説明

ポリマーフィルタ、押出装置、押出成形品の製造方法及び光学フィルムの製造方法

【課題】ろ過されたポリマーに異物が含まれるのを抑制できるポリマーフィルタを提供する。
【解決手段】本発明に係るポリマーフィルタ1は、ポリマー流入口11aと開放部11bとを有する容器本体11と、容器本体11の開放部11bに取り付けられたベースプレート12と、容器本体11内に配置されており、容器本体11内に流入したポリマーをろ過するための複数のリーフディスク型フィルタ13とを備える。容器本体11は、リーフディスク型フィルタ13によりろ過されずに、容器本体11内においてリーフディスク型フィルタ13の側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタ1の外部空間に排出するためのポリマー排出口11Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ポリマーをろ過するために用いられるポリマーフィルタであって、流出する異物を少なくすることができるポリマーフィルタ及び該ポリマーフィルタを用いた押出装置、押出成形品の製造方法及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、液晶の光学特性の補償、視野角の改善、コントラストの改善又は着色防止等を目的として、偏光フィルム又は位相差フィルム等の光学フィルムが、液晶セルの片面又は両面に積層されている。
【0003】
上記光学フィルムは、一般的に熱可塑性樹脂を、流延(溶液キャスト)法、カレンダー法又は溶融押出法等により成膜することにより作製されている。
【0004】
上記溶融押出法により光学フィルムを得る際には、溶融樹脂に含まれている異物を除去するために、ポリマーフィルタが用いられることが多い。また、光学フィルム以外の押出成形品を得る場合にも、ポリマーフィルタが用いられることがある。
【0005】
上記ポリマーフィルタの一例として、下記の特許文献1には、平面状の内底面を有し樹脂送出口が形成された底部と、上記内底面に対して垂直な円筒状の内側面を有する側壁部と、上記側壁部の上記底部とは反対側に設けられ樹脂流入口を形成された蓋部とを備える筐体と、上記筐体内において上記内底面に立設され、上記樹脂送出口に連通する流路が形成された支柱部と、上記樹脂流入口から流入した溶融樹脂をろ過して上記支柱部の上記流路に送出する、複数枚積層するように上記支柱部に装着された円盤状のフィルタエレメントとを備えるポリマーフィルタが開示されている。
【0006】
特許文献1に記載のポリマーフィルタでは、上記筐体は、上記内底面と上記内側面との境界部分において、上記内底面と上記内側面との間をまたがるように、上記内底面及び上記内側面に対して上記筐体の中心側に向かって凸な形状である凸面部を備える。また、特許文献1では、下記式(101)及び下記式(102)の関係を満たすように、ポリマーフィルタが構成されている。
【0007】
0.3≦d/d≦0.8 ・・・式(101)
0.3≦d/d≦0.8 ・・・式(102)
dは、上記フィルタエレメントから上記内側面までの距離を表し、dは、上記内側面から、上記内底面と上記凸面部とが交わる地点までの、上記内側面の径方向での距離を表し、dは、上記内底面から、上記内側面と上記凸面部とが交わる地点までの、上記内底面に垂直な方向での距離を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−11395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、溶融樹脂が滞留する部分において、上記凸面部が備えられている。しかしながら、このような凸面部を筺体に設けたとしても、溶融樹脂の滞留を十分に抑制できないことがある。ポリマーフィルタ中で溶融樹脂が滞留すると、滞留部分において溶融樹脂が劣化して、異物となる。このため、ポリマーフィルタから流出される溶融樹脂に異物が含まれることがある。この結果、例えば、特許文献1に記載のポリマーフィルタを用いて溶融押出法により光学フィルムなどの押出成形品を作製した場合に、得られる押出成形品に外観欠点が生じやすいという問題がある。また、特許文献1に記載のポリマーフィルタでは、樹脂の温度及び流速などの条件によっては、溶融樹脂の滞留を十分に抑制できないことがある。
【0010】
本発明の目的は、ポリマーをろ過するためのポリマーフィルタであって、ろ過されたポリマーに異物が含まれるのを抑制できるポリマーフィルタ、並びに該ポリマーフィルタを用いた押出装置、押出成形品の製造方法並びに光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、ポリマーをろ過するためのポリマーフィルタであって、ポリマー流入口と、開放部とを有する容器本体と、上記容器本体の上記開放部に取り付けられたベースプレートと、上記容器本体内に配置されており、上記容器本体内に流入したポリマーをろ過するための複数のリーフディスク型フィルタとを備え、上記容器本体は、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されずに、上記容器本体内において上記リーフディスク型フィルタの側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタの外部空間に排出するためのポリマー排出口を有する、ポリマーフィルタが提供される。
【0012】
本発明に係るポリマーフィルタのある特定の局面では、複数の上記リーフディスク型フィルタが接触するように、該リーフディスク型フィルタを固定している押さえプレートと、上記リーフディスク型フィルタに挿入されており、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されたポリマーをポリマーフィルタの外部空間に流出するためのポリマー流路を有するセンターポストとがさらに備えられる。
【0013】
本発明に係るポリマーフィルタの他の特定の局面では、上記容器本体は、上記ポリマー排出口を上記開放部側の端部に有する。
【0014】
本発明に係るポリマーフィルタの他の特定の局面では、上記容器本体は、上記ポリマー排出口を複数有する。
【0015】
本発明に係るポリマーフィルタのさらに他の特定の局面では、上記ポリマー排出口は、ポリマーのろ過時にポリマーが滞留しやすい位置に配置されている。
【0016】
本発明に係るポリマーフィルタの他の特定の局面では、上記ポリマー排出口は開閉可能である。
【0017】
本発明に係るポリマーフィルタのさらに他の特定の局面では、上記ポリマー排出口に取り付けられており、上記ポリマー排出口から上記ポリマーを排出する速度を制御するための排出速度制御部材がさらに備えられる。
【0018】
本発明に係るポリマーフィルタは、光学フィルムを得るための光学フイルム用ポリマーフィルタであることが好ましい。
【0019】
本発明に係る押出装置は、押出機と、該押出機の先端に接続されたポリマーフィルタと、該ポリマーフィルタに接続された金型とを備え、上記ポリマーフィルタが本発明に従って構成されたポリマーフィルタである。
【0020】
本発明に係る押出装置は、溶融押出法によりポリマーをフィルム状に成膜して、光学フィルムを得るために用いられる押出装置であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る押出成形品の製造方法は、溶融押出法によりポリマーを成形する押出成形品の製造方法であって、溶融したポリマーを、ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、成形する成形工程と、成形されたポリマーを、冷却することにより固化させて、押出成形品を得る冷却工程とを備え、上記ポリマーフィルタとして、本発明に従って構成されたポリマーフィルタが用いられる。
【0022】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、溶融押出法によりポリマーを成膜する光学フィルムの製造方法であって、溶融したポリマーを、ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、フィルム状に成膜する成膜工程と、フィルム状に成膜されたポリマーを、冷却することにより固化させて、光学フィルムを得る冷却工程とを備え、上記ポリマーフィルタとして、本発明に従って構成されたポリマーフィルタが用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るポリマーフィルタは、ポリマー流入口と開放部とを有する容器本体と、上記容器本体の上記開放部に取り付けられたベースプレートと、上記容器本体内に配置されており、上記容器本体内に流入したポリマーをろ過するための複数のリーフディスク型フィルタとを備えており、上記容器本体が、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されずに、上記容器本体内において上記リーフディスク型フィルタの側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタの外部空間に排出するためのポリマー排出口を有するので、ろ過時に必要に応じてポリマー排出口からポリマーの少なくとも一部を排出することにより、ろ過されたポリマーに異物が含まれるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るポリマーフィルタを模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すポリマーフィルタのI−I線に沿う断面図である。
【図3】図3は、溶融押出法によりポリマーを成形する押出装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
本発明に係るポリマーフィルタは、ポリマー流入口と開放部とを有する容器本体と、上記容器本体の上記開放部に取り付けられたベースプレートと、上記容器本体内に配置されており、上記容器本体内に流入したポリマーをろ過するための複数のリーフディスク型フィルタとを備える。上記容器本体は、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されずに、上記容器本体内において上記リーフディスク型フィルタの側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタの外部空間に排出するためのポリマー排出口を有する。
【0027】
本発明に係るポリマーフィルタは上記構成を備えているので、該ポリマーフィルタによりろ過されたポリマーに異物を含まれるのを抑制できる。特に、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されずに、上記容器本体内において上記リーフディスク型フィルタの側方を通過したポリマーは、滞留しやすく、一旦滞留したポリマーがポリマーフィルタから流出すると異物になることが多い。このような異物は、ポリマーフィルタを用いて溶融押出法により光学フィルムなどの押出成形品を作製した場合に、得られる光学フィルムなどの押出成形品に外観欠点が生じる原因となる。特に、光学フィルムでは、異物の混入は大きな問題となる。本発明に係るポリマーフィルタの使用により、ろ過されたポリマーに異物が含まれ難くなる結果、外観欠点が少ない光学フィルムなどの押出成形品を得ることができる。
【0028】
本発明に係るポリマーフィルタは、複数の上記リーフディスク型フィルタが接触するように、該リーフディスク型フィルタを固定している押さえプレートと、上記リーフディスク型フィルタに挿入されており、上記リーフディスク型フィルタによりろ過されたポリマーをポリマーフィルタの外部空間に流出するためのポリマー流路を有するセンターポストとをさらに備えることが好ましい。
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0030】
(ポリマーフィルタの詳細)
図1に、本発明の一実施形態に係るポリマーフィルタを模式的に断面図で示す。図2に、図1に示すポリマーフィルタの図1のI−I線に沿う断面図を示す。
【0031】
図1,2に示すポリマーフィルタ1は、容器本体11と、ベースプレート12と、複数のリーフディスク型フィルタ13と、押さえプレート14と、センターポスト15とを備える。
【0032】
容器本体11は、ポリマー流入口11aと、開放部11bとを有する。容器本体11の一端にポリマー流入口11aが設けられている。容器本体11の一端とは反対の他端に開放部11bが設けられている。また、容器本体11は、筒状のハウジング11Aと、ハウジング11Aの一端に取り付けられたハウジング蓋11Bとを有する。ポリマー流入部11aは、ハウジング蓋11Bの中央に設けられている。
【0033】
ベースプレート12は、容器本体11の開放部11bに取り付けられている。ベースプレート12は、中央に貫通孔12aを有する。容器本体11とベースプレート12とは一体的に形成されていてもよい。
【0034】
複数のリーフディスク型フィルタ13は、容器本体11内に配置されている。リーフディスク型フィルタ13の周囲は容器本体11により囲まれており、ハウジング11Aとハウジング蓋11Bとで囲まれている。リーフディスク型フィルタ13は、容器本体11内に流入したポリマーをろ過するためのフィルタである。複数のリーフディスク型フィルタ13は接触している。
【0035】
押さえプレート14は、複数のリーフディスク型フィルタ13が接触するように、リーフディスク型フィルタ13を固定している。このため、リーフディスク型フィルタ13は、押さえプレート14とベースプレート12とで挟み込まれている。リーフディスク型フィルタ13は、押さえプレート14とベースプレート12とで圧縮されていてもよい。押さえプレート14は、貫通孔14aを有する。
【0036】
センターポスト15は、リーフディスク型フィルタ13の内周部分13aに挿入されている。また、センターポスト15の一端は、押さえプレート14の貫通孔14aに挿入されている。さらに、センターポスト15の他端は、ベースプレート12の貫通孔12aに挿入されている。センターポスト15は、リーフディスク型フィルタ13によりろ過されたポリマーをポリマーフィルタ1の外部空間に流出するためのポリマー流路15aを有する。センターポスト15は筒状部材を有し、ポリマー流路15aは筒状部材の内部の空洞部である。上記筒状部材は円筒状である。また、センターポスト15は、リーフディスク型フィルタ13により濾過されたポリマーが内周部分13aを経由してセンターポスト15内に流入するための複数の貫通孔15bを有する。貫通孔15bは上記筒状部材に設けられている。
【0037】
なお、センターポスト15の押さえプレート14側に位置する先端部分には、押さえねじ16が取り付けられている。すなわち、押さえプレート14のリーフディスク型フィルタ13側とは反対側の表面に押さえねじ16が取り付けられている。
【0038】
ポリマーフィルター1では、容器本体11は、リーフディスク型フィルタ13によりろ過されずに、容器本体11内においてリーフディスク型フィルタ13の側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタ1の外部空間に排出するためのポリマー排出口11Cを有する。ポリマー排出口11Cには、該ポリマー排出口11Cを開閉可能にする開閉部材11cが取り付けられている。すなわち、容器本体11は、開閉部材11cを有する。
【0039】
ポリマーフィルタ1を用いてポリマーをろ過する際には、容器本体11のポリマー流入口11aからポリマーを流入させる。流入したポリマーは、押さえプレート14と容器本体11との間の内部流路を通過して、リーフディスク型フィルタ13の側方に移動する。リーフディスク型フィルタ13の側方に移動したポリマーは、通常、複数のリーフディスク型フィルタ13の重ね合わされた隙間を通過しながら、リーフディスク型フィルタ13の内部に導かれ、半径方向の中心部に向かってろ過されながら進行する。リーフディスク型フィルタ13によりろ過されたポリマーは、センターポスト15の貫通孔15bを通過してセンターポスト15の内部のポリマー流路15aに導かれる。ポリマー流路15aに導かれたポリマーは、ポリマーフィルタ1の外部空間に流出する。このろ過の際には、リーフディスク型フィルタ13の側方において、ポリマーの流れ方向の上流側よりも下流側においてポリマーが滞留しやすい傾向がある。ポリマーが滞留しやすい箇所では、ポリマーが熱によって劣化、架橋反応が促進され高分子量化して異物欠点となりやすい。例えば、図1に示すX部分よりもY部分の方でポリマーが滞留しやすく、Y部分よりもZ部分の方でポリマーが滞留しやすい。ポリマーフィルタ1では、リーフディスク型フィルタ13の側方を通過したポリマーをポリマーフィルタ1の外部空間に排出するためのポリマー排出口11Cが設けられているので、ポリマーの滞留を抑制でき、また滞留したポリマーをリーフディスク型フィルタ13を通過させ、滞留したポリマーを製品内に混入させることなく効果的に排除できる。
【0040】
図1に示すように、ポリマーフィルタ1では、容器本体11は、ポリマー排出口11Cを開放部11b側の端部に有する。ポリマー排出口11Cは、ポリマーのろ過時にポリマーが滞留しやすい位置に配置されている。このように、容器本体は、ポリマー排出口を開放部側の端部に有することが好ましい。また、ポリマー排出口は、ポリマーのろ過時にポリマーが滞留しやすい位置に配置されていることが好ましい。ポリマーフィルタによりポリマーをろ過する際には、容器本体内の開放部側において、ポリマーが滞留しやすい。この滞留しやすい部分である容器本体の開放部側の端部にポリマー排出口を設けることによって、ろ過されたポリマーに異物がより一層含まれ難くなる。
【0041】
また、図2に示すように、ポリマーフィルタ1では、容器本体11はポリマー排出口11Cを複数有する。ここでは、容器本体11の下側に、3つのポリマー排出口11Cが間隔を隔てて配置されている。このように、容器本体は、ポリマー排出口を複数有することが好ましい。この場合には、ポリマーフィルタによりポリマーをろ過する際に、ポリマーが部分的により一層滞留し難くなる。このため、ろ過されたポリマーに異物がより一層含まれ難くなる。
【0042】
ポリマーフィルタ1では、開閉部材11cにより、ポリマー排出口11Cは開閉可能である。このように、ポリマー排出口11Cは開閉可能であることが好ましい。この場合には、ポリマー排出口により排出するポリマー量を容易に調節可能である。例えば、ポリマーフィルタによりポリマーをろ過する初期段階では、滞留したポリマーは存在しないか、少ない。一方で、ポリマーフィルタによりポリマーをろ過する時間が長くなると、滞留したポリマーの量が多くなりやすい。ポリマー排出口を開閉可能にすることで、ポリマーが滞留しにくく、異物が混入しにくいときにはポリマー排出口を開いて、ポリマーが滞留しやすく異物が混入しやすいときにはポリマー排出口を閉めることが可能である。このため、ポリマー排出口から、ポリマーを過度に排出するのを抑制でき、破棄されるポリマー量を低減することができる。
【0043】
ポリマーフィルタ1は、ポリマー排出口11Cに取り付けられており、ポリマー排出口11Cからポリマーを排出する速度を制御するための排出速度制御部材17を備える。このように、本発明に係るポリマーフィルタは、ポリマー排出口に取り付けられており、ポリマー排出口からポリマーを排出する速度を制御するための排出速度制御部材を備えることが好ましい。この場合には、ポリマー排出口から排出されるポリマー量を調節できる。上記排出速度制御部材は、ポリマーを吸引する吸引部材であることが好ましい。滞留したポリマーの粘度は比較的高くなりやすいため、ポリマー排出口の目詰まりが生じることがある。吸引部材などの排出速度制御部材を設けることによって、ポリマー排出口の目詰まりを抑制できる。
【0044】
(押出装置、押出成形品の製造方法及び光学フィルムの製造方法の詳細)
本発明に係る押出装置は、押出機と、該押出機の先端に接続された上記ポリマーフィルタと、該ポリマーフィルタに接続された金型とを備える。
【0045】
本発明に係る押出装置は、溶融押出法によりポリマーをフィルム状に成膜して、光学フィルムを得るために用いられる押出装置であることが好ましい。
【0046】
本発明に係る押出成形品の製造方法は、溶融押出法によりポリマーを成形する押出成形品の製造方法であって、溶融したポリマーを、上記ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、成形する成形工程と、成形されたポリマーを、冷却することにより固化させて、押出成形品を得る冷却工程とを備える。
【0047】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、溶融押出法によりポリマーを成膜する光学フィルムの製造方法であって、溶融したポリマーを、上記ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、フィルム状に成膜する成膜工程と、フィルム状に成膜されたポリマーを、冷却することにより固化させて、光学フィルムを得る冷却工程とを備える。
【0048】
図3に、溶融押出法によりポリマーを成形する押出装置の一例を示す概略構成図を示す。
【0049】
図3に示す押出装置21は、溶融押出装置である。押出装置21は、溶融押出法によりポリマーを成形して、押出成形品を得るために用いられる押出装置である。押出装置21は、溶融押出法によりポリマーをフィルム状に成膜して、光学フィルムを得るために用いられる押出装置である。
【0050】
押出装置21は、押出機22と、上述したポリマーフィルタ1と、ポリマー回収部23と、金型24と、成膜ロール25と、第1,第2の冷却ロール26,27とを備える。
【0051】
押出機22は、押出機22内にポリマーを入れるためのホッパー22aを有する。押出機22の先端に、ポリマーフィルタ1が接続されている。ポリマーフィルタ1は、容器本体11の流入口11a側から押出機22の先端に取り付けられている。金型24に、ポリマーフィルタ1が接続されている。ポリマーフィルタ1は、ベースプレート12側から金型24に取り付けられている。ポリマーフィルタ1の下方に、ポリマーフィルタ1により排出された不要のポリマーを回収するポリマー回収部23が配置されている。
【0052】
成膜ロール25は、フィルム状に成膜されたポリマーを冷却するためのロールである。第1,第2の冷却ロール26,27は、成膜ロール25により成形(成膜)されたフィルム31(押出成形品)を冷却することにより固化させるためのロールである。
【0053】
押出装置21を用いて光学フィルムを得る際には、ホッパー22aからポリマーを押出機22内に入れる。押出機22内で、ポリマーを加熱して溶融させ、混練し、押し出す。押出機22により押し出されたポリマーは、ポリマーフィルタ1に導かれる。ポリマーフィルター1によりろ過されたポリマーは、金型24に導かれる。また、ポリマーフィルタ1のポリマー排出口11Cから排出された不要のポリマーはポリマー回収部23により回収される。
【0054】
金型24の開口から押出し、排出し、ポリマーをフィルム状に成膜する。排出されたフィルム31を、成膜ロール25に接触させ、冷却する。成膜ロール25により冷却されたフィルム31を、第1,第2の冷却ロール26,27により更に冷却して、固化し、巻き取り、ロール状の原反フィルムを得る。該ロール状の原反フィルムは、長尺状のフィルムである。
【0055】
金型24の開口から、フィルム31が成膜ロール25に接する接点までの距離、すなわちエアギャップは短いほうが好ましい。エアギャップが短いと、外乱による厚みばらつきを低減できる。すなわち、適正な厚みプロファイルを有するフィルムを安定的に製造できる。エアギャップは、70mm以下であることが好ましい。
【0056】
フィルム31が成膜ロール25に接触する際に、成膜ロール25とフィルム31との間に空気が入らないことが望ましく、かつ冷却速度がフィルム31の全面で均一であることが望ましい。従って、フィルム31と成膜ロール25との接点の下流側近傍において、タッチロールなどの押圧手段により、フィルム31を成膜ロール25側に押圧することが望ましい。押圧手段は、タッチロールに限定されない。該押圧手段として、エアナイフ又は静電ピニング等を用いてもよい。安定性に優れており、かつフィルムを均一に成膜ロール25に圧接させ得るため、弾性材料により形成された表面を有するタッチロールが好適に用いられる。
【0057】
なお、上記ポリマーフィルタによりろ過されるポリマーは特に限定されない。例えば、上記光学フィルムを得るために、上記ポリマーとして一般に熱可塑性樹脂が用いられている。該熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリサルホン系樹脂等が挙げられる。
【0058】
図3に示す押出装置21は、押出装置の一例にすぎず、押出装置の構成は適宜変更され得る。
【0059】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されない。
【0060】
(実施例1)
図1,2に示すポリマーフィルタ1を用意した。また、ポリマーフィルタ1を備えた図3に示す押出装置21を用意した。
【0061】
押出機22として単軸押出機を用い、口径90mm、L/D=28のフルフライトスクリューを用いて、押出機22の溶融部温度を260℃にして、ペレット状の樹脂(ポリマー)を溶融押出しして、ポリマーフィルタ1を用いて溶融樹脂中のゲルをろ過した。
【0062】
ポリマーフィルタ1は、劣化樹脂を排出するためのポリマー排出口11C(リーク穴)を備える。リーフディスク型フィルタ13として、ステンレス鋼繊維焼結体により形成された濾過精度5μm、直径8インチのリーフディスク型フィルタを用いた。センターポスト15に、各リーフディスク型フィルタ13間にガスケットを挟んだ状態で60枚積み重ねて装着し、容器本体11のハウジング11A内に組み込んだ。
【0063】
劣化樹脂を排出するためのポリマー排出口11Cは、ハウジング11Aにおいてベースプレート12に最も近い位置に円周方向に3箇所配置した。排出された樹脂を廃棄処理しやすいようにポリマー排出口11C(リーク穴)に樹脂管を取り付けた。
【0064】
ポリマー回収部23としてステンレス製の受け皿を用いて、該ポリマー回収部23により、ポリマー排出口11Cから排出された樹脂を回収した。
【0065】
ポリマーフィルタ1の加熱手段としてアルミ鋳込み型のヒーターを用い、樹脂のろ過を260℃の温度にて行った。
【0066】
ポリマーフィルタ1をろ過した溶融樹脂を1500mm幅、リップランド先端をWC溶射加工したTダイである金型24を用いてフィルム状に成膜した。直径300mm、表面がHCrめっきである成膜ロール25にて、フィルム状に成膜された樹脂を冷却し、更に第1,第2の冷却ロール26,27にて更に冷却し、厚み50μmの光学フィルムを作製した。
【0067】
その他、樹脂の投入は、押出機22上のホッパー22aにペレットを充満させて自重による自然投入とした。また、樹脂投入口からホッパー22aに窒素を送り込んで酸素を排出した。計量部分に位置するシリンダーの温度は250℃とし、シリンダーから金型24までの温度を250〜260℃に設定した。
【0068】
成膜ロール25として、熱媒体循環加熱方式の温度調節機構(オイルを熱媒体として用いる)を備えた冷却ロールを用いた。
【0069】
押出機22から押出速度100kg/hで、予備乾燥され、溶融した樹脂を押出した。有効幅は1300mmとした。
【0070】
(比較例1)
図1に示すポリマーフィルタ1においてポリマー排出口を設けなかったこと以外は同様にして構成されたポリマーフィルタを用いた。ポリマー排出口を有さないポリマーフィルタを用いて、樹脂を排出しなかったこと以外は実施例1と同様にして、厚み50μmの光学フィルムを得た。
【0071】
(評価)
実施例1及び比較例1で得られた光学フィルム(原反フィルム)を連続的に巻き出して、テンター延伸機を用いて、延伸倍率2.0倍で幅方向に一軸延伸して、延伸された光学フィルムを得た。この延伸された光学フィルムを用いて、下記の方法で点状欠点を評価した。
【0072】
<点状欠点の評価方法>
得られた光学フィルムを0.5mの面積で正方形に切断し、クロスニコルの状態にした偏光板に挟み、サンプルを得た。得られたサンプルを、机上照度1000ルクスの作業台上に置いて、反射光及び透過光を利用して、100μm以上の大きさのゲルに由来する点状欠点の数を目視にてカウントした。押出開始から30時間後、100時間後、200時間後、及び400時間後に得られた光学フィルムについて、10mあたりの点状欠点の数を数えた。
【0073】
結果を下記の表1に示す。
【0074】
【表1】

【符号の説明】
【0075】
1…ポリマーフィルタ
11…容器本体
11A…ハウジング
11B…ハウジング蓋
11C…ポリマー排出口
11a…ポリマー流入口
11b…開放部
11c…開閉部材
12…ベースプレート
12a…貫通孔
13…リーフディスク型フィルタ
13a…内周部分
14…押さえプレート
14a…貫通孔
15…センターポスト
15a…ポリマー流路
15b…貫通孔
16…押さえねじ
17…排出速度制御部材
21…押出装置
22…押出機
22a…ホッパー
23…ポリマー回収部
24…金型
25…成膜ロール
26,27…第1,第2の冷却ロール
31…フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーをろ過するためのポリマーフィルタであって、
ポリマー流入口と、開放部とを有する容器本体と、
前記容器本体の前記開放部に取り付けられたベースプレートと、
前記容器本体内に配置されており、前記容器本体内に流入したポリマーをろ過するための複数のリーフディスク型フィルタとを備え、
前記容器本体は、前記リーフディスク型フィルタによりろ過されずに、前記容器本体内において前記リーフディスク型フィルタの側方を通過したポリマーの少なくとも一部をポリマーフィルタの外部空間に排出するためのポリマー排出口を有する、ポリマーフィルタ。
【請求項2】
複数の前記リーフディスク型フィルタが接触するように、該リーフディスク型フィルタを固定している押さえプレートと、
前記リーフディスク型フィルタに挿入されており、前記リーフディスク型フィルタによりろ過されたポリマーをポリマーフィルタの外部空間に流出するためのポリマー流路を有するセンターポストとをさらに備える、請求項1に記載のポリマーフィルタ。
【請求項3】
前記容器本体は、前記ポリマー排出口を前記開放部側の端部に有する、請求項1又は2に記載のポリマーフィルタ。
【請求項4】
前記容器本体は、前記ポリマー排出口を複数有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーフィルタ。
【請求項5】
前記ポリマー排出口が、ポリマーのろ過時にポリマーが滞留しやすい位置に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーフィルタ。
【請求項6】
前記ポリマー排出口が開閉可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーフィルタ。
【請求項7】
前記ポリマー排出口に取り付けられており、前記ポリマー排出口から前記ポリマーを排出する速度を制御するための排出速度制御部材をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマーフィルタ。
【請求項8】
光学フィルムを得るための光学フイルム用ポリマーフィルタである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルタ。
【請求項9】
押出機と、
前記押出機の先端に接続されたポリマーフィルタと、
前記ポリマーフィルタに接続された金型とを備え、
前記ポリマーフィルタが請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーフィルタである、押出装置。
【請求項10】
溶融押出法によりポリマーをフィルム状に成膜して、光学フィルムを得るために用いられる押出装置である、請求項9に記載の押出装置。
【請求項11】
溶融押出法によりポリマーを成形する押出成形品の製造方法であって、
溶融したポリマーを、ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、
ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、成形する成形工程と、
成形されたポリマーを、冷却することにより固化させて、押出成形品を得る冷却工程とを備え、
前記ポリマーフィルタとして、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーフィルタを用いる、押出成形品の製造方法。
【請求項12】
溶融押出法によりポリマーを成膜する光学フィルムの製造方法であって、
溶融したポリマーを、ポリマーフィルタを通過させてろ過するろ過工程と、
ろ過されたポリマーを、金型から押し出して、フィルム状に成膜する成膜工程と、
フィルム状に成膜されたポリマーを、冷却することにより固化させて、光学フィルムを得る冷却工程とを備え、
前記ポリマーフィルタとして、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーフィルタを用いる、光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−213983(P2012−213983A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81969(P2011−81969)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】