説明

ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体

【課題】成形時の金型汚染が少なく、帯電防止性、耐光安定性、成形加工性に優れ、かつ、高い剛性と高い耐衝撃性の良好なバランスを有し、成形体にした場合、フローマークとウエルド外観に優れた成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂組成物は、所定のポリプロピレン樹脂(A)98〜50重量部と、所定のエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜25重量部と、無機充填剤(C)1〜25重量部と、所定の要件(a)、(b)及び(c)を満足するヒンダードアミン系光安定剤(D)0.02〜1重量部と、非イオン系帯電防止剤(E)0.05〜1重量部とを含有する(ただし、前記ポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量は100重量部である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であることから、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。ポリプロピレン樹脂は、その用途で要求される性能に応じて耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤を配合して使用することが知られている。
【0003】
一方、前記の添加剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、金型を用い連続的に実施される射出成形などの成形過程において、金型表面に揮発成分が徐々に蓄積し製品の外観不良を発生させる場合がある。このような金型汚染に対し、従来から特定の添加剤の配合による改良が行われている。
【0004】
例えば、特開2002−12720号公報には、特定の構造と特定の分子量を有する3種類のヒンダードアミン系光安定剤0.0〜0.5重量%とトロアリールフォスファイト系耐熱安定剤0.01〜0.5重量部を配合したポリプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【0005】
また、特開平10−292072号公報には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜0.2重量部、耐候剤0.01〜0.3重量部、脂肪酸アミド及び/又は脂肪酸ビスアミド0.01〜0.2重量部、及び帯電防止剤組成物0.01〜2.0重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【0006】
しかし、ポリプロピレン系樹脂組成物については、その帯電防止性、耐候性、および成形時の金型汚染性のバランスの改良が求められている。
【特許文献1】特開2002−12720号公報
【特許文献2】特開平10−292072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、成形時の金型汚染が少なく、帯電防止性、耐候性、成形加工性に優れ、かつ、高い剛性と耐衝撃性の良好なバランスを有し、成形体にした場合、フローマークとウエルド外観に優れた成形体を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のポリプロピレン樹脂とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムと無機充填剤の合計100重量部に対して、特定要件を満足するヒンダードアミン系光安定剤0.02〜1重量部と非イオン系帯電防止剤0.05〜1重量部配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、成形時の金型汚染が少なく、帯電防止性、耐候性、成形加工性に優れ、かつ、高い剛性と高い耐衝撃性の良好なバランスを有し、この組成物を成形体にした場合、フローマークとウエルド外観に優れた成形体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下のようなものを提供する。
【0009】
すなわち、本発明は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)とプロピレン単独重合体(A−2)とを含有する重合体混合物(A−3)を含有するポリプロピレン樹脂(A)98〜50重量部と、
炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.85〜0.87g/cm3、JIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたメルトフローレートが0.05〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜25重量部と、
無機充填剤(C)1〜25重量部と、
下記要件(a)、(b)及び(c)を満足するヒンダードアミン系光安定剤(D)0.02〜1重量部、及び、非イオン系帯電防止剤(E)0.05〜1重量部を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、前記ポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量は100重量部である)を提供する。
要件(a):
式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化1】


要件(b):
8未満の酸解離定数(pka)を有する。
要件(c):
温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率が10重量%未満である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形時の金型汚染が少なく、帯電防止性、耐候性、成形加工性に優れ、かつ、高い剛性と耐衝撃性の良好なバランスを有し、成形体にした場合、フローマークとウエルド外観に優れた成形体を得ることが可能な新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[ポリプロピレン系樹脂組成物]
〔ポリプロピレン樹脂(A)〕
本発明において用いられるポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)とプロピレン単独重合体(A−2)とを含有する重合体混合物(A−3)を含有する。
【0012】
前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、ポリプロピレン部分(以下、重合体成分(I)と称する。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(以下、共重合体成分(II)と称する。)とを含有する共重合体である。
【0013】
成形体の剛性や硬度、靭性や耐衝撃性、樹脂組成物の成形加工性などの観点から、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、好ましくは、重合体成分(I)55〜92重量%と、共重合体成分(II)8〜45重量%とを含有するブロック共重合体であり、より好ましくは、重合体成分(I)70〜90重量%と、共重合体成分(II)10〜30重量%とを含有するブロック共重合体である(ただし、前記ブロック共重合体(A−1)の全量を100重量%とする)。
【0014】
前記重合体成分(I)は、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、プロピレンとの共重合体であり、前記重合体成分(I)が、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、プロピレンとの共重合体である場合、成形体の剛性、耐熱性又は硬度の観点から、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの含有量が1モル%以下である(ただし、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、プロピレンとの共重合体の全量を100モル%とする)。
【0015】
成形体の剛性、耐熱性及び硬度の観点から、前記重合体成分(I)、好ましくはプロピレン単独重合体であり、より好ましくは、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率(以下、mmmm分率と記すことがある)が0.97以上のプロピレン単独重合体である。さらに好ましくは、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.98以上のプロピレン単独重合体である。
【0016】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。NMR吸収ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて行なう。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって、英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0017】
前記重合体成分(I)の極限粘度[η]PA-1は、溶融時の流動性と成形体の靭性とのバランスという観点から、好ましくは0.7〜1.3dl/gであり、より好ましくは0.85〜1.1dl/gである。
また、前記重合体成分(I)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定された分子量分布(Q値、Mw/Mnと表示されることもある)として、好ましくは3以上7未満であり、より好ましくは3〜5である。
【0018】
前記ブロック共重合体(A−1)の共重合体成分(II)に含有されるプロピレンとエチレンの重量の比(プロピレンの重量/エチレンの重量)は、成形体の剛性と耐衝撃性のバランスという観点から、好ましくは70/30〜50/50であり、より好ましくは65/32〜55/45である。
【0019】
前記共重合体成分(II)の極限粘度[η]EPA-1は、ウエルドラインの発生の防止、かつフローマークの発生の防止、さらに成形体の剛性と耐衝撃性のバランスという観点から、好ましくは4.0dl/g以上5.5dl/g以下であり、より好ましくは4.5〜5.3dl/gである。
【0020】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のJIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたメルトフローレート(以下、MFR)は、樹脂組成物の成形性や成形体の耐衝撃性という観点から、好ましくは10〜120g/10分であり、より好ましくは20〜90g/10分である。
【0021】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造方法としては、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)電子供与体成分を接触させて得られる触媒系と、公知の重合方法を用いて単量体を重合する方法が挙げられる。この触媒系の製造方法は、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0022】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造方法としては、例えば、ポリプロピレン部分を製造する第1工程と、該第1工程の後に行われる、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分を製造する第2工程を有する方法等が挙げられる。
【0023】
重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。工業的かつ経済的に有利であるという観点から、好ましくは、連続式の気相重合法、連続式のバルク−気相重合法である。
【0024】
より具体的な製造方法としては、
(1)少なくとも2槽の重合槽を直列に配置した重合装置を用いて行う方法であって、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)を接触させて得られる触媒系の存在下に、1槽目の重合槽でポリプロピレンを製造した後、生成したポリプロピレンを第2槽目の重合槽に移し、第2槽目の重合槽で前記ポリプロピレンの存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体を連続的に製造する方法、
(2)少なくとも4槽の重合槽を直列に配置した重合装置を用いて行う方法であって、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)を接触させて得られる触媒系の存在下に、1〜2槽目の重合槽でポリプロピレンを連続的に製造した後、2槽目の重合槽で生成したポリプロピレンを第3槽目の重合槽に移し、引き続き第3〜4槽目の重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続的に製造する方法、
等が挙げられる。
【0025】
上記の重合方法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法を参考にして、適宜、決めることができる。
【0026】
重合温度は、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。また、分子量調整剤として、例えば水素を用いても良い。
【0027】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造において、本重合を実施する前に予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)及び有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0028】
前記ブロック共重合体(A−1)には、添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。樹脂組成物の耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上させるためには、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
【0029】
前記ブロック共重合体(A−1)は、予め調製したブロック共重合体を過酸化物の存在下に溶融混練して分解処理して得られたブロック共重合体でもよい。
過酸化物の存在下に溶融混練して分解処理して得られたブロック共重合体に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EP-Aは、分解処理して得られた重合体のペレットの20℃キシレン可溶成分の極限粘度を測定することによって求められる。
【0030】
過酸化物としては、一般に有機系過酸化物が用いられ、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類及び過酸化カーボネート類等が挙げられる。
過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミル、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
【0031】
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。
過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t―ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルーパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
【0032】
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0033】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(A)は、前記ブロック共重合体(A−1)単独でもよく、前記ブロック共重合体(A−1)とプロピレン単独重合体(A−2)とを含有する重合体混合物(A−3)でも良い。
【0034】
重合体混合物(A−3)に含有される前記ブロック共重合体(A−1)の含有量は、30〜99重量%であり、前記単独重合体(A−2)の含有量は、1〜70重量%であり、好ましくは、前記ブロック共重合体(A−1)の含有量が45〜90重量%であり、前記単独重合体(A−2)の含有量が55〜10重量%である。
【0035】
前記単独重合体(A−2)として、好ましくは、アイソタクチック・ペンタッド分率が97%以上の単独重合体であり、より好ましくは98%以上の単独重合体である。
【0036】
前記単独重合体(A−2)のJIS K7120に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、10〜500g/10分であり、好ましくは40〜350g/10分である。
【0037】
前記単独重合体(A−2)の製造方法としては、前記ブロック共重合体(A−1)の製造に使用する触媒と同様の触媒を用いる方法が挙げられる。
【0038】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量を100重量部とするとき、成形体の剛性や衝撃強度の観点から、ポリプロピレン樹脂(A)の含有量は、98〜50重量部であり、好ましくは90〜55重量部であり、より好ましくは85〜55重量部である。
【0039】
〔エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)〕
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)は、炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.85〜0.87g/cm3であり、JIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたメルトフローレートが0.05〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムである。
炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。
【0040】
前記共重合体ゴム(B)に含有されるα−オレフィンの含有量は、成形体の衝撃性強度、特に低温衝撃強度という観点から、20〜50重量%であり、好ましくは、24〜50重量%である(ただし、前記共重合体ゴム(B)の全量を100重量%とする)。
【0041】
前記共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム又はエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、2種以上のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
【0042】
前記共重合体ゴム(B)の密度は、良好な剛性と耐衝撃性のバランスを得るという観点から、0.85〜0.87g/cm3であり、好ましくは0.850〜0.865g/cm3である。
【0043】
前記共重合体ゴム(B)のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgfで測定される)、ウエルドラインの発生の防止、および剛性と耐衝撃性の良好なバランスという観点から、好ましくは0.05〜1g/10分であり、より好ましくは、0.2〜1g/10分である。
【0044】
前記共重合体ゴム(B)の製造方法としては、公知の触媒と公知の重合方法を用いて、エチレンとα−オレフィンを共重合させることによって製造する方法が挙げられる。
公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系又はメタロセン触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法又は気相重合法等が挙げられる。
【0045】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量を100重量部とするとき、成形体の剛性や衝撃強度の観点から、前記共重合体ゴム(B)の含有量は、1〜25重量部であり、好ましくは3〜23重量部である。
【0046】
〔無機充填剤(C)〕
本発明で用いられる無機充填剤(C)は、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、繊維状マグネシウムオキシサルフェート等が挙げられ、好ましくはタルク又は繊維状マグネシウムオキシサルフェートである。より好ましくはタルクである。2種以上の無機充填剤を併用しても良い。
【0047】
タルクは、パイロフィライト型三層構造の結晶構造を有する含水ケイ酸マグネシウムであり、本発明において無機充填剤(C)として好ましく用いられるタルクは、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。タルクとして、より好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕して得られた平板状の粒子である。
【0048】
本発明に適用する粒子状無機充填剤の平均粒子径として、好ましくは3μm以下である。上記の粒子状無機充填剤の平均粒子径として、好ましくは3μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水又はアルコールである分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0049】
無機充填剤は、無処理のまま使用しても良く、又は、ポリプロピレン樹脂(A)との界面接着性や、ポリプロピレン樹脂(A)に対する分散性を向上させるために、公知の各種の界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0050】
無機充填剤(C)として用いられる繊維状無機充填剤の平均繊維長として、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。また、繊維状無機充填剤の平均繊維径として、好ましくは0.3〜2μmであり、より好ましくは0.5〜1μmである。ここで繊維状無機充填剤の平均繊維径および平均繊維は、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行って得られた画像から、無作為に50本以上の繊維状充填材を選択し、その繊維径および繊維長を測定して平均することによって求められる。
【0051】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量を100重量部とするとき、成形体の剛性と衝撃強度の観点から、無機充填剤(C)の含有量は、1〜25重量部であり、好ましくは7〜23重量部であり、より好ましくは10〜22重量部である。
【0052】
〔ヒンダードアミン系光安定剤(D)〕
本発明で用いられるヒンダードアミン系光安定剤(D)とは、下記要件(a)、(b)及び(c)を満足する化合物である。
要件(a):
式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化2】

要件(b):
8未満の酸解離定数(pka)を有する。
要件(c):
温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率が10重量%未満である。
ヒンダードアミン系光安定剤(D)は、好ましくは、さらには、要件(d):分子量が1000以上である、を満足するものである。
【0053】
要件(a)については、耐候性の観点から、式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基(すなわち、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基)は、好ましくは、これを有する化合物中の酸素原子又は窒素原子の何れかと結合しており、さらに好ましくは、窒素原子と結合している。
また、要件(b)については、樹脂組成物の耐候性及び色相安定性の観点から、ヒンダードアミン系光安定剤(D)は、好ましくは、8未満の酸解離定数(pka)を有するものであり、さらに好ましくは、7以下のpkaを有するものである。なお、酸解離定数(pka)は、式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物の固有の性質を示す指標であり、公知の滴定法によって求められる値である。
【0054】
また、要件(c)については、金型汚染、VOC放散量及び耐候性の観点から、好ましくは、温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率が5重量%未満であり、さらに好ましくは、3重量%未満である。なお、本発明に用いられるヒンダードアミン系光安定剤(D)の熱重量分析による重量減少率は、示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いることにより求められる値である。具体的には、ヒンダードアミン系光安定剤(D)の温度を、窒素ガス雰囲気下(100ml/分の流量の窒素気流下)にて、室温から1分間当たり10℃変化させながら300℃に到達させた際の、熱天秤により求められる重量減少率である。
また、要件(d)については、好ましくは、金型汚染、VOC放散量及び耐候性の観点から、ヒンダードアミン系光安定剤(D)の分子量は、好ましくは1500以上であり、より好ましくは2000以上である。
【0055】
ヒンダードアミン系光安定剤(D)は、一般式(II)で表されるマレイン酸イミド誘導体からなる共重合体であることが好ましい。
【化3】

(式中、R1は、炭素原子数10から30個のアルキル基を表し、nは1より大きい整数を表す。)
【0056】
本発明で用いられるヒンダードアミン系光安定剤(D)は、好ましくは、R1が炭素原子数14〜28個のアルキル基である一般式(II)で示される光安定剤であり、より好ましくは、R1が炭素原子数16〜26個のアルキル基である一般式(II)で示される光安定剤であり、さらに好ましくは、R1が炭素原子数18〜22個のアルキル基である一般式(II)で示される光安定剤である。なお、アルキル基は、直鎖状、環状何れの構造を有する基でもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基である。
【0057】
樹脂組成物の耐候性や金型汚染性、成形品の外観、機械物性のバランスの観点から、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるヒンダードアミン系光安定剤(D)の含有量は、前記ポリプロピレン樹脂(A)と、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)と、無機充填剤(C)の合計量100重量部に対して、0.02〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.5重量部であり、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
なお、上記ヒンダードアミン系光安定剤(D)は、他の光安定化剤(前記要件(a)、(b)、(c)のいずれかを満足しないヒンダードアミン系光安定剤を含む)と併用して用いてもよい。
【0058】
〔非イオン系帯電防止剤(E)〕
本発明で用いられる非イオン系帯電防止剤(E)は、例えば、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、及びそのエステル化合物、高級脂肪酸グリセリンエステル、ジグリセリンエステル化合物等が挙げられ、これらの化合物の混合物も用いることができる。良好な帯電防止性能を発現させる観点から、好ましくは脂肪酸モノグリセライド、又は脂肪酸モノグリセライドを主成分とする混合物である。
【0059】
金型汚染を抑制する観点から、本発明で用いられる非イオン系帯電防止剤(E)の温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率は、好ましくは20重量%未満であり、さらに好ましくは、5〜15重量%以下である。なお、熱重量分析による重量減少率は、示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いることにより求められる。具体的には、非イオン系帯電防止剤(E)の温度を、窒素ガス雰囲気下(100ml/分の流量の窒素気流下)にて、室温から1分間当たり10℃変化させながら300℃に到達させた際の、熱天秤により求められる重量減少率である。
【0060】
樹脂組成物の帯電防止性、成形時の金型汚染性、成形品の外観及び機械物性バランスの観点から、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有される非イオン系帯電防止剤(E)の含有量は、ポリプロピレン樹脂(A)と、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)と、無機充填剤(C)の合計量100重量部に対して、0.05〜1重量部であり、好ましくは0.1〜0.6重量部であり、より好ましくは0.2〜0.4重量部である。
【0061】
〔その他〕
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、機械物性のバランスをさらに改良するために、ビニル芳香族化合物含有ゴムを含有しても良い。ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体と共役ジエン系重合体からなるブロック共重合体や、かかるブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。その共役ジエン重合体部分の二重結合の水素添加率として、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上である(ただし、共役ジエン重合体部分に含有される二重結合の全量を100重量%とする)。
【0062】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのGPC法によって測定される分子量分布として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは1〜2.3以下である。
【0063】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の含有量として、好ましくは10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である(ただし、ビニル芳香族化合物含有ゴムの全量を100重量%とする)。
【0064】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのJIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、好ましくは0.01〜15g/10分であり、より好ましくは0.03〜13g/10分である。
【0065】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体、及びこれらのブロック共重合体を水添したブロック共重合体等が挙げられる。さらに、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)にスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られたゴムも挙げられる。また、2種以上のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
【0066】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムの製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴム又は共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を、重合又は反応等によって結合させる方法等が挙げられる。
【0067】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく抑制しない範囲で1種類以上の添加剤を含有してもよい。例えば、中和剤、酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、透明化核剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、金属石鹸、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)、発泡剤、抗菌剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤等が挙げられる。
中でも、酸化防止剤が好ましく用いられる。酸化防止剤とは、熱、光、酸素等によるポリプロピレン樹脂の分解を防止する作用を有する化合物である。特に本発明において、揮発性有機化合物(VOC)の放散量の抑制や、樹脂組成物の熱安定性、耐候性、成形加工性の維持において高い効果があり、好ましく用いられる。例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。特に好ましくは、フェノール系酸化防止剤が用いられる。
【0068】
フェノール系酸化防止剤としては、好ましくは、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤が用いられる。例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0069】
金型汚染性、揮発性有機化合物(VOC)の放散量、熱安定性、耐候性、成形加工性に加えて、さらに、色相安定性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体を得ることができることから、好ましくは、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートが用いられる。
【0070】
フェノール系酸化防止剤の配合量は、任意に決定されるが、通常は樹脂組成物(I)100重量部に対し、0.01〜1重量部であることが好ましい。
【0071】
また、加工性の改良や、着色顔料(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)の分散性の改良等の目的で脂肪酸金属塩類を本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有させる場合は、金型汚染を抑制する観点から、その含有量は、好ましくは樹脂組成物(I)100重量部に対し、0.01〜0.5重量部であり、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0072】
また、熱酸化安定性及び光安定性を改良するために、脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドから選択される脂肪酸アミドを本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有させることが好ましい。適用可能な脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレインアマイド、べへニン酸アマイド、エルカ酸アマイド、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスオレイルアマイド、ヘキサメチレンビスステアリルアマイド等があげられる。脂肪酸アミドの配合量は前記ポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量100重量部に対し、0.01〜0.2重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部である。無機充添剤を配合した系では、脂肪酸アミドを配合することにより熱酸化安定性及び光安定性を大幅に改良することができる。
【0073】
[ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、各成分を溶融混練する方法が挙げられ、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いる方法等が挙げられる。用いられる溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸同方向回転押出機(Wernw Pfleideren製 ZSK[登録商標]や東芝機械(株)製 TEM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 TEX[登録商標]、テクノベル(株)製 二軸混練機等)、二軸異方向回転押出機(日本製鋼所(株)製 CMP[登録商標]、TEX[登録商標]、神戸製鋼所(株)製 FCM[登録商標]、NCM[登録商標]、LCM[登録商標]等)が挙げられる。混練の温度は、170〜250℃であることが好ましく、時間は、1〜20分であることが好ましい。また、各成分の混練は同時に行っても良く、逐次に行っても良い。
【0074】
各成分を分割して混練する方法としては、例えば、次の(1)、(2)、(3)、(4)の方法が挙げられる。
(1)ブロック共重合体(A−1)を混練し、押し出してペレットを調製し、次に同ペレットと前記共重合体ゴム(B)と無機充填剤(C)とヒンダードアミン系光安定剤(D)と非イオン系帯電防止剤(E)を混練する方法。
(2)ブロック共重合体(A−1)を混練し、押し出してペレット化を調製し、次に同ペレットと前記単独重合体(A−2)と前記共重合体ゴム(B)と無機充填剤(C)とヒンダードアミン系光安定剤(D)と非イオン系帯電防止剤(E)とを混練する方法。
(3)ブロック共重合体(A−1)と前記共重合体ゴム(B)とを混練した後、無機充填剤(C)とヒンダードアミン系光安定剤(D)と非イオン系帯電防止剤(E)を添加し、混練する方法。
(4)ブロック共重合体(A−1)と無機充填剤(C)を混練した後、前記共重合体ゴム(B)とヒンダードアミン系光安定剤(D)と非イオン系帯電防止剤(E)とを添加し、混練する方法。
なお、上記(3)又は(4)の方法において、プロピレン単独重合体(A−2)を添加しても良い。
【0075】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造においてヒンダードアミン系光安定剤(D)を効率よく配合する方法としては、本発明に用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、又は、結晶性プロピレン単独重合体(A−2)とヒンダードアミン系光安定剤(D)を溶融混合してなるマスターバッチや、ヒンダードアミン系光安定剤(D)と1種以上の他の添加剤及び/又は本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(A)等のプロピレン系重合体からなるポリプロピレン樹脂を均一混合し、顆粒状に固形化したヒンダードアミン系光安定剤(D)の濃度が10〜90重量%であるヒンダードアミン系光安定剤(D)の高濃度顆粒物をあらかじめ用意し、これを本発明に用いられる樹脂組成物(I)に配合する方法等が挙げられる。
【0076】
[成形体の製造方法]
本発明の成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を、公知の成形方法によって、成形して得られる成形体である。成形方法として例えば、射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられる。
【0077】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から製造される成形体は、好ましくは射出成形体である。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
【0078】
本発明の成形体としての用途として、好ましくは自動車用射出成形体であり、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品等、及び、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物の物性の測定方法を、以下に示した。
(1)極限粘度
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
【0081】
(1−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体の極限粘度
(1−1a)ポリプロピレン部分の極限粘度:[η]P
プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有されるポリプロピレン部分の極限粘度[η]Pは、プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造時に、第1工程であるポリプロピレン部分の重合後に、重合槽内より重合体パウダーを取り出し、上記(1)の方法で測定して求めた。
【0082】
(1−1b)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPは、プロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度[η]Tを、それぞれ上記(1)の方法で測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率Xを用いて、次式から算出して求めた。(プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率Xは、下記(2)の測定方法によって求めた。)
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
【0083】
(2)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X、及び、プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:[(C2’)EP]
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982,15,1150−1152)に基づいてプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の重量比率X及び、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:[(C2’)EP]求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0084】
(3)アイソタクチック・ペンタッド分率(mmmm分率)
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。NMR吸収ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて行った。
【0085】
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法により英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0086】
〔射出成形体の製造〕
帯電性評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。射出成形機として、住友重機械工業製 SE180D(型締力180トン)、金型として、100mm×400mm×3.0mmのサイズのキャビティを有する射出成形用金型(1点ゲート)を用いて、成形温度220℃で成形を実施し平板成形体を得た。
【0087】
(1)帯電防止性:表面固有抵抗値
帯電防止性の評価のために、JIS−K−6911に規定された方法に従って、表面固有抵抗値(単位:Ω)を測定した。上記射出成形体の製造の方法で作成した平板成形体から100mm×100mm×3mmの大きさの試験片を打ち抜き、東亜DKK社製 デジタル絶縁計DSM−8103(電極:SME−8310)を使用して表面固有抵抗値を測定した。表面固有抵抗値が1×1015Ω以下の場合帯電防止性が優れる(記号○で表示する)と判定し、1×1015を超えた場合は帯電防止性が十分でない(記号×で表示する)と判定した。
【0088】
(2)金型汚染性
(2−1)金型汚染面積
ガス抜き溝を設けた小型物性試験片金型を用い、東洋精機金属製Si−30III型射出成形機によって成形温度260℃、金型冷却温度50℃、で連続60ショットの射出成形を行ったのち固定側金型面に転写された金型汚染部分の面積(単位:mm2)を測定した。金型汚染部分の面積が小さいほど金型汚染性が優れるとした。
(2−2)熱重量減少率
金型汚染性の指標として、熱重量測定装置(TGAQ500:TAinstruments社製)を用い熱重量減少率を測定した。窒素ガス雰囲気下(100ml/分の流量の窒素気流下)試料ペレットを昇温速度50℃/分で室温から220℃まで到達させたのち、220℃で150分保持した。その後、加熱前のサンプル重量と加熱後のサンプル重量とから重量減少率を求めた。熱重量減少率が小さいほど金型汚染性が優れる(金型汚染が少ない)とした。
【0089】
(3)耐候性
スガ試験機(株)製 サンシャインウエザーメータ(6XS−DCH型)を使用して促進耐候性試験を行った。1000時間照射後に、試験片表面の亀裂(クラック)等の外観異常の有無と試験片の光沢度の変化を評価した。なお、光沢保持率が高いほど耐候性が優れるとした。本発明において、光沢保持率は、式:(光照射後の光沢度/光照射前の光沢度)×100で定義される。試験条件を以下に示す。
・試験片寸法:70mm×150mm×3mm(厚み)の射出成形品から切出した試験片(65×60×3mm)。
・ブラックパネル温度:83℃
・スプレー/ドライ サイクル :18分/120分
・試験機槽内湿度:50%RH
・亀裂等外観異常の観察:光学顕微鏡(100倍)による観察
・光沢度の測定:光沢計による測定(角度:60°)
【0090】
〔固体触媒成分(I)〕
実施例及び比較例で用いた重合体の製造に用いた固体触媒成分(I)の合成方法を以下に示す。
200リットルの円筒型反応器(直径0.35mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機及び幅0.05mの邪魔板4枚を備えた直径0.5mの反応器)を窒素置換し、ヘキサン54リットル、ジイソブチルフタレート100g、テトラエトキシシラン20.6kg及びテトラブトキシチタン2.23kgを投入、撹拌した。
次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)51リットルを反応器内の温度を7℃に保ちながら4時間かけて滴下した。この時の攪拌回転数は150rpmであった。滴下終了後、混合物を20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン70リットルでの洗浄を3回実施し、トルエンを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:1.9重量%、OEt(エトキシ基):35.6重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒径は39μmであり、16μm以下の微粉成分量は0.5重量%であった。
【0091】
次いでスラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、残スラリーを80℃で1時間攪拌し、その後、該スラリーを40℃以下の温度まで冷却し、攪拌下、テトラクロロチタン30リットルとジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入し、さらにオルトフタル酸クロライド4.23kgを投入した。反応器内の温度を110℃として3時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を3回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、残スラリーに対して、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgと、ジイソブチルフタレート0.87kgとの混合液を投入した。
反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、残スラリーに対して、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入した。
【0092】
反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、残スラリーに対して、攪拌下、テトラクロロチタン15リットルと、ジブチルエーテル1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン90リットルでの洗浄を3回、ヘキサン90リットルでの洗浄を2回実施した。得られた固体成分を乾燥し、固体触媒成分を得た。該固体触媒成分は、Ti:2.1重量%、フタル酸エステル成分:10.8重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
【0093】
〔重合体の重合〕
(1)プロピレン単独重合体(A−2)の重合
固体触媒成分(I)を用い、連続の気相重合において、系内の水素濃度と重合温度を制御することによってプロピレン単独重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは0.93dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.984、分子量分布は4.3であった。またMFRは120g/10分であった。
【0094】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造
固体触媒成分(I)を用い、液相−気相多段重合法によってプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造した。第一段階でプロピレン単独重合体部分を製造した後、第二段階でプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を連続的に二段階の液相−気相重合プロセスにより製造した。SUS製ループ型液相重合反応器(第一槽)と気相重合反応器(第二槽)において、プロピレン単独重合体部分を系内の水素濃度と重合温度を制御して生成させ、ついで、気相重合反応器(第三槽)においてプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を反応温度と反応圧力を一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、かつ、気相部の水素濃度、気相部のエチレン濃度を一定保つように水素とエチレンを供給しながら生成させた。
第一段階で生成したプロピレン単独重合体をサンプリングし分析した結果、極限粘度〔η〕Pは0.86dl/gであり、mmmm分率は0.987であった。最終的に得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度[η]Totalは1.40dl/gであった。分析の結果、プロピレン−エチレンランダム共重合体含量(EP含量)は12.3重量%であったので、第三槽で生成したプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP部)の極限粘度[η]EPは5.2dl/gであった。又、分析の結果、EP部でのエチレン含量は35重量%であり、EP部のMFRは60g/10分であった。
【0095】
〔(A−1)の造粒〕
プロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(A−1)100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加したのち、押し出し機で造粒した。
【0096】
〔光安定剤(成分(D))〕
(D−1)
製品名:UVINUL5050H:BASFジャパン株式会社製
立体障害アミンオリゴマー「N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マレイン酸イミド、及びα−オレフィン(C20−24)からなる共重合体」
構造式:
【化4】


分子量:3500
pKa:7.0
TG−DTAによる重量減少率:2.2重量%
【0097】
(D−2)
製品名:サノールLS−770:三共ライフテック株式会社製
化学名:〔ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
構造式:
【化5】


分子量:481
pKa:9.0
TG−DTAによる重量減少率:19.6重量%
【0098】
(D−3)
製品名:スミソーブ400:住友化学株式会社製
化学名:2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート
構造式:
【化6】

分子量:439
TG−DTAによる重量減少率:31.6重量%
【0099】
尚、光安定剤の熱重量分析(TG−DTA)による重量減少率は、示差熱熱重量同時測定装置により、室温から300℃まで、10℃/分の昇温速度にて、窒素ガス雰囲気下(ガス流量 100ml/分)にて測定された。
【0100】
〔帯電防止剤(成分(E))〕
(E−1)
エレクトロストリッパーTS−5:花王社製
化学名:ステアリン酸モノグリセリド
熱重量分析(TG−DTA)による重量減少率:23.8重量%
【0101】
(E−2)
CB264A:東邦化学工業社製
化学名:グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミドの混合物
熱重量分析(TG−DTA)による重量減少率:14.3重量%
尚、熱重量分析(TG−DTA)による重量減少率は、示差熱熱重量同時測定装置により、室温から300℃まで、10℃/分の昇温速度にて、窒素ガス雰囲気下(ガス流量 100ml/分)の条件にて測定された際の値である。
【0102】
〔実施例−1〕
前記(A−1)造粒ペレット48重量%、プロピレン単独重合体(A―2)パウダー10重量%、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムEBR−1(密度0.861g/cm3、MFR(230℃、2.16kgf荷重で測定)0.46g/10分)を4重量%、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムEOR−1(密度0.857g/cm3、MFR(230℃、2.16kgf荷重で測定)2.7g/10分。)を8.3重量%、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム EOR−2(密度0.870g/cm3、MFR(230℃、2.16kgf荷重で測定)2.3g/10分。)を8.2重量%、平均粒子径2.7μmのタルク21.5重量%の組成割合で配合し、加えて、この成分(A−1)、(A−2)、(B)、(C)の合計量100重量部に対し、ステアリン酸カルシウムを0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部、エチレンビスステアリルアマイドを0.05重量部、ポリプロピレンとカーボンブラック及び脂肪酸金属塩を含有する黒色系顔料マスターバッチ2.0重量部、さらに、光安定剤(D−1)0.2重量部、(D−2)を0.1重量部、帯電防止剤(E−1)を0.4重量部の組成割合で配合し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押し出し量70kg/hr、200℃、スクリュー回転数を300rpmで混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。
【0103】
〔実施例−2〕
帯電防止剤(E−1)を0.3重量部配合した以外は、実施例−1に記載の方法と同様に行った。
【0104】
〔実施例−3〕
帯電防止剤(E−1)の代わりに帯電防止剤(E−2)を0.4重量部配合した以外は、実施例−1に記載の方法と同様に行った。
【0105】
〔実施例−4〕
光安定剤(D−1)0.35重量部、帯電防止剤(E−1)を0.4重量部配合した以外は、実施例−1に記載の方法と同様に行った。
【0106】
〔実施例−5〕
光安定剤(D−1)0.35重量部、帯電防止剤(E−2)を0.4重量部配合した以外は、実施例−1に記載の方法と同様に行った。
【0107】
〔比較例−1〕
光安定剤(D−1)を光安定剤(D−2)0.2重量部と(D−3)0.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0108】
〔比較例−2〕
光安定剤(D−1)を光安定剤(D−2)0.2重量部と(D−3)0.2重量部に変更し、帯電防止剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0109】
表1に、実施例−1〜5と比較例−1〜2に配合した光安定剤(成分D)と帯電防止剤(成分E)の配合割合、及び造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形品の帯電防止性、金型汚染性、促進耐候性の評価結果を示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)、又は、
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)とプロピレン単独重合体(A−2)とを含有する重合体混合物(A−3)を含有するポリプロピレン樹脂(A)98〜50重量部と、
炭素数4〜12のα−オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.85〜0.87g/cm3、JIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されたメルトフローレートが0.05〜20g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)1〜25重量部と、
無機充填剤(C)1〜25重量部と、
下記要件(a)、(b)及び(c)を満足するヒンダードアミン系光安定剤(D)0.02〜1重量部、及び、非イオン系帯電防止剤(E)0.05〜1重量部を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、前記ポリプロピレン樹脂(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(B)及び無機充填剤(C)の合計量は100重量部である)。
要件(a):式(I)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する。
【化1】


要件(b):8未満の酸解離定数(pka)を有する。
要件(c):温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率が10重量%未満である。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(D)が、下記要件(d)を更に満足することを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
要件(d):分子量が1000以上である。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(D)が、一般式(II)で表されるマレイン酸イミド誘導体成分を含む共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【化2】

(式中、R1は、炭素原子数10〜30個のアルキル基を表し、nは1より大きい整数を表す。)
【請求項4】
前記非イオン系帯電防止剤(E)が温度300℃かつ窒素ガス雰囲気下での熱重量分析により測定される重量減少率が20重量%以下であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−167406(P2009−167406A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323467(P2008−323467)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】