ポリマーコーティング及び細胞接着方法
本発明は、製品向けの細胞付着性ポリマーコーティングを提供し、上記コーティングは、複数のペンダント型アミン基を有する、合成の、非生分解性ポリマーを含み、ここで、上記ポリマーは、潜在性反応性基により、上記製品に共有結合で固定化されている。本発明はまた、上記ポリマーコーティングを用いた、細胞を長期間接着させるための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、「ポリマーコーティング並びに細胞維持及び分化のための方法」と題する、2005年7月20日に出願された、シリアルナンバー第60/700,860号を有する米国仮出願の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、非生分解性アミン提供ポリマー(amine−presenting polymer)を含むコーティングと、これらのコーティングを含む表面への細胞の付着を促進するための方法とに関する。本発明はまた、細胞を分化する方法と、これらのコーティングを有する細胞を維持するための方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞接着及び増殖に好適な表面を提供するために、種々のアプローチが用いられている。多くの細胞は足場依存的であり、それらが、増殖又は分化のために、基剤へのいくつかのタイプの接着を証明しなければならないことを意味する。in vivoで、細胞は、上にある上皮又は内皮を支持する構造体である基底膜中に存在するたんぱく因子に接着することができる。上記基底膜は、基底板と称される膜と、下にあるコラーゲン原線維のネットワークとから成る。細胞接着及び増殖のための優れた基剤を提供することができるため、基底膜内に見出される成分に基づいた、細胞接着用の人工表面が作成されている。上記人工表面は、in vivo、例えば、移植可能な医療装置、及びin vitro、例えば、細胞培養製品中で用いられている。
【0004】
細胞を基層に接着させるために、荷電表面が用いられている。しかし、培養工程の際に、荷電表面の全てが、細胞の十分な接着に好適というわけではない。例えば、いくつかのマイナスに帯電した表面は、好適な基剤を供給しない。というのは、多くの細胞は、細胞が表面に接着することを媒介するために十分な量の、正に帯電したタンパク質を示さないからである。
【0005】
天然のポリペプチド系細胞接着因子、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンが、細胞の基剤への接着を強化するために用いられている。生分解性合成ポリマーカチオン、例えば、ポリリジン及びポリオルニチンが、種々の足場依存性細胞種の接着を促進するコーティングを提供するために用いられている。これらの種類のポリマー物質を用いることに伴う課題の一つは、当該物質が、培養の液体培地内に存在することとなる場合があるプロテアーゼか、又は血清中にin vivoで存在するプロテアーゼにより、長期間にわたり分解されうることである。従って、これらの物質を含む表面は、限定的な期間のみ、細胞接着のために有用である場合がある。細胞付着性に関連する特性は、上記コーティング内に存在する物質の分解により、ある程度解決することができる。
【0006】
さらに、細胞接着を促進するために用いられているいくつかのコーティングはまた、コーティング物質が上記製品の表面に適切に接着しないと、当該コーティングから失われる場合があるとの観点から問題となる場合がある。次いで、これらの物質が、液体培地又は体液中に存在し、そして当該体液と接触する細胞に影響を与える可能性がある。例えば、上記コーティングから失われたポリマー物質は、上記細胞の表面と結合し、そして細胞が上記基剤に接着することに影響を与える可能性があるか、又は培養物中の細胞−細胞相互作用に影響を与える可能性がある。いくつかのポリマー物質はまた、細胞の生存に有害な場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、細胞を培養することを含む工程において用いられる製品向けの、改良されたポリマーコーティングを提供する必要がある。上記改良されたコーティングは、一次細胞、培養することが難しい細胞系、及び幹細胞の維持及び分化を含む方法の利益となる有用な細胞培養製品を規定することができる。上記コーティングをまた、in vivoで使用するための移植可能な医療用製品の表面をコーティングするために用いることができる。従って、上記コーティングは、数多くの疾患及び病気を治療するための、組織特異再生技術の利益となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様の一つでは、本発明は、細胞を培養するための方法、そして特に、長期間(長期間培養)の培養において、細胞を保持するための方法に有用な細胞培養製品向けのコーティングを提供する。本明細書において、培養は、代謝的に活性な細胞を、本明細書に記載されるようなポリマーコーティングを有する細胞培養製品に置くことを含む方法を指す。本発明のポリマーコーティングは、それらの安定性に由来する、長期間の細胞培養のための理想の表面を供給し、細胞接着のために優れた表面を提供し、そして多種多様の細胞種を培養するために用いることができることを示している。
【0009】
コーティングと同時に、細胞を液体培地内で培養して、所望の代謝的に活性な状態を作り出す。上記コーティングを用いて、上記細胞が、休止(非増殖及び非分化状態)、細胞増殖の状態、及び細胞分化の状態にある状態を含む、1種又は2種以上の代謝的に活性な細胞状態を促進することができる。
【0010】
本発明の別の態様では、上記コーティングを、移植可能な医療装置上に適用する。いくつかの方式では、in vitroで提供されるような上記コーティングの機能と同様に、上記コーティングを医療用製品の表面に用いて、細胞接着を促進することができる。これは、組織形成、上皮形成及び血管形成の促進を含む、多くの用途に有用である。
【0011】
本発明のコーティングは、ペンダント型アミン基を有する非生分解性ポリマーを含み、上記コーティングはまた、1種又は2種以上の潜在性反応性基(latent reactive group)を含む。上記潜在性反応性基を用いて、上記ポリマーを、製品の表面、例えば、細胞培養デバイス若しくは機器の一部、移植可能な医療装置の一部に共有結合させる。上記潜在性反応性基を、ペンダント型潜在性反応性基として、上記ポリマーに供給することができる。あるいは、ペンダント型潜在性反応性基を、上記ポリマーから独立した化合物に含ませ、次いで上記ポリマーを基剤表面と結合させるために用いることができる。
【0012】
上記ペンダント型潜在性反応性基を介した結合により、上記ポリマーを上記表面に最適に形成させ、細胞付着性を促進させるコーティングが提供される。いくつかの態様では、上記ペンダント型潜在性反応性基は、光反応性基である。そこで、本発明のコーティングは、細胞接着のための方法に概して用いられ、上記細胞は、長期間、上記表面に接着し続けることができる。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、本発明のポリマーは、次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は下記:
【化1】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである)
のペンダント型アミン含有基を含む。
【0014】
いくつかの態様では、R1は下記:
【化2】
であり、R2は、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そしてR3及びR4は、個々に、H又はCH3である。
【0015】
例示的なアミン含有基には、重合性モノマー、例えば、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、3−アミノエチルメタクリルアミド(AEMA)及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)上に見出されるものが含まれる。いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び潜在性反応性基を含むポリマーは、上記基−R1R2NR3R4を有するモノマーを、潜在性反応性基を有するコモノマーと共重合することにより生成されうる。他の態様では、ポリマーは、式R1R2NR3R4を有するモノマーを重合させ、次いで1種又は2種以上のペンダント型アミン基を、潜在性反応性基を有する化合物と反応させて生成されうる。
【0016】
他の態様では、ペンダント型アミン基を有するポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミンから選択される。PEIは、エチレンイミンを重合して生成させることができ;所望により、重合性基及び潜在性反応性基を有するモノマーをエチレンイミンと共重合して、ペンダント型潜在性反応性基を有するPEIを生成することができる。特定の態様の一つでは、上記ポリマーには、1種又は2種以上の潜在性光反応性基を有するポリエチレンイミンが含まれる。
【0017】
潜在性反応性基は、特定の適用された外部刺激に応答し、活性種の生成をうける基を指し、ターゲットとの得られた共有結合を有する。上記潜在性反応性基は、外部の電磁気又は運動(熱)エネルギーを吸収した際に、活性種、例えば、フリーラジカル、ニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を発生させる。態様の一つでは、上記潜在性反応性基は、上記ポリマー及び細胞培養製品の表面を結合させるための活性状態に活性化することができる光反応性基である。例示的な光反応性基には、アリールケトン、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環(例えば、アントロンの複素環式類似体、例えば、10位に窒素、酸素又は硫黄を有するもの)、又はそれらの置換(例えば、環置換された)誘導体が含まれる。
【0018】
任意の好適な方法を用いて、ペンダント型アミン及び1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリマーを、製品の表面に結合させることができる。方法の一つには、事前生成したポリマーを、上記表面に配置し、次いで上記潜在性反応性基を活性化し、上記ポリマーを上記表面に結合させることが含まれる。これらのケースでは、上記潜在性反応性基は、ペンダント型又は独立したポリマーであることができる。あるいは、モノマー物質を上記表面で重合させ、上記ポリマーを当該表面に結合させるペンダント型アミン及び1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリマーを生成することができる。
【0019】
本発明のポリマーコーティングは、種々の細胞培養製品の調製に有用であることが示された。いくつかの態様では、上記細胞培養製品は、コーティング面を有する製品を指す、2次元の細胞培養製品であり、そこでは、細胞は、2次元の表面の単一面で増殖する。上記2次元の細胞培養製品には、複数のウェルの細胞培養プレート、細胞培養皿及び細胞培養瓶が含まれる。他の態様では、上記細胞培養製品は、コーティング面を有する製品を指す3次元の細胞培養製品であり、そこでは、細胞が上記製品上の一つ超の面で増殖をする。
【0020】
3次元の細胞培養製品のコーティング面は、細胞が接着することができる足場と似ている場合がある。上記製品は、ミクロ又はナノ構造を有する物質、例えば、繊維から生成させたものを含む、表面形態、合成又は天然の微孔質又はナノ多孔質物質から生成されうる。
【0021】
ペンダント型アミン基を有するポリマーは、培養工程の際に、細胞の優れた付着を促進することができる。これにより、上記コーティングに接着するためのある程度の足場依存性を示し、そして培養される細胞の種類及び当該細胞が培養される培地の種類にもよるが1種又は2種以上の代謝活性を示す細胞が可能となる。従って、上記コーティングは、非付着性であるか、付着性に乏しいか、又は適度な付着性である細胞を培養するために特に有用である。本発明のコーティングはまた、細胞増殖及び分化を可能とするコーティングを提供するために特に有用である。
【0022】
本発明は、非常に安定であり、且つ細胞培養工程に有用であるコーティングを提供する。従って、本発明のコーティングは、長期間の細胞の培養を含む手順に特に有用である。
【0023】
これらの態様では、上記アミン供給ポリマーが、培養培地の存在下で分解せず、従って、相当の期間にわたる培養において細胞の付着を促進するために用いることができるので、本発明のコーティングは特に有利であることが見出された。これは、分解性天然ポリマー、例えば、ポリペプチド及び多糖類、並びに生分解性合成ポリマーから主として構成されるコーティングとの比較である。これらの種類の生分解性コーティングは、より短期間(例えば、数週間)で分解し、そして培養において細胞の付着を促進するそれらの能力を失う場合がある。
【0024】
さらに、本発明のポリマーは上記培養製品の表面と共有結合しているので、当該表面からアミン供給ポリマーの損失が最小であるか、又は当該ポリマーの損失がない。これは、多くの点で有利である;第一に、培養期間の間、上記表面に接着するか又は接着して残る上記細胞の能力が変化しないであろう。すなわち、上記表面に接着するアミン供給ポリマーの量は、長期にわたって有意に変化しないであろう。第二に、上記培養中に、アミン提供ポリマーが損失するリスクが最小である。これはまた有利である、というのは、そうでないと、上記培養中に失われたポリマーが、上記細胞の特性を変化させる可能性があるからである。
【0025】
例えば、上記細胞は、非付着性となりうるか、又は上記細胞の表面のたんぱく質により運搬される他の特性を失う場合がある。さらに、ある場合には、上記コーティングから、上記培地中に失われたポリマーが、上記細胞に対する毒性を有する可能性がある。例えば、種々の培養系における25kDa以上の分子量を有するいくつかのポリエチレンイミンの場合、PEIを細胞外に添加した場合に、毒性が報告されている(Fischerらの「Eur.J.Cell Biol.」(1998)48,108;Fischerらの「Pharm.Res.」(1999)16,1723−1729)。従って、本発明のポリマーコーティングは、先行技術において細胞接着及び培養を促進するために従来用いられているコーティングに見出されるいくつかの欠点を克服する。
【0026】
本発明のコーティングは、非生分解性アミン提供ポリマーに基づくが、他の非生分解性物質又は分解性物質、例えば、生分解性ポリマーが、上記コーティング中に存在することができる。培養の際、例えば、生分解性ポリマーが、上記コーティング中に存在し、そしてより短期間、細胞を培養するための優位性を提供することができる一方で、上記非生分解性ポリマーは、上記コーティングに存在したままであり、そして長期間、付着面を供給することができる。
【0027】
いくつかの態様では、本発明は、細胞の長期間の培養のための方法を提供する。当該方法には、上記ポリマーを上記製品の表面に結合させる複数のアミン基及び潜在性反応性基を有する非生分解性合成ポリマーを含むコーティングを有する細胞培養製品を得る段階が含まれる。当該方法は、環境(液体培地)内で、上記表面に細胞を配置させる段階をさらに含む。配置させる段階に続いて、上記細胞が維持することができるか、又は所望の生理状態を有するように誘導されることができるように、当該細胞を、上記コーティングに付着させることができる。次いで、上記方法は、長期間、上記細胞を液体培地内で培養する段階を含む。「長期間」は、14日超の期間を指すのが一般的である。
【0028】
適応があれば、「長期間」は、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超であることができる。従って、いくつかの態様では、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲にわたる期間、培養物中に保持することができる。本発明の明確に区別できる優位性は、細胞付着を促進することができる新鮮なコーティングを有する新しい培養製品に、上記細胞を移動させる必要がないことである。しかし、長期間の培養の際には、上記液体培地を、例えば、置換又は補給により変化させて、所望の生理状態を得るために好適な環境を提供することができる。
【0029】
いくつかの態様では、上記培養工程の期間、上記方法を用いて、細胞を、代謝活性が低い状態に維持(例えば、休止細胞の維持)することができる。すなわち、いくつかの態様では、上記細胞内の代謝性変化、例えば、上記細胞の形態を変化させることができるものを促進することなく、適切な培地中で、上記コーティング面に細胞を維持することができる。この方法はまた、細胞を維持するために有用であることができ、そして細胞増殖により細胞の個体群を増やすことができる。本発明のポリマーコーティングを用いた細胞培養において維持することができる例示的な細胞種には、未分化細胞、例えば、幹細胞、又は部分的若しくは完全に分化した細胞種、例えば、肝細胞、膵島細胞、神経細胞及び星状細胞が含まれる。上記未分化細胞は、多分化能、全能又は多能性の細胞種を含むことができる。
【0030】
この点では、上記コーティングは、一定の期間にわたり、コーティングされた製品を置き換える必要がない、細胞の長期間の維持のために用いられうるコーティングされた製品を提供するという点で特に有用である。
【0031】
他の態様では、培養工程の期間、上記方法を用いて、細胞の分化を促進することができる。任意の好適な事前分化又は前駆細胞種を用いることができる。上記方法は、コーティング面を得る段階、次いで事前分化細胞を上記コーティング面に置く段階を含むことができ、そこでは、上記細胞が上記コーティングに付着する。上記方法はまた、上記細胞の代謝活性を変化させることができる成分を含む環境(液体培地)の存在下で、上記細胞を培養する段階を含み、1種又は2種以上の細胞の態様、例えば、細胞形態に変化がもたらされる。上記成分は、上記事前分化細胞の成熟を、部分的又は完全に分化した状態へと促進させる任意の種類の成分を指す分化因子でありうる。
【0032】
次いで、上記方法は、長期間にわたり、上記コーティング面と接触している上記細胞を分化させる段階を含む。適応があれば、長期間は、14日超、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超であることができる。いくつかの態様では、上記細胞の初期接種密度にもよるが、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲の期間、培養物中に保持することができる。長期間の培養の間、上記液体培地を、例えば、置換又は補給により変化させ、所望の生理状態を得るために好適な環境を提供することができる。
【0033】
本発明に従って分化させることができる例示的な細胞種には、一次細胞、神経前駆細胞、骨髄細胞、幹細胞、例えば、胚(胚盤胞由来)幹細胞等が含まれる。
【0034】
いくつかの態様では、上記方法は、神経前駆細胞の成熟を、所望の分化した神経細胞種へと促進させるために用いられる。本発明のポリマーコーティングは、神経前駆細胞の接着を促進し、次いで、1種又は2種以上の所望の分化因子の存在下で、長期間培養することができることが示された。本発明のコーティングは、神経突起の外殖及び/又は伸張を促進する一方で、同一培地条件の下で従来型のコーティングがなされた製品上で培養した神経前駆細胞は生き残らなかった。本発明のコーティングはまた、コーティングされた基剤上で増殖する一部の神経細胞内の成熟した神経細胞マーカーの発生を促進する。本発明のコーティングはまた、神経前駆細胞の構造を星状細胞へと促進させることが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に記載される本発明の実施形態は、次の詳細な説明に開示される正確な形態に本発明を制限するか、又は網羅的であることを目的とするものではない。むしろ、上記実施形態は、当業者が本発明の原理及び実施を正しく評価し、かつ理解することができるように選択及び記載されている。
本明細書で言及される全ての出版物及び特許を、参照により本明細書に組み入れる。本明細書に開示される出版物及び特許は、単にそれらの公表のために提供されている。発明者が、先行する任意の出版物及び/又は特許(本明細書で引用される任意の出版物及び/又は特許を含む)に権利を与えないことの自認として解釈される。
【0036】
いくつかの態様では、本発明は、細胞培養製品の表面にコーティングを付与するための試薬及び方法を提供し、当該コーティングは、上記細胞培養製品の表面に上記ポリマーを結合させるために用いられる少なくとも1種の潜在性反応性基と、複数のペンダント型アミン基とを有するポリマー物質を含む。
【0037】
本発明のポリマーコーティングを、任意の種類の細胞培養製品上に生成することができる。しかし、いくつかの態様では、細胞の増殖及び分化のために十分な表面を提供する細胞培養製品を提供することが望ましい。当該製品は、分化する細胞の形態を支持する表面を理想的に有する。例えば、神経前駆細胞の分化の場合には、上記表面により、神経突起の形成、又は10μm超若しくは200μm超である神経性細胞の他の特徴が可能となる。
【0038】
2次元の細胞培養のための例示的な細胞培養製品には、複数のウェルのプレート、例えば、6個のウェル及び12個のウェルの培養プレート、並びにより小さいウェルの培養プレート、例えば、96、384及び1536個のウェルのプレート、培養ジャー、培養皿、培養フラスコ、培養プレート、培養ローラーボトル、培養スライド、培養管及びペトリ皿が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明のコーティングをまた、細胞を製品の一つ超の面で増殖させる3次元の細胞培養製品上に生成させることができる。3次元の細胞培養製品のコーティング面を、細胞が接着することができる足場に似せることができる。上記製品を、ミクロ構造又はナノ構造を有する物質、例えば、表面形態を作り出すように処理されるポリマー物質から生成したもの、合成又は天然のミクロ又はナノ多孔質物質、例えば、ポリアミド繊維を含む繊維から生成させたものから製造することができる。
【0040】
例示的な3次元の細胞培養製品には、複層カーボンナノチューブ(multiwalled carbon nanotube,MWCN;Chenらの「Science」(1998)282:95を参照せよ);ヒドロキシアパタイト微粒子表面(Rosaらの「Dental Mater.」(2003)19:768−772)が含まれる。上記ポリマーコーティングをまた、天然物質、例えば、自己集合性のペプチドナノ繊維骨格(Genoveらの「Biomaterials」(2005)26:3341−3351)及びコラーゲン/ヒアルロン酸高分子電解質複層(Zhengらの「Biomaterials」(2005)26:3353−61)の表面上に生成させることができる。他の場合では、上記3次元の表面を、微粒子の安定化層から製造することができる。
【0041】
上記ポリマーコーティングを、多種多様の物質から作製することができる細胞培養製品上に生成させることができる。上記細胞培養製品の構造体を生成するために用いられる物質は、本明細書で、「製品物質」又は「装置物質」と称される一方で、本明細書において、上記ポリマーコーティングを生成させるために用いられる物質は、「コーティング物質」と称される。
【0042】
その上に上記コーティングを生成させることができる製品を製造するために用いることができる物質の例には、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマー(付加重合又は縮合重合のどちらかから生成)を含む合成ポリマーが含まれる。好適な付加ポリマーの例には、アクリル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド及びアクリルアミドから重合したもの;ビニル、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル及びスチレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
細胞培養製品中で一般的に用いられる例示的なポリマー物質には、ポリスチレン及びポリプロピレンが含まれる。
縮合ポリマーの例には、ナイロン、例えば、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド及びポリヘキサメチレンドデカンジアミド、及びまたポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジメチルシロキサン及びポリエーテルケトンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
生分解性ポリマーをまた、製品物質として用いることができる。生分解性物質として検討されている合成ポリマーの種類の例には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイミノカーボネート、脂肪族カーボネート、ポリホスファゼン、ポリ無水物及びそれらのコポリマーが含まれる。移植可能な医療装置に関連して用いることができる生分解性物質の具体例には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド−co−ポリジオキサノン)、ポリ無水物、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)及びポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)が含まれる。これらのポリマーと、他の生分解性ポリマーとのブレンドをまた、用いることができる。
【0045】
本発明のポリマーコーティングをまた、異なるポリマー物質を用いてプレコートされている製品の表面に生成させることができる。例えば、製品を、パリレン又はオルガノシラン物質を用いてプリコートし、アミン含有ポリマーを配置させ、そして反応させるベースコートを供給することができる。例示的な物質には、金属、金属合金及びセラミックが含まれる。上記金属及び金属合金には、チタン、ニチノール、ステンレス鋼、タンタル及びコバルトクロムが含まれるが、これらに限定されるものではない。第二の種類の金属には、貴金属、例えば、金、銀、銅及び白金ウリジウム(uridium)が含まれる。上記セラミックには、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア及びアルミナ、並びにガラス、シリカ及びサファイアが含まれるが、これらに限定されるものではない。セラミック及び金属の組み合わせ物は、別の種類の生体物質である。
【0046】
本発明の他の態様では、上記ポリマーコーティングを、移植可能な医療用製品の表面に生成させる。上記移植可能な医療用製品を、本明細書に記載され、かつ人体内の使用に好適な任意の物質から製造することができる。例示的な医療用製品には、血管用インプラント及び移植片、移植片、外科用装置;合成人工器官;エンドプロテーゼ(endoprosthesis)を含む人工血管、ステント移植皮弁、血管内のステント組み合わせ物;小径の移植片、腹部大動脈瘤用移植片;創傷被覆材及び創傷管理装置;止血用バリア;メッシュ及びヘルニアプラグ(hernia plug);子宮出血用パッチを含むパッチ、心房中隔欠損症(ASD)用パッチ、卵円孔開存症(PFO)用パッチ、心室中隔欠損症(VSD)用パッチ及び他のジェネリックの心臓用パッチ;ASD、PFO及びVSDクロージャ;経皮クロージャ装置、僧帽弁修復装置;左心耳フィルター;弁形成(valve annuloplasty)装置、カテーテル;中心静脈アクセス用カテーテル、血管アクセス用カテーテル、膿瘍排液用カテーテル、薬物注入用カテーテル、非経口的栄養補給用カテーテル、静脈用カテーテル(例えば、抗血栓薬を用いた処理)、脳卒中治療用カテーテル、血圧及びステント移植片カテーテル;吻合装置及び吻合用クロージャ;動脈瘤除外装置;グルコースセンサを含むバイオセンサ;心臓用センサ;受胎調節装置;前胸部用移植片;感染制御装置;膜;組織骨格(scaffold);組織関連物質;脳脊髄液(CSF)シャントを含むシャント、緑内障排出シャント;歯科用装置及び歯科用移植片;耳用装置、例えば、耳用排液チューブ、中耳腔換気用ベントチューブ;眼用装置;排液チューブカフスを含む、装置のカフス及びカフス部分、移植された薬物注入用チューブカフス、カテーテルカフス、縫製カフス;脊椎及び神経学用装置;神経再生導管;神経学用カテーテル;神経用パッチ;整形外科用装置、例えば、整形外科の関節用移植片、骨修復/増大装置、軟骨修復装置;泌尿器用装置及び尿道用装置、例えば、泌尿器用移植片、膀胱用装置、腎臓部用装置及び血液透析装置、人工肛門袋取付け装置;胆汁排液製品が含まれる。
【0047】
いくつかの態様では、上記医療用製品を、上記ポリマーコーティングをその上に生成させる布帛又は繊維表面に連結させる。例示的な布帛及び繊維を、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリアミドから生成させることができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、布帛内で一般的に用いられているポリマーである。布帛の構成において、繊維、例えば、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の調製時に、これらのポリマーのブレンドをまた利用することができる。一般的に用いられる布帛には、例えば、ナイロン、ベロア及びDACRON(商標)が含まれる。
【0048】
上記コーティングを、in vivoで上記コーティングされた製品の表面に、細胞の接着を促進させるための方法において用いることができる。上記ポリマーコーティングが、細胞を長期間、接着させるので、本発明のコーティングは、長期間の埋め込み型装置、例えば、1ヶ月以上の期間、身体内に存在する装置に、特に好適である。ある場合には、内皮細胞を上記装置表面に接着するため、そして細胞の内皮層の安定な構造のために、上記コーティングを用いることができる。
【0049】
いくつかの態様では、本発明のコーティングは、複数のペンダント型アミン基と、1種又は2種以上のペンダント型潜在性反応性基とを有する非生分解性ポリマーを含む。「非生分解性」は、一般的に、非酵素的に、加水分解的に又は酵素的に分解することができないポリマーを指す。例えば、上記非生分解性ポリマーは、プロテアーゼにより生じうる分解に対して抵抗性を有する。しかし、上記コーティングが非生分解性アミン提供ポリマーを含む一方で、上記コーティングは非生分解性物質に限定されず、従って、生分解性物質、例えば、天然又は合成の生分解性ポリマーをも含むことができることに留意すべきである。
【0050】
上記コーティングは潜在性反応性基を含み、そこでは、少なくとも一部の基が、コーティング工程の際に活性化し、上記ポリマーを、上記装置の表面に結合させる。従って、生成したコーティングにおいて、活性化し、そしてターゲット部分との結合をうけた基をまた、「反応した基(reacted group)」と称することができる。
【0051】
上記潜在性の反応した基を介して上記表面に結合することにより、固定されたポリマーが、上記製品の表面に、正に帯電したアミン基を供給することができる。この結合配置により、細胞接着において非常に耐久性が高く、且つ有効な表面の形成が可能となると考えられる。この表面は、上記コーティングされた製品上の細胞の維持及び分化を含む方法において、非常に有効であることが示された。
【0052】
上記非生分解性ポリマー上の複数のペンダント型アミン基は、細胞培養のために好適なpH条件において、上記コーティングに正電荷を供給することができる。例えば、上記非生分解性ポリマーは、pH約6.0〜pH約8.0の範囲の条件において正電荷を供給する。
上記非生分解性ポリマーは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又は上記ポリマーに由来するこれらのアミン基のペンダントの組み合わせを有することができる。
【0053】
本発明の一態様では、例示的なアミン含有基は、次の式:
R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化3】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する。
上記ポリマーに由来するペンダントと同様に、上記アミン含有基を、次の式:
P−[R1R2NR3R4]
(式中、Pは、上記ポリマー主鎖の一部である)
により表すことができる。
【0054】
いくつかのさらなる特有の態様において、R1は、下記:
【化4】
であり;
R2は、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はCH3である。
【0055】
例示的なアミン含有基には、重合性モノマー、例えば、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、3−アミノエチルメタクリルアミド(AEMA)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等に見出されるものが含まれる。従って、いくつかの態様では、ペンダント型アミン基含有ポリマー及び潜在性反応性基を含むポリマーは、上記基−R1R2NR3R4を有するモノマーを、潜在性反応性基を有するコモノマーと共重合して生成させることができる。所望により、他の非アミン又は非潜在性反応性基含有モノマーが、上記ポリマーに含まれうる。
【0056】
態様の一つでは、約10%以上のモル濃度量(molar amount)におけるアミン含有モノマーを用いて上記ポリマーを生成させることができる。いくつかの態様では、上記アミン含有モノマーは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の量で存在する。別の態様では、上記潜在性反応性基を含むモノマーが、最大約10%の量、又は約5%の量で存在する。いくつかの態様では、上記ポリマーは、約90%〜99.95%の範囲の量におけるアミン含有モノマーと、約10%〜0.05%の範囲の量における上記潜在性反応性基を含むモノマーの量とを含む。コポリマーの例示的な調製物は、約98.4%のアミン含有モノマー、例えば、APMA、AEMA又はDMAPMAと、約1.6%の上記潜在性反応性基を含むモノマーとを含む。
【0057】
アミン基の量及び潜在性反応性基の量の規定されるコントロールは、アミン含有モノマーを、潜在性反応性基含有モノマー(及び所望により、非アミン又は非光反応性基含有モノマー)と共重合することにより行われうる。他の例示的なアミン含有ポリマーを、例えば、アミン含有モノマー(例えば、N−(2−アミノ−2−メチルプロピル)メタクリルアミド、p−アミノスチレン、アリルアミン、又はそれらの組み合わせ)を、ペンダント型アミン基及び潜在性反応性基を有するポリマーを供給するためのペンダント型潜在性反応性基を有するモノマーと共重合させて生成することができる。
【0058】
これらのアミン含有モノマーをまた、他の非第一級アミン含有モノマー、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピロリジノン又はそれらの誘導体と共重合して、所望の特性、例えば、所望のアミン基の密度及び光反応性基を有するポリマーを供給することができる。アミン基を有する他の好適なポリマーには、2−アミノメチルメタクリレート、3−(アミノプロピル)−メタクリルアミド及びジアリルアミン等のモノマーから生成させたポリマーが含まれる。感光性基(photogroup)及びペンダント型アミン基を含むデンドリマーをまた、用いることができる。
【0059】
いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び疎水性の特性を有するポリマーを調製することができる。これは、上記ポリマーの合成のための1つ又は2つ以上のスキームにより得ることができる。例えば、ポリマーを、所望の量の疎水性モノマー、例えば、(アルキル)アクリレートモノマーと共に生成することができるか、又は上記アミン提供モノマーは、より長いアルキル鎖長を含むことができる。例えば、任意の1種又は2種以上の基R2、R3及び/又はR4は、3個又は4個以上の炭素原子のアルキル基を含むことができる。
【0060】
上記非生分解性ポリマーを調製するための別の方法には、予備生成したポリマーを、潜在性反応性基を含む化合物を用いて誘導体化する段階が含まれる。例えば、ペンダント型アミン基を有するホモポリマー又はヘテロポリマーは、上記ペンダント型アミン基の一部を、光反応性基及びアミン基との反応性を有する基(例えば、4−ベンゾイルベンゾイルクロリド)を有する化合物と反応させることにより、当該光反応性基を用いて容易に誘導体化することができる。
【0061】
いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び少なくとも1種の潜在性反応性基を有するポリマーを、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン及びポリアミドアミンから選択する。特定の態様の一つでは、上記ポリマー物質は、1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリエチレンイミンを含む。
【0062】
広義の潜在性反応性基は、特定の適用された外部刺激に応答し、ターゲットとの得られた共有結合を有する活性種の生成をうける基である。潜在性反応性基は、貯蔵の条件下ではそれらの共有結合を変化させずに保持するが、活性化の際に他の分子と共有結合を生成する、分子内の原子の基である。上記潜在性反応性基は、外部の電磁気又は運動(熱)エネルギーを吸収した際に、活性種、例えば、フリーラジカル、ニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を発生させる。
【0063】
潜在性反応性基を、電磁スペクトルの種々の部分に応答するように選択することができ、そしてスペクトルの紫外線、可視光又は赤外線部分に応答する潜在性反応性基が好ましい。本明細書に記載されるものを含む潜在性反応性基は、当業界で周知である。例えば、米国特許第5,002,582号明細書(Guireらの「Preparation of Polymeric Surfaces Via Covalently Attaching Polymers」)を参照せよ。本明細書に記載されるように、本発明は、本発明のコーティングを生成させるために好適な潜在性反応性基を使用することを企図する。
【0064】
光反応性基は、電磁気エネルギーを吸収すると、活性種、例えば、フリーラジカル、そして特にニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を生じさせることができる。光反応性基を、電磁スペクトルの種々の部分に応答するように選択することができ、そしてスペクトルの紫外線、可視光又は赤外線部分に応答する潜在性反応性基が好ましい。
【0065】
光反応性のアリールケトン、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環(例えば、アントロンの複素環式類似体、例えば、10位に窒素、酸素又は硫黄を有するもの)、又はそれらの置換(例えば、環置換された)誘導体が好ましい。好ましいアリールケトンの例には、アントロンの複素環式誘導体、例えば、アクリドン、キサントン及びチオキサントン、並びにそれらの環置換された誘導体が含まれる。いくつかの好ましい光反応性基は、約360nm超の励起エネルギーを有する、チオキサントン及びその誘導体である。
【0066】
上記ケトンの官能基が好ましい。というのは、それらは、本明細書に記載される活性化/不活性化/再活性化サイクルを容易に受けることができるからである。ベンゾフェノンは、特に好ましい潜在性反応性部分である。というのは、当該ベンゾフェノンは、三重項状態への項間交差をうける励起一重項状態の初期構造を有する光化学系励起が可能だからである。上記励起三重項状態は、(例えば、支持体表面から)水素原子を引き抜くことにより、炭素−水素結合に挿入し、そのようにしてラジカル対を作り出すことができる。
【0067】
次にラジカル対が崩壊し、新しい炭素−炭素結合が生成する。結合に、反応性結合(例えば、炭素−水素)が利用できないと、ベンゾフェノン基の紫外線により誘発された励起は可逆性であって、そしてエネルギー源を取り除くと、当該分子は基底状態のエネルギー準位に戻る。光活性化可能なアリールケトン、例えば、ベンゾフェノン及びアセトフェノンは、特に重要である。というのは、これらの基が、水中で複数の再活性化を受け、よって高いコーティング効率を付与するからである。
【0068】
アジドが、別の種類の光反応性基を構成し、そしてアリールアジド(C6R5N3)、例えば、フェニルアジド及び4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド;アシルアジド(−CO−N3)、例えば、ベンゾイルアジド及びp−メチルベンゾイルアジド;アジドホルメート(−O−CO−N3)、例えば、エチルアジドホルメート及びフェニルアジドホルメート;スルホニルアジド(−SO2−N3)、例えば、ベンゼンスルホニルアジド;及びホスホリルアジド[(RO)2PON3]、例えば、ジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドを含む。
【0069】
ジアゾ化合物は、別の種類の光反応性基を構成し、そしてジアゾアルカン(−CHN2)、例えば、ジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタン;ジアゾケトン(−CO−CHN2)、例えば、ジアゾアセトフェノン及び1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノン;ジアゾアセテート(−O−CO−CHN2)、例えば、t−ブチルジアゾアセテート及びフェニルジアゾアセテート;及びβ−ケト−α−ジアゾアセタトアセテート(−CO−CN2CO−O−)、例えば、t−ブチル−α−ジアゾアセトアセテートを含む。
【0070】
他の光反応性基には、ジアジリン(−CHN2)、例えば、3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリン;及びケテン(CH=C=O)、例えば、ケテン及びジフェニルケテンが含まれる。
【0071】
パーオキシ化合物は、別の種類の潜在性反応性基として企図され、そしてジアルキルパーオキシド、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド及びジシクロヘキシルパーオキシド及びジアシルパーオキシド、例えば、ジベンゾイルパーオキシド及びジアセチルパーオキシド及びパーオキシエステル、例えば、エチルパーオキシベンゾエートを含む。
【0072】
任意の好適な方法を用いて、本発明のコーティングを、上記表面に生成させる。上述のように、ペンダント型アミン基及びペンダント型潜在性反応性基を有するポリマーを、製品の表面に配置させることができ、そして上記潜在性反応性基を活性化し、それにより上記ポリマーを上記装置の表面に結合させるように上記表面を処理することができる。
【0073】
別の方法では、グラフト重合法により、上記装置の表面に、上記ポリマーを生成させる。例えば、潜在性反応性基及び重合性基を含むモノマーを、上記装置の表面に配置させ、そして結合させることができる。次いで、アミン基含有モノマーの組成物を、上記表面に配置することができ、そして重合反応を開始して、上記製品の表面からポリマー鎖を形成させ、そして当該製品の表面と結合させることができる。
【0074】
さらに別の方法では、2個又は3個以上の潜在性反応性基を有する架橋剤を用いて上記コーティングを生成させることができ、上記架橋剤は、上記ポリマーを上記装置の表面に結合させるために用いられる。上記架橋剤は、本明細書に記載されるような、2個又は3個以上の潜在性反応性基を有することができる。上記ポリマーコーティングの生成において、上記架橋剤を上記装置の表面に配置させ、続いてペンダント型アミン基を有するポリマーを配置させることができ、若しくは上記架橋剤を上記ポリマーと組み合わせて配置することができ、又はその両方であることができる。
【0075】
光反応性基が、上記架橋剤上に存在する場合には、当該光反応性基を、可逆性の光分解ホモリシスを受けるように適合させ、それによりポリマー物質に接着させる際に消費されなかった光反応性基を、不活性又は「潜在性」の状態に戻すことが好ましい。続いて、共有結合形成において、引き抜くことができる水素を有するポリマーに結合させるために、これらの光反応性基を活性化することができる。従って、上記光反応性基の励起は可逆性であり、そして当該基は、上記エネルギー源を取り除くと、基底状態のエネルギー準位に戻ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、好ましい架橋剤は、複数の活性化を受け、よって、高いコーティング効率を付与することができる基である。いくつかの実施形態では、上記光反応性部分は、上記ポリマー物質から独立しており、そして例えば、架橋剤であることができる。例示的な架橋剤は、本件出願人の米国特許第5,414,075号明細書(Swanら)、及び米国特許出願公開第2003/0165613号明細書(Chappaら)に記載されている。また、米国特許第5,714,360号明細書(Swanら)及び同5,637,460号明細書(Swanら)を参照せよ。
【0077】
ペンダント型アミン基を有する非生分解性ポリマーを、単体で、又は他の所望による成分と共に、基剤に結合させることができる。最も簡単な状態では、上記コーティング組成物は、例えば、(i)複数のペンダント型アミン基と、1種若しくは2種以上の潜在性反応性基とを有する非生分解性ポリマー及び/又は(ii)複数のペンダント型アミン基と、2個若しくは3個若しくは4個以上の潜在性反応性基を有する架橋剤とを有する非生分解性ポリマーから成る。上記コーティング組成物に他の成分を添加して、上記コーティングの態様を変化させるか、又は改良することができる。上記成分は、ポリマー又は非ポリマー成分であることができる。
【0078】
他の合成又は天然の、生分解性又は非生分解性ポリマーを上記組成物に添加して、コーティングを生成させることができる。「合成ポリマー」は、合成的に調製され、そして非天然モノマー単位を含むポリマーを指す。例えば、合成ポリマーは、非天然モノマー単位、例えば、アクリレート、アクリルアミド等を含むことができる。合成ポリマーは、従来の重合反応、例えば、付加重合、縮合重合又はラジカル重合により生成するのが典型的である。
【0079】
合成ポリマーはまた、非天然モノマー単位(例えば、合成のペプチド、ヌクレオチド及び糖誘導体)と組み合わせた天然モノマー単位、例えば、天然のペプチド、ヌクレオチド、及び糖モノマー単位を有するものを含むことができる。このタイプの合成ポリマーを、標準的な合成技法、例えば、固相合成又は組換え(可能な場合)により生成させることができる。
【0080】
「天然ポリマー」は、天然、組換により又は合成のいずれかにより調製され、そして上記ポリマー主鎖において天然のモノマー単位から成るポリマーを指す。ある場合には、上記天然ポリマーを、変性、加工、誘導又は処理して、上記天然ポリマーの化学的及び/又は物理的性質を変化させることができる。これらの例では、用語「天然ポリマー」は、上記天然ポリマーに対する変化を反映するように修正されうる(例えば、「誘導した天然ポリマー」又は「脱グルコシル化した天然ポリマー」)。
【0081】
生分解性物質、例えば、生分解性ポリマーをまた、上記コーティングに存在させることができる。上記生分解性物質を、上記非生分解性アミン提供ポリマーと同一のコーティング層に、所望により存在させることができ、別のコーティング層(上記コーティングに含まれる場合)に存在させることができ、又はその両方に存在させることができる。例えば、生分解性ポリマーを含むコーティング層を、上記非生分解性アミン提供ポリマーを含むコーティング層と、製品表面との間で生成させることができるか、又は上記非生分解性アミン提供ポリマーを含むコーティング層の頂部に生成させることができる。培養の際、上記生分解性ポリマーが分解可能である一方で、上記非生分解性ポリマーは上記コーティングに存在したままであり、そして長期間の培養の際に、付着面を供給する。
【0082】
いくつかの態様では、細胞接着用のコーティングを生成させるために従来用いられているポリマーを、上記コーティング組成物に含ませることができる。例えば、ポリペプチド系ポリマー、例えば、ポリリジン、コラーゲン、フィブロネクチン、インテグリン及びラミニンを、上記コーティングに含ませることができる。これらのポリペプチドのペプチド部分をまた、上記コーティング組成物に含ませることができる。マトリックスたんぱく質の例示的な結合ドメイン配列を、表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
上記コーティング組成物中に存在する試薬にもよるが、これらのポリペプチド系ポリマーは、誘導体化していない状態又は誘導化した状態であることができる。例えば、上記ポリペプチド系ポリマーを、潜在性反応性基を用いて誘導し、次いで、上記非生分解性ポリマーに由来する上記潜在性反応性基ペンダントと共に活性化して上記コーティングを生成することができる。例示的な組み合わせには、1種又は2種以上の感光性ポリリジン(photo−polylysine)、感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニン、又はポリペプチドの光誘導体化部分(photo−derivatized portions)(本明細書に記載されるものを含む)を用いた、感光性ポリ(アミノプロピルメタクリルアミド)又は感光性ポリ(エチレンイミン)が含まれうる。
【0085】
光誘導体化ポリペプチド(photoderivatized polypeptide)、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンを、米国特許第5,744,515号明細書(Clapper,Method and Implantable Article for Promoting Endothelialization)に記載されるように調製することができる。この特許に記載されるように、ヘテロ二官能性薬剤を、光誘導体化するためにたんぱく質を用いることができる。当該薬剤には、一方の端のベンゾフェノン光活性化可能基(ベンゾイル安息香酸、BBA)、中間のスペーサー(ε−アミノカプロン酸、EAC)、及び他方の端のアミン反応性熱化学結合基(N−オキシスクシンイミド、NOS)が含まれる。BBA−EACを、4−ベンゾイルベンゾイルクロリド及び6−アミノカプロン酸から合成する。
【0086】
次いで、BBA−EACのNOSエステルが、カルボジイミド活性によるBBA−EACのカルボキシ基を、N−ヒドロキシスクシミド(N−hydroxysuccimide)とエステル化させることにより合成され、BBA−EAC−NOSが生じる。たんぱく質、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等を、商業的な供給源から購入することができる。1モルのたんぱく質当たり、10〜15モルのBBA−EAC−NOS架橋剤の比で、BBA−EAC−NOS架橋剤を添加することにより、上記たんぱく質を光誘導体化する。
【0087】
いくつかの態様では、上記コーティング組成物に、他の所望による成分を添加する場合には、上記非生分解性ポリマーが、当該組成物中で主成分であることが一般的に望ましい。上記コーティングがいくつかの生分解性成分を含む場合には、これらの成分を、一定の期間にわたって分解することができるが、上記非生分解性ポリマーは、上記コーティングの主成分として残る。
【0088】
上記コーティング組成物の試薬、例えば、上記ポリマー物質を、好適な液体、例えば、水性又はアルコール系液体の中で調製することができる。例えば、上記ポリマー物質を、約0.1mg/mL〜約50mg/mLの範囲の濃度で溶解することができる。しかし、さらに典型的に用いられる濃度は、約1mg/mL〜約10mg/mLの範囲にある。
【0089】
上記コーティングを、浸漬コーティング、インソリューション(in−solution)コーティング及びスプレーコーティングを含む任意の好適な方法により生成することができる。
上記コーティングが光反応性基を含む場合には、照射段階を、当該光反応性基の活性化を促進する量の化学線を上記光反応性基に当て、そしてターゲット部分(例えば、上記細胞培養製品のプラスチック表面)と結合させることにより実施することができる。
【0090】
化学線は、上記光反応性基の活性化を促進する任意の好適な光源により供給されうる。好ましい光源(例えば、Dymax Corp.から入手できるもの)は、190nm〜360nmの範囲のUVを照射する。好適な放射線量は、約10nmのバンド幅を有し、335nmバンドパスフィルターを取り付けた線量計を用いて測定され、約0.1mW/cm2〜約20mW/cm2の範囲にある。
【0091】
いくつかの態様では、上記光反応性基を活性化する段階に関連して、フィルターを用いることが望ましい場合がある。フィルターの使用は、当該フィルターが、活性化工程の際に上記コーティングに供給される一又は複数の特定の波長の放射線の量を選択的に最小化することができる観点から有益でありうる。これは、上記コーティングの1種又は2種以上の成分が、一又は複数の特定の波長の放射線に対する感度が高く、そしてそれらが曝露の際に分解又は変質する可能性がある場合に有益であることができる。
【0092】
典型的には、フィルターを透過させる光の波長により、フィルターを特定することができる。本発明に関連して用いることができるフィルターの2種の実例は、カットオフフィルター及びバンドパスフィルターである。一般的に、カットオフフィルターは、光線透過率が最高透過率の約25%であるカットオフ透過率により分類されている。バンドパスフィルターの場合、波長の範囲は、当該フィルターに関して特定されており、そして中心波長は、上記フィルターを通過できる波長の中点値である。
【0093】
上記コーティングされた製品の調製に続いて、上記基剤の表面に共有結合していない可能性がある過剰の物質を取り除くため、洗浄段階を実施することができる。上記コーティングされた製品をまた、さらなるUV照射等により上記製品を殺菌するために処理することができる。
【0094】
本発明のいくつかの優位性は、多種多様の細胞種に付着性コーティングを供給するために特に有用であるコーティングを生成することに関連する。上記コーティングの安定性のために、上記コーティング方法を実施してコーティングされた細胞培養製品を供給することができ、次いで、上記コーティングされた製品を、使用者に提供するか、又は使用前の一定の期間貯蔵することができる。他のケースでは、上記コーティング試薬(少なくとも上記非生分解性ポリマーを含む)を、キット内で、使用者に供給し、次いで、当該使用者が、上記コーティング方法を、1種又は2種以上の所望の製品に実施することができる。従って、本発明はまた、非生分解性ポリマー含有コーティングを調製するためのキットを提供することができる。上記キットには、上記コーティングを生成するための指示書が含まれることができ、そして所望により、当該キットの試薬を用いてコーティングされた製品を用いて、細胞を培養するための方法が含まれうる。
【0095】
概して、本発明は、これらのコーティングを用いた細胞を培養するためのコーティング及び方法を提供し、そこでは、当該コーティングは、細胞接着のための優れた基剤を提供し、そして上記コーティングは、上記細胞が相当な期間(例えば、14日超、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超)、上記コーティングと接触して保持することができる方法において用いられうる。いくつかの態様では、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲の期間、培養物中で保持することができる。例えば、上記細胞を、コーティング面に配置することができ、そこでは、当該細胞は、上記コーティングに付着し、そして適切な培地の存在下で生存が保たれる。ある場合には、上記細胞は、増殖により増えることができるが、一般的に、上記細胞の表現型は変化しない。
【0096】
本発明のコーティングに関連して、上記細胞は、細胞を維持するか、又は所望の細胞種の形成を促進するために好適である液体培地の中で培養されるのが典型的である。種々のベース液体培地、血清、アミノ酸、微量元素、ホルモン、抗生物質、塩、緩衝剤及び増殖因子を補うことができるRPMI等を用いることができる。細胞の機能(例えば、増殖及び分化)の態様に作用しうる因子をまた、上記液体培地に添加することができる。これらの因子には、ニューロトロフィン、サイトカイン(例えば、インターロイキン)、インスリン様増殖因子、形質転換増殖因子、上皮細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性増殖因子、チロシンキナーゼ受容体配位子、血小板由来増殖因子及び血管内皮増殖因子及びセマフォリンが含まれうる。
【0097】
例示的なニューロトロフィンには、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン及び脳誘導神経向性因子が含まれる;例示的な上皮細胞増殖因子には、ニューレグリン、形質転換増殖因子α及びネトリンが含まれる;例示的なサイトカインには、インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15及びG−CSF、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルディオトロフィン−1(cardiotrophin−1)及びオンコスタチン−Mが含まれる;例示的な形質転換増殖因子には、グリア細胞株由来神経栄養因子(glial−derived neurotrophic factor,GDNF)、アルテミン、ニュールツリン(neurturin)及びパーセフィンが含まれる。
【0098】
本発明のいくつかの態様では、上記方法は、適切な培地の存在下で、本明細書に記載されるように、コーティングされた基剤上で幹細胞を培養することを含む。幹細胞は、多分化能を有し且つ成形的である(それらが種々の細胞種に分化することを誘導する)。幹細胞には、胚幹細胞、例えば、胚盤胞から得られるもの、及び成体の身体中の種々の組織から得ることができる成体幹細胞、例えば、造血幹細胞源を供給する骨髄が含まれる。
【0099】
胚幹細胞は、in vitroで本質的に無限の増殖能を有し、従って、適用、例えば、組織再生を含む適用において、大きく増やすことができる。本発明のコーティングは、これらの細胞を培養するための理想の基剤を提供する。というのは、他の基剤よりも相当長い期間、コーティングされた基剤上で、上記細胞を維持し、且つ伸長させることができるからである。従って、上記コーティングは、所望の用途、例えば、細胞移植又は再生医療のために、多くの幹細胞を得ることを顕著に促進することができる。
【0100】
本発明の方法に従って培養された細胞をまた、ドラッグデリバリー、遺伝子同定のため、そして抗体生産のために用いることができる。
本発明のコーティングはまた、クローン又は少数の細胞をコーティングされた製品容器に接種し、そして培養において、集密状態(confluent state)に到達する前の上記細胞を収穫、分割又は希釈する前に、より長い期間を可能とする。上記細胞を、本明細書に記載される任意の2次元又は3次元の製品上で増やすことができる。
【0101】
ある場合には、上記細胞を上記コーティング面上に配置させる前に、当該細胞を細胞のフィーダー層に保持することができる。上記フィーダー層上で一定の期間、培養することに続いて、本明細書に記載される本発明のコーティングを有する細胞培養製品に、上記細胞を移動させることができる。本発明に従って、上記コーティングされた基剤上で、新鮮なコーティング面を供給する必要なく、最大約30日の期間、上記細胞を培養することができることが見出された。
【0102】
本発明の他の態様では、本発明は、神経前駆細胞及び幹細胞の分化のための方法に関する。本発明に従うと、部分的又は完全に成熟した神経細胞表現型の形態学又は生化学的変化の特徴を誘発する1種又は2種以上の因子(例えば、神経栄養増殖因子)及び本発明のコーティングの存在下で、神経前駆細胞を培養することができる。
【0103】
さらに具体的には、いくつかの態様では、乏突起神経膠芽細胞、星状細胞及び神経細胞に分化させるために誘導することができる多分化能の神経上皮幹細胞及び系統限定中間前駆細胞を培養するために、上記コーティングを用いることができる。上記前駆細胞は、種々の発育段階においてCNS中に存在する。
本発明の一態様では、上記方法を、神経突起の伸張を促進するために用いることができる。
【0104】
プラスチックに弱く付着するPC12細胞(褐色細胞腫細胞)が、本明細書に記載されるコーティングされた基剤に良好に付着することを実証することができた。一般的に、PC12細胞は増殖が遅く、そしてNGF及びcAMPの共働作用を用いて、分化させることができる。一度分化したPC12細胞を、約14日間維持することができる。デキサメタゾンは、非神経系リネージの分化を誘導する。本明細書に記載される結果はまた、上記非生分解性ポリマーアミン含有コーティング及び神経増殖因子(NGF)の存在下の、神経性前駆物質PC12細胞が、神経突起伸張及び交感神経系神経細胞表現型の生化学的標識の発現を示すことを教示している。
【実施例】
【0105】
例1
感光性ポリマー試薬
I.感光性ポリ(APMA)
感光性ポリ(アミノプロピルメタクリルアミド)(感光性ポリ(APMA)/APO2)の調製を、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド(APMA−HCl)及びN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA−APMA)の共重合により実施した。これらの調製は、同一出願人による米国特許第5,858,653号明細書の、それぞれ、例2及び例3に記載されている。
【0106】
2Lのフラスコに、2.378gのBBA−APMA(6.7877ミリモル)、0.849の2,2’−アゾビス(2−メチル−プロピオニトリル)(AIBN)(5.1748ミリモル)及び0.849gのN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(6.77ミリモル)を添加し、次いで、当該成分を溶解させるために786gのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して共重合を行った。次いで、当該内容物を撹拌し、そして少なくとも5分の間、ヘリウムスパージャを用いて酸素を除去した。別個のフラスコにおいて、窒素スパージャを用いて、306gのDI水の中に、72.4gのAPMA−HCl(405.215ミリモル)を溶解させた。溶解したAPMA−HClを、BBA−APMAを含む混合物に移動し、続いて少なくとも10分間、ヘリウムスパージャを行った。続いて、密封した容器を、55℃で一晩中加熱して重合を完了させた。
【0107】
次いで、180mLの量の上記ポリマー溶液を、180mLのDI水で希釈し、そして毎分1.25〜0.35ガロンの一定流量を用いて、55ガロンのタンクの中で、少なくとも96時間の間、12,000〜14,000の分子量カットオフチューブを用いて、脱イオン水で透析した。
10μg/mL〜20mg/mLの範囲にわたる上記感光性ポリ(APMA)ポリマーを有する種々のコーティング溶液を、水中で調製した。
【0108】
II−IV.感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニン
感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニンを、同一出願人による米国特許第5,744,515号明細書の例1に記載されるように調製した。
25μg/mL〜300μg/mLの範囲にわたる種々の感光性ラミニンコーティング溶液を、水中で調製した。
感光性フィブロネクチンコーティング溶液を、水中において、25μg/mLに調製した。
感光性コラーゲンコーティング溶液を、0.012NのHCl中において、25μg/mLに調製した。
【0109】
V.感光性PEI
最初に、減圧下でポリエチレンイミン(PEI;24.2wt.% 固形分;2000kg/モル Mw;BASF Corp.)を乾燥させ、次いで、19mLの90:10(v/v)クロロホルム:メタノール溶液に1.09gのPEIを溶解して、感光性PEIを調製した。次いで、当該PEI溶液を、氷浴中で0℃まで冷却した。撹拌すべき62mgのBBA−Cl(4−ベンゾイルベンゾイルクロリド;その調製は、米国特許第5,858,653号明細書に記載されている)を、2.8mLのクロロホルムに添加した。BBA−Cl溶液を冷却し、撹拌しているPEI溶液に添加した。
【0110】
上記反応溶液を、室温まで加温しながら一晩中撹拌した(上記反応のTLC分析により、2.5時間後に未反応のBBA−Clは存在しないことが示された)。翌日、上記反応溶液を大きなフラスコに移し、そして77.5mLの脱イオン水とともに、1当量の濃塩酸を添加した。水性PEI溶液の外観が透明になるまで、有機溶媒を、40℃、減圧下で取り除いた。次いで、水性PEI溶液を、コーティング溶液として用いるための5mg/mLの最終濃度に希釈した。
【0111】
V.感光性RGD
感光性RGDを、同一出願人による米国特許第6,121,027号明細書の例1に記載されるように調製した。感光性RGDのコーティング溶液を、水中において、25μg/mLに調製した。
【0112】
例2
基剤コーティング
上記例1で調製された感光性ポリマー試薬を、平面(複数のウェルのプレート)及び3次元の基剤(高分子量ナノ繊維)上にコーティングした。
【0113】
平面をコーティングするため、1.0mLの量の、例1に記載されるコーティング溶液を、12個のウェルのプレート(ポリスチレン;Corning)のウェルに添加した。基剤コーティングにおいて、上記コーティング溶液の深さ(上記溶液の表面から、基剤、ポリスチレン又はナノ繊維のどちらかの表面までの距離)は、概して5mm以下、そして典型的には、約1〜2mmの範囲にある。Dymax(商標)製ランプを使用して、10nmのバンド幅を有する335nmのバンドパスフィルターを用いて評価されるような200〜300mJのエネルギーを供給した(平均して、上記ウェルから20cmの距離に保たれているランプを用いて、約3〜4分間、上記ウェルを照射した)。次いで、上記ウェルを、pH7.2の緩衝食塩水を用いて洗浄し、結合していない試薬を取り除いた。次いで、上記ウェルを再度UV照射し、上述と同一の照射条件を用いて、上記ウェルを殺菌した。
【0114】
コーティングされていない12個のウェルのプレートを、対照として用いた。3次元の表面をコーティングするため、0.5mLの量の、例1に記載されるコーティング溶液を、ディスク状の(disc)ナノ繊維基剤(Synthetic−ECM(商標)、Donaldson Co.,MNから市販されている)に添加した。約20cmの距離におけるDymax(商標)製ランプを用いて、1分間、上記基剤を照射した。次いで、上記ディスクを、水で4回洗浄した。次いで、上記ナノ繊維基剤を、再度UV照射し、当該ナノ繊維基剤を殺菌した。
コーティングされていないナノ繊維基剤を、対照として使用した。
【0115】
例3
感光性ポリマーがコーティングされた基剤上のPC12細胞の接着アッセイ
付着性の乏しい細胞(PC12細胞)を、種々の感光性ポリマー基剤上に平面培養する(plate)効果を決定するために、接着アッセイを実施した。ATCC(登録#CRL 1721)から購入したラットPC12(褐色細胞腫)細胞を、10%の馬血清、5%の牛血清、2mMのGlutamax(Invitrogen)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、及び10mMのHEPES(Invitrogen)を含むRPMI培地(Invitrogen)中の、コラーゲンがコーティングされたポリスチレンフラスコ(15μg/mL、Sigma)内で前培養した。細胞を、5%CO2/95%空気加湿チャンバー内で、37℃でインキュベートした。上記培地を、1日おきに交換した。細胞が、80%の密集度に到達したら、当該細胞をトリプシン処理し、そして継代培養した。例2に記載される方法に従ってコーティングされた12個のウェルの基剤に、上記細胞を平面培養する前に、これらの培養条件を続けた。
【0116】
継代培養#2及び継代培養#10の間のPC12細胞を、実施した全ての実験において用いた。上記細胞をトリプシン処理し、そして500,000個の細胞/mLの濃度において、RPMI培地中の、12個のウェルのプレート内に500,000個の細胞/ウェルの密度で接種した。48時間の間、5%のCO2を用いて、37℃における加湿したチャンバー内で、細胞をインキュベートした。上記細胞は、平面培養する前に、多角形の形態を有し、少なくとも99%が生存していた。
【0117】
細胞をナノ繊維上に接種するために、PC12細胞をトリプシン処理し、そして200μLのRPMI培地内に再懸濁させた。500,000個の細胞/18mmの密度の上記細胞懸濁液を、コーティングされた又はコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609192、Donaldson Co.,MNから市販されている)に注意深く添加し、そして上記細胞を、層流フードの下、室温で、10分間、上記ナノ繊維に付着させた。10分後、800μLの増殖培地を、上記ナノ繊維の周りにやさしく添加し、そして上記細胞を、37℃において、加湿した5%CO2/95%空気チャンバー内に置いた。上記培地を、1日おきに交換した。
【0118】
MTT接着アッセイ
48時間後、上記増殖培地を取り出し、そしてコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン上で増殖している上記細胞、コーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維を、Ca++−及びMg++−フリーのPBSを用いて、4回洗浄した。これらの複数回の洗浄により、上記ウェルから、ゆるく結合した又は結合していない細胞を除去した。コーティングされた基剤上で、洗浄により5%の細胞が除去された一方で、コーティングされていない基剤上では、洗浄により70%が除去された。次いで、37℃における加湿されたチャンバー内で、MTTを用いて、2時間の間、細胞をインキュベートした(増殖培地、Sigmaを用いて、1:1に希釈)。MTTを含む培地を取り出し、そして上記細胞を、PBSを用いてさらに洗浄し、フェノールレッドを取り除いた。500μLの染料可溶化剤(0.5mLの0.04NHCl/イソプロピルアルコール及び0.12mLの3%SDS/水の混合物)を添加し、そして上記ウェルを、室温で30分間(又は染料が完全に可溶化するまで)、30rpmでやさしく揺り動かした。当該試料を、96個のウェルの皿に移動し、そして分光光度計(Spectramax,Molecular Devices)内で、570nmにおいて、吸光度を読取った。
【0119】
コーティングされた及びコーティングされていない平面(12個のウェルのプレート)上の細胞接着の結果を、図1に示す。PC12細胞の最良の接着は、感光性ポリ(APMA)を用いてコーティングしたウェルで実証され、感光性ラミニン及び感光性PEI試薬が続いた。コーティングされていないウェル及び感光性フィブロネクチンによりコーティングされた基剤を、対照として用いた。PC12細胞は、フィブロネクチンに良好に付着する他の細胞種と比較して、それらの表面に低濃度のフィブロネクチン受容体を発現させる(Tomaselli及びReichardtの「J.Cell Biol.」(1987)105:2347−2358を参照せよ)。感光性RGD及び感光性コラーゲンは、感光性ポリ(AMPA)と同様の、感光性コラーゲン及び感光性ラミニンと比較して感光性ポリ(AMPA)の接着能におおよそ2倍の差を有する実施されたコーティングを供給しなかったことを、当該結果は示している。
【0120】
3次元の表面(ナノ繊維)上の細胞接着の結果を、図2に示す。平面上の結果と同様に、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維は、コーティングされていない基剤と比較して、固定が弱い細胞を、強く接着させることが示された。
【0121】
図3は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(3B)及びコーティングされていないナノ繊維(3A)上で増殖するPC12細胞の明視野顕微鏡像を示す。24時間後に、当該画像を撮影した。PC12細胞は、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、良好に広がることを実証したが、コーティングされていない表面では、上記細胞は、お互いに接着してクラスターを形成し、コーティングされていない基剤への接着は非常に弱かった。
【0122】
図4は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で24時間の間増殖させ、そしてファロイジン(1:500、分子プローブ)を用いた染色を受けたPC12細胞の蛍光顕微鏡像を示す。ファロイジンは、線維状アクチン(F−アクチン)に結合し、そして上記細胞の細胞骨格組織を可視化する。感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で培養されたPC12細胞は、それらの通常の多角形形態を保持し、上記基剤の強い結合能力が細胞形態に影響を与えないことを示していることを、上記染色結果は示している。
【0123】
ファロイジン染色の場合、PC12細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて20分固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で希釈したTRITCと共役したファロイジンを用いて、室温で1時間の間インキュベートした。0.1MのPBSを用いて細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。
【0124】
上記細胞が3次元の基剤上で培養されると、アクチンは、大きく広がるのではなく、皮質の環の中で組織化することを、当該画像は示している。アクチンのこの組織化は、組織マトリックス又は組織様マトリックスのどちらかの中で観察される(Walpita及びHayの「Nature Rev.MoL Cell.Biol.」(2002)3:137−141;米国特許出願第2005/0095695号号明細書)。
【0125】
付着性の乏しい細胞系の付着性を特に改良した感光性試薬を実証するために、付着性の強い細胞系を上記感光性ポリマーがコーティングされた基剤上で平面培養した。ヒト包皮繊維芽細胞(human foreskin fibroblast,HFF)を、PC12細胞の場合に用いられる方法に従って、感光性ポリマーがコーティングされた基剤上で平面培養し、そしてMTT接着アッセイを、培養に続いて実施した。図5は、上記感光性試薬の存在により、むき出しのポリスチレンと比較して、HFF細胞の付着性が概して改良されなかったことを示している。試験された種々のコーティングされた基剤上で、付着性の強い細胞系の接着に、利益は観察されなかった。
【0126】
例4
感光性ポリマーがコーティングされた表面のPC12細胞の増殖
PC12細胞を、例3に記載されるように培養した。BrdU取り込みを、コーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)、並びにコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン上で増殖した細胞に関して試験した。一日で、2,5−ブロモデオキシウリジン(BrdU、1μM濃度、Sigma)を、上記培養物に添加し、分裂細胞の数の測定を可能とした。免疫細胞化学を実施するために、48時間の間、BrdUを細胞に適用し、次いで、抗BrdU抗体を用いて染色した。
【0127】
PC12細胞を、S.P Memberg&A.K.Hall(「Neurobiol.」(1995)27:26−43)の手順により透過化した(permeabilize)。細胞培養物を、1時間の間、ブロッキングバッファー(PBS、0.5%のTriton−X−100(商標)、及び5%のヤギ血清)中の抗BrdU抗体(1:100、Sigma)を用いてインキュベートし、PBSですすぎ、そして追加の時間、ブロッキングバッファー中の抗マウスIgGl二次抗体(1:200、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。培養物を、PBSで3回すすぎ、そして標識付けた細胞を、倒立顕微鏡(Leica DMLA)で観察した。
【0128】
図6は、PC12細胞内のBrdU取り込みの蛍光顕微鏡像を示す。当該画像には、コーティングされていないナノ繊維と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上でBrdUがより顕著に取り込まれたことが示されている。コーティングされていない表面と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面のBrdUのより顕著な組み込みは、より多数の分裂細胞に関連し、そして上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面上の上記細胞の接着が改良されたためであると考えられる。一定の範囲に存在する細胞の総数は、DAPI染色により示されている。上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた基剤上で増殖した細胞は、感光性ポリリジンがコーティングされた基剤と比較して、60%超のBrdUの取り込みを示した。
【0129】
例5
種々のコーティングされた表面及びコーティングされていない表面上のPC12細胞の分化
感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン製の12個のウェルのプレート、感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)、PuraMatrix(BD Biosciences)、並びにMatrigel(商標)(BD、Biosciences)上で増殖するPC12細胞の分化を、NGF(神経増殖因子)の存在下で評価した。
試験された他の感光性試薬には、感光性フィブロネクチン、感光性ラミニン、感光性コラーゲン、感光性PEI及び感光性RGDが含まれていた。
【0130】
細胞をトリプシン処理し、そして当該細胞を、例3に記載されるそれらの通常の増殖培地内の30,000個の細胞/35mmウェルの密度で平面培養した。24時間後、上記増殖培地を、分化培地(1%の馬血清、0.5%の牛血清、2μMのGlutamax(Invitrogen)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、及び10mMのHEPES(Invitrogen)を含むRPMI培地(Invitrogen))で置換した。細胞を、5%のCO2/95の%空気が加湿されたチャンバー内で、37℃でインキュベートし、そして1日おきにNGF(100ng/mL、Invitrogen)を添加し、10日間分化させた。神経細胞への分化を評価するために、10日間培養した後、上記細胞を、β−IIIチューブリンに関して染色した。
【0131】
免疫染色を実施するために、上記細胞を20分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で、β−IIIチューブリン一次抗体(1:200、Sigma)を用いて1時間の間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察し、β−IIIチューブリン染色を視覚化した。
【0132】
一般的に、上記感光性ポリマーでコーティングされた平坦又は3次元の表面により、神経細胞含有突起に富む、分化した培養物が生産された。これらの表面上の平均神経突起長は、コーティングされていない表面と比較して2倍であった。他の感光性試薬(感光性ラミニン、感光性PEI及び感光性コラーゲン)がまた、感光性ポリ(APMA)よりも良好とまではいかないが、コーティングされていないポリスチレン又はナノ繊維よりも良好であることが見出された。
【0133】
よって、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面により、コーティングされていないポリスチレン、コーティングされていないナノ繊維、コラーゲン、PEI及び市販のPuramatrix及びMatrigel(商標)調製物と比較して、PC12細胞が神経細胞に良好に分化した。
図7は、コーティングされていないポリスチレンと比較して、感光性ポリ(APMA)及び感光性ラミニンがコーティングされたポリスチレン上で、PC12細胞が良好に分化することを示す。
【0134】
図8は、コーティングされていないナノ繊維と比較して、感光性ポリ(APMA)及び感光性ラミニンがコーティングされたナノ繊維上で、PC12細胞が良好に分化することを示す。
図9は、PuraMatrix(商標)及びMatrigel(商標)と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、PC12細胞が良好に分化することを示している。感光性APMAは、ナノ繊維上で、より良好な細胞分化と、より長い神経突起伸張とを定量的に促進する。
β−IIIチューブリン染色、神経突起形態及び細胞分化の評価を、表2に要約する。
【0135】
【表2】
【0136】
例6
感光性ポリマーがコーティングされた表面上のES−D3細胞の増殖
ATCC(登録番号CRL−1934)に由来するES−D3細胞を、4日間、10%のウシ胎児血清(FCS,Cambrex)及び白血病抑制因子(LIF,10ng/mL,Gibco−BRL)を有するDMEM−F12(Invitrogen)内の懸濁皿(suspension dish)(Nunc)内で、集合体として増殖させた。次いで、上記培地を、NEP基本培地(100μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、16μg/mLのプトレシン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸、1mg/mLのウシ血清アルブミン、B27及びN2添加剤を加えた20ng/mLのbFGFで補ったDMEM−F−12)と称される化学的に規定された培地に換え、そして上記細胞を、フィブロネクチン(15μg/mL、Sigma)がコーティングされたポリスチレン皿、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P610304、Donaldson Co.,MNから市販される)上に接種した。1日おきに培地を交換し、そして上記細胞を、5%のCO2/95%の空気が加湿されたチャンバー内で37℃に維持した(Mujtaba及びRaoの「Developmental Biology」(1999)214:113〜127)。
感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面を、ES−D3細胞と共に用いた。
【0137】
増殖性ES−D3細胞のためのネスチン染色
ES−D3細胞を、24時間及び48時間のところで分析した。ES−D3細胞を、次のように、ネスチン、未分化の幹細胞のマーカーの存在のために染色した(U.Lendahlらの「Cell」(1990)60:585−95)。4%のパラホルムアルデヒドを用いて、細胞を、室温で20分間固定した。0.1MのPBSを用いて、pH7.4で、それらを3回洗浄し、そして室温で2時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で1:1に希釈されたラットネスチン(ラット401、DSHB)に対する一次抗体を用いてインキュベートした。
【0138】
次いで、細胞を、0.1MのPBSを用いて5分間洗浄し、そして追加の時間、0,5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で希釈された抗マウス第二抗体(1:200,Southern Biotech)を用いてインキュベートし、その後、0.1MのPBSを用いてそれらを3回洗浄し、そして倒立顕微鏡(Leica,DMLA)の下で観察した。BrdUでネスチンを二重に標識付け、そして一次抗体の適切な組み合わせ、次いで交差反応をしない(non−cross reactive)二次抗体の中で細胞を同時にインキュベートして、二重標識実験を実施した。
【0139】
図10は、コーティングされたナノ繊維上に、ネスチン/BrdU陽性ES−D3細胞が存在することを示す。上記細胞の大部分は、試験された他の全てのリネージマーカーに関して、ネスチン陽性及び陰性(GFAP、β−IIIチューブリン、及びO4)であり、未分化の幹細胞の培養物を、感光性ポリ(APMA)でコーティングした、これらの完全なる合成面上で維持することができることを示す。
【0140】
例7
コーティング面上のES−D3細胞の分化
ネスチン陽性ES−D3細胞を、基本培地(100μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、16μg/mLのプトレシン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸、1mg/mLのウシ血清アルブミン、B27及びN2添加剤を加えた20ng/mLのbFGFで補ったDMEM−F−12)内の感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609192、Donaldson Co.,MNから市販される)上で増殖させた。
【0141】
細胞を誘導して、上記増殖培地からbFGFを取り除き、そしてレチノイン酸(1μM、Sigma)、PDGFBB(10ng/mL、Sigma)、CNTF(10ng/mL、Sigma)、10%血清(FBS、Invitrogen)のいずれかを添加して分化させた(Mujtaba及びRao,上記個所)。誘発剤を毎日添加して6日間培養した後、上記幹細胞は、神経細胞、乏突起神経膠芽細胞及び星状細胞に分化した。上記分化を、上記細胞の基剤を変えることなく達成した。
【0142】
β−IIIチューブリン染色
上記細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて20分間固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして室温で1時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内の神経細胞用のマーカー、β−IIIチューブリン(1:200、Sigma)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。
【0143】
場合によっては、次のように、DAPIを用いて染色した。上記のように調製した細胞を、DAPI溶液(100%MeOH内で1:1000に希釈、Boehringer Mannheim)で洗浄した。固定した細胞を、室温で15分間、DAPI溶液を用いてインキュベートした。
【0144】
乏突起神経膠芽細胞のためのO4染色
4%のパラホルムアルデヒドを用いて、室温で10分間、細胞を固定した。0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、細胞を3回洗浄した。室温で2時間の間、5%のBSAを含む培地内で、O4(6μg/mL、Chemicon)に対する一次抗体と共に、細胞をインキュベートした。次いで、0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、調製物を3回洗浄した。二次抗体と共に細胞をインキュベートし、そしてβ−IIIチューブリンに関して上述のようにさらに処理した。
【0145】
星状細胞用のGFAP染色
4%のパラホルムアルデヒドを用いて、室温で20分間、細胞を固定した。0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、細胞を3回洗浄した。室温で2時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBSで、GFAP(1:500、Chemicon)に対する一次抗体を用いて細胞をインキュベートした。細胞を洗浄し、そして抗マウス二次抗体と共にインキュベートし、そしてβ−IIIチューブリンに関して上述したようにさらに処理した。
【0146】
コーティングされていないナノ繊維と、ポリ−リジン(15μg/mL、Sigma)及びラミニン(15μg/mL、Gibco BRL)を用いて二重にコーティングしたポリスチレンとを、対照として用いた。
適切な細胞種への良好な分化は、コーティングされていないナノ繊維及びポリリジン/ラミニンで二重にコーティングされている組織培養プラスチックと比較して、コーティングされたナノ繊維上で得られ、そしてこの分化は、適切な誘発剤を同一の基剤に単に添加するのみで達成される。
【0147】
図11は、ES−D3細胞が、コーティングされていないナノ繊維上で増殖する神経細胞と比較して、より長い神経突起長を有する神経細胞含有突起(当該突起は、短く且つ切り株様(stubby)である)に分化することを示す。
図12は、ES−D3細胞が、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、タイプI及びタイプIIのGFAP陽性星状細胞に分化することを示す。当該細胞は、コーティングされたナノ繊維上で、より明るいことに留意する。
【0148】
例8
クローン濃度(clonal density)におけるPC12細胞の増殖
PC12細胞を、35mmウェル内に置いた300個の細胞/32mmナノ繊維ディスク(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)において平面培養し、そして1日おきにNGFを添加して、30分間分化させた(例5に記載されるように)。30日後、上記細胞を20分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして室温で1時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内のβ−IIIチューブリン(1:200、Sigma)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。単一細胞は、4日の培養後、クローンを生成し始めた。当該クローンは、迅速に増殖し、そして上記コーティング面にしっかりと接着したままであった。
【0149】
例9
感光性ポリマーコーティング上のPC12細胞の長期間培養
例8に記載されるように培養したPC12細胞を、45日間維持し、そしてβ−IIIチューブリンに関して処理した。図13は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面上で増殖する、分化したPC12細胞を示す。30日の培養の後、上記細胞はしっかりしており、そして広範囲な神経突起を示した。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平面上のPC12細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維基剤上のPC12細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(3A)及びコーティングされていないナノ繊維(3B)上で増殖するPC12細胞の明視野顕微鏡像である。
【0151】
【図4】図4は、24時間の間、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させた、ファロイジン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図5】図5は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平面上のHFF細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(A)及びコーティングされていないナノ繊維(B)上で増殖するPC12細胞のBrdU取り込み、並びにこれらの細胞(A’)及び(B’)それぞれのDAPI染色の蛍光顕微鏡像である。
【0152】
【図7】図7は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平坦なポリスチレン表面上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図8】図8は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平坦なナノ繊維表面上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図9】図9は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維対他の市販の細胞基剤上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【0153】
【図10】図10は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させた、ネスチン/BrdU染色したES−D3細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図11】図11は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維及びコーティングされていないナノ繊維上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色されたES−D3の神経突起形態を実証する蛍光顕微鏡像である。当該画像は、ES−D3細胞が、コーティングされていないナノ繊維上で増殖する神経細胞と比較して、より長い神経突起長を有する神経細胞含有突起(当該突起は、短く且つ切り株様である)に分化することを示す。
【0154】
【図12】図12は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維及びコーティングされていないナノ繊維上で増殖させた、GFAP染色したES−D3の蛍光顕微鏡像である。
【図13】図13は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させ、30日分化させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の広範囲な神経突起形態を実証する蛍光顕微鏡像である。
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、「ポリマーコーティング並びに細胞維持及び分化のための方法」と題する、2005年7月20日に出願された、シリアルナンバー第60/700,860号を有する米国仮出願の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、非生分解性アミン提供ポリマー(amine−presenting polymer)を含むコーティングと、これらのコーティングを含む表面への細胞の付着を促進するための方法とに関する。本発明はまた、細胞を分化する方法と、これらのコーティングを有する細胞を維持するための方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞接着及び増殖に好適な表面を提供するために、種々のアプローチが用いられている。多くの細胞は足場依存的であり、それらが、増殖又は分化のために、基剤へのいくつかのタイプの接着を証明しなければならないことを意味する。in vivoで、細胞は、上にある上皮又は内皮を支持する構造体である基底膜中に存在するたんぱく因子に接着することができる。上記基底膜は、基底板と称される膜と、下にあるコラーゲン原線維のネットワークとから成る。細胞接着及び増殖のための優れた基剤を提供することができるため、基底膜内に見出される成分に基づいた、細胞接着用の人工表面が作成されている。上記人工表面は、in vivo、例えば、移植可能な医療装置、及びin vitro、例えば、細胞培養製品中で用いられている。
【0004】
細胞を基層に接着させるために、荷電表面が用いられている。しかし、培養工程の際に、荷電表面の全てが、細胞の十分な接着に好適というわけではない。例えば、いくつかのマイナスに帯電した表面は、好適な基剤を供給しない。というのは、多くの細胞は、細胞が表面に接着することを媒介するために十分な量の、正に帯電したタンパク質を示さないからである。
【0005】
天然のポリペプチド系細胞接着因子、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンが、細胞の基剤への接着を強化するために用いられている。生分解性合成ポリマーカチオン、例えば、ポリリジン及びポリオルニチンが、種々の足場依存性細胞種の接着を促進するコーティングを提供するために用いられている。これらの種類のポリマー物質を用いることに伴う課題の一つは、当該物質が、培養の液体培地内に存在することとなる場合があるプロテアーゼか、又は血清中にin vivoで存在するプロテアーゼにより、長期間にわたり分解されうることである。従って、これらの物質を含む表面は、限定的な期間のみ、細胞接着のために有用である場合がある。細胞付着性に関連する特性は、上記コーティング内に存在する物質の分解により、ある程度解決することができる。
【0006】
さらに、細胞接着を促進するために用いられているいくつかのコーティングはまた、コーティング物質が上記製品の表面に適切に接着しないと、当該コーティングから失われる場合があるとの観点から問題となる場合がある。次いで、これらの物質が、液体培地又は体液中に存在し、そして当該体液と接触する細胞に影響を与える可能性がある。例えば、上記コーティングから失われたポリマー物質は、上記細胞の表面と結合し、そして細胞が上記基剤に接着することに影響を与える可能性があるか、又は培養物中の細胞−細胞相互作用に影響を与える可能性がある。いくつかのポリマー物質はまた、細胞の生存に有害な場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、細胞を培養することを含む工程において用いられる製品向けの、改良されたポリマーコーティングを提供する必要がある。上記改良されたコーティングは、一次細胞、培養することが難しい細胞系、及び幹細胞の維持及び分化を含む方法の利益となる有用な細胞培養製品を規定することができる。上記コーティングをまた、in vivoで使用するための移植可能な医療用製品の表面をコーティングするために用いることができる。従って、上記コーティングは、数多くの疾患及び病気を治療するための、組織特異再生技術の利益となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様の一つでは、本発明は、細胞を培養するための方法、そして特に、長期間(長期間培養)の培養において、細胞を保持するための方法に有用な細胞培養製品向けのコーティングを提供する。本明細書において、培養は、代謝的に活性な細胞を、本明細書に記載されるようなポリマーコーティングを有する細胞培養製品に置くことを含む方法を指す。本発明のポリマーコーティングは、それらの安定性に由来する、長期間の細胞培養のための理想の表面を供給し、細胞接着のために優れた表面を提供し、そして多種多様の細胞種を培養するために用いることができることを示している。
【0009】
コーティングと同時に、細胞を液体培地内で培養して、所望の代謝的に活性な状態を作り出す。上記コーティングを用いて、上記細胞が、休止(非増殖及び非分化状態)、細胞増殖の状態、及び細胞分化の状態にある状態を含む、1種又は2種以上の代謝的に活性な細胞状態を促進することができる。
【0010】
本発明の別の態様では、上記コーティングを、移植可能な医療装置上に適用する。いくつかの方式では、in vitroで提供されるような上記コーティングの機能と同様に、上記コーティングを医療用製品の表面に用いて、細胞接着を促進することができる。これは、組織形成、上皮形成及び血管形成の促進を含む、多くの用途に有用である。
【0011】
本発明のコーティングは、ペンダント型アミン基を有する非生分解性ポリマーを含み、上記コーティングはまた、1種又は2種以上の潜在性反応性基(latent reactive group)を含む。上記潜在性反応性基を用いて、上記ポリマーを、製品の表面、例えば、細胞培養デバイス若しくは機器の一部、移植可能な医療装置の一部に共有結合させる。上記潜在性反応性基を、ペンダント型潜在性反応性基として、上記ポリマーに供給することができる。あるいは、ペンダント型潜在性反応性基を、上記ポリマーから独立した化合物に含ませ、次いで上記ポリマーを基剤表面と結合させるために用いることができる。
【0012】
上記ペンダント型潜在性反応性基を介した結合により、上記ポリマーを上記表面に最適に形成させ、細胞付着性を促進させるコーティングが提供される。いくつかの態様では、上記ペンダント型潜在性反応性基は、光反応性基である。そこで、本発明のコーティングは、細胞接着のための方法に概して用いられ、上記細胞は、長期間、上記表面に接着し続けることができる。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、本発明のポリマーは、次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は下記:
【化1】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキルである)
のペンダント型アミン含有基を含む。
【0014】
いくつかの態様では、R1は下記:
【化2】
であり、R2は、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そしてR3及びR4は、個々に、H又はCH3である。
【0015】
例示的なアミン含有基には、重合性モノマー、例えば、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、3−アミノエチルメタクリルアミド(AEMA)及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)上に見出されるものが含まれる。いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び潜在性反応性基を含むポリマーは、上記基−R1R2NR3R4を有するモノマーを、潜在性反応性基を有するコモノマーと共重合することにより生成されうる。他の態様では、ポリマーは、式R1R2NR3R4を有するモノマーを重合させ、次いで1種又は2種以上のペンダント型アミン基を、潜在性反応性基を有する化合物と反応させて生成されうる。
【0016】
他の態様では、ペンダント型アミン基を有するポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミンから選択される。PEIは、エチレンイミンを重合して生成させることができ;所望により、重合性基及び潜在性反応性基を有するモノマーをエチレンイミンと共重合して、ペンダント型潜在性反応性基を有するPEIを生成することができる。特定の態様の一つでは、上記ポリマーには、1種又は2種以上の潜在性光反応性基を有するポリエチレンイミンが含まれる。
【0017】
潜在性反応性基は、特定の適用された外部刺激に応答し、活性種の生成をうける基を指し、ターゲットとの得られた共有結合を有する。上記潜在性反応性基は、外部の電磁気又は運動(熱)エネルギーを吸収した際に、活性種、例えば、フリーラジカル、ニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を発生させる。態様の一つでは、上記潜在性反応性基は、上記ポリマー及び細胞培養製品の表面を結合させるための活性状態に活性化することができる光反応性基である。例示的な光反応性基には、アリールケトン、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環(例えば、アントロンの複素環式類似体、例えば、10位に窒素、酸素又は硫黄を有するもの)、又はそれらの置換(例えば、環置換された)誘導体が含まれる。
【0018】
任意の好適な方法を用いて、ペンダント型アミン及び1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリマーを、製品の表面に結合させることができる。方法の一つには、事前生成したポリマーを、上記表面に配置し、次いで上記潜在性反応性基を活性化し、上記ポリマーを上記表面に結合させることが含まれる。これらのケースでは、上記潜在性反応性基は、ペンダント型又は独立したポリマーであることができる。あるいは、モノマー物質を上記表面で重合させ、上記ポリマーを当該表面に結合させるペンダント型アミン及び1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリマーを生成することができる。
【0019】
本発明のポリマーコーティングは、種々の細胞培養製品の調製に有用であることが示された。いくつかの態様では、上記細胞培養製品は、コーティング面を有する製品を指す、2次元の細胞培養製品であり、そこでは、細胞は、2次元の表面の単一面で増殖する。上記2次元の細胞培養製品には、複数のウェルの細胞培養プレート、細胞培養皿及び細胞培養瓶が含まれる。他の態様では、上記細胞培養製品は、コーティング面を有する製品を指す3次元の細胞培養製品であり、そこでは、細胞が上記製品上の一つ超の面で増殖をする。
【0020】
3次元の細胞培養製品のコーティング面は、細胞が接着することができる足場と似ている場合がある。上記製品は、ミクロ又はナノ構造を有する物質、例えば、繊維から生成させたものを含む、表面形態、合成又は天然の微孔質又はナノ多孔質物質から生成されうる。
【0021】
ペンダント型アミン基を有するポリマーは、培養工程の際に、細胞の優れた付着を促進することができる。これにより、上記コーティングに接着するためのある程度の足場依存性を示し、そして培養される細胞の種類及び当該細胞が培養される培地の種類にもよるが1種又は2種以上の代謝活性を示す細胞が可能となる。従って、上記コーティングは、非付着性であるか、付着性に乏しいか、又は適度な付着性である細胞を培養するために特に有用である。本発明のコーティングはまた、細胞増殖及び分化を可能とするコーティングを提供するために特に有用である。
【0022】
本発明は、非常に安定であり、且つ細胞培養工程に有用であるコーティングを提供する。従って、本発明のコーティングは、長期間の細胞の培養を含む手順に特に有用である。
【0023】
これらの態様では、上記アミン供給ポリマーが、培養培地の存在下で分解せず、従って、相当の期間にわたる培養において細胞の付着を促進するために用いることができるので、本発明のコーティングは特に有利であることが見出された。これは、分解性天然ポリマー、例えば、ポリペプチド及び多糖類、並びに生分解性合成ポリマーから主として構成されるコーティングとの比較である。これらの種類の生分解性コーティングは、より短期間(例えば、数週間)で分解し、そして培養において細胞の付着を促進するそれらの能力を失う場合がある。
【0024】
さらに、本発明のポリマーは上記培養製品の表面と共有結合しているので、当該表面からアミン供給ポリマーの損失が最小であるか、又は当該ポリマーの損失がない。これは、多くの点で有利である;第一に、培養期間の間、上記表面に接着するか又は接着して残る上記細胞の能力が変化しないであろう。すなわち、上記表面に接着するアミン供給ポリマーの量は、長期にわたって有意に変化しないであろう。第二に、上記培養中に、アミン提供ポリマーが損失するリスクが最小である。これはまた有利である、というのは、そうでないと、上記培養中に失われたポリマーが、上記細胞の特性を変化させる可能性があるからである。
【0025】
例えば、上記細胞は、非付着性となりうるか、又は上記細胞の表面のたんぱく質により運搬される他の特性を失う場合がある。さらに、ある場合には、上記コーティングから、上記培地中に失われたポリマーが、上記細胞に対する毒性を有する可能性がある。例えば、種々の培養系における25kDa以上の分子量を有するいくつかのポリエチレンイミンの場合、PEIを細胞外に添加した場合に、毒性が報告されている(Fischerらの「Eur.J.Cell Biol.」(1998)48,108;Fischerらの「Pharm.Res.」(1999)16,1723−1729)。従って、本発明のポリマーコーティングは、先行技術において細胞接着及び培養を促進するために従来用いられているコーティングに見出されるいくつかの欠点を克服する。
【0026】
本発明のコーティングは、非生分解性アミン提供ポリマーに基づくが、他の非生分解性物質又は分解性物質、例えば、生分解性ポリマーが、上記コーティング中に存在することができる。培養の際、例えば、生分解性ポリマーが、上記コーティング中に存在し、そしてより短期間、細胞を培養するための優位性を提供することができる一方で、上記非生分解性ポリマーは、上記コーティングに存在したままであり、そして長期間、付着面を供給することができる。
【0027】
いくつかの態様では、本発明は、細胞の長期間の培養のための方法を提供する。当該方法には、上記ポリマーを上記製品の表面に結合させる複数のアミン基及び潜在性反応性基を有する非生分解性合成ポリマーを含むコーティングを有する細胞培養製品を得る段階が含まれる。当該方法は、環境(液体培地)内で、上記表面に細胞を配置させる段階をさらに含む。配置させる段階に続いて、上記細胞が維持することができるか、又は所望の生理状態を有するように誘導されることができるように、当該細胞を、上記コーティングに付着させることができる。次いで、上記方法は、長期間、上記細胞を液体培地内で培養する段階を含む。「長期間」は、14日超の期間を指すのが一般的である。
【0028】
適応があれば、「長期間」は、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超であることができる。従って、いくつかの態様では、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲にわたる期間、培養物中に保持することができる。本発明の明確に区別できる優位性は、細胞付着を促進することができる新鮮なコーティングを有する新しい培養製品に、上記細胞を移動させる必要がないことである。しかし、長期間の培養の際には、上記液体培地を、例えば、置換又は補給により変化させて、所望の生理状態を得るために好適な環境を提供することができる。
【0029】
いくつかの態様では、上記培養工程の期間、上記方法を用いて、細胞を、代謝活性が低い状態に維持(例えば、休止細胞の維持)することができる。すなわち、いくつかの態様では、上記細胞内の代謝性変化、例えば、上記細胞の形態を変化させることができるものを促進することなく、適切な培地中で、上記コーティング面に細胞を維持することができる。この方法はまた、細胞を維持するために有用であることができ、そして細胞増殖により細胞の個体群を増やすことができる。本発明のポリマーコーティングを用いた細胞培養において維持することができる例示的な細胞種には、未分化細胞、例えば、幹細胞、又は部分的若しくは完全に分化した細胞種、例えば、肝細胞、膵島細胞、神経細胞及び星状細胞が含まれる。上記未分化細胞は、多分化能、全能又は多能性の細胞種を含むことができる。
【0030】
この点では、上記コーティングは、一定の期間にわたり、コーティングされた製品を置き換える必要がない、細胞の長期間の維持のために用いられうるコーティングされた製品を提供するという点で特に有用である。
【0031】
他の態様では、培養工程の期間、上記方法を用いて、細胞の分化を促進することができる。任意の好適な事前分化又は前駆細胞種を用いることができる。上記方法は、コーティング面を得る段階、次いで事前分化細胞を上記コーティング面に置く段階を含むことができ、そこでは、上記細胞が上記コーティングに付着する。上記方法はまた、上記細胞の代謝活性を変化させることができる成分を含む環境(液体培地)の存在下で、上記細胞を培養する段階を含み、1種又は2種以上の細胞の態様、例えば、細胞形態に変化がもたらされる。上記成分は、上記事前分化細胞の成熟を、部分的又は完全に分化した状態へと促進させる任意の種類の成分を指す分化因子でありうる。
【0032】
次いで、上記方法は、長期間にわたり、上記コーティング面と接触している上記細胞を分化させる段階を含む。適応があれば、長期間は、14日超、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超であることができる。いくつかの態様では、上記細胞の初期接種密度にもよるが、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲の期間、培養物中に保持することができる。長期間の培養の間、上記液体培地を、例えば、置換又は補給により変化させ、所望の生理状態を得るために好適な環境を提供することができる。
【0033】
本発明に従って分化させることができる例示的な細胞種には、一次細胞、神経前駆細胞、骨髄細胞、幹細胞、例えば、胚(胚盤胞由来)幹細胞等が含まれる。
【0034】
いくつかの態様では、上記方法は、神経前駆細胞の成熟を、所望の分化した神経細胞種へと促進させるために用いられる。本発明のポリマーコーティングは、神経前駆細胞の接着を促進し、次いで、1種又は2種以上の所望の分化因子の存在下で、長期間培養することができることが示された。本発明のコーティングは、神経突起の外殖及び/又は伸張を促進する一方で、同一培地条件の下で従来型のコーティングがなされた製品上で培養した神経前駆細胞は生き残らなかった。本発明のコーティングはまた、コーティングされた基剤上で増殖する一部の神経細胞内の成熟した神経細胞マーカーの発生を促進する。本発明のコーティングはまた、神経前駆細胞の構造を星状細胞へと促進させることが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に記載される本発明の実施形態は、次の詳細な説明に開示される正確な形態に本発明を制限するか、又は網羅的であることを目的とするものではない。むしろ、上記実施形態は、当業者が本発明の原理及び実施を正しく評価し、かつ理解することができるように選択及び記載されている。
本明細書で言及される全ての出版物及び特許を、参照により本明細書に組み入れる。本明細書に開示される出版物及び特許は、単にそれらの公表のために提供されている。発明者が、先行する任意の出版物及び/又は特許(本明細書で引用される任意の出版物及び/又は特許を含む)に権利を与えないことの自認として解釈される。
【0036】
いくつかの態様では、本発明は、細胞培養製品の表面にコーティングを付与するための試薬及び方法を提供し、当該コーティングは、上記細胞培養製品の表面に上記ポリマーを結合させるために用いられる少なくとも1種の潜在性反応性基と、複数のペンダント型アミン基とを有するポリマー物質を含む。
【0037】
本発明のポリマーコーティングを、任意の種類の細胞培養製品上に生成することができる。しかし、いくつかの態様では、細胞の増殖及び分化のために十分な表面を提供する細胞培養製品を提供することが望ましい。当該製品は、分化する細胞の形態を支持する表面を理想的に有する。例えば、神経前駆細胞の分化の場合には、上記表面により、神経突起の形成、又は10μm超若しくは200μm超である神経性細胞の他の特徴が可能となる。
【0038】
2次元の細胞培養のための例示的な細胞培養製品には、複数のウェルのプレート、例えば、6個のウェル及び12個のウェルの培養プレート、並びにより小さいウェルの培養プレート、例えば、96、384及び1536個のウェルのプレート、培養ジャー、培養皿、培養フラスコ、培養プレート、培養ローラーボトル、培養スライド、培養管及びペトリ皿が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明のコーティングをまた、細胞を製品の一つ超の面で増殖させる3次元の細胞培養製品上に生成させることができる。3次元の細胞培養製品のコーティング面を、細胞が接着することができる足場に似せることができる。上記製品を、ミクロ構造又はナノ構造を有する物質、例えば、表面形態を作り出すように処理されるポリマー物質から生成したもの、合成又は天然のミクロ又はナノ多孔質物質、例えば、ポリアミド繊維を含む繊維から生成させたものから製造することができる。
【0040】
例示的な3次元の細胞培養製品には、複層カーボンナノチューブ(multiwalled carbon nanotube,MWCN;Chenらの「Science」(1998)282:95を参照せよ);ヒドロキシアパタイト微粒子表面(Rosaらの「Dental Mater.」(2003)19:768−772)が含まれる。上記ポリマーコーティングをまた、天然物質、例えば、自己集合性のペプチドナノ繊維骨格(Genoveらの「Biomaterials」(2005)26:3341−3351)及びコラーゲン/ヒアルロン酸高分子電解質複層(Zhengらの「Biomaterials」(2005)26:3353−61)の表面上に生成させることができる。他の場合では、上記3次元の表面を、微粒子の安定化層から製造することができる。
【0041】
上記ポリマーコーティングを、多種多様の物質から作製することができる細胞培養製品上に生成させることができる。上記細胞培養製品の構造体を生成するために用いられる物質は、本明細書で、「製品物質」又は「装置物質」と称される一方で、本明細書において、上記ポリマーコーティングを生成させるために用いられる物質は、「コーティング物質」と称される。
【0042】
その上に上記コーティングを生成させることができる製品を製造するために用いることができる物質の例には、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマー(付加重合又は縮合重合のどちらかから生成)を含む合成ポリマーが含まれる。好適な付加ポリマーの例には、アクリル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド及びアクリルアミドから重合したもの;ビニル、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル及びスチレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
細胞培養製品中で一般的に用いられる例示的なポリマー物質には、ポリスチレン及びポリプロピレンが含まれる。
縮合ポリマーの例には、ナイロン、例えば、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド及びポリヘキサメチレンドデカンジアミド、及びまたポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジメチルシロキサン及びポリエーテルケトンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
生分解性ポリマーをまた、製品物質として用いることができる。生分解性物質として検討されている合成ポリマーの種類の例には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイミノカーボネート、脂肪族カーボネート、ポリホスファゼン、ポリ無水物及びそれらのコポリマーが含まれる。移植可能な医療装置に関連して用いることができる生分解性物質の具体例には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド−co−ポリジオキサノン)、ポリ無水物、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)及びポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)が含まれる。これらのポリマーと、他の生分解性ポリマーとのブレンドをまた、用いることができる。
【0045】
本発明のポリマーコーティングをまた、異なるポリマー物質を用いてプレコートされている製品の表面に生成させることができる。例えば、製品を、パリレン又はオルガノシラン物質を用いてプリコートし、アミン含有ポリマーを配置させ、そして反応させるベースコートを供給することができる。例示的な物質には、金属、金属合金及びセラミックが含まれる。上記金属及び金属合金には、チタン、ニチノール、ステンレス鋼、タンタル及びコバルトクロムが含まれるが、これらに限定されるものではない。第二の種類の金属には、貴金属、例えば、金、銀、銅及び白金ウリジウム(uridium)が含まれる。上記セラミックには、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア及びアルミナ、並びにガラス、シリカ及びサファイアが含まれるが、これらに限定されるものではない。セラミック及び金属の組み合わせ物は、別の種類の生体物質である。
【0046】
本発明の他の態様では、上記ポリマーコーティングを、移植可能な医療用製品の表面に生成させる。上記移植可能な医療用製品を、本明細書に記載され、かつ人体内の使用に好適な任意の物質から製造することができる。例示的な医療用製品には、血管用インプラント及び移植片、移植片、外科用装置;合成人工器官;エンドプロテーゼ(endoprosthesis)を含む人工血管、ステント移植皮弁、血管内のステント組み合わせ物;小径の移植片、腹部大動脈瘤用移植片;創傷被覆材及び創傷管理装置;止血用バリア;メッシュ及びヘルニアプラグ(hernia plug);子宮出血用パッチを含むパッチ、心房中隔欠損症(ASD)用パッチ、卵円孔開存症(PFO)用パッチ、心室中隔欠損症(VSD)用パッチ及び他のジェネリックの心臓用パッチ;ASD、PFO及びVSDクロージャ;経皮クロージャ装置、僧帽弁修復装置;左心耳フィルター;弁形成(valve annuloplasty)装置、カテーテル;中心静脈アクセス用カテーテル、血管アクセス用カテーテル、膿瘍排液用カテーテル、薬物注入用カテーテル、非経口的栄養補給用カテーテル、静脈用カテーテル(例えば、抗血栓薬を用いた処理)、脳卒中治療用カテーテル、血圧及びステント移植片カテーテル;吻合装置及び吻合用クロージャ;動脈瘤除外装置;グルコースセンサを含むバイオセンサ;心臓用センサ;受胎調節装置;前胸部用移植片;感染制御装置;膜;組織骨格(scaffold);組織関連物質;脳脊髄液(CSF)シャントを含むシャント、緑内障排出シャント;歯科用装置及び歯科用移植片;耳用装置、例えば、耳用排液チューブ、中耳腔換気用ベントチューブ;眼用装置;排液チューブカフスを含む、装置のカフス及びカフス部分、移植された薬物注入用チューブカフス、カテーテルカフス、縫製カフス;脊椎及び神経学用装置;神経再生導管;神経学用カテーテル;神経用パッチ;整形外科用装置、例えば、整形外科の関節用移植片、骨修復/増大装置、軟骨修復装置;泌尿器用装置及び尿道用装置、例えば、泌尿器用移植片、膀胱用装置、腎臓部用装置及び血液透析装置、人工肛門袋取付け装置;胆汁排液製品が含まれる。
【0047】
いくつかの態様では、上記医療用製品を、上記ポリマーコーティングをその上に生成させる布帛又は繊維表面に連結させる。例示的な布帛及び繊維を、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリアミドから生成させることができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、布帛内で一般的に用いられているポリマーである。布帛の構成において、繊維、例えば、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の調製時に、これらのポリマーのブレンドをまた利用することができる。一般的に用いられる布帛には、例えば、ナイロン、ベロア及びDACRON(商標)が含まれる。
【0048】
上記コーティングを、in vivoで上記コーティングされた製品の表面に、細胞の接着を促進させるための方法において用いることができる。上記ポリマーコーティングが、細胞を長期間、接着させるので、本発明のコーティングは、長期間の埋め込み型装置、例えば、1ヶ月以上の期間、身体内に存在する装置に、特に好適である。ある場合には、内皮細胞を上記装置表面に接着するため、そして細胞の内皮層の安定な構造のために、上記コーティングを用いることができる。
【0049】
いくつかの態様では、本発明のコーティングは、複数のペンダント型アミン基と、1種又は2種以上のペンダント型潜在性反応性基とを有する非生分解性ポリマーを含む。「非生分解性」は、一般的に、非酵素的に、加水分解的に又は酵素的に分解することができないポリマーを指す。例えば、上記非生分解性ポリマーは、プロテアーゼにより生じうる分解に対して抵抗性を有する。しかし、上記コーティングが非生分解性アミン提供ポリマーを含む一方で、上記コーティングは非生分解性物質に限定されず、従って、生分解性物質、例えば、天然又は合成の生分解性ポリマーをも含むことができることに留意すべきである。
【0050】
上記コーティングは潜在性反応性基を含み、そこでは、少なくとも一部の基が、コーティング工程の際に活性化し、上記ポリマーを、上記装置の表面に結合させる。従って、生成したコーティングにおいて、活性化し、そしてターゲット部分との結合をうけた基をまた、「反応した基(reacted group)」と称することができる。
【0051】
上記潜在性の反応した基を介して上記表面に結合することにより、固定されたポリマーが、上記製品の表面に、正に帯電したアミン基を供給することができる。この結合配置により、細胞接着において非常に耐久性が高く、且つ有効な表面の形成が可能となると考えられる。この表面は、上記コーティングされた製品上の細胞の維持及び分化を含む方法において、非常に有効であることが示された。
【0052】
上記非生分解性ポリマー上の複数のペンダント型アミン基は、細胞培養のために好適なpH条件において、上記コーティングに正電荷を供給することができる。例えば、上記非生分解性ポリマーは、pH約6.0〜pH約8.0の範囲の条件において正電荷を供給する。
上記非生分解性ポリマーは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又は上記ポリマーに由来するこれらのアミン基のペンダントの組み合わせを有することができる。
【0053】
本発明の一態様では、例示的なアミン含有基は、次の式:
R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化3】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する。
上記ポリマーに由来するペンダントと同様に、上記アミン含有基を、次の式:
P−[R1R2NR3R4]
(式中、Pは、上記ポリマー主鎖の一部である)
により表すことができる。
【0054】
いくつかのさらなる特有の態様において、R1は、下記:
【化4】
であり;
R2は、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は、個々に、H又はCH3である。
【0055】
例示的なアミン含有基には、重合性モノマー、例えば、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、3−アミノエチルメタクリルアミド(AEMA)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等に見出されるものが含まれる。従って、いくつかの態様では、ペンダント型アミン基含有ポリマー及び潜在性反応性基を含むポリマーは、上記基−R1R2NR3R4を有するモノマーを、潜在性反応性基を有するコモノマーと共重合して生成させることができる。所望により、他の非アミン又は非潜在性反応性基含有モノマーが、上記ポリマーに含まれうる。
【0056】
態様の一つでは、約10%以上のモル濃度量(molar amount)におけるアミン含有モノマーを用いて上記ポリマーを生成させることができる。いくつかの態様では、上記アミン含有モノマーは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上の量で存在する。別の態様では、上記潜在性反応性基を含むモノマーが、最大約10%の量、又は約5%の量で存在する。いくつかの態様では、上記ポリマーは、約90%〜99.95%の範囲の量におけるアミン含有モノマーと、約10%〜0.05%の範囲の量における上記潜在性反応性基を含むモノマーの量とを含む。コポリマーの例示的な調製物は、約98.4%のアミン含有モノマー、例えば、APMA、AEMA又はDMAPMAと、約1.6%の上記潜在性反応性基を含むモノマーとを含む。
【0057】
アミン基の量及び潜在性反応性基の量の規定されるコントロールは、アミン含有モノマーを、潜在性反応性基含有モノマー(及び所望により、非アミン又は非光反応性基含有モノマー)と共重合することにより行われうる。他の例示的なアミン含有ポリマーを、例えば、アミン含有モノマー(例えば、N−(2−アミノ−2−メチルプロピル)メタクリルアミド、p−アミノスチレン、アリルアミン、又はそれらの組み合わせ)を、ペンダント型アミン基及び潜在性反応性基を有するポリマーを供給するためのペンダント型潜在性反応性基を有するモノマーと共重合させて生成することができる。
【0058】
これらのアミン含有モノマーをまた、他の非第一級アミン含有モノマー、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピロリジノン又はそれらの誘導体と共重合して、所望の特性、例えば、所望のアミン基の密度及び光反応性基を有するポリマーを供給することができる。アミン基を有する他の好適なポリマーには、2−アミノメチルメタクリレート、3−(アミノプロピル)−メタクリルアミド及びジアリルアミン等のモノマーから生成させたポリマーが含まれる。感光性基(photogroup)及びペンダント型アミン基を含むデンドリマーをまた、用いることができる。
【0059】
いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び疎水性の特性を有するポリマーを調製することができる。これは、上記ポリマーの合成のための1つ又は2つ以上のスキームにより得ることができる。例えば、ポリマーを、所望の量の疎水性モノマー、例えば、(アルキル)アクリレートモノマーと共に生成することができるか、又は上記アミン提供モノマーは、より長いアルキル鎖長を含むことができる。例えば、任意の1種又は2種以上の基R2、R3及び/又はR4は、3個又は4個以上の炭素原子のアルキル基を含むことができる。
【0060】
上記非生分解性ポリマーを調製するための別の方法には、予備生成したポリマーを、潜在性反応性基を含む化合物を用いて誘導体化する段階が含まれる。例えば、ペンダント型アミン基を有するホモポリマー又はヘテロポリマーは、上記ペンダント型アミン基の一部を、光反応性基及びアミン基との反応性を有する基(例えば、4−ベンゾイルベンゾイルクロリド)を有する化合物と反応させることにより、当該光反応性基を用いて容易に誘導体化することができる。
【0061】
いくつかの態様では、ペンダント型アミン基及び少なくとも1種の潜在性反応性基を有するポリマーを、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン及びポリアミドアミンから選択する。特定の態様の一つでは、上記ポリマー物質は、1種又は2種以上の潜在性反応性基を有するポリエチレンイミンを含む。
【0062】
広義の潜在性反応性基は、特定の適用された外部刺激に応答し、ターゲットとの得られた共有結合を有する活性種の生成をうける基である。潜在性反応性基は、貯蔵の条件下ではそれらの共有結合を変化させずに保持するが、活性化の際に他の分子と共有結合を生成する、分子内の原子の基である。上記潜在性反応性基は、外部の電磁気又は運動(熱)エネルギーを吸収した際に、活性種、例えば、フリーラジカル、ニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を発生させる。
【0063】
潜在性反応性基を、電磁スペクトルの種々の部分に応答するように選択することができ、そしてスペクトルの紫外線、可視光又は赤外線部分に応答する潜在性反応性基が好ましい。本明細書に記載されるものを含む潜在性反応性基は、当業界で周知である。例えば、米国特許第5,002,582号明細書(Guireらの「Preparation of Polymeric Surfaces Via Covalently Attaching Polymers」)を参照せよ。本明細書に記載されるように、本発明は、本発明のコーティングを生成させるために好適な潜在性反応性基を使用することを企図する。
【0064】
光反応性基は、電磁気エネルギーを吸収すると、活性種、例えば、フリーラジカル、そして特にニトレン、カルベン、及びケトンの励起状態を生じさせることができる。光反応性基を、電磁スペクトルの種々の部分に応答するように選択することができ、そしてスペクトルの紫外線、可視光又は赤外線部分に応答する潜在性反応性基が好ましい。
【0065】
光反応性のアリールケトン、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環(例えば、アントロンの複素環式類似体、例えば、10位に窒素、酸素又は硫黄を有するもの)、又はそれらの置換(例えば、環置換された)誘導体が好ましい。好ましいアリールケトンの例には、アントロンの複素環式誘導体、例えば、アクリドン、キサントン及びチオキサントン、並びにそれらの環置換された誘導体が含まれる。いくつかの好ましい光反応性基は、約360nm超の励起エネルギーを有する、チオキサントン及びその誘導体である。
【0066】
上記ケトンの官能基が好ましい。というのは、それらは、本明細書に記載される活性化/不活性化/再活性化サイクルを容易に受けることができるからである。ベンゾフェノンは、特に好ましい潜在性反応性部分である。というのは、当該ベンゾフェノンは、三重項状態への項間交差をうける励起一重項状態の初期構造を有する光化学系励起が可能だからである。上記励起三重項状態は、(例えば、支持体表面から)水素原子を引き抜くことにより、炭素−水素結合に挿入し、そのようにしてラジカル対を作り出すことができる。
【0067】
次にラジカル対が崩壊し、新しい炭素−炭素結合が生成する。結合に、反応性結合(例えば、炭素−水素)が利用できないと、ベンゾフェノン基の紫外線により誘発された励起は可逆性であって、そしてエネルギー源を取り除くと、当該分子は基底状態のエネルギー準位に戻る。光活性化可能なアリールケトン、例えば、ベンゾフェノン及びアセトフェノンは、特に重要である。というのは、これらの基が、水中で複数の再活性化を受け、よって高いコーティング効率を付与するからである。
【0068】
アジドが、別の種類の光反応性基を構成し、そしてアリールアジド(C6R5N3)、例えば、フェニルアジド及び4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド;アシルアジド(−CO−N3)、例えば、ベンゾイルアジド及びp−メチルベンゾイルアジド;アジドホルメート(−O−CO−N3)、例えば、エチルアジドホルメート及びフェニルアジドホルメート;スルホニルアジド(−SO2−N3)、例えば、ベンゼンスルホニルアジド;及びホスホリルアジド[(RO)2PON3]、例えば、ジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドを含む。
【0069】
ジアゾ化合物は、別の種類の光反応性基を構成し、そしてジアゾアルカン(−CHN2)、例えば、ジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタン;ジアゾケトン(−CO−CHN2)、例えば、ジアゾアセトフェノン及び1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノン;ジアゾアセテート(−O−CO−CHN2)、例えば、t−ブチルジアゾアセテート及びフェニルジアゾアセテート;及びβ−ケト−α−ジアゾアセタトアセテート(−CO−CN2CO−O−)、例えば、t−ブチル−α−ジアゾアセトアセテートを含む。
【0070】
他の光反応性基には、ジアジリン(−CHN2)、例えば、3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリン;及びケテン(CH=C=O)、例えば、ケテン及びジフェニルケテンが含まれる。
【0071】
パーオキシ化合物は、別の種類の潜在性反応性基として企図され、そしてジアルキルパーオキシド、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド及びジシクロヘキシルパーオキシド及びジアシルパーオキシド、例えば、ジベンゾイルパーオキシド及びジアセチルパーオキシド及びパーオキシエステル、例えば、エチルパーオキシベンゾエートを含む。
【0072】
任意の好適な方法を用いて、本発明のコーティングを、上記表面に生成させる。上述のように、ペンダント型アミン基及びペンダント型潜在性反応性基を有するポリマーを、製品の表面に配置させることができ、そして上記潜在性反応性基を活性化し、それにより上記ポリマーを上記装置の表面に結合させるように上記表面を処理することができる。
【0073】
別の方法では、グラフト重合法により、上記装置の表面に、上記ポリマーを生成させる。例えば、潜在性反応性基及び重合性基を含むモノマーを、上記装置の表面に配置させ、そして結合させることができる。次いで、アミン基含有モノマーの組成物を、上記表面に配置することができ、そして重合反応を開始して、上記製品の表面からポリマー鎖を形成させ、そして当該製品の表面と結合させることができる。
【0074】
さらに別の方法では、2個又は3個以上の潜在性反応性基を有する架橋剤を用いて上記コーティングを生成させることができ、上記架橋剤は、上記ポリマーを上記装置の表面に結合させるために用いられる。上記架橋剤は、本明細書に記載されるような、2個又は3個以上の潜在性反応性基を有することができる。上記ポリマーコーティングの生成において、上記架橋剤を上記装置の表面に配置させ、続いてペンダント型アミン基を有するポリマーを配置させることができ、若しくは上記架橋剤を上記ポリマーと組み合わせて配置することができ、又はその両方であることができる。
【0075】
光反応性基が、上記架橋剤上に存在する場合には、当該光反応性基を、可逆性の光分解ホモリシスを受けるように適合させ、それによりポリマー物質に接着させる際に消費されなかった光反応性基を、不活性又は「潜在性」の状態に戻すことが好ましい。続いて、共有結合形成において、引き抜くことができる水素を有するポリマーに結合させるために、これらの光反応性基を活性化することができる。従って、上記光反応性基の励起は可逆性であり、そして当該基は、上記エネルギー源を取り除くと、基底状態のエネルギー準位に戻ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、好ましい架橋剤は、複数の活性化を受け、よって、高いコーティング効率を付与することができる基である。いくつかの実施形態では、上記光反応性部分は、上記ポリマー物質から独立しており、そして例えば、架橋剤であることができる。例示的な架橋剤は、本件出願人の米国特許第5,414,075号明細書(Swanら)、及び米国特許出願公開第2003/0165613号明細書(Chappaら)に記載されている。また、米国特許第5,714,360号明細書(Swanら)及び同5,637,460号明細書(Swanら)を参照せよ。
【0077】
ペンダント型アミン基を有する非生分解性ポリマーを、単体で、又は他の所望による成分と共に、基剤に結合させることができる。最も簡単な状態では、上記コーティング組成物は、例えば、(i)複数のペンダント型アミン基と、1種若しくは2種以上の潜在性反応性基とを有する非生分解性ポリマー及び/又は(ii)複数のペンダント型アミン基と、2個若しくは3個若しくは4個以上の潜在性反応性基を有する架橋剤とを有する非生分解性ポリマーから成る。上記コーティング組成物に他の成分を添加して、上記コーティングの態様を変化させるか、又は改良することができる。上記成分は、ポリマー又は非ポリマー成分であることができる。
【0078】
他の合成又は天然の、生分解性又は非生分解性ポリマーを上記組成物に添加して、コーティングを生成させることができる。「合成ポリマー」は、合成的に調製され、そして非天然モノマー単位を含むポリマーを指す。例えば、合成ポリマーは、非天然モノマー単位、例えば、アクリレート、アクリルアミド等を含むことができる。合成ポリマーは、従来の重合反応、例えば、付加重合、縮合重合又はラジカル重合により生成するのが典型的である。
【0079】
合成ポリマーはまた、非天然モノマー単位(例えば、合成のペプチド、ヌクレオチド及び糖誘導体)と組み合わせた天然モノマー単位、例えば、天然のペプチド、ヌクレオチド、及び糖モノマー単位を有するものを含むことができる。このタイプの合成ポリマーを、標準的な合成技法、例えば、固相合成又は組換え(可能な場合)により生成させることができる。
【0080】
「天然ポリマー」は、天然、組換により又は合成のいずれかにより調製され、そして上記ポリマー主鎖において天然のモノマー単位から成るポリマーを指す。ある場合には、上記天然ポリマーを、変性、加工、誘導又は処理して、上記天然ポリマーの化学的及び/又は物理的性質を変化させることができる。これらの例では、用語「天然ポリマー」は、上記天然ポリマーに対する変化を反映するように修正されうる(例えば、「誘導した天然ポリマー」又は「脱グルコシル化した天然ポリマー」)。
【0081】
生分解性物質、例えば、生分解性ポリマーをまた、上記コーティングに存在させることができる。上記生分解性物質を、上記非生分解性アミン提供ポリマーと同一のコーティング層に、所望により存在させることができ、別のコーティング層(上記コーティングに含まれる場合)に存在させることができ、又はその両方に存在させることができる。例えば、生分解性ポリマーを含むコーティング層を、上記非生分解性アミン提供ポリマーを含むコーティング層と、製品表面との間で生成させることができるか、又は上記非生分解性アミン提供ポリマーを含むコーティング層の頂部に生成させることができる。培養の際、上記生分解性ポリマーが分解可能である一方で、上記非生分解性ポリマーは上記コーティングに存在したままであり、そして長期間の培養の際に、付着面を供給する。
【0082】
いくつかの態様では、細胞接着用のコーティングを生成させるために従来用いられているポリマーを、上記コーティング組成物に含ませることができる。例えば、ポリペプチド系ポリマー、例えば、ポリリジン、コラーゲン、フィブロネクチン、インテグリン及びラミニンを、上記コーティングに含ませることができる。これらのポリペプチドのペプチド部分をまた、上記コーティング組成物に含ませることができる。マトリックスたんぱく質の例示的な結合ドメイン配列を、表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
上記コーティング組成物中に存在する試薬にもよるが、これらのポリペプチド系ポリマーは、誘導体化していない状態又は誘導化した状態であることができる。例えば、上記ポリペプチド系ポリマーを、潜在性反応性基を用いて誘導し、次いで、上記非生分解性ポリマーに由来する上記潜在性反応性基ペンダントと共に活性化して上記コーティングを生成することができる。例示的な組み合わせには、1種又は2種以上の感光性ポリリジン(photo−polylysine)、感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニン、又はポリペプチドの光誘導体化部分(photo−derivatized portions)(本明細書に記載されるものを含む)を用いた、感光性ポリ(アミノプロピルメタクリルアミド)又は感光性ポリ(エチレンイミン)が含まれうる。
【0085】
光誘導体化ポリペプチド(photoderivatized polypeptide)、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンを、米国特許第5,744,515号明細書(Clapper,Method and Implantable Article for Promoting Endothelialization)に記載されるように調製することができる。この特許に記載されるように、ヘテロ二官能性薬剤を、光誘導体化するためにたんぱく質を用いることができる。当該薬剤には、一方の端のベンゾフェノン光活性化可能基(ベンゾイル安息香酸、BBA)、中間のスペーサー(ε−アミノカプロン酸、EAC)、及び他方の端のアミン反応性熱化学結合基(N−オキシスクシンイミド、NOS)が含まれる。BBA−EACを、4−ベンゾイルベンゾイルクロリド及び6−アミノカプロン酸から合成する。
【0086】
次いで、BBA−EACのNOSエステルが、カルボジイミド活性によるBBA−EACのカルボキシ基を、N−ヒドロキシスクシミド(N−hydroxysuccimide)とエステル化させることにより合成され、BBA−EAC−NOSが生じる。たんぱく質、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等を、商業的な供給源から購入することができる。1モルのたんぱく質当たり、10〜15モルのBBA−EAC−NOS架橋剤の比で、BBA−EAC−NOS架橋剤を添加することにより、上記たんぱく質を光誘導体化する。
【0087】
いくつかの態様では、上記コーティング組成物に、他の所望による成分を添加する場合には、上記非生分解性ポリマーが、当該組成物中で主成分であることが一般的に望ましい。上記コーティングがいくつかの生分解性成分を含む場合には、これらの成分を、一定の期間にわたって分解することができるが、上記非生分解性ポリマーは、上記コーティングの主成分として残る。
【0088】
上記コーティング組成物の試薬、例えば、上記ポリマー物質を、好適な液体、例えば、水性又はアルコール系液体の中で調製することができる。例えば、上記ポリマー物質を、約0.1mg/mL〜約50mg/mLの範囲の濃度で溶解することができる。しかし、さらに典型的に用いられる濃度は、約1mg/mL〜約10mg/mLの範囲にある。
【0089】
上記コーティングを、浸漬コーティング、インソリューション(in−solution)コーティング及びスプレーコーティングを含む任意の好適な方法により生成することができる。
上記コーティングが光反応性基を含む場合には、照射段階を、当該光反応性基の活性化を促進する量の化学線を上記光反応性基に当て、そしてターゲット部分(例えば、上記細胞培養製品のプラスチック表面)と結合させることにより実施することができる。
【0090】
化学線は、上記光反応性基の活性化を促進する任意の好適な光源により供給されうる。好ましい光源(例えば、Dymax Corp.から入手できるもの)は、190nm〜360nmの範囲のUVを照射する。好適な放射線量は、約10nmのバンド幅を有し、335nmバンドパスフィルターを取り付けた線量計を用いて測定され、約0.1mW/cm2〜約20mW/cm2の範囲にある。
【0091】
いくつかの態様では、上記光反応性基を活性化する段階に関連して、フィルターを用いることが望ましい場合がある。フィルターの使用は、当該フィルターが、活性化工程の際に上記コーティングに供給される一又は複数の特定の波長の放射線の量を選択的に最小化することができる観点から有益でありうる。これは、上記コーティングの1種又は2種以上の成分が、一又は複数の特定の波長の放射線に対する感度が高く、そしてそれらが曝露の際に分解又は変質する可能性がある場合に有益であることができる。
【0092】
典型的には、フィルターを透過させる光の波長により、フィルターを特定することができる。本発明に関連して用いることができるフィルターの2種の実例は、カットオフフィルター及びバンドパスフィルターである。一般的に、カットオフフィルターは、光線透過率が最高透過率の約25%であるカットオフ透過率により分類されている。バンドパスフィルターの場合、波長の範囲は、当該フィルターに関して特定されており、そして中心波長は、上記フィルターを通過できる波長の中点値である。
【0093】
上記コーティングされた製品の調製に続いて、上記基剤の表面に共有結合していない可能性がある過剰の物質を取り除くため、洗浄段階を実施することができる。上記コーティングされた製品をまた、さらなるUV照射等により上記製品を殺菌するために処理することができる。
【0094】
本発明のいくつかの優位性は、多種多様の細胞種に付着性コーティングを供給するために特に有用であるコーティングを生成することに関連する。上記コーティングの安定性のために、上記コーティング方法を実施してコーティングされた細胞培養製品を供給することができ、次いで、上記コーティングされた製品を、使用者に提供するか、又は使用前の一定の期間貯蔵することができる。他のケースでは、上記コーティング試薬(少なくとも上記非生分解性ポリマーを含む)を、キット内で、使用者に供給し、次いで、当該使用者が、上記コーティング方法を、1種又は2種以上の所望の製品に実施することができる。従って、本発明はまた、非生分解性ポリマー含有コーティングを調製するためのキットを提供することができる。上記キットには、上記コーティングを生成するための指示書が含まれることができ、そして所望により、当該キットの試薬を用いてコーティングされた製品を用いて、細胞を培養するための方法が含まれうる。
【0095】
概して、本発明は、これらのコーティングを用いた細胞を培養するためのコーティング及び方法を提供し、そこでは、当該コーティングは、細胞接着のための優れた基剤を提供し、そして上記コーティングは、上記細胞が相当な期間(例えば、14日超、21日超、28日超、35日超、42日超、49日超又は56日超)、上記コーティングと接触して保持することができる方法において用いられうる。いくつかの態様では、上記細胞をまた、約14〜約60日の範囲の期間、培養物中で保持することができる。例えば、上記細胞を、コーティング面に配置することができ、そこでは、当該細胞は、上記コーティングに付着し、そして適切な培地の存在下で生存が保たれる。ある場合には、上記細胞は、増殖により増えることができるが、一般的に、上記細胞の表現型は変化しない。
【0096】
本発明のコーティングに関連して、上記細胞は、細胞を維持するか、又は所望の細胞種の形成を促進するために好適である液体培地の中で培養されるのが典型的である。種々のベース液体培地、血清、アミノ酸、微量元素、ホルモン、抗生物質、塩、緩衝剤及び増殖因子を補うことができるRPMI等を用いることができる。細胞の機能(例えば、増殖及び分化)の態様に作用しうる因子をまた、上記液体培地に添加することができる。これらの因子には、ニューロトロフィン、サイトカイン(例えば、インターロイキン)、インスリン様増殖因子、形質転換増殖因子、上皮細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性増殖因子、チロシンキナーゼ受容体配位子、血小板由来増殖因子及び血管内皮増殖因子及びセマフォリンが含まれうる。
【0097】
例示的なニューロトロフィンには、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン及び脳誘導神経向性因子が含まれる;例示的な上皮細胞増殖因子には、ニューレグリン、形質転換増殖因子α及びネトリンが含まれる;例示的なサイトカインには、インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15及びG−CSF、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルディオトロフィン−1(cardiotrophin−1)及びオンコスタチン−Mが含まれる;例示的な形質転換増殖因子には、グリア細胞株由来神経栄養因子(glial−derived neurotrophic factor,GDNF)、アルテミン、ニュールツリン(neurturin)及びパーセフィンが含まれる。
【0098】
本発明のいくつかの態様では、上記方法は、適切な培地の存在下で、本明細書に記載されるように、コーティングされた基剤上で幹細胞を培養することを含む。幹細胞は、多分化能を有し且つ成形的である(それらが種々の細胞種に分化することを誘導する)。幹細胞には、胚幹細胞、例えば、胚盤胞から得られるもの、及び成体の身体中の種々の組織から得ることができる成体幹細胞、例えば、造血幹細胞源を供給する骨髄が含まれる。
【0099】
胚幹細胞は、in vitroで本質的に無限の増殖能を有し、従って、適用、例えば、組織再生を含む適用において、大きく増やすことができる。本発明のコーティングは、これらの細胞を培養するための理想の基剤を提供する。というのは、他の基剤よりも相当長い期間、コーティングされた基剤上で、上記細胞を維持し、且つ伸長させることができるからである。従って、上記コーティングは、所望の用途、例えば、細胞移植又は再生医療のために、多くの幹細胞を得ることを顕著に促進することができる。
【0100】
本発明の方法に従って培養された細胞をまた、ドラッグデリバリー、遺伝子同定のため、そして抗体生産のために用いることができる。
本発明のコーティングはまた、クローン又は少数の細胞をコーティングされた製品容器に接種し、そして培養において、集密状態(confluent state)に到達する前の上記細胞を収穫、分割又は希釈する前に、より長い期間を可能とする。上記細胞を、本明細書に記載される任意の2次元又は3次元の製品上で増やすことができる。
【0101】
ある場合には、上記細胞を上記コーティング面上に配置させる前に、当該細胞を細胞のフィーダー層に保持することができる。上記フィーダー層上で一定の期間、培養することに続いて、本明細書に記載される本発明のコーティングを有する細胞培養製品に、上記細胞を移動させることができる。本発明に従って、上記コーティングされた基剤上で、新鮮なコーティング面を供給する必要なく、最大約30日の期間、上記細胞を培養することができることが見出された。
【0102】
本発明の他の態様では、本発明は、神経前駆細胞及び幹細胞の分化のための方法に関する。本発明に従うと、部分的又は完全に成熟した神経細胞表現型の形態学又は生化学的変化の特徴を誘発する1種又は2種以上の因子(例えば、神経栄養増殖因子)及び本発明のコーティングの存在下で、神経前駆細胞を培養することができる。
【0103】
さらに具体的には、いくつかの態様では、乏突起神経膠芽細胞、星状細胞及び神経細胞に分化させるために誘導することができる多分化能の神経上皮幹細胞及び系統限定中間前駆細胞を培養するために、上記コーティングを用いることができる。上記前駆細胞は、種々の発育段階においてCNS中に存在する。
本発明の一態様では、上記方法を、神経突起の伸張を促進するために用いることができる。
【0104】
プラスチックに弱く付着するPC12細胞(褐色細胞腫細胞)が、本明細書に記載されるコーティングされた基剤に良好に付着することを実証することができた。一般的に、PC12細胞は増殖が遅く、そしてNGF及びcAMPの共働作用を用いて、分化させることができる。一度分化したPC12細胞を、約14日間維持することができる。デキサメタゾンは、非神経系リネージの分化を誘導する。本明細書に記載される結果はまた、上記非生分解性ポリマーアミン含有コーティング及び神経増殖因子(NGF)の存在下の、神経性前駆物質PC12細胞が、神経突起伸張及び交感神経系神経細胞表現型の生化学的標識の発現を示すことを教示している。
【実施例】
【0105】
例1
感光性ポリマー試薬
I.感光性ポリ(APMA)
感光性ポリ(アミノプロピルメタクリルアミド)(感光性ポリ(APMA)/APO2)の調製を、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド(APMA−HCl)及びN−[3−(4−ベンゾイルベンズアミド)プロピル]メタクリルアミド(BBA−APMA)の共重合により実施した。これらの調製は、同一出願人による米国特許第5,858,653号明細書の、それぞれ、例2及び例3に記載されている。
【0106】
2Lのフラスコに、2.378gのBBA−APMA(6.7877ミリモル)、0.849の2,2’−アゾビス(2−メチル−プロピオニトリル)(AIBN)(5.1748ミリモル)及び0.849gのN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(6.77ミリモル)を添加し、次いで、当該成分を溶解させるために786gのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して共重合を行った。次いで、当該内容物を撹拌し、そして少なくとも5分の間、ヘリウムスパージャを用いて酸素を除去した。別個のフラスコにおいて、窒素スパージャを用いて、306gのDI水の中に、72.4gのAPMA−HCl(405.215ミリモル)を溶解させた。溶解したAPMA−HClを、BBA−APMAを含む混合物に移動し、続いて少なくとも10分間、ヘリウムスパージャを行った。続いて、密封した容器を、55℃で一晩中加熱して重合を完了させた。
【0107】
次いで、180mLの量の上記ポリマー溶液を、180mLのDI水で希釈し、そして毎分1.25〜0.35ガロンの一定流量を用いて、55ガロンのタンクの中で、少なくとも96時間の間、12,000〜14,000の分子量カットオフチューブを用いて、脱イオン水で透析した。
10μg/mL〜20mg/mLの範囲にわたる上記感光性ポリ(APMA)ポリマーを有する種々のコーティング溶液を、水中で調製した。
【0108】
II−IV.感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニン
感光性コラーゲン、感光性フィブロネクチン及び感光性ラミニンを、同一出願人による米国特許第5,744,515号明細書の例1に記載されるように調製した。
25μg/mL〜300μg/mLの範囲にわたる種々の感光性ラミニンコーティング溶液を、水中で調製した。
感光性フィブロネクチンコーティング溶液を、水中において、25μg/mLに調製した。
感光性コラーゲンコーティング溶液を、0.012NのHCl中において、25μg/mLに調製した。
【0109】
V.感光性PEI
最初に、減圧下でポリエチレンイミン(PEI;24.2wt.% 固形分;2000kg/モル Mw;BASF Corp.)を乾燥させ、次いで、19mLの90:10(v/v)クロロホルム:メタノール溶液に1.09gのPEIを溶解して、感光性PEIを調製した。次いで、当該PEI溶液を、氷浴中で0℃まで冷却した。撹拌すべき62mgのBBA−Cl(4−ベンゾイルベンゾイルクロリド;その調製は、米国特許第5,858,653号明細書に記載されている)を、2.8mLのクロロホルムに添加した。BBA−Cl溶液を冷却し、撹拌しているPEI溶液に添加した。
【0110】
上記反応溶液を、室温まで加温しながら一晩中撹拌した(上記反応のTLC分析により、2.5時間後に未反応のBBA−Clは存在しないことが示された)。翌日、上記反応溶液を大きなフラスコに移し、そして77.5mLの脱イオン水とともに、1当量の濃塩酸を添加した。水性PEI溶液の外観が透明になるまで、有機溶媒を、40℃、減圧下で取り除いた。次いで、水性PEI溶液を、コーティング溶液として用いるための5mg/mLの最終濃度に希釈した。
【0111】
V.感光性RGD
感光性RGDを、同一出願人による米国特許第6,121,027号明細書の例1に記載されるように調製した。感光性RGDのコーティング溶液を、水中において、25μg/mLに調製した。
【0112】
例2
基剤コーティング
上記例1で調製された感光性ポリマー試薬を、平面(複数のウェルのプレート)及び3次元の基剤(高分子量ナノ繊維)上にコーティングした。
【0113】
平面をコーティングするため、1.0mLの量の、例1に記載されるコーティング溶液を、12個のウェルのプレート(ポリスチレン;Corning)のウェルに添加した。基剤コーティングにおいて、上記コーティング溶液の深さ(上記溶液の表面から、基剤、ポリスチレン又はナノ繊維のどちらかの表面までの距離)は、概して5mm以下、そして典型的には、約1〜2mmの範囲にある。Dymax(商標)製ランプを使用して、10nmのバンド幅を有する335nmのバンドパスフィルターを用いて評価されるような200〜300mJのエネルギーを供給した(平均して、上記ウェルから20cmの距離に保たれているランプを用いて、約3〜4分間、上記ウェルを照射した)。次いで、上記ウェルを、pH7.2の緩衝食塩水を用いて洗浄し、結合していない試薬を取り除いた。次いで、上記ウェルを再度UV照射し、上述と同一の照射条件を用いて、上記ウェルを殺菌した。
【0114】
コーティングされていない12個のウェルのプレートを、対照として用いた。3次元の表面をコーティングするため、0.5mLの量の、例1に記載されるコーティング溶液を、ディスク状の(disc)ナノ繊維基剤(Synthetic−ECM(商標)、Donaldson Co.,MNから市販されている)に添加した。約20cmの距離におけるDymax(商標)製ランプを用いて、1分間、上記基剤を照射した。次いで、上記ディスクを、水で4回洗浄した。次いで、上記ナノ繊維基剤を、再度UV照射し、当該ナノ繊維基剤を殺菌した。
コーティングされていないナノ繊維基剤を、対照として使用した。
【0115】
例3
感光性ポリマーがコーティングされた基剤上のPC12細胞の接着アッセイ
付着性の乏しい細胞(PC12細胞)を、種々の感光性ポリマー基剤上に平面培養する(plate)効果を決定するために、接着アッセイを実施した。ATCC(登録#CRL 1721)から購入したラットPC12(褐色細胞腫)細胞を、10%の馬血清、5%の牛血清、2mMのGlutamax(Invitrogen)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、及び10mMのHEPES(Invitrogen)を含むRPMI培地(Invitrogen)中の、コラーゲンがコーティングされたポリスチレンフラスコ(15μg/mL、Sigma)内で前培養した。細胞を、5%CO2/95%空気加湿チャンバー内で、37℃でインキュベートした。上記培地を、1日おきに交換した。細胞が、80%の密集度に到達したら、当該細胞をトリプシン処理し、そして継代培養した。例2に記載される方法に従ってコーティングされた12個のウェルの基剤に、上記細胞を平面培養する前に、これらの培養条件を続けた。
【0116】
継代培養#2及び継代培養#10の間のPC12細胞を、実施した全ての実験において用いた。上記細胞をトリプシン処理し、そして500,000個の細胞/mLの濃度において、RPMI培地中の、12個のウェルのプレート内に500,000個の細胞/ウェルの密度で接種した。48時間の間、5%のCO2を用いて、37℃における加湿したチャンバー内で、細胞をインキュベートした。上記細胞は、平面培養する前に、多角形の形態を有し、少なくとも99%が生存していた。
【0117】
細胞をナノ繊維上に接種するために、PC12細胞をトリプシン処理し、そして200μLのRPMI培地内に再懸濁させた。500,000個の細胞/18mmの密度の上記細胞懸濁液を、コーティングされた又はコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609192、Donaldson Co.,MNから市販されている)に注意深く添加し、そして上記細胞を、層流フードの下、室温で、10分間、上記ナノ繊維に付着させた。10分後、800μLの増殖培地を、上記ナノ繊維の周りにやさしく添加し、そして上記細胞を、37℃において、加湿した5%CO2/95%空気チャンバー内に置いた。上記培地を、1日おきに交換した。
【0118】
MTT接着アッセイ
48時間後、上記増殖培地を取り出し、そしてコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン上で増殖している上記細胞、コーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維を、Ca++−及びMg++−フリーのPBSを用いて、4回洗浄した。これらの複数回の洗浄により、上記ウェルから、ゆるく結合した又は結合していない細胞を除去した。コーティングされた基剤上で、洗浄により5%の細胞が除去された一方で、コーティングされていない基剤上では、洗浄により70%が除去された。次いで、37℃における加湿されたチャンバー内で、MTTを用いて、2時間の間、細胞をインキュベートした(増殖培地、Sigmaを用いて、1:1に希釈)。MTTを含む培地を取り出し、そして上記細胞を、PBSを用いてさらに洗浄し、フェノールレッドを取り除いた。500μLの染料可溶化剤(0.5mLの0.04NHCl/イソプロピルアルコール及び0.12mLの3%SDS/水の混合物)を添加し、そして上記ウェルを、室温で30分間(又は染料が完全に可溶化するまで)、30rpmでやさしく揺り動かした。当該試料を、96個のウェルの皿に移動し、そして分光光度計(Spectramax,Molecular Devices)内で、570nmにおいて、吸光度を読取った。
【0119】
コーティングされた及びコーティングされていない平面(12個のウェルのプレート)上の細胞接着の結果を、図1に示す。PC12細胞の最良の接着は、感光性ポリ(APMA)を用いてコーティングしたウェルで実証され、感光性ラミニン及び感光性PEI試薬が続いた。コーティングされていないウェル及び感光性フィブロネクチンによりコーティングされた基剤を、対照として用いた。PC12細胞は、フィブロネクチンに良好に付着する他の細胞種と比較して、それらの表面に低濃度のフィブロネクチン受容体を発現させる(Tomaselli及びReichardtの「J.Cell Biol.」(1987)105:2347−2358を参照せよ)。感光性RGD及び感光性コラーゲンは、感光性ポリ(AMPA)と同様の、感光性コラーゲン及び感光性ラミニンと比較して感光性ポリ(AMPA)の接着能におおよそ2倍の差を有する実施されたコーティングを供給しなかったことを、当該結果は示している。
【0120】
3次元の表面(ナノ繊維)上の細胞接着の結果を、図2に示す。平面上の結果と同様に、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維は、コーティングされていない基剤と比較して、固定が弱い細胞を、強く接着させることが示された。
【0121】
図3は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(3B)及びコーティングされていないナノ繊維(3A)上で増殖するPC12細胞の明視野顕微鏡像を示す。24時間後に、当該画像を撮影した。PC12細胞は、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、良好に広がることを実証したが、コーティングされていない表面では、上記細胞は、お互いに接着してクラスターを形成し、コーティングされていない基剤への接着は非常に弱かった。
【0122】
図4は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で24時間の間増殖させ、そしてファロイジン(1:500、分子プローブ)を用いた染色を受けたPC12細胞の蛍光顕微鏡像を示す。ファロイジンは、線維状アクチン(F−アクチン)に結合し、そして上記細胞の細胞骨格組織を可視化する。感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で培養されたPC12細胞は、それらの通常の多角形形態を保持し、上記基剤の強い結合能力が細胞形態に影響を与えないことを示していることを、上記染色結果は示している。
【0123】
ファロイジン染色の場合、PC12細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて20分固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で希釈したTRITCと共役したファロイジンを用いて、室温で1時間の間インキュベートした。0.1MのPBSを用いて細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。
【0124】
上記細胞が3次元の基剤上で培養されると、アクチンは、大きく広がるのではなく、皮質の環の中で組織化することを、当該画像は示している。アクチンのこの組織化は、組織マトリックス又は組織様マトリックスのどちらかの中で観察される(Walpita及びHayの「Nature Rev.MoL Cell.Biol.」(2002)3:137−141;米国特許出願第2005/0095695号号明細書)。
【0125】
付着性の乏しい細胞系の付着性を特に改良した感光性試薬を実証するために、付着性の強い細胞系を上記感光性ポリマーがコーティングされた基剤上で平面培養した。ヒト包皮繊維芽細胞(human foreskin fibroblast,HFF)を、PC12細胞の場合に用いられる方法に従って、感光性ポリマーがコーティングされた基剤上で平面培養し、そしてMTT接着アッセイを、培養に続いて実施した。図5は、上記感光性試薬の存在により、むき出しのポリスチレンと比較して、HFF細胞の付着性が概して改良されなかったことを示している。試験された種々のコーティングされた基剤上で、付着性の強い細胞系の接着に、利益は観察されなかった。
【0126】
例4
感光性ポリマーがコーティングされた表面のPC12細胞の増殖
PC12細胞を、例3に記載されるように培養した。BrdU取り込みを、コーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)、並びにコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン上で増殖した細胞に関して試験した。一日で、2,5−ブロモデオキシウリジン(BrdU、1μM濃度、Sigma)を、上記培養物に添加し、分裂細胞の数の測定を可能とした。免疫細胞化学を実施するために、48時間の間、BrdUを細胞に適用し、次いで、抗BrdU抗体を用いて染色した。
【0127】
PC12細胞を、S.P Memberg&A.K.Hall(「Neurobiol.」(1995)27:26−43)の手順により透過化した(permeabilize)。細胞培養物を、1時間の間、ブロッキングバッファー(PBS、0.5%のTriton−X−100(商標)、及び5%のヤギ血清)中の抗BrdU抗体(1:100、Sigma)を用いてインキュベートし、PBSですすぎ、そして追加の時間、ブロッキングバッファー中の抗マウスIgGl二次抗体(1:200、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。培養物を、PBSで3回すすぎ、そして標識付けた細胞を、倒立顕微鏡(Leica DMLA)で観察した。
【0128】
図6は、PC12細胞内のBrdU取り込みの蛍光顕微鏡像を示す。当該画像には、コーティングされていないナノ繊維と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上でBrdUがより顕著に取り込まれたことが示されている。コーティングされていない表面と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面のBrdUのより顕著な組み込みは、より多数の分裂細胞に関連し、そして上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面上の上記細胞の接着が改良されたためであると考えられる。一定の範囲に存在する細胞の総数は、DAPI染色により示されている。上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた基剤上で増殖した細胞は、感光性ポリリジンがコーティングされた基剤と比較して、60%超のBrdUの取り込みを示した。
【0129】
例5
種々のコーティングされた表面及びコーティングされていない表面上のPC12細胞の分化
感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないポリスチレン製の12個のウェルのプレート、感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)、PuraMatrix(BD Biosciences)、並びにMatrigel(商標)(BD、Biosciences)上で増殖するPC12細胞の分化を、NGF(神経増殖因子)の存在下で評価した。
試験された他の感光性試薬には、感光性フィブロネクチン、感光性ラミニン、感光性コラーゲン、感光性PEI及び感光性RGDが含まれていた。
【0130】
細胞をトリプシン処理し、そして当該細胞を、例3に記載されるそれらの通常の増殖培地内の30,000個の細胞/35mmウェルの密度で平面培養した。24時間後、上記増殖培地を、分化培地(1%の馬血清、0.5%の牛血清、2μMのGlutamax(Invitrogen)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、及び10mMのHEPES(Invitrogen)を含むRPMI培地(Invitrogen))で置換した。細胞を、5%のCO2/95の%空気が加湿されたチャンバー内で、37℃でインキュベートし、そして1日おきにNGF(100ng/mL、Invitrogen)を添加し、10日間分化させた。神経細胞への分化を評価するために、10日間培養した後、上記細胞を、β−IIIチューブリンに関して染色した。
【0131】
免疫染色を実施するために、上記細胞を20分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で、β−IIIチューブリン一次抗体(1:200、Sigma)を用いて1時間の間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察し、β−IIIチューブリン染色を視覚化した。
【0132】
一般的に、上記感光性ポリマーでコーティングされた平坦又は3次元の表面により、神経細胞含有突起に富む、分化した培養物が生産された。これらの表面上の平均神経突起長は、コーティングされていない表面と比較して2倍であった。他の感光性試薬(感光性ラミニン、感光性PEI及び感光性コラーゲン)がまた、感光性ポリ(APMA)よりも良好とまではいかないが、コーティングされていないポリスチレン又はナノ繊維よりも良好であることが見出された。
【0133】
よって、上記感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面により、コーティングされていないポリスチレン、コーティングされていないナノ繊維、コラーゲン、PEI及び市販のPuramatrix及びMatrigel(商標)調製物と比較して、PC12細胞が神経細胞に良好に分化した。
図7は、コーティングされていないポリスチレンと比較して、感光性ポリ(APMA)及び感光性ラミニンがコーティングされたポリスチレン上で、PC12細胞が良好に分化することを示す。
【0134】
図8は、コーティングされていないナノ繊維と比較して、感光性ポリ(APMA)及び感光性ラミニンがコーティングされたナノ繊維上で、PC12細胞が良好に分化することを示す。
図9は、PuraMatrix(商標)及びMatrigel(商標)と比較して、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、PC12細胞が良好に分化することを示している。感光性APMAは、ナノ繊維上で、より良好な細胞分化と、より長い神経突起伸張とを定量的に促進する。
β−IIIチューブリン染色、神経突起形態及び細胞分化の評価を、表2に要約する。
【0135】
【表2】
【0136】
例6
感光性ポリマーがコーティングされた表面上のES−D3細胞の増殖
ATCC(登録番号CRL−1934)に由来するES−D3細胞を、4日間、10%のウシ胎児血清(FCS,Cambrex)及び白血病抑制因子(LIF,10ng/mL,Gibco−BRL)を有するDMEM−F12(Invitrogen)内の懸濁皿(suspension dish)(Nunc)内で、集合体として増殖させた。次いで、上記培地を、NEP基本培地(100μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、16μg/mLのプトレシン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸、1mg/mLのウシ血清アルブミン、B27及びN2添加剤を加えた20ng/mLのbFGFで補ったDMEM−F−12)と称される化学的に規定された培地に換え、そして上記細胞を、フィブロネクチン(15μg/mL、Sigma)がコーティングされたポリスチレン皿、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P610304、Donaldson Co.,MNから市販される)上に接種した。1日おきに培地を交換し、そして上記細胞を、5%のCO2/95%の空気が加湿されたチャンバー内で37℃に維持した(Mujtaba及びRaoの「Developmental Biology」(1999)214:113〜127)。
感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面を、ES−D3細胞と共に用いた。
【0137】
増殖性ES−D3細胞のためのネスチン染色
ES−D3細胞を、24時間及び48時間のところで分析した。ES−D3細胞を、次のように、ネスチン、未分化の幹細胞のマーカーの存在のために染色した(U.Lendahlらの「Cell」(1990)60:585−95)。4%のパラホルムアルデヒドを用いて、細胞を、室温で20分間固定した。0.1MのPBSを用いて、pH7.4で、それらを3回洗浄し、そして室温で2時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で1:1に希釈されたラットネスチン(ラット401、DSHB)に対する一次抗体を用いてインキュベートした。
【0138】
次いで、細胞を、0.1MのPBSを用いて5分間洗浄し、そして追加の時間、0,5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内で希釈された抗マウス第二抗体(1:200,Southern Biotech)を用いてインキュベートし、その後、0.1MのPBSを用いてそれらを3回洗浄し、そして倒立顕微鏡(Leica,DMLA)の下で観察した。BrdUでネスチンを二重に標識付け、そして一次抗体の適切な組み合わせ、次いで交差反応をしない(non−cross reactive)二次抗体の中で細胞を同時にインキュベートして、二重標識実験を実施した。
【0139】
図10は、コーティングされたナノ繊維上に、ネスチン/BrdU陽性ES−D3細胞が存在することを示す。上記細胞の大部分は、試験された他の全てのリネージマーカーに関して、ネスチン陽性及び陰性(GFAP、β−IIIチューブリン、及びO4)であり、未分化の幹細胞の培養物を、感光性ポリ(APMA)でコーティングした、これらの完全なる合成面上で維持することができることを示す。
【0140】
例7
コーティング面上のES−D3細胞の分化
ネスチン陽性ES−D3細胞を、基本培地(100μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、16μg/mLのプトレシン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸、1mg/mLのウシ血清アルブミン、B27及びN2添加剤を加えた20ng/mLのbFGFで補ったDMEM−F−12)内の感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609192、Donaldson Co.,MNから市販される)上で増殖させた。
【0141】
細胞を誘導して、上記増殖培地からbFGFを取り除き、そしてレチノイン酸(1μM、Sigma)、PDGFBB(10ng/mL、Sigma)、CNTF(10ng/mL、Sigma)、10%血清(FBS、Invitrogen)のいずれかを添加して分化させた(Mujtaba及びRao,上記個所)。誘発剤を毎日添加して6日間培養した後、上記幹細胞は、神経細胞、乏突起神経膠芽細胞及び星状細胞に分化した。上記分化を、上記細胞の基剤を変えることなく達成した。
【0142】
β−IIIチューブリン染色
上記細胞を、4%のパラホルムアルデヒドを用いて20分間固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして室温で1時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内の神経細胞用のマーカー、β−IIIチューブリン(1:200、Sigma)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。
【0143】
場合によっては、次のように、DAPIを用いて染色した。上記のように調製した細胞を、DAPI溶液(100%MeOH内で1:1000に希釈、Boehringer Mannheim)で洗浄した。固定した細胞を、室温で15分間、DAPI溶液を用いてインキュベートした。
【0144】
乏突起神経膠芽細胞のためのO4染色
4%のパラホルムアルデヒドを用いて、室温で10分間、細胞を固定した。0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、細胞を3回洗浄した。室温で2時間の間、5%のBSAを含む培地内で、O4(6μg/mL、Chemicon)に対する一次抗体と共に、細胞をインキュベートした。次いで、0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、調製物を3回洗浄した。二次抗体と共に細胞をインキュベートし、そしてβ−IIIチューブリンに関して上述のようにさらに処理した。
【0145】
星状細胞用のGFAP染色
4%のパラホルムアルデヒドを用いて、室温で20分間、細胞を固定した。0.1MのPBS、pH7.4を用いて、5分間、細胞を3回洗浄した。室温で2時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBSで、GFAP(1:500、Chemicon)に対する一次抗体を用いて細胞をインキュベートした。細胞を洗浄し、そして抗マウス二次抗体と共にインキュベートし、そしてβ−IIIチューブリンに関して上述したようにさらに処理した。
【0146】
コーティングされていないナノ繊維と、ポリ−リジン(15μg/mL、Sigma)及びラミニン(15μg/mL、Gibco BRL)を用いて二重にコーティングしたポリスチレンとを、対照として用いた。
適切な細胞種への良好な分化は、コーティングされていないナノ繊維及びポリリジン/ラミニンで二重にコーティングされている組織培養プラスチックと比較して、コーティングされたナノ繊維上で得られ、そしてこの分化は、適切な誘発剤を同一の基剤に単に添加するのみで達成される。
【0147】
図11は、ES−D3細胞が、コーティングされていないナノ繊維上で増殖する神経細胞と比較して、より長い神経突起長を有する神経細胞含有突起(当該突起は、短く且つ切り株様(stubby)である)に分化することを示す。
図12は、ES−D3細胞が、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で、タイプI及びタイプIIのGFAP陽性星状細胞に分化することを示す。当該細胞は、コーティングされたナノ繊維上で、より明るいことに留意する。
【0148】
例8
クローン濃度(clonal density)におけるPC12細胞の増殖
PC12細胞を、35mmウェル内に置いた300個の細胞/32mmナノ繊維ディスク(Synthetic−ECM(商標)、製品番号P609186、Donaldson Co.,MNから市販される)において平面培養し、そして1日おきにNGFを添加して、30分間分化させた(例5に記載されるように)。30日後、上記細胞を20分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1MのPBSで3回洗浄し、そして室温で1時間の間、0.5%のTriton−X−100(商標)及び5%のヤギ血清を含むPBS内のβ−IIIチューブリン(1:200、Sigma)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして追加の時間、抗マウス二次抗体(IgG2b、Southern Biotech)を用いてインキュベートした。細胞を洗浄し、そして倒立顕微鏡の下で観察した。単一細胞は、4日の培養後、クローンを生成し始めた。当該クローンは、迅速に増殖し、そして上記コーティング面にしっかりと接着したままであった。
【0149】
例9
感光性ポリマーコーティング上のPC12細胞の長期間培養
例8に記載されるように培養したPC12細胞を、45日間維持し、そしてβ−IIIチューブリンに関して処理した。図13は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされた表面上で増殖する、分化したPC12細胞を示す。30日の培養の後、上記細胞はしっかりしており、そして広範囲な神経突起を示した。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平面上のPC12細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていないナノ繊維基剤上のPC12細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(3A)及びコーティングされていないナノ繊維(3B)上で増殖するPC12細胞の明視野顕微鏡像である。
【0151】
【図4】図4は、24時間の間、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させた、ファロイジン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図5】図5は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平面上のHFF細胞の接着の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維(A)及びコーティングされていないナノ繊維(B)上で増殖するPC12細胞のBrdU取り込み、並びにこれらの細胞(A’)及び(B’)それぞれのDAPI染色の蛍光顕微鏡像である。
【0152】
【図7】図7は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平坦なポリスチレン表面上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図8】図8は、種々の感光性ポリマーがコーティングされた及びコーティングされていない平坦なナノ繊維表面上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図9】図9は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維対他の市販の細胞基剤上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の蛍光顕微鏡像である。
【0153】
【図10】図10は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させた、ネスチン/BrdU染色したES−D3細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図11】図11は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維及びコーティングされていないナノ繊維上で増殖させた、β−IIIチューブリン染色されたES−D3の神経突起形態を実証する蛍光顕微鏡像である。当該画像は、ES−D3細胞が、コーティングされていないナノ繊維上で増殖する神経細胞と比較して、より長い神経突起長を有する神経細胞含有突起(当該突起は、短く且つ切り株様である)に分化することを示す。
【0154】
【図12】図12は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維及びコーティングされていないナノ繊維上で増殖させた、GFAP染色したES−D3の蛍光顕微鏡像である。
【図13】図13は、感光性ポリ(APMA)がコーティングされたナノ繊維上で増殖させ、30日分化させた、β−IIIチューブリン染色したPC12細胞の広範囲な神経突起形態を実証する蛍光顕微鏡像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な医療用製品の少なくとも一部上に生成させたコーティングを含む前記移植可能な医療用製品であって、
前記コーティングは、下記を含むポリマーを含む:
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化1】
であり;
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する少なくとも1種のペンダント型アミン含有基:及び
(ii)前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基。
【請求項2】
前記ペンダント型アミン含有基が、次の式:
−R1R2NR3R4
を有し、そして
R1が、下記:
【化2】
であり、
R2が、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4が、両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H、CH3又はC2H5である、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項3】
前記ポリマーが、3−アミノプロピルメタクリルアミド、3−アミノエチルメタクリルアミド及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから成る群から選択される1種又は2種以上のモノマーを含む、請求項2に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項4】
前記ポリマーが、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)を含む、請求項3に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項5】
前記ペンダント型アミン含有基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、前記ポリマーの50%以上のモル濃度量で存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項6】
前記ペンダント型アミン含有基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、前記ポリマーの90%〜99.95の範囲のモル濃度量で存在する、請求項5に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項7】
前記ペンダント型の潜在性の反応した基が、光反応した基を含む、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項8】
前記光反応した基が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環、並びにそれらの置換された誘導体から成る群から選択される、請求項7に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項9】
前記光反応した基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、0.1%〜10%の範囲のモル濃度量で存在する、請求項8に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項10】
前記ポリマーが、20kDa〜2000kDaの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項11】
前記コーティングが人工血管上に存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項12】
前記コーティングが、前記製品の多孔質構造体に存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項13】
マトリックスたんぱく質を含む、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項14】
移植可能な医療用製品の一部上にコーティングを含む前記移植可能な医療用製品であって、
前記コーティングは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミンから成る群から選択されるポリマーを含み、
前記ポリマーは、前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基を含む。
【請求項15】
次の各段階;
(a)移植可能な医療用製品を得る段階、ここで当該製品の少なくとも一部上に、コーティングを生成させ、当該コーティングは、下記を含むポリマーを含み:
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は下記:
【化3】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する少なくとも1種のペンダント型アミン含有基:及び
(ii)前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基;そして
(b)前記製品を患者に移植する段階:
を含む、前記移植可能な医療用製品を用いるための方法。
【請求項16】
次の各段階;
(a)製品を得る段階;
(b)前記製品の少なくとも一部上にコーティング組成物を配置する段階、前記コーティング組成物は、下記を有するポリマーを含む;
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化4】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する、少なくとも1種のペンダント型アミン含有基;及び
(ii)少なくとも1種のペンダント型潜在性反応性基;そして
(c)前記ペンダント型潜在性反応性基を活性化して前記ポリマーを結合させ、それにより前記コーティングを生成させるために、前記コーティング組成物を処理する段階、ここで前記コーティングは、細胞が当該コーティングに長期間にわたり接着することを促進するために十分である:
を含む、前記製品上にコーティングを生成させるための方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、10μg/mL〜20mg/mLの範囲において、前記コーティング組成物中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記潜在性反応性基が光反応性基である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記処理する段階が、前記光反応性基に、190nm〜360nmの範囲の紫外線を照射することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記処理する段階が、前記光反応性基に、0.1mW/cm2〜20mW/cm2の範囲における紫外線の線量を照射することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
移植可能な医療用製品の少なくとも一部上に生成させたコーティングを含む前記移植可能な医療用製品であって、
前記コーティングは、下記を含むポリマーを含む:
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化1】
であり;
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する少なくとも1種のペンダント型アミン含有基:及び
(ii)前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基。
【請求項2】
前記ペンダント型アミン含有基が、次の式:
−R1R2NR3R4
を有し、そして
R1が、下記:
【化2】
であり、
R2が、C2〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4が、両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H、CH3又はC2H5である、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項3】
前記ポリマーが、3−アミノプロピルメタクリルアミド、3−アミノエチルメタクリルアミド及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから成る群から選択される1種又は2種以上のモノマーを含む、請求項2に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項4】
前記ポリマーが、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)を含む、請求項3に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項5】
前記ペンダント型アミン含有基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、前記ポリマーの50%以上のモル濃度量で存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項6】
前記ペンダント型アミン含有基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、前記ポリマーの90%〜99.95の範囲のモル濃度量で存在する、請求項5に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項7】
前記ペンダント型の潜在性の反応した基が、光反応した基を含む、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項8】
前記光反応した基が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環、並びにそれらの置換された誘導体から成る群から選択される、請求項7に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項9】
前記光反応した基が、前記ポリマー中の総モノマーユニットに基づいて、0.1%〜10%の範囲のモル濃度量で存在する、請求項8に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項10】
前記ポリマーが、20kDa〜2000kDaの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項11】
前記コーティングが人工血管上に存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項12】
前記コーティングが、前記製品の多孔質構造体に存在する、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項13】
マトリックスたんぱく質を含む、請求項1に記載の移植可能な医療用製品。
【請求項14】
移植可能な医療用製品の一部上にコーティングを含む前記移植可能な医療用製品であって、
前記コーティングは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミンから成る群から選択されるポリマーを含み、
前記ポリマーは、前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基を含む。
【請求項15】
次の各段階;
(a)移植可能な医療用製品を得る段階、ここで当該製品の少なくとも一部上に、コーティングを生成させ、当該コーティングは、下記を含むポリマーを含み:
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は下記:
【化3】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する少なくとも1種のペンダント型アミン含有基:及び
(ii)前記コーティングを生成するように結合している、少なくとも1種のペンダント型の潜在性の反応した基;そして
(b)前記製品を患者に移植する段階:
を含む、前記移植可能な医療用製品を用いるための方法。
【請求項16】
次の各段階;
(a)製品を得る段階;
(b)前記製品の少なくとも一部上にコーティング組成物を配置する段階、前記コーティング組成物は、下記を有するポリマーを含む;
(i)次の式:
−R1R2NR3R4
(式中、R1は、下記:
【化4】
であり、
R2は、C1〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキルであり;そして
R3及びR4は両方とも前記窒素に結合し、そしてそれぞれ、H又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルである)
を有する、少なくとも1種のペンダント型アミン含有基;及び
(ii)少なくとも1種のペンダント型潜在性反応性基;そして
(c)前記ペンダント型潜在性反応性基を活性化して前記ポリマーを結合させ、それにより前記コーティングを生成させるために、前記コーティング組成物を処理する段階、ここで前記コーティングは、細胞が当該コーティングに長期間にわたり接着することを促進するために十分である:
を含む、前記製品上にコーティングを生成させるための方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、10μg/mL〜20mg/mLの範囲において、前記コーティング組成物中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記潜在性反応性基が光反応性基である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記処理する段階が、前記光反応性基に、190nm〜360nmの範囲の紫外線を照射することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記処理する段階が、前記光反応性基に、0.1mW/cm2〜20mW/cm2の範囲における紫外線の線量を照射することを含む、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−502243(P2009−502243A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522972(P2008−522972)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/028253
【国際公開番号】WO2007/012051
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/028253
【国際公開番号】WO2007/012051
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】
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