説明

ポリマーフィルムおよびそのフィルムを含む光学素子

a)透明ポリマーと、b)水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤とを含み、高い透明性および低い脆性への傾向をまだ保持して、低い熱膨張係数を示すことができる、ポリマーフィルム。本発明はまた、このポリマーフィルムを含む光学素子にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた光学特性、熱特性および機械的特性を有するポリマーフィルム、ならびにこのフィルムを含む光学素子に関する。
【0002】
特に、このポリマーフィルムは透明ポリマーを含む。
【背景技術】
【0003】
今日、高性能ポリマーフィルムは、薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、電子ペーパー(eペーパー)、および他の電子デバイス、フレキシブルプリント配線基板および高温コンデンサなどの電子機器用途および光学用途用の薄型の柔軟性のある基材として市場から必要とされている。これらの基材は、一般に、例えば柔軟性、高耐熱性などのこの技術分野で典型的に必要とされる特性、加えて剛性の基材(ガラスなど)に典型的な多くのさらなる特徴(透明性、低い熱膨張係数(CTE)、低い不可逆的収縮、低吸湿膨張、低表面粗さ、低い酸素および水の透過、化学物質および溶媒に対する高い耐性など)を有する。
【0004】
(先行技術)
ナノメートル級またはマイクロメートル級の充填剤を含む複合材料は当該技術分野で周知であり、さらに、多くのポリマーフィルムが市販されている。
【0005】
特許文献1は、エポキシ樹脂およびガラス充填剤粒子を含む透明な複合材料を記載する。ここで、樹脂との用語は硬化後に、それぞれ当該ガラス充填剤の屈折率よりもより低いおよびより高い屈折率を有する2つのエポキシ樹脂の混合物を意味する。この透明な複合材料を光学素子の分野で使用するために、樹脂とガラス充填剤との間の屈折率の差は最小でなければならない。ガラス充填剤の屈折率はロットごとのばらつきを示すことが当該技術分野で公知である(例えば特許文献2を参照)。それゆえ、この2つの樹脂間のバランスが、あらゆる1つのガラス充填剤のロットについて慎重に評価されるべきである。そのため、特許文献1に記載されるプロセスは非常に費用がかかり、スケールアップすることが困難である。
【0006】
特許文献2は、樹脂と、明確な屈折率および明確な熱膨張係数を有する複数のガラスの微粒子およびナノ粒子とから構成される材料を記載する。CTEの低い値に到達するために、当該樹脂に対して大量(体積でおよそ30%)の微粒子を組み込むことが必要とされる。これは、記載される材料のより高い製造原価、および大きい直径を有する充填剤粒子の導入に起因する脆性の上昇につながる。
【0007】
特許文献3は、ポリエステルテレフタレートから誘導され、無機充填剤がクレーであるナノ複合材料を記載する。この材料は透明ではなく、それゆえそれは光学用途では使用することができない。
【0008】
特許文献4は28〜40ppm/℃のCTEおよび360℃の耐熱性を特徴とする透明な複合材料を記載する。この特許では、エポキシ樹脂と、このエポキシ樹脂に対して50%〜70%(重量/重量)の量で存在しかつ約3.5ミクロンの平均粒径によって特徴付けられるシリカベースの充填剤とによって構成される複合材料が記載されている。この複合材料では、紫外光に対しては透明である材料を得ることが可能となるが、可視範囲(400〜700nm)では透明性が不十分である。
【0009】
特許文献5は、低CTE、低減された収縮、および化学的攻撃に対する良好な耐性を有する薄いポリマーフィルムを製造するのに有用な方法を記載する。かかるポリマーフィルムは、ポリイミドベースのプラスチック材料を20ミクロン未満の平均直径を有する微小充填剤と混合することにより得られる。とはいうものの、特許の著者により証明されているように、かかる微小充填剤の存在に起因して、当該フィルムはその上面においてざらつき感を示し、これはかかる欠陥を排除するためにさらなる処理を必要とする。さらに、この特許に記載される複合材料は、ポリイミドの存在に起因する濃い琥珀色の着色を示す。
【0010】
特許文献6は、特に材料の弾性率(elastic module)を改善するために、2〜100nmの平均粒径を有するベーム石の形態のアルミナ水和物の使用を記載する。とはいうものの、かかる粒子を用いて得られるフィルムは透明ではなく、それゆえそれらを高品質光学素子の分野で用いることはできない。
【0011】
微粒子またはナノ粒子が充填された当該技術分野で記載されるポリマー材料は、一般に、低CTEならびに改善された物理特性および機械的特性という利点を示す。
【0012】
しかしながら、本発明の出願人は、かかるポリマー材料がこれまでに記載した不都合を示し、それゆえそれらを、例えば電子ディスプレイ市場での主要技術を構成するバックライト搭載液晶ディスプレイ用途では使用することができないことを認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,132,154号明細書
【特許文献2】米国特許第6,979,704号明細書
【特許文献3】米国特許第6,767,951号明細書
【特許文献4】米国特許第5,667,934号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0163968号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1,580,223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、改善された特性を備えたポリマーフィルムを得ることがいまだ必要である。
【0015】
具体的には、本発明の出願人は、高い透明性などの光学特性、および低い熱膨張係数(CTE)と組み合わせて良好な電気的特性、機械的特性および熱特性を有するポリマーフィルムを供給するという課題に直面した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願人は、本発明において、この課題は添付の請求項1で画定されるポリマーフィルムによって解決することができるということを見出した。
【0017】
本発明の第1の態様では、a)透明ポリマーと、b)水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤とを含むポリマーフィルムが、高い透明性および脆性への低い傾向をいまだ保持しながら、高い柔軟性、低い熱膨張係数を示すことができるということが見出された。それゆえ、本発明のポリマーフィルムは、特に、それらの必要条件が必要とされる高品質光学素子、例えば薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、電子ペーパー(eペーパー)などのための基材として用いることができる。
【0018】
さらに、本発明のポリマーフィルムは、それらが連続プロセス(ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)とも定義される)と適合性であるため、および従来の印刷手法と適合性であるため(これは、柔軟性のある基材と適合する経済的に有利な方法を使用するフォトリソグラフィなどの操作を可能にする)、ディスプレイおよび他の電子デバイスの製造原価を低下させるために特に有利である。
【0019】
本願明細書の記載および添付の特許請求の範囲の目的のために、透明ポリマーとの用語は、Lambda 5分光計によって測定した場合に550nmの波長で80%以上の光透過を有するポリマーを意味する。
【0020】
好ましくは、当該透明ポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエーテルスルホン(PES)およびフルオレンポリエステル(FPE)、またはこれらの誘導体および/もしくは混合物である。
【0021】
好ましくは、当該透明ポリマーは、一般式I:
【化1】

(式中、Aは、一般式II:
【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、およびアシル基を表す)を有する9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの1以上の異なる誘導体を表し、
Bは、式III:
【化3】

を有する1以上のジカルボキシ基を表し、nは当該ポリマーを構成する繰り返し単位の数であり、nは20より大きい整数である)によって表されるポリエステルである。
【0022】
好ましくは、R、R2、R、R、RおよびRは独立に、水素原子、ハロゲン原子(より好ましくはクロリドおよびブロミド)、および1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜5個の炭素原子を含むアルキル基を表す。
【0023】
より好ましくは、この透明ポリマーは、以下の式IV(式中、nは20より大きい整数である)によって表される1以上のポリエステルを含む。
【化4】

【0024】
より好ましくは、この透明ポリマーは、式IIの9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン誘導体と、イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物とによって表される少なくとも2つの異なる重合性単位から得られるポリエステルを含む。
【0025】
さらにより好ましくは、このイソフタル酸およびテレフタル酸の混合物は、重量で20%〜80%のイソフタル酸および重量で80%〜20%のテレフタル酸を含む。
【0026】
最も好ましくは、このイソフタル酸およびテレフタル酸の混合物は、重量で30%〜70%のイソフタル酸および70%〜30%のテレフタル酸を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般式Iのポリエステルの製造方法は、例えば欧州特許出願公開第396,418号に記載される方法のように公知であり、その方法ではテレフタル酸およびイソフタル酸単位を9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン誘導体と重合するために界面重縮合手法が使用される。
【0028】
好ましくは、本発明で使用される、水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤は、式Al.xHO(式中、xは1.0〜3.0の範囲にある)によって表される無機充填剤であり、具体的には、この無機充填剤は、例えば、ギブス石、バイヤライト(bayerite)、ノルドストランド石、ベーム石、ダイアスポアまたは擬ベーム石(pseudo−boehmite)であることができる。
【0029】
好ましくは、上記無機充填剤は、表面改質されたまたは表面改質されていないベーム石または擬ベーム石(式中、xは1.0〜2.0である)である。より好ましくは、上記無機充填剤は表面改質されたベーム石または擬ベーム石である。
【0030】
例えば、欧州特許出願公開第636,489号に記載されているような、本発明で使用される水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤は、アルミニウムアルコキシドまたはアルミン酸ナトリウムの加水分解などのいずれかの従来の方法によって製造することができる。Rocekら[Collect Czech.Chem.Commun.、第56巻、1253−1262(1991)]は、水酸化アルミニウムの多孔性は堆積温度によって、溶液のpHによって、熟成期間によっておよび使用される界面活性剤によって影響を受けることを報告している。
【0031】
本発明で使用される水酸化アルミニウムに基づく充填剤の形状は、より良好な分散性のため、および平板の形態の充填剤粒子はその充填剤を含むポリマーフィルム材料の形成の間に優先的に配向するため、平板の形態にあることが好ましい(Rocek J.ら、Applied Catalysis、第74巻、29−36(1991)による文献に記載されているとおり)。
【0032】
上記水酸化アルミニウムに基づく充填剤の平均粒径は、好ましくは10〜200nm、より好ましくは20〜150nmの範囲にある。
【0033】
上記水酸化アルミニウムに基づく充填剤の比表面積は、好ましくは70〜300m/gの範囲内、好ましくは100〜250m/gの範囲にあり、この比表面積は、Journal of American Chemical Society、第60巻、309頁(1938)に記載されるBET(Brunauer−Emmett−Teller)法に従って算出される。
【0034】
本発明のポリマーフィルムは、重量で0.5%〜80%の水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤と99.5%〜20%の透明ポリマーと、より好ましくは重量で1%〜50%の水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤と99%〜50%の透明ポリマーとを含むことが好ましい。
【0035】
好ましくは、本発明で使用されるポリマーフィルムの厚さは、10〜1000□mの範囲、より好ましくは20〜400□mの範囲にある。
【0036】
上記水酸化アルミニウムに基づく充填剤は、従来の手法によって本発明のポリマーフィルムに組み込むことができる。
【0037】
例えば、本発明で使用されるポリマーフィルムは、最終的には分散剤を用いて上記水酸化アルミニウムに基づく充填剤をキャスト溶媒中に最初に分散させ、充填剤懸濁液を得て、その後、上記透明ポリマーをこのようにして得られた充填剤懸濁液に溶解させることによって調製することができる。
【0038】
あるいは、当該水酸化アルミニウムに基づく充填剤は、ポリマーと混合され、次いで直接キャスト溶媒に添加され、キャスティング(casting)に有用な液体混合物が得られる。
【0039】
さらに、当該水酸化アルミニウムに基づく充填剤は、キャスト溶媒に分散する前、または透明ポリマーと混合し、次いでキャスト溶媒に加える前に、表面改質することができる。
【0040】
最後に、当該ポリマーフィルムは、表面改質されたまたは表面改質されていない充填剤の存在下での重合によって製造することができる。
【0041】
キャスト溶媒の具体的な例としては、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコールなどのケトン;N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの芳香族化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、およびリグロインなどの脂肪族炭化水素;ならびにテトラフルオロプロパノールおよびペンタフルオロプロパノールなどのフッ化物を含有する溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたはそれらを組合せて用いることができる。
【0042】
キャスト溶媒の好ましい例は、アルコールおよびハロゲン化脂肪族炭化水素、およびこれらの混合物である。
【0043】
溶媒量は、良好な充填剤の分散を保証するような量である。好ましい溶媒量は充填剤に対して30%〜99.9%(重量/重量)である。
【0044】
他の物質を当該水酸化アルミニウムに基づく充填剤を含有する分散液に加えることができ、この他の物質としては、例えば充填剤分散剤(ローディア(Rhodia)により供給される製品Rhodafac PA 17など)、またはレオロジー調整剤(rheological modifier)(例えば、短いアルキル鎖のアルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノール)、または増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、界面活性剤、消泡剤、防水剤、染料、可塑剤などの他の化合物が挙げられる。
【0045】
充填剤分散液を作製するため、および液体状態の透明ポリマーを得るためのプロセスは、例えば、高速混合機または他のシステムなどの当該技術分野で公知の典型的な手法によって成し遂げることができる。
【0046】
本発明のポリマーフィルムは、それらが連続プロセス(ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)とも定義される。これは柔軟性のある基材上での光学素子および電子デバイスの具現化にとって理想的である)と適合性であるため、および例えばフォトリソグラフィなどの従来の印刷手法と適合性であるため、ディスプレイおよび他の電子デバイスの製造原価を低下させるために特に有利である。
【0047】
第2の態様では、本発明は、a)透明ポリマーと、b)本発明の第1の態様に関連して上で記載されたとおりの水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤とを含むポリマーフィルムを含む光学素子に関する。
【0048】
本発明の光学素子は、例えば、薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、電子ペーパー(eペーパー)、および他の電子デバイス、フレキシブルプリント配線基板および高温コンデンサである。
【0049】
これらのデバイスは、かかるデバイスの商業化にとって特に有用な明らかな技術的および経済的利点とともに、低い熱膨張係数、高い透明性、脆性に対する低い傾向、および低い製造原価を有するポリマーフィルム基材から恩恵を受ける。
【0050】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明および実施例でより明白となるであろう。これらの実施例は、本発明を限定することなく本発明を例証するものと意図されているに違いない。
【実施例】
【0051】
フィルム1(基準)を、50%テレフタル酸および50%イソフタルの混合物を使用して、欧州特許第396,418号に記載されている界面重縮合手法を用いて、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを重合することによって得た。10グラムのそのようにして得たポリマー1を90グラムの塩化メチレンに溶解した。次いでこのドープを20分間脱気し、重力金型(gravity die)によってガラス基材上にキャストした。溶媒乾燥後、フィルム厚さは100μmであった。残留する溶媒を除去するため、および不可逆的な収縮を排除するために、このフィルムを270℃で20分間熱処理した。
【0052】
フィルム2(本発明)。3.08グラムの充填剤Disperal OS−1(サソール社(Sasol GmbH)から入手可能な表面改質されたベーム石充填剤)を高せん断混合機によって2グラムのエタノールおよび90グラムの塩化メチレンの中に分散させて、この充填剤の懸濁液を得た。
【0053】
次いで、6.9グラムの、基準のフィルム1を調製するために使用したポリマー1をこの充填剤懸濁液に溶解した。
【0054】
生成しうる凝集塊を排除するために、このようにして得たドープをゆっくりとした撹拌のもとに約24時間維持し、次いでフィルターを通る十分な流れを成し遂げるために調整した圧力のもとで10μmの濾材によって濾過した。最後に、このドープを20分間脱気し、次いで重力金型によってガラス基材上にキャストした。
【0055】
溶媒乾燥後、このフィルム厚さは100μmであった。
【0056】
残留する溶媒を除去するため、および不可逆的な収縮を排除するために、このフィルムをオーブン中で270℃で20分間熱処理した。
【0057】
フィルム3(本発明)。3.08グラムの充填剤Disperal OS−2(サソール社(Sasol GmbH)から入手可能な表面改質されたベーム石充填剤)を92グラムの塩化メチレンの中に分散させたことを除いて、フィルム2に言及して上に記載したのと同じ方法を使用して、これを得た。
【0058】
フィルム4(比較)。0.63グラムの充填剤Aerosil R812S(デグサ社(Degussa AG)から入手できるシリカベースの充填剤)を90グラムの塩化メチレンに分散したこと、およびその後に9.37グラムのポリマー1をそのようにして得た充填剤懸濁液に溶解したことを除いて、フィルム2に言及して上に記載したのと同じ方法を使用して、これを得た。
【0059】
フィルム5(比較)。2.67グラムの充填剤Aeroxide C−805(デグサ社(Degussa AG)から入手できるアルミナベースの充填剤)を92.33グラムの塩化メチレンに分散したこと、およびその後に6グラムのポリマー1をそのようにして得た充填剤懸濁液に溶解したことを除いて、フィルム2に言及して上に記載したのと同じ方法を使用して、これを得た。
【0060】
フィルム6(比較)。0.4グラムの充填剤Aerosil R972(デグサ社(Degussa AG)から入手できるシリカベースの充填剤)を95.6グラムの塩化メチレンに分散したこと、およびその後に4グラムのポリマー1をそのようにして得た充填剤懸濁液に溶解したことを除いて、フィルム2に言及して上に記載したのと同じ方法を使用して、これを得た。
【0061】
フィルム7(比較)。充填剤Aeroxide P25(デグサ社(Degussa AG)から入手できる二酸化チタンベースの充填剤)を充填剤Aeroxide C−805の代わりに使用したことを除いて、フィルム5に言及して上に記載したのと同じ方法を使用して、これを得た。
【0062】
フィルムの特性解析
フィルム1〜7を、その熱特性、光学特性および機械的特性について評価した。
【0063】
熱膨張係数(CTE)は、500Nロードセルつきの引張り試験用に設計された装置、引張り試験用締め具および最高250℃での試験のための熱電池を備えるコンピューター制御したインストロン(Instron) 5564動力計によって評価した。CTEは、温度勾配のあいだ一定の応力に保った試料の長さをモニターすることによって評価した。
【0064】
上記試料の光透過性は、Lambda 5分光計によって550nmの波長で試料の透過率を測定することにより得た。
【0065】
曇価(haze)は、EEL M57曇り度測定器(HAZEMETER)によって測定した。
【0066】
上記試料の脆性は、漸次小さくなる曲率半径にフィルムを畳み、1(非常に脆い)から10(非常に耐久性がある)までの評価用(scholastic)スコアを割り当てることによって行った試験によって決定した。折り畳み半径が小さいほど、割り当てられるスコアは良好である。
【0067】
結果を表1に報告する。
【0068】
【表1】

【0069】
表1は、水酸化アルミニウムに基づく充填剤および透明ポリマーを含む本発明のフィルム2およびフィルム3は、光学的な透明性、最適の耐脆性(resistance to brittleness)および低い曇価をまだ保持して、40ppm/℃未満の低下した熱膨張係数を示すことを示す。
【0070】
一方、基準フィルム1(同じポリマーであるが充填剤を含まない)および比較のフィルム4〜7(同じポリマーであるが、充填剤の種類が異なる)は、許容できないCTE(フィルム1の場合)および透明性、ならびにその光学素子での応用にとっては許容できない曇価(フィルム4〜7の場合)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)透明ポリマーと、b)水酸化アルミニウムに基づく無機充填剤とを含む、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記透明ポリマーがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマー、ポリエーテルスルホンおよびフルオレンポリエステル、またはこれらの誘導体および/もしくは混合物である、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記透明ポリマーが、一般式I:
【化1】

(式中、Aは、一般式II:
【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、およびアシル基を表す)を有する9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの1以上の異なる誘導体を表し、
Bは、式III:
【化3】

を有する1以上のジカルボキシ基を表し、nは前記ポリマーを構成する繰り返し単位の数であり、nは20より大きい整数である)によって表される、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記フィルムが、以下の式IV:
【化4】

(式中、nは20よりも大きい整数である)によって表される1以上のポリエステルを含む、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記フィルムが、式IIの9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの誘導体と、イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物とによって表される少なくとも2つの異なる重合性単位から得られるポリエステルを含む、請求項4に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物が、重量で20%〜80%のイソフタル酸および重量で80%〜20%のテレフタル酸を含む、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物が、重量で30%〜70%のイソフタル酸および70%〜30%のテレフタル酸を含む、請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
前記水酸化アルミニウムに基づく充填剤が式Alx.HO(式中、xは1.0〜3.0の範囲にある)によって表される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
前記水酸化アルミニウムに基づく充填剤がベーム石または擬ベーム石である、請求項8に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
前記水酸化アルミニウムに基づく充填剤の平均粒径が10〜200nmの範囲にある、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項11】
前記ポリマーフィルムの厚さが10〜1000□mの範囲にある、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリマーフィルムを含む光学素子。

【公表番号】特表2010−540745(P2010−540745A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527597(P2010−527597)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000691
【国際公開番号】WO2009/044415
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505379515)フェラーニア・テクノロジーズ・ソシエタ・ペル・アチオニ (4)
【氏名又は名称原語表記】Ferrania Technologies S.p.A.
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG CORNING PRECISION MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】