ポンプ装置とパワーステアリング装置およびハウジングの組立方法
【課題】ポンプボディに形成された第1駆動軸挿通孔とポンプカバーに形成された第2駆動軸挿通孔との同軸性を向上させる。
【解決手段】ポンプカバー49側に向けてそれぞれ突出する第1,第2位置決めピン59,60をポンプボディ46に圧入固定する一方、それらの第1,第2位置決めピン59,60に嵌合する第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54をポンプカバー49の外周面52に形成する。そして、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aを第1,第2位置決めピン59,60に対して当接させることでポンプボディ46とポンプカバー49とを位置決める寄せ組みを、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工時とその共加工後の再組立時とで同様の条件で行う。
【解決手段】ポンプカバー49側に向けてそれぞれ突出する第1,第2位置決めピン59,60をポンプボディ46に圧入固定する一方、それらの第1,第2位置決めピン59,60に嵌合する第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54をポンプカバー49の外周面52に形成する。そして、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aを第1,第2位置決めピン59,60に対して当接させることでポンプボディ46とポンプカバー49とを位置決める寄せ組みを、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工時とその共加工後の再組立時とで同様の条件で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置とパワーステアリング装置およびハウジングの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、パワーステアリング装置用のポンプ装置では、円環状のカムリングをポンプボディとカバー部材との間に複数のボルトによって共締め固定し、上記カムリングの内周側にポンプ要素を収容するとともに、そのポンプ要素を回転駆動する駆動軸を上記ポンプボディとカバー部材とにそれぞれ形成された駆動軸挿通孔に挿入し、その駆動軸をいわゆる両持ち支持の形態をもって回転自在に支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−149868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、上記ポンプボディとカバー部材とにそれぞれ形成された駆動軸挿通孔の同軸性が上記駆動軸の傾きに影響することになるが、上記両駆動軸挿通孔の孔位置の誤差や上記ポンプボディとカバー部材との組付誤差によって上記両駆動軸挿通孔が位置ずれしてしまう虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、特に、一対のハウジング部材間に上記ポンプ要素のような内蔵物を収容する場合に、それら両ハウジング部材にそれぞれ形成した上記両駆動軸挿通孔のような加工部同士の相対位置精度を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1〜4に記載の発明は、第1,第2ハウジング部材がポンプ要素を収容しつつ結合手段によって互いに結合されているとともに、上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ軸方向に沿って形成された第1,第2駆動軸挿通孔に、上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置されたポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸が挿通配置されたポンプ装置またはそのポンプ装置を有するパワーステアリング装置であることを前提としている。
【0007】
その上で、上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1ハウジング部材から上記第2ハウジング部材側に向けて突出する第1,第2位置決め突部と上記第2ハウジング部材に形成された第1,第2当接部とを当接させることにより、上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴としている。
【0008】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明をポンプ装置には限定しないハウジングの組立方法として捉えたものであって、第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とに上記第1,第2駆動軸挿通孔の如き第1,第2加工部を形成する加工工程を、上記ポンプ要素の如き内蔵物の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1ハウジング部材側から上記第2ハウジング部材側に向けて突出する第1,第2位置決め突部と上記第2ハウジング部材に形成された第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めした状態で行うとともに、その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材を一旦分離した上で上記内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材を再度組み立てる第2組立工程において、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2被当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記ポンプ要素または上記内蔵物の収容を伴う上記第1,第2ハウジング部材の組立時において、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接により、上記第1,第2駆動軸挿通孔または上記第1,第2加工部の加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を略再現することができるから、上記第1,第2駆動軸挿通孔または上記第1,第2加工部の相対位置精度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態として油圧式パワーステアリング装置のシステム構成を示す図。
【図2】図1に示すモータ・ポンプユニットの軸方向に沿った断面図。
【図3】図2に示すポンプ装置の分解斜視図。
【図4】図2に示すポンプ装置の軸方向に沿った断面図。
【図5】図2に示すポンプ装置の正面図。
【図6】図2に示すポンプ装置の組立手順を示すフローチャート。
【図7】図2に示すポンプ要素およびポンプ駆動軸を収容せずにポンプハウジングを組み立てた状態を示す図であって、図5の仮想線AOCに沿った断面に相当する図。
【図8】図7に示すポンプハウジングの正面図。
【図9】図7に示すポンプハウジングを機械加工装置のワーク保持具に装着した状態を示す図。
【図10】同図(a),(b)ともに第1の実施の形態における第1ポンプカバー側位置決め溝の変形例を示す図。
【図11】第1の実施の形態におけるハウジングの組立方法の変形例を示す図。
【図12】同図(a)は本発明の第2の実施の形態として本発明に係るハウジングの組立方法が適用される機器を示す図、同図(b)は本発明の第3の実施の形態として本発明に係るハウジングの組立方法が適用される同図(a)とは別の機器を示す図。
【図13】本発明の第4の実施の形態として本発明に係るポンプ装置を適用したフォークリフトを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態として油圧式パワーステアリング装置を示すシステム構成図である。
【0012】
図1に示すパワーステアリング装置1は、一端側がステアリングホイールSWと一体回転可能に連係され、そのステアリングホイールSWを介して運転者から入力された操舵トルクに基づいて回転するステアリングシャフト2と、そのステアリングシャフト2に設けられて運転者の操舵トルクを検出するトルクセンサTSと、ステアリングシャフト2の回転運動をラック軸3の軸線方向の運動に変換するラック&ピニオン機構4と、そのラック&ピニオン機構4と転舵輪5a,5bとの間に介装され、その内部に隔成された一対の圧力室6a,6bに作用する油圧によってステアリングホイールSWから入力された操舵トルクをアシストするパワーシリンダ6と、トルクセンサTSの出力に基づいてパワーシリンダ6の一対の圧力室6a,6bに油圧を給排するモータ・ポンプユニット7と、から主として構成されている。
【0013】
ラック&ピニオン機構4は、ステアリングシャフト2の一端に形成されたピニオン部2aとそのピニオン部2aにほぼ直交するように配置されるラック軸3とが噛合してなり、ラック軸3が軸線方向へ移動することにより転舵輪5a,5bの向きが変更されるようになっている。なお、図示は省略しているが、ラック軸3のうち軸方向の所定範囲にはステアリングシャフト2のピニオン部2aと噛み合うラック歯が形成されているとともに、ラック軸3の両端部は周知のタイロッドおよびナックルを介して転舵輪5a,5bに連係されている。
【0014】
パワーシリンダ6は、ほぼ円筒状に形成されたシリンダチューブ6cにピストンロッドとしてのラック軸3が軸方向に沿って貫装されたものであって、ラック軸3の外周に嵌着されたピストン6dにより、第1圧力室6aと第2圧力室6bとがシリンダチューブ6c内に隔成されている。そして、第1圧力室P1はモータ・ポンプユニット7の第1吸入吐出口7aに第1配管8を介して接続されている一方、第2圧力室P2はモータ・ポンプユニット7の第2吸入吐出口7bに第2配管9を介して接続されている。なお、第1、第2配管8,9の一部は可撓性を有する樹脂配管8a,9aにより形成されていて、これにより、配管レイアウト性を向上させつつ、モータ・ポンプユニット7側の油圧脈動を吸収するようになっている。
【0015】
モータ・ポンプユニット7は、図1に示すように、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bへと選択的に油圧を供給する可逆式のポンプ装置10と、そのポンプ装置10を介して循環する作動油を貯留するリザーバタンク11と、ポンプ装置10を駆動する3相交流式の電動モータ12と、その電動モータ12を駆動制御するコントロールユニット13と、を備えている。
【0016】
そして、運転者が操舵操作を行うと、図1に示すトルクセンサTSからのトルク信号のほか、図示外のイグニッションスイッチからのスイッチ信号、同じく図示外の車速センサからの車速信号等に基づいてコントロールユニット13が電動モータ12を駆動制御し、ポンプ装置10の第1,第2吸入吐出口7a,7bから本発明の作動液である作動油を給排することになる。その結果、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bへ選択的に作動油が給排され、運転者から入力された操舵トルクに応じた操舵アシスト力が発生することになる。
【0017】
図1に示すように、ポンプ装置10は、当該ポンプ装置10のポンプ作用を司るポンプ作動部14と、そのポンプ作動部14の第1,第2吸入吐出ポート14a,14bと第1,第2吸入吐出口7a,7bとをそれぞれ接続する第1,第2油路15a,15bと、を備えていて、第1,第2油路15a,15bの途中には、下流側の端部がリザーバタンク11に連通した第1、第2ドレン油路16a,16bがそれぞれ接続されている。
【0018】
第1,第2ドレン油路16a、16bは、第1,第2油路15a,15b間の差圧に応じて動作する制御バルブ17によって開閉されるようになっているとともに、第1,第2ドレン油路16a,16bのうち制御バルブ17よりも下流側の位置には、リザーバタンク11側への流れのみを許容するリリーフバルブ20が設けられている。つまり、第1,第2ドレン油路16a,16bは、制御バルブ17とリリーフバルブ20とを介してリザーバタンク11に接続されている。
【0019】
制御バルブ17は、第1,第2ドレン油路16a,16bにそれぞれ連通する摺動孔18cと、その摺動孔18cの軸方向両側に形成され、第1,第2油路15a,15bにそれぞれ連通する第1,第2弁孔18a,18bと、第1,第2弁孔18a,18b内に軸方向で摺動自在にそれぞれ設けられ、両ドレン油路16a,16bを開閉する第1,第2弁体19a,19bと、摺動孔18c内に軸方向で摺動自在に設けられ、第1,第2油路15a,15b間の差圧に基づいて両弁体19a、19bを選択的に開閉操作するピストン19cと、を備えている。
【0020】
そして、制御バルブ17は、第1,第2弁体19a,19bがコイルスプリングのばね力によって閉弁方向(ピストン19c側)へ付勢された常閉型のものであって、ポンプ装置10の非作動時には第1,第2弁体19a,19bが第1,第2ドレン通路16a,16bをそれぞれ閉止するようになっている。
【0021】
一方、ポンプ9の作動によって第1油路15aが第2油路15bよりも高圧になった場合、ピストン19cがコイルスプリングのばね力に抗して第2弁体19bを開弁方向に押圧する。これにより、第2油路15bとリザーバタンク11とがリリーフバルブ20を介して連通する。なお、このとき第1弁体19aは閉弁し、第1油路15aとリザーバタンク11との制御バルブ17を通じた連通は遮断される。
【0022】
他方、ポンプ9の作動によって第2油路15bが第1油路15aよりも高圧になった場合、ピストン19cがコイルスプリングのばね力に抗して第1弁体19aを開弁方向に押圧する。これにより、第1油路15aとリザーバタンク11とがリリーフバルブ20を介して連通する。なお、このとき第2弁体19bは閉弁し、第2油路15bとリザーバタンク11との制御バルブ17を通じた連通は遮断される。
【0023】
このように、制御バルブ17が第1,第2油路15a,15b間の差圧に応じて第1,第2ドレン油路16a,16bを選択的に開閉することにより、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bのうち低圧側となる圧力室における作動油の排出性を向上させて速やかに圧力低下を図るようになっている。
【0024】
また、第1,第2油路15a,15bのうち第1,第2ドレン油路16a,16bに対する接続部よりもポンプ作動部14側の部分は、第1,第2補給油路21a,21bを介してリザーバタンク11にそれぞれ接続されている。これらの第1,第2補給油路21a,21bには、リザーバタンク11から吸入する方向へのみ作動油の通流を許容する第1,第2吸入チェック弁22a,22bがそれぞれ設けられており、これらの第1,第2吸入チェック弁22a,22bにより、リザーバタンク11への作動油の逆流を防止しつつ、第1,第2油路15a,15bにおける作動油の不足分をリザーバタンク11から補給するようになっている。
【0025】
さらに、第1,第2油路15a,15bの間には、フェールセーフ機構23が設けられている。このフェールセーフ機構23は、第1,第2油路15a,15b間を連通する連通油路24と、その連通油路24のほぼ中央位置に設けられた接続部25とリザーバタンク11とを連通する第3ドレン油路26と、その第3ドレン油路26に設けられ、コントロールユニット13からの指令に基づいて開閉動作する常開型の電磁切換弁27と、連通油路24のうち接続部25を挟んで両側にそれぞれ設けられ、接続部25側へ向かう方向にのみ作動油の通流を許容する第1,第2逆止弁28a,28bとを備えている。
【0026】
電磁切換弁27は、コントロールユニット13からの指令によって通常時においては閉弁される一方、フェイル時、すなわちシステム失陥時には開弁され、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6b間で作動油を移動可能にするようになっている。これにより、万が一のフェイル時においても運転者の操舵力によるいわゆるマニュアルステアを可能にしている。
【0027】
また、図2に示すように、モータ・ポンプユニット7は、ポンプ装置10を挟んで軸方向一方側にリザーバタンク11を配置するとともに、ポンプ装置10を挟んで軸方向他方側に電動モータ12とコントロールユニット13とからなるポンプ駆動装置PDを配置することで構成されている。
【0028】
ポンプ駆動装置PDのハウジング29は、当該ハウジング29を軸方向に貫通するように形成され、ロータ31付きのモータ駆動軸30およびステータ32を収容するモータ駆動軸収容穴35と、当該ハウジング29のうちポンプ装置10側の軸方向一端面にモータ駆動軸収容穴35の外周側を取り囲むように凹設された制御基板収容凹部36と、を備え、これらがアルミダイキャストによって一体に成形されている。
【0029】
そして、ロータ31付きのモータ駆動軸30とステータ32とをモータ駆動軸収容穴35内に収容しつつ、そのモータ駆動軸収容孔35のうち後述するロータ収容部35a側の開口を略有蓋円筒状のモータカバー34によって閉蓋することで電動モータ12が構成されている一方、制御基板収容凹部36内に制御基板39を収容しつつ、その制御基板収容凹部36の開口をコントロールユニットカバー40をもって閉塞することでコントロールユニット13が構成されている。すなわち、電動モータ12とコントロールユニット13とでハウジング29を共有することで両者12,13がポンプ駆動装置PDとして一体化されている。これにより、両者12,13を接続する手間を省いて組立作業性や生産性の向上を図っている。
【0030】
モータ駆動軸収容穴35は、軸方向他端側(反ポンプ装置10側)に向かって開口するように形成された比較的大径なロータ収容部35aと、そのロータ収容部35aから制御基板収容凹部36を貫通するように延設され、ロータ収容部35aよりも小径な第1軸受収容部35bと、を備えている。そして、このモータ駆動軸収容孔35と制御基板収容凹部36との間には、第1軸受収容部35bの周壁となる電動モータ側位置決め突部としての筒状部29aと、ロータ収容部35aと軸受収容部35bとの間に形成された段状壁部29bと、からなる隔壁Wが形成されている。
【0031】
モータカバー34は、薄板を略有蓋円筒状に折曲形成してなるものであって、当該モータカバー34の開口端縁に形成されたフランジ部34aが、ハウジング29のうちロータ収容部35aの開口端面にモータカバー取付ボルト37によって取付固定されている。
【0032】
そして、モータ駆動軸30に外挿されつつ図示外のキー等によって回り止めが施された円筒状のロータ31と、このロータ31の外周側に所定の径方向隙間を介して非接触状態に配置された円筒状のステータ32とが、モータカバー34の内部空間とハウジング29側のロータ収容部35aとに跨って収容されている。
【0033】
また、モータカバー34のうち天蓋部34bのほぼ中央位置には、モータハウジング29側に向かって凹となるエンボス状の第2軸受収容部34cが形成されていて、その第2軸受収容部34cに収容保持された第2ボールベアリングBB2と、モータハウジング29側の第1軸受収容部35bに収容保持された第1ボールベアリングBB1とにより、モータ駆動軸30の両端部が回転自在に支持されている。なお、モータハウジング29の第1軸受収容部35bのうち第1ボールベアリングBB1よりもポンプ装置10側の部分には、筒状部29aの内周面とモータ駆動軸30の外周面との間をシールするモータ側シール部材S1が収容されているとともに、モータ駆動軸30のうち第1ボールベアリングBB1とロータ31との間の軸方向中間部には、そのモータ駆動軸30の回転角を検出するレゾルバ33が配設されている。
【0034】
さらに、モータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部の長さは、筒状部29aの軸方向のほぼ全域にわたって延在するような長さ、つまり筒状部29aのうちポンプ装置10側の端部近傍まで延出するような長さに設定されていて、当該モータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部が筒状部29aとともに制御基板収容凹部36を貫通している。そして、このモータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部には、当該モータ駆動軸30の軸心を通る偏平状の接続部30aが形成され、この接続部30aが軸継手38に嵌挿されることによって両者30,38が接続されている。なお、軸継手38はいわゆるオルダム継手である。
【0035】
一方、コントロールユニット13の制御基板39は、電動モータ12を駆動制御するための種々の回路を有しており、段状壁部29bに形成された第1,第2貫通孔29c,29dを通じてステータコイル32bおよびレゾルバ33との電気的な接続がなされている。
【0036】
また、コントロールユニットカバー40の開口端縁にはフランジ部40aが形成されており、モータハウジング29のうち制御基板収容凹部36の開口端面にそのフランジ部40aが重合しつつ、その開口端面に対してコントロールユニットカバー取付ボルト41によって固定されている。さらに、コントロールユニットカバー40の底壁部40bには貫通孔40cが貫通形成されていて、モータハウジング29の筒状部29aがその貫通孔40cを挿通してコントロールユニットカバー40の外部へ突出している。
【0037】
他方、ポンプ装置10はいわゆる内接歯車ポンプであって、回転に伴い作動油の吸入・吐出を行う内蔵物としてのポンプ要素42と、そのポンプ要素42を収容する本発明のハウジングとしてのポンプハウジング43と、軸継手38を介してモータ駆動軸30に接続され、そのモータ駆動軸30から伝達されるトルクによってポンプ要素42を回転駆動するポンプ駆動軸44と、から主として構成されている。そして、ポンプハウジング43の外周面にはリザーバタンク11の一端が嵌着され、ポンプ装置10の一部がリザーバタンク11内の作動油に潜没している。
【0038】
リザーバタンク11は、ポンプ装置10の一部を収容する第1円筒部11aと、その第1円筒部11aに連通しつつ当該第1円筒部11aから上方に向けて延びる第2円筒部11bと、を備えている。なお、第2円筒部11bのうち天蓋部11cのほぼ中央部には作動油を注入するための円筒開口部11dが形成されていて、その円筒開口部11dには着脱可能なキャップ11eが装着されている。
【0039】
そして、リザーバタンク11のうち第1円筒部11aの開口端縁に形成されたフランジ部11fが、ポンプハウジング43のうち後述するポンプボディ46に対してリザーバタンク取付ボルト69によって取付固定されている。
【0040】
図3〜5は図2に示すポンプ装置10を単体で示す図であって、そのうち図3はポンプ装置10の分解斜視図、図4はポンプ装置10の軸方向に沿った断面図、図5はポンプ装置10の正面図である。
【0041】
図3,4に示すように、ポンプ要素42は、ポンプ駆動軸44の外周に回り止めとしてのピン45をもって相対回転不能に固定され、外周面に外歯が形成されたインナーロータ42aと、ポンプハウジング43内においてインナーロータ42aの外周側に回転可能に収容配置され、インナーロータ42aの外歯に噛合する内歯が内周面に形成された円環状のアウターロータ42bと、により構成されている。
【0042】
周知のように、インナーロータ42aの外歯とアウターロータ42bの内歯は互いに等しいピッチで形成されているとともに、アウターロータ42bの内歯はインナーロータ42aの外歯よりも歯数が一枚多く設定されていて、これらのインナーロータ42aとアウターロータ42bとが偏心しつつ周方向の一部で噛み合うことで、インナーロータ42aの外歯とアウターロータ42bの内歯との間に大きさ及び形状の異なるポンプ室42cが周方向で複数形成されている。
【0043】
そして、ポンプ駆動軸44が電動モータ12から伝達されたトルクをもってポンプ要素42を回転駆動することにより、各ポンプ室42cが容積を増減させながら周回移動し、後述する第1,第2吸入吐出ポート14a,14bの一方を介して作動油を吸入するとともに、この吸入した作動油を加圧して第1,第2吸入吐出ポート14a,14bの他方から吐出するようになっている。つまり、ポンプ要素42と第1,第2吸入吐出ポート14a,14bとをもって上述したポンプ作動部14(図1参照)が構成されている。
【0044】
ポンプハウジング43は、いわゆるアルミダイカストをもって型成形され、コントロールユニットカバー40の外面と当接して突き合わせ状態に配置される本発明の第1ハウジング部材としてのポンプボディ46と、いわゆるアルミダイカストをもって略偏平円柱状に型成形され、ポンプボディ46の反コントロールユニットカバー40側に本発明の第2ハウジング部材として対向配置されるポンプカバー49と、いわゆる粉末冶金法によって円環状に型成形され、ポンプボディ46とポンプカバー49とにより挟持状態に保持固定されるアルミ合金製のカムリング55と、を備えている。
【0045】
ポンプボディ46は、コントロールユニットカバー40に着座しつつそのコントロールユニットカバー40に図示外のボルトをもって固定される略偏平ブロック状の基部46aと、その基部46aからポンプカバー49側に向けて突出し、外周面にリザーバタンク11が嵌着される略偏平円柱状の円形突部46bと、その円形突部46bの軸心に沿って貫通形成された第1駆動軸挿通孔48と、を備えている。
【0046】
図3に示すように、ポンプボディ46の内側面47(円形突部46bの先端面)には、ポンプ要素42の各ポンプ室42cに対応する径方向位置において、周方向に沿って延びる三日月状にそれぞれ形成された第1,第2吸入吐出ポート14a,14bが第1駆動軸挿通孔48に対して略対称に設けられている一方、基部46aの外側部には、第1,第2吸入吐出ポート14a,14bに連通する第1,第2吸入吐出口7a,7bが開口形成されている。そして、これらの第1,第2吸入吐出口7a,7bが、図1に示した第1,第2配管8,9を介して同じく図1に示したパワーシリンダ6に接続されることになる。
【0047】
図4に示すように、第1駆動軸挿通孔48は略段付き丸穴形状のものであって、当該第1駆動軸挿通孔48のうち円形突部46b側の端部に形成され、ポンプ駆動軸44を支持するための第1ニードルベアリングNB1を収容する第1軸受収容部48aと、当該第1駆動軸挿通孔48の軸方向中間部に第1軸受収容部48aよりも大径に形成され、ポンプ駆動軸44との間をシールするためのポンプ側シール部材S2を収容するシール収容部48bと、当該第1駆動軸挿通孔48のうち基部46a側の端部にシール部材収容部48bよりもさらに大径に形成され、基部46aの底面に開口してモータ制御装置MC側の筒状部29aを受容する位置決め孔としての大径部48cと、を有している。
【0048】
他方、ポンプカバー49の中心部には、ポンプ装置10の軸心方向に沿う略段付き丸穴形状の第2駆動軸挿通孔50がポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48と略同一軸心上に貫通形成されている。そして、第2駆動軸挿通孔50のうちポンプボディ46側に向けて開口する拡径状の第2軸受収容部50aには第2ニードルベアリングNB2が収容配置され、その第2ニードルベアリングNB2とポンプボディ46側の第1ニードルベアリングNB1とにより、ポンプ駆動軸44を回転自在に支持している。すなわち、ポンプ駆動軸44は、ポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48とポンプカバー49側の第2駆動軸挿通孔50とに跨って挿通配置されつつ、当該ポンプ駆動軸44のうちポンプ要素42を挟んで両側の位置を第1,第2ニードルベアリングNB1,NB2によっていわゆる両持ち状態で回転自在に支持されている。そのため、第1駆動軸挿通孔48のうち第1軸受収容部48aの内周面と第2駆動軸挿通孔50のうち第2軸受収容部50aの内周面は、両者48a,50aの同軸性を確保すべく、ポンプボディ46とポンプカバー49とを組み立てた状態で予め共加工されている。
【0049】
そして、図2に示すように、モータハウジング29側の筒状部29aの先端をポンプボディ46のうち第1駆動軸挿通孔48の大径部48cに受容することにより、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30とが径方向で相対位置決めされているとともに、ポンプ駆動軸44のうちポンプボディ46側の端部には当該ポンプ駆動軸44の軸心を通る偏平状の接続部44aが形成されていて、その接続部44aが筒状部29a内で軸継手38に嵌挿されている。これにより、ポンプ駆動軸44が軸継手38を介してモータ駆動軸30に接続されている。なお、第1駆動軸挿通孔48のうち大径部48cの内周面は、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性を確保すべく、第1軸受収容部48aおよび第2軸受収容部50aの内周面とともに共加工されている。
【0050】
また、上述したようにポンプボディ46とポンプカバー49はアルミダイカストによってそれぞれ型成形されたものであるが、図4に示すように、ポンプボディ46とポンプカバー49のうち互いに対向するそれぞれの内側面47,51は、ポンプ装置10の作動時にインナーロータ42aとアウターロータ42bの軸方向両端面が微小なサイドクリアランスを介して摺動することになるため、そのサイドクリアランスの精度を確保すべく、両内側面47,51には型成形後の仕上げ加工として機械加工が施されている。
【0051】
そして、図4のほか図5に示すように、ポンプカバー49とカムリング55の外径は、ポンプボディ46の内側面47の外径よりも小さく設定されていて、ポンプボディ46の内側面47のうち内周側の部分がポンプ要素摺動面47aとしてポンプハウジング43内のポンプ要素42に近接対峙している一方、ポンプボディ46の内側面47のうち外周側の部分は、第1,第2駆動軸挿通孔48,50を後述するように共加工するときの基準となる段状の機械加工基準面47bとしてポンプハウジング43の外部に臨んでいる。つまり、比較的高い平面度が要求されることになるポンプ要素摺動面47aと機械加工基準面47bとを同一平面上に設定し、両者47a,47bを同時に機械加工できるようにすることで、ポンプ装置10の生産性の低下を抑制しつつも、機械加工基準面47bをポンプ要素摺動面47aと同等の精度をもって形成可能にし、且つポンプ要素摺動面47aと機械加工基準面47bとの平行度を確保している。
【0052】
さらに、図3に示すように、ポンプボディ46の内側面47には第1,第2ピン挿入孔47d,47eがそれぞれ穿設され、本発明における第1,第2位置決め突部としてポンプボディ46からポンプカバー49側に向けてそれぞれ突出する円柱状の第1,第2位置決めピン59,60が第1,第2ピン挿入孔47d,47eにそれぞれ強固に圧入固定されている。
【0053】
第1,第2位置決めピン59,60は、図5に示す正面視において、ポンプカバー49の外周面52と同等の径方向位置で、且つポンプ駆動軸44に対して非対称になるように周方向で互いにオフセットした位置にそれぞれ配設されている。具体的には、第1位置決めピン59の軸心と第2駆動軸挿通孔50の軸心Oとを通る仮想線AOBが第1位置決めピン59とは反対側でポンプカバー49の外周面と交わる位置P1から、図5の時計回り方向で所定の角度θ1だけオフセットした位置に第2位置決めピン60を配設している。
【0054】
他方、ポンプカバー49の外周面52のうち第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ対応する周方向位置には、第1,第2位置決めピン59,60の直径よりも若干幅広な断面略U字状であって且つポンプカバー49のうち軸方向の全域に亘って延びる第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54がそれぞれ形成されている。また、カムリング55の外周面56にも同様に、第1,第2カムリング側位置決め溝57,58がそれぞれ形成されている(図3参照)。これらの第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54および第1,第2カムリング側位置決め溝57,58は、それらの外壁面53a,54a,57a,58aの全域が上述した型成形後の機械加工によって形成されたものである。
【0055】
そして、図3,5に示すように、各位置決め溝53,54,57,58と第1,第2位置決めピン59,60との嵌合により、ポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55の三者がポンプ駆動軸44に軸直角な方向、すなわちポンプボディ46の径方向で相互に相対位置決めされた状態で、本発明の結合手段である6本のハウジング締結ボルト61a〜61fによって三者46,49,55がいわゆる共締め状態で相互に固定されている。具体的には、各ハウジング締結ボルト61a〜61fは、ポンプカバー49およびカムリング55に周方向で等ピッチにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通しつつ、ポンプボディ46の内側面47に開口形成された複数のねじ孔47cにそれぞれ螺合している。なお、図示は省略しているが、ポンプカバー49およびカムリング55にそれぞれ形成された各ボルト挿通孔は、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの軸部よりも大径に形成されていて、それらの各ボルト挿通孔と各ハウジング締結ボルト61a〜61fの軸部との間には径方向の隙間が形成されるようになっている。
【0056】
ここで、上述したように、ポンプボディ46とポンプカバー49のうち互いに対向するそれぞれの内側面47,51は、ポンプ装置10の作動時にインナーロータ42aとアウターロータ42bのそれぞれの軸方向両端面が微小なサイドクリアランスを介して摺動することになるため、その摺動抵抗を低減してポンプ装置10の機械効率を向上させるとともに、操舵方向に応じて正逆回転することになるポンプ装置10の吐出特性を正転時と逆転時とで均一なものとする上では、ポンプボディ46およびポンプカバー49の両内側面47,51に対するポンプ駆動軸44の直角度を高めることが望ましい。
【0057】
そして、ポンプ駆動軸44はポンプボディ46とポンプカバー49とによっていわゆる両持ち状態で支持されていることから、このポンプ駆動軸44の上記直角度を高めるためには、上述したように第1駆動軸挿通孔48の第1軸受収容部48aと第2駆動軸挿通孔50の第2軸受収容部50aとを共加工した後の再組立時に、ポンプボディ46側の第1軸受収容部48aの軸心とポンプカバー49側の第2軸受収容部50aの軸心とが略一致するように、ポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めしつつポンプハウジング43を組み立てる必要がある。
【0058】
しかしながら、ポンプボディ46とポンプカバー49との位置決めを司る第1,第2位置決めピン59,60と第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54との間にはクリアランスが存在するため、第1,第2軸受収容部48a,50aの軸心同士がそのクリアランス分ずれた状態でポンプハウジング43が組み立てられてしまい、ポンプ駆動軸44の直角度が低下する虞がある。なお、第1,第2位置決めピン59,60および第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54をそれぞれ極めて高精度に形成することで、第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性を向上させることも可能ではあるが、この場合には生産性が著しく低下してコストが高騰してしまうことになり、好ましくない。
【0059】
そこで、本実施の形態では、図5に拡大して示すように、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54に第1,第2位置決めピン59,60がそれぞれ嵌合するようにポンプボディ46とポンプカバー49とを組み合わせつつ、図5に示す付勢力Fをポンプカバー49に付与することで当該ポンプカバー49をポンプボディ46に対して付勢力Fの方向で偏倚させ、その状態で各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプボディ46とポンプカバー49とを結合する、いわゆる寄せ組みを行っている。付勢力Fの方向は、図5に示す正面視において、ポンプカバー49の外周面52のうち上述した位置P1に対して反第2位置決めピン60側へ所定角度θ2だけオフセットした位置P2から第2駆動軸挿通孔50の軸心Oに向かう方向、換言すれば仮想線AOBに対して所定角度θ2だけ傾斜した方向に設定している。
【0060】
これにより、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが第1,第2位置決めピン59,60の円筒外周面59a,60aに付勢力Fの方向で当接し、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が一義的に定まっている。詳細には、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが、ポンプカバー49とポンプボディ46との接離方向に直角な当接方向であるポンプボディ46の径方向において、第1位置決めピン59に内側から当接することにより、ポンプカバー49がポンプボディ46に対して径方向で相対位置決めされている。一方で、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aが、第1位置決めピン59を中心としたポンプカバー49の揺動方向で第2位置決めピン60に当接することにより、その揺動方向でポンプカバー49とポンプボディ46とが相対位置決めされている。
【0061】
すなわち、ポンプハウジング43を組み立てる際には、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を収容せずにポンプハウジング43を組み立てた状態で第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工が行われた後、そのポンプハウジング43を一旦分解し、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けをともなう再組立を行うことになるが、共加工後の再組立時に共加工前の組立時と同様の条件でポンプハウジング43を寄せ組みすることにより、共加工時におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係を略再現するようにしている。
【0062】
以下、このポンプハウジング43の組立方法について図6〜9を参照しつつ説明する。図6〜9のうち図6はポンプハウジング43の組立手順を示すフローチャート、図7はポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を収容せずにポンプハウジング43を組み立てた状態を示す図であって、図5の仮想線AOCに沿った断面に相当する図、図8は図7に示すポンプハウジング43の正面図、図9は図7に示すポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具に装着した状態を示す図である。
【0063】
ポンプハウジング43は図6のフローチャートに示す手順で組み立てる。すなわち、まず図7に示すように、ポンプボディ46に予め圧入固定された第1,第2位置決めピン59,60に第1,第2カムリング側位置決め溝57,58を遊嵌状態で嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてポンプボディ46の内側面47にカムリング55を載置する。その上で、第1,第2位置決めピン59,60に第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を遊嵌状態で嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてカムリング55にポンプカバー49を載置して仮組み状態とする(ステップS1)。
【0064】
次いで、図8に示すように、図示外の固定治具によってポンプボディ46を固定しつつ、押圧治具62によってポンプカバー49を押圧し、ポンプボディ46とポンプカバー49とを径方向で相対位置決めする(ステップS2)。
【0065】
押圧治具62は、図示外の駆動手段をもってポンプカバー49の外周面52に対する接離方向で進退動作する治具本体63と、その治具本体63の先端に長手方向中間部が揺動可能に連結された押圧アーム64と、その押圧アーム64の長手方向両端部にそれぞれ設けられた一対の押圧ローラ65a,65bと、を備えている。
【0066】
そして、ポンプカバー49の外周面52のうち上述した位置P2を挟んで両側に押圧治具62の両押圧ローラ65a,65bを当接させ、その押圧治具62を図示外の駆動手段によってポンプハウジング43の径方向内側に向けて駆動することにより、ポンプカバー49に付勢力Fを与える。なお、このとき、両押圧ローラ65a,65bは、ポンプカバー49の外周面のうち第1,第2位置決めピン59,60と径方向でオーバーラップする軸方向領域A1(図7参照)に当接させるものとする。これにより、押圧治具62の付勢力をもってポンプカバー49がカムリング55から浮き上がるように傾動してしまうことを防止し、ポンプハウジング46とポンプカバー49とをより確実に位置決めできるようになる。
【0067】
このようにポンプカバー49を押圧すると、まず、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが第1位置決めピン59の円筒外周面59aに突き当たり、ポンプカバー49がポンプボディ46に対して径方向、すなわち仮想線AOBの方向で相対位置決めされる。その上で、その状態からポンプカバー49が付勢力Fによってさらに押圧されると、図8中に矢印Mで示すモーメントが発生してポンプカバー49が第1位置決めピン59を中心として揺動し、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aが第2位置決めピン60の円筒外周面60aに突き当たり、その揺動の方向でポンプカバー49がポンプボディ46に対して相対位置決めされることになる。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が一義的に定まる。なお、ポンプカバー49が第1位置決めピン59を中心として揺動するときには、そのポンプカバー49に追従して押圧治具62の押圧アーム64も揺動することになる。
【0068】
このように第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ当接した状態では、第2位置決め溝54の外壁面54aは、第1,第2位置決めピン59,60を結ぶD−D線に直交する方向に付勢力Fを分解した分力F1により、第2位置決めピン60に当接することになる。この分力F1は、第2位置決めピン60が上述した位置P1から図8の時計回り方向、すなわち第1位置決めピン59を中心としたポンプカバー49の揺動方向へオフセットした位置に設けられていることから、第2位置決めピン60を上述した位置P1に設けた場合の分力F2よりも大きいものとなる。これにより、第2位置決め溝54の外壁面54aと第2位置決めピン60との当接が強まり、ポンプボディ46とポンプカバー49とがより確実に相対位置決めされることになる。なお、第1,第2位置決めピン59,60はポンプボディ46に対して強固に圧入固定されているものであるから、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが強く当接しても第1,第2位置決めピン59,60が傾動してしまうようなことはない。
【0069】
そして、このようにポンプカバー49とポンプボディ46とを相対位置決めしたならば、押圧治具62による付勢力Fをポンプカバー49に与えた状態で、図5に示す各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプカバー49とポンプボディ46のほかカムリング55を結合し、その後に押圧治具62をポンプカバー49の外周面52から離間させる(ステップS3)。
【0070】
ここで、各ハウジング締結ボルト61a〜61fを締め付けると、それらの各ハウジング締結ボルト61a〜61fを中心とした揺動方向にポンプカバー49が共回りし、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が変化してしまう虞がある。そのため、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aと第1,第2位置決めピン59,60との当接を強める方向に締め付けトルクを作用させるべく、各ハウジング締結ボルト61a〜61fのうち図5に示す正面視で仮想線AOCよりも右側に位置する第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのいずれかを最初に締め付けるものとする。なお、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの締め付けトルクは、後述する再組立時と同等のものとし、その再組立時と同等の変形をポンプハウジング43に与える。
【0071】
より具体的には、図5に示すように、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cと第1,第2位置決めピン59,60との間の距離、すなわちボルト締め付け時に第1,第2位置決めピン59,60に作用するトルクの腕の長さを考慮し、最初に締め付けるボルトを第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうちから必要に応じて選択すればよい。例えば、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち第2位置決めピン60から最も離間した第1ハウジング締結ボルト61aを最初に締め付けるものとすると、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aと第2位置決めピン60との当接を特に強めることができる一方で、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち第1位置決めピン59から最も離間した第3ハウジング締結ボルト61cを最初に締め付けるものとすると、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aと第1位置決めピン59との当接を特に強めることができる。他方、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち周方向の中間に位置する第2ハウジング締結ボルト61bを最初に締め付けることとすると、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aと第1,第2位置決めピン59,60との当接をバランスよく強めることができ、ポンプボディ46とポンプカバー49とをさらに確実に位置決めできるようになる。
【0072】
以上のように、本発明の第1組立工程としてステップS1〜S3でポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴わずにポンプハウジング43を組み立てたならば、本発明の共加工工程としてポンプボディ46およびポンプカバー49に共加工を施す(ステップS4)。
【0073】
具体的には図9に示すように、まず、ポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具66に装着する。ワーク保持具66は、ポンプハウジング43の機械加工基準面47bが着座する着座面67aが形成された保持具本体67と、その保持具本体67の着座面67aに対して接近・離間動作可能な複数の保持爪68と、を備えていて、保持具本体67の着座面67aにポンプボディ43の機械加工基準面47bを着座させつつ、その着座面67aと各保持爪68との間にポンプボディ46を挟持する。これにより、ポンプハウジング43が機械加工基準面47bを基準としてワーク保持具66に位置決め保持される。
【0074】
そして、図9に矢印Eで示すように、保持具本体67の着座面67aに対する面直角方向で例えば図示外のバイトや砥石等の共加工具をポンプボディ46の第1駆動軸挿通孔48からポンプハウジング43内に挿入し、第1,第2軸受収容部48a,50aの内周面の共加工を行うとともに、その共加工の後に、いわゆるワンチャック状態で大径部48cの内周面に機械加工を施す。これにより、第1,第2軸受収容部48a,50aが略同軸上に形成されるのに加え、それらの第1,第2軸受収容部48a,50aと略同軸上に大径部48cが形成されることになる。また、第1,第2軸受収容部48a,50aおよび大径部48cの機械加工を機械加工基準面47bを基準として行っていることから、第1,第2軸受収容部48a,50aおよび大径部48cは、機械加工基準面47bと同一平面上に形成されたポンプ要素摺動面47aに対して略面直角に形成されることになる。なお、ここでいうワンチャック状態とは、ポンプハウジング43がワーク保持具66から取り外されることなくそのワーク保持具66に継続して保持された状態で、第1,第2軸受収容部48a,50aの共加工と大径部48cの機械加工とが行われることを意味している。
【0075】
このようにしてポンプボディ46とポンプカバー49とを共加工したならば、本発明の分解工程として、ポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具66から取り外した上で、各ハウジング締結ボルト61a〜61fによるポンプハウジング43の結合状態を解除し、ポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55を一旦分離するとともに、三者46,49,55をそれぞれ洗浄または清掃し、切りくず等を取り除く(ステップS5)。
【0076】
その後に、本発明の第2組立工程として、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴うポンプハウジング43の再組立を行う。
【0077】
具体的には、まず、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を内部に収容しつつポンプハウジング43を仮組みする(ステップS6)。
【0078】
すなわち、図4に示す第1ニードルベアリングNB1およびポンプ側シール部材S2をポンプボディ46に予め組み付けた上で、カムリング55の第1,第2カムリング側位置決め溝57,58を第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてカムリング55をポンプボディ46の内側面47に載置する。
【0079】
次いで、ピン45によってインナーロータ42aを予め組み付けたポンプ駆動軸44をポンプボディ46の第1駆動軸挿通孔48に内側面47側から挿入し、インナーロータ42aをポンプボディ46の内側面47に着座させるとともに、そのインナーロータ42aの外歯にアウターロータ42bの内歯を噛み合わせつつ、カムリング55とインナーロータ42aの間にアウターロータ42bを挿入する。
【0080】
その上で、第2ニードルベアリングNB2を予め組み付けたポンプカバー49の第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ嵌合させつつ、第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてポンプカバー49をカムリング55上に載置する。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49との間にポンプ要素42が収容されるとともに、第1,第2駆動軸収容孔48,50にポンプ駆動軸44が挿通配置され、ポンプボディ46とポンプカバー49とが第1,第2ニードルベアリングNB1,NB2を介していわゆる両持ち状態でポンプ駆動軸44を回転自在に支持することになる。
【0081】
このようにしてポンプハウジング43を仮組みしたならば、上述したステップS2と同様にしてポンプボディ46とポンプカバー49とを径方向で相対位置決めする(ステップS7)。すなわち、図示外の固定治具をもってポンプボディ46を固定しつつ、ポンプカバー49の外周面のうち上述したステップS2と同様の位置に押圧治具62の両押圧ローラ65a,65bを当接させ、その押圧治具62をもって上述したステップS2と同様の付勢力Fをポンプカバー49を付与する。これにより、ポンプカバー49が上述したステップS2と同様の挙動をもってポンプボディ46に対して相対位置決めされ、上述した共加工時(ステップS4)におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が再現されることになる。その結果、ポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48のうち第1軸受収容部48aの軸心とポンプカバー49側の第2駆動軸挿通孔50のうち第2軸受収容部50aの軸心とが略一致し、ポンプ駆動軸44がポンプ要素摺動面47aに対して略面直角な姿勢となる。
【0082】
その後、押圧治具62による付勢力Fをポンプカバー49に与えた状態で、各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55を共締めし、押圧治具62をポンプカバー49の外周面52から離間させるすることにより、ポンプ装置10の組立が完了する(ステップS8)。なお、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの締め付け順および締め付けトルクは上述したステップS3と同様とする。
【0083】
そして、図2に示すように、このように組み立てられたポンプ装置10にリザーバタンク11を装着するとともに、そのポンプ装置10のうち第1駆動軸挿通孔48の大径部48cにポンプ駆動装置PD側の筒状部29aの先端を挿入しつつ、ポンプ駆動装置PD側のモータ駆動軸30とポンプ装置10側のポンプ駆動軸44を軸継手38を介して接続し、両者10,PDを図示外のボルトによって締結することでモータ・ポンプユニット7が完成する。
【0084】
さらにその後、この完成したモータ・ポンプユニット7をパワーステアリング装置1に実装することで、パワーステアリング装置1が完成することとなる。
【0085】
したがって、本実施の形態によれば、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴う再組立時に、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工時におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係を再現することで、第1,第2位置決めピン59,60やポンプボディ46およびポンプカバー49など、各構成部品の加工精度を極端に高めることなく、つまり製造コストの高騰を招くことなく、第1,第2駆動軸挿通孔48,50のうちポンプ駆動軸44の支持に寄与することになる第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性を飛躍的に向上させることができる。
【0086】
特に、ポンプボディ46とポンプカバー49の共加工を、両者46,49の間にカムリング55を組み付け、且つ各ハウジング締結ボルト61a〜61fを再組立時と同様の締め付けトルクをもって締結した状態、すなわちポンプ装置10作動状態により近い状態で行うようにしているため、ポンプ装置10の作動時における第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性をより向上させることができる。
【0087】
しかも、本実施の形態では、ポンプ要素摺動面47aと同一平面上にそのポンプ要素摺動面47aと同等の精度をもって形成した機械加工基準面47bを基準として第1,第2軸受収容部48a,48bを共加工しているため、そのポンプ要素摺動面47aに対するポンプ駆動軸44の直角度をさらに向上させることができる。
【0088】
その結果、ポンプ駆動軸44をポンプ要素摺動面47aに対して略面直角な姿勢でポンプハウジング43に組み付けることができるようになり、ポンプ装置10の作動時におけるポンプ要素42の摺動抵抗を低減して機械効率を向上させることができ、電動モータ12の負荷を軽減できるほか、ポンプ要素42のいわゆるかじりの発生を防止できる。
【0089】
その上、第1駆動軸挿通孔48のうちポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との位置決めを司る大径部48cの内周面に施す機械加工を、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工後にいわゆるワンチャック状態で行うようになっていることから、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性も向上し、トルク伝達効率が向上するメリットがある。
【0090】
また、上述したようにポンプ駆動軸44のポンプ要素摺動面47aに対する直角度が向上することで、ポンプ装置10の吐出特性が正転時と逆転時とで略均一なものとなる上に、上述したようにポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性が向上することで軸継手38を介したトルク伝達特性が正転時と逆転時とで略均一なものとなることから、左右操舵時における操舵力を均一化してステアリングフィールを向上させることができるメリットもある。
【0091】
さらに、第1位置決めピン59が円筒外周面59aを当接面として第1ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aに当接するようになっているため、ポンプカバー49を押圧治具62によって押圧したときに、ポンプカバー49の第1位置決めピン49を中心とした揺動が径方向で大きく変位することなく円滑に行われるようになり、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決をより確実に行うことができるようになる。つまり、例えば第1位置決めピンのうち第1ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aに対する当接面が平面状に形成されているものとすると、その第1位置決めピンを中心としたポンプカバー49の揺動時に揺動中心が定まらない虞があるが、本実施の形態ではこのような不都合の発生を抑制できる。
【0092】
また、第2位置決めピン60も円筒外周面60aを当接面として第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに当接するようになっているため、その円筒外周面60aと第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aとの当接状態が安定したものとなり、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めをさらに確実に行えるようになる。つまり、例えば第2位置決めピンのうち第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに対する当接面が平面状に形成されているものとすると、その当接面が第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに対していわゆる片当たり状態となり、その当接位置がばらついてしまう虞があるが、本実施の形態ではこのような不都合の発生を抑制できる。
【0093】
さらにその上で、ポンプボディ46に対するポンプカバー49の位置決めに供することになる第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aを機械加工によって比較的高精度に形成しているため、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係のばらつきが抑制され、第1,第2吸入吐出ポート14a,14bのポンプ要素42に対する相対位置精度も高めることができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、図6のステップS2において、図示外の固定治具にポンプボディ46を固定した状態でポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めし、その後のステップS3において機械加工装置のワーク保持具66にポンプハウジング43を保持させるものとしているが、図6のステップS2に相当する工程におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めを、機械加工装置のワーク保持具にポンプボディ46を装着した状態で行うようにしてもよい。この場合には、ポンプハウジング43の組立が可能となるようにワーク保持具を構成する必要はあるが、ポンプハウジング43を組み立てた後にそのポンプハウジング43をワーク保持具66に取り付ける手間を省くことができるほか、ポンプボディ46とポンプカバー49の共加工時により近い状態でポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすることができるため、第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性をさらに向上させることができるメリットがある。
【0095】
また、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の外壁面は必ずしも断面略U字状のものである必要はなく、例えば第1ポンプカバー側位置決め溝53の変形例として図10の(a)に示すように、第1ポンプカバー側位置決め溝70のうち第1当接部としての外壁面70aを断面コ字状またはチャンネル状に形成することも可能であるほか、第1ポンプカバー側位置決め溝53の別の変形例として図10の(b)に示すように、第1ポンプカバー側位置決め溝71のうち第1当接部としての外壁面71aを断面略V字状に形成することも可能である。なお、図10の(a),(b)ではポンプカバー49の要部のみを示し、他の部分は省略して描いてある。
【0096】
つまり、相手側となる第1,第2位置決めピン59,60との当接をもってポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めが可能でさえあれば、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の断面形状は問わない。但し、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の加工性を考慮すると、上述した第1の実施の形態のように第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を断面略U字状のものとし、例えばフライスに代表されるような回転する工具をもって容易に形成可能とすることが好ましいことは言うまでもない。
【0097】
また、本実施の形態におけるハウジングの組立方法の変形例として図11に示すように、ポンプボディ46とポンプカバー49との位置決め時、すなわち図6に示すステップS2およびステップS7に相当する工程において、ポンプボディ46側からポンプカバー49側に向けて突出する第2位置決め突部としての突出部72aを有する位置決め治具72をポンプボディ46に固定し、その位置決め用治具72の突出部72aのうちポンプカバー49側を向いて形成された当接面72bとポンプカバー49の外周面73との当接をもってポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすることも可能である。これにより、上述した第1の実施の形態における第2位置決めピン60と第2ポンプカバー側位置決め溝54とが不要になる。
【0098】
つまり、図11に示す変形例では、ポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすべく、押圧治具62をもってポンプカバー49に付勢力Fを与えたときに、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが第1位置決めピン59に当接するとともに、ポンプカバー49の外周面73が第2当接部として位置決め用治具72の当接面72bに当接することになる。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49とが一義的に相対位置決めされることになる。
【0099】
したがって、この変形例によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる上に、第2位置決めピン60と第2ポンプカバー側位置決め溝54とが不要となるため、ポンプ装置10の構造を簡素化できるメリットもある。
【0100】
さらに、上述した第1の実施の形態では本発明に係るハウジングの組立方法をポンプ装置10に適用した例を示したが、本発明の第2,第3の実施の形態として図12の(a),(b)にそれぞれ示すように、本発明に係るハウジングの組立方法をポンプ装置以外の機器類に適用することも可能である。
【0101】
図12の(a),(b)に示す第2,第3の実施の形態のハウジング74,80は、ともに第1ハウジング部材75,81と第2ハウジング部材76,82との間に環状のスペーサーリング83を挟持してなるものである。そして、図12の(a)に示す本発明の第2の実施の形態では、第1ハウジング部材75および第2ハウジング部材76に第1,第2加工部としての第1,第2軸挿通孔75a,76aがそれぞれ穿設され、それらの第1,第2軸挿通孔75a,76aに固定軸78が挿通配置されているとともに、例えば歯車やプーリーに代表されるような内蔵物である回転部材79がスペーサーリング83の内周側に収容されつつ、固定軸78に対して回転自在に外挿されている。
【0102】
そして、図12の(a)に示すハウジング74を組み立てる際には、支軸78および回転部材79を収容せずにハウジング74を組み立てた状態で第1,第2軸挿通孔75a,76aの共加工を行った後、ハウジング74を一旦分解し、支軸78および回転部材79の組み付けをともなう再組立を行うことになる。そこで、このハウジング74の組み立てを上述した第1の実施の形態と同様に行い、共加工前の組立時と共加工後の再組立時とで同様の条件でハウジング74を寄せ組みすることにより、第1,第2軸挿通孔75a,76a同士の同軸性が向上し、回転部材79が円滑に回転できるようになる。
【0103】
一方、図12の(b)に示す本発明の第3の実施の形態では、第1ハウジング部材81および第2ハウジング部材82に第1,第2加工部としての第1,第2摺動孔81a,81bがそれぞれ穿設されていて、内蔵物としてのスプール84が第1,第2摺動孔81a,81bに跨って軸方向で摺動可能に収容配置されている。
【0104】
そして、図12の(b)に示すハウジング80を組み立てる際には、スプール84を収容せずにハウジング80を組み立てた状態で第1,第2摺動孔81a,82aの共加工を行った後、ハウジング80を一旦分解し、スプール84の組み付けを伴う再組立を行うことになる。そこで、このハウジング80の組み立てを上述した第1の実施の形態と同様に行い、共加工前の組立時と共加工後の再組立時とで同様の条件でハウジング80を寄せ組みすることにより、第1,第2摺動孔81a,82aの同軸性が向上し、スプール84が円滑に摺動できるようになる。
【0105】
また、上述した第1の実施の形態では本発明に係るポンプ装置をパワーステアリング装置1に適用した例を示したが、本発明に係るポンプ装置はパワーステアリング装置以外の機器類に適用することも可能である。具体的には、例えば本発明の第4の実施の形態として図13に示すように、本発明に係るポンプ装置をフォークリフト85の油圧源として適用することも可能である。
【0106】
図13に示すフォークリフト85では、車体86の前部に設けられたマスト87にフォーク88が案内されていて、ポンプ装置89にて発生した油圧をサイドシフト用の油圧シリンダ90に供給することでフォーク88を作動させるようになっている。そして、ポンプ装置89は、図1〜5に示した第1の実施の形態と略同様のものである。
【0107】
したがって、この第4の実施の形態においても上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる。
【0108】
ここで、上述した各実施の形態から把握される特許請求の範囲に記載した以外の発明について、その効果とともに以下に説明する。
【0109】
(1)上記第1,第2位置決め突部は、円柱状を呈する第1,第2位置決めピンであることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【0110】
(1)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態が安定したものとなり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度が向上する。
【0111】
(2)上記第1,第2位置決めピンが第1ハウジング部材に圧入固定されていることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0112】
(2)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決めピンが第1ハウジング部材に対して強固に固定されることになるから、上記第1,第2当接部との当接時における上記第1,第2位置決めピンの傾動方向のぐらつきが抑制され、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度がより向上する。
【0113】
(3)軸方向に沿って延びる第1,第2位置決め溝が上記第2ハウジング部材の外周面にそれぞれ形成されていて、それら第1,第2位置決め溝の外壁面が上記第1,第2当接部として上記第1,第2位置決めピンに当接していることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0114】
(3)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め溝に代えて貫通孔を形成する場合と比較して上記第2ハウジング部材を径方向で小型化することができる。
【0115】
(4)上記第1,第2位置決め溝の外壁面は、断面略U字状にそれぞれ形成されていることを特徴とする(3)に記載のポンプ装置。
【0116】
(4)に記載の発明によれば、例えばフライスに代表されるような回転する工具をもって上記第1,第2位置決め溝を容易に形成できるようになる。
【0117】
(5)上記第1,第2位置決め溝の外壁面が、機械加工によってそれぞれ仕上げられていることを特徴とする(4)に記載のポンプ装置。
【0118】
(5)に記載の発明によれば、上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係のばらつきが抑制されることになるため、上記第1,第2ハウジング部材に吸入ポートや吐出ポートが形成される場合、それらのポートのポンプ要素に対する相対位置精度を高めることができる。
【0119】
(6)上記第2位置決めピンは、上記第1駆動軸挿通孔に対して上記第1位置決めピンと対称な位置から上記揺動方向側にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0120】
(6)に記載の発明によれば、上記第2位置決めピンに対する上記第2当接部の当接が強まり、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態がより安定したものとなるから、上記第1,第2ハウジング部材の相対位置決めの精度をさらに向上させることができる。
【0121】
(7)上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材とは反対側の面に、上記電動モータ側の電動モータ側位置決め突部との嵌合をもって上記モータ駆動軸に対する位置決めを行う位置決め孔が機械加工によって形成されていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工と上記位置決め孔の機械加工とがワンチャック状態にて行われていることを特徴とする請求項4に記載のパワーステアリング装置。
【0122】
(7)に記載の発明によれば、上記ポンプ駆動軸と上記モータ駆動軸との同軸性が向上することにより、上記モータ駆動軸から上記ポンプ駆動軸への動力伝達効率が上記電動モータの正転時と逆転時とで変化することが抑制されることになる。これにより、左右方向の操舵力が均一化されて操舵フィーリングがより向上する。
【0123】
(8)軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に挟持されたカムリングと、
上記カムリングの内周側に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置され、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを結合する結合手段と、
を備えたポンプ装置におけるハウジングの組立方法であって、
上記ポンプ要素およびポンプ駆動軸の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第1組立工程と、
その第1組立工程の後に、上記第1,第2駆動軸挿通孔の内周面に共加工を施す加工工程と、
その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材同士を分離する分解工程と、
その分解工程の後に、上記ポンプ要素およびポンプ駆動軸を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを組み合わせた上で、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを上記結合手段をもって結合する第2組立工程と、
を含むことを特徴とするポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0124】
(8)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接により、上記第2組立工程において上記加工工程時における第1,第2ハウジング部材同士の相対位置関係を略再現することができるから、ポンプ装置の各構成部品の加工精度を極端に高めることなく、つまり製造コストの高騰を招くことなく、第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性を飛躍的に向上させることができる。
【0125】
(9)上記第1組立工程において、上記第1,第2ハウジング部材間に上記カムリングを挟持した状態で、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その上で上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを結合することを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0126】
(9)に記載の発明によれば、上記第2組立工程後の最終組立状態により近い状態で上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工が行われることになるため、上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をより高めることができる。
【0127】
(10)上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材と対向する面に、上記ポンプ要素が摺動するポンプ要素摺動面が機械加工によって形成されているとともに、
上記第1ハウジング部材のうち上記ポンプ要素摺動面の外周側であって且つそのポンプ要素摺動面と同一平面上に、上記第1,第2ハウジング部材同士を組み合わせた状態で外部に露出する機械加工基準面が機械加工によって形成されてい
て、
上記加工工程における上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工は、上記第1,第2ハウジング部材を保持するワーク保持具に上記機械加工基準面を当接させることで上記第1,第2ハウジング部材を上記ワーク保持具に対して位置決めした状態で行われることを特徴とする請求項(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0128】
(10)に記載の発明によれば、上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工の基準となる上記機械加工基準面を比較的高精度に形成されるポンプ要素摺動面と同一平面上に設定することにより、上記機械加工基準面を上記ポンプ要素摺動面と同時に機械加工できるようになる。
【0129】
そして、このように形成される上記機械加工基準面を基準として上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工を行うことにより、上記第1,第2駆動軸挿通孔の上記ポンプ要素摺動面に対する直角度が向上し、上記ポンプ要素と上記ポンプ要素摺動面との間の摺動抵抗が低減されてポンプ装置の機械効率が向上する上に、上記ポンプ要素と上記ポンプ要素摺動面との間のいわゆるかじりが抑制されるメリットがある。
【0130】
(11)上記第1,第2組立工程において、上記第2ハウジング部材の外周面のうち上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とが径方向でオーバーラップする軸方向領域を押圧することにより、上記第1,第2当接部を上記第1,第2位置決め突部にそれぞれ当接させることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0131】
(11)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接状態が安定したものとなり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置精度を高めることができる。
【0132】
(12)上記結合手段は、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングの周方向で複数設けられ、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを共締め固定するハウジング締結ボルトであって、
上記第2組立工程において、上記各ハウジング締結ボルトのうち上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接を強める方向に締め付けトルクが作用するハウジング締結ボルトを最初に締め付けることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0133】
(12)に記載の発明によれば、上記各ハウジング締結ボルトの締め付け時における上記第1ハウジング部材または上記第2ハウジング部材の共回りを抑制できるようになり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度をより高めることができる。
【0134】
(13)上記第2組立工程において、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接を強める方向に締め付けトルクが作用するハウジング締結ボルトのうち上記第2当接部から最も離間したハウジング締結ボルトを最初に締め付けることを特徴とする(12)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0135】
(13)に記載の発明によれば、上記第2組立工程において最初のハウジング締結ボルトを締め付けたときに上記第2位置決め突部と上記第2当接部との当接を強める方向に作用するモーメントの腕が長くなることから、上記第2位置決め突部に対する上記第2当接部の当接がより強いものとなり、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態がより安定して上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度をさらに高めることができる。
【0136】
(14)上記結合手段は、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングの周方向で複数設けられ、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを共締め固定するハウジング締結ボルトであって、
上記第1組立工程において、全てのハウジング締結ボルトをもって上記第1,第2ハウジング部材を結合することを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0137】
(14)に記載の発明によれば、上記加工工程における共加工が、上記第1,第2ハウジング部材に上記各ハウジング締結ボルトの軸力を作用させた状態、つまりポンプ装置の作動状態により近い状態で行われることになるため、ポンプ装置の作動時における上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をさらに高めることができる。
【0138】
(15)上記第1組立工程において、上記加工工程で上記第1ハウジング部材を保持することになる機械加工装置のワーク保持具に上記第1ハウジング部材を保持させた状態で上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めすることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0139】
(15)に記載の発明によれば、上記第1組立工程後であって上記加工工程の前に上記ワーク保持具に上記第1ハウジング部材を保持させる手間を省くことができる上に、上記第1組立工程の後に直ちに上記加工工程を行うことができるようになるため、上記第1組立工程後から上記加工工程までの間の上記第1,第2ハウジング部材の取り扱い時において上記第1,第2ハウジング部材が位置ずれする虞がなく、上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0140】
1…パワーステアリング装置
6…パワーシリンダ
6a…第1圧力室
6b…第2圧力室
6d…ピストン
7a…第1吸入吐出口
7b…第2吸入吐出口
10…ポンプ装置
12…電動モータ
42…ポンプ要素(内蔵物)
44…ポンプ駆動軸
46…ポンプボディ(第1ハウジング部材)
47a…ポンプ要素摺動面
47b…機械加工基準面
48…第1駆動軸挿通孔
49…ポンプカバー(第2ハウジング部材)
50…第2駆動軸挿通孔
53a…第1ポンプカバー側位置決め溝の外壁面(第1当接部)
54a…第2ポンプカバー側位置決め溝の外壁面(第2当接部)
55…カムリング
59…第1位置決めピン(第1位置決め突部)
60…第2位置決めピン(第2位置決め突部)
SW…ステアリングホイール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置とパワーステアリング装置およびハウジングの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、パワーステアリング装置用のポンプ装置では、円環状のカムリングをポンプボディとカバー部材との間に複数のボルトによって共締め固定し、上記カムリングの内周側にポンプ要素を収容するとともに、そのポンプ要素を回転駆動する駆動軸を上記ポンプボディとカバー部材とにそれぞれ形成された駆動軸挿通孔に挿入し、その駆動軸をいわゆる両持ち支持の形態をもって回転自在に支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−149868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、上記ポンプボディとカバー部材とにそれぞれ形成された駆動軸挿通孔の同軸性が上記駆動軸の傾きに影響することになるが、上記両駆動軸挿通孔の孔位置の誤差や上記ポンプボディとカバー部材との組付誤差によって上記両駆動軸挿通孔が位置ずれしてしまう虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、特に、一対のハウジング部材間に上記ポンプ要素のような内蔵物を収容する場合に、それら両ハウジング部材にそれぞれ形成した上記両駆動軸挿通孔のような加工部同士の相対位置精度を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1〜4に記載の発明は、第1,第2ハウジング部材がポンプ要素を収容しつつ結合手段によって互いに結合されているとともに、上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ軸方向に沿って形成された第1,第2駆動軸挿通孔に、上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置されたポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸が挿通配置されたポンプ装置またはそのポンプ装置を有するパワーステアリング装置であることを前提としている。
【0007】
その上で、上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1ハウジング部材から上記第2ハウジング部材側に向けて突出する第1,第2位置決め突部と上記第2ハウジング部材に形成された第1,第2当接部とを当接させることにより、上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴としている。
【0008】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明をポンプ装置には限定しないハウジングの組立方法として捉えたものであって、第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とに上記第1,第2駆動軸挿通孔の如き第1,第2加工部を形成する加工工程を、上記ポンプ要素の如き内蔵物の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1ハウジング部材側から上記第2ハウジング部材側に向けて突出する第1,第2位置決め突部と上記第2ハウジング部材に形成された第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めした状態で行うとともに、その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材を一旦分離した上で上記内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材を再度組み立てる第2組立工程において、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2被当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記ポンプ要素または上記内蔵物の収容を伴う上記第1,第2ハウジング部材の組立時において、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接により、上記第1,第2駆動軸挿通孔または上記第1,第2加工部の加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を略再現することができるから、上記第1,第2駆動軸挿通孔または上記第1,第2加工部の相対位置精度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態として油圧式パワーステアリング装置のシステム構成を示す図。
【図2】図1に示すモータ・ポンプユニットの軸方向に沿った断面図。
【図3】図2に示すポンプ装置の分解斜視図。
【図4】図2に示すポンプ装置の軸方向に沿った断面図。
【図5】図2に示すポンプ装置の正面図。
【図6】図2に示すポンプ装置の組立手順を示すフローチャート。
【図7】図2に示すポンプ要素およびポンプ駆動軸を収容せずにポンプハウジングを組み立てた状態を示す図であって、図5の仮想線AOCに沿った断面に相当する図。
【図8】図7に示すポンプハウジングの正面図。
【図9】図7に示すポンプハウジングを機械加工装置のワーク保持具に装着した状態を示す図。
【図10】同図(a),(b)ともに第1の実施の形態における第1ポンプカバー側位置決め溝の変形例を示す図。
【図11】第1の実施の形態におけるハウジングの組立方法の変形例を示す図。
【図12】同図(a)は本発明の第2の実施の形態として本発明に係るハウジングの組立方法が適用される機器を示す図、同図(b)は本発明の第3の実施の形態として本発明に係るハウジングの組立方法が適用される同図(a)とは別の機器を示す図。
【図13】本発明の第4の実施の形態として本発明に係るポンプ装置を適用したフォークリフトを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態として油圧式パワーステアリング装置を示すシステム構成図である。
【0012】
図1に示すパワーステアリング装置1は、一端側がステアリングホイールSWと一体回転可能に連係され、そのステアリングホイールSWを介して運転者から入力された操舵トルクに基づいて回転するステアリングシャフト2と、そのステアリングシャフト2に設けられて運転者の操舵トルクを検出するトルクセンサTSと、ステアリングシャフト2の回転運動をラック軸3の軸線方向の運動に変換するラック&ピニオン機構4と、そのラック&ピニオン機構4と転舵輪5a,5bとの間に介装され、その内部に隔成された一対の圧力室6a,6bに作用する油圧によってステアリングホイールSWから入力された操舵トルクをアシストするパワーシリンダ6と、トルクセンサTSの出力に基づいてパワーシリンダ6の一対の圧力室6a,6bに油圧を給排するモータ・ポンプユニット7と、から主として構成されている。
【0013】
ラック&ピニオン機構4は、ステアリングシャフト2の一端に形成されたピニオン部2aとそのピニオン部2aにほぼ直交するように配置されるラック軸3とが噛合してなり、ラック軸3が軸線方向へ移動することにより転舵輪5a,5bの向きが変更されるようになっている。なお、図示は省略しているが、ラック軸3のうち軸方向の所定範囲にはステアリングシャフト2のピニオン部2aと噛み合うラック歯が形成されているとともに、ラック軸3の両端部は周知のタイロッドおよびナックルを介して転舵輪5a,5bに連係されている。
【0014】
パワーシリンダ6は、ほぼ円筒状に形成されたシリンダチューブ6cにピストンロッドとしてのラック軸3が軸方向に沿って貫装されたものであって、ラック軸3の外周に嵌着されたピストン6dにより、第1圧力室6aと第2圧力室6bとがシリンダチューブ6c内に隔成されている。そして、第1圧力室P1はモータ・ポンプユニット7の第1吸入吐出口7aに第1配管8を介して接続されている一方、第2圧力室P2はモータ・ポンプユニット7の第2吸入吐出口7bに第2配管9を介して接続されている。なお、第1、第2配管8,9の一部は可撓性を有する樹脂配管8a,9aにより形成されていて、これにより、配管レイアウト性を向上させつつ、モータ・ポンプユニット7側の油圧脈動を吸収するようになっている。
【0015】
モータ・ポンプユニット7は、図1に示すように、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bへと選択的に油圧を供給する可逆式のポンプ装置10と、そのポンプ装置10を介して循環する作動油を貯留するリザーバタンク11と、ポンプ装置10を駆動する3相交流式の電動モータ12と、その電動モータ12を駆動制御するコントロールユニット13と、を備えている。
【0016】
そして、運転者が操舵操作を行うと、図1に示すトルクセンサTSからのトルク信号のほか、図示外のイグニッションスイッチからのスイッチ信号、同じく図示外の車速センサからの車速信号等に基づいてコントロールユニット13が電動モータ12を駆動制御し、ポンプ装置10の第1,第2吸入吐出口7a,7bから本発明の作動液である作動油を給排することになる。その結果、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bへ選択的に作動油が給排され、運転者から入力された操舵トルクに応じた操舵アシスト力が発生することになる。
【0017】
図1に示すように、ポンプ装置10は、当該ポンプ装置10のポンプ作用を司るポンプ作動部14と、そのポンプ作動部14の第1,第2吸入吐出ポート14a,14bと第1,第2吸入吐出口7a,7bとをそれぞれ接続する第1,第2油路15a,15bと、を備えていて、第1,第2油路15a,15bの途中には、下流側の端部がリザーバタンク11に連通した第1、第2ドレン油路16a,16bがそれぞれ接続されている。
【0018】
第1,第2ドレン油路16a、16bは、第1,第2油路15a,15b間の差圧に応じて動作する制御バルブ17によって開閉されるようになっているとともに、第1,第2ドレン油路16a,16bのうち制御バルブ17よりも下流側の位置には、リザーバタンク11側への流れのみを許容するリリーフバルブ20が設けられている。つまり、第1,第2ドレン油路16a,16bは、制御バルブ17とリリーフバルブ20とを介してリザーバタンク11に接続されている。
【0019】
制御バルブ17は、第1,第2ドレン油路16a,16bにそれぞれ連通する摺動孔18cと、その摺動孔18cの軸方向両側に形成され、第1,第2油路15a,15bにそれぞれ連通する第1,第2弁孔18a,18bと、第1,第2弁孔18a,18b内に軸方向で摺動自在にそれぞれ設けられ、両ドレン油路16a,16bを開閉する第1,第2弁体19a,19bと、摺動孔18c内に軸方向で摺動自在に設けられ、第1,第2油路15a,15b間の差圧に基づいて両弁体19a、19bを選択的に開閉操作するピストン19cと、を備えている。
【0020】
そして、制御バルブ17は、第1,第2弁体19a,19bがコイルスプリングのばね力によって閉弁方向(ピストン19c側)へ付勢された常閉型のものであって、ポンプ装置10の非作動時には第1,第2弁体19a,19bが第1,第2ドレン通路16a,16bをそれぞれ閉止するようになっている。
【0021】
一方、ポンプ9の作動によって第1油路15aが第2油路15bよりも高圧になった場合、ピストン19cがコイルスプリングのばね力に抗して第2弁体19bを開弁方向に押圧する。これにより、第2油路15bとリザーバタンク11とがリリーフバルブ20を介して連通する。なお、このとき第1弁体19aは閉弁し、第1油路15aとリザーバタンク11との制御バルブ17を通じた連通は遮断される。
【0022】
他方、ポンプ9の作動によって第2油路15bが第1油路15aよりも高圧になった場合、ピストン19cがコイルスプリングのばね力に抗して第1弁体19aを開弁方向に押圧する。これにより、第1油路15aとリザーバタンク11とがリリーフバルブ20を介して連通する。なお、このとき第2弁体19bは閉弁し、第2油路15bとリザーバタンク11との制御バルブ17を通じた連通は遮断される。
【0023】
このように、制御バルブ17が第1,第2油路15a,15b間の差圧に応じて第1,第2ドレン油路16a,16bを選択的に開閉することにより、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6bのうち低圧側となる圧力室における作動油の排出性を向上させて速やかに圧力低下を図るようになっている。
【0024】
また、第1,第2油路15a,15bのうち第1,第2ドレン油路16a,16bに対する接続部よりもポンプ作動部14側の部分は、第1,第2補給油路21a,21bを介してリザーバタンク11にそれぞれ接続されている。これらの第1,第2補給油路21a,21bには、リザーバタンク11から吸入する方向へのみ作動油の通流を許容する第1,第2吸入チェック弁22a,22bがそれぞれ設けられており、これらの第1,第2吸入チェック弁22a,22bにより、リザーバタンク11への作動油の逆流を防止しつつ、第1,第2油路15a,15bにおける作動油の不足分をリザーバタンク11から補給するようになっている。
【0025】
さらに、第1,第2油路15a,15bの間には、フェールセーフ機構23が設けられている。このフェールセーフ機構23は、第1,第2油路15a,15b間を連通する連通油路24と、その連通油路24のほぼ中央位置に設けられた接続部25とリザーバタンク11とを連通する第3ドレン油路26と、その第3ドレン油路26に設けられ、コントロールユニット13からの指令に基づいて開閉動作する常開型の電磁切換弁27と、連通油路24のうち接続部25を挟んで両側にそれぞれ設けられ、接続部25側へ向かう方向にのみ作動油の通流を許容する第1,第2逆止弁28a,28bとを備えている。
【0026】
電磁切換弁27は、コントロールユニット13からの指令によって通常時においては閉弁される一方、フェイル時、すなわちシステム失陥時には開弁され、パワーシリンダ6の第1,第2圧力室6a,6b間で作動油を移動可能にするようになっている。これにより、万が一のフェイル時においても運転者の操舵力によるいわゆるマニュアルステアを可能にしている。
【0027】
また、図2に示すように、モータ・ポンプユニット7は、ポンプ装置10を挟んで軸方向一方側にリザーバタンク11を配置するとともに、ポンプ装置10を挟んで軸方向他方側に電動モータ12とコントロールユニット13とからなるポンプ駆動装置PDを配置することで構成されている。
【0028】
ポンプ駆動装置PDのハウジング29は、当該ハウジング29を軸方向に貫通するように形成され、ロータ31付きのモータ駆動軸30およびステータ32を収容するモータ駆動軸収容穴35と、当該ハウジング29のうちポンプ装置10側の軸方向一端面にモータ駆動軸収容穴35の外周側を取り囲むように凹設された制御基板収容凹部36と、を備え、これらがアルミダイキャストによって一体に成形されている。
【0029】
そして、ロータ31付きのモータ駆動軸30とステータ32とをモータ駆動軸収容穴35内に収容しつつ、そのモータ駆動軸収容孔35のうち後述するロータ収容部35a側の開口を略有蓋円筒状のモータカバー34によって閉蓋することで電動モータ12が構成されている一方、制御基板収容凹部36内に制御基板39を収容しつつ、その制御基板収容凹部36の開口をコントロールユニットカバー40をもって閉塞することでコントロールユニット13が構成されている。すなわち、電動モータ12とコントロールユニット13とでハウジング29を共有することで両者12,13がポンプ駆動装置PDとして一体化されている。これにより、両者12,13を接続する手間を省いて組立作業性や生産性の向上を図っている。
【0030】
モータ駆動軸収容穴35は、軸方向他端側(反ポンプ装置10側)に向かって開口するように形成された比較的大径なロータ収容部35aと、そのロータ収容部35aから制御基板収容凹部36を貫通するように延設され、ロータ収容部35aよりも小径な第1軸受収容部35bと、を備えている。そして、このモータ駆動軸収容孔35と制御基板収容凹部36との間には、第1軸受収容部35bの周壁となる電動モータ側位置決め突部としての筒状部29aと、ロータ収容部35aと軸受収容部35bとの間に形成された段状壁部29bと、からなる隔壁Wが形成されている。
【0031】
モータカバー34は、薄板を略有蓋円筒状に折曲形成してなるものであって、当該モータカバー34の開口端縁に形成されたフランジ部34aが、ハウジング29のうちロータ収容部35aの開口端面にモータカバー取付ボルト37によって取付固定されている。
【0032】
そして、モータ駆動軸30に外挿されつつ図示外のキー等によって回り止めが施された円筒状のロータ31と、このロータ31の外周側に所定の径方向隙間を介して非接触状態に配置された円筒状のステータ32とが、モータカバー34の内部空間とハウジング29側のロータ収容部35aとに跨って収容されている。
【0033】
また、モータカバー34のうち天蓋部34bのほぼ中央位置には、モータハウジング29側に向かって凹となるエンボス状の第2軸受収容部34cが形成されていて、その第2軸受収容部34cに収容保持された第2ボールベアリングBB2と、モータハウジング29側の第1軸受収容部35bに収容保持された第1ボールベアリングBB1とにより、モータ駆動軸30の両端部が回転自在に支持されている。なお、モータハウジング29の第1軸受収容部35bのうち第1ボールベアリングBB1よりもポンプ装置10側の部分には、筒状部29aの内周面とモータ駆動軸30の外周面との間をシールするモータ側シール部材S1が収容されているとともに、モータ駆動軸30のうち第1ボールベアリングBB1とロータ31との間の軸方向中間部には、そのモータ駆動軸30の回転角を検出するレゾルバ33が配設されている。
【0034】
さらに、モータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部の長さは、筒状部29aの軸方向のほぼ全域にわたって延在するような長さ、つまり筒状部29aのうちポンプ装置10側の端部近傍まで延出するような長さに設定されていて、当該モータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部が筒状部29aとともに制御基板収容凹部36を貫通している。そして、このモータ駆動軸30のうちポンプ装置10側の一端部には、当該モータ駆動軸30の軸心を通る偏平状の接続部30aが形成され、この接続部30aが軸継手38に嵌挿されることによって両者30,38が接続されている。なお、軸継手38はいわゆるオルダム継手である。
【0035】
一方、コントロールユニット13の制御基板39は、電動モータ12を駆動制御するための種々の回路を有しており、段状壁部29bに形成された第1,第2貫通孔29c,29dを通じてステータコイル32bおよびレゾルバ33との電気的な接続がなされている。
【0036】
また、コントロールユニットカバー40の開口端縁にはフランジ部40aが形成されており、モータハウジング29のうち制御基板収容凹部36の開口端面にそのフランジ部40aが重合しつつ、その開口端面に対してコントロールユニットカバー取付ボルト41によって固定されている。さらに、コントロールユニットカバー40の底壁部40bには貫通孔40cが貫通形成されていて、モータハウジング29の筒状部29aがその貫通孔40cを挿通してコントロールユニットカバー40の外部へ突出している。
【0037】
他方、ポンプ装置10はいわゆる内接歯車ポンプであって、回転に伴い作動油の吸入・吐出を行う内蔵物としてのポンプ要素42と、そのポンプ要素42を収容する本発明のハウジングとしてのポンプハウジング43と、軸継手38を介してモータ駆動軸30に接続され、そのモータ駆動軸30から伝達されるトルクによってポンプ要素42を回転駆動するポンプ駆動軸44と、から主として構成されている。そして、ポンプハウジング43の外周面にはリザーバタンク11の一端が嵌着され、ポンプ装置10の一部がリザーバタンク11内の作動油に潜没している。
【0038】
リザーバタンク11は、ポンプ装置10の一部を収容する第1円筒部11aと、その第1円筒部11aに連通しつつ当該第1円筒部11aから上方に向けて延びる第2円筒部11bと、を備えている。なお、第2円筒部11bのうち天蓋部11cのほぼ中央部には作動油を注入するための円筒開口部11dが形成されていて、その円筒開口部11dには着脱可能なキャップ11eが装着されている。
【0039】
そして、リザーバタンク11のうち第1円筒部11aの開口端縁に形成されたフランジ部11fが、ポンプハウジング43のうち後述するポンプボディ46に対してリザーバタンク取付ボルト69によって取付固定されている。
【0040】
図3〜5は図2に示すポンプ装置10を単体で示す図であって、そのうち図3はポンプ装置10の分解斜視図、図4はポンプ装置10の軸方向に沿った断面図、図5はポンプ装置10の正面図である。
【0041】
図3,4に示すように、ポンプ要素42は、ポンプ駆動軸44の外周に回り止めとしてのピン45をもって相対回転不能に固定され、外周面に外歯が形成されたインナーロータ42aと、ポンプハウジング43内においてインナーロータ42aの外周側に回転可能に収容配置され、インナーロータ42aの外歯に噛合する内歯が内周面に形成された円環状のアウターロータ42bと、により構成されている。
【0042】
周知のように、インナーロータ42aの外歯とアウターロータ42bの内歯は互いに等しいピッチで形成されているとともに、アウターロータ42bの内歯はインナーロータ42aの外歯よりも歯数が一枚多く設定されていて、これらのインナーロータ42aとアウターロータ42bとが偏心しつつ周方向の一部で噛み合うことで、インナーロータ42aの外歯とアウターロータ42bの内歯との間に大きさ及び形状の異なるポンプ室42cが周方向で複数形成されている。
【0043】
そして、ポンプ駆動軸44が電動モータ12から伝達されたトルクをもってポンプ要素42を回転駆動することにより、各ポンプ室42cが容積を増減させながら周回移動し、後述する第1,第2吸入吐出ポート14a,14bの一方を介して作動油を吸入するとともに、この吸入した作動油を加圧して第1,第2吸入吐出ポート14a,14bの他方から吐出するようになっている。つまり、ポンプ要素42と第1,第2吸入吐出ポート14a,14bとをもって上述したポンプ作動部14(図1参照)が構成されている。
【0044】
ポンプハウジング43は、いわゆるアルミダイカストをもって型成形され、コントロールユニットカバー40の外面と当接して突き合わせ状態に配置される本発明の第1ハウジング部材としてのポンプボディ46と、いわゆるアルミダイカストをもって略偏平円柱状に型成形され、ポンプボディ46の反コントロールユニットカバー40側に本発明の第2ハウジング部材として対向配置されるポンプカバー49と、いわゆる粉末冶金法によって円環状に型成形され、ポンプボディ46とポンプカバー49とにより挟持状態に保持固定されるアルミ合金製のカムリング55と、を備えている。
【0045】
ポンプボディ46は、コントロールユニットカバー40に着座しつつそのコントロールユニットカバー40に図示外のボルトをもって固定される略偏平ブロック状の基部46aと、その基部46aからポンプカバー49側に向けて突出し、外周面にリザーバタンク11が嵌着される略偏平円柱状の円形突部46bと、その円形突部46bの軸心に沿って貫通形成された第1駆動軸挿通孔48と、を備えている。
【0046】
図3に示すように、ポンプボディ46の内側面47(円形突部46bの先端面)には、ポンプ要素42の各ポンプ室42cに対応する径方向位置において、周方向に沿って延びる三日月状にそれぞれ形成された第1,第2吸入吐出ポート14a,14bが第1駆動軸挿通孔48に対して略対称に設けられている一方、基部46aの外側部には、第1,第2吸入吐出ポート14a,14bに連通する第1,第2吸入吐出口7a,7bが開口形成されている。そして、これらの第1,第2吸入吐出口7a,7bが、図1に示した第1,第2配管8,9を介して同じく図1に示したパワーシリンダ6に接続されることになる。
【0047】
図4に示すように、第1駆動軸挿通孔48は略段付き丸穴形状のものであって、当該第1駆動軸挿通孔48のうち円形突部46b側の端部に形成され、ポンプ駆動軸44を支持するための第1ニードルベアリングNB1を収容する第1軸受収容部48aと、当該第1駆動軸挿通孔48の軸方向中間部に第1軸受収容部48aよりも大径に形成され、ポンプ駆動軸44との間をシールするためのポンプ側シール部材S2を収容するシール収容部48bと、当該第1駆動軸挿通孔48のうち基部46a側の端部にシール部材収容部48bよりもさらに大径に形成され、基部46aの底面に開口してモータ制御装置MC側の筒状部29aを受容する位置決め孔としての大径部48cと、を有している。
【0048】
他方、ポンプカバー49の中心部には、ポンプ装置10の軸心方向に沿う略段付き丸穴形状の第2駆動軸挿通孔50がポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48と略同一軸心上に貫通形成されている。そして、第2駆動軸挿通孔50のうちポンプボディ46側に向けて開口する拡径状の第2軸受収容部50aには第2ニードルベアリングNB2が収容配置され、その第2ニードルベアリングNB2とポンプボディ46側の第1ニードルベアリングNB1とにより、ポンプ駆動軸44を回転自在に支持している。すなわち、ポンプ駆動軸44は、ポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48とポンプカバー49側の第2駆動軸挿通孔50とに跨って挿通配置されつつ、当該ポンプ駆動軸44のうちポンプ要素42を挟んで両側の位置を第1,第2ニードルベアリングNB1,NB2によっていわゆる両持ち状態で回転自在に支持されている。そのため、第1駆動軸挿通孔48のうち第1軸受収容部48aの内周面と第2駆動軸挿通孔50のうち第2軸受収容部50aの内周面は、両者48a,50aの同軸性を確保すべく、ポンプボディ46とポンプカバー49とを組み立てた状態で予め共加工されている。
【0049】
そして、図2に示すように、モータハウジング29側の筒状部29aの先端をポンプボディ46のうち第1駆動軸挿通孔48の大径部48cに受容することにより、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30とが径方向で相対位置決めされているとともに、ポンプ駆動軸44のうちポンプボディ46側の端部には当該ポンプ駆動軸44の軸心を通る偏平状の接続部44aが形成されていて、その接続部44aが筒状部29a内で軸継手38に嵌挿されている。これにより、ポンプ駆動軸44が軸継手38を介してモータ駆動軸30に接続されている。なお、第1駆動軸挿通孔48のうち大径部48cの内周面は、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性を確保すべく、第1軸受収容部48aおよび第2軸受収容部50aの内周面とともに共加工されている。
【0050】
また、上述したようにポンプボディ46とポンプカバー49はアルミダイカストによってそれぞれ型成形されたものであるが、図4に示すように、ポンプボディ46とポンプカバー49のうち互いに対向するそれぞれの内側面47,51は、ポンプ装置10の作動時にインナーロータ42aとアウターロータ42bの軸方向両端面が微小なサイドクリアランスを介して摺動することになるため、そのサイドクリアランスの精度を確保すべく、両内側面47,51には型成形後の仕上げ加工として機械加工が施されている。
【0051】
そして、図4のほか図5に示すように、ポンプカバー49とカムリング55の外径は、ポンプボディ46の内側面47の外径よりも小さく設定されていて、ポンプボディ46の内側面47のうち内周側の部分がポンプ要素摺動面47aとしてポンプハウジング43内のポンプ要素42に近接対峙している一方、ポンプボディ46の内側面47のうち外周側の部分は、第1,第2駆動軸挿通孔48,50を後述するように共加工するときの基準となる段状の機械加工基準面47bとしてポンプハウジング43の外部に臨んでいる。つまり、比較的高い平面度が要求されることになるポンプ要素摺動面47aと機械加工基準面47bとを同一平面上に設定し、両者47a,47bを同時に機械加工できるようにすることで、ポンプ装置10の生産性の低下を抑制しつつも、機械加工基準面47bをポンプ要素摺動面47aと同等の精度をもって形成可能にし、且つポンプ要素摺動面47aと機械加工基準面47bとの平行度を確保している。
【0052】
さらに、図3に示すように、ポンプボディ46の内側面47には第1,第2ピン挿入孔47d,47eがそれぞれ穿設され、本発明における第1,第2位置決め突部としてポンプボディ46からポンプカバー49側に向けてそれぞれ突出する円柱状の第1,第2位置決めピン59,60が第1,第2ピン挿入孔47d,47eにそれぞれ強固に圧入固定されている。
【0053】
第1,第2位置決めピン59,60は、図5に示す正面視において、ポンプカバー49の外周面52と同等の径方向位置で、且つポンプ駆動軸44に対して非対称になるように周方向で互いにオフセットした位置にそれぞれ配設されている。具体的には、第1位置決めピン59の軸心と第2駆動軸挿通孔50の軸心Oとを通る仮想線AOBが第1位置決めピン59とは反対側でポンプカバー49の外周面と交わる位置P1から、図5の時計回り方向で所定の角度θ1だけオフセットした位置に第2位置決めピン60を配設している。
【0054】
他方、ポンプカバー49の外周面52のうち第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ対応する周方向位置には、第1,第2位置決めピン59,60の直径よりも若干幅広な断面略U字状であって且つポンプカバー49のうち軸方向の全域に亘って延びる第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54がそれぞれ形成されている。また、カムリング55の外周面56にも同様に、第1,第2カムリング側位置決め溝57,58がそれぞれ形成されている(図3参照)。これらの第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54および第1,第2カムリング側位置決め溝57,58は、それらの外壁面53a,54a,57a,58aの全域が上述した型成形後の機械加工によって形成されたものである。
【0055】
そして、図3,5に示すように、各位置決め溝53,54,57,58と第1,第2位置決めピン59,60との嵌合により、ポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55の三者がポンプ駆動軸44に軸直角な方向、すなわちポンプボディ46の径方向で相互に相対位置決めされた状態で、本発明の結合手段である6本のハウジング締結ボルト61a〜61fによって三者46,49,55がいわゆる共締め状態で相互に固定されている。具体的には、各ハウジング締結ボルト61a〜61fは、ポンプカバー49およびカムリング55に周方向で等ピッチにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通しつつ、ポンプボディ46の内側面47に開口形成された複数のねじ孔47cにそれぞれ螺合している。なお、図示は省略しているが、ポンプカバー49およびカムリング55にそれぞれ形成された各ボルト挿通孔は、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの軸部よりも大径に形成されていて、それらの各ボルト挿通孔と各ハウジング締結ボルト61a〜61fの軸部との間には径方向の隙間が形成されるようになっている。
【0056】
ここで、上述したように、ポンプボディ46とポンプカバー49のうち互いに対向するそれぞれの内側面47,51は、ポンプ装置10の作動時にインナーロータ42aとアウターロータ42bのそれぞれの軸方向両端面が微小なサイドクリアランスを介して摺動することになるため、その摺動抵抗を低減してポンプ装置10の機械効率を向上させるとともに、操舵方向に応じて正逆回転することになるポンプ装置10の吐出特性を正転時と逆転時とで均一なものとする上では、ポンプボディ46およびポンプカバー49の両内側面47,51に対するポンプ駆動軸44の直角度を高めることが望ましい。
【0057】
そして、ポンプ駆動軸44はポンプボディ46とポンプカバー49とによっていわゆる両持ち状態で支持されていることから、このポンプ駆動軸44の上記直角度を高めるためには、上述したように第1駆動軸挿通孔48の第1軸受収容部48aと第2駆動軸挿通孔50の第2軸受収容部50aとを共加工した後の再組立時に、ポンプボディ46側の第1軸受収容部48aの軸心とポンプカバー49側の第2軸受収容部50aの軸心とが略一致するように、ポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めしつつポンプハウジング43を組み立てる必要がある。
【0058】
しかしながら、ポンプボディ46とポンプカバー49との位置決めを司る第1,第2位置決めピン59,60と第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54との間にはクリアランスが存在するため、第1,第2軸受収容部48a,50aの軸心同士がそのクリアランス分ずれた状態でポンプハウジング43が組み立てられてしまい、ポンプ駆動軸44の直角度が低下する虞がある。なお、第1,第2位置決めピン59,60および第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54をそれぞれ極めて高精度に形成することで、第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性を向上させることも可能ではあるが、この場合には生産性が著しく低下してコストが高騰してしまうことになり、好ましくない。
【0059】
そこで、本実施の形態では、図5に拡大して示すように、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54に第1,第2位置決めピン59,60がそれぞれ嵌合するようにポンプボディ46とポンプカバー49とを組み合わせつつ、図5に示す付勢力Fをポンプカバー49に付与することで当該ポンプカバー49をポンプボディ46に対して付勢力Fの方向で偏倚させ、その状態で各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプボディ46とポンプカバー49とを結合する、いわゆる寄せ組みを行っている。付勢力Fの方向は、図5に示す正面視において、ポンプカバー49の外周面52のうち上述した位置P1に対して反第2位置決めピン60側へ所定角度θ2だけオフセットした位置P2から第2駆動軸挿通孔50の軸心Oに向かう方向、換言すれば仮想線AOBに対して所定角度θ2だけ傾斜した方向に設定している。
【0060】
これにより、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが第1,第2位置決めピン59,60の円筒外周面59a,60aに付勢力Fの方向で当接し、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が一義的に定まっている。詳細には、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが、ポンプカバー49とポンプボディ46との接離方向に直角な当接方向であるポンプボディ46の径方向において、第1位置決めピン59に内側から当接することにより、ポンプカバー49がポンプボディ46に対して径方向で相対位置決めされている。一方で、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aが、第1位置決めピン59を中心としたポンプカバー49の揺動方向で第2位置決めピン60に当接することにより、その揺動方向でポンプカバー49とポンプボディ46とが相対位置決めされている。
【0061】
すなわち、ポンプハウジング43を組み立てる際には、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を収容せずにポンプハウジング43を組み立てた状態で第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工が行われた後、そのポンプハウジング43を一旦分解し、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けをともなう再組立を行うことになるが、共加工後の再組立時に共加工前の組立時と同様の条件でポンプハウジング43を寄せ組みすることにより、共加工時におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係を略再現するようにしている。
【0062】
以下、このポンプハウジング43の組立方法について図6〜9を参照しつつ説明する。図6〜9のうち図6はポンプハウジング43の組立手順を示すフローチャート、図7はポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を収容せずにポンプハウジング43を組み立てた状態を示す図であって、図5の仮想線AOCに沿った断面に相当する図、図8は図7に示すポンプハウジング43の正面図、図9は図7に示すポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具に装着した状態を示す図である。
【0063】
ポンプハウジング43は図6のフローチャートに示す手順で組み立てる。すなわち、まず図7に示すように、ポンプボディ46に予め圧入固定された第1,第2位置決めピン59,60に第1,第2カムリング側位置決め溝57,58を遊嵌状態で嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてポンプボディ46の内側面47にカムリング55を載置する。その上で、第1,第2位置決めピン59,60に第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を遊嵌状態で嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてカムリング55にポンプカバー49を載置して仮組み状態とする(ステップS1)。
【0064】
次いで、図8に示すように、図示外の固定治具によってポンプボディ46を固定しつつ、押圧治具62によってポンプカバー49を押圧し、ポンプボディ46とポンプカバー49とを径方向で相対位置決めする(ステップS2)。
【0065】
押圧治具62は、図示外の駆動手段をもってポンプカバー49の外周面52に対する接離方向で進退動作する治具本体63と、その治具本体63の先端に長手方向中間部が揺動可能に連結された押圧アーム64と、その押圧アーム64の長手方向両端部にそれぞれ設けられた一対の押圧ローラ65a,65bと、を備えている。
【0066】
そして、ポンプカバー49の外周面52のうち上述した位置P2を挟んで両側に押圧治具62の両押圧ローラ65a,65bを当接させ、その押圧治具62を図示外の駆動手段によってポンプハウジング43の径方向内側に向けて駆動することにより、ポンプカバー49に付勢力Fを与える。なお、このとき、両押圧ローラ65a,65bは、ポンプカバー49の外周面のうち第1,第2位置決めピン59,60と径方向でオーバーラップする軸方向領域A1(図7参照)に当接させるものとする。これにより、押圧治具62の付勢力をもってポンプカバー49がカムリング55から浮き上がるように傾動してしまうことを防止し、ポンプハウジング46とポンプカバー49とをより確実に位置決めできるようになる。
【0067】
このようにポンプカバー49を押圧すると、まず、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが第1位置決めピン59の円筒外周面59aに突き当たり、ポンプカバー49がポンプボディ46に対して径方向、すなわち仮想線AOBの方向で相対位置決めされる。その上で、その状態からポンプカバー49が付勢力Fによってさらに押圧されると、図8中に矢印Mで示すモーメントが発生してポンプカバー49が第1位置決めピン59を中心として揺動し、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aが第2位置決めピン60の円筒外周面60aに突き当たり、その揺動の方向でポンプカバー49がポンプボディ46に対して相対位置決めされることになる。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が一義的に定まる。なお、ポンプカバー49が第1位置決めピン59を中心として揺動するときには、そのポンプカバー49に追従して押圧治具62の押圧アーム64も揺動することになる。
【0068】
このように第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ当接した状態では、第2位置決め溝54の外壁面54aは、第1,第2位置決めピン59,60を結ぶD−D線に直交する方向に付勢力Fを分解した分力F1により、第2位置決めピン60に当接することになる。この分力F1は、第2位置決めピン60が上述した位置P1から図8の時計回り方向、すなわち第1位置決めピン59を中心としたポンプカバー49の揺動方向へオフセットした位置に設けられていることから、第2位置決めピン60を上述した位置P1に設けた場合の分力F2よりも大きいものとなる。これにより、第2位置決め溝54の外壁面54aと第2位置決めピン60との当接が強まり、ポンプボディ46とポンプカバー49とがより確実に相対位置決めされることになる。なお、第1,第2位置決めピン59,60はポンプボディ46に対して強固に圧入固定されているものであるから、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aが強く当接しても第1,第2位置決めピン59,60が傾動してしまうようなことはない。
【0069】
そして、このようにポンプカバー49とポンプボディ46とを相対位置決めしたならば、押圧治具62による付勢力Fをポンプカバー49に与えた状態で、図5に示す各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプカバー49とポンプボディ46のほかカムリング55を結合し、その後に押圧治具62をポンプカバー49の外周面52から離間させる(ステップS3)。
【0070】
ここで、各ハウジング締結ボルト61a〜61fを締め付けると、それらの各ハウジング締結ボルト61a〜61fを中心とした揺動方向にポンプカバー49が共回りし、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が変化してしまう虞がある。そのため、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aと第1,第2位置決めピン59,60との当接を強める方向に締め付けトルクを作用させるべく、各ハウジング締結ボルト61a〜61fのうち図5に示す正面視で仮想線AOCよりも右側に位置する第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのいずれかを最初に締め付けるものとする。なお、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの締め付けトルクは、後述する再組立時と同等のものとし、その再組立時と同等の変形をポンプハウジング43に与える。
【0071】
より具体的には、図5に示すように、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cと第1,第2位置決めピン59,60との間の距離、すなわちボルト締め付け時に第1,第2位置決めピン59,60に作用するトルクの腕の長さを考慮し、最初に締め付けるボルトを第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうちから必要に応じて選択すればよい。例えば、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち第2位置決めピン60から最も離間した第1ハウジング締結ボルト61aを最初に締め付けるものとすると、第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aと第2位置決めピン60との当接を特に強めることができる一方で、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち第1位置決めピン59から最も離間した第3ハウジング締結ボルト61cを最初に締め付けるものとすると、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aと第1位置決めピン59との当接を特に強めることができる。他方、第1〜第3ハウジング締結ボルト61a〜61cのうち周方向の中間に位置する第2ハウジング締結ボルト61bを最初に締め付けることとすると、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aと第1,第2位置決めピン59,60との当接をバランスよく強めることができ、ポンプボディ46とポンプカバー49とをさらに確実に位置決めできるようになる。
【0072】
以上のように、本発明の第1組立工程としてステップS1〜S3でポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴わずにポンプハウジング43を組み立てたならば、本発明の共加工工程としてポンプボディ46およびポンプカバー49に共加工を施す(ステップS4)。
【0073】
具体的には図9に示すように、まず、ポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具66に装着する。ワーク保持具66は、ポンプハウジング43の機械加工基準面47bが着座する着座面67aが形成された保持具本体67と、その保持具本体67の着座面67aに対して接近・離間動作可能な複数の保持爪68と、を備えていて、保持具本体67の着座面67aにポンプボディ43の機械加工基準面47bを着座させつつ、その着座面67aと各保持爪68との間にポンプボディ46を挟持する。これにより、ポンプハウジング43が機械加工基準面47bを基準としてワーク保持具66に位置決め保持される。
【0074】
そして、図9に矢印Eで示すように、保持具本体67の着座面67aに対する面直角方向で例えば図示外のバイトや砥石等の共加工具をポンプボディ46の第1駆動軸挿通孔48からポンプハウジング43内に挿入し、第1,第2軸受収容部48a,50aの内周面の共加工を行うとともに、その共加工の後に、いわゆるワンチャック状態で大径部48cの内周面に機械加工を施す。これにより、第1,第2軸受収容部48a,50aが略同軸上に形成されるのに加え、それらの第1,第2軸受収容部48a,50aと略同軸上に大径部48cが形成されることになる。また、第1,第2軸受収容部48a,50aおよび大径部48cの機械加工を機械加工基準面47bを基準として行っていることから、第1,第2軸受収容部48a,50aおよび大径部48cは、機械加工基準面47bと同一平面上に形成されたポンプ要素摺動面47aに対して略面直角に形成されることになる。なお、ここでいうワンチャック状態とは、ポンプハウジング43がワーク保持具66から取り外されることなくそのワーク保持具66に継続して保持された状態で、第1,第2軸受収容部48a,50aの共加工と大径部48cの機械加工とが行われることを意味している。
【0075】
このようにしてポンプボディ46とポンプカバー49とを共加工したならば、本発明の分解工程として、ポンプハウジング43を機械加工装置のワーク保持具66から取り外した上で、各ハウジング締結ボルト61a〜61fによるポンプハウジング43の結合状態を解除し、ポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55を一旦分離するとともに、三者46,49,55をそれぞれ洗浄または清掃し、切りくず等を取り除く(ステップS5)。
【0076】
その後に、本発明の第2組立工程として、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴うポンプハウジング43の再組立を行う。
【0077】
具体的には、まず、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44を内部に収容しつつポンプハウジング43を仮組みする(ステップS6)。
【0078】
すなわち、図4に示す第1ニードルベアリングNB1およびポンプ側シール部材S2をポンプボディ46に予め組み付けた上で、カムリング55の第1,第2カムリング側位置決め溝57,58を第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ嵌合させつつ、それらの第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてカムリング55をポンプボディ46の内側面47に載置する。
【0079】
次いで、ピン45によってインナーロータ42aを予め組み付けたポンプ駆動軸44をポンプボディ46の第1駆動軸挿通孔48に内側面47側から挿入し、インナーロータ42aをポンプボディ46の内側面47に着座させるとともに、そのインナーロータ42aの外歯にアウターロータ42bの内歯を噛み合わせつつ、カムリング55とインナーロータ42aの間にアウターロータ42bを挿入する。
【0080】
その上で、第2ニードルベアリングNB2を予め組み付けたポンプカバー49の第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を第1,第2位置決めピン59,60にそれぞれ嵌合させつつ、第1,第2位置決めピン59,60をガイドとしてポンプカバー49をカムリング55上に載置する。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49との間にポンプ要素42が収容されるとともに、第1,第2駆動軸収容孔48,50にポンプ駆動軸44が挿通配置され、ポンプボディ46とポンプカバー49とが第1,第2ニードルベアリングNB1,NB2を介していわゆる両持ち状態でポンプ駆動軸44を回転自在に支持することになる。
【0081】
このようにしてポンプハウジング43を仮組みしたならば、上述したステップS2と同様にしてポンプボディ46とポンプカバー49とを径方向で相対位置決めする(ステップS7)。すなわち、図示外の固定治具をもってポンプボディ46を固定しつつ、ポンプカバー49の外周面のうち上述したステップS2と同様の位置に押圧治具62の両押圧ローラ65a,65bを当接させ、その押圧治具62をもって上述したステップS2と同様の付勢力Fをポンプカバー49を付与する。これにより、ポンプカバー49が上述したステップS2と同様の挙動をもってポンプボディ46に対して相対位置決めされ、上述した共加工時(ステップS4)におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係が再現されることになる。その結果、ポンプボディ46側の第1駆動軸挿通孔48のうち第1軸受収容部48aの軸心とポンプカバー49側の第2駆動軸挿通孔50のうち第2軸受収容部50aの軸心とが略一致し、ポンプ駆動軸44がポンプ要素摺動面47aに対して略面直角な姿勢となる。
【0082】
その後、押圧治具62による付勢力Fをポンプカバー49に与えた状態で、各ハウジング締結ボルト61a〜61fによってポンプボディ46とポンプカバー49およびカムリング55を共締めし、押圧治具62をポンプカバー49の外周面52から離間させるすることにより、ポンプ装置10の組立が完了する(ステップS8)。なお、各ハウジング締結ボルト61a〜61fの締め付け順および締め付けトルクは上述したステップS3と同様とする。
【0083】
そして、図2に示すように、このように組み立てられたポンプ装置10にリザーバタンク11を装着するとともに、そのポンプ装置10のうち第1駆動軸挿通孔48の大径部48cにポンプ駆動装置PD側の筒状部29aの先端を挿入しつつ、ポンプ駆動装置PD側のモータ駆動軸30とポンプ装置10側のポンプ駆動軸44を軸継手38を介して接続し、両者10,PDを図示外のボルトによって締結することでモータ・ポンプユニット7が完成する。
【0084】
さらにその後、この完成したモータ・ポンプユニット7をパワーステアリング装置1に実装することで、パワーステアリング装置1が完成することとなる。
【0085】
したがって、本実施の形態によれば、ポンプ要素42およびポンプ駆動軸44の組み付けを伴う再組立時に、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工時におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係を再現することで、第1,第2位置決めピン59,60やポンプボディ46およびポンプカバー49など、各構成部品の加工精度を極端に高めることなく、つまり製造コストの高騰を招くことなく、第1,第2駆動軸挿通孔48,50のうちポンプ駆動軸44の支持に寄与することになる第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性を飛躍的に向上させることができる。
【0086】
特に、ポンプボディ46とポンプカバー49の共加工を、両者46,49の間にカムリング55を組み付け、且つ各ハウジング締結ボルト61a〜61fを再組立時と同様の締め付けトルクをもって締結した状態、すなわちポンプ装置10作動状態により近い状態で行うようにしているため、ポンプ装置10の作動時における第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性をより向上させることができる。
【0087】
しかも、本実施の形態では、ポンプ要素摺動面47aと同一平面上にそのポンプ要素摺動面47aと同等の精度をもって形成した機械加工基準面47bを基準として第1,第2軸受収容部48a,48bを共加工しているため、そのポンプ要素摺動面47aに対するポンプ駆動軸44の直角度をさらに向上させることができる。
【0088】
その結果、ポンプ駆動軸44をポンプ要素摺動面47aに対して略面直角な姿勢でポンプハウジング43に組み付けることができるようになり、ポンプ装置10の作動時におけるポンプ要素42の摺動抵抗を低減して機械効率を向上させることができ、電動モータ12の負荷を軽減できるほか、ポンプ要素42のいわゆるかじりの発生を防止できる。
【0089】
その上、第1駆動軸挿通孔48のうちポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との位置決めを司る大径部48cの内周面に施す機械加工を、第1,第2駆動軸挿通孔48,50の共加工後にいわゆるワンチャック状態で行うようになっていることから、ポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性も向上し、トルク伝達効率が向上するメリットがある。
【0090】
また、上述したようにポンプ駆動軸44のポンプ要素摺動面47aに対する直角度が向上することで、ポンプ装置10の吐出特性が正転時と逆転時とで略均一なものとなる上に、上述したようにポンプ駆動軸44とモータ駆動軸30との同軸性が向上することで軸継手38を介したトルク伝達特性が正転時と逆転時とで略均一なものとなることから、左右操舵時における操舵力を均一化してステアリングフィールを向上させることができるメリットもある。
【0091】
さらに、第1位置決めピン59が円筒外周面59aを当接面として第1ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aに当接するようになっているため、ポンプカバー49を押圧治具62によって押圧したときに、ポンプカバー49の第1位置決めピン49を中心とした揺動が径方向で大きく変位することなく円滑に行われるようになり、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決をより確実に行うことができるようになる。つまり、例えば第1位置決めピンのうち第1ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aに対する当接面が平面状に形成されているものとすると、その第1位置決めピンを中心としたポンプカバー49の揺動時に揺動中心が定まらない虞があるが、本実施の形態ではこのような不都合の発生を抑制できる。
【0092】
また、第2位置決めピン60も円筒外周面60aを当接面として第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに当接するようになっているため、その円筒外周面60aと第2ポンプカバー側位置決め溝54の外壁面54aとの当接状態が安定したものとなり、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めをさらに確実に行えるようになる。つまり、例えば第2位置決めピンのうち第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに対する当接面が平面状に形成されているものとすると、その当接面が第2ポンプカバー側位置決め溝55の外壁面55aに対していわゆる片当たり状態となり、その当接位置がばらついてしまう虞があるが、本実施の形態ではこのような不都合の発生を抑制できる。
【0093】
さらにその上で、ポンプボディ46に対するポンプカバー49の位置決めに供することになる第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54の外壁面53a,54aを機械加工によって比較的高精度に形成しているため、ポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置関係のばらつきが抑制され、第1,第2吸入吐出ポート14a,14bのポンプ要素42に対する相対位置精度も高めることができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、図6のステップS2において、図示外の固定治具にポンプボディ46を固定した状態でポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めし、その後のステップS3において機械加工装置のワーク保持具66にポンプハウジング43を保持させるものとしているが、図6のステップS2に相当する工程におけるポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めを、機械加工装置のワーク保持具にポンプボディ46を装着した状態で行うようにしてもよい。この場合には、ポンプハウジング43の組立が可能となるようにワーク保持具を構成する必要はあるが、ポンプハウジング43を組み立てた後にそのポンプハウジング43をワーク保持具66に取り付ける手間を省くことができるほか、ポンプボディ46とポンプカバー49の共加工時により近い状態でポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすることができるため、第1,第2軸受収容部48a,50aの同軸性をさらに向上させることができるメリットがある。
【0095】
また、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の外壁面は必ずしも断面略U字状のものである必要はなく、例えば第1ポンプカバー側位置決め溝53の変形例として図10の(a)に示すように、第1ポンプカバー側位置決め溝70のうち第1当接部としての外壁面70aを断面コ字状またはチャンネル状に形成することも可能であるほか、第1ポンプカバー側位置決め溝53の別の変形例として図10の(b)に示すように、第1ポンプカバー側位置決め溝71のうち第1当接部としての外壁面71aを断面略V字状に形成することも可能である。なお、図10の(a),(b)ではポンプカバー49の要部のみを示し、他の部分は省略して描いてある。
【0096】
つまり、相手側となる第1,第2位置決めピン59,60との当接をもってポンプボディ46とポンプカバー49との相対位置決めが可能でさえあれば、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の断面形状は問わない。但し、第1,第2ポンプカバー側位置決め溝の加工性を考慮すると、上述した第1の実施の形態のように第1,第2ポンプカバー側位置決め溝53,54を断面略U字状のものとし、例えばフライスに代表されるような回転する工具をもって容易に形成可能とすることが好ましいことは言うまでもない。
【0097】
また、本実施の形態におけるハウジングの組立方法の変形例として図11に示すように、ポンプボディ46とポンプカバー49との位置決め時、すなわち図6に示すステップS2およびステップS7に相当する工程において、ポンプボディ46側からポンプカバー49側に向けて突出する第2位置決め突部としての突出部72aを有する位置決め治具72をポンプボディ46に固定し、その位置決め用治具72の突出部72aのうちポンプカバー49側を向いて形成された当接面72bとポンプカバー49の外周面73との当接をもってポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすることも可能である。これにより、上述した第1の実施の形態における第2位置決めピン60と第2ポンプカバー側位置決め溝54とが不要になる。
【0098】
つまり、図11に示す変形例では、ポンプボディ46とポンプカバー49とを相対位置決めすべく、押圧治具62をもってポンプカバー49に付勢力Fを与えたときに、第1ポンプカバー側位置決め溝53の外壁面53aが第1位置決めピン59に当接するとともに、ポンプカバー49の外周面73が第2当接部として位置決め用治具72の当接面72bに当接することになる。これにより、ポンプボディ46とポンプカバー49とが一義的に相対位置決めされることになる。
【0099】
したがって、この変形例によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる上に、第2位置決めピン60と第2ポンプカバー側位置決め溝54とが不要となるため、ポンプ装置10の構造を簡素化できるメリットもある。
【0100】
さらに、上述した第1の実施の形態では本発明に係るハウジングの組立方法をポンプ装置10に適用した例を示したが、本発明の第2,第3の実施の形態として図12の(a),(b)にそれぞれ示すように、本発明に係るハウジングの組立方法をポンプ装置以外の機器類に適用することも可能である。
【0101】
図12の(a),(b)に示す第2,第3の実施の形態のハウジング74,80は、ともに第1ハウジング部材75,81と第2ハウジング部材76,82との間に環状のスペーサーリング83を挟持してなるものである。そして、図12の(a)に示す本発明の第2の実施の形態では、第1ハウジング部材75および第2ハウジング部材76に第1,第2加工部としての第1,第2軸挿通孔75a,76aがそれぞれ穿設され、それらの第1,第2軸挿通孔75a,76aに固定軸78が挿通配置されているとともに、例えば歯車やプーリーに代表されるような内蔵物である回転部材79がスペーサーリング83の内周側に収容されつつ、固定軸78に対して回転自在に外挿されている。
【0102】
そして、図12の(a)に示すハウジング74を組み立てる際には、支軸78および回転部材79を収容せずにハウジング74を組み立てた状態で第1,第2軸挿通孔75a,76aの共加工を行った後、ハウジング74を一旦分解し、支軸78および回転部材79の組み付けをともなう再組立を行うことになる。そこで、このハウジング74の組み立てを上述した第1の実施の形態と同様に行い、共加工前の組立時と共加工後の再組立時とで同様の条件でハウジング74を寄せ組みすることにより、第1,第2軸挿通孔75a,76a同士の同軸性が向上し、回転部材79が円滑に回転できるようになる。
【0103】
一方、図12の(b)に示す本発明の第3の実施の形態では、第1ハウジング部材81および第2ハウジング部材82に第1,第2加工部としての第1,第2摺動孔81a,81bがそれぞれ穿設されていて、内蔵物としてのスプール84が第1,第2摺動孔81a,81bに跨って軸方向で摺動可能に収容配置されている。
【0104】
そして、図12の(b)に示すハウジング80を組み立てる際には、スプール84を収容せずにハウジング80を組み立てた状態で第1,第2摺動孔81a,82aの共加工を行った後、ハウジング80を一旦分解し、スプール84の組み付けを伴う再組立を行うことになる。そこで、このハウジング80の組み立てを上述した第1の実施の形態と同様に行い、共加工前の組立時と共加工後の再組立時とで同様の条件でハウジング80を寄せ組みすることにより、第1,第2摺動孔81a,82aの同軸性が向上し、スプール84が円滑に摺動できるようになる。
【0105】
また、上述した第1の実施の形態では本発明に係るポンプ装置をパワーステアリング装置1に適用した例を示したが、本発明に係るポンプ装置はパワーステアリング装置以外の機器類に適用することも可能である。具体的には、例えば本発明の第4の実施の形態として図13に示すように、本発明に係るポンプ装置をフォークリフト85の油圧源として適用することも可能である。
【0106】
図13に示すフォークリフト85では、車体86の前部に設けられたマスト87にフォーク88が案内されていて、ポンプ装置89にて発生した油圧をサイドシフト用の油圧シリンダ90に供給することでフォーク88を作動させるようになっている。そして、ポンプ装置89は、図1〜5に示した第1の実施の形態と略同様のものである。
【0107】
したがって、この第4の実施の形態においても上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる。
【0108】
ここで、上述した各実施の形態から把握される特許請求の範囲に記載した以外の発明について、その効果とともに以下に説明する。
【0109】
(1)上記第1,第2位置決め突部は、円柱状を呈する第1,第2位置決めピンであることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【0110】
(1)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態が安定したものとなり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度が向上する。
【0111】
(2)上記第1,第2位置決めピンが第1ハウジング部材に圧入固定されていることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0112】
(2)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決めピンが第1ハウジング部材に対して強固に固定されることになるから、上記第1,第2当接部との当接時における上記第1,第2位置決めピンの傾動方向のぐらつきが抑制され、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度がより向上する。
【0113】
(3)軸方向に沿って延びる第1,第2位置決め溝が上記第2ハウジング部材の外周面にそれぞれ形成されていて、それら第1,第2位置決め溝の外壁面が上記第1,第2当接部として上記第1,第2位置決めピンに当接していることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0114】
(3)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め溝に代えて貫通孔を形成する場合と比較して上記第2ハウジング部材を径方向で小型化することができる。
【0115】
(4)上記第1,第2位置決め溝の外壁面は、断面略U字状にそれぞれ形成されていることを特徴とする(3)に記載のポンプ装置。
【0116】
(4)に記載の発明によれば、例えばフライスに代表されるような回転する工具をもって上記第1,第2位置決め溝を容易に形成できるようになる。
【0117】
(5)上記第1,第2位置決め溝の外壁面が、機械加工によってそれぞれ仕上げられていることを特徴とする(4)に記載のポンプ装置。
【0118】
(5)に記載の発明によれば、上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係のばらつきが抑制されることになるため、上記第1,第2ハウジング部材に吸入ポートや吐出ポートが形成される場合、それらのポートのポンプ要素に対する相対位置精度を高めることができる。
【0119】
(6)上記第2位置決めピンは、上記第1駆動軸挿通孔に対して上記第1位置決めピンと対称な位置から上記揺動方向側にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする(1)に記載のポンプ装置。
【0120】
(6)に記載の発明によれば、上記第2位置決めピンに対する上記第2当接部の当接が強まり、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態がより安定したものとなるから、上記第1,第2ハウジング部材の相対位置決めの精度をさらに向上させることができる。
【0121】
(7)上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材とは反対側の面に、上記電動モータ側の電動モータ側位置決め突部との嵌合をもって上記モータ駆動軸に対する位置決めを行う位置決め孔が機械加工によって形成されていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工と上記位置決め孔の機械加工とがワンチャック状態にて行われていることを特徴とする請求項4に記載のパワーステアリング装置。
【0122】
(7)に記載の発明によれば、上記ポンプ駆動軸と上記モータ駆動軸との同軸性が向上することにより、上記モータ駆動軸から上記ポンプ駆動軸への動力伝達効率が上記電動モータの正転時と逆転時とで変化することが抑制されることになる。これにより、左右方向の操舵力が均一化されて操舵フィーリングがより向上する。
【0123】
(8)軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に挟持されたカムリングと、
上記カムリングの内周側に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置され、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを結合する結合手段と、
を備えたポンプ装置におけるハウジングの組立方法であって、
上記ポンプ要素およびポンプ駆動軸の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第1組立工程と、
その第1組立工程の後に、上記第1,第2駆動軸挿通孔の内周面に共加工を施す加工工程と、
その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材同士を分離する分解工程と、
その分解工程の後に、上記ポンプ要素およびポンプ駆動軸を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを組み合わせた上で、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを上記結合手段をもって結合する第2組立工程と、
を含むことを特徴とするポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0124】
(8)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接により、上記第2組立工程において上記加工工程時における第1,第2ハウジング部材同士の相対位置関係を略再現することができるから、ポンプ装置の各構成部品の加工精度を極端に高めることなく、つまり製造コストの高騰を招くことなく、第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性を飛躍的に向上させることができる。
【0125】
(9)上記第1組立工程において、上記第1,第2ハウジング部材間に上記カムリングを挟持した状態で、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その上で上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを結合することを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0126】
(9)に記載の発明によれば、上記第2組立工程後の最終組立状態により近い状態で上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工が行われることになるため、上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をより高めることができる。
【0127】
(10)上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材と対向する面に、上記ポンプ要素が摺動するポンプ要素摺動面が機械加工によって形成されているとともに、
上記第1ハウジング部材のうち上記ポンプ要素摺動面の外周側であって且つそのポンプ要素摺動面と同一平面上に、上記第1,第2ハウジング部材同士を組み合わせた状態で外部に露出する機械加工基準面が機械加工によって形成されてい
て、
上記加工工程における上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工は、上記第1,第2ハウジング部材を保持するワーク保持具に上記機械加工基準面を当接させることで上記第1,第2ハウジング部材を上記ワーク保持具に対して位置決めした状態で行われることを特徴とする請求項(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0128】
(10)に記載の発明によれば、上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工の基準となる上記機械加工基準面を比較的高精度に形成されるポンプ要素摺動面と同一平面上に設定することにより、上記機械加工基準面を上記ポンプ要素摺動面と同時に機械加工できるようになる。
【0129】
そして、このように形成される上記機械加工基準面を基準として上記第1,第2駆動軸挿通孔の共加工を行うことにより、上記第1,第2駆動軸挿通孔の上記ポンプ要素摺動面に対する直角度が向上し、上記ポンプ要素と上記ポンプ要素摺動面との間の摺動抵抗が低減されてポンプ装置の機械効率が向上する上に、上記ポンプ要素と上記ポンプ要素摺動面との間のいわゆるかじりが抑制されるメリットがある。
【0130】
(11)上記第1,第2組立工程において、上記第2ハウジング部材の外周面のうち上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とが径方向でオーバーラップする軸方向領域を押圧することにより、上記第1,第2当接部を上記第1,第2位置決め突部にそれぞれ当接させることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0131】
(11)に記載の発明によれば、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接状態が安定したものとなり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置精度を高めることができる。
【0132】
(12)上記結合手段は、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングの周方向で複数設けられ、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを共締め固定するハウジング締結ボルトであって、
上記第2組立工程において、上記各ハウジング締結ボルトのうち上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接を強める方向に締め付けトルクが作用するハウジング締結ボルトを最初に締め付けることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0133】
(12)に記載の発明によれば、上記各ハウジング締結ボルトの締め付け時における上記第1ハウジング部材または上記第2ハウジング部材の共回りを抑制できるようになり、上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度をより高めることができる。
【0134】
(13)上記第2組立工程において、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接を強める方向に締め付けトルクが作用するハウジング締結ボルトのうち上記第2当接部から最も離間したハウジング締結ボルトを最初に締め付けることを特徴とする(12)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0135】
(13)に記載の発明によれば、上記第2組立工程において最初のハウジング締結ボルトを締め付けたときに上記第2位置決め突部と上記第2当接部との当接を強める方向に作用するモーメントの腕が長くなることから、上記第2位置決め突部に対する上記第2当接部の当接がより強いものとなり、上記第1,第2位置決めピンに対する上記第1,第2当接部の当接状態がより安定して上記第1,第2ハウジング部材同士の相対位置決め精度をさらに高めることができる。
【0136】
(14)上記結合手段は、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングの周方向で複数設けられ、上記第1,第2ハウジング部材およびカムリングを共締め固定するハウジング締結ボルトであって、
上記第1組立工程において、全てのハウジング締結ボルトをもって上記第1,第2ハウジング部材を結合することを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0137】
(14)に記載の発明によれば、上記加工工程における共加工が、上記第1,第2ハウジング部材に上記各ハウジング締結ボルトの軸力を作用させた状態、つまりポンプ装置の作動状態により近い状態で行われることになるため、ポンプ装置の作動時における上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をさらに高めることができる。
【0138】
(15)上記第1組立工程において、上記加工工程で上記第1ハウジング部材を保持することになる機械加工装置のワーク保持具に上記第1ハウジング部材を保持させた状態で上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めすることを特徴とする(8)に記載のポンプ装置におけるハウジングの組立方法。
【0139】
(15)に記載の発明によれば、上記第1組立工程後であって上記加工工程の前に上記ワーク保持具に上記第1ハウジング部材を保持させる手間を省くことができる上に、上記第1組立工程の後に直ちに上記加工工程を行うことができるようになるため、上記第1組立工程後から上記加工工程までの間の上記第1,第2ハウジング部材の取り扱い時において上記第1,第2ハウジング部材が位置ずれする虞がなく、上記第1,第2駆動軸挿通孔の同軸性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0140】
1…パワーステアリング装置
6…パワーシリンダ
6a…第1圧力室
6b…第2圧力室
6d…ピストン
7a…第1吸入吐出口
7b…第2吸入吐出口
10…ポンプ装置
12…電動モータ
42…ポンプ要素(内蔵物)
44…ポンプ駆動軸
46…ポンプボディ(第1ハウジング部材)
47a…ポンプ要素摺動面
47b…機械加工基準面
48…第1駆動軸挿通孔
49…ポンプカバー(第2ハウジング部材)
50…第2駆動軸挿通孔
53a…第1ポンプカバー側位置決め溝の外壁面(第1当接部)
54a…第2ポンプカバー側位置決め溝の外壁面(第2当接部)
55…カムリング
59…第1位置決めピン(第1位置決め突部)
60…第2位置決めピン(第2位置決め突部)
SW…ステアリングホイール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置され、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材を結合する結合手段と、
を備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、
上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
上記第1,第2ハウジング部材間に挟持状態で設けられ、上記ポンプ要素を内周側に収容する環状のカムリングをさらに備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2ハウジング部材間に上記カムリングを挟持した状態で予め共加工されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材と対向する面に、上記ポンプ要素が摺動するポンプ要素摺動面が機械加工によって形成されているとともに、
上記第1ハウジング部材のうち上記ポンプ要素摺動面の外周側であって且つそのポンプ要素摺動面と同一平面上に、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めした状態で外部に露出し、上記共加工時の基準となる機械加工基準面が機械加工によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
操舵アシスト用のパワーシリンダのうちピストンを挟んで両側に形成された第1,第2圧力室に、電動モータによって駆動される可逆式のポンプ装置に設けられた第1,第2吸入吐出口がそれぞれ接続されていて、ステアリングホイールから入力された操舵トルクに応じて上記電動モータを駆動制御することにより、上記第1,第2圧力室に選択的に作動液を供給するようになっているパワーステアリング装置において、
上記ポンプ装置は、
軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置されているとともに、上記電動モータのモータ駆動軸に接続されていて、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材を結合する結合手段と、
を備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、
上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項5】
第1ハウジング部材と、
上記第1ハウジング部材に対向配置され、その第1ハウジング部材との間に内蔵物を収容する第2ハウジング部材と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1,第2ハウジング部材の接離方向に直角な当接方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記当接方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
を備えていて、
上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ加工を施し、上記第1ハウジング部材に第1加工部を,上記第2ハウジング部材に第2加工部をそれぞれ形成した後に、それら第1,第2ハウジング部材間に内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材同士を結合してなるハウジングの組立方法であって、
上記内蔵物の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第1組立工程と、
その第1組立工程の後に、上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ加工を施し、それらの第1,第2ハウジング部材に上記第1,第2加工部をそれぞれ形成する加工工程と、
その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材同士を分離する分解工程と、
その分解工程の後に、上記内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材同士を組み合わせた上で、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第2組立工程と、
を含むことを特徴とするハウジングの組立方法。
【請求項1】
軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置され、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材を結合する結合手段と、
を備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、
上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
上記第1,第2ハウジング部材間に挟持状態で設けられ、上記ポンプ要素を内周側に収容する環状のカムリングをさらに備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2ハウジング部材間に上記カムリングを挟持した状態で予め共加工されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
上記第1ハウジング部材のうち上記第2ハウジング部材と対向する面に、上記ポンプ要素が摺動するポンプ要素摺動面が機械加工によって形成されているとともに、
上記第1ハウジング部材のうち上記ポンプ要素摺動面の外周側であって且つそのポンプ要素摺動面と同一平面上に、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めした状態で外部に露出し、上記共加工時の基準となる機械加工基準面が機械加工によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
操舵アシスト用のパワーシリンダのうちピストンを挟んで両側に形成された第1,第2圧力室に、電動モータによって駆動される可逆式のポンプ装置に設けられた第1,第2吸入吐出口がそれぞれ接続されていて、ステアリングホイールから入力された操舵トルクに応じて上記電動モータを駆動制御することにより、上記第1,第2圧力室に選択的に作動液を供給するようになっているパワーステアリング装置において、
上記ポンプ装置は、
軸方向に沿って第1駆動軸挿通孔が形成された第1ハウジング部材と、
その第1ハウジング部材に対向配置され、軸方向に沿って第2駆動軸挿通孔が形成された第2ハウジング部材と、
上記第1,第2ハウジング部材間に収容配置され、回転に伴って作動液の吸入および吐出を行うポンプ要素と、
上記第1,第2駆動軸挿通孔に回転自在に挿通配置されているとともに、上記電動モータのモータ駆動軸に接続されていて、上記ポンプ要素を回転駆動するポンプ駆動軸と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1ハウジング部材の径方向内側から当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して径方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
上記第1,第2ハウジング部材を結合する結合手段と、
を備えていて、
上記第1,第2駆動軸挿通孔は、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で予め共加工されているとともに、
上記結合手段は、上記共加工時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材同士を相対位置決めした状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合していることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項5】
第1ハウジング部材と、
上記第1ハウジング部材に対向配置され、その第1ハウジング部材との間に内蔵物を収容する第2ハウジング部材と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第1位置決め突部に対して上記第1,第2ハウジング部材の接離方向に直角な当接方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記当接方向で位置決めする第1当接部と、
上記第2ハウジング部材に形成され、上記第1ハウジング部材側から第2ハウジング部材側に向けて突出する第2位置決め突部に対して上記第1位置決め突部を中心とした上記第2ハウジング部材の揺動方向で当接することにより、上記第2ハウジング部材を第1ハウジング部材に対して上記揺動方向で位置決めする第2当接部と、
を備えていて、
上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ加工を施し、上記第1ハウジング部材に第1加工部を,上記第2ハウジング部材に第2加工部をそれぞれ形成した後に、それら第1,第2ハウジング部材間に内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材同士を結合してなるハウジングの組立方法であって、
上記内蔵物の収容を伴わずに上記第1,第2ハウジング部材を組み合わせつつ、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部との当接をもって上記第1,第2ハウジング部材を相対位置決めし、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第1組立工程と、
その第1組立工程の後に、上記第1,第2ハウジング部材にそれぞれ加工を施し、それらの第1,第2ハウジング部材に上記第1,第2加工部をそれぞれ形成する加工工程と、
その加工工程の後に上記第1,第2ハウジング部材同士を分離する分解工程と、
その分解工程の後に、上記内蔵物を収容しつつ上記第1,第2ハウジング部材同士を組み合わせた上で、上記加工工程時における上記第1,第2ハウジング部材の相対位置関係を再現すべく、上記第1,第2位置決め突部と上記第1,第2当接部とを当接させ、その状態で上記第1,第2ハウジング部材を結合する第2組立工程と、
を含むことを特徴とするハウジングの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−67625(P2012−67625A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211074(P2010−211074)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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