説明

ポーリング伝送システム、ポーリング伝送方法、および、ポーリング伝送プログラム

【課題】親局と複数の子局との間を通信回線で結合した伝送システムにおいて、データ量の大きい重要なデータを効率的に伝送すること。
【解決手段】一次局である親局1と二次局である複数の子局2とをポーリング方式にてデータ通信するポーリング伝送システムであって、子局2は、優先データに関する各子局2のポーリング回数を優先要求データとして作成し、ポーリング方式におけるポーリング要求への応答として、優先要求データを含めたポーリング応答を返信し、親局1は、通常の所定順序に従ってポーリング要求を送信する処理よりも、優先要求データで指定された各子局2のポーリング回数分のポーリング要求を送信する処理を優先させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーリング伝送システム、ポーリング伝送方法、および、ポーリング伝送プログラムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一次局としての親局と、二次局としての複数の子局との間を通信回線で結合した伝送システムにおいて、ポーリング方式を使用したデータの送受信が採用されている。
【0003】
ポーリング方式とは、親局から複数の子局に対して、送信したいデータがあるか問い合わせる方式である。問い合わせは、ポーリング信号を一定間隔で親局から各子局に送信することによって行われる。子局において送信したいデータがある場合には親局から送信されたポーリング信号への応答という形でデータが親局に送信される。これにより、親局と複数の子局とを結ぶ通信回線が1本しかない場合であっても、データの送受信時に各子局間で競合が発生してしまうことがなくなる。
【0004】
このような伝送システムにおいては、各子局からの送信データによって通信回線が過負荷とならないよう、決められた帯域でデータ伝送を行う必要がある。よって、1回の問い合わせ(ポーリング信号)に対する、子局からの送信できるデータ量(以下、1回分送信容量と称する)はあらかじめ決められており、同一子局から多量のデータを送信する場合は、データを1回分送信容量ごとに分割してから、親局に送信することになる。
【0005】
このデータ分割送信処理のため、親局から順次一定周期で問い合わせ信号を受信するポーリング方式においては、短時間に多量のデータが発生した場合には、1回のポーリングではデータを送りきれずに子局に送信待ちデータが溜まってしまい、親局への送信に時間を要してしまうことになる。
【0006】
例えば、電力系統における送電線地絡や、トランス故障の障害が発生したことにより、下流系統に属する機器やその他関連機器に障害が発生することが想定され、同一子局において多量のデータを発生させることとなる。また、この障害の波及は同一子局のみに限らず、近隣の系統に影響し、他子局においてもデータを発生させることが想定される。
これでは、障害が発生した子局及び障害の波及先である子局においても、親局へのデータの伝送に時間を要してしまうことになる。結果として、子局の障害情報の収集が遅れたことにより、プラント緊急停止の処理が遅れ、プラント機器の損傷などの二次的な障害が発生する恐れがある。
【0007】
このように、親局から複数の子局に対して送信したいデータがあるか問い合わせるポーリング方式においては、子局の送信待ちデータの収集にタイムクリティカル性が保証できない問題があり、その解消方法としてこれまでにも幾例かの技術が公開されている。
例えば、特許文献1には、子局としての主機装置の重要性、優先性、関連性に応じてポーリング順番またはポーリング周期を変更し、システムの必要情報を収集する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−94071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術を用いてポーリング伝送を行った場合、同一子局から多量のデータを一度に送信することで、多量にデータが発生した子局の送信待ちデータを優先的に収集することができ、伝送システム全体の情報収集の効率を高めている。
【0010】
一方、システムとして特に重要度の高いデータ(緊急性の高い障害のデータなど)が子局に溜まってしまったときには、その重要度の高いデータを他のデータよりも優先して送信する仕組みが求められている。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の技術では、重要度の高いデータにポーリングの送信順序が廻ってくるまでには、最長で「データ分割数×ポーリング周期×子局数」の時間を待つ必要があり、重要度の高いデータであるにもかかわらず、送信待ちが発生していた。
【0012】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、親局と複数の子局との間を通信回線で結合した伝送システムにおいて、データ量の大きい重要なデータを効率的に伝送することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、一次局である親局と二次局である複数の子局とをポーリング方式にてデータ通信するポーリング伝送システムであって、
前記子局が、優先要求部と、要求回数算出部と、ポーリング処理部と、記憶手段とを有し、
前記記憶手段には、前記親局に送信する対象である入力データと、前記入力データのうちの優先データを特定するための優先データパラメータと、前記優先データおよびその関連データを送信するためのポーリング方式のデータ通信の回数を規定する優先要求データとがそれぞれ記憶され、
前記記憶手段の前記優先データパラメータには、その優先データパラメータで特定される前記優先データごとに、その優先データに関連する前記各子局の前記入力データを送信するための前記各子局のポーリング回数が対応づけられており、
前記優先要求部が、自局である前記子局に入力される前記入力データと前記優先データパラメータとを照合することにより、前記入力データに前記優先データが含まれていることを検知し、
前記要求回数算出部が、検知した前記優先データ自局の前記記憶手段内の前記入力データのデータ量と、前記優先データパラメータに対応づけられている前記各子局のポーリング回数とをもとに、検知した前記優先データに関する前記各子局のポーリング回数を前記優先要求データとして作成し、
前記ポーリング処理部が、前記優先要求データが存在するときには、前記親局から受信したポーリング方式におけるポーリング要求への応答として、前記優先要求データを含めたポーリング応答を返信し、
前記親局が、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信するまでは、所定順序に従って1台ずつ子局を選択してポーリング要求を送信し、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信したときに、前記所定順序に従ってポーリング要求を送信する処理よりも、前記優先要求データで指定された前記各子局のポーリング回数分のポーリング要求を送信する処理を優先させることを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、親局と複数の子局との間を通信回線で結合した伝送システムにおいて、データ量の大きい重要なデータを効率的に伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に関する伝送システムの構成例およびその伝送システムで使用されるポーリング応答信号のフォーマット例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する子局の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する子局の内部データ構造例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に関する監視制御対象機器に優先データが発生しないときの伝送システム全体の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に関する監視制御対象機器に優先データが発生したときの伝送システム全体の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に関するデータ入力部が実行する、入力データバッファの格納処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に関する優先要求部が実行する、送信待ちデータバッファの格納処理の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に関する子局の要求回数算出部が実行する、ポーリング回数算出処理の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に関するポーリング処理部が実行する、データの送受信処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、伝送システムの構成例を示す図である。この伝送システムは、一次局としての親局1と、二次局としての子局2(子局2a,子局2b,…子局2n:nは自然数)とで構成されており、共通な一本の通信回線3上に親局1と子局2が接続されている。子局2は、収容する各監視制御対象機器4の状態を監視しており、状態変化を入力データとして受け取っている。
これらの各装置(親局1、子局2、および、監視制御対象機器4)は、それぞれCPUとメモリとネットワークインタフェースとを備えるコンピュータとして構成され、CPUがプログラムをメモリに読み込んで実行することにより、各処理を実行する。
【0018】
親局1は、子局2の監視を行う装置であり、送信データの有無を問い合わせる問い合わせ信号としてのポーリング要求信号を、一定の時間間隔で通信回線3を通して子局2に送信する。ポーリング要求信号の送信は、子局2のそれぞれに対して規定順序に従って順番に行われる。自局宛のポーリング要求信号を受信した子局2では、親局1に送信すべき送信待ちデータが存在する場合には、そのデータをポーリング応答信号に付加して親局1に送信する。
以下の説明では、ポーリング要求信号とポーリング応答信号との組を、1回のポーリング処理として説明する。なお、1つのポーリング応答信号では、送信可能なデータ量が1回分送信容量以下に制限される。
【0019】
例として、親局1が子局2aを指定したポーリング要求信号を送信する場合を考える。まず、自局宛てのポーリング要求信号を受信した子局2aでは、親局1に送信すべき送信待ちデータがある場合には、送信待ちデータを付加したポーリング応答信号を、通信回線3を通して親局1に送信する。一方、他局宛てのポーリング要求信号を受信した子局2b〜子局2nは、そのポーリング要求信号を破棄する。
【0020】
親局1は、ポーリング要求信号の指定先を、子局2a→子局2b→…→子局2nと順番に変更して、子局2aと同様にポーリング要求信号を送信することにより、各子局2からのデータの収集を行う。つまり親局1は、各子局2宛にポーリング要求信号を送信して各子局2から返信されたポーリング応答信号のデータを受信することにより、各子局2が送信待ちデータとして保持しているデータの収集を行う。
【0021】
なお、1つのポーリング応答信号で送信可能なデータ量は、1回分送信容量以下に制限される。よって、ポーリング応答信号として、1回分送信容量を超えるデータを送信したい子局2は、データ分割処理によって、1回分送信容量以下のデータブロックを複数個作成し、今回のポーリング応答信号にはそのデータブロックのうちの1つを格納する。
そして、子局2は、次のポーリング要求信号が到着したときに、次のデータブロックを送信する。なお、1回分送信容量は、あらかじめ子局2内の設定ファイルなどに記録されている。
【0022】
なお、本実施形態では、データ分割処理における「データ分割数」とは、データの分割処理を実行した回数ではなく、分割された結果生成されたデータブロックの個数であり、そのデータブロックを送信するためのポーリング回数と一致する。
例えば、(送信対象のデータ量)=26KBで、(1回分送信容量)=10KBの場合、このデータを10KBごとに2カ所で分割した結果、3つのデータブロック(10KB+10KB+6KB)が生成される。よって、この場合のデータ分割数とポーリング回数とは、ともに「3」である。
【0023】
図1(b)は、ポーリング応答信号のフォーマット例として、優先要求データ52が付加されていないパケットを示す。ポーリング応答信号は、ヘッダ部51と子局データ53とで構成される。
ヘッダ部51には、送信元や、宛先の情報が含まれている。
子局データ53には、1回分送信容量以下のデータ量のデータが含まれている。
【0024】
図1(c)は、ポーリング応答信号のフォーマット例として、図1(b)のポーリング応答信号に優先要求データ52が付加されているパケットを示す。ポーリング応答信号は、ヘッダ部51と優先要求データ52と子局データ53とで構成される。
優先要求データ52には、子局2ごとの親局1に対し要求するポーリングの回数が格納されている。ポーリングを要求しない子局2には、“0”がセットされる。
【0025】
図2は、子局2の内部構成例を示すブロック図である。図では子局2aを例に挙げているが、子局2b〜子局2nも全て同様の構成としてあるものとする。子局2aにはデータ入力部20と、入力データバッファ21と、優先要求部22と、送信待ちデータバッファ25と、優先要求データバッファ26と、ポーリング処理部27が含まれる。優先要求部22には優先データパラメータ格納部23と、要求回数算出部24と、が含まれる。
【0026】
データ入力部20は、監視制御対象機器4aからの入力データを読み取り、自局へデータ入力をする。
入力データバッファ21には、データ入力部20から入力した入力データが格納される。
優先データパラメータ格納部23は、優先データとそれに関連して各子局2にて発生するであろうデータ量を親局1へ効率よくデータ送信出来るよう算出したポーリング回数が、あらかじめ登録されている。
【0027】
優先要求部22は、入力データバッファ21に格納されているデータと優先データパラメータ格納部23を比較し、入力データバッファ21に優先度の高いデータ(以下、優先データと称する)が存在するか否かを判断する。また、要求回数算出部24において算出されたポーリング回数を含む優先要求データ52を、優先要求データバッファ26に格納する。
要求回数算出部24は、送信待ちデータバッファ25に格納されているデータ量と、優先データパラメータ格納部23とを参照し、親局1へ送信するポーリング回数を算出する。
【0028】
送信待ちデータバッファ25は、親局1への送信を控えるデータが格納される。優先要求データバッファ26は、親局1への送信を控える優先要求データ52が格納される。ポーリング処理部27は、通信回線3に接続されており、親局1から送信されたポーリング要求信号を受信する。ここで、自局宛てのポーリング要求信号を受信した際には、送信待ちデータバッファ25を確認し、順番に読み出したデータをポーリング応答信号に付加する。また、優先要求データバッファ26を確認し、順番に読み出した優先要求データ52をポーリング応答信号に付加し、親局1に向けポーリング応答信号を送信する。
【0029】
図3は、子局2の内部データ構造例を示す説明図である。
図3(a)に示す入力データバッファ21には、データID61ごとに、データ入力部20から入力される監視制御対象機器4に関するデータ62が格納されている。データID61は、データ62を個別に識別可能とするための識別子である。データ62には、親局1に送信すべきデータそのものが格納される。
【0030】
図3(b)に示す優先データパラメータ格納部23には、優先データID71ごとに、各子局2の予測ポーリング回数72が格納されている。優先データID71は、データID61のうちの優先データを示すデータの識別子である。よって、データID61と優先データID71とで一致するレコードのデータ62は、優先データである。予測ポーリング回数72には、管理者などにより、あらかじめ優先データごとの予測値が入力されている。
【0031】
図3(c)に示す2つのデータバッファ(送信待ちデータバッファ25、優先要求データバッファ26)には、図3(a)の入力データバッファ21のデータ、および、図3(b)の優先データパラメータ格納部23のデータをもとに、優先要求部22によってデータが設定される。
送信待ちデータバッファ25には、入力データバッファ21のデータ62が、入力データバッファ21にデータが入力された順に格納される。
優先要求データバッファ26には、予測ポーリング回数72のポーリング回数(後記する変数N)と、送信待ちデータバッファ25のデータ量を送信するためのポーリング回数(後記する変数M)とをもとにした各子局2のポーリングの要求回数が、優先要求データ52として格納される。なお、ポーリングを要求しない子局2の優先要求データ52には“0”がセットされる。
【0032】
図4は、監視制御対象機器4に優先データが発生しないときの伝送システム全体の動作を示すフローチャートである。
S101において、監視制御対象機器4は、障害などの異常イベントが発生していない通常動作時において、制御用データ(計測値など)が発生すると、そのデータを収容先である子局2aに通知する。
S102において、子局2aのデータ入力部20は、監視制御対象機器4からの入力データを、入力された順に入力データバッファ21に格納する。
S103において、子局2aの優先要求部22は、入力データバッファ21のデータID61が、優先データパラメータ格納部23の優先データID71と一致しないことをチェックした後、入力データバッファ21のデータ62を、送信待ちデータバッファ25に格納する。
S104において、親局1は、規定順序に従って、子局2aへとポーリング要求する。
S105において、子局2aのポーリング処理部27は、ポーリング要求への応答として、送信待ちデータバッファ25内のデータ62を図1(b)の子局データ53に格納し、ヘッダ部51を付したポーリング応答信号を作成し、ポーリング要求元である親局1へと応答する。
親局1と各子局2とは、規定順序に従って、ポーリング要求とポーリング応答との組の処理を行う。つまり、親局1は、子局2aの次の規定順序である子局2bとのポーリング要求(S106)/ポーリング応答(S107)を行った後、子局2bの次の規定順序である子局2nとのポーリング要求/ポーリング応答(S108)とを行う。
【0033】
図5は、監視制御対象機器4に優先データが発生したときの伝送システム全体の動作を示すフローチャートである。
S200において、監視制御対象機器4は、障害などの異常イベントの発生を検知する。
S201において、監視制御対象機器4は、S200の異常イベントに関する優先データ(図3(a)のデータID61=「5」のデータなど)として、データ量が大きいデータを取得(計測)し、そのデータを収容先である子局2aに通知する。
S202において、子局2aのデータ入力部20は、監視制御対象機器4からの入力データを、入力された順に入力データバッファ21に格納する。
S203において、子局2aの優先要求部22は、入力データバッファ21のデータID61が、優先データパラメータ格納部23の優先データID71と一致することをチェックした後、入力データバッファ21のデータ62を、送信待ちデータバッファ25に格納するとともに、優先要求データ52を作成して優先要求データバッファ26に格納する。
S204において、親局1は、規定順序に従って、子局2aへとポーリング要求する。
S205において、子局2aのポーリング処理部27は、ポーリング要求への応答として、送信待ちデータバッファ25内のデータ62を図1(c)の子局データ53に格納し、ヘッダ部51と、S203の優先要求データ52とを付したポーリング応答信号を作成し、ポーリング要求元である親局1へと応答する。
【0034】
そして、親局1は、S205のポーリング応答信号に優先要求データ52が付されている場合には、規定順序に従った各子局2とのポーリング処理を一時中断し、受信した優先要求データ52に記載されている順序および回数に従って、各子局2とのポーリング処理を優先的に(割り込み処理として)行う。
例えば、図1(c)のポーリング応答信号の優先要求データ52には「子局2aに5回、子局2nに3回」の優先データ用のポーリングが要求されているので、子局2aに5回ポーリングし(S211,優先送信)、子局2nに3回ポーリングする(S212,優先送信)。なお、優先要求データ52には優先データの送信順序を規定しなくてもいいときには、子局2ごとのポーリング回数を行う順序は、どのような順序としてもよい。
【0035】
さらに、親局1は、受信した優先要求データ52に関するポーリングの割り込み処理を終えた後は、一時中断していた通常の規定順序に従った各子局2とのポーリング処理を再開する。例えば、親局1は、子局2aの次の規定順序である子局2bとのポーリング要求(S206)/ポーリング応答(S207)を行う。
これにより、優先データの送信(S211,S212)は、通常の規定順序のポーリング処理(S206,S207)を待つことなく、優先的に割り込み処理として実現できる。
【0036】
図6は、データ入力部20が実行する、入力データバッファ21の格納処理(S102,S202)の例を示すフローチャートである。
データ入力部20は、監視制御対象機器4aからのデータ入力を受ける(S11)。入力データに変化があるか否かが判断され(S12)、変換がないときにはS11に戻る。入力データに変化があれば、その変化したデータを入力データバッファ21に格納する(S13)。
【0037】
図7は、優先要求部22が実行する、送信待ちデータバッファ25の格納処理(S103,S203)の例を示すフローチャートである。
まず、入力データバッファ21に格納されているデータのデータID61と、優先データパラメータ格納部23の優先データID71を比較し(S21)、入力データバッファ21に優先データが存在するか否かを判断する(S22)。優先データが存在しないと判断された場合には、入力データバッファ21のデータは送信待ちデータバッファ25に格納される(S27)。
【0038】
一方、S22で優先データが存在すると判断された場合には、各子局2を1つずつ選択してからポーリング回数算出処理(詳細は図8で後記する)を呼び出す(S23)処理を、全子局に対して処理済みになるまで(S24,Yes)繰り返す。
そして、S23のポーリング回数算出結果から、優先要求データ52を作成し(S25)、その優先要求データ52を優先要求データバッファ26に格納する(S26)。そして、処理をS27へと進める。
【0039】
図8は、子局2aの要求回数算出部24が実行する、ポーリング回数算出処理(S23)の例を示すフローチャートである。この図8の処理は、計算対象の子局2が1つ指定されてから呼び出される。以下の説明では、指定された子局2を、指定子局2と呼ぶ。
【0040】
要求回数算出部24は、指定子局2が自局であるか否かを判断する(S31)。自局である場合には、送信待ちデータバッファ25を参照し(S32)、送信待ちの子局データ53が存在するか否かを判断する(S33)。
S33で子局データ53が存在する場合には、その送信待ちのデータ量を確認し、データ分割数を算出する(S34)。算出したデータ分割数を示す変数“M”にて、“M←データ分割数”とする(S35)。なお、本実施形態においては、記号「A←B」は、変数Aに値Bを代入する処理を示す。
一方、S33で送信待ちデータが存在しない場合、または、S31で指定子局2が自局ではない場合には、データ分割数“M←0”とする(S36)。
【0041】
次に、優先データパラメータ格納部23の予測ポーリング回数72から、指定子局2に該当するポーリング回数を取得する(S37)。そして、S37で取得したポーリング回数を示す変数“N”にて、“N←該当パラメータのポーリング回数”とする(S38)。
さらに、優先要求データ52の指定子局2に該当するポーリング回数の算出結果として、“ポーリング回数←M+N”の値とする(S39)。
【0042】
例えば、図3(a)のデータID61=「5」の優先データが存在すると判定されると(図7のS22,Yes)、指定子局2としての子局2aの優先要求データ52は、送信待ちデータバッファ25のデータ分割量(M=3)と(図8のS35)、優先データパラメータ格納部23の予測ポーリング回数72の子局2aの回数「2」と(図8のS38)の和である「5」を、優先要求データ52の子局2aの格納位置に格納する(図8のS39)。
【0043】
図9は、ポーリング処理部27が実行する、データの送受信処理の例を示すフローチャートである。
まず、親局1からのポーリング要求信号を受信する(S41)。このポーリング要求信号は、親局1からS104やS204で送信されるものである。
優先要求データバッファ26内に優先要求データ52が存在するか否かを判断し(S42)、データが存在する場合には、その優先要求データ52を順に読み出して、図1(c)のようなポーリング応答信号に付加する(S43)。一方、S42で優先要求データ52が存在しない場合には、図1(b)のような優先要求データ52を付加しないポーリング応答信号となる。
次に、送信待ちデータバッファ25内に子局データ53が存在するか否かを判断する(S44)。子局データ53が存在する場合には、その子局データ53を順にポーリング応答信号に付加する(S45)。
【0044】
ここで、同一のポーリング応答信号に付加される優先要求データ52と、子局データ53との組み合わせには特に関係性は無く、読み出された順に付加される。そして、S42〜S45の各処理により構築したポーリング応答信号にヘッダ部51を付加してから、親局1に向け送信する(S46)。このS46の処理は、このポーリング要求信号は、S105やS205で送信されるものである。
【0045】
以上説明した本実施形態によると、子局2は、優先データパラメータ格納部23に設定されている優先データの入力を検知した際に、親局1に向け優先要求データ52を付加した応答信号を送信する。
優先要求データ52とは、通常のポーリング順に割り込んで、数回の連続したポーリングを送信することを親局1に対し要求するためのデータ構造である。
親局1は、優先要求データ52を応答信号から検知すると、優先データが発生していないときの通常のポーリング処理を行う前に、通常のポーリング順に割り込んで、優先要求データ52で示された回数および順序に従って、集中的に該当子局のポーリング送信を行う。
これにより、優先データは、通常のポーリング順序を待つことなく直ちに送信されるため、緊急度合いの高い優先データを、迅速に伝達することが可能となる。
よって、優先データの送信に要する時間を「データ分割数×ポーリング周期」の時間として短縮化できるので、伝送システム全体の優先データのスループットを高めることができるとともに、バッファからのデータ漏れを抑制できる。
【0046】
また、優先要求データ52は、自局である子局2のポーリング回数だけでなく、他局である子局2のポーリング回数も含めることとしてもよい。他局のポーリング回数は、例えば、優先データパラメータ格納部23に格納されている所定値が代入される。この所定値は、優先データのIDごとにその優先データに関連して他局で発生するデータ容量の予測値をもとに、そのデータ容量を親局1へ効率よく送信できるように算出したポーリング回数(データ分割数)である。
例えば、自局で発生した優先データが電力系統における送電線地絡データや、トランス故障の障害データであるときには、その関連データとして、親局1の運転員が次の制御指令を行う際の成立条件として必要な他局のデータが挙げられる。
これにより、自局で発生した優先データに関連して発生する他局のデータも、通常のポーリング順序を待つことなく直ちに送信することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 親局
2 子局
3 通信回線
4 監視制御対象機器
20 データ入力部
21 入力データバッファ
22 優先要求部
23 優先データパラメータ格納部
24 要求回数算出部
25 送信待ちデータバッファ
26 優先要求データバッファ
27 ポーリング処理部
51 ヘッダ部
52 優先要求データ
53 子局データ
61 データID
62 データ
71 優先データID
72 予測ポーリング回数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次局である親局と二次局である複数の子局とをポーリング方式にてデータ通信するポーリング伝送システムであって、
前記子局は、優先要求部と、要求回数算出部と、ポーリング処理部と、記憶手段とを有し、
前記記憶手段には、前記親局に送信する対象である入力データと、前記入力データのうちの優先データを特定するための優先データパラメータと、前記優先データおよびその関連データを送信するためのポーリング方式のデータ通信の回数を規定する優先要求データとがそれぞれ記憶され、
前記記憶手段の前記優先データパラメータには、その優先データパラメータで特定される前記優先データごとに、その優先データに関連する前記各子局の前記入力データを送信するための前記各子局のポーリング回数が対応づけられており、
前記優先要求部は、自局である前記子局に入力される前記入力データと前記優先データパラメータとを照合することにより、前記入力データに前記優先データが含まれていることを検知し、
前記要求回数算出部は、検知した前記優先データ自局の前記記憶手段内の前記入力データのデータ量と、前記優先データパラメータに対応づけられている前記各子局のポーリング回数とをもとに、検知した前記優先データに関する前記各子局のポーリング回数を前記優先要求データとして作成し、
前記ポーリング処理部は、前記優先要求データが存在するときには、前記親局から受信したポーリング方式におけるポーリング要求への応答として、前記優先要求データを含めたポーリング応答を返信し、
前記親局は、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信するまでは、所定順序に従って1台ずつ子局を選択してポーリング要求を送信し、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信したときに、前記所定順序に従ってポーリング要求を送信する処理よりも、前記優先要求データで指定された前記各子局のポーリング回数分のポーリング要求を送信する処理を優先させることを特徴とする
ポーリング伝送システム。
【請求項2】
前記要求回数算出部は、前記各子局のポーリング回数を計算するときに、
自局である前記子局に入力される前記入力データのデータ量を1回のポーリング応答で送信可能なデータ量で除算した結果であるデータ分割数と、前記優先データパラメータに対応づけられている自局のポーリング回数との和を、自局の前記優先要求データにおけるポーリング回数とし、
前記優先データパラメータに対応づけられている前記各子局としての他局のポーリング回数を、他局の前記優先要求データにおけるポーリング回数とすることを特徴とする
請求項1に記載のポーリング伝送システム。
【請求項3】
前記優先要求部は、前記入力データに前記優先データが含まれていることを検知するときに、前記記憶手段に格納されている前記入力データのデータIDと、前記優先データパラメータとして前記記憶手段に格納されている前記優先データのデータIDとを比較し、互いに一致するときに、その入力データを前記優先データとして検知することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のポーリング伝送システム。
【請求項4】
一次局である親局と二次局である複数の子局とをポーリング方式にてデータ通信するポーリング伝送システムによるポーリング伝送方法であって、
前記子局は、優先要求部と、要求回数算出部と、ポーリング処理部と、記憶手段とを有し、
前記記憶手段には、前記親局に送信する対象である入力データと、前記入力データのうちの優先データを特定するための優先データパラメータと、前記優先データおよびその関連データを送信するためのポーリング方式のデータ通信の回数を規定する優先要求データとがそれぞれ記憶され、
前記記憶手段の前記優先データパラメータには、その優先データパラメータで特定される前記優先データごとに、その優先データに関連する前記各子局の前記入力データを送信するための前記各子局のポーリング回数が対応づけられており、
前記優先要求部は、自局である前記子局に入力される前記入力データと前記優先データパラメータとを照合することにより、前記入力データに前記優先データが含まれていることを検知し、
前記要求回数算出部は、検知した前記優先データ自局の前記記憶手段内の前記入力データのデータ量と、前記優先データパラメータに対応づけられている前記各子局のポーリング回数とをもとに、検知した前記優先データに関する前記各子局のポーリング回数を前記優先要求データとして作成し、
前記ポーリング処理部は、前記優先要求データが存在するときには、前記親局から受信したポーリング方式におけるポーリング要求への応答として、前記優先要求データを含めたポーリング応答を返信し、
前記親局は、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信するまでは、所定順序に従って1台ずつ子局を選択してポーリング要求を送信し、
前記優先要求データを含めたポーリング応答を受信したときに、前記所定順序に従ってポーリング要求を送信する処理よりも、前記優先要求データで指定された前記各子局のポーリング回数分のポーリング要求を送信する処理を優先させることを特徴とする
ポーリング伝送方法。
【請求項5】
前記要求回数算出部は、前記各子局のポーリング回数を計算するときに、
自局である前記子局に入力される前記入力データのデータ量を1回のポーリング応答で送信可能なデータ量で除算した結果であるデータ分割数と、前記優先データパラメータに対応づけられている自局のポーリング回数との和を、自局の前記優先要求データにおけるポーリング回数とし、
前記優先データパラメータに対応づけられている前記各子局としての他局のポーリング回数を、他局の前記優先要求データにおけるポーリング回数とすることを特徴とする
請求項4に記載のポーリング伝送方法。
【請求項6】
前記優先要求部は、前記入力データに前記優先データが含まれていることを検知するときに、前記記憶手段に格納されている前記入力データのデータIDと、前記優先データパラメータとして前記記憶手段に格納されている前記優先データのデータIDとを比較し、互いに一致するときに、その入力データを前記優先データとして検知することを特徴とする
請求項4または請求項5に記載のポーリング伝送方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項記載のポーリング伝送方法を、前記親局および前記子局にそれぞれ実行させるためのポーリング伝送プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−193064(P2011−193064A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55252(P2010−55252)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】