説明

ポリ(ヒドロキシアルカン酸)とポリオキシメチレンを含む熱成形された物品および組成物

【課題】ポリオキシメチレンポリマーで変性された熱可塑性ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物、および該組成物から調製された熱成形品を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸などのポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、ポリオキシメチレンとを含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)樹脂組成物と該組成物を含む、フィルム、シート、および熱成形容器などの物品を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレンポリマーで変性された熱可塑性ポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物、および該組成物から調製された熱成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(乳酸)(PLA)などのポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)ポリマーは、石油ではなくて再生可能な供給源から重合することができ、堆肥化可能である。それらは、広い範囲の工業および生体医用向けの用途を有する。しかし、脆性などの物理的制約、および遅い結晶化のために、多数の用途向けの許容可能な程度の靭性および熱安定性を有する物品にPHAを熱成形することが容易ではない場合がある。押し出された非晶質シートは、非常に脆いので、連続移動装置でのハンドリングにおいて破損する場合もある。
【0003】
熱成形品を作製するために、PLAなどのPHA樹脂は、最初に、押し出されて非晶質シートにされ、次いで、最適温度で成形され、急いでカップなどの準結晶質の容器にされる。熱成形速度およびシート成形温度は、特定のカップのデザインに応じて最適化される。シート成形の予熱温度が高いと、プリフォームシートのそりが引き起こされ、成形される前に壊れ得る。成形温度が低すぎると、深いカップに物理的に成形することが不可能な剛性の大きいシートが得られることがある。成形速度が大きいと、カップの形状になる前に、シートが破壊されることがある。成形温度が低すぎることによって、カップが成形中に結晶化を開始することが可能になり、それによって、許容できないヘイズがもたらされる場合があるか、または十分な深さまで成形できないカップがもたらされる場合がある。
【0004】
温度および成形速度の最も狭い操作窓は、高さ/直径比が大きいカップなどの最高程度の成形性を有するカップに対するものである。熱成形品を大規模に製造するのに有用な成形速度および温度では、非変性PLAの熱成形品の使用温度を高くできないのは、成形品は、結晶化が不完全である領域を有する恐れがあるからである。かかるカップでは、壁面などの、成形中に配向された領域は、より高度に結晶化し、底部または周縁部などの、配向度の低い領域は、結晶度が低いか、ゼロである場合がある。非変性PLAは、結晶化が遅い場合が多いので、実用的な高速で熱成形された生成カップ中の樹脂は、全ての場所では結晶化が十分でない恐れがある。十分に結晶化していない領域は、ガラス転移温度(Tg)で軟化する場合があるか、または、より高温に曝露された場合、ゆっくりとした結晶化が起こり、次いで収縮が起こる恐れがある。非変性PLAは、通常、約55℃のTgを有するので、カップの使用温度は、約55℃までに限定される。容器は、通常の輸送および取扱い中に65℃以上の温度にさらされる場合があるので、この低さは望ましくない。加えて、容器の高温充填は、通常、約80℃以上で行われる。十分に結晶化していないPLAカップはまた、Tgを超えた温度で、変形および相互粘着する恐れがある。
【0005】
熱成形品の使用温度は、金型中の物品をアニーリングすることによって上昇させることができる。アニーリングは、Tgと樹脂組成物の溶融範囲間の温度で最も効果的に行われ、組成物の結晶化を可能にする。アニーリングは、サイクル時間を増加させ、処理量を減少させることによって、およびアニーリングに伴う高エネルギーコストのために、非変性PLAのカップを作製するためのコストを著しく上昇させることになろう。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0242803号明細書
【特許文献2】国際公開第03/014224号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,943,214号明細書
【特許文献4】特許出願公開第03−502115号明細書
【特許文献5】特許出願公開第07−26001号明細書
【特許文献6】特許出願公開第07−53684号明細書
【特許文献7】米国特許第2,668,162号明細書
【特許文献8】米国特許第3,297,033号明細書
【特許文献9】米国特許第6,323,010号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
好ましくは、アニーリングの必要なしで、許容可能な水準の熱安定性を備えた多様な物品に容易に熱成形される剛性化されたPHAを得ることが望ましい。他の樹脂材料を添加することによってPHAを変性することにより、剛性、および熱成形中の結晶化速度を改良することができる。
【0008】
特許文献1および特許文献2には、衝撃改良剤を含有できるポリ(乳酸)とポリアセタール樹脂の混合性ブレンドが開示されている。特許文献3には、グリシジル基を含むランダムエチレンコポリマーによって剛性化されたポリ乳酸とポリオキシメチレンのブレンドが開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(i)ポリ(ヒドロキシアルカン酸)(PHA)と、(ii)組成物の全量に対して0.1から9重量%のポリオキシメチレン(POM)樹脂とを含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物を含む熱成形品を提供する。
【0010】
(i)PHAと、(ii)1から5重量%のPOM樹脂とを含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物を含む熱成形品が好ましい。
【0011】
注目すべきは、(i)PHAと、(ii)0.1から0.9重量%のPOM樹脂とを含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物を含む熱成形品である。
【0012】
本発明はまた、(i)PHAと、(ii)組成物の全量に対して0.1から0.9重量%のPOM樹脂とを含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここに開示された参照文献の全ては、参照として、本明細書中に組み込まれる。
【0014】
開示された熱成形品または配向品は、ASTM D1003−REV92を使用して厚さ10から13ミルで測定した場合、ヘイズが5%未満または<2%であり、および/または、物品が、少なくとも2秒間60℃まで加熱されるとき、収縮が<15%、<10%、<5%、または<1%でさえある。
【0015】
「約」という用語は、量、大きさ、調合、パラメータ、ならびに他の量および特徴が、許容誤差、変換係数、端数計算、測定誤差など、および当業者に知られている他の因子を反映して、正確でなく、正確である必要がなく、概略および/または所望によりより大きくても小さくてもよいことを意味する。一般に、明確にそうであると記述されていてもいなくても、量、大きさ、調合、パラメータ、または他の量もしくは特徴は、「約」または「概略」である。
【0016】
別段の指示がない限り、百分率、部数、および比は全て、重量による。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、好ましい上限値および好ましい下限値の範囲、好ましい範囲、またはリストとして与えられた場合、このことは、範囲が別個に開示されているかいないかに拘らず、任意の範囲上限値または好ましい値、および任意の範囲下限値または好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示するものであると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で示される場合、別段の指示がない限り、範囲は、それらの終点、ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むものとする。本発明の範囲が、範囲を定義する場合に指定された特定の値に限定されるものではない。
【0017】
材料、方法、または機械類が、「当業者に知られている」、「通常の」という用語、または類義語もしくは句によって本明細書中で記載された場合、該用語は、本出願の出願時において通常である材料、方法、または機械類が、本説明に包含されることを意味する。現在、通常ではないが、類似の目的のために適切であると当技術分野で認められることになる可能性がある材料、方法、および機械類もまた包含される。
【0018】
コポリマーは、L−ラクチドおよびD−ラクチドなどの異なる立体異性体を含むポリマーを含めての2つ以上のコモノマーの共重合に由来する共重合単位を含むポリマーを指す。この文脈で、コポリマーは、その成分コモノマーまたはその成分コモノマーの量、例えば、「L−ラクチドと、15重量%のD−ラクチドとを含むコポリマー」、または類似の記載について本明細書で記載することができる。かかる記載は、それが、共重合単位としてコモノマーに言及しないという点で、それが、コポリマーに対する慣用的な命名法、例えば、国際純正および応用化学連合の命名法を含まないという点で、それが、製造方法により特定された物(product−by−process)の術語を使用しないという点で、または別の理由のために、正式でないと見なされる場合がある。しかし、その成分コモノマーまたはその成分コモノマーの量についてのコポリマーの記述とは、コポリマーが、指定されたコモノマーの共重合した単位(指定された場合、指定された量において)を含有することを意味する。限定された状況でそうであると明確に指示されない限り、コポリマーは、所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物ではないことが必然的な帰結として分かる。
【0019】
堆肥化可能なポリマーは、堆肥化条件下で、微細なまたは小さい粒子にまで分解可能である、または分解するものである。それらは、有機体(環形動物)および微生物(バクテリア、菌類、藻類)の作用によって誘起される条件下で分解し、高速度で全体が鉱物化(好気性条件下で、二酸化炭素、メタン、水、無機化合物、またはバイオマスへの転換)し、堆肥化プロセスと相容性である。
【0020】
再生可能なポリマーは、発酵、および生物材料を供給原料または最終的に再生可能なポリマーにまで転換する他のプロセスなどによって、数年より短期間で(数千または数百万年を要する石油と異なり)補充される、または補充され得る原材料または出発材料を含むまたはそれらから調製されるものである。
【0021】
PLAなどのPHAポリマーは、通常、堆肥化可能なポリマーである。これらのうちのいくつかは、バクテリア発酵プロセスによる製造などの再生可能な資源の加工から利用することも可能であるか、または、コーン、甘藷などを含めての植物体から単離される。したがって、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)ポリマーは、多様な物品の製造に益々望ましくなりつつある。
【0022】
PHA組成物として、ポリカプロラクトン(PCL)とも呼ばれる6−ヒドロキシヘキサン酸を含むポリマー、および3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、および3−ヒドロキシヘプタン酸を含むポリマーを含めての、炭素原子2から7個(またはそれを超えて)を有するヒドロキシアルカン酸を重合することによって調製されるポリマーが挙げられる。注目すべきは、炭素原子5個以下を有するヒドロキシアルカン酸を含むポリ(ヒドロキシアルカン酸)、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、2−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、4−ヒドロキシバレレート、および5−ヒドロキシバレレートを含むポリマーである。注目すべきポリマーとして、ポリ(グリコール酸)(PGA)、PLA、およびポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)が挙げられる。PHA組成物としてまた、PHBとPCLのブレンドなどの2つ以上のPHAポリマーのブレンドが挙げられる。
【0023】
PHAポリマーは、バルク重合によって製造することができる。PHAは、ヒドロキシアルカン酸の脱水−重縮合を介して合成することができる。PHAは、PGAのアルキルエステルの脱アルコール化−重縮合、あるいは、対応するラクトンまたは環状二量体エステルなどの環状誘導体の開環重合(ROP)を介して合成することもできる。バルク重合は、通常、2種類の製造プロセス、すなわち、連続プロセスおよびバッチプロセスによって行われる。特許文献4には、環状エステルのバルク重合が、二軸押出機で行われるプロセスが開示されている。特許文献5には、ヒドロキシアルカン酸の二分子環状エステルおよび1つまたは複数のラクトンが、静的ミキサーを有する連続反応装置にROPのために連続的に供給される、生分解性ポリマーを重合させるためのプロセスが開示されている。特許文献6には、ヒドロキシカルボン酸の環状二量体が、触媒と一緒に最初の重合段階に供給され、次いで、複数のスクリュウニーダーから構成される続いての重合段階に連続的に供給される、脂肪族ポリエステルを連続重合させるためのプロセスが開示されている。特許文献7および8には、バッチプロセスが開示されている。
【0024】
PHAポリマーとして、ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレート(PHB/V)コポリマー、およびグリコール酸と乳酸のコポリマー(PGA/LA)などの、1つを超えるPHAを含むコポリマーも挙げられる。コポリマーは、ポリヒドロキシアルカン酸また誘導体と1つまたは複数の環状エステルおよび/または二量体性環状エステルの触媒共重合によって調製することができる。かかるコポリマーとして、グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、グリコール酸の二量体環状エステル、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパン酸の環状エステル、β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸の環状エステル、δ−バレロラクトン、5−ヒドロキシペンタン酸の環状エステル、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸の環状エステル、および2−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、4−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3,3,5−トリメチル−6−ヒドロキシヘキサン酸などのそのメチル置換誘導体のラクトン、12−ヒドロキシドデカン酸および2−p−ジオキサノンの環状エステル、ならびに2−(2−ヒドロキシエチル)−グリコール酸の環状エステルが挙げられる。
【0025】
PHA組成物として、1つまたは複数のPHAモノマーまたは誘導体と、コハク酸、アジピン酸、およびテレフタル酸などの脂肪族および芳香族二酸およびジオールモノマー、ならびにエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールなどの脂肪族および芳香族二オールを含めての他のコモノマーとのコポリマーも挙げられる。約100種の異なるモノマーが、PHAポリマーに組み込まれた。
【0026】
一部のPHAポリマーおよびコポリマーはまた、生きている有機体によって作製することができるか、または植物体から単離することができる。多数の微生物は、PHAポリマーの細胞内貯留体を蓄積する能力を有する。例えば、コポリマー、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(PHB/V)は、ラルストニアユートローファ(Ralstonia eutropha)バクテリアの発酵によって製造された。他のPHA種に対する発酵および回収プロセスも、アゾトバクター(Azotobacter)、アルカリヂエネスレイタス(Alcaligenes latus)、コマモナステストステロン(Comamonas testosterone)、ならびに遺伝子工学的に処理された糞便系大腸菌群(E.coil)およびクレブシエラ(Klebsiella)を含めてのある範囲のバクテリアを使用して開発された。特許文献9には、遺伝子改変された有機体から調製された多数のPHAコポリマーが開示されている。
【0027】
本明細書で使用される場合、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)またはPHAは、上記のホモポリマー、コポリマー、およびブレンドなどの、ヒドロキシアルカン酸およびその混合物を含む任意のホモポリマーまたはコポリマーを含むポリマーまたは組成物を指す。同様に、かかる用語において、PGA、PLA、またはPHBなどの特定のヒドロキシアルカン酸が使用される場合、該用語は、該用語において使用されたヒドロキシアルカン酸を含むホモポリマー、コポリマー、またはブレンドを含む。
【0028】
PLAとして、数平均分子量3,000から1,000,000、10,000から700,000、または20,000から600,000を有する、ポリ(乳酸)ホモポリマー、ならびに、乳酸またはその誘導体およびそれらの混合物から誘導された反復単位を少なくとも50モル%含有する乳酸と他のモノマーとのコポリマーが挙げられる。PLAは、乳酸またはその誘導体から誘導された(例えば、作製された)反復単位を少なくとも70モル%含有することができる。ポリ(乳酸)ホモポリマーおよびコポリマーは、D−乳酸、L−乳酸、またはそれらの混合物から誘導することができる。2つ以上のポリ(乳酸)ポリマーの混合物を使用することができる。ポリ(乳酸)は、「ラクチド」と呼ばれる乳酸の二量体環状エステルを接触開環重合させることによって調製することができる。その結果、ポリ(乳酸)は、「ポリラクチド」とも呼ばれる。
【0029】
乳酸のコポリマーは、通常、乳酸、ラクチド、または別の乳酸誘導体と、1つまたは複数の環状エステルおよび/または上記の二量体環状エステルを触媒共重合させることによって調製される。
【0030】
PLAは、ポリマー主鎖の立体純度に応じて、準結晶性または完全非晶質になることができる剛性熱可塑性ポリマーである。L(−)−乳酸(2−ヒドロキシプロピオン酸)は、該酸の天然の最も普通の形態であるが、D(+)−乳酸も、微生物またはラセミ化を介して製造することができる。D−鏡像体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン(PE)などの他のポリマー中のコモノマーと非常に類似した働きをする。PETでは、ジエチレングリコールまたはイソフタル酸を、低濃度(1〜10%)で主鎖中に共重合させることによって結晶化速度を制御する。同じ方式で、D−乳酸単位をL−PLA中に組み込むことによって特定の製造プロセスおよび用途に対する結晶化速度を最適化する。
【0031】
PLAの厳密に線状の光学的コポリマーでは、多様な高度に秩序化された結晶構造をもたらす数種の一次構造が存在する。最も簡単なものは、鎖中のモノマー全てが、同じ光学組成物であるアイソタクチックホモポリマー、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)またはその逆の鏡像体、すなわちポリ(D−ラクチド)(PDLA)の構造である。PLLAに関するより多くの研究が行われたのは、乳酸の工業生産が、主としてL−乳酸であるからである。PLLAホモポリマーの結晶構造は、αおよびβ形態において存在する。
【0032】
PLAの最も普通の工業用ポリマーは、スズオクトエート触媒を用いるROPを介してのバルク重合によって作製された、少量のD−およびメソ−ラクチドを含む主としてL−ラクチドである光学コポリマーである。PLAの工業用ポリマーは、L−乳酸のアイソタクチックポリマーに対する約192℃から、約9モル%のD−乳酸を含有するポリマーに対する約132℃までの範囲の融点を有する。
【0033】
PHAは、組成物中のPHAおよび変性剤の全量に対して、最高約99.9重量%の組成を占めることができる。例えば、PHAは、下限91または95重量%から上限97、98、99、99.1、99.5、または99.9重量%の範囲で存在することができる。
【0034】
ポリオキシメチレン(POM)は、その物理特性として、優れた摩擦性、硬度、適度の強靱性、および速やかに結晶化する能力が挙げられるポリマーである。ポリオキシメチレンは、ポリアセタールとも呼ばれる。POMは、1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、またはそれらの混合物であってよい。これらの樹脂は、任意の知られた方法を使用して製造することができる。
【0035】
ホモポリマーは、トリオキサンを含めてのホルムアルデヒドの環状オリゴマーなどの、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物を重合させることによって調製される。例えば、POMホモポリマーは、有機アミン、有機もしくは無機のスズ化合物、または金属水酸化物などの塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中で高純度ホルムアルデヒドを重合させ、生成ポリマーをろ過によって除去し、次いで、酢酸ナトリウムの存在下、無水酢酸中で加熱下ポリマー末端をアセチル化することによって製造することができる。
【0036】
コポリマーは、P組成物を調製する際に一般に使用される1つまたは複数のコモノマーを含有することができる。普通使用されるコモノマーとして、エーテル単位のポリマー鎖中に2から12個の連続した炭素原子を組み込むことになるアセタールおよび環状エーテルが挙げられる。コポリマーが選択される場合、コモノマーの量は、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、最も好ましくは約2重量%とすることができる。好ましいコモノマーとして、1,3−ジオキソラン、エチレンオキシド、およびブチレンオキシドが挙げられ、1,3−ジオキソランがより好ましく、好ましいPOMコポリマーは、コモノマーの量が、約2重量%であるコポリマーである。
【0037】
コポリマーの例として、主鎖中に2個の隣接炭素原子を有する多くとも2重量%のオキシアルキレン単位を含有するPOMコポリマーまたは主鎖中に4個の隣接炭素原子を有する多くとも5重量%のオキシアルキレン単位を含有するPOMコポリマー、主鎖中に2個の隣接炭素原子を有する0.2から1.4重量%のオキシアルキレン単位を含有するPOMコポリマーまたは主鎖中に4個の隣接炭素原子を有する0.5から3重量%のオキシアルキレン単位を含有するPOMコポリマーが挙げられる。
【0038】
POMコポリマーは、高純度トリオキサン、およびエチレンオキシドまたは1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンなどの有機溶媒中に導入し、次いで、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体などのルイス酸触媒の存在下それらをカチオン重合させ、次いで、触媒を失活させ、生成コポリマーの末端基を安定化させることによって製造することができるか、または、溶媒を存在させないで自己洗浄撹拌器中でトリオキサン、共重合成分、および触媒を導入し、それらをバルク重合させ、その後、不安定な末端基を分解し除去することによって製造することができる。
【0039】
ホモおよびコポリマーは、1)その末端ヒドロキシ基を化学反応により末端キャップ化することによってエステルまたはエーテル基が形成されたホモポリマー、あるいは、2)完全に末端キャップ化されず、コモノマー単位からの遊離ヒドロキシ末端を一部有するか、またはエーテル基で末端化されているコポリマーであることが好ましい。ホモポリマーに対する好ましい末端基は、アセテートおよびメトキシであり、コポリマーに対する好ましい末端基は、ヒドロキシおよびメトキシである。
【0040】
POMは、分枝でも、線状でもよく、一般に、10,000〜150,000、好ましくは、20,000〜90,000、より好ましくは、25,000〜70,000の範囲の数平均分子量を有することができる。分子量は、好都合には、公称空隙径60および1000Åを有するDuPont PSMバイモーダルカラムキットを使用して、m−クレゾール中160℃でゲル透過クロマトグラフィーによって測定することができる。平均分子量は、ASTM D1238またはISO 1133を使用してメルトフローレートを測定することによっても求めることができる。メルトフローは、熱成形のためには、約0.1から約100g/分、好ましくは、約0.5から約60g/分、より好ましくは、約0.8から約40g/分の範囲であってよい。
【0041】
組成物は、約0.5から約5重量%の可塑剤、約0.1から約5重量%の酸化防止剤および安定剤、約3から約40重量%のフィラー、約5から約40重量%の補強剤、約0.5から約10重量%のナノコンポジット補強剤、および/または約1から約40重量%の難燃剤などの他の添加剤を任意選択でさらに含むこともできる。適切なフィラーの例として、グラスファイバ、ならびに沈降性CaCO、タルク、およびウォラストナイトなどの鉱物が挙げられる。かかる添加剤が使用される場合、添加剤の量は、組成物中のPHAおよびPOMの量に対する添加である。
【0042】
組成物は、PHAおよびPOMを、それらが裸眼で均一に分散し、押出しの際分離しないようになるまで溶融ブレンドすることによって調製することができる。他の材料(例えば、添加剤)も、PHA−POMマトリックス中に均一に分散させることができる。ブレンドは、当技術分野で知られている任意の溶融混合方法を使用して成分材料を合わせることによって得ることができる。例えば:1)成分材料は、一軸または二軸押出機、ブレンダ、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどの溶融ミキサーを使用して均一になるまで混合することによって樹脂組成物を得ることができるか、または2)成分材料の一部は、溶融ミキサー中で混合し、成分材料の残りを、次いで添加し、均一になるまでさらに溶融混合することができる。
【0043】
組成物は、スロットダイから押し出すことによって流延フィルムもしくはシートを調製するか、または環状ダイから押し出すことによってインフレーションフィルムもしくはシートを調製することにより、フィルムもしくはシートに成形することができる。これらのシートは、熱成形されて、溶融物からインラインで、または組成物の加工の後段で配向される物品および構造体にすることができる。
【0044】
組成物から成形できる物品の例として、熱成形シートなどが挙げられる。フィルムおよびシートを使用することによって包装材料、ならびに、袋、リディング、ならびに、トレイ、カップ、およびボウルなどの熱成形容器などの容器を調製することができる。他の熱成形包装物品として、ブリスター包装、ブリスターコンポーネント、または、ディスペンサ、クラムシェル、ハンドリングトレイ、ポイントオブパーチャスディスプレイスタンド、ツーピースボックス(ふたおよび底部の組合せ)、ディスペンサボディ、バイホルダブル物品など向けの医薬用コンパートメントが挙げられる。
【0045】
以下の実施例は、単なる例示であり、説明されたおよび/または本発明で特許請求された本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0046】
使用材料
以下の実施例では、メルトフローレート(MFR)は、2160gの錘を使用して190℃でASTM D1238に従って求められたメルトフローを指し、MFRの値はg/10分で報告される。
PLA−1は、NATUREWORKS LLC 2002Dとして入手可能な、融点(MP)が約150℃のポリ(乳酸)である。
PLA−2は、NATUREWORKS LLC 4032Dとして入手可能な、MPが約168℃のポリ(乳酸)である。
POM−1は、MPが約168℃、MFRが9であるPOMコポリマーである。
POM−2は、MPが約178℃、MFRが2.3であるPOMホモポリマーである。
POM−3は、MPが約178℃、MFRが0.3である高分子量POMホモポリマーである。
POM−4は、MPが約178℃、MFRが37であるPOMホモポリマーである。
【0047】
実施例2〜12は、190℃、125rpmに設定されたHaakeミキサーを使用して約2分間混合された。表1の変性剤の量を組成物の全重量に対する重量%で列記する。
【0048】
【表1】

【0049】
試料を、10℃/分で(周囲温度から)220℃まで加熱し、10℃/分で周囲温度まで冷却し、10℃/分で220℃まで再度加熱することによって示差走査熱量測定法(DSC)を使用して評価した。
【0050】
【表2】

【0051】
冷却結晶化発熱量に対するより大きい値によって、PLAの厚い非晶質シートを作製するには実際上の大きな困難があることが示された。つまり、大きい値は、非晶質シートへ急冷されつつあるPLA溶融物が急冷プロセス中に部分的に結晶化する恐れがあることを意味した。PLAの熱成形前のシートが部分的に結晶性である場合、シートの熱成形が不十分にある恐れがある。例えば、部分的に結晶性のシートは、より高い温度まで加熱しない限り、十分な成形によって物品にすることができない。第2の加熱結晶化発熱量に対するより高い値によって、熱成形プロセスの熱履歴において、熱成形品の非配向または微配向部分が完全結晶化しようとする傾向が大きいことが示された。低い値によって、熱成形品の非配向または微配向部分は、依然として非晶質のまま残る場合があり、PLAのTgを超えてある時間加熱されると寸法が不安定になる恐れがあることが示された。さらに、任意のブレンドのPLAのTgの低減が、望ましくない場合があるのは、温度がTgを超えて上昇すると、PLAなどの準結晶性ポリマーの機械的特性の低下が加速されるからである(例えば、モジュラスの低下)。第2の加熱結晶化発熱量の非常に高い値、または冷却および加熱発熱量の和に対する高い値によって、成形プロセス中において結晶化が早すぎるので熱成形が不十分であることが示された。かかる結晶化は、わずかだけとしても、物品に対してヘイズをもたらす恐れがあるであろう。より高い水準の結晶化は、物品の十分な熱成形を遅延させる恐れがある。第2の加熱溶融の高い発熱量によって、冷却中および加熱中の速やかな結晶化の組合せが示された。溶融吸熱エネルギーに対する低い値によって、熱成形品は、使用された特定のPLAのTgを超えてある時間加熱した場合、寸法が不安定になる可能性があることが示唆された。
【0052】
注目すべきは、5J/g未満の冷却結晶化エネルギーを有するPHA(例えば、PLA)およびPOMを含むPLA組成物であり、冷却結晶化エネルギーは、上に開示のDSCによって求められた。やはり注目すべきは、10J/gを超える、または15J/gを超える溶融エネルギーを有するPHA(例えば、PLA)およびPOMを含むかかる組成物であり、溶融エネルギーは、サイクルの第2の加熱部分において、上に開示のDSCによって求められた。
【0053】
PLA−1では、約2重量%未満のPOM−1を含ませると、低い冷却結晶化エネルギーと低い溶融エネルギー特性の最も優れた組合せがもたらされ、こうした範囲のPOM−1を含む組成物は、好成績の熱成形にとって望ましいことを示している。
【0054】
混合およびシート成形
比較例C13および実施例14から16の組成物を、輸送セグメント全てに対して長さ835mmの軸設計値を有し、2つの硬い作業セグメント(15mmのニーディングブロックおよび8mmの左手(逆)輸送セクション)に続いて幅8インチのシーティングダイセットを含む28mm3ローバル共回転Werner & Pfleiderer二軸押出機中で混合することによって調製した。押出機の槽を190℃に設定し、軸を125rpmで回転させて、材料をペレットブレンドとして供給した。溶融組成物を水で冷却された(温度約22℃)急冷ドラム上に流延することによって厚さ22から26ミルの非晶質シートが提供された。調製された組成物を表3に要約する。
【0055】
【表3】

【0056】
延伸試験
熱成形品の一部を配向させた。つまり、ポリマー分子を、直径より長い深さを有する熱成形カップに対して深さ方向になる最大延伸方向に整列させた。配向によって、結晶化速度が助長され、続いて、PLAがTgを超えた場合の物品の寸法安定性の改良が助長された。延伸試験を用いることによって、カップの壁面部分で行われるような、熱成形中に行われる延伸または配向をシミュレーションすることができることになる。これらの一軸延伸シートの挙動は、やはり一軸配向された熱成形カップの壁面部分の挙動の予測の判断材料であった。
【0057】
表3からのシートのストリップ(幅2cm)を、ストリップの長さに沿って1cm離れたチェックマークによって印をつけた。ストリップを止血鉗子を用いて保持することによって止血鉗子間に5cmの延伸ギャップを提供した。ストリップを引張りゼロで5秒間沸騰水のパン中で加熱し、最高4倍まで1から2秒の時間延伸し、熱硬化させるために指定の時間保持し、次いで、取り出し、直ちに水中で約23℃まで冷却した。チェックマーク間の距離を測定することによって、延伸が均一に見える領域(例えば、ストリップの中間75%で1×であるが、止血鉗子近傍の端部の25%で0.7×である場合、延伸は、「1×」として記録された)で、有効数字2桁まで(例えば、「0.8×」とは、元のチェックマーク間隔が1.0cmであり、最終のチェックマーク間隔が1.8cmであったことを意味する)実際の延伸比を求めた。均一に延伸されたストリップ上に、新規のチェックマークをつけた。ストリップの寸法安定性を、引張りなしで沸騰水中にシートを30秒間沈め、次いで、直ちに23℃の水中で冷却することによって求めた。収縮を、以下の式:
%収縮=100×(D−D)/D
を使用し、収縮後のチェックマークの全距離(D)に対して収縮前のチェックマークの全距離(D)を比較することによって求めた。例えば、収縮前チェックマークが、合計4cmであり、収縮後の距離が合計3cmであった場合、100×(4−3)/3 =33%収縮である。結果を表4に要約するが、延伸比および%収縮を、各延伸条件に対して反復の数の平均として報告する。
【0058】
【表4】

【0059】
表4では、非変性PLAの一軸配向シートは、短い「熱硬化」時間による配向後、著しく収縮する場合があることが示される。配向温度で引張り下、より長い時間保持される場合、それらは、寸法安定性が改良され得る(すなわち、小さい収縮)と思われる。PLA−POM組成物を使用した場合、熱硬化時間が短くても収縮量は著しく低減した。小さい収縮に必要な熱硬化継続時間は、短縮され、それによって、熱成形プロセスのためのサイクル時間が短縮される。POM0.5重量%の濃度でさえ、寸法安定性の改良が見られた。
【0060】
表5に列挙された非晶質組成物のシート(厚さ約21から25ミル)を、100℃の水に10秒間曝露させて延伸させ、約2秒延伸させた。
【0061】
【表5】

【0062】
2×比では、元の長さは、2.25インチであり、約4.5インチまで延伸した。4×比では、元の長さは、1.1インチであり、約4.5インチまで延伸した。延伸後、試料を、約23℃で直ちに水中に沈めた。チェックマーク位置(元のシート上の1cmチェックマークを使用することによってストリップに沿った実際の延伸比を定量化した)の変化を使用して実際の延伸比を測定した。配向または延伸されたストリップに新規な1cm延伸マークを施した。マークされた延伸ストリップを、沸騰水または71℃の水中に入れた。同様に、ストリップを60℃(10秒)の空気オーブン中に入れることによって任意の収縮を監視した。収縮%を表6に要約する。1つを超える試験用複製を使用した場合、収縮は、カッコ内に示された複製の平均であった。
【0063】
【表6】

【0064】
表6では、収縮は、曝露温度が高いほど、および延伸比が大きいほど増加したことが示されている(この配向手順の条件では)。PLAをPOMで変性すると、最高5から6×の延伸比全てで、および60から100℃の範囲の温度に対して収縮は低減した。
【0065】
上記と同じ配向プロセス(100℃の水中で延伸比2×までの配向)を使用したが、シートを、6秒間水中に保持することによって組成物を部分的に熱硬化させた。沸騰近傍の水、すなわち、80℃の水中に10秒間浸漬し、オーブン中に約70℃で1時間置くことによって、収縮を試験した。結果を表7に要約する。
【0066】
【表7】

【0067】
表7では、引張り下でわずかにアニーリングすると(約6秒間熱硬化)、純粋および特にPOMで変性されたものいずれでも配向されたPLA物品の寸法安定性が改良されたことが示されている。
【0068】
異なる量のPOM−1を含む追加のシートを、幅1インチ長さ2.25インチのストリップに切断した。ストリップを、上記の手順と類似の手順を使用して(約95〜98℃の水中に20秒間、2秒間にわたる2×延伸、引張り下95〜98℃で4秒間保持、次いで、22℃で急冷)配向させた。試料を、引張りなしでオーブン中70℃で1時間収縮させた。結果を表8に要約する。これまでの実験と同様に、PLAをPOMで変性すると、収縮が改良された。
【0069】
【表8】

【0070】
熱成形プロトコル
高さ約9インチの木製枠を備える熱成形装置を準備した。装置は、底部に積層された厚さ0.75インチの木材層3つを備えていた。底部の2つの層は、それぞれ、ドリルで開けられた直径2インチの孔を1つ備え、第3の層は、ドリルで開けられた直径2.25インチの孔を1つ備えていた。第3の層の上方約6.5インチに置かれた第4の木製層は、ドリルで開けられた直径2インチの孔を1つ備えていた。孔の中心が垂直に整列するように、層を装置内に配置した。熱成形に使用する場合、熱可塑性試験シートを、第3の層と底部の層の間に置いた。追加の木製片を使用することによって、熱成形中、層およびシートをその場にしっかりと保持した。シートの上面に接触するように、上方の孔から直径1.5インチのアルミニウムプランジャを挿入した。熱成形中のプランジャに対する下向きの圧力によって、底部の層中の孔によって形成された空洞内にシートが押し込まれ、それによってカップ形状の物品が成形される。
【0071】
熱成形操作の前に、100℃まで予熱されるように、プランジャおよび装置を沸騰水中で加熱した。装置を沸騰水から素早く取り出し、試験シートを装置に取り付け、装置を15秒以内に沸騰水浴に戻した。モールドの空隙内部を沸騰水が満たしていることを確認した後、沸騰水をシートの上面に吹き掛けることによって成形前にシートを加熱した。所与の記録された予熱時間の後、装置を沸騰水浴から取り出し、プランジャを、孔内に挿入し、力を掛けることによってシートをカップ形状の物品に成形した。プランジャを、下方の位置に保持し、装置全体を周囲温度(約23℃)の水中に直ちに浸漬することによって成形カップを急冷した。装置を完全に浸漬したら、プランジャを取り除き、カップが少なくとも40℃未満に冷却されるまで装置およびカップ全体に水を循環させた。次いで、カップを装置から取り出した。
【0072】
表9には、98重量%のPLA−1および2重量%のPOM−1の組成物を含むシートを使用した、予熱および成形時間を種々変えたいくつかの熱成形試験が要約されている。シートを上記と同様に調製した。熱成形後、プランジャの動きは比較的自由であり、カップは、水での急冷中に収縮したように思われた。熱成形によって、カップは最大の1.5インチまで引張られたが、急冷後、カップの寸法は長さが短くなった。成形後の透明性(ヘイズ)を、底から1.5インチ離れた印刷物をカップの底から観察することによって定性的に判断した。
【0073】
【表9】

【0074】
開放端を上にして、約60℃で1時間オーブン中で実施例のカップを加熱して、以下の結果を得た。
33 基部の直径は約20%減少した。
34 壁面および基部のわずかな変形。
35 基部のわずかな変形。
36 無視できるほどの変形。
【0075】
これらの結果によって、PLA−POM組成物では、熱成形品の低い寸法収縮と良好な光学的透明性の双方を実現するためには、最適な予熱期間および熱成形速度に対する熱成形の領域が存在することが示される。
【0076】
カップの壁面のセクションを切断し、引張りなしで5秒間82℃(Tgよりかなり高い温度)水中に浸漬した。結果を表10に要約する。
【0077】
【表10】

【0078】
表10の結果によって、PLAのTgを十分超えた温度でさえ、寸法安定性が改良された壁面を備えたカップを作製できそうである(実施例36)ことが定量的に示される。
【0079】
POM−1の量を変えた実施例37〜39およびC40のカップを、上記で良好な透明性を示した(実施例34)固定条件(予熱30秒、3秒未満の成形、その後、直ちに急冷)下で成形した。試料は全て、比較的透明であり、これは、印刷物を基部から1.5インチ離した場合、該印刷物を厚さ15から18ミルのカップ基部を通して容易に読むことができたことを意味する。それらの長さまたは高さは全て、モールドの元の長さ1.5インチに近かった。というのは、装置を冷水中に沈めたとき、プランジャは、固定位置でよりしっかりと保持されていたからである。
【0080】
それぞれのカップの壁面の底部1cmを1cm×1cmの正方形に切断し、2つの正方形を、約6psiの圧力下150°F(52℃)で5分間一緒に合わせて置いた。実施例37およびC40の正方形は、それら自体に粘着しなかった。類似の正方形をシートの非成形部分から切断した。実施例37からの非成形シートは、粘着しなかったが、C40からの非成形シートは、一緒に粘着したが、引張って離すことができた。これらの条件下、非晶質PLA−1のシートは、一緒にしっかりと粘着する。これらの結果によって、積層されたカップが高温に曝露された(例えば、輸送中)場合、熱成形PLAカップの頂部または基部の固定粘着を最小にするPLA−POM組成物の値が示される。
【0081】
表11には、5秒間82℃水中に浸漬することによって熱成形カップを収縮試験した結果が要約されている。表11では、収縮前後で縁部までカップを満たす水の量によって体積を求めた。
【0082】
【表11】

【0083】
上記の装置および以下のパラメータを使用して、カップを熱成形した:
装置を水浴中で約100℃で(通常、93〜98℃であった)加熱し、試料を、100℃に加熱された金属プランジャで成形する前に、加熱水中に20秒間保持した。シートが依然として水面下に存在する間に、カップを2秒間で成形し、熱硬化またはアニーリングのために10秒間プランジャとともにその場に保持し、次いで、22℃の水中で急冷した。
【0084】
カップを80から100℃の水で満たした場合、上記のプロセスを使用して100%のPLA−1から調製されたカップの壁面は、収縮しなかった。この結果は、熱硬化時間が無視できるC40と比較した場合、熱硬化のこの値が高い寸法安定性を与えることを示す。
【0085】
100%のPLA−1、または2重量%のPOM−1によって変性されたPLA−1を含む追加のカップを、より低い成形温度を除けば、直前に示したものと非常に類似した手順を使用して成形した。
【0086】
わずかに低くした浴温(約92〜95℃)で成形したカップは透明であった。これらのカップを70℃に設定された空気オーブン中に1時間置いた。POMで変性されたカップの変形の方がわずかに少なかったが、非変性およびPOM変性カップは両方とも変形した。
【0087】
わずかに高い浴温(約95〜98℃)で成形されたカップは、透明でなかった。カップの壁面は、厚さ8〜9ミルであったが、これは、元の21から25ミルの厚さから相当配向したことを示す。カップを70℃の水で満たし、62gの錘を頂部に置いた。非変性PLA−1のカップは、高さ1.5インチから約0.25インチまで崩れたが、2重量%のPOM−1によって変性されたPLA−1のカップは、崩れなかった。
【0088】
これらの実験から、PLA−1から調製されたカップの熱不安定性は、その双方が少し配向され速やかに急冷された底部および周縁の不十分な寸法安定性によると思われる。POM−1によるPLA−1の変性によって、成形カップの基部を表すわずかに配向され、速やかに冷却されたPLA組成物に対して約2倍寸法安定性が改良される。
【0089】
成形温度が低い、例えば、92℃、特に85℃では、より良好な透明性を有するカップが提供された。しかし、70℃の水をこれらのカップ内に注ぐと、約50%収縮した。如何なる特定の理論にもとらわれることはないが、カップの配向壁面で結晶の形成が可能になるためには、95〜105℃の成形温度が場合によって必要になると思われる。
【0090】
冷却水を使用することによって約11℃まで急冷ドラムを冷却することを除いては、実施例C13から16を調製するのに使用されたものと類似の条件を使用して、種々の量のPOM−1を含むPLA−1の組成物を混合し、厚さ26から32ミルの非晶質シートになるように作製した。
【0091】
非晶質シートを切断して、23cmの正方形にした。バッチモードにおける熱成形性を試験するために、このシートを水平位置で実験室用熱成形器(Hydrotrim Corp.、W. Nyack、ニューヨーク、米国からのLabform(登録商標)Model 1620)にかけた。シートの上方および下方から230℃の黒体放射器より45秒の継続時間で熱をかけたが、その時間中に、シートの表面温度は、公称成形温度約90℃に向かって上昇した。モールドは、深さ4cm、直径8cmを有するペットフード缶をシミュレートする成型物品を提供するために、モールドは、非加熱、非冷却のセラミックモールドであった。加熱サイクルの最後で、シートを直ちにモールド上に位置させ、モールド周縁にクランプした。約2秒の間、モールド内部からの真空によって、シートはモールド内に引張られた。成型シートをモールド内で冷却し、次いで、約15秒の後、イジェクトした。シートは、モールドの内部形状を完全に再現した。成型されたカップは、これらの寸法:すなわち、壁面厚さ約11から13ミル、および基部厚さ約10から13ミルであった。成形カップのヘイズをカップの基部で、ASTM D1003−REV92を使用して測定した。次いで、試料カップをそれらの周縁まで60℃の水で満たすことによって収縮を評価し、それらの寸法を測定した。結果を表12に要約する。
【0092】
【表12】

【0093】
表12は、非変性PLA−1は、ヘイズが良好(低い)であるが、耐熱性が不十分である(比較例C41)ことを示す。実施例42は、C41に等しいヘイズを提供したが、耐熱性はより良好であった。これによって、低いヘイズと耐熱性の組合せを提供するためのPLA−POM組成物の値が分かる。POM−1のより高い水準は、これらの条件下でより高いヘイズを提供した(実施例43および44)。
【0094】
注目すべきは、ASTM D1003−REV92を使用して、厚さ10から13ミルで測定した場合、5%未満、好ましくは、2%未満のヘイズを有する熱成形品または配向品である。やはり注目すべきは、少なくとも2秒間60℃で加熱された場合、収縮が10%未満である熱成形品または配向品である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成物を含む熱成形された透明な物品であって、
組成物は、5J/g未満の冷却結晶化エネルギーを有し、冷却結晶化エネルギーが、組成物試料を10℃/分で周囲温度から220℃まで加熱し、10℃/分で周囲温度まで冷却することによって示差走査熱量測定法により求められ、
組成物は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、組成物の全量に対して0.1から9重量%のポリオキシメチレン樹脂とを含み、
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、またはそれらの2つ以上の組合せを含むことを特徴とする物品。
【請求項2】
一軸配向され、
組成物は、0.1から0.9重量%のポリオキシメチレン樹脂を含み、
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、またはそれらの2つ以上の組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
寸法安定性であり、ASTM D1003−REV92を使用して厚さ10から13ミルで測定した場合、少なくとも2秒間60℃まで加熱されるとき、収縮が10%未満であり、ヘイズが5%未満であり、
組成物は、10J/gを超える融解エネルギーを有し、融解エネルギーが、組成物試料を10℃/分で周囲温度から220℃まで加熱し、10℃/分で周囲温度まで冷却し、10℃/分で220℃まで再度加熱することによって示差走査熱量測定法により、サイクルの第2の加熱部分で求められ、
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレートコポリマー、グリコール酸と乳酸のコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
ASTM D1003−REV92を使用して厚さ10から13ミルで測定した場合、ヘイズが5%未満であり、
組成物は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)単独のガラス転移温度と実質的に変わらないガラス転移温度を有し、
ポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、ポリ(乳酸)であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の物品。

【公開番号】特開2009−62532(P2009−62532A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−210984(P2008−210984)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】