説明

ポリ乳酸系樹脂組成物

【課題】 環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂を用いていながら、柔軟性の高い樹脂組成物が得ることができる。そして、これを成形することにより、硬度、モデュラス及び曲げ弾性率が低く、引っ張り伸び率が高く、折れ皺が発生し難い成形体を得ることが可能となった。
【解決手段】 以下の成分(A)及び成分(B)を溶融混合して得られる樹脂組成物。
成分(A):JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重(kgf)におけるメルトマスフローレートが0.000〜10g/10minであるポリ乳酸系樹脂
成分(B):熱可塑性エラストマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有するポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを成形した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源枯渇や二酸化炭素排出量の削減に対する関心が高まってきている。こうした中、植物を発酵して得られる乳酸を原料とするポリ乳酸系樹脂は、環境に優しい材料として注目を浴びている。現在、乳酸の原料は、トウモロコシ等の可食作物であるが、非可食原料から乳酸を発酵・精製する技術についても開発が進められている。しかしながら、ポリ乳酸系樹脂は、剛性が高く、脆いため、熱可塑性エラストマー等が用いられている軟質分野での利用は進んでいない。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は、エステル系可塑剤の添加により軟質化することができることが知られている(特許文献1参照)が、直鎖状法高分子であるポリ乳酸系樹脂は可塑剤の保持力が低いために、可塑剤がブリードアウトしやすい。また、可塑剤を添加すると、ガラス転移温度が下がり、耐熱性が低下してしまう。ポリ乳酸系樹脂と親和性の高いアクリル系ゴムを用いた軟質化及び耐衝撃改良についても検討がなされている(特許文献2参照)が、アクリル系ゴムによる柔軟化の効果は不十分で、多量に用いても熱可塑性エラストマー等の硬度には及ばない。
【0004】
一方、ポリ乳酸系樹脂の耐衝撃性を向上させる技術として、ポリ乳酸系樹脂とエチレン−プロピレン共役ジエン共重合体の混合物に有機化酸化物を添加して溶融混練する方法が開示されている。しかしながら、この技術は、ポリ乳酸系樹脂の柔軟化ではなく、剛性の高いポリ乳酸系樹脂の耐衝撃性改質に関する技術である。また、ここには、二成分が単独または相互に架橋構造を有していると記載されているが、ポリ乳酸系樹脂のみに有機化酸化物を添加しても架橋しないことから、エチレン−プロピレン共役ジエン共重合体同士又はエチレン−プロピレン共役ジエン共重合体とポリ乳酸系樹脂の間で架橋していると考えられ、また得られる樹脂組成物の剛性は、マトリクスとなるポリ乳酸系樹脂の剛性を反映し、高いままであると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3421769号
【特許文献2】特開2005−344075号公報
【特許文献3】特開2002−37987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂を用いた、柔軟性の高い樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、特定物性のポリ乳酸系樹脂を熱可塑性エラストマーと併用することにより、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂を用いていながら、柔軟性の高い樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の成分(A)及び成分(B)を溶融混合して得られる樹脂組成物に存する。
【0008】
成分(A):JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230、2.16kg荷重(kgf)におけるメルトマスフローレートが0.000〜10g/10minであるポリ乳酸系樹脂
成分(B):熱可塑性エラストマー
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定物性のポリ乳酸系樹脂を熱可塑性エラストマーと併用することにより、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂を用いていながら、柔軟性の高い樹脂組成物が得ることができる。そして、これを成形することにより、硬度、モデュラス及び曲げ弾性率が低く、引っ張り伸び率が高く、折れ皺が発生し難い成形体を得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本発明の樹脂組成物は、成分(A):JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重(kgf)におけるメルトマスフローレートが0.000〜10g/10minであるポリ乳酸系樹脂、及び、成分(B):熱可塑性エラストマーを含有する。
<(成分(A):ポリ乳酸系樹脂>
本発明の樹脂組成物に含まれる成分(A)は、特定物性を有するポリ乳酸系樹脂である。
【0011】
成分(A)のポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸を主成分とするポリエステル樹脂である。ここで、主成分とは、ポリ乳酸系樹脂中にポリ乳酸が通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上含まれることをいう。
ポリ乳酸系樹脂に含まれるポリ乳酸以外の成分としては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びテレフタル酸などの芳香族化合物などの有機酸から得られるホモポリマー、コポリマー、ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0012】
ポリ乳酸系樹脂の原料として用いられる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸及び/又は乳酸の環状2量体であるラクタイドを用いることができる。また、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、炭素数2〜10であるものが好ましく、具体的には、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜30であるものが好ましく、具体的には、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸及び1,4−フェニレンジ酢酸などが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、炭素数2〜30であるものが好ましく、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−ベンゼンジメタノール及びポリトリメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。芳香族化合物としては、具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸及び安息香酸などが挙げられる。これらの原料は、1種単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂は、上述の原料有機酸と少量の脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸、多価アルコール類との共重合体でもよい。ここで、脂肪族多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン及びグリセリンなどが、脂肪族多塩基酸としては、ブタンテトラカルボン酸などが、多価アルコール類としては多糖類などが各々挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の製造方法については特に制限されないが、例えば上述の原料有機酸を直接脱水重縮合する方法、及び、ラクタイドのような乳酸の環状2量体やグリコライドのようなヒドロキシカルボン酸類の環状2量体又はε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法などが挙げられる。
【0014】
このようなポリ乳酸系樹脂の市販品としては、例えば、NatureWorks社製「Ingeo」、三井化学株式会社製「LACEA」、浙江海正生物材料股悒有限公司製「REVODE」、及び東洋紡績株式会社製「バイロエコール」などが挙げられる。
成分(A)のポリ乳酸系樹脂に含まれるポリ乳酸は、後述のメルトマスフローレートが好ましい範囲となり、本発明の樹脂組成物が柔軟になりやすく、本発明の成形体が硬度、モデュラス及び曲げ弾性率が低く、引っ張り伸び率が高く、折れ皺が発生し難い等に優れたものとなりやすいことから架橋しているのが好ましい。架橋ポリ乳酸は、上述のポリ乳酸に分子鎖架橋を付与することにより得ることができる。架橋の形態としては、ポリ乳酸同士が直接架橋したもの及び/又はポリ乳酸同士が架橋助剤を介して間接的に架橋したものがある。なお、本発明においては、ゲル分率測定法によってゲル分として検出されるもののみではなく、ポリ乳酸同士が架橋状態になり、ポリ乳酸の分子量の増大が起こっているものも含め、架橋ポリ乳酸とする。
【0015】
ポリ乳酸を架橋させる方法は、特に制限されないが、例えば、電子線照射、多官能性化合物の使用などが挙げられる。これらは、何れか1つの方法でも、2つ以上の方法の組み合わせでもよい。
多官能性化合物としては、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物、イミン化合物等が挙げられる。多官能性化合物を用いる場合の使用量は、架橋効率の点では多い方が好ましく、また、一方、フィッシュアイ等が発生し難い点では少ない方が好ましい。具体的には、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上であるのが好ましく、0.3重量部以上であるのが更に好ましく、また、一方、20重量部以下であるのが好ましく、10重量部以下であるのが更に好ましい。
【0016】
多官能性化合物としては、具体的には、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等の多官能性アクリル酸系化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート等の多官能性メタクリル酸系化合物;ジビニルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ビスアクリロイルオキシエチルテレフタレート等の脂肪族及び芳香族多価カルボン酸のポリビニルエステル;ポリアリルエステル、ポリアクリロイルオキシアルキルエステル、ポリメタクリロイルオキシアルキルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジビニルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル等の脂肪族及び芳香族多価アルコールのポリビニルエーテル及びポリアリルエーテル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌール酸及びイソシアヌール酸のアリルエステル;トリアリルホスフェート、トリスアクリルオキシエチルホスフェート、N-フェニルマレイミド、N,N‘−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物;フタル酸ジプロパギル、マレイン酸ジプロパギル等の多官能性モノマーなどを使用することができる。
【0017】
これらのうち、架橋反応性などの点から、多官能メタクリル酸系化合物が好ましく、メタクリル酸エステル化合物が更に好ましい。メタクリル酸エステル化合物としては、生分解性樹脂との反応性、低毒性、反応後の残留モノマー成分及び着色の少なさから、分子内に2個以上のメタクリル基を有する化合物又は1個以上のメタクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。好ましいメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート;これらのアルキレングリコール部が異種のアルキレン基をもつアルキレングリコールの共重合体;ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0018】
また、有機過酸化物を多官能性化合物や架橋助剤と併用することも好適である。有機過酸化物と多官能性化合物を併用する場合、多官能性化合物との反応部位が増大することによって、架橋効率が向上する。また、有機過酸化物と架橋助剤を用いて架橋したポリ乳酸では、この架橋助剤成分を介して、ポリエステル成分が架橋される。架橋助剤としては、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルフェニル、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン及びこれらの核置換化合物や近縁同族体等が挙げられる。
【0019】
架橋助剤を用いる場合の使用量は、架橋度の点では多い方が好ましく、また、一方、外観の点では少ない方が好ましい。具体的には、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上であるのが好ましく、0.05重量部以上であるのが更に好ましく、0.2重量部以上であるのが特に好ましく、また、一方、20重量部以下であるのが好ましく、10重量部以下であるのが更に好ましく、8重量部以下であるのが特に好ましい。
【0020】
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
【0021】
有機過酸化物を用いる場合の使用量は、架橋効率の点では多い方が好ましく、また、一方、オリゴマー成分生成の点では少ない方が好ましい。具体的には、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上であるのが好ましく、0.2重量部以上であるのが更に好ましく、また、一方、10重量部以下であるのが好ましく、5重量部以下であるのが更に好ましい。
【0022】
成分(A)のポリ乳酸系樹脂のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトマスフローレート(以下、MFRと略記する場合がある)は、0.000g/10min以上、10g/10min以下である。また、本発明の樹脂組成物の成形加工性の点から0.001g/10min以上であるのが好ましく、0.100g/10min以上であるのが更に好ましく、0.300g/10min以上であるのが特に好ましく、また、一方、本発明の成形体の機械的強度の点から5g/10min以下であるのが好ましく、3g/10min以下であるのが更に好ましい。
【0023】
なお、架橋処理を施していない一般的なポリ乳酸系樹脂のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRは、通常15〜200g/10minである。
【0024】
<(成分(B):熱可塑性エラストマー>
本発明の樹脂組成物に含まれる熱可塑性エラストマーは、加熱により可塑性を示すエラストマーをいう。
成分(B)の熱可塑性エラストマーは、JIS規格K6253に準拠して測定したデュロA硬度が通常1以上95以下の重合体であり、デュロA硬度がこの範囲の樹脂であれば、複数の高分子の共重合体も含まれる。但し、複数の樹脂の混合物については、その中でデュロA硬度がこの範囲の樹脂のみを成分(B)とする。
【0025】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のエチレン系エラストマー;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴム等のスチレン系エラストマー;メチルメタアクリレート・ブチルアクリレート共重合ゴム等のアクリル系エラストマー;ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリエステル・ポリオール共重合体等のポリエステル系エラストマー;ポリウレタン系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマーなどが挙げられる。また、上述のデュロA硬度の範囲に含まれれば、これらのエラストマー成分を酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの及びこれらのエラストマー成分に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたものなども成分(B)の熱可塑性エラストマーに含まれる。
【0026】
成分(B)の熱可塑性エラストマーは、耐熱性及び柔軟性の点から、スチレン系のブロック共重合体が好ましく、ビニル芳香族炭化水素単位からなる重合体ブロックと共役ジエン単位からなる重合体ブロックを有するスチレン系のブロック共重合体が更に好ましく、以下の(1)式及び/又は(2)式で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンブロックとの共重合体及びその水素添加誘導体(以下、水添ブロック共重合体と略記する場合がある)であるのが特に好ましく、以下の(1)式及び/又は(2)式で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンブロックとの共重合体の水素添加誘導体であるのが最も好ましい。
【0027】
A−(B−A)m (1)
(A−B)n (2)
(式中Aはビニル芳香族炭化水素単位からなる重合体ブロックを表し、Bは共役ジエン単位からなる重合体ブロックを表し、m及びnは1〜5の整数を表す)
上述のブロック共重合体は、直鎖状、分岐状及び/又は放射状の何れでもよい。
【0028】
Aの重合体ブロックを構成する単量体のビニル芳香族炭化水素としては、スチレン又はα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体が好ましい。
Bの重合体ブロックを構成する共役ジエン単量体としては、ブタジエン及び/又はイソプレンが好ましい。(1)式及び/又は(2)式で表されるブロック共重合体が水添ブロック共重合体であり、Bの重合体ブロックがブタジエンのみから構成される場合、Bブロックのミクロ構造中の1,2−付加構造が20〜70重量%であるのが水添後のエラストマーとしての性質を保持する上で好ましい。
【0029】
m及びnは、秩序−無秩序転移温度を下げるという意味では大きい方がよいが、製造しやすさ及びコストの点では小さい方がよい。また、m及びnが0であると、ブロック共重合体にならない。ブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表されるブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)よりも式(1)で表されるブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)が好ましく、mが3以下である式(1)で表されるブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)が更に好ましく、mが2以下である式(1)で表されるブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)が特に好ましい。
【0030】
(1)式及び/又は(2)式で表されるブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)中の「Aの重合体ブロック」の割合は、熱可塑性エラストマーの機械的強度及び熱融着強度の点から多い方が好ましく、また、一方、柔軟性、異形押出成形性、ブリードアウトのしやすさの点から少ない方が好ましい。式(1)のブロック共重合体(水添ブロック共重合体も含む)中の「Aの重合体ブロック」の割合は、具体的には、10重量%以上であるのが好ましく、15重量%以上であるのが更に好ましく、20重量%以上であるのが特に好ましく、また、一方、50重量%以下であるのが好ましく、45重量%以下であるのが更に好ましく、40重量%以下であるのが特に好ましい。
【0031】
上述のブロック共重合体の製造方法としては、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよい。具体的には、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水添は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報及び特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。この水添処理では、重合体ブロック中のオレフィン性二重結合の50%以上が水添されているのが好ましく、80%以上が水添されているのが更に好ましく、且つ、重合体ブロック中の芳香族不飽和結合の25%以下が水添されているのが好ましい。
【0032】
このような水添されたブロック共重合体の市販品としては、シェルケミカルズジャパン株式会社製「KRATON−G」、株式会社クラレ製「セプトン」、旭化成株式会社製「タフテック」等が挙げられる。
成分(B)中に含まれる(1)式及び/又は(2)式で表されるブロック共重合体及び/又はその水添ブロック共重合体の量は、20重量%以上であるのが好ましく、30重量%以上であるのが更に好ましく、40重量%以上であるのが特に好ましく、また、一方、上限は通常100重量%である。
【0033】
また、(1)式及び/又は(2)式で表されるブロック共重合体及び/又はその水添ブロック共重合体以外の熱可塑性エラストマーとしては、メタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体等のアクリル系エラストマー;ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリエステル・ポリオール共重合体等のポリエステル系エラストマー;ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。
【0034】
成分(B)の熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、機械的強度の点では大きい方が好ましいが、成形外観及び流動性の点では小さい方が好ましい。具体的には、1万以上であるのが好ましく、3万以上であるのが更に好ましく、また、一方、45万以下であるのが好ましく、40万以下であるのが更に好ましく、20万以下であるのが特に好ましく、18万以下であるのが最も好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する場合がある)により、以下の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0035】
なお、成分(B)の熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が上述の好ましい範囲を外れている場合であっても、例えば、本発明の樹脂組成物に後述の成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれている場合等は、好適に使用することが可能であり、特に、成分(B)の熱可塑性エラストマー100重量部に対して、成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤が100〜500重量部が含まれている場合が好ましく、120〜500重量部含まれている場合が更に好ましい。
【0036】
(測定条件)
機 器:日本ミリポア株式会社製「150C ALC/GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「AD80M/S」3本
検出器:FOXBORO社製赤外分光光度計「MIRANIA」測定
波長3.42μm
溶 媒:o−ジクロロベンゼン
温 度:140℃
流 速:1cm3/分
注入量:200マイクロリットル
濃 度:2mg/cm3
酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−フェノール0.2重量%添加。
【0037】
成分(B)の熱可塑性エラストマーのデュロA硬度は、通常1以上95以下である。該デュロA硬度は、機械的強度の点では高い方が好ましく、柔軟性の点では低い方が好ましい。具体的には、JIS規格K6253に従って測定されるデュロA硬度は、10以上であるのが好ましく、15以上であるのが更に好ましく、また、一方、90以下であるのが好ましく、85以下であるのが更に好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物中における成分(A)のポリ乳酸系樹脂と成分(B)の熱可塑性エラストマーの割合は、環境適応性の点ではポリ乳酸系樹脂が多い方が好ましく、柔軟性及び機械的強度の点では熱可塑性エラストマーが多い方が好ましい。具体的には、成分(A)のポリ乳酸系樹脂と成分(B)の熱可塑性エラストマーの合計量100重量%に対し、成分(A)のポリ乳酸系樹脂が25重量%以上であるのが好ましく、30重量%以上であるのが更に好ましく、また、一方、80重量%以下であるのが好ましく、70重量%以下であるのが更に好ましい。そして、成分(B)の熱可塑性エラストマーが20重量%以上であるのが好ましく、30重量%以上であるのが更に好ましく、また、一方、75重量%以下であるのが好ましく、70重量%以下であるのが更に好ましい。
【0039】
<(成分(C):炭化水素系ゴム用軟化剤>
本発明の樹脂組成物には、成分(B)の熱可塑性エラストマーの流動性を向上させる点では、炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれているのが好ましい。
【0040】
成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、熱可塑性エラストマーへの親和性が高いことから、鉱物油系又は合成樹脂系の軟化剤が好ましく、鉱物油系軟化剤が更に好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%程度以上がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが炭素原子芳香族系オイルと各々呼ばれている。成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤は、上述の各種軟化剤の何れか1種でも、複数種の混合物でも構わないが、これらのうち、色相が良好であることから、パラフィン系オイルが好ましい。また、合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
【0041】
炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度は、熱可塑性エラストマーの流動性という点では高い方が好ましいが、フォギング等の起こり難さの点では低い方が好ましい。具体的には、20センチストークス以上であるのが好ましく、50センチストークス以上であるのが更に好ましく、また、一方、800センチストークス以下であるのが好ましく、600センチストークス以下であるのが好ましい。ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は、具体的には、200℃以上であるのが好ましく、250℃以上であるのが更に好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物における成分(B)の熱可塑性エラストマーに対する成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤の量は、少ない方がフォギング等の起こり難さや機械的強度の点で好ましい。具体的には、成分(B)の熱可塑性エラストマー100重量部に対して、500重量部以下であるのが好ましく、400重量部以下であるのが更に好ましく、300重量部以下であるのが特に好ましい。なお、ゴム用軟化剤の下限は0重量%である。
【0043】
成分(B)の熱可塑性エラストマーと成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物について、JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRは、本発明の樹脂組成物の成形加工性の点では高い方が好ましいが、本発明の成形体の機械的強度の点では低い方が好ましい。具体的には、15g/10min以上であるのが好ましく、50g/10min以上であるのが更に好ましく、100g/10min以上であるのが特に好ましく、また、一方、10000g/10min以下であるのが好ましく、3000g/10min以下であるのが更に好ましく、1000g/10min以下であるのが特に好ましい。なお、ここで、成分(B)の熱可塑性エラストマーと成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物についてのMFRは、成分(B)の熱可塑性エラストマーと成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物を100℃にてチョーク状に圧縮成形し、それを直接シリンダーに投入したもののMFRとする。
【0044】
また、このMFRの成分(A)のポリ乳酸系樹脂のMFRに対する比は、本発明の優れた効果が発現しやすい点では高い方が好ましいが、分散性の点では低い方が好ましい。具体的には、以下の成分(B)の熱可塑性エラストマーと成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物の成分(A)のポリ乳酸系樹脂に対するMFRの比は、15以上であるのが好ましく、50以上であるのが更に好ましく、100以上であるのが特に好ましく、また、一方、500000以下であるのが好ましく、50000以下であるのが更に好ましい。なお、この比率は、成分(A)のでポリ乳酸系樹脂のMFRが0g/10minでない場合についての好ましい範囲である。
【0045】
「成分(B)の熱可塑性エラストマーと成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFR」/「成分(A)のポリ乳酸系樹脂のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFR」。
【0046】
<(成分(D):プロピレン系樹脂>
本発明の樹脂組成物には、ブロッキングや本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体で表層剥離などが起こり難いことから、プロピレン系樹脂が含まれているのが好ましい。
成分(D)のプロピレン系樹脂は、JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が95超の重合体である。なお、本発明において、デュロA硬度が95以下のプロピレン系重合体は、成分(B)の熱可塑性エラストマーに分類される。
成分(D)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル1−ペンテン共重合体等、及びこれらの重合体を酸無水物などで変性し、極性官能基を付与したものなどが挙げられる。成分(D)のプロピレン系樹脂は、上述の各種樹脂の何れか1種でも、複数種の混合物でも構わない。
【0047】
成分(D)のプロピレン系樹脂のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRは、成形性の点では大きい方が好ましく、機械的強度の点では小さい方が好ましい。具体的には、0.01g/10min以上であるのが好ましく、0.1g/10min以上であるのが更に好ましく、また、一方、100g/10min以下であるのが好ましく、80g/10min以下であるのが更に好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物中の成分(D)のプロピレン系樹脂の量は、ブロッキングや本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体での表層剥離の起こり難さなどの点では多い方が好ましいが、表面硬度の点では、少ない方が好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物中における成分(D)の含有量は、0.1重量%以上であるのが好ましく、また、一方、50重量%以下であるのが好ましく、35重量%以下であるのが更に好ましく、25重量%以下であるのが特に好ましい。また、成分(A)のポリ乳酸系樹脂100重量部に対する成分(D)のプロピレン系樹脂の量としては、100重量部以下であるのが好ましく、50重量部以下であるのが更に好ましく、30重量部以下であるのが特に好ましい。なお、表面硬度の点からみたプロピレン系樹脂の下限量は、0重量%である。
【0049】
また、本発明の樹脂組成物における成分(A)に対する成分(B)〜(D)の合計量は、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂の含有量の点では少ない方が好ましいが、柔軟性の点では多い方が好ましい。具体的には、成分(A)100重量部に対し、成分(B)〜(D)の合計量が600重量部以下であるのが好ましく、400重量部以下であるのが更に好ましく、300重量部以下であるのが特に好ましく、また、一方、40重量部以上であるのが好ましく、50重量部以上であるのが更に好ましい。
【0050】
成分(B)の熱可塑性エラストマー、成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤及び成分(D)のプロピレン系樹脂からなる混合物について、JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRは、本発明の樹脂組成物の成形加工性の点では高い方が好ましいが、本発明の成形体の機械的強度の点では低い方が好ましい。具体的には、15g/10min以上であるのが好ましく、50g/10min以上であるのが更に好ましく、100g/10min以上であるのが特に好ましく、また、一方、10000g/10min以下であるのが好ましく、3000g/10min以下であるのが更に好ましく、1000g/10min以下であるのが特に好ましい。なお、ここで、成分(B)〜(D)からなる混合物についてのMFRは、成分(B)〜(D)からなる混合物を、設定温度200℃の二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状にしたものについて測定した値とする。
【0051】
また、この成分(B)〜(D)からなる混合物についてのMFRの成分(A)のポリ乳酸系樹脂のMFRに対する比は、本発明の優れた効果を発現させやすい点では高い方が好ましく、分散性の点では低い方が好ましい。具体的には、以下の成分(B)〜(D)の混合物のMFRの、成分(A)のポリ乳酸系樹脂のMFRに対する比は、15以上であるのが好ましく、50以上であるのが更に好ましく、100以上であるのが特に好ましく、また、一方、500000以下であるのが好ましく、50000以下であるのが更に好ましい。なお、この比率は、成分(A)のでポリ乳酸系樹脂のMFRが0g/10minでない場合についての好ましい範囲である。
【0052】
「成分(B)〜(D)の混合物のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFR」/「成分(A)のポリ乳酸系樹脂のJIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFR」。
【0053】
<(成分(E):相溶化剤>
本発明の樹脂組成物には、機械的強度や伸び率等の向上の点では、相溶化剤が含まれているのが好ましい。
成分(E)の相溶化剤は、以下の「E1セグメント」又は「E2セグメント」と、「E3セグメント」又は「E4セグメント」とが、ブロック状、ランダム状及び/又はグラフト状に結合している共重合体である。具体的には、「E1セグメント」と「E3セグメント」、「E1セグメント」と「E4セグメント」、「E2セグメント」と「E3セグメント」、「E2セグメント」と「E4セグメント」の4通りの組み合わせが挙げられる。
【0054】
成分(E)の相溶化剤は、JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が95超の重合体である。
E1セグメントは、カルボキシル基又はヒドロキシル基に反応性を有するセグメントである。具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロー(2,2,21)−5−ヘプテンー2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)―5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0055】
E2セグメントは、成分(A)のポリ乳酸系樹脂に対する親和性を有するセグメントである。具体的には、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、酢酸セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート変性、ポリブチレンサクシネート・カーボネート変性、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、アクリル単位を含む重合体、これらの共重合体及びこれらの変性体などが挙げられる。なお、E2セグメントとしてのポリ乳酸を50重量%以上含む「E2セグメント」と「E3セグメント」、「E2セグメント」と「E4セグメント」のブロック/ランダム及び/又はグラフト共重合体は、成分(E)から除外とする。
【0056】
E3セグメントは、成分(D)のプロピレン系樹脂に対する親和性を有するセグメントである。具体的には、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等が挙げられる。
E4セグメントは、成分(B)の熱可塑性エラストマーに対する親和性を有するセグメントである。具体的には、例えば、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のエチレン系エラストマー;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴム等のスチレン系エラストマー及びポリブタジエン等が挙げられる。
【0057】
本発明の樹脂組成物中の成分(E)の相溶化剤の量は、物性を向上という点では多い方が好ましいが、コストの点では、少ない方が好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物中における成分(E)の含有量は、0.1重量%以上であるのが好ましく、また、一方、30重量%以下であるのが好ましく、25重量%以下であるのが更に好ましく、15重量%以下であるのが特に好ましい。なお、本発明の優れた効果は、相溶化剤がない場合でも発現可能であるため、相溶化剤の下限量は、通常0重量%である。
【0058】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げなければ、上述の成分(A)〜(E)以外の樹脂や成分が含まれていてもよい。
成分(A)〜(E)以外の樹脂としては、上述の必須成分以外のエラストマーや樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;ポリエチレン、ポリブテン−1等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂及びポリメチルメタクリレート系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。なお、エチレン・酢酸ビニル共重合体等に関しては、共重合の比率によって、デュロA硬度が95以下のものもあるが、本発明においては、それらは、成分(A)〜(E)以外の樹脂ではなく、成分(B)の熱可塑性エラストマーとする。
【0059】
成分(A)〜(E)以外の任意成分としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤等が挙げられる。なお、これら任意の樹脂や成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を併用しても良い。また、これらの樹脂や成分を必須成分と混合する方法についても特に限定されない。
【0060】
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。難燃剤には、ハロゲン系難燃剤及び非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、環境に配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。結晶核剤は、有機結晶核剤と無機結晶核剤に大別される。有機結晶核剤としては、ソルビトール化合物及びその金属塩;安息香酸及びその金属塩;燐酸エステル金属塩;ロジン化合物;エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N‘,N“−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N‘−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等アミド化合物等が挙げられる。また、無機結晶核剤としては、タルク、カオリン等が挙げられる。充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物に、成分(A)及び(B)以外の樹脂や成分が含まれている場合の本発明の樹脂組成物中における成分(A)と(B)の合計量は、本発明の優れた効果の発現のしやすさ等から、40重量%以上であるのが好ましく、45重量%以上であるのが更に好ましく、55重量%以上であるのが特に好ましく、60重量%以上であるのが最も好ましい。なお、ここでの上限は、100重量%である。
【0062】
本発明の樹脂組成物に、成分(A)〜(E)以外の樹脂や成分が含まれている場合の本発明の樹脂組成物中における成分(A)〜(E)の合計量は、本発明の優れた効果の発現のしやすさ等から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのが更に好ましい。なお、ここでの上限は、通常100重量%である。
【0063】
<本発明の樹脂組成物の作製方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の各成分を溶融混合することにより得ることができる。溶融混合の方法については、特に制限は無い。例えば、上述の各樹脂及び成分を同時に又は任意の順序で溶融混合することにより、各成分が均一に分布した組成物を得ることができる。また、具体的には、例えば、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分を任意の順序で混合してから加熱しても良いし、全成分を溶融させながら混合しても良いし、各成分の混合物を成形時に溶融混合してもよい。混合条件は、各成分が均一に混合されれば特に制限は無いが、生産性の点からは、単軸押出機や2軸押出機のような連続混練機又はミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等の公知の溶融混練方法を用いるのが好ましい。溶融混合時の温度は、原料成分等が溶融状態となる温度であれば構わないが、通常160〜250℃で行う。
【0064】
<本発明の樹脂組成物の物性>
ポリ乳酸系樹脂と熱可塑性エラストマーは、溶融度パラメーターがかけ離れているため、通常、分子領域において非相溶となり、その複合体のモルフォロジーは海島構造を形成する。一般的に、二成分の樹脂が海島構造をとるポリマーアロイは、伸張剪断下の粘度比が近いほど島相の粒子径が小さくなり、良好な物性を示すことが知られている。このため、島相の粒子径と界面張力の大きい非相溶系ポリマーアロイにおいては、成分間の粘度比を近付けることが常套技術と考えられてきた。しかしながら、本発明では、意外なことに、ポリ乳酸系樹脂と熱可塑性エラストマーの粘度比が近づいていないにも関わらず、軟質化に成功している。
【0065】
本発明の樹脂組成物のMFRは、本発明の樹脂組成物の成形加工性の点では高い方が好ましいが、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体の機械的強度の点では低い方が好ましい。具体的には、本発明の樹脂組成物について、JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した190℃、2.16kg荷重におけるMFRは、0.1g/10min以上であるのが好ましく、1g/10min以上であるのが更に好ましく、2g/10min以上であるのが特に好ましく、また、一方、300g/10min以下であるのが好ましく、200g/10min以下であるのが更に好ましく、100g/10min以下であるのが特に好ましい。なお、ここで、MFRは、本発明の樹脂組成物の原料成分を設定温度200℃の二軸混練機を用いて溶融混練し、ペレット状にしたものについて測定する。
【0066】
<本発明の成形体の製造方法>
本発明の成形体は、上述の本発明の樹脂組成物を成形することにより得ることができる。ここで、本発明の成形体の作製方法については、特に制限は無い。具体的には、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形及びシート成形後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の各種成形方法が挙げられる。これらのうち、射出成形及び押出成形が好ましい。成形時のシリンダー及びダイスの温度は、未溶融物の表面析出等による外観不良が起こり難い点では、高温であることが好ましく、溶融樹脂中に含まれる成分の中で最も融点が高い成分の融点より高温であることが更に好ましく、最も融点が高い成分の融点より10℃以上高いのが特に好ましく、最も融点が高い成分の融点より20℃以上高いのが最も好ましい。また、一方、含有成分の熱分解による変色や物性低下が起こりにくい点では、低い方が好ましい。具体的には、成分(A)の融点が一般的に130℃〜170℃であることから、150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることが更に好ましく、190℃以上であることが特に好ましく、また、一方、250℃以下であることが好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。また、射出成形を行う場合の金型温度は、60℃以下であるのが好ましく、45℃以下であるのが更に好ましい。
【0067】
<成形体の形状>
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形体であれば、どのような形状でも構わないが、特に、チューブやフィルム、シート、ヒレ、グリップ等の形状を有する形状が柔軟性が必要とされ易いことから好ましい。
本発明の成形体は、他の層との積層体としてもよい。この場合、各々成形した層を積層してもよいし、何れかの層を予め成形しておき、これに他層を積層してもよいし、複数の層を同時に成形しながら積層体としてもよい。積層体とする場合の成形方法としては、具体的には、例えば、単軸又は二軸の押出機を用いた多層の共押出成形、予め成形しておいた層に溶融樹脂を射出する二色成形、ラミネート成形、多層インフレーション成形等が挙げられる。また、積層する層としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体やポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0068】
<成形体の物性>
(1)デュロA硬度
本発明の成形体は、柔軟であることが好ましい。具体的には、本発明の成形体は、JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が90以下であるのが好ましい。なお、デュロA硬度の下限は、20であるのが好ましい。
【0069】
(2)引っ張り伸び率、100%モデュラス、300%モデュラス
本発明の成形体は、引っ張り伸び率が高い方が好ましい。また、本発明の成形体は、柔軟であることが好ましいことから、その100%及び300%モジュラスは低い方が好ましい。具体的には、JIS規格K6251に従って、80mm×120mm×2mmのプレート状の成形体を打ち抜いて得られる3号ダンベルの試験片を、オートグラフを用いて500mm/minの速度で引っ張って、破断するまでの伸び率(引っ張り伸び率)が200%以上であるのが好ましく、250%以上であるのが更に好ましい。なお、引っ張り伸び率の上限は、1000%であるのが好ましい。そして、ここで、100%の伸び率を示したときに得られる応力(100%モデュラス)が5MPa以下であるのが好ましく、4MPa以下であるのが更に好ましい。また、300%の伸び率を示したときに得られる応力(300%モデュラス)が15MPa以下であるのが好ましく、10MPa以下であるのが更に好ましい。
【0070】
(3)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、JIS規格K7171に従って、射出成形により得られる成形体に2mm/minの速度で垂直の変位を加え、0.1〜0.5mm変位したときの応力から算出される。本発明の成形体の柔軟性の点では、曲げ弾性率は低いことが好ましく、具体的には、100MPa以下であるのが好ましく、50MPa以下であるのが更に好ましい。なお、曲げ弾性率の下限は、0.1MPaであるのが好ましい。
【0071】
(4)折り皺の発生し難さ
本発明の成形体は、柔軟であるために、変形による皺が生じにくい。変形による皺の生じやすさは、本発明の成形体に、樹脂成形時の流動方向に垂直な方向に90度変形させた際に、表面に皺が発生するかどうかで評価することができる。
【0072】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂組成物層を有していながら、柔軟性に優れ、折れ皺が生じ難いことから、フィルム、シートなどの幅広い用途に好適に用いることができると考えられる。これらの内、特に消費量が多い食品包装用フィルム等の環境適応性が要求される用途に非常に好適である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例では、以下の原料を用いた。
(A)ポリ乳酸樹脂
(a−1)三井化学株式会社製ポリ乳酸樹脂「LACEA H−100」。純度100%。190℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは8g/10min。JIS規格K7210の試験条件4に従い、230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは50g/10min。非架橋。
【0074】
(a−2)浙江海正生物材料股悒有限公司製ポリ乳酸樹脂「REVODE101」。純度100%。190℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは5g/10min。JIS規格K7210の試験条件4に従い、230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは20g/10min。非架橋。
【0075】
(B)熱可塑性エラストマー
(B−1)シェル・ケミカル株式会社社製スチレン−エチレン−ブチレン共重合体「KRATON G1650」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が78。重量平均分子量の測定値は9万。スチレン含量30重量%。
(B−2)シェル・ケミカル株式会社製スチレン−エチレン−ブチレン共重合体「KRATON G1641H」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が66。重量平均分子量の測定値は22万。スチレン含量33重量%。
(B−3)旭化成ケミカルズ株式会社製スチレン−エチレン−ブチレン共重合体「タフテックH1031」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が82。スチレン含量30重量%。JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRが150g/10min。
【0076】
(B−4)旭化成ケミカルズ株式会社製イミン変性スチレン−エチレン−ブチレン共重合体「タフテックN503」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が79。スチレン含量30重量%。JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRが20g/10min。
(B−5)旭化成ケミカルズ株式会社製イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体「タフテックMP10」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が89。スチレン含量30重量%。JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRが7g/10min。
【0077】
(B−6)株式会社クラレ製メタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体「LAポリマーLA2140e」。JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が32。重量平均分子量のカタログ値は8万。JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRが500g/10min。
(C)炭化水素系ゴム用軟化剤
出光興産株式会社製パラフィン系プロセスオイル「PW−90」。
【0078】
(D)プロピレン系樹脂
日本ポリプロピレン株式会社製ブロックポリプロピレン「ノバテックPP BC06AH」。JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重におけるMFRが60g/10min。
【0079】
(E)相溶化剤
日油株式会社製グリシジルメタクリレート・アルキルメタクリレート共重合体「ファルパック75AS」。
(F)架橋助剤
東亞合成株式会社製グリシジルメタクリレート・メタクリル酸メチル・スチレン共重合体「ARFON UG4040」。
【0080】
(G)添加剤
(G−1)チバジャパン株式会社製フェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」。
(G−2)株式会社ADEKA製イオウ系酸化防止剤「アデカスタブAO−412S」。
(G−3)三井化学株式会社製ポリエチレンワックス「ハイワックス210MP」。
(G−4)三菱レイヨン株式会社製アクリル系衝撃改質材「メタブレンS2001」。
【0081】
(製造例1)
ポリ乳酸樹脂(a−1)100重量部に、架橋助剤(F)3重量部、添加剤(G−1〜3)を各々0.2重量部及び添加剤(G−4)8.5重量部を加えた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製二軸押出機「PCM−30」。口径30mm。L/D30)を用いて、加工温度200℃で溶融混練し、吐出された樹脂組成物をペレット状に切断し、スピードドライヤーを用いて、窒素雰囲気下で60℃で12時間乾燥させて、架橋されたポリ乳酸樹脂のペレットを得た。得られたペレットについて、JIS規格K7210の試験条件4に従い、230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは、0.4g/10minであった。
【0082】
(製造例2)
スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(B−1)100重量部と炭化水素系ゴム用軟化剤(C)100重量部をヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物について、JIS規格K7210の試験条件4に従い、230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは、170g/10minであった。混合物は100℃にてチョーク状に圧縮成形し、それを直接シリンダーに投入することでMFRの測定を行った。
【0083】
(製造例3)
スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(B−2)100重量部と炭化水素系ゴム用軟化剤(C)100重量部をヘンシェルミキサーを用いて混合した。この混合物について、JIS規格K7210の試験条件4に従い、230℃、2.16kg荷重(kgf)で測定したMFRは、0.5g/10minであった。混合物は100℃でチョーク状に圧縮成形し、直接シリンダーに投入することでMFRの測定を行った。
【0084】
[実施例1]
製造例1で得たペレット100重量部、製造例2で得た組成物90重量部、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)5重量部、及びプロプレン系樹脂(D)5重量部をヘンシェルミキサーで1分間混合した後、二軸押出機を用いて加工温度200℃で溶融混練し、得られたストランドを切断し、スピードドライヤーを用いて、窒素雰囲気下で55℃で12時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械株式会社製「IS−130t」)を用いて、80mm×120mm×2mmのプレートを得た。
【0085】
[実施例2]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物120重量部、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)30重量部及びプロプレン系樹脂(D)10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0086】
[実施例3]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物160重量部、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)30重量部及びプロプレン系樹脂(D)10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0087】
[実施例4]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物240重量部、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)30重量部及びプロプレン系樹脂(D)10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0088】
[実施例5]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物240重量部、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)10重量部及びプロプレン系樹脂(D)10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0089】
[実施例6]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物240重量部及びプロプレン系樹脂(D)10重量部とし、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)は用いず、相溶化剤(E)10重量部及び相溶化剤のブロッキング防止剤として炭酸カルシウムを5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0090】
[実施例7]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物260重量部とし、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)及びプロプレン系樹脂(D)を用いない以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0091】
[実施例8]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物に代えてスチレン−エチレン−ブチレン共重合体(B−3)を260重量部とし、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)及びプロプレン系樹脂(D)を用いない以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0092】
[実施例9]
実施例1の原料比を、製造例1で得たペレット100重量部に対し、製造例2で得た組成物に代えてメタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体(B−6)を70重量部とし、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン共重合体(B−5)及びプロプレン系樹脂(D)を用いない以外は、実施例1と同様にして、プレートを得た。
【0093】
[比較例1]
実施例4で、製造例1で得たペレットの代わりにポリ乳酸樹脂(a−2)を、製造例2で得た組成物の代わりに製造例3で得た組成物を各々用いた以外は、実施例4と同様にして、プレートを得た。
【0094】
[比較例2]
実施例4で、製造例1で得たペレットの代わりにポリ乳酸樹脂(a−2)を用いた以外は、実施例4と同様にして、プレートを得た。
【0095】
[比較例3]
実施例3で、製造例1で得たペレットの代わりにポリ乳酸樹脂(a−2)を用いた以外は、実施例4と同様にして、プレートを得た。
【0096】
[比較例4]
実施例7で、製造例1で得たペレットの代わりにポリ乳酸樹脂(a−2)を、製造例2で得た組成物の代わりにスチレン−エチレン−ブチレン共重合体(B−4)を各々用いた以外は、実施例7と同様にして、プレートを得た。
【0097】
[比較例5]
実施例9で、製造例1で得たペレットの代わりにポリ乳酸樹脂(a−2)を用いた以外は、実施例9と同様にして、プレートを得た。
実施例及び比較例で得られた成形体について、以下の条件で、デュロA硬度、引っ張り伸び率、100%モデュラス、300%モデュラス、曲げ弾性率及び折り皺の発生しやすさを評価した。これらの結果を表1に示す。
【0098】
(1)デュロA硬度
デュロA硬度は、各実施例又は比較例で得られたプレートを3枚重ね、JIS規格K6253に従って測定した。なお、デュロA硬度が高かったものについては、各実施例又は比較例で得られたプレートを3枚重ね、JIS規格K6253に従ってデュロD硬度も併せて測定した。
【0099】
(2)引っ張り伸び率、100%モデュラス、300%モデュラス
各実施例又は比較例で得られたプレートを打ち抜いて得られる3号ダンベルの試験片をJIS規格K6251に従って測定した。具体的には、オートグラフを用いて500mm/minの速度で引っ張って、破断するまでの伸び率を引っ張り伸び率とした。また、ここで、100%又は300%の伸び率を示したときに得られる応力を各々、100%モデュラス又は300%モデュラスとした。
【0100】
(3)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、JIS規格K7171に従って、各実施例又は比較例で得られたプレートに2mm/minの速度で垂直の変位を加え、0.1〜0.5mm変位したときの応力から算出した。
【0101】
(4)折り皺の発生し難さ
折り皺の発生し難さは、各実施例又は比較例で得られたプレートに、樹脂成形時の流動方向に垂直な方向に90度変形させた際に、表面に皺が発生したかどうかで評価した。
なお、実施例の樹脂組成物の190℃又は230℃、2.16kg荷重(kgf)におけるMFRは、JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した。
実施例と比較例との対比から、以下の点が明らかとなった。
熱可塑性エラストマーがスチレン系である場合(実施例1〜及び比較例1〜)については、本発明に係るポリ乳酸系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーからなる実施例3及び4と、これらとはポリ乳酸系樹脂のMFRが高いことのみが異なる比較例3及び2とを比較すると、実施例4が比較例2に比べ、硬度、100%及び300%モデュラスが低く、引っ張り伸び率が高く、柔軟性に優れ、折り皺も発生し難かった。また、実施例3が比較例3に比べ、硬度及び曲げ弾性率が低く、柔軟性に優れ、引っ張り伸び率が非常に高く、折り皺が発生し難かった。
【0102】
また、実施例4と、実施例4とは熱可塑性エラストマーの種類も異なる比較例1とを比較すると、熱可塑性エラストマーが流動性の低い高分子量体である比較例1に比べ、熱可塑性エラストマーが流動性の高い低分子量である実施例4は、硬度、100%モデュラス及び曲げ弾性率が非常に低く、特に柔軟性に優れていた。
同様に、実施例8と、実施例8とは熱可塑性エラストマーの種類も異なる比較例4とを比較すると、実施例8は、比較例4に比べ、硬度が低く、100%モデュラス、300%モデュラス及び曲げ弾性率が非常に低く、引っ張り伸び率が高く、柔軟性に優れていた。
【0103】
また、実施例1〜5は、ポリ乳酸系樹脂とこれ以外の成分の量比が異なるが、何れも硬度、100%及び300%モデュラス、曲げ弾性率が低く、柔軟性に優れ、引っ張り伸び率が高く、折り皺が発生し難かった。特に、相溶化剤を含む実施例6は、ポリ乳酸系樹脂とこれ以外の成分との量比が同程度である実施例4及び5に比べ、300%モデュラスが極端に低く、相溶化剤を含む系が加重時の柔軟性に優れることがわかった。また、プロピレン系樹脂を含まない実施例7でも優れた柔軟性は十分に発現していた。
【0104】
熱可塑性エラストマーがアクリル系である場合(実施例9及び比較例5)については、本発明に係るポリ乳酸系樹脂とアクリル系熱可塑性エラストマーからなる実施例9と、これらとはポリ乳酸系樹脂のMFRが高いことのみが異なる比較例5とを比較すると、実施例9が比較例5に比べ、硬度及び曲げ弾性率が非常に低く、折り皺も発生し難かった。
以上の結果より、本発明の樹脂組成物は、環境適応性の高いポリ乳酸系樹脂を用いていながら、柔軟性が高く、これを成形して得られる成形体は、硬度、モデュラス及び曲げ弾性率が低く、引っ張り伸び率が高く、折れ皺が発生し難いことが明らかとなった。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び成分(B)を溶融混合して得られる樹脂組成物。
成分(A):JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重(kgf)におけるメルトマスフローレートが0.000〜10g/10minであるポリ乳酸系樹脂
成分(B):熱可塑性エラストマー
【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物であって、前記成分(A)のポリ乳酸系樹脂と前記成分(B)の熱可塑性エラストマーの合計量100重量%に対し、前記成分(A)のポリ乳酸系樹脂が25〜80重量%であり、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーが20〜75重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂組成物であって、前期成分(A)ポリ乳酸系樹脂が架橋ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂組成物であって、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーがスチレン系のブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物であって、前記スチレン系のブロック共重合体がビニル芳香族炭化水素単位からなる重合体ブロックと共役ジエン単位からなる重合体ブロックを有するブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の樹脂組成物であって、更に、成分(C)炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の樹脂組成物であって、更に、成分(D)プロピレン系樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の樹脂組成物であって、更に、以下の成分(E)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(E):以下の「E1セグメント」又は「E2セグメント」と、「E3セグメント」又は「E4セグメント」とが、ブロック状、ランダム状及び/又はグラフト状に結合している共重合体であって、JIS規格K6253に従って測定したデュロA硬度が95超の重合体
E1セグメント:カルボキシル基又はヒドロキシル基に反応性を有するセグメント
E2セグメント:成分(A)のポリ乳酸系樹脂に対する親和性を有するセグメント
E3セグメント:成分(D)のプロピレン系樹脂に対する親和性を有するセグメント
E4セグメント:成分(B)の熱可塑性エラストマーに対する親和性を有するセグメント
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の樹脂組成物であって、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が10,000〜200,000であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れかに記載の樹脂組成物であって、JIS規格K7210の試験条件4に従って測定した230℃、2.16kg荷重(kgf)におけるメルトマスフローレートについて、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーと前記成分(C)の炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物のメルトマスフローレートを前記成分(A)のポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレートで除した値が15以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2011−84654(P2011−84654A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238598(P2009−238598)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】