説明

ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物及びその製造方法

【課題】本発明は、水への溶解性や分散性に優れたポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を提供する。
【解決手段】光重合開始剤の存在下、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、紫外線を含む光を照射して該単量体混合物を光重合させてポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する方法であって、光源と該単量体混合物の水溶液の間に、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料を介在させて光照射することを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法に関し、水への溶解性や分散性に優れた性質を有するポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、各種顔料等の分散剤、スケール抑制剤、洗浄用ビルダー、増粘剤、バインダーおよび医薬用の湿布剤やハップ剤の基剤などに有用であり、種々の分野で多岐にわたって使用されている。
【0003】
一般的に、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液、または(メタ)アクリル酸を含む単量体に水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムなど酸を中和させる化合物を混合させた混合水溶液をラジカル重合させて製造されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする単量体を水性媒体中で光重合して得られた、重量平均分子量が60万以上で且つ分散度が5〜60である(メタ)アクリル酸(塩)系重合体が記載されている。特許文献1には、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする単量体を、波長領域300nm以上500nm以下の近紫外線を用いて光重合させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2の実施例3には、可動式樹脂ベルト上に、アクリル酸及びアクリル酸ソーダを含む水溶液を連続的に供給して光重合して含水状重合体を得、これを剥離する含水状重合体の製造方法が記載されている。その段落番号0039及び0040には、ビニル系単量体水溶液は、酸素による重合阻害を防止するために不活性ガスが供給された気密室内で光重合され、該気密室の上面には光源からの光が透過できる光透過性材料を有することが記載されている。
【0006】
しかしながら、前記の特許文献に記載されている、従来のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物では、水溶液に投入直後において粘度が極端に上昇してしまい撹拌が困難となる。その後、撹拌を続けることにより粘度は次第に低下する。このように、経時的な粘度の変動が顕著となるため取り扱いに難点があった。
【0007】
具体的には、例えば、パップ剤製造過程において、ポリアクリル酸部分中和物、グリセリン、水等を混合する工程があるが、その工程において撹拌初期に粘度が上昇するため、撹拌器のモーター負荷が大きくなり安定した製造が困難であった。逆に、混練能力の高い撹拌器で混合した場合には、ポリアクリル酸部分中和物が機械的に切断されてしまい、撹拌時間の経過につれて混合分散液の粘度が低下してしまい、予定の粘度のパップ剤が得られないといった問題も発生していた。そのため、安定した品質のパップ剤を製造するためには、撹拌力の最適化に非常な労力を必要としていた。
【0008】
この様な問題が発生するのは、従来のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物では、水、あるいは水とグリセリン等の多価アルコール混合溶媒に対する溶解性や分散性が不十分、不均一であるためと考えられた。
【0009】
また、従来からポリアクリル酸部分中和物の0.2%水溶液の粘度は、指標性測定値として利用されてきている。
【0010】
しかし、実際には水溶液調整時に粉ポリマー(ポリアクリル酸部分中和物)を水へ投入する方法によって、いわゆる「ままこ」が生じ、一旦、「ままこ」が発生すると長時間放置しようが、攪拌強度、攪拌形態を変更しようが、「ままこ」が分散することはなく「ままこ」状態のまま膨潤し、高濃度のポリマー凝集物のまま0.2%水溶液中に存在する。
【0011】
上記のごとく、0.2%水溶液といっても局所的に濃度分布が発生しており、0.2%水溶液粘度の調整直後は高粘度の測定値を示すことが多く、局所的に濃度分布が発生するために、当該粘度の測定精度が低く、繰り返し測定における再現性も低く、測定値自体が不安定であった。
【0012】
測定値の精度向上、繰り返し測定での再現性の向上のために0.2%水溶液粘度を調整後、例えば24時間静置して20℃の恒温槽中で放置することで、機械的攪拌によるポリマーの切断を可能な限り抑制しながら、可能な限りポリマーを膨潤させた後、粘度測定することで、比較的安定した粘度測定値を得ていた。
【0013】
ところが、実際のポリマーのユーザーである、例えばパップ材製造メーカーでの粉ポリマーと水等の分散媒との調整・混合は、24時間よりはるかに短時間(例えば、30分程度)と推定され、粉ポリマー製造メーカーでの長時間放置後の粘度測定値による品質管理とパップ剤メーカーでの使用実態との乖離が大きく、顧客要望を満足するような対応ができていないのが実情であった。
【0014】
さらに、粘度測定用水溶液中で「ままこ」状態のまま膨潤した高濃度のポリマー凝集物を、篩やガラスフィルター等でろ過した「ろ残」を定量的に測定して、これを「不溶解分」とし、かかる指標が伝統的に利用されてきた。しかし、当該指標も測定精度・測定再現性が低く、指標としても大雑把な判断しかできなかった。
【0015】
当該「不溶解分」が多い場合は、パップ剤製造メーカーの製造工程における「架橋」反応の不均一、不十分の原因となり、パップ剤製造メーカーの製造不安定化、パップ剤製品の品質不安定化を招き、不都合を生じる。
【0016】
パップ剤製造メーカーの製造工程における「架橋」反応は、調整液中での架橋剤とポリアクリル酸部分中和物ポリマーとの間で行われる反応である。そのため、調整液中でポリアクリル酸部分中和物が、すみやかに均一分散している必要があり、不溶解分が多いほど、有効な「架橋」反応の比率が低下し、パップ剤製造メーカーにおける製造工程管理、品質管理上、不具合を生じる。
【0017】
ポリアクリル酸部分中和物の「不溶解分が少ない、あるいはゼロであること」、および「水等の分散媒に粉状のポリアクリル酸部分中和物を投入直後の調整液の粘度上昇が少なく、経時的に粘度変化がないこと」が、パップ剤製造メーカーでの製造工程管理、品質向上、品質安定、不良率の低減のポイントであるといっても過言ではない。とはいうものの、パップ材製造メーカーが要求するようなポリアクリル酸部分中和物は工業的に得られていなかった。
【0018】
そのため、「不溶解分」が少ないあるいは、ゼロ、かつ粉ポリマーを水等の分散媒に投入直後の調整液の粘度上昇が抑制され、経時的に調整液の粘度変化が少なく、すみやかに分散媒中で均一分散するポリアクリル酸部分中和物が望まれていた。ポリアクリル酸部分中和物がすみやかに分散媒中で均一分散することは、パップ剤の製造状態が安定し、最終的にはパップ剤の品質安定に寄与するからである。
【特許文献1】特開2004−10831号公報
【特許文献2】特開2002−3509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記したように、従来のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、水溶液とした場合に経時的な粘度の変動幅が大きく、また水への不溶解分が存在するため、水に対する溶解性や分散性が十分ではなかった。そこで、本発明は、水に対する溶解性や分散性に優れたポリ(メタ)アクリル酸部分中和物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、ホウ珪酸ガラスからなる光透過性材料を介在させて、外部光源から光照射して光重合することにより、水に対する溶解性や分散性に優れたポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造できることを見出した。かかる知見に基づき更に研究を行った結果。本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明は以下のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物及びその製造方法を提供する。
【0022】
項1. 光重合開始剤の存在下、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、紫外線を含む光を照射して該単量体混合物を光重合させてポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する方法であって、光源と該単量体混合物の水溶液の間に、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料を介在させて光照射することを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法。
【0023】
項2. 不活性ガス雰囲気下で前記単量体混合物の水溶液に光照射する項1に記載の製造方法。
【0024】
項3. 前記光透過性材料がホウ珪酸ガラス又は石英ガラスである項1又は2に記載の製造方法。
【0025】
項4. 可動式ベルト上で連続的に前記単量体混合物を光重合させる項1、2又は3に記載の製造方法。
【0026】
項5. 前記光源が発光ダイオード、捕虫器用・光化学用蛍光ランプ、蛍光青色ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ブラックライト蛍光ランプ、ブラックライト水銀ランプ、及びブラックライト電球形蛍光ランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0027】
項6. 照射光の波長が357〜377nmの範囲である光源を用いる項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0028】
項7. 項1〜6のいずれかに記載の製造方法により製造されるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物。
【0029】
項8. (メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体を構成単位として含み、下記の物性を有することを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸部分中和物:
(1)該ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を15秒撹拌した後の20℃における粘度(A)が200〜800mPa・sの範囲であり、
(2)該ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を20分撹拌した後の20℃における粘度(B)が200〜800mPa・sの範囲であり、及び
(3)粘度Aに対する粘度Bの比(B/A)が0.8〜1.2の範囲である。
【0030】
項9. ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する装置であって、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液を入れる反応容器、該反応容器を収容する気密室、及び該気密室の外部上方に紫外線を含む光を照射する光源を備え、該気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されていることを特徴とする装置。
【0031】
項10. ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を連続的に製造する装置であって、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液を可動式ベルトに供給する単量体混合物の供給部、該単量体混合物の水溶液を入れる液溜部を有する可動式ベルト、該可動式ベルトの進行方向に沿って配設された光重合を行う気密室、及び該気密室の外部上方に紫外線を含む光を照射する光源を備え、該気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されていることを特徴とする装置。
【発明の効果】
【0032】
本発明で得られるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は溶解性や分散性に優れ、水溶液での取り扱いが容易であり、各種顔料等の分散剤、スケール抑制剤、洗浄用ビルダー、増粘剤、バインダー、医薬用の湿布剤やハップ剤の基剤などに有用なものであり、特に医薬用の湿布剤やハップ剤の基剤に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。この発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない限りにおいて、適宜変更実施可能なものである。
【0034】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する方法では、光重合開始剤の存在下、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、光照射して該単量体混合物を光重合させる際に、光源と該単量体混合物の水溶液の間に、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料を介在させて光照射することを特徴とする。これにより、水に対する溶解性や分散性に優れたポリ(メタ)アクリル酸部分中和物が製造される。
【0035】
ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリル酸塩とは、(メタ)アクリル酸の中和物を意味し、(メタ)アクリル酸をアルカリ金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物であり、例えば(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムなどが例示され、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。本発明において、あらかじめ酸部分を中和した(メタ)アクリル酸塩を原料として使用してもよく、また、(メタ)アクリル酸を重合した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどにより部分的に中和させてもよい。
【0036】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物には、この発明の目的とする効果を阻害しない範囲で、他の単量体を共重合させることも可能である。かかる単量体としては、例えば、α−ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸およびそれらの塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸、及びそれらの塩などが挙げられる。これらは、必要により1種または2種以上を、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩の合計量に対して、20モル%以下の範囲で用いることが可能である。
【0037】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物における、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩の割合は、通常、モル比で10/90〜90/10程度、好ましくは40/60〜70/30程度、より好ましくは45/55〜65/35であればよい。この割合はポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の用途等に応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩のモル比が90/10を超える場合は、水溶液における不溶解分が増加する傾向にある。
【0038】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩及び必要に応じその他の単量体混合物をラジカル重合させることで得られる。なお、(メタ)アクリル酸及びその他の単量体と、酸を中和させる化合物であるアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどとの混合物を重合させることも可能である。
【0039】
重合方法としては、水溶液重合法、スラリー重合法、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合法が挙げられるが、溶剤除去、溶剤の安全性、界面活性剤の混入の問題から、水溶液重合法が好ましい。
【0040】
水溶液重合法は、前記単量体の水溶液を所定の濃度に調整し、反応系内の溶存酸素を十分に不活性ガスで置換した後、ラジカル重合開始剤を添加し、必要により、加熱や紫外線などの光照射することによって重合反応を行う方法である。本発明においては、低温でも重合反応が可能で、反応進行率も良好であり、低重合物やゲル状物を低減できる光(紫外線など)照射による光重合が好ましい。
【0041】
前記ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造における光重合方法は、前記単量体混合物、光重合開始剤及び連鎖移動剤を含有する混合水溶液に紫外線等の光を照射する方法が好適に採用される。
【0042】
光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤を適宜目的に応じて選択して使用する。例えば、2、2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス(N、N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系光重合開始剤、1−ベンゾイル−1−ヒドロキシシクロヘキサンおよびベンゾフェノン等のケトン、ベンゾインおよびそのアルキルエーテル、ベンジルケタール類、ならびにアントラキノン誘導体等が例示されるが、これらの中でもアゾ系光重合開始剤が好ましい。
【0043】
光重合開始剤の使用量は、全単量体に対して、10〜10000ppmであることが好ましく、より好ましくは10〜5000ppmである。光重合開始剤が10ppm未満の場合は、充分に重合が起こらず、また、10000ppmを超える場合は得られる重合体の重合度が低下する。
【0044】
前記連鎖移動剤は、得られるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の分子量及びその水溶液粘度の調整のため、また不溶解分の減少のために使用するものである。
【0045】
連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール類、チオ酢酸などの硫黄含有化合物、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、亜燐酸、亜燐酸ナトリウムなどの亜燐酸系化合物、次亜燐酸ナトリウムなどの次亜燐酸系化合物が挙げられ、これらを単独または2種類以上併用してもよい。これらの連鎖移動剤の中でも、硫黄含有化合物が好ましく、さらに好ましくは、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸およびチオグリコール酸のいずれかである。
【0046】
連鎖移動剤の使用量は、全単量体に対して1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜300ppmである。連鎖移動剤が1ppm未満では充分な効果があげられず、500ppmを超えると重合度が低くなり好ましくない。連鎖移動剤は得られるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の水溶液不溶解分に影響するので、その使用量は適宜調整することが望ましい。
【0047】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の典型的な重合方法である光重合反応について説明する。光重合する際に照射する光としては、紫外線及び/又は可視光線が用いられ、この中でも紫外線が好ましく用いられる。紫外線照度は、単量体の種類、光重合開始剤の種類や濃度、目的とする重合体の粘度、及び重合時間を考慮して決定されるが、一般に0.01〜1000mW/cm2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜100mW/cm2であり、更に好ましくは0.1〜10mW/cm2である。紫外線照度は、重合反応中一定であっても、又は重合途中で変化させてもよい。光源としては、単量体を光重合させ得る紫外線及び/又は可視光線を放出し得るものであれば特に限定されず、例えば、発光ダイオード、捕虫器用・光化学用蛍光ランプ、蛍光青色ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ブラックライト蛍光ランプ、ブラックライト水銀ランプ、ブラックライト電球形蛍光ランプ等を使用することができ、これらの中でも、発光ダイオード、ブラックライト蛍光ランプを使用することが望ましい。光源は1種であっても、2種以上を用いても良い。
【0048】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法では、光開始剤の存在下、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、紫外線を含む光を照射して光重合する際に、光源と単量体混合物の水溶液の間に、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率がいずれも80%以上である光透過性材料を介在させて光照射することを特徴とする。つまり、光源からの光が光透過性材料を透過して単量体混合物の水溶液に到達するようにする。これにより、波長330〜370nmの範囲の紫外線を有効に利用して光重合でき、単量体からポリマーへの転化率を大幅に向上させることができる。しかも、光の照度が大きくなるため、重合度にバラツキの少ない分子量分布の狭いポリマーを製造することができる。そのため、得られるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、水溶液とした場合に溶解性及び分散性に優れ経時的な粘度変化が大幅に少なくなり、不溶解分も大きく減少することになる。
【0049】
光透過性材料としては、人間の目で透明と認識される石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等があるが、本発明を実現するには、人間の目で透明のみの条件では不十分で、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率の大きい光透過性材料である石英ガラス、ホウ珪酸ガラスを選択する必要がある。
【0050】
その理由としては、アゾ開始剤の光によるラジカル発生に効率的に寄与する波長は330〜370nmと推定されるので、その範囲の波長の紫外線を十分に透過するような光透過性材料を選択することが不可欠である。
【0051】
波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率の大きい光透過性材料を選択しないと、重合時間が遅延し重合転化率が低下するため残留モノマー濃度が高くなり、重合工程の後工程である乾燥工程で残留モノマー濃度が高い状態で加熱されるため、枝分かれポリマーや架橋ポリマーや巨大ポリマーが副反応として生成されてしまう。そのため、結果として分子量分布がブロードになり、不溶解分の増大し、当該粉ポリマーを水等の分散媒に投入した場合、直後の調整液の粘度上昇が甚大となる。即ち、経時的に調整液の粘度変化の大きい、すみやかに分散媒中で均一分散しないポリアクリル酸部分中和物が製造されることになり、不具合が発生していた。
【0052】
また、紫外線を光透過性材料を介することなく直接、開始剤類を含有したモノマー水溶液に照射することは、重合雰囲気を不活性ガスで満たした気密室を確保することが困難となるため工業的な対応が難しい。また、紫外線発生装置のモノマー蒸気の暴露対策を講じる必要があり問題がある。
【0053】
光重合反応は、酸素の存在による重合阻害を防止するために、窒素、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気で行われる。このうち、窒素雰囲気が好ましい。光重合反応は、通常、この不活性ガスが充填ないし供給された気密室中で行われる。
【0054】
上記したように、光透過性材料としてはホウ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられ、特にホウ酸(B)を5〜20%(特に10〜16%)、SiOを65〜90%(特に70〜85%)含有するホウ珪酸ガラスが好ましい。なお、透過率とは、分光放射照度計(例えば、ウシオ電機(株)製USR−40V)を用いて測定した値である。
【0055】
この光透過性材料は上記の気密室の上面に設けられ、該気密室外部に設置された光源からの光を透過して内部の単量体混合物に照射できるようにしている。光透過性材料の形状は特に限定はなく通常平板状であればよく、その厚さも特に限定はないが、光の透過性、強度等の点から0.7mmから21mm程度であれば良く、好ましくは2.75〜11mmである。
【0056】
更に、重合反応時においては、反応液を5〜95℃に保持することが好ましく、より好ましくは5〜30℃であり、更に好ましくは5〜15℃である。温度を保持するために冷却を必要とする場合があり、この冷却方法は特に限定されないが、通常、反応容器の外周を冷媒(例えば、冷水、冷メタノール等)等により冷却する。上記単量体混合物の水溶液の光重合反応は、バッチ式でも連続式でもいずれでもよい。光重合反応をバッチ式で行う場合には、光照射時間(重合時間)は1〜240分であることが好ましく、より好ましくは5〜120分であり、更に好ましくは15〜60分である。
【0057】
例えば、バッチ式としては、単量体混合物の水溶液を入れる反応容器、反応容器を収容する気密室、及び気密室の外部上方に光源を備えてなる装置であり、光源からの光を受ける気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されている装置を使用することができる。
【0058】
また、連続重合方法としては、種々の方法が採用されるが、例えば、可動式ベルト上で連続的に単量体混合物を光重合させてポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する装置であり、単量体混合物の水溶液を可動式ベルトに供給する単量体混合物の供給部、供給された単量体混合物の水溶液を入れる長手方向に沿った液溜部を有する可動式ベルト、可動式ベルトの進行方向に沿って配設された光重合を行う気密室、及び気密室の外部上方に紫外線を含む光を照射する光源を備え、光源からの光を受ける気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されている装置を使用することができる。
【0059】
上記のうち、生産性に優れることから、連続重合方法を採用することが好ましい。
【0060】
連続重合方法の装置の作動は、具体的には以下の通りである。可動式ベルトの一方より、単量体混合物水溶液を目的の深さを維持する様に連続的に供給する。この場合、気密室内には、酸素による単量体混合物の重合阻害を防止するため、窒素等の不活性ガスを連続的に供給することが好ましい。当該ベルトは単量体混合物水溶液と共に連続的に移動し、固定された光源の下に単量体混合物水溶液が供給される。単量体混合物水溶液は、当該光源から上記光透過性材料を経て照射される光により重合させる。
【0061】
図1及び図2にポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を連続重合方法により製造する装置の一例を示し、より詳細に説明する。
【0062】
図1において、1は連続可動式樹脂ベルトで、ローラ2、3間に張設され、矢印Q方向に回転移動している。前記樹脂ベルト1は、可撓性を有する樹脂により形成されている。具体的には、ポリエステル等の繊維で編んだベルト基体に4・6フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂等をラミネート又はコーティングしたものが例示される。
【0063】
樹脂ベルト1はその中央側に長手方向に沿って液溜め部100を有するもので、前記液溜め部100は幅方向断面が凹状を有すれば、種々の形状のものが使用可能であり、特に図2に示すような幅方向断面が舟型のものが好ましい。液溜め部100の高さHとしては、液深+20mmの高さが好ましく、70〜220mmがより好ましい。樹脂ベルトの幅方向断面が確実に凹状に保たれるように、樹脂ベルトの長手方向に沿ってガイド板を設け(図示せず)、樹脂ベルトの縁部を支持するようにしてもよい。
【0064】
図1において、4は前記樹脂ベルト1の進行方向に沿って配設された断面ロ字状の気密室で、前記ベルト1は気密室4を貫通して通り抜けている。また前記気密室4の上面5は波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されており、気密室4の上方に備えられた複数の光源7a、7bから照射される光を透過できるようになっている。
【0065】
該気密室4には酸素による重合阻害を防止するため、及び重合時に発生する水蒸気を排除するため、窒素等の不活性ガスが供給される。図1及び図2は、気密室に不活性ガスを供給した例を示している。
【0066】
8は気密室4の一方の側面に形成されたガス供給部で、窒素ガス等の不活性ガスはガスライン(図示せず)を通って前記気密室4の一方の側面に形成されたガス供給部8から前記気密室4内に供給され、気密室4内を不活性ガスで充満させた後、気密室4の他方の側面(前記ガス供給部8と反対側側面)に設けられた排出口9を通って気密室4外に放出される。
【0067】
不活性ガスの供給条件としては0.5〜40m3/hrが好ましい。また、排出口9は排気装置(図示せず)と連結することが好ましい。このように連結することにより、水蒸気を効率的に排除できる。
【0068】
図1中、10は水溶液タンクで、その内部に収納された単量体混合物の水溶液11はミキサー13に送られ、重合開始剤タンク12から送られる光重合開始剤と混合された後、供給管14を通って樹脂ベルト1の移動方向上流側の液溜め部100内に供給され、単量体混合物の水溶液層15を形成する。この際、単量体混合物の水溶液の供給量は、前記単量体混合物の水溶液層15の液深が目的とする深さになるように調節される。本態様によれば、好ましくは5mm以上、より好ましくは10〜200mmの液深を有する単量体混合物の水溶液の重合が可能になる。
【0069】
樹脂ベルト1上に供給された単量体混合物の水溶液は、ベルト1の移動に伴われて、下流側に搬送されると共に、光源7a、7bによって光照射される。光源としては、通常光重合用光源として用いられる、紫外、可視光線が照射できる市販品が適宜利用できる。
【0070】
このようにして樹脂ベルト1上で重合しながら下流側に搬送される単量体混合物の水溶液層15は、重合が完了した状態で気密室4の最下流部を通って搬出され、ローラ3近傍において樹脂ベルト1から剥離される。なお、16は剥離されて連続的に回収される含水状重合体シートである。製造されたポリ(メタ)アクリル酸部分中和物のシートは、常法に従い、切断、粉砕、乾燥され、粉末製品とすることができる。粉末製品の粉砕の程度は、83メッシュパス程度が好ましい。
【0071】
上記のようにして製造された本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の20℃における0.2重量%水溶液の粘度は、200〜700mPa・s程度であり、好ましくは300〜600mPa・sである。0.2重量%水溶液の粘度が200mPa・s未満であるか、700mPa・sを超える場合は、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を水溶液で使用する場合の作業性が著しく低下する。なお、0.2重量%水溶液の粘度とは、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を水に十分に溶解して粘度が一定となるように溶解開始から24時間放置した後に、(株)東京計器製のBM型粘度計で、20℃、30rpmの条件で測定した値である。
【0072】
さらに、本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、従来のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物と異なり、水溶液とした時の粘度の大幅な変動を生じない点に特徴を有している。具体的には、次のような物性を有している。
(1)ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を15秒撹拌した後の20℃における粘度Aが200〜800mPa・s(好ましくは300〜700mPa・s)の範囲であり、
(2)ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を20分撹拌した後の20℃における粘度Bが200〜800mPa・s(好ましくは300〜700mPa・s)の範囲であり、及び
(3)粘度Aに対する粘度Bの比(B/A)が0.8〜1.2(好ましくは0.85〜1.15)の範囲である。
【0073】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、水溶液とした直後の粘度と一定時間撹拌した後の粘度との差が極めて小さいことが分かる。換言すれば、撹拌時間に影響されることなく該水溶液の粘度はほぼ一定となる。これは、本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、水に対する溶解性や分散性に優れているため速やかに均一な水溶液となるためである。これにより、工業的な取り扱いが容易となり作業性が飛躍的に向上する。
【0074】
従来のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%のグリセリン水溶液では、粘度Aが1000mPa・sを超える場合は、撹拌初期の粘度が増大するなどして作業性が著しく低下していた。しかし、本発明の製造方法により得られるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、0.2重量%水溶液粘度が450〜600mPa・sと比較的高い場合であっても0.2重量%グリセリン水溶液の15秒後の粘度Aは600〜800mPa・sと十分に低く、経時的な粘度変動も少ないため、パップ剤製造メーカーの作業性向上、不良率低減を期待できる。
【0075】
一般に、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の水溶液調製時において、粉ポリマーを水へ投入する方法によって、いわゆる「ままこ」が生じ、一旦、「ままこ」が発生すると長時間放置しようが撹拌強度、撹拌形態を変更しようが「ままこ」が分散することはなく、「ままこ」状態のまま膨潤した高濃度のポリマー凝集物のまま、0.2%水溶液中に存在することになる。
【0076】
上記のごとく、0.2%水溶液といっても局所的に濃度分布が発生しており、調整直後は0.2%水溶液粘度が高粘度の測定値を示すことが多く、局所的に濃度分布が発生するため、粘度の測定精度が低くなる。そのため、上記したように、水溶液にグリセリン6.7重量%を添加してポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の水への均一分散性を向上させて、いわゆる「ままこ」を抑制することにより粘度の測定精度を高めたものである。また、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、その加工工程(例えば、パップ剤製造工程)において、上記した組成のグリセリン及び水の混合溶液に溶解されて使用されることが多いという事実も存在する。この様な理由から、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%、及び水93.1重量%の混合液を基準として粘度を測定することとした。
【0077】
なお、上記の粘度A及びBは、(株)東京計器製のBM型粘度計で、20℃、30rpmの条件で測定した値である。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を最初にグリセリンに投入し、30秒間攪拌後、水を投入し、15秒間攪拌後及び20分撹拌後に(株)東京計器製のBM型粘度計で、20℃、30rpmの条件で測定した値である。
【0078】
また、本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の平均分子量は特に限定されないが、通常100万以上が好ましく、より好ましくは500万以上である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、単に%の記載は重量%を意味する。
【0080】
実施例1
反応槽としてポリプロピレン製トレーに、98%アクリル酸141g、36%アクリル酸ナトリウム482g、純水417gを含む単量体混合物の水溶液を加え、該水溶液の温度を10℃に保持しながら、窒素にて溶存酸素を追い出した。その後、窒素気流下で、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.31g(単量体に対して1000ppm)、2−メルカプトエタノール0.0031g(単量体に対して10ppm)を純水に希釈して1%水溶液とし、これを投入して単量体混合物の水溶液を調製した。
【0081】
次に、放射波長が357〜377nmであり、最大中心波長を365nmとする紫外線を発光する100mW発光ダイオード(日亜化学工業(株)製 商品名:NCCU033E)を28個使用して、厚さ5mmのホウ珪酸ガラス(コーニング社製、商品名:パイレックス)を介して、紫外線照度が0.4mW/cm(ウシオ電機(株)製紫外線照度計 UIT−150(UVD−S365))となるように単量体混合物の水溶液に照射して重合を開始した。
【0082】
照射開始から13分後、重合温度がピークとなった後、300〜450nmを放射する(株)東芝製ブラックライト水銀ランプに切り替え、紫外線照度が6mW/cmで30分照射し含水ゲル状物質を得た。含水ゲル状物質を細断した後、乾燥、粉砕し粉体を得た。
【0083】
得られたポリアクリル酸部分中和物の粘度を次のようにして測定した。測定結果を表1に示す。
【0084】
<0.2%水溶液粘度の測定>
500mlコニカルビーカーに純水399.2gを入れ、ポリアクリル酸部分中和物0.8gを投入し、マグネティックスターラーで2時間攪拌し、0.2重量%水溶液を調整後、攪拌停止し、20℃恒温槽中で24時間放置した。調整液をB型粘度計にて、20℃、30rpmの条件で粘度を測定した。
【0085】
<0.2%グリセリン水分散液溶液粘度の測定>
500mlビーカーにグリセリン10gを入れ、次にポリアクリル酸部分中和物を0.3g投入し30秒間攪拌した。その後、純水140gを投入し、15秒間攪拌し、ポリアクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%、純水93.1重量%の分散液を調製した。調整液をB型粘度計にて、20℃、30rpmの条件で粘度を測定した。
【0086】
その後、ジャーテスターにて150rpmで撹拌を継続し、10分後、20分後にB型粘度計にて、20℃、30rpmの条件で粘度を測定した。
【0087】
<0.2%グリセリン水分散液粘度の経時変化の算出方法>
経時変化=(20分後の粘度/15秒後の粘度)
【0088】
【表1】

【0089】
実施例2
実施例1と同様にして単量体混合物の水溶液を調製した。
【0090】
次に、放射波長が300〜450nmであり、ピーク波長352nmである紫外線を発光する東芝製ブラックライト蛍光ランプを使用して、厚さ5mmのホウ珪酸ガラスを介して、紫外線照度が0.4mW/cmとなるように単量体混合物の水溶液に照射して重合を開始した。
【0091】
重合温度がピークとなった後、放射波長が300〜450nmの東芝製ブラックライト水銀ランプに切り替え、紫外線照度が0.4mW/cmとなるように30分照射し含水ゲル状物質を得た。含水ゲル状物質を粉砕した後、乾燥、粉砕し粉体を得た。
【0092】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
実施例3
実施例1において、最初の露光をピーク波長352nmである300〜450nmを放射する東芝製ブラックライト蛍光ランプに変更した以外は、実施例1と同様の操作をした。その結果、露光開始から18分後、重合温度がピークとなった。
【0095】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表3に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
実施例4
実施例3において、最初の紫外線照度を0.6mW/cmに変更した以外は、実施例3と同様の操作をした。その結果、露光開始から14分後、重合温度がピークとなった。
【0098】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表4に示す。
【0099】
【表4】

【0100】
実施例5
実施例1において、最初の露光をピーク波長360nmである300〜580nmを放射する三菱電機製捕虫用・光化学用蛍光ランプに変更した以外は、実施例1と同様の操作をした。その結果、露光開始から18分後、重合温度がピークとなった。
【0101】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表5に示す。
【0102】
【表5】

【0103】
実施例6
図1に示すようなベルトコンベアのベルト上に、アクリル酸/アクリル酸ナトリウム(50/50mol%、単量体)の30%水溶液、単量体に対して1000ppmの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び単量体に対して10ppmの2−メルカプトエタノールの混合液を、一定速度で連続供給した。該混合液はコンベア上で搬送され、コンベア前半部分では厚み5mmのホウ珪酸ガラス(ショット社製テンパックス)を介して、東芝ライテック製ブラックライト蛍光ランプを使用して0.4mW/cm2の紫外線を照射した。コンベア後半部分には2mW/cm2となるように前半と同様の方式で紫外線を照射した。
【0104】
その結果、コンベア出口部分から連続した厚み18mmの含水ゲル状物質が得られた。含水ゲル状物質を粉砕して後、乾燥、粉砕し粉体を得た。
【0105】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その結果を表6に示す。
【0106】
【表6】

【0107】
比較例1(光重合でソーダガラスを使用)
光透過性材料を5mm強化ガラス(ソーダ石灰ガラス)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアクリル酸部分中和物を製造した。
【0108】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表7に示す。
【0109】
【表7】

【0110】
比較例2(レドックス重合反応を使用)
反応槽としてステンレス製ジュワー瓶に、98%アクリル酸203g、36%アクリル酸ナトリウム694g、純水600gを含む単量体混合物の水溶液を加え、該水溶液の温度を10℃に保持しながら、窒素にて溶存酸素を追い出した。その後、窒素気流下で、t−ブチルハイドロパーオキシド0.0135g、蟻酸ナトリウム0.135g、過硫酸ナトリウム0.0675g、及びエリソルビン酸ナトリウム0.027gを投入し、12時間放置して含水ゲル状物質を得た。その後、含水ゲル状物質を粉砕した後、乾燥、粉砕し粉体を得た。
【0111】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その測定結果を表8に示す。
【0112】
【表8】

【0113】
比較例3
実施例1において、最初の露光を311−312nmの波長の紫外線を選択的に照射するフィリップス製TL20W/01RSに変更し、紫外線照度0.06mW/cm2で照射した。照射開始28分後に重合温度がピークとなった。その後、そのままの紫外線照度で30分間照射を継続し、含水ゲル状物質を得た。含水ゲル状物質を粉砕して後、乾燥、粉砕し粉体を得た。
【0114】
得られたポリアクリル酸部分中和物を実施例1と同様にして測定した。その結果を表9に示す。
【0115】
【表9】

【0116】
以上のように、実施例の0.2%グリセリン水分散液粘度の経時変化は、いずれも0.89以上であり、撹拌時間に影響されることなく該水溶液の粘度はほぼ一定となることが明らかとなった。一方、比較例の0.2%グリセリン水分散液粘度の経時変化は、いずれも0.8を下回り、経時的な粘度変化が大きいことが分かった。
【0117】
従って、実施例のポリアクリル酸部分中和物は、水に対する溶解性や分散性に優れており、作業性が飛躍的に向上することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、水への溶解性や分散性に優れており、水溶液での取り扱いに優れたものである。各種顔料等の分散剤、スケール抑制剤、洗浄用ビルダー、増粘剤、バインダー、医薬用の湿布剤やハップ剤の基剤などに有用であり、種々の分野で多岐にわたって使用される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】図1中の、P−P’線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 樹脂ベルト
2、3 ローラ
4 気密室
5 上面(光透過性材料)
7a、7b 光源
8 不活性ガス供給部
9 ガス排出口
10 水溶液タンク
11 単量体水溶液
12 重合開始剤タンク
13 ミキサー
14 供給管
15 単量体水溶液層
16 含水状ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物層
100 液溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合開始剤の存在下、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液に、紫外線を含む光を照射して該単量体混合物を光重合させてポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する方法であって、光源と該単量体混合物の水溶液の間に、波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料を介在させて光照射することを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の製造方法。
【請求項2】
不活性ガス雰囲気下で前記単量体混合物の水溶液に光照射する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記光透過性材料がホウ珪酸ガラス又は石英ガラスである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
可動式ベルト上で連続的に前記単量体混合物を光重合させる請求項1、2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記光源が発光ダイオード、捕虫器用・光化学用蛍光ランプ、蛍光青色ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ブラックライト蛍光ランプ、ブラックライト水銀ランプ、及びブラックライト電球形蛍光ランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
照射光の波長が357〜377nmの範囲である光源を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により製造されるポリ(メタ)アクリル酸部分中和物。
【請求項8】
(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体を構成単位として含み、下記の物性を有することを特徴とするポリ(メタ)アクリル酸部分中和物:
(1)該ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を15秒撹拌した後の20℃における粘度(A)が200〜800mPa・sの範囲であり、
(2)該ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物0.2重量%、グリセリン6.7重量%及び水93.1重量%の混合液を20分撹拌した後の20℃における粘度(B)が200〜800mPa・sの範囲であり、及び
(3)粘度Aに対する粘度Bの比(B/A)が0.8〜1.2の範囲である。
【請求項9】
ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を製造する装置であって、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液を入れる反応容器、該反応容器を収容する気密室、及び該気密室の外部上方に紫外線を含む光を照射する光源を備え、該気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物を連続的に製造する装置であって、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸塩を含む単量体混合物の水溶液を可動式ベルトに供給する単量体混合物の供給部、該単量体混合物の水溶液を入れる液溜部を有する可動式ベルト、該可動式ベルトの進行方向に沿って配設された光重合を行う気密室、及び該気密室の外部上方に紫外線を含む光を照射する光源を備え、該気密室の上面が波長330〜370nmの範囲の紫外線の透過率が80%以上の光透過性材料で形成されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−37966(P2008−37966A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212476(P2006−212476)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】