説明

ポリマー製取り外し接合部を備える、移植可能なデバイス

【課題】取り外し接合部を有する血管閉塞コイルおよびステントのような移植可能なデバイスの提供。
【解決手段】血管閉塞コイルおよびステントのような移植可能なデバイス102、送達機構106、ならびにエネルギー源118からの低周波数エネルギーまたは直流の適用によって該移植可能なデバイスから取り外される接合部材104、を備えるアセンブリ、ならびに該アセンブリを被験体に導入する工程および低周波数エネルギーまたは直流を適用することによって該移植可能なデバイスを取り外す工程、を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、移植可能なデバイスの分野に関する。より詳細には、デバイスと送達機構との間のポリマー接合部を融解するかまたは切断するために、低周波数エネルギーまたは直流(DC)を用いて、送達機構から移植可能なデバイスを取り外すことに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ヒトの身体の脈管構造内で正確な配置を必要とする、種々の移植可能なデバイスが存在する。このようなデバイスとしては、血管閉塞コイル、ステントおよび他の三次元デバイスが挙げられる。血管閉塞コイルは、例えば、Ritchartらに対する米国特許第4,994,069号;Mariantらに対する米国特許第5,624,461号;Mariantらに対する米国特許第5,639,277号に記載され、そしてWallaceらに対する米国特許第5,649,949号は、変動可能な横断面のコニカル血管閉塞コイルを記載する。ステントは、例えば、Wallstenに対する米国特許第4,655,771号;Wallstenに対する米国特許第4,954,126号およびWallstenらに対する米国特許第5,061,275号に記載される。
【0003】
代表的に、移植可能なデバイスは、展開機構(例えは、接着されたワイヤ)から解放されるための脱離機構を含む。いくつかの種類の技術は、血管内での移植可能なデバイスのより正確な配置を確実にするために開発された。1つの種類は、プッシャー(pusher)から血管閉塞部材を取り外すための電解性手段の使用に関する。1つの技術において(Guglielmiらに対する米国特許第5,122,136号)、血管閉塞部材は、プッシャーの端部に、金属−金属接合を介して結合される。プッシャーおよび血管閉塞部材は、異なる金属から作製される。この血管閉塞部材保有プッシャーは、カテーテル中を通って、その部位に進められ、そして低い電流が、プッシャー−血管閉塞部材アセンブリを通って流れる。この電流は、プッシャーと血管閉塞部材との間の接合を電解によって切断させる。次いで、このプッシャーは、血管内の正確な位置で取り外された血管閉塞部材を残したまま格納され得る。血管閉塞部材のより正確な配置を確実にすることに加えて、電流は、血管閉塞部材部位で血栓形成を促進し得る。この方法の唯一認められた不利益は、血管閉塞部材の電解解放は、時間を必要とし、プッシャーから血管閉塞部材の迅速な取り外しが起こらないことである。この技術の他の例は、Phamらに対する米国特許第5,423,829号およびPalermoに対する米国特許第5,522,836号に見出され得る。
【0004】
エネルギーの他の形態はまた、プッシャーと血管閉塞部材デバイスを接続する犠牲的な接合を切断するために使用される。例は、Ogawaらに対する日本国公開特許広報番号7−265431または対応する米国特許第5,759,161号および米国特許第5,846,210号に示されるものである。犠牲的な接続部材(好ましくは、ポリ酢酸ビニル(PVA)、樹脂または形状記憶合金から作製される)は、拘束部材に伝導性ワイヤを接続する。単極の高周波数の電流により加熱することによって、犠牲の接続部材は融解し、拘束部材からワイヤを切断する。Engelsonに対する米国特許第5,944,733号は、熱可塑性接続を切断するための、無線周波数エネルギーの適用を記載する。
【0005】
O’Reillyに対する米国特許第4,735,201号において、光ファイバーはカテーテル内に封入され、ホットメルト接着剤層により、その遠位端部上に金属製先端部を接続する。光ファイバーの近位端部は、レーザーエネルギー供給源に接続される。動脈瘤中に脈管内導入される場合、レーザーエネルギーは、光ファイバーに適用され、隣接する周辺組織を焼くように金属チップを加熱する。光ファイバーと金属チップのための結合材料として使用する、ホットメルト接着剤層は、このレーザーを放出する間に融解されるが、界面の統合性は、医師によるカテーテルへの後部圧力の適用によって維持される。適切な治療効果が達成されたことが明らかな時点で、次いで、別のパルスのレーザーエネルギーが、もう一度、ホットメルト接着剤を融解するために適用されるが、この再加熱の際に、光ファイバーおよびカテーテルは、医師によって引き抜かれ、動脈瘤に永久プラグとして金属チップを残す。
【0006】
脈管構造内に移植可能なデバイスを配置するための他の方法は、レーザーを用いることによって取り外され得る、熱解放可能な結合を利用する(例えば、米国特許第5,108,407号参照のこと)。EP 0 992 220は、送達部材を通って送られる伝導性ワイヤを含む塞栓コイル配置システムを記載している。これらのワイヤが十分な熱を生じる場合、これらは、塞栓コイルと送達ワイヤとの間の結合を切断することが可能である。さらに、米国特許出願第09/177,848号は、塞栓コイルを取り外すための流体圧力(例えば、水力)の使用を記載している。
【0007】
種々の機械的に取り外し可能なデバイスもまた公知である。例えば、Sepetkaに対する米国特許第5,234,437号は、連結された表面を有するプッシャーかららせん状に巻かれたコイルを回して抜く方法を示している。Palermoに対する米国特許第5,250,071号は、プッシャーおよび塞栓コイルの両方に接続された連結する留め金を用いた塞栓コイルアセンブリを示す。Engelsonに対する米国特許第5,261,916号は、連結される球および鍵穴型の結合を有する、取り外し可能なプッシャー−脈管閉塞性コイルアセンブリを示す。Twyfordらに対する米国特許第5,304,195号は、添付された、その近位端部上に球を備える近位に延長するワイヤを有し、そして類似端部を有するプッシャーを有するプッシャー−血管閉塞コイルアセンブリを示す。カテーテルの遠位の先端部から外れた場合に、これらの2つの端部は連結され、そして解かれる。Palermoに対する米国特許第5,312,415号はまた、らせん状に巻かれたコイルの内部と相互に連絡する能力のあるセクションを有するガイドワイヤの使用によって、単一のプッシャーから、多くのコイルを排出する方法を示す。Palermoらに対する米国特許第5,350,397号は、プッシャーがその遠位端部にのど部を有し、そしてプッシャーがその軸を通ることを示している。このプッシャーシースは塞栓コイルの端部に維持され、次いで軸方向配置されたプッシャーワイヤを、血管閉塞コイルの近位端部に見出される部材に対して押すことで放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの書類は、低周波数または直流を適用することによって取り外し可能な、取り外し接合部を有するデバイスを開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、低周波数エネルギーまたは直流を用いて、展開機構から、移植可能なデバイスを取り外すための組成物および方法を含む。
【0010】
1つの局面において、本発明は、(a)移植可能なデバイス;(b)展開機構;および(c)移植可能なデバイスと展開機構を連結する接合部材を備えるアセンブリを含む。この接合部材(例えば、PVAのような熱可塑性ポリマー)は、低周波数エネルギーまたは直流の適用によって移植可能なデバイスから取り外される。特定の実施形態において、低周波数または直流は、100kHz未満、好ましくは80kHz未満である。この展開機構は、例えば、伝導性ワイヤを含み得る。この移植可能なデバイスは、例えば、血管閉塞コイルまたはステントを含み得る。
【0011】
他の局面において、本明細書中に記載される任意のデバイスおよび/またはアセンブリは、送達機構に接続された低周波数エネルギーまたは直流の供給源および/または接合部材で作動可能に連結された伝導性部材をさらに含む。他の実施形態において、本明細書中に記載されるアセンブリデバイスは、カテーテルをさらに含み、このアセンブリはカテーテル内に配置される。さらに、このカテーテルは、カテーテルの遠位先端部に陰極を備え得る。
【0012】
他の局面において、アセンブリデバイスを用いる方法が提供され、例えば、本明細書中に記載されるようなアセンブリを、被験体に導入する工程、そして低周波数エネルギーまたは直流を与えることによって所望の位置に移植可能なデバイスを取り外す工程を提供する。
【0013】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示を鑑みて、当業者に容易に想像される。
【0014】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1) アセンブリであって、以下:
(a)移植可能なデバイス;
(b)展開機構;ならびに
(c)該移植可能なデバイスおよび該展開機構を連結する、接合部材であって、ここで、該接合部材は、低周波数エネルギーまたは直流の適用によって、該移植可能なデバイスから取り外される、接合部材、
を備える、アセンブリ。
(2) 前記接合部材が、熱可塑性ポリマーを含む、項目1に記載のアセンブリ。
(3) 前記熱可塑性ポリマーがPVAである、項目2に記載のアセンブリ。
(4) 前記低周波数エネルギーが、100kHz未満である、項目1〜3のいずれかに記載のアセンブリ。
(5) 前記低周波数エネルギーが、80kHz未満である、項目1〜3のいずれかに記載のアセンブリ。
(6) 前記展開機構が、伝導性ワイヤを備える、項目1〜5のいずれかに記載のアセンブリ。
(7) 前記移植可能なデバイスが、血管閉塞コイルを備える、項目1〜6のいずれかに記載のアセンブリ。
(8) 前記移植可能なデバイスが、ステントを備える、項目1〜6のいずれかに記載のアセンブリ。
(9) さらに、以下:
(d)前記送達機構に取り付けられる、低周波数エネルギーまたは直流の供給源、
を備える、項目1に記載のアセンブリ。
(10) さらに、以下:
(d)前記接合部材と作動可能に接触する、伝導性部材、
を備える、項目1に記載のアセンブリ。
(11) さらに、以下:
(e)前記伝導性部材に取り付けられた、低周波数または直流の供給源、
を備える、項目10に記載のアセンブリ。
(12) カテーテルをさらに備える、項目1に記載のアセンブリであって、該アセンブリが、該カテーテルの内部に配置されている、アセンブリ。
(13) 前記カテーテルの遠位先端に、陰極をさらに備える、項目12に記載のアセンブリ。
(14) 被験体に移植可能なデバイスを導入する方法であって、該方法は、以下:
(a)項目1〜13のいずれかに記載のアセンブリを、該被験体に導入する工程、および
(b)低周波数エネルギーまたは直流を適用することによって、該移植可能なデバイスを取り外す工程、
を包含する、方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の説明)
送達機構への取り外し可能な接合部を有する移植可能なデバイス(例えば、コイルまたはステント)が開示される。従って、このデバイスは展開機構にデバイスを連結する接合部材を含む。この接合部材は、デバイスが所望の位置に存在するとき、オペレーターによって低周波数エネルギー(または直流)の賦課によって容易に取り外し可能である。これらのデバイスの作製方法および使用方法はまた、本発明の局面を形成する。
【0016】
本発明の利益は以下を含むが、これらに限定されない:(i)移植可能なデバイスの配置の正確性を高めること;(ii)送達機構からの移植物の分離に必要な時間を減少させること;(iii)たった1つの送達ワイヤを必要とする移植物送達システムを提供すること;(iii)可撓性のカテーテルを用いて使用され得る移植物送達システムを提供すること;および(iv)これらの取り外し可能デバイスを作製する方法および材料を提供すること。
【0017】
本明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、別に明らかな記載がない限りは、複数形を含むことが注目されなければならない。従って、例えば、「接合部材」との言及は、単一のデバイス上の1つ以上の接合部材を含む。
【0018】
本明細書中に記載される低周波数エネルギーまたはDCにより切断可能な接合は、広範囲な移植可能なデバイスの製造において使用され得、これにはステントおよび血管閉塞デバイス(例えば、コイル)が挙げられるが、限定されない。他の移植可能なデバイスはまた、本明細書中に記載される接合に好都合に使用される。
【0019】
図1に示されるように、接合部材(104)は、移植物(102)および送達機構(例えば、ワイヤ、プッシャーなど)(106)にしっかりと接着される。接触部位は、移植物の用途および所望の最終的な展開形状に基づいて決定され得る。従って、特定の実施形態において、接合部材は移植物および送達機構の両方(例えば、移植物の近位末端上またはその周囲および送達機構の遠位末端上またはその周囲)のたった一つの位置に装着される。本発明の目的のために、用語「係合する」は、任意の機械的なまたは物理的な付着、連結(interlocking)、嵌合、結合(binding)、結合(coupling)、引っ掛ける(hooking)などを記載するために本明細書中で使用される。「係合する」と称される部材は、何らかの積極的な努力、エネルギーの適用などを伴わずに、互いに離れもせず、取り外されもしない。この接合部材は形状およびサイズを変更し得る。例えば、図1および3に示されるように、接合部材(104)は、プッシャー(106)および移植可能なデバイス(102)に近い厚さを有し得る。さらに、図2および4は、接合部材(104、108)が、プッシャーおよび移植可能なデバイスよりも小さな円周(厚さ)を有する実施形態を示す。
【0020】
図2は、カテーテル本体(103)に挿入された本発明の実施形態を示す。このデバイスにおいて、移植可能血管閉塞デバイス(102)およびプッシャー(106)は両方とも、接合部材(104、108)に付着される。図2に示すように、接合部材は、比較的細いワイヤであり得る。カテーテルは、その遠位末端に陰極(109)を備え得る。複数の陰極がまた存在し得る。さらに、アセンブリは含む任意の同軸スリーブ(116)内に示される。
【0021】
図3は本発明の例示的なアセンブリへの、エネルギー供給源(低周波数または直流)(118)の接続を示す。図3は、プッシャー(100)に接続されたエネルギー供給源を示す。このエネルギー供給源がまた、図4に示すように、カテーテルにおいて、陰極に接続されることは明らかである。エネルギー供給源はまた、アセンブリおよびカテーテルの両方に接続され得る。この移植可能部材は、血管閉塞コイル(102)として示されるが、他の形態をとり得る。
【0022】
接合部材は、好ましくは、低周波数エネルギーまたは直流(DC)の適用で融解するか、または十分に弱まる熱可塑性部材である。当業者に明らかなように、接合部材は移植可能なデバイスから切断されるために完全に融解する必要はない。この接合部材は、オペレーターが、送達機構を取り外し得るのに十分な融解だけを必要とする。
【0023】
熱可塑性接合部材は、任意の従来技術(例えば、移植物および送達機構の接合部の所望の切断部分を、実質的にコートすることによる)を用いて作製され得る。例えば、1つの技術は、融解されたかまたは実質的に軟化した熱可塑性材料において、移植物および送達機構を浸すことまたはコートすることであるが、当該分野に公知の他の技術(例えば、収縮包装、懸濁または乳濁液の形状での噴霧など)が同様に使用され得る。他の従来技術(例えば、一連の視覚的スプレー析出)もまた、使用され得る。一旦、十分な厚みの熱可塑性接合部材が得られると、この移植可能なデバイスおよび送達機構は、この接合部材を介して連結される。特定の例において、移植物および/または送達機構の表面全体が、実質的に絶縁されて、移植物の展開の間に適用されるエネルギーの加熱効果を制限する。
【0024】
いくつかの実施形態において、好ましくは、熱可塑性材料の実質的な硬化を可能にする時間の経過の前に、カテーテルの内側に送達アセンブリを挿入する前に、接合部が物理的に係合されて、送達アセンブリを形成する。この送達アセンブリは、移植可能な部材、送達ワイヤ、スリーブ、カテーテルなどを備え得る。
【0025】
接合部材が患者の身体に有害な影響を与えない限り、そして低周波数エネルギーまたはDC電流の適用によって切断され得る限り、接合部材のための材料には、制限が強いられない。従って、任意の適切な生物学的に不活性な熱可塑性ポリマーが、本明細書中に記載される接合部材において、使用され得る。好ましい熱可塑性材料は、ポリ酢酸ビニル(PVA)である。このポリマーはまた、適切な転移特性(例えば、切断可能になる温度または電流)を有する。適切な取り外し条件は、送達機構からの移植可能なデバイスの、安全な、効率的な、そして確実な取り外しを可能にする、任意の条件である。単独でかまたは組み合わせで使用され得るような他の熱可塑性物質の例としては、ポリラクチド(polyactide)、ポリグリコリド、ポリラクチド−co−グリコリドポリジオキサノン、ポリエチレン、ポリイミノカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエステルなどのような材料が挙げられるが、これらに限定されない。Leeに対する米国特許第5,292,321号は、このような適切な熱可塑性材料を議論する。
【0026】
熱可塑性接合部材は、移植物の型、使用者によって望まれる選択された部位への移植可能なデバイスの解放の制御の程度、使用される材料の型および組み合わせ、カテーテルおよびシースの寸法制限などのような、多数の要因に依存して、種々の厚みおよび被覆構成を帯び得る。代表的に、接合部材の直径は、約0.1〜0.5mmの間であり、そして長さは、約1〜10mmのいずれかである。全ての構成に対して、熱可塑性部材は、カテーテルシース、または選択された部位において移植可能なデバイスを確実にかつ安全に配置する所望の目的を達成するために必要な他の付随する装置の内部で、係合した接合部が自由に動くことを妨げない厚みを有することが、望ましい。
【0027】
エネルギー源が、例えば送達ワイヤを介して、接合部材に接続される。この熱可塑性接合部材は、低周波数エネルギーまたは直流の適用によって、十分に融解および/または切断され、これによって、移植可能なデバイスを送達機構(例えば、ワイヤ)から取り外す。低周波数エネルギーまたはDCは、被験体に有害な影響を与えず、そして代表的に、約1kHzと100kHzとの間(この間の任意の整数値を含む)である。好ましくは、低周波数エネルギーまたは直流は、約100kHz未満、より好ましくは、約80kHz未満、そしてなおより好ましくは、約50kHz未満である。
【0028】
上記のように、移植可能な部材は、任意の適切な移植可能なデバイスであり得る。移植物は望ましくは、放射線不透過性の、生理学的に適合性の材料で作製される。例えば、この材料は、白金、金、タングステン、またはこれらの合金であり得る。特定のポリマーもまた、単独でかまたは放射線不透過性を提供する金属マーカーと組み合わせてかのいずれかで、移植物における使用に適切である。これらの材料は、移植物を血管内に配置する手順が、X線撮影法を使用して見られ得るように、選択される。しかし、移植可能なデバイスは、生物学的に不活性な他の種々のポリマーまたは炭素繊維から作製され得ることもまた、意図される。
【0029】
移植可能な部材がコイルである場合、その形状およびそれを構成する巻きは、そのコイルが配置される使用に依存する。末梢または神経の部位を閉塞するためには、このコイルは、代表的に、0.05〜0.15mmの直径のワイヤ(白金または白金/タングステン合金)で作製され、これは、最小のピッチで(すなわち、ピッチが、コイルにおいて使用されるワイヤの直径と等しい)、0.15〜1.5mmの内径を有するように、巻かれ得る。この場合、外径は、代表的に、0.25mm〜1.8mmの間である。コイルの長さは、通常、0.5〜60cm、好ましくは0.5〜40cmの範囲である。このバリエーションの議論は、例えば、Ritchartらに対する米国特許第4,994,069号に見出され得る。
【0030】
ガイドワイヤまたは流れ方向の決まった(flow−directed)デバイスが関与する、従来のカテーテルの挿入および誘導の技術を使用して、カテーテルを用いて部位に接近し得る。簡単に言えば、本明細書中に記載される、ポリマー製取り外し可能接合部を有する移植可能なデバイスは、代表的に、送達カテーテルへの導入のためにキャリア内に装填され、そして以下に概説する手順を使用して、選択された部位に導入される。この手順は、種々の疾患を処置する際に使用され得る。例えば、動脈瘤の処置においては、動脈瘤自体が、塞栓の形成を引き起こす機械的デバイスで満たされ得、そしていくらか後の時点で、移植されたデバイスの周囲に形成された、新血管形成された膠原性物質によって、少なくとも部分的に置換される。
【0031】
選択された部位は、特に選択されたカテーテルおよびガイドワイヤの集合体を使用して、血管系を通して到達される。その部位が離れた部位(例えば、脳内)にある場合には、この部位に到達する方法はいくらか制限されることが明らかである。1つの広範に認容されている手順は、Ritchartらに対する米国特許第4,994,069号に見出される。これは、Engelsonに対する米国特許第4,739,768号に見出されるような、微小な血管内カテーテルを利用する。何よりもまず、大きなカテーテルが、血管構造の入口部位を通して導入される。代表的に、これは、鼡径部において大腿動脈を通る。時々選択される、他の入口部位は、頸部に見出され、そして一般に、この型の医療を実施する医師に周知である。一旦、導入器が適所に来ると、ガイドカテーテルが使用されて、入口部位から処置される部位の近くの領域への安全な通路が提供される。例えば、ヒトの脳内の部位を処置する際には、大腿動脈の入口部位から、心臓へと延びる大きな動脈を上方へと通り、大動脈弓を通って心臓を囲み、そして大動脈の上側から延びる動脈の1つを通って下流へと延びるガイドカテーテルが選択される。次いで、Engelsonの特許に記載されるもののようなガイドワイヤおよび神経血管カテーテルが、ユニットとして、このガイドカテーテルを通して配置される。しばしば放射線不透過性マーカー材料およびX線撮影法を使用して、このカテーテルの遠位端の位置を決定することによって、一旦、このカテーテルの遠位端がその部位に配置されると、このカテーテルが通過される。例えば、ガイドワイヤが使用されてカテーテルを配置した場合、このガイドワイヤはこのカテーテルから引き抜かれ、次いでアセンブリ(例えば、遠位端に移植可能なデバイスを備える)が、このカテーテルを通して進められる。このデバイスは、カテーテルの遠位端を通過して進められ、その結果、このデバイスは、所望の処置部位において自由であり、そして正確に配置される。
【0032】
送達機構の長さは、移植可能なデバイスを標的部位に配置するために、カテーテルの全体を通って進められ得るが、移植可能なデバイスの取り外しを可能にするように、送達機構の遠位端の十分な部分がカテーテルの遠位端からなお突出するような長さである。末梢または神経の手術における使用については、送達機構は、通常、約100〜200cmの長さ、より通常は、130〜180cmの長さである。送達機構の直径は、通常、0.25〜約0.90mmの範囲である。
【0033】
一旦、移植可能なデバイスが選択された部位に来ると、低周波数エネルギーまたは直流が、エネルギー供給源によって供給され、そして送達機構を通してポリマー製接合部材へと、熱可塑性ポリマーが十分に融解するためにその転移温度より高温に、このポリマーが十分に軟化または散逸して接合部材を移植可能なデバイスから離すまで、伝達される。あるいは、導線として働く構成要素(例えば、伝導性ワイヤ)が、送達機構に沿ってカテーテルを通して挿入され得、そして低周波数エネルギーが、この導線を通して伝達されて、熱可塑性接合部を融解させる。いずれの場合においても、移植可能なデバイスの切断に続いて、カテーテル全体が取り除かれ得るか、または送達機構がカテーテル管腔から引き抜かれて、他の移植可能なデバイスの配置を提供し得る。さらなる移植物が標的部位に配置される場合、この手順が繰り返される。所望の数の移植物がその部位に配置された後に、カテーテルが血管から引き抜かれる。
【0034】
アセンブリの形成の前に、熱可塑性部材を形成する熱可塑性材料が、移植物と送達機構接合部との両方と交差する位置で、接合部材の実質的に表面全体をコーティングすることを確実にすることが望ましい。このことは、送達機構−移植可能なデバイスアセンブリの組み合わせの絶縁を補助する。絶縁は、熱可塑性部材を軟化させるために、接合された移植可能なデバイスおよび送達機構に、熱可塑性部材のすぐ近くで適用されるエネルギーの加熱効果を制限することを補助して、送達機構および移植可能なデバイスの過剰の所望でない加熱を回避する。この概念は、Ederらに対して1998年4月28日に発行された、米国特許第5,743,905号に、異なる文脈で記載されている。
【0035】
あるいは、取り外しの間にアセンブリを加熱効果からさらに保護することが所望される場合、さらなる絶縁部材が、送達機構の近位セクションに固定され得る。このようなさらなる絶縁部材が使用される場合、この部材は、(エネルギー源によって取り外しの間に適用されるエネルギーを、好ましくは熱可塑性部材が吸収するように)絶縁性ポリマー材料および/または熱可塑性部材の厚みとは異なる厚みからなることが望ましいが、このことは必須ではない。この絶縁材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルのようなポリマーであり得、そして好ましくは、パリレンとして一般的に公知のポリマーのクラスのポリマーである。絶縁は、多数のプロセス(例えば、収縮包装、融解したポリマーへの浸漬、懸濁液またはラテックスの形態でのスプレーなど)によって、送達機構の近位端に適用され得る。さらなる絶縁部材の軸方向長さおよびその厚みは、所望されるさらなる絶縁の程度、アセンブリの特定の構成、アセンブリが使用される応用などに依存して、変動し得る。
【0036】
上記の手順およびデバイス、ならびにこれらを使用する方法の、本発明と調和する改変は、この機械および外科の分野の当業者に明らかである。これらのバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、熱可塑性接合部材および移植可能血管閉塞コイルを備える本発明のアセンブリの1つの例の、部分的断面図である。
【図2】図2は、カテーテル部の遠位末端に陰極を有するカテーテル本体を備える、本発明の例示的アセンブリを示す。
【図3】図3は、本発明の例示的アセンブリに接続されるエネルギー供給源を示す。
【図4】図4は、本発明の例示的アセンブリに接続されるエネルギー供給源を示し、ここで、このアセンブリはカテーテル内側にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の移植可能なデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−149149(P2008−149149A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335347(P2007−335347)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2002−542288(P2002−542288)の分割
【原出願日】平成13年11月14日(2001.11.14)
【出願人】(500345685)ボストン サイエンティフィック サイムド, インコーポレイテッド (41)
【Fターム(参考)】