説明

ポーチドエッグ用電子レンジ調理容器

【課題】誰でも簡単に丁度良いゆで具合のポーチドエッグを調理することができるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器を提供する。
【解決手段】底面と側面が閉鎖され、上部が開放された外側容器2と、外側容器2の内部に装着される上部が開放された内側容器4であって、外側容器2の上部開口縁2cと係合する係合部4aと、係合部4aから外側容器2の内部下方に延在し、内側容器4の内外を液体流通可能にする流通孔4dを有する懸垂部4bと、懸垂部4bの下方に接続され、外側容器2の底面2aから浮き上がった状態でたまごを下から包囲するように保持するエッグポケット部4cとを有する内側容器4と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジでポーチドエッグ(半熟たまご)を簡単に調理可能なポーチドエッグ用電子レンジ調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
白身が緩く固まり、黄身は周辺部を除いてほぼ流動状態になっている半熟たまごは「ポーチドエッグ」と呼ばれ、一つの料理として広く親しまれている。
【0003】
ポーチドエッグは、一般的には鍋等の調理器具を用いて調理されるが、電子レンジを利用して調理することも行われている。
【0004】
鍋等の調理器具を用いてポーチドエッグを調理する場合は以下のようにして行う。
【0005】
鍋等に水とヴィネガーと塩を入れ、沸騰させる。次に、火を弱め、たまごをしずかにお湯の中に割り入れる。たまごはお湯の中に入れられると、直ぐ鍋の底に沈み、白身が白く濁り、拡散を始める。そこで、お箸やフォーク等により、拡散をしようとする白身をかき寄せ、白身が黄身にまとわりつくようにお箸やフォーク等を操作する。しばらく上記お箸やフォークの操作をしていると、お湯が白く濁り、たまごの白身が黄身の周辺部で緩く固まり、半熟状態になってたまご全体が浮き上がる。そこで、玉じゃくし等により、半熟になったたまごをすくい上げ、乾いたフキンで水気をとる。これでポーチドエッグの完成である。
【0006】
一方、電子レンジを用いてポーチドエッグを調理する場合は以下のようにして行う。
【0007】
耐熱性の小さなボールかコップ等の容器に水とヴィネガーと塩を入れ、たまごを割り入れ、たまごの黄身の膜にフォーク等で穴を開け、電子レンジで加熱する。たまごの上半分が半熟になったら電子レンジを止め、容器を取り出して容器内でたまごを裏返す。容器を電子レンジに戻し、再び加熱する。裏返されたたまごの上半分が半熟になったら電子レンジから容器を取り出し、容器からたまごを取り出してペーパータオル等にしずかに載せ、水気を切る。これでポーチドエッグの完成である。
【0008】
本願出願人が知る限り、ポーチドエッグの調理に特化し、誰でもポーチドエッグを簡単に作れるようにした電子レンジ調理容器は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−230295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、鍋等の調理器具を用いてポーチドエッグを調理する方法では、鍋等に水を沸騰させ、ヴィネガーと塩を入れ、たまごを割り入れた後は拡散をしようとするたまごの白身をお箸やフォーク等でかき寄せ、たまごの白身が黄身にまとわりつくようにしなければならない。また、たまごが半熟状態になって浮き上がると、玉じゃくし等により半熟になったたまごを手早くすくい上げ、乾いたフキンで水気をとらなければならない。
【0011】
上記の調理方法は、作業が煩雑であり、また適度なゆで具合のポーチドエッグを作るためには経験と熟練の技術を要するものである。
【0012】
一方電子レンジを用いてポーチドエッグを調理する方法では、耐熱性のボール等に水とヴィネガーと塩とたまごを入れ、電子レンジで加熱し、たまごの上半分が半熟になったらたまごを裏返して再び加熱し、裏返されたたまごの上半分が半熟になったら電子レンジからボール等を取り出し、容器からたまごを取り出しペーパータオル等で水気を切らなければならない。
【0013】
上記の調理方法も、作業が煩雑であり、また適度なゆで具合のポーチドエッグを得るためには電子レンジによる加熱具合など経験を要するものである。この方法では、調理する間は加熱具合を見るなど、人間が電子レンジに付き添わなければならない。
【0014】
そこで、本願発明の解決しようとする課題は、誰でも簡単に丁度良いゆで具合のポーチドエッグを調理することができるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器は、
底面と側面が閉鎖され、上部が開放された外側容器と、
前記外側容器の内部に装着される上部が開放された内側容器であって、前記外側容器の上部開口縁と係合する係合部と、前記係合部から前記外側容器の内部下方に延在し、前記内側容器の内外を液体流通可能にする流通孔を有する懸垂部と、前記懸垂部の下方に接続され、前記外側容器の底面から浮き上がった状態でたまごを下から包囲するように保持するエッグポケット部とを有する内側容器と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器は、前記内側容器を前記外側容器の内部に装着した状態で、前記内側容器と前記外側容器の上部開口を塞ぐ蓋を有するようにすることができる。
【0017】
前記蓋は、裏返すことにより、内部にたまごを収容できる容器になるようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器は、底面と側面が閉鎖され上部が開放された外側容器と、前記外側容器の内部に装着される上部が開放された内側容器とを有する。
【0019】
前記内側容器は、外側容器の上部開口縁と係合する係合部と、前記係合部から前記外側容器の内部下方に延在し、前記内側容器の内外を液体流通可能にする流通孔を有する懸垂部と、前記懸垂部の下方に接続され、外側容器の底面から浮き上がった状態でたまごを下から包囲するように保持するエッグポケット部とを有している。
【0020】
上記構造により、本発明によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器は、内側容器のエッグポケット部によってたまごを下から包囲するように保持し、内側容器の係合部と懸垂部により、たまごを外側容器の底面から浮き上がった状態で支持することができる。
【0021】
また、内側容器の懸垂部は内側容器の内外を液体流通可能にする流通孔を有するため、内側容器内部にお湯を流入させることができ、エッグポケット部のたまごの上面をお湯で覆うようにすることができる。
【0022】
このように、本発明によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器によれば、たまごは内側容器のエッグポケット部によって拡散されることなく保持され、エッグポケット部は外側容器の底面から浮き上がった状態で支持され、たまご全体がお湯の中に浸かった状態で加熱されるようにすることができる。
【0023】
このため、たまごの白身が拡散することがなく、たまごの外側全体から加熱することができ、外側容器の容量との関係で電子レンジの加熱時間を適宜定めておくことにより、誰でも簡単に丁度良いゆで具合のポーチドエッグを調理することができる。
【0024】
また、従来のポーチドエッグの調理方法では、たまごの白身が拡散する前に白身を固まらせる必要から、水にヴィネガーと塩を加えるようにしていたが、本願発明によれば、内側容器のエッグポケット部によってたまごを拡散させることなく保持することができるため、水にヴィネガーと塩を加える必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の外側容器の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の外側容器の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の内側容器の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の内側容器の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の蓋の側面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の使用状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の外側容器の縦断面図を示している。
【0028】
図2は、本実施形態の外側容器の斜視図を示している。
【0029】
図1と図2に示すように、本実施形態のポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の外側容器1は好ましくは耐熱性の樹脂からなり、概略椀型の本体部2と把手部3を有している。
【0030】
本体部2は、底面2aと側面2bとを有し、上部は開放されて開口部になっている。
【0031】
本体部2の上部開口部の縁、すなわち上部開口縁2cは側面2bの樹脂壁が折り返されて形成されている。
【0032】
外側容器1の本体部2の底面2aには、外側容器1を置いたときに安定するように、高台2dが設けられている。
【0033】
把手部3は、本体部2の上部開口縁2cと同一の高さに本体部2と一体的に形成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、外側容器1は把手の付いた椀型の形状を有しているが、本願発明はこれに限られず、外側容器1は底面と側面が閉鎖され、上部が開放された容器であればその形状は任意である。ただし、外側容器1は内部に液体を溜めることができるように底面と側面が連続していなければならない。
【0035】
把手部3は省略することができ、あるいは任意の形状とすることができる。本体部2の高台2dも省略することができ、あるいは任意の形状とすることができる。また、本体部2の上部開口縁2cは、後述するように内側容器の係合部と係合できる限り任意の形状とすることができ、本実施形態の形状に限られない。
【0036】
図3と図4は本実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の内側容器4を示している。図3は本実施形態による内側容器4の側面図、図4は本実施形態による内側容器4の平面図を示している。内側容器4は好ましくは耐熱性の樹脂からなる。
【0037】
内側容器4は図1,2の外側容器1の内部に装着できる形状に形成され、上部が開放されている。
【0038】
内側容器4は、外側容器1に装着したときに外側容器1の本体部2の上部開口縁2cと係合する係合部4aと、係合部4aから外側容器1の本体部2の内部下方に延在する懸垂部4bと、懸垂部4bの下方に接続された半球形のエッグポケット部4cとを有している。
【0039】
係合部4aは、外側容器1の本体部2の上部開口縁2cと同様の樹脂の折り返し部になっており、外側容器1の本体部2の上部開口縁2cと係合するように形成されている。
【0040】
懸垂部4bは、係合部4aから延びた樹脂製の壁体からなり、内側容器4の内外を液体流通可能にする流通孔4dを有している。
【0041】
エッグポケット部4cは、懸垂部4bの下端部に接続され、たまごを下から受け、たまごを包囲するように保持する形状に形成されている。具体的には、エッグポケット部4cは上部が開放した半球形の形状を有している。
【0042】
本実施形態では、エッグポケット部4cはたまご一個分の容積を有しているが、必要に応じてエッグポケット部4cの容積を調整することができる。
【0043】
内側容器4のエッグポケット部4cは、内側容器4を外側容器1の内側に装着したときに、係合部4aと懸垂部4bを介して、外側容器1の本体部2の上部開口縁2cから懸垂され(吊り下げられ)、底部が外側容器1の底面2aから浮き上がった状態に形成されている。
【0044】
係合部4aと懸垂部4bは上記機能、すなわちエッグポケット部4cの支持部材としての機能を有する限り、任意の形状あるいは当業者が任意になし得る構造とすることができる。
【0045】
複数のエッグポケット部4cが一体的に形成され、懸垂部4bの下端部に接続されているようにしてもよい。
【0046】
本実施形態の懸垂部4bの流通孔4dは、縦長のスリット状の形状を有しているが、流通孔4dは内側容器4の内外を液体流通可能にすることができれば任意の形状とすることができる。
【0047】
また、本実施形態ではエッグポケット部4cは上部が開放された半球形の形状を有しているが、エッグポケット部4cはたまごを下から受けるように保持することができれば任意の形状とすることができる。
【0048】
本実施形態では、内側容器4は把手部5を有している。内側容器4の把手部5は外側容器1の把手部3に嵌合できる形状とすることが好ましい。内側容器4の把手部5も省略することができる。
【0049】
図5は本実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器の蓋の側面図を示している。
【0050】
本実施形態の蓋6は、全体として椀の蓋の形状を有し、裏返すことにより、内部にたまごを収容できる容器になるように形成されている。
【0051】
蓋6の上部には裏返したときに安定して置けるように、把手6aが設けられている。
【0052】
なお、蓋6は後述するように余熱でたまごを加熱する場合に好都合であるが、本発明の実施の形態により適宜省略することができる。
【0053】
図6は組み立てられた本実施形態のポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10の縦断面図を示している。
【0054】
図6に示すように、組み立て時には内側容器4は外側容器1の内部に装着される。内側容器4の係合部4aは外側容器1の上部開口縁2cに係合し、内側容器4のエッグポケット部4cは、係合部4aと懸垂部4bとにより、外側容器1の本体部2の底面2aから浮き上がった状態で支持されている。
【0055】
蓋6は内側容器4の上部開口縁の内側に係合し、外側容器1と内側容器4の上部開口部を塞ぐように配置される。
【0056】
次に、本実施形態によるポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10の使用方法、すなわち、ポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10を用いたポーチドエッグの調理方法を説明する。
【0057】
最初に、内側容器4を外側容器1の内側に装着し、所定量の水を入れる。前記水が入った外側容器1と内側容器4を電子レンジに入れ、水が沸騰するまで加熱する。
【0058】
次に、蓋6を裏返してたまごの容器として使用し、たまごを蓋6に割り入れて楊枝やフォーク等によりたまごの黄身の膜に小さな孔を開ける。
【0059】
上記たまごを内側容器4のエッグポケット部4cに入れ、内側容器4に蓋6をして、電子レンジで所定時間(たとえば水が150ccのときは600Wで30秒)加熱し、電子レンジからポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10を取り出す。
【0060】
電子レンジからポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10を取り出した後は、レンジ加熱によって温まったお湯がレンジ加熱後もたまごを温め続け、余熱で放置することによりレンジ加熱直後まだ半生状態のたまごが丁度良いゆで具合に形成される。後は内側容器4を持ち上げ、ポーチドエッグの水切りを行う。水切り後は、内側容器4のエッグポケット部4cにポーチドエッグが調理された状態で保持されているので、任意の食器等に移せばよい。
【0061】
図7は、たまごを加熱中のポーチドエッグ用電子レンジ調理容器10の正面図を示している。
【0062】
図7に示すように、たまご11は内側容器4のエッグポケット部4cに入れられると、全体がエッグポケット部4cによって下から包囲するように保持され、黄身11aが白身11bに取り囲まれた状態でエッグポケット部4cに納まる。エッグポケット部4cによってたまご11が保持されるため、お湯に浸されても白身11bが拡散することがない。
【0063】
加熱中は、たまご11の下方は沸騰したお湯が存在し、上方は沸騰したお湯によって覆われている。このため、たまご11は外側全体から加熱される。加熱の間、たまご11に対して何ら外部から手を加える必要はない。
【0064】
水の量と電子レンジのワット数によって適宜定められた時間加熱し、必要に応じてそれに加えて余熱で放置することにより、エッグポケット部4cの内部に丁度良いゆで具合のポーチドエッグが形成される。
【0065】
内側容器4を持ち上げれば、水分は流通孔4dから流出し、水切りを行うことができる。
【0066】
なお、お湯の余熱でたまご11を温め続ける場合は、蓋6によってお湯の上部には保温層が形成され、ポーチドエッグの周囲はお湯に囲まれているため、効率よく余熱を利用して調理することができる。
【0067】
以上のように、本発明のポーチドエッグ用電子レンジ調理容器によれば、調理中に手を加える必要がなく、かつ、経験や熟練した技術を必要とするなく、誰でも簡単に丁度良いゆで具合のポーチドエッグを調理することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 外側容器
2 本体部
2a 底面
2b 側面
2c 上部開口縁
2d 高台
3 把手部
4 内側容器
4a 係合部
4b 懸垂部
4c エッグポケット部
5 把手部
6 蓋
6a 蓋の把手
10 ポーチドエッグ用電子レンジ調理容器
11 たまご
11a 黄身
11b 白身

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面が閉鎖され、上部が開放された外側容器と、
前記外側容器の内部に装着される上部が開放された内側容器であって、前記外側容器の上部開口縁と係合する係合部と、前記係合部から前記外側容器の内部下方に延在し、前記内側容器の内外を液体流通可能にする流通孔を有する懸垂部と、前記懸垂部の下方に接続され、前記外側容器の底面から浮き上がった状態でたまごを下から包囲するように保持するエッグポケット部とを有する内側容器と、
を有することを特徴とするポーチドエッグ用電子レンジ調理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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