄物チャンバーは、マイクロ流体構成要素内の液体の操作(例えば、運動及び/又は混合)の結果生じる廃棄(例えば、オーバーフロー)液体を受け取ることができる要素である。典型的に、各廃棄物チャンバーは、チャンバーに入る液体によって置換された気体を排気させる随伴空気通気口を有する。例示的な廃棄物チャンバーは図4の269で示される。
【0036】
(システム)
構成要素201の要素は典型的には熱的に作動する。従って、使用中、カートリッジ200は典型的にマイクロ流体構成要素201の要素(例えば、弁、ゲート、アクチュエーター、及び処理領域)を操作するように構成された加熱要素、例えば熱源(例えば、図7〜9に例示されるような抵抗熱源)のアレイと連絡している。‘連絡している’には、熱的に関連している、例えば、熱源と熱接触しているという意味が含まれる。好ましい実施形態では、図1に示されるようなシステム内のカートリッジ受取要素中にカートリッジ200を挿入でき、かつ該要素から取り外すことができる。加熱要素はカートリッジ受取要素と連絡しており、かつカートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成されている。
いくつかの実施形態では、熱源は、加熱要素と連絡している種々の制御回路に命令を伝達することによって、使用中に装置を操作するコンピューターオペレーティングシステムによって操作される。オペレーティングシステムは、所望プロトコルに従って特有の時間に熱源を作動させるように構成されたプロセッサー(例えば、コンピューター)を含む。マイクロ流体装置を操作するように構成されたプロセッサーは、2001年3月28日に提出の米国出願第09/819,105号(本明細書で援用する)に記載されている。他の実施形態では、熱源がシステム自体に必須である。
好ましくは、熱源アレイ内の熱源が、マイクロ流体構成要素201のアクチュエーター、ゲート、及び弁などの要素に対応する場所を有する。
【0037】
(凍結乾燥粒子)
バルク溶解チャンバー264の凍結乾燥試薬ペレット260は、細胞からポリヌクレオチドを遊離する(例えば、細胞を溶解させることによって)ように構成された1つ以上の化合物(例えば、試薬)を含む。例えば、ペレットは、タンパク質(例えば、プロテイナーゼ、プロテアーゼ(例えば、プロナーゼ)、トリプシン、プロテイナーゼK、ファージ溶解酵素(例えば、PlyGBS))、リゾチーム(例えば、ReadyLyseのような修飾リゾチーム)、細胞特異性酵素(例えば、B群鎖球菌を溶解させるためのムタノリシン(mutanolysin)))を低下させる(例えば、変性させる)ように構成された1つ以上の酵素を含みうる。
ペレットは、一般的に少なくとも約6ヶ月(例えば、少なくとも約12ヶ月)の室温(例えば、約20℃)寿命を有する。バルク溶解チャンバーに入る液体サンプルは凍結乾燥化合物を溶かす(例えば、再構成する)。
典型的に、ペレット264は約35μl以下(例えば、約27.5μl以下、約25μl以下、約20μl以下)の平均体積を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約8mm以下(例えば、約5mm以下、約4mm以下)の平均径を有する。典型的な実施形態では、凍結乾燥ペレットは約20μlの平均体積と約3.5mmの平均径を有する。
いくつかの実施形態では、ペレットは二者択一的又はさらに、阻害因子に比べてポリヌクレオチドを保持するための成分を含む。例えば、ペレット260は上述したように、リガンドで修飾された複数のペレット表面を含みうる。ペレット260は表面修飾粒子上の結合部位について、測定すべきポリヌクレオチドと競合するであろうポリヌクレオチドを減らす酵素を含みうる。例えば、測定すべきDNAと競合するであろうRNAを減らすため、ペレット260はRNAアーゼ(例えば、RNAseA ISC BioExpress(Amresco))等の酵素を含みうる。
例示的な実施形態では、ペレット260は凍結保護物質を含む。凍結保護物質は一般的に凍結乾燥粒子の安定性を高めるのを助け、かつ粒子の他の成分への損傷を阻止する(例えば、粒子の調製及び/又は貯蔵中の酵素の変性を阻止することによって)のを助ける。いくつかの実施形態では、凍結保護物質は1つ以上の糖類(例えば、1つ以上のニ糖類(例えば、トレハロース、メリジトース(melizitose)、ラフィノース))及び/又は1つ以上のポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)を含む。
所望どおりに凍結乾燥粒子を調製できる。典型的には、凍結保護物質と冷却した疎水性表面を用いて粒子を調製する。典型的には、凍結乾燥粒子の化合物を溶媒(例えば、水)と合わせて溶液を作ってから冷却した疎水性表面(例えば、ダイアモンドフィルム又はポリテトラフルオロエチレン表面)上に置く(例えば、ピペットによって個別アリコートで(例えば滴下))。一般に、表面の温度を液体窒素の温度近傍(例えば、約-101℃(-150°F)以下、約-129℃(-200°F)以下、約-171℃(-275°F)以下)に下げる。溶液が個別粒子として凍結する。凍結粒子を凍結させたままペレットから溶媒を除去する(例えば、昇華によって)のに十分な圧力と時間、真空にさらす。
例えば、凍結保護物質(例えば、6グラムのトレハロース)、リガンドで修飾した複数の粒子(例えば、ポリ-D-リジンリガンドで修飾したカルボキシレートの懸濁液、約2ml)、プロテアーゼ(例えば、400mgのプロナーゼ)、RNAアーゼ(例えば、30mgのRNAseA(120U/mgの活性)、ペプチドグリカンを消化する酵素(例えば、ReadyLyse(例えば、160μlの30000U/μlのReadyLyseの溶液))、細胞特異性酵素(例えば、ムタノリシン(例えば、200μlの50U/μlのムタノリシンの溶液)、及び溶媒(例えば、水)を合わせて約20mlとすることによって、粒子を調製するための溶液を調製できる。この溶液のそれぞれ約20μlの約1,000アリコートを凍結させ、上述したように脱溶媒和させて1,000個のペレットを作る。再構成するとき、このペレットを用いて典型的に全部で約200mlの溶液を作る。
一般に、粒子を作る溶液中の化合物の濃度は、マイクロ流体装置内で再構成されるときの濃度より高い。典型的に、再構成濃度に対する溶液濃度の比率は少なくとも約3(例えば、少なくとも約4.5)である。いくつかの実施形態では、この比率は約6である。
【0038】
(操作)
例示的な実施形態では、図4及び図15〜27に示され、かつ以下に述べるとおりにカートリッジ200を操作する。これらの図面は典型的な実施形態を示しており、他の実施形態、例えば、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号(その全体を本明細書で援用する)の図6〜17に示される典型的操作が本発明の範囲内であることを理解すべきである。
サンプル処理の前、構成要素201の弁は開いた状態で構成され、かつ構成要素201のゲートは閉じた状態で構成される。
流体形態の約1.5mlの臨床サンプル600をサンプル202を通じてバルク溶解チャンバー264に投入する。例えば、サンプル入口202上のルアーに相補的な付属品を有する注射器でサンプルを導入できる。他の実施形態では、導入するサンプルの量は約500μl以下(例えば、約250μl以下、約100μl以下、約50μl以下、約25μl以下、約10μl以下)である。いくつかの実施形態では、サンプルの量は約2ml以下(例えば、1.5ml以下)である。
サンプル入口202を通じて好ましくはサンプル注入と同時に過剰量(約1〜3ml、典型的に2.5ml)の空気をも、密閉されたバルク溶解チャンバー中に注入する。この段階中、流体サンプル上の空気は後に圧力が解放されるまで圧縮下にある。
液体サンプルは、存在する場合、溶解チャンバー264内でバルク溶解試薬ペレットを溶かして、試薬ペレットを捕獲する。再構成された溶解試薬(例えば、ReadyLyse、ムタノリシン)がサンプルの細胞を溶解させ始めてポリヌクレオチドを遊離する。他の試薬(例えば、プロナーゼ等のプロテアーゼ酵素)がサンプル内の阻害因子を減らし、又は変性させ始める。サンプル由来のポリヌクレオチドが、ペレットから遊離された粒子のリガンドと会合(例えば、結合)し始める。
【0039】
カートリッジは、サンプルの導入後又は導入前のどちらかに、図1のシステム10のようなシステムのカートリッジ受取要素内に置かれる。ユーザーがシステムに命令して、例えば、ユーザーインタフェース32を介して適切な命令を送達することによって、サンプル調製を進行させる。好ましい実施形態では、カートリッジ受取要素を受け入れ、かつその受入れをコントローラーに伝達した後、システムが自動的にサンプル調製を開始する。
バルク溶解チャンバー内のサンプルを細胞の化学的溶解を惹起するのに十分な温度まで加熱する。熱だけの適用によって、又は本明細書で述べるように、熱と溶解試薬の組合せによって細胞の溶解が起こりうる。チャンバーは、サンプルの導入中、典型的に約50℃以下(例えば、30℃以下)の温度である。典型的に、溶解が起こっている間、チャンバー264内のサンプルを短時間、好ましくは5〜10分(例えば、約15分以下、約10分以下、約7分以下)60〜80℃の範囲の温度に(例えば、少なくとも約65℃に、少なくとも約70℃に)加熱する。
いくつかの実施形態では、バルク溶解チャンバーに緊密に近接している加熱ランプがサンプルを加熱する。他の実施形態では、溶解チャンバー264の中身を加熱するため少なくとも部分的に光エネルギーを使用する。例えば、装置300を操作するために使用するオペレーティングシステムは、チャンバー264と熱的及び光学的に接触して配置された光源(例えば、主に赤外領域の光を発するランプ)を含むことができる。加熱の特に好ましい様式は、接触加熱、例えば、図1の例示的システム10によって達成されるように、溶解チャンバーの上面266と加熱要素を直接接触させることによる。チャンバー264は、好ましくはチャンバー264内のサンプルの温度をモニターするために使用する温度センサーを含む。熱源の出力は、センサーで決定される温度に基づいて増減される。
バルク溶解試薬は標的細胞の細胞壁を破壊し、PCR阻害タンパク質、脂質等を破壊する試薬のカクテルを含み、かつサンプル中に存在するDNA(又はRNA)を捕獲するDNA(又はRNA)アフィニティービーズ(約10ミクロンの中位径)をも有する。このプロセスは典型的には約1〜約5分かかる。
アフィニティービーズと接触しているサンプルのポリヌクレオチドは、サンプルの液体及び他の特定成分(例えば、阻害因子)に比べて優先的に保持される。典型的には、アフィニティービーズは、処理領域220に入ったサンプル内に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%)のポリヌクレオチドを保持する。
溶解及び試薬ビーズ上へのDNAの捕獲の完了後、図15に示されるように、溶解サンプルは穴H1を通ってマイクロ流体構成要素中に流れる。穴H1は常に開いていてサンプルを流さすことが可能だが、サンプルの通過はゲートG1で効率的に制御されるので、サンプルはG1が開くまでH1を通って出ない。サンプルは弁V1、接合部259を通り過ぎて流れ、捕獲フィルターCに向かってチャネル239に沿って流れる。ゲートG5に向かう動きが邪魔される。
例えば加熱によってゲートG1が開き、チャンバー264からの空気の連続的な膨張が、サンプルをチャネル239に沿って捕獲フィルターCに流させる。チャンバー264内の圧力が溶解サンプル材料(ライセート、粒子に結合したポリヌクレオチド、及び他のサンプル成分を含む)を経路に沿って推し進める。この流動中、図16A及び16Bに示されるように、DNA捕獲ビーズは入口フィルター(C.)で捕捉される。好ましくは、フィルターC.は8ミクロンフィルターである。このプロセス中、弁V12は開いたままである。
次に、ある時間(例えば、約2〜約5分)後、図17に示されるように、バルク溶解チャンバー内の過剰圧力が、ゲートG1を開くことによって廃棄物チャンバーへの穴H4を通じて大気に排気される。
図18に示されるように、今や弁V1が閉じられ、さらなる液体処理の間バルク溶解チャンバー中に戻る如何なる液体漏れをも阻止することによって、溶解チャンバーを封鎖する。
次の工程では、好ましくは図10のようなシステムによって自動的に貫通可能な入口280を通り、かつ穴H1経由で洗浄試薬を投入し、チャネル208、211、213、239、210、236、及び234を通らせ、図19中の陰影流路に沿ってフィルターCを洗浄する。ゲートG1とG3が開かれてこの流路を開き、G2とV1は閉じたままである。典型的には、洗浄液は1つ以上の追加成分(例えば、緩衝液、キレーター、界面活性剤、変性剤、塩基、酸、又はその組合せ)を有する溶液である。この工程で使う洗浄緩衝液の典型量は50μlである。例示的な溶液として、例えば、10〜50mMのTris(pH 8.0)、0.5〜2mMのEDTA、及び0.5%〜2%のSDSの溶液、10〜50mMのTris(pH 8.0)、0.5〜2mMのEDTA、及び0.5%〜2%のTriton X-100の溶液から作られるものが挙げられる。
【0040】
その後、図20中、ビーズカラムに試薬入口を通じて空気、例えば10〜100μlの空気を導入することによって、ビーズカラムを空気でパージする。その結果は、穴H4を通じた廃棄物チャンバーへの洗浄緩衝液のパージングである。
次に、図21中、試薬入口280から遊離緩衝液が投入されて洗浄溶液に取って代わり、かつ遊離緩衝液体積の終点がカラムCを通過する。例示的な遊離液体は例えば、約2mMの水酸化物(例えば、約2mMのNaOH)乃至約500mMの水酸化物(例えば、約500mMのNaOH)の濃度を有する水酸化物溶液(例えば、NaOH溶液)である。いくつかの実施形態では、レザバー281内の液体は、約25mM以下の濃度(例えば、約15mMの水酸化物濃度)を有する水酸化物溶液である。遊離緩衝液の典型量は50μlである。
図22に示されるように、今や弁V2及びV3が閉じてカラムCを封鎖する。遊離緩衝液の存在下でビーズカラムCが70〜90℃に3〜4分間加熱され、アフィニティービーズからDNAを遊離する(図23)。
次に、試薬入口を通じて中和緩衝液(約50μl)が投入され、図24に示されるように、ゲートG4を開くことによって、通気口Vに送られる。弁V4は今や閉じている(図25)。
図26に示されるように、ゲートG4、G5、及びG6を開くことによって、さらに0〜45μlの中和緩衝液が入口280を通じてマイクロ流体構成要素中にポンプで入れられ、遊離されたDNAと混合される。
【0041】
ユーザーが入力すると、空気が再び試薬入口を通じてポンプで入れられ、ゲートG5とG6が開いて中和緩衝液と遊離されたDNAが混ざる。制御様式で反応を開始させることが好ましいことから、この工程は一般的に自動化されない。混合物は、例えば試薬入口を介して伝達される加圧空気を用いて、指定されたチャネル容積を通ってポンプで入れられてDNAと混ざってDNAを中和した後、図27に示されるように、PCRチューブに混合サンプルを放出する。
中和されたDNA(又はRNA)は、サンプル処理装置の最後でPCRチューブに押し進められる。PCRチューブ中の、ポリヌクレオチドが遊離されている液体は、典型的にバルク溶解チャンバー内に導入されたサンプル中に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%)のポリヌクレオチドを含む。遊離液体の体積は典型的に元の液体サンプルの体積より少ないので、遊離液体中に存在するポリヌクレオチドの濃度は元の液体サンプル中の濃度より高いだろう。例えば遊離液体中のポリヌクレオチドの濃度は装置200に導入されたサンプル中のポリヌクレオチドの濃度より少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約25倍、少なくとも約100倍)高い。ポリヌクレオチドが遊離されている液体中に存在する阻害因子の濃度は、ポリヌクレオチドの増幅効率を高めるのに十分な量だけ、元の流体サンプル中の阻害因子の濃度より通常低い。
ポリヌクレオチド含有サンプルをバルク溶解チャンバーに導入することと、ポリヌクレオチドをPCRチューブ中に遊離することの時間間隔は典型的に約15分以下(例えば、約10分以下、約5分以下)である。PCRですぐに使えるDNAを含有するPCRチューブはベンチスケールのPCR検出機でさらに処理する準備ができており、取り出すことができる。
いくつかの実施形態について述べた。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変形を構成しうることが分かるだろう。従って、他の実施形態は添付の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】例示的なマイクロ流体システムの斜視図を示す。
【図2A】図1の例示的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2B】図1の例示的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2C】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2D】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2E】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2F】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図3A】例示的なマルチサンプルカートリッジの平面図を示す。
【図3B】例示的なマルチサンプルカートリッジの平面図を示す。
【図3C−1】上から見た代替マルチサンプルカートリッジの斜視図を示す。
【図3C−2】下側から見た代替マルチサンプルカートリッジの斜視図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号の優先権の利益を主張し、かつこの明細書全体を本明細書で援用する。
【技術分野】
【0002】
この明細書で述べる技術は、ポリヌクレオチド含有サンプルを調製するための方法及び装置、さらに詳細には、サンプルに含まれるポリヌクレオチドの引き続く分析用のサンプルを調製するためのマイクロ流体構成要素を利用する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの実験技術はポリヌクレオチドの検出、定量分析、又は増幅を含む。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA含有サンプル中のDNAを増幅するための確立した日常的実験プラクティスである。それにもかかわらず、日常的プラクティスでさえ、処理能力を高め、分析の一貫性を向上させ、かつ使い方が簡単であるのみならず、個々のサンプルの処理及び分析時間を節約するであろう自動化レベルから利益を得るだろう。
PCRのような分析の全体的な時間を信頼性に有害な影響を与えずに有意に短縮できる一局面はヌクレオチド含有サンプルの初期処理である。PCRのような分析技術は業界内では既に、あるレベルの自動化に依存しているので、生の臨床サンプルから、現存する機械に即座に入力できる形態のDNA抽出物を供給するサンプル調製の効率的手段を開発することが要望されている。
PCRのような分析法が有効であるためには、個々のDNA分子をその宿主細胞核から遊離させなければならない。従って、細胞含有サンプルにおいて、細胞壁と核膜を両方とも破壊してDNA分子が周囲環境に入れるようにしなければならない。細胞含有サンプルから使用できるDNAを抽出するためには、通常、全部で数工程が必要である。このような工程を日常的かつ効率的に実行できる簡単な装置の開発は、自動化の現在の試みがロボット工学のような複雑かつ高価な技術に関与していることから、少なからず現存するPCRプロトコルを実施する者にとって非常に有益だろう。
【0004】
マイクロフルイディクスは、診断上の分析と、PCRのような方法によるマイクロリットルスケールのサンプルの分析の両サンプル調製を行うための実用的技術であることが判っている。例えばPCT出願、PCT/US2005/015345、及び米国仮出願第60/567,174号及び第60/645,784号を参照されたい(これらすべての全体を本明細書で援用する)。しかし、今日までに開発されていないツールは、PCRで用いる熱サイクルを含め、現存する実験装置によって便利に分析できる形態でヌクレオチドサンプルを送達できるマイクロ流体構成要素(マイクロフルイディクス構成要素)である。
種々の構成要素を備えたマイクロ流体装置は、2004年3月17日にParunakらによって提出された米国仮出願第60/553,553号(本明細書で援用する)に記載されている。
【発明の開示】
【0005】
〔概要〕
本明細書で述べるシステムは、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体システム(マイクロフルイディクスシステム)であって、以下の要素:挿入可能かつ除去可能なカートリッジと連絡しているカートリッジ受取要素;前記カートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成された前記カートリッジ受取要素と連絡している加熱要素;及び前記加熱要素と連絡している制御回路;を含み、前記挿入可能カートリッジが以下の構成要素:前記加熱要素及び前記制御回路と共同して、前記サンプル及び1つ以上の試薬を受け入れ、かつ前記サンプルと前記試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成された少なくとも1つのマイクロ流体構成要素;を含む、前記マイクロ流体システムを包含する。
他の実施形態では、前記挿入可能カートリッジがさらに以下の要素:前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;及び調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;を含む。さらに他の実施形態では、前記マイクロ流体構成要素が、0.1〜50μlの範囲の体積の流体を伝達するように構成された1つ以上のチャネルを含み、ここで、前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、試薬入口、及び出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にする。
【0006】
本明細書でさらに述べるようなマイクロ流体システムによって生成された調製サンプルを、PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を実行するように構成された機械によって引き続き分析することができる。本マイクロ流体システムによって生成された調製サンプルをさらに処理し、種々のターゲット増幅及び/又はシグナル増幅法によって分析することができ、また、制限消化後のキャピラリー電気泳動及び/又は質量分析によって、並びに一般にゲノミクス及びプロテオミクス技術と呼ばれる方法の他の例によって分析することもできる。
マイクロ流体システムの好ましい実施形態は、さらに1つ以上の計算機類、例えば、該システムの現在の状態、サンプル調製の進行、及びシステム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージといったシステム情報をユーザーに伝達するビジュアルディスプレイ;該システムをコンピューター又はコンピューターネットワークに連結するためのインターフェイス;前記制御回路を操作するための命令を記憶させるコンピューター読取り可能メモリー;前記命令を実行するための処理装置;及びユーザーからの情報を受け入れるための入力装置を含む。
本明細書で述べるシステムの他の好ましい実施形態は、2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されたカートリッジを利用する。本システムのさらに別の好ましい実施形態は、2つ以上、好ましくは3つのカートリッジを受け入れるように構成され、いずれのカートリッジも2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されている。
【0007】
ここで、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体構成要素の実施形態についてもさらに述べる。この構成要素は以下を含む:前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;及び0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネル。前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、試薬入口、及び出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にし;かつ前記マイクロ流体構成要素は、外部熱源と共同して、前記サンプルと試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成されている。
他の実施形態は、なおさらに、ある数、特定の実施形態では8つのサンプルを受け入れるように構成されたマルチサンプルカートリッジを含み、ここで、前記サンプルは少なくとも第1のサンプルと第2のサンプルを含み、前記第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチドを含む。各サンプルは、1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換されうる。前記マルチサンプルカートリッジは、相互別々に添付された少なくとも第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、前記第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素はそれぞれ本明細書で前述したとおりであり、かつ前記第1のマイクロ流体構成要素は前記第1のサンプルを受け入れ、前記第2のマイクロ流体構成要素は前記第2のサンプルを受け入れる。隣接するカートリッジの各サンプル入口は、ユーザーがサンプルをいずれか一方のカートリッジに導入するとき、一方のサンプル入口の他方のサンプルの如何なる混入をも阻止するため相互に妥当な間隔が置かれている。
好ましい実施形態では、前記マルチサンプルカートリッジは、本技術で常用されている96-ウェルプレートの大きさと実質的に同じ大きさを有する。そこで、有利には、該カートリッジは、本技術の他のどこかで使用されるプレートハンドラーと併用される。しかし、なおさらに好ましくは、本マルチサンプルカートリッジは、PCRチューブの取り付け台の重心間の間隔が、業界承認規格である9mmとなるように設計される。これは、特定の実施形態では、本明細書でさらに述べるように、隣接するPCRチューブに材料を送達するカートリッジ内のノズル間の中心と中心との距離が9mmであることを意味する。さらに他の好ましい実施形態では、マルチサンプルカートリッジは、前記第1のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第1のPCRチューブと、前記第2のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第2のPCRチューブとを含む。各PCRチューブは、好ましくは前記カートリッジに取り外し可能に取り付けられている。
【0008】
本明細書ではさらに方法について述べる。方法としては、限定するものではないが、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するいくつかの細胞を含むサンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する方法が挙げられる。この方法は以下の工程を含む:約0.1〜2.0mLの前記サンプルと過剰量の空気をバルク溶解チャンバーに導入する工程;前記バルク溶解チャンバーに熱を加えて前記サンプルを第1の温度に上昇させて前記サンプル内の細胞を溶解させることによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを含有するライセートを生成する工程;前記ライセート中の1つ以上のポリヌクレオチドをアフィニティーマトリックス、例えば1つ以上のビーズ上に捕獲する工程;前記ビーズを前記バルク溶解チャンバーから出させてフィルター上に捕捉させる工程;前記ビーズを洗浄試薬で洗浄する工程;前記洗浄試薬を遊離緩衝液と置き換える工程;前記ビーズを第2の温度に加熱することによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離する工程;及び前記1つ以上の中和されたポリヌクレオチドをPCRチューブに移動させる工程。好ましい実施形態では、バルク溶解チャンバーに熱を加える前に該バルク溶解チャンバー内で1つ以上の溶解試薬中で前記サンプルが溶解される。他の好ましい実施形態では、前記ビーズを前記第2の温度に加熱した後、前記方法は、中和緩衝液を前記1つ以上のポリヌクレオチドと混ぜ合わせて1つ以上の中和されたポリヌクレオチドを生成してから前記PCRチューブに移す。
本明細書ではさらに、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するいくつかの細胞を含むサンプルを分析する方法であって、前述したとおりの方法を用いて、前記サンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する工程;及びPCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を用いて、前記サンプルを分析する工程を含む方法についても述べる。
1つ以上の実施形態のさらなる詳細は添付図面、及び以下の詳細な説明に示される。その他の特徴、目的、及び利点は、詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【0009】
〔詳細な説明〕
種々の図面の同等の参照記号は同等の要素を表示する。
生物学的サンプルの分析は、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、tRNA、mRNA、又はrRNA)が該サンプル内に存在するかを判定することを含むことが多い。例えば、サンプルを分析して特定抗原の存在を示すポリヌクレオチド指標が存在するかを判定することができる。本明細書では、用語ポリヌクレオチド及び核酸化合物は相互交換可能に使用され、天然に存在する核酸、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルの1つ以上の反復性又は非反復性配列で形成されたポリマー有機分子を意味すると解釈される。
典型的には生物学的サンプルは複雑な混合物である。本明細書で使用するため、サンプルはいずれのマトリックスとして供給されてもよく、限定するものではないが、例えば、血液、組織サンプル(例えば、鼻、頬、肛門、又は膣の組織のスワブ)、生検吸引物、ライセートとして、真菌として、細菌として、又は食品検査で使用する物のような食物サンプルとして供給されうる。食物サンプルで見つける場合、食品には、チーズやミルク等の乳製品、及び穀物、コーン、コメ、又はトウモロコシ等の主要食料が含まれる。判定すべきポリヌクレオチドは、粒子(例えば、白血球及び/又は赤血球等の細胞)、組織フラグメント、細菌(例えば、グラム陽性細菌及び/又はグラム陰性細菌、真菌、胞子)内に含まれてよい。典型的には、1つ以上の液体(例えば、水、緩衝液、血液、血漿、唾液、尿、髄液、又は有機溶媒)はサンプルの一部であり、及び/又は処理工程中にサンプルに添加される。
【0010】
生物学的サンプルを分析する方法は、実験室で取り扱える形態(例えば、スワブの形態)で生物学的サンプルを得る工程、該サンプル内の粒子(例えば、細菌又は他の細胞)からポリヌクレオチドを遊離する工程、1つ以上の遊離されたポリヌクレオチドを増幅する工程(例えば、PCRで)、及び増幅されたポリヌクレオチドの存在(又は非存在)を判定する工程(例えば、蛍光検出で)を含む。
生物学的サンプルは、典型的には阻害因子(例えば、粘膜化合物、ヘモグロビン、糞便化合物、及びDNA結合タンパク質)をも含む。このような化合物は、サンプル内のポリヌクレオチドの存在を判定するための試みを阻害する。例えば、該阻害因子は、PCR及びポリヌクレオチドの存在を判定するための他の酵素的技法によるポリヌクレオチドの増幅効率を減少させうる。判定すべきポリヌクレオチドに対して阻害因子の濃度が少なくない場合、分析は偽陰性結果をもたらしうる。従って、生物学的サンプル(例えば、判定すべき1つ以上のポリヌクレオチドを有するサンプル)を調製するための好ましい方法及び関連システムは、判定すべきポリヌクレオチドの濃度に対して阻害因子の濃度を減らす。
【0011】
(システム)
図1は、例えば本明細書の方法に従って、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するための例示的なマイクロ流体システム10を示す。図2A〜2Fは、例示的システム10の種々の局面の分解図を示す。
図1には4つのカートリッジ受取要素12が示されているが、装置10の他の好適な実施形態は、より多いか又は少ない受取要素を有してよく、限定するものではないが、例えば1、2、3、6、8、10、12、16、又は20個の受取要素を有しうることが理解されよう。システム10は、場合により、前記カートリッジ受取要素が位置している前記システム10の領域を覆う、閉じられるドア22を有してよい。ドア22は、ユーザーがシステムの活動を視覚的にモニターできるように透明であってよく、例えば、Perspex又は同様の何らかの材料製でよい。カートリッジ受取要素12は、独立して、本明細書でさらに述べるようなマイクロ流体カートリッジのような、また本明細書でさらに述べるようなマルチサンプルカートリッジのような挿入可能かつ取り外し可能なカートリッジを受け入れる。ここで、機械的キー(図示せず)はカートリッジの正確な挿入を容易にしうる。図1は、サンプルの調製中、前記任意的なドア22が閉じていることが好ましいことを示す。ドア22は、ドアの上縁にて1つ以上のヒンジ24で取り付けられていることが示されているが、システム10の全体的な作動と矛盾しなければ、ドアの下縁、又はその左若しくは右縁にてヒンジで取り付けられていてもよい。さらに、ドア22は、開閉の容易さのため任意的なハンドル26を備えて図示されている。図1ではさらになお、1つ以上のヒンジ28で達成されるような、任意的にヒンジ式の中間部を備えたドア22が示されている。このような任意的なヒンジ式の中間部はドアを部分的に開くことを容易にするのみならず、開いているときにドアの扱いやすい折りたたみ構成を創り易くする。
【0012】
システム10は、好ましくは試薬を貯蔵するための領域35をも含む。該領域は、システム10のハウジング33内に位置してよいが、図1に示されるように、ハウジング33の外面にあってもよい。図1には、ハウジング33の外部に1つ以上の取付けブラケット34によって取り付けられた3つの試薬ビン36が示されている。試薬ビン36は、それぞれ、遊離緩衝液、洗浄緩衝液、及び中和緩衝液を含み、サンプル調製中、それぞれの試薬をサンプルに送達するように構成されている。試薬ビン36を外部に取付けると、有利なことに、1つ以上のビンのいずれかの補充が必要であれば、そのことがユーザーに容易に分かる。システム10内に試薬ビンを組み入れると、システムの外部の試薬貯蔵部から送達管の接続をはずして再び接続することを要せずに、実験室内のある位置から別の位置にシステム10を容易に移動できるので有利である。しかし、試薬ビンを補充するためにユーザーが頻繁に介入することなく、長期間システム10を操作することが望ましい他の実施形態では、システム10に取り付けられず、又はシステム10に含まれないが、どこか他の場所に置かれてシステム10に試薬を送達するように構成された、より大きな容器から1つ以上の管、供給管路、又はパイプを介して試薬を供給してもよい。
システム10は、システム10が配置される面の上方にハウジング33を上昇させることによって、システム10の下の換気を可能にし、かつユーザーにシステム10を持ち上げる改良された能力をも提供する1つ以上の安定化足部30を含んでもよい。システム10の大きさによって、2、3、4、5、若しくは6、又はそれより多くの足部30がありうる。足部30は、好ましくはゴム、又はプラスチック、又は金属製であり、システム10が置かれる面の上方に約2〜約10mmシステム10のハウジング33を持ち上げる。
【0013】
マイクロ流体システム10は、さらに場合により、該システムのユーザーに情報を伝達するディスプレイを含んでよい。このような情報としては、限定するものではないが、システムの現在の状態;サンプル調製の進行;及びシステム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージが挙げられる。ディスプレイ20は、好ましくはユーザーがシステム10に命令を伝達できる入力装置32と共に使用される。入力装置は、タッチスクリーン、キーパッド、又はカードリーダーでよい。入力装置32はさらに、例えば、限定するものではないが、フラッシュメモリーカード、メモリースティック、USB-スティック、CD、又はフロッピー(登録商標)ディスク等のフォーマットされた電子媒体のリーダーを含みうる。入力装置32はさらに、予めロードした許可ユーザー確認のための特徴に従い、システム10のユーザーが実際に許可されたユーザーであることを保証するためのセキュリティー機能、例えば、指紋リーダー、網膜スキャナー、磁気帯リーダー、バーコードリーダーを含みうる。入力装置32は、ユーザーの命令を受け入れるための外部入力装置(図1には示されない)、例えばコンピューターキーボード、又はコンピューターマウスにさらに連結されうる。入力装置32は、さらに−かつ同時に−サンプル分析と関連するデータを書き出すための出力装置としても機能しうる。例えば、入力装置32がフォーマットされた電子媒体のリーダーである場合、入力装置32は該媒体の書き出す装置でもありうる。装置32によって該媒体に書き込まれるデータとして、限定するものではないが、温度又は湿度などの分析に関係がある環境情報、並びに診断結果、及び問題のサンプルの同定データが挙げられる。
システム10は、好ましくは、入力装置32及びディスプレイ20と連絡して、ユーザーの命令を受け入れ、かつサンプルの分析を制御するマイクロプロセッサー回路を含む。システム10は、さらに、パーソナルコンピューター、携帯情報端末などの遠隔ロケーション、又はコンピューターサーバー若しくはディスクファーム等のネットワーク記憶装置へのデータの抽出を可能にするコンピューターネットワーク接続を含みうる。コンピューターネットワーク接続はワイヤレスでよく、又は例えばイーサネット(登録商標)、ファイヤーワイヤー、又はUSB接続を利用してよい。システム10は、直接専用プリンターケーブルを介して、又はワイヤレスで、或いはネットワーク接続によって、プリンターに接続されていてもよい。システム10は、さらに、ユーザーが何らかの他の関係者、例えばヘルスケアプロバイダー、又は診断施設、又は患者に分析結果を直接e-メールできるように構成されうる。
【0014】
図2Aは、システム10の例示的なカートリッジ受取要素12の分解図を示す。この実施形態では、受取要素12は、8つのサンプルレーンを有するマルチサンプルカートリッジを受け入れるように構成されている。8本のPCRチューブ42は、該カートリッジの各レーン内のサンプルと別々に反応するための試薬を含有しうる。該試薬は典型的に、PCR酵素、プローブ及び/又はプライマー等の凍結乾燥試薬である。該試薬は室温以上のような温度にさらされると、有意な変性を経験しうるので、好ましくはPCRチューブ42を保冷して試薬寿命を延長する。該管を保冷する好ましい方法はペルチェ(Peltier)装置(図2Aに示されない)による。PCRチューブ42は、好ましくは集団的な取付けの容易さのためPCR-ストリップ44に取り付けられる。また、PCRチューブ42は、該PCRチューブを受け入れるように構成されたいくつかの凹部43を有する棚上に置かれるように示されている。凹部43をペルチェクーラー等の冷却装置内に配置して、該凹部内に管が位置しているときPCRチューブを冷たく保つことができる。いくつの実施形態では、凹部は、そのリムと同じ深さにPCRチューブを受け入れるのに十分な深さの穴である。
【0015】
以下、カートリッジ受取要素の残部について、システム10のカートリッジ受取要素12にマルチサンプルカートリッジ18を挿入する手段を示す図2Bとからめて述べる。挿入可能カートリッジ18は、少なくとも1つのマイクロ流体構成要素を含み、これは、受取要素12に挿入されると、加熱要素及び制御回路と関連して、1つ以上のポリヌクレオチド含有サンプルと1つ以上の試薬を受け入れて該サンプルと該試薬を反応させて、その中の1つ以上のポリヌクレオチドの引き続く分析に適した調製サンプルの形態で1つ以上のPCRチューブに送達する。カートリッジ18の特徴は、本明細書の別のところでさらに記載される。
カートリッジ受取要素12は、好ましくは登録機構によって、カートリッジの効率的な登録を保証する手段を含む。本明細書でさらに述べるように、カートリッジ上の機械的キーは登録を容易にし、かつ1つ以上の他の機械的機能と共に使用されうる。図2A及び2B中、調整可能レバー40は、カートリッジを確実にカートリッジ受取要素12内にしっかり接触させる手段である。このような接触を達成できる多くの構成のレバーがあるが、図2A及び2Bに示される実施形態では、カートリッジを矢印で示される方向にカートリッジ受取要素に水平に挿入し、受取要素の後方に押して、機械的キーとかみ合わせてから、カートリッジを支持する様にレバー40をカートリッジの下側に上昇させる。レバー40はカム上で旋回して、カートリッジとかみ合ったときにさらに硬直にすることができる。図2Aに示される実施形態では、レバー40に取り付けられた棚49がカートリッジのさらなる支持を与えうる。他の登録機構も想定され、例えば、1つ以上のクリップ、磁気引力、カートリッジを置くための陥凹穴、及び例えばねじれ運動によって可逆的にカートリッジが固定されるようになるスナップ-フィット部品の利用、雄型付属品、例えば相補的な1つ以上の雌型付属品に挿入されるときのカートリッジ又は受取要素のどちらかの1つ以上の可撓性突出部のわずかな変形によって達成されるカートリッジのロッキングが想定される。他の実施形態では、カートリッジを水平に対して10°のような角度で配置して、カートリッジのマイクロ流体構成要素内への溶解チャンバーからのサンプルの流れを促進する。該実施形態では、図4A及び4Bを参照して本明細書でさらに述べるように、溶解チャンバー内の197のような傾斜のあるロート構造を配備することはあまり重要でない。
カートリッジ受取要素は、好ましくは、制御可能かつカートリッジの選択した部分に局在化される熱を送達できる熱源をも含む。図2A及び2B中のプラットフォーム46は、分析中にカートリッジが留まり、かつカートリッジと熱的連絡をする複数の熱アクチュエーターを有する領域である。複数の熱アクチュエーター、例えば抵抗ヒーターはカートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成される。図示しないマイクロプロセッサー制御回路はプラットフォーム46と連絡し、ユーザーの命令を受け取ると、選択された熱アクチュエーターに電流を流して、該選択された熱アクチュエーターに隣接するカートリッジの1つ以上の領域を熱くさせる。他の好ましい実施形態では、熱源46がPCボード47上に留まる。従って、総じて、要素46及び47は、カートリッジを加熱する典型的手段に過ぎない。
【0016】
別の好ましい実施形態では、保護バリア48が種々の内部の仕組み及びその内部成分からシステム10のユーザーを保護する。
図2C及び2Dは、例示的なカートリッジ受取要素12の断面図を示し、カートリッジ18への試薬と熱の送達を促進する種々の構成要素を示している。特に、熱源46とカートリッジ18との間の良い熱接触を維持するための1つの方法は、カートリッジ18に圧力を加えることができるユーザー作動型ハンドル51を組み入れることである。図2Cに示される実施形態では、ハンドル51はカム軸52に取り付けられている。このカム軸52は、固定出っ張り53に対して旋回すると、プランジャー54を押し下げ、該プランジャーに取り付けられたプラットフォーム55をカートリッジ18に反して押下する。図示される実施形態では、プラットフォーム55は、本明細書でさらに述べるように、カートリッジ18の溶解チャンバー内の液体サンプルに熱を加えさせうる接触熱源を有する。プラットフォーム55上に及ぼされる圧力は、プラットフォーム55内の熱源とカートリッジ18の上面との間に良い接触を生じさせるのみならず、熱源46と、カートリッジ18の下側のマイクロ流体構成要素との間の良い熱接触をも生じさせる。カムとプランジャー54の作用も働いて、処理中のカートリッジ18の位置の安定を確実にする。好ましい実施形態では、プラットフォーム55と連絡しているセンサーが、過度の圧力、例えば過度の歪み、応力、又は損傷を生じさせるであろう圧力がカートリッジ18に加えられないように、プランジャー54の微調整をもたらす。当業者には、カムとプランジャーの組立てだけが、良い熱接触を生じさせる目的でカートリッジ18に圧力を印加できる機械的配置でないことが分かるだろう。レバーと同様の機構を含む他の配置が想定されるように、例えば、プレスが想定され、カートリッジ上の該プレスの高さを変えるための調整用ネジを利用する。
【0017】
好ましい実施形態では、システム10の各カートリッジ受取領域は、それ自体独立して制御可能な、接触加熱されるマイクロ流体カートリッジの領域に圧力を加えるための機構を有する。従って、図1中、各カートリッジ受取領域上の各ハンドルは、ユーザーによって他のハンドルと独立して押し下げられる。図2A〜2Cからは分からないカートリッジ受取領域の他の局面は、加圧しながらカートリッジを強固に保つためにカートリッジ下のプラットフォームの使用を含む。
当業者には分かるように、固定サンプルに正確な体積の液体試薬を繰り返し送達するため多くの機構が存在する。一実施形態では、機構は純粋に手動であり、ユーザーが能動的に分配ヘッドを上げ下げすることを含む。好ましい実施形態では、分配ヘッドはロボット制御下にある。さらに別の実施形態では、分配ヘッドは水力学を利用する。
図2Dは、マイクロ流体カートリッジに試薬を送達するための例示的な機構を示す。ロボット制御下であって、かつ例えばユーザーの命令下で、前記ヘッドを操作するように構成されたマイクロプロセッサーから制御シグナルを受信する分配ヘッド61は、1つ以上の試薬源と連絡している。1つ以上のキャピラリー32が1つ以上のノズル63に、それぞれ遊離緩衝液、洗浄緩衝液、及び中和緩衝液などの1つ以上の試薬を供給する。ここで、前記1つ以上の試薬は、好ましくは図1に示されるように、システム10の外側ハウジング上に貯蔵される。図2D中の矢印で示されるように、分配ヘッド61は垂直方向の自由度を有し、試薬を送達する前と後にそれぞれカートリッジの内部に分配ヘッドが入り込むこととカートリッジから取り出すことを可能にする。図2Dの2枚のパネルは、カートリッジから離れた位置にあるノズルと、試薬を送達しているときのノズルを示す。さらに、かつ好ましくは、分配ヘッド61は、分配ヘッドが、例えば、1つより多くのレーン又はマルチサンプルカートリッジの1つより多くのカートリッジに試薬を送達できるように、横向き−図2Dの紙面に垂直−の自由度を有する。さらに、横向きの動きは、分配ヘッドを1つより多くのカートリッジ位置、例えば1つより多くのカートリッジ受取要素に行かせるという目的のためでありうる。
【0018】
試薬分配器は、好ましくは、かつ場合により、それが下がり過ぎてノズル63若しくはカートリッジ、又は両者を破損するのを阻止する検出機構を有する。多くの検出機構が本発明の実施と調和し、例えば、接触検出(例えば、電流の発生又は中断を検出することによって)、磁気検出、光学検出を使用でき、或いは分配ヘッドが移動し過ぎるのを停止させる機械的スペーサーを利用しうる。さらに図2Eに示されるように、例示的な検出機構は光学断流器を用いる。該機構は分配ヘッドとカートリッジとの間に、どちらも破損することなく良いシールを確実に得るのに有効である。この実施形態では、固定組立品に取り付けられたスクリュー66、フラグ65及び光学断流器64が分配ヘッドと協働する。分配器がマイクロ流体カートリッジに接触すると、スクリューが光学断流器の検出位置にフラグを押し上げ、分配ヘッドを制御するモーターにフィードバックを供給し、ヘッドの動きを止めさせる。
前述したように、分配ヘッドのノズルがマイクロ流体カートリッジ上の試薬入口との良い接触を生じさせることが好ましい。これは、技術上既知のいくつかの異なるアプローチで達成される。図2Fに例示的な実施形態が示され、図2Eと関連して見ることができる。図2Fの左側パネルには、ガスケット67がマイクロ流体カートリッジ18の1対の隣接試薬入口の上(例えば隣接レーン上)に平衡を保って示されている。照準要素68はガスケットの自動位置決めを容易にしうる。図2Fの右側パネルは、マイクロ流体カートリッジの1対の隣接試薬入口と接触しているガスケット67の破断図を示す。試薬入口間の水平離隔距離は1〜2mmでよい。カートリッジの下側のノッチ69は、カートリッジ受取要素内で位置決めするためカートリッジによって使用される機械的キーを例示する。試薬分配器の管、例えばキャピラリーも破断図に示され、それぞれの試薬入口に沈められる先端63を有する。図2Fの右側パネルに示される構成は分配器とカートリッジとの間の良いシールを例示し、試薬サンプルの漏れを回避する目的のため望ましい。システム10の内部における試薬の反復性の漏れは、錆による構成部品の急速な分解、カビの蓄積、及び水に基づく他の被害をもたらしうることから望ましくない。漏れは、最終的にマイクロ流体装置に不正確(不十分)な量の試薬が配備され、不良のサンプル調製品質をもたらしうることからも望ましくない。
【0019】
(マルチサンプルカートリッジ)
本明細書で述べる方法は、それぞれ図3A、3B、及び3Cに示されるように、マルチサンプルカートリッジ700又は720を用いて実施される。マルチサンプルカートリッジを用いて、少なくとも第1のサンプルと第2のサンプル(ここで、前記第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチド(相互に同一又は異なってよい)を含有する)を前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換することができる。
マイクロ流体回路708、710の概要が示されているマルチサンプルカートリッジ700は、相互別々に添付されている、少なくとも第1のマイクロ流体カートリッジ704と第2のマイクロ流体カートリッジ706を含む。マルチサンプルカートリッジ720は別の実施形態であり、723と725のようなサンプルレーンが対になって群化し、かつ第1のサンプルレーン対を有する少なくとも第1のマイクロ流体カートリッジ724と、第2のサンプルレーン対を有する少なくとも第2のマイクロ流体カートリッジ724とを含む、前記第1及び第2のマイクロ流体カートリッジは相互別々に添付されている。サンプルレーンは、本明細書で述べる方法でサンプルを調製できる、独立して制御可能な一組の要素である。レーンは、少なくとも試薬入口、サンプルルアー、マイクロ流体構成要素、及び廃棄物チャンバーを含む。このことは、マイクロ流体カートリッジと関連して本明細書でさらに述べる。
「別々に添付される」とは、両カートリッジが一緒にマイクロ流体システムのカートリッジ受取要素内に置かれるが、少なくとも第1カートリッジと第2カートリッジをばらばらにして別々に使用できるように、一方のカートリッジが他方のカートリッジにつながれていることを意味する。切り離しを容易にするため、例えば、2つのカートリッジ間に切り目線を作製してもよい。
図3Aにおいて、好ましくは第1のマイクロ流体カートリッジ704と第2のマイクロ流体カートリッジ706はそれぞれ本明細書でさらに述べるとおりであり(例えば図4参照)、第1のマイクロ流体カートリッジは第1のサンプルを受け入れ、かつ第2のマイクロ流体カートリッジは第2のサンプルを受け入れる。従って、第1のカートリッジ704は、少なくとも第1のマイクロ流体構成要素708を含み、かつ第2のカートリッジ706は少なくとも第2のマイクロ流体構成要素710を含む。
図3Bにおいて、好ましくは第1のマイクロ流体カートリッジ714の各サンプルレーンと第2のマイクロ流体カートリッジ716の各サンプルレーンはそれぞれ本明細書でさらに述べるとおりであり(例えば図4参照)、第1のマイクロ流体カートリッジは第1及び第2のサンプルを受け入れ、かつ第2のマイクロ流体カートリッジは第3及び第4のサンプルを受け入れる。従って、第1のカートリッジ714は、少なくとも第1及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、かつ第2のカートリッジ716は少なくとも第3及び第4のマイクロ流体構成要素を含む。
好ましくは、マルチサンプルカートリッジは、本技術で使用されるような96-ウェルプレートと同じ大きさである。好ましくは、マルチサンプルカートリッジは、図3Aに示されるように8つのカートリッジを有し、又は図3Bに示されるように対になって配置される8つのレーンを有する。異なる数の独立したカートリッジ及び/又はレーンを有する他のマルチサンプルカートリッジが本明細書で述べる発明及び装置と矛盾しないことが分かるだろう:このような数として、4、6、10、12、又は16の単レーンカートリッジ、及び2、3、5、6、又は8の2-レーンカートリッジが挙げられる。さらに、4、6、又は8のレーンでカートリッジを構成することもでき、本明細書の説明と一致する。
なおさらに好ましくは、マルチレーンカートリッジの各カートリッジは、各カートリッジ用のPCRチューブを有して構成され、各管は相互に、重心と重心が9mm、又は約9mm離れており、かつ好ましくは個々のPCRチューブは相互にストリップで連結されているので、すべての管を同時にマルチレーンカートリッジから取り外すことができる。
本マルチサンプルカートリッジは、さらにかつ場合により、ユーザーが誤ってマイクロ流体システム内にマルチサンプルカートリッジを挿入することを防止し、かつ図1のシステム10のカートリッジ受取要素12のような器具とのカートリッジの正確なかみ合いをも保証する機械的キーを有してよい。好ましくは、機械的キーは、まずシステム10に挿入される、カートリッジ700の縁又はカートリッジ720の縁上に設計される。該キーは、例えば、図3Aに示されるようなマルチサンプルカートリッジの単一の切り欠き角702を含んでもよく、或いは図3Bのカートリッジ720の縁にカットされた数個、例えば2個以上のノッチ722を含んでもよい。キーが1つ以上のノッチを含む場合、図3Bに示されるように、又は各カートリッジの各レーンと関係する少なくとも1つのノッチがあることが好ましい。
マルチサンプルカートリッジ700及び720は、それぞれ、サンプルを導入するための1つ以上のルアーを有する。図3Aには、それぞれ第1のカートリッジ及び第2のカートリッジと関連するルアー712及びルアー714がある。図3Bには、ルアー732と734がそれぞれ第1のレーン723および第のレーン725と関連している。図3A及び図3Bにおいて、隣接するカートリッジ又はレーンのルアーは相互に片寄っている。このような片寄りは、ある実施形態の設計の特徴であり、マイクロ流体回路の効率的な構成を助長するが、マルチサンプルカートリッジの必要条件ではない。
マルチサンプルカートリッジ700は、第1のカートリッジ704及び第2のカートリッジ706の各カートリッジ用のそれぞれ第1の試薬入口716及び第2の試薬入口718をも有する。マルチサンプルカートリッジ720も各サンプルレーンに関係する試薬入口736を有する。
マルチサンプルカートリッジ720は、さらにかつ任意に、カートリッジに試薬を分配するとき、液体試薬分配器ヘッドの位置決めを容易にする1つ以上の照準要素730を含んでよい。分配器ヘッドとからめて使用され、かつ当業者によってシステム10に組み込まれうるような光学位置決めシステムと共に該照準要素を使用することができる。
【0020】
図3C-1、3C-2、3C-3を含む図3Cは、マルチサンプルカートリッジの代替実施形態を示し、単一のマイクロ流体基板内に複数のレーン(8レーンが図示)が作製されている。この実施形態では、チャンバーと基板も必須であることが好ましい。図示される実施形態では、チャンバーが2対の列に配置され、4つのサンプル溶解チャンバー742が別個の入口と共にあり、列毎に1つの廃棄物チャンバー744がある。従って、各列のチャンバーは4つのサンプルレーンとして働きうる。好ましくはこのカートリッジは各溶解チャンバー内に傾斜したロートを持たない(本明細書でさらに述べるように)ので、分析中、水平に対してある角度傾けられる。図3C-1は、試薬入口746を示す、上から見たカートリッジの斜視図である(溶解チャンバーとサンプルチャンバーが保護カバーで覆い隠され、個々のサンプル入口は示されていない)。図3C-2は、概略的なマイクロ流体ネットワーク748を示す、下側から見た斜視図である。図3C-3は、カートリッジの上面の平面図を示し、各サンプル入口750とサンプルチャンバーが別個のマイクロ流体ネットワークと連絡することを示している。当業者には分かるように、本明細書でさらに述べるような図3Cの例のため、熱アクチュエーターネットワークとの連絡のようなマルチサンプルカートリッジの他の局面が達成されるだろう。図3Cの実施形態は、図3A及び3Bの実施形態と関連して示し、かつ述べたような機械的キーをも利用しうる。
【0021】
(マイクロ流体カートリッジ)
本明細書で述べるようなマイクロ流体カートリッジは、本明細書の別のところで述べるような分析方法の精神から逸脱せずに、いくつかの異なる構成の成分を採用することができる。該カートリッジは、別々にサンプルと試薬を受け入れ、該サンプルを溶解させ、該サンプルをマイクロ流体ネットワークに導入し、かつポリヌクレオチドを含有する抽出物を出口に送達するように構成される。例えば、典型的な実施形態は、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号の図1に示されており、本明細書で援用する。
図4を参照すると、典型的なマルチサンプルカートリッジ200が断面図で示されている。以下の説明は、マルチサンプルカートリッジで見られるような単一のカートリッジ又はレーンに関する。カートリッジ200は、第1の層205及び第2の層209を含む。第1の層205はマイクロ流体基板として働き、内側にマイクロ流体ネットワークが見られる。第1の層内に、マイクロ流体ネットワーク201の種々の構成要素を相互に上昇させるさらなる層207があってよい。第2の層209はしばしばマイクロ流体基板と呼ばれる。その中にマイクロ流体基板内の通気口と整列して連絡する1つ以上の穴を有するからである。第1の層205の外面には通常保護ラミネートコーティング206がある。
マイクロ流体構成要素201は、1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを受け入れて調製するように構成される。カートリッジ200は、典型的には、該サンプル内の細胞を溶解させ、引き続く分析に適した形態の前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離することによって、サンプルを調製する。カートリッジ200は、該サンプル内の1つ以上のポリヌクレオチドの濃度に対して、1つ以上のポリヌクレオチドの濃度を増やし、及び/又は阻害因子の濃度を減らすこともできる。
好ましくは射出成形によって、所望のマイクロ流体カートリッジ200を作製することができる。典型的に、層205、207、及び209はポリマー材料で形成される。構成要素201の要素は、典型的に層207、205を成形(例えば、射出成形で)することによって形成される。層206は、典型的には、層205に固定され(例えば、接着的及び/又は熱的に)、構成要素201の要素をシールする可撓性のポリマー材料(例えば、ラミネート)である。接着剤を用いて層205と層209を相互に固定してよい。
例示的なカートリッジ200は、バルク溶解チャンバー264と廃棄物チャンバー269をも含む。好ましくは、この2つのチャンバーを単体として作製し、バリア199で隔てる。図4Bは、典型的に作製されるような種々のその要素と共にカートリッジ200の例示的な分解図を示す。内部のロート197は任意であり、重力下で出口穴282に向けて液体を下流に流させる傾斜面を有する。ロートの側壁195は任意であり、特定の処理プロセスを容易にする。
カートリッジ200は、さらにサンプル入口202を含み、この入口202によって、サンプル材料、好ましくは細胞を含有する液体溶液の形態のサンプル材料をバルク溶解チャンバー264に導入することができる。図4には、相互に片寄り、かつマルチサンプルカートリッジ200の隣接するカートリッジ又はレーン上に位置する2つのルアーが示されている。好ましくは、サンプル入口202は、一方向弁203を有するルアーの形態を取る。サンプル入口はサンプルをバルク溶解チャンバー264に向ける。チャンバー264内でサンプル中の細胞がバルク溶解試薬ペレット(図示せず)と接触するか、又はチャンバー264に熱を加えるか、又は熱と試薬ペレットとの接触の両適用の組合せによって、前記細胞が溶解する。サンプル入口202は、好ましくは、材料(例えば、サンプル材料と気体)をチャンバー264に入れるが、該サンプル入口によって材料がチャンバー264を出るのを制限(例えば、阻止)する一方向弁を含む。典型的には、入口は、サンプル入力装置(例えば、注射器)と番わせて気体漏れのないシールを形成するように構成された付属品(例えば、ルアー付属品)を含む。溶解チャンバー264は、典型的には約5ml以下(例えば、4ml以下)の容積を有する。典型的には、使用する前に溶解チャンバー264を気体(例えば、圧縮空気263)で満たす。
【0022】
一般に、導入されるサンプルの体積は溶解チャンバー264の総容積より少ない。例えば、サンプルの体積はチャンバー264の総容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)でよい。典型的なサンプルは、約3ml以下(例えば、約2.0ml以下、又は約1.5ml以下)の体積を有する。通常、ある体積の気体(例えば、空気)がサンプルと共にチャンバー264に導入される。典型的に、導入される気体の体積は、チャンバー264の総容積の約50%以下(例えば、約35%以下、約30%以下)である。サンプルと気体の体積を合わせて、チャンバー264内に既に存在する気体を加圧する。
使用する場合、バルク溶解試薬ペレットは、好ましくは、ポリヌクレオチド分子を保持するように設計されたDNA捕獲ビーズ(図示せず)のような1つ以上の粒子を含有する。粒子は、好ましくはポリヌクレオチドを(例えば、阻害因子に比べて優先的に)保持する少なくとも1つのリガンドで修飾されている。優先的にポリヌクレオチドを保持するための例示的なリガンドとして、例えばポリアミド(例えば、ポリカチオン性ポリアミド、例えばポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリ-DL-オルニチン、及びポリ-エチレン-イミン、ポリヒスチジン)が挙げられる。ポリホウ酸酸のようなリガンドもRNAを保持するために使用できる。他のリガンドとして、例えば、インターカレーター(intercalator)、ポリ-インターカレーター、副溝結合剤、ポリアミン(例えば、スペルミジン)、複数のアミノ酸を含むホモポリマー及びコポリマー、並びにその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、リガンドは少なくとも約5,000Da(例えば、少なくとも約7,500Da、又は少なくとも約15,000Da)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、リガンドは約50,000Da以下(例えば、約35,000以下、約27,500Da以下)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、リガンドはアミド結合によって粒子の表面に付着したポリ-リジンリガンドである。
特定の実施形態では、リガンドは酵素的分解、例えば、ペプチド結合を切断するプロテアーゼ酵素(例えば、エンド-及びエキソ-プロテアーゼの混合物、例えばプロナーゼ)による分解に耐性である。例示的なプロテアーゼ耐性リガンドとして、例えば、酵素攻撃に感受性のリガンドのエナンチオマーであるポリ-D-リジン及び他のリガンドが挙げられる。
【0023】
ポリヌクレオチドを保持するための粒子は、典型的に、リガンドが結合できる材料で形成される。粒子を形成できる例示的な材料として、リガンドに結合するように修飾できるポリマー材料が挙げられる。典型的なポリマー材料は、リガンドに付着するために利用できるカルボキシル基及び/又はアミノ基を供給し、或いは供給するように修飾されうる。典型的なポリマー材料として、例えば、ポリスチレン、ラテックスポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、及びそれらの誘導体が挙げられる。粒子218を形成するために使用できるポリマー材料は、米国特許第6,235,313号(Mathiowitzら;本明細書で援用する)に開示されている。他の材料として、ガラス、シリカ、アガロース、及びアミノ-プロピル-トリ-エトキシ-シラン(APES)修飾材料が挙げられる。
適切なリガンドで修飾できる例示的な粒子として、カルボキシレート粒子(例えば、カルボキシレート修飾磁気ビーズ、例えばSera-Mag磁気カルボキシレート修飾ビーズ,Part #3008050250, Seradyn、及びPolybeadカルボキシレート修飾ミクロスフェア,Polyscienceから入手可能,カタログ番号09850)が挙げられる。いくつかの実施形態では、リガンドがポリ-D-リジンを含み、ビーズがポリマー(例えば、ポリカルボキシレート被覆ラテックス)を含む。
一般に、粒子の質量の、該粒子によって保持されるポリヌクレオチドの質量に対する比率は約25以下(例えば、約20以下、約10以下)である。例えば、いくつかの実施形態では、約1グラムの粒子は約100ミリグラムのポリヌクレオチドを保持する。
粒子は、典型的に約20ミクロン以下(例えば、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下)の平均径を有する。いくつかの実施形態では、粒子218は、少なくとも約4ミクロン(例えば、少なくとも約6ミクロン、少なくとも約8ミクロン)の平均径を有する。
溶解ペレット内の粒子218の密度は、典型的に少なくとも約108粒子/ml(例えば、約109粒子/ml)である。
いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が磁性である。これとは別の実施形態では、ほとんど(例えば、すべて)の粒子が磁性でない。
いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が固体である。いくつかの実施形態では、少なくともいくつか(例えば、すべて)の粒子が多孔性である(例えば、粒子が少なくとも部分的に粒子内に伸長するチャネルを有しうる)。
【0024】
バルク溶解チャンバー264内でサンプルに熱を加える実施形態では、チャンバー264内のサンプルの体積は、該液体の上面がチャンバー264の領域266の内面283と接触するような量である。領域266は、好ましくは平坦であり、かつ熱源から熱を受け取ることによって、その熱が該液体サンプル内の細胞の溶解を実現するように構成される。好ましくは、加熱は接触加熱により、かつ好ましくは加熱によりサンプルを55〜85℃、なおさらに好ましくは65〜75℃の温度にする。カートリッジが作られる材料は典型的に良い絶縁体なので、カートリッジの外側はサンプルの所望温度より20〜40℃、例えば30℃高い温度に達しなければならないことに注意する。
サンプルが溶解チャンバー264内で溶解した後、溶解したサンプルは出口282を通じてマイクロ流体ネットワーク201内に流れる。
なおさらに、カートリッジ200はマイクロ流体ネットワーク201と連絡する試薬入口280を含む。典型的に試薬入口280は、セプタムのような貫通可能な(pierceable)形態の入口である。システム10と関連して本明細書でさらに述べるように、試薬送達ヘッドのノズルと堅固なシールを生じさせるように、試薬入口280を構成してもよい。
カートリッジ200はさらに、調製サンプルを取り出すこと(例えば、遊離又は抽出)できる出口236を含む。出口236は、好ましくは、本技術で使用されるようなPCRチューブ(図4に示さず)内に調製サンプルを向けるように構成される。好ましくは、該PCRチューブ237は、カートリッジ200から取り外すことができ、典型的にバイオテクノロジー業界全体で使用されるものの1つであり、典型的にポリプロピレン等のプラスチック材料で製造され、かつPCRを実行するためのサーマルサイクラー等の他の実験設備、又はTMA、SDA、及びNASBA等の分析を行うための他の設備と適合するように構成される。ここで使用するようなPCRチューブは典型的に0.2mlの有効容積を有するが、0.6mlの有効容積を有することもある。本明細書で述べる方法及び装置で使うための代表的なPCRチューブは供給業者から入手可能であり、供給業者としてはUSP, Inc., San Leandro, CAが挙げられる(http://www.uspinc.com/PCRtubes.htm参照)。好ましくは、本発明で使うPCRチューブは、8本が相互に帯状に連結され、本明細書でさらに述べるようなマルチサンプルカートリッジと共に使用される。
カートリッジ200は廃棄物チャンバー269をも有し、これは入口穴270を介してマイクロ流体ネットワーク201から廃棄物を受け取る。液体が穴270を介してマイクロ流体構成要素201から廃棄物チャンバー269に流れ、穴270を通じて空気が放出されるとき、液体は泡立つ傾向を有し、通気口262からオーバーフローする。この現象を減らすため、廃棄物チャンバー269は、消泡剤(例えば、限定するものではないが、Simeticone)の1つ以上の錠剤を含んでよい。使用する場合、錠剤は典型的に直径が1〜4mmである。
【0025】
図5は、マルチサンプルカートリッジ200の下側の斜視図を示し、代表的なマイクロ流体チャネル285を有するマイクロ流体構成要素201を示す。出口236の回りにノズル284が位置し、PCRチューブのトップと番わせるように構成されることによって、マイクロ流体ネットワークからPCRチューブへのポリヌクレオチド含有サンプルの遊離中の廃棄物を最小限にする。
図6は、例示的なノズル284のクローズアップを示し、ノズル284の外輪に対して同心的な位置にある隆起した円錐状部286を示す。当業者には、本技術で使用されるようなPCRチューブの多くの異なる形状及び幾何学に合わせてこの構成をあつらえうることが分かるだろう。従って、図6に示される構成に限定されない。
【0026】
動作中、マイクロ流体構成要素201はヒーターのアレイに厳密に近接した位置にあるので、マイクロ流体構成要素の種々の要素を制御可能かつ選択的に加熱することができる。図7は、概観して、接触加熱層内に配置されたヒーターのアレイ501の概略を示し、マイクロ流体カートリッジ200のマイクロ流体構成要素201内の種々のマイクロ流体チャネル285に関連して配置されている。アレイ501の各固体要素はヒーターウェーハの伝導要素であり、外部の制御回路に直接又は間接的に連結されており、この回路は特定時間に伝導要素が電流を受け取るように制御する。中にヒーターアレイ501があるヒーターウェーハは、好ましくは、接触する等、マイクロ流体構成要素201と熱伝達状態で配置される。当業者が精通している設計及び製造技術を用いてヒーターアレイ501を作製することができ、例えばPCT/US2005/015345、並びに米国仮出願第60/567,174号、及び第60/645,784号に記載されている(すべてその全体を本明細書で援用する)。
ヒーターアレイ501は、好ましくはマルチサンプルカートリッジ200の個々のカートリッジ又はレーンが別々かつ相互独立に加熱されるように構成されうる。他の実施形態では、ヒーターアレイ501は、カートリッジ又はレーンが対又は集団で、例えば8-レーンカートリッジで一度に4レーンが加熱されるように構成される。
図8は、マイクロ流体ネットワーク201の一部の上に重ねられたヒーターアレイ501の一部の拡大図を示す。図8で分かるように、ヒーターアレイ501の異なる部分は異なる厚さを有する。抵抗加熱の原理によれば、アレイ501の薄い部分は、所定電流で最も熱くなるだろう。505のような要素は加熱を必要とするマイクロ流体要素を持たない、マイクロ流体構成要素201の領域を横切るスペーサーとして働く電流キャリアである。その結果、505のような要素は、アレイ501の全要素の中で最も少ない量の熱を発生する。要素503は中程度の加熱を達成し、典型的に300μmの厚さであるが、280〜320μmの範囲、また250〜350μmの範囲でもよい。要素507及び509は最高の加熱を達成し、ゲート及び弁のようなマイクロ流体構成要素と直接隣接して配置される。要素507及び509は図9でさらに詳細に示される。
図9は、図8の一部のさらなる拡大図を示し、要素507の構造を示す。この構造は、ヒーターアレイ要素の単位長さ当たり最大量の熱を生成する、微小寸法の抵抗ヒーターを有する。ワイヤーの厚さは、典型的に40〜120μm、好ましくは50〜100μm、さらに好ましくは60〜90μm、なおさらに好ましくは70〜80μmである。
【0027】
(マイクロ流体構成要素)
図10に示されるように、マイクロ流体構成要素201は、典型的にいくつかのチャネル、例えば、0.1〜50μlの範囲の体積の液体を送達するように構成されたチャネル234を含む。構成要素201は、好ましくは少なくとも1つの弁又はアクチュエーター、少なくとも1つのゲート、少なくとも1つの穴、少なくとも1つの通気口、少なくとも1つのフィルター、及び少なくとも1つの廃棄物チャンバーから成る群より選択される1つ以上のマイクロ流体要素をも含む。このようなマイクロ流体要素の種々な構成が本明細書で述べる方法の実施に適したマイクロ流体ネットワークと調和するので、図10に示される実施形態に限定する意図ではない。従って、当業者には、図10のマイクロ流体要素の構成は本発明を実施するために立証される1つの構成に過ぎず、本明細書内では明瞭に示していないが、マイクロ流体要素の他の変形が本発明の範囲内であることが分かるだろう。例えば、マイクロ流体構成要素の別の構成が図2に示され、かつ2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号(本明細書で援用する)の添付テキストに記載されている。
図10は構成要素201の平面図を示し、種々のマイクロ流体要素に以下のように符号が付されている:弁(Vi)、ゲート(Gi)、穴(Hi)、通気口(V)、及びフィルター(C.)。ここで、iは、特定タイプの要素の例が1つより多くある場合の整数を表す。図10中、他の図15〜17と同様に、マイクロ流体回路のいくつかの部分は寸法が微小すぎてはっきり現われず、ギャップが明白である。このようなギャップを埋める例示的な構造は、例えば、図21、22、及び24の種々のパネル図を見ることから明らかになる。構成要素201とカートリッジ200との関係は少なくとも以下のとおりである。サンプル入口282は穴H2の上(必ずしも直接上でない)に位置づけられて穴H2と連通している。試薬入口280は穴H1の上に位置づけられて穴H1と連通している。出口270は穴H4の上に位置づけられて穴H4と連通している。出口236は穴H3の上に位置づけられて穴H3と連通している。
マイクロ流体構成要素201の種々の要素は実質的に層207と層205の間に規定されるが、適用可能な場合、層209と連通するように構成される。
チャネル204は穴H1とゲートG5の間をゲートG4経由で伸長する。チャネル206はゲートG5と弁V4の間を伸長する。チャネル208とチャネル211は穴H1とゲートG5の間を伸長し、チャネル206とも連結される。チャネル208とチャネル211はゲートG3と弁V3で相互に隔てられている。ゲートG2はチャネル208上に位置する。
チャネル213はゲートG5から接合部259まで伸長する。チャネル239は接合部259からフィルターC.まで伸長する。フィルターは典型的にビーズカラムである。
チャネル210はフィルターC.から接合部215まで伸長する。ゲートG6は接合部215を混合チャネル212から隔てる。混合チャネル212はゲートG6から穴H3まで伸長する。従って、組み合わせて、チャネル210とチャネル212が、ろ過されたサンプルを穴H3に進ませ、図6に示されるようなノズル284を介して穴236を通ってPCRチューブ(図示せず)内に進ませる。混合チャンバー212は10〜15μlのサンプルを保持するための容量を有し、該チャネル内のターンの数を変えることによって、当該範囲内の特定体積を保持するように構成されうる。
チャネル234は、穴H2から弁V1を経由して一方向に接合部259まで伸長し、穴H2からゲートG2を経由して他方向に穴H4まで伸長する。
チャネル236は接合部257から、弁V2とゲートG1で隔てられている接合部215まで伸長する。
【0028】
ここで、マイクロ流体構成要素201の種々の要素について順次説明する。
(ろ過要素)
図11は、本明細書で述べるようなマイクロ流体構成要素で使うためのろ過要素250、例えばビーズ捕獲フィルター又はビーズカラムを示す。図3を参照すると、マイクロ流体構成要素201の層205、207、及び209が示される。ろ過要素250は、第1セットの条件(例えば、第1の温度及び/又は第1のpH)下でサンプルのポリヌクレオチドを保持し、かつ第2セットの条件(例えば、第2の、より高い温度及び/又は第2の、より塩基性のpH)下で前記ポリヌクレオチドを遊離するように構成された複数の粒子218(例えば、ビーズ、DNA捕獲ビーズ、又は微粒子、例えばミクロスフェア)を保持する。典型的に、ポリヌクレオチドはサンプル中に存在しうる阻害因子に比べて優先的に保持される。粒子218は保持部材216(例えば、カラム)によって拘束され、入口265と出口267との間を移動するとき、ポリヌクレオチド分子が前記保持部材216(例えば、カラム)を通過しなければならない。
典型的には、粒子218上のリガンドは約9.5以下(例えば、約9.0以下、約8.75以下、約8.5以下、好ましくは7.0より高い)のpHを有する液体からポリヌクレオチドを保持する。サンプル溶液がろ過要素250を通じて移動するので、ポリヌクレオチドは保持されるが、液体及び他の溶液成分(例えば、阻害因子)はほとんど保持されず(例えば全く保持されず)、ろ過要素を出る。一般に、pHが約10以上(例えば、約10.5以上、約11.0以上)のとき、リガンドはポリヌクレオチドを遊離する。結果として、リガンド修飾粒子からポリヌクレオチドが周囲の液体中に遊離されうる。
フィルター219は、典型的にはポリカーボネートで製造され、かつ典型的には、用いる最小粒子より約1〜2μm小さい細孔サイズを有し、粒子218がろ過要素の下流に通過するのを阻止する。チャネル287はフィルター219を出口267と連結する。フィルター219は入口265の断面積より大きい表面積を有する。例えば、いくつかの実施形態では、フィルター219の表面積の入口265の断面積(断面積は通常チャネル214の断面積とほぼ同じ)に対する比率は少なくとも約5(例えば、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約50)μm2である。いくつかの実施形態では、フィルター219の断面積は少なくとも1mm2(例えば、少なくとも約2mm2、少なくとも約3mm2)である。
いくつかの実施形態では、入口265及び/又はチャネル214の断面積は約0.25mm2以下(例えば、約0.2mm2以下、約0.15mm2以下、約0.1mm2以下)である。ろ過要素を通って流れる材料にフィルター219によって提供される大きな表面積は、処理領域のボイドボリューム(後述する)の有意な増加を回避しながら目詰まり防止を助ける。
典型的には、入口265とフィルター219との間の総容積(粒子218を含む)は約15μl以下(例えば、約10μl以下、約5μl以下、約2.5μl以下、約2μl以下)である。例示的な実施形態では、総容積は約2.3μlである。いくつかの実施形態では、粒子218はろ過要素の総容積の少なくとも10%(例えば、少なくとも約15%)を占める。いくつかの実施形態では、粒子218は処理チャンバー220の総容積の約75%以下(例えば、約50%以下、約35%以下)を占める。
【0029】
いくつかの実施形態では、液体によって占有され得るろ過要素の容積(例えば粒子218間の隙間を含む、処理領域220のボイドボリューム)は総容積から粒子によって占有される容積を引いた容積にほぼ等しい。典型的に、ろ過要素のボイドボリュームは約10μl以下(例えば、約7.5μl以下、約5μl以下、約2.5μl以下、約2μl以下)である。いくつかの実施形態では、ボイドボリュームは約50ナノリットル以下(例えば、約100ナノリットル以下、約250ナノリットル以下)である。例示的な実施形態では、ろ過要素の総容積は約2.3μlである。例えば、例示的な実施形態では、ろ過要素の総容積が約2.3μlで、粒子によって占有される容積が約0.3μlで、かつ液体に占有され得る容積(ボイドボリューム)が約2μlである。
いくつかの実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は、ろ過要素のボイドボリュームより実質的に小さい。例えば、いくつかの実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は、ボイドボリュームの約35%以下(例えば、約25%以下、約20%以下)である。例示的な実施形態では、フィルター219と出口267の間のチャネル287の容積は約500ナノリットルである。
フィルター219は典型的に幅が粒子218の直径より小さい細孔を有する。例示的な実施形態では、フィルター219は約8ミクロンの平均幅を有する細孔を有し、かつ粒子218は約10ミクロンの平均径を有する。
複数の表面修飾粒子で形成された保持部材を有するとしてろ過要素について述べたが、他の構成も使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、ろ過要素は、ポリヌクレオチドが通過する複数の開口(例えば、細孔及び/又はチャネル)を有する多孔性部材(例えば、フィルター、多孔性膜、又はゲルマトリックス)として構成される保持部材を含む。多孔性部材の表面は、優先的にポリヌクレオチドを保持するように修飾される。例えばOsmonicsから入手可能なフィルター膜は、表面修飾して処理領域220内でポリヌクレオチドを保持するために使用しうるポリマーで形成される。いくつかの実施形態では、処理領域220は、サンプルが通過する複数の面(例えば、壁又はバッフル)として構成される保持部材を含む。壁又はバッフルは優先的にポリヌクレオチドを保持するように修飾される。
【0030】
(チャネル)
マイクロ流体構成要素201のチャネルは、典型的に少なくとも1つの1mm以下の断面寸法を有する。例えば、ネットワーク201のチャネルは約1mm以下(例えば、約750ミクロン以下、約500ミクロン以下、約250ミクロン以下)の幅及び/又は深さを有し、かつ少なくとも1μmの厚さ、好ましくは少なくとも10μmの厚さ、さらに好ましくは少なくとも100μmの厚さである。構成要素201のチャネルは典型的に少なくとも約0.375μl(例えば、少なくとも約0.750μl、少なくとも約1.25μl、少なくとも約2.5μl)の液体を保持する。いくつかの実施形態では、チャネルは約7.5μl以下(例えば、約5μl以下、約4μl以下、約3μl以下)の液体を保持する。
【0031】
(弁)
弁は、弁の一方の側(例えば、弁の上流)の位置からチャネルに沿って材料を弁の他方の側(例えば、弁の下流)の位置に通過させる、通常は開いた状態を有する構成部品である。作動時、弁は、弁の一方の側から他方の側へチャネルに沿って材料が通過するのを阻止する閉じた状態に移行する。例えば、図12に示される弁V1は、第1の温度では相対的に不動性で、第2の温度で可動性である、熱に反応する物質(thermally responsive substance)(TRS)の塊251を含む単弁である。チャンバー253は塊251と気体連絡する。チャンバー253内の気体(例えば、空気)を加熱し、かつTRSの塊251を前記第2の温度に加熱すると(両方とも例えば図7〜9に示されるようなヒーターアレイの抵抗ヒーターを利用して)、チャンバー253の気体圧力が塊251をチャネル204内に動かして、材料がチャネルに沿って通過するのを妨げる。構成要素201の他の弁はV1と同一構造を有し、同一様式で作動する。
TRSの塊は本質的に固体の塊でよく、又は協力して通過を妨げる、より小さい粒子の凝集物でよい。TRSに好適な材料の例として、共晶合金(例えば、はんだ)、ワックス(例えば、オレフィン)、ポリマー、プラスチック、及びその組合せが挙げられる。第1及び第2の温度は、カートリッジ200のポリマー層のような材料を傷つけるには不十分な高さである。通常、第2の温度は約90℃未満であり、第1の温度は第2の温度未満(例えば、約70℃以下)である。
本発明で使うための弁は、二重弁又は単弁でよい。図13A及び13Bで見られるように、二重弁Vi'も弁の一方の側(例えば、弁の上流)の位置からチャネルに沿って材料を弁の他方の側(例えば、弁の下流)の位置に通過させる、通常は開いた状態を有する構成部品である。例として図13A及び13Bの二重弁V11'を考えると、二重弁Vi'は、相互にチャネルのどちらかの側に隔てられたTRS(例えば、共晶合金又はワックス)の第1及び第2の塊314、316を含む。典型的に、TRS塊314、316は相互に片寄っている(例えば、TRS塊の幅の50%以下の距離で)。開いた弁を通って移動する材料は第1及び第2のTRS塊314、316の間を通過する。各TRS塊314、316は、典型的に気体(例えば、空気)を含むそれぞれのチャンバー318、320と関係づけられる。
二重弁Vi'のTRS塊314、316及びチャンバー318、320は、好ましくは図7〜9に示されるような熱源ネットワークの対応する熱源と熱接触している。対応する熱源を作動させると、TRS塊314、316がより可動性の第2の状態(例えば、部分的に溶融した状態)に移行し、チャンバー318、320内の気体の圧力が高まる。この気圧がTRS塊314、316にチャネルC11を横切らせて弁HV11'を閉じる(図13B)。典型的には、塊314、316は少なくとも部分的に結合して塊322を形成し、チャネルC11を遮断する。
8ほどの多くのサンプルレーン又はカートリッジをマルチサンプルカートリッジに適合させるため、カートリッジ上に、有効空間を少なく取るように設計することができる。これは、TRSを含有するチャネルに通気口を加えることによって達成される。
【0032】
(ゲート)
ゲートは、ゲートの一方の側の位置からチャネルにゲートの他方の側の位置に材料を通さない、通常は閉じた状態を有する構成要素である。典型的には、ゲートは作動して(例えば、開いて)、アクチュエーターのチャンバー内に生じた圧力をマイクロ流体構成要素に入らせる。作動時、ゲートは開いた状態に移行し、材料がゲートの一方の側(例えば、ゲートの上流)からゲートの他方の側(例えば、ゲートの下流)に通される。例示的なゲート構造はアクチュエーターと共に図12に示されている。例えば、ゲート242は、接合部255とチャネル240の間の材料の通過を遮断するように位置づけられたTRSの塊271を含む。塊271を第2の温度に加熱すると、塊の状態が変化して(例えば、融解、分散、断片化、及び/又は溶解によって)、接合部255とチャネル240の間の材料の通過を許容する。
ゲートは、典型的には技術上公知のマイクロ流体装置内のアクチュエーターで活性化される。本発明では、ゲートは、好ましくは試薬入口のような入口からの圧力によって作動する。アクチュエーターは、構成要素201の1つの場所と別の場所の間で材料(例えば、サンプル材料及び/又は試薬材料)を動かせる気圧を供給する構成要素である。例えば、図12を参照すると、アクチュエーター244は、中に熱膨張性材料(thermally expansive material)(TEM)の塊273を有するチャンバー272を含む。加熱されると、TEMが膨張することによってチャンバー272内の自由容積を減らし、チャンバー272内の塊273の周囲の気体(例えば、空気)を加圧する。いくつかの実施形態では、アクチュエーター244は、アクチュエーターと接合部255の間に約2.1×104Pa(3psi)(例えば、少なくとも約2.8×104Pa(4psi)、少なくとも約3.4×104Pa(5psi))より高い差次的な圧力を生成できる。
外部源からの圧力を用いて、本発明のマイクロ流体構成要素のゲートを閉じた状態から開いた状態に開かせることができる。本発明では、ゲートは、好ましくは本システムで供給される外部圧力を用いて試薬入口から種々の緩衝液を押し通すことによって開かれる。
【0033】
TEMは、好ましくは図12に示されるように担体277内に分散した複数の密閉された液体レザバー(例えば、球体)275を含む。典型的に、液体はケーシング(例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレート等のモノマーで形成されたポリマーケーシング)内に密閉された高蒸気圧の液体(例えば、イソブタン及び/又はイソペンタン)である。担体277は、レザバー275をチャネル240に沿って通過させずに該レザバー275の膨張を可能にする特性(例えば、より高温で軟化(例えば、融解)するための可撓性及び/又は能力)を有する。いくつかの実施形態では、担体277はワックス(例えば、オレフィン)又は適切なガラス転移温度を有するポリマーである。典型的に、レザバーは、TEMの少なくとも約25質量%(例えば、少なくとも約35質量%、少なくとも約50質量%)を構成する。いくつかの実施形態では、レザバーがTEMの約75質量%以下(例えば、約65質量%以下、約50質量%以下)を構成する。好適な密閉液体レザバーはExpancel(Akzo Nobel)から得られる。
TEMが加熱されると(例えば、少なくとも約50℃の温度に(例えば、少なくとも約75℃、少なくとも約90℃に))、液体が気化して各シールレザバー及び塊273の体積を増やす。担体277が軟化し、塊273を膨張させる。典型的に、TEMは作動中約150℃未満(例えば、約125℃以下、約110℃以下、約100℃以下)の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、TEMの体積は少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍)ほど膨張する。
本発明で使うゲートは単ゲート、又は混合ゲートでよい。混合ゲートは2容量の液体を合わせる(例えば、混合させる)ことのできる構成要素である。
【0034】
(通気口)
通気口は、気体(例えば、空気)、例えば構成要素201内の液体の移動によって置換された気体をチャネルから出させ、同時にチャネルに液体が入るのを制限(例えば、阻止)する構造である。こうして通気口は構成要素201の排気を可能にするので、圧力強化は液体の所望の運動を阻害しない。
典型的に、通気口は疎水性通気口であり、チャネルの壁を画定する多孔性の疎水性材料(例えば、多孔性フィルター、例えばOsmonicsから入手可能な多孔性の疎水性材料)の層を含む。前述したように、疎水性通気口を用いて構成要素201内の所望の場所にサンプルの微小液滴を位置づけることができる。
疎水性通気口は、典型的にチャネルに沿って少なくとも約2.5mm(例えば、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm)の長さを有する。疎水性通気口の長さは典型的に疎水性通気口内のチャネルの深さより少なくとも約5倍(例えば、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍)長い。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性通気口内のチャネル深さが約300ミクロン以下(例えば、約250ミクロン以下、約200ミクロン以下、約150ミクロン以下)である。
疎水性通気口内のチャネルの深さは、典型的に疎水性通気口のチャネルの上流と下流の深さの約75%以下(例えば、約65%以下、約60%以下)である。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性通気口内のチャネルの深さは約150ミクロンで、疎水性通気口のチャネルの上流と下流の深さが約250ミクロンである。
疎水性通気口内のチャネルの幅は、典型的に通気口からチャネルの上流と通気口からチャネルの下流の幅より少なくとも約25%広い(例えば、少なくとも約50%広い)。例えば、典型的な実施形態では、疎水性通気口内のチャネルの幅が約400ミクロンで、通気口からチャネルの上流と下流の幅が約250ミクロンである。
【0035】
(廃棄物チャンバー)
廃棄物チャンバーは、マイクロ流体構成要素内の液体の操作(例えば、運動及び/又は混合)の結果生じる廃棄(例えば、オーバーフロー)液体を受け取ることができる要素である。典型的に、各廃棄物チャンバーは、チャンバーに入る液体によって置換された気体を排気させる随伴空気通気口を有する。例示的な廃棄物チャンバーは図4の269で示される。
【0036】
(システム)
構成要素201の要素は典型的には熱的に作動する。従って、使用中、カートリッジ200は典型的にマイクロ流体構成要素201の要素(例えば、弁、ゲート、アクチュエーター、及び処理領域)を操作するように構成された加熱要素、例えば熱源(例えば、図7〜9に例示されるような抵抗熱源)のアレイと連絡している。‘連絡している’には、熱的に関連している、例えば、熱源と熱接触しているという意味が含まれる。好ましい実施形態では、図1に示されるようなシステム内のカートリッジ受取要素中にカートリッジ200を挿入でき、かつ該要素から取り外すことができる。加熱要素はカートリッジ受取要素と連絡しており、かつカートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成されている。
いくつかの実施形態では、熱源は、加熱要素と連絡している種々の制御回路に命令を伝達することによって、使用中に装置を操作するコンピューターオペレーティングシステムによって操作される。オペレーティングシステムは、所望プロトコルに従って特有の時間に熱源を作動させるように構成されたプロセッサー(例えば、コンピューター)を含む。マイクロ流体装置を操作するように構成されたプロセッサーは、2001年3月28日に提出の米国出願第09/819,105号(本明細書で援用する)に記載されている。他の実施形態では、熱源がシステム自体に必須である。
好ましくは、熱源アレイ内の熱源が、マイクロ流体構成要素201のアクチュエーター、ゲート、及び弁などの要素に対応する場所を有する。
【0037】
(凍結乾燥粒子)
バルク溶解チャンバー264の凍結乾燥試薬ペレット260は、細胞からポリヌクレオチドを遊離する(例えば、細胞を溶解させることによって)ように構成された1つ以上の化合物(例えば、試薬)を含む。例えば、ペレットは、タンパク質(例えば、プロテイナーゼ、プロテアーゼ(例えば、プロナーゼ)、トリプシン、プロテイナーゼK、ファージ溶解酵素(例えば、PlyGBS))、リゾチーム(例えば、ReadyLyseのような修飾リゾチーム)、細胞特異性酵素(例えば、B群鎖球菌を溶解させるためのムタノリシン(mutanolysin)))を低下させる(例えば、変性させる)ように構成された1つ以上の酵素を含みうる。
ペレットは、一般的に少なくとも約6ヶ月(例えば、少なくとも約12ヶ月)の室温(例えば、約20℃)寿命を有する。バルク溶解チャンバーに入る液体サンプルは凍結乾燥化合物を溶かす(例えば、再構成する)。
典型的に、ペレット264は約35μl以下(例えば、約27.5μl以下、約25μl以下、約20μl以下)の平均体積を有する。いくつかの実施形態では、粒子は約8mm以下(例えば、約5mm以下、約4mm以下)の平均径を有する。典型的な実施形態では、凍結乾燥ペレットは約20μlの平均体積と約3.5mmの平均径を有する。
いくつかの実施形態では、ペレットは二者択一的又はさらに、阻害因子に比べてポリヌクレオチドを保持するための成分を含む。例えば、ペレット260は上述したように、リガンドで修飾された複数のペレット表面を含みうる。ペレット260は表面修飾粒子上の結合部位について、測定すべきポリヌクレオチドと競合するであろうポリヌクレオチドを減らす酵素を含みうる。例えば、測定すべきDNAと競合するであろうRNAを減らすため、ペレット260はRNAアーゼ(例えば、RNAseA ISC BioExpress(Amresco))等の酵素を含みうる。
例示的な実施形態では、ペレット260は凍結保護物質を含む。凍結保護物質は一般的に凍結乾燥粒子の安定性を高めるのを助け、かつ粒子の他の成分への損傷を阻止する(例えば、粒子の調製及び/又は貯蔵中の酵素の変性を阻止することによって)のを助ける。いくつかの実施形態では、凍結保護物質は1つ以上の糖類(例えば、1つ以上のニ糖類(例えば、トレハロース、メリジトース(melizitose)、ラフィノース))及び/又は1つ以上のポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)を含む。
所望どおりに凍結乾燥粒子を調製できる。典型的には、凍結保護物質と冷却した疎水性表面を用いて粒子を調製する。典型的には、凍結乾燥粒子の化合物を溶媒(例えば、水)と合わせて溶液を作ってから冷却した疎水性表面(例えば、ダイアモンドフィルム又はポリテトラフルオロエチレン表面)上に置く(例えば、ピペットによって個別アリコートで(例えば滴下))。一般に、表面の温度を液体窒素の温度近傍(例えば、約-101℃(-150°F)以下、約-129℃(-200°F)以下、約-171℃(-275°F)以下)に下げる。溶液が個別粒子として凍結する。凍結粒子を凍結させたままペレットから溶媒を除去する(例えば、昇華によって)のに十分な圧力と時間、真空にさらす。
例えば、凍結保護物質(例えば、6グラムのトレハロース)、リガンドで修飾した複数の粒子(例えば、ポリ-D-リジンリガンドで修飾したカルボキシレートの懸濁液、約2ml)、プロテアーゼ(例えば、400mgのプロナーゼ)、RNAアーゼ(例えば、30mgのRNAseA(120U/mgの活性)、ペプチドグリカンを消化する酵素(例えば、ReadyLyse(例えば、160μlの30000U/μlのReadyLyseの溶液))、細胞特異性酵素(例えば、ムタノリシン(例えば、200μlの50U/μlのムタノリシンの溶液)、及び溶媒(例えば、水)を合わせて約20mlとすることによって、粒子を調製するための溶液を調製できる。この溶液のそれぞれ約20μlの約1,000アリコートを凍結させ、上述したように脱溶媒和させて1,000個のペレットを作る。再構成するとき、このペレットを用いて典型的に全部で約200mlの溶液を作る。
一般に、粒子を作る溶液中の化合物の濃度は、マイクロ流体装置内で再構成されるときの濃度より高い。典型的に、再構成濃度に対する溶液濃度の比率は少なくとも約3(例えば、少なくとも約4.5)である。いくつかの実施形態では、この比率は約6である。
【0038】
(操作)
例示的な実施形態では、図4及び図15〜27に示され、かつ以下に述べるとおりにカートリッジ200を操作する。これらの図面は典型的な実施形態を示しており、他の実施形態、例えば、2005年10月11日提出の米国仮出願第60/726,066号(その全体を本明細書で援用する)の図6〜17に示される典型的操作が本発明の範囲内であることを理解すべきである。
サンプル処理の前、構成要素201の弁は開いた状態で構成され、かつ構成要素201のゲートは閉じた状態で構成される。
流体形態の約1.5mlの臨床サンプル600をサンプル202を通じてバルク溶解チャンバー264に投入する。例えば、サンプル入口202上のルアーに相補的な付属品を有する注射器でサンプルを導入できる。他の実施形態では、導入するサンプルの量は約500μl以下(例えば、約250μl以下、約100μl以下、約50μl以下、約25μl以下、約10μl以下)である。いくつかの実施形態では、サンプルの量は約2ml以下(例えば、1.5ml以下)である。
サンプル入口202を通じて好ましくはサンプル注入と同時に過剰量(約1〜3ml、典型的に2.5ml)の空気をも、密閉されたバルク溶解チャンバー中に注入する。この段階中、流体サンプル上の空気は後に圧力が解放されるまで圧縮下にある。
液体サンプルは、存在する場合、溶解チャンバー264内でバルク溶解試薬ペレットを溶かして、試薬ペレットを捕獲する。再構成された溶解試薬(例えば、ReadyLyse、ムタノリシン)がサンプルの細胞を溶解させ始めてポリヌクレオチドを遊離する。他の試薬(例えば、プロナーゼ等のプロテアーゼ酵素)がサンプル内の阻害因子を減らし、又は変性させ始める。サンプル由来のポリヌクレオチドが、ペレットから遊離された粒子のリガンドと会合(例えば、結合)し始める。
【0039】
カートリッジは、サンプルの導入後又は導入前のどちらかに、図1のシステム10のようなシステムのカートリッジ受取要素内に置かれる。ユーザーがシステムに命令して、例えば、ユーザーインタフェース32を介して適切な命令を送達することによって、サンプル調製を進行させる。好ましい実施形態では、カートリッジ受取要素を受け入れ、かつその受入れをコントローラーに伝達した後、システムが自動的にサンプル調製を開始する。
バルク溶解チャンバー内のサンプルを細胞の化学的溶解を惹起するのに十分な温度まで加熱する。熱だけの適用によって、又は本明細書で述べるように、熱と溶解試薬の組合せによって細胞の溶解が起こりうる。チャンバーは、サンプルの導入中、典型的に約50℃以下(例えば、30℃以下)の温度である。典型的に、溶解が起こっている間、チャンバー264内のサンプルを短時間、好ましくは5〜10分(例えば、約15分以下、約10分以下、約7分以下)60〜80℃の範囲の温度に(例えば、少なくとも約65℃に、少なくとも約70℃に)加熱する。
いくつかの実施形態では、バルク溶解チャンバーに緊密に近接している加熱ランプがサンプルを加熱する。他の実施形態では、溶解チャンバー264の中身を加熱するため少なくとも部分的に光エネルギーを使用する。例えば、装置300を操作するために使用するオペレーティングシステムは、チャンバー264と熱的及び光学的に接触して配置された光源(例えば、主に赤外領域の光を発するランプ)を含むことができる。加熱の特に好ましい様式は、接触加熱、例えば、図1の例示的システム10によって達成されるように、溶解チャンバーの上面266と加熱要素を直接接触させることによる。チャンバー264は、好ましくはチャンバー264内のサンプルの温度をモニターするために使用する温度センサーを含む。熱源の出力は、センサーで決定される温度に基づいて増減される。
バルク溶解試薬は標的細胞の細胞壁を破壊し、PCR阻害タンパク質、脂質等を破壊する試薬のカクテルを含み、かつサンプル中に存在するDNA(又はRNA)を捕獲するDNA(又はRNA)アフィニティービーズ(約10ミクロンの中位径)をも有する。このプロセスは典型的には約1〜約5分かかる。
アフィニティービーズと接触しているサンプルのポリヌクレオチドは、サンプルの液体及び他の特定成分(例えば、阻害因子)に比べて優先的に保持される。典型的には、アフィニティービーズは、処理領域220に入ったサンプル内に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%)のポリヌクレオチドを保持する。
溶解及び試薬ビーズ上へのDNAの捕獲の完了後、図15に示されるように、溶解サンプルは穴H1を通ってマイクロ流体構成要素中に流れる。穴H1は常に開いていてサンプルを流さすことが可能だが、サンプルの通過はゲートG1で効率的に制御されるので、サンプルはG1が開くまでH1を通って出ない。サンプルは弁V1、接合部259を通り過ぎて流れ、捕獲フィルターCに向かってチャネル239に沿って流れる。ゲートG5に向かう動きが邪魔される。
例えば加熱によってゲートG1が開き、チャンバー264からの空気の連続的な膨張が、サンプルをチャネル239に沿って捕獲フィルターCに流させる。チャンバー264内の圧力が溶解サンプル材料(ライセート、粒子に結合したポリヌクレオチド、及び他のサンプル成分を含む)を経路に沿って推し進める。この流動中、図16A及び16Bに示されるように、DNA捕獲ビーズは入口フィルター(C.)で捕捉される。好ましくは、フィルターC.は8ミクロンフィルターである。このプロセス中、弁V12は開いたままである。
次に、ある時間(例えば、約2〜約5分)後、図17に示されるように、バルク溶解チャンバー内の過剰圧力が、ゲートG1を開くことによって廃棄物チャンバーへの穴H4を通じて大気に排気される。
図18に示されるように、今や弁V1が閉じられ、さらなる液体処理の間バルク溶解チャンバー中に戻る如何なる液体漏れをも阻止することによって、溶解チャンバーを封鎖する。
次の工程では、好ましくは図10のようなシステムによって自動的に貫通可能な入口280を通り、かつ穴H1経由で洗浄試薬を投入し、チャネル208、211、213、239、210、236、及び234を通らせ、図19中の陰影流路に沿ってフィルターCを洗浄する。ゲートG1とG3が開かれてこの流路を開き、G2とV1は閉じたままである。典型的には、洗浄液は1つ以上の追加成分(例えば、緩衝液、キレーター、界面活性剤、変性剤、塩基、酸、又はその組合せ)を有する溶液である。この工程で使う洗浄緩衝液の典型量は50μlである。例示的な溶液として、例えば、10〜50mMのTris(pH 8.0)、0.5〜2mMのEDTA、及び0.5%〜2%のSDSの溶液、10〜50mMのTris(pH 8.0)、0.5〜2mMのEDTA、及び0.5%〜2%のTriton X-100の溶液から作られるものが挙げられる。
【0040】
その後、図20中、ビーズカラムに試薬入口を通じて空気、例えば10〜100μlの空気を導入することによって、ビーズカラムを空気でパージする。その結果は、穴H4を通じた廃棄物チャンバーへの洗浄緩衝液のパージングである。
次に、図21中、試薬入口280から遊離緩衝液が投入されて洗浄溶液に取って代わり、かつ遊離緩衝液体積の終点がカラムCを通過する。例示的な遊離液体は例えば、約2mMの水酸化物(例えば、約2mMのNaOH)乃至約500mMの水酸化物(例えば、約500mMのNaOH)の濃度を有する水酸化物溶液(例えば、NaOH溶液)である。いくつかの実施形態では、レザバー281内の液体は、約25mM以下の濃度(例えば、約15mMの水酸化物濃度)を有する水酸化物溶液である。遊離緩衝液の典型量は50μlである。
図22に示されるように、今や弁V2及びV3が閉じてカラムCを封鎖する。遊離緩衝液の存在下でビーズカラムCが70〜90℃に3〜4分間加熱され、アフィニティービーズからDNAを遊離する(図23)。
次に、試薬入口を通じて中和緩衝液(約50μl)が投入され、図24に示されるように、ゲートG4を開くことによって、通気口Vに送られる。弁V4は今や閉じている(図25)。
図26に示されるように、ゲートG4、G5、及びG6を開くことによって、さらに0〜45μlの中和緩衝液が入口280を通じてマイクロ流体構成要素中にポンプで入れられ、遊離されたDNAと混合される。
【0041】
ユーザーが入力すると、空気が再び試薬入口を通じてポンプで入れられ、ゲートG5とG6が開いて中和緩衝液と遊離されたDNAが混ざる。制御様式で反応を開始させることが好ましいことから、この工程は一般的に自動化されない。混合物は、例えば試薬入口を介して伝達される加圧空気を用いて、指定されたチャネル容積を通ってポンプで入れられてDNAと混ざってDNAを中和した後、図27に示されるように、PCRチューブに混合サンプルを放出する。
中和されたDNA(又はRNA)は、サンプル処理装置の最後でPCRチューブに押し進められる。PCRチューブ中の、ポリヌクレオチドが遊離されている液体は、典型的にバルク溶解チャンバー内に導入されたサンプル中に存在するポリヌクレオチドの少なくとも約50%(例えば、少なくとも約75%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%)のポリヌクレオチドを含む。遊離液体の体積は典型的に元の液体サンプルの体積より少ないので、遊離液体中に存在するポリヌクレオチドの濃度は元の液体サンプル中の濃度より高いだろう。例えば遊離液体中のポリヌクレオチドの濃度は装置200に導入されたサンプル中のポリヌクレオチドの濃度より少なくとも約10倍(例えば、少なくとも約25倍、少なくとも約100倍)高い。ポリヌクレオチドが遊離されている液体中に存在する阻害因子の濃度は、ポリヌクレオチドの増幅効率を高めるのに十分な量だけ、元の流体サンプル中の阻害因子の濃度より通常低い。
ポリヌクレオチド含有サンプルをバルク溶解チャンバーに導入することと、ポリヌクレオチドをPCRチューブ中に遊離することの時間間隔は典型的に約15分以下(例えば、約10分以下、約5分以下)である。PCRですぐに使えるDNAを含有するPCRチューブはベンチスケールのPCR検出機でさらに処理する準備ができており、取り出すことができる。
いくつかの実施形態について述べた。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変形を構成しうることが分かるだろう。従って、他の実施形態は添付の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】例示的なマイクロ流体システムの斜視図を示す。
【図2A】図1の例示的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2B】図1の例示的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2C】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2D】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2E】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図2F】図1の典型的なマイクロ流体システムの分解図と、そのマイクロ流体カートリッジと関連する作用を示す。
【図3A】例示的なマルチサンプルカートリッジの平面図を示す。
【図3B】例示的なマルチサンプルカートリッジの平面図を示す。
【図3C−1】上から見た代替マルチサンプルカートリッジの斜視図を示す。
【図3C−2】下側から見た代替マルチサンプルカートリッジの斜視図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体システムであって、以下の要素:
挿入可能かつ除去可能なカートリッジと連絡しているカートリッジ受取要素;
前記カートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成された前記カートリッジ受取要素と連絡している加熱要素;及び
前記加熱要素と連絡している制御回路;
を含み、
前記挿入可能カートリッジが、
前記加熱要素及び前記制御回路と共同して、前記サンプル及び1つ以上の試薬を受け入れ、かつ前記サンプルと前記試薬を反応させて、前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成された少なくとも1つのマイクロ流体構成要素、を含む、
前記マイクロ流体システム。
【請求項2】
挿入可能カートリッジが、さらに、
サンプルを受け取るためのサンプル入口;
1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;及び
調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;
を含む、請求項1のシステム。
【請求項3】
マイクロ流体構成要素が、0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネルを含み、前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、前記試薬入口、及び前記出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にする、請求項2のシステム。
【請求項4】
マイクロ流体構成要素が、
少なくとも1つの弁;
少なくとも1つのゲート;
少なくとも1つフィルター;及び
少なくとも1つの廃棄物チャンバー;
から成る群より選択される1つ以上のマイクロ流体要素を含む、請求項1のシステム。
【請求項5】
弁の1つ以上が、加熱要素によって加熱されるカートリッジの1つの領域に位置し、かつ前記加熱要素が該領域に熱を加えると融解する材料を含む、請求項4のシステム。
【請求項6】
分析が、PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を実行するように構成された機械で行われる、請求項1のシステム。
【請求項7】
サンプルが約0.5mL〜2.0mLの体積である、請求項1のシステム。
【請求項8】
サンプル入口内に前記サンプルを加熱するための加熱要素をさらに含む、請求項2のシステム。
【請求項9】
システムのユーザーに、
該システムの現在の状態;
サンプル調製の進行;及び
システム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージ;
の1つ以上を伝達するディスプレイをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項10】
システムをコンピューター又はコンピューターネットワークに連結するためのインタフェースをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項11】
制御回路を操作するための命令を記憶させるためのコンピューター読取り可能メモリーをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項12】
命令を実行するための処理装置をさらに含む、請求項11のシステム。
【請求項13】
ユーザーからの情報を受け入れるための入力装置をさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項14】
カートリッジが2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項15】
2つ以上のカートリッジを受け入れるように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項16】
3つのカートリッジを受け入れるように構成されている、請求項15のシステム。
【請求項17】
1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体カートリッジであって、
前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;
1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;
調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;及び
0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネルを有するマイクロ流体構成要素;
を含み、
前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、前記試薬入口、及び前記出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にし;かつ
外部熱源と共同して、前記サンプルと前記試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成されている、
前記マイクロ流体カートリッジ。
【請求項18】
PCRチューブが除去可能である、請求項17のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項19】
少なくとも第1のサンプルと第2のサンプル(ここで、前記第1のサンプルと前記第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチドを含有する)を含む、ある数のサンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換するためのマルチサンプルカートリッジであって、
相互別々に添付された少なくとも第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、ここで、前記第1のマイクロ流体構成要素及び前記第2のマイクロ流体構成要素はそれぞれ請求項15のとおりであり、かつ前記第1のマイクロ流体カートリッジが前記第1のサンプルを受け入れ、前記第2のマイクロ流体カートリッジが前記第2のサンプルを受け入れる、
前記マルチサンプルカートリッジ。
【請求項20】
サンプルの数が8である、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項21】
96-ウェルプレートの大きさと実質的に同じ大きさを有する、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項22】
第1のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第1のPCRチューブと、前記第2のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第2のPCRチューブとをさらに含む、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項23】
第1のサンプルが第1の調製サンプルに変換されて前記第1のPCRチューブに送達され、かつ前記第2のサンプルが第2の調製サンプルに変換されて前記第2のPCRチューブに送達される、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項24】
第1のPCRチューブと前記第2のサンプルが相互に9mmの距離隔てられており、前記距離は前記第1のPCRチューブの重心と前記第2のPCRチューブの重心との間で測定される、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項25】
第1のPCRチューブ及び前記第2のPCRチューブが取り外し可能なストリップに取りつけられている、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項26】
1つ以上のポリヌクレオチドを有するいくつかの細胞を含むサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する方法であって、以下の工程:
約0.1〜2.0mLの前記サンプルと過剰量の空気をバルク溶解チャンバーに導入する工程; 前記バルク溶解チャンバー内の前記サンプルに熱を加えて前記サンプルを第1の温度に上昇させることによって、前記サンプル内の細胞を溶解させ、かつ前記1つ以上のポリヌクレオチドを含有するライセートを生成する工程;
前記ライセート内の1つ以上のポリヌクレオチドをアフィニティーマトリックス上に捕獲する工程;
前記ビーズを前記バルク溶解チャンバーから出させてフィルター上に捕捉させる工程;
前記ビーズを洗浄試薬で洗浄する工程;
前記洗浄試薬を遊離緩衝液と置き換える工程;
前記ビーズを第2の温度に加熱することによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離する工程;及び
前記1つ以上のポリヌクレオチドをPCRチューブに移動させる工程;
を含む、前記方法。
【請求項27】
サンプルに熱を加える前に、前記サンプルをバルク溶解チャンバー内で1つ以上の溶解試薬中で溶解する、請求項26の方法。
【請求項28】
アフィニティーマトリックスが1つ以上のビーズを含む、請求項26の方法。
【請求項29】
ビーズを前記第2の温度に加熱した後、
中和緩衝液と前記1つ以上のポリヌクレオチドを混ぜ合わせて1つ以上の中和したポリヌクレオチドを生成する工程:及び
前記1つ以上の中和したポリヌクレオチドをPCRチューブに移す工程;
をさらに含む、請求項26の方法。
【請求項30】
第1の温度が約55〜65℃である、請求項26の方法。
【請求項31】
第2の温度が約70〜95℃である、請求項26の方法。
【請求項32】
ビーズがポリ-リジン又はポリエチレンイミンを含む、請求項26の方法。
【請求項33】
ビーズがミクロスフェアである、請求項26の方法。
【請求項34】
サンプルを約7分間まで前記第1の温度で維持する、請求項26の方法。
【請求項35】
溶解試薬が1つ以上の凍結乾燥ペレットの形態である、請求項27の方法。
【請求項36】
1つ以上のビーズが凍結乾燥ペレットの形態である、請求項28の方法。
【請求項37】
バルク溶解チャンバーと前記PCRチューブがマイクロ流体構成要素の一部である、請求項26の方法。
【請求項38】
1つ以上のポリヌクレオチドを有するいくつかの細胞を含むサンプルを分析する方法であって、
請求項24の方法を用いて、前記サンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する工程;及び
PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を用いて、前記サンプルを分析する工程;
を含む前記方法。
【請求項1】
1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体システムであって、以下の要素:
挿入可能かつ除去可能なカートリッジと連絡しているカートリッジ受取要素;
前記カートリッジの1つ以上の領域を加熱するように構成された前記カートリッジ受取要素と連絡している加熱要素;及び
前記加熱要素と連絡している制御回路;
を含み、
前記挿入可能カートリッジが、
前記加熱要素及び前記制御回路と共同して、前記サンプル及び1つ以上の試薬を受け入れ、かつ前記サンプルと前記試薬を反応させて、前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成された少なくとも1つのマイクロ流体構成要素、を含む、
前記マイクロ流体システム。
【請求項2】
挿入可能カートリッジが、さらに、
サンプルを受け取るためのサンプル入口;
1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;及び
調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;
を含む、請求項1のシステム。
【請求項3】
マイクロ流体構成要素が、0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネルを含み、前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、前記試薬入口、及び前記出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にする、請求項2のシステム。
【請求項4】
マイクロ流体構成要素が、
少なくとも1つの弁;
少なくとも1つのゲート;
少なくとも1つフィルター;及び
少なくとも1つの廃棄物チャンバー;
から成る群より選択される1つ以上のマイクロ流体要素を含む、請求項1のシステム。
【請求項5】
弁の1つ以上が、加熱要素によって加熱されるカートリッジの1つの領域に位置し、かつ前記加熱要素が該領域に熱を加えると融解する材料を含む、請求項4のシステム。
【請求項6】
分析が、PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を実行するように構成された機械で行われる、請求項1のシステム。
【請求項7】
サンプルが約0.5mL〜2.0mLの体積である、請求項1のシステム。
【請求項8】
サンプル入口内に前記サンプルを加熱するための加熱要素をさらに含む、請求項2のシステム。
【請求項9】
システムのユーザーに、
該システムの現在の状態;
サンプル調製の進行;及び
システム又はカートリッジの故障の場合の警告メッセージ;
の1つ以上を伝達するディスプレイをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項10】
システムをコンピューター又はコンピューターネットワークに連結するためのインタフェースをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項11】
制御回路を操作するための命令を記憶させるためのコンピューター読取り可能メモリーをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項12】
命令を実行するための処理装置をさらに含む、請求項11のシステム。
【請求項13】
ユーザーからの情報を受け入れるための入力装置をさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項14】
カートリッジが2つ以上の個別サンプルを受け入れるように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項15】
2つ以上のカートリッジを受け入れるように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項16】
3つのカートリッジを受け入れるように構成されている、請求項15のシステム。
【請求項17】
1つ以上のポリヌクレオチドを含有するサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換するためのマイクロ流体カートリッジであって、
前記サンプルを受け取るためのサンプル入口;
1つ以上の試薬を受け入れるための試薬入口;
調製サンプルをPCRチューブに向けるための出口;及び
0.1〜50μlの範囲の体積の流体を送達するように構成された1つ以上のチャネルを有するマイクロ流体構成要素;
を含み、
前記1つ以上のチャネルは、前記サンプル入口、前記試薬入口、及び前記出口間のサンプル、試薬、及び流体の通過を確実にし;かつ
外部熱源と共同して、前記サンプルと前記試薬を反応させて前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した調製サンプルを生成するように構成されている、
前記マイクロ流体カートリッジ。
【請求項18】
PCRチューブが除去可能である、請求項17のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項19】
少なくとも第1のサンプルと第2のサンプル(ここで、前記第1のサンプルと前記第2のサンプルはそれぞれ1つ以上のポリヌクレオチドを含有する)を含む、ある数のサンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適したそれぞれの形態に変換するためのマルチサンプルカートリッジであって、
相互別々に添付された少なくとも第1のマイクロ流体構成要素及び第2のマイクロ流体構成要素を含み、ここで、前記第1のマイクロ流体構成要素及び前記第2のマイクロ流体構成要素はそれぞれ請求項15のとおりであり、かつ前記第1のマイクロ流体カートリッジが前記第1のサンプルを受け入れ、前記第2のマイクロ流体カートリッジが前記第2のサンプルを受け入れる、
前記マルチサンプルカートリッジ。
【請求項20】
サンプルの数が8である、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項21】
96-ウェルプレートの大きさと実質的に同じ大きさを有する、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項22】
第1のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第1のPCRチューブと、前記第2のマイクロ流体構成要素に取り付けられた第2のPCRチューブとをさらに含む、請求項19のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項23】
第1のサンプルが第1の調製サンプルに変換されて前記第1のPCRチューブに送達され、かつ前記第2のサンプルが第2の調製サンプルに変換されて前記第2のPCRチューブに送達される、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項24】
第1のPCRチューブと前記第2のサンプルが相互に9mmの距離隔てられており、前記距離は前記第1のPCRチューブの重心と前記第2のPCRチューブの重心との間で測定される、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項25】
第1のPCRチューブ及び前記第2のPCRチューブが取り外し可能なストリップに取りつけられている、請求項22のマルチサンプルカートリッジ。
【請求項26】
1つ以上のポリヌクレオチドを有するいくつかの細胞を含むサンプルを該1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する方法であって、以下の工程:
約0.1〜2.0mLの前記サンプルと過剰量の空気をバルク溶解チャンバーに導入する工程; 前記バルク溶解チャンバー内の前記サンプルに熱を加えて前記サンプルを第1の温度に上昇させることによって、前記サンプル内の細胞を溶解させ、かつ前記1つ以上のポリヌクレオチドを含有するライセートを生成する工程;
前記ライセート内の1つ以上のポリヌクレオチドをアフィニティーマトリックス上に捕獲する工程;
前記ビーズを前記バルク溶解チャンバーから出させてフィルター上に捕捉させる工程;
前記ビーズを洗浄試薬で洗浄する工程;
前記洗浄試薬を遊離緩衝液と置き換える工程;
前記ビーズを第2の温度に加熱することによって、前記1つ以上のポリヌクレオチドを遊離する工程;及び
前記1つ以上のポリヌクレオチドをPCRチューブに移動させる工程;
を含む、前記方法。
【請求項27】
サンプルに熱を加える前に、前記サンプルをバルク溶解チャンバー内で1つ以上の溶解試薬中で溶解する、請求項26の方法。
【請求項28】
アフィニティーマトリックスが1つ以上のビーズを含む、請求項26の方法。
【請求項29】
ビーズを前記第2の温度に加熱した後、
中和緩衝液と前記1つ以上のポリヌクレオチドを混ぜ合わせて1つ以上の中和したポリヌクレオチドを生成する工程:及び
前記1つ以上の中和したポリヌクレオチドをPCRチューブに移す工程;
をさらに含む、請求項26の方法。
【請求項30】
第1の温度が約55〜65℃である、請求項26の方法。
【請求項31】
第2の温度が約70〜95℃である、請求項26の方法。
【請求項32】
ビーズがポリ-リジン又はポリエチレンイミンを含む、請求項26の方法。
【請求項33】
ビーズがミクロスフェアである、請求項26の方法。
【請求項34】
サンプルを約7分間まで前記第1の温度で維持する、請求項26の方法。
【請求項35】
溶解試薬が1つ以上の凍結乾燥ペレットの形態である、請求項27の方法。
【請求項36】
1つ以上のビーズが凍結乾燥ペレットの形態である、請求項28の方法。
【請求項37】
バルク溶解チャンバーと前記PCRチューブがマイクロ流体構成要素の一部である、請求項26の方法。
【請求項38】
1つ以上のポリヌクレオチドを有するいくつかの細胞を含むサンプルを分析する方法であって、
請求項24の方法を用いて、前記サンプルを前記1つ以上のポリヌクレオチドの分析に適した形態に変換する工程;及び
PCR、TMA、SDA、及びNASBAから成る群より選択される方法を用いて、前記サンプルを分析する工程;
を含む前記方法。
【図3C−2】代替マルチサンプルカートリッジの上面の平面図を示す。
【図4A】例示的なマイクロ流体カートリッジの断面図及び該カートリッジのマイクロ流体構成要素の平面図を示す。
【図4B】例示的なカートリッジの製造の種々の部分品を示す典型的なカートリッジの分解図を示す。
【図5】マイクロ流体カートリッジの裏面図を示す。
【図6】マイクロ流体カートリッジの裏面で見られる、PCRチューブに材料を分配するための例示的ノズルの図を示す。
【図7】マイクロ流体カートリッジと関連して使用するヒーターアクチュエーターの典型的アレイを示す。
【図8】マイクロ流体カートリッジと関連する、図7のヒーターアクチュエーターのアレイの一部を示す。
【図9】マイクロ流体カートリッジの一部と関連する、図8のヒーターアクチュエーターのアレイの一部の領域を示す。
【図10】例示的なマイクロ流体構成要素の平面図を示す。
【図11】ポリヌクレオチドを保持し、及び/又は阻害因子からポリヌクレオチドを分離するための例示的な処理領域の断面図である。
【図12】例示的な弁を示す。
【図13A】例示的な二重弁の開いた状態を示す。
【図13B】例示的な二重弁の閉じた状態を示す。
【図14】例示的なアクチュエーターの断面図であり、例示的なゲートをも示す。
【図15】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図16】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図17】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図18】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図19】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図20】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図21】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図22】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図23】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図24】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図25】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図26】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図27】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C−1】
【図3C−2】
【図3C−3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2E】
【図4A】例示的なマイクロ流体カートリッジの断面図及び該カートリッジのマイクロ流体構成要素の平面図を示す。
【図4B】例示的なカートリッジの製造の種々の部分品を示す典型的なカートリッジの分解図を示す。
【図5】マイクロ流体カートリッジの裏面図を示す。
【図6】マイクロ流体カートリッジの裏面で見られる、PCRチューブに材料を分配するための例示的ノズルの図を示す。
【図7】マイクロ流体カートリッジと関連して使用するヒーターアクチュエーターの典型的アレイを示す。
【図8】マイクロ流体カートリッジと関連する、図7のヒーターアクチュエーターのアレイの一部を示す。
【図9】マイクロ流体カートリッジの一部と関連する、図8のヒーターアクチュエーターのアレイの一部の領域を示す。
【図10】例示的なマイクロ流体構成要素の平面図を示す。
【図11】ポリヌクレオチドを保持し、及び/又は阻害因子からポリヌクレオチドを分離するための例示的な処理領域の断面図である。
【図12】例示的な弁を示す。
【図13A】例示的な二重弁の開いた状態を示す。
【図13B】例示的な二重弁の閉じた状態を示す。
【図14】例示的なアクチュエーターの断面図であり、例示的なゲートをも示す。
【図15】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図16】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図17】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図18】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図19】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図20】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図21】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図22】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図23】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図24】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図25】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図26】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図27】例示的なマイクロ流体カートリッジの動作中の工程を示す。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C−1】
【図3C−2】
【図3C−3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2E】
【公表番号】特表2009−511059(P2009−511059A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535733(P2008−535733)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/040171
【国際公開番号】WO2007/044917
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503354871)ハンディーラブ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/040171
【国際公開番号】WO2007/044917
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503354871)ハンディーラブ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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