説明

ポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法

【課題】 本発明は、従来の製造方法よりも、発泡パリソンの発泡性やブロー成形性を向上させ、広い密度範囲において、肉厚均一性に優れた成形体を得ることが可能なポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂をダイから押出して軟化状態の発泡パリソンを形成し、該発泡パリソンを金型に挟み込んでブロー成形する発泡ブロー成形体の製造方法において、前記ポリプロピレン系樹脂が、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において特定の条件(1)〜(3)を満足するポリプロピレン系樹脂(A)と特定の条件(4)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)とからなり、樹脂(A)と樹脂(B)との混合比(A:B)が重量比で100:0.5〜100:5であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロー成形技術を利用して、発泡層を有する発泡ブロー成形体の開発が行われてきた。発泡ブロー成形体の製造方法としては、種々の方法が提案されているが、例えば押出機により発泡剤と基材樹脂とを溶融混練し、これをダイより押出して発泡パリソンを形成し、この発泡パリソンを金型で挟み込んでブロー成形する方法がある。
【0003】
前記のようにして得られる発泡ブロー成形体は、断熱性、軽量性などに優れていることから、それらの特性が要求される用途、例えば自動車部品、容器、ダクトや電化製品部品等に利用可能である。その中でも、特に、ポリプロピレン系樹脂からなる中空発泡ブロー成形体は、耐熱性に優れ、剛性と軽量性とのバランスにも優れていることから、自動車の空調ダクトへの使用が期待されている。
【0004】
しかしながら、汎用のポリプロピレン系樹脂は、直鎖状の結晶性樹脂であり、発泡温度付近での溶融物性の変化が大きいために、低見掛け密度に発泡させること自体が難しいものである。さらに発泡パリソンを複雑な形状にブロー成形することが難しい。このような状況下、以前は、基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いた場合には、極めて低発泡倍率であって、かつ単純な形状の発泡ブロー成形体しか得られていなかった。
【0005】
前記問題を解決するために、本出願人は、基材樹脂として特定の溶融張力と特定のメルトフローレートを有する高溶融張力ポリプロピレン系樹脂(HMSPP)を使用する発泡ブロー成形体の製造方法を提案した(特許文献1)。これにより、広い見掛け密度の範囲において、ポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体を得ることが可能となった。HMSPPの中でも分岐構造を有するものは、特に発泡性に優れ、さらに得られた発泡パリソンはブロー成形性にも優れたものである。
【0006】
ブロー成形においては、パリソンを金型で挟んでブロー成形するため、成形後の成形体の周囲には金型による食い切り部(パーティングライン)が生じ、この食い切り部から外方に一般にバリと呼ばれる部分が多量に発生する。このバリを取り除くことによりブロー成形体が得られる。一般には、この取り除いたバリを破砕して、またはさらにリペレットするなどして回収原料とし、この回収原料を原料の一部に使用してブロー成形体の製造が行われている。
【0007】
しかしながら、ブロー成形の原料として分岐構造を有するHMSPPを用いると、該HMSPPは、熱や剪断を受けると分岐鎖の切断などにより粘弾性特性が変化し、溶融張力などの溶融物性が低下しやすく、押出条件によっては特定の溶融張力とメルトフローレートの前記特定の関係を満足しなくなることがある。したがって、回収原料の溶融物性が大きく低下している場合には、回収原料の配合量を増やしすぎると、発泡性や成形性が低下して、複雑な形状でかつ低見掛け密度の発泡ブロー成形体が得られにくくなり、この点では改善の余地があった。
【0008】
本出願人は、HMSPPの回収原料を使用して発泡ブロー成形体を得る際に、HMSPPと特定の溶融物性を有するその回収原料と特定の汎用のポリプロピレン系樹脂との特定比率の混合物を原料として使用することにより、高発泡倍率で外観が美麗な発泡成形体を得る技術を提案した(特許文献2)。
【0009】
さらに、本出願人は、HMSPPとその回収原料との混合物、或いはHMSPPの回収原料などの、特定の平衡コンプライアンスとスウェルとを有するポリプロピレン系樹脂を原料として用いることにより、厚み1〜5mm、密度0.35〜0.65g/cmの範囲で、厚みが均一な発泡ブロー成形体を製造する技術を提案した(特許文献3)。
【0010】
上記特許文献2、3の製造技術により、HMSPPの回収原料を利用して、ポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形の製造が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO99/28111号公報
【特許文献2】特開2004−122488号公報
【特許文献3】特開2007−62364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発泡ブロー成形体は、同じ厚みで比べた場合、従来のソリッドブロー成形体よりも軽量化することが可能であり、更にその見掛け密度と厚みとを調整することにより、ソリッドブロー成形体と同じような剛性であっても、より軽量化することができるという利点がある。そのために、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡ブロー成形が、自動車の空調ダクトに採用され始めている。
【0013】
一方、温暖化ガス排出による地球温暖化問題から、自動車業界においても排出ガス中の二酸化炭素等の削減は最重要課題となっている。自動車からの二酸化炭素の排出量を削減するための一つの手法として、自動車の軽量化による自動車の低燃費化が推進されている。
【0014】
そのような背景から、自動車部品にはより一層の軽量化が望まれており、軽量性に優れる発泡ブロー成形体からなるダクトにおいてもさらなる軽量化が望まれている。さらに、車両用空調ダクトは元々が複雑な形状であったことに加え、乗員の居住性を確保しつつ自動車の空力特性を良化させるために、自動車のボディ形状も一層制限されるようになっている。その結果、限られた空間に配置可能な、より一層複雑な形状のダクトが要求されるようになっている。
【0015】
発泡ブロー成形体をより軽量化するためには、さらなる発泡ブロー成形体の低密度化や薄肉化が必要である。しかし、低見掛け密度になるほど、薄肉になるほど、ブロー成形時に発泡パリソンを均一に伸ばすことが難しくなる傾向があり、得られた成形体は厚み精度が低下する傾向にある。さらに、成形体の形状が複雑になるほど厚み精度の高い発泡ブロー成形体が得られにくくなる。このような背景から、発泡ブロー成形技術においても、今まで以上の高い発泡ブロー成形性が要求されている。
【0016】
また、ブロー成形体の形状が複雑であると、自ずとバリの発生量が増加するため、バリを回収原料として使用する場合には、原料中の回収原料の比率が高くなってしまう。その結果、発泡パリソンの発泡性やブロー成形性が低下しやすく、所望の発泡倍率が得られにくくなる傾向があり、また、厚み精度の高い発泡ブロー成形体が得られにくくなる傾向もある。
【0017】
本発明は、従来の製造方法よりも、発泡パリソンの発泡性やブロー成形性を向上させ、今まで以上に低見掛け密度及び/又は薄肉であっても、或いは複雑な形状であっても、回収原料を高比率で使用した場合であっても、広い密度範囲において、肉厚均一性に優れた成形体を得ることが可能なポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、従来発泡ブロー成形の原料として用いられてきた特定の粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂に、特異的な粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂を少量混合して発泡パリソンを形成することにより、発泡パリソンの発泡性とブロー成形性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明によれば、以下に示すポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法が提供される。
[1]
ポリプロピレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂をダイから押出して軟化状態の発泡パリソンを形成し、該発泡パリソンを金型に挟み込んでブロー成形する発泡ブロー成形体の製造方法において、前記ポリプロピレン系樹脂が、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において下記条件(1)〜(3)を満足するポリプロピレン系樹脂(A)と下記条件(4)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)とからなり、樹脂(A)と樹脂(B)との混合比(A:B)が重量比で100:0.5〜100:5であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
条件(1):角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満である。
条件(2):logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.5〜0.7である。
条件(3):角周波数(ω)1rad/secでの損失正接tanδが1.0〜2.0である。
条件(4):角周波数(ω)1rad/secでの損失正接tanδが1.0未満である。
[2]
前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において下記条件(5)及び(6)を満足することを特徴とする前記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
条件(5):角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満である。
条件(6):logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.3以上0.5未満である。
[3]
発泡ブロー成形体の発泡層の見掛け密度が0.1〜0.6g/cmであり、かつ発泡層の平均厚みが1〜10mmであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明方法によれば、従来ポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造に用いられてきた特定の動的粘弾性特性を有する高溶融張力ポリプロピレン系樹脂(HMSPP)やその回収樹脂等に、特異的な動的粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂を添加することにより、発泡パリソンの発泡性及びブロー成形性を向上させ、従来以上に肉厚均一性に優れた発泡ブロー成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は発泡ブロー成形体の製造方法の一例を概念的に説明する説明図である。
【図2】図2は発泡ブロー成形体の製造方法の一例を概念的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法について詳細に説明する。
本発明は、発泡ブロー成形体を製造する際に、特定の動的粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂(A)に、特定の動的粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂(B)を少量添加したものを基材樹脂として用いることを特徴とする、発泡ブロー成形体の製造方法についての発明である。次に、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡ブロー成形の一般的な製造方法について、図1、図2を用いて説明する。
【0023】
図1に示すように、基材樹脂と物理発泡剤とを押出機(図示しない)に供給し、押出機内で混練して発泡性溶融樹脂とし、この発泡性溶融樹脂をダイ21のダイリップから押出して発泡させることにより筒状の発泡パリソン11を得る。この軟化状態にある発泡パリソン11の内部に、プリブローエア(パリソンを拡幅するため又はパリソンの内面同士を融着させないための空気などの気体)を吹き込みながら、ダイ直下に配置した金型22aと金型22bからなる分割形式の組合せ金型間に発泡パリソン11を配置し、該金型を閉鎖することにより発泡パリソン11を金型22aと金型22bとで挟み込む。次いで、図2に示すように、発泡パリソン11の内部にブローピン24を挿入し、発泡パリソン11の内部にブローピン24からブローエア(パリソンをブロー成形するための空気などの気体)を吹き込んで、発泡パリソン11の外面を金型内面に押し付けることにより、発泡パリソンを金型形状通りにブロー成形して中空の発泡ブロー成形体1を成形する。成形後、該成形体内の空間3の圧力を保つこと及び/又は金型側から成形体を吸引することによって、該成形体の壁部2を金型に密着させ続けて成形体を冷却した後、型開きして、発泡ブロー成形体1を取出す。
【0024】
次に、一般的な発泡ブロー成形体の具体的な製造条件について説明する。なお、発泡ブロー成形体の製造条件は、基材樹脂の種類や、所望の成形体の見掛け密度、平均厚み、成形体の形状などにより適宜変わるものであるが、一般的には以下のような製造条件が採用される。
【0025】
上記発泡パリソンを形成するためにポリプロピレン系樹脂に添加される発泡剤は、物理発泡剤が使用される。該物理発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水等の物理発泡剤として使用可能な無機物が挙げられる。これらの発泡剤は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。尚、上記物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素などの無機系物理発泡剤を20重量%以上、更に50重量%以上含むものが好ましい。
【0026】
上記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類や、所望する見掛け密度(発泡倍率)を考慮して決められるものであるが、発泡剤として二酸化炭素を使用し、成形体の平均見掛け密度を0.1〜0.6g/cmとするためには、概ね、二酸化炭素を基材樹脂1kgに対して、0.05〜0.5モルの割合で使用する。
【0027】
また、上記基材樹脂には、必要に応じて、タルク、炭酸カルシウムなどの無機物や、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との混合物などの化学発泡剤等を気泡調整剤として添加することができる。気泡調整剤は、発泡パリソンを構成する基材樹脂と同種の熱可塑性樹脂と気泡調整剤とからなるマスターバッチの形態で添加してもよい。気泡調整剤の添加量は、通常、基材樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部である。
【0028】
発泡パリソンの自重によるドローダウンを防ぎ、かつ複雑な形状の発泡ブロー成形体を成形するには発泡パリソンの粘度が重要である。発泡パリソンの粘度調整は、基材樹脂の選択と共に発泡性溶融樹脂の押出温度を調整することによって行われる。適正な押出温度は発泡剤の種類や量などによって適宜定まるものであるが、例えば、基材樹脂としてポリプロピレンを使用し、発泡剤として二酸化炭素を使用する場合には、パリソンの押出時の温度を概ね158〜180℃の範囲内に調整することが好ましい。
【0029】
また、発泡パリソンの吐出速度が速すぎると、過剰な剪断発熱により、得られる発泡ブロー成形体の厚み精度が極度に悪くなる虞や、場合によっては、発泡パリソンの気泡構造が破壊され発泡パリソンがブロー成形前に収縮してしまう虞がある。一方、吐出速度が遅すぎると、ダイ内部で十分な圧力が保持できずにダイ内部で発泡が始まってしまい独立気泡構造を有する発泡パリソンが得られない虞や、ブロー成形前に発泡パリソンが冷えて伸びが低下してしまうため、得られた発泡ブロー成形体の厚み精度が低下する虞がある。かかる観点から、リップ開口部の単位面積あたりの吐出速度を概ね50〜300kg/h・cmの範囲内に調整することが好ましい。吐出速度を前記範囲に調整しやすいことから、押出機とダイ21との間に、またはダイ内にアキュムレーターを配置することが好ましい。
【0030】
次に、分割金型を閉鎖して発泡パリソンを挟み込む前に、押出された発泡パリソンを拡幅する時間を設けることが好ましい。発泡パリソンの押出が終了してから分割金型の閉鎖を開始するまでの時間(型締め遅延時間)が短すぎると、発泡パリソンの拡幅が十分になされずに発泡ブロー成形体に偏肉が生じやすく、一方長すぎると発泡パリソンが過度にドローダウンしたり、発泡パリソンの伸びが悪くなるなどして成形不良が生じる虞がある。かかる観点から、型締め遅延時間を概ね0.2〜1秒の範囲で調整することが好ましい。
【0031】
発泡ブロー成形においては、パリソン自体が発泡しているため、過度にブローエアの圧力を高くすると、その圧力により気泡が潰されてしまい、所望の発泡ブロー成形体を得られなくなる。一方、ブローエアの圧力が低すぎると、通常の非発泡ブロー成形と同様に、金型どおりの形状に賦形することが難しくなる。かかる観点から、元圧が概ね0.1〜0.6MPa(G)(「G」はゲージ圧を意味する。)の範囲のブローエアを使用することが好ましい。
【0032】
さらに、発泡ブロー成形においては、上記のように低いブローエア圧力を採用するが、ブロー成形時に金型内の発泡パリソンの外表面と金型内面との空間を金型側からバキューム等により吸引して減圧することによって、低いブローエア圧力であっても、発泡パリソンを金型内面に密着させ、金型どおりの形状に賦形することができる。このときのバキューム圧は概ね−0.05〜−0.1MPa(G)の範囲に調整されることが好ましい。
【0033】
また、分割金型の温度は、発泡パリソンの賦形性、特にブロー比の大きい箇所の賦形性と、冷却効率とのバランスを考慮して決定されるものであり、通常は概ね25〜50℃の範囲に調整されることが好ましい。
【0034】
尚、本発明方法においては単層の発泡パリソンにブロー成形を施して発泡ブロー成形体を製造し、該成形体が発泡層のみから構成されるようにすることができる。また、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、発泡層の外側及び/又は内側には必要に応じて表皮層として他の層を積層して多層構造に構成してもよい。その他の層としては、熱可塑性樹脂層、織布層、不織布層、金属箔層、ゴム層等が挙げられる。熱可塑性樹脂層は、発泡していても、無発泡であってもよい。
【0035】
尚、表皮層を発泡層の外側に積層する方法としては、分割金型内の内壁に予め該表皮層を取付けておき、その後、発泡パリソンを金型内に導入してブロー成形する方法が挙げられる。 また、熱可塑性樹脂を表皮層として発泡層の外側及び/又は内側に積層した多層構造の発泡ブロー成形体を製造するには、パリソンを形成するに際して各層を形成する基材樹脂をそれぞれ別々の押出機により溶融混練し、これらをダイ内で合流させてから低圧域に押し出して多層に形成されたパリソンを得、これにブロー成形を施す方法が採用できる。
【0036】
基材樹脂の溶融物を押し出して発泡パリソンを形成するに際し、発泡層やこれに積層される他の樹脂層を形成する基材樹脂には、難燃剤、流動性向上剤、耐候剤、着色剤、熱安定剤、充填剤、帯電防止剤、導電性付与剤等の各種添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
【0037】
次に、本発明方法で用いられるポリプロピレン系樹脂について説明する。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等の樹脂が挙げられる。
【0038】
一般に結晶性熱可塑性樹脂の押出発泡は、その樹脂の融点近傍の温度で行われるが、ポリプロピレン系樹脂は、結晶化度が高く、押出発泡に適した温度付近での粘弾性変化が大きいために、発泡適性温度が非常に狭く、押出発泡により良好な発泡体を得ることが難しい樹脂である。
次に、上記ポリプロピレン系樹脂の問題点を克服して、ポリプロピレン系樹脂の押出発泡体を得るために必要な、粘弾性特性について説明する。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂の押出発泡体を得るには、押出直後の気泡形成時のポリプロピレン系樹脂の弾性と、気泡が成長していく間のポリプロピレン系樹脂の弾性変化の割合が重要である。即ち、発泡剤を含んだ発泡性溶融樹脂がダイから押出されると、高圧力下で樹脂中に溶解していた発泡剤が樹脂から分離し気泡が形成され、さらに周囲の樹脂中から形成された気泡中へと発泡剤が流入してくることによって気泡が成長していく。気泡成長初期における樹脂の変形量は大きく、気泡が成長するにしたがって変形量が小さくなっていき、最終的には気泡の成長が止まり気泡が固定される。このような気泡の成長に伴う弾性変化の割合が重要である。
【0040】
発泡開始時は樹脂の時間あたりの変形量が大きく、このときに樹脂の弾性が高すぎると気泡が形成できなくなる。気泡を形成するためには、樹脂の変形量が大きな領域では樹脂の弾性はある程度低いこと、すなわち溶融状態の樹脂に振動歪みを与える動的粘弾性測定において(以下、単に「動的粘弾性測定」とも言う。)、高角周波数側での貯蔵弾性率G´の値がある程度小さいことが好ましい。
気泡が膨張して発泡が進むにつれて樹脂の変形量が小さくなっていくが、このときに樹脂の弾性が大きく低下してしまうと、すなわち弾性変化の割合が大きすぎると、気泡を維持することができずに気泡が破泡してしまう。一方、弾性変化の割合が小さく樹脂の弾性が余り変化しないと、すなわち樹脂の変形量が小さくなったときに樹脂の弾性が高すぎると、所望の発泡倍率が非常に高い場合には気泡は十分に成長することが可能であるが、所望の発泡倍率が低い場合には気泡の成長を妨げる原因となり、所望の発泡倍率を有する発泡体が得られにくくなる。成長した気泡を維持し、かつ所望の発泡倍率を得るためには、樹脂の変形量に対して弾性が適度に変化する樹脂が好ましい。
【0041】
一般に、直鎖状ポリプロピレン系樹脂においては、前記貯蔵弾性率G´の傾きは分子量との相関性がある。直鎖状ポリプロピレン系樹脂においては、その分子量が大きくなるにつれて、角周波数に対する貯蔵弾性率G´の変化量が小さくなる傾向にある。しかしながら、高分子量タイプのポリプロピレン系樹脂は、高角周波数側での貯蔵弾性率G´の値が大きすぎるので、押出時に気泡が形成されにくく、良好な発泡体を得ることはできない。一方、分子量が小さくなると、貯蔵弾性率G´の値は小さくなるため、気泡が形成されやすくなるが、角周波数ωに対する貯蔵弾性率G´の変化量が大きくなりすぎるため、気泡を維持できず、やはり良好な発泡体が得られなくなる。
【0042】
上記したように押出発泡性に優れるポリプロピレン系樹脂は、動的粘弾性測定において、高角周波数側での貯蔵弾性率G´の値が小さく、角周波数の変化に対して貯蔵弾性率G´が適度に変化する動的粘弾性挙動を示すものが好ましい。そのような粘弾性挙動を示すポリプロピレン系樹脂として、分子中に分岐構造を有する高溶融張力ポリプロピレン系樹脂(HMSPP)やその回収原料がある。
【0043】
次に、本発明において主成分として用いられるポリプロピレン系樹脂(A)について説明する。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、これまでポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造に用いられてきた、下記条件(1)、(2)を満足する動的粘弾性特性を示す樹脂である。
【0044】
条件(1):
190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満である。
条件(1)において、角周波数(ω)100rad/secは、樹脂の変形速度が比較的速い場合、即ち発泡パリソンの発泡開始時の基材樹脂の変形に相当し、そのときの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満であることは、発泡が開始するときの樹脂の抵抗が大きすぎないことを意味する。即ち条件(1)は、発泡パリソンの気泡の形成しやすさの程度を表している。該貯蔵弾性率G´が大きすぎると、弾性特性が強いため、気泡の形成が見込めない。かかる観点から、該貯蔵弾性率G´は4.0×10−2MPa未満であることが好ましく、より好ましくは3.0×10−2MPa未満である。一方、角周波数100rad/secにおける貯蔵弾性率G´があまりにも低すぎると、ダイ内での樹脂圧力を保持することが困難となり、ダイ内で発泡が始まってしまう、所謂内部発泡と呼ばれる現象が起こり良好な発泡体が得られなくなるため、その下限は概ね2.0×10−2MPa程度である。
【0045】
条件(2):
190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.5〜0.7である。
条件(2)において、傾きが値が大きいことは、角周波数が減少するに従い弾性変化が大きくなる樹脂であることを意味する。該貯蔵弾性率G´の傾き値が0.5未満であると、気泡の成長が阻害されてしまう。0.7を超えると、気泡成長時の樹脂の弾性変化が大きすぎるため、気泡が破泡しやすくなる。
なお、貯蔵弾性率G´の傾き値は、角周波数(ω)の対数を横軸にプロットし、角周波数(ω)に対応する貯蔵弾性率G´の対数を縦軸にプロットし、このグラフ上の2点間を結ぶ直線の傾きとして求められる。
【0046】
上記条件(1)、(2)で規定される粘弾性挙動を示すポリプロピレン系樹脂としては、例えば、分子鎖中に分岐構造を有するHMSPPが挙げられ、具体的にはBorealis社製の「WB130」(商品名)、「WB135」(商品名)や、Basell社製の「PF814」(商品名)などがある。
【0047】
押出発泡シートなどの通常の押出発泡成形では、発泡後は冷却固化させるだけであり、上記粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂を用いれば、良好な押出発泡体を得ることが可能である。
それに対して、発泡ブロー成形の場合、溶融状態の樹脂を発泡させ発泡パリソンを形成した後、発泡パリソンが冷却固化する前にブロー成形しなければならない。さらに、ソリッド(無発泡)のパリソンをブロー成形する一般のブロー成形においては、パリソンが肉厚の壁体であるため、ブロー成形時に比較的容易にパリソン全体を均一に伸ばすことができる。これに対して、発泡ブロー成形においては、パリソンが発泡しているため、発泡パリソンを均一に伸ばすためには、発泡セルを構成する薄い個々の気泡膜がブロー成形時に均一に伸びなければならない。
【0048】
従来の発泡ブロー成形においては、上記のような粘弾性特性を示すポリプロピレン系樹脂(A)を用いれば、厚みの均一性に優れる発泡ブロー成形体を得ることが可能であった。しかし、上記のように、発泡ブロー成形体の形状が特に複雑な場合や、成形時に発生するバリを回収した回収原料を高比率で使用する場合には、上記粘弾性特性を有するポリプロピレン系樹脂(A)だけでは、厚みの均一性に優れた発泡ブロー成形体を得ることは容易ではなかった。
【0049】
通常、ポリプロピレン系樹脂は、低角周波数側になるほど粘性的な性質が支配的となり、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数(ω)1rad/secでは、貯蔵弾性率G´に対する損失弾性率G´´の比(G´´/G´)である損失正接tanδが1.0以上の値を示す。その中でも、従来押出発泡に好適に使用されてきたHMSPPは、角周波数(ω)1rad/secでの損失正接tanδは1.0〜2.0の範囲となる(条件(3))。
【0050】
本発明者は、発泡ブロー成形においては、上記粘弾性特性だけでは十分ではなく、低角周波数側での樹脂の粘弾性特性がブロー成形性を大きく左右するということを見出した。
本発明方法においては、ポリプロピレン系樹脂(A)に対して、低角周波数側で特異的な粘弾性特性を示すポリプロピレン系樹脂(B)を少量添加して、それらの混合物を基材樹脂として用いることにより、発泡パリソンのブロー成形性を格段に向上させることができるようになった。
【0051】
本発明方法で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、下記条件(4)を満足するものである。
条件(4):
190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数(ω)1rad/secでの貯蔵弾性率G´に対する損失弾性率G´´の比である損失正接tanδが1.0未満である。
【0052】
損失正接tanδの値が大きくなるほど、粘性体としての性質が支配的であり、小さくなるほど弾性体としての性質が支配的であることを意味する。角周波数(ω)=1rad/secは発泡パリソンをブロー成形する時の歪み速度に近いと考えられ、この角周波数(ω)のときに弾性体としての性質が強くなることで、ブロー成形時に、個々の気泡膜が均一に伸び、気泡を破壊することなくパリソンをより均一に膨らませるこができるようになると考えられる。
さらに、低角周波数側でのtanδが極端に小さい特異的なポリプロピレン系樹脂を微量、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(A)に分散させる事で、ネットワーク構造が構築され、発泡の終期段階の局所的破泡を防止し、発泡パリソンの収縮を防止する効果もあるものと考えられる。
【0053】
これらのことが、ポリプロピレン系樹脂(B)の微量添加による特異的な効果が発揮される要因と推察できる。具体的には、ポリプロピレン系樹脂(A)に、角周波数(ω)1rad/sebでの損失正接tanδが1.0未満のポリプロピレン系樹脂(B)を添加することにより、ブロー成形時のブローエアで潰れ難い気泡となり、さらに、発泡パリソンの弾性が強くなり、ブロー成形時に均一に発泡パリソンを拡張しやすくなるので、得られる成形体の肉厚均一性が向上する。
上記観点からは、該tanδは低いほどよく、0.9未満であることが好ましく、その下限は通常は0.6程度である。
【0054】
さらに、ポリプロピレン系樹脂(B)は下記条件(5)、(6)を満足することが好ましい。
条件(5):
190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5×10−2MPa未満である。
条件(5)は、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の条件(1)と同様に、発泡開始時の抵抗が大きすぎないことを表している。かかる観点から、該貯蔵弾性率G´は4.0×10−2MPa未満が好ましく、3.0×10−2MPa未満がより好ましい。また、其の下限は概ね1.5×10−2MPa程度である。
【0055】
条件(6):
190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.3以上0.5未満である。
条件(6)は、ポリプロピレン系樹脂(A)の条件(2)に比較すると、ポリプロピレン系樹脂(B)は、角周波数(ω)の増加に伴う弾性の変化が小さい樹脂であること、即ち、ポリプロピレン系樹脂(B)はポリプロピレン系樹脂(A)より、変位の変化に対して抵抗の減少が小さい樹脂であることを意味する。このような粘弾性特性を示す樹脂は、単独では、0.1g/cm以上の見掛け密度に押出発泡させるには不向きであるが、ポリプロピレン系樹脂(A)に少量添加して上記密度範囲に押出発泡させることにより、発泡性を向上させることができる。さらに、回収原料を多量に使用する場合などには、発泡性を顕著に向上させることができる。かかる観点から、該傾きは、0.4以下がより好ましい。
【0056】
本明細書におけるポリプロピレン系樹脂の動的粘弾性測定は次のように行う。
動的粘弾性測定は、測定装置として動的粘弾性測定機(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー社製のダイナミックアナライザーSR200型)を使用し、応力制御方式により線形領域内で測定される。応力制御方式での測定において、ポリプロピレン系樹脂の粘弾性測定を190℃で最大周波数100rad/secまで行う場合には、応力が3×10−5〜2×10−3MPaの範囲であれば線形領域内となる。本明細書においては応力を5×10−5MPaとして動的粘弾性を測定する。
【0057】
まず、ポリプロピレン系樹脂を温度200℃、圧力10MPaの条件下で5分間プレス成形して厚さ約2mmの樹脂板を作製し、この樹脂板から直径25mmの測定用の円盤状サンプルを調整する。この測定用サンプルを動的粘弾性測定機の直径25mmのパラレルプレートの間に狭んで、窒素雰囲気下にて190℃に昇温し約10分放置した後、パラレルプレートの間隔を狭めて1.6mmに調整し、パラレルプレートからはみ出した溶融樹脂を取り除く。その後、角周波数(ω)を変化させ、角周波数(ω)に対応した貯蔵弾性率:G´及び損失弾性率:G´´を測定する。
【0058】
本発明方法においては、前記ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリプロピレン系樹脂(B)0.5〜5重量部が添加された混合樹脂を原料ポリプロピレン系樹脂として使用することを要する。樹脂(B)の添加量が少なすぎると、発泡パリソンの発泡性改善効果およびブロー成形性改善効果が得られない。樹脂(B)の添加量が多すぎると、発泡パリソンの弾性特性が強くなりすぎて発泡状態の制御が困難となる虞や、発泡パリソンに多大なコルゲートが発生してブロー成形時にコルゲートの巻き込みが発生する虞がある。かかる観点から、樹脂(B)の添加量の下限は、1重量部が好ましく、1.5重量部がより好ましい。一方、樹脂(B)の添加量の上限は、4.5重量部が好ましく、4重量部がより好ましい。
【0059】
ポリプロピレン系樹脂(A)にポリプロピレン系樹脂(B)を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、樹脂(A)に樹脂(B)を直接添加して混合してもよく、樹脂(B)をポリプロピレン系樹脂などによりあらかじめマスターバッチとし、該マスターバッチとポリプロピレン系樹脂(A)とを、樹脂(B)の割合が上記範囲内となるように混合してもよい。
【0060】
ポリプロピレン系樹脂(A)として2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合には、それらの樹脂のそれぞれが上記条件(1)〜(3)を満足するか、或いはそれらの樹脂のうち1種以上が上記条件(1)〜(3)を満足しない場合にも、それらの樹脂の粘弾性特性を混合比率に応じて相乗平均した値が上記条件(1)〜(3)の粘弾性特性を満足すればよい。
【0061】
ポリプロピレン系樹脂(A)の230℃における溶融張力(MT)は、1.5cN以上が好ましく、より好ましくは2cN以上、更に好ましくは3cN以上である。溶融張力が低すぎると、発泡パリソンのドローダウンが大きくなり、また、気泡の変形、破泡等が生じやすく、得られる成形体の肉厚のバラツキも不均一となりやすく、成形体の機械的強度、断熱性が低下する虞がある。一方、溶融張力が高すぎると、肉厚の薄い成形体を得ることが困難となりやすく、肉厚の均一性も低下する虞もあることから、其の上限は、概ね40cNであり、好ましくは35cN、より好ましくは30cNである。
【0062】
また、ポリプロピレン系樹脂(A)の230℃におけるメルトフローレイト(MFR)は2g/10分以上が好ましく、より好ましくは3g/10分以上である。メルトフローレイトが小さすぎると、押出発泡時の樹脂温度を高くしなければならず、押出温度を高くすると発泡時の溶融樹脂の溶融張力が低下し、気泡が破泡して連続気泡となりやすく、独立気泡率の高い発泡成形体が得られにくくなる。一方、メルトフローレイトが大きすぎると、ドローダウン性が悪化し、肉厚の均一な発泡成形体が得られなくなるので、其の上限は20g/10分が好ましく、より好ましくは10g/10分である。
【0063】
ポリプロピレン系樹脂(A)として2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合には、それらの樹脂のそれぞれが上記MT及びMFRを満足すればよいが、それらの樹脂のうち1種以上が上記MT及びMFRを満足しない場合にも、それらの樹脂のMT及びMFRを混合比率に応じて相乗平均した値が上記範囲を満足することが好ましい。
【0064】
さらに、ポリプロピレン系樹脂(B)の230℃におけるMFRのポリプロピレン系樹脂(A)の230℃のMFRに対する比(B/A)が0.2〜5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5である。MFRの比が前記範囲内であると、ポリプロピレン系樹脂(A)へのポリプロピレン系樹脂(B)の分散性が特に良化し、発泡パリソンの発泡性およびブロー成形性がさらに優れたものとなる。
【0065】
上記溶融張力(MT)は、ASTM D1238に準じて測定された値であり、例えば、(株)東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定することができる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を230℃とし、試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、4分で引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。ここで、引取り速度が0m/分から200m/分に達するまでの時間を4分とした理由は、樹脂の熱劣化を抑えるとともに得られる値の再現性を高めるためである。上記操作を異なる試料を使用し、計10回の測定を行い、10回で得られた極大値の最も大きな値から順に3つの値と、極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を溶融張力(cN)とする。
【0066】
但し、上記した方法で溶融張力の測定を行い、引取り速度が200m/分に達しても紐状物が切れない場合には、引取り速度を200m/分の一定速度にして得られる溶融張力(cN)の値を採用する。詳しくは、上記測定と同様にして、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を張力検出用プーリーに掛け、4分間で0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーを回転させ、回転速度が200m/分になるまで待つ。回転速度が200m/分に到達してから溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られた縦軸にメルトテンションを、横軸に時間を取ったテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を本明細書における溶融張力とする。
【0067】
ここで、上記Tmaxとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
尚、当然のことながら上記測定において溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が入らないようにする。また、発泡ブロー成形体から測定試料を調整する場合、発泡ブロー成形体を真空オーブンにて加熱し脱泡したものを試料とし、その際の真空オーブンでの脱泡条件は、発泡ブロー成形体の基材樹脂を構成しているポリプロピレン系樹脂の融点以上の温度、例えば230℃とし、かつ減圧下とする。
【0068】
上記メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999)に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0069】
本発明方法の所期の目的効果を阻害しない範囲において、基材樹脂には、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やその水素添加物等の熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリスチレン系樹脂等が副成分として添加されていても良い。その添加量は、概ね20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0070】
本発明方法で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、例えば、2段階以上の重合工程で、プロピレンを単独で重合させて、又はプロピレンとエチレンや炭素数4以上のα−オレフィンなどの他のモノマーとを共重合させて、直鎖状のポリプロピレン系樹脂の分子量及び分子量分布を調整することにより製造することができる。具体的には、WO2005/097842号公報などに記載されているように、2段階以上の重合工程のうち、1段階目の重合において、実質的に水素不存在下で相対的に高分子量のプロピレン系重合体を重合し、さらに2段階目以降の重合において、1段階目の重合により得られたプロピレン系重合体よりも相対的に低分子量のプロピレン系重合体を重合することにより多段重合体を製造すればよい。
ポリプロピレン系樹脂(B)は、本発明の出願人である株式会社プライムポリマーから入手することができる。
【0071】
本発明方法により得られる発泡ブロー成形体の見掛け密度は、0.1〜0.6g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5g/cmである。見掛け密度が前記範囲内であると、発泡ブロー成形体が軽量性と機械的強度とのバランスに優れたものとなる。
【0072】
発泡ブロー成形体の見掛け密度は、成形体の重量(g)を、成形体の体積(cm)で除することによって求める。
【0073】
本発明方法により得られる発泡ブロー成形体の平均厚みは、1〜10mmが好ましく、より好ましくは1.5〜7mmである。該平均厚みが薄すぎると、断熱性等の発泡体特有の性質を、発泡ブロー成形体に付与することができなくなる虞がある。一方、厚すぎると、製造が困難になってしまう。
【0074】
前記平均厚みは以下のように測定される。
厚みの測定部位は、発泡ブロー成形体の長手方向(通常は発泡パリソンの押出方向)の中央部付近および両端部付近、さらに中央部と両端部との中間点付近の計5部位とし(但し、嵌合部などの発泡ブロー成形体の特殊な形状部分は避けることとする。)、さらにそれらの部位において長手方向と直交する成形体周方向に等間隔に6箇所の計30箇所とする。各測定箇所において厚みを計測し、得られた30箇所の厚みの内、最大値と最小値とを除いた計28箇所の厚みの算術平均値を平均厚みとする。なお、測定部位にダクトの吹き出し口などの厚みを測定することができない箇所がある場合には、吹き出し口などを除く部分を周方向に等間隔に6等分して、それらの中心付近の6箇所の厚みを測定することとする。
【0075】
本発明方法により得られる発泡ブロー成形体の独立気泡率は、60%以上であることが好ましい。独立気泡率が低すぎる場合は、優れた断熱性、機械的物性のものを得ることができない虞がある。かかる観点からは、該発泡ブロー成形体の独立気泡率は、70%以上、更に80%以上であることがより好ましい。
【0076】
独立気泡率は、発泡ブロー成形体から試験片を切り出し、ASTM D2856−70(1976再認定)の(手順C)によりVxを求め、下記(7)式により算出する。規定の体積の試験片が切り出せない場合は、複数の試験片を重ね合わせることにより規定の体積に極力近づけることとする。
【0077】
独立気泡率(%)=
(Vx−Va(ρf/ρs))×100/(Va−Va(ρf/ρs)) (7)
Vx;試験片の実容積(独立気泡部分の容積と樹脂部分の容積との和)(cm
Va;試験片の外形寸法から求められる見掛けの容積(cm
ρf;試験片の見掛け密度(g/cm
ρs;試験片の基材樹脂の密度(g/cm
【0078】
本発明方法により得られる発泡ブロー成形体の厚み方向の平均気泡径aは、0.1〜0.8mmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6mmである。
また、発泡ブロー成形体の押出方向(通常は長手方向)の平均気泡径bに対する上記平均気泡径aの比(a/b)は0.1〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1、更に好ましくは0.3〜0.8である。また、発泡ブロー成形体の押出方向と直交する方向の平均気泡径cに対する上記平均気泡径aの比(a/c)は、0.1〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1、更に好ましくは0.2〜0.6である。
【0079】
平均気泡径aが上記範囲内であると、断熱性、機械的強度、外観などのバランスに特に優れた発泡ブロー成形体となる。
また、発泡ブロー成形体の特性、特に断熱性や、圧縮、曲げ特性などの機械的物性は、平均気泡径に加え、気泡の形状によっても大きく左右される。好ましい気泡形状は発泡体に付与しようとする性能によっても異なる。気泡変形率a/b及びa/cは発泡パリソンのドローダウン量及び/又はプリブローによる発泡パリソンの拡幅量を制御することや、ブロー成形時のブローエアの圧力を制御することによって調整することができる。
【0080】
本明細書において、発泡ブロー成形体の厚み方向の平均気泡径aの測定は、発泡ブロー成形体の長手方向に対する垂直断面を拡大投影し、投影画像上にて厚み方向に発泡ブロー成形体の全厚みに亘る直線を引き、その直線と交差する気泡数をカウントし、画像上の直線における拡大前の実際の長さを気泡数で割ることによって求めた値を成形体厚み方向の気泡径とする。この操作を発泡ブロー成形体の中央部付近及び両端部付近、それらの中間点付近の計5部位(但し、測定箇所としては、嵌合部などの特殊な形状部分は除くものとする。)の垂直断面において行うこととし、更に、各垂直断面において成形体の開口周縁に沿って周方向に等間隔に6箇所測定を行うこととする。得られた30箇所の気泡径の内、最大及び最小の値を除く28箇所の気泡径の算術平均値を発泡ブロー成形体の厚み方向の平均気泡径aとする。なお、測定部位にダクトの吹き出し口などの気泡径を測定することができない箇所がある場合には、吹き出し口などを除く部分を周方向に等間隔に6等分して、それらの中心付近の6箇所の気泡径を測定することとする。また、測定しようとする箇所に、他の測定箇所に比べて気泡が過度に潰された部分や気泡が過度に引伸ばされた部分がある場合には、それらの部分は測定の対象とはせずに、同一断面の他の任意の部分の気泡径を測定することとする。
【0081】
また、長手方向の平均気泡径bは以下のように測定される。
発泡ブロー成形体の側壁の長手方向に沿った周方向に対する垂直断面を拡大投影し、投影画像上にて該発泡ブロー成形体の厚みを二等分する位置であって、且つ、該発泡ブロー成形体の長手方向に拡大前の実際の長さ10mmに相当する長さの線分(曲線の場合もある)を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、気泡径(mm)=10/(気泡数−1)にて求めた値を成形体長手方向の気泡径とする。この操作を発泡ブロー成形体の中央部付近及び両端部付近、それらの中間点付近の計5部位(但し、測定箇所としては、嵌合部などの特殊な形状部分は除くものとする。)に対して行うこととし、更に、各部位において成形体の周方向に等間隔に6箇所測定を行うこととする。得られた30箇所の気泡径の内、最大及び最小の値を除く28箇所の気泡径の算術平均値を発泡ブロー成形体の長手方向の平均気泡径bとする。また、測定しようとする箇所に、他の測定箇所に比べて気泡が過度に潰された部分や気泡が過度に引伸ばされた部分がある場合には、それらの部分は測定の対象とはせずに、同一部位の他の任意の部分の気泡径を測定することとする。
【0082】
また、周方向の平均気泡径cは以下の測定により測定される。発泡ブロー成形体の長手方向に対する垂直断面を拡大投影し、投影画像上にて該発泡ブロー成形体の厚みを二等分する位置であって、且つ、該発泡ブロー成形体の周方向に拡大前の実際の長さ10mmに相当する長さの線分(曲線の場合もある)を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、気泡径(mm)=10/(気泡数−1)にて求めた値を成形体周方向の気泡径とする。この操作を発泡ブロー成形体の中央部付近及び両端部付近、それらの中間点付近の計5部位(但し、測定箇所としては、嵌合部などの特殊な形状部分は除くものとする。)の垂直断面において行うこととし、更に、各垂直断面において成形体の周方向に等間隔に6箇所測定を行うこととする。得られた30箇所の気泡径の内、最大及び最小の値を除く28箇所の気泡径の算術平均値を発泡ブロー成形体の周方向の平均気泡径cとする。また、測定しようとする箇所に、他の測定箇所に比べて気泡が過度に潰された部分や気泡が過度に引伸ばされた部分がある場合には、それらの部分は測定の対象とはせずに、同一断面の他の任意の部分の気泡径を測定することとする。
【0083】
平均気泡径aを平均気泡径bで除することにより気泡変形率a/bを求め、平均気泡径aを平均気泡径cで除することにより気泡変形率a/cを求める。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
実施例、比較例で用いたポリプロピレン系樹脂の種類、物性を表1〜3に示す。なお、ポリプロピレン系樹脂の角周波数100rad/secでの貯蔵弾性率G´、角周波数1〜100rad/secの間の貯蔵弾性率G´の傾き、角周波数1rad/secでの損失正接tanδ、230℃における溶融張力(MT)およびメルトフローレート(MFR)は前記方法に従って測定した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
実施例1〜6、比較例1〜8、参考例1
表4に示す種類、配合量のポリプロピレン系樹脂と気泡調整剤としてのタルクとを口径65mmの押出機に供給し、押出機内にて溶融混練した。次いで押出機の途中から二酸化炭素(CO)をポリプロピレン系樹脂1kg当たり表4に示す圧入量(mol/kg)となるように圧入し混練して発泡性溶融樹脂とした。次いで、発泡性溶融樹脂を押出機に連結したアキュームレータに充填した。次にアキュームレータの先端に配置した環状ダイより発泡性溶融樹脂を常圧域に押出すことにより発泡させて発泡パリソンを形成した。次いで発泡パリソンにプリブローエアを吹き込みながら、発泡パリソンをダイ直下に配置した2分割式の金型間に挟み、発泡パリソンの内部にブローピンからブローエアを吹き込むこと及び金型に設けた孔より吸引することにより、発泡パリソンの外面を金型内面に押し付けることにより、発泡パリソンをブロー成形した。冷却後、金型を開き成形体を取り出し、バリ及びポケット部を取り除くことにより、発泡ブロー成形体を得た。発泡パリソンの押出条件を表4に示す。なお、押出時パリソン温度は、ブロー成形を行う前に予め発泡パリソンのみを形成し、パリソンの押出が完了した直後にダイ先端部から100mm下の位置を測定した値である。測定装置として、佐藤計量製作所製、赤外線温度計(型式:SK−8700II)を使用し、測定の際のパリソン表面と測定器の距離は50mmとした。
【0089】
成形金型として、最大長さ650mm、最大幅180mmの発泡ブロー成形体用の金型を使用した。金型の平均展開比は1.51、平均ブロー比は0.36である。
なお、上記展開比とは、金型のパーティングライン間を結ぶ発泡パリソンの押出方向に直交する直線(La)に対する成形体周長の長さの半分(Lb)の比(La/Lb)を意味し、平均展開比とは、金型のキャビティを押出方向に略7等分したときの各部位の押出方向中央部付近の計7箇所の展開比の算術平均値を意味する。通常、この展開比の値が大きいほど、厚みの均一性が低下しやすい傾向にある。また、ブロー比とは、上記直線(La)に対する、直線Laから成形体に向かってLaに対して垂直な直線を引いたとき最も距離が長くなる直線の長さ(Lc)の比(Lc/La)を意味し、平均ブロー比とは上記計7箇所のブロー比の算術平均値を意味する。上記展開比が同じでも、このブロー比が大きいほど厚みの均一性が低下しやすい傾向にある。
【0090】
【表4】

【0091】
実施例、比較例で得られた発泡ブロー成形体の見掛け密度、平均厚み、発泡性、成形性等の諸物性を表5に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
<見掛け密度>
見掛け密度は、発泡ブロー成形体の重量(g)を該発泡ブロー成形体を水没させて測定される発泡ブロー成形体の体積(cm)にて除することによって求めた。
【0094】
<平均厚み>
発泡ブロー成形体の平均厚みは、上記測定方法に従って求めた。
【0095】
<独立気泡率>
測定装置として東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計(型式:930型)を用い、発泡ブロー成形体の上記厚み測定を行った5部位付近において、上記の測定方法に従って独立気泡率を測定し、それらの算術平均値を発泡ブロー成形体の独立気泡率とした。
【0096】
<平均気泡径および気泡変形率>
成形体の厚み方向の平均気泡径a、長手方向の平均気泡径bおよび周方向の平均気泡径cは上記の方法に従って求めた。厚み方向の平均気泡径aおよび周方向の平均気泡径cについては、発泡ブロー成形体の5部位の垂直断面を測定部位とし、長手方向の平均気泡径bについてはそれらの測定部位近傍を測定部位とした。各断面を光学顕微鏡により50倍に拡大投影し、この投影画像をもとに平均気泡径を求めた。
【0097】
<収縮>
収縮は、目視にて以下の基準により評価した。
○・・・発泡パリソンの押出中又は押出完了後に発泡パリソンに著しい収縮が見られない。
×・・・発泡パリソンの押出中又は押出完了後に発泡パリソンが著しく収縮する。
【0098】
<コルゲート>
コルゲートは、目視にて以下の基準により評価した。
○・・・ブロー成形時にコルゲートの巻き込みが発生しない。
×・・・ブロー成形時にコルゲートの巻き込みが発生する。
【0099】
<ドローダウン性>
ドローダウン性は、以下の基準により評価した。
○・・・ブロー成形に影響を与える著しいドローダウンが見られない。
×・・・ブロー成形に影響を与える著しいドローダウンが見られる。
【0100】
<肉厚均一性>
肉厚均一性は、得られた発泡ブロー成形体において以下の基準で評価した。
◎・・・成形体厚みの変動係数Cv(%)が20%以下である。
○・・・成形体厚みの変動係数Cv(%)が20%を超え35%以下である。
△・・・成形体厚みの変動係数Cv(%)が35%を超え50%以下である。
×・・・成形体厚みの変動係数Cv(%)が50%を超える。
【0101】
変動係数Cv(%)は、発泡ブロー成形体の厚さの標準偏差(mm)/発泡ブロー成形体厚さの平均値(mm)×100で求められる値であり、厚みのバラツキ度合いを表す指標である。なお、成形体の厚さの標準偏差(V)は次式(8)により求められる。
V(mm)={Σ(Ti−Tav)/(n−1)}1/2 (8)
【0102】
式(8)において、Tiは平均厚さの測定の際に測定した30箇所の個々の厚さの測定値を、Tavは平均厚さを、nは測定数(具体的には30である)をそれぞれ表す。
変動係数(Cv)は(8)式により求めた標準偏差(V)を用いて、次式(9)によって求められる。
Cv(%)=(V/Tav)×100 (9)
【0103】
<穴あき>
穴あきの評価は以下の基準により行った。得られた発泡ブロー成形体の開口部を全て塞ぎ、成形体内に圧縮エアー吹き込み、発泡ブロー成形体側壁からのエアーの漏れの有無を観察した。
○・・・エアーを吹き込んだ際、漏れがない。
×・・・エアーを吹き込んだ際、漏れがある。
【符号の説明】
【0104】
1 発泡ブロー成形体
2 壁部
3 空間
11 発泡パリソン
22a、22b 金型
23 減圧用配管
24 ブローピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂をダイから押出して軟化状態の発泡パリソンを形成し、該発泡パリソンを金型に挟み込んでブロー成形する発泡ブロー成形体の製造方法において、
前記ポリプロピレン系樹脂が、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において下記条件(1)〜(3)を満足するポリプロピレン系樹脂(A)と下記条件(4)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)とからなり、
樹脂(A)と樹脂(B)との混合比(A:B)が重量比で100:0.5〜100:5であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
条件(1):角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満である。
条件(2):logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.5〜0.7である。
条件(3):角周波数(ω)1rad/secでの損失正接tanδが1.0〜2.0である。
条件(4):角周波数(ω)1rad/secでの損失正接tanδが1.0未満である。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、190℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において下記条件(5)及び(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
条件(5):角周波数(ω)100rad/secでの貯蔵弾性率G´が5.0×10−2MPa未満である。
条件(6):logω=0、logω=2に対応するlogG´の2点間の傾き値が0.3以上0.5未満である。
【請求項3】
発泡ブロー成形体の発泡層の見掛け密度が0.1〜0.6g/cmであり、かつ発泡層の平均厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201085(P2011−201085A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68941(P2010−68941)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】