説明

ポリプロピレン系樹脂積層発泡体及びその成形品

【課題】レンジアップ可能な耐熱性及び断熱性を有すると共に、各層間の接着強度が良好であって、且つ移香性を可及的に阻止でき、容器の強度を確保しつつ、丼等の深絞り成形品の成形を可能にしたポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを提供する。
【解決手段】発泡層と非発泡層とが積層されたポリプロピレン系樹脂発泡シートに、非発泡の熱可塑性樹脂フィルムが積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法であって、上記熱可塑性樹脂フィルムは、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとがドライラミネートされて構成されており、前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが二軸延伸された樹脂フィルムで構成され、前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルムに覆われて、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートの前記非発泡層に、熱ラミネートされて積層されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば保存用容器、特に長期保存用容器として好適に用いられるポリプロピレン系樹脂積層発泡体及びその成形品に関する。さらに詳細には、電子レンジで調理可能な耐熱性、耐油性に優れたポリプロピレン系樹脂積層発泡容器に用いられるポリプロピレン系樹脂積層発泡体であって、特に即席ラーメンなどの保存食品乃至即席食品等の長期保存用食品容器として好適に用いられるポリプロピレン系樹脂積層発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
即席麺用容器などの保存用食品容器として主に使用されているポリスチレン系樹脂発泡シート製の容器は、耐熱性がなく、レンジアップによる調理ができないことから、レンジアップが出来て且つ耐熱性及び断熱性を有するポリプロピレン系樹脂積層発泡容器が、コンビニ向け等のパスタなどの容器や弁当容器として広く使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、ポリプロピレン系樹脂の発泡シートからなる基材層の少なくとも片面に、強度確保のため二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(以下「OPPフィルム」と略記する場合がある。)の中間層を介して、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面層を有するポリプロピレン系樹脂の積層発泡体を開示する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−315277号公報
【0005】
しかし、かかるポリプロピレン系樹脂積層発泡容器を即席食品容器として長期保存して使用したところ、その長期保存の環境によっては、容器外部から内容物の麺などに臭いがついてしまうという移香性の問題があることを見出した。ここで、移香性とは、容器外の臭いが容器素材を透過して即席麺等の内容物に着臭する現象である。
【0006】
一方、樹脂積層発泡容器は、各層間において良好な接着強度を持つことが必要であり、特にポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材層とこの基材層と積層される層との間においては、かかる接着強度の低下によって、熱成形時の気泡膨れや、電子レンジ調理時の加熱による気泡膨れが発生することから、これを防止することが重要である。
【0007】
また特許文献1は、容器の強度向上のため二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムをポリプロピレン系樹脂の発泡シートからなる基材層に積層しているが、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものは、発泡シートの成形時に、成形性の悪い二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムが冷え易く、成形時の伸びが低下して熱成形性が悪化し、底の浅い成形品では問題はないが、丼等の深絞り成形品の成形は困難であった。従って、丼等の深絞り成形品を成形する場合は、成形性の良い無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(以下「CPPフィルム」と略記する場合がある。)をポリプロピレン系樹脂の発泡シートからなる基材層に積層せざるを得なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、レンジアップ可能な耐熱性及び断熱性を有すると共に、各層間の接着強度が良好であって、且つ移香性を可及的に阻止することができるポリプロピレン系樹脂積層発泡体及び即席麺などの保存食品容器等の長期保存用容器に好適に用いられる当該ポリプロピレン系樹脂発泡成形品を提供するところにある。また本発明は、上記課題に加えて、延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層して強度を確保しつつ、丼等の深絞り成形品の成形を可能にしたポリプロピレン系樹脂積層発泡体及び即席麺などの保存食品容器等の長期保存用容器に好適に用いられる当該ポリプロピレン系樹脂発泡成形品を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、移香性の対策として、バリアー性素材の中でも一番安価な、ポリエチレンテレフタレート(PET)素材のフィルムをポリプロピレン系樹脂フィルムを介してポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層し成形する事で、レンジアップ可能な耐熱性及び断熱性を有すると共に、各層間の接着強度が良好であって、移香性のないポリプロピレン系樹脂積層発泡体を安価に提供する事が出来た。
【0010】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムが積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡体であって、
上記熱可塑性樹脂フィルムは芳香族ポリエステル系樹脂フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとがドライラミネートされて構成されており、
上記熱可塑性樹脂フィルムを構成する前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートと積層されていることを特徴とするポリプロピレン系樹脂積層発泡体である。
【0011】
また本発明は、かかる発泡体を用いることにより、容器の内面側に前記非発泡の熱可塑性樹脂フィルムの表面層、その外面側にポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材層が配され、上記表面層と基材層とが積層された食品用容器であって、
上記熱可塑性樹脂フィルム層が、接着層を介して前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層と前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層とが積層されており、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層が前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートと積層され、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層が容器の内面側に配されている、
食品用容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが積層されているポリプロピレン系樹脂積層発泡体であるので、このポリプロピレン系樹脂積層発泡体を熱成形してなる発泡成形品は、即席麺などの保存食品容器等の長期保存用容器として好適に用いることができ、耐熱性及び断熱性を有すると共に、移香性を防止することができる。
また本発明は、上記熱可塑性樹脂フィルムを構成する前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層され、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが接着層を介して前記ポリプロピレン系樹脂フィルムにドライラミネートにより積層された構成であるので、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートに芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが積層されたものと比較して、接着強度が向上することから、熱成形時の気泡膨れや、電子レンジ調理時の加熱による気泡膨れの発生を阻止することができる。
【0013】
また本発明は、ポリプロピレン系樹脂フィルムが芳香族ポリエステル系樹脂フィルムに覆われて前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層された構造であるため、前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとした場合でも、発泡シートの成形時には、成形性の悪い二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムが冷え難く、成形時の伸びが向上することから、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを単独でポリプロピレン系樹脂発泡シートに積層した場合と比較して、容器などの成形品の強度を向上させながら、大巾に成形性を向上することができる。また深絞り成形が可能になったことから、即席麺容器として通常使用されるバケツ状や丼状の成形品が成形しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂積層発泡体の積層構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、同積層発泡シートのラミネート工程を示す概略図である。
【図3】図3は、同積層発泡シートを用いて熱成形された容器を示す寸法規定の概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(ポリプロピレン系樹脂積層発泡体)
図1は本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂積層発泡体の積層構造を示す概略断面図である。1はポリプロピレン系樹脂発泡シート、2は非発泡の熱可塑性樹脂フィルムである。このポリプロピレン系樹脂積層発泡体はポリプロピレン系樹脂発泡シート1と非発泡の熱可塑性樹脂フィルム2が積層された構造で構成されている。ポリプロピレン系樹脂発泡シート1は、この実施形態では、発泡層10と非発泡層11で構成されているが、必ずしもこれに限定されない。
【0016】
熱可塑性樹脂フィルム2は、芳香族ポリエステル系樹脂フィルム20とポリプロピレン系樹脂フィルム21とがドライラミネートされて構成されており、22は接着層である。
ポリプロピレン系樹脂フィルム21は、ポリプロピレン系樹脂発泡シート1と積層されている。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂フィルム21は、強度向上のため、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムで構成されている。
【0017】
かかるポリプロピレン系樹脂積層発泡体は、熱成形して発泡成形品として用いられるが、特に、食品用容器などの食品用発泡成形品、中でも即席麺などの保存用の食品用発泡容器として好適に用いられる。
【0018】
例えば、容器の内面側に前記非発泡の熱可塑性樹脂フィルムの表面層、その外面側に前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材層が配され、上記表面層と基材層とが積層された食品用容器であって、
上記熱可塑性樹脂フィルム層が、接着層を介して前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層と前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層とが積層されており、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層が前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートと積層され、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層が容器の内面側に配されている、
食品用容器は、レンジアップが出来て且つ耐熱性及び断熱性を有し、移香性が防止され、長期保存されることもある即席麺容器や弁当容器として好適に使用できる。
【0019】
(ポリプロピレン系樹脂発泡シート)
本発明の積層発泡体のうちポリプロピレン系樹脂発泡シート1は、発泡層10のみからなるものであってもよいし、発泡層10と非発泡層11とが積層されたものであってもよいが、熱可塑性樹脂フィルムを非発泡層11の表面に熱ラミネートすることで熱ラミネートの接着性が向上し、バブルの発生がなく、製造効率を上げることもできるので、発泡層10と非発泡層11とが積層されたものが好ましい。その表面に熱可塑性樹脂フィルムが熱ラミネートされる非発泡層の厚みは、薄いと熱可塑性樹脂フィルムを熱ラミネートする時の接着性の改善効果が少なく、厚いと発泡シート1の発泡倍率が低下して断熱性が悪化したり、発泡シート1の重量が重くなるので5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
本発明の積層発泡体のうちポリプロピレン系樹脂発泡シート1の発泡層10を形成するポリプロピレン系樹脂としては、無架橋のポリプロピレン系樹脂が好ましい。無架橋のポリプロピレン系樹脂としては、(A) 分子中に自由末端長鎖分岐を有する、メルトテンションが6g以上、40g以下のポリプロピレン系樹脂〔以下「樹脂(A)」とする〕、および(B) メルトテンションが0.01g以上、6g未満で、かつ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが3〜8であるポリプロピレン系樹脂〔以下「樹脂(B)」とする〕からなる群より選ばれた少なくとも1種が好適に使用される。
【0020】
このうち樹脂(A)のメルトテンションの好適範囲が6g以上、40g以下とされるのは、メルトテンションが6g未満では良好な発泡性を得ることができないからである。また逆にメルトテンションが40gを超える場合には、流動性が極端に悪くなったり、ゲルを生じやすくなったりして押出加工性が低下するおそれがあるからである。なお樹脂(A)のメルトテンションは、発泡性と押し出し加工性とのバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に20〜30gであるのが好ましい。
【0021】
このような自由末端長鎖分岐を有する樹脂(A)としては、例えばサンアロマー社から発泡用グレードとして販売されている、商品名Pro−fax PF−814、Pro−fax SD−632などが挙げられる。上記樹脂(A)は、押出発泡等によって発泡させた際の発泡性が良好であり、例えばその密度が0.3g/cm3未満といった低密度で発泡倍率の高い、断熱性に特に優れた発泡シート1を形成するのに適している。
【0022】
したがって樹脂(A)を単独で使用して発泡層10を形成してもよいが、樹脂(A)は高価で、製品コストの上昇をもたらすおそれがある。このため通常は、ポリプロピレン系樹脂として樹脂(A)と樹脂(B)とを併用して発泡層10を形成するのが好ましい。その場合にも、比較的低密度で発泡倍率の高い、断熱性に優れた発泡層10を形成することができる。樹脂(B)のメルトテンションの好適範囲が、前記のように0.01g以上、6g未満とされるのは、つぎの理由による。すなわちメルトテンションが0.01g未満では張力が低すぎるために、得られる発泡層10が連続気泡構造となり易い。また逆に6g以上では、樹脂の溶融粘度が高くなって融点近傍まで樹脂温度を下げることが困難となる結果、やはり連続気泡構造となり易い。このため、このいずれの場合にも発泡シート1の品質が低下するおそれがある。なお樹脂(B)のメルトテンションは、張力と溶融粘度とのバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に0.1g以上、6g未満であるのが好ましく、0.1g以上、3g未満であるのがさらに好ましい。
【0023】
なお、本発明において、樹脂のメルトテンションの測定は、(株)東洋精機製作所製の測定装置「キャピログラフPMD−C」を使用して、以下のようにして測定した。
まず試料樹脂を、230℃に加熱して溶融させた状態で、上記装置の、ピストン押出式プラストメーターのノズル(口径2.095mm、長さ8mm)から、ピストンの降下速度を10mm/minの一定速度に保ちつつ紐状に押出した。次にこの紐状物を、上記ノズルの下方35cmに位置する張力検出プーリーに通過させた後、巻き取りロールを用いて、その巻き取り速度を、約66m/minの加速度でもって増加させながら巻き取って行った。そして紐状物が切れるまで試験を行った際に、張力検出プーリーによって検出された最大の張力をもって、試料樹脂のメルトテンションとした。
ただし、巻き取り速度が60m/minを超えても紐状物が切断しない場合は、巻き取り速度60m/minでの張力をもって、その樹脂のメルトテンションとした。
【0024】
前記樹脂(B)としては、例えばプロピレンの単独重合体やエチレン−プロピレン共重合体などの、汎用のポリプロピレン系樹脂のうち、上記条件を満足するものが挙げられる。上記樹脂(A)と樹脂(B)との総量に対する、樹脂(A)の占める割合は、10〜50重量%であるのが好ましく、10〜40重量%であるのがさらに好ましい。この理由は下記のとおりである。
すなわち樹脂(A)は、その分子中に導入した自由末端長鎖分岐の働きによって、通常はあまり発泡性が良好でない無架橋の汎用ポリプロピレン系樹脂、つまり樹脂(B)の発泡性を向上させる機能を有する。そして、断熱性、耐油性、耐熱性を備えた発泡層10を得るために貢献する。しかし、自由末端長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂は、自由末端長鎖分岐を有しない汎用のポリプロピレン系樹脂に比べて、剛性に劣るという問題を有している。また自由末端長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂は高価であるため、製品の製造コスト上昇をもたらす。
【0025】
それゆえ、樹脂(A)と樹脂(B)との総量に対する、樹脂(A)の占める割合が、前記のように50重量%以下、特に40重量%以下であるのが好ましい。また一方、前述した樹脂(B)の発泡性を向上して、前記樹脂(A)単独の場合と同様に、その密度が0.3g/cm3未満といった低密度で発泡倍率の高い、断熱性に優れた発泡層10を形成するためには、樹脂(A)と樹脂(B)との総量に対する、樹脂(A)の占める割合は、10重量%以上であるのが好ましい。
【0026】
なお、前述したように樹脂(B)は、通常はあまり発泡性が良好でないものの、例えばその密度が0.3g/cm3以上といった、比較的発泡倍率の低い発泡層10を製造することは可能である。したがって、ポリプロピレン系樹脂として樹脂(B)を単独で使用して発泡層10を形成してもよい。非発泡層11を形成するポリプロピレン系樹脂としては、前記(A)(B)のポリプロピレン系樹脂を用いることもできるが、発泡性は必要ないのでコストの安い、(B)あるいは後述するポリプロピレン系樹脂フィルムに用いる樹脂を使用することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂発泡シート1は公知の押出発泡成形法で製造される。
例えば、発泡層10のみからなる発泡シート1は、上記の発泡層10用のポリプロピレン系樹脂を、発泡剤とともに押出機を用いて溶融混錬し、次いで押出機先端に接続した金型を通して押出発泡することによって製造される。また、発泡層10と非発泡層11とが積層された発泡シート1は、発泡層10用の押出機および非発泡層11用の押出機を連結させて、それぞれの押出物を合流ダイに供給し、次いで合流ダイに接続した金型を通して押出発泡することによって製造される。
【0027】
金型には円形スリットダイ、T型ダイなどがあるが、円形スリットダイを通して押出発泡させた円筒状の発泡体を、その円周上の1個所または2個所以上で切開して発泡シート1を製造するのが好ましい。押出発泡に使用する発泡剤としては、種々の揮発性発泡剤や分解型発泡剤、あるいは二酸化炭素、窒素ガス、水等が挙げられる。このうち揮発性発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素や、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素などの1種または2種以上が挙げられ、とくにブタンが好適に使用される。ブタンとしてはノルマルブタン、もしくはイソブタンをそれぞれ単独で使用してもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとを任意の割合で併用してもよい。
【0028】
また分解型発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤、クエン酸等の有機酸もしくはその塩と、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩との組み合わせなどの無機系発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は、いずれかを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
またポリプロピレン系樹脂にはあらかじめ、または押出機で溶融混練する際に、種々の添加剤を、この発明の効果を損なわない範囲で適宜、添加してもよい。添加剤としては、例えばクエン酸と重炭酸ナトリウム等の、発泡の際に気泡の大きさを調整するための気泡調整剤、顔料、安定剤、帯電防止剤等があげられる。なお、例えばタルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、クレー等の無機質フィラーを、成形品の強度、高温での剛性、耐久性および耐熱性を向上するために添加することもできるが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して40重量部以下、好ましくは30重量部以下程度の割合で配合することが好ましい。本発明において、より好ましいのは、無機質フィラーを含まないポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いることである。これは、ポリプロピレン系樹脂発泡シートを形成するポリプロピレン系樹脂100重量部に対して40重量部を超えてフィラーを含むポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いた場合、かかる発泡層の連続気泡率が高くなり、強度が不充分となる。さらに、サーマルリサイクルされた時に残灰の発生が多い。このように、熱伝導率の高いフィラーを大量に含むと、連続気泡率が高いため、食品用成形品、特に即席食品容器に適用する場合、断熱性が不充分である。
【0030】
かくして形成される発泡層10は、その密度が0.1〜0.85g/cm3であるのが好ましい。発泡層10の密度が0.1g/cm3未満では、成形品の強度や高温での剛性が低下するおそれがあり、逆に0.85g/cm3を超える場合には、成形品の断熱性が低下するおそれがある。なお発泡層10の密度は、成形品の強度や剛性と、断熱性とのバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に0.18〜0.6g/cm3であるのが好ましい。
【0031】
また発泡層10の厚みは、目的とする成形品の仕様などにもよるが、成形品の強度、断熱性及び熱成形性を勘案すると0.3〜5mmであるのが好ましく、0.5〜3mmであるのがさらに好ましい。
【0032】
(熱可塑性樹脂フィルム)
本発明で使用される熱可塑性樹脂フィルムは、既述の通り、芳香族ポリエステル系樹脂フィルム20とポリプロピレン系樹脂フィルム21とを積層することにより構成される。芳香族ポリエステル系樹脂フィルム20とポリプロピレン系樹脂フィルム21とを接着層22を挟んでドライラミネートして構成することが好ましい。ドライラミネートする際に使用される接着剤としては、ポリプロピレン系樹脂フィルム21と芳香族ポリエステルフィルム20とを接着できるものであればどのような接着剤でも使用することができるが、ウレタン系接着剤が好ましい。
【0033】
芳香族ポリエステル系樹脂フィルムを形成する芳香族ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCT)等が挙げられる。また、例えば特開2001−219523号公報に記載の通りの芳香族ポリエステル樹脂を用いることができる。すなわち、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させて得られるものであれば使用可能である。また芳香族ポリエステル単独重合体及び/又は芳香族ポリエステル共重合体のエステル交換反応等によって得られるものも使用可能である。
【0034】
前記ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸或いはそのエステル形成可能な誘導体を用いることができる。この誘導体としては、ジメチルエステル或はジエチルエステルなどのエステル誘導体、ジアンモニウム塩などの塩などを挙げることができる。重合体中のジカルボン酸の成分単位としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸或いはそのエステル形成可能な誘導体から誘導されるもの、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸或いはそのエステル形成可能な誘導体から誘導されるもの、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸或いはそのエステル可能な誘導体から誘導されるものが挙げられる。これらはその1種又は2種以上を重合体中に含有することが可能である。
【0035】
前記ジオール成分としては、脂肪族系及び芳香族系ジオール(二価のフェノールを含む)を使用できる。重合体中のジオールの成分単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール或いはそのエステル形成可能な誘導体から誘導されるもの、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール或いはそのエステル可能な誘導体から誘導されるもの、ビスフェノールA等の芳香族ジオール或いはそのエステル形成可能な誘導体から誘導されるものが挙げられる。
【0036】
なお、上記芳香族ポリエステル樹脂は、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される成分単位を少量含んでいてもよい。また、少量の安息香酸等の単官能化合物から誘導される成分単位によって分子末端を封止されていてもよい。
【0037】
なお、本発明は、芳香族ポリエステル樹脂のうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCT)等が好ましいが、ポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂のうちポリプロピレン系樹脂発泡シートに、特にOPPフィルムとともに積層した時の成形性に優れるPETGが最適である。PETGは、1,4−シクロヘキサンジメタノールをグリコール単位として含むポリエチレンテレフタレートである。PETGとしては、例えば、商品名「イースターPETG6763」(イーストマンケミカルジャパン(株)製)を用いることができる。そのガラス転移温度は82℃、密度は1.26g/cm3である。また、商品名「イースターPETG5011」(イーストマンケミカルジャパン(株)製)を用いることも可能である。そのガラス転移温度は82℃、密度は1.26g/cm3である。
【0038】
芳香族ポリエステル樹脂フィルムの厚みは5〜70μmが好ましい。その厚みが5μm未満では、成形品の移香性の防止効果が少ない恐れがあり、逆にその厚みが70μmを超える場合には、熱ロールによるラミネートが困難となったり、コストアップとなる。10〜50μmがより好ましい。
【0039】
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを形成するポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンの単独重合体が挙げられる他、プロピレンと他の樹脂とのブロック共重合体、またはランダム共重合体などが単独で、あるいは2種以上、混合して使用される。
【0040】
プロピレン以外の他の樹脂としては、例えばエチレンや、炭素数が4〜10のα−オレフィン(1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)などのオレフィンの、1種または2種以上が挙げられる。特に好適なポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、並びにプロピレン成分とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とを含むブロック共重合体などが挙げられる。
【0041】
またポリプロピレン系樹脂には、この発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を混合しても良い。当該他の樹脂としては、例えばエチレン、α−オレフィン等の単独重合体もしくは共重合体、ポリオレフィン系ワックス、ポリオレフィン系エラストマー等のオレフィン系樹脂の他、石油樹脂、テルペン樹脂等の炭化水素系樹脂などが、1種単独で、または2種以上混合して使用される。
【0042】
またポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて種々の添加剤を、この発明の効果を損なわない範囲で適宜、添加してもよい。添加剤としては、例えば帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤、すべり性付与およびアンチブロッキング性付与を目的とした界面活性剤等があげられる。
【0043】
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂フィルムとしては、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(CPPフィルム)、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(OPPフィルム)のいずれも使用できるが、OPPフィルムを使用した場合は、容器等の強度を向上できることから好ましい。
【0044】
OPPフィルムを製造するには、まずポリプロピレン系樹脂を、押出機を用いて溶融混練し、次いで押出機先端に接続した金型を通してフィルム状に押出成形する。そして押出成形されたフィルムを、樹脂の押出方向(縦方向、MD)と、それと直交する方向(横方向、TD)の2方向に逐次に、あるいは同時に延伸(二軸延伸)することによってOPPフィルムが製造される。
【0045】
上記のうち逐次二軸延伸法においては、まず押出機を用いて溶融した樹脂を、押出機の先端に接続したTダイよりフィルム状に押出して、冷却ロール上で冷却固化する。次いで加熱ロール延伸機を用いてMD方向に延伸したのち、テンター横延伸機を用いてTD方向に延伸する方法が行われる。また、同時二軸延伸法としてはテンター法、チューブラーインフレーション法などが挙げられる。OPPフィルムの延伸量などは特に限定されないが、その面積延伸倍率、すなわち面積延伸倍率=(MD方向の延伸倍率)×(TD方向の延伸倍率)は4〜50倍であるのが好ましい。
【0046】
面積延伸倍率が4倍未満では、OPPフィルムを積層したことによる、積層発泡体のドローダウンを改善する効果や、あるいは成形品の強度、高温での剛性等を向上する効果が不十分になるおそれがある。一方、面積延伸倍率が50倍を超える場合には、積層発泡体の熱成形性が低下するおそれがある。なお面積延伸倍率は、ドローダウンの改善効果や、成形品の強度および剛性を向上する効果と、積層発泡体の熱成形性とのバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に15〜35倍であるのが好ましい。
【0047】
またMD方向およびTD方向の延伸倍率は、ともに2〜10倍であるのが好ましい。延伸倍率が2倍未満では、OPPフィルムを積層したことによる、積層発泡体のドローダウンを改善する効果や、あるいは成形品の強度、高温での剛性等を向上する効果が不十分になるおそれがある。一方、延伸倍率が10倍を超える場合には、積層発泡体の熱成形性が低下するおそれがある。なおMD方向およびTD方向の延伸倍率は、ドローダウンの改善効果や、成形品の強度および剛性を向上する効果と、積層発泡体の熱成形性とのバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に3〜9倍であるのが好ましい。
【0048】
ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みは、5〜50μmであるのが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂フィルムとしてOPPフィルムを用いる場合は5〜50μmであるのが好ましい。厚みが5μm未満では、積層発泡体のドローダウンを改善するとともにコルゲートの発生を防止する効果や、成形品の、高温での剛性を改善する効果が不十分になるおそれがある。逆にOPPフィルムの厚みが50μmを超える場合には、当該ポリプロピレン系樹脂フィルムに芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが覆われていても、かかるポリプロピレン系樹脂フィルムを、発泡シートに積層して積層発泡体を作製する際や、作製した積層発泡体を熱成形して成形品を製造する際に多くの熱量を必要とする。このため製造効率が悪くなるおそれがある。また発泡シートが熱によって侵されて、熱成形時に局部的に伸ばされた部分が生じるなどして、成形品の外観が悪化するおそれもある。なおポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みは、上記各特性のバランスを考慮すると、上記の範囲内でも特に6〜45μmであるのが好ましい。
【0049】
好ましいOPPフィルムとしては、エチレン含有量が1〜4重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体、またはエチレン含有量が0.5〜3.0重量%、1−ブテン含有量が4〜15重量%のプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体などの、比較的融点の低いプロピレン系共重合体にて形成されるOPPフィルムである。このOPPフィルムを用いることで、さらに深絞り成形性がよいものとなる(特開平7−241906号公報等)。このフィルムの厚みの好適な範囲は、20〜45μm程度である。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面には、例えば印刷性等を向上すべく、コロナ放電処理等の表面処理を施しても良い。ポリプロピレン系樹脂フィルムは単層のものには限定されない。例えば組成の異なるポリプロピレン系樹脂からなるOPPフィルム同士、あるいは延伸倍率の異なるOPPフィルム同士などの、2層以上のOPPフィルムを積層した積層フィルムを用いることもできる。その場合、全てのOPPフィルムの合計の厚みが、前述した好適範囲となるように、各層の厚みを設定するのが好ましい。
【0051】
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムとしてはCPPフィルムを用いることもできる。CPPフィルムを形成するポリプロピレン系樹脂としては、OPPフィルムの場合と同様のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂に、発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を混合できる点も同様である。また、他の樹脂の種類も先の場合と同様である。さらに、ポリプロピレン系樹脂に添加してもよい添加剤の種類も先の場合と同様である。
【0052】
CPPフィルムは、ポリプロピレン系樹脂を、押出機を用いて溶融混練し、次いで押出機先端に接続した金型を通して押出成形したフィルムを、実質的に延伸しないことで製造される。
【0053】
前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルムと前記ポリプロピレン系樹脂フィルムとがドライラミネートされた熱可塑性樹脂フィルム全体の厚みは10〜100μmが好ましい。100μmを超えると、熱ロールによるラミネートが困難になる。また10μm未満では、成形品の移香性の防止効果が少なかったり、強度向上がみられない。20〜80μmがより好ましい。
【0054】
(その他の好ましい構成)
本発明では、上記構成に加えて、例えば接着層22に着色剤を加えて着色された接着層とすることができる。これにより、着色が容易であり、着色剤の使用量が少なく、コストダウンにつながる。
【0055】
また印刷は、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムの表側面又はポリプロピレン系樹脂フィルムの接着層22側の表面にすることが可能であるが、ポリプロピレン系樹脂フィルムの接着層22側の表面にすることが好ましい。ベタ印刷の場合は、上述の様に、接着層22に着色することによっても可能である。
ポリプロピレン系樹脂フィルムのポリプロピレン系樹脂発泡シート側の表面に印刷することも可能であるが、印刷インキによっては発泡シートとの接着が不充分となり、熱ラミネートよりフィルムを積層しようとした時に接着不良による浮き上がり(デラミ)が発生したり、熱成形時にバブルが発生する場合がある。印刷をポリプロピレン系樹脂フィルムの接着層22側の表面にする構成であれば、ポリプロピレン系樹脂フィルムが芳香族ポリエステル系樹脂フィルムとドライラミネートされ接着性に優れた積層構造となっているので、上記浮き上がり(デラミ)やバブルの発生を防止することができる。
【0056】
(積層発泡体の製造方法)
上記の各層を積層して本発明の積層発泡体を製造する方法としては、前記のように熱ラミネート法が好適に採用される。
例えば、図2において、発泡シート1に熱可塑性樹脂フィルム2が、熱ロール5と圧着ロール6によって熱ラミネートされ、積層発泡体3となる。熱ロールでの圧着の前に加熱器7によって発泡シート1や熱可塑性樹脂フィルム2を予熱することが好ましい。
【0057】
(積層発泡体の成形方法)
上記積層発泡体から本発明の成形品を製造するための熱成形の方法としては、例えば真空成形や圧空成形、あるいはこれらの応用としてのマッチ・モールド成形、プラグアシスト成形等の、従来公知の成形方法を採用することができる。
本発明では、芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層を容器の内面側、外面側のいずれの側で成形してもよいが、容器内面側になるように成形することが好ましい。これは、例えば成形容器を即席麺用容器として使用する場合には、容器はバリア性を有する蓋材でシールされて用いられる。この時、芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層が容器内面側に位置すると、蓋材は芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層にシールされ、内容物はバリア性を有する材料で密閉されることになり、移香性が防がれる。一方、発泡ポリスチレン容器などで広く行われているフィルム層を容器外側にした場合には、発泡シート層へ蓋材をシールすることになり、バリア材の間にポリプロピレン発泡層が挟まれる結果、そこから内容物への移香の問題が発生する恐れがある。
【0058】
なお、前記実施形態ではポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されたものを用いたが、非発泡層が形成されていないポリプロピレン系樹脂発泡シートを用いることもできる。かかる実施形態のように、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの表面層として非発泡層が形成されている場合は、熱ラミネートする時に発泡シート表面の気泡の影響が少なくなり、接着性が向上し、生産性を上げることができる。
【実施例】
【0059】
実施例1
発泡層用として、ポリプロピレン樹脂(A)(サンアロマー社、商品名「SD632」、メルトテンション:21.9g)25重量部、ポリプロピレン樹脂(B)(サンアロマー社、商品名「PM600A」、メルトテンション:0.8g)75重量部、気泡調整剤(大日精化工業社製、商品名「ファインセルマスターSSCPO410K」)0.19重量部をドライブレンドした。次にこの混合物を、第1および第2の2台の押出機を有するタンデム押出機(口径90mm−115mm)のホッパーに供給した。この混合物を第1押出機内で溶融、混錬しつつ発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=65/35)を樹脂100重量部あたり1重量部圧入した。さらに溶融混錬した溶融混合物を第1押出機から第2押出機に連続的に供給し、第2押出機で178℃に均一に冷却したのち、押出量123kg/時間で合流ダイに供給した。一方、非発泡層用ポリプロピレン樹脂として、三井化学社製、商品名「J104WA」100重量部を単軸押出機に供給し溶融した後、188℃に冷却して、押出量27kg/時間で前記合流ダイに供給した。合流ダイ先端に接続された環状金型から円筒状に押出発泡させた。得られた円筒状発泡体を、50℃の水で冷却されたマンドレルに沿わせて冷却成形し、マンドレル後部に取り付けたカッターで切開して、ポリプロピレン樹脂発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、厚み1.17mm(発泡層厚み1.09mm、非発泡層厚み0.08mm)、密度0.34g/cm3(発泡層0.30g/cm)、目付け400g/m2(発泡層328g/m、非発泡層72g/m)であった。そして、この発泡シートはその表面に80μmの非発泡PP樹脂層を備えている。
【0060】
一方、厚み30μmの芳香族ポリエステル系樹脂フィルム(PetGフィルム、イーストマンケミカルジャパン社製、商品名「イースターPETG6763」)と、厚み30μmのポリプロピレン系樹脂フィルム(OPPフィルム、サントックス社製、商品名「MF20Z」)をドライラミネートした熱可塑性樹脂フィルム(ドライラミネート用接着剤:ポリウレタンエーテル系接着剤、塗工時塗布量(ウェット状態)15〜17g/m、乾燥後塗布量3.5〜5g/m)を用意した。
【0061】
次に、図2に示すように、上記ドライラミネートされた熱可塑性樹脂フィルムを、そのポリプロピレン系樹脂フィルム(OPPフィルム)側がポリプロピレン系樹脂シート1の非発泡層側表面に接する向きで熱ロールによりラミネートし積層発泡シートを得た。この積層発泡シートは各層間の接着強度が良好で、熱成形時にバブル(気泡膨れ)の発生は見られなかった。
【0062】
なお、熱ロールの直径は300mm、熱ロール温度180℃、加圧ゴムロール(圧着ロール)直径180mm、ロール速度(ラミネート速度)6m/min、加圧量は線圧120N/cmである。
【0063】
次に、上記積層発泡シートを芳香族ポリエステル系樹脂フィルム(PETGフィルム)側が容器内側となるように単発成形機でプラグアシスト成形して、深絞り成形品であるヤキソバ用容器(即席麺用容器)を成形した。図3に示すように、このヤキソバ用容器4は、開口部40の直径140mm、底部41の直径125mm、高さ45mmのバケツ型成形品である。42は側壁部である。
【0064】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂発泡シートに積層する熱可塑性樹脂フィルムを厚み30μのOPPフィルム(サントックス社製、MF20Z)の単独フィルムとしたこと以外は実施例1と同様にして積層発泡シートを得た。次に、実施例1と同様にして、図3に示す構造の深絞り成形のバケツ型成形品を成形した。この積層発泡シートも各層間の接着強度が良好で、熱成形時にバブル(気泡膨れ)の発生は見られなかった。
【0065】
(移香性の評価)
上記実施例1及び比較例1にかかるバケツ型成形品の各容器の中に、それぞれ20gの乾燥おかゆフレークを入れ、アルミ箔で蓋をし周囲をロウで密封して評価対象容器を作成した。これらの容器を、密閉金属容器内に、パラジクロールベンゼン(エステー化学株式会社製、商品名「ネオパラエース」)16gとともに入れてから密封し、30℃のオーブンに3日間保管した。その後、上記密閉金属容器内から上記評価対象容器を取り出し、当該容器内のパラジクロールベンゼンの濃度と、乾燥おかゆフレークに吸着されたパラジクロールベンゼンの付着割合の測定を、ガスクロマトグラフィー/質量分析方法(GCMS)で実施した。
【0066】
ガスクロマトグラフィー/質量分析方法(GCMS)に用いられた分析機器は、日本分析工業(株)製の、ヘッドスペースサンプラー JHS−100型、(株)島津製作所製のGCMS−QP5000である。また、GCMSの分析条件は下記の通りである。:
カラム;DB−5(J&W製)φ0.25mm × 60mm 膜厚0.25μm
スプリット比;10
注入口温度;240℃
インターフェイス温度;260℃
カラム温度;40℃(3min)〜15℃/min〜200℃(0min)〜25℃/min〜240℃(3min)
キャリアガス;ヘリウム(1.0ml/min)
分析;TICモード
【0067】
表1は、測定結果を示している。表1によれば、実施例1の容器は、容器内のパラジクロールベンゼン濃度も比較例1と比べて著しく低く、また乾燥おかゆフレークには着臭もなく、パラジクロールベンゼンの付着が十分に阻止されていることが認められる。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、耐熱性、耐油性に優れ、長期保存可能なポリプロピレン系樹脂積層発泡容器として用いられる。特に、電子レンジ調理可能な耐熱性、耐油性に優れた食品用発泡容器として好適に用いられる。また、即席ラーメンなどの保存食品乃至即席食品等の長期保存用食品容器として好適に用いられる。
中でも、熱可塑性樹脂フィルムとして芳香族ポリエステル系樹脂フィルムとOPPフィルムとの積層フィルムを積層した本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡体は、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが移香性を防止し、OPPフィルムが容器の強度を向上させ、またOPPフィルムのみを積層した場合にみられる成形性の悪化がなく、深絞り成形が可能になり、即席麺容器などの保存容器として通常使用されるバケツ状や丼状の成形品を成形しやすい。
【符号の説明】
【0070】
1 ポリプロピレン系樹脂発泡シート
10 発泡層
11 非発泡層
2 熱可塑性樹脂フィルム
20 芳香族ポリエステル系樹脂フィルム
21 ポリプロピレン系樹脂フィルム
22 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層と非発泡層とが積層されたポリプロピレン系樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムが積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法であって、
上記熱可塑性樹脂フィルムは、芳香族ポリエステル系樹脂フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとがドライラミネートされて構成されており、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが二軸延伸された樹脂フィルムで構成され、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムが、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルムに覆われて、前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートの前記非発泡層に、熱ラミネートされて積層されていることを特徴とするポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法
【請求項2】
前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルムが、1,4−シクロヘキサンジメタノールをグリコール単位として含むポリエチレンテレフタレートで構成された請求項1記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法
【請求項3】
発泡層と非発泡層とが積層されたポリプロピレン系樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムが積層されたポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法であって、
上記熱可塑性樹脂フィルムは、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルムと二軸延伸された前記ポリプロピレン系樹脂フィルムとが接着層を介してドライラミネートされて構成されており、
前記発泡シートの厚みは0.3〜5mm、
非発泡層の厚みは5〜200μm、
芳香族ポリエステル系樹脂フィルムの厚みは5〜70μm、二軸延伸された前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みは5〜50μm、
前記接着層は、二軸延伸された前記ポリプロピレン系樹脂フィルムと前記芳香族ポリエステルフィルムとを接着できる層である請求項1又は2記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡体の製造方法
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの項に記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡体を熱成形してなる発泡成形品の製造方法
【請求項5】
請求項4項に記載のポリプロピレン系樹脂積層発泡体を熱成形してなる深絞り成形品用の保存用容器の製造方法であって、
前記保存用容器の内面側に前記非発泡の熱可塑性樹脂フィルムの表面層、その外面側に前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材層が配され、上記表面層と基材層とが積層された保存用容器であって、
上記熱可塑性樹脂フィルム層が、接着層を介して前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層と前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層とが積層されており、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルム層が前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートと積層され、前記芳香族ポリエステル系樹脂フィルム層が容器の内面側に配されている、
保存用容器の製造方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16365(P2011−16365A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189390(P2010−189390)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2005−67376(P2005−67376)の分割
【原出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】