説明

ポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法、ポリビニルアルコールラミネート紙及び化粧箱

【課題】PVAフィルムに水系接着剤を塗布して紙を積層したラミネート紙を製造しても、そのラミネート紙に皺及び凹カールのないポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法、また、皺及び凹カールのないポリビニルアルコールラミネート紙、及び簡単にリサイクル処理ができる化粧箱を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコールフィルム3の表面にアルミニウムを真空蒸着したアルミニウム蒸着層4が設けられており、その裏面に上記水系接着剤2が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である該水系接着剤を塗布して基紙1と貼り合わせて、上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法、ポリビニルアルコールラミネート紙、その紙から加工される化粧箱に関し、詳細には、ポリビニルアルコールフィルムにアルミニウム蒸着層が設けられているポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法、皺及び凹カールの発生がないポリビニルアルコールラミネート紙、そして、リサイクルができる化粧箱に関する。
【背景技術】
【0002】
高級化粧品箱や高級健康食品箱等の美粧性に優れた化粧箱用のラミネート紙は、従来PETフィルム、PPフィルム、塩ビフィルムに金属、例えばアルミニウム等を真空蒸着したフィルムを作製し、接着剤を介して紙を貼り合わせたラミネート紙を製造するのが一般的である。しかし、これらのラミネート紙を紙の原料としてリサイクルする場合、上記方法で製造されたPETフィルムラミネート紙等は、このラミネート紙を廃棄するために焼却する際に、焼却時に高温となって焼却炉を傷めたり、焼却後の残渣が多くなったりして、その廃棄に手間取るという問題が指摘されている(特許文献1参照)。そのために、上記PETフィルムラミネート紙等は、紙とPETフィルム等を分離する必要があるためにリサイクル処理を難しくしており、分離処理、高コストが問題であるといわれている。またその際、分離しきれなかったPETフィルム等が紙原料に混入する問題があり、リサイクルされた紙の品質が低いためにダンボールライナー等の低級紙等に利用が限定される問題も指摘されている。
【0003】
ラミネート紙のリサイクルに関して、特許文献2には、紙基材の1面に紙基材に接着剤であるポリビニルアルコール樹脂を塗布して、水溶性ポリビニルアルコール層を積層してなる緩衝部材用ラミネート紙の発明が提案されており、この水溶性ポリビニルアルコールのフィルムは水に溶けるので、廃棄処理が容易、再生可能であって環境にやさしい素材となる効果を奏するものである(特許文献2参照)。
一方、上記緩衝部材用ラミネート紙は、紙基材に貼り合わせた水溶性ポリビニルアルコール層に吸湿性を有するのに対して、例えばPETフィルムに吸湿性がないので、PETフィルムのラミネート紙のPETフィルムを上にした場合には、該ラミネート紙は凹カールを生じることが知られている(図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−309817号公報
【特許文献2】特開平09−262935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したPETフィルムラミネート紙等は、金属を真空蒸着したフィルムを作製して水系接着剤を介して紙を貼り合わせる場合に、PETフィルム等が水を吸収しないので、紙と貼り合わせても問題を生じることはない。ところが、特許文献2の緩衝部材用ラミネート紙は、ラミネート紙の樹脂フィルムにポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)を用いることで該PVAフィルムが水に溶けるので、紙と樹脂フィルムを分離する必要はない。この緩衝部材用ラミネート紙は、PVA系接着剤を用いて紙に貼り合わせているが、PVAフィルムが水系接着剤の水分で伸びた状態となり、乾燥する工程でPVAフィルムに皺が発生する恐れがあるが、緩衝部材に用いるものであるから皺が発生しても問題はない。しかし、化粧箱用のラミネート紙は、皺が発生したものは不良品となるために、本発明者等が知る限りにおいて、PVAフィルムに水系接着剤を用いて化粧箱用のラミネート紙を製造し、それを加工した化粧箱はいまだ商品化されていないのが現状である。そのために、PETフィルムラミネート紙等は分離作業、高コストがかかりリサイクル処理が難しい状況にある。
【0006】
また、上述したPETフィルムラミネート紙の凹カールは、該ラミネート紙をオフセット印刷機で印刷する際に、不均一な印刷や印刷のずれを生じたりする恐れがあるので、この不均一な印刷や印刷のずれを生じさせないために、印刷工程は、その温度・湿度管理や印刷制御管理を厳格に行う必要がありコストの低減、生産効率の向上の妨げとなっている。そのために、PVAフィルムラミネート紙を加工した化粧箱が生産できないため、簡単にリサイクル処理ができないのが現状である。
それ故に、本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、PVAフィルムに水系接着剤を介して紙を積層したラミネート紙を製造する際に、そのラミネート紙に皺及び凹カールのないポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法、また、皺及び凹カールのないポリビニルアルコールラミネート紙、及び簡単にリサイクル処理ができる化粧箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ポリビニルアルコールフィルムに塗布する水系接着剤を、その濃度、粘度そして塗布量を決めるのに、試行錯誤しながら無数のポリビニルアルコールフィルムに塗布してポリビニルアルコールラミネート紙の製造を試みたが、製造されたポリビニルアルコールラミネート紙が、基紙とポリビニルアルコールフィルムが十分な接着力を得られずに剥がれてしまうもの、又は乾燥する過程でポリビニルアルコールフィルムが吸湿した状態で乾燥されて皺になるものばかりであった。ところが、水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量を塗布して基紙と貼り合わせると、上記の剥がれと皺のないポリビニルアルコールラミネート紙が製造できることを見出して、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するために、請求項1に係るポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムの片面に接着剤を塗布して基紙と貼り合わせて製造するラミネート紙の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであり、前記接着剤が水系接着剤であり、上記ポリビニルアルコールフィルムの表面にアルミニウムを真空蒸着したアルミニウム蒸着層が設けられており、その裏面に上記水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である該水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせて、上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成する、又は、上記ポリビニルアルコールフィルムの裏面に上記水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である該水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせ、上記ポリビニルアルコールフィルムにアルミニウムを真空蒸着した転写箔のアルミニウム蒸着層を転写して、上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成することを特徴とする。
請求項2に係るポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、前記転写箔のアルミニウム蒸着層を転写する方法が、ホットスタンプ又はコールド転写加工であることを特徴とする。
請求項3に係るポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、前記ポリビニルアルコールフィルムが80〜99モル%のケン化度、5〜100μmの厚み、85〜95%の透明度であることを特徴とする。
請求項4に係るポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、前記基紙が非塗被紙、アート紙、コート紙又はキャストコート紙であり、その坪量が70〜500g/m2であることを特徴とする。
請求項5に係るポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、前記金属薄膜層にプライマー層を形成することを特徴とする。
請求項6に係るポリビニルアルコールラミネート紙は、熱可塑性樹脂フィルムと基紙を接着剤で貼り合わせてなるラミネート紙であって、前記熱可塑性樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであり、前記接着剤が水系接着剤であり、前記基紙が非塗被紙、アート紙、コート紙又はキャストコート紙であり、前記ラミネート紙が上記基紙、上記水系接着剤、アルミニウム蒸着層及び印刷層が設けられた上記ポリビニルアルコールフィルムを積層してなり、上記ラミネート紙が面感で良好であり、カールの4角測定で±0mmであることを特徴とする。
請求項7に係る化粧箱は、請求項6に記載のポリビニルアルコールラミネート紙を加工してなることを特徴とする。
請求項8に係る化粧箱は、前記化粧箱のポリビニルアルコールフィルム、アルミニウム蒸着層、水系接着剤がアルカリ性水溶液により溶解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法は、水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせることで、基紙とPVAフィルムが剥がれることがなく、また乾燥する過程でPVAフィルムが皺にならず、また、上記ラミネート紙をオフセット印刷機で印刷する際に、不均一な印刷や印刷のずれが生じることがない上記ラミネート紙を製造でき、また、印刷工程は、その温度・湿度管理や印刷制御管理を厳格に行う必要がないので、コストの低減、生産効率の向上が図られる。
そして、上記製造方法は、水系接着剤の濃度、粘度及び塗布量が上記値の範囲内であれば、アルミニウム蒸着層を設ける方法が、ポリビニルアルコールフィルムの表面にアルミニウム蒸着層を設ける方法、ホットスタンプによる方法又はコールド転写加工による方法の何れの方法であっても使用でき、また、ポリビニルアルコールフィルムのケン化度が80〜99モル%であるので、水離解性が良好である。
本発明のポリビニルアルコールラミネート紙は、基紙、水系接着剤、アルミニウム蒸着層及び印刷層が設けられたポリビニルアルコールフィルムを積層してなり、上記ポリビニルアルコールラミネート紙が面感で良好であり、カールの4角測定で±0mmであるので、上記ラミネート紙をオフセット印刷機で印刷する際に、コストの低減、生産効率の向上が図られ、また、上記ラミネート紙を加工して化粧箱を生産する際に、品質が良質なものである。
本発明の化粧箱は、ポリビニルアルコールフィルム、アルミニウム蒸着層、水系接着剤がアルカリ性水溶液により溶解するので、簡単に繊維回収のリサイクル処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】PVAラミネート紙の製造方法、そして、そのPVAラミネート紙の第1の実施の形態を示す図。
【図2】第2の実施の形態を示す図。
【図3】第3の実施の形態を示す図。
【図4】本発明のPVAラミネート紙の面感が良好であり且つカールの4角測定が±0mmであることを表す写真。
【図5】PETフィルムラミネート紙のPETフィルムを上にした場合の凹カールを表す写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のPVAラミネート紙の製造方法及びそのPVAラミネート紙の第1の実施の形態を示す図であり、図2は、その第2の実施の形態を示す図であり、図3は、その第3の実施の形態を示す図である。各図の各層の厚さはその内容を理解し易くするために各層ともに同じ厚さで表している。
図1〜図3の符号1は基紙を示し、符号2は水系接着剤を示し、符号3はPVAフィルムを示し、符号4はアルミニウム蒸着層を示している。PVAフィルム3の表面にアルミニウムを真空蒸着したアルミニウム蒸着層4が設けられており、その下に印刷層が設けられている。その裏面に上記水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量を塗布して基紙と貼り合わせることでPVAラミネート紙が製造される。
【0011】
PVAフィルムは、従来のPETフィルムと比較すると耐水性が弱いことがリサイクルをする上で長所であるが、反面水系接着剤を用いて貼り合わせする場合は、水系接着剤の塗布量が多いとPVAフィルムが伸び乾燥する工程で皺が入り易く、また、水系接着剤の塗布量が少ないとPVAフィルムが基紙に接着せずに剥がれやすい。
ラミネーターの水系接着剤を塗布する塗布機は、ロールコーターが一般的であり、その水系接着剤の濃度、粘度そして塗布量は、要求性能、加工速度、乾燥能力等によって決定されるが、40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量を塗布して基紙と貼り合わせて製造することが必要である。
【0012】
PET、PP等のフィルムと基紙を貼り合わせする接着剤は、その濃度が40〜55%、粘度が500〜10,000mPa・s、塗布量が2〜10g/m2の範囲のものを用いるのが一般的だが、本発明のPVAフィルム3に使用する水系接着剤2は、その濃度が40〜60%であり、その粘度が500〜4,000mPa・sであり、塗布量が3〜5g/m2の範囲のものが望ましい。
PETフィルムの場合は、濃度が低ければ塗布量を上げ、粘度が高ければ水等の溶媒で薄め、塗布量が2〜10g/m2の範囲のものを使用することができるが、PVAフィルム3に水系接着剤2を塗布する場合は、その水系接着剤2の濃度、粘度そして塗布量の配慮が必要である。
【0013】
濃度が40%以下だと十分な接着力が得られなくなるので塗布量を上げる必要が生じ、濃度が60%以上だとPVAフィルムに水系接着剤2を均一に塗布することが困難になるので、水等の溶媒で薄める必要が生じる。また、粘度が500mPa・s以下だとロールコーターのロールから水系接着剤2が流出して必要な塗布量を塗布できなくなり、粘度が4,000mPa・sを超えるとロールコーターのロール目が出て、アルミニウム蒸着の鏡面の面感が悪くなる。本発明のPVAフィルム3に使用する水系接着剤2は、その濃度が40〜60%であり、その粘度が500〜4,000mPa・sであれば上記の問題を生じない。しかし、その濃度及び粘度が上記の範囲にあるとしても、PVAフィルム3に水系接着剤2を塗布する厚みが3g/m2未満では、水系接着剤2がPVAフィルム3に吸収されてから基紙1の表面を接着するために、水系接着剤2の塗布量が少なくなり十分な接着力を得られないために、基紙1からPVAフィルム3が剥がれやすい。また、塗布する厚みが5g/m2を超えると、水系接着剤2がPVAフィルム3に吸収されすぎるために、水分を乾燥する過程で、PVAフィルムが吸湿した状態で乾燥されて皺になり易い。
【0014】
図1の第1の実施の形態は、基紙1が水系接着剤2によりアルミ蒸着層4を伴ったPVAフィルム3と貼合される。アルミ蒸着層4の上層へはグラビア印刷等により蒸着保護を兼ねた印刷適性向上層(プライマー層)を設ける。
ここで使用される基材である基紙1は、非塗被紙、アート紙、コート紙(塗被紙)、キャストコート紙等を挙げることができ、坪量が70〜500g/m2の厚みの紙で、特に限定されるものではないが、より高級な箱を目的とするには、好ましくは250〜350g/m2の平滑性の高いキャストコート紙が望ましい。
【0015】
PVAフィルムは、ケン化度80〜99モル%の市販のフィルムを使用する。ケン化度が80モル%未満の場合は水離解性が低下し好ましくない。厚みは、5〜100μm程度で、5μm以下では製膜が容易でなく、100μm以上では、水離解性が劣り、コストもアップする。よって、美粧性とコストから好ましくは、10〜30μm程度が望ましい。
透明度についても85〜95%のPVAフィルムが良い。85%未満だと蒸着時の輝度が落ち、95%を超えると製造コストアップとなる。更にアルミニウムを蒸着する手段としては、特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があげられる。蒸着層の厚さは、0.03〜0.06μm程度で、フィルムとの密着性を向上させる目的で、水離解性を阻害しない樹脂下塗り層を設けても良い。
使用する水系接着剤については、色の付いたものやホットメルト接着剤以外の接着剤が使用でき、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、エチレン酢ビ共重合樹脂、酢ビアクリル共重合樹脂、スチレンブタジエン共重合物、アクリロニトリルブタジエン共重合物、PVA、澱粉、カゼイン等の蛋白、カルボキシメチルセルロース等の公知の接着剤を使用することができ、高位な再生紙として利用可能にするためにアルカリ可溶性の接着剤の使用が望ましい。
【0016】
なお、本用紙使用の損紙や回収した化粧箱からの繊維再生の際は、公知の技術である再生処理方法がとられる。通常、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、消石灰等を温水と混合してアルカリ性水溶液にし、そのアルカリ性水溶液の入ったパルパーに損紙、回収した化粧箱を投入すれば、PVAフィルムは溶解し、アルミニウム蒸着層はアルカリと反応しアルミン酸イオンとして溶解し、蒸着層の痕跡が無くなり、印刷インキは、フローテーション法により系外に除去され、上記化粧箱等の繊維を回収することができる。
【0017】
第2の実施の形態を示す図2を説明する。
図1の説明で用いた符号1〜4は、図2の説明で用いる符号1〜4が同じものを示しているので、その符号の説明は省略する。符号5は離型層を示し、符号6はPETフィルムを示し、符号7は熱可塑性樹脂を示している。
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態がポリビニルアルコールフィルムの表面にアルミニウム蒸着層が設けられており、その裏面に上記水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせて製造するのに対して、第2の実施の形態は、ポリビニルアルコールフィルムの裏面に上記水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせ、このポリビニルアルコールフィルムに転写箔のアルミニウム蒸着層を転写して製造する点である。
詳細には、上記ポリビニルアルコールフィルムに転写箔のアルミニウム蒸着層を転写する方法は、従来から用いられている熱圧着によるホットスタンプの方式を用いている。
【0018】
第3の実施の形態を示す図3を説明する。
図2の説明で用いた符号1〜6は、図3の説明で用いる符号1〜6が同じものを示しているので、その符号の説明は省略する。符号8は接着剤層を示している。
第3の実施の形態は第2の実施の形態と上記ポリビニルアルコールフィルムに転写箔のアルミニウム蒸着層を転写する点で同じであるが、その転写する方法は、従来から用いられている紫外線・電子線によるコールド転写加工を用いている。
【実施例】
【0019】
第1の実施形態として実施例1及び2を以下に説明する。
(実施例1)
基紙として、巾800mm、坪量279g/m2のキャストコート紙(五條製紙製「GLORIA」)を使用し、PVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ12μm))にアルミニウムを真空蒸着して、その真空蒸着したPVAフィルムにエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(サイデン化学製「DB314」、(濃度53%、粘度500mPa・s))を接着剤として、塗布量が3g/m2となるようウェットラミネーターで塗布し、PVAフィルム面とキャストコート紙のコート面を貼合して、更にアルミニウム蒸着面に蒸着層の保護と印刷適性の向上のために、ポリエステル系のプライマー剤(DIC製「UVプライマー」)を厚さが1μmとなるようグラビアコーターを用いて塗布してプライマー層を設け、その後に乾燥してポリビニルアルコールラミネート紙を得た。この時の、ラミネーター速度は100m/分、乾燥温度は90℃であった。
上記ポリビニルアルコールラミネート紙にUVオフセット印刷機にて5色(白、墨、藍、紅、黄)の印刷を行い印刷層を形成し、更にニスを印刷した後に、その印刷したポリビニルアルコールラミネート紙を打ち抜いて製函して加工し、高級な化粧箱を製作した。
【0020】
(実施例2)
基紙として、巾800mm、坪量310g/m2のコート紙(日本大昭和板紙製「JETエース」)を使用しウェットラミネーターで、PVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ12μm))にアルミニウムを真空蒸着して、その真空蒸着したPVAフィルムにエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(サイデン化学製「PZ905」、(濃度47%、粘度1,250mPa・s))を接着剤として、塗布量が4g/m2となるようウェットラミネーターで塗布し、PVAフィルム面とコート紙のコート面を貼合して、更にアルミニウム蒸着面に蒸着層の保護と印刷適性を向上させるため、実施例1と同じポリエステル系のプライマー剤(DIC製「UVプライマー」)を厚さが1μmとなるようグラビアコーターを用いて塗布してプライマー層を設け、その後に乾燥してポリビニルアルコールラミネート紙を得た。この時の、ラミネーター速度は100m/分、乾燥温度は90℃であった。
上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成した後に、高級な化粧箱を製作する製造工程は、実施例1と同じなので省略する。
【0021】
第2の実施形態として実施例3及び4を以下に説明する。
(実施例3)
基紙として、巾800mm、坪量315g/m2のキャストコート紙(五條製紙製「GLORIA」)を使用しウェットラミネーターで、PVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ14μm))に接着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(コニシ製「SP2850」、(濃度51%、粘度3,000mPa・s))を塗布量が5g/m2となるよう塗布して、PVAフィルム面とキャストコート紙のコート面を貼合し乾燥して巻き取り、PVAフィルムとコート紙の積層紙を形成した。転写箔として、ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmに剥離層を設け更にアルミニウムを真空蒸着したもの(中井工業製「ナフタップ」)を使用し、転写箔の蒸着面に塗布量が5g/m2となるように、水系ドライラミネート接着剤(日栄化工製「AP355」、(濃度45%、粘度500mPa・s))をグラビアコーターで塗布し90℃で水分を除去乾燥して、上記積層紙と転写箔を圧着させ巻き取った。
更に熟成後にポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がしながらアルミニウム蒸着層を積層紙に転写させ、実施例1と同様のプライマー層を設けた。
上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成した後に、高級な化粧箱を製作する製造工程は、実施例1と同じなので省略する。
【0022】
(実施例4)
基紙として、巾800mm、坪量315g/m2のキャストコート紙(五條製紙製「GLORIA」)を使用しウェットラミネーターで、実施例3と同様にPVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ14μm))にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(コニシ製「SP2850」、(濃度51%、粘度3,000mPa・s))を接着剤として、塗布量が3g/m2となるようPVAフィルム面とキャストコート紙のコート面と貼合し、乾燥し巻き取った。その巻取りを平判カッターにて、シートにカッティングし、印刷用基紙とした。その印刷用基紙を使用し、シリンダー箔押し機にて、全面押し型により箔(村田金箔製「グリームホイルUPP」)を120℃で熱圧着し、アルミニウム箔転写ラミネート紙を得た。
上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成した後に、高級な化粧箱を製作する製造工程は、実施例1と同じなので省略する。
【0023】
第3の実施形態として実施例5を以下に説明する。
(実施例5)
基紙として、巾800mm、坪量315g/m2のキャストコート紙(五條製紙製「GLORIA」)を使用しウェットラミネーターで、実施例3と同様にPVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ14μm))にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(コニシ製「SP2850」、(濃度51%、粘度3,000mPa・s))を接着剤として、塗布量が3g/m2となるようPVAフィルム面とキャストコート紙のコート面と貼合し、乾燥し巻き取った。その巻取りを平判カッターにて、シートにカッティングし、印刷用基紙とした。複数のユニットを持つUVオフセット印刷機を使用し、第1のユニットで、上記基紙に接着剤(T&K TOKA製「UV糊SPP」)を全面塗布し、箔加工ユニットを設けた第2のユニットで、箔転写加工用フィルム(クルツ製「AL−KPS−OS」)を圧着し、直ちにフィルムを剥離し箔を転写した。そして、続く第3〜第8のユニットで、5色(白、墨、藍、紅、黄)とニスを印刷し、紫外線照射ランプにより紫外線を照射し、箔の接着及びインキの定着をして印刷層を形成し、その後に打ち抜いて製函して加工し、高級な化粧箱を製作した。
【0024】
(比較例1)
基紙として、巾800mm、坪量310g/m2のコート紙(日本大昭和板紙製「JETエース」)を使用しウェットラミネーターで、PVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ12μm))にアルミニウムを真空蒸着したフィルムをアクリル共重合樹脂(サイデン化学製「PZ905」、(濃度47%、粘度1,250mPa・s))を接着剤として、塗布量が7g/m2となるようPVAフィルム面とコート紙のコート面と貼合し、更にアルミニウム蒸着面に蒸着層の保護と印刷適性の向上のために、実施例1と同じポリエステル系のプライマー剤(DIC製「UVプライマー」)を1μmとなるようグラビアコーターを用いて、塗布乾燥したが、乾燥炉内で皺が発生した。
【0025】
(比較例2)
基紙として、巾800mm、坪量310g/m2のコート紙(日本大昭和板紙製「JETエース」)を使用しウェットラミネーターで、PVAフィルム(日本合成製「ボブロン」(厚さ12μm))にアルミニウムを真空蒸着したフィルムをアクリル共重合樹脂(サイデン化学製「PZ905」、(濃度47%、粘度1,250mPa・s))を接着剤として、塗布量が2g/m2となるようPVAフィルム面とコート紙のコート面と貼合し、更にアルミニウム蒸着面に蒸着層の保護と印刷適性の向上のために、実施例1と同じポリエステル系のプライマー剤(DIC製「UVプライマー」)を1μmとなるようグラビアコーターを用いて、塗布乾燥したが、紙表面のへこんだ部分で、接着が不十分な箇所が発生した。
【0026】
(比較例3)
基紙として、巾800mm、坪量279g/m2のキャストコート紙(五條製紙製「GLORIA」)を使用しウェットラミネーターで、アルミニウム真空蒸着したPETフィルム(東レフィルム加工製「VM-PET1510」(厚さ12μm))をエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(サイデン化学製「DB314」、(濃度53%、粘度500mPa・s))を接着剤として、塗布量が7g/m2となるようフィルム面とキャストコート紙のコート面と貼合し、更にアルミニウム蒸着面に蒸着層の保護と印刷適性を向上させる目的で、実施例1と同様のプライマー層を設けた。
【0027】
実施例および比較例における評価の方法については、(a)(b)(c)の方法で行った。
(a)水離解性;ポリビニルアルコールラミネート紙を2cm×10cmの短冊状に準備し、およそ10gに量り取ったのち、1Lのカセイソーダ0.5%水に浸漬し、ミキサーにて紙繊維を解きほぐしスラリー化する。印刷インキに関しては、フローテーション法により系外に除去する。このスラリーを用いて手漉きシートを作製し(JIS P8222)、シート上にフィルムが残留するかを評価する。シート上にフィルムが残留していなければ水離解性が「有り」、シート上にフィルムが残留していれば水離解性が「無し」とした。
(b)カール;流れ方向63mm×幅方向88mmにカットした貼合紙を、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に3時間暴露したのちに、用紙の反りあがりを4角測定し、一番大きい数値を評価する。フィルム面を上にし、凹カールは、+カール、凸カールは、−カールで表記する。
(c) 面感;しわ跡があれば「しわ跡」、浮き跡があれば「浮き跡」、良好であれば「良好」と目視により判断した。
【表1】

【0028】
水離解性、カール及び面感の評価に対して、PVAフィルムを用いた比較例1及び2は、水離解性が「有り」で、カールが「±0mm」であり、面感が「しわ跡」又は「浮き跡」であるのに対して、PETフィルムを用いた比較例3は、水離解性が「無し」で、カールが「+10mm」であり、面感が「良好」である。同様に、それに対する実施例1〜5は、水離解性が「有り」で、カールが「±0mm」であり、面感が「良好」である。
以上の評価結果から、PVAフィルムを用いた実施例、比較例1及び2は、水離解性が「有り」で、カールが「±0mm」であるが、水系接着剤の塗布量が3〜5g/m2である実施例の面感が「良好」であるのに対して、その範囲外の比較例1及び2の面感が「しわ跡」又は「浮き跡」であることが分かる。
【符号の説明】
【0029】
1 基紙
2 水系接着剤
3 PVAフィルム
4 アルミニウム蒸着層
5 離型層
6 PETフィルム
7 熱可塑性樹脂
8 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムの片面に接着剤を塗布して基紙と貼り合わせて製造するラミネート紙の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであり、前記接着剤が水系接着剤であり、上記ポリビニルアルコールフィルムの表面にアルミニウムを真空蒸着したアルミニウム蒸着層が設けられており、その裏面に上記水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である該水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせて、上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成する、又は、上記ポリビニルアルコールフィルムの裏面に上記水系接着剤が40〜60%の濃度であり、500〜4,000mPa・sの粘度であり、3〜5g/m2の塗布量である該水系接着剤を塗布して基紙と貼り合わせ、上記ポリビニルアルコールフィルムにアルミニウムを真空蒸着した転写箔のアルミニウム蒸着層を転写して、上記ポリビニルアルコールラミネート紙に印刷して印刷層を形成することを特徴とするポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法。
【請求項2】
前記転写箔のアルミニウム蒸着層を転写する方法が、ホットスタンプ又はコールド転写加工であることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールフィルムが80〜99モル%のケン化度、5〜100μmの厚み、85〜95%の透明度であることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載のポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法。
【請求項4】
前記基紙が非塗被紙、アート紙、コート紙又はキャストコート紙であり、その坪量が70〜500g/m2であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法。
【請求項5】
前記金属薄膜層にプライマー層を形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のポリビニルアルコールラミネート紙の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂フィルムと基紙を接着剤で貼り合わせてなるラミネート紙であって、前記熱可塑性樹脂フィルムがポリビニルアルコールフィルムであり、前記接着剤が水系接着剤であり、前記基紙が非塗被紙、アート紙、コート紙又はキャストコート紙であり、前記ラミネート紙が上記基紙、上記水系接着剤、アルミニウム蒸着層及び印刷層が設けられた上記ポリビニルアルコールフィルムを積層してなり、上記ラミネート紙が面感で良好であり、カールの4角測定で±0mmであることを特徴とするポリビニルアルコールラミネート紙。
【請求項7】
請求項6に記載のポリビニルアルコールラミネート紙を加工してなることを特徴とする化粧箱。
【請求項8】
前記化粧箱のポリビニルアルコールフィルム、アルミニウム蒸着層、水系接着剤がアルカリ性水溶液により溶解することを特徴とする請求項7に記載の化粧箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101418(P2012−101418A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250925(P2010−250925)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【特許番号】特許第4724778号(P4724778)
【特許公報発行日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(397028979)五條製紙株式会社 (2)
【Fターム(参考)】