説明

ポリ乳酸系仮撚加工糸とその製造方法及び織編物

【課題】 製編織して染色することにより、発色性とドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する織編物となるポリ乳酸系仮撚加工糸とその製造方法及び織編物を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸系マルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、前記仮撚加工糸の沸水処理後の伸長率が20%以上、トルクが100〜170T/Mであり、かつ筒編染色L値が11.0以下であるポリ乳酸系仮撚加工糸。ポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、延伸倍率1.1〜1.3倍、仮撚係数17000〜26000、かつヒータ温度80〜120℃で延伸同時仮撚加工するポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製編織して染色することにより、発色性とドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する織編物となるポリ乳酸系仮撚加工糸とその製造方法及び織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成繊維マルチフィラメント、中でも特にポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた仮撚加工糸は、汎用性の点から幅広く用いられてきた。
【0003】
しかしながら、環境問題がクローズアップされるにつれ、石油由来の前記PETは敬遠される傾向にあり、植物由来で生分解性を有するポリ乳酸を用いる傾向が強まってきており、また、その屈折率の低さから高発色性が期待されるため、近年、ポリ乳酸を用いた様々な加工糸の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルからなり、仮撚加工が施され、沸騰水収縮率が6%以上、30%以下であり、伸縮復元率(CR)が5%以上である脂肪族ポリエステル加工糸が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、脂肪族ポリエステル繊維糸条からなる仮撚加工糸であって、断面変化率が1.5以下であり、また伸縮復元率が特定の式を満足し、さらに熱水収縮率が5〜15%である光沢に優れた脂肪族ポリエステル仮撚加工糸が提案されている。
【特許文献1】特開2002−155437号公報
【特許文献2】特許第3463597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の加工糸は、脂肪族ポリエステル糸に高収縮性と捲縮とを付与することで、織編物のふくらみ、反発、ストレッチ性を向上させるものであるが、高い捲縮を付与するために仮撚時の延伸倍率を実施例に記載されるように通常のレベルに設定しており、この結果、結晶配向が進み、発色性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2記載の仮撚加工糸は、断面変形が1.5以下と比較的小さいことにより、ギラツキ(グリッター)が改善されるものの、やはり実施例に記載されるように通常のレベルの延伸を行っており、特許文献1記載の加工糸と同様に結晶配向が進み、発色性が低下してしまうという問題があった。
【0008】
このように、ポリ乳酸からなる仮撚加工糸において、消費者ニーズを満足し得る高発色性の加工糸は未だ提案されていないのが現状である。
【0009】
本発明は、上記した従来の問題を解決し、製編織して染色することにより、発色性とドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する織編物となるポリ乳酸系仮撚加工糸とその製造方法及び織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸系マルチフィラメントの仮撚加工糸において、沸水処理後の伸長率とトルク及び筒編染色L値を適切に設定することで前記課題を解決できることを知見して本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の構成を有するものである。
(1)ポリ乳酸系マルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、前記仮撚加工糸の沸水処理後の伸長率が20%以上、トルクが100〜170T/Mであり、かつ筒編染色L値が11.0以下であることを特徴とするポリ乳酸系仮撚加工糸。
(2)上記(1)記載のポリ乳酸系仮撚加工糸を少なくともその一部に用いた織編物。
(3)染色L値が11.0以下である上記(2)記載の織編物。
(4)ポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、延伸倍率1.1〜1.3倍、仮撚係数17000〜26000、かつヒータ温度80〜120℃で延伸同時仮撚加工することを特徴とするポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を、製編織して染色することにより、発色性とドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する高質感の織編物を得ることができ、しかもこの加工糸は植物由来で、かつ生分解性を有するため、環境への負荷を小さくすることができる。
【0013】
また、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法によれば、上記の利点を有するポリ乳酸系仮撚加工糸を安定して効率的に、かつ安価に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を形成するポリ乳酸は、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との群から選ばれる重合体が挙げられる。
【0016】
乳酸の単独重合体であるポリL−乳酸及びポリD−乳酸の融点はそれぞれ約180℃であるが、乳酸系重合体として上記共重合体を用いる場合には、機械的強度、融点等を考慮して共重合体成分の共重合比を決定することが好ましい。例えば、L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合には、L−乳酸とD−乳酸のいずれか一方の割合(モル比)が0.9〜1.0未満、他方が0.1以下で0を超える範囲にすることが好ましく、また、L−乳酸又はD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体の場合には、例えば上記乳酸の割合(モル比)が0.9〜1.0未満、共重合成分であるヒドロキシカルボン酸の割合(モル比)が0.1以下で0を超える範囲にすることが好ましい。
【0017】
乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体におけるヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。これらの中でも、コストが安価である点から特にヒドロキシカプロン酸又はグリコール酸が好ましい。
【0018】
本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸は、沸水処理後の伸長率が20%以上であることが必要であり、30%以上が好ましい。沸水処理後の伸長率が20%以上であることで、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を使用した織編物に適度なストレッチ性を付与することができる。沸水処理後の伸長率は高いほど良好なストレッチ性を付与することができるが、後述するドレープ性との兼ね合いから100%以下が好ましい。
【0019】
また、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸は、トルクが100〜170T/Mであることが必要であり、110〜160T/Mであることが好ましい。トルクが前記範囲内にあることで、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を使用した織編物に染色等の後工程で熱が加わることにより、前記加工糸が捻れながら、かつばらついて収縮するため、織編物表面で光の乱反射が起こり、織編物に深みのある発色感を付与できるとともに、糸条に撚が掛かった状態になり、自然なドレープ性も生じるため、さらに高質感の織編物とすることができる。トルクが100T/M未満になると、捻れやばらつきが起こり難いため前記乱反射も起こり難くなり、深みのある発色感が生じ難い上、自然なドレープ性も生じないため、従来の織編物と大差ないものとなる。また、逆にトルクが170T/Mを超えると、スナール等により取り扱いが困難となり、工程通過性が悪くなるため好ましくない。
【0020】
さらに、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸は、筒編染色L値が11.0以下であることが必要であり、10.5以下が好ましく、さらに10.0以下がより好ましい。前記L値が11.0以下であることで、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を使用した織編物に、ストレッチ性と同時に高発色性を付与することができるため、高質感のものとすることができる。織編物に高発色性を付与するためには、筒編染色L値は低いほど好ましいが、技術的に実現可能な下限は7.0程度である。
【0021】
なお、製編織等の工程で加工糸が伸ばされると、発色性や布帛の品位が低下することがあるので、これらの問題の発生を防止するために、ポリ乳酸系仮撚加工糸の伸度は50%以下、特に15〜40%とすることが好ましい。
【0022】
本発明の織編物は、前記ポリ乳酸系仮撚加工糸を少なくともその一部に使用して得られるものであり、織物の場合には、経糸の一部又は全部、緯糸の一部又は全部、あるいはこれらの組み合わせで用いることができる。織編物におけるポリ乳酸系仮撚加工糸の使用割合は、織編物に優れた発色性とドレープ性、及び適度なストレッチ性を付与するという本発明の目的を損なわない範囲内であれば特に限定されるものではないが、目的とする外観、風合い、発色性を有効に発現させるためには、織編物に占める割合は40質量%以上、特に50質量%以上が好ましい。
【0023】
また、前記織編物の染色L値は11.0以下が好ましく、より好ましくは10.5以下であり、10.0以下がさらに好ましい。特に染色L値に下限はなく、その値が小さい程発色性が高く好ましいが、技術的に実現可能な下限は7.0程度である。
【0024】
次に、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法について説明する。
【0025】
本発明の製造方法は、ポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、延伸倍率1.1〜1.3倍、仮撚係数17000〜26000、かつヒータ温度80〜120℃で延伸同時仮撚加工するものである。なお、仮撚係数は、(供給糸の繊度(dtex)/延伸倍率)の平方根と仮撚数(T/M)との積で表される数値である。
【0026】
本発明の製造方法においては、ポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸とする点が重要である。高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸とすることによって、その分子内部の配向、及び結晶化度合いの低さにより、染料が入り込みやすい構造となっているため、本発明の目的である高発色性の仮撚加工糸を得ることが可能となる。
【0027】
しかしながら、本発明者らの研究により、たとえ高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸に用いたとしても、通常の延伸倍率、例えば1.4〜1.7倍で仮撚加工を行うと、前記配向、結晶化が進んでしまうため高発色性が得られないことがわかった。このため、本発明では、延伸倍率を1.1〜1.3倍と、できるだけ低い延伸倍率で仮撚加工を行うが、延伸倍率を低くすると仮撚加工時の加撚張力が低下して糸切れ等の操業低下を招きやすい。
【0028】
上記した糸切れ等の発生を防止するために、本発明者らが鋭意検討した結果、仮撚係数とヒータ温度を特定の範囲に設定して仮撚加工を行うことで、延伸倍率を低くしても加撚張力の低下を抑えることが可能となることがわかった。すなわち、延伸倍率1.1〜1.3倍、好ましくは1.15〜1.25倍、仮撚係数17000〜26000、好ましくは19000〜25000、ヒータ温度80〜120℃、好ましくは90〜110℃の範囲で延伸同時仮撚加工を行うことにより、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸を安定して製造することができる。
【0029】
延伸同時仮撚加工時の加撚張力は0.04〜0.10cN/dtexの範囲内が好ましく、0.05〜0.09cN/dtexの範囲内がより好ましく、0.05〜0.08cN/dtexの範囲内がさらに好ましい。
【0030】
延伸倍率が1.1倍未満になると、仮撚係数とヒータ温度を前記範囲としても加撚張力が低下し、糸切れ等が発生して操業性が低下し、延伸倍率が1.3倍を超えると、配向、結晶化が進んでしまうため、高発色性が得られない。
【0031】
また、仮撚係数が17000未満になると、付与される捲縮が低くなり、所望のストレッチ性が得られず、仮撚係数が26000を超えると、撚による延伸が強くなり過ぎるため、配向、結晶化が進んでしまい高発色性が得られず、また加撚張力が低下し、糸切れ等が発生して操業性が低下するので好ましくない。
さらに、ヒータ温度が80℃未満になると、セット効果が不十分となり、所望のストレッチ性が得られず、ヒータ温度が120℃を超えると、ポリ乳酸が強度低下を起こすため好ましくない。
【0032】
また、本発明では、必要な物性を得る目的で、延伸同時仮撚加工を施した後、熱処理を行ってもよい。このとき延伸を行うと、伸長率が低下したり、筒編染色L値が11.0を超えたりする場合があるので、熱処理は定長もしくはオーバーフィード状態で行うことが好ましい。また、ヒータ温度は必要な物性に応じて調整すればよく、高いほど伸長率、トルクが低下する傾向にある。ただし、これらの熱処理は、伸長率、トルク、筒編染色L値が本発明の範囲を逸脱しないよう注意する必要がある。
【0033】
次に、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法を図面を用いて説明する。
【0034】
図1は、本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法の一実施態様を示す概略工程図である。図1において、ポリ乳酸系マルチフィラメントである供給糸1は、スプール2から引き出され、ガイド3を通り、フィードローラ4、ヒータ5、仮撚施撚体6、第1デリベリローラー7の間で延伸同時仮撚加工が施されて、パッケージ10に巻き取られる。
【0035】
また、必要に応じて、図2で示したように、第1デリベリローラ7を出た仮撚加工糸を、第1デリベリローラ7、ヒータ8、第2デリベリローラ9により熱処理することもできる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本発明における各物性値は、次の方法により測定した。
(1)沸水処理後の伸長率
JIS−L−1013の伸縮性B法に従って伸長率(%)を算出する。ただし、採取した試料を沸水中で95℃×30分処理した後、測定に供する。
(2)トルク
試料をU字状に吊り下げて、その両上端にそれぞれの1/34(cN/dtex)(1/30(g/d)に相当)の荷重を掛けて固定した後、U字状をした試料の下端に1/340(cN/dtex)(1/300(g/d)に相当)の荷重を掛け、試料が旋回を停止した時の1m当たりの撚数で表示する。
【0037】
(3)筒編染色L値と織編物の染色L値
筒編地又は織編物について、下記の染色処方で染色を行う。
・精練
精練剤:サンモールFL(日華化学社製) 2g/l
温度×時間:70℃×20分
・染色
分散染料:Cibacet Black EL-FGL(チバスペシャルテイケミカルズ社製)10%o.m.f.
助剤:ニッカサンソルトSN-130(日華化学社製) 0.5g/l
酢酸:0.2ml/l
温度×時間:110℃×30分
浴比:1:30
・還元洗浄
還元洗浄剤:ソーダ灰 5g/l
ハイドロサルフアイト 1g/l
サンモールFL 1g/l
温度×時間:70℃×20分
【0038】
上記の染色処方で染色した筒編地又は織編物を、マクベス社製MS−2020型分光光度計でその反射率を測定し、CIE Labの色差式から濃度指標を求めた値が染色L値であり、その値が小さいほど深みのある色となる。
【0039】
実施例1
L−乳酸を主成分とする数平均分子量が64,000、L−乳酸純度99.0%のポリ乳酸チップ(カーギル社製 ECO-PLA)を用いて、紡糸温度220℃、紡糸速度3000m/分で溶融紡糸し、110デシテックス36フィラメントのポリ乳酸高配向未延伸糸を得た。
【0040】
これを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、95デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸の物性値を併せて表1に示す。
【0041】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度92本/2.54cm、緯糸密度80本/2.54cmで平織物を製織したが、製織性に問題はなかった。
【0042】
この生機を用いて、前記処方により染色し、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、染色L値が9.2で発色性が非常に良好であり、また風合いはドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する高質感の織物であった。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、95デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。
【0045】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度92本/2.54cm、緯糸密度80本/2.54cmで平織物を製織したが、製織性に問題はなかった。
【0046】
この生機を用いて、実施例1と同様にして染色し、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、染色L値が9.7で発色性が非常に良好であり、また風合いはドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する高質感の織物であった。
【0047】
実施例3
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、91デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。
【0048】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度94本/2.54cm、緯糸密度82本/2.54cmで平織物を製織したが、製織性に問題はなかった。
【0049】
この生機を用いて、実施例1と同様にして染色し、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、染色L値が9.7で発色性が非常に良好であり、また風合いはドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する高質感の織物であった。
【0050】
実施例4
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図2に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、91デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。
【0051】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、実施例3と同様にして製織したが、実施例1〜3の加工糸に比べてトルクが低いことにより、非常に製織しやすいものであった。
【0052】
この生機を用いて、実施例3と同様にして染色、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、染色L値が10.3と発色性は実施例3の織物よりも若干劣っていたものの良好で、風合いはドレープ性に優れ、かつ適度なストレッチ性を有する高質感の織物であった。
【0053】
比較例1
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、79デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。
【0054】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度104本/2.54cm、緯糸密度94本/2.54cmで平織物を製織したが、製織性に問題はなかった。
【0055】
この生機を用いて、実施例1と同様にして染色し、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、ストレッチ性が良好であったものの、染色L値が12.2と発色性が非常に悪く、また風合いはドレープ性に欠けており、従来の織物と大差ないものであった。
【0056】
比較例2
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工して、94デシテックス36フィラメントのポリ乳酸系仮撚加工糸を得た。
【0057】
得られたポリ乳酸系仮撚加工糸を用いて、ウォータージェットルームで経糸密度92本/2.54cm、緯糸密度80本/2.54cmで平織物を製織したが、製織性に問題はなかった。
【0058】
この生機を用いて、実施例1と同様にして染色し、仕上げ加工を行ったところ、得られた織物は、染色L値が10.1と発色性が良好で、風合いはドレープ性に優れていたものの、ストレッチ性に欠けていた。
【0059】
比較例3
実施例1で得られたポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、図1に示す工程に従い、表1の条件にて加工を行なったが、加撚張力が低く糸切れしたため、仮撚加工糸を採取することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法の一実施態様を示す概略工程図である。
【図2】本発明のポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法の他の実施態様を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0061】
1 供給糸
2 スプール
3 ガイド
4 フィードローラ
5、8 ヒータ
6 仮撚施撚体
7 第1デリベリローラ
9 第2デリベリローラ
10 パッケージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系マルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、前記仮撚加工糸の沸水処理後の伸長率が20%以上、トルクが100〜170T/Mであり、かつ筒編染色L値が11.0以下であることを特徴とするポリ乳酸系仮撚加工糸。
【請求項2】
請求項1記載のポリ乳酸系仮撚加工糸を少なくともその一部に用いた織編物。
【請求項3】
染色L値が11.0以下である請求項2記載の織編物。
【請求項4】
ポリ乳酸系高配向未延伸マルチフィラメントを供給糸として、延伸倍率1.1〜1.3倍、仮撚係数17000〜26000、かつヒータ温度80〜120℃で延伸同時仮撚加工することを特徴とするポリ乳酸系仮撚加工糸の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−257600(P2006−257600A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79453(P2005−79453)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】