説明

ポリ(ビニルブチラール)の連続生成

本発明は、高せん断力ミキサーの混合領域に高温で提供されるポリ(ビニルアルコール)ワニスを用いながらポリ(ビニルブチラール)のアセタール化を行うことで、冷却及び加熱サイクルの少なくとも一方を無くしたために従来の加工工程に比較して必要なエネルギー量を減らした、又はエネルギーの回収を簡単にした、連続的にポリ(ビニルブチラール)を生成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は2009年4月18日に提出された米国出願12/426,246号の継続出願である。上記出願の教示全体を、言及をもってここに援用することとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明はポリ(ビニルブチラール)生成の分野に関し、特に本発明は連続生成技術を用いたポリ(ビニルブチラール)生成の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
ポリ(ビニルブチラール) (PVB) は、例えば安全ガラス又はポリマー製ラミネートなどの透光性ラミネート中の中間層として用いることのできるポリマー・シートの製造に通常、用いられている。安全ガラスはしばしば、ポリ(ビニルブチラール)シートを二つのガラス・シート同士の間に配置して含む透明なラミネートを言う。安全ガラスはしばしば、建築物及び自動車の開口部に透明なバリアを提供するために用いられる。その主な機能は、物体の衝突により引き起こされるものなどのエネルギーを、該開口部を貫通させたり、又は、ガラスの破片を散乱させたりすることなく吸収することで、該物体や封鎖空間内の人物に対する損害又は損傷を最小限にすることである。
【0004】
ポリ(ビニルブチラール)は通常、ほとんどのバッチ加工などの従来のバッチ工程を用いて生成され、反応物の添加、混合、排出、及び洗浄といったサイクルの反復を要する。従来の方法の一つには、4時間を超えるバッチサイクル時間を要することがある。
【0005】
連続方法を用いたポリ(ビニルブチラール)の生成が試みられてきた一方で、 それらの従来の試みは、例えばポリ(ビニルブチラール)の組成が均一でない樹脂や、ミキサーの制約が原因で、望ましくない凝塊を含有するポリ(ビニルブチラール)を生じるような加工などを含め、満足のいかない結果をしばしば生んできた。
【0006】
従って、効率的で基準化可能な連続プロセスを用いて、均一に高品質なポリ(ビニルブチラール)を生成する、更に優れたポリ(ビニルブチラール)生成法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、高せん断力ミキサーの混合領域に高温で提供されるポリ(ビニルアルコール)ワニスを用いながらポリ(ビニルブチラール)のアセタール化を行うことで、冷却及び加熱サイクルの少なくとも一方を無くしたために従来の加工工程に比較して必要なエネルギー量を減らした、又はエネルギーの回収を簡単にした、連続的にポリ(ビニルブチラール)を生成する方法を提供する。
【0008】
(詳細な説明)
本発明は、高せん断力ミキサー及び高加工温度を用いることで、従来のバッチ加工に比較して対費用効果、効率、及び適応力が高い生成システムを提供する、ポリ(ビニルブチラール)樹脂の連続的な生成のためのポリ(ビニルブチラール)製造プロセスを提供するものである。
【0009】
従来のポリ(ビニルブチラール)バッチ生成は、典型的には、例えば水であってもよい溶媒へのポリ(ビニルアルコール)の溶解で開始される。ポリ(ビニルアルコール)溶液が確実に完全に溶解するよう、溶解温度は典型的には約90°C にまで上げられ、その後この溶液を室温未満まで冷却し、酸触媒の存在下でブチルアルデヒドと反応させてポリ(ビニルブチラール)を形成する。形成されたこのポリ(ビニルブチラール)混合物を更に加熱してから洗浄して最終生成物を形成する。このプロセスは時間がかかり、またエネルギー集約的である。
【0010】
本発明の方法は、加熱された連続的なポリ(ビニルアルコール)流を、高せん断力ミキサーの一領域内で連続的なブチルアルデヒド流に直接、反応させることにより、当該プロセスを簡略にし、こうしてバッチ加工に共通の冷却及び再加熱ステップを無くし、エネルギー費用及び製造時間を削減する。
【0011】
本発明の多様な実施態様では、適した溶媒、そして好ましくは水に溶解させてあるポリ(ビニルアルコール)であるポリ(ビニルアルコール)流を、このポリ(ビニルアルコール)溶解ステップが混合直前に行われる場合には高せん断力ミキサーに入る前に加熱し、あるいはミキサー内に入るときに加熱する。例えば後者の実施態様は、ポリ(ビニルアルコール)溶液が、最初の溶解と高せん断力ミキサーへの導入の間に冷却されるのであれば、用いることができる。いずれの場合でも、加熱後のポリ(ビニルアルコール)流は、高せん断力ミキサーの混合領域内で連続的なブチルアルデヒド流と混合される。酸触媒はこの混合が起きる前、この混合が起きるとき、又は混合が始まってそれが完了する前に、導入される。例えばスクリュー型の高せん断力ミキサーの場合、混合領域に、又は、連続流の一つに酸触媒を導入するためのポートを設けることができる。ポリ(ビニルアルコール)流、ブチルアルデヒド流、及び酸触媒を、高せん断力混合で配合すると、ポリ(ビニルブチラール)樹脂が形成され、これを次に押し出し、洗浄、及び乾燥させることで、操作の容易な乾燥型のポリ(ビニルブチラール)樹脂を形成することができる。
【0012】
ここで用いられる場合の「高せん断力ミキサー」には、少なくとも20s-1、30s-1、又は40s-1、又は20s-1 乃至 400s-1、20s-1 乃至300s-1、又は20s-1 乃至200s-1 のせん断速度を少なくとも20、30、又は 40 秒間、又は20 乃至500秒間、20 乃至200 秒間、又は20 乃至100 秒間、印加することのできる領域に、ポリ(ビニルアルコール)及びブチルアルデヒド流を導入することのできるいずれかのミキサーが含まれる。本発明の多様な実施態様においては、少なくとも20、30、又は40パスカル、又は20 乃至 400、20 乃至300、又は20乃至200 パスカルのせん断力を印加する。高せん断力混合の後では、粒子サイズは50 乃至200ミクロン、60乃至150ミクロン、又は80乃至120 ミクロンであってよい。
【0013】
本発明の高せん断力ミキサーは、スクリュー押出し器、ツインスクリュー押出し器、インライン・ミキサー(例えばTyphoon(登録商標)ミキサーを含む)、破砕器(例えばIKA 又はSi Iverson ミキサーを含む)、固定ミキサー(例えばKenics又はSulzer ミキサーを含む)や、高せん断力流領域を十分に長い滞留時間、好ましくはプラグ流型流レジームと組み合わせることのできるいずれか他の器具を含む。本発明の高せん断力ミキサーは連続的な生成が可能であるが、このことは、それらが反応物の連続的な投入流を受け取りながら、反応の生成物を連続的に排出することができることも意味する。ブチルアルデヒドの濃度は90.0% 乃至99.9%、95.0 乃至99.9%、又は99.0%乃至99.9%であってよい。ポリ(ビニルアルコール)ワニスの濃度は5% 乃至 20%、8.0% 乃至18.0%、又は10.0% 乃至 15.0%であってよい。
【0014】
本発明の方法の多様な実施態様においては、ポリ(ビニルアルコール)流の温度は95°C、105°C、又は115°Cを超えてよく、又は120°C 乃至 160°C、又は 110°C 乃至170°Cであってよく、そして記載された通り、該温度を、ポリ(ビニルアルコール)流を高せん断力ミキサーに導入する前でも、又は後に設定することもできる。本発明のポリ(ビニルアルコール)は、いずれの適したソースを源とするものでもよく、そして下に詳述するように、多様な実施態様では、ポリ(ビニルアルコール)は、加水分解してある(ポリビニルアセテート)から得られる。ブチルアルデヒドは、該高せん断力ミキサーに、好ましくは液体型で加えられる。その温度は0°C乃至70°C、又は圧力を加えて導入される場合にはそれよりも高い温度までの範囲にすることができ、ほぼ室温で維持することもできる。
【0015】
ポリ(ビニルアルコール)流は高せん断力ミキサーのうちの、ここで高せん断力ミキサーの「混合領域」と呼ばれる一領域に向けられ、そこで連続ブチルアルデヒド流及び酸触媒との混合が起きることになる。多様な実施態様では、該混合領域の温度は、投入されるポリ(ビニルアルコール)流の温度、又はその値の10% 又は20% 内に等しくなるよう、設定される。
【0016】
アセタール化反応は、水性のポリ(ビニルアルコール)相に基づいて重量で例えば0.1% 乃至、好ましくは0.2% 乃至2.0% などの濃度範囲の、触媒として作用する酸の存在下で起きる。適した酸及びその混合物は例えばHC1、H2SO4、HNO3、HC1O4、H3PO4などの強い鉱物油や、芳香族及び脂肪族の硫酸である。酸の温度は20°C 乃至100°Cの範囲であってよいが、好ましくは摂氏10度以内か、又は、ポリ(ビニルアルコール)溶液の温度と全く等しいとよい。本発明の多様な実施態様では、酸触媒は無機酸であり、そして好適な実施態様では、酸触媒は硝酸である。
【0017】
加えられるブチルアルデヒドの量は、加えられる純粋なポリ(ビニルアルコール)のそれぞれ1kg当り0.25 kg 乃至1.5 kg 又は0.50 kg乃至0.75 kg であってよい。
【0018】
いくつかの実施態様では、二つの別個の混合領域を高せん断力ミキサー内に含める。第一混合領域では、ポリ(ビニルアルコール)及びブチルアルデヒドを高せん断力領域で混合する。該第一混合領域では、せん断速度は20s-1
乃至10,000s-1、50 乃至 5000s-1、又は100乃至500s-1の範囲である。該第一混合領域での材料の滞留時間は10 秒間乃至60分間、30 秒間乃至30 分間、又は60 秒間乃至10 時間であってよい。第二混合領域では、せん断速度をls-1
及び500s-1
又は5 及び50s-1から低下させることができる。第二混合領域での滞留時間は10乃至180分間又は20乃至60分間であってよい。各混合領域での温度はこれらの実施態様で同じであっても、又は異なっていてもよい。第一混合領域の温度は10°C乃至120°C でも、又は40°C 乃至100°Cでもよい。第二混合領域の温度は10°C 及び120°C 又は60°C 乃至120°Cでもよい。
【0019】
混合後、ポリ(ビニルブチラール)樹脂は混合領域からスラリとして排出されるが、該スラリを必要に応じて中和、洗浄、及び乾燥すると、 ポリ(ビニルブチラール)が、扱い及び輸送が容易な乾燥型のポリ(ビニルブチラール)樹脂にすることができる。
【0020】
ここで用いられる場合の「前記ポリ(ビニルブチラール)樹脂を前記高せん断力ミキサーから加工する」とは、いずれかの適した手段を用いてポリ(ビニルブチラール)樹脂を高せん断力ミキサーから取り出すことを意味し、該手段は、例えば、限定はしないが、ミキサーの圧力又は外圧などを用いてミキサーから樹脂を押し出すことを含む。
【0021】
洗浄工程の目的は未反応のブチルアルデヒドや残った酸触媒を抽出するためである。洗浄は、好ましくは水を抽出液体として用いて、連続的な逆流洗浄工程で行うことができる。次に、例えば連続ろ過工程又は遠心分離などによって母液から粒子を分離する。最後にポリ(ビニルブチラール)粒子を、例えば流動層乾燥、循環式流動層乾燥、フラッシュ乾燥、又は、粉末の連続的な加工及び輸送を可能にするいずれか他の工程など、連続的な乾燥工程を用いて乾燥させることができる。
【0022】
上記の混合工程中、多様な添加剤をポリ(ビニルブチラール)樹脂に加えることができる。これらは、粒子のサイズ分布を制御すると共に粒子の過剰な凝集に対抗するのに助けとなる界面活性剤でも(米国特許第5,238,994号を参照されたい)、又は、内部可塑化として役立つであろう、ポリマー骨格上の長鎖アセタール基を形成するための長鎖アルデヒドであってもよい(米国特許第 5,594,069号を参照されたい)。
【特許文献1】米国特許第5,238,994号公報
【特許文献2】米国特許第 5,594,069号公報
【0023】
本発明の連続工程で生成されるポリ(ビニルブチラール)樹脂を、高せん断力ミキサーの混合領域内での樹脂の形成後に同じ連続工程で更なる添加剤及び可塑剤を用いて修正し、米国特許第7,491,761号で解説するように、保存及び扱いの簡単なペレットに形成することができる。
【特許文献3】米国特許第7,491,761号公報
【0024】
本発明の方法によって形成されたポリ(ビニルブチラール)は、適していればいずれの物品にも形成することができる。ある共通の用途では、ポリ(ビニルブチラール)は、例えば自動車及び建築物の安全ガラス及び光起電性モジュールなどで用いるためのポリマー・シートの作製に用いられる。
【0025】
ここで用いられる場合の「ポリマー・シート」とは、積層グレージング・パネルに充分な貫通耐性及びガラス保持特性を提供する内側層としての使用に向け、単独で、又は二層以上の積層として適した薄層に、いずれかの適した方法で形成される、いずれかの熱可塑性ポリマー組成物を意味する。
【0026】
本発明には、ここで解説する方法に加え、ポリ(ビニルブチラール)シートや、当該樹脂又はシートから作製される及び積層グレージング及び光起電性モジュールを含め、本発明のプロセスによって作製されるポリマー樹脂や同樹脂から作製されるいずれかの物品が含まれる。
【0027】
本発明の方法の反応物の多様なパラメータの詳細は米国特許第2,282,057 号及び第2,282,026号や Vinyl Acetal Polymers, in Encyclopedia
of Polymer Science & Technology, 3rd edition, Volume 8,
pages 381-399, by B.E. Wade (2003)に詳述されている。
【特許文献4】米国特許第2,282,057 号公報
【特許文献5】米国特許第2,282,026号公報
【0028】
多様な実施態様では、本発明の方法で生成されるポリ(ビニルブチラール)樹脂は、ポリ(ビニルアルコール)で計算して10乃至 35重量パーセント (wt. %)
のヒドロキシル基を、ポリ(ビニルアルコール)で計算して13 乃至30 重量 % のヒドロキシル基を、又は、ポリ(ビニルアルコール)で計算して15 乃至22 重量%のヒドロキシル基を含む。 ポリ(ビニルブチラール)樹脂はまた、ポリ(ビニルアルコール)で計算して15 重量% 未満の残留エステル基、13重量 %、11 重量%、9 重量 %、7 重量 %、5 重量 %、又は3 重量 %未満の 残留エステル基を含み、その差はアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、選択的には他のアセタール基、例えば2-エチルヘキサナル基を少量、含む (例えば米国特許第5,137,954号を参照されたい)。
【特許文献6】米国特許第5,137,954号公報
【0029】
多様な実施態様では、生成されるポリ(ビニルブチラール)は、1モル当り少なくとも30,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、120,000、250,000、又は少なくとも350,000 グラム(g/モル又はダルトン)の分子量を有することができる。アセタール化ステップ中に少量のジアルデヒド又はトリアルデヒドを加えると分子量を少なくとも 350,000 g/モルまで増加させることができる(例えば米国特許第 4,902,464号、第4,874,814号;第4,814,529号;及び第4,654,179号)。ここで用いられる場合の用語「分子量」とは、重量平均分子量を意味する。
【特許文献7】米国特許第4,902,464号公報
【特許文献8】米国特許第4,874,814号公報
【特許文献9】米国特許第4,814,529号公報
【特許文献10】米国特許第4,654,179号公報
【0030】
酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、及びマグネシウム塩を含め、多様な付着制御剤を本発明のポリ(ビニルブチラール)に加えることができる。 本発明のこれらの実施態様で用いることのできるマグネシウム塩には、限定はしないが、例えばサリチル酸マグネシウム、ニコチン酸マグネシウム、ジ-(2-アミノベンゾエート)マグネシウム、ジ-(3-ヒドロキシ-2-ナフトエート)マグネシウム及びビス(2-エチルブチレート)(化学抄録番号79992-76-0)など、米国特許第5,728,472号に開示されたものが含まれる。本発明の多様な実施態様では、マグネシウム塩はマグネシウムビス(2-エチルブチレート)及びマグネシウムビス(2-エチルヘキサノエート)である。
【特許文献11】米国特許第5,728,472号公報
【0031】
他の添加剤をポリ(ビニルブチラール)に取り入れて最終製品におけるその性能を高めてもよい。このような添加剤には、限定はしないが、当業で公知の通り、染料、顔料、安定化剤(例えば紫外線安定化剤)、抗酸化剤、IR吸収材、難燃剤、前述の添加剤の組合せ等々がある。
【0032】
いずれの適した可塑剤も本発明のポリ(ビニルブチラール)樹脂に加えることができる。可塑剤には、多塩基酸又は多価アルコールのエステルを含めることができる。適した可塑剤には、例えばトリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチル及びノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、油変性セバシン酸アルキドなどのポリマー製可塑剤、米国特許第 3,841,890号に開示されたものなどのリン酸塩及びアジピン酸塩の混合物、米国特許第No. 4,144,217号に開示されたものなどのアジピン酸塩並びに前述の混合物及び組合せがある。用いることのできる他の可塑剤は、米国特許第5,013,779号に開示されたものなど、C4乃至C9アルキルアルコール及びシクロC4乃至C10アルコールから作製された混合アジピン酸塩や、アジピン酸ヘキシルなどのC6乃至C8 アジピン酸エステルである。多様な実施態様では、用いる可塑剤はアジピン酸ジヘキシル及び/又はトリエチレングリコールジ-2 エチルヘキサノエートである。
【特許文献12】米国特許第3,841,890号公報
【特許文献13】米国特許第4,144,217号公報
【特許文献14】米国特許第5,013,779号公報
【0033】
本発明の多様な実施態様では、例えばシート型又はペレット型などで可塑剤と混合したポリ(ビニルブチラール)は、樹脂100部(phr)当り20 乃至 60、25乃至60、20 乃至80、10 乃至70、又は10 乃至100部の可塑剤を含む。
【0034】
もちろん、特定の用途に適切な場合には他の量を用いることもできる。いくつかの実施態様では、可塑剤は炭素原子が20個未満、15個未満、12個未満、又は10 個未満である炭化水素セグメントを有する。
【0035】
可塑剤の量はポリ(ビニルブチラール)製品のガラス遷移温度(Tg)に影響するように調節することができる。一般的には、Tgを低下させるためにはより多量の可塑剤を加える。本発明のポリ(ビニルブチラール)ポリマー・シートは、例えば40°C 以下、35°C以下、30°C 以下、 25°C以下、20°C 以下、及び15°C 以下のTgを有することができる。
【0036】
本発明の樹脂から本発明のポリマー・シートを生成するには、いずれの適した方法も用いることができる。ポリ(ビニルブチラール)・シートを形成する方法の一例は、樹脂、可塑剤及び添加剤を含む溶融ポリ(ビニルブチラール)を、ダイス(例えば、垂直方向の寸法よりも一方向の寸法が実質的に大きい開口部を有するダイスなど)を通して溶融液を押し出すことで押し出しするステップを含む。ポリ(ビニルブチラール)・シートを形成するもう一つの方法例は、ダイスからの溶融液をローラに鋳造するステップと、該樹脂を凝固させるステップと、次に該凝固した樹脂をシートとして取り外すステップとを含む。多様な実施態様では、該ポリマー・シートを、例えば0.1 乃至 2.5 ミリメートル、0.2 乃至2.0 ミリメートル、0.25 乃至1.75 ミリメートル、及び0.3 乃至1.5 ミリメートルの厚さを有することができる。
【0037】
反応器システムを高せん断力ミキサーの後に配置してもよい。反応器システムは、充分なせん断力を提供すると共に温度を充分に制御することができるよう、該システムを通じたスラリの連続流が可能であればいずれの種類の装置であってもよい。例は、プラグ流反応器、例えば励振パイプ反応器、充分に長い滞留時間を提供するように互いに接続された一連の静止型(例えばKenics(登録商標))混合器、又は、それぞれに攪拌器の付いた隣り合ったチャンバーを有する多チャンバー混合器であり、多チャンバ混合器の場合、ポリ(ビニルブチラール)は、ある一つのチャンバーの底面にあるポートから、ある一つの上部にあるポートまで各チャンバーを交互に通過する。連続撹拌タンク反応器も効果的に利用することができる。
【0038】

11.4w/w%の濃度のポリ(ビニルアルコール)の水溶液をTyphoon(登録商標) インライン混合器 (Typhoon(登録商標) HSI-4; 回転速度=2,650 RPM)内に連続的に注入する。実験中、ポリ(ビニルアルコール)溶液の温度は100°C 乃至105°Cの範囲である。均質な酸-ポリ(ビニルアルコール)溶液混合液を得るために、酸触媒は、Typhoon(登録商標)反応器の入り口の正面に配置されたKenics(登録商標))内でポリ(ビニルアルコール)溶液に、反応前に添加される。ブチルアルデヒドはこの酸-ポリ(ビニルアルコール)溶液にTyphoon(登録商標)混合器自体の中で加えられる。異なる反応器の各流速は以下の通りであるポリ(ビニルアルコール)ワニス=毎分1,000 グラム;硝酸溶液 (15%) = 毎分87 グラム;ブチルアルデヒド = 毎分63 グラム。
【0039】
形成されたスラリはTyphoon(登録商標)から保持タンクに高温反応を終了させるために注入される。連続沈殿反応は、ポリ(ビニルアルコール)溶液が消費されるまでほぼ25分間、行われる。高せん断力ミキサー後の粒子サイズは80乃至120ミクロンの範囲であり、残留ヒドロキシル含有量はほぼ25%である。保持タンク攪拌機の回転速度によっては、粒子サイズの更なる成長がほぼ350ミクロンまで保持タンク内で認められる。保持タンク内では、ヒドロキシル含有量は更にほぼ20%まで更に減少する。
【0040】
本発明のおかげで、従来のポリ(ビニルブチラール)用途で用いることのできる高品質のポリ(ビニルブチラール)樹脂の連続的な生成が今や可能である。
【0041】
以上、本発明を例示的な実施態様を参考にしながら説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な変更が可能であり、均等物をその要素に置換できることは理解されよう。加えて、特定の状況や本発明の教示にとっての物的要素に適応するよう、その実質的な範囲から逸脱することなく、数多くの変形が可能であろう。従って、本発明を実施するために考察された最良の形態として開示された特定の実施態様に本発明は限定されないこと、そして本発明は、付属の請求項の範囲内に入るすべての実施態様を包含するものであることが、意図されている。
【0042】
更に、本発明のいずれか単一の成分に与えられた範囲、数値、又は特徴のいずれも、適合すれば、本発明の他の成分のいずれかについて与えられたいずれかの範囲、数値、又は特徴と交換可能に用いることで、ここで全般に与えられた各成分についての規定値を有する実施態様を形成することができ、それにより、本発明の範囲内にあって、列挙するいとまもないような数多くの置換群を形成することは理解されよう。
【0043】
ようやく又はいずれかの請求項に記載されたいずれの図面参照番号は描写のみを目的としており、いずれかの図面で示されたいずれか一つの特定の実施態様に本請求項記載の発明を限定するものと捉えられてはならない。
【0044】
図面は、そうでないと明示しない限り実寸で描かれてはいない。
【0045】
学術誌、特許、出願及び書籍を含め、ここで言及された各参考文献の内容全体は、言及をもってここに援用することとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ビニルブチラール)樹脂を製造する方法であって:
高せん断力ミキサーを提供するステップと;
前記高せん断力ミキサーにポリ(ビニルアルコール)の連続流を加えるステップと;
前記高せん断力ミキサーにブチルアルデヒドの連続流を加えるステップと;
前記高せん断力ミキサーのある一つの領域内で前記ポリ(ビニルアルコール)流と前記ブチルアルデヒド流とを混合するステップであって、前記ポリ(ビニルアルコール)流が95℃を超える温度である、ステップと;
前記高せん断力ミキサーから前記ポリ(ビニルブチラール)樹脂を加工するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリ(ビニルブチラール)流が105℃を超える温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ(ビニルアルコール)流が115℃を超える温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(ビニルアルコール)流が110℃乃至170℃の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(ビニルアルコール)流が120℃乃至160℃の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水の連続流を加えるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高せん断力ミキサーが少なくとも20パスカルのせん断力を印加する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高せん断力ミキサーが、少なくとも30パスカルのせん断力を印加する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高せん断力ミキサーが少なくとも40パスカルのせん断力を印加する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合の前又は混合中に酸触媒を加えるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸触媒が無機酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合が5分未満で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記混合が3分未満で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリ(ビニルブチラール)を連続混合反応器システムを通過させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリ(ビニルブチラール)樹脂を洗浄するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記混合が少なくとも20s-1のせん断速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記混合が少なくとも30s-1のせん断速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記混合が少なくとも40s-1のせん断速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
高せん断力ミキサーを提供するステップと;
ポリ(ビニルアルコール)の連続流を前記高せん断力ミキサーに加えるステップと;
ブチルアルデヒドの連続流を前記高せん断力ミキサーに加えるステップと;
前記高せん断力ミキサーのある一つの領域内で前記ポリ(ビニルアルコール)流と前記ブチルアルデヒド流とを混合するステップであって、前記ポリ(ビニルアルコール)流が95℃を超える温度である、ステップと;
前記高せん断力ミキサーから前記ポリ(ビニルブチラール)樹脂を加工するステップと
を含む加工により作製されるポリ(ビニルブチラール) 樹脂。



【公表番号】特表2012−524152(P2012−524152A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505952(P2012−505952)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031355
【国際公開番号】WO2010/121105
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(503316891)ソルティア・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】