説明

ポンプ及びその補強外装

【課題】フロントケーシングの十分な補強を可能とし、ポンプ室の密閉性を向上させる。
【解決手段】第2の分割外装24は、吐出口22のリア側側面を覆うもので、吐出口22のリア側側面を覆う半円筒部24aおよびフランジ24bからなる。半円筒部24aには、その端部24fに、フロントケーシング本体20の側面に沿う湾曲部24eが形成され、半円筒部24aの外周面にポンプハウジング3の端面が当接する突条24gが形成されている。また、フランジ24bには吐出口22のフランジ22aのリア側が嵌入する溝24cが形成されている。更に、第2の分割外装24の半円筒部24aの内面と溝24cとの接続部の特に両端の部分は、面取り24dがなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のケーシングを金属製の補強外装で補強した遠心式渦巻きポンプ等のポンプ及びその補強外装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、遠心式渦巻きポンプとして、ポンプ室内の従動マグネットを埋設した従動回転体を、ポンプ室外部の駆動マグネットからの磁界の作用によって回転させ、従動回転体の一端に取り付けられたインペラを回転させるマグネットポンプが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなマグネットポンプでは、腐食性液体の移送を可能にするため、接液部となるポンプ室を形成するフロントケーシングおよびリアケーシングに合成樹脂が用いられることがある。しかし、合成樹脂製のケーシングは強度的に十分でないため、従来は金属製の補強外装を外装することにより、ケーシングを補強するようにしている。
【0004】
図13は、従来のフロントケーシングの補強外装を示す分解斜視図、図14は、フロントケーシングに補強外装を外装した状態の一部切断した側面図である。
【0005】
合成樹脂製のフロントケーシング30は、円筒状のフロントケーシング本体31と、このフロントケーシング本体31の軸方向のフロント側に同軸形成された円筒状の吸入口32と、フロントケーシング本体31の側面に形成された円筒状の吐出口33とを一体形成してなる。フロントケーシング本体31は、内部に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室31aを形成し、リア側の縁部に拡径部31bを形成したものである。拡径部31bの内側には、Oリング5が装着される。また、吸入口32の先端部にはフランジ32aが形成されている。吐出口33は、ポンプ室31a内部の渦流の接線方向に延びるように中心からずれた位置に形成され、先端部にフランジ33aを形成してなる。
【0006】
一方、フロントケーシング30に外装される金属製の補強外装40は、通常、鋳物で形成されるが、上述のようにフロントケーシング30が複雑な形状をしているため、フロントケーシング30に外装される補強外装40は、分割形成されて分割装着される。もし吐出口33がフロントケーシング30の上部中央に位置していれば、補強外装40は、左右2分割で良いが、上述のように吐出口33が中心からずれた位置に形成される構造上、2分割にすると、アンダーカット部31cの補強が不可能になる。このため、補強外装40は、吸入口32のフランジ32aよりも大径の孔41aが形成されてフロントケーシング本体31および吐出口33のフロント側側面を覆う第1の分割外装41と、吐出口33のリア側側面を覆う第2の分割外装42と、吸入口32の一方の側の側面を覆う半円筒形の第3の分割外装43Aと、この分割外装43Aと同一部品にて形成され、吸入口32の他方の側面を覆う半円筒形の第4の分割外装43Bと、に分割されている。
【0007】
そして、これら4つの分割外装41,42,43A,43Bをフロントケーシング30に外装する際には、まず、第1の分割外装41を、フランジ32aが孔41aから突出するようにフロントケーシング本体31のフロント側から装着し、次に第3および第4の分割外装43A,43Bを吸入口32の両側面側から挟み込むようにして装着する。そして、第2の分割外装42を吐出口33のリア側側面に装着する。
【特許文献1】特開2004−285909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した4分割外装41,42,43A,43Bによる補強外装40を用いたポンプでは、第1の分割外装41のリア側縁部がフロントケーシング30の拡径部31bの端面に当接することで、拡径部31bの内側に装着されたOリング5を介したリアケーシング35を押圧し、これにより所望のシール性能を確保している。しかし、拡径部31bのうち吐出口33のリア側部分については、構造上、第1の分割外装41のリア側の縁部が存在しないため、この部分でのOリング5の押圧が不十分になり、外力や内力によりフロントケーシング30が変形してシール性能が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、従来は、図10に示すように、吐出口33のリア側に位置するフロントケーシング30の拡径部31bに円弧状の補強板34をインサートモールド成形により埋め込むことにより、この部分を補強することがなされている。
【0010】
しかし、このように樹脂成形品に金属の補強板34をインサートモールドすると、金型のコストが高くなると共に、成形時の収縮差によりいわゆる「ひけ」や変形を生じ、フロントケーシング30の形成上の不具合が発生するという問題がある。また、絶縁性の高い樹脂のケーシングに局所的に導体が配置されると電触が発生するという問題もある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、合成樹脂のフロントケーシングに金属をインサートモールドすることなく、フロントケーシングの十分な補強が可能なポンプおよびその補強ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1のポンプは、軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングと、前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装、および前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装から構成され、前記フロントケーシングに外装されて前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装とを備え、前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、前記フランジのリア側裏面および前記第2の分割外装の前記フランジのリア側裏面に対応する部分の近傍の少なくとも一方に、前記第2の分割外装の前記フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するための面取りが形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る第1のポンプの補強外装は、軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングを備えたポンプの前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装であって、前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装と、前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装とから構成され、前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、前記フランジのリア側裏面に対応する部分の近傍に、前記第2の分割外装の前記フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するための面取りが形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る第2のポンプは、軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングと、前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装、および前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装から構成され、前記フロントケーシングに外装されて前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装であって、を備え、前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、前記第2の分割外装は、ポンプの側面側より前記吐出口の側面に装着され、リア側に略90度回転されることにより前記吐出口のリア側側面に外装され、前記吐出口の基端側を覆う端部が、フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するため面取り加工されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る第2のポンプの補強外装は、軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングを備えたポンプの前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装であって、前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装と、前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装とから構成され、前記第2の分割外装は、ポンプの側面側より前記吐出口の側面に装着され、リア側に略90度回転されることにより前記吐出口のリア側側面に外装され、前記吐出口の基端側を覆う端部が、フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するため面取り加工されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吐出口のフランジのリア側の裏面および第2の分割外装の前記フランジのリア側裏面に対応する部分の近傍の少なくとも一方に、第2の分割外装のフロントケーシングへの装着時の干渉を防止するための面取りが形成されているので、第2の分割外装を傾けて、外装の端部を吐出口と拡径部の端面との間の溝に差し込んだ状態で第2の分割外装を吐出口の側面に装着することができる。これにより、第2の分割外装の端部が、フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で吐出口のリア側側面に外装されるので、合成樹脂のフロントケーシングに金属をインサートモールドすることなく、フロントケーシングの十分な補強が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマグネットポンプを示す全体斜視図である。また、図2は、図1のA−A’断面図である。
【0018】
このマグネットポンプ100は、駆動モータ1と、この駆動モータ1の回転軸2を内部に収納する円筒状のポンプハウジング3と、このポンプハウジング3の内側面のフロント側に接合されたリアケーシング4と、このリアケーシング4のフロント側端部においてOリング(又は、他のシール部材でも良い)5を介して接合するフロントケーシング6と、フロントケーシング6を外側面から補強する補強外装7とを備えて構成されている。
【0019】
リアケーシング4とフロントケーシング6の間には、両部材4、6及びOリング5によって密閉された空間が形成され、この空間は環状のポンプ室8を構成する。リアケーシング4のリア側端面の半径方向中心には、スピンドル9の一端が固定接続されている。スピンドル9は、中心軸X−X’に沿ってポンプ室8の途中まで貫通するように配置され、フロントケーシング6の内側面に一体形成された保持部材6aによって他端を固定接続されている。
【0020】
固定されたスピンドル9の軸方向中心部の外周には、円筒形の従動回転体11が軸受け14を介して回転自在に支持されている。この従動回転体11には、軸受け14の外周を囲むように環状の従動マグネット10が埋設されている。また、従属回転体11には、フロント側端面においてインペラ12が固定接続されている。
【0021】
ポンプハウジング3内部には、リアケーシング4の外周と対向する位置に環状の駆動回転体13が回転軸2に保持されて回転可能に配置されている。この駆動回転体13は、回転軸2と一体になって回転する。駆動回転体13には、リアケーシング4を介して従動マグネット10の外周と対向するように、環状の駆動マグネット15が備えられている。また、フロントケーシング6は、中心軸X−X’方向のフロント側端面に吸入口21を備え、側面方向上方に吐出口22を備えて構成されている。
【0022】
以下に、フロントケーシング部分の細部の構造について図3〜図8を用いて説明する。
【0023】
図3(a)は、フロント側から見たフロントケーシング部を示す全体斜視図であり、図3(b)は、リア側から見たフロントケーシング部を示す全体斜視図である。図4は、フロントケーシング部の分解斜視図である。図5は、図3のB−B’矢指図である。また、図6(a)は、フロントケーシングの正面図であり、図6(b)は、図6(a)のC−C’断面図である。図7(a)は、第2の分割外装のフロント側から見た斜視図であり、図7(b)は、第2の分割外装のリア側から見た斜視図である。図8は、第2の分割外装のフロントケーシングへの装着時を示す一部を切り欠いた全体斜視図である。
【0024】
図3に示すように、フロントケーシング部は、フロントケーシング6と、フロントケーシング6を外側から補強する補強外装7とを備えて構成されている。フロントケーシング6は合成樹脂製で、円筒状のフロントケーシング本体20と、このフロントケーシング本体20の軸方向のフロント側の端面20cに同軸形成された円筒状の吸入口21と、フロントケーシング本体20の側面に形成された円筒状の吐出口22とを一体形成してなる。フロントケーシング本体20は、内部に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室8を形成し、リア側の縁部に拡径部20dを形成したものである。拡径部20dの内側20eには、Oリング5が装着される。また、吸入口21の先端部にはフランジ21aが形成されている。吐出口22は、ポンプ室8の内部の渦流の接線方向に延びるように中心からずれた位置に形成され、基端側に比べて先端側が徐々に拡径し、先端部にフランジ22aを形成してなる。フランジ22aの裏面には、図6に示すように、リア側に中央の幅dを除いて約半周にわたる溝22bが形成されている。
【0025】
一方、フロントケーシング6に外装される金属製の補強外装7は、アルミダイカスト等を用いて鋳鉄にて形成される。補強外装7は、第1〜第4の分割外装23,24,25A,25Bと、これらを相互に結合する図示しないボルトから構成されている。
【0026】
第1の分割外装23は、有底円筒状で端面23bに吸入口21のフランジ21aよりも大径の孔23cが形成されてフロントケーシング本体20を覆う本体23aと、この本体23aの側面の吐出口22に対応する位置に形成されて吐出口22のフロント側側面を覆う半円筒部23dおよびフランジ23eからなる。なお、フランジ23eには吐出口22のフランジ22aのフロント側が嵌入する溝23fが形成されている。
【0027】
第2の分割外装24は、吐出口22のリア側側面を覆うもので、吐出口22のリア側側面を覆う半円筒部24aおよびフランジ24bからなる。半円筒部24aには、その端部24fに、フロントケーシング本体20の側面に沿う湾曲部24eが形成され、半円筒部24aの外周面にポンプハウジング3の端面が当接する突条24gが形成されている。また、フランジ24bには吐出口22のフランジ22aのリア側が嵌入する溝24cが形成されている。更に、第2の分割外装24の半円筒部24aの内面と溝24cとの接続部の特に両端の部分は、面取り24dがなされている。
【0028】
第3の分割外装25Aと第4の分割外装25Bとは、同型の金属部品からなり、吸入口21に、その側面を両側から挟み込むように装着される。これら分割外装25A,25Bは、半円筒部25aと、そのフロント側に形成されたフランジ25bと、半円筒部25aのリア側に形成されたフランジ25cとを有する。フランジ25bには、吸入口21のフランジ21aが嵌入する溝25dが形成されている。フランジ25cは、第1の分割外装23の端面23bにボルト等によって結合される。
【0029】
このように構成された補強外装7をフロントケーシング6に外装する際には、まず、第1の分割外装23を、フランジ21aが孔23cから突出するようにフロントケーシング本体20のフロント側から装着し、図示しないボルトでフロントケーシング本体20に固定し、次いで、第3および第4の分割外装25A,25Bを吸入口21の両側面側から挟み込むようにして両者をボルト等で固定すると共に、分割外装25A,25Bと分割外装23とをボルト等で固定する。次に、第2の分割外装24を吐出口22のリア側側面に装着する。その際、図8に示すように、第2の分割外装24を角度θだけ開き、先端24fを、フロントケーシング本体20の拡径部20dのフロント側端面20fと吐出口22の基端との間の隙間に挿入したのち、第2の分割外装24を起こして、第1の分割外装23との間で吐出口22を挟み込み、両分割外装23,24をボルトなどで結合する。
【0030】
このように、第2の分割外装24は、その上部をリア側に角度θだけ傾けた状態で、フランジ22aの裏面とフランジ24bの上面とが接するようにしてフロントケーシング6に嵌め込まれる。本発明に係るマグネットポンプでは、この接触するフランジ22a及び24bの部分にそれぞれ溝部22b、面取り部24dを形成することで、両部材が干渉し合うことなく角度θを大きくとって第2の分割外装24をフロントケーシング6に嵌め込むことができる。このように角度θを大きくとることによって、第2の補強外装24の湾曲部24eの先端24fを従来の形状より下方に延ばすことが可能となる。更に、湾曲部24eの先端24fを延ばしたことにより、図5に示すように、拡径部20dのフロント側端面20fと吐出口22との間のスペースに先端24fが嵌め込まれ、フロントケーシング6とリアケーシング4を密着させる際に端面20fに加わる軸方向の応力を半円筒部24aの先端24fによって支えることができる。これにより、補強板の使用なしにフロントケーシングを十分に補強することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、フランジ22a、24bの両方に溝部22b及び面取り部24dを形成したが、第2の補強外装24のフロントケーシング6への装着時の干渉が回避できれば、いずれか一方のみを形成するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係るポンプのフロントケーシング部を示す分解斜視図である。
【0032】
第2の実施形態の特徴は、第2の分割外装の装着方法にある。第1の実施形態では、第2の分割外装24は、フロントケーシング6に第1、3及び4の分割外装を装着した後、θだけ上方を傾けた状態でリア側からフロントケーシング6に装着したが(図8)、第2の実施形態では、はじめにフロントケーシング6に第2の分割外装24Aを装着した後(図9)、第1、3及び4の順に分割外装を装着する。この際、第2の分割外装24Aは、ポンプの側面側から吐出口22の側面に装着され、吐出口22の外周に沿ってリア側に略90度(図12)回転されるようにして吐出口22のリア側に配される。なお、第1の実施形態との構成上の違いは、吐出口22のフランジ22a裏に第1の実施形態における面取り部22bが形成されていない点と、第2の分割外装の形状のみであり、他の構成については同一符号を付すことによりその説明を省略する。以下、第2の補強外装の形状について説明する。
【0033】
図10は、第2の実施形態に係るポンプの第2の分割外装をフロント側から見た斜視図であり、図11は、第2の分割外装をリア側から見た斜視図である。
【0034】
第2の分割外装24Aは、第1の実施形態と同様に、吐出口22のリア側側面を覆う半円筒部24Aaおよびフランジ24Abからなる。半円筒部24Aaには、フロントケーシング本体20の側面に沿う湾曲部24Aeが形成され、半円筒部24Aaの外周面にポンプハウジング3の端面が当接する突条24Agが形成されている。第2の実施形態の第1の特徴は、半円筒部24Aaの先端部24Afから反対の後端側にかけて、その厚さが次第に薄くなるように面取り部24Ahが形成されている点である。また、第2の特徴は、フランジ24Abの内周には、第1の実施形態における面取り24dが形成されていない点である。
【0035】
このように構成された第2の分割外装24Aは、他の分割外装23、25A、25Bが装着される前に、ポンプの回転軸方向外周側から吐出口22に装着され、吐出口22の外周に沿って半時計回りに略90度回転される。そのため、第2の分割外装24Aは、第1の分割外装23と干渉することなくフロントケーシング6に装着される。これにより、第1の実施形態において第2の補強外装24とフロントケーシング6への装着時の干渉を回避するために形成された両部材の面取り24d及び面取り部22bの加工を省くことができる。また、第2の分割外装24Aには、半円筒部24Aaの先端部24Afから反対の後端側にかけて形成された面取り部24Ahが施されているため、図12に示すように、拡径部20dとフランジ22との間において第2の分割外装24Aと各部材との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマグネットポンプを示す全体斜視図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るポンプのフロントケーシング部を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係るポンプのフロントケーシング部の分解斜視図である。
【図5】図3のB−B’矢指図である。
【図6】第1の実施形態に係るポンプのフロントケーシングを示す図である。
【図7】第1の実施形態に係るポンプの第2の分割外装のリア側から見た斜視図である。
【図8】第1の実施形態に係るポンプの第2の分割外装のフロントケーシングへの装着時を示す一部を切り欠いた全体斜視図である。
【図9】第2の実施形態に係るポンプのフロントケーシング部を示す分解斜視図である。
【図10】第2の実施形態に係るポンプの第2の分割外装をフロント側から見た斜視図である。
【図11】第2の実施形態に係るポンプの第2の分割外装をリア側から見た斜視図である。
【図12】第2の実施形態に係るポンプの第2の分割外装を装着する様子を上部から見た図である。
【図13】従来のポンプにおけるフロントケーシングの補強外装を示す分解斜視図である。
【図14】従来のポンプにおけるフロントケーシングに補強外装を外装した状態の一部断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…マグネットポンプ、2…回転軸、3…ポンプハウジング、4…リアケーシング、5…Oリング、6,30…フロントケーシング、7,40…補強外装、8…ポンプ室、9…スピンドル、10…従動マグネット、11…従動回転体、12…インペラ、13…駆動回転体、14…軸受け、15…駆動マグネット、20,31…フロントケーシング本体、21,32…吸入口、22,33…吐出口、23,41…第1の分割補強外装、24,42…第2の分割外装、25,43…第3及び第4の分割外装。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングと、
前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装、および前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装から構成され、前記フロントケーシングに外装されて前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装とを備え、
前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、
前記フランジのリア側裏面および前記第2の分割外装の前記フランジのリア側裏面に対応する部分の近傍の少なくとも一方に、前記第2の分割外装の前記フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するための面取りが形成されている
ことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングを備えたポンプの前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装であって、
前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装と、
前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装とから構成され、
前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、前記フランジのリア側裏面に対応する部分の近傍に、前記第2の分割外装の前記フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するための面取りが形成されている
ことを特徴とするポンプの補強外装。
【請求項3】
軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングと、
前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装、および前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装から構成され、前記フロントケーシングに外装されて前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装とを備え、
前記第2の分割外装は、前記吐出口の基端側を覆う端部が、前記フロントケーシング本体の拡径部のフロント側端面に当接した状態で前記吐出口のリア側側面に外装されるものであり、
前記第2の分割外装は、ポンプの側面側より前記吐出口の側面に装着され、リア側に略90度回転されることにより前記吐出口のリア側側面に外装され、
前記吐出口の基端側を覆う端部が、フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するため面取り加工されている
ことを特徴とするポンプ。
【請求項4】
軸方向の一端をフロント側、他端をリア側とし、内側に移送流体の渦流を発生させる環状のポンプ室を形成し、前記リア側が開放されてその開放端の縁部に拡径部が形成されると共に、この拡径部の内側にシール部材収容部が形成された円筒状のフロントケーシング本体、このフロントケーシング本体の前記フロント側に同軸形成されて前記ポンプ室内に前記移送流体を導入する円筒状の吸入口、および前記フロントケーシング本体の側面に形成され、前記ポンプ室内の移送流体の渦流の接線方向に伸びる、先端にフランジが形成された吐出口、を一体形成してなる合成樹脂製のフロントケーシングを備えたポンプの前記フロントケーシングを補強する金属製の補強外装であって、
前記フロントケーシング本体および前記吐出口のフロント側側面を覆う第1の分割外装と、
前記吐出口のリア側側面を覆う第2の分割外装とから構成され、
前記第2の分割外装は、ポンプの側面側より前記吐出口の側面に装着され、リア側に略90度回転されることにより前記吐出口のリア側側面に外装され、
前記吐出口の基端側を覆う端部が、フロントケーシングへの装着時の干渉を防止するため面取り加工されている
ことを特徴とするポンプの補強外装。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate