説明

ポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ

【課題】安全衛生性に優れ、ポリ塩化ビニル樹脂シートに対して優れた密着性を有するインクジェットインキの提供。
【解決手段】有機溶剤、顔料および塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂からなるインクジェットインキにおいて、該有機溶剤が下記一般式(1)または一般式(2)で示される化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びにラクトン化合物を含む混合溶剤であり、ラクトン化合物が、インキ全量に対し1〜40重量%含まれることを特徴とするポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。
CHCO(OROR (1)
CHCH(OH)COOR3 (2)
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、R3
は炭素数1〜8のアルキル基、mは1〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全衛生性に優れ、ポリ塩化ビニル樹脂シートに対して優れた密着性を有し、吐出安定性に優れたインクジェットインキを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットインキとしては、酸性染料、直接染料、塩基性染料等の水溶性染料をグリコール系溶剤と水に溶解したものがよく用いられている。しかし、水溶性染料としては、インキの安定性を得るため、水に対する溶解性の高いものが一般的に用いられるので、インクジェット記録物は、一般的に耐水性が悪く、水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料のにじみを生じるという問題があった。
【0003】
耐水性、耐候性を改善するために、高沸点溶剤中に顔料を分散した溶剤系インキが開発されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらのインキは受像体が非吸収性の場合は、インキ中の溶剤が揮発せず、蒸発による乾燥が困難なため、ポリ塩化ビニル樹脂シートのような非吸収体への印字は不可能である。
【0004】
また、最近ではシクロヘキサノン、イソホロンといったケトン系溶剤や2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンといった含窒素複素環化合物を用い、非吸収性の印刷基材表面を溶解させ定着性を向上させる方法が提案されている(特許文献3、特許文献4)。しかし、これらの溶剤の一部は第二種有機溶剤に該当するため、環境濃度設定、臭気が強いといった問題から局所排気装置が必要となり、また、その溶解性の強さから顔料の溶解やプリンターヘッド材料の腐食がみられ、取り扱いの難しいものばかりであった。
【0005】
また、屋外広告等のインクジェット印刷用の基材としては、その耐候性や耐アルコール性、耐ガソリン性、耐洗剤性等の耐薬品性が良好なことから専らポリ塩化ビニル樹脂が使用されている。このため、インクジェットインキのバインダー樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂基材に対する密着性、耐候性および耐薬品性を兼ね備えた塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂が使用される。例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂をポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルに溶解したインクジェットインキも知られているが(特許文献5)、ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂の溶解性に乏しく、インキがチキソトロピックとなって吐出安定性が悪くなるという問題点があり、溶解性向上のためにアルコール変性塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を使用す
るとインキ皮膜の耐アルコール性が低下するという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−164157号公報
【特許文献2】特開2002−302629号公報
【特許文献3】特開2005−60716号公報
【特許文献4】特開2005−15672号公報
【特許文献5】WO2004/007626号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、密着性、吐出安定性に優れたポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機溶剤、顔料および塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂からなるインクジェットインキにおいて、該有機溶剤が下記一般式(1)または一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物、並びにラクトン化合物を含む混合溶剤であり、該ラクトン化合物が、インキ全量に対し1〜40重量%含有することを特徴とするポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキに関する。
CHCO(OROR (1)
CHCH(OH)COOR3 (2)
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、R3
は炭素数1〜8のアルキル基、mは1〜3の整数を表す。)
【0008】
更に本発明は、ラクトン化合物の1気圧における沸点が150℃以上である上記ポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキに関する。
【0009】
更に本発明は、有機溶剤が一般式(1)で示される化合物及びラクトン化合物を含む混合溶剤である上記ポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキに関する。
【0010】
更に本発明は、ラクトン化合物の加水分解防止剤を含む上記ポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキに関する。
【0011】
更に本発明は、分散剤を含む上記ポリ塩化ビニル樹脂用インクジェットインキに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、第二種有機則に非該当で臭気が少なく、局所排気装置等が不必要となり、かつプリンターヘッド材料に対する腐食のない密着性、吐出安定性に優れたポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキでは、該有機溶剤が下記一般式(1)または一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物、並びにラクトン化合物を含む混合溶剤であり、該ラクトン化合物が、インキ全量に対し1〜40重量%含有することを特徴とする。
CHCO(OROR (1)
CHCH(OH)COOR3 (2)
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、R3
は炭素数1〜8のアルキル基、mは1〜3の整数を表す。)
一般式(2)及び一般式(2)に示される溶剤は塩化ビニル樹脂を全く溶解しないか、あるいはほとんど溶解しない。本発明のインクジェットインキにおいては、ラクトン化合物をインキ全量に対し1〜40重量%含有することが良いが、さらに好ましくは3〜35重量%含有するのが良い。ラクトン化合物をインキ中に添加することによって、被印刷物であるポリ塩化ビニル樹脂シートの表面を僅かに溶解し、インキの密着性を著しく高めるものである。ラクトン化合物の含有量が少なすぎると目的の密着性が得られず、多すぎるとポリ塩化ビニル樹脂シートの表面を溶かしすぎてしまい、印刷物の表面に凹凸が生じたり、光沢の低下を招く。
【0014】
本発明に使用するラクトン化合物の1気圧における沸点は150℃以上のものが良いが、好ましくは沸点200℃以上、更に好ましくは250℃以下のものが良い。1気圧における沸点が150℃より低いと印刷後の乾燥が早く、ポリ塩化ビニル樹脂シートの表面を溶解する前にこの溶剤が揮発し、充分な密着性を得ることができない。沸点が高い分には基本的に問題は無いが、使用するプリンターの乾燥装置等の性能上250℃以下の沸点のものを使用するのが良い。
【0015】
ラクトン化合物の具体例としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等があげられる。
【0016】
主溶剤として用いるポリ塩化ビニル樹脂を全く溶解しないか、ほとんど溶解しない溶剤としては、上記にあげた性状を有するラクトン化合物以外の溶剤であれば特に制限を受けるものでは無いが、インクジェットインキとして安定してインキを吐出させるためには1気圧における沸点が140℃以上のものを使用するのが好ましい。
【0017】
このような溶剤としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される溶剤がある。
CHCO(OROR (1)
CHCH(OH)COOR3 (2)
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、R3
は炭素数1〜8のアルキル基、mは1〜3の整数を表す。)
【0018】
一般式(1)に該当する溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類がある。
【0019】
一般式(2)に該当する溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等のエステル類があげられる。
【0020】
上記溶剤の他に、本発明のインクジェットインキに用いられる任意の溶剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコールジアセテート類を配合してもよい。
【0021】
本発明に使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,149,168,177,178,179,206,207,209,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、ピグメントオレンジ36,43,51,55,59,61,71,74等があげられる。また、カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。顔料はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0022】
本発明ではポリ塩化ビニル樹脂シートへの密着性をさらに向上させるために塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂を添加する。塩化ビニル‐酢酸ビニル系樹脂の重量平均分子量は、10,000〜50,000が好ましい。塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合比(重量比)は塩化ビニル:酢酸ビニル=80:20〜95:5が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算値である。本発明における塩化ビニルアルコール変性や酸変性をしたものでも良いが、好ましくは未変性の樹脂である。具体例としては、ダウケミカルズ社製ユーカソリューションビニル樹脂VYHD、VYHH、VMCA等が挙げられる。塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂は、インキ中にインキ全量に対し0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0023】
本発明では塩化ビニル‐酢酸ビニル系樹脂以外の樹脂を併用することができる。使用できる樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明では、インキの保存安定性を向上させるためにラクトン化合物の加水分解防止剤を添加するのが好ましい。加水分解防止剤としては、カルボジイミド等を用いることができる。例えば、ビス(ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボジイミド基持つポリマーが挙げられる。具体例としては、川口化学工業製DIPC、DIC、DCC、日清紡績株式会社製のカルボジライトV-01、V‐02、V‐02‐L2、V‐03、V‐04、V-05、V‐07、V‐09、E‐01、E‐02、rheinchemie社製StabaxolI、P、P-100、P‐200、P‐250、0115が挙げられる。加水分
解防止剤はインキ中に0.01〜5.0重量%含まれることが好ましい。
【0025】
本発明では、顔料の分散性およびインキの保存安定性を向上させるために分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
【0026】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポ
リアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「Bykumen(高分子量不飽和酸エステル)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0027】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー
)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873
SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0028】
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、アビシア社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000」、日光ケミカル社製「ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、
MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4−0
(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、PB822(塩基性分散剤)」等が挙げられる。分散剤はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0029】
本発明のインクジェットインキは可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0030】
本発明のインクジェットインキは、まず始めにペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって、単一もしくは混合溶媒中に顔料を樹脂または分散剤によって分散し、得られた顔料分散体を本発明の溶剤で希釈して製造されるものである。
[実施例]
【0031】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表す。
【0032】
まず、下記のような配合で顔料分散体Aを作成した。この分散体は有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散して作成した。
・LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン顔料)35.0部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤)12.5部
・ エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 52.5部
【0033】
更に、下記のような配合で顔料分散体Bを作成した。この分散体は有機溶剤中に顔料お
よび分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1.5時間分散して作成した。
・ YELLOW PIGMENT E4GN(バイエル社製 ニッケル錯体アゾ顔料) 30.0部
・ソルスパーズ17000(アビシア社製 顔料分散剤)16.5部
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 53.5部
【0034】
更に、下記のような配合で顔料分散体Cを作成した。この分散体は有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約2時間分散して作成した。
・ Cromophtal Pink PT(チバスペシャルティーケミカルズ社製キナクリドン顔料)32.0部
・ソルスパーズ24000(アビシア社製 顔料分散剤)12.8部
・ジプロピレングリコールモノエチルエーテル55.2部
【実施例1】
【0035】
上記顔料分散体を下記配合処方にてインキ化し、インクジェットインキを得た。
・顔料分散体A 11.4部
・塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂VYHD(ダウケミカルズ社製 重量平均分子量22,000、共重合比(重量比)塩化ビニル:酢酸ビニル=86:14)4.5部
・BYK−361N(BYK Chemie社製 アクリル樹脂)0.5部
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 78.6部
・γ−ブチロラクトン 5.0部
【実施例2】
【0036】
上記顔料分散体を下記配合処方にてインキ化し、インクジェットインキを得た。
・顔料分散体B 16.7部
・塩化ビニル‐酢酸ビニル樹脂VYHD 3.5部
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 49.5部
・ε−カプロラクトン 30.0部
・StabaxolI(rheinchemie社製ポリカルボジイミド0.3部
【実施例3】
【0037】
上記顔料分散体を下記配合処方にてインキ化し、インクジェットインキを得た。
・顔料分散体C 12.5部
・塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂VYHD 3.5部
・ジプロピレングリコールモノエチルエーテル 39.0部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 30.0部
・γ−ブチロラクトン 15.0部
【実施例4】
【0038】
上記顔料分散体を下記配合処方にてインキ化し、インクジェットインキを得た。
・顔料分散体A 11.4部
・塩化ビニル‐酢酸ビニル樹脂VYHD 4.0部
・乳酸ブチル 54.6部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.0部
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0部
・ε−カプロラクトン 10.0部
[比較例1]
【0039】
実施例1の配合組成からγ−ブチロラクトンを除き、不足分をエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで補った以外は同様の方法でインキ化した
[比較例2]
【0040】
実施例2の配合組成からε−カプロラクトンを除き、不足分をエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで補った以外は同様の方法でインキ化した。
[比較例3]
【0041】
実施例3の配合組成から塩化ビニル‐酢酸ビニル樹脂VYHDを除き、不足分をアクリル樹脂ジョンクリル67(ジョンソンポリマー社製スチレン‐α−メチルスチレン‐アク
リル共重合体)で補った以外は同様の方法でインキ化した。
[比較例4]
【0042】
実施例4の配合組成からε−カプロラクトンを除き、不足分をジプロピレングリコールモノエチルエーテルで補った以外は同様の方法でインキ化した。
[比較例5]
【0043】
上記分散体を下記配合処方にてインキ化し、インクジェットインキを得た。
・顔料分散体C 12.5部
・アルコール変性塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂VROH(ダウケミカルズ社製)6.5部
・プロピレングリコールジエーテル 76.0部
・γ‐ブチロラクトン 5.0部
[比較例6]
【0044】
上記分散体を下記配合処方にてインキ化したが、樹脂の溶解性が悪くインクジェットインキを得ることができなかった。
・顔料分散体C 12.5部
・塩化ビニル‐酢酸ビニル樹脂VYHD(ダウケミカルズ社製)5.0部
・プロピレングリコールジエーテル 77.5部
・γ‐ブチロラクトン 5.0部
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜6で得られたインクジェットインキをIP−6500(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンタ)にて表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、以下の方法でインクの密着性、膜耐性について評価をした。
(密着性:ラビング試験)
印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて密着性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にて加重200g、50往復で実施し、インキの剥がれの有無を確認した。
(膜耐性:アルコール耐性試験)
印刷面をエタノールを浸した綿棒で10往復こすり、インキの剥がれの有無を確認した。
その結果、実施例1〜4のインキはラビング試験、アルコール耐性試験のいずれにおいてもポリ塩化ビニル樹脂シートからインキが剥がれず、密着性、膜耐性が良好であったが、比較例1〜4のインキはラビング試験、アルコール耐性試験のいずれにおいてもポリ塩化ビニル樹脂シートからインキが剥がれ、試験用布片または綿棒にインキが付着していた。比較例5のインキはラビング試験ではインキが剥がれなかったが、アルコール耐性試験では塩化ビニル樹脂シートからインキが剥がれ綿棒にインキが付着していた。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤、顔料および塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂からなるインクジェットインキにお
いて、該有機溶剤が下記一般式(1)または一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物、並びにラクトン化合物を含む混合溶剤であり、該ラクトン化合物が、インキ全量に対し1〜40重量%含有することを特徴とするポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。
CHCO(OROR (1)
CHCH(OH)COOR3 (2)
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、R3
は炭素数1〜8のアルキル基、mは1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
ラクトン化合物が1気圧での沸点が150℃以上である請求項1記載のポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。
【請求項3】
有機溶剤が一般式(1)で示される化合物及びラクトン化合物を含む混合溶剤である請求項1または2記載のポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。
【請求項4】
更にラクトン化合物の加水分解防止剤を含む請求項1〜3いずれか記載のポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。
【請求項5】
更に分散剤を含む請求項1〜4いずれか記載のポリ塩化ビニル樹脂シート用インクジェットインキ。

【公開番号】特開2012−246488(P2012−246488A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156650(P2012−156650)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2006−161871(P2006−161871)の分割
【原出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】