説明

ポルトランドセメントを含む組成物用の液体凝結促進剤

本発明は、水性懸濁液の形のポルトランドセメントを含み且つ下記を含むことを特徴とする組成物用の凝結促進剤に関する:
‐少なくとも1種のアルミン酸カルシウム;
‐該アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量に対して0.5〜4質量%、好ましくは0.6〜2.3質量%のアルミナセメントの凝結抑制剤;
‐少なくとも1種の沈降防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結促進用の、アルミン酸カルシウム類をベースとする液体凝結促進剤に関する。
そのような凝結促進剤は、数週間〜数ヶ月の有効期間を有しなければならない。凝結促進剤の有効期間とは、凝結促進剤がスラリー状態(固形生成物の水性懸濁液によって形成された)または単純な機械的攪拌により凝結することなくスラリー状態に戻し得るおおよそ流体のままである期間を意味する。凝結促進剤は、ポルトランドセメントを含む組成物と混合したとき、依然としてその促進特性を有している。
また、本発明は、ポルトランドセメントを含む組成物用の液体凝結促進剤の製造方法にも関する。
最後に、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結促進方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポルトランドセメントを含む組成物の凝結が即使用凝結促進剤を含んだまま正確な時間点で求められる状況は、数多く存在する。そのような例は、とりわけ、街路または道路の車線、舗装道路のような基幹施設の構築またはオーバーホールである。また、電気ケーブルネットワーク、ガス管または水道管のメンテナンスおよび建設も挙げることができる。加工物のオーバーホールは、該加工物の使用者にとっては邪魔である空洞を掘ることも必要である。従って、この空洞内を即急に充填して、上記加工物が作業終了時にできる限り迅速に作動を再開し得るようにすることが必要である。
特許出願EP 0081385号は、凝結期を凝結抑制剤、例えば、ホウ酸によって抑制するアルミナセメントを開示している。該アルミナセメントの凝結は、アルミナセメントの質量に対して0.1〜10質量%範囲の量で存在する再活性化剤、例えば、石灰の該アルミナセメントへの導入によって誘発させている。
従って、特許出願EP 0081385号は、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結促進用のアルミン酸カルシウムをベースとする液体凝結促進剤を提供することを意図していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明は、さらに下記の特性を有するそのような液体凝結促進剤を提供することを意図する:
‐現場での貯蔵および出荷日を操作するために数週間〜数ヶ月間凝結しないこと;
‐例えば重力タッピングによるあるいはポンピングによる現場施行を担保するための、とりわけ輸送中の流体性および分離性の保持;
‐とりわけミキサートラックによって搬送される配合物、とりわけモルタルまたはコンクリート中でのそのポルトランドセメント促進力の保持;
‐必要に応じて、広範囲の色合いにおいて利用し得るさらなる着色機能を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従うポルトランドセメントを含む組成物用の凝結促進剤は、水性懸濁液(一般に“スラリー”と称する)、即ち、おおよそ流体の形にあり、下記を含有する:
‐少なくとも1種のアルミン酸カルシウム;
‐該アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量に対して0.5〜4質量%、好ましくは0.6〜2.3質量%のアルミナセメントの凝結抑制剤;
‐少なくとも1種の沈降防止剤。
また、本発明に従うポルトランドセメントを含む組成物用の凝結促進剤は、分散剤も含む。
一般に、上記水性懸濁液の乾燥抽出物は、およそ60%に達する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
第1の好ましい実施態様によれば、上記凝結抑制剤は、ホウ酸および/または少なくとも1種のホウ酸塩と、クエン酸および/または少なくとも1種のクエン酸塩とを含有し、ホウ酸および/またはホウ酸塩(1種以上)は上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の好ましくは0.4〜3質量%、より良好には0.5〜2質量%を示し、クエン酸および/またはクエン酸塩(1種以上)は上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の好ましくは0.1〜1質量%、より良好には0.1〜0.5質量%を示す。
上記ホウ酸塩(1種以上)は、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウムおよびこれらの混合物から選択し得る。
上記クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムであり得る。
さらに好ましくは、上記凝結抑制剤は、ホウ酸とクエン酸からなる。
ホウ酸とクエン酸は、2つのさらなるメカニズムによる上記凝結促進剤の凝結阻止に寄与する。
ホウ酸は、ホウ酸カルシウムの形成により、水中でのアルミン酸カルシウム(1種以上)の溶解性を著しく抑制するのを可能にする。
クエン酸は、凝結に相応する水和物の大量沈降を遅延させる。また、クエン酸は、副次的作用性、即ち、流動化作用性も有する。
これらメカニズム双方の組合せにより、数ヶ月間スラリー状態のままであるアルミン酸カルシウムの液体凝結促進剤をその促進特性を保持させながら得ることが可能である。
第2の好ましい実施態様によれば、本発明に従う凝結促進剤中に含ませる上記凝結抑制剤は、ホウ酸および/または少なくとも1種のホウ酸塩からなり、ホウ酸および/またはホウ酸塩(1種以上)は上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.5〜4質量%を示す。
事実、ある場合には、上記凝結抑制剤含有量を増大させて上記凝結促進剤に十分な有効期間を確保させることが必要である。しかしながら、同時に、ポルトランドセメントに対する上記凝結促進剤の促進力も保持させなければならない。クエン酸(またはその塩類)はポルトランドセメントの促進に対しては負の作用を有するので、凝結促進剤の有効期間を延長させるためには、クエン酸(またはその塩類)含有量を低減させながら(勿論、削減させることも含めて)、ホウ酸(またはその塩類)含有量を増大させることが好ましい。
ホウ酸含有量を増大させると、上記凝結促進剤の増粘化が一般にもたらされるが、これは、分散剤含有量を増大させながら修正し得る。
【0006】
本発明に従う凝結促進剤をポルトランドセメントを含有する組成物と混合するとき、媒質のpHが上昇し、上記アルミナセメントの凝結抑制剤を作動不能にする。その後、アルミン酸カルシウム(1種以上)の水和反応が何ら補助的な活性化剤を添加することなく解除され、そのとき、本発明に従う凝結促進剤により、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結が生じ得る。
本発明に従う凝結促進剤中に存在する分散剤(1種以上)は、一般に、上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.3〜1.7質量%、好ましくは0.5質量%〜0.9質量%を示す。
本発明に従って使用し得る分散剤としては、BASF社から市販されているSokalan CP 10を挙げることができる。
また、本発明に従って使用し得る分散剤(1種以上)は、超塑剤の中から選択し得る。
超塑剤は、コンクリートの流動性の改善を意図するコンクリートの通常成分である。これらの超塑剤のうちでは、ポリオキシエチレンホスホネート(POE)類、ポリオックス(polyox)ポリカルボキシレート(PCP)類、およびこれらの混合物がとりわけ推奨される。これらの超塑剤は、商業的に入手し得る製品であり;例えば、CHRYSO社から市販されている製品PREMIA
150Rを挙げることができる。
本発明に従う凝結促進剤中に存在する沈降防止剤(1種以上)は、一般に、上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.2〜0.9質量%を示す。
好ましくは、沈降防止剤(1種以上)は、キサンタンガム、ウェランガム、クレー類のような無機製品(例えば、ベントナイト)、およびこれらの混合物の中から選択する。
また、本発明に従う凝結促進剤は抗菌剤も含み、その場合、上記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.2〜0.9質量%を示す。
本発明に従う凝結促進剤中で使用し得る抗菌剤としては、PROGIVEN社から市販されている製品ECOCIDE
K35Rを挙げることができる。
本発明に従う凝結促進剤は、少なくとも1種の着色剤をさらに含有し得る。
本発明に従う凝結促進剤中で使用し得る着色剤(1種以上)は、セメント組成物において一般的に使用される任意のタイプの着色剤であり得る。例えば、ブルーPigmosol 6900またはレッドPigmosol
3855を挙げることができ、これらは、BASF社から市販されている有機着色剤である。
また、有機着色剤よりも着色効果の点でより長期に持続し且つ有効である無機着色剤も使用し得る。即ち、ある種の無機酸化物は、極めて良好な着色剤である。
【0007】
本発明に従う凝結促進剤は、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結を促進させ得る。これらの組成物のうちでは、適切には、ポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントおよび水硬性石灰、並びにポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントまたは水硬性石灰を含むモルタルおよびコンクリートを挙げることができる。
また、本発明は、前記で定義したようなポルトランドセメントを含む組成物用の凝結促進剤の製造方法にも関する。
本発明によれば、この方法は、下記の各工程を含む:
‐水を混合槽に注入する工程;
‐600rpmよりも高い、好ましくは800rpm程度の速度でタービン攪拌する工程;
‐上記アルミナセメントの凝結抑制剤を添加する工程;
‐上記分散剤(1種以上)を添加する工程;
‐上記アルミン酸カルシウム(1種以上)を漸次添加し、その一方で、タービン攪拌を1000rpmよりも高い、好ましくは1400rpm程度の速度に上昇させる工程;
‐上記沈降防止剤(1種以上)を添加する工程;
‐少なくとも15分間、好ましくは30〜40分間タービン攪拌する工程。
攪拌は、好ましくは高剪断作用を生じ得るデフロキュレーション用タービンによって実施する。そのようなタービンは、セメント粒子の良好な機械的分散の確保を可能にする。このことは、一方で上記分散剤による良好な化学デフロキュレーションを、他方で上記沈降防止剤による良好な安定化を確保するのに必要である。
本発明に従う凝結促進剤が1種または数種の着色剤を含む場合、これらの着色剤は、好ましくは、上記沈降防止剤の後に導入させる。
【0008】
最後に、本発明は、ポルトランドセメントを含む組成物に、前記で定義したような凝結促進剤を添加することからなる、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結促進方法に関し、該凝結促進剤はポルトランドセメントに対し10〜40質量%のアルミン酸カルシウムを示し、この量は、ポルトランドセメントに対し17〜67質量%あたりの凝結促進剤水性懸濁液量を表す。
前述したように、ポルトランドセメントを含む組成物とは、適切には、ポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントおよび水硬性石灰、並びにポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントまたは水硬性石灰を含むモルタルおよびコンクリートを意味する。
即ち、ポルトランドセメントに対する上記凝結促進剤含有量は、所定時間内で組成物の所定の機械的強度を得るために変化させ得る。この含有量は、使用するポルトランドセメントの性質およびその鉱物学的組成、とりわけそのC3A含有量に依存する(Cは、セメント表記法において、酸化カルシウムCaOを表し;Aは、セメント表記法において、酸化アルミニウムAl2O3を表す)。
そのような凝結促進方法は、ポルトランドセメント系モルタルにより空洞を充填するのにとりわけ有利であり、この場合、モルタルは、モルタルを空洞近くにもたらす搬送車両の放出オリフィスにおいて利用し得る。そのような場合、操作は、好ましくは、下記のように進行する:
‐上記モルタルからなる第1フラックスを調製し、空洞に向けて移動させる;
‐上記凝結促進剤からなる第2フラックスを調製し、上記第1フラックスに向けて移動させる;
‐上記第1および第2フラックスを融合させて第3フラックスとする;
‐上記第3フラックスを重力により空洞に導入する。
このように、上記凝結促進剤とモルタルとの添加および連続混合は、即使用モルタルの放出後で且つ即凝結性モルタルを空洞内に入れる直前に、搬送車両のミキサー外で実施し得る。
即ち、モルタルはミキサー内では硬化し得ず、モルタルを直に使用しない場合に生じ得る。ミキサーは、ミキサーの内部羽根板に付着しミキサートラックが工場に戻り洗浄される前に硬化するモルタル層によって閉塞され得ることはない。
本発明を、図1〜6を参照しながら、以下の実施例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0009】
凝結促進剤を本発明に従って調製し、その流動性の進展を観察し得る。
各凝結促進剤を下記の方法に従って調製する。
水を混合槽内に導入し、デフロキュレーション用タービンを800rpmの速度で発動させる。
その後、ホウ酸を上記槽に導入する。アルミン酸カルシウム導入前にボレートイオンを可溶化し溶液のpHを固定させることにより、アルミン酸カルシウムの水和を確実に阻止する。
溶液を5分間攪拌し、ホウ酸の完全溶解を確保する。
次いで、クエン酸を導入する。
溶液を再び5分間攪拌する。
その後、Sokalan CP10 (分散剤)を添加し、媒質のデフロキュレーションを可能にする。
溶液を5分間攪拌する。
アルミン酸カルシウムを漸次添加し、その間、タービンの混合速度を1400rpmまで上昇させる。即ち、高回転速度およびデフロキュレーションタービンにより、アルミン酸カルシウムの良好な機械的分散を得る。
次いで、Ecocide K35R (抗菌剤)を添加する。
5分間攪拌する。
次いで、キサンタンガム(沈降防止剤)を添加する。
その後、溶液を30〜40分間混合し、媒質中でのアルミン酸カルシウムの良好な分散を確保し且つキサンタンガムがその沈降防止効果を発生させるようにする。
最後に、必要に応じて、着色剤を添加する。
下記の表1は、各凝結促進剤の組成およびその流動度の進展を示す。
各成分の含有量は、アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の質量%で表している。
流動度は、3つの異なる温度、即ち、5℃、20℃および40℃で測定している。
【0010】
【表1】

***:スラリーが凝結することなくゼリー状になるかまたは沈降する、スラリーはおおよその有意の攪拌後にその製造局面を回復する。
E.S:スラリーの乾燥抽出物;この場合、62%
使用成分:
AB:ホウ酸
AC:クエン酸
XG:KELZAN XG;KELCO社から市販されているキサンタンガム
Bent-G:ベントナイトクレー
CP10:SOKALAN CP 10;BASF社から市販されている分散剤
K35R:Ecocide K35R
Eth:エタノール95%
【0011】
凝結促進剤1〜7は、着色剤を含ませないで調製している。
凝結促進剤8〜13は、着色剤を含ませて調製している:凝結促進剤8〜11はアルミン酸カルシウムに対し12質量%の顔料を含有し、凝結促進剤12および13はアルミン酸カルシウムに対し1.5質量%の顔料を含有している。
‐No. 8:商品名が“vert Irlande”であり、化学質:酸価クロムを有する、Chryso社製の着色剤。
‐No. 9:商品名が“slurry vert Irlande”であり、化学質:酸価クロムを有する、Chryso社製の着色剤。
‐No. 10:商品名が“rouge Pompei”であり、化学質:酸価鉄を有する、Chryso社製の着色剤。
‐No. 11:商品名が“slurry rouge Pompei”であり、化学質:酸価鉄を有する、Chryso社製の着色剤。
‐No. 12:銅フタロシアニン
‐No. 13:ナフトール(Naphtol) AS
【実施例2】
【0012】
貫通強度(penetration strength)試験を、ポルトランドセメントをベースとし、実施例1の凝結促進剤No. 3、11および12を使用して促進させ63日経過の3種の充填モルタルについて実施した。
試験モルタルは、小溝を充填するのに使用するモルタルタイプの再掘削可能なモルタルである。
これらのモルタルは、約2の水/セメント配給量と約15%の水分含有量を示す。
各モルタルの組成を下記の表2に示す。
【0013】
【表2】

すべての実施例において、使用した砂は、“Palvadeau”タイプの珪砂である。
【0014】
貫通強度は、サイズ7×23.5×17 cm (モルタル上を歩いて、2 mmよりも大きい足跡を残すことなく歩行し得る適切な時間点を測定することからなる“足踏み試験”において使用する)および13×34×14 (規格ASTM C403に従う針入度計測定において使用する)の試験片によって測定する。
針入度計は、制御された荷重下での円型モビールの貫通強度の測定を可能にする。モビールを所定深さに貫通するのに加えた荷重量を追跡することによって、材料の組織構造の追跡が可能である。
MARAIS社からフランスにおいて販売され且つ特許FR 2 751 676号に記載されているような連続掘削機により小溝を掘削したとき、現場試験により、小溝内に入れた材料の持ち上がりは、針入度計を使用して測定した貫通強度が170 kPaに達したときに達成されたことが証明されている。
図1は、経時的に製造した3種のモルタルの貫通強度の進展を示す。横座標軸1は分での時間を示し、縱座標軸2は貫通強度(kPaでの)を示している。
曲線3は、凝結促進剤No. 11により促進させたモルタルの強度を示す。
曲線4は、凝結促進剤No. 3により促進させたモルタルの強度を示す。
曲線5は、凝結促進剤No. 12により促進させたモルタルの強度を示す。
図1上の点6は、凝結促進剤を含まないモルタルを示している。
また、図1には、65kg持ち上がりを得るのに達する170 kPa限界もプロットしている(曲線7)。
【実施例3】
【0015】
貫通強度を各種充填モルタルにおいて測定して、ポルトランドセメントにおける凝結促進剤含有量の影響および相C3A含有量の影響を試験する。
各試験モルタルの組成を下記の表3に示す。
【0016】
【表3】

2種のポルトランドセメントを使用する:
‐Frangey工場のCPA CEMI 52.5 CP2 (12% C3A)
‐Teil工場のICPA CEMI 52.5 CP2 (4% C3A)。
各モルタルを実施例1の凝結促進剤No.9により促進させる。
【0017】
図2は、Frangey工場のポルトランドセメントを含む4種のモルタルの時間に対する貫通強度の進展を示す。
横座標軸9は分での時間を示し、縱座標軸10は貫通強度(kPaでの)を示している。
各モルタルは、ポルトランドセメント総質量に対して異なるアルミン酸カルシウム含有量:10質量%、20質量%、30質量%、40質量%によって促進させている。
‐曲線11:10%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 15.2%;
‐曲線12:20%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 17.3%;
‐曲線13:40%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 14.9%;
‐曲線14:30%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 16%;
‐点15:ポルトランドセメント自体;空気含有量 15.4%。
図3は、Teil工場のポルトランドセメントを含む4種のモルタルの時間に対する貫通強度の進展を示す。
横座標軸16は分での時間を示し、縱座標軸17は貫通強度(kPaでの)を示している。
各モルタルは、ポルトランドセメント総質量に対して異なるアルミン酸カルシウム含有量:10質量%、20質量%、30質量%、40質量%によって促進させている。
‐曲線18:10%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 16%;
‐曲線19:20%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 16.7%;
‐曲線20:30%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 14%;
‐曲線21:40%アルミン酸カルシウム;モルタル中の空気含有量 14%;
‐点22:ポルトランドセメント自体;空気含有量 14.8%。
図2および3は、一方での使用するポルトランドセメントに対して、さらに、他方での材料の持ち上がりに関した後に探求した時間遅延に対して機能的な凝結促進剤含有量を推奨し得ることを示している。
【実施例4】
【0018】
充填モルタルの圧縮強度を凝結促進剤含有量に対して測定する。
試験モルタルの組成は、Havre工場のCPA CEMI 52.5 CP2 (8% C3A)による実施例3の表3に示した組成である。
モルタルの凝結は、実施例1の凝結促進剤No.2により促進させている。
圧縮強度は、4×4×16 cmの試験片で測定する。
図4においては、横座標軸23は、ポルトランドセメントの質量に対する質量%でのモルタル中のアルミン酸カルシウム含有量を示す。縱座標軸
24は、モルタルの圧縮強度(MPaでの)を示す。
図4は、ポルトランドセメントの質量に対するアルミン酸カルシウム含有量に対しての1日(曲線25)、7日(曲線26)および28日(曲線27)後のモルタルの機械的圧縮強度を示す。
軸28は、内包空気のパーセントを示す。
図4は、28日後の機械的圧縮強度が小さく、より長期に亘って上記材料の再掘削可能性を担保し得ることを示している。
【実施例5】
【0019】
本実施例は、ホウ酸およびクエン酸遅延剤の有意性を証明することを意図する。
各種アルミネートセメントの導電度を、種々の添加量でのホウ酸(図5)または種々の添加量でのホウ酸およびクエン酸(図6)の存在下に測定する。アルミナセメントは、5に等しい水/セメント比を示す。導電度は、40℃で測定する。
図5においては、横座標軸29は、分での時間を示す。縱座標軸30は、導電度(mSでの)を示す。
曲線31は、アルミナセメント自体の導電度を示す。
曲線32は、0.6質量%のホウ酸の存在下でのアルミナセメントの導電度を示す。
曲線33は、1.8質量%のホウ酸の存在下でのアルミナセメントの導電度を示す。
図6においては、横座標軸34は、分での時間を示す。縱座標軸35は、導電度(mSでの)を示す。
曲線36は、アルミナセメント自体の導電度を示す。
曲線37は、0.6質量%のホウ酸および0.1質量%のクエン酸の存在下でのアルミナセメントの導電度を示す。
曲線38は、1.2質量%のホウ酸および0.2質量%のクエン酸の存在下でのアルミナセメントの導電度を示す。
曲線39は、1.8質量%のホウ酸および0.3質量%のクエン酸の存在下でのアルミナセメントの導電度を示す。
結果は、下記のことを示している:
‐媒質中でのホウ酸の存在は、濃度が増大するときにセメントの溶解性をより大きく抑制している:導電度値は、値に応じて減少に達していた(図5);
‐クエン酸の添加は、凝結に相当する水和物の大量沈降を遅延させる:導電度の低下は、該成分を添加し、その後その含有量を増大させたとき、より遅い期日まで遅延されている。
【実施例6】
【0020】
本実施例は、ホウ酸凝結遅延剤とクエン酸凝結遅延剤の相対的な有意性を証明することを意図する。
凝結促進剤中に添加したある種の着色剤は、凝結抑制剤とアルミン酸カルシウム(1種以上)間の相互作用を阻害する。
例えば、CHRYSO社から標章“OCRA”として市販されている着色剤のような高比面積無機着色剤の存在下においては、凝結促進剤の有効期間は、著しく短縮され得る。
そこで、本実施例は、黄土色無機着色剤“OCRA”で着色した凝結促進剤の有効期限と促進力を比較することを意図する。
3種の促進剤を試験する。各々、87質量%のアルミン酸カルシウムと13質量%の着色剤“OCRA”を含む。これらの促進剤は、82%の乾燥抽出物を有する。
表4は、抑制剤および混合物中での凝結促進剤の組成を示す。
使用する配合量は、実施例1に記載した配合量同じである。
各組成は、アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量に対する質量%で示している。凝結促進剤No. 14およびNo.16は、本発明に従う凝結促進剤である。凝結促進剤No.15は、本発明に従う凝結促進剤ではない。
【0021】
【表4】

各凝結促進剤の促進力を測定するために、3種のモルタルを、凝結促進剤No.14、No.15およびNo.16でそれぞれ促進させ、1週間経過させたポルトランドセメントをベースとして調製した。
各モルタルの組成を下記の表5に示す。
【0022】
【表5】

これらのモルタルは、ポルトランドセメントの質量に対し乾燥抽出物中で20質量%のアルミン酸カルシウムを含有する。
【0023】
結果
図7は、45℃に保った凝結促進剤のpHの時間に対する進展を示す。
横座標軸40は、週数での時間を示す。縱座標軸41は、凝結促進剤のpHを示す。
各凝結促進剤の有効期間は、週毎の直接観察から推定する:有効期間末期を、凝結促進剤が硬くなったときと記録する。
各凝結促進剤のpHも、週毎に測定する。
各凝結促進剤は、pHが9〜9.5の値を越えるときに凝結することに注目し得る。
曲線42は、凝結促進剤No.14のpHを示す。
曲線43は、凝結促進剤No.15のpHを示す。
曲線44は、凝結促進剤No.16のpHを示す。
各凝結促進剤の促進力は、各促進化モルタルの熱曲線を示す図8から推定し得る。熱曲線は、水和反応速度の比較を可能にする。
各モルタルの熱は、各々のモルタル中に、適切にはポリスチレン箱内で半断熱形式に保った直径約8cm、高さ8cmの円筒状カップ内に収容した熱電対を挿入しながら、測定する。
横座標軸45は、分での時間を示す。
縱座標軸 46は、各モルタルの℃での温度を示す。
曲線47は、凝結促進剤No.14によって促進させたモルタルの温度を示す。
曲線48は、凝結促進剤No.15によって促進させたモルタルの温度を示す。
曲線49は、凝結促進剤No.16によって促進させたモルタルの温度を示す。
曲線50は、上述のモルタルと同じ組成のモルタルの温度を示すが、このモルタルは、凝結促進剤によって促進されていない。
【0024】
凝結促進剤No.14の有効期間は2週間に等しいことを観察し得る。
凝結促進剤No.14は実施例1の凝結促進剤No.3に相応し、これには着色剤“OCRA”が添加されていることに注目し得る。依然として、凝結促進剤No.3の有効期間は、9週間よりも長い。
凝結促進剤No.16の有効期間は、22週間である。
ホウ酸およびクエン酸の同時増量並びにCP10(分散剤)の同時増量は、有効期間を著しく延長している:凝結促進剤No.15は、29週間後で常に安定である。
逆に、上記凝結促進剤No.15は、その促進力を喪失している。図8に示すように、凝結促進剤No.15により促進させたモルタルの熱ピークは、200分辺りで、即ち、非促進化モルタルと同じ時間後辺りで始まっているが、これに対し、凝結促進剤No.14により促進させたモルタルの熱ピークは30分辺りで始まっている。
ホウ酸のみを増量しクエン酸を抑制すること(凝結促進剤No.16に相応する)は、凝結促進剤の有効期間の延長とその促進能力の保持を同時に可能にしている。即ち、凝結促進剤No.16は、凝結促進剤No.14における2週間に対して22週間の有効期間を有するが、この促進剤によって促進させたモルタルの熱動力学は、凝結促進剤No.14によって促進させたモルタルの熱動力学と殆んど同一である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】凝結を本発明に従う凝結促進剤によって促進させた種々のモルタルの時間に対しての貫通強度を示す。
【図2】異なる凝結促進剤含有量において凝結を本発明に従う凝結促進剤によって促進させた種々のモルタルの時間に対しての貫通強度を示す。
【図3】異なる凝結促進剤含有量において凝結を本発明に従う凝結促進剤によって促進させた種々のモルタルの時間に対しての貫通強度を示す。
【図4】凝結を本発明に従う凝結促進剤によって促進させたモルタルの、凝結促進剤含有量に対しての1日、7日および28日後の圧縮強度を示す。
【図5】アルミン酸カルシウムの水和に対するホウ酸の効果を示す。
【図6】アルミン酸カルシウムの水和に対するホウ酸およびクエン酸の効果を示す。
【図7】時間に対する種々の凝結促進剤のpHの進展を示す。
【図8】凝結を種々の凝結促進剤によって促進させたモルタルの加熱曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液の形にあり、且つ下記を含むことを特徴とする、ポルトランドセメントを含む組成物用の凝結促進剤:
‐少なくとも1種のアルミン酸カルシウム;
‐該アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量に対して0.5〜4質量%、好ましくは0.6〜2.3質量%のアルミナセメントの凝結抑制剤;
‐少なくとも1種の沈降防止剤。
【請求項2】
少なくとも1種の分散剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の凝結促進剤。
【請求項3】
前記凝結抑制剤がホウ酸および/または少なくとも1種のホウ酸塩と、クエン酸および/または少なくとも1種のクエン酸塩とを含有し、ホウ酸および/またはホウ酸塩(1種以上)が前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の好ましくは0.4〜3質量%、より良好には0.5〜2質量%を示し、クエン酸および/またはクエン酸塩(1種以上)が前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の好ましくは0.1〜1質量%、より良好には0.1〜0.5質量%を示すことを特徴とする、請求項1または2記載の凝結促進剤。
【請求項4】
前記凝結抑制剤がホウ酸および/または少なくとも1種のホウ酸塩からなり、ホウ酸および/またはホウ酸塩(1種以上)が前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.5〜4質量%を示すことを特徴とする。請求項1または2記載の凝結促進剤。
【請求項5】
前記ホウ酸塩(1種以上)がホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウムおよびこれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項3または4記載の凝結促進剤。
【請求項6】
前記凝結抑制剤がホウ酸とクエン酸からなることを特徴とする、請求項3記載の凝結促進剤。
【請求項7】
前記分散剤(1種以上)が前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.3〜1.7質量%、好ましくは0.5〜0.9質量%を示すことを特徴とする、請求項2記載の凝結促進剤。
【請求項8】
前記沈降防止剤(1種以上)が前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の0.2〜0.9質量%を示すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の凝結促進剤。
【請求項9】
前記沈降防止剤(1種以上)がキサンタンガム、ウェランガム、ベントナイトおよびこれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の凝結促進剤。
【請求項10】
前記凝結促進剤が、前記アルミン酸カルシウム(1種以上)の総質量の好ましくは0.2〜0.9質量%を示す抗菌剤を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の凝結促進剤。
【請求項11】
前記凝結促進剤が少なくとも1種の着色剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の凝結促進剤。
【請求項12】
前記ポルトランドセメントを含む組成物が、ポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントおよび水硬性石灰の中から、並びにポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントまたは水硬性石灰を含むモルタルおよびコンクリートの中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の凝結促進剤。
【請求項13】
下記の各工程を含むことを特徴とする、請求項2〜12のいずれか1項記載のポルトランドセメントを含む組成物用の凝結促進剤の製造方法:
‐水を混合槽に注入する工程;
‐600rpmよりも高い、好ましくは800rpm程度の速度でタービン攪拌する工程;
‐前記アルミナセメントの凝結抑制剤を添加する工程;
‐前記分散剤(1種以上)を添加する工程;
‐前記アルミン酸カルシウム(1種以上)を漸次添加し、その一方で、タービン攪拌を1000rpmよりも高い、好ましくは1400rpm程度の速度に上昇させる工程;
‐前記沈降防止剤(1種以上)を添加する工程;
‐少なくとも15分間、好ましくは30〜40分間タービン攪拌する工程。
【請求項14】
攪拌を、高剪断作用を生じ得るデフロキュレーション用タービンによって実施することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記凝結促進剤が1種または数種の着色剤を含む場合、該着色剤(1種以上)を前記沈降防止剤の後に導入することを特徴とする、請求項13および14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ポルトランドセメントを含む組成物に、請求項1〜12のいずれか1項記載の凝結促進剤を添加することからなり、前記凝結促進剤がポルトランドセメントに対し10〜40質量%のアルミン酸カルシウムを示すことを特徴とする、ポルトランドセメントを含む組成物の凝結促進方法。
【請求項17】
前記ポルトランドセメントを含む組成物が、ポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントおよび水硬性石灰の中から、並びにポルトランドセメント、スラグセメント、ポゾランセメントまたは水硬性石灰を含むモルタルおよびコンクリートの中から選ばれることを特徴とする、請求項16記載の凝結促進方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−512272(P2006−512272A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564335(P2004−564335)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/FR2003/050212
【国際公開番号】WO2004/060828
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505242873)
【Fターム(参考)】