ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置、及び、処理方法
【課題】悪臭防止法の臭気指数規制に適合可能となるように排気の臭気指数を低減することができる、ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置を提供する。
【解決手段】ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、凝集撹拌槽内の廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、1次処理水を加熱する蒸発槽と、蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機とを備えるポリマーワックスの剥離廃液の処理装置を構成する。
【解決手段】ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、凝集撹拌槽内の廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、1次処理水を加熱する蒸発槽と、蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機とを備えるポリマーワックスの剥離廃液の処理装置を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置、及び、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床面には、その保護、美観等の目的をもって、多くの場合、その床剤としてポリマーワックスが塗布される。
この塗布された床剤としてのポリマーワックスは、塵埃の付着、機械的擦傷、磨耗等によって損耗し、その機能、美観が低下することから、通常、定期的に塗り替えがなされる。この塗り替えに当たっては、まず、既に塗られているポリマーワックスを剥離することが必要であり、上述した定期的な塗り替えによって、多量のポリマーワックスの剥離廃液が発生する。
【0003】
このポリマーワックスの剥離廃液の処理方法として、ポリマーと廃液中に含まれる剥離液による成分をも有効に燃料として利用し、産業廃棄物の全廃を図り、同時にその処理における環境に悪影響を及ぼす有害物質の発生を抑制したポリマーワックスの剥離廃液の処理方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−207128号公報
【特許文献2】特開2010−194493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法では、剥離廃液に凝集剤を添加することにより、剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する。そして、ポリマー塊は、そのまま固形燃料等に使用される材料となる。また、1次処理水には、分離されなかった剥離剤に含まれる界面活性剤や溶剤等の水溶性の薬剤等が含まれている。このため、1次処理水から、さらに固形分を抽出する。
この1次処理水からの固形分の抽出は、蒸留により1次処理水から水分を分離して行われている。つまり、1次処理水を加熱乾燥することにより、1次処理水から薬剤等を取り出している。
【0006】
しかし、1次処理水を加熱乾燥することにより、分離された水と同時に他の物質が排気される。このため、1次処理水を加熱した際に発生する廃蒸気には、水以外の物質が排出される。この廃蒸気が処理施設の排出口等から外部に排出される場合には、含まれる薬剤等の物質による臭気が問題となる。臭気は、悪臭防止法により規制されており、排気の臭気指数と気体排出口の高さ等に規制基準が定められている。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、悪臭防止法の臭気指数規制に適合可能となるように排気の臭気指数を低減することができる、ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置及び処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置は、ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、凝集撹拌槽内の廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、1次処理水を加熱する蒸発槽と、蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法は、ポリマーワックスの剥離廃液に凝集剤を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、ポリマー塊を抽出し、剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する分離工程と、1次処理水を加熱する蒸発工程とを有する。そして、蒸発工程において発生する廃蒸気を希釈して排気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1次処理水の廃蒸気を希釈することにより、排気の臭気指数を低減することができるポリマーワックスの剥離廃液の処理装置及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法のフロー図である。
【図2】本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置の構成図である。
【図3】臭気実験例1の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図4】臭気実験例1の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図5】臭気実験例1の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図6】臭気実験例1の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図7】臭気実験例2の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図8】臭気実験例2の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図9】臭気実験例2の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図10】臭気実験例2の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図11】臭気実験例3の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図12】臭気実験例3の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図13】臭気実験例3の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図14】臭気実験例3の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の剥離廃液の処理方法及び処置装置の具体的な実施の形態について説明する。
まず、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液の処理方法について説明する。本発明の剥離廃液の処理方法は、凝集処理工程、分離工程、中和工程、蒸発工程、希釈工程、及び、乾燥工程からなる。以下、廃液処理方法の工程について説明する。図1に、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液の処理方法のプロセスフローを示す。
【0013】
まず、床面に塗布されているポリマーワックスを、アミン類などの剥離剤により剥離する。床面に塗布されているポリマーワックスの剥離作業は、例えば、床面に塗工されているワックスの表面を、掃除機等によって塵埃等を排除し、ワックスを剥離する剥離剤を塗布する工程である。剥離剤としては、例えば、アミン類、アルコール類、エーテル類、及び、水等を含む組成物を用いる。そして、剥離剤を塗布した後に剥離作業を行い、例えばスクイジー及びバキュームを用いて剥離剤により剥離されたポリマーワックスを含む剥離廃液を回収する。
このように、ポリマーワックスを剥離した際に、ポリマーワックス及び剥離剤を含む、ポリマーワックスの剥離廃液が発生する。この剥離廃液は例えばpH11〜pH12.5程度の強いアルカリ性を示している。
【0014】
[凝集処理工程]
次に、上述の剥離廃液に対して、凝集剤を混合する凝集処理を行う。凝集剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、及び、その他ポリマーワックスの凝集処理に用いられる公知の凝集剤を用いる。この凝集処理工程に酸を用いた場合には、剥離廃液が酸性になる。剥離廃液に凝集剤を混合することにより、剥離廃液上層にワックス成分、すなわち半固形化状のポリマー塊が析出する。
【0015】
例えば、剥離廃液に対して、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸(ブレンステッド酸)を混合する。酸を混合することにより、剥離廃液の上層に、ゲル状の半固形化状のポリマー塊が瞬時に析出される。このように、剥離剤に含まれるアミンが、酸と反応することにより、ポリマー塊が塩として発生する。
【0016】
[分離工程]
析出したポリマー塊を抽出し、剥離廃液を、ポリマー塊と1次処理水とに分離する。また、抽出したポリマー塊を水で洗浄し、洗浄に使用した水を、再び1次処理水に加えてもよい。
【0017】
次に、剥離廃液から、ポリマー塊を分離抽出する。そして、このポリマー塊の抽出によって、剥離廃液を、ポリマーワックス及び剥離剤等からなるポリマー塊と、剥離廃液からポリマー塊を取り除いた後の1次処理水とに分離する。
分離処理は、例えば、ポリマー塊が析出した状態の剥離廃液を濾過装置に通して行う。さらに、分離されたポリマー塊に対し、圧搾、又は、遠心分離等の方法を用いて、ポリマー塊に含まれている水分を分離する。そして、ポリマー塊から分離した水分を上述の1次処理水に混合する。
【0018】
[中和工程]
凝集剤として酸を用いた場合には、1次処理水は、例えば、pHが2〜6.1程度の酸性を示す。このため、1次処理水にアルカリを混合することで、1次処理水を中和する。ポリマー塊を分離抽出する工程において、1次処理水に過剰な酸を加える必要があるため、1次処理水が酸性になる。この酸性の1次処理水にアルカリを加えることにより、1次処理水をほぼ中性、又は、弱酸性にする。
この中和処理に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等である。そして、アルカリの混合により、1次処理水を中性、又は、例えばpH6程度の弱酸性にする。このようにして強い酸性を示す1次処理水を、中性もしくは弱酸とすることにより、1次処理水の危険性を低下することができ、後工程において取り扱いが容易になる。なお、分離工程後の1次処理水が中性である場合には、この中和処理は行わなくてもよい。また、分離工程後の1次処理水がアルカリ性である場合には、この中和工程で酸を加えて中和してもよい。
【0019】
[蒸発工程]
次に、上述の1次処理水を加熱して、1次処理水に含まれる水分等を取り除く。
1次処理水には、上述のポリマー塊の分離抽出工程において、分離抽出されなかった薬剤等の残留物が含まれている。このため、1次処理水を加熱し、水を気化させることにより、水と残留物等とを分離する。
【0020】
この蒸発工程では、1次処理水を気化させることにより、水等が気化した廃蒸気と、薬剤等を含む残留廃液とに分離する。この蒸発工程では、1次処理水を蒸発・気化させる。
水に可溶な物質の気化を防ぐために、1次処理水を完全に蒸発させずに、一部液体として残す。水と、水に可溶な薬剤等の物質とを残留廃液中に残存させ、廃蒸気中への移動を抑える。このため、1次処理水の濃縮率は、30%程度とする。
これにより、1次処理水中に含まれる、2−アミノエタノール等の薬剤の残留物の蒸発を、充分に低下させることができ、例えば日本産業衛生学会による作業環境許容濃度以下に抑えることができる。
【0021】
[希釈工程]
蒸発工程において気化された廃蒸気は、煙突等の気体排出口から排出される。
ここで排出される、廃蒸気は、ほぼ水からなる。ただし、1次処理水には、水に可溶な物質が含まれている。例えば、剥離剤や剥離剤に含まれる溶剤等が含まれている。特に、剥離剤に含まれる2−アミノエタノールが1次処理水中に含まれることが知られている。また、1次処理水には、その他の多種の物質が溶解しているため、これらの物質が水と共に気化し、廃蒸気中に含まれる。
【0022】
このように、1次処理水を加熱乾燥することにより、水と同時に他の物質が排気される。このため、この排気が処理施設の排出口等から外部に排出される場合には、含まれる薬剤等による臭気がある。臭気の規制が、例えば、悪臭防止法等に定められている。悪臭防止法では、排気の臭気指数と気体排出口の高さ等に規制基準が定められている。また、2−アミノエタノールは、化学物質排出把握管理促進(PRTR)法の第1種指定物質に指定され、日本産業衛生学会による作業環境許容濃度等が決められている。
【0023】
従って、廃蒸気の臭気等の濃度を低下させるために、煙突等の気体排出口から排気する前に、送風機等を用いて廃蒸気を空気で希釈する。希釈することにより、廃蒸気中の臭気を低減することができる。また、廃蒸気中の臭気の原因となる薬剤の濃度を低下させることができる。
希釈により、悪臭防止法の規制に適合できる臭気指数まで、煙突等の気体排出口から排気する蒸気の臭気指数を低下させる。また、廃蒸気の臭気指数が基準値を超えている場合にも、排出前に空気によって希釈することにより、気体排出口からの排気を基準値以下にすることができる。このため、気体排出口の高さを基準以下とすることができる。また、新たに脱臭装置を設置する必要がない。
【0024】
[混合工程]
また、上記希釈工程とは別に、残留廃液の処理を行う。
残留廃液には、1次処理水に残留しているポリマーワックス成分や剥離剤等が濃縮されて含まれている。また、上述の蒸発工程において1次処理水を30%に濃縮されているため、残留廃液には水が含まれている。
この水を除去することにより、残留廃液中の成分をポリマー塊と混合して固形燃料の材料とすることができる。
【0025】
まず、残留廃液と吸収材とを混合する。吸収材を混合することにより、吸収材に残留廃液中の成分を吸着させる。吸着させることにより、残留廃液を乾燥させる際の残留廃液に含まれる水以外の成分の蒸発を抑制する。また、固形燃料とする際に吸収材を燃焼助剤とする。
【0026】
吸収材としては、例えば、おがくず、籾殻、蕎麦殻、椰子殻、紙、糸、毛等の繊維、果物、ワイン、酒、焼酎、大豆、おから、ビール、油、さとうだいこん、サトウキビ等食品の搾りかす、かつおや昆布のだしがら、こんにゃく飛粉、ナッツ類の殻、活性炭等を使用することができる。これらの例示する吸収材は、通常、廃棄物として大量に処分されているものであるため、吸収材に費やすコストを削減することができる。
【0027】
[乾燥工程]
次に、残留廃液と吸収材との混合物を、自然乾燥、送風乾燥、又は、加熱乾燥する。
乾燥方法は、特に限定されないが、残留廃液に含まれる水以外の成分が気化しないように、低温で乾燥することが好ましい。
乾燥速度が低いことにより、臭気の原因となる物質等の大気中への拡散速度が小さく、濃度が低いため、臭気の問題が発生しない。さらに、1次処理水から30%程度まで濃縮してあるため、乾燥速度が遅くても処理工程に影響がない。
【0028】
以上の工程により、剥離廃液の処理を行うことができる。
このようにポリマーワックスの剥離廃液を処理することにより、ポリマーワックスの剥離廃液中から酸の添加によってポリマーを分離抽出すると共に、剥離廃液中の有害な剥離剤中のアミンを塩に変化させることによって無害化する。そして、抽出されたポリマーは、固形燃料として用いる。このポリマーは、床剤の主成分であることから、きわめて多量に抽出されるが、固形燃料の生産に用いられるため多量の産業廃棄物の発生が回避される。
【0029】
(剥離廃液の処理装置)
次に、上述の処理を行うための剥離廃液の処置装置の具体的な実施の形態について説明する。以下に説明する剥離廃液の処理装置は、例えば床面に塗布されたポリマーワックスの塗り替えにおいて、ポリマーワックスの剥離作業によって発生した剥離廃液に対する装置である。床面に塗布されているポリマーワックスは、アミン類等の剥離剤により剥離される。このため、ポリマーワックスの剥離廃液には、剥離されたポリマーワックスや剥離剤等が含まれる。
【0030】
[廃液処理装置の構成]
図2に、本実施の形態の剥離廃液の処理装置の概略構成図を示す。図2に示す剥離廃液の処理装置は、剥離廃液槽10、凝集撹拌槽11、中和撹拌槽12、蒸発槽13、及び、送風機14を備える。
【0031】
剥離廃液槽10は、上述のポリマーワックスの剥離廃液が溜められる。そして、この剥離廃液槽10からポンプ21等を用いて凝集撹拌槽11に移送される。
凝集撹拌槽11では、剥離廃液槽10から移送されてきた剥離廃液に、凝集剤を混合する。凝集剤は、凝集剤槽15から凝集撹拌槽11に供給する。凝集剤の供給は、凝集撹拌槽11と凝集剤槽15との間に設けられた電磁弁25により制御する。
【0032】
凝集撹拌槽11は、pH計31と、槽回転モータ26とを備える。そして、この凝集撹拌槽11を回転する槽回転モータ26により、剥離廃液と凝集剤とを撹拌して混合する。また、凝集撹拌槽11の撹拌としては、例えば、凝集撹拌槽11とは別に設けられたコンプレッサ23から、凝集撹拌槽11の下部に空気を供給して凝集撹拌槽11内を撹拌する空気撹拌を行う。なお、凝集撹拌槽11の撹拌としては他の撹拌手段も使用可能であり、例えば、撹拌翼を備える撹拌槽を用いてもよい。これらの撹拌方法は、複数備えていてもよく、こられを同時に起動してもよく、また、別々に起動しても良い。
この凝集撹拌槽11において、剥離廃液がワックス成分、すなわち半固形化状のポリマー塊が剥離廃液中に析出する。
【0033】
凝集撹拌槽11において、析出したポリマー塊は、濾過槽17により取り除かれる。濾過槽17は、内部に濾過用の固液分離用のフィルタを備える。このフィルタにより、凝集撹拌槽11において析出したポリマー塊と、1次処理水とに分離する。
さらに、濾過槽17から取り出したポリマー塊に含まれる1次処理水を分離するために、別途、分離装置として、脱水機18を備える。
濾過槽17及び脱水機18で分離された1次処理水は、中和撹拌槽12に蓄積される。
【0034】
中和撹拌槽12は、凝集撹拌槽11において処理されてポリマー塊が分離された1次処理水を蓄積する。中和撹拌槽12は、pH計32を備える。中和撹拌槽12において、凝集撹拌槽11での処理により酸性となっている1次処理水のpHを中性にする。
中和剤(アルカリ)は、中和剤槽16から中和撹拌槽12に供給する。中和剤の供給は、中和撹拌槽12と中和剤槽16との間に設けられた電磁弁27により制御する。
また、図2に示す剥離廃液の処理装置では、中和撹拌槽12で処理された1次処理水を蓄えるための1次処理水槽20を備える。中和撹拌槽12から1次処理水槽20への1次処理水の移送は、ポンプ22を駆動することにより行う。
【0035】
蒸発槽13は、1次処理水槽20に蓄えられている中和処理が行われた1次処理水を、蒸発させる。1次処理水槽20から蒸発槽13への1次処理水の移送は、電磁弁29の開閉により制御する。
蒸発槽13は、熱交換器であり、外部に設けられたボイラ30からの加熱蒸気の配管が内部を通過する構成を有している。そして、ボイラ30で加熱された加熱蒸気が蒸発槽13に供給され、蒸発槽13内の1次処理水と熱交換により加熱され、水分が蒸発する。
【0036】
蒸発槽13において蒸発した水分は、排気として気体排出口34から装置の外部に排気される。蒸発槽13と気体排出口34との間には、送風機14が接続され、蒸発槽13からの排気が、送風機14から供給される空気(外気)により希釈される。
【0037】
蒸発槽13での蒸発処理後に、蒸発槽13内に残る残留廃液は、残留廃液槽19に放流される。残留廃液槽19は蒸発槽13と同様に熱交換器であり、外部に設けられたボイラ30からの加熱蒸気の配管が内部を通過する構成を有している。また、残留廃液槽19内には、予め残留廃液の吸収材が投入されている。残留廃液槽19には、撹拌用のモータ37が備えられ、残留廃液槽19内の残留廃液と吸収剤とを混合しながら、ボイラ30からの加熱蒸気により残留廃液を乾燥させる。
ボイラ30から、蒸発槽13及び残留廃液槽19への加熱蒸気の供給は、電磁弁33と電磁弁36との切り替えにより行う。
【0038】
また、剥離廃液の処理装置ではコンプレッサ23を備える。コンプレッサ23は、凝集撹拌槽11と中和撹拌槽12を撹拌するための空気を供給する。凝集撹拌槽11及び中和撹拌槽12への空気の供給は、電磁弁24及び電磁弁28の開閉により操作する。また、コンプレッサ23は、ポンプ21とポンプ22とに空気を供給し、ポンプ21とポンプ22を駆動する。
さらに、装置の各槽は、リミットスイッチRS、pH計等の計器を必要に応じて備える。
【0039】
[廃液処理装置の動作]
次に、上述の剥離廃液の処理装置の動作方法について説明する。
まず、操作盤スタートスイッチ(SW)を押すことにより、コンプレッサ23が起動する。そして、コンプレッサ23の動作後、剥離廃液槽10内の剥離廃液が、ポンプ21により凝集撹拌槽11に移送される。
【0040】
剥離廃液を、凝集撹拌槽11の上限リミットスイッチRS3が感知すると、ポンプ21が停止し、電磁弁24が開き、コンプレッサ23から凝集撹拌槽11に空気が送られ、凝集撹拌槽11内の剥離廃液が撹拌される。
また、上限リミットスイッチRS3が感知した後、電磁弁25が開き、凝集剤槽15から凝集撹拌槽11内に凝集剤が投入される。
【0041】
凝集撹拌槽11に設置されたpH計31が剥離廃液の所定のpH、例えばpH1〜3程度を感知した後、電磁弁25と電磁弁24を閉じ、凝集撹拌槽11への凝集剤の投入と、撹拌用の空気の供給とを停止する。
このとき、凝集撹拌槽11内の剥離廃液が凝集剤と混合、撹拌されることにより、剥離廃液に含まれるポリマーワックス及び剥離剤等をポリマー塊として凝集する。
【0042】
pH計31が感知した後、凝集撹拌槽11に取り付けられている槽回転モータ26が駆動し、凝集撹拌槽11内の剥離廃液を、濾過槽17に放流する。濾過槽17では、固液分離用のフィルタを備え、凝集撹拌槽11内の剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離される。
濾過槽17で分離された1次処理水は、中和撹拌槽12に蓄積される。
ポリマー塊は、濾過槽17から、脱水機18へ移送され、ポリマー塊に含まれる水分を分離する。分離した水分は、1次処理水と同じく、中和撹拌槽12に蓄積される。
【0043】
蓄積された1次処理水により、中和撹拌槽12の上限リミットスイッチRS5が動作すると、電磁弁27が開き、中和剤槽16から中和撹拌槽12に中和剤(アルカリ)が投入される。同時に、電磁弁28が開き、コンプレッサ23から中和撹拌槽12に空気が送られ、中和撹拌槽12内の1次処理水が撹拌される。
中和撹拌槽12に設置されたpH計32が、1次処理水の所定のpH(7程度)を感知し、1次処理水の中和処理が終了した後、電磁弁27と電磁弁28を閉じる。
【0044】
中和処理後、ポンプ22を駆動し、中和撹拌槽12内の1次処理水を、1次処理水槽20に汲み上げる。
1次処理水槽20の上限リミットスイッチRS7が感知すると、ポンプ22を停止する。そして、電磁弁29を開き、1次処理水槽20から蒸発槽13に1次処理水を移送し、蒸発槽13を1次処理水で満たす。同時に、ボイラ30を点火し、電磁弁33を開き、送風機14を起動する。
ボイラ30からの加熱蒸気を蒸発槽13内に供給し、蒸発槽13内で1次処理水と加熱蒸気との熱交換により、1次処理水を気化させる。
1次処理水が気化した廃蒸気は、送風機14からの空気に希釈された状態で、気体排出口34から排気される。
【0045】
1次処理水槽20の下限リミットスイッチRS8が動作すると、電磁弁33を閉じてボイラ30を止める。
電磁弁35を開き、蒸発槽13内の残留廃液を残留廃液槽19に放流する。電磁弁36を開き、ボイラ30の余熱による加熱蒸気を残留廃液槽19に導入する。
残留廃液槽19に備えられたモータ37により、残留廃液槽19内の残留廃液と吸収剤とを混合しながら、ボイラ30からの加熱蒸気により残留廃液を乾燥させる。
残留廃液槽19の上限リミットスイッチRS10が感知すると、電磁弁35を閉じ、残留廃液の放流を停止する。
残留廃液の乾燥終了後、全てのスイッチをリセットし、初期動作に戻る。
【実施例】
【0046】
以下、上述の本発明の剥離廃液処理について、実施例を用いて説明する。
[2−アミノエタノールの排気濃度試験]
1次処理水の蒸発処理工程において、廃蒸気中に含まれる2−アミノエタノールの濃度を測定した。2−アミノエタノールは、剥離剤等に使用されているため剥離廃液中に含まれている。
【0047】
まず、ポリマーワックスの剥離廃液について、上述の実施形態の方法により1次処理水を得た。そして、この1次処理水について加熱濃縮を行った。さらに、この加熱濃縮した1次処理水を試料として使用し、蒸留して蒸留液中の2−アミノエタノールの測定を行った。なお、加熱濃縮前の1次処理水中の2−アミノエタノールの濃度は、4600(mg/L)であった。
加熱濃縮による1次処理水の濃縮率を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
次に、濃縮後の1次処理水について、最終濃縮液を500ml分取し、吸収液として0.1mol硫酸5mlを混合した。そして、この混合液に対して蒸留操作を行った。蒸留操作は、蒸留開始から採取される蒸留液95mlと、蒸留終了ときの最後に採取される95mlとを、測定試料とした。最初に採取される蒸留液を始め蒸留分とし、最後に採取される蒸留液を後蒸留分とし、それぞれに含まれる2−アミノエタノールの濃度を測定した。
表2に、分取前(蒸留実験前)の1次処理水の質量、分取量、及び、分取された試料の蒸留前と蒸留後の質量を示す。また、表3に、1次処理水の濃縮率と、始め蒸留分及び後蒸留分の試料の濃縮率を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
次に、始め蒸留分及び後蒸留分のそれぞれの試料について、採取した95mlの蒸留液から、0.2ml分取した。これに、1mol/Lのホウ酸緩衝液0.3mlと、15mmol/LのFMOC(アセトニトリル)0.5mlを混合し、1分間撹拌した後、5分間放置した。次に、この試料に10%のN−メチルモルホリン10μlと、酢酸50μlを混合して調整した。
この試料を、高速液体クロマトグラフ分析法を用いて2−アミノエタノールの濃度を測定した。高速液体クロマトグラフ分析法に用いた諸条件を以下に示す。また、表4に、始め蒸留分及び後蒸留分の試料の2−アミノエタノールの濃度(mg/L)を示す。
【0053】
誘導体化試薬:FMOC(9-fluorenylmethyl chloroformate)
装置:Waters2695−2996
カラム:Waters XBridge C18(5μm,150×4.6mm)
移動相:水、アセトニトリル(60:40)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(PDA)
定量波長:265nm
注入量:5μl
【0054】
【表4】
【0055】
次に、表4に示す2−アミノエタノールの濃度を、気体中の濃度(mg/m3)に換算した結果を表5に示す。気体中の濃度への換算は、全ての水が気体化した状態に換算し、水1L当たり1000g、水の分子量18、気体1mol当たり22.4Lで計算した。
【0056】
【表5】
【0057】
表5に示すように、1次処理水の蒸発処理において発生する2−アミノエタノールの気体中の濃度は、平均して0.66(mg/m3)、1.08(mg/m3)であった。また、始め蒸留分の濃縮率が32.8%、34.4%のときの、2−アミノエタノール濃度が0.24mg/m3、0.74mg/m3であった。そして、後蒸留分の濃縮率が25.8%、27.0%のときの、2−アミノエタノール濃度が1.08mg/m3、1.42mg/m3であった。
2−アミノエタノールは、化学物質排出把握管理促進(PRTR)法の第1種指定物質に指定されているが、大気、水質への排出基準や人への摂取基準等は設けられていない。吸入ばく露について、ラットによる試験での無毒性量等が0.12mg/m3と設定されている他に、日本産業衛生学会による作業環境許容濃度7.5mg/m3(3ppm)が勧告されている。
これに対して、上述の2−アミノエタノールの濃度測定の結果では、1次処理水を30%程度まで濃縮しても、廃蒸気中の2−アミノエタノールの濃度が作業環境許容濃度よりも低い。また、後蒸留分の濃縮率が25.8〜27.0%のときの濃度が1.08〜1.42mg/m3であるため、無毒性量等においても、廃蒸気を10倍程度に希釈することにより、問題ない濃度となることがわかる。
従って、上述の本実施形態の剥離廃液処理では、1次処理水の蒸発工程において、1次処理水の濃縮率を25〜30%程度までとし、濃縮された1次処理水を残留廃液として処理することが好ましい。
【0058】
[臭気測定]
次に、1次処理水の蒸発処理において発生する、排気の臭気について測定した。
まず、ポリマーワックスの剥離廃液について、上述の実施形態の方法により1次処理水を得た。そして、この1次処理水に対して蒸発処理を行った。この蒸発処理により発生する廃蒸気について、臭気の測定を行った。
廃蒸気の臭気の測定は、平成7年環境庁告示第63号(排出口試料の方法)に従って行った。また、廃蒸気の臭気測定は、それぞれ別の剥離廃液から処理された1次処理水を用いて3回行った(臭気実験例1〜3)。
【0059】
廃蒸気の臭気測定結果について、臭気実験例1を表6、臭気実験例2を表7、及び、臭気実験例3を表8に示す。表6〜8は、蒸発槽から発生する廃蒸気を基準とし、このときの風速0(m/s)としている。そして、送風機を起動して廃蒸気を希釈したときの送風機からの外気の風速を1(m/s)から5(m/s)まで変化させたときの排気の臭気の変化を示している。
また、風速は、送風機の設定値と、排出口に設けた風速計による実測値(m/s)とを示す。風量(m3/h)は風速の実測値から換算している。
実倍数臭気濃度は、臭気濃度を希釈倍率で割った数値である。実倍数臭気濃度は、風速0ときの臭気濃度から、送風機による希釈によって低減すると予測される排気の臭気濃度を、希釈率を基に単純計算した場合の理論値である。
ガス量(L)は、風速0のとき1次処理水の加熱前重量(kg)と実験終了後重量(kg)との差と実験時間(h)から、1次処理水の蒸発量を全て水の蒸発と考えて水の分子量18、気体1mol当たり22.4Lで換算した。また、風速0以外のときのガス量は、風量に風速0のときのガス量を加えた数値である。具体的に、臭気実験例1では、加熱前重量が6.2kg、実験終了後重量が4.9kg、実験時間が45分であるため、減少量は1.73kg/hとなり、ガス量は2153Lとなる。また、臭気実験例2では、加熱前重量が6.65kg、実験終了後重量が5.60kg、実験時間が42分であるため、減少量は1.5kg/hとなり、ガス量は1867Lとなる。臭気実験例3では、加熱前重量が6.69kg、実験終了後重量が5.65kg、実験時間が35分であるため、減少量は1.61kg/hとなり、ガス量は2004Lとなる。
比率は、風速0のときのガス量を、風量で割った数値であり、希釈倍率は、比率の逆数である。
風量(m3/h)指数は、風量の常用対数である。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
表6に示す臭気実験例1の結果から、風量と臭気指数との関係を図3に示す。図3に示すように、風量の増加に対して臭気指数が指数関数的に減少している。また、図4に風量と臭気濃度との関係を示す。図4に示すように、風量の増加に対して臭気濃度が指数関数的に減少している。
【0064】
次に、図5に風量指数換算値と、臭気指数との関係を示す。図5に示すように、風量指数換算値の増加により臭気指数がほぼ比例するように低下する関係を示している。
また、図6に希釈倍率と臭気指数との関係を示す。図6に示すように、希釈倍率の増加に応じて、臭気指数がほぼ比例するように低下している。
【0065】
同様に、表7に示す臭気実験例2の結果から、風量と臭気指数との関係、風量と臭気濃度との関係、風量指数換算値と臭気指数との関係、及び、希釈倍率と臭気指数との関係を図7〜図10に示す。
また、表8に示す臭気実験例3の結果から、風量と臭気指数との関係、風量と臭気濃度との関係、風量指数換算値と臭気指数との関係、及び、希釈倍率と臭気指数との関係を図11〜図14に示す。
【0066】
図7、図8及び図11、図12に示すように、風量の増加に対して臭気指数と臭気濃度が指数関数的に減少している。また、図9、図10及び図13、図14に示すように、風量指数換算値と希釈倍率の増加に対して、臭気指数がほぼ比例するように低下している。
【0067】
上述の結果から、臭気の低下は、希釈風量や風量の指数関数、及び、希釈倍率に比例して低下することがわかる。これは、臭気濃度と実倍数臭気濃度との関係からも示されているように、1次処理水の廃蒸気を所定の倍数に希釈したとしても、臭気濃度はその希釈量に応じて低下しないことを表している。
例えば、1次処理水の廃蒸気の臭気指数は41〜49であり、臭気濃度は13000〜79000である。そして、廃蒸気を90倍程度に希釈した場合(風速3m/s)では、臭気濃度が250〜400となる。このときの臭気指数は24〜26である。
つまり、臭気濃度や臭気指数を悪臭防止法に適合できる値まで充分に低下させるためには、臭気濃度や臭気指数の指数関数的な減少を考慮して、希釈風量を決定する必要がある。悪臭防止法における臭気指数の規制条件は、後述するが、希釈倍率90における臭気指数24〜26は、現実的に排出口の規制に適合することができる充分低い臭気指数である。
さらに、上述の臭気実験例では、風速を5m/sとすることにより、臭気指数を17〜22まで低下させることができている。臭気指数17〜22は、上記風速3m/sと同様に、現実的に排出口の規制に適合することができる充分低い臭気指数である。
【0068】
悪臭防止法において、臭気指数による煙突等の気体排出口における悪臭の規制基準(2号基準)は、排出口における排気について規制がされている。気体排出口から排出された臭気ガスは、徐々に拡散及び希釈され、地表面に着地する。2号基準では、この臭気が敷地境界外の着地地点において、敷地境界線の規制基準(1号基準)以下となるように、排出口における臭気の排出基準が定められている。
【0069】
上述の臭気実験例において、風速5m/sにおける臭気指数を最も大きい値である22と仮定したとき、1号規制に適合するための排出口の口径と高さを見る。排出口の高さは15m未満とする。
悪臭防止法の臭気指数規制では、高さ15m未満の排出口の口径が、60cm未満を「小」、60cm以上90cm未満を「中」、90cm以上を「大」と定められている。
1号規制の基準値は、地方自治体と規制地域の概要に応じて定められている。以下、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するための排出口の条件を示す。また、排出口の条件を表9にまとめて示す。
【0070】
1号規制が準工業地域や工業地域、工業専用地域等で多く設定されている21のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを0.9m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを1.6m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを2.3m以上とする必要がある。
【0071】
1号規制が市街地調整地域等で設定されている18のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを1.3m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを2.3m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを3.2m以上とする必要がある。
【0072】
1号規制が商業地域等で設定されている15のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを1.7m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを3.2m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを4.5m以上とする必要がある。
【0073】
1号規制が各住居専用地域及び住居地域等で設定されている12のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを2.4m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを4.5m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを6.3m以上とする必要がある。
【0074】
【表9】
【0075】
以上のように、1次処理水からの廃蒸気を希釈し、さらに、排出口を上記の条件に設定することにより、悪臭防止法の規制に適合したポリマーワックスの剥離廃液の処理装置を構成することができる。つまり、1次処理水からの廃蒸気を、送風機を用いて希釈することにより、排出口の設置条件を上記の規制条件まで緩和することができる。このため、既存の排気設備においても、上記範囲内であれば、新たな設備を導入することなく、本実施形態のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法を実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 剥離廃液槽、11 凝集撹拌槽、12 中和撹拌槽、13 蒸発槽、14 送風機、15 凝集剤槽、16 中和剤槽、17 濾過槽、18 脱水機、19 残留廃液槽、20 1次処理水槽、21,22,30,37 ボイラ、23 コンプレッサ、24,25,27,28,29,33,35 電磁弁、26 槽回転モータ、31,32 pH計、34 気体排出口、RS1,RS3,RS5,RS7,RS10,RS13 上限リミットスイッチ、RS2,RS4,RS6,RS8,RS9,RS11,RS12,RS14 下限リミットスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置、及び、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床面には、その保護、美観等の目的をもって、多くの場合、その床剤としてポリマーワックスが塗布される。
この塗布された床剤としてのポリマーワックスは、塵埃の付着、機械的擦傷、磨耗等によって損耗し、その機能、美観が低下することから、通常、定期的に塗り替えがなされる。この塗り替えに当たっては、まず、既に塗られているポリマーワックスを剥離することが必要であり、上述した定期的な塗り替えによって、多量のポリマーワックスの剥離廃液が発生する。
【0003】
このポリマーワックスの剥離廃液の処理方法として、ポリマーと廃液中に含まれる剥離液による成分をも有効に燃料として利用し、産業廃棄物の全廃を図り、同時にその処理における環境に悪影響を及ぼす有害物質の発生を抑制したポリマーワックスの剥離廃液の処理方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−207128号公報
【特許文献2】特開2010−194493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法では、剥離廃液に凝集剤を添加することにより、剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する。そして、ポリマー塊は、そのまま固形燃料等に使用される材料となる。また、1次処理水には、分離されなかった剥離剤に含まれる界面活性剤や溶剤等の水溶性の薬剤等が含まれている。このため、1次処理水から、さらに固形分を抽出する。
この1次処理水からの固形分の抽出は、蒸留により1次処理水から水分を分離して行われている。つまり、1次処理水を加熱乾燥することにより、1次処理水から薬剤等を取り出している。
【0006】
しかし、1次処理水を加熱乾燥することにより、分離された水と同時に他の物質が排気される。このため、1次処理水を加熱した際に発生する廃蒸気には、水以外の物質が排出される。この廃蒸気が処理施設の排出口等から外部に排出される場合には、含まれる薬剤等の物質による臭気が問題となる。臭気は、悪臭防止法により規制されており、排気の臭気指数と気体排出口の高さ等に規制基準が定められている。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、悪臭防止法の臭気指数規制に適合可能となるように排気の臭気指数を低減することができる、ポリマーワックスの剥離廃液の処理装置及び処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置は、ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、凝集撹拌槽内の廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、1次処理水を加熱する蒸発槽と、蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法は、ポリマーワックスの剥離廃液に凝集剤を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、ポリマー塊を抽出し、剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する分離工程と、1次処理水を加熱する蒸発工程とを有する。そして、蒸発工程において発生する廃蒸気を希釈して排気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1次処理水の廃蒸気を希釈することにより、排気の臭気指数を低減することができるポリマーワックスの剥離廃液の処理装置及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法のフロー図である。
【図2】本発明のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置の構成図である。
【図3】臭気実験例1の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図4】臭気実験例1の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図5】臭気実験例1の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図6】臭気実験例1の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図7】臭気実験例2の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図8】臭気実験例2の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図9】臭気実験例2の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図10】臭気実験例2の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図11】臭気実験例3の風量と臭気指数との関係を示すグラフである。
【図12】臭気実験例3の風量と臭気濃度との関係を示すグラフである。
【図13】臭気実験例3の風量指数換算値と臭気指数の関係を示すグラフである。
【図14】臭気実験例3の希釈倍率と臭気指数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の剥離廃液の処理方法及び処置装置の具体的な実施の形態について説明する。
まず、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液の処理方法について説明する。本発明の剥離廃液の処理方法は、凝集処理工程、分離工程、中和工程、蒸発工程、希釈工程、及び、乾燥工程からなる。以下、廃液処理方法の工程について説明する。図1に、本発明によるポリマーワックスの剥離廃液の処理方法のプロセスフローを示す。
【0013】
まず、床面に塗布されているポリマーワックスを、アミン類などの剥離剤により剥離する。床面に塗布されているポリマーワックスの剥離作業は、例えば、床面に塗工されているワックスの表面を、掃除機等によって塵埃等を排除し、ワックスを剥離する剥離剤を塗布する工程である。剥離剤としては、例えば、アミン類、アルコール類、エーテル類、及び、水等を含む組成物を用いる。そして、剥離剤を塗布した後に剥離作業を行い、例えばスクイジー及びバキュームを用いて剥離剤により剥離されたポリマーワックスを含む剥離廃液を回収する。
このように、ポリマーワックスを剥離した際に、ポリマーワックス及び剥離剤を含む、ポリマーワックスの剥離廃液が発生する。この剥離廃液は例えばpH11〜pH12.5程度の強いアルカリ性を示している。
【0014】
[凝集処理工程]
次に、上述の剥離廃液に対して、凝集剤を混合する凝集処理を行う。凝集剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、及び、その他ポリマーワックスの凝集処理に用いられる公知の凝集剤を用いる。この凝集処理工程に酸を用いた場合には、剥離廃液が酸性になる。剥離廃液に凝集剤を混合することにより、剥離廃液上層にワックス成分、すなわち半固形化状のポリマー塊が析出する。
【0015】
例えば、剥離廃液に対して、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸(ブレンステッド酸)を混合する。酸を混合することにより、剥離廃液の上層に、ゲル状の半固形化状のポリマー塊が瞬時に析出される。このように、剥離剤に含まれるアミンが、酸と反応することにより、ポリマー塊が塩として発生する。
【0016】
[分離工程]
析出したポリマー塊を抽出し、剥離廃液を、ポリマー塊と1次処理水とに分離する。また、抽出したポリマー塊を水で洗浄し、洗浄に使用した水を、再び1次処理水に加えてもよい。
【0017】
次に、剥離廃液から、ポリマー塊を分離抽出する。そして、このポリマー塊の抽出によって、剥離廃液を、ポリマーワックス及び剥離剤等からなるポリマー塊と、剥離廃液からポリマー塊を取り除いた後の1次処理水とに分離する。
分離処理は、例えば、ポリマー塊が析出した状態の剥離廃液を濾過装置に通して行う。さらに、分離されたポリマー塊に対し、圧搾、又は、遠心分離等の方法を用いて、ポリマー塊に含まれている水分を分離する。そして、ポリマー塊から分離した水分を上述の1次処理水に混合する。
【0018】
[中和工程]
凝集剤として酸を用いた場合には、1次処理水は、例えば、pHが2〜6.1程度の酸性を示す。このため、1次処理水にアルカリを混合することで、1次処理水を中和する。ポリマー塊を分離抽出する工程において、1次処理水に過剰な酸を加える必要があるため、1次処理水が酸性になる。この酸性の1次処理水にアルカリを加えることにより、1次処理水をほぼ中性、又は、弱酸性にする。
この中和処理に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等である。そして、アルカリの混合により、1次処理水を中性、又は、例えばpH6程度の弱酸性にする。このようにして強い酸性を示す1次処理水を、中性もしくは弱酸とすることにより、1次処理水の危険性を低下することができ、後工程において取り扱いが容易になる。なお、分離工程後の1次処理水が中性である場合には、この中和処理は行わなくてもよい。また、分離工程後の1次処理水がアルカリ性である場合には、この中和工程で酸を加えて中和してもよい。
【0019】
[蒸発工程]
次に、上述の1次処理水を加熱して、1次処理水に含まれる水分等を取り除く。
1次処理水には、上述のポリマー塊の分離抽出工程において、分離抽出されなかった薬剤等の残留物が含まれている。このため、1次処理水を加熱し、水を気化させることにより、水と残留物等とを分離する。
【0020】
この蒸発工程では、1次処理水を気化させることにより、水等が気化した廃蒸気と、薬剤等を含む残留廃液とに分離する。この蒸発工程では、1次処理水を蒸発・気化させる。
水に可溶な物質の気化を防ぐために、1次処理水を完全に蒸発させずに、一部液体として残す。水と、水に可溶な薬剤等の物質とを残留廃液中に残存させ、廃蒸気中への移動を抑える。このため、1次処理水の濃縮率は、30%程度とする。
これにより、1次処理水中に含まれる、2−アミノエタノール等の薬剤の残留物の蒸発を、充分に低下させることができ、例えば日本産業衛生学会による作業環境許容濃度以下に抑えることができる。
【0021】
[希釈工程]
蒸発工程において気化された廃蒸気は、煙突等の気体排出口から排出される。
ここで排出される、廃蒸気は、ほぼ水からなる。ただし、1次処理水には、水に可溶な物質が含まれている。例えば、剥離剤や剥離剤に含まれる溶剤等が含まれている。特に、剥離剤に含まれる2−アミノエタノールが1次処理水中に含まれることが知られている。また、1次処理水には、その他の多種の物質が溶解しているため、これらの物質が水と共に気化し、廃蒸気中に含まれる。
【0022】
このように、1次処理水を加熱乾燥することにより、水と同時に他の物質が排気される。このため、この排気が処理施設の排出口等から外部に排出される場合には、含まれる薬剤等による臭気がある。臭気の規制が、例えば、悪臭防止法等に定められている。悪臭防止法では、排気の臭気指数と気体排出口の高さ等に規制基準が定められている。また、2−アミノエタノールは、化学物質排出把握管理促進(PRTR)法の第1種指定物質に指定され、日本産業衛生学会による作業環境許容濃度等が決められている。
【0023】
従って、廃蒸気の臭気等の濃度を低下させるために、煙突等の気体排出口から排気する前に、送風機等を用いて廃蒸気を空気で希釈する。希釈することにより、廃蒸気中の臭気を低減することができる。また、廃蒸気中の臭気の原因となる薬剤の濃度を低下させることができる。
希釈により、悪臭防止法の規制に適合できる臭気指数まで、煙突等の気体排出口から排気する蒸気の臭気指数を低下させる。また、廃蒸気の臭気指数が基準値を超えている場合にも、排出前に空気によって希釈することにより、気体排出口からの排気を基準値以下にすることができる。このため、気体排出口の高さを基準以下とすることができる。また、新たに脱臭装置を設置する必要がない。
【0024】
[混合工程]
また、上記希釈工程とは別に、残留廃液の処理を行う。
残留廃液には、1次処理水に残留しているポリマーワックス成分や剥離剤等が濃縮されて含まれている。また、上述の蒸発工程において1次処理水を30%に濃縮されているため、残留廃液には水が含まれている。
この水を除去することにより、残留廃液中の成分をポリマー塊と混合して固形燃料の材料とすることができる。
【0025】
まず、残留廃液と吸収材とを混合する。吸収材を混合することにより、吸収材に残留廃液中の成分を吸着させる。吸着させることにより、残留廃液を乾燥させる際の残留廃液に含まれる水以外の成分の蒸発を抑制する。また、固形燃料とする際に吸収材を燃焼助剤とする。
【0026】
吸収材としては、例えば、おがくず、籾殻、蕎麦殻、椰子殻、紙、糸、毛等の繊維、果物、ワイン、酒、焼酎、大豆、おから、ビール、油、さとうだいこん、サトウキビ等食品の搾りかす、かつおや昆布のだしがら、こんにゃく飛粉、ナッツ類の殻、活性炭等を使用することができる。これらの例示する吸収材は、通常、廃棄物として大量に処分されているものであるため、吸収材に費やすコストを削減することができる。
【0027】
[乾燥工程]
次に、残留廃液と吸収材との混合物を、自然乾燥、送風乾燥、又は、加熱乾燥する。
乾燥方法は、特に限定されないが、残留廃液に含まれる水以外の成分が気化しないように、低温で乾燥することが好ましい。
乾燥速度が低いことにより、臭気の原因となる物質等の大気中への拡散速度が小さく、濃度が低いため、臭気の問題が発生しない。さらに、1次処理水から30%程度まで濃縮してあるため、乾燥速度が遅くても処理工程に影響がない。
【0028】
以上の工程により、剥離廃液の処理を行うことができる。
このようにポリマーワックスの剥離廃液を処理することにより、ポリマーワックスの剥離廃液中から酸の添加によってポリマーを分離抽出すると共に、剥離廃液中の有害な剥離剤中のアミンを塩に変化させることによって無害化する。そして、抽出されたポリマーは、固形燃料として用いる。このポリマーは、床剤の主成分であることから、きわめて多量に抽出されるが、固形燃料の生産に用いられるため多量の産業廃棄物の発生が回避される。
【0029】
(剥離廃液の処理装置)
次に、上述の処理を行うための剥離廃液の処置装置の具体的な実施の形態について説明する。以下に説明する剥離廃液の処理装置は、例えば床面に塗布されたポリマーワックスの塗り替えにおいて、ポリマーワックスの剥離作業によって発生した剥離廃液に対する装置である。床面に塗布されているポリマーワックスは、アミン類等の剥離剤により剥離される。このため、ポリマーワックスの剥離廃液には、剥離されたポリマーワックスや剥離剤等が含まれる。
【0030】
[廃液処理装置の構成]
図2に、本実施の形態の剥離廃液の処理装置の概略構成図を示す。図2に示す剥離廃液の処理装置は、剥離廃液槽10、凝集撹拌槽11、中和撹拌槽12、蒸発槽13、及び、送風機14を備える。
【0031】
剥離廃液槽10は、上述のポリマーワックスの剥離廃液が溜められる。そして、この剥離廃液槽10からポンプ21等を用いて凝集撹拌槽11に移送される。
凝集撹拌槽11では、剥離廃液槽10から移送されてきた剥離廃液に、凝集剤を混合する。凝集剤は、凝集剤槽15から凝集撹拌槽11に供給する。凝集剤の供給は、凝集撹拌槽11と凝集剤槽15との間に設けられた電磁弁25により制御する。
【0032】
凝集撹拌槽11は、pH計31と、槽回転モータ26とを備える。そして、この凝集撹拌槽11を回転する槽回転モータ26により、剥離廃液と凝集剤とを撹拌して混合する。また、凝集撹拌槽11の撹拌としては、例えば、凝集撹拌槽11とは別に設けられたコンプレッサ23から、凝集撹拌槽11の下部に空気を供給して凝集撹拌槽11内を撹拌する空気撹拌を行う。なお、凝集撹拌槽11の撹拌としては他の撹拌手段も使用可能であり、例えば、撹拌翼を備える撹拌槽を用いてもよい。これらの撹拌方法は、複数備えていてもよく、こられを同時に起動してもよく、また、別々に起動しても良い。
この凝集撹拌槽11において、剥離廃液がワックス成分、すなわち半固形化状のポリマー塊が剥離廃液中に析出する。
【0033】
凝集撹拌槽11において、析出したポリマー塊は、濾過槽17により取り除かれる。濾過槽17は、内部に濾過用の固液分離用のフィルタを備える。このフィルタにより、凝集撹拌槽11において析出したポリマー塊と、1次処理水とに分離する。
さらに、濾過槽17から取り出したポリマー塊に含まれる1次処理水を分離するために、別途、分離装置として、脱水機18を備える。
濾過槽17及び脱水機18で分離された1次処理水は、中和撹拌槽12に蓄積される。
【0034】
中和撹拌槽12は、凝集撹拌槽11において処理されてポリマー塊が分離された1次処理水を蓄積する。中和撹拌槽12は、pH計32を備える。中和撹拌槽12において、凝集撹拌槽11での処理により酸性となっている1次処理水のpHを中性にする。
中和剤(アルカリ)は、中和剤槽16から中和撹拌槽12に供給する。中和剤の供給は、中和撹拌槽12と中和剤槽16との間に設けられた電磁弁27により制御する。
また、図2に示す剥離廃液の処理装置では、中和撹拌槽12で処理された1次処理水を蓄えるための1次処理水槽20を備える。中和撹拌槽12から1次処理水槽20への1次処理水の移送は、ポンプ22を駆動することにより行う。
【0035】
蒸発槽13は、1次処理水槽20に蓄えられている中和処理が行われた1次処理水を、蒸発させる。1次処理水槽20から蒸発槽13への1次処理水の移送は、電磁弁29の開閉により制御する。
蒸発槽13は、熱交換器であり、外部に設けられたボイラ30からの加熱蒸気の配管が内部を通過する構成を有している。そして、ボイラ30で加熱された加熱蒸気が蒸発槽13に供給され、蒸発槽13内の1次処理水と熱交換により加熱され、水分が蒸発する。
【0036】
蒸発槽13において蒸発した水分は、排気として気体排出口34から装置の外部に排気される。蒸発槽13と気体排出口34との間には、送風機14が接続され、蒸発槽13からの排気が、送風機14から供給される空気(外気)により希釈される。
【0037】
蒸発槽13での蒸発処理後に、蒸発槽13内に残る残留廃液は、残留廃液槽19に放流される。残留廃液槽19は蒸発槽13と同様に熱交換器であり、外部に設けられたボイラ30からの加熱蒸気の配管が内部を通過する構成を有している。また、残留廃液槽19内には、予め残留廃液の吸収材が投入されている。残留廃液槽19には、撹拌用のモータ37が備えられ、残留廃液槽19内の残留廃液と吸収剤とを混合しながら、ボイラ30からの加熱蒸気により残留廃液を乾燥させる。
ボイラ30から、蒸発槽13及び残留廃液槽19への加熱蒸気の供給は、電磁弁33と電磁弁36との切り替えにより行う。
【0038】
また、剥離廃液の処理装置ではコンプレッサ23を備える。コンプレッサ23は、凝集撹拌槽11と中和撹拌槽12を撹拌するための空気を供給する。凝集撹拌槽11及び中和撹拌槽12への空気の供給は、電磁弁24及び電磁弁28の開閉により操作する。また、コンプレッサ23は、ポンプ21とポンプ22とに空気を供給し、ポンプ21とポンプ22を駆動する。
さらに、装置の各槽は、リミットスイッチRS、pH計等の計器を必要に応じて備える。
【0039】
[廃液処理装置の動作]
次に、上述の剥離廃液の処理装置の動作方法について説明する。
まず、操作盤スタートスイッチ(SW)を押すことにより、コンプレッサ23が起動する。そして、コンプレッサ23の動作後、剥離廃液槽10内の剥離廃液が、ポンプ21により凝集撹拌槽11に移送される。
【0040】
剥離廃液を、凝集撹拌槽11の上限リミットスイッチRS3が感知すると、ポンプ21が停止し、電磁弁24が開き、コンプレッサ23から凝集撹拌槽11に空気が送られ、凝集撹拌槽11内の剥離廃液が撹拌される。
また、上限リミットスイッチRS3が感知した後、電磁弁25が開き、凝集剤槽15から凝集撹拌槽11内に凝集剤が投入される。
【0041】
凝集撹拌槽11に設置されたpH計31が剥離廃液の所定のpH、例えばpH1〜3程度を感知した後、電磁弁25と電磁弁24を閉じ、凝集撹拌槽11への凝集剤の投入と、撹拌用の空気の供給とを停止する。
このとき、凝集撹拌槽11内の剥離廃液が凝集剤と混合、撹拌されることにより、剥離廃液に含まれるポリマーワックス及び剥離剤等をポリマー塊として凝集する。
【0042】
pH計31が感知した後、凝集撹拌槽11に取り付けられている槽回転モータ26が駆動し、凝集撹拌槽11内の剥離廃液を、濾過槽17に放流する。濾過槽17では、固液分離用のフィルタを備え、凝集撹拌槽11内の剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離される。
濾過槽17で分離された1次処理水は、中和撹拌槽12に蓄積される。
ポリマー塊は、濾過槽17から、脱水機18へ移送され、ポリマー塊に含まれる水分を分離する。分離した水分は、1次処理水と同じく、中和撹拌槽12に蓄積される。
【0043】
蓄積された1次処理水により、中和撹拌槽12の上限リミットスイッチRS5が動作すると、電磁弁27が開き、中和剤槽16から中和撹拌槽12に中和剤(アルカリ)が投入される。同時に、電磁弁28が開き、コンプレッサ23から中和撹拌槽12に空気が送られ、中和撹拌槽12内の1次処理水が撹拌される。
中和撹拌槽12に設置されたpH計32が、1次処理水の所定のpH(7程度)を感知し、1次処理水の中和処理が終了した後、電磁弁27と電磁弁28を閉じる。
【0044】
中和処理後、ポンプ22を駆動し、中和撹拌槽12内の1次処理水を、1次処理水槽20に汲み上げる。
1次処理水槽20の上限リミットスイッチRS7が感知すると、ポンプ22を停止する。そして、電磁弁29を開き、1次処理水槽20から蒸発槽13に1次処理水を移送し、蒸発槽13を1次処理水で満たす。同時に、ボイラ30を点火し、電磁弁33を開き、送風機14を起動する。
ボイラ30からの加熱蒸気を蒸発槽13内に供給し、蒸発槽13内で1次処理水と加熱蒸気との熱交換により、1次処理水を気化させる。
1次処理水が気化した廃蒸気は、送風機14からの空気に希釈された状態で、気体排出口34から排気される。
【0045】
1次処理水槽20の下限リミットスイッチRS8が動作すると、電磁弁33を閉じてボイラ30を止める。
電磁弁35を開き、蒸発槽13内の残留廃液を残留廃液槽19に放流する。電磁弁36を開き、ボイラ30の余熱による加熱蒸気を残留廃液槽19に導入する。
残留廃液槽19に備えられたモータ37により、残留廃液槽19内の残留廃液と吸収剤とを混合しながら、ボイラ30からの加熱蒸気により残留廃液を乾燥させる。
残留廃液槽19の上限リミットスイッチRS10が感知すると、電磁弁35を閉じ、残留廃液の放流を停止する。
残留廃液の乾燥終了後、全てのスイッチをリセットし、初期動作に戻る。
【実施例】
【0046】
以下、上述の本発明の剥離廃液処理について、実施例を用いて説明する。
[2−アミノエタノールの排気濃度試験]
1次処理水の蒸発処理工程において、廃蒸気中に含まれる2−アミノエタノールの濃度を測定した。2−アミノエタノールは、剥離剤等に使用されているため剥離廃液中に含まれている。
【0047】
まず、ポリマーワックスの剥離廃液について、上述の実施形態の方法により1次処理水を得た。そして、この1次処理水について加熱濃縮を行った。さらに、この加熱濃縮した1次処理水を試料として使用し、蒸留して蒸留液中の2−アミノエタノールの測定を行った。なお、加熱濃縮前の1次処理水中の2−アミノエタノールの濃度は、4600(mg/L)であった。
加熱濃縮による1次処理水の濃縮率を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
次に、濃縮後の1次処理水について、最終濃縮液を500ml分取し、吸収液として0.1mol硫酸5mlを混合した。そして、この混合液に対して蒸留操作を行った。蒸留操作は、蒸留開始から採取される蒸留液95mlと、蒸留終了ときの最後に採取される95mlとを、測定試料とした。最初に採取される蒸留液を始め蒸留分とし、最後に採取される蒸留液を後蒸留分とし、それぞれに含まれる2−アミノエタノールの濃度を測定した。
表2に、分取前(蒸留実験前)の1次処理水の質量、分取量、及び、分取された試料の蒸留前と蒸留後の質量を示す。また、表3に、1次処理水の濃縮率と、始め蒸留分及び後蒸留分の試料の濃縮率を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
次に、始め蒸留分及び後蒸留分のそれぞれの試料について、採取した95mlの蒸留液から、0.2ml分取した。これに、1mol/Lのホウ酸緩衝液0.3mlと、15mmol/LのFMOC(アセトニトリル)0.5mlを混合し、1分間撹拌した後、5分間放置した。次に、この試料に10%のN−メチルモルホリン10μlと、酢酸50μlを混合して調整した。
この試料を、高速液体クロマトグラフ分析法を用いて2−アミノエタノールの濃度を測定した。高速液体クロマトグラフ分析法に用いた諸条件を以下に示す。また、表4に、始め蒸留分及び後蒸留分の試料の2−アミノエタノールの濃度(mg/L)を示す。
【0053】
誘導体化試薬:FMOC(9-fluorenylmethyl chloroformate)
装置:Waters2695−2996
カラム:Waters XBridge C18(5μm,150×4.6mm)
移動相:水、アセトニトリル(60:40)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(PDA)
定量波長:265nm
注入量:5μl
【0054】
【表4】
【0055】
次に、表4に示す2−アミノエタノールの濃度を、気体中の濃度(mg/m3)に換算した結果を表5に示す。気体中の濃度への換算は、全ての水が気体化した状態に換算し、水1L当たり1000g、水の分子量18、気体1mol当たり22.4Lで計算した。
【0056】
【表5】
【0057】
表5に示すように、1次処理水の蒸発処理において発生する2−アミノエタノールの気体中の濃度は、平均して0.66(mg/m3)、1.08(mg/m3)であった。また、始め蒸留分の濃縮率が32.8%、34.4%のときの、2−アミノエタノール濃度が0.24mg/m3、0.74mg/m3であった。そして、後蒸留分の濃縮率が25.8%、27.0%のときの、2−アミノエタノール濃度が1.08mg/m3、1.42mg/m3であった。
2−アミノエタノールは、化学物質排出把握管理促進(PRTR)法の第1種指定物質に指定されているが、大気、水質への排出基準や人への摂取基準等は設けられていない。吸入ばく露について、ラットによる試験での無毒性量等が0.12mg/m3と設定されている他に、日本産業衛生学会による作業環境許容濃度7.5mg/m3(3ppm)が勧告されている。
これに対して、上述の2−アミノエタノールの濃度測定の結果では、1次処理水を30%程度まで濃縮しても、廃蒸気中の2−アミノエタノールの濃度が作業環境許容濃度よりも低い。また、後蒸留分の濃縮率が25.8〜27.0%のときの濃度が1.08〜1.42mg/m3であるため、無毒性量等においても、廃蒸気を10倍程度に希釈することにより、問題ない濃度となることがわかる。
従って、上述の本実施形態の剥離廃液処理では、1次処理水の蒸発工程において、1次処理水の濃縮率を25〜30%程度までとし、濃縮された1次処理水を残留廃液として処理することが好ましい。
【0058】
[臭気測定]
次に、1次処理水の蒸発処理において発生する、排気の臭気について測定した。
まず、ポリマーワックスの剥離廃液について、上述の実施形態の方法により1次処理水を得た。そして、この1次処理水に対して蒸発処理を行った。この蒸発処理により発生する廃蒸気について、臭気の測定を行った。
廃蒸気の臭気の測定は、平成7年環境庁告示第63号(排出口試料の方法)に従って行った。また、廃蒸気の臭気測定は、それぞれ別の剥離廃液から処理された1次処理水を用いて3回行った(臭気実験例1〜3)。
【0059】
廃蒸気の臭気測定結果について、臭気実験例1を表6、臭気実験例2を表7、及び、臭気実験例3を表8に示す。表6〜8は、蒸発槽から発生する廃蒸気を基準とし、このときの風速0(m/s)としている。そして、送風機を起動して廃蒸気を希釈したときの送風機からの外気の風速を1(m/s)から5(m/s)まで変化させたときの排気の臭気の変化を示している。
また、風速は、送風機の設定値と、排出口に設けた風速計による実測値(m/s)とを示す。風量(m3/h)は風速の実測値から換算している。
実倍数臭気濃度は、臭気濃度を希釈倍率で割った数値である。実倍数臭気濃度は、風速0ときの臭気濃度から、送風機による希釈によって低減すると予測される排気の臭気濃度を、希釈率を基に単純計算した場合の理論値である。
ガス量(L)は、風速0のとき1次処理水の加熱前重量(kg)と実験終了後重量(kg)との差と実験時間(h)から、1次処理水の蒸発量を全て水の蒸発と考えて水の分子量18、気体1mol当たり22.4Lで換算した。また、風速0以外のときのガス量は、風量に風速0のときのガス量を加えた数値である。具体的に、臭気実験例1では、加熱前重量が6.2kg、実験終了後重量が4.9kg、実験時間が45分であるため、減少量は1.73kg/hとなり、ガス量は2153Lとなる。また、臭気実験例2では、加熱前重量が6.65kg、実験終了後重量が5.60kg、実験時間が42分であるため、減少量は1.5kg/hとなり、ガス量は1867Lとなる。臭気実験例3では、加熱前重量が6.69kg、実験終了後重量が5.65kg、実験時間が35分であるため、減少量は1.61kg/hとなり、ガス量は2004Lとなる。
比率は、風速0のときのガス量を、風量で割った数値であり、希釈倍率は、比率の逆数である。
風量(m3/h)指数は、風量の常用対数である。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
表6に示す臭気実験例1の結果から、風量と臭気指数との関係を図3に示す。図3に示すように、風量の増加に対して臭気指数が指数関数的に減少している。また、図4に風量と臭気濃度との関係を示す。図4に示すように、風量の増加に対して臭気濃度が指数関数的に減少している。
【0064】
次に、図5に風量指数換算値と、臭気指数との関係を示す。図5に示すように、風量指数換算値の増加により臭気指数がほぼ比例するように低下する関係を示している。
また、図6に希釈倍率と臭気指数との関係を示す。図6に示すように、希釈倍率の増加に応じて、臭気指数がほぼ比例するように低下している。
【0065】
同様に、表7に示す臭気実験例2の結果から、風量と臭気指数との関係、風量と臭気濃度との関係、風量指数換算値と臭気指数との関係、及び、希釈倍率と臭気指数との関係を図7〜図10に示す。
また、表8に示す臭気実験例3の結果から、風量と臭気指数との関係、風量と臭気濃度との関係、風量指数換算値と臭気指数との関係、及び、希釈倍率と臭気指数との関係を図11〜図14に示す。
【0066】
図7、図8及び図11、図12に示すように、風量の増加に対して臭気指数と臭気濃度が指数関数的に減少している。また、図9、図10及び図13、図14に示すように、風量指数換算値と希釈倍率の増加に対して、臭気指数がほぼ比例するように低下している。
【0067】
上述の結果から、臭気の低下は、希釈風量や風量の指数関数、及び、希釈倍率に比例して低下することがわかる。これは、臭気濃度と実倍数臭気濃度との関係からも示されているように、1次処理水の廃蒸気を所定の倍数に希釈したとしても、臭気濃度はその希釈量に応じて低下しないことを表している。
例えば、1次処理水の廃蒸気の臭気指数は41〜49であり、臭気濃度は13000〜79000である。そして、廃蒸気を90倍程度に希釈した場合(風速3m/s)では、臭気濃度が250〜400となる。このときの臭気指数は24〜26である。
つまり、臭気濃度や臭気指数を悪臭防止法に適合できる値まで充分に低下させるためには、臭気濃度や臭気指数の指数関数的な減少を考慮して、希釈風量を決定する必要がある。悪臭防止法における臭気指数の規制条件は、後述するが、希釈倍率90における臭気指数24〜26は、現実的に排出口の規制に適合することができる充分低い臭気指数である。
さらに、上述の臭気実験例では、風速を5m/sとすることにより、臭気指数を17〜22まで低下させることができている。臭気指数17〜22は、上記風速3m/sと同様に、現実的に排出口の規制に適合することができる充分低い臭気指数である。
【0068】
悪臭防止法において、臭気指数による煙突等の気体排出口における悪臭の規制基準(2号基準)は、排出口における排気について規制がされている。気体排出口から排出された臭気ガスは、徐々に拡散及び希釈され、地表面に着地する。2号基準では、この臭気が敷地境界外の着地地点において、敷地境界線の規制基準(1号基準)以下となるように、排出口における臭気の排出基準が定められている。
【0069】
上述の臭気実験例において、風速5m/sにおける臭気指数を最も大きい値である22と仮定したとき、1号規制に適合するための排出口の口径と高さを見る。排出口の高さは15m未満とする。
悪臭防止法の臭気指数規制では、高さ15m未満の排出口の口径が、60cm未満を「小」、60cm以上90cm未満を「中」、90cm以上を「大」と定められている。
1号規制の基準値は、地方自治体と規制地域の概要に応じて定められている。以下、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するための排出口の条件を示す。また、排出口の条件を表9にまとめて示す。
【0070】
1号規制が準工業地域や工業地域、工業専用地域等で多く設定されている21のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを0.9m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを1.6m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを2.3m以上とする必要がある。
【0071】
1号規制が市街地調整地域等で設定されている18のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを1.3m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを2.3m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを3.2m以上とする必要がある。
【0072】
1号規制が商業地域等で設定されている15のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを1.7m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを3.2m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを4.5m以上とする必要がある。
【0073】
1号規制が各住居専用地域及び住居地域等で設定されている12のとき、上述の臭気実験例の臭気指数22の排気ガスが1号規制に適合するためには、以下のように排出口を定める必要がある。
排出口の口径が小であれば、排出口の高さを2.4m以上とする必要がある。
排出口の口径が中であれば、排出口の高さを4.5m以上とする必要がある。
排出口の口径が大であれば、排出口の高さを6.3m以上とする必要がある。
【0074】
【表9】
【0075】
以上のように、1次処理水からの廃蒸気を希釈し、さらに、排出口を上記の条件に設定することにより、悪臭防止法の規制に適合したポリマーワックスの剥離廃液の処理装置を構成することができる。つまり、1次処理水からの廃蒸気を、送風機を用いて希釈することにより、排出口の設置条件を上記の規制条件まで緩和することができる。このため、既存の排気設備においても、上記範囲内であれば、新たな設備を導入することなく、本実施形態のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法を実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 剥離廃液槽、11 凝集撹拌槽、12 中和撹拌槽、13 蒸発槽、14 送風機、15 凝集剤槽、16 中和剤槽、17 濾過槽、18 脱水機、19 残留廃液槽、20 1次処理水槽、21,22,30,37 ボイラ、23 コンプレッサ、24,25,27,28,29,33,35 電磁弁、26 槽回転モータ、31,32 pH計、34 気体排出口、RS1,RS3,RS5,RS7,RS10,RS13 上限リミットスイッチ、RS2,RS4,RS6,RS8,RS9,RS11,RS12,RS14 下限リミットスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、
前記凝集撹拌槽内の前記廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、
前記1次処理水を加熱する蒸発槽と、
前記蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機と、を備える
ことを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項2】
前記蒸発槽内の残存液を吸収させる吸収材槽を備えることを特徴とする請求項1に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項3】
前記凝集撹拌槽において空気撹拌を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項4】
ポリマーワックスの剥離廃液に凝集剤を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、
前記ポリマー塊を抽出し、前記剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する分離工程と、
前記1次処理水を加熱する蒸発工程と、を有し、
前記蒸発工程において発生する廃蒸気を希釈して排気する
ことを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項5】
希釈倍率を90倍以上とすることを特徴とする請求項4に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項6】
前記廃蒸気を希釈する風量を3m/s以上とすることを特徴とする請求項4に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項1】
ポリマーワックスの剥離廃液と凝集剤とを混合する凝集撹拌槽と、
前記凝集撹拌槽内の前記廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する濾過槽と、
前記1次処理水を加熱する蒸発槽と、
前記蒸発槽の気体排出口に設けられた送風機と、を備える
ことを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項2】
前記蒸発槽内の残存液を吸収させる吸収材槽を備えることを特徴とする請求項1に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項3】
前記凝集撹拌槽において空気撹拌を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理装置。
【請求項4】
ポリマーワックスの剥離廃液に凝集剤を加えてポリマー塊を析出させる凝集処理工程と、
前記ポリマー塊を抽出し、前記剥離廃液をポリマー塊と1次処理水とに分離する分離工程と、
前記1次処理水を加熱する蒸発工程と、を有し、
前記蒸発工程において発生する廃蒸気を希釈して排気する
ことを特徴とするポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項5】
希釈倍率を90倍以上とすることを特徴とする請求項4に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【請求項6】
前記廃蒸気を希釈する風量を3m/s以上とすることを特徴とする請求項4に記載のポリマーワックスの剥離廃液の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−107052(P2013−107052A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255267(P2011−255267)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(504288591)株式会社グンビル (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(504288591)株式会社グンビル (5)
【Fターム(参考)】
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