ポリマーで固定化されたコロイド結晶及びその製造方法
【課題】液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法を提供すること。
【解決手段】モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【解決手段】モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーで固定化されたコロイド結晶並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド粒子が規則的に配列した秩序構造を有するコロイド結晶は、Bragg回折により、その格子定数に対応した波長の光を反射することが知られている。例えば、サブミクロンオーダーのコロイド粒子を規則的に配列させたコロイド結晶の場合、紫外光、可視光から赤外光の範囲の波長の光を反射する。そして、このようなコロイド結晶により可視光を反射させる場合には、イリデセンス(虹彩色)等のいわゆる構造色を発色させることが可能であることが知られている。そのため、このようなコロイド結晶は、その特徴を利用して、構造色を発色させる色材、特定の波長の光を透過しない光フィルター、特定の光を反射するミラー、フォトニック結晶、光スイッチ、光センサー等へ応用することが期待されており、様々なコロイド結晶及びその製造方法が研究されてきた。
【0003】
例えば、国際公開第2005/045478号パンフレット(特許文献1)においては、ETPTA(エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート)からなるモノマーに粒子を含有させて、それをスピンコートし、固定化してコロイド結晶を製造するコロイド結晶の製造方法が開示されている。また、2008年発行のADVANCED MATERIALS Vol.20の1649〜1655頁(非特許文献1)においては、ETPTAからなるモノマー中に粒子を分散させた分散液を用いるコロイド結晶の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法を採用して得られるコロイド結晶体(薄膜等)においては、十分な発色を得るために膜厚を数μm以上にする必要があった。他方、その膜厚を数μm以上とした場合には粒子による光の散乱を十分に抑制できず、コロイド結晶体自体が白っぽく見えて鮮やかな発色を呈することができなかった。また、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法により得られるコロイド結晶体は、一方で光の透過を生じるものであるため、基材上において薄膜として用いる場合に、基材の色の影響を受けてしまうという問題があり、コロイド結晶体自体の発色をより鮮明にするためには、黒などの明度の低い基材を用いなくてはならないという制約があった。このように、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法により得られるコロイド結晶体は、実用上必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
また、特開2004−276492号公報(特許文献2)においては、不要な光の散乱や透過を削減させる効果を発揮させるために灰色、黒褐色又は黒色に着色されたコロイド粒子を含有する懸濁液を用い、多数の深堀区分けが平面方向に規則的に配列している基材上に流し込み法でサスペンジョン層を形成した後、前記サスペンジョン層を乾燥させてコロイド結晶を得る方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献2に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法においては、コロイド結晶が最密充填型のコロイド結晶となるため、Bragg回折による発色を得るためには、コロイド粒子の粒子径を制御する必要があり、コロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができなかった。また、コロイド結晶の製造の際に、予め灰色、黒褐色又は黒色に着色されたコロイド粒子を製造することや多数の深堀区分けが平面方向に規則的に配列している基材を準備することが必要であり、工程が煩雑であった。
【0006】
なお、水などの溶媒中に形成されるコロイド結晶は、溶媒中においてコロイド粒子が帯電することにより電気二重層が形成され、その電気二重層同士が反発しあうことによって形成される。ここで、溶媒中に不純物が存在すると、この電気二重層の厚さは薄くなり、粒子同士の静電的な相互作用が不十分となるためコロイド結晶を製造できない。そのため、従来のコロイド結晶の製造方法においては、一般的に、コロイド結晶を形成するために溶媒中から不純物を極力排除しており、イオン交換樹脂による脱塩等の操作により不純物イオンを除去すること等が行われていた。例えば、特開平6−100432号公報(特許文献3)においては、コロイド結晶を得るために、水または水−有機溶媒を分散媒とする微粒子分散液から夾雑イオン(陽イオン、陰イオン)を取り除き、高度に脱イオン化する方法が開示されている。
【特許文献1】国際公開第2005/045478号パンフレット
【特許文献2】特開2004−276492号公報
【特許文献3】特開平6−100432号公報
【非特許文献1】Shin-Hyun Kim et al.,“Optofluidic Assembly of Colloidal Photonic Crystals with Controlled Sizes, Shapes, and Structures” ADVANCED MATERIALS,2008年,Vol.20,1649〜1655頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、コロイド結晶を製造する際に、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ単分散度が10%以下であるコロイド粒子とを用いることにより、従来は本来的には不純物として用いられていなかった顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料を用いることが可能となることを見出した。そして、このような分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有し、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散して、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備した後に、前記分散液中の前記分散媒成分を硬化せしめることにより、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持しながらコロイド結晶を固定化することができ、光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0010】
上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記着色材料が顔料であることが好ましい。また、このような着色材料の含有比率としては、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記分散媒成分が、非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーからなることが好ましく、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の親水性モノマーからなることがより好ましい。
【0012】
さらに、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記コロイド粒子がシリカ、ポリスチレン又はポリメタクリル酸メチルからなる粒子であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、分散媒中におけるコロイド結晶は、コロイド粒子が帯電して電気二重層を形成することによって形成されるものであるため、従来は、上述のように水等の分散媒中から不純物を極力排除し、不純物であるところの着色材料は用いていなかった。実際に、特許文献1〜3や非特許文献1においては、分散媒中に着色材料を用いることについては何ら記載されていない。一方、本発明においては、分散液中に、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmで前記単分散度が10%以下であるコロイド粒子ととともに、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料を含有させる。前記分散媒成分と前記コロイド粒子とともに前記着色材料を用いることで、前記着色材料を用いているにもかかわらず、分散液中においてコロイド結晶を形成させることが可能となり、しかも形成せしめたコロイド結晶の規則配列状態を十分に維持することが可能となる。ここで、着色材料を用いているにもかかわらず、分散液中においてコロイド結晶の構造が十分に維持される理由については、本発明者らは以下のように推察する。先ず、本発明においては、前記分散媒線分としてモノマー及び又はポリマーを用いている。このような分散媒成分中に前記コロイド粒子を分散させると、コロイド粒子の帯電によって前記分散媒成分の分子がミセルのように前記コロイド粒子を取り囲むものと推察される。そして、このようにコロイド粒子を取り囲んだ前記分散媒成分の分子は分極するため、粒子同士が静電的に反発しあうようになり、前記分散媒成分中で粒子が規則配列したコロイド結晶を形成される。なお、このようなコロイド結晶の形成時においては、上述のように粒子同士が静電的に反発しあうため、前記分散媒成分中においてコロイド粒子が自己組織的に3次元規則配列状態に配列し、コロイド結晶が効率よく形成されるものと推察される。更に、前述のようにコロイド粒子を前記分散媒成分の分子が取り囲んだミセルのような構造をとると、通常の溶媒を用いた場合と比較して、不純物による電気二重層の厚さに対する影響が小さくなるものと推察される。そのため、本発明においては、着色材料を用いていてもコロイド結晶の状態を十分に維持できるものと本発明者らは推察する。
【0015】
また、本発明においては、前記分散液中でコロイド結晶の状態を十分に維持することができるため、これを各種基板上に容易に塗布、注入等して固定化することが可能であり、光学材料等への応用性が高い。更に、本発明においては、分散液中でコロイド結晶を製造した状態で、そのままモノマー等を重合させることができるため、液中で形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持しながら、コロイド結晶をポリマーで固定化することができる。また、本発明においては、分散媒成分やコロイド粒子の種類及びそれらの濃度を変更すれば、前記分散液中に形成されるコロイド粒子の配列構造を変更させることも可能となるため、得られるコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することも可能である。
【0016】
また、このような分散液中の前記分散媒成分を硬化して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、ポリマー中に着色材料が存在するため、その着色材料の光の吸収により、光の散乱や透過が十分に抑制される。すなわち、このようなコロイド結晶においては、着色材料により可視光の一部或いはかなりの部分が吸収され、光の散乱や透過が十分に低減される。そして、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶は、コロイド結晶からの構造色と着色材料からの発色の両方を併せもつ。具体的には、ハイライト条件及びそれに近い条件での照明下ではコロイド結晶からの角度依存性を有する虹彩色が観測され、それ以外の照明下では着色材料からの発色が支配的に観測される。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、着色材料により、光の散乱や透過を十分に抑制することができるため、見た目の白っぽさが十分に抑えられるとともに、基材の色の影響が小さくなる(基材の隠蔽性が向上する)。そのため、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法によれば、意匠性が高く、十分に実用性の高いコロイド結晶を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法について説明する。すなわち、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程(第一工程)と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程(第二工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0020】
先ず、分散液中に含有させる各成分について説明する。
【0021】
前記分散媒成分は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである。このような分散媒成分としては、より容易にコロイド結晶を形成できるという観点から、1種以上のモノマーからなるものを用いることが好ましい。
【0022】
前記モノマーとしては、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態に分散した状態を維持できるものであればよく、特に制限されないが、アクリルモノマーが好ましい。
【0023】
また、前記モノマーとしては、水に分散させることが可能な親水性のモノマーが好ましく、酸や塩基などのイオン性官能基以外の非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーがより好ましい。このような非イオン性の親水性基としては、例えば、水酸基やエチレングリコール基等が挙げられる。なお、酸や塩基などのイオン性官能基を含むモノマーの場合、コロイド結晶を形成させる際にモノマーがコロイド粒子間の相互作用に影響を及ぼし、3次元配列構造を形成させることが困難となる傾向にある。また、水に溶解しない疎水性のモノマーを用いる場合には、コロイド粒子の表面が親水性であるため、コロイド粒子が凝集して均一に分散させることが困難であり、モノマー含有液中においてコロイド結晶を形成し難くなる傾向にある。
【0024】
このような親水性モノマーとしては特に制限されず、公知の親水性モノマーを適宜利用することができ、例えば、エチレングリコール鎖長が異なるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、あるいは、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
また、このような親水性モノマーの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。このようなポリエチレングリコールアクリレート類又はポリプロピレングリコールアクリレート類は、エチレン又はプロピレングリコール鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができ、鎖長によって親水性を制御でき、これを用いることでコロイド粒子の配列状態をより効率よく制御できる傾向にある。また、前記分散媒成分が前記親水性モノマーからなるものである場合には、前記親水性モノマーは1種類を単独であるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
さらに、前記分散媒成分が親水性モノマーを含有するものである場合には、前記親水性モノマーの含有比率が、前記分散媒成分の総量に対して85質量%以上(より好ましくは90質量%〜100質量%)であることが好ましい。前記親水性モノマーの含有比率が前記下限未満では、コロイド結晶を形成させることが困難となる傾向にある。
【0027】
また、前記モノマーとしては、複数のエチレン性二重結合を有する多官能モノマーと、エチレン性二重結合を1つ有する単官能モノマーとを含有することが好ましい。このような多官能モノマーと単官能モノマーとを組み合わせて用いることにより、ポリマーで固定化した際に、十分な機械的強度と基材等に対する十分な付着性が得られる傾向にある。
【0028】
このような多官能モノマーとしては、エチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖からなる群から選択される少なくとも1種と複数の(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。このようなエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖からなる群から選択される少なくとも1種を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを多官能モノマーとして用いることにより、多官能モノマーが十分に親水性を有するものとなり、より効率よく3次元規則配列構造を形成させることが可能となる傾向にある。また、前記多官能モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル基を2つ又は3つ有するものがより好ましい。また、このような多官能モノマーとして用いられるエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、エチレングリコール鎖又はプロピレングリコール鎖の鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができる。
【0029】
また、このような多官能モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、入手の容易さと、3次元規則配列構造の形成の容易さの観点から、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。このような多官能モノマーとしては1種類を単独であるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0030】
前記単官能モノマーは、エチレン性二重結合を1つ有するモノマーである。このような単官能モノマーとしては特に制限されず、公知の単官能モノマーを適宜用いることができ、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、スチレンモノマー、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが挙げられる。
【0031】
このような単官能モノマーとしては、入手の容易さの観点から、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が特に好ましい。なお、このような単官能モノマーは1種類を単独であるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0032】
また、前記多官能モノマー及び単官能モノマーを組み合わせて用いる場合には、前記多官能モノマーの含有比率は、前記多官能モノマーと単官能モノマーとの総量に対して1〜95質量%(より好ましくは3〜90質量%)であることが好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、重合後に得られるポリマーの硬度が低くなって膜としての強度が十分に保てなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、重合後に得られるポリマーの硬度が高くなり、得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶が脆くなる傾向にある。
【0033】
また、前記ポリマーとしては、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態に分散した状態を維持できるものであればよく、特に限定されないが、一般的に塗料に用いられるアクリルポリマーやウレタンポリマー等を適宜用いることができる。また、このようなポリマーとしては、前述のモノマーを重合して形成されるポリマー(より好ましくはアクリルポリマー)を好適に用いることができる。また、前記分散媒成分においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記モノマー及び/又はポリマーとともに溶媒を含有させてもよい。
【0034】
前記コロイド粒子は、平均粒径が0.05〜5μm(より好ましくは0.08〜2μm)の範囲にある粒子である。このような粒子の平均粒径が前記下限未満では、粒子表面間の凝集力が強くなり、分散液中にコロイド粒子が均一に分散し難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子が沈降し易くなり、分散液中で均一に分散し難くなる傾向にある。なお、このようなコロイド粒子の平均粒子径は、例えば、コロイド粒子の水分散液を基板上で乾燥させ、それを走査型電子顕微鏡で観察して100〜500個の粒子の直径を測定し、平均値を求めることにより測定することができる。
【0035】
また、前記コロイド粒子は、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子である。すなわち、前記粒子は、このような単分散度を有する粒径が極めて均一な粒子である。本発明においては、コロイド粒子に、このような均一性が極めて高い粒子を用いているため、分散媒成分中において前記粒子を分散させた際に、粒子間の相互作用により容易に3次元規則配列構造を形成させることが可能となる。また、このような粒子としては、単分散度がより小さな値となるほどより高い特性が得られる傾向にあることから、前記単分散度は5%以下であることがより好ましい。
【0036】
また、このようなコロイド粒子の材料としては特に制限されず、得られるコロイド結晶を応用する分野に合わせて、公知の有機材料、無機材料、有機−無機複合材料及び無機−無機複合材料の中から適宜選択して用いることができる。このような有機材料としては、例えば、ポリスチレン及びその誘導体、アクリル樹脂等の有機高分子材料等が挙げられる。また、前記無機材料としては、例えば、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記有機−無機複合材料としては、例えば、ポリスチレン及びその誘導体又はアクリル樹脂等からなる粒子を酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等で覆ったコアシェル型の有機−無機複合粒子などが挙げられる。また、前記無機−無機複合材料としては、例えば、シリカからなる粒子を酸化チタン、酸化セリウム又は酸化亜鉛等で覆ったコアシェル型の無機−無機複合粒子等が挙げられる。
【0037】
さらに、このようなコロイド粒子としては、容易に合成することができるという観点から、シリカ、ポリスチレン及びポリメタクリル酸メチルのうちの少なくとも1種からなる粒子が更に好ましく、シリカ、架橋したポリスチレン、架橋したポリメタクリル酸メチル又は架橋したスチレン−メタクリル酸メチル共重合体からなる粒子が特に好ましい。なお、このようなコロイド粒子としては、例えば、エマルション重合により合成されたポリスチレン粒子又はポリメタクリル酸メチル粒子(ダウケミカル社製、ポリサイエンス社製、日本合成ゴム社製、積水化学社製等)やストーバー法により合成されたシリカ粒子(日本触媒製や触媒化成製等)を適宜用いることができる。また、Layer−By−Layer法で単分散な粒子(テンプレート粒子)に層状化合物をコートすることによって二層構造粒子や中空粒子を形成させて、本発明のコロイド粒子として利用してもよい。
【0038】
また、このようなコロイド粒子の含有比率としては、前記分散液中、5〜50体積%であることが好ましく、10〜40体積%であることがより好ましい。このようなコロイド粒子の含有量が前記下限未満では、分散媒成分中に分散させた際にコロイド粒子を3次元規則配列状態とすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子の濃度が高くなりすぎて、形成させる配列構造を制御することが困難となる傾向にある。
【0039】
前記着色材料は、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種のものである。このような着色材料としては、コロイド結晶の構造をより十分に維持できるという観点から顔料が好ましい。
【0040】
このような顔料としては、特に制限されず、公知の顔料を適宜利用することができ、公知の有機顔料や無機顔料を適宜用いることができる。また、このような着色顔料としては、コロイド結晶を構成するコロイド粒子からの散乱光を吸収するという観点からは、明度がそれほど大きくない顔料が好ましく、黒色系、赤色系、青色系等の顔料が好ましい。
【0041】
また、このような顔料としては、明度が50以下である顔料が好ましく、前記明度が40以下である顔料が特に好ましく、前記明度が30以下である顔料がさらに好ましい。このような明度が前記上限を超えると、コロイド粒子からの散乱光を吸収する効果が十分でなくなり、コロイド結晶の白っぽさを抑制する効果が十分でなくなる傾向にある。なお、ここにいう「明度」は、x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68を測定装置として用いて測定した場合の偏角15°における明度をいう。また、ここにいう「偏角」は、前記測定装置による測定の際の測定角をいい、図1に記載のように、照射面10に対して照明11から入射角度45度で光L1を入射させた際の正反射光L2を基準として求められる角度をいう。
【0042】
さらに、このような顔料としては、市販品を用いてもよく、例えば、チバ・ジャパン株式会社製のIRGAZIN DPP Rubine TR、クラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM BLUE A4R、三菱化学製のカーボンブラック「MA600」等を利用してもよい。
【0043】
また、前記染料としては特に制限されず、公知の染料を適宜用いることができ、例えば、反応染料、酸性染料、直接染料等が挙げられる。
【0044】
また、前記着色材料の含有比率としては特に限定されないが、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。前記着色材料の含有比率が前記下限未満では、着色効果が不十分となる傾向にあり、また、前記上限を超えると、コロイド結晶を形成させることが困難となる。
【0045】
次に、各工程について説明する。
【0046】
前記第一工程は、前記分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有しており、且つ、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程である。
【0047】
このような分散液を準備する具体的な方法は特に制限されず、例えば、前記分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有する混合液を調製した後、前記混合液中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させることにより前記分散液を得る方法、前記分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させて分散液前駆体を得た後、前記分散液前駆体中に前記着色材料を添加し、分散させて前記分散液を得る方法、前記分散媒成分中に前記着色材料を添加し、分散させた後に、前記コロイド粒子を添加し、前記分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させて前記分散液を得る方法等を適宜採用することができる。このように、本発明においては、分散液を準備する際に、分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させる工程を実施することが好ましい。このような分散工程により、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子を分散させることで、コロイド粒子を反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に配列させることが可能となる。なお、本発明においては、前記コロイド粒子が前記分散媒成分の分子に取り囲まれてミセルのような状態となって分極し、粒子同士が静電的に反発しあうこと、並びに、前記コロイド粒子の単分散性が高く粒子同士の相互作用が十分に均一に働くこと等から、コロイド粒子を十分に分散させることで、自己組織的にコロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることができ、コロイド結晶を効率よく形成できるものと本発明者らは推察する。
【0048】
また、このような工程においては、前記分散媒成分の粘性によってコロイド粒子の分散性が低下することを十分に防止してコロイド粒子間の相互作用を十分に作用させることにより、前記3次元規則配列状態にコロイド粒子を効率よく配列させるという観点から、前記分散媒成分の粘度を低く維持することが好ましく、前記分散媒成分の粘度を50mPa・s以下(更に好ましくは5〜50mPa・sの範囲)とすることがより好ましい。なお、このような分散媒成分の粘度の測定方法としては、回転型粘度計、キャピラリー型粘度計、落下型粘度計等があるが、本発明においては、円筒またはコーンプレートを用いた回転型粘度計として、レオメトリックス社製レオメータ「ARES」を用いて測定する方法を採用する。
【0049】
また、前記分散媒成分の粘度を前述のような範囲に調整する方法としては、モノマー又はポリマーそのものの粘度が低いものを使用する方法、2種以上のモノマー及び/又はポリマーを用いる場合には粘度の低いモノマー又はポリマーを少なくとも1種含有させて前記分散媒成分の粘度を低くする方法、前記分散媒成分中に溶媒を混合することによって前記分散媒成分の粘度を低くする方法等が挙げられる。このような粘度の低いモノマー又はポリマーとしては特に制限されず、より粘度の低いモノマー又はポリマーを適宜選択して利用すればよい。また、前記溶媒としては、特に制限されず、アルコール等の親水性溶媒を適宜用いることができる。なお、前記分散媒成分中に溶媒を含有させる場合には固定化の際に溶媒が蒸発することに伴って結晶構造が変化することを防止するという観点から、溶媒の含有量を30質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
また、本発明においては、前記分散媒成分やコロイド粒子及びそれらの濃度を適宜選択することで、コロイド粒子の配列状態を任意に制御できるため、結晶構造を容易に調整することができる。更に、本発明においては、前記分散媒成分中において、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態とさせて分散液を準備した後に、これを各種基板等に塗布したり注入することができ、その配列状態を十分に維持したまま固定化できるため、光機材料等へ容易に応用することが可能である。
【0051】
ここで、本発明にいう「反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態」とは、反射スペクトルを測定し、Bragg回折による反射ピーク(半値幅が50nm以下の反射ピーク)の存在が確認される状態をいい、「反射ピーク」とは、無反射の状態に対して反射光強度が波長の変化に伴って増加、減少する際の変曲点であって半値幅が50nm以下のものをいい、いわゆる反射光強度が上下するノイズとは異なる。このような反射スペクトルの測定方法としては、通常の分光光度計を用いることができるが、本発明においては、相馬光学社製の商品名「マルチチャンネル分光計 Fastvert」を用いて測定する方法を採用する。なお、このような3次元規則配列構造としては、例えば面心立方構造や体心立方構造等が挙げられる。また、前記ピークは、波長350〜1600nmの間の波長におけるピークであることが好ましい。
【0052】
また、このような3次元規則配列状態におけるコロイド粒子の最近接粒子間の距離の平均としては、用いる用途等に応じて適宜変更できるものであり、特に制限されないが、コロイド粒子の平均粒径の0.01〜10倍の範囲にあることが好ましく、0.05〜2倍の範囲にあることがより好ましい。前記最近接粒子間の距離の平均が前記下限未満では、ポリマーマトリックスの体積が少なくなるため強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子を3次元規則配列させることが困難になる傾向にある。
【0053】
また、前記分散媒成分中にコロイド粒子を反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように分散させる方法(以下、単に「分散方法」という。)としては、コロイド粒子を分散させて前記3次元規則配列状態とすることが可能な方法であればよく、特に制限されないが、例えば、超音波を長時間印加する方法、長時間撹拌する方法、加熱する方法、アルコール等の溶媒を加えて分散させる方法等を好適に採用することができる。また、このような分散方法においては、コロイド粒子を3次元規則配列状態とするために、例えば、所定時間ごとに反射スペクトルを測定して反射ピークが現れるまで分散工程を繰り返す方法を採用してもよい。
【0054】
さらに、このような分散方法として超音波を印加する方法を採用する場合においては、用いるモノマーやポリマーの種類、分散媒成分の粘度及びコロイド粒子の濃度等によっても異なるものではあるが、より確実にコロイド粒子を前記3次元規則配列状態に配列させるという観点から、前記分散媒成分の粘度が5〜50mPa・sの範囲であり且つ分散液中のコロイド粒子の濃度が5〜50体積%の範囲である場合には、超音波を0.5〜24時間(より好ましくは1〜10時間)印加することが好ましい。超音波の印加時間が前記下限未満では、コロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、それ以降の操作が無駄となり、作業効率が低下する傾向にある。
【0055】
また、このような超音波の周波数は特に制限されず、16kHz以上であればよく、20〜200kHzとすることが好ましい。前記周波数が前記下限未満では、コロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子が凝集し易くなり、やはり3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にある。
【0056】
また、このような超音波を印加する際の温度条件としては特に制限されないが、0〜80℃(より好ましくは10〜60℃)であることが好ましい。このような温度条件が前記下限未満では、コロイド粒子の分散効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、モノマーの重合が進行し、液中に固形物が形成され、均一な分散液が得られなくなる傾向にある。
【0057】
さらに、前記分散方法としてアルコール等の溶媒を加える方法を採用する場合においては、より確実にコロイド粒子を前記3次元規則配列状態に配列させるという観点から、前記溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることが好ましい。また、このような溶媒の含有量としては、親水性モノマーにコロイド粒子を含有させた混合物100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましい。このような溶媒の含有量が前記上限を超えると、例えば、前記分散媒成分としてモノマーを用いている場合において、モノマーを重合させてポリマーとする際に3次元規則配列状態が乱れたり、溶媒を含んだゲルが形成される傾向にある。
【0058】
なお、このようなコロイド粒子を分散させる工程は、前記分散媒成分中にコロイド粒子と着色材料とが共存する場合とコロイド粒子のみが存在する場合とのいずれの場合においても、同様の分散方法を採用することができる。そのため、本発明においては、工程の簡略化の観点からは、分散媒成分とコロイド粒子と着色材料とを含有する混合液を得た後に前記分散方法を採用してコロイド粒子を分散させることが好ましい。
【0059】
また、前記分散媒成分中に前記着色材料を分散させる方法としては特に制限されず、前記着色材料を分散させることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。また、このような分散媒成分中に前記着色材料を分散させる方法としては前記コロイド粒子の分散方法と同様の方法を好適に採用できる。
【0060】
また、本発明においては、上述のようにして前記分散媒成分中にコロイド粒子及び着色材料を分散させることにより、着色材料を用いながら、反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成された分散液を得ることができる。このような分散液は、分散液中のコロイド結晶状態を維持したまま、各種基板等に塗布、注入等することが可能なものである。そのため、本発明においては、前記分散液を得た後に、前記分散液を基板に塗布又はセル中に注入する工程を更に含むことが好ましい。このような基板又はセルとしては特に制限されず、目的とする用途に応じて、公知の基板又はセルを適宜用いることができる。なお、前記分散媒成分の粘度を調整するために溶媒を加えた場合や前述の溶媒を加える分散方法を採用する場合においては、固定化の際に溶媒の蒸発に伴って結晶構造が崩れることを防止するために、分散液を得た後であって後述する第二工程を施す前に前記溶媒を除去する工程を含むことが好ましい。
【0061】
本発明においては、次に、前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る(第二工程)。
【0062】
第二工程において前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させる方法としては、前記分散媒成分がモノマーからなる場合には、モノマーを重合せしめればよい。このようなモノマーを重合させる方法としては特に制限されず、前記分散液中に形成された結晶構造を消失させることなく前記モノマーを重合させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、光重合による方法や加熱による重合方法等が挙げられる。なお、加熱により重合させる場合には、加熱により結晶構造が消失してしまうことを防止するという観点から、80℃程度以下の温度条件で重合させることが好ましい。
【0063】
また、このようなモノマーの重合方法の中でも、加熱を伴うことなく、コロイド粒子の3次元規則配列構造をより十分に維持しながらより効率よくモノマーを重合できるという観点から、前記分散液に光重合開始剤を更に添加して光を照射することでモノマーを重合させることが可能な光重合による方法を採用することが好ましい。
【0064】
このような光重合の際に用いられる光重合開始剤としては特に制限されず、公知の光重合開始剤を適宜用いることができ、例えば、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサン、ケタール、アセトフェノン等のカルボニル化合物や、ジスルフィド、ジチオカーバメート等のイオウ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾ化合物、遷移金属錯体、ポリシラン化合物、色素増感剤等が挙げられる。
【0065】
また、このような光重合開始剤の添加量としては特に制限されず、用いた親水性モノマーの種類等に応じて適宜変更できるが、前記分散液中の親水性モノマー100質量部に対して1〜5質量部程度とすることが好ましい。また、このような光重合においては、コロイド結晶中のコロイド粒子の3次元規則配列構造をより十分に維持しながら重合させるという観点から、0〜40℃程度の温度条件下で重合させることが好ましい。
【0066】
また、前記分散媒成分がポリマーからなる場合には、そのポリマーを硬化させる方法は、特に制限されず、前記分散液中に形成された結晶構造を消失させることなく前記ポリマーを硬化させることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、光重合開始剤の存在下に光を照射してポリマーを硬化させる方法、溶媒を除去してポリマーを硬化させる方法等を採用してもよい。なお、このような光重合開始剤の存在下に光を照射してポリマーを硬化させる方法としては、上述のモノマーの光重合方法と同様の方法を採用できる。
【0067】
次に、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶について説明する。本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とするものである。
【0068】
このようなポリマーで固定化したコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法を採用して得られるものであるため、上述の分散液中に形成されたコロイド結晶の結晶構造が変化することを十分に防止して製造されたものである。また、上述の分散液が鋼板やガラス板など種々な基板や紙や繊維など種々な材料にあらゆる方法で塗布又は塗装したり、型やセルなどの中に注入したりすることが可能なものであるため、それを固定化して得られる本発明のポリマーで固定化したコロイド結晶は、様々な用途に応用することが可能である。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶は、前記着色材料を含有するものであるため、コロイド結晶からの構造色と着色材料からの発色の両方を呈するものとなる。具体的には、ハイライト条件及びそれに近い条件での照明下ではコロイド結晶からの角度依存性を有する虹彩色が観測され、それ以外の照明下では着色材料からの発色が支配的に観測されるものとなる。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、着色材料により、光の散乱や透過を十分に抑制することができるため、見た目の白っぽさが十分に抑えられるとともに、基材の色の影響が小さくなる(基材の隠蔽性が向上する)。そのため、例えば、イリデセンス(虹彩色)等のいわゆる構造色を発色する構造色色材等に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
先ず、ポリエチレングリコールジアクリレートモノマー(新中村科学製の商品名「NKエステルA−200」)とポリエチレングリコールモノアクリレートモノマー(新中村化学製の商品名「NKエステルAM−30G」)とを重量比(A−200:AM−30G)が8:2となるようにして混合し、分散媒成分を調製した。次に、前記分散媒成分中に、Stober法にて合成したシリカ粒子(平均粒子径200nm、単分散度:5%)を含有量が27体積%になるようにして添加した後、室温条件(25℃)下で超音波(45kHz)を3時間印加して分散させ、コロイド粒子(シリカ粒子)がモノマー中に均一分散した分散液前駆体を得た。なお、前記分散液前駆体においては、虹彩色が観察され、コロイド粒子が3次元規則配列状態に分散されていることが分かった。次いで、前記分散液前駆体に、黒色顔料として三菱化学製のカーボンブラック「MA600」を、前記分散液前駆体100質量部に対して0.1質量部添加し、再び室温条件下で超音波(45kHz)を30分印加して顔料を均一分散させて分散液を得た。なお、このようにして得られた分散液においても前記分散液前駆体と同様に虹彩色が観察された。前記分散液の反射スペクトルを図2に示す。
【0071】
次に、前記分散液に、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製の商品名「Darocure1173」)を1重量%添加した。次いで、前記分散液を2枚のスライドガラスの間に0.5mm厚のシリコーンシートを挟みこんで作製したセルの隙間に注入した。このようにして注入した分散液からは、ガラスセル内においても構造色を観測することができ、自己組織的にコロイド結晶が形成されていることが確認された。次いで、大気中にて、前記セルの表と裏のそれぞれにUV光を2分間ずつ照射し、前記分散液中のモノマーの光重合を行った。このようにして前記モノマーを重合せしめた後、スライドガラスを取り外し、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。得られたコロイド結晶の反射スペクトルを図3に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では顔料の光吸収に起因する黒色が観測された。
【0072】
(実施例2)
黒色顔料の代わりにチバ・ジャパン株式会社製のIRGAZIN DPP Rubine TR(赤色顔料)を用い、前記赤色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.05質量部とし、更にUV光の照射時間を1分間に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図4に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図5に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件ではコロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では顔料の光吸収に起因する赤色が観測された。
【0073】
(実施例3)
赤色顔料の代わりにクラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM BLUE A4R(青色顔料)を用い、前記青色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.2質量部とした以外は、実施例2と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図6に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図7に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、顔料の光吸収に起因する青色が観測された。
【0074】
(実施例4)
赤色顔料の代わりにクラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM VIOLET RL SP(紫色顔料)を用い、前記青色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.05重量部とした以外は、実施例2と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図8に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図9に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、顔料の光吸収に起因する紫色が観測された。
【0075】
(比較例1)
顔料を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図10に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図11に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、白っぽく観察された。
【0076】
[実施例1〜4及び比較例1で得られたコロイド結晶等の特性の評価]
〈反射スペクトルの測定〉
実施例1〜4及び比較例1で得られた分散液及びポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルは以下のようにして測定した。すなわち、測定装置として相馬光学製のマルチチャンネル分光器Fiberspec S−2650を用い、本装置内蔵のハロゲンランプを光源にして、同軸光ファイバにより拡散光を直径約15mmの領域でサンプルに垂直方向から照射し、垂直方向の反射光のスペクトルを測定した。なお、各コロイド結晶の反射スペクトルのグラフは、ガラス基板に蒸着したアルミニウム膜をリファレンスに用い、前記ガラス基板に蒸着したアルミニウム膜の反射スペクトルとの割り算により、反射率を求めて反射スペクトルの縦軸とした。
【0077】
図2、図4、図6、図8及び図10に示す結果からも明らかなように、実施例1〜4で採用した本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、顔料を用いずにコロイド結晶を製造した場合(比較例1)と同様に、製造過程で得られる分散液の反射スペクトルにおいて、反射ピークが観測され、顔料が共存しているにもかかわらず、分散液中においてコロイド粒子が3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されていることが確認された。
【0078】
また、図3、図5、図7、図9及び図11に示す結果からも明らかなように、実施例1〜4で採用した本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、顔料を用いずにコロイド結晶を製造した場合(比較例1)と同様に、得られたコロイド結晶のいずれにも、610−620nm付近にBragg回折に起因する反射ピークが観測された。このような結果から、本発明によれば、顔料の添加があるにも関わらず、Bragg回折による構造発色を示すコロイド結晶を製造できることが確認された。なお、図3、図5、図7及び図9においては、顔料に起因する発色を示すピークが観測されていない。これは、もともと顔料に起因する発色が吸収に基づくブロードなピークを示す上に、ここで行った拡散光による反射スペクトルの測定では、Bragg回折による反射ピークが極めて強く観測されていることと、サンプル表面からの反射光の影響によるものと推察される。
【0079】
〈各実施例及び比較例1で得られたコロイド結晶のバルク体の色の変角特性測定〉
実施例1〜4及び比較例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶について、鏡面反射条件に近い条件と鏡面反射条件から著しくはずれた条件において「色」を定量的に測定した。このような測定には、測定装置として、x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68を用い、測定面に対して45°の角度で入射光L1を照射した場合における正反射光L2(測定面に対して45°の角度の反射光)を基準とした図1に示す角度の定義における測定角15°と75°における「色」をCIELAB方式で測定した。各測定角におけるL*a*b*の値をそれぞれ表1に示す。なお、L*は、色の明度を表し、上限が100で下限が0の値をとり、この値が大きいほど白く、小さいほど黒いことを表す。また、a*及びb*は色度を表す座標である。これらのうち、a*軸が直交する二つの座標軸のx軸に相当し、+側が赤、−側が緑を意味する。また、b*軸はy軸に相当し、+側が黄色、−側が青色を意味する。そして、このようなa*b*が表す座標の原点からの距離が、色の鮮やかさである彩度を表す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた顔料を添加していないコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°においてはL*の値が90.87であり、明度が大きくかなり白っぽいことが確認され、測定角75°においてもL*の値が57.54であり、実施例1〜4で得られたバルク体の結果と比較してL*の値が大きくかなり白っぽいことが確認された。
【0082】
これに対して、実施例1で得られた黒色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、鏡面反射条件に近い測定角15°では明度及びa*b*の値から示される彩度が十分なものであり、十分な発色を示していることが確認され、鏡面反射条件から大きくずれた測定角75°では、明度、彩度とも小さく、黒色に近い色を示していることが確認された。また、実施例2で得られた赤色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が高く黄色っぽい色を示していることが確認され、測定角75°においては、比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度が小さく、a*b*の値から比較的彩度の高い赤色を示していることが確認された。さらに、実施例3で得られた青色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が十分に高いことが確認され、測定角75°では、比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度が低く、a*b*の値から比較的彩度の高い青色を示していることが確認された。また、実施例4で得られた紫色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が十分に高いことが確認され、測定角75°では比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度は低く、a*b*の値からは彩度の高い紫色を呈していることが分かった。
【0083】
このような結果から、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法を利用することで、コロイド結晶に顔料を添加することが可能となるため、得られるコロイド結晶が従来のコロイド結晶と比較して光の散乱等を十分に防止できるものとなり、コロイド結晶の見た目の白っぽさが十分に低減されることが確認された。また、得られるコロイド結晶には顔料による新たな色を付加することができることも確認され、従来にない意匠性を有する色材を提供することが可能となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明によれば、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することが可能となる。
【0085】
したがって、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、意匠性に優れたコロイド結晶を提供することが可能であるため、構造色色材を製造するための方法等として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68にて明度等を測定する際の、正反射光と測定角との関係を示す摸式図である。
【図2】実施例1で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例2で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例2で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例3で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例3で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例4で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図9】実施例4で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図10】比較例1で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図11】比較例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
10…照射面、11…照明、L1…入射光、L2…正反射光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーで固定化されたコロイド結晶並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド粒子が規則的に配列した秩序構造を有するコロイド結晶は、Bragg回折により、その格子定数に対応した波長の光を反射することが知られている。例えば、サブミクロンオーダーのコロイド粒子を規則的に配列させたコロイド結晶の場合、紫外光、可視光から赤外光の範囲の波長の光を反射する。そして、このようなコロイド結晶により可視光を反射させる場合には、イリデセンス(虹彩色)等のいわゆる構造色を発色させることが可能であることが知られている。そのため、このようなコロイド結晶は、その特徴を利用して、構造色を発色させる色材、特定の波長の光を透過しない光フィルター、特定の光を反射するミラー、フォトニック結晶、光スイッチ、光センサー等へ応用することが期待されており、様々なコロイド結晶及びその製造方法が研究されてきた。
【0003】
例えば、国際公開第2005/045478号パンフレット(特許文献1)においては、ETPTA(エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート)からなるモノマーに粒子を含有させて、それをスピンコートし、固定化してコロイド結晶を製造するコロイド結晶の製造方法が開示されている。また、2008年発行のADVANCED MATERIALS Vol.20の1649〜1655頁(非特許文献1)においては、ETPTAからなるモノマー中に粒子を分散させた分散液を用いるコロイド結晶の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法を採用して得られるコロイド結晶体(薄膜等)においては、十分な発色を得るために膜厚を数μm以上にする必要があった。他方、その膜厚を数μm以上とした場合には粒子による光の散乱を十分に抑制できず、コロイド結晶体自体が白っぽく見えて鮮やかな発色を呈することができなかった。また、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法により得られるコロイド結晶体は、一方で光の透過を生じるものであるため、基材上において薄膜として用いる場合に、基材の色の影響を受けてしまうという問題があり、コロイド結晶体自体の発色をより鮮明にするためには、黒などの明度の低い基材を用いなくてはならないという制約があった。このように、特許文献1や非特許文献1に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法により得られるコロイド結晶体は、実用上必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
また、特開2004−276492号公報(特許文献2)においては、不要な光の散乱や透過を削減させる効果を発揮させるために灰色、黒褐色又は黒色に着色されたコロイド粒子を含有する懸濁液を用い、多数の深堀区分けが平面方向に規則的に配列している基材上に流し込み法でサスペンジョン層を形成した後、前記サスペンジョン層を乾燥させてコロイド結晶を得る方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献2に記載のような従来のコロイド結晶の製造方法においては、コロイド結晶が最密充填型のコロイド結晶となるため、Bragg回折による発色を得るためには、コロイド粒子の粒子径を制御する必要があり、コロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができなかった。また、コロイド結晶の製造の際に、予め灰色、黒褐色又は黒色に着色されたコロイド粒子を製造することや多数の深堀区分けが平面方向に規則的に配列している基材を準備することが必要であり、工程が煩雑であった。
【0006】
なお、水などの溶媒中に形成されるコロイド結晶は、溶媒中においてコロイド粒子が帯電することにより電気二重層が形成され、その電気二重層同士が反発しあうことによって形成される。ここで、溶媒中に不純物が存在すると、この電気二重層の厚さは薄くなり、粒子同士の静電的な相互作用が不十分となるためコロイド結晶を製造できない。そのため、従来のコロイド結晶の製造方法においては、一般的に、コロイド結晶を形成するために溶媒中から不純物を極力排除しており、イオン交換樹脂による脱塩等の操作により不純物イオンを除去すること等が行われていた。例えば、特開平6−100432号公報(特許文献3)においては、コロイド結晶を得るために、水または水−有機溶媒を分散媒とする微粒子分散液から夾雑イオン(陽イオン、陰イオン)を取り除き、高度に脱イオン化する方法が開示されている。
【特許文献1】国際公開第2005/045478号パンフレット
【特許文献2】特開2004−276492号公報
【特許文献3】特開平6−100432号公報
【非特許文献1】Shin-Hyun Kim et al.,“Optofluidic Assembly of Colloidal Photonic Crystals with Controlled Sizes, Shapes, and Structures” ADVANCED MATERIALS,2008年,Vol.20,1649〜1655頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、コロイド結晶を製造する際に、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ単分散度が10%以下であるコロイド粒子とを用いることにより、従来は本来的には不純物として用いられていなかった顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料を用いることが可能となることを見出した。そして、このような分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有し、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散して、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備した後に、前記分散液中の前記分散媒成分を硬化せしめることにより、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持しながらコロイド結晶を固定化することができ、光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0010】
上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記着色材料が顔料であることが好ましい。また、このような着色材料の含有比率としては、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記分散媒成分が、非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーからなることが好ましく、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の親水性モノマーからなることがより好ましい。
【0012】
さらに、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、前記コロイド粒子がシリカ、ポリスチレン又はポリメタクリル酸メチルからなる粒子であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、分散媒中におけるコロイド結晶は、コロイド粒子が帯電して電気二重層を形成することによって形成されるものであるため、従来は、上述のように水等の分散媒中から不純物を極力排除し、不純物であるところの着色材料は用いていなかった。実際に、特許文献1〜3や非特許文献1においては、分散媒中に着色材料を用いることについては何ら記載されていない。一方、本発明においては、分散液中に、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmで前記単分散度が10%以下であるコロイド粒子ととともに、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料を含有させる。前記分散媒成分と前記コロイド粒子とともに前記着色材料を用いることで、前記着色材料を用いているにもかかわらず、分散液中においてコロイド結晶を形成させることが可能となり、しかも形成せしめたコロイド結晶の規則配列状態を十分に維持することが可能となる。ここで、着色材料を用いているにもかかわらず、分散液中においてコロイド結晶の構造が十分に維持される理由については、本発明者らは以下のように推察する。先ず、本発明においては、前記分散媒線分としてモノマー及び又はポリマーを用いている。このような分散媒成分中に前記コロイド粒子を分散させると、コロイド粒子の帯電によって前記分散媒成分の分子がミセルのように前記コロイド粒子を取り囲むものと推察される。そして、このようにコロイド粒子を取り囲んだ前記分散媒成分の分子は分極するため、粒子同士が静電的に反発しあうようになり、前記分散媒成分中で粒子が規則配列したコロイド結晶を形成される。なお、このようなコロイド結晶の形成時においては、上述のように粒子同士が静電的に反発しあうため、前記分散媒成分中においてコロイド粒子が自己組織的に3次元規則配列状態に配列し、コロイド結晶が効率よく形成されるものと推察される。更に、前述のようにコロイド粒子を前記分散媒成分の分子が取り囲んだミセルのような構造をとると、通常の溶媒を用いた場合と比較して、不純物による電気二重層の厚さに対する影響が小さくなるものと推察される。そのため、本発明においては、着色材料を用いていてもコロイド結晶の状態を十分に維持できるものと本発明者らは推察する。
【0015】
また、本発明においては、前記分散液中でコロイド結晶の状態を十分に維持することができるため、これを各種基板上に容易に塗布、注入等して固定化することが可能であり、光学材料等への応用性が高い。更に、本発明においては、分散液中でコロイド結晶を製造した状態で、そのままモノマー等を重合させることができるため、液中で形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持しながら、コロイド結晶をポリマーで固定化することができる。また、本発明においては、分散媒成分やコロイド粒子の種類及びそれらの濃度を変更すれば、前記分散液中に形成されるコロイド粒子の配列構造を変更させることも可能となるため、得られるコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することも可能である。
【0016】
また、このような分散液中の前記分散媒成分を硬化して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、ポリマー中に着色材料が存在するため、その着色材料の光の吸収により、光の散乱や透過が十分に抑制される。すなわち、このようなコロイド結晶においては、着色材料により可視光の一部或いはかなりの部分が吸収され、光の散乱や透過が十分に低減される。そして、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶は、コロイド結晶からの構造色と着色材料からの発色の両方を併せもつ。具体的には、ハイライト条件及びそれに近い条件での照明下ではコロイド結晶からの角度依存性を有する虹彩色が観測され、それ以外の照明下では着色材料からの発色が支配的に観測される。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、着色材料により、光の散乱や透過を十分に抑制することができるため、見た目の白っぽさが十分に抑えられるとともに、基材の色の影響が小さくなる(基材の隠蔽性が向上する)。そのため、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法によれば、意匠性が高く、十分に実用性の高いコロイド結晶を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法について説明する。すなわち、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程(第一工程)と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程(第二工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0020】
先ず、分散液中に含有させる各成分について説明する。
【0021】
前記分散媒成分は、モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである。このような分散媒成分としては、より容易にコロイド結晶を形成できるという観点から、1種以上のモノマーからなるものを用いることが好ましい。
【0022】
前記モノマーとしては、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態に分散した状態を維持できるものであればよく、特に制限されないが、アクリルモノマーが好ましい。
【0023】
また、前記モノマーとしては、水に分散させることが可能な親水性のモノマーが好ましく、酸や塩基などのイオン性官能基以外の非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーがより好ましい。このような非イオン性の親水性基としては、例えば、水酸基やエチレングリコール基等が挙げられる。なお、酸や塩基などのイオン性官能基を含むモノマーの場合、コロイド結晶を形成させる際にモノマーがコロイド粒子間の相互作用に影響を及ぼし、3次元配列構造を形成させることが困難となる傾向にある。また、水に溶解しない疎水性のモノマーを用いる場合には、コロイド粒子の表面が親水性であるため、コロイド粒子が凝集して均一に分散させることが困難であり、モノマー含有液中においてコロイド結晶を形成し難くなる傾向にある。
【0024】
このような親水性モノマーとしては特に制限されず、公知の親水性モノマーを適宜利用することができ、例えば、エチレングリコール鎖長が異なるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、あるいは、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
また、このような親水性モノマーの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。このようなポリエチレングリコールアクリレート類又はポリプロピレングリコールアクリレート類は、エチレン又はプロピレングリコール鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができ、鎖長によって親水性を制御でき、これを用いることでコロイド粒子の配列状態をより効率よく制御できる傾向にある。また、前記分散媒成分が前記親水性モノマーからなるものである場合には、前記親水性モノマーは1種類を単独であるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
さらに、前記分散媒成分が親水性モノマーを含有するものである場合には、前記親水性モノマーの含有比率が、前記分散媒成分の総量に対して85質量%以上(より好ましくは90質量%〜100質量%)であることが好ましい。前記親水性モノマーの含有比率が前記下限未満では、コロイド結晶を形成させることが困難となる傾向にある。
【0027】
また、前記モノマーとしては、複数のエチレン性二重結合を有する多官能モノマーと、エチレン性二重結合を1つ有する単官能モノマーとを含有することが好ましい。このような多官能モノマーと単官能モノマーとを組み合わせて用いることにより、ポリマーで固定化した際に、十分な機械的強度と基材等に対する十分な付着性が得られる傾向にある。
【0028】
このような多官能モノマーとしては、エチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖からなる群から選択される少なくとも1種と複数の(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。このようなエチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖からなる群から選択される少なくとも1種を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを多官能モノマーとして用いることにより、多官能モノマーが十分に親水性を有するものとなり、より効率よく3次元規則配列構造を形成させることが可能となる傾向にある。また、前記多官能モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル基を2つ又は3つ有するものがより好ましい。また、このような多官能モノマーとして用いられるエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、エチレングリコール鎖又はプロピレングリコール鎖の鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができる。
【0029】
また、このような多官能モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、入手の容易さと、3次元規則配列構造の形成の容易さの観点から、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。このような多官能モノマーとしては1種類を単独であるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0030】
前記単官能モノマーは、エチレン性二重結合を1つ有するモノマーである。このような単官能モノマーとしては特に制限されず、公知の単官能モノマーを適宜用いることができ、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、スチレンモノマー、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが挙げられる。
【0031】
このような単官能モノマーとしては、入手の容易さの観点から、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が特に好ましい。なお、このような単官能モノマーは1種類を単独であるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0032】
また、前記多官能モノマー及び単官能モノマーを組み合わせて用いる場合には、前記多官能モノマーの含有比率は、前記多官能モノマーと単官能モノマーとの総量に対して1〜95質量%(より好ましくは3〜90質量%)であることが好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、重合後に得られるポリマーの硬度が低くなって膜としての強度が十分に保てなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、重合後に得られるポリマーの硬度が高くなり、得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶が脆くなる傾向にある。
【0033】
また、前記ポリマーとしては、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態に分散した状態を維持できるものであればよく、特に限定されないが、一般的に塗料に用いられるアクリルポリマーやウレタンポリマー等を適宜用いることができる。また、このようなポリマーとしては、前述のモノマーを重合して形成されるポリマー(より好ましくはアクリルポリマー)を好適に用いることができる。また、前記分散媒成分においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記モノマー及び/又はポリマーとともに溶媒を含有させてもよい。
【0034】
前記コロイド粒子は、平均粒径が0.05〜5μm(より好ましくは0.08〜2μm)の範囲にある粒子である。このような粒子の平均粒径が前記下限未満では、粒子表面間の凝集力が強くなり、分散液中にコロイド粒子が均一に分散し難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子が沈降し易くなり、分散液中で均一に分散し難くなる傾向にある。なお、このようなコロイド粒子の平均粒子径は、例えば、コロイド粒子の水分散液を基板上で乾燥させ、それを走査型電子顕微鏡で観察して100〜500個の粒子の直径を測定し、平均値を求めることにより測定することができる。
【0035】
また、前記コロイド粒子は、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子である。すなわち、前記粒子は、このような単分散度を有する粒径が極めて均一な粒子である。本発明においては、コロイド粒子に、このような均一性が極めて高い粒子を用いているため、分散媒成分中において前記粒子を分散させた際に、粒子間の相互作用により容易に3次元規則配列構造を形成させることが可能となる。また、このような粒子としては、単分散度がより小さな値となるほどより高い特性が得られる傾向にあることから、前記単分散度は5%以下であることがより好ましい。
【0036】
また、このようなコロイド粒子の材料としては特に制限されず、得られるコロイド結晶を応用する分野に合わせて、公知の有機材料、無機材料、有機−無機複合材料及び無機−無機複合材料の中から適宜選択して用いることができる。このような有機材料としては、例えば、ポリスチレン及びその誘導体、アクリル樹脂等の有機高分子材料等が挙げられる。また、前記無機材料としては、例えば、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記有機−無機複合材料としては、例えば、ポリスチレン及びその誘導体又はアクリル樹脂等からなる粒子を酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等で覆ったコアシェル型の有機−無機複合粒子などが挙げられる。また、前記無機−無機複合材料としては、例えば、シリカからなる粒子を酸化チタン、酸化セリウム又は酸化亜鉛等で覆ったコアシェル型の無機−無機複合粒子等が挙げられる。
【0037】
さらに、このようなコロイド粒子としては、容易に合成することができるという観点から、シリカ、ポリスチレン及びポリメタクリル酸メチルのうちの少なくとも1種からなる粒子が更に好ましく、シリカ、架橋したポリスチレン、架橋したポリメタクリル酸メチル又は架橋したスチレン−メタクリル酸メチル共重合体からなる粒子が特に好ましい。なお、このようなコロイド粒子としては、例えば、エマルション重合により合成されたポリスチレン粒子又はポリメタクリル酸メチル粒子(ダウケミカル社製、ポリサイエンス社製、日本合成ゴム社製、積水化学社製等)やストーバー法により合成されたシリカ粒子(日本触媒製や触媒化成製等)を適宜用いることができる。また、Layer−By−Layer法で単分散な粒子(テンプレート粒子)に層状化合物をコートすることによって二層構造粒子や中空粒子を形成させて、本発明のコロイド粒子として利用してもよい。
【0038】
また、このようなコロイド粒子の含有比率としては、前記分散液中、5〜50体積%であることが好ましく、10〜40体積%であることがより好ましい。このようなコロイド粒子の含有量が前記下限未満では、分散媒成分中に分散させた際にコロイド粒子を3次元規則配列状態とすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子の濃度が高くなりすぎて、形成させる配列構造を制御することが困難となる傾向にある。
【0039】
前記着色材料は、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種のものである。このような着色材料としては、コロイド結晶の構造をより十分に維持できるという観点から顔料が好ましい。
【0040】
このような顔料としては、特に制限されず、公知の顔料を適宜利用することができ、公知の有機顔料や無機顔料を適宜用いることができる。また、このような着色顔料としては、コロイド結晶を構成するコロイド粒子からの散乱光を吸収するという観点からは、明度がそれほど大きくない顔料が好ましく、黒色系、赤色系、青色系等の顔料が好ましい。
【0041】
また、このような顔料としては、明度が50以下である顔料が好ましく、前記明度が40以下である顔料が特に好ましく、前記明度が30以下である顔料がさらに好ましい。このような明度が前記上限を超えると、コロイド粒子からの散乱光を吸収する効果が十分でなくなり、コロイド結晶の白っぽさを抑制する効果が十分でなくなる傾向にある。なお、ここにいう「明度」は、x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68を測定装置として用いて測定した場合の偏角15°における明度をいう。また、ここにいう「偏角」は、前記測定装置による測定の際の測定角をいい、図1に記載のように、照射面10に対して照明11から入射角度45度で光L1を入射させた際の正反射光L2を基準として求められる角度をいう。
【0042】
さらに、このような顔料としては、市販品を用いてもよく、例えば、チバ・ジャパン株式会社製のIRGAZIN DPP Rubine TR、クラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM BLUE A4R、三菱化学製のカーボンブラック「MA600」等を利用してもよい。
【0043】
また、前記染料としては特に制限されず、公知の染料を適宜用いることができ、例えば、反応染料、酸性染料、直接染料等が挙げられる。
【0044】
また、前記着色材料の含有比率としては特に限定されないが、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。前記着色材料の含有比率が前記下限未満では、着色効果が不十分となる傾向にあり、また、前記上限を超えると、コロイド結晶を形成させることが困難となる。
【0045】
次に、各工程について説明する。
【0046】
前記第一工程は、前記分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有しており、且つ、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程である。
【0047】
このような分散液を準備する具体的な方法は特に制限されず、例えば、前記分散媒成分と、前記コロイド粒子と、前記着色材料とを含有する混合液を調製した後、前記混合液中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させることにより前記分散液を得る方法、前記分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させて分散液前駆体を得た後、前記分散液前駆体中に前記着色材料を添加し、分散させて前記分散液を得る方法、前記分散媒成分中に前記着色材料を添加し、分散させた後に、前記コロイド粒子を添加し、前記分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させて前記分散液を得る方法等を適宜採用することができる。このように、本発明においては、分散液を準備する際に、分散媒成分中に反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように前記コロイド粒子を分散させる工程を実施することが好ましい。このような分散工程により、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子を分散させることで、コロイド粒子を反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に配列させることが可能となる。なお、本発明においては、前記コロイド粒子が前記分散媒成分の分子に取り囲まれてミセルのような状態となって分極し、粒子同士が静電的に反発しあうこと、並びに、前記コロイド粒子の単分散性が高く粒子同士の相互作用が十分に均一に働くこと等から、コロイド粒子を十分に分散させることで、自己組織的にコロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることができ、コロイド結晶を効率よく形成できるものと本発明者らは推察する。
【0048】
また、このような工程においては、前記分散媒成分の粘性によってコロイド粒子の分散性が低下することを十分に防止してコロイド粒子間の相互作用を十分に作用させることにより、前記3次元規則配列状態にコロイド粒子を効率よく配列させるという観点から、前記分散媒成分の粘度を低く維持することが好ましく、前記分散媒成分の粘度を50mPa・s以下(更に好ましくは5〜50mPa・sの範囲)とすることがより好ましい。なお、このような分散媒成分の粘度の測定方法としては、回転型粘度計、キャピラリー型粘度計、落下型粘度計等があるが、本発明においては、円筒またはコーンプレートを用いた回転型粘度計として、レオメトリックス社製レオメータ「ARES」を用いて測定する方法を採用する。
【0049】
また、前記分散媒成分の粘度を前述のような範囲に調整する方法としては、モノマー又はポリマーそのものの粘度が低いものを使用する方法、2種以上のモノマー及び/又はポリマーを用いる場合には粘度の低いモノマー又はポリマーを少なくとも1種含有させて前記分散媒成分の粘度を低くする方法、前記分散媒成分中に溶媒を混合することによって前記分散媒成分の粘度を低くする方法等が挙げられる。このような粘度の低いモノマー又はポリマーとしては特に制限されず、より粘度の低いモノマー又はポリマーを適宜選択して利用すればよい。また、前記溶媒としては、特に制限されず、アルコール等の親水性溶媒を適宜用いることができる。なお、前記分散媒成分中に溶媒を含有させる場合には固定化の際に溶媒が蒸発することに伴って結晶構造が変化することを防止するという観点から、溶媒の含有量を30質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
また、本発明においては、前記分散媒成分やコロイド粒子及びそれらの濃度を適宜選択することで、コロイド粒子の配列状態を任意に制御できるため、結晶構造を容易に調整することができる。更に、本発明においては、前記分散媒成分中において、コロイド粒子を前記3次元規則配列状態とさせて分散液を準備した後に、これを各種基板等に塗布したり注入することができ、その配列状態を十分に維持したまま固定化できるため、光機材料等へ容易に応用することが可能である。
【0051】
ここで、本発明にいう「反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態」とは、反射スペクトルを測定し、Bragg回折による反射ピーク(半値幅が50nm以下の反射ピーク)の存在が確認される状態をいい、「反射ピーク」とは、無反射の状態に対して反射光強度が波長の変化に伴って増加、減少する際の変曲点であって半値幅が50nm以下のものをいい、いわゆる反射光強度が上下するノイズとは異なる。このような反射スペクトルの測定方法としては、通常の分光光度計を用いることができるが、本発明においては、相馬光学社製の商品名「マルチチャンネル分光計 Fastvert」を用いて測定する方法を採用する。なお、このような3次元規則配列構造としては、例えば面心立方構造や体心立方構造等が挙げられる。また、前記ピークは、波長350〜1600nmの間の波長におけるピークであることが好ましい。
【0052】
また、このような3次元規則配列状態におけるコロイド粒子の最近接粒子間の距離の平均としては、用いる用途等に応じて適宜変更できるものであり、特に制限されないが、コロイド粒子の平均粒径の0.01〜10倍の範囲にあることが好ましく、0.05〜2倍の範囲にあることがより好ましい。前記最近接粒子間の距離の平均が前記下限未満では、ポリマーマトリックスの体積が少なくなるため強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子を3次元規則配列させることが困難になる傾向にある。
【0053】
また、前記分散媒成分中にコロイド粒子を反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態となるように分散させる方法(以下、単に「分散方法」という。)としては、コロイド粒子を分散させて前記3次元規則配列状態とすることが可能な方法であればよく、特に制限されないが、例えば、超音波を長時間印加する方法、長時間撹拌する方法、加熱する方法、アルコール等の溶媒を加えて分散させる方法等を好適に採用することができる。また、このような分散方法においては、コロイド粒子を3次元規則配列状態とするために、例えば、所定時間ごとに反射スペクトルを測定して反射ピークが現れるまで分散工程を繰り返す方法を採用してもよい。
【0054】
さらに、このような分散方法として超音波を印加する方法を採用する場合においては、用いるモノマーやポリマーの種類、分散媒成分の粘度及びコロイド粒子の濃度等によっても異なるものではあるが、より確実にコロイド粒子を前記3次元規則配列状態に配列させるという観点から、前記分散媒成分の粘度が5〜50mPa・sの範囲であり且つ分散液中のコロイド粒子の濃度が5〜50体積%の範囲である場合には、超音波を0.5〜24時間(より好ましくは1〜10時間)印加することが好ましい。超音波の印加時間が前記下限未満では、コロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、それ以降の操作が無駄となり、作業効率が低下する傾向にある。
【0055】
また、このような超音波の周波数は特に制限されず、16kHz以上であればよく、20〜200kHzとすることが好ましい。前記周波数が前記下限未満では、コロイド粒子を3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コロイド粒子が凝集し易くなり、やはり3次元規則配列状態に配列させることが困難となる傾向にある。
【0056】
また、このような超音波を印加する際の温度条件としては特に制限されないが、0〜80℃(より好ましくは10〜60℃)であることが好ましい。このような温度条件が前記下限未満では、コロイド粒子の分散効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、モノマーの重合が進行し、液中に固形物が形成され、均一な分散液が得られなくなる傾向にある。
【0057】
さらに、前記分散方法としてアルコール等の溶媒を加える方法を採用する場合においては、より確実にコロイド粒子を前記3次元規則配列状態に配列させるという観点から、前記溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることが好ましい。また、このような溶媒の含有量としては、親水性モノマーにコロイド粒子を含有させた混合物100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましい。このような溶媒の含有量が前記上限を超えると、例えば、前記分散媒成分としてモノマーを用いている場合において、モノマーを重合させてポリマーとする際に3次元規則配列状態が乱れたり、溶媒を含んだゲルが形成される傾向にある。
【0058】
なお、このようなコロイド粒子を分散させる工程は、前記分散媒成分中にコロイド粒子と着色材料とが共存する場合とコロイド粒子のみが存在する場合とのいずれの場合においても、同様の分散方法を採用することができる。そのため、本発明においては、工程の簡略化の観点からは、分散媒成分とコロイド粒子と着色材料とを含有する混合液を得た後に前記分散方法を採用してコロイド粒子を分散させることが好ましい。
【0059】
また、前記分散媒成分中に前記着色材料を分散させる方法としては特に制限されず、前記着色材料を分散させることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。また、このような分散媒成分中に前記着色材料を分散させる方法としては前記コロイド粒子の分散方法と同様の方法を好適に採用できる。
【0060】
また、本発明においては、上述のようにして前記分散媒成分中にコロイド粒子及び着色材料を分散させることにより、着色材料を用いながら、反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成された分散液を得ることができる。このような分散液は、分散液中のコロイド結晶状態を維持したまま、各種基板等に塗布、注入等することが可能なものである。そのため、本発明においては、前記分散液を得た後に、前記分散液を基板に塗布又はセル中に注入する工程を更に含むことが好ましい。このような基板又はセルとしては特に制限されず、目的とする用途に応じて、公知の基板又はセルを適宜用いることができる。なお、前記分散媒成分の粘度を調整するために溶媒を加えた場合や前述の溶媒を加える分散方法を採用する場合においては、固定化の際に溶媒の蒸発に伴って結晶構造が崩れることを防止するために、分散液を得た後であって後述する第二工程を施す前に前記溶媒を除去する工程を含むことが好ましい。
【0061】
本発明においては、次に、前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る(第二工程)。
【0062】
第二工程において前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させる方法としては、前記分散媒成分がモノマーからなる場合には、モノマーを重合せしめればよい。このようなモノマーを重合させる方法としては特に制限されず、前記分散液中に形成された結晶構造を消失させることなく前記モノマーを重合させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、光重合による方法や加熱による重合方法等が挙げられる。なお、加熱により重合させる場合には、加熱により結晶構造が消失してしまうことを防止するという観点から、80℃程度以下の温度条件で重合させることが好ましい。
【0063】
また、このようなモノマーの重合方法の中でも、加熱を伴うことなく、コロイド粒子の3次元規則配列構造をより十分に維持しながらより効率よくモノマーを重合できるという観点から、前記分散液に光重合開始剤を更に添加して光を照射することでモノマーを重合させることが可能な光重合による方法を採用することが好ましい。
【0064】
このような光重合の際に用いられる光重合開始剤としては特に制限されず、公知の光重合開始剤を適宜用いることができ、例えば、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサン、ケタール、アセトフェノン等のカルボニル化合物や、ジスルフィド、ジチオカーバメート等のイオウ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾ化合物、遷移金属錯体、ポリシラン化合物、色素増感剤等が挙げられる。
【0065】
また、このような光重合開始剤の添加量としては特に制限されず、用いた親水性モノマーの種類等に応じて適宜変更できるが、前記分散液中の親水性モノマー100質量部に対して1〜5質量部程度とすることが好ましい。また、このような光重合においては、コロイド結晶中のコロイド粒子の3次元規則配列構造をより十分に維持しながら重合させるという観点から、0〜40℃程度の温度条件下で重合させることが好ましい。
【0066】
また、前記分散媒成分がポリマーからなる場合には、そのポリマーを硬化させる方法は、特に制限されず、前記分散液中に形成された結晶構造を消失させることなく前記ポリマーを硬化させることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、光重合開始剤の存在下に光を照射してポリマーを硬化させる方法、溶媒を除去してポリマーを硬化させる方法等を採用してもよい。なお、このような光重合開始剤の存在下に光を照射してポリマーを硬化させる方法としては、上述のモノマーの光重合方法と同様の方法を採用できる。
【0067】
次に、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶について説明する。本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とするものである。
【0068】
このようなポリマーで固定化したコロイド結晶は、上記本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法を採用して得られるものであるため、上述の分散液中に形成されたコロイド結晶の結晶構造が変化することを十分に防止して製造されたものである。また、上述の分散液が鋼板やガラス板など種々な基板や紙や繊維など種々な材料にあらゆる方法で塗布又は塗装したり、型やセルなどの中に注入したりすることが可能なものであるため、それを固定化して得られる本発明のポリマーで固定化したコロイド結晶は、様々な用途に応用することが可能である。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶は、前記着色材料を含有するものであるため、コロイド結晶からの構造色と着色材料からの発色の両方を呈するものとなる。具体的には、ハイライト条件及びそれに近い条件での照明下ではコロイド結晶からの角度依存性を有する虹彩色が観測され、それ以外の照明下では着色材料からの発色が支配的に観測されるものとなる。また、このようなポリマーで固定化されたコロイド結晶においては、着色材料により、光の散乱や透過を十分に抑制することができるため、見た目の白っぽさが十分に抑えられるとともに、基材の色の影響が小さくなる(基材の隠蔽性が向上する)。そのため、例えば、イリデセンス(虹彩色)等のいわゆる構造色を発色する構造色色材等に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
先ず、ポリエチレングリコールジアクリレートモノマー(新中村科学製の商品名「NKエステルA−200」)とポリエチレングリコールモノアクリレートモノマー(新中村化学製の商品名「NKエステルAM−30G」)とを重量比(A−200:AM−30G)が8:2となるようにして混合し、分散媒成分を調製した。次に、前記分散媒成分中に、Stober法にて合成したシリカ粒子(平均粒子径200nm、単分散度:5%)を含有量が27体積%になるようにして添加した後、室温条件(25℃)下で超音波(45kHz)を3時間印加して分散させ、コロイド粒子(シリカ粒子)がモノマー中に均一分散した分散液前駆体を得た。なお、前記分散液前駆体においては、虹彩色が観察され、コロイド粒子が3次元規則配列状態に分散されていることが分かった。次いで、前記分散液前駆体に、黒色顔料として三菱化学製のカーボンブラック「MA600」を、前記分散液前駆体100質量部に対して0.1質量部添加し、再び室温条件下で超音波(45kHz)を30分印加して顔料を均一分散させて分散液を得た。なお、このようにして得られた分散液においても前記分散液前駆体と同様に虹彩色が観察された。前記分散液の反射スペクトルを図2に示す。
【0071】
次に、前記分散液に、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製の商品名「Darocure1173」)を1重量%添加した。次いで、前記分散液を2枚のスライドガラスの間に0.5mm厚のシリコーンシートを挟みこんで作製したセルの隙間に注入した。このようにして注入した分散液からは、ガラスセル内においても構造色を観測することができ、自己組織的にコロイド結晶が形成されていることが確認された。次いで、大気中にて、前記セルの表と裏のそれぞれにUV光を2分間ずつ照射し、前記分散液中のモノマーの光重合を行った。このようにして前記モノマーを重合せしめた後、スライドガラスを取り外し、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。得られたコロイド結晶の反射スペクトルを図3に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では顔料の光吸収に起因する黒色が観測された。
【0072】
(実施例2)
黒色顔料の代わりにチバ・ジャパン株式会社製のIRGAZIN DPP Rubine TR(赤色顔料)を用い、前記赤色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.05質量部とし、更にUV光の照射時間を1分間に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図4に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図5に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件ではコロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では顔料の光吸収に起因する赤色が観測された。
【0073】
(実施例3)
赤色顔料の代わりにクラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM BLUE A4R(青色顔料)を用い、前記青色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.2質量部とした以外は、実施例2と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図6に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図7に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、顔料の光吸収に起因する青色が観測された。
【0074】
(実施例4)
赤色顔料の代わりにクラリアントジャパン株式会社製のHOSTAPERM VIOLET RL SP(紫色顔料)を用い、前記青色顔料の添加量を前記分散液前駆体100質量部に対して0.05重量部とした以外は、実施例2と同様にして、ポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図8に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図9に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、顔料の光吸収に起因する紫色が観測された。
【0075】
(比較例1)
顔料を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてポリマーで固定化されたコロイド結晶のバルク体を得た。このようなコロイド結晶のバルク体の製造過程において調製された分散液の反射スペクトルを図10に示し、前記コロイド結晶のバルク体の反射スペクトルを図11に示す。なお、得られたコロイド結晶のバルク体を目視により観察したところ、蛍光灯の照明下における鏡面反射条件あるいはそれに近い照射条件では、コロイド結晶のBragg回折に基づく構造色が観測され、それ以外の照射条件下では、白っぽく観察された。
【0076】
[実施例1〜4及び比較例1で得られたコロイド結晶等の特性の評価]
〈反射スペクトルの測定〉
実施例1〜4及び比較例1で得られた分散液及びポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルは以下のようにして測定した。すなわち、測定装置として相馬光学製のマルチチャンネル分光器Fiberspec S−2650を用い、本装置内蔵のハロゲンランプを光源にして、同軸光ファイバにより拡散光を直径約15mmの領域でサンプルに垂直方向から照射し、垂直方向の反射光のスペクトルを測定した。なお、各コロイド結晶の反射スペクトルのグラフは、ガラス基板に蒸着したアルミニウム膜をリファレンスに用い、前記ガラス基板に蒸着したアルミニウム膜の反射スペクトルとの割り算により、反射率を求めて反射スペクトルの縦軸とした。
【0077】
図2、図4、図6、図8及び図10に示す結果からも明らかなように、実施例1〜4で採用した本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、顔料を用いずにコロイド結晶を製造した場合(比較例1)と同様に、製造過程で得られる分散液の反射スペクトルにおいて、反射ピークが観測され、顔料が共存しているにもかかわらず、分散液中においてコロイド粒子が3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されていることが確認された。
【0078】
また、図3、図5、図7、図9及び図11に示す結果からも明らかなように、実施例1〜4で採用した本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法においては、顔料を用いずにコロイド結晶を製造した場合(比較例1)と同様に、得られたコロイド結晶のいずれにも、610−620nm付近にBragg回折に起因する反射ピークが観測された。このような結果から、本発明によれば、顔料の添加があるにも関わらず、Bragg回折による構造発色を示すコロイド結晶を製造できることが確認された。なお、図3、図5、図7及び図9においては、顔料に起因する発色を示すピークが観測されていない。これは、もともと顔料に起因する発色が吸収に基づくブロードなピークを示す上に、ここで行った拡散光による反射スペクトルの測定では、Bragg回折による反射ピークが極めて強く観測されていることと、サンプル表面からの反射光の影響によるものと推察される。
【0079】
〈各実施例及び比較例1で得られたコロイド結晶のバルク体の色の変角特性測定〉
実施例1〜4及び比較例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶について、鏡面反射条件に近い条件と鏡面反射条件から著しくはずれた条件において「色」を定量的に測定した。このような測定には、測定装置として、x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68を用い、測定面に対して45°の角度で入射光L1を照射した場合における正反射光L2(測定面に対して45°の角度の反射光)を基準とした図1に示す角度の定義における測定角15°と75°における「色」をCIELAB方式で測定した。各測定角におけるL*a*b*の値をそれぞれ表1に示す。なお、L*は、色の明度を表し、上限が100で下限が0の値をとり、この値が大きいほど白く、小さいほど黒いことを表す。また、a*及びb*は色度を表す座標である。これらのうち、a*軸が直交する二つの座標軸のx軸に相当し、+側が赤、−側が緑を意味する。また、b*軸はy軸に相当し、+側が黄色、−側が青色を意味する。そして、このようなa*b*が表す座標の原点からの距離が、色の鮮やかさである彩度を表す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた顔料を添加していないコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°においてはL*の値が90.87であり、明度が大きくかなり白っぽいことが確認され、測定角75°においてもL*の値が57.54であり、実施例1〜4で得られたバルク体の結果と比較してL*の値が大きくかなり白っぽいことが確認された。
【0082】
これに対して、実施例1で得られた黒色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、鏡面反射条件に近い測定角15°では明度及びa*b*の値から示される彩度が十分なものであり、十分な発色を示していることが確認され、鏡面反射条件から大きくずれた測定角75°では、明度、彩度とも小さく、黒色に近い色を示していることが確認された。また、実施例2で得られた赤色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が高く黄色っぽい色を示していることが確認され、測定角75°においては、比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度が小さく、a*b*の値から比較的彩度の高い赤色を示していることが確認された。さらに、実施例3で得られた青色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が十分に高いことが確認され、測定角75°では、比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度が低く、a*b*の値から比較的彩度の高い青色を示していることが確認された。また、実施例4で得られた紫色顔料を添加したコロイド結晶のバルク体においては、測定角15°では明度が十分に高いことが確認され、測定角75°では比較例1で得られたバルク体の結果と比較して明度は低く、a*b*の値からは彩度の高い紫色を呈していることが分かった。
【0083】
このような結果から、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法を利用することで、コロイド結晶に顔料を添加することが可能となるため、得られるコロイド結晶が従来のコロイド結晶と比較して光の散乱等を十分に防止できるものとなり、コロイド結晶の見た目の白っぽさが十分に低減されることが確認された。また、得られるコロイド結晶には顔料による新たな色を付加することができることも確認され、従来にない意匠性を有する色材を提供することが可能となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明によれば、液中に形成されたコロイド粒子の配列構造を十分に維持して固定化することができるとともにコロイド結晶の結晶構造(格子定数、結晶型等)を容易に制御することができ、しかも光の散乱や透過が十分に抑制されたコロイド結晶を効率よく製造することを可能とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法、並びに、その方法を採用して得られるポリマーで固定化されたコロイド結晶を提供することが可能となる。
【0085】
したがって、本発明のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法は、意匠性に優れたコロイド結晶を提供することが可能であるため、構造色色材を製造するための方法等として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】x−rite社製のマルチアングル分光測色計MA68にて明度等を測定する際の、正反射光と測定角との関係を示す摸式図である。
【図2】実施例1で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例2で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例2で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例3で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例3で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例4で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図9】実施例4で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【図10】比較例1で得られた分散液の反射スペクトルを示すグラフである。
【図11】比較例1で得られたポリマーで固定化されたコロイド結晶の反射スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
10…照射面、11…照明、L1…入射光、L2…正反射光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項2】
前記着色材料が顔料であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項3】
前記着色材料の含有比率が、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項4】
前記分散媒成分が非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーからなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項5】
前記分散媒成分が、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の親水性モノマーからなることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項6】
前記コロイド粒子がシリカ、ポリスチレン又はポリメタクリル酸メチルからなる粒子であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶。
【請求項1】
モノマー及びポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する分散媒成分と、平均粒径が0.05〜5μmであり且つ下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下であるコロイド粒子と、顔料及び染料からなる群から選択される少なくとも1種の着色材料とを含有しており、前記分散媒成分中に前記コロイド粒子が反射スペクトルにおいて反射ピークを有する3次元規則配列状態に分散しており、前記3次元規則配列状態のコロイド結晶が形成されている分散液を準備する工程と、
前記分散液中の前記分散媒成分を硬化させて、ポリマーで固定化されたコロイド結晶を得る工程と、
を含むことを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項2】
前記着色材料が顔料であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項3】
前記着色材料の含有比率が、前記分散媒成分及び前記コロイド粒子の総量100質量部に対して0.01〜2質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項4】
前記分散媒成分が非イオン性の親水性基を含む親水性モノマーからなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項5】
前記分散媒成分が、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の親水性モノマーからなることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項6】
前記コロイド粒子がシリカ、ポリスチレン又はポリメタクリル酸メチルからなる粒子であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のポリマーで固定化されたコロイド結晶の製造方法により得られたものであることを特徴とするポリマーで固定化されたコロイド結晶。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【公開番号】特開2010−132771(P2010−132771A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309933(P2008−309933)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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