説明

ポンプ装置

【課題】ステムとノズルヘッドとの間に連結部材を介在させることで、内容液との接触による嵌合力の低下を防止したポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプシリンダ4、及び、下端側に筒状ピストンを有するステム8を含み、ポンプシリンダ4内に筒状ピストンを上方付勢させて嵌挿してなるポンプ機構2と、上記ステム8の上端部に筒壁の下半部を嵌合した連結筒12を有し、この連結筒12の上半部を、内筒部12c及び外筒部12bで形成する2重筒とした連結部材10と、頂壁26裏面から垂下する取付筒部30を上記内筒部12c及び外筒部12bの間に液密に嵌着させ、その取付筒部30に連通させたノズル32を前方突出してなるノズルヘッド24とを具備する。上記ステム8及び連結部材10を、ノズルヘッド24に比べて体積膨潤率の小さい材料で形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種ポンプ装置として、図4に示すように、ポンプシリンダ内に、ステムの下端部に形成した筒状ピストンを上方付勢状態で嵌合させてなるポンプ機構Pと、上記ステムの上端部に液密に嵌合させた取付筒部Dを含みかつこの取付筒部と連通したノズルを前方突出させたノズルヘッドNとで構成されたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−73759
【特許文献2】特開2009−78255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、膨潤性のある内溶液が収容され、詰替え等で繰り返し長期間使用する結果として、ノズルヘッドの取付筒部とステムとの嵌合個所において内容液との接触により寸法の変化が生じ、嵌合力が低下する場合があった。
【0005】
寸法の変化は、樹脂材料が内容液に触れて膨らむこと(本明細書において膨潤という)に起因するものと考えられる。特にノズルヘッドとステムとが異材質で形成されているときには、寸法のずれが大きくなる傾向がある。
【0006】
特許文献2によれば、例えば化粧料に含まれるオイル成分によって比較的膨潤し易い材料としてポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)が、また膨潤しにくい(或いは膨潤しない)材料として、ポリオキシメチレン(POM)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などがそれぞれ知られている。そしてポンプ装置のステムを膨潤しにくいPOM乃至PBTで形成することは従来公知である(段落0004,段落0017〜0018参照)。
【0007】
ステムをPOMやPBTで成形する場合には、ノズルヘッドをどうするかが問題となる。例えばノズルヘッドを比較的柔軟なPPなどで成形するときには、成型作業を円滑に行うことができるが、製品を使用する段階では、ノズルヘッドとステムとの嵌合箇所に上記膨潤による寸法のずれが生じ易い。
【0008】
他方、ノズルヘッド及びステムをともにPOM乃至PBTで成形するときには、ヘッド本体から突出したノズル部分を金型から取り出しにくく、型抜きが面倒となるそれがある。
【0009】
本発明の目的は、ステムとノズルヘッドとの間に連結部材を介在させることで、内容液との接触による嵌合力の低下を防止したポンプ装置を提供することである。
【0010】
第1の手段は、ポンプシリンダ4、及び、下端側に筒状ピストンを有するステム8を含み、ポンプシリンダ4内に筒状ピストンを上方付勢させて嵌挿してなるポンプ機構2と、
上記ステム8の上端部に筒壁の下半部を嵌合した連結筒12を有し、この連結筒12の上半部を、内筒部12c及び外筒部12bで形成する2重筒とした連結部材10と、
頂壁26裏面から垂下する取付筒部30を上記内筒部12c及び外筒部12bの間に液密に挟み込み、その取付筒部30の内部に連通させたノズル32を前方突出してなるノズルヘッド24と、を具備し、
上記ステム8及び連結部材10を、ノズルヘッド24に比べて体積膨潤率の小さい材料で形成している。
【0011】
本手段は、図2に示す如く上半部を2重筒部(内筒部12c及び外筒部12b)とする連結筒12を有する連結部材10を提案している。それら2重筒部の間にノズルヘッド24の取付筒部30を挟み込み、ノズルヘッド24が膨潤しても嵌合力が低下しないようにしている。ステム8及び連結部材10をノズルヘッド24に比べて内容液の特定成分(油類など)に対する体積膨潤率が小さい材料で形成する。
【0012】
「連結部材」は、図3に示す内筒部12c及び外筒部12bの間に取付筒部30を挟み込み、内容液との接触による取付筒部30の膨張力Fに外筒部12bの締め付け力Fで対抗するようにしている。これについては後述する。好適な図示例では、上記外筒部12bに外向きフランジ状壁部20を介して連続する嵌合筒部22を、ノズルヘッド24の外周壁28内に嵌着させることで、上記締め付けを一層確実なものにしている。
【0013】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記ステム8及び連結部材10を同じ種類の樹脂で形成した。
【0014】
こうすることでステム8及び連結部材10の間の寸法のずれも小さくすることができる。
【0015】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記ステム8及び連結部材10を、POM或いはPBTで形成し、かつノズルヘッド24をPP又はPEで形成した。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、連結筒12の内筒部12c及び外筒部12bの間にノズルヘッド24の取付筒部30を嵌着させたから、膨潤の影響により嵌合個所の嵌合力が低下することを防止できる。
第2の手段に係る発明によれば、ステム8及び連結部材10を同じ種類の樹脂で形成したから、ステム8と連結部材10との嵌合個所に隙間ができることを防止できる。
第3の手段に係る発明によれば、ノズルヘッド24をPP又はPEで、ステム8及び連結部材10を膨潤の影響を受けにくいPOM或いはPBTで成形したから、嵌合力の低下を生じにくいポンプ装置を比較的容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るポンプ装置の一部切欠き側面図である。
【図2】図1のポンプ装置の要部の側方から見た縦断面図である。
【図3】図1のポンプ装置のA−A方向の横断面図である。
【図4】従来のポンプ装置の一部切欠き側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から図3は、第1実施形態に係るポンプ装置を示している。このポンプ装置は、図1に示す如く、ポンプ機構2と連結部材10とノズルヘッド24とで構成される。これら各部材は、特に断らない限り合成樹脂で形成できる。
【0019】
ポンプ機構2は、ポンプシリンダ4と装着部材6とステム8とを含む。
【0020】
このポンプ機構2は、従来公知のものであり、容器の口頸部に装着できるように構成している。簡単に説明すると、上記ポンプシリンダ4は、上端部に図示しない鍔部を有する。
【0021】
上記装着部材6は、上記口頸部外面への螺合用の装着筒部6aの上端部に内向きフランジ6bを付設し、内向きフランジ6bと口頸部との間に上記ポンプシリンダ4の鍔部を挟持可能に設ける。また上記内向きフランジ6bの内縁から保護筒部6cを起立している。
【0022】
上記ステム8は、下端部に筒状ピストン(図示せず)を有し、この筒状ピストンを上記ポンプシリンダ4内に摺動可能に嵌合させ、ステム8の上部を保護筒部6cの上方へ突出する。ステム8は全体として一体品としてもよく、また筒状ピストンを別体にしてもよい。筒状ピストンとポンプシリンダ4との間にはコイルスプリング(図示せず)を介装する。
【0023】
連結部材10は、上記ステム8の上端部に下半部を液密に嵌合させた連結筒12を有する。連結筒12の上半部は、外筒部12b及び内筒部12cからなる2重筒部に形成している。これら外筒部12b及び内筒部12cの間には後述の取付筒部嵌着用の深溝16を形成している。
【0024】
本実施形態では、連結筒12の下半部12aから上方へ外筒部12bを延長するとともに、その下半部12aの上端から内向きフランジ状壁部12dを介して内筒部12cを起立している。また上記内向きフランジ状壁部12dは上記ステム8の上端に係止されている。
【0025】
また本実施形態では、上記外筒部12bの上端から外向きフランジ状壁部20を介して嵌合筒部22を垂下している。この嵌合筒部22の内径は、上記保護筒部6cの外径より大きくする。もっともこれら外向きフランジ状壁部20及び嵌合筒部22は省略することもできる。図示例では、図2に示す如く嵌合筒部22の下端部外面に係合リブ23を周設している。さらに図示の連結部材10は、全体として一部品として成形されている。
【0026】
上記ステム8及び連結部材10は、膨潤しにくい材料で形成する。これらの部材は、同種材料で形成することが望ましいが、同程度の体積膨潤率の材料で形成することもできる。好適な材料はPOM或いはPBTである。さらに膨潤しにくい材料として一般にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルなどが知られている(特許文献2の段落0040参照)。
【0027】
ノズルヘッド24は、本実施形態では、頂壁26の外周部から外周壁28を、また頂壁26の中央部裏面から取付筒部30をそれぞれ垂下している。上記外周壁28は嵌合筒部22の外面へ、また取付筒部30の下半部は外筒部12b及び内筒部12cの間の深溝16内へ、それぞれ嵌着している。これにより嵌合状態がさらに安定する。
【0028】
上記外周壁28は図2の如く上記嵌合筒部22の下端の係合リブ23まで延びており、この係合リブ23に嵌合可能な小内径部を外周壁28の下端部に形成している。
【0029】
上記取付筒部30の筒壁の厚さは、深溝16の巾と同等か或いはやや大きく、取付筒部30を上記外筒部12b及び内筒部12cの間に強制的に挟み込むようにしている。これにより、ノズルヘッド24が膨潤した後でも十分な嵌合力が発揮される。
【0030】
この取付筒部30の上端部の前側からは、取付筒部30及び外周壁28の上部を貫通して前方へ延びるノズル32を突設する。
【0031】
上記ノズルヘッド24は、ステム8及び連結部材10に比べて、オイル成分に対する体積膨潤率が大きい材料で形成する。なお、一般に体積膨潤率(%)は、例えば[膨潤による体積の増加分/膨潤前の体積]×100で与えられる。ノズルヘッド24の好適な材料はPPやPEなどである。
【0032】
上記構成によれば、本発明のポンプ装置を、内容物を収納した容器体の口頸部に装着し、ノズルヘッド24を押下げると、内容液がステム8、連結部材10、及びノズルヘッド24の各内面に接する。ノズルヘッド24は連結部材10に比べて体積膨潤率が大きいが、本発明の構成では次の理由により嵌合力の低下を生じない。
【0033】
第1に、図4の従来例の取付筒部Dはステムの外面に嵌合されているのに対して、本願の取付筒部30は外筒部12bの内面に嵌合されているからである。これにより取付筒部30の外径が膨潤により増加してもその膨張力Fに対して外筒部12bの締付け力Fが作用するので取付筒部30と外筒部12bとの間に大きな摩擦抵抗が生じ、嵌合力が確保される。
【0034】
第2に、本願の取付筒部30は、外筒部12b及び内筒部12cによって両側から挟まれているからである。これにより取付筒部30の厚みが膨潤により増加すると取付筒部30が深溝16内により密着するので、十分な嵌合力が得られる。
【0035】
他方、ステム8と連結部材10とは、同じ材料で形成されているので、これら2つの部材の間での寸法誤差を殆ど生じない。
【符号の説明】
【0036】
2…ポンプ機構 4…ポンプシリンダ 6…装着部材 6a…装着筒部
6b…内向きフランジ 6c…保護筒部 8…ステム
10…連結部材 12…連結筒 12b…外筒部 12c…内筒部 12d…内向きフランジ状壁部
16…深溝 20…外向きフランジ状壁部 22…嵌合筒部
23…係合リブ
24…ノズルヘッド 26…頂壁 28…外周壁 30…取付筒部 32…ノズル
D…取付筒部 N…ノズルヘッド P…ポンプ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプシリンダ(4)、及び、下端側に筒状ピストンを有するステム(8)を含み、ポンプシリンダ(4)内に筒状ピストンを上方付勢させて嵌挿してなるポンプ機構(2)と、
上記ステム(8)の上端部に筒壁の下半部を嵌合した連結筒(12)を有し、この連結筒(12)の上半部を、内筒部(12c)及び外筒部(12b)で形成する2重筒とした連結部材(10)と、
頂壁(26)裏面から垂下する取付筒部(30)を上記内筒部(12c)及び外筒部(12b)の間に液密に挟み込み、その取付筒部(30)の内部に連通させたノズル(32)を前方突出してなるノズルヘッド(24)と、を具備し、
上記ステム(8)及び連結部材(10)を、ノズルヘッド(24)に比べて体積膨潤率の小さい材料で形成したことを特徴とする、ポンプ装置。
【請求項2】
上記ステム(8)及び連結部材(10)を同じ種類の樹脂で形成したことを特徴とする、請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
上記ステム(8)及び連結部材(10)を、POM或いはPBTで形成し、かつノズルヘッド(24)をPP又はPEで形成したことを特徴とする、請求項2記載のポンプ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246883(P2012−246883A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120978(P2011−120978)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】