説明

ポリビニルエーテル系ブロック共重合体のカチオンリビング重合方法及び該重合方法によって得られたポリビニルエーテル系ブロック共重合体を用いたインクジェットプリンター用水性インク及び記録方法

【課題】
安定的に重合ができ、分子量が制御された狭い分子量分布と高いブロック性を備えたのポリビニルエーテル系ブロック共重合体の提供および前記共重合体を用た、吐出安定性と定着性が良好であるインクジェットプリンター用水性インクの提供
【解決手段】
先のセグメントの成分モノマーの反応率が70〜95%になった時点で、次のセグメントの重合を開始する。さらに、重合条件として負触媒(mol)/触媒(mol)が80以上、かつ負触媒(mol)/各セグメントの成分モノマーの合計量(mol)が3以上の条件で重合する事により分子量分布が狭く、ブロック性の高いポリビニルエーテル系ブロック共重合体を得るリビングカチオン重合方法および前記ポリビニルエーテル系ブロック共重合体を用いたインクジェットプリンタ用水性インク

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルエーテル系ブロック共重合体のリビングカチオン重合方法及び該ポリビニルエーテル系ブロック共重合体を用いたインクジェットプリンター用水性インク及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで工業的に行なわれてきたポリマー重合法では、イオン重合やラジカル重合、開環重合など、様々な連鎖的重合が行なわれてきたが、多くの分野で求められている高性能、高品質なポリマー、いわゆる精密に構造制御されたポリマーを製造することは困難であり、さらにブロック共重合体の製造も困難である。しかしながら、近年、リビングカチオン重合法が見いだされ、重合系における生成活性種カルボカチオンとカウンターイオンが適度の相互作用を持つ重合条件を選択することにより、重合進行の安定化と副反応を抑制することで、所望の重合体を得られることが確認されている。当初、重合系にはモノマー/沃化水素開始剤系に、沃素やハロゲン化金属系といった弱ルイス酸を触媒として用いる方法などが見出されたが、最近ではエチルアルミニウムジクロロライドなど強ルイス酸存在下に、エステルやエーテルなど弱塩基を添加して活性種カチオンの安定化をはかる方法も研究されている。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの精密重合法は報告としては(例えば特許文献1)、青島らによるリビングカチオン重合による方法(ポリマーブレタン誌15巻、1986年 417頁、特許文献2、特許文献3)が代表的である。これらリビングカチオン重合を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて重合することが可能である。またポリビニルエーテルはその側鎖に様々な官能基を導入することができ、機能性樹脂として工業的に非常に有益である。分子量が精密に制御されたポリマーや構造が高度に制御されたブロックポリマーの重合において、リビングカチオン重合法を用いる事で、これらの純度の高いポリマーが効率よく得られるようになってきた。しかし、各セグメントの反応率により、分子量分布が広がったり、ブロック性が悪くなる場合があった。また、バッチ方式の重合においては、1バッチあたりに製造できるポリマーの量を上げる目的から、モノマーの初期濃度を高めることが望まれているが、モノマーの初期濃度を高めると生成末端の重合停止や連鎖移動などの副反応が一部に発生し、リビング性の低下が生じやすいのが現状である。このためモノマーや重合開始剤、触媒などの濃度や仕込み比率、さらには液温や重合系の乾燥状況などについて、様々な条件の設定が試みられているが、基質濃度の高濃度化はその後の分子量制御を困難にさせ、分子量分布を広げることとなり、実用レベルに達しているとは言えない。
【特許文献1】特開平11−080221号公報
【特許文献2】特開平11−322942号公報
【特許文献3】特開平11−322866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、各セグメントの反応率を制御することにより、安定的に重合ができ、分子量が制御された狭い分子量分布の共重合体を提供することを目的とする。また、本発明の重合方法で得られたポリマー(以下 「ブロックポリマー」と記す)を用いることにより、ノズルからのインクの吐出安定性が良く、形成される画像の定着性が良好であるインクジェットプリンター用水性インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は以下の本発明によって達せられる。すなわち本発明は、ブロックポリマーの重合において、先のセグメントの成分モノマーの反応率が70〜95%に達した時点で、次のセグメントの重合を開始することで、安定的に重合ができ、ブロック性の高い共重合体を提供することができる。また、本発明のリビングカチオン重合を用いるブロックポリマーの重合において、負触媒(mol)/触媒(mol)が80以上、且つ負触媒(mol)/各セグメントの成分モノマーの合計(mol)が3以上の条件で重合することにより、安定的に重合が出来、分子量が制御された狭い分子量分布の共重合体を提供することができる。また、上記本発明においては、ブロックポリマーの重合度を20〜350にすることが好ましい。さらに、前記ブロックポリマーが、少なくとも1種の疎水性ブロックと少なくとも1種のアニオン性親水性ブロックとからなるブロック共重合体で、かつ各ブロックがビニルエーテル類から構成されたブロックポリマーであること;前記ポリビニルエーテル系共重合体の親水性ブロックが、非イオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックと、アニオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックとを少なくとも含むこと;および前記ポリビニルエーテル系共重合体が、疎水性のビニルエーテル類で構成されたブロック、非イオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロック、およびアニオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロックの順番で少なくとも構成されていることが好ましい。また、本発明のリビングカチオン重合方法によって得られたブロックポリマーを使用することにより、少なくとも色材と樹脂と有機溶媒と水とを含む水性インクにおいて、吐出安定性に優れたインクジェットプリンター用水性インクを得ることが可能であり、さらに前記インクを用いることにより、定着性に優れた画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、各セグメントの反応率を制御することにより、ブロック性の高い共重合体を安定的に得ることが可能であり、さらに精密に分子量が制御された狭い分子量分布の共重合体を提供することが可能である。また、本発明の重合方法で得られたブロック共重合体を用いることにより、ノズルからのインクの吐出安定性が良く、形成される画像の定着性が良好なインクジェットプリンター用水性インクを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明はブロックポリマーの重合において、先のセグメントの成分モノマーの反応率が70〜95%に達した時点で、次のセグメントの成分モノマーを投入し、重合を開始する。各セグメントの重合において、前記の操作を繰り返すことで、安定的に重合が出来、ブロック性が高い共重合体を提供することができる。また、最終のセグメントにおいては、モノマーの反応率が95%以下であれば、目的とする重合度で重合停止剤を投入し反応を停止させることが出来る。
【0007】
先のセグメント中の成分モノマーの反応率が70%未満の時点で、次の成分モノマーを投入し、次の重合を開始した場合、ブロック性が低下する。また、先のセグメントの成分モノマーの反応率が95%を超えた時点で、次のセグメントの成分モノマーを投入し、次の重合を開始した場合、残モノマー量が少なすぎ、生成末端の重合停止や連鎖移動などの副反応が一部に発生し、リビング性の低下が生じる場合がある。
【0008】
また、本発明のリビングカチオン重合方法においては、負触媒(mol)/触媒(mol)が80以上、かつ負触媒(mol)/各セグメントの成分モノマーの合計(mol)が3以上に制御することで、生成末端のカチオンが移動反応や停止反応を抑制することが可能となり、安定安定的に、精密に分子量が制御された、1.3以下の狭い分子量分布(Mw/Mn)を持つブロック共重合体を製造することができる。負触媒(mol)/触媒(mol)が80未満又は負触媒(mol)/各セグメントの成分モノマーの合計(mol)が3未満である場合、分子量分布Mw/Mnの制御が困難になり、分子量の分布が広がる場合がある。なお、本発明のブロックポリマーの重合方法は、各セグメントの成分モノマーの合計(mol)/有機溶媒の合計量(ml)の比率を0.003(mol/ml)以上とした、濃縮型のリビングカチオン重合方法としても好適に用いることができる。
【0009】
また、本発明においては、ブロックポリマーの重合度を20〜350とすることが好ましい。ブロックポリマーの重合度が20未満の場合、皮膜強度が十分に得られない場合がある。また、350を超えた場合、親水性が低下するだけでなく、分子量が大きくなりすぎ、粘度が高くなるため、取り扱いが困難になる、吐出安定性が低下するなどの不具合が生じる場合がある。
【0010】
(ビニルエーテル系モノマー)
本発明で使用するビニルエーテル系モノマーは下記一般式(1)で示される。
CH=CH(OR) (1)
上記の一般式(1)において、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基等のような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。また、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。Rの炭素数は1〜18が好ましい。またRは−(CH(R)−CH(R)−O)−Rもしくは−(CH−(O)−Rで表される基でもよい。この場合、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基等のような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、−CH−CH=CH、−CH−C(CH)=CH、−CH−COORなどを表し、これら官能基のうち、水素原子は化学的に可能な範囲で、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子と置換されていてもよい。Rの炭素数は1〜18が好ましい。Rは水素、またはアルキル基である。pは1〜18が好ましく、qは1〜36が好ましく、rは0または1であるのが好ましい。
【0011】
及びRにおいて、アルキル基又はアルケニル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル等であり、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等である。
【0012】
下記に、上記で説明した繰り返し単位を含むモノマー(I−a〜I−o)および本発明のリビング重合方法で得られるポリビニルエーテルポリマー(II−a〜II−e)の構造を例示するが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されるものではない。
【0013】
[化1]

【0014】
[化2]

さらに、本発明に記載のブロック共重合体の数平均分子量は、500〜20,000,000が好ましく、1,000〜5,000,000がより好ましく、2,000〜2,000,000が最も好ましい。
【0015】
(重合開始剤)
本発明に用いることが可能な重合開始剤としては、一般に塩酸、燐酸、硫酸、臭酸、沃化水素などの無機酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、そのほか、水、アルコールなどのプロトン性溶媒と共存させることでそのプロトンを発生させる金属若しくは金属化合物が挙げられる。具体的にはプロトン酸(硫酸、リン酸、塩酸、臭酸、硝酸、弗化水素、沃化水素、蟻酸、酢酸およびこの塩素化物、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、等)、また金属酸化物およびその他の固体酸(酸化クロム、酸化リン、酸化チタン、酸化アルミ、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、シリカ−アルミナ、酸化バナジウム、硫酸アルミ、硫酸鉄、硫酸クロム、等)、ハロゲン(沃素、臭素、塩素、臭化沃素、塩化沃素、塩化臭素)、ハロゲン化金属(ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドニウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、錫、リン、アンチモン、ニオブ、ビスマス、タリウム、ウラン、レニウム、鉄、等の臭化物、塩化物あるいは弗化物)、有機金属化合物(アルミニウムあるいは亜鉛のアルキル化合物、グリニヤール試薬と呼ばれるマグネシウムのアルキル化合物、等)、安定なカルボニウムイオン(トリフェニルメチルカルボニウムイオン、トロピリウムイオン等の塩)などが挙げられる。これらの開始剤のうち、金属を含有する開始剤には、必要に応じてプロトンを生成する化合物として、前述のプロトン酸、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール等)のプロトン性化合物などが共触媒として添加が、これらに限定されるものではない。また、安定的に重合を進行させる目的で、予めモノマーと上記重合開始剤を反応させ比較的安定な中間体を合成し代替とする方法も有効であり、この場合、この中間体を重合開始剤としても構わない。具体的な例として、モノマーとハロゲン化水素からハロゲン化アルキル、モノマーと硫酸、燐酸有機酸から硫酸エステル、燐酸エステル、有機酸エステル、モノマーと水、アルコールからアルコール、エーテルなどの重合開始剤となりうる中間体が得られる。
【0016】
(触媒・負触媒)
触媒としては一般に、金属ハロゲン化物が用いられるが、具体的な例として沃化亜鉛や、塩化亜鉛、四塩化スズなどの弱ルイス酸や、アルキルジクロロアルミニウムやジアルキルクロロアルミニウムなどの強ルイス酸を使用することが可能である。しかし、活性化剤はこれらのルイス酸に限定されるものではなく、モノマーからなる、重合開始剤となりうる中間体物質を活性化させるものであれば、使用することができる。ここで触媒は単独で、または二種以上を適宜使用する。
【0017】
リビングカチオン重合方法において、反応速度を制御する負触媒は一般にルイス塩基が用いられるが、この場合必ずしも限定されるものではなく、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸フェニル、安息香酸エチル、p−クロロ安息香酸エチル、p−メチル安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸t−ブチル等のエステル化合物、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メトキシトルエン、プロピレンオキシド、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アセタール等のエーテル化合物、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2−メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン等のピリジン誘導体、さらにはN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド化合物、等を挙げることができる。これらルイス塩基は単独で、または二種以上を適宜使用する。
【0018】
(重合溶媒)
重合溶媒として、トルエンやキシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、n−ヘキサンやn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタンやジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒などが挙げられるが、単独で、または二種以上を適宜使用する。重合溶媒に関しては、重合系の状態に合わせて添加量を決定することができる。
【0019】
重合系内の温度としては、通常のビニル系化合物のリビング重合におけると同様の条件を採用することができ、必ずしも限定されるものではないが、一般には−150℃〜+60℃の範囲内から適宜選ぶことができる。重合時間は必要とする重合度から設定するものであり限定されるものではないが、一般的には0.2〜50時間の範囲内である。
【0020】
本発明の重合方法によれば、生成末端のカチオンが移動反応や停止反応が起こらないよう安定化されているため重合の制御が可能であり、精密に分子量が制御された分子量分布の狭いブロック共重合体を得ることができる。また本発明のリビングカチオン重合方法により、1.3以下の狭い分子量分布を持つブロックポリマーを、より安定的に製造することが可能である。
【0021】
また、本発明は色材と本発明の重合方法により得られたブロックポリマーと有機溶媒と水とを少なくとも含むインクジェットプリンタ用水性インクを提供することである。本発明の前記水性インクに用いられるブロックポリマーとしては、分子量分布が1.3以下のものであることが好ましい。分子量分布が1.3を超える場合、色材の分散安定性が低下するだけでなく、前記水性インクにより形成した画像の定着性が低下する場合がある。特に好ましい分子量分布の範囲は1.25以下である。
【0022】
また、本発明の前記リビングカチオン重合を行うことによりブロック性が60%以上の前記ブロック共重合体を得ることができる。ブロック性が60%未満の場合、ブロック共重合体の粘度が高くなり、作業性が低下するだけでなく、インクとしての吐出安定性も低下する傾向がある。さらにインク中の色材との親和性が低下するため、インクの保存安定性が低下する場合がある。なお、本発明で言うブロック性とは、各セグメントの単一性であり、NMR(核磁気共鳴吸光法)により検出されるピークの面積比から算出されるブロック共重合体の組成比の増加から求めることが出来る。例えば、n個のセグメントからなる共重合体の場合、第一成分のブロック性は、第一成分モノマーを重合しているに過ぎないので、第1セグメント中に第1成分の存在する割合を[1]とすると、[1]は100%である。第二成分のブロック性は、第二成分モノマーを投入後から第三成分モノマー投入前までの共重合体成長中にの第二セグメントに第二成分が存在する割合をαと表す。また、第n成分のブロック性は第n成分モノマー投入後から反応終了までの共重合体成長中にの第nセグメント中に第n成分が存在する割合をγと表す。ブロック共重合体のブロック性は各セグメントのブロック性を掛け合わせたものであり、下記一般式(2)で示される。
[1]×α×・・・・×γ(%) (2)
ここで述べている各成分モノマーは少なくとも1種類以上のモノマーを含んでいても良い。
【0023】
また、本発明においては、ブロックポリマーの重合度を20〜350とすることが好ましい。ブロックポリマーの重合度が20未満の場合、皮膜強度が不十分となるため、本発明のブロック共重合体を使用して形成した画像の定着性が低下する場合がある。また、350を超えた場合、インクとしての粘度が高くなるため、インクの吐出安定性が低下する場合がある。
【0024】
(インク組成物)
本発明のリビングカチオン重合方法により得られたブロックポリマーと、色材と、少なくとも有機溶媒と水とを攪拌混合し、溶解または分散することでインクジェットプリンタ用水性インクを得ることができる。本発明のリビングカチオン重合方法によって得られたブロックポリマーをインクジェットプリンター用水性インクに使用した場合、インクの吐出安定性に優れ、形成される画像の定着性が良好な水性インクを得ることができる。
【0025】
(色材)
本発明で用いる色材としては、従来からインクジェット用プリンタ用水性インクに使用されているすべての顔料、油溶性染料、分散染料、建染染料、あるいは何らかの処理によって水不溶化した直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料等の水溶性染料を使用することができる。
【0026】
前記色材のインク全重量に占める割合は0.1〜20重量%、さらには1〜10重量%であることが好ましい。色材の量が1重量%未満では印字画像に十分な濃度が得られず、色材の量が10重量%を超えると、画像濃度が大きく増加することがない反面、ノズルにおける目詰まり等の吐出安定性の低下を招く。以上の色材と樹脂とは、ヘテロ構造若しくは/及び、一部の樹脂が色材に吸着した構造若しくは/及び、カプセル化構造をとるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0027】
(有機溶媒)
本発明の水性インクの主な液媒質は水であるが、その他の水溶性の有機溶媒を含んでもよい。これらの有機溶媒は、インクをインクジェットプリンターで使用した際に、ノズル部分での乾燥によるインクの固化を防止する働きをするもので、従来からインクジェットプリンター用水性インクに用いられているものならすべてが使用できる。具体的な例としては、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;グリセリン、1、2、4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、ウレア、β−ジヒドロキシエチルウレア、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、フェノキシエタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
このような物質は、水溶性であれば固体でも液体でもよい。また、水が蒸発するような条件下でもインク中に残留することが要求されるので、沸点が水よりも高いことが望ましく、120℃以上であることが望ましいが、ブロック共重合体との相互作用があるために単独の場合よりも蒸発しにくくなることから、必ずしも高沸点物質には限定されない。これらの有機物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの有機物のインク中に占める割合としては、インク全重量に対して5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。なお、本発明のインクには、前記成分以外にも、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤等の各種添加剤を加えてもよい。
【0029】
本発明のインクは、インクにエネルギーを与えて飛翔させて記録するインクジェット記録方法に好適に用いることができる。エネルギーとしては熱エネルギーや力学的エネルギーを用いることができるが、特に熱エネルギーを用いる方法が好ましい。インクジェット記録用のプリンターとしては、A4サイズ紙を主に用いる一般家庭用のプリンターや、名刺やカードを印刷対象とするプリンター、あるいは業務用の大型プリンターなどに適用できる。
本発明のインクで記録する被記録媒体としては、特別なコーティングを施していない普通紙、少なくとも一方の面にインクを受容する層をコーティングしたいわゆるインクジェット専用紙、ハガキや名刺用紙、ラベル用紙、ダンボール紙、インクジェット用フィルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」または「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。また、以下の実施例において、各セグメントの反応率及び樹脂の分子量及び分子量分布はGPC(ゲル透過クロマトグラフィー、商品名:HLC8220GPC;東ソー(株))、樹脂の同定、ブロック性、重合度にはNMR(核磁気共鳴分光法、商品名:DPX400;ブルカー・バイオスピン(株))を用いて測定した。
【0031】
[実施例1 ABCトリブロック共重合体(ポリマー1)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、溶媒トルエン26ml、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.25mmol、及び酢酸エチル101mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところであらかじめ0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド1mmol,溶媒トルエン9mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を92%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL,TSK−GEL3000HXL,TSK−GEL2000HXL,カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし,a成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、24時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を92%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、5時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を95%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、24時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー1を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー1の重合度は257であり、ブロック性は97.9%であった。また、得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で15700、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.23であった。
【0032】
[実施例2 ABCトリブロック共重合体(ポリマー2)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、溶媒トルエン1.5ml、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol,1−イソブトキシエチルアセテート2mmol,および酢酸エチル101mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド1mmolを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を90%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL,TSK−GEL3000HXL,TSK−GEL2000HXL,カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、15時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を90%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、3時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を90%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、12時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー2を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー2の重合度は29であり、ブロック性は81.8%であった。また、得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で5229、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.25であった。
【0033】
[実施例3 ABCトリブロック共重合体(ポリマー3)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.4mmol、及び酢酸エチル261mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライドにmmol,溶媒トルエン1.5mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を90%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL,TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、15時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を90%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、3時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を90%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、12時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー3を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー3の重合度は145であり、ブロック性は81.8%であった。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で15700、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.23であった。
【0034】
[実施例4 ABジブロック共重合体(ポリマー4)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.4mmol,及び酢酸エチル227mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド2mmol,溶媒トルエン9mlを加え重合を開始し、ジブロック共重合体のA成分の反応率を92%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、15時間であった。次いで、モノマー2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を90%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、3時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加え、ポリマー4を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー4の重合度は124であり、ブロック性は92.5%であった。得られたジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で25000、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.21であった。
【0035】
[比較例1 ABCトリブロック共重合体(ポリマー5)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.4mmol,及び酢酸エチル261mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド2mmol、溶媒トルエン1.5mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を99%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、20時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を98%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、5時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を98%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、20時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー5を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー5の重合度は188であり、ブロック性は97.0%であった。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で23200、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.32であった。
【0036】
[比較例2 ABCトリブロック共重合体(ポリマー6)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.4mmol、及び酢酸エチル261mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド2mmol、溶媒トルエン1.5mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を65%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、10時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を65%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、1.5時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を65%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、10時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー6を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー6の重合度は68であり、ブロック性は42.5%であった。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で15700、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.23であった。
【0037】
[比較例3 ABジブロック共重合体(ポリマー7)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.4mmol、及び酢酸エチル34mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド2mmol、溶媒トルエン9mlを加え重合を開始し、ジブロック共重合体のA成分の反応率を99%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、15時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を98%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、3時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加え、ポリマー7を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー7の重合度は124であり、ブロック性は99.1%であった。得られたジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で12000、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.61であった。
【0038】
[比較例4 ABCトリブロック共重合体(ポリマー8)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、溶媒トルエン26ml、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート0.15mmol、及び酢酸エチル101mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド1mmol、溶媒トルエン9mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を99%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、24時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を99%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、5時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を98%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、24時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー8を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー8重合度は388であり、ブロック性は98.4%であった。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で69719、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.33であった。
【0039】
[比較例5 ABCトリブロック共重合体(ポリマー9)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、溶媒トルエン26ml、4−メチルフェノキシエチルビニルエーテル0.03mol、1−イソブトキシエチルアセテート5mmol、および酢酸エチル101mmolを加え冷却し、系内温度が0℃になったところで予め0℃まで冷却しておいたエチルアルミニウムセスキクロライド1mmol、溶媒トルエン9mlを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分の反応率を65%まで合成した。反応率は分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220、カラムTSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度40℃)を用いてモニタリングし、A成分のモノマーとポリマーの面積比から求めた。A成分の反応時間は、24時間であった。次いで、モノマー 2-エトキシエチルビニルエーテル 0.03molを重合系に添加し、B成分の反応率を65%まで反応した。B成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。B成分の反応時間は、5時間であった。次いで、溶媒トルエン9mlにモノマー4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル0.02molを溶解したものを重合系に添加し、C成分の反応率を65%まで反応した。C成分の反応率は、上記と同様にGPCを用いてモニタリングして求めた。C成分の反応時間は、24時間であった。重合停止反応として系内に0.3重量%のアンモニア/メタノール溶液を加えた。また、これらのトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマー9を得た。H1-NMR(ブルカー・バイオスピン(株)社製DPX400、溶媒;クロロホルム−d、内部基準物質;テトラメチルシラン)を用いて測定した結果、ポリマー9の重合度は11であり、ブロック性は49.3%であった。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(HLC8220GPC;東ソー(株))で測定の結果、標準ポリスチレン換算で2042、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は1.28であった。
以上の実施例1〜6、比較例1〜7の重合条件を表1に記す。
【0040】
表1.

*1;負触媒/各セグメントの成分モノマーの合計
【0041】
ブロックポリマーの重合の際に、各ブロックの反応率を本発明の範囲とした実施例1および実施例2のブロック性は60%以上を示し、分子量分布は1.30未満の低い値を示した。また、反応率に加え負触媒と触媒の比率および負触媒と各ブロックのモノマーの合計量の比率が本発明の特定範囲を満たす実施例3および実施例4においては、さらに分子量分布が小さくなる傾向が見られた。一方、反応率が本発明の範囲外の比較例1、比較例3、比較例4のブロック性は60%以上だが、分子量分布は高くなる傾向が見られた。さらに各ブロックの反応率が本発明の範囲より低い比較例2、比較例5では分子量分布が広がる傾向はみられないが、ブロック性は50%未満と低い値を示した。
【0042】
[水性インクの作製]
アルカリで中和した各ブロックポリマーの1部とC.I.ピグメントブルー15:3の1部と、ジエチレングリコール2部およびグリセリン2部、イオン交換水残部を添加して実施例7〜12、比較例8〜14の水性インクを得た。インクに使用したポリマーを表3に記す。
【0043】
表2.

【0044】
(評価)
実施例7〜10のインクと比較例8〜12のインクの粘度、定着性、連続吐出特性、擦れについての試験を行った。なお、定着性、連続吐出特性、擦れについてはインクジェットプリンターF660[キヤノン社製]で、光沢紙SP101(キヤノン製)に印字を行い、評価を行った。結果、表3に記載したように、いずれの実施例のインクも比較例のインクに比べて、良好な粘度と吐出安定性を示す結果が得られた。また、実施例のインクはいずれも印字画像の定着性は良好な結果であった。
【0045】
表3.

【0046】
(粘度)
前記実施例7〜10および比較例8〜12の各インクの粘度をE型回転粘度計((株)トキメック社製 VISCONIC ED形)にて測定した(測定温度25℃)。粘度の評価基準は以下のとおりとする。

粘度(mPa・S)
1.25以下 …○
1.26〜1.30…△
1.31以上 …×
結果を表4に示す。
【0047】
(定着性)
前記実施例7〜10および比較例8〜12の各インクを熱エネルギーを付与することによってインクを吐出させるインクジェット記録装置BJF−660(キヤノン製)に搭載して、光沢紙SP101(キヤノン製)に印字し、印字した紙上にキムワイプを載せ、さらにその上に500g/12.56cmの重りを載せ、5往復したときの擦れ具合(定着性)を5段階評価した。結果を表4に示す。
5:擦れなし。
4:実用上問題ないレベルの軽微な擦れあり。
3:明瞭に認められる擦れがあるが、印字の判読は可能。
2:印字の判読が困難な部分がある。
1:印字の判読が不可能。
【0048】
(吐出評価)
吐出評価として、印字のかすれの度合い(白くて印刷できていないスジ状のものをかすれとする)を官能評価した。良い方から順に5、4、3、2、1とする。結果を表4に示す。
【0049】
(連続吐出特性の評価)
はがきサイズのグラデーションパターンを1,000枚連続印字し、1,000枚目の画像のヨレ、不吐出の有無を下記の基準で評価した。結果を表4に記す。
○:ヨレ、不吐がなく正常に印字されている。
△:不吐は発生していないが、一部にヨレが見られる。実用上問題ないレベル。
×:不吐が多く発生し、画像全体にヨレがみられる。
(分散安定性)
各インクを100℃で6時間、熱安定性試験を行い、試験前後の粒子径を測定し、下式で粒子径増下率(%)を求め分散安定性の尺度とした。粒子径の測定には動的光散乱法 (商品名:レーザー粒径解析システムPAR3;大塚電子(株)社製) を用いた。評価基準は下記の通りとした。


◎:粒子径増加率(%)が5%未満である。
○:粒子径増加率(%)が5%以上10%未満である。
△:粒子径増加率(%)が10%以上30%未満である。
×:粒子径増加率(%)が30%以上である。

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルエーテル系ブロック共重合体の重合において、先のセグメントの成分モノマーの反応率が70〜95%に達した時点で、次のセグメントの重合を開始することを特徴とするブロックポリマーのリビングカチオン重合方法。
【請求項2】
前記ポリビニルエーテル系ブロック共重合体の重合において、負触媒(mol)/触媒(mol)が80以上、かつ負触媒(mol)/各セグメントの成分モノマーの合計(mol)が3以上の条件で重合することを特徴とする請求項1のリビングカチオン重合方法。
【請求項3】
前記ポリビニルエーテル系ブロック共重合体がそれぞれ少なくとも1種の親水性セグメントと疎水性セグメントを含有するポリビニルエーテル構造のブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜請求項2に記載のリビングカチオン重合方法。
【請求項4】
前記ブロック共重合体が、少なくとも1種の疎水性ブロックと1種のアニオン性親水性ブロックからなりかつ各ブロックがビニルエーテル類から構成されたポリビニルエーテル系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のリビング重合方法。
【請求項5】
前記ポリビニルエーテル系ブロック共重合体の親水性ブロックが、非イオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックと、アニオン性親水基を有するビニルエーテル類から構成されているブロックとを少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のリビングカチオン重合方法。
【請求項6】
前記ポリビニルエーテル系ブロック共重合体の疎水性ブロックが、少なくとも疎水性のビニルエーテル類で構成されたブロック、非イオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロック、及びアニオン性親水基を有する親水性のビニルエーテル類から構成されたブロックの順に構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5に記載のリビングカチオン重合方法。
【請求項7】
少なくとも色材と親水性樹脂と有機溶媒と水とを含む水性インクにおいて、前記親水性樹脂が請求項1〜請求項6に記載された重合方法で重合されたポリビニルエーテル系ブロック共重合体であることを特徴とするインクジェットプリンタ用水性インク。
【請求項8】
請求項7に記載されたインクジェットプリンタ用水性インク用い、インクジェット記録装置により画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。














【公開番号】特開2007−262361(P2007−262361A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93001(P2006−93001)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】