説明

ポリマー

本発明は、付加重合工程、好ましくはフリーラジカル重合工程により取得可能な両親媒性分岐コポリマーに関し、このコポリマーは以下:
(a)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤、
(b)任意であるが好ましくは適合性を有する鎖転移剤(E及びE’)、
(c)少なくとも1つのエチレン性のモノ不飽和モノマー(G及び/又はJ)、
(d)少なくとも1つのエチレン性ポリ不飽和モノマー(L)
の反応生成物であり、
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは親水性残基であり;かつ
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは疎水性残基であり、
(d)の(c)に対するモル比は0.0005〜1である。
本発明はさらに、かかる両親媒性分岐コポリマーを含んでなる分岐コポリマー粒子、それらの調製方法、かかるコポリマー及び粒子を含む組成物、並びに、例えば、封入剤、ナノリアクター、ピカリング乳剤(Pickering emulsifier)、制御性放出剤及び/又は刺激応答性放出剤としてのそれらの用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の両親媒性分岐コポリマー、かかる両親媒性分岐コポリマーを含んでなる分岐コポリマー粒子、それらの調製方法、かかるコポリマー及び粒子を含む組成物、及び、例えば、封入剤、ナノリアクター、ピカリング乳剤(Pickering emulsifier)、制御性放出剤及び/又は刺激応答性放出剤としてのそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐ポリマーは、分岐した有限サイズのポリマーである。分岐ポリマーは、相互接続した分子を有して無限の大きさになる傾向を有しかつ通常不溶性である架橋ポリマーネットワークとは異なる。ある場合には、分岐ポリマーは、類似の直鎖状のポリマーと比較して有利な特性を有する。例えば、分岐ポリマーの溶液は、類似の直鎖状のポリマーよりも通常、粘性が低い。さらに、高分子量の分岐コポリマーは、対応する直鎖状のポリマーよりも容易に溶解する。また、分岐ポリマーは、直鎖状のポリマーよりも多くの末端基を有し、従って通常は強力な表面修飾特性を呈する傾向を有する。すなわち、分岐ポリマーは、様々な分野において利用される多くの組成物の有用な成分である。
【0003】
分岐ポリマーは、通常は、得られるポリマーの化学官能性及び分子量によって限定されることが通常的である好適なモノマーの重縮合を介した逐次的成長メカニズムにより調製される。付加重合において、ワンステップ工程を用いることができ、そこにおいて、ポリマー鎖における官能性を与えるために多官能性モノマーが用いられ、そこからポリマー分岐が成長し得る。しかし、従来のワンステップ工程の使用における制限は、多官能性モノマーの量が注意深く制御されねばならないということであり、通常は、多量のポリマー架橋及び不溶性ゲルの形成を回避するために、実質的に0.5%(w/w)未満である必要がある。この方法を用いて架橋を回避することは困難であり、特に希釈剤としての溶媒の非存在下、及び/又はモノマーのポリマーへの高変化が起こっている場合には困難である。
【0004】
両親媒性分岐コポリマーは、親水性部分と疎水性部分の両方を有する分岐コポリマーである。
【0005】
国際公開第99/46301号(特許文献1)は、単官能性ビニルモノマーを0.3〜100% w/w(単官能性モノマーの質量)の多官能性ビニルモノマー及び0.0001〜50% w/w(単官能性モノマーの質量)の鎖転移剤、及び任意にフリーラジカル重合開始剤と共に混合し、その後、この混合物を反応させてコポリマーを形成するステップを含んでなる分岐ポリマーの調製方法を開示する。特許文献1の実施例は、本質的に疎水性のポリマーの調製、及び、特に、メチルメタクリレートが単官能性モノマーを構成するポリマーを記載する。これらのポリマーは、表面コーティング及びインクとしての成分又は成型樹脂として有用である。
【0006】
国際公開第02/34793号(特許文献2)は、少なくとも1つの不飽和カルボン酸モノマー、少なくとも1つの疎水性モノマー、疎水性の鎖転移剤、架橋剤、及び、任意の立体安定剤に由来するコポリマーを含んでなるコポリマー組成物を開示する。このコポリマー組成物は、それが水性電解質を含む環境中での粘度を増加させるという点で、流動調整剤として働く。
【0007】
K.B.Thurmond IIら(J.Am.Chem.Soc.,(1996),118,7239−7240)(非特許文献1)は、いわゆるシェル架橋された(SCL)ミセルの第一の調製を記載する。これらの粒子は、どちらかといえば単調な、以下を含む複数工程の合成を介して形成される:(1)モノマーの精製及び、厳密なリビング陰イオン性重合条件下での鎖状ポリスチレン−ブロック−ポリ(4−ビニルピリジン)(PS−PVP)ブロックコポリマーの合成、(2)ジブロックコポリマーの精製及び特性決定、(3)さらなる重合可能な基をPVPブロック上へとつなぐための、p−(クロロメチルスチレン)を用いたジブロックコポリマーの重合後の四級化とそれに次ぐ精製及び特性決定、(4)テトラヒドロフラン(THF)共溶媒を用いた、官能化されたPS−PVPジブロックコポリマーのPS−コアミセルへの組み込み、それに次ぐエバポレーションを介したその除去、(5)フリーラジカル開始剤及びX線照射を用いた、つながれたスチレン性残基の重合による、ミセルシェルの共有結合的安定化、(6)SCLミセルの特性決定。的確な合成及び広範な適用可能性にも関わらず、これらのSCLミセルはあまりにも時間を費やし、工場規模でのこの経路を介した調製には費用がかかる。
【0008】
V.Butunら(J.Am.Chem.Soc,(1998),120,12135−12136)(非特許文献2)は、SCLミセル合成における進歩を記載し、それは、(1)ミセルの組み立てのために共溶媒を用いる必要性をなくし、かつ、(2)疎水性活性成分の刺激応答取り込み及び放出の可能性をもたせる。それらのアプローチは、反応性のコア形成ブロックを用い、それが溶液温度、pH及びイオン強度に依存して、その親水性/疎水性を変化させる。これらの進歩にも関わらず、鎖状ジブロックコポリマーの合成は、以前として高い費用がかかり、制限された工程である。
【0009】
S.Liu及びS.P.Armes(J.Am.Chem.Soc,(2001),123,9910−9911)(非特許文献3)は、より最近になって、SCLミセルの大スケールの製造に向けたさらなる進歩を報告した。著者らは、鎖状ABジブロックコポリマーではなく、鎖状ABCトリブロックコポリマーを用いることにより、シェル架橋工程が高い固体含量(10質量%まで)で実現されることを示した。順次のモノマー付加を介したABCトリブロックコポリマーを合成するために、原子移動ラジカル重合(ATRP)が使用された。温度応答性のコアを形成するA−ブロックは、官能化ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)をベースとしたマクロ開始剤に基づき、親水性架橋を形成し得るB−ブロックは、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートに基づき、及び、付加的な立体安定化をもたらすC−ブロックは、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレートに基づく。バルク(及び水性溶液)中の重合後、重合混合物は10質量%の固体となるよう希釈され、40℃に加熱されてPPO−コアミセルを形成し、次いでビス−(2−ヨードエトキシ)エタンを用いて架橋される。すなわち、全体の合成は、1つの容器中で個々のモノマーからSCLミセルまで行われる。SCLミセルは依然として温度応答性であり;そのようなものとして、PPO−コアが親水性である低温においてそれらは膨張し、かつ、PPOが疎水性である温度においては縮小する。これらの進歩にも関わらず、SCLミセルの大スケールの合成は、依然として工場規模では現実味がない;これは主として鎖状ブロックコポリマーの合成を原因とするが、架橋の方法が典型的には有害な化学物質を必要とするためでもある。さらに、合成が1つの容器でできても、それは依然として複数の工程である。
【0010】
別のアプローチを用いて、H.Hayashiら(Macromolecules,(2004),37,5389)(非特許文献4)は、表面上にポリ(エチレングリコール)(PEG)鎖を保持するpH感受性「ナノゲル」の調製を記載する。このアプローチにおいて、2−(ジエチルアミノエチル)メタクリレート(DEA)及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の共重合は、特に合成されたPEGベースのマクロモノマーによって安定化される、架橋されている(又はゲル状である)けれども応答性のコアを生じる。ナノゲルは、エマルジョン重合により合成され、大きさ50〜680nmの架橋されたゲルネットワークを生じた。非常に類似する論文中で、J.I.Amalvyら(Langmuir,(2004),20,8992−8999)(非特許文献5)は、それらの類似するポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)で安定化されたDEAコアが架橋された「マイクロゲル」としてのポリマーについて言及している。この実験で、pH応答性のゲル化された粒子は、pH8〜9で250〜700nm前後の大きさを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/46301号
【特許文献2】国際公開第02/34793号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】K.B.Thurmond IIら(J.Am.Chem.Soc.,(1996),118,7239−7240)
【非特許文献2】V.Butunら(J.Am.Chem.Soc,(1998),120,12135−12136)
【非特許文献3】S.Liu及びS.P.Armes(J.Am.Chem.Soc,(2001),123,9910−9911)
【非特許文献4】H.Hayashiら(Macromolecules,(2004),37,5389)
【非特許文献5】J.I.Amalvyら(Langmuir,(2004),20,8992−8999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
新規なポリマー構造を有する両親媒性の分岐非架橋コポリマーを付加重合法によって調製し得ることが、今や見出された。これらの両親媒性分岐コポリマーは、特定の基準が合致する場合に、水性溶液中で従来の溶媒和ポリマー又はゲルではなく粒子を形成することができる。これらのコポリマー及び粒子は、容易に合成でき、かつ、それらの有利な特性の結果としての多様な応用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、付加(好ましくはフリーラジカル)重合方法により取得可能な両親媒性分岐コポリマーを提供し、それは以下:
(a)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤、
(b)任意であるが好ましくは適合性を有する鎖転移剤(E及びE’)、
(c)少なくとも1つのエチレン性のモノ不飽和モノマー(G及び/又はJ)、
(d)少なくとも1つのエチレン性ポリ不飽和モノマー(L)
の反応生成物であり、
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは親水性残基であり;E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは疎水性残基であり、(d)の(c)に対するモル比は0.0005〜1である。
【0015】
本発明の両親媒性分岐コポリマーは、分岐した、非架橋の付加ポリマーであり、統計的、傾斜、及び交互分岐コポリマーを含む。好ましくは、本発明の両親媒性分岐コポリマーは、一般式:
【0016】
【化1】

【0017】
式中、
E及びE’は各々独立に、鎖転移剤又は開始剤の残基を表し;
G及びJは各々独立に、分子あたり1つの重合可能な二重結合を有する単官能性モノマ
ーの残基を表し;
Lは分子あたり少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する多官能性モノマーの残基
を表し;
R及びR’は各々独立に、水素原子又は任意に置換されたアルキル基を表し;
X及びX’は各々独立に、終結反応に由来する末端基を表し;
g、j及びlは、g及びjは各々独立に0〜100を表し、かつlは0.05以上であ
る場合、g+j=100となるように正規化された各残基のモル比率を表し;
m及びnは各々独立に1以上であり;
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが親水性残基であり;かつ
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが疎水性残基である
で表される。
【0018】
本発明の第2の態様は、付加重合方法、好ましくはフリーラジカル重合方法による、かかる両親媒性分岐コポリマーの調製方法を提供し、前記方法は以下:
(a)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(b)少なくとも0.05モル%(単官能性モノマーのモル数に基づく)の多官能性モ
ノマー;
(c)任意であるが好ましくは鎖転移剤;及び
(d)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤;
を共に混合する工程、および
次いで前記混合物を反応させて分岐コポリマーを形成する工程、
を含んでなる。
【0019】
第3の態様において、本発明は、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマーを含んでなる分岐コポリマー粒子を提供する。
【0020】
第4の態様において、本発明は、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマーを溶媒に添加し、任意に溶媒を除去することを含んでなる、上記に定義されるような分岐コポリマー粒子の調製方法を提供する。
【0021】
第5の態様において、本発明は、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマー又は上記に定義されるような分岐コポリマー粒子及び担体を含んでなる組成物を提供する。
【0022】
第6の態様において、本発明は、封入剤、ナノリアクター、ピカリング乳剤、制御性放出剤及び/又は刺激応答性放出剤等の、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマー又は上記に定義されるような分岐コポリマー粒子の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
以下の定義は化学構造、分子セグメント及び置換基に関する:
本明細書中に使用されるとき、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等の、1〜12炭素原子を含み得る分岐又は非分岐の飽和炭化水素基をいう。より好ましくは、アルキル基は、1〜6、好ましくは1〜4炭素原子を含む。メチル、エチル及びプロピル基は特に好ましい。「置換アルキル」は、1つ以上の置換基により置換されたアルキルをいう。好ましくは、アルキル及び置換アルキル基は非分岐である。
【0024】
典型的な置換基には、例えば、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミル、アルコキシカルボニル、カルボキシル、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホナート、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルホナート、ホスフィニル、ホスホニル、カルバモイル、アミド、アルキルアミド、アリール、アラルキル及びベタイン基等の4級アンモニウム基が挙げられる。これらの置換基の中では、ハロゲン原子、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、カルボキシル、アミド及びベタイン基等の4級アンモニウム基が特に好ましい。上記置換基のいずれかがアルキル又はアルケニル置換基を表す又は含む場合、これは、鎖状であっても、分岐状であってもよく、12個まで、好ましくは6個まで、特に4個まで炭素原子を含んでもよい。シクロアルキル基は、3〜8個、好ましくは3〜6個の炭素原子を含んでもよい。アリール基又は部分は6〜10個の炭素原子を含んでもよく、フェニル基が特に好ましい。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子であることができ、ハロアルキル基等のハロ部分を含む任意の基は、したがって、これらのハロゲン原子のいずれか一つ又はそれ以上を含み得る。
「(メタ)アクリル酸」等の用語は、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を包含する。類似の用語は同様に解釈されるべきである。
【0025】
「アルキ/アリール」(alk/aryl)等の用語は、アルキル、アルカリル、アラルキル(例えば、ベンジル)及びアリール基及び部分を包含する。
【0026】
モルパーセントは、単官能性モノマーの総含量に基づく。
【0027】
モノマー及びポリマーの分子量は、他に規定されない限り、重量平均分子量として表される。
【0028】
コポリマー及び粒子
本発明の両親媒性分岐コポリマーは、従来のブロックコポリマーミセルと同様に、水性溶液中で自己集合してコア−シェル構造を形成し得る。したがって、本発明は、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマーを含んでなる分岐コポリマー粒子を提供する。いくつかのケースにおいては、任意に除去し得るテトラヒドロフラン等の水混和性の共溶媒を使用する必要があり得る。しかしながら、特定の条件の下、両親媒性分岐コポリマーは、水中で分岐コポリマー粒子へと直接集合し得るので、粒子形成時に共溶媒を必要としない。このことは、両親媒性分岐コポリマーが比較的高い含有量の親水性成分を有する場合に起こる傾向がある。
【0029】
本明細書の文脈において、自己集合する両親媒性分岐ポリマーは、「分岐コポリマー粒子」又は「粒子」と呼ばれる。かかる構造は、「コア」を形成する疎水性のドメインと、「シェル」を形成し、コアを安定させる親水性のドメインとを含む。シェルが存在しない場合、コアを形成するドメインは、同じ条件下で溶液から相分離し得る。したがって、用語「粒子」は、両親媒性の、部分的に溶媒和された/部分的に脱溶媒和された分岐コポリマーとして規定され得る。かかる粒子は、好ましくは、2〜600nm、好ましくは2〜300nm、より好ましくは5〜100nm、特に5〜75nm、特に10〜60nmの流体力学的直径を有するナノ粒子であり、この粒子は溶液中で光を散乱させ得るが、希釈溶液中、合理的な時間的スケール(例えば、1日)では感知可能な程度に沈殿(肉眼で見える沈殿)を生じない。親水性及び疎水性ドメインは、粒子成分、すなわち、単官能性及び多官能性モノマー、並びに、いくつかの場合においては、開始剤及び/又は鎖転移剤の特徴に起因する。いくつかの状況においては、例えば、疎水性溶媒中での処方においては、親水性ドメインがコアを形成し、疎水性ドメインがシェルを形成することが有利であり得るとも想定される。したがって、本明細書中において、疎水性コア及び親水性シェルとの言及全ては、親水性コア及び疎水性シェルとの言及と互換的である。しかし、疎水性コア及び親水性シェルを含んでなる分岐コポリマー粒子が好ましい。「反応性成分」が使用され得ることも想定される。本明細書中に使用されるとき、用語「反応性」とは、溶液のpH、温度又はイオン強度等の外部要因に応じて、溶媒(通常は水)中での溶解度が変化するコポリマーの成分のことをいう。したがって、この外部要因に応じて、これらの成分は粒子のシェル又はコアのいずれかを形成し得る。
【0030】
本発明は、付加重合方法(好ましくはフリーラジカル重合方法)により取得可能な両親媒性分岐コポリマーを提供し、それは以下:
(a)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤、
(b)任意であるが好ましくは適合性を有する鎖転移剤(E及びE’)、
(c)少なくとも1つのエチレン性のモノ不飽和モノマー(G及び/又はJ)、
(d)少なくとも1つのエチレン性ポリ不飽和モノマー(L)
の反応生成物であり、
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは親水性残基であり、
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは疎水性残基であり、
(d)の(c)に対するモル比は0.0005〜1である。
【0031】
本発明の両親媒性分岐コポリマーは、分岐した、非架橋の付加ポリマーであり、統計的、傾斜、及び交互分岐コポリマーを含む。好ましくは、本発明の両親媒性分岐コポリマーは、一般式:
【0032】
【化2】

【0033】
式中、
E及びE’は各々独立に、鎖転移剤又は開始剤の残基を表し;
G及びJは各々独立に、分子あたり1つの重合可能な二重結合を有する単官能性モノマ
ーの残基を表し;
Lは分子あたり少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する多官能性モノマーの残基
を表し;
R及びR’は各々独立に、水素原子又は任意に置換されたアルキル基を表し;
X及びX’は各々独立に、終結反応に由来する末端基を表し;
g、j及びlは、g及びjは各々独立に0〜100を表し、かつlは0.05以上であ
る場合、g+j=100となるように正規化された各残基のモル比率を表し;
m及びnは各々独立に1以上であり;
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが親水性残基であり;かつ
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが疎水性残基である)
で表される。
【0034】
コポリマーは、多官能性モノマー由来の未反応のビニル基をも含み得る。
【0035】
コポリマーは、鎖転移剤を用いる従来のフリーラジカル重合技術である、付加重合方法によって調製される。
【0036】
粒子は、いくつかの異なる方法で作製することができる。しかし、親水性部分は、コアを安定化するために常に、(親水性、分子量及び質量パーセント含量の組み合わせに関して)十分である必要がある。
【0037】
シェル形成ドメインは、任意ではあるが好ましくは高分子量の親水性ポリマー成分から形成することができる。したがって、E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは、少なくとも1000ダルトンの分子量を有する親水性残基であるのが好ましい。好ましくは、親水性成分は、多官能性モノマー、より好ましくは鎖転移剤(従来のフリーラジカル重合においては)又は開始剤に由来するが、最も好ましいのは、単官能性モノマーに由来する。シェル形成ドメインは、粒子の総質量に基づいて、0.1質量%〜99.9質量%で存在し得る。一般的に、より高い質量パーセント含量は、より安定して沈殿に向かう粒子をもたらす。全てのケースにおいて、親水性成分の組み合わせが可能であり、望ましい場合がある。
【0038】
コア形成ドメインは、任意の疎水性ポリマー成分から形成することができる。より高い分子量の疎水性種は、典型的には、より低い分子量の疎水性種よりも疎水性である。好ましくは、疎水性成分は、多官能性モノマー、より好ましくは鎖転移剤(従来のフリーラジカル重合においては)又は開始剤に由来するが、最も好ましいのは、単官能性モノマーに由来する。コア形成ドメインは、粒子の総質量に基づいて、0.1質量%〜99.9質量%で存在し得る。一般的に、より高い質量パーセント含量のコア形成成分は、より安定性が低く沈殿に向かう粒子をもたらす。全てのケースにおいて、疎水性成分の組み合わせが可能であり、望ましい場合がある。
【0039】
反応性成分は、限定されるものではないが、温度、pH及び/又はイオン強度等の外部要因に応じて、コアドメイン又はシェルドメインのいずれかを可逆的に形成することができる。かかる成分は、それらの用途により最も容易に特性決定され、親水性及び/又は疎水性であると考えられ得る。
【0040】
好ましくは、E及びE’のうちの一方は、鎖転移剤の残基を表し、E及びE’のうちの他方は、開始剤の残基を表す。
【0041】
鎖転移剤(CTA)は、鎖転移メカニズムを介したフリーラジカル重合の間に分子量を低減させることが知られている分子である。これらの剤は、任意のチオール含有分子であることができ、単官能性又は多官能性のいずれかであり得る。この剤は親水性、疎水性、両親媒性、陰イオン性、陽イオン性、中性、両性イオン性又は反応性であり得る。この分子はまた、チオール部分を含むオリゴマーであっても、予め形成されたポリマーであってもよい。(この剤は、ヒンダードアルコール又は同様のフリーラジカル安定剤であってもよい)。コバルトビス(ボロンジフルオロジメチル−グリオキシメート)(CoBF)等の遷移金属錯体に基づくもの等の触媒性鎖転移剤も使用され得る。好適なチオールには、限定されるものではないが、ドデカンチオール等のC2−C18アルキルチオール、チオグリコール酸、チオグリセロール、システイン及びシステアミンが挙げられる。チオール含有オリゴマー又はポリマーを使用してもよく、例えば、ポリ(システイン)又は後官能化してチオール基が得られるオリゴマー若しくはポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)(ジ)チオグリコレートを使用してもよく、あるいは、例えば、チオブチロラクトンにより、ポリ(プロピレングリコール)等の末端又は側鎖が官能化されたアルコールを反応させることにより、相当するチオールにより官能化された鎖が伸長したポリマーが得られるチオール基により官能化された予め生成されたポリマーを使用してもよい。多官能性チオールは、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)又はキサンテート交換マクロ分子設計(MADIX)リビングラジカル法を介して調製したキサンテート、ジチオエステル又はトリチオカーボネート末端官能化ポリマーの還元によって調製してもよい。キサンテート、ジチオエステル、及びジチオカーボネートも使用され得る。例えば、クミルフェニルジチオアセテートが挙げられる。代替的な鎖転移剤は、アルキルハロゲン化物及び遷移金属塩又は錯体を含むフリーラジカル付加重合において分子量を限定することが知られている任意の種であることができる。2種以上の鎖転移剤を組み合わせて使用してもよい。鎖転移剤がコポリマーに必要な親水性をもたらす場合、鎖転移剤は親水性であって、少なくとも1000ダルトンの分子量を有するのが好ましい。
【0042】
親水性CTAは、典型的には、水素結合及び/又は持続的若しくは一過的な電荷を含む。親水性CTAは、限定されるものではないが、チオグリコール酸及びシステイン等のチオ−酸、システアミン等のチオアミン、並びに2−メルカプトエタノール、チオグリセロール及びエチレングリコールルモノ−(及びジ−)チオグリコレート等のチオ−アルコールを含む。親水性マクロ−CTA(CTAの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した親水性ポリマーから調製し、次いで、鎖末端を還元するか、あるいは、予め形成された親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、チオブチロラクトン等の化合物により後から官能化させることができる。
【0043】
疎水性CTAは、限定されるものではないが、ドデカンチオール、オクタデシルメルカプタン、2−メチル−l−ブタンチオール及び1,9−ノナンジチオール等の鎖状及び分岐アルキル及びアリール(ジ)チオールを含む。疎水性のマクロ−CTA(CTAの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した疎水性ポリマーから調製し、次いで、鎖末端を還元するか、あるいは、予め形成された疎水性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、チオブチロラクトン等の化合物により後から官能化させることができる。
【0044】
反応性のマクロ−CTA(CTAの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した反応性ポリマーから調製し、次いで、鎖末端を還元するか、あるいは、予め形成された反応性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、チオブチロラクトン等の化合物により後から官能化させることができる。
【0045】
鎖転移剤の残基は、コポリマーの(単官能性モノマーのモル数に基づいて)、0〜80モル%、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜40モル%及び特に0.05〜30モル%含んでなる。
【0046】
開始剤はフリーラジカル開始剤であり、フリーラジカル重合反応を開始させることが知られている任意の分子であることができ、例えば、アゾ含有分子、過硫酸塩、酸化還元開始剤、過酸化物、ベンジルケトンが挙げられる。これらは、熱、光分解又は化学的手段により活性化され得る。これらの例としては、限定されるものではないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス(4−シアノ吉草酸)、過酸化ベンゾリル、過酸化クミル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、過酸化水素/アスコルビン酸が挙げられる。ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメート等のイニファータも使用することができる。ある場合においては、2種以上の開始剤を使用してもよい。開始剤は、少なくとも1000ダルトンの分子量を有するマクロ開始剤であってもよい。この場合、マクロ開始剤は親水性であっても、疎水性であってもよい。
【0047】
好ましくは、フリーラジカル重合における開始剤の残基は、モノマーの総質量に基づいて、コポリマーの、0〜5質量%、好ましくは0.01〜5質量%及び特に0.01〜3質量%含んでなる。
【0048】
鎖転移剤及び開始剤の使用が好ましい。しかし、いくつかの分子は、両方の機能を発揮し得る。
【0049】
親水性マクロ開始剤は、水素結合及び/又は持続的若しくは一過的な電荷を含む。親水性マクロ開始剤(予め形成されたポリマーの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した親水性ポリマーから調製するか、又は、予め形成された親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、2−ブロモイソブチリルブロミド等の化合物により後から官能化させることができる。
【0050】
疎水性マクロ開始剤(予め形成されたポリマーの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した疎水性ポリマーから調製するか、又は、予め形成された疎水性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、2−ブロモイソブチリルブロミド等の化合物により後から官能化させることができる。
【0051】
反応性マクロ開始剤(予め形成されたポリマーの分子量が少なくとも1000ダルトンである場合)は、RAFT(又はMADIX)により合成した反応性ポリマーから調製するか、又は、予め形成された親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基を、2−ブロモイソブチリルブロミド等の化合物により後から官能化させることができる。
【0052】
好ましくは、マクロ開始剤は親水性である。
【0053】
単官能性モノマーは、例えば、ビニル及びアリル化合物等の付加重合メカニズムによって重合し得る任意の炭素−炭素不飽和化合物を含み得る。単官能性モノマーの性質は、親水性、疎水性、両親媒性、陰イオン性、陽イオン性、中性又は両性イオン性であり得る。単官能性モノマーは、限定されるものではないが、ビニル酸、ビニル酸エステル、ビニルアリール化合物、ビニル酸無水物、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルアミン、ビニルアリールアミン、ビニルニトリル、ビニルケトン、及び上述のそれらの誘導体ならびに相当するそれらのアリル変性体等のモノマーから選択される。その他の好適な単官能性モノマーには、ヒドロキシル含有モノマー及び後反応してヒドロキシル基を形成し得るモノマー、酸含有又は酸官能性モノマー、両性イオン性モノマー、及び四級化アミノモノマーを含む。オリゴメリック、ポリメリック、及びジ−又はマルチ−官能性モノマーも使用され得、特に、ポリアルキレングリコール又はポリジメチルシロキサンのモノ(アルキ/アリール)(メタ)アクリル酸エステル等のオリゴメリック又はポリメリックな(メタ)アクリル酸エステル又は低分子量オリゴマーの任意のその他のモノ−ビニル又はアリル付加化合物が使用され得る。1つより多いモノマーの混合物は、統計的、傾斜、又は交互分岐コポリマーを得るために使用される場合もある。すなわち、G及びJは各々独立に、上述の単官能性モノマーの残基を表す。
【0054】
ビニル酸及びその誘導体は、(メタ)アクリロイルクロリド等の(メタ)アクリル酸及びそれらの酸ハロゲン化物を含む。ビニル酸エステル及びその誘導体は、メチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のC1〜20のアルキル(メタ)アクリレート(鎖状及び分岐)、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等のトリ(アルキルオキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート及びN−ヒドロキシスクシンアミド(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の活性化エステル、を含む。ビニルアリール化合物及びその誘導体には、スチレン、アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルピリジン、ビニルベンジルクロリド及びビニル安息香酸が挙げられる。ビニル酸無水物及びその誘導体は、無水マレイン酸を含む。ビニルアミド及びその誘導体は、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]ジメチルアンモニウムクロリド、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホネート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル及びN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを含む。ビニルエーテル及びその誘導体は、メチルビニルエーテルを含む。ビニルアミン及びその誘導体は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート及び後反応してビニルホルムアミド等のアミン基を形成し得るモノマーを含む。ビニルアリールアミン及びその誘導体は、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール及びビニルイミダゾールを含む。ビニルニトリル及びその誘導体は、(メタ)アクリロニトリルを含む。ビニルケトン及びその誘導体は、アクレオリン(acreolin)を含む。
【0055】
ヒドロキシル含有モノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等のビニルヒドロキシルモノマー、並びに、グルコースモノ(メタ)アクリレート等の糖モノ(メタ)アクリレートを含む。後反応してヒドロキシル基を形成し得るモノマーには、酢酸ビニル、アセトキシスチレン及びグリシジル(メタ)アクリレートを含む。酸含有又は酸官能性モノマーには、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−エチルプロパンスルホン酸、モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート及びアンモニウムスルファートエチル(メタ)アクリレートを含む。両性イオン性モノマーには、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等の(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びベタインを含む。四級化アミノモノマーは、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等の(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−(アルキ/アリール)アンモニウムハロゲン化物を含む。
【0056】
オリゴメリック及びポリメリックモノマーは、モノ(アルキ/アリール)オキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びモノ(アルキ/アリール)オキシポリジメチル−シロキサン(メタ)アクリレート等のオリゴメリック及びポリメリック(メタ)アクリル酸エステルを含む。これらのエステルには、モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート及びモノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートを含む。さらなる例としては、ビニル又は予め形成されたオリゴマーのアリルエステル、アミド又はエーテル又はオリゴ(カプロラクタム)、オリゴ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクタム)又はポリ(カプロラクトン)等の開環重合を介して形成されたポリマー、又はポリ(1,4−ブタジエン)等のリビング重合技術を介して形成されたオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
【0057】
上記に列挙したものに対応するアリルモノマーは、適用可能な場合には、各々のケースにおいて使用され得る。
【0058】
より好ましいモノマーは、以下を含む:
アミド含有モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N及び/又はN’−ジ(アルキル又はアリール)(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホネート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル及びN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド;
(メタ)アクリル酸及びその誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロリド(又は任意のハロゲン化物)、(アルキ/アリール)(メタ)アクリレート、官能性オリゴメリック又は高分子モノマー、例えば、モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノメトキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及び糖モノ(メタ)アクリレート、例えば、グルコースモノ(メタ)アクリレート;
ビニルアミン、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ビニルアリールアミン、例えば、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び後反応してアミン基を形成し得るモノマー、例えば、ビニルホルムアミド;
ビニルアリールモノマー、例えば、スチレン、ビニルベンジルクロリド、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸及びビニル安息香酸;
ビニルヒドロキシルモノマー、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート又は後官能化してヒドロキシル基を形成し得るモノマー、例えば、酢酸ビニル、アセトキシスチレン及びグリシジル(メタ)アクリレート;
酸含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド 2−エチルプロパンスルホン酸及びモノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート又は酸無水物、例えば、無水マレイン酸;
両性イオン性モノマー、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びベタイン含有モノマー、例えば、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド;
四級化アミノモノマー、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド。
【0059】
相当するアリルモノマーは、適用可能な場合には、各々のケースにおいて使用され得る。
【0060】
官能性モノマー、すなわち、重合後に別の部分によって後から修飾される又は予め修飾され得る反応性ペンダント基を有するモノマーも使用することができ、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等の、トリ(アルキルオキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルクロリド、無水マレイン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルベンジルクロリド、(メタ)アクリル酸の活性化エステル、例えば、N−ヒドロキシスクシンアミド(メタ)アクリレート及びアセトキシスチレンが挙げられる。
【0061】
マクロモノマー(少なくとも1000ダルトンの分子量を有するモノマー)は、通常、ビニル又はアリル基等の重合可能な部分を、エステル、アミド又はエーテル等の好適な結合単位を介して、予め形成された単官能性ポリマーへと結合することにより形成される。好適なポリマーの例には、モノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]又はモノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)]等の単官能性ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ジメチルシロキサン)等のシリコーン類、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(カプロラクタム)等の開環重合により形成されるポリマー、又はポリ(1,4−ブタジエン)等のリビング重合を介して形成される単官能性ポリマーを含む。
【0062】
好ましいマクロモノマーは、モノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]モノ(メタクリレート)、モノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)]モノ(メタクリレート)及びモノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン)を含む。
【0063】
単官能性モノマーが、コポリマー中に必須の親水性を提供するとき、G及び/又はJが親水性単官能性モノマーの残基であり、好ましくは少なくとも1000ダルトンの分子量を有することが好ましい。
【0064】
親水性単官能性モノマーは、水素結合及び/又は不変的又は一時的な荷電を有する。親水性単官能性モノマーは、(メタ)アクリロイルクロリド、N−ヒドロキシスクシナミド(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、マレイン無水物、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド及び(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級化アミノモノマー、3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパンスルホナート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、グリセロールモノアクリレート(メタ)、モノメトキシ及びモノヒドロキシオリゴ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、グルコースモノ(メタ)アクリレート等の糖モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−エチルプロパンスルホン酸、モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルスクシネート、アンモニウムスルファトエチル(メタ)アクリレート、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等の(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びベタインを含むモノマーを含む。親水性マクロモノマーも使用することができ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性の基等の重合可能な部分によってポスト官能化され得る末端官能基を有する、モノメトキシ及びモノヒドロキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート及びその他の親水性ポリマーを含む。
【0065】
疎水性の単官能性モノマーは、メチル(メタ)及びステアリル(メタ)アクリレート等のC1〜20アルキル(メタ)アクリレート(鎖状及び分岐)及び(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等のトリ(アルキルオキシ)シリルアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アセトキシスチレン、ビニルベンジルクロリド、メチルビニルエーテル、ビニルホルムアミド(メタ)アクリロニトリル、アクレオリン、1−及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、グリシジル(メタ)アクリレート及びマレイン酸を含む。疎水性マクロモノマーも使用することができ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性の基等の重合可能な部分によってポスト官能化され得る末端官能基を有する、モノメトキシ及びモノヒドロキシポリ(ブチレンオキシド)(メタ)アクリレート及びその他の疎水性ポリマーを含む。
【0066】
反応性単官能性モノマーは、2−及び4−ビニルピリジン、ビニル安息香酸、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等の三級アミン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド、モノ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びビニル安息香酸を含む。反応性マクロモノマーも使用することができ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性の基等の重合可能な部分によってポスト官能化され得る末端官能基を有する、モノメトキシ及びモノヒドロキシポリ(ブチレンオキシド)(メタ)アクリレート及びその他の反応性ポリマーを含む。
【0067】
多官能性モノマー又は分岐は、付加重合を介して重合し得る、少なくとも2つのビニル基を含む分子を含んでなる。分子は、親水性、疎水性、両親媒性、中性、陽イオン性、両性イオン性又はオリゴメリック又はポリメリックである。かかる分子は、しばしば、当該技術分野で架橋剤として知られ、任意のジ−又は多官能分子を、好適に反応するモノマーと反応させることにより調製され得る。例としては、ジ−又はマルチビニルエステル、ジ−又はマルチビニルアミド、ジ−又はマルチビニルアリール化合物及びジ−又はマルチビニルアルキ/アリールエーテルを含む。典型的には、オリゴメリック又はポリメリックな又は多官能分岐剤の場合、結合反応は、重合可能部分をジ−又は多官能性オリゴマー、あるいは、ジ−又は多官能性ポリマーへと連結するために使用される。分岐は、それ自体1を超える、T型ジビニルオリゴマー又はポリマー等の分岐点を有し得る。ある場合には、1を超える多官能性モノマーが使用され得る。多官能性モノマーがコポリマー中に必須の親水性を提供する場合、Lは親水性多官能性モノマーの残基であることが好ましく、好ましくは、少なくとも1,000ダルトンの分子量を有する。
【0068】
上述に列挙したものに相当するアリルモノマーも、適切な場合に用いることができる。
【0069】
好ましい多官能性モノマーは、限定されるものではないが、ジビニルアリールモノマー、例えば、ジビニルベンゼン;(メタ)アクリレートジエステル、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート;ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート;ジビニル(メタ)アクリルアミド、例えば、メチレンビスアクリルアミド;シリコーン含有ジビニルエステル又はアミド、例えば、(メタクリルオキシ)アクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン);ジビニルエーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル;及びテトラ−又はトリ−(メタ)アクリレートエステル、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート又はグルコース ジ−からペンタ−(メタ)アクリレートを含む。さらなる例としては、ビニル又はアリルエステル、開環重合を介して形成された予め形成されているオリゴマーのアミド又はエーテル、例えば、オリゴ(カプロラクタム)又はオリゴ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクタム)又は、ポリ(カプロラクトン)、或いは、リビング重合技術を介して形成されたオリゴマー又はポリマー、例えば、オリゴ−又はポリ−(1,4−ブタジエン)を含む。
【0070】
マクロ架橋剤又はマクロ分岐(少なくとも1000ダルトンの分子量を有する多官能性モノマー)は通常、ビニル又はアリル基等の重合可能な部分を、エステル、アミド又はエーテル等の好適な結合単位を介して、予め形成された多官能性ポリマーへと結合することにより形成される。好適なポリマーの例には、ポリ(エチレングリコール)又はポリ(プロピレングリコール)]等のジ官能性ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ジメチルシルオキサン)等のシリコーン類、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(カプロラクタム)等の開環重合により形成されるポリマー、又はポリ(1,4−ブタジエン)等のリビング重合を介して形成される多官能性ポリマーを含む。
【0071】
好ましいマクロ分岐は、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メタクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(カプロラクトン)ジ(メタ)アクリレート及びポリ(カプロラクタム)ジ(メタ)アクリルアミドを含む。
【0072】
親水性分岐は、水素結合及び/又は不変的又は一時的な荷電を含む。親水性分岐は、メチレンビスアクリルアミド、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グルコースジ−及びトリ(メタ)アクリレート、オリゴ(カプロラクタム)及びオリゴ(カプロラクトン)を含む。複数の末端官能化親水性ポリマーは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性基等の、好適に重合可能な部分を用いて官能化され得る。
【0073】
疎水性の分岐は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のオリゴ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のテトラ−又はトリ−(メタ)アクリレートエステル及びグルコースペンタ(メタ)アクリレートを含む。複数の末端官能化疎水性ポリマーは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性基等の、好適に重合可能な部分を用いて官能化され得る。
【0074】
多官能反応性ポリマーは、ポリ(プロピレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はスチレン性基等の、好適に重合可能な部分を用いて官能化され得る。
【0075】
Lは、上述の多官能性モノマーの残基である。
【0076】
コポリマーは、多官能性モノマーを含む必要がある。言い換えれば、式(I)においてl=0.05である。好ましくは0.05〜50、より好ましくは0.05〜40、特に0.05〜30、特に0.05〜15である。
【0077】
式(I)中のR及びR’は、各々独立に水素原子又はC1−4アルキル基を表すことが好ましい。
【0078】
X及びX’は各々独立に、終結反応に由来する末端基を表す。従来のラジカル重合の間には、本来的かつ回避不能な終結反応がいくらか生じる。フリーラジカルの間での共通の終結反応は、典型的な2分子化合及び不均化反応であり、モノマー構造に依存して変化し、2つのラジカルの消滅をもたらす。不均化反応は、特に(メタ)アクリレートの重合に対して最も一般的であると考えられ、2つのデッドプライマリー鎖を含み、一方は、水素末端を有し(X又はX’=H)、もう一方は、炭素−炭素二重結合を有する(X又はX’=−C=CH)。終結反応が鎖転移反応である場合、X又はX’は典型的には容易に除去され得る原子であり、一般的には水素である。したがって、例えば、鎖転移剤がチオールである場合、X及び/又はX’は水素原子であり得る。
【0079】
式(I)から明らかなように、m+lは、Lにおいて重合可能な基の数に等しく、nは、コポリマーにおける反復単位の総数である。好ましくは、mは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0080】
コポリマーの合成
上述のように、本発明のコポリマーは、付加重合方法により調製される。この工程は、従来のフリーラジカル重合工程である。
【0081】
従来のフリー重合工程を用いて分岐ポリマーを生産するために、単官能性モノマーを、鎖転移剤及びフリーラジカル開始剤存在下で、多官能性モノマー又は分岐剤を用いて重合させる。
【0082】
重合は、溶解、バルク、懸濁、分散及びエマルジョン工程を介して行うことができる。
【0083】
すなわち、本発明はまた、付加(好ましくはフリーラジカル)重合工程による、上記に規定されたような両親媒性分岐コポリマーの調製方法を提供し、この方法は、以下の成分を一緒に混合し、
(a)これまでに規定したような少なくとも一つの単官能性モノマー;
(b)これまでに規定したような少なくとも0.05モル%(単官能性モノマーのモル
数に基づいて)の多官能性モノマー;
(c)任意ではあるが好ましくは、これまでに規定したような鎖転移剤;及び
(d)これまでに規定したような開始剤、任意ではあるが好ましくはフリーラジカル開
始剤;
次に、この混合物を反応させて、分岐非架橋コポリマーを形成させる工程を含む。
【0084】
粒子の合成
水性溶液中での従来の分岐コポリマー粒子(非反応性)の合成は、両親媒性分岐コポリマーを濃縮溶液(典型的には2質量%を超える)として水混和性溶媒(しばしばTHF又は低級アルコール)中に溶解することにより達成される。完全に溶解後、水を撹拌しながらゆっくり添加し、粒子形成を促進させる。水の量は、適用に応じて変わる。粒子形成後、共溶媒をエバポレーション又は透析により任意に除去し、分岐ポリマー粒子の純粋な水性溶液を得る。いくつかの例では、両親媒性分岐コポリマーを、直接、水に溶解することができる。この場合、予め決定した質量のポリマーを容器に添加して、予め決定した容量の水を添加する。分岐コポリマーが完全に溶解するまで、スラリーを撹拌する。
【0085】
水性溶液中での反応性分岐ポリマー粒子の形成方法は、所望の反応、すなわち、温度、pH又はイオン強度に依存する。しかし、全ての場合において、分岐コポリマーは、好適なpH、温度又はイオン強度の下で、予め決定された濃度で、水中に直接溶解される。次いで、粒子の形成は、外部因子、すなわち、pH、温度を変化させることにより、又は、電解質を添加/除去することにより、それぞれ促進される。
【0086】
非応答性又は応答性の分岐ポリマー粒子を調製するための両親媒性分岐コポリマーの濃度は、そのポリマー組成物及び所望の適用に依存して変わるが、質量で1×10−6〜75%まで変化し得る。
【0087】
すなわち、本発明は、上記に定義されるような両親媒性分岐コポリマーを溶媒に添加し、かつ、任意に、溶媒を除去することを含んでなる、上記に定義されるような分岐コポリマー粒子の調製方法をも提供する。
【0088】
組成物
本発明のコポリマー又は分岐コポリマー粒子は、担体又は希釈剤(固体及び/又は液体を含んでなる場合がある)のみを含んで、又は、活性成分をも含んでなるものとして、組成物へと組み入れることができる。好ましくは、担体は水性溶液である。すなわち、ある好ましい組成物は、上記に定義されるような分岐コポリマー粒子を含む水性溶液を構成する。コポリマー又は粒子は、典型的には、質量で1×10−6%〜75%、好ましくは0.01%〜50%、特に0.01%〜25%、好ましくは0.05%〜15%、より好ましくは0.1%〜10%、特には0.1%〜5%の量で、前記組成物中に含まれる。
【0089】
本発明の組成物は、例えば、粉末又は顆粒、錠剤、固体の棒状物等の固体、ペースト、ゲル又は液体、特に、水性ベースの液体等の任意の物理的形状であり得る。
【0090】
本発明のコポリマーは、粘度の低減、沈殿の増加、粒子/分子分散の増加、潤滑性増加、及び、鎖状の類似するポリマーと比較した場合の、特定分子量溶解性増加等の特性を呈し得る。ポリマーの構造はまた、ポリ酸又は塩基のpKaに及ぼす効果を有する。すなわち、本発明のコポリマーは、多様な応用に使用され得る。
【0091】
用途
本発明の分岐コポリマー粒子は、それらの両親媒性が有する特性、固有の構成、構造、及び溶液特性のために、多数の広範な適用を有する。
【0092】
エマルジョンは、食品及び家庭用及びパーソナルケア製品等の多くの商業的応用に定常的に使用され、しばしば従来の小分子界面活性剤により安定化される。粒子はまた、1世紀以上の間、エマルジョンを安定化させるために使用されてきた。かかる粒子は微粒子、ピカリング又はラムスデン乳剤と称され、通常無機物である。ピカリング乳剤は、より安価で、より強固な、毒性が少なく再生産可能な組成物を生産することが多い。最近、機能性、サイズ、構造及び個々に応じた特性という観点で、それらが非常に広い範囲を提供することから、効果的なピカリング乳剤としての有機粒子が研究されている。本発明の分岐コポリマー粒子は、効果的なピカリング乳剤として働くことが見出されている。さらに、いくつかの場合において、エマルジョンは、pHの変化に反応する。
【0093】
薬物及び香料等の疎水性の活性成分は、時間における持続性に関しては、身体のような親水性環境下で又は水性の家庭用及びパーソナルケア剤内において安定化され得る場合にのみ有用であることが多い。結果として、かかる活性成分のために好適な媒体の開発に向けた大きな努力がなされてきている。この状況において、ミセル等の自己組織化ポリマー構造はそれらの機能性及びサイズにより大いに注目されている。これらのポリマー媒体内への活性成分の封入とそれに次ぐそれらの制御性及び/又は刺激応答性放出は、それらの適合性に関する試験として定常的に用いられる。ピレン蛍光はしばしば、(1)疎水性化合物の封入及び(2)その放出、を立証するモデルとして使用される。ピレンの蛍光スペクトルは、その環境の親水性に依存して変化する。最終的に、ピレンの発光スペクトルにおける2つのピークの強度比(I1/13比と称される)は、ピレンが親水性又は疎水性の環境にあるか否かを示す(低いI1/13比はピレンが疎水性環境中にあることを示し、高いI1/13比はピレンが親水性環境中にあることを示す)。本発明の分岐pH反応性コポリマー粒子が、モデル疎水性活性成分及びその制御性の、かつ刺激応答性の放出のための有効な封入媒体として作用することが、今や見出された。
【0094】
「ボトムアップ」ルートを介したナノサイズの無機コロイドの合成は、材料化学の分野でよく研究されてきている。[注意:「ボトムアップ」アプローチは、「大きな」分子種を破砕又は磨砕することにより元々の分子種よりも小さい構造を生じさせる(「トップダウン」アプローチ)こととは対照的に、より小さい分子から組み立てられる構造(しばしば大きさは顕微鏡的である)を記載する]。ひとつのアプローチは、溶液からコロイドを沈殿するためにナノサイズの鋳型を用いている。しかし、本発明の分岐コポリマー粒子が、例えば、ボトムアップアプローチを介した金コロイドの調製のために非常に有効なナノリアクターとして作用することが、今や見出された。
【0095】
弱いポリ酸及びポリ塩基は、pH1〜14の範囲で完全にはイオン化されないポリ電解質である。モノマー単位の半分が荷電され、半分は荷電されないpHが、pKa(酸について)又はpKb(塩基について)である。ポリマー中のモノマー単位間の荷電反発により、ポリ電解質のpKaは、相当するモノマーのpKaとは異なることが知られている。理論的には、ポリマー中の荷電の相対的な位置に影響を与える任意の因子は、pKaに影響を及ぼし得る。ポリ電解質のpKaはポリマー構造の関数として変化し得ることが見出されている。原則的に、ポリ酸(及びポリ塩基の共役酸)のpKaは、分岐の度合によって変化することが見出されている。すなわち、原則的に同一のpH反応性を有する分岐ポリマー粒子は、ポリマーの分岐度合を変化させるだけで、異なるpH値において疎水性活性成分を放出することができる。
【0096】
上述の観点から、本発明は、上記に規定される両親媒性分岐コポリマー、又は、封入剤、ナノリアクター、ピカリング乳剤、制御性放出剤及び/又は刺激応答性放出剤として上述に規定される分岐コポリマーをも提供する。
【0097】
本発明を、以下の非限定例を参照することにより、さらに詳細に説明する:
【実施例】
【0098】
以下の実施例において、コポリマーは、以下の命名法を用いて記載する:
(モノマーG)(モノマーJ)(分岐L)(鎖転移剤)
式中、下付き文字の値は、単官能性モノマーの値が100となるように正規化された各構成成分のモル比率であり、すなわち、g+j=100である。分岐度合又は分岐レベルはlにより示され、dは鎖転移剤のモル比率を表す。
【0099】
例えば、
メタクリル酸100エチレングリコールジメタクリレート15ドデカンチオール15とは、モル比率が100:15:15のメタクリル酸:エチレングリコールジメタクリレート:ドデカンチオールを含むポリマーを表すこととなる。
【0100】
分子量決定は、それぞれ有機又は水性溶離液として、0.05M NaNOを用いてpH9に調整した、テトラヒドロフラン(THF)又は20%水性メタノールのいずれかを用いて、流速1分あたり1ml、サンプル注入量100μlの条件のWyattクロマトグラフにおいて、SEC−MALLsを使用したGPCにより行った。この装置に、40℃に設定した、Polymer Laboratories PL混合C及び混合Dカラムを装着した。Jasco RI検出装置を装備したWyatt Dawn DSPレーザーフォトメーターを用いて検出を行った。
【0101】
実 施 例 1
分岐ポリ[ジエチルアミノエチルメタクリレート−コ−ポリ(エチレングリコー
ル)22モノメタクリレート−コ−エチレングリコールジメタクリレート]の合

DEA95/(PEG22MA)EGDMA15DDT15
ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEA)(8.000g、43mmol)、PEG22MA(2.162g、2.2mmol)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(1.350g、6.8mmol)及びドデカンチオール(DDT)(1.62mL、6.8mmol)を、エタノール(100mL)中に溶解し、窒素を30分間パージすることにより脱気した。この時間後、反応容器を陽圧窒素流に供し、60℃で加熱した。一旦、温度が平衡化したら、AIBN(110mg、総モノマーを基準にして1質量%)を添加して重合を開始し、反応混合物を撹拌しながら18時間静置した。エタノールを真空蒸留により除去し、得られた清澄な油状ポリマーを、極冷石油で洗浄した。このポリマーを、真空オーブン中で48時間乾燥させることにより、85%の収率で得られた。
GPC:Mw:11,900g/mol(光散乱シグナルから計算);溶離液:THF
【0102】
比 較 例 1
鎖状ポリ[ジエチルアミノエチルメタクリレート−コ−ポリ(エチレングリコー
ル)22モノメタクリレート](実施例1の分岐コポリマーに類似する鎖状ポリ
マー)の合成
DEA95/(PEG22MA)DDT2.5
ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEA)(8.000g、43mmol)、PEG22MA(2.162g、2.2mmol)、及びドデカンチオール(DDT)(0.27mL、1.1mmol)を、エタノール(100mL)中に溶解し、窒素を30分間パージすることにより脱気した。この時間後、反応容器を陽圧窒素流に供し、60℃で加熱した。一旦、温度が平衡化したら、AIBN(101mg、総モノマーを基準にして1質量%)を添加して重合を開始し、反応混合物を撹拌しながら40時間静置した。エタノールを真空蒸留により除去し、得られた清澄な油状ポリマーを、極冷石油で洗浄した。このポリマーを、真空オーブン中で48時間乾燥させることにより、90%の収率で得られた。
GPC:Mw:35,300g/mol−1(光散乱検出装置から計算);溶離液:
THF
【0103】
実 施 例 2
分岐ポリ[ジメチルアミノエチルメタクリレート−コ−ポリ(エチレングリコー
ル)22モノメタクリレート−コ−エチレングリコールジメタクリレート]の合

DMA95/(PEG22MA)EGDMA15TG15
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMA)(8.949g、57mmol)、PEG22MA(3.000g、3mmol)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(1.782g、9mmol)及びチオグリセロール(TG)(0.972mL、9mmol)を、エタノール(120mL)中に溶解し、窒素を30分間パージすることにより脱気した。この時間後、反応容器を陽圧窒素流に供し、60℃で加熱した。一旦、温度が平衡化したら、AIBN(137mg、総モノマーを基準にして1質量%)を添加して重合を開始し、反応混合物を撹拌しながら24時間静置した。エタノールを真空蒸留により除去し、得られた清澄な油状ポリマーを、極冷石油で洗浄した。このポリマーを、真空オーブン中で48時間乾燥させることにより、80%の収率で得られた。
GPC:Mw:23,500g/mol−1(光散乱検出装置から計算);溶離液:
THF
【0104】
比 較 例 2
鎖状ポリ[ジメチルアミノエチルメタクリレート−コ−ポリ(エチレングリコー
ル)22モノメタクリレート](実施例2の分岐コポリマーに類似する鎖状ポリ
マー)の合成
DMA95/(PEG22MA)TG2.5
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMA)(8.949g、57mmol)、PEG22MA(3.000g、3mmol)及びチオグリセロール(TG)(0.162g、1.5mmol)を、エタノール(120mL)中に溶解し、窒素を30分間パージすることにより脱気した。この時間後、反応容器を陽圧窒素流に供し、60℃で加熱した。一旦、温度が平衡化したら、AIBN(120mg、総モノマーを基準にして1質量%)を添加して重合を開始し、反応混合物を撹拌しながら24時間静置した。エタノールを真空蒸留により除去し、得られた清澄な油状ポリマーを、極冷石油で洗浄した。このポリマーを、真空オーブン中で48時間乾燥させることにより、80%の収率で得られた。
GPC:Mw:16,000g/mol−1(光散乱検出装置から計算);溶離液:
THF
【0105】
実 施 例 3
(A)実施例1において合成したDEA95/(PEG22MA)EGDMA15
TG15分岐コポリマー及び低pH条件下で比較例1において合成したDEA95
/(PEG22MA)TG2.5鎖状コポリマーの水性溶液の調製
一般的手順
コポリマー(50mg)を水(10mL)に添加し、室温にて、1M塩酸溶液を用いてpH2に調整した。完全に溶解するまでこの混合物を撹拌した。これにより、0.5質量%の水性溶液を得た。
【0106】
(B)実施例1において合成したDEA95/(PEG22MA)EGDMA15
TG15分岐コポリマー及び高pH条件下で比較例1において合成したDEA95
/(PEG22MA)TG2.5鎖状コポリマーの水性溶液の調製
一般的手順
実施例3(A)において調製した低pH溶液の5mLのアリコートを取り、pH10になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加した。これにより0.5質量%の水性溶液を得た。
【0107】
特性決定
pHの関数としての水性溶液の挙動
pH10及びpH2における1H NMR試験は、DEAが陽イオン形態である場合には、DEA残基は低pHにおいて水和されているが、DEAが中性である場合には、高pHにおいて脱水和されていることを示す。pH2においては、プロトン化されたDEA及びPEO残基にアサインされたピークは明らかに眼で見ることができる(それぞれ、δ1.2〜1.5、3.1〜3.4、3.4〜3.5及び4.2〜4.4及びδ3.5〜3.7)。しかし、pH10においては、PEOにアサインされたピークのみが、δ3.5〜3.7において眼で見ることができる。このことは、分岐コポリマー中のDEA残基のpH反応性な水和を裏付ける。
【0108】
水性溶液における粒子の直径
鎖状ポリマーの動的光散乱試験(1.0w/v%溶液)は、高pHにおいて、約40〜50nmの自己集合したポリマー鎖(ミセル)を示す。これらは、低pHにおいてプロトン化された場合に、ユニマー(個々に水和したポリマー鎖)へと解離する。15%の分岐ポリマーは、高pHにおいて、約25nmの粒子サイズを示す。しかし、これらは、低pHにおいて膨潤し、約40〜50nmの粒子サイズとなる。溶液pHの関数としての粒子直径の変化量は、SCLミセル、マイクロゲル及びナノゲルに関するこれまでの研究と非常に一致する。
【0109】
実 施 例 4
(A)実施例2において合成したDMA95/(PEG22MA)EGDMA15
TG15分岐コポリマー及び低pH条件下で比較例2において合成したDMA95
/(PEG22MA)TG2.5鎖状コポリマーの水性溶液の調製
一般的手順
ポリマー(50mg)を水(10mL)に添加し、室温にて、1M塩酸溶液を用いてpH2に調整した。完全に溶解するまでこの混合物を撹拌した。これにより、0.5質量%の水性溶液を得た。
【0110】
(B)実施例2において合成したDMA95/(PEG22MA)EGDMA15
TG15分岐コポリマー及び高pH条件下で比較例2において合成したDMA95
/(PEG22MA)TG2.5鎖状コポリマーの水性溶液の調製
一般的手順
実施例4(A)において調製した低pH溶液の5mLのアリコートを取り、pH10になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加した。これにより0.5質量%の水性溶液を得た。
【0111】
実 施 例 5
実施例4において調製したDMA95/(PEG22MA)EGDMA15
TG15分岐コポリマー及びDMA95/(PEG22MA)TG2.5鎖状
コポリマーに基づくコポリマー粒子の水性溶液(pH2及びpH10において)
からのピカリング乳剤の調製
一般的方法:
pH2又はpH10いずれかの、鎖状又は分岐状いずれかのポリマー粒子の水性溶液(5mL)(上記実施例4において記載したようにして調製)に、n−ドデカン(5mL)を添加した。この2相の混合物を、2分間、12,000rpmの高せん断力に供した(Ultra−Thuraxホモジナイザーを使用)。このことにより、不透明な白色エマルジョンが得られ、これを平衡化させるために一晩放置した。全てのエマルジョンは、水中ドデカンであった。
【0112】
特性決定
鎖状pH反応性ポリマーは、pH10において長期間のエマルジョン安定性をもたらしたが、pH2においては、安定なエマルジョンは形成されなかった。反対に、同じ条件下で、分岐pH反応性ポリマーは、pH2及びpH10の両方において安定なエマルジョンをもたらした。光学顕微鏡により、エマルジョンの平均液滴サイズは、典型的には、低pHにおいて形成されるエマルジョンに関して大きいことが明らかになった。鎖状ポリマーは、pH9において、5〜100μmのポリ分散水中油液滴を生じ、pH2においてはエマルジョンを生じなかった。しかし、分岐ポリマーはpH9において、約5〜10μmの十分に規定されたエマルジョン液滴を生じ、pH2においては、5〜50μmのわずかに大きい液滴を生じた。3週間後、pH9において分岐ポリマー粒子を用いて形成したエマルジョンは、類似の鎖状ポリマーよりも凝集/クリーム状化に対して顕著により安定であることも光学顕微鏡により明らかとなった。したがって、エマルジョンの液滴サイズは、pH反応性ピカリング乳剤を用いて安定化させたエマルジョンの溶液pHに依存することが示された。
【0113】
実 施 例 6
ナノリアクターとしての使用
DEA95/(PEG22MA)EGDMA15DDT15分岐コポリマー(それぞれ実施例1及び3において合成したもの)の0.5質量%溶液(4mLの水中20mgのポリマー、pH2)を、希水酸化ナトリウムを用いてpH10に調整した。この撹拌溶液に、DEA残基に対する化学量論的量の水素テトラクロロアウレート(III)水和物水溶液を添加した。約2時間後、金溶液を自然に還元し、ポリマーシェル内に金コロイドを形成した。還元には、黄色から深い赤色への溶液の色の変化を伴った。この反応の希釈溶液を透過型電子顕微鏡で観察することにより、分岐ポリマー内に球状のAuコロイド(平均コロイドサイズは2〜6nmであった)の局在的沈殿を確認した。
【0114】
実 施 例 7
pKaに対する構造の影響
DEA95/(PEG22MA)EGDMA15DDT15(実施例1において合成した)及びDEA95/(PEG22MA)EGDMA2.5DDT2.5(実施例1の方法にしたがって合成した)分岐ポリ塩基及びDEA95/(PEG22MA)DDT2.5鎖状ポリ塩基(比較例1において合成した)のpKaを滴定により測定した。pH1.5のポリマーの希釈溶液(0.25質量%)に、0.05Mの水酸化ナトリウムを滴下添加した。水酸化ナトリウムのpHと容量のプロットから、ポリ塩基(コンジュゲート酸形態のポリ塩基)のpKaを測定した。鎖状ポリマーに対して計算したpKaは7.07であり、2.5%分岐ポリマーに対しては6.89であり、15%分岐ポリマーに対しては6.57であった。したがって、鎖状ポリ塩基は、分岐ポリ塩基よりも強い酸である。これらの結果は、その他の分岐及び鎖状ポリ酸及びポリ塩基を用いた滴定により確認した。したがって、その他の用途において、これらのポリマーは、濃度及び分岐の度合の関数として溶液のpHを調節することができる。したがって、本質的に同じポリマーは、単純に分岐の度合を変化させることにより、異なるpH値における疎水性活性物質の放出を促進し得る。
【0115】
実 施 例 8
封入剤及び刺激応答性放出剤としての使用
モデルとなる疎水性活性物質(ピレン)の放出を、鎖状ポリ塩基DEA95/(PEG22MA)DDT2.5(比較例1において合成した)及び分岐ポリ塩基DEA95/(PEG22MA)EGDMA2.5DDT2.5(実施例1の方法にしたがって合成した)及びDEA95/(PEG22MA)EGDMA15DDT15(それぞれ、実施例1及び3において記載した合成及び粒子形成)についての溶液pHの関数として、蛍光顕微鏡によりモニタリングした。
【0116】
分岐及び鎖状コポリマーの0.1質量%水性溶液(20mLの水中20mgのポリマー、pH2)をpH2にした。6.0x10−7モルのピレンを各々のポリマー溶液中に溶解し、希水酸化ナトリウムを用いてpH12にpHを増大させ、コア−シェル構造のin−situ形成を促進した。ピレンの放出スペクトルを、333nmの波長を用いて、25℃にて記録した。放出及び励起スリットの幅は、それぞれ、2.5及び8nmに設定した。I/I比を、鎖状、2.5%分岐及び15% 分岐コポリマーについての溶液pHに対してプロットした。
【0117】
高pHにおいては(pH7より上)、鎖状、2.5%分岐及び15%分岐コポリマーの全てが、約1.3のI/I比を有し、このことは、ピレンが疎水性ポリマーコア中に封入されたことを示す。DEA残基のpKよりも下にpHを下げた場合、I/I比は全てのケースにおいて増加した。しかし、低pHにおいては、I/I比は、分岐の度合いが増加するにつれて、全体的に増加した。このことは、ピレンが、鎖状コポリマーよりも分岐コポリマーからの方がより緩序に放出されることを示す。
【0118】
実 施 例 9
制御性放出剤としての使用
実施例8において記載したものと同じ放出実験を行った。しかし、親水性CTA(1−チオグリセロール、TG)を有するコポリマーを使用した。類似の鎖状、低分岐及び高分岐ポリマーの組成物は、以下の通りであった:それぞれ、DEA95/(PEG22MA)TG2.5(鎖状対照として合成した)、DEA95/(PEG22MA)EGDMA2.5TG2.5及びDEA95/(PEG22MA)EGDMA15TG15。すべてのこれらのポリマーは、実施例1及び比較例1に示された方法にしたがって合成した。しかし、ドデカンチオール鎖転移剤を、正確に同モル量のチオグリセロール鎖転移剤に交換した。このケースの場合、高pHにおいては、I/I比は、全ての3つのコポリマーに対して約1.35であり、低pHにおいては、それら全てが約1.7〜1.8まで増大した。したがって、実施例8の刺激応答性放出剤と比較して、疎水性活性物質の放出は、CTAの分岐の度合い及び親水性を単に変化させることにより、調節することができる。したがって、使用するCTAの分岐の度合い及び特性を単に変化させることにより、疎水性活性物質の迅速な刺激応答性放出又緩序な制御性放出を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤、
(b)任意であるが好ましくは適合性を有する鎖転移剤(E及びE’)、
(c)少なくとも1つのエチレン性のモノ不飽和モノマー(G及び/又はJ)、
(d)少なくとも1つのエチレン性ポリ不飽和モノマー(L)
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは親水性残基であり;E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つは疎水性残基であり、(d)の(c)に対するモル比は0.0005〜1である、の反応生成物である、
付加重合方法、好ましくはフリーラジカル重合方法により取得可能な両親媒性分岐コポリマー。
【請求項2】
以下の一般式を有する、請求項1に記載の両親媒性分岐コポリマー:
【化3】

式中、
E及びE’は各々独立に、鎖転移剤又は開始剤の残基を表し;
G及びJは各々独立に、分子あたり1つの重合可能な二重結合を有する単官能性モノマ
ーの残基を表し;
Lは分子あたり少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する多官能性モノマーの残基
であり;
R及びR’は各々独立に、水素原子又は任意に置換されたアルキル基を表し;
X及びX’は各々独立に、終結反応に由来する末端基を表し;
g、j及びlは、g及びjは各々独立に0〜100を表し、かつlは0.05以上であ
る場合、g+j=100となるように正規化された各残基のモル比率を表し;
m及びnは各々独立に1以上であり;
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが親水性残基であり;かつ
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが疎水性残基である。
【請求項3】
E、E’、G、J及びLのうちの少なくとも1つが、少なくとも1000ダルトンの分子量を有する親水性残基である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
E及びE’のうちの一方が鎖転移剤の残基を表し、E及びE’のうちの他方が開始剤の残基を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記鎖転移剤の残基が、前記コポリマーの0〜80モル%、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜40モル%及び特に0.05〜30モル%を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記鎖転移剤が、単官能性チオール及び多官能性チオール及び触媒的鎖転移剤から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
E及び/又はE’が、各々少なくとも1000ダルトンの分子量を有する親水性鎖転移剤又は親水性開始剤の残基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記開始剤が、従来のフリーラジカル重合方法において使用するのに好適な開始剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記開始剤が、アゾ含有分子、過硫酸塩、酸化還元開始剤、過酸化物、ベンジルケトン及びイニファータから選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記開始剤の残基が、前記モノマーの総質量に基づいて、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.01〜5質量%及び特に0.01〜3質量%含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項11】
G及びJが各々独立に、ビニル酸、ビニル酸エステル、ビニルアリール化合物、ビニル酸無水物、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルアミン、ビニルアリールアミン、ビニルニトリル、ビニルケトン及びそれらの誘導体;ヒドロキシル含有モノマー及び後反応してヒドロキシル基を形成し得るモノマー;酸含有モノマー又は酸官能性モノマー;両性イオン性モノマー;四級化アミノモノマー及びオリゴメリックモノマー;及び前述のビニルモノマーの相当するアリルモノマーから選択される単官能性モノマーの残基を表す、請求項1〜10のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項12】
G及び/又はJが、pH、温度及び/又はイオン強度に反応性である水溶解性を有する単官能性モノマーの残基である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項13】
G及び/又はJが、少なくとも1000ダルトンの分子量を有する親水性単官能性モノマーの残基である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項14】
lが、0.05〜80、0.05〜50、好ましくは0.05〜40、より好ましくは0.05〜30及び特に0.05〜15である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項15】
Lが、ジ−又はマルチビニルエステル、ジ−又はマルチビニルアミド、ジ−又はマルチビニルアリール化合物及びジ−又はマルチビニルアルキ/アリールエーテルから選択される多官能性モノマーの残基である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項16】
Lが、pH、温度及び/又はイオン強度に反応性である水溶解性を有する多官能性モノマーの残基である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項17】
Lが、少なくとも1000ダルトンの分子量を有する親水性多官能性モノマーの残基である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項18】
前記総疎水性物質含量が、5〜95質量%、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、及び特に30〜50質量%である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項19】
付加重合工程、好ましくはフリーラジカル重合工程による、請求項1〜18のいずれか1項に記載の分岐両親媒性コポリマーの製造方法であって、以下:
(a)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(b)少なくとも0.05モル%(単官能性モノマーのモル数に基づく)の多官能性モ
ノマー;
(c)任意であるが好ましくは鎖転移剤;及び
(d)開始剤、任意であるが好ましくはフリーラジカル開始剤;
を混合する工程、及び、次いで前記の混合物を反応させて分岐コポリマーを形成させる工程を含んでなる、方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性分岐コポリマーを含んでなる分岐コポリマー粒子。
【請求項21】
疎水性コア及び親水性シェルを含んでなる、請求項20に記載の粒子。
【請求項22】
前記粒子がナノ粒子である、請求項20又は請求項21に記載の粒子。
【請求項23】
前記粒子が、2〜600nm、好ましくは2〜300nm、より好ましくは5〜100nm、特に5〜75nm及び特に10〜60nmの直径を有する、請求項20〜22のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性分岐コポリマーを溶媒に添加する工程、及び任意に溶媒を除去する工程を含んでなる、請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の調製方法。
【請求項25】
請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子を含む水性溶液。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー及び担体を含んでなる組成物。
【請求項27】
請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子及び担体を含んでなる組成物。
【請求項28】
前記担体が水性溶液である、請求項26又は請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
封入剤としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の使用。
【請求項30】
ナノリアクターとしての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の使用。
【請求項31】
ピカリング乳剤(Pickering emulsifier)としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の使用。
【請求項32】
制御性放出剤としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の使用。
【請求項33】
刺激応答性放出剤としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の両親媒性コポリマー又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の分岐コポリマー粒子の使用。

【公表番号】特表2010−512441(P2010−512441A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540738(P2009−540738)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063615
【国際公開番号】WO2008/071661
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(501229115)ユニリーバー・エヌ・ブイ (3)
【Fターム(参考)】