説明

ポリマー/カーボンナノチューブ相互貫入網目構造及びその製造プロセス

本発明は、既存の材料を組み合わせ、処理し、修正して、向上した機械的、電気的及び電子的性質を有する新規な生成物をもたらす新たな方法に関する。本発明は、地上及び航空宇宙用途のためのより軽い及び/またはより強い構造構成要素、導電性及び熱伝導性ポリマー複合体、並びに静電気放散材料にとって有益な、増大した強度及び靱性を有するポリマー/カーボンナノチューブ複合体に対処したものである。このような複合体は、絡み合った単層カーボンナノチューブ(SWNTs)と架橋済みポリマーとの間の分子相互貫入に、先のプロセスの場合には可能ではない程度に依拠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海軍研究局(the Office of Naval Research)の助成第N00014−03−1−0296号;ロバートA.ウェルチ財団(the Robert A. Welch Foundation)の助成第C−1494号;及びアメリカ航空宇宙局(the National Aeronautics and Space Administration)の助成第NCC−1−02038号からの援助によりなされた。
関連出願に対するクロスリファレンス
【0002】
本特許出願は、2004年7月22日に出願された米国仮特許出願第60/590,263号に対する優先権を請求する。
【0003】
本発明は一般に、向上されたポリマー複合体に関し、特に、相互貫入網目構造を形成することによってカーボンナノチューブ−向上ポリマー複合体の特性を向上する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多数の同軸殻を含み、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)と呼ばれるカーボンナノチューブ(CNTs)は、Iijimaによって1991年に発見された(Iijima, Nature, 1991, 354, 56)。この発見に続いて、それ自体の上に巻き上がる単一のグラフェン(graphene)を含む単層カーボンナノチューブ(SWNTs)は、遷移金属をドープした炭素電極を使用してアーク放電方法において合成された(Iijima et al., Nature, 1993, 363, 603; and Bethune et al., Nature, 1993, 363, 605)。
【0005】
単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の継目無黒鉛構造は、こうした材料に並外れた機械的性質:低TPa範囲でのヤング率及び37GPaを超える(推定される)引張強さを与える(Treacy et al., Nature 1996, 381, 678; Ruoff et al., Carbon 1995, 33, 925; Yakobson et al., Phys. Rev. Left. 1996, 76, 2411; Lourie et al., J. Mater. Res. 1998, 13, 2418; Iijima et al., J. Chem. Phys. 1996, 104, 2089; Cornwell et al., Solid State Comm. 1997, 101, 555; Lu, Phys. Rev. Lett. 1997, 79, 1297; Saito et al. Physical Properties of Carbon Nanotubes, Imperial College Press: London (1998); Yu et al., Phys. Rev. Lett. 2000, 84, 5552)。SWNTsの電子顕微鏡法研究は、ナノチューブは、張力がかかった状態で極めて強いが、曲げた時に非常に可撓性があることを示した(Lourie et al. Phys. Rev. Lett. 1998, 81, 1638; Vigolo et al., Science 2000, 290, 1331)。従って、ポリマーマトリックス中の補強としてのSWNTsの取り入れは、非常に向上した強度及び靱性を有する複合体を生じる可能性があると予想されると思われる。この目標を実現するためには、複合体は、複合体に課された外部負荷を軟質ポリマーマトリックス及び超高強度ナノチューブによって効果的に分け合うことができるように十分な構造連続性を有しなければならない。
【0006】
幾人かの調査者は、エポキシ樹脂及び他のポリマーマトリックス中にSWNTsを埋込むことによって、様々な複合体を製造した(Lozano et al., J. Appl. Polym. Sci. 2001, 79, 125; Lozano et al., J. Appl. Polym. Sci. 2001, 80, 1162; Schadler et al., Appl. Phys. Lett. 1998, 73, 3842; Ajayan et al., Adv. Mater. 2000, 12, 750)。大部分の場合に、得られた複合体は、平凡な機械的性質及び不満足なポリマー−ナノチューブ接着を示した。複合体は応力のかかった状態で破壊され、非補強ポリマーのものと同等であり、損なわれていないナノチューブをどちらかの断片のマトリックスから引き出した。こうした製造の全てにおいて、ナノチューブは、マトリックス中に個別の物質または小さな束として存在した。従って、複合体内部の構造連続性は完全に、個々のナノチューブとポリマー鎖との間の接着性(二次)結合に依存した。カーボンナノチューブと有機巨大分子との間の界面自由エネルギーの著しい差を考えると、こうした2つの物質の間の接着性結合は不満足であり、個別のナノチューブの存在は複合体を強化しないことは驚くべきことではない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、既存の材料を組み合わせ、処理し、修正して、向上した機械的、電気的及び電子的性質を有する新規な生成物をもたらす新たな方法に関する。本発明は、典型的に、様々な地上及び航空宇宙用途のためのより軽い及び/またはより強い構造構成要素、導電性及び熱伝導性ポリマー複合体、並びに静電気放散材料(electrostatic dissipative material)にとって有益な、増大した強度及び靱性を有するポリマー/カーボンナノチューブ(ポリマー/CNT)複合体に対処したものである。このような複合体は、絡み合った単層カーボンナノチューブ(SWNTs)と架橋済みポリマーとの間の分子相互貫入に、先のプロセスの場合には可能ではない程度に依拠する。CNTs、特にSWNTsは、これら自体ポリマーとみなすことができるので、このようなポリマー/CNT複合体は、ナノチューブ構成要素が補強を提供するハイブリッドポリマー系とみなすことができる。
【0008】
幾つかの具体例においては、本発明は、ポリマー/CNT複合体を製造する方法であって:(1)CNTsの絡み合ったアグロメレートを提供する工程と;(2)アグロメレートを処理して、その結果、これはポリマーまたはポリマー前駆体材料を用いて貫入される工程と;(3)所望により、アグロメレートを結合する工程と;(4)所望により、ポリマー材料とアグロメレートとの間の及び/またはアグロメレート同士の間の結合を可能にする工程と;を含む方法に関する。
【0009】
幾つかの具体例においては、本発明は、ポリマー/CNT複合体を製造する方法であって:(1)CNTs及びプレポリマー分子を溶媒中に導入して、溶媒混合物を形成する工程と;(2)噴霧によって溶媒混合物を霧化して微小小滴にする工程と;(3)溶媒を微小小滴から素早く除去し、同時に、プレポリマーを完全にまたは少なくとも部分的に硬化して、固体ポリマー/CNT粒子を提供する工程と;(4)固体ポリマー/CNT粒子を表面に堆積して、ポリマー/CNT複合体層を形成する工程と;を含む方法に関する。
【0010】
幾つかの具体例においては、B−ステージ粉末(部分的に硬化したプレポリマー)が形成され、ここで、前記粉末は、(1)CNTsと;(2)CNTsとの相互貫入網目構造を形成し、少なくともCNTsの再結束を防ぐ程度に部分的に硬化されたポリマー材料と;(3)ポリマー材料をさらに硬化することができる少なくとも1つの未活性化硬化剤と;を含む粒子で構成される。
【0011】
幾つかの具体例においては、部分的に硬化したポリマー材料を含む複数のB−ステージ粒子をさらに硬化して、CNTs及びポリマー材料の相互貫入網目構造を含むバルク物体を形成することができる。こうした具体例の幾つかにおいては、追加のCNT材料を用いたB−ステージ粒子の初期湿潤(incipient-wetting)がある。こうした具体例の幾つかまたは他のものにおいては、追加のポリマー材料をB−ステージ粒子に加えてよい。幾つかの具体例においては、さらなる硬化を、高剪断押出法(high-shear extrusion process)の最中に行う。加えてまたは他に、さらなる硬化を、固体自由形式製造(solid free-form fabrication)と共に行うことができる。1つのこのような模範的な固体自由形式製造プロセスは、急速プロトタイピング(rapid prototyping)である。
【0012】
幾つかの具体例においては、カーボンナノチューブ及びポリマーの相互貫入網目構造を使用して、他の繊維形態、例えばガラス繊維、ケブラー(登録商標)(Kevlar(登録商標))、炭素繊維、または他の繊維系を補強する。
【0013】
上文は、下記の本発明の詳細な説明がより良く理解されるために、本発明の特徴をかなり広く略述した。本発明の請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴及び利点を下文で説明する。
【0014】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、ここから添付図面と共に以下の説明を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ポリマー/カーボンナノチューブ(ポリマー/CNT)複合体を製造する方法に関し、ここで、このような方法は、絡み合ったカーボンナノチューブ(CNTs)と架橋済みポリマーとの間の分子相互貫入を促進する。本発明はまた、このような方法によって製造されたポリマー/CNT複合体に関する。本発明の様々な具体例を製造する及び/または使用することを下記に検討するが、本発明は、様々な特定の状況で具体化してよい多くの適用可能な本発明の概念を提供することは了解できるはずである。本明細書において検討する特定の具体例は、単に、本発明を製造する及び/または使用するための特定の様式の例示であり、本発明の範囲の限界を定めることを意図されていない。
【0016】
カーボンナノチューブ(CNTs)は、本発明によれば、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)、多層カーボンナノチューブ(MWNTs)、二層カーボンナノチューブ(DWNTs)、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、管状フラーレン、グラファイトフィブリル、及びこれらの組合せを含むがこれらに限定されるものではない。このようなカーボンナノチューブは、HiPco(登録商標)プロセス、(Bronikowski et al., J. Vac. Sci. Technol. A. 2001, 19, 1800)、アーク放電(Ebbesen, Annu. Rev. Mater. Sci. 1994, 24, 235)、レーザーオーブン(Thess et al., Science 1996, 273, 483)、フレーム合成(flame synthesis)(Vander Wal et al., Chem. Phys. Lett. 2001, 349, 178)、化学気相成長法(米国特許第5,374,415号)、ここで、担持型(Hafner et al., Chem. Phys. Lett. 1998, 296, 195)または非担持型(Cheng et al., Chem. Phys. Lett. 1998, 289, 602; and Nikolaev et al., Chem. Phys. Lett. 1999, 313, 91)金属触媒も使用してよい、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない任意の周知の技術によって製造できる。具体例に依存して、本発明のプロセスのいずれかにさらす前に、CNTsを1つ以上の処理工程にさらすことができる。幾つかの具体例においては、CNTsは、キラリティー、電気伝導率、熱伝導率、直径、長さ、壁の数、及びこれらの組合せからなる群から選択される特性に基づいて分離される。O'Connell et al., Science 2002, 297, 593; Bachilo et al., Science 2002, 298, 2361; Strano et al., Science 2003, 301, 1519を参照されたい。幾つかの具体例においては、CNTsは精製されている。模範的な精製技術としては、Chiang et al.によるもの(Chiang et al., J. Phys. Chem. B 2001, 105, 1157; Chiang et al., J. Phys. Chem. B 2001, 105, 8297)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。幾つかの具体例においては、CNTsは、切断プロセスによって切断されている。Liu et al., Science 1998, 280, 1253; Gu et al., Nano Lett. 2002, 2(9), 1009を参照されたい。“CNT”及び“ナノチューブ”という用語は、本明細書において同じ意味で使用される。その上、本明細書における検討の多くはSWNTsを含むが、SWNTsを利用する及び/または含む本発明の方法及び/または組成物の多くはまた、MWNTsまたは上記に検討した他のタイプのCNTsのいずれでも利用する及び/または含むことができることは理解されるはずである。
【0017】
一般に、本発明のポリマー/CNT複合体は、相互貫入ナノ繊維網目構造を含み、網目構造は、架橋済みポリマーマトリックス中で巨大分子と絡まり合った相互に絡み合ったカーボンナノチューブを含む。本発明の成功裏の実施の秘訣は、絡まったCNTsの固まり(clump)中に貫入できる有機分子の注入であり、それによってナノチューブ網目構造を膨張させ、剥脱をもたらす。それに続く有機分子のインシトゥ重合及び硬化は、架橋済み巨大分子と絡まり合った絡み合ったCNTsまたはCNTナノ繊維(ロープ)の相互貫入網目構造を生じる。これを図1に概略で示し、ここで、最初の混合工程において(1)絡まったCNTsを液体モノマー系中に分散させ、相互貫入工程の後に(2)モノマー分子は絡まったCNT網目構造中に注入され/貫入して、これを膨潤させ、硬化工程の後に(3)巨大分子網目構造が、膨張したCNT網目構造へのポリマーの相互貫入によって生じて、高モジュラス高強度複合体を形成し、ここで、相分離は起きない。
【0018】
逐次より高い倍率で撮影した図2(A)及び2(B)に示す走査型電子顕微鏡写真によって例示するように、発生期状態において、SWNTsは、絡まった網目構造の形態で存在することに注意されたい。こうした顕微鏡写真はまた、通常存在する不純物、例えばカーボンブラック、煤、触媒粒子等を示す。幾つかの具体例においては、発生期で未精製の(製造時)SWNTsを使用する−その不純物によって追加の補強(または他の所望の特性)を複合体に提供してよい。その上、こうした具体例は、SWNT組立体のコストをかなり増大させ、多分強度を劣化させる通常の精製及び処理工程を除く。
【0019】
一般に、CNTsと重合可能な有機分子(プレポリマーまたはモノマー)との間の表面自由エネルギーの差は十分に高く、その結果、2つの構成要素を混合した場合、これらは別個の相中に分離したままである:固まりになったカーボンナノチューブは、異なる連続有機相中に懸濁したままである。機械的エネルギー、例えば音波処理または高剪断の使用は、最も良くて個々のナノチューブの固まりのサイズを低減するかもしれないが、これは有機分子の実質的な貫入を可能にしない。
【0020】
ごく少数の有機液体(溶媒)、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が、カーボンナノチューブを低濃度で溶解させることができ(Ausman et al., J. Phys. Chem. B 2000, 104, 8911)、とはいえこのような溶液は、真の熱力学的な意味で必ずしも溶液ではないかもしれない。同じ液体がまた、広く様々なプレポリマーのための溶媒である。幾つかの具体例においては、本発明は、この相互溶解度を利用し、これを霧化及び噴霧技術と組み合わせて、所望の相互貫入網目構造を有する複合体を生じる。一般に、CNT−ポリマー相互貫入網目構造を製造する際に含まれる方法は、以下の工程を含む:(1)プレポリマー分子及びCNTsを、少量のCNTsを分散させるかまたは溶解させることができる幾つかの有機溶媒のうちの1つの中に導入して、溶媒混合物を形成する工程と;(2)音波処理、加熱、機械的剪断、これらの組合せ、及び/または他の適切な手段からなる群から選択される技術を使用して、混合物内部のCNT溶解を促進する工程と;(3)標準的な噴霧装置を使用して、(多分加熱した)溶液を霧化して、微細小滴にする工程と;(4)噴霧によって小滴を表面の上に堆積し、熱及び多分真空を使用して、素早い同時の溶媒の蒸発及びプレポリマーの初期硬化を達成し、その結果、溶媒枯渇が理由となってCNTsが重合系から分離し、再凝集する機会を有する前に、小滴は凝固する工程。
【0021】
幾つかの具体例においては、所望の形状及び/またはレベルの均一性の複合体を生じるために、上記に説明した噴霧物を、図3及び図4に概略で及び模範的に示すように、移動する表面、例えば回転するディスクの上に堆積して、所望の厚さを有する複合材料の均一な層を連続的に確立する。図3を参照すると、噴霧ノズル302は、ポリマー/CNT層305を回転するディスク301の表面に堆積し、回転するディスクは、ホットエアガン304によって加熱されており、堆積した層は、赤外線ランプ303によって加熱されている。図4は、いかにして、図3の部分を、キャビネット403中に部分的に包囲されている装置400中に組み込むことができるかを示し、ここで、回転するディスク301は、可変速モータ401並びにギヤ及びチェーン伝動402によって駆動される。
【0022】
試験用標本及び他の物体を、上記に説明したポリマー/CNT層から切断することができる。プロセスパラメータを、赤外線ランプ温度、ホットエアガンの温度、空気流量、回転するステージの速度、噴霧圧力、噴霧角度等を調節することによって容易に制御することができる。多数のスプレーガンを上記に説明した系の上に取り付けて、多数の別個の材料を噴霧することができ、例えば、スプレーガン1はプレポリマー/有機液体Aを噴霧し、スプレーガン2はCNTs/有機液体Bを噴霧する。多数の濃度のCNTs/プレポリマー/有機液体を噴霧するスプレーガンもまた、この系中に取り付けることができる。
【0023】
他に、幾つかの具体例においては、図5に概略で示すように、CNTs/プレポリマーの均一性を向上するために、CNTs/プレポリマー/有機液体の混合物を、ノズルを通した噴霧の直前に、混合物リザーバの直ぐ上の作り付けプローブ−タイプ音波処理装置(sonicator)によって機械的に分散させることができる。図5を参照すると、ノズル502を通し、予熱した表面503の上に噴霧する直前に、プローブ−タイプ音波処理装置501は、CNT/プレポリマー/有機液体の分散系/溶液を音波処理する。
【0024】
幾つかの具体例においては、複合体中のCNTsの濃度は、CNTs/プレポリマー/有機液体の溶液の噴霧を調節することによって連続的に変化させることができる。図6(a)〜6(d)を参照すると、プレポリマー/有機液体のみを噴霧する最初の工程を図6(a)に表し、CNTs/プレポリマー/有機液体中のCNT濃度の漸進的な増大を図6(b)〜6(d)に表す。例えば、一方の面は伝導性複合体であり、他の面は絶縁体である場合、最終生成物はハイブリッド特性を生じることができる。
【0025】
幾つかの具体例においては、異なる濃度のCNTsを含むCNTs/プレポリマー/有機液体溶液の噴霧を交互に行うことによって異なるCNT濃度の下位層を他に確立することによって、複合体中のCNTsの濃度を調節することができる。図7(a)〜7(f)を参照すると、プレポリマー/有機液体のみ(0%CNTs)を噴霧する最初の工程を図7(a)に表し、代わりのCNT濃度(例えば、20%CNTs)のCNTs/プレポリマー/有機液体溶液を噴霧する次の工程を図7(b)に表し、所望の厚さに達するまでの、図7(a)及び7(b)に表す工程の繰返しを図7(c)〜7(e)に表し、図7(f)は予想される最終試料を表す。
【0026】
他に、幾つかの具体例においては、プレポリマー系を、2つの独立した硬化剤と共に用いる。このような具体例においては、第1の試剤は、小滴の噴霧及び堆積の最中に活性化して、小滴を“B−ステージ”(部分的に硬化したプレポリマー)に素早く凝固するのに十分な重合の程度を提供し、従ってSWNTの再凝集を防ぐ。この工程を図8に概略で示し、ここで、B−ステージ固体粒子または凝集体はコレクターへの途中で形成され(a〜c)、このような粒子または凝集体は雰囲気温度で(または冷却下で)安定であり、さらなる処理のために取っておいてよい。B−ステージ粒子を次に集め、標準的なプラスチックス処理方法(例えば、圧縮成形(d)、押出し(e)、射出成形等)を使用して所望の形状に成形することができる。この処理工程は、得られる複合体のさらなる均質化を提供し、というのは、B−ステージ粒子は熱可塑性特性を短時間保持するからである。一般に、これは、噴霧済み小滴を凝固するために典型的に使用されるものよりも高い温度で起き、その結果、第2の硬化剤が次に活性化され、それによって成形物体全体にわたってポリマーマトリックスの完全で均一な架橋を確実なものにする。
【0027】
幾つかの具体例においては、“初期湿潤”技術を用いる。これは、有機溶媒中の分散系からSWNTsをポリマー表面または他の表面に堆積するための技術であり(Barrera et al.、国際特許出願第PCT/US00/33291号;及びBarrera, JOM, 2000, 52, 38)、最終複合体を形成する前に、B−ステージ粒子の表面を追加のSWNTsでコーティングするために使用できる。最終処理の開始時の熱及び機械的剪断の結果としての(一時的に)熱可塑性の粒子の変形及び混合は、追加のSWNTsを複合体内部に分布させ、従ってSWNT含量を増大させる。
【0028】
多くの具体例においては、SWNTs及び幾つかのエポキシプレポリマーのうちの1つ以上と単一の硬化剤の溶液を、有機溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)中に分散させる(溶解させる)。こうした有機液体/プレポリマー/SWNT系を次に加熱し、素早く霧化して小滴にすることができ、次に予熱したチャンバ中に噴霧し、予熱した高温の表面の上に堆積することができる。プロセスは、溶媒蒸発、エポキシ樹脂の重合、及び複合体のコヒーレント層への凝固する小滴の組み込みを、同時に、霧化と小滴堆積との間に短時間で実現することに成功する。このようなプロセスの成功は、高い速度の溶媒蒸発及び重合/硬化を独立して制御することを必要とし、その結果、溶媒枯渇が理由となってSWNTsが現れるポリマーから分離し、再凝集する機会を有する前に、小滴は飛行中に凝固する。しかしながら、凝固した小滴がその標的表面に達した時に、これは、融合し、結合して連続的な固体になるように、依然としてその発生期のポリマーにおける残留反応性を保持しなければならない。重合が遅れる場合、溶媒は蒸発して不十分に重合した(依然として流体)小滴を残し、SWNTsは有機分子を追い出し、再度固まる(再結束する)傾向がある。重合が蒸発より速く進む場合、小滴は過度に速く凝固し、溶媒をトラップし、欠陥のある凝集体を形成する傾向がある。最後の2つの場合のいずれにおいても、得られた複合体の機械的性質は多分変化している。
【0029】
幾つかの具体例においては、1つ以上のアミン硬化剤と共に液体エポキシプレポリマーの溶液を作製し(有機溶媒の例えばN,N−ジメチルホルムアミド中)、ここで、このような溶液は典型的に、重量で約1重量%の受け入れ時SWNTsを含む。こうした溶液を次に霧化し、静止表面の上に噴霧でき、エポキシマトリックス中の良好なSWNTs分散を示すSWNTs/エポキシ複合体の層状標本を生じる(例えば、図9を参照されたい)。このようなプロセスの生成物は、純エポキシ系のものと同等の電気的性質を有し、4点プローブ試験によって測定して約10+14オーム・mから約10+0オーム・m(純SWNTs:約10−6オーム・m)の抵抗率の増大を示す。対応する熱伝導率の増大が予想される。
【0030】
多数の官能基化(すなわち、誘導体化)方法(Mickelson et al., Chem. Phys. Lett. 1998, 296, 188; Chen et al., J. Mater. Res. 1998, 13, 2423; Boul et al., Chem. Phys Lett. 1999, 310, 367; Barr et al., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5348; Ying et al., Organic Letters 2003, 5, 1471)が、幾つかのタイプの有機基をカーボンナノチューブに共有結合するのに成功した。こうした方法は、得られた誘導体化SWNTsの有機液体中の溶解度(及びこれが分散する/溶解することができる溶媒の多様性)を増大させ、SWNTs(または他のCNTタイプ)と取り囲むポリマーマトリックスとの間の共有結合を提供さえすることができる。こうした誘導体化のために必要な化学的処理が、発生期のSWNTの網目構造のコンホメーションを乱さず及び/またはその機械的性質をかなり劣化させない場合に、本発明の方法と共にこれを使用することは、得られる複合体の範囲及び多能性をかなり向上するはずである。こうした向上は、発生期のSWNTsとは不適合な溶媒の使用から、いかなる溶媒も無しにプレポリマー系を固まりになったナノチューブ網目構造中に直接取り入れることの範囲にわたる。1例は、エポキシプレポリマーと適合するように官能基化されている“バッキーペーパー(bucky paper)”の使用である。官能基化バッキーペーパーの積み重なりはプレポリマーによって膨潤し、次に従来の成形技術を使用してインシトゥで硬化される。プロセスは、非常に高いSWNT含量を有する複合体を生成しよう。このような複合体は、純SWNTsのものと同等の機械的強度及び電気伝導率を示す可能性を有する。
【0031】
幾つかの具体例においては、SWNTsの分散を増大させるために、1つ以上のアミン硬化剤と共に液体エポキシプレポリマーの溶液を作製し(有機溶媒の例えばN,N−ジメチルホルムアミド中)、ここで、溶液は、約0.1重量%のカルボン酸基末端官能基化SWNTsを含む。こうしたものを次に霧化し、静止表面の上に噴霧でき、0.1重量%の受け入れ時SWNTs/エポキシ複合体(図10(A)及び10(B)を参照されたい)と比較して、エポキシマトリックス中の増大したSWNTs分散を示すカルボン酸官能基化SWNTs/エポキシ複合体の層状標本を生じる(図11(A)及び11(B)を参照されたい)。
【0032】
幾つかの具体例においては、SWNTsの分散を増大させるために、1つ以上のアミン硬化剤と共に液体エポキシプレポリマーの溶液を作製し(有機溶媒の例えばN,N−ジメチルホルムアミド中)、ここで、溶液は、約0.1重量%のカルボン酸側壁官能基化SWNTsを含む。こうしたものを次に霧化し、静止表面の上に噴霧でき、他のもの(図10及び11を参照されたい)と比較して、エポキシマトリックス中の高いSWNTs分散を示すカルボン酸側壁官能基化SWNT/エポキシ複合体の層状標本を生じる(図12(A)及び12(B)を参照されたい)。
【0033】
幾つかの具体例においては、CNTsのランダム配向は、破壊したポリマー/CNT複合体表面の偏光レーザービームを用いるラマン分光法によって観察することができる。1つ以上のアミン硬化剤と共に液体エポキシプレポリマーの溶液を作製し(典型的に有機溶媒の例えばN,N−ジメチルホルムアミド中)、このような溶液は典型的に、約0.1重量%の受け入れ時SWNTsを含む。こうしたものを次に霧化し、静止表面の上に噴霧でき、SWNT/エポキシ複合体の層状標本を生じる。SWNT/エポキシ複合体の破壊した面に偏光レーザーを照射した後、試料の位置を入射レーザービームに対して0度、45度、及び90度回転させた結果として、ラマン強度のかなりの変化はなかった(図13、トレースa〜cを参照されたい)。複合体中のSWNT配向は、表されるラマン分光法の半径ブリージングモード(radial breathing mode)(RBM)ピーク及び接線モード(tangential mode)(G)ピークの比によって観察できる。得られたSWNT/エポキシ複合体は、入射レーザービーム角度を変化させたことの結果として、かなりの変化を示さなかった。従って、SWNTsは、複合体中でランダムに配向していた(図14を参照されたい)。
【0034】
幾つかの具体例においては、プロセスパラメータ、例えば予熱した基体の温度、噴霧の速度、CNTs/プレポリマー/有機液体の濃度等を調節することによって、ポリマー/CNTは表面に整列することができる。単一のショット(噴霧)の0.5重量%受け入れ時SWNTs/エポキシ/DMFを、予熱した基体の上に噴霧した。図15(a)及び15(b)を参照すると、生成したSWNT/エポキシ複合体試料を光学顕微鏡法を用いて観察した時に、試料位置に対して焦点を変えることによって2つの異なる像が観察された。焦点を上下に移動させることによって、特定の像が現れ及び消失するのが見える。この観察から、多くのヤシの木様−SWNTs/エポキシ柱状部が基体表面に垂直に整列していた。この構造の形成の可能な機構を、図16(a)〜16(i)に概略で表す。従って、SWNT/エポキシは、本発明によって垂直に整列することができる。
【0035】
幾つかの具体例においては、二重硬化剤を利用するエポキシ系を用いる。このような具体例においては、第1の試剤(約80〜140℃の範囲内のより低い温度で活性である)は、樹脂のB−ステージ(部分的に硬化したプレポリマー)コンシステンシーへの迅速な重合を達成し、これは、部分的に硬化したエポキシ鎖の膨張したSWNT網目構造中への貫入を安定化する。第2の試剤(160〜200℃の範囲内の高温で活性である)は、B−ステージの粒子のそれに続く処理の最中に活性化し、従って、膨張したが依然として絡まったSWNTsに貫入した巨大分子網目構造の硬化(架橋)を完了する。こうした2ステージ系を、加熱したチャンバ中に噴霧する及び/または移動する表面(例えば回転するディスク)の上に堆積することができる。このようなプロセスを実行するのに適した装置の断面図を図8に示す。同時溶媒蒸発及びB−ステージへの硬化の制御を向上するための、噴霧体積及び強度、空気及び表面温度、回転の速度、及びチャンバ圧力を調節する多数の手段に注意されたい。部分的に硬化したプレポリマー粒子のバッチ(追加のSWNTsを用いる初期湿潤はあってもなくてもよい)を次に、Shofner et al.の技術(Shofner et al., J. Appl. Polym. Sci. 2003, 89, 3081; Shofner et al., Composites: Part A 2003, 34; and M. L. Shofner: Ph. D. Thesis, Rice University, 2004)に続いて高剪断押出によって処理して、単数または複数の所望の形状を有する均一なSWNT/エポキシ複合体を生成することができる。
【0036】
超酸中のSWNTsの溶解に基づくプロセス(Davis et al., Macromolecules 2004, 37, 154)は、整列したSWNTロープを生成し、これを次に、ナノチューブを沈澱させる様々な凝固剤を使用して、紡糸して繊維にする(湿式紡糸プロセス)。紡糸された繊維の直径は、個々のSWNTsよりも約3桁大きい。その発明の現在の状態で、得られた繊維の健全性(integrity)及び強度は、整列したSWNTロープ同士の間に形成された二次化学結合に基づく。繊維強度を増大させるための1様式は、整列したSWNTロープを、架橋済みで整列した高強度ポリマー鎖、例えば芳香族ポリアミドの相互貫入網目構造中に取り入れることであると思われる。プロセスは、SWNT溶媒中のプレポリマーの取り入れ、SWNT整列プロセスの最中の部分重合、並びに繊維が紡糸口金から現れる時のさらなる整列及び架橋を含むと思われる。得られる繊維の概念上の図を図17に示す。
【0037】
最後に、本発明はポリマー/CNT複合体を提供し、ここで、CNTs及びポリマー材料は相互貫入網目構造を形成する。本発明の方法を使用することによってのみこのような複合体を生成でき、ここで、このような複合体は、相互貫入網目構造によって形成されない複合体系にまさる特性の向上を有する。
【0038】
本明細書において参照する全ての特許及び刊行物を、本明細書によって参考文献によって取り入れる。上記に説明した具体例の上記に説明した構造、機能、及び作動の幾つかは本発明を実施する必要は無く、単に模範的な具体例または具体例の完成のために説明に含ませていることは理解されよう。加えて、上記に説明し、参照した特許及び刊行物において述べる特定の構造、機能、及び作動を本発明と共に実施することができるが、これらはその実施に不可欠では無いことは理解されよう。従って、添付の請求の範囲によって定義する本発明の精神及び範囲から実際に逸脱することなく、本発明を特に説明したものとは異なって実施してよいことは理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ポリマー/CNT相互貫入網目構造の形成の略図であり、ここで、最初の混合工程において(1)絡まったCNTsを液体モノマー系中に分散させ、相互貫入工程の後に(2)モノマー分子は絡まったCNTs網目構造中に注入され/貫入して、これを膨潤させ、硬化工程の後に(3)巨大分子網目構造が、膨張したCNTs網目構造へのポリマーの相互貫入によって生じて、高モジュラス高強度複合体を形成し、ここで、相分離は起きない。
【図2】図2(A)は、受け入れ時SWNTsのSEM顕微鏡写真を表す;倍率25,000倍。 図2(B)は、受け入れ時SWNTsのSEM顕微鏡写真を表す;倍率50,000倍。 図2(C)は、受け入れ時SWNTsのSEM顕微鏡写真を表す;倍率100,000倍。
【図3】本発明の幾つかの具体例に従う、ポリマー/CNT複合体の連続的な蓄積を生じる噴霧プロセスの概略図であり、ここで、複合体の厚さは、噴霧の持続時間と共に増大する。
【図4】本発明の幾つかの具体例に従う、SWNT/プレポリマー溶液を噴霧するための装置の例示断面図である。
【図5】本発明の幾つかの具体例に従う、CNT/ポリマー/有機液体の分散系/溶液を同時に音波処理及び噴霧するための系を示す概略図である。
【図6】図6(a)は、本発明の幾つかの具体例に従う、層厚さの方向にCNT濃度勾配を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような勾配は、処理の最中にCNT/ポリマー/有機液体中のCNTsの濃度を変化させることによって形成される。 図6(b)は、本発明の幾つかの具体例に従う、層厚さの方向にCNT濃度勾配を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような勾配は、処理の最中にCNT/ポリマー/有機液体中のCNTsの濃度を変化させることによって形成される。 図6(c)は、本発明の幾つかの具体例に従う、層厚さの方向にCNT濃度勾配を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような勾配は、処理の最中にCNT/ポリマー/有機液体中のCNTsの濃度を変化させることによって形成される。 図6(d)は、本発明の幾つかの具体例に従う、層厚さの方向にCNT濃度勾配を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような勾配は、処理の最中にCNT/ポリマー/有機液体中のCNTsの濃度を変化させることによって形成される。
【図7】図7(a)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。 図7(b)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。 図7(c)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。 図7(d)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。 図7(e)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。 図7(f)は、本発明の幾つかの具体例に従う、異なるCNT濃度の交互の下位層を含むポリマー/CNT層の形成を示し、ここで、このような層状構造は、異なる濃度のCNTs(またはCNTsの完全な欠如)を含むショットを用いて、CNT/ポリマー/有機液体の堆積を交互に行うことによって形成される。
【図8】本発明の幾つかの具体例に従う、小滴が噴霧ノズルから堆積表面に移動する時の同時溶媒蒸発及び初期重合を示し(a〜b)、どのようにしてB−ステージCNT/プレポリマー材料を下流のプロセスの例えば圧縮(d)及び押出し(e)に導入することができるかを示す概略図である。
【図9】1重量%受け入れ時SWNT/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す。
【図10】図10(A)は、0.1重量%受け入れ時SWNTs/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:5,000倍。 図10(B)は、0.1重量%受け入れ時SWNTs/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:50,000倍。
【図11】図11(A)は、0.1重量%カルボン酸末端官能基化SWNT/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:5,000倍。 図11(B)は、0.1重量%カルボン酸末端官能基化SWNT/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:50,000倍。
【図12】図12(A)は、0.1重量%カルボン酸側壁官能基化SWNT/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:5,000倍。 図12(B)は、0.1重量%カルボン酸側壁官能基化SWNT/エポキシ噴霧済み複合体の破面のSEM顕微鏡写真を表す:50,000倍。
【図13】入射角を(a)0度、(c)45度、及び(b)90度と変化させて偏光レーザービームにさらした後の、0.1重量%受け入れ時SWNT/エポキシ噴霧済み複合体のラマンスペクトルを表す(RBMは半径ブリージングモードを表し、Gは接線モードを表す)。
【図14】図13に表すRBM/Gピークの相対的ラマン強度比を要約する。
【図15】図15(a)は、予熱した基体の上の単一のショット(噴霧)の後の、基体表面の整列したSWNT/エポキシを表す光学顕微鏡法像であり、ここで、関連する概略図は、画像化プロセスの最中に同じ試料表面で焦点を変えることによって得られる異なる図を示す。 図15(b)は、予熱した基体の上の単一のショット(噴霧)の後の、基体表面の整列したSWNT/エポキシを表す光学顕微鏡法像であり、ここで、関連する概略図は、画像化プロセスの最中に同じ試料表面で焦点を変えることによって得られる異なる図を示す。
【図16】図16(a)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(b)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(c)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(d)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(e)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(f)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(g)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(h)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。 図16(i)は、本発明の幾つかの具体例に従う、整列したヤシの木様SWNT/エポキシ柱状部の可能な成長機構を示す。
【図17】本発明の幾つかの具体例に従う、配向した巨大分子網目構造と相互接続した整列したSWNTロープを含む紡糸された繊維の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)CNTs及びプレポリマー分子を溶媒中に導入して、溶媒混合物を形成する工程であって、前記溶媒は相互に:
i)前記プレポリマー分子を溶解させ;
ii)CNTsの束中への分子貫入を実現し、これを少なくとも部分的に膨張させる;工程と;
b)噴霧によって前記溶媒混合物を霧化して微小小滴にする工程と;
c)前記溶媒を前記微小小滴から素早く除去し、同時に、プレポリマーを少なくとも部分的に硬化して、固体ポリマー/CNT粒子を提供する工程と;
d)前記固体ポリマー/CNT粒子を表面に堆積して、前記固体ポリマー/CNT粒子をアグロメレーションさせ、同時に、この硬化を完了して、所望のサイズ及び形状のポリマー/CNT複合体を形成する工程と;を含む方法。
【請求項2】
前記CNTsはSWNTsである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CNTsは官能基化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレポリマーは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレポリマーの少なくとも部分的な硬化は、少なくとも1つの硬化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの硬化剤は、ジアミン、ポリアミン、イミダゾール、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
導入する工程は、音波処理、機械的剪断、加熱、及びこれらの組合せからなる群から選択される技術を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶媒を素早く除去する工程は、加熱、機械的ポンピング、真空排気、及びこれらの組合せからなる群から選択される条件にさらすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プレポリマーを完全に硬化するための第2の硬化工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子を堆積する工程は、硬化方法と組み合わせて行われ、該硬化方法は、熱硬化、放射硬化、マイクロ波硬化、及びこれらの組合せからなる群から選択されて、架橋を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固体ポリマー/CNT粒子は、回転する表面に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記固体ポリマー/CNT粒子は、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲にわたるサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CNTs、プレポリマー、及び溶媒を含む前記溶媒混合物は、ノズルを通して噴霧される直前に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒混合物を霧化するための多数のスプレーガンをさらに含み、各スプレーガンは異なる混合物を噴霧する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー/CNT複合体中の前記CNTsは整列されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
a)CNTsと;
b)前記CNTsとの相互貫入網目構造を形成し、少なくとも前記CNTsの再結束を防ぐ程度に部分的に硬化されたポリマー材料と;
c)ポリマー材料をさらに硬化することができる少なくとも1つの未活性化硬化剤と;を含むB−ステージ粉末。
【請求項17】
前記CNTsはSWNTsである、請求項16に記載のB−ステージ粉末。
【請求項18】
前記CNTsは官能基化される、請求項16に記載のB−ステージ粉末。
【請求項19】
前記SWNTsは官能基化される、請求項17に記載のB−ステージ粉末。
【請求項20】
前記ポリマー材料は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載のB−ステージ粉末。
【請求項21】
前記未活性化硬化剤は、芳香族アミン、ジアミノジフェニルスルホン、酸二無水物、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載のB−ステージ粉末。
【請求項22】
前記粉末は、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲にわたるサイズを有する粒子で構成される、請求項16に記載のB−ステージ粉末。
【請求項23】
a)部分的に硬化したポリマー材料を含む複数のB−ステージ粒子を提供する工程と;
b)前記ポリマー材料をさらに硬化して、CNTs及びポリマー材料の相互貫入網目構造を含むバルク物体を形成する工程と;を含むプロセス。
【請求項24】
前記B−ステージ粒子を追加のCNT材料を用いて初期湿潤する工程をさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
追加のポリマー材料を前記B−ステージ粒子に加える工程をさらに含む、請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
さらに硬化する工程は、高剪断押出法及び射出成形からなる群から選択されるプロセスの最中に行われる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記さらに硬化する工程は、固体自由形式製造と共に行われる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項28】
前記さらに硬化する工程は、少なくとも1つの急速プロトタイピング技術と共に行われる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項29】
a)CNTs及びプレポリマー分子を溶媒中に導入して、溶媒混合物を形成する工程と;
b)噴霧によって前記溶媒混合物を霧化して微小小滴にする工程と;
c)前記溶媒を前記微小小滴から素早く除去し、同時に、プレポリマーを少なくとも部分的に硬化して、固体ポリマー/CNT粒子を提供する工程と;
d)前記固体ポリマー/CNT粒子を表面に堆積して、ポリマー/CNT複合体層を形成する工程と;を含むプロセスによって製造される、相互貫入網目構造を含むポリマー/CNT複合体。
【請求項30】
前記CNTsはSWNTsである、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項31】
前記CNTsは官能基化される、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項32】
前記プレポリマーは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項33】
前記プレポリマーは、ジアミン、ポリアミン、イミダゾール、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの硬化剤を使用して少なくとも部分的に硬化される、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項34】
導入する工程は、音波処理、機械的剪断、加熱、及びこれらの組合せからなる群から選択される技術を含む、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項35】
溶媒を素早く除去する工程は、加熱、機械的ポンピング、真空排気、及びこれらの組合せからなる群から選択される条件にさらすことを含む、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項36】
前記粒子を堆積する工程は、熱を用いて行われて、架橋を達成する、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項37】
前記固体ポリマー/CNT粒子は、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲にわたるサイズを有する、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項38】
前記CNTsは、前記複合体内部で優先的に配向される、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項39】
このような配向は、押出し、突出、またはポリマー中の繊維質補強を配向するために使用される他のプロセスの結果である、請求項38に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項40】
前記ポリマー/CNT複合体層内部のCNT濃度は、特定の方向に次第に変化する、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。
【請求項41】
前記ポリマー/CNT複合体層内部のCNT濃度は、異なるCNT濃度の交互のポリマー/CNT下位層を用いて調節される、請求項29に記載のポリマー/CNT複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−507622(P2008−507622A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524839(P2007−524839)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/026284
【国際公開番号】WO2007/008214
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】