説明

ポリプロピレン系フィルムおよびその積層体

【課題】
本発明はポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関し、レトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール強度が良好であるレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体を提供することにある。
【解決手段】
本発明のポリプロピレン系フィルムは、ポリマ(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体75〜97重量%、ポリマ(b)としてスチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1〜5重量%、ポリマ(c)として密度が0.86〜0.90g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー1〜10重量%、およびポリマ(d)として密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体1〜10重量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン系フィルムに関する。より詳しくは、レトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性能が良好であるレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイレトルト用途として、120℃〜135℃の高温でレトルト殺菌されるレトルト包装用のシーラントフィルムとしては、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸フィルム(以下CPPと略称することがある)が使用されてきた。その主たる使用方法はポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(以下PETと略称することがある)、ナイロン延伸フィルム(以下ONと略称することがある)、アルミニウム箔(以下Al箔と略称することがある)と貼合わせ、PET/ON/Al箔/CPP、PET/Al箔/ON/CPP またはPET/Al箔/CPP構成の積層体とした後、製袋して使用されている。
【0003】
最内面を構成するCPPは耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性等の物性が要求される。特に近年はパウチ外観の品質要求レベルが高くなってきており、レトルト殺菌後、積層体表面に生じる微細な凹凸状外観、所謂ユズ肌の発生を極力抑えることが特に望まれている。
このレトルト包装用フィルムとして用いられるCPPに発生するユズ肌を抑える方法として、これまで多くの提案がなされてきた。
特定のプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体にエチレン系共重合体エラストマーを配合する提案(特許文献1)の単層フィルムでは、耐ユズ肌改善効果は低く、また、キシレン可溶分の固有粘度の異なるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体にエチレン系共重合体エラストマー及び直鎖状ポリエチレン樹脂を混合してなるフィルムにするとヒートシール強度が低下するという問題点を有している。また、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂に、特定の表面処理が施された合成シリカ系のアンチブロッキング剤を配合する提案(特許文献2)や、エラストマー成分を含有したポリプロピレン系樹脂を空冷インフレーション方式で製膜する提案(特許文献3)もあるが、いずれもユズ肌発生防止が十分でなかった。
【0004】
また一方でポリプロピレン系樹脂にエチレン系共重合体エラストマーを配合し、それらの相溶化剤としてポリエチレン・エチレンブチレン・ポリエチレントリブロック共重合体を配合する提案(特許文献4)があるが、自動車内装用材料向けのインジェクション成形品であり、本発明の目的とするレトルト用途とは全く異なる用途であり、本組成をレトルト包装用フィルムとして用いた場合、フィルムの耐ブロッキング性が大きく劣るという問題がある。
上述した如く、レトルト包装用シーラントフィルムに要求される品質は、近年益々高レベルのものが要望されるようになってきており、これまで開示された構成のものでは、耐ユズ肌性、耐低温衝撃性、ヒートシール性、耐ブロッキング性の要求特性全てを高いレベルでバランスよく満足するものは見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−256532号公報
【特許文献2】特開2003−41068号公報
【特許文献3】特開2002−331578号公報
【特許文献4】特開平8−41259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はポリプロピレン系フィルムおよびその積層体に関し、レトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール強度が良好であるレトルト包装袋としてハイレトルト用途に広く使用できるポリプロピレン系フィルムおよびその積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定組成のポリマを混練製膜したフィルムにより、前記課題を解決した。すなわち、本発明に係るポリプロピレン系フィルムは、ポリマ(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体75〜97重量%、ポリマ(b)としてスチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1〜5重量%、ポリマ(c)として密度が0.86〜0.90g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー1〜10重量%、およびポリマ(d)として密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体1〜10重量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン系フィルムである。
また、本発明は上記ポリプロピレン系フィルムを含む積層体も提供する。すなわち、単層または2層以上のフィルムとアルミニウム箔とが積層された基材層の片面に上記に記載のフィルムが積層されていることを特徴とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリプロピレン系フィルムは、レトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性能を高いレベルでバランス良く兼備し、ハイレトルト包装用のシーラントフィルムとして好適に使用できる。また、本発明の積層体によれば、油性食品を包装してもユズ肌等が生じ難く、外観良好で、落体強度等に優れたレトルト用包装袋を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るポリプロピレン系フィルムおよびそのフィルムを含む積層体について具体的に説明する。
本発明に係るポリプロピレン系フィルムは、下記のポリマ(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体75〜97重量%、ポリマ(b)としてスチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1〜5重量%、ポリマ(c)として密度が0.86〜0.90g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー1〜10重量%、およびポリマ(d)として密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体1〜10重量%を含有する混合樹脂組成からなることが必要である。ここで、ポリマ(a)成分は第一工程を気相中でプロピレンを主体とした重合体部分を重合し、次いで第二工程を気相中でプロピレンとエチレンとの共重合体部分を重合して得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
該ブロック共重合体の20℃でのキシレン不溶部の割合が75〜90重量%で、該不溶部の極限粘度([η]と称す)が1.8〜2.2dl/gであり、20℃でのキシレン可溶部の極限粘度([η]EPと称す)が2.5〜3.3dl/gであって、かつ、[η]+0.6≦[η]EPであるプロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。
尚、上記20℃でのキシレン不溶部、および20℃でのキシレン可溶部とは、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットを沸騰キシレンに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間以上放置し、その後、これを析出物と溶液とに濾別した際、析出物を20℃でのキシレン不溶部と称し、溶液部分(濾液)を乾固して減圧下70℃で乾燥して得られる部分を20℃での可溶部と称する。
かかる20℃でのキシレン不溶部と20℃でのキシレン可溶部の割合は、20℃でのキシレン不溶部の割合が75〜90重量%の範囲が好ましく、20℃でのキシレン不溶部が75重量%以上であれば耐ブロッキング性が良好となり、20℃でのキシレン不溶部が90重量%以下であれば低温での耐衝撃性が十分なものとできる。
また、20℃でのキシレン不溶部の極限粘度([η])は1.8〜2.2dl/gであり、該極限粘度([η])が1.8dl/g以上であれば耐衝撃性が十分となり、2.2dl/g以下であればキャスト成形性が容易となる。
また、20℃でのキシレン可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5dl/g以上であればフィルムがベタつくことなく耐ブロッキング性が良好となり、3.3dl/g以下であれば油性食品を包装した場合、ユズ肌現象が生じ難くなり、またゲル、フィッシュアイ等が発生する懸念が少なくなる。更に、20℃でのキシレン可溶部の極限粘度([η]EP)は、その20℃でのキシレン不溶部の極限粘度[η]+0.6以上であれば、耐低温衝撃性、ヒートシール性能が向上することから、[η]+0.6以上であることが好ましい。[η]+1.0より大きくなるとゲル、フィッシュアイ等が発生し易くなる懸念があることから、[η]+1.0以下が望ましい。耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の優れた両立を図るためには、かかる関係を満足させることが好ましい。
尚、20℃でのキシレン可溶部のエチレン含有率は20〜50重量%の範囲が好ましい。該含有率が20重量%以上であれば低温での耐衝撃性は良好であり、50重量%以下であればフィルムの外観及び低温での耐衝撃性が十分となりやすい。
また、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(以下MFRと略称することがある)は、230℃、荷重21.18Nの条件下で0.5〜5g/10分の範囲が好ましく、0.5g/10分以上であればキャスト成形が容易であり、5g/10分以下であれば、衝撃性の低下、ゲル、フィッシュアイ発生の懸念が少なくなる。より好ましくは、1〜3.5g/10分の範囲である。
【0010】
ここで、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体のかかるキシレン不溶分及び可溶分の極限粘度、及びメルトフローレートの調整方法としては、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体の重合時の各工程で水素ガスや金属化合物などの分子量調整剤を加える方法、パウダー状で得られた重合体を溶融混練しペレタイズ化する際に添加剤を添加する方法、パウダー状で得られた重合体を溶融混練しペレタイズ化する際の混練条件を調整する方法等を挙げることができる。
【0011】
なお、本発明に用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。ここで触媒としてはチ−グラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができ、例えば、特開平07−216017号公報にあげられるものを好適に用いることができる。具体的には(1)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、一般式Ti(OR)4−a(式中、Rは炭素数が1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0<a≦4の有理数を表し、好ましくは2≦a≦4、特に好ましくはa=4である。)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物で処理したのち、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理することにより、得られる3価のチタン化合物含有固体触媒、(2)有機アルミニウム化合物(3)電子供与性化合物(ジアルキルジメトキシシラン等が好ましく用いられる)よりなる触媒系が挙げられる。
【0012】
ポリマ(a)の製造方法として、生産性および耐低温衝撃性の観点から、第1工程で実質的に不活性剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分を重合し、ついで第2工程で気相中でエチレン・プロピレン共重合体部分を重合する方法を用いるのが好ましい。
次に、本発明に用いるポリマ(b)はスチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(b2)である。
【0013】
本発明に用いるスチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)としては、例えば、特開平3−128957号公報で提供されているものが挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(b3)及び共役ジエン系単量体(b4)の重合体ブロックから構成される。スチレン系単量体(b3)は特に制限は無く、具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられるが、これらの中でもスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、重合性の点で特にスチレンが好ましい。
【0014】
共役ジエン系単量体(b4)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらのなかでも該重合体ブロックによって発現されるゴム弾性に優れ、最終的に得られる本発明のポリプロピレン系フィルムに優れた耐衝撃性を付与できる点からポリブタジエンブロックであることが好ましい。
この様なスチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)として特に好ましく用いることができる市販品としては、スチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体(以下、SEBSと略記する。)が挙げられる。エチレンブチレンブロック部分がポリプロピレン系樹脂と相溶しやすく、ポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体との相溶性を高める効果が高い。具体的にはJSR株式会社製“ダイナロン”8601Pや旭化成株式会社製“タフテック”H1062等が挙げられる。SEBS中のポリスチレンブロックの含有量は12〜67重量%であることが好ましい。ポリスチレンブロックの含有量が12重量%以上であれば、耐ブロッキング性が良好であり、67重量%以下であれば耐低温衝撃性が良好となる。また、230℃でのMFRで0.5〜10g/10分のものが好ましい。MFRが0.5g/10分以上であれば混合樹脂の分散性が良好であり、MFRが10g/10分以下であれば耐低温衝撃性が良好となる。
本発明に用いる結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(b2)は、結晶性ポリオレフィンからなるブロック(b5)と結晶性を有さないその他のブロック(b6)とを有する共重合体であり、好ましくは、当該その他のブロック(b6)として役ジエン系重合体からなるブロックを有するものである。
この様な結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(b2)としては、例えば、特開平3−128957号公報で提供されているものが挙げられる。具体的には、1,2−ビニル結合含有率の低い(例えば25%以下)ポリブタジエン重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体であって1,2−及び3,4−結合含有率が高い(例えば50%以上)重合体ブロックとからなる共重合体を合成し、これを水素添加することによって該ポリブタジエン部分をポリエチレンと類似の構造とすることで結晶性の重合体ブロックとしたもの等が挙げられる。
前記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられ、工業的入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましい。この様な結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体として特に好ましく用いることができる市販品としては、ポリエチレン・エチレンブチレン・ポリエチレンの構成を有するブロック共重合体(以下、CEBCと略記する。)が挙げられ、エチレンブチレンブロック部分がポリプロピレン系樹脂と相溶しやすく、ポリエチレンブロック部分がポリマ(c)であるエチレン・α−オレフィン共重合体樹エラストマーと相溶しやすいために、ポリマ(a)のプロピレン・エチレンブロック共重合体とポリマ(c)のエチレン・α−オレフィン共重合体樹エラストマーとの相溶性を高める効果が高い。具体例としては、JSR株式会社製の“ダイナロン”6200P等が挙げられる。CEBC中のポリエチレンブロックの含有量は15〜40重量%であることが好ましい。ポリエチレンブロックの含有量が15重量%以上であれば、耐ブロッキング性が良好であり、40重量%以下であれば耐低温衝撃性が良好となる。また、230℃でのMFRで0.5〜10g/10分のものが好ましい。MFRが0.5g/10分以上であれば混合樹脂の分散性が良好であり、MFRが10g/10分以下であれば耐低温衝撃性が良好となる。
本発明ではスチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(b2)のどちらかで良好な特性を得ることができ、耐低温衝撃性の改善効果を優先する場合はスチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)を使用し、耐ユズ肌性の改善効果を優先する場合は結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(b2)を使用することが特に好ましい。
次に、本発明に用いる(c)成分は、密度0.86〜0.90g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーである。
すなわち、本共重合体エラストマーは、低結晶性若しくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50〜90重量%のエチレンと共重合モノマーのα−オレフィンとのランダム共重合体であり、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。
なお、α−オレフィンとしては、炭素数が3〜10のプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が使用でき、具体的なエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとしては、エチレン・プロピレンランダム共重合体ラバー(EPRと略称)、エチレン・1−ブテンランダム共重合体ラバー(EBRと略称)、エチレン・1−ペンテンランダム共重合体ラバー、エチレン・1−オクテンランダム共重合体ラバー等を挙げることができ、中でも好ましくはエチレン・プロピレンランダム共重合体或いはエチレン・ブテンランダム共重合体を好ましく用いることができる。
かかる共重合体エラストマーの密度は0.86〜0.90g/cmであることが好ましく、密度が0.86g/cm以上であれば耐ブロッキング性が良好であり、密度が0.90g/cm以下であれば耐低温衝撃性が良好である。
また、該共重合体エラストマーのMFRは、190℃、荷重21.18N条件下で、0.3〜6g/10分の範囲が好ましく、0.3g/10分以上であれば上記プロピレン・エチレンブロック共重合体との混和性が良好となり、6g/10分以下であれば耐ブロッキング性が良好となる。該MFRは、より好ましくは、良好なフィルム表面の平滑性が得られることから、0.5〜4g/10分の範囲のものが好ましい。
【0015】
次に、本発明に用いる(d)成分は、密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体である。より好ましくは0.96〜0.97g/cmのエチレン単独またはエチレンと炭素数3以上のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等との共重合体であり、一般的に知られている方法によって製造され市販されているものが使用できる。共重合体の場合のエチレン由来の単位は95重量%以上である。
【0016】
該ポリエチレン系重合体の密度が0.94g/cm以上であれば耐ブロッキング性が良好であり、0.97g/cm以下であれば耐低温衝撃性が良好となる。
また、該ポリエチレン系重合体の190℃、荷重21.18NでのMFRは0.1〜3.0g/10分の範囲が好ましい。該MFRは低い程、表面粗さ値が大きくなり、フィルムの滑り性が良くなる傾向があり、0.1g/10分以上であれば透明性が良好となる。一方、MFRが3.0g/10分以下であれば、耐ブロッキング性が良好となる。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、上述の(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体75〜97重量%と(b)スチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1〜5重量%、(c)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー1〜10重量%および、(d)ポリエチレン系重合体1〜10重量%を配合して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造する。ポリマ(b)が1重量%未満ではフィルムの耐ユズ肌性が悪化し、5重量%を越えると耐ブロッキング性が悪くなる。ポリマ(c)が1重量%未満ではフィルムの耐低温衝撃性が不足し、10重量%を越えると耐ブロッキング性が悪くなり、1〜4重量%の範囲にあることが耐ブロッキング性と耐低温衝撃性を両立させる観点からより好ましい。ポリマ(d)が1重量%未満ではフィルムの耐ブロッキング性が悪くなり、10重量%を越えると耐低温衝撃性が悪くなる。
ここで、ユズ肌とは、カレーなどの油性食品を封入しレトルト殺菌をした後、フィルム表面に凹凸が生じる現象であり、外観上の問題として問題視される。レトルト食品などに含まれる油分が最内層のCPPフィルム中に浸透・拡散し、該フィルム構成樹脂中におけるゴム成分の分散粒径が大きいと油分による不均一な膨潤が発生しやすく、かかるゴム成分の不均一膨潤に伴うフィルムの微細凹凸の結果、外観がユズ肌状に見えると考えられる。
本発明においては、(b)スチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体および、(d)密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体を配合することにより、飛躍的なユズ肌発生の軽減と、優れた耐ブロッキング性を両立できる効果を見い出すに至った。
また、本発明のポリプロピレン系フィルムは、135℃×30分レトルト殺菌処理後のヒートシール強度が60N/15mm以上であることが好ましい。この場合のヒートシール強度はフィルムの縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)との平均値として定義する。ヒートシール強度が60N/15mm未満では業務用等の大型パウチでヒートシール強度が不足し破袋の恐れがある。
更に本発明のポリプロピレン系フィルムの中心線粗さ(Ra)は耐ブロッキング性の観点から0.17〜0.25μmが好ましい。0.17μm以上であれば表面が適度に粗ることにより耐ブロッキング性が良好となる。0.25μm以下であればフィルムの透明性が良好でありまたヒートシール性も良好である。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、上記のポリマ(a)、(b)、(c)、(d)を通常の方法で混合して、得られた混合物を通常の方法でフィルムに成形することによって得られる。例えば、1軸または2軸の溶融押出機でポリマ(a)、(b)、(c)、(d)のペレットまたはパウダーを必要量溶融混練したのち、得られた混練物をフィルターで濾過して、フラットダイ(例えばTダイ)または環状のダイからフィルム状に押し出すことによって製造できる。溶融押出機から押出す溶融ポリマの温度は通常200〜300℃が適用できるが、ポリマの分解を防ぎ良好な品質のフィルムを得るためには、220〜270℃が好ましい。Tダイから押出す場合は、押出されたフィルムは20〜65℃の一定温度に設定した冷却ロールに接触させて、冷却・固化させた後巻き取る。環状ダイから押出す場合は、一般にインフレーション法と呼ばれる方法でバブルを形成し、これを冷却・固化させた後スリットして巻き取る。
本発明のポリプロピレン系フィルムは冷却固化の後に延伸を行うこともできるが、好ましくは高い低温衝撃性を得る為に実質的に延伸を行わない無延伸フィルムであることが好ましい。
このようにして得られた本発明のポリプロピレン系フィルムの厚みは20〜300μm、より好ましくは40〜100μmである。
本発明のポリプロピレン系フィルムは、単独で包装用のフィルムとして使用することもできるが、一般のAl箔を含むレトルト食品包装袋用のシーラントフィルムとして好ましく使用できる。
【0017】
本発明のポリプロピレン系フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、造核剤等を含むことができる。これらの添加剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ここで酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox1076、Sumilizer BP−76)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Irganox1010、Sumilizer BP−101)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Irganox3114、Mark AO−20)等を、また、ホスファイト系(リン系)酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168、Mark 2112)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−4’−ビフェニレン−ジホスホナイト(Sandstab P−EPQ)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Ultranox 626,Mark PEP−24G)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(Mark PEP−8)等が挙げられるが、中でもこれらのヒンダードフェノール系とホスファイト系の両機能を合わせ持つ6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン(Sumilizer GP)、及び、アクリル酸2[1−2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(Sumilizer GS)が好ましく、特に、この両者の併用は、フィルム製膜に際し、特に20℃キシレン可溶部の分解抑制に効果を発揮し、耐低温衝撃性と耐ブロッキング性の両立に大きく寄与することから好ましい。かかるキシレン可溶部の分解が促進されると耐ブロッキング性が悪化する。
尚、酸化防止剤の添加量としては、用いる酸化防止剤の種類にもよるが、0.05〜0.3重量%の範囲で適宜設定すればよい。
【0019】
本発明においては、上記の如く、製膜前のプロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットのキシレン可溶部の極限粘度[η]EP が、フィルム化した後も極限粘度の低下が少ないことが望ましい。かかるフィルム化に際しての極限粘度の低下指標としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体ペレットの単独使用で、製膜後の20℃キシレン可溶部の極限粘度[η]EPフィルム の比[η]EPフィルム/[η]EPとして、0.75以上、好ましくは0.80以上であることが好ましい。かかる比率を達成する方法としては、例えば、上記酸化防止剤の適正化処方や低剪断の製膜機の選定、低温押出等などが効果的である。
【0020】
また、中和剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、水酸化カルシウムなどがフィルム製膜時の発煙低下に好ましい。
【0021】
また、本発明のポリプロピレン系フィルムは、必要に応じて通常工業的に実施されるコロナ放電処理、窒素や炭酸ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を施すこともできる。
本発明に係る積層体は、単層または2層以上のフィルムとAl箔とが積層された基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルム(以下本フィルムと記載することがある。)を積層してなるものである。また、単層または2層以上のフィルムからなる基材層の片面に前記したポリプロピレン系フィルムが積層された積層体である。これらの代表的な構成は、PET/Al箔/本フィルム、PET/ON/Al箔/本フィルム、PET/Al箔/ON/本フィルム、ON/本フィルムである。
かかる積層体の製造方法は、積層体の構成フィルムを接着剤を用いて貼合わせる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて本フィルムと基材層の貼合わせには直接ポリプロピレン系樹脂を押出してラミネートする方法も採用できる。
これら積層体は本フィルムをシール層(袋の内面)として、平袋、スタンディングパウチなどに製袋加工され使用される。
【0022】
また、これら積層体の積層構造は、包装袋の要求特性(例えば包装する食品の品質保持期間を満たすためのバリア性能、内容物の重量に対応できるサイズ・耐衝撃性、内容物の視認性など)に応じて適宜選択される。
【0023】
本発明の詳細な説明および実施例中の各評価項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)20℃キシレン可溶部の含有量
ポリプロピレンペレット5gを沸騰キシレン(関東化学社製 1級)500mlに完全に溶解させた後に、20℃に降温し、4時間以上放置する。その後、これを析出物と溶液とにろ過して可溶部と不溶部に分離した。可溶部はろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥し、その重量を測定して含有量(質量%)を求めた。
(2)重合体および組成物の極限粘度
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
(3)エチレン含有量
高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い、エチレン含有量を求めた。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)中の20℃キシレン可溶部に含まれるエチレンの含有量(重量%)は、次式から計算した。
(20℃キシレン可溶部に含まれるエチレンの含有量)=((a)に含まれるエチレン含有量)×100/((a)中の20℃キシレン可溶部の含有量) (含有量の単位:重量%)。
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に準拠し、プロピレン・エチレンブロック共重合体は温度230℃、スチレン系ブロックを有するブロック共重合体、及び結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体は230℃、ポリエチレン系重合体は温度190℃、エチレン・α−オレフィンランダム共重合エラストマーは温度230℃または190℃で、それぞれ荷重21.18Nにて測定した。
(5)密度
JIS K−7112に基づき、密度勾配管による測定方法で測定した。
(6)ヒートシール強度
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(PET)と厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのAl箔と厚さ70μmの本発明のポリプロピレン系フィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/Al箔/接着剤/本発明のポリプロピレン系フィルム
この積層体を、平板ヒートシーラーを使用し、シール温度180℃、シール圧力10N/cm、 シール時間1秒の条件でヒートシールし、135℃で30分レトルト処理した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度でヒートシール強度を測定した。 本測定法で135℃×30分のレトルト処理後のシール強度が60N/15mm 以上であれば、業務用の大型用レトルト分野にも良好に使用できる。
(7)耐ブロッキング性
幅30mmで長さ100mmのフィルムサンプルを準備し、キャスト時のドラム面どうし、及び非ドラム面どうしを30mm×40mmの範囲を重ね合わせて、5N/12cm の荷重をかけ、60℃のオーブン内で24時間加熱処理した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。 本測定法で値が高い方の剪断剥離力が9N/12cm 以下を耐ブロッキング性が良好と判定し、11N/12cm以下を実用範囲とした。
(8)耐低温衝撃性
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルムと厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのAl箔と厚さ70μmの本発明のポリプロピレン系フィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/Al箔/本発明のポリプロピレン系フィルム
この積層体2枚を本発明のポリプロピレン系フィルムが袋の内面になるようにして、富士インパルス社製CA−450−10型ヒートシーラーを使用し、加熱時間1.4秒、冷却時間3.0秒で、製袋サイズ150mm×285mmのスタンディングパウチを作成した。この袋に濃度0.1%の食塩水1000cmを充填した後、135℃で30分レトルト処理する。レトルト処理後の袋を0℃で24時間冷蔵庫で保管した後、50cmの高さから平らな床面に落下させ(n数20回)、破袋に至るまでの回数を記録する。本評価法ではn数20回の平均値で10回以上を耐低温衝撃性良好とし、8回以上を実用範囲とした。
(9)耐ユズ肌性
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート延伸フィルムと厚さ15μmのナイロン6延伸フィルム(ON)と厚さ9μmのAl箔と厚さ70μmの本発明のポリプロピレン系フィルムをウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼合わせ、次の構成の厚さ115μmの積層体を作成した。
積層体構成:PET/接着剤/ON/接着剤/Al箔/接着剤/本発明のポリプロピレン系フィルム
この積層体2枚を本発明のポリプロピレン系フィルムが袋の内面になるようにして、平板ヒートシーラーを使用し、シール温度180℃、シール圧力10N/cm、シール時間1秒の条件でヒートシールし、160mm×210mm(内部の寸法)の大きさの3方袋(平袋、シール幅5mm)を作成した。この袋に市販のレトルトカレー(ハウス食品工業社製のレトルトカレー商品名「“ククレカレー”辛口」)を充填した後、135℃で30分レトルト処理をした直後の積層体表面の凹凸発生状況を目視判定した。全く発生しないものをランクl、僅かに発生するものをランク2、軽度に発生するものをランク3、明確に発生するものをランク4、重度に発生するものをランク5として評価した。本評価法でランク1、2を耐ユズ肌発生良好とし、ランク3は実用範囲とした。
(10)表面粗さ
JIS B0601(1982年)に定める測定方法により東京精密社製の表面粗さ形状測定機「サーフコム」を用いてフィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)を求めた。測定方向はフィルムの流れ方向に直交する方向とした。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1]ポリマ(a)、(b)、(c)、(d)は次のものを使用した。
(1)ポリマ(a)
20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η])が1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B−PPと略称)を使用した。
(2)ポリマ(b)
スチレン系ブロックを有するブロック共重合体(b1)として、旭化成株式会社製のスチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体である“タフテック”H1062(密度0.89g/cm、230℃でのMFR4.5g/10分(SEBS1と略称))を使用した。
(3)ポリマ(c)
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー(c)として、三井化学株式会社製“タフマー”P−0280(密度0.87g/cm、230℃でのMFR5.4g/10分のエチレン・プロピレンランダム共重合体)を使用した。
(4)ポリマ(d)
ポリエチレン系重合体(d)として、日本ポリエチレン株式会社製の “ノバテック” HY540(密度0.960g/cm、190℃でのMFR1.0g/10分の高密度ポリエチレン(HDPEと略称))を使用した。
【0025】
前記ポリマ(a)を89重量%、ポリマ(b)を3重量%、ポリマ(c)を3重量%、ポリマ(d)を5重量%をペレット状態でブレンダーで混合して250℃に加熱した押出機に供給し、溶融混練してフィルターで濾過し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後片面をコロナ放電処理してぬれ張力を40mN/mとし、厚さ70μmのフィルムを得た。得られたフィルムは耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
【0026】
[実施例2]
実施例2では実施例1のポリマ(b1)スチレン系ブロックを有するブロック共重合体を、JSR株式会社製のスチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体である“DYNARON” 8601P(密度0.89g/cm、230℃でのMFR3.5g/10分(SEBS2と略称))に変更すること以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
[実施例3〜4]
実施例2で使用したポリマ(a)、(b)の混合比率を表1に示すように変更した以外は、実施例2と全く同様にして、厚さ70μmのフィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1のとおりであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
【0027】
[実施例5]
実施例5では実施例1のポリマ(b1)スチレン系ブロックを有するブロック共重合体を(b2)結晶性オレフィン系ブロックを有するブロック共重合体とし、JSR株式会社製のポリエチレン・エチレンブチレン・ポリエチレントリブロック共重合体である“DYNARON” 6200P(密度0.88g/cm、230℃でのMFR2.5g/10分(CEBCと略称))に変更すること以外は、実施例1と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
[実施例6〜11]
実施例5で使用したポリマ(a)、(b)、(c)、(d)の混合比率を表1に示すように変更した以外は、実施例5と全く同様にして、厚さ70μmのフィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1のとおりであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
[実施例12〜13]
実施例12では実施例5のポリマ(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を三井化学株式会社製の“タフマー”A−1050S(密度0.862g/cm、230℃でのMFR2.2g/10分のエチレン・1−ブテンランダム共重合体)とし、実施例13では実施例5のポリマ(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を、三井化学株式会社製の “タフマー”A−4090(密度0.893g/cm、230℃でのMFR6.7g/10分のチレン・1−ブテンランダム共重合体)に変更すること以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
[実施例14〜15]
実施例14では実施例5のポリマ(d)ポリエチレン系重合体を京葉ポリエチレン株式会社製の “KEIYOポリエチ”T4010(密度0.960g/cm、190℃でのMFR1.4g/10分の高密度ポリエチレン)とし、実施例15では実施例5のポリマ(d)ポリエチレン系重合体を日本ポリエチレン株式会社製の “ノバテック”HY331(密度0.951g/cm、190℃でのMFR0.95g/10分の高密度ポリエチレン)に変更すること以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、いずれも耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性に優れたものであった。
[実施例16]
実施例16では実施例5のポリマ(d)ポリエチレン系重合体を日本ポリエチレン株式会社製の “ノバテック”HF560(密度0.963g/cm、190℃でのMFR7.0g/10分の高密度ポリエチレン)に変更すること以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に優れたものであり、耐ブロッキング性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例17]
実施例17では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η])1.7dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性に優れたものであり、耐低温衝撃性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例18]
実施例18では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η])2.3dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に優れたものであり、耐ブロッキング性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例19]
実施例19では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η])1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.3dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に優れたものであり、耐ブロッキング性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例20]
実施例20では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が82.2重量%、その極限粘度([η])1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が17.8重量%、その極限粘度([η]EP)が3.4dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分でありるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に優れたものであり、耐ユズ肌性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例21]
実施例21では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が73.1重量%、その極限粘度([η])1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が26.9重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分でありるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に優れたものであり、耐ブロッキング性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[実施例22]
実施例22では実施例5のポリマ(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体を20℃でのキシレン不溶部の含有量が92重量%、その極限粘度([η])1.91dl/g、20℃でのキシレン可溶部の含有量が8重量%、その極限粘度([η]EP)が2.53dl/g、230℃でのMFRが3.1g/10分でありるプロピレン・エチレンブロック共重合体に変更すること以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表1の通りであり、耐ユズ肌性、耐ブロッキング性、ヒートシール性に優れたものであり、耐低温衝撃性は若干低いが、実用範囲の要求特性を満たすものであり良好であった。
[比較例1〜2]
ポリマ(b)の混合比率を本願発明の範囲外の表2に示すように変更した以外は実施例2と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表2の通りであった。
比較例1のフィルムは耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性は良好なものの、ユズ肌に劣るものであった。
比較例2のフィルムはユズ肌、耐低温衝撃性は良好なものの、耐ブロッキング性、ヒートシール性に劣るものであった。
[比較例3〜8]
ポリマ(a)、(b)、(c)、(d)の混合比率を本願発明の範囲外の表2に示すように変更した以外は実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表2の通りであった。
【0028】
比較例3のフィルムは耐ブロッキング性、ヒートシール性、耐低温衝撃性は良好なものの、ユズ肌に劣るものであった。
【0029】
比較例4のフィルムはユズ肌は良好なものの、耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール性に劣るものであった。
【0030】
比較例5のフィルムはユズ肌、耐ブロッキング性、ヒートシール性は良好なものの耐低温衝撃性に劣るものであった。
【0031】
比較例6のフィルムは耐低温衝撃性は良好なものの、ユズ肌、耐ブロッキング性、ヒートシール性に劣るものであった。
比較例7のフィルムはユズ肌、耐低温衝撃性、ヒートシール性は良好なものの、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0032】
比較例8のフィルムはユズ肌、耐ブロッキング性は良好なものの、耐低温衝撃性、ヒートシール性に劣るものであった。
[比較例9〜10]
比較例9では実施例5のポリマ(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を三井化学株式会社製の“タフマー”P−0775(密度0.858g/cm、230℃でのMFR0.6g/10分のEPR)とし、比較例10では実施例5のポリマ(c)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体を三井化学株式会社製の“タフマー”BL−3110(密度0.910g/cm、190℃でのMFR1.0g/10分のブテン・プロピレン・エチレン共重合体)に変更すること以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表2の通りであった。
【0033】
比較例9のフィルムはユズ肌、ヒートシール性、耐低温衝撃性は良好なものの、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0034】
比較例10のフィルムはユズ肌、耐ブロッキング性、ヒートシール性は良好なものの、耐低温衝撃性に劣るものであった。
[比較例11]
実施例5のポリマ(d)ポリエチレン系重合体を日本ポリエチレン株式会社製の “ノバテック” UF840(密度0.930g/cm、190℃でのMFR1.5g/10分のリニア低密度ポリエチレン(L−LDPEと略称)に変更すること以外は、実施例5と全く同様にして厚さ70μmの未延伸フィルムを得た。これらのフィルムの品質評価結果は表2の通りであり、ユズ肌、ヒートシール性、耐低温衝撃性は良好なものの、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0035】
【表1−1】

【0036】
【表1−2】

【0037】
【表2−1】

【0038】
【表2−2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリプロピレン系フィルムはレトルト処理後のユズ肌の発生を飛躍的に軽減させることができ、かつ耐ブロッキング性、耐低温衝撃性、ヒートシール強度を高いレベルでバランス良く兼備し、通常レトルト包装用のシーラントフィルムとして好適に使用できる。また、本発明の積層体によれば、油性食品を包装してもユズ肌等が生じ難く、外観良好で、落体強度等に優れたレトルト用包装袋を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマ(a)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体75〜97重量%、ポリマ(b)としてスチレン系ブロックを有するブロック共重合体、または結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体1〜5重量%、ポリマ(c)として密度が0.86〜0.90g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー1〜10重量%、およびポリマ(d)として密度が0.94〜0.97g/cmのポリエチレン系重合体1〜10重量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン系フィルム。
【請求項2】
ポリマ(a)の20℃でのキシレン不溶部の割合が75〜90重量%であり、該不溶部の極限粘度([η])が1.8〜2.2dl/gであり、20℃でのキシレン可溶部の極限粘度([η]EP)が2.5〜3.3dl/gであり、関係式[η]+0.6≦[η]EPを満たす請求項1に記載のポリプロピレン系フィルム。
【請求項3】
ポリマ(d)の190℃でのメルトフローレートが0.1〜3g/10分である請求項1または2に記載のポリプロピレン系フィルム。
【請求項4】
ポリマ(b)がスチレン系ブロックを有するブロック共重合体であり、スチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルム。
【請求項5】
ポリマ(b)が結晶性オレフィン系ブロックを有するブロック共重合体であり、ポリエチレン・エチレンブチレン・ポリエチレントリブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルム。
【請求項6】
単層または2層以上のフィルムとアルミニウム箔とが積層された基材層の片面に請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系フィルムが積層されてなることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2013−87275(P2013−87275A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232440(P2011−232440)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】