ポールへのボックス固定具、及び当該ポールに固定されるボックス
【課題】
架空電線引込み用のポールが磁性金属製であることに着目し、傾斜配置された一対の磁石体を利用して、ポールに対してボックスをワンタッチで着脱可能にして、当該ポールに対するボックスの着脱の手間をなくすることである。
【解決手段】
柱状に形成された磁性金属製のポールP1 にボックスBを固定するためのボックス固定具Fであって、前記ボックスBが取付けられるボックス取付面1と、前記ポールP1 の外周面に磁着される一対の磁石体Mとを備え、前記一対の磁石体Mは、前記ポールP1 の外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体Mに対して他方の磁石体Mが傾斜配置された構成とする。
架空電線引込み用のポールが磁性金属製であることに着目し、傾斜配置された一対の磁石体を利用して、ポールに対してボックスをワンタッチで着脱可能にして、当該ポールに対するボックスの着脱の手間をなくすることである。
【解決手段】
柱状に形成された磁性金属製のポールP1 にボックスBを固定するためのボックス固定具Fであって、前記ボックスBが取付けられるボックス取付面1と、前記ポールP1 の外周面に磁着される一対の磁石体Mとを備え、前記一対の磁石体Mは、前記ポールP1 の外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体Mに対して他方の磁石体Mが傾斜配置された構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線引込み用の柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具、及び当該ポールに固定されるボックスに関するものである。なお、本明細書では「磁着」の用語が多用されるが、「磁着」とは、永久磁石の磁気吸引力を利用して、被固定物(ポール)に対して固定物(ボックス)を固定することを意味する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅内に給電用のケーブルを引き込んだり、或いは建物の工事現場等に前記ケーブルを引き込むには、その敷地内に架空電線を引き込むための配線用ポールが立設される。特に、工事現場内においては、工事中の使用電力を積算するための電力計等を収納するボックスが前記ポールに固定される。このポールの殆どは、鉄、鋼等の磁性金属製である。
【0003】
前記ポールにボックスを固定する固定具としては、特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1に開示の固定具は、バンドを用いてボックスをポールに固定するものであって、ポールの外径が異なっても同一のバンドの使用が可能な固定具となっている。即ち、多数の係止孔が一定ピッチで設けられたバンドを使用して、例えば、当該バンドをボックスの背面に固定された金具に挿通して、当該バンドの両端部を、当該バンドに設けられた係止孔を利用して前記固定具にそれぞれ係止させ、固定具に対して移動可能に設けられた締付部材に前記バンドを引っ掛けた状態で、固定具に螺合された締付ボルトにより前記締付部材をポールにおける固定具が取付けられている部分の接線方向に移動させることにより前記バンドの余長部を吸収して、当該バンドに張力を付与することにより、ポールに対してボックスを固定している。
【0004】
しかし、特許文献1の固定具は、同一のバンドが外径の異なる複数のポールに対して使用可能な利点はあるが、穴付きのバンドの使用が不可欠であるのに加え、当該穴付バンドを固定具の背面の金具に挿通させて、その両端部を固定具にそれぞれ引っ掛ける作業、及び締付ボルトを何回も廻してバンドの余長部を吸収して張力を付与させる作業が不可欠であって、特に、締付ボルトを何回も廻さないと、バンドに張力を付与できないので、この作業が極めて面倒である。また、ポールからボックスを取り外す際にも、同様にして締付ボルトを逆方向に何回も廻す必要があって、同様に面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−83998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、架空電線引込み用のポールが磁性金属製であることに着目し、傾斜配置された一対の磁石体を利用して、ポールに対してボックスをワンタッチで着脱可能にして、当該ポールに対するボックスの着脱の手間をなくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具であって、前記ボックスが取付けられるボックス取付面と、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、一対の磁石体が相対的に傾斜して配置されているため、当該一対の磁石体の双方がポールの外周面の接線方向に配置される位置において、磁性金属製の当該ポールに対して磁着される。よって、ボックス固定具の取付面にボックスを取付けて、当該ボックス固定具の一対の磁石体をポールの外周面に宛てがうのみで、当該ポールに対してボックスが磁着されるため、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できる。
【0009】
また、請求項1の発明によれば、ボックス固定具は、ボックスと別体となっているので、建築物の工事現場等に使用される仮設の磁性金属製のポールに対してのみ選択して使用することが可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されて、調整前後のいずれもポールに対して磁着可能であることを特徴としている。
【0011】
ボックス固定具を介してボックスがポールに固定された状態では、一対の磁石体の表面は、ポールの外周面に対していずれも接線方向に配置される。請求項2の発明では、一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されているため、ポールの外径に対応させて、当該一対の磁石体の相対的な傾斜角度を変更させることにより、外径の異なる複数のポールに対してボックスが固定可能となる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記一対の磁石体は、対向辺部が同一側に折り曲げられて、当該折曲げ部の先端面がポールに対する当接面となったヨークに収納され、当該ヨークの前記折曲げ部をポールの軸方向に沿わせた配置で前記一対の磁石体を介してボックスをポールに固定した状態で、前記ヨークの先端面がポールの外周面に当接して、前記磁石体の表面とポールの外周面との間に空隙を形成可能なように、前記ヨークの先端面は磁石体の表面よりも突出していることを特徴としている。
【0013】
磁性金属製のポールに対して一対の磁石体を備えたボックス固定具を介してボックスを固定する際に、当該磁石体を直接にポールの外周面に当接させると、磁着は可能であるが、磁束の殆どが磁石体の前記当接部を通して流れて、磁石体における空隙を有する部分の磁気吸引力が小さくなる。これに対して請求項3の発明のように、ポールに対して磁石体を収納しているヨークの先端面のみが当接して、磁石体の表面はポールの外周面に直接に当接しない構成にすると、当該磁石体の全表面と磁性金属製のポールとの間において磁束が発生し、結果的に、磁石体を直接にポールに当接させた場合に比較して大きな磁気吸引力(磁着力)が得られる。ここで、磁石体とポールとの間に作用する磁気吸引力は、当該磁石体とポールの外周面との間の距離の二乗に反比例するので、磁石体は、ポールに当接しないことを条件として、当該ポールの外周面との間の空隙を可能な限り小さくすることが望ましい。一方、磁石体がポールに直接に当接しないので、磁石体がポールに当接することにより発生の恐れのある当該磁石体の損傷、破損を防止できる利点もある。また、ヨークを構成している一対の折曲げ部がポールの軸方向に沿っているために、各折曲げ部の先端面は、ポールの軸方向に沿って連続して当該ポールに当接して、当該当接状態が安定している。この結果、一対の磁石体の磁着力によりポールに固定されているボックスの固定状態が安定して、ポールに対してボックスが取り外れにくくなる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、ポールに対する一対の磁石体の磁着により、当該ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部を備えていることを特徴としている。
【0015】
ポールに対する一対の磁石体の磁着力は、ポールに対してボックスを固定可能な大きさであって、軽い衝撃力が作用しても簡単には、取り外されないことが必要である。一方、ポールからボックスを取り外すには、比較的小さな力で簡単に取り外されることが好ましく、ポールに対するボックスの固定の確実性と、その取り外しの容易性は、相反する。そこで、請求項4の発明のように、ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部をボックス固定具が備えることにより、当該磁着解除部により一対の磁石体による磁着を強制解除させることが可能となって、ポールに対するボックスの固定を確実にしたうえで、当該ボックスの取り外しを容易にできる。
【0016】
請求項5の発明は、背面側にボックス固定部を一体に備えていて、柱状に形成された磁性金属製のポールに固定されるボックスであって、前記ボックス固定部は、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴としている。このため、請求項5の発明によれば、ボックス固定具がボックスと別体であることによる作用効果を除いて、請求項1の発明と同様の作用効果が奏される。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、一対の磁石体が相対的に傾斜して配置されているため、当該一対の磁石体の双方がポールの外周面の接線方向に配置される位置において、磁性金属製の当該ポールに対して磁着される。よって、ボックス固定具の取付面にボックスを取付けて、当該ボックス固定具の一対の磁石体をポールの外周面に宛てがうのみで、当該ポールに対してボックスが磁着されるため、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できる。また、一対の磁石体の相対的な傾斜角度が、ポールの外径に対応して調整可能であると、ポールの外径に対応させて、当該一対の磁石体の相対的な傾斜角度を変更させることにより、外径の異なる複数のポールに対してボックスが固定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ボックス固定具Fを用いてポールP1 にボックスBが固定された状態の斜視図である。
【図2】同様の状態をボックスBの前面から見た図である。
【図3】図2のX−X線拡大断面図である。
【図4】別のポールP2 にボックスBを取付けた状態の図2のX−X線拡大断面図に相当する図である。
【図5】図3のY−Y線拡大断面図である。
【図6】(a),(b)は、それぞれボックス固定具Fをボックス取付面1及び磁石体Mの側から見た斜視図である。
【図7】固定具本体Aと一対の磁石組付体Gとを分離させた斜視図である。
【図8】同様の状態の縦断面図である。
【図9】磁石組付体Gと磁着解除レバーKとを分離させた状態の斜視図である。
【図10】請求項1の発明に係るボックス固定具Fの固定原理を示す図である。
【図11】一対の磁着解除レバーKにより、ポールPに磁着されたボックス固定具Fが取り外される作用を示す平面図である。
【図12】一対の磁石組付体取付面2の円弧中心C21,C22がそれぞれ存在する場合におけるボックス固定具Fの左右一対のヨーク73の各先端面74aがいずれもポールP11,P12の外周面に当接することを示す模式図である。
【図13】一対の磁石組付体取付面2の円弧中心C23が共通である場合におけるボックス固定具Fの左右一対のヨーク73の各先端面74aがいずれもポールP13,P14の外周面に当接することを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、最良の実施例を挙げて、請求項1の発明を更に詳細に説明する。最初に、図1ないし図10を参照して、請求項1の発明に係るボックス固定具Fの構成について説明し、その後に、当該ボックス固定具Fを用いた磁性金属製のポールP1 に対するボックスBの固定、及びその解除について説明する。図1は、ボックス固定具Fを用いてポールP1 にボックスBが固定された状態の斜視図であり、図2は、同様の状態をボックスBの前面から見た図であり、図3は、図2のX−X線拡大断面図であり、図4は、別のポールP2 にボックスBを取付けた状態の図2のX−X線拡大断面図に相当する図であり、図5は、図3のY−Y線拡大断面図であり、図6(a),(b)は、それぞれボックス固定具Fをボックス取付面1及び磁石体Mの側から見た斜視図であり、図7は、固定具本体Aと一対の磁石組付体Gとを分離させた斜視図であり、図8は、同様の状態の縦断面図であり、図9は、磁石組付体Gと磁着解除レバーKとを分離させた状態の斜視図であり、図10は、請求項1の発明に係るボックス固定具Fの固定原理を示す図である。
【0020】
ボックス固定具Fは、図6ないし図9に示されるように、ボックスBを取付けるためのボックス取付面1を備えた固定具本体Aと、当該固定具本体Aのボックス取付面1と反対面に取付けられて、当該ボックス取付面1に対して垂直な面内に中心を有する円弧面に沿って移動可能な一対の磁石組付体Gと、各磁石組付体Gを構成する磁石ホルダー12に対して回動可能に連結される一対の磁着解除レバーKとで構成される。固定具本体A、磁石ホルダー12及び磁着解除レバーKは、いずれも樹脂で形成されている。固定具本体Aは、横断面が方形状の細長い直方体ブロック状を呈し、ポールP1 (P2 )に固定されるボックスBの幅に対応した長さ(L)を有していて、縦断面視における長手方向の中心位置に前記ボックス取付面1に対して垂直に設けられる中心線E(図3及び図4参照)に対して左右対称形状である。即ち、固定具本体Aは、ボックスBの背面51を密着させて、当該ボックスBを取付けるためのボックス取付面1と、当該ボックス取付面1と反対の面に、磁石組付体Gを取付けるための前記中心線Eに対して左右対称の一対の磁石組付体取付面2が設けられている。一対の磁石組付体取付面2は、ボックス取付面1に対して垂直な面上に位置していて、しかも前記中心線Eに対して対称な位置にそれぞれ中心C1 ,C2 を有する円弧面により、前記ボックス取付面1に対して平行な手前面3に凹状に形成されている。一対の磁石組付体取付面2の間は、凸曲面4により連結され、当該凸曲面4の長手方向の中心の最も突出した部分は、前記手前面3の延長面上に存在している。なお、円弧状の磁石組付体取付面2の半径Rは、ボックス固定具FによりボックスBを固定可能なポールP2 の最少半径(D2 /2)よりも小さい。
【0021】
また、図3、図4及び図6に示されるように、固定具本体Aにおける一対の磁石組付体取付面2の部分には、当該一対の磁石組付体取付面2の肉厚が全長に亘って一定となるように、それぞれボックス取付面1の側に開口した深い孔部5が形成されていると共に、固定具本体Aにおける前記一対の孔部5により三分割された各部分には、ボックスBの裏面に当該固定具本体Aを密着状態で固定するビス6を螺入させる複数本(実施例では3本)のビス下孔7が長手方向に沿って形成されている。ビス下孔7の深さは、当該ビス下孔7が形成された手前面3の肉厚が前記磁石組付体取付面2の肉厚と同一となるようにしてある(図3及び図4参照)。ボックス固定具Fの一対の磁石組付体取付面2には、それぞれ当該磁石組付体取付面2に対して磁石組付体Gを連結状態で取付ける連結ボルト8を挿通させる長孔9が長手方向に沿って形成され、各長孔9の両側には、一対のガイド突条11が形成されている。一対のガイド突条11の間に、磁石組付体Gの磁石ホルダー12の裏面に形成された被嵌合部12dが嵌合され、当該一対のガイド突条11と、固定具本体Aに連結ボルト8とを介して磁石組付体Gを連結固定した状態で、各磁石組付体Gが固定具本体Aの幅方向に微動するのを防止する。なお、図3及び図4に示されるように、固定具本体Aは、ボックスBの背面の全周縁に形成されたフランジ部52の間に嵌合されるため、当該固定具本体Aの長さ(L)は、ボックスBの幅方向のフランジ部52の内寸法に対応させてある。
【0022】
また、磁石組付体Gは、図7ないし図10に示されるように、浅い箱状をした磁石ホルダー12に長方形厚板状の磁石体Mが収納された構成である。磁石体Mは、磁束密度が高くて、強い磁力を有する「ネオジウム磁石」で構成され、ヨーク(継鉄)13で囲まれた状態で前記磁石ホルダー12に収納される。実施例のヨーク13は、方形状をした熱間圧延鋼鈑(SPHC)の短手方向の両端部を同一方向に折り曲げることにより、長手方向に沿った一対の折曲げ部14が対向して形成されて、内部に収容された磁石体Mの中心Sを通って、断面視において当該磁石体Mの表面Maに垂直な直線に対して左右対称形状となっている(図10参照)。ヨーク13の一対の折曲げ部14の間に磁石体Mを収容して、当該ヨーク13及び磁石体Mを前記磁石ホルダー12に収納した状態では、当該ヨーク13の各折曲げ部14の先端面14aは、磁石体Mの表面Ma、及び磁石ホルダー12の開口端面12aの双方に対して僅かに突出している。磁石ホルダー12の背面12bは、ボックス固定具Fに形成された円弧面状の磁石組付体取付面2の形状に対応した円弧面に形成され、しかも円弧面で形成された磁石ホルダー12の背面12bは、取付状態でボックス固定具Fの幅方向に沿って方形状の一対の凹部12cが形成されることにより残った部分は、ボックス固定具Fの一対の磁石組付体取付面2に形成された一対のガイド突条11の間に嵌合される被嵌合部12dとなっている。当該被嵌合部12dの機能は既述の通りである。また、磁石ホルダー12の収容凹所12gには、磁石体Mがヨーク13で覆われた状態で収容され、当該収容状態において、ヨーク13の折曲げ部14の先端面14aは、磁石体Mの表面Maよりも突出している(図10参照)。
【0023】
磁石組付体Gは、磁石体M、磁石ホルダー12及びヨーク13で構成され、当該磁石体M、磁石ホルダー12の底板部12e及びヨーク13の底板部15には、組付状態で一致して貫通形成される各貫通孔16,15a,12fがそれぞれ形成され、組付状態で一致する各貫通孔16,15a,12fに、固定具本体Aの磁石組付体取付面2の側から連結ボルト8が挿通されて、当該連結ボルト8の突出部と、当該固定具本体Aのボックス取付面1の側に形成された孔部5内に配置されたナット17との螺合により、固定具本体Aに対して磁石組付体Gが、円弧面状をした磁石組付体取付面2の曲面に沿ってスライド可能に取付けられる。なお、磁石体Mに形成された貫通孔16に挿通される連結ボルト8は、当該磁石体Mに磁着されて回転操作に支障を来すのを防止するために、非磁性体のステンレスで形成されている。固定具本体Aに対して磁石組付体Gが取付けられた状態において、互いに平行に配置されたヨーク13の一対の折曲げ部14は、固定具本体Aの長手方向に対して直交する方向に配置される。なお、磁石体Mに形成された貫通孔16の表面Maの側の部分は、連結ボルト8の頭部の形状に対応して円錐状になって、当該連結ボルト8の頭部は、磁石体Mの表面Maから突出しない。そして、ナット17を緩めて、一対の磁石組付体Gを円弧面状の磁石組付体取付面2に沿って互いに接近又は離間する方向に移動させて配置位置を変更させ、当該変更位置において各磁石組付体Gを連結ボルト8及びナット17を介して再度、磁石組付体取付面2に取付けると、一対の磁石組付体Gの間隔(N)〔図10参照〕が前記円弧面である磁石組付体取付面2に沿って移動することにより変更されて、一対の磁石組付体Gを構成している一対の磁石体Mの表面Maの延長面の交差角度である一対の磁石体の傾斜角度(θ)〔図10参照〕が変更される。これにより、同一のボックス固定具Fにより、外径(D)の異なるポールP1 (P2 )へのボックスBの固定が可能となる。なお、図10に示される符号(D)は、一般的なポールPの外径であって、図3及び図4に示されるポールP1 (P2 )の外径は、それぞれ(D1 ),(D2 )である。
【0024】
また、図10は、ポールPの外径(D)、一対の磁石組付体Gの中心の間隔(N)及び傾斜配置された一対の磁石体Mの各表面Maの延長面の交差角度である一対の磁石体の傾斜角度(θ)との関係を示している。図10において、ポールPに当接して磁着される一対の磁石組付体Gを構成する各磁石体Mの中心Sの間隔(N)は、以下の式で示される。ここで、「一対の磁石体Mの中心Sの間隔(N)」とは、正確には、断面視において、一対の磁石体Mの表面Maの中心Sを通り、しかも当該表面Maに対して垂直な直線と、ポールPの外周円とが交差する二つの点S’の間隔である。なお、図10において、C0 は、ポールPの中心を示す。
N=D×cos(θ/2)
【0025】
そして、図10において、「一対の磁石体Mの中心Sの間隔(N)」は、固定具本体Aの磁石組付体取付面2の円弧中心C1 ,C2 の位置とは無関係に、ポールPの外径(D)及び一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)のみによって、〔N=D×cos(θ/2)〕のように定められる。従って、ヨーク13は、対向辺部が同一方向に折り曲げられた各折曲げ部の高さが同一である限り、その断面形状が対称となって、ポールPの外径(D)とは無関係に、換言すると、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)とは無関係に、ポールPの中心(C0 )と磁石体Mの表面Maの中心Sとを結ぶ線分Jの延長線に対して対称に配置される。そのため、一対の磁石体Mの表面Maは、ポールPの外周面の接線方向に配置される。よって、ポールPの外径(D)とは無関係に、ヨーク13の2つの折曲げ部14の各先端面14aは、いずれも当該ポールPの外周面に当接する。
【0026】
また、図8、図9及び図11に示されるように、磁石組付体Gを構成する磁石ホルダー12の短手方向の各側面には、それぞれ支点軸部18が突設されていて、一対の支点軸部18を介して前記磁石ホルダー12に磁着解除レバーKが回動可能に取付けられている。磁着解除レバーKは、コの字形をしていて、前記磁石ホルダー12の三つの側面の外側に僅かの隙間を有して配置される連結枠部21の連結板部21aに操作レバー部22が、当該連結枠部21の一対の対向板部21bの延設方向と反対の側に延設された構成である。磁石ホルダー12の短手方向の各側面の外側に配置される一対の対向板部21bには、当該磁石ホルダー12の短手方向の各側面の外側に設けられた各支点軸部18が挿通支持される軸挿通孔23がそれぞれ形成されている。また、連結枠部21の各対向板部21bの対向面には、磁石組付体Gの磁石体Mが配置される側と反対側に開口していて、前記軸挿通孔23に通じる組付け溝部24がそれぞれ形成されている。連結枠部21の各対向板部21bの対向面に形成された各組付け溝部24は、磁石組付体Gの磁石ホルダー12に形成された一対の支点軸部18に対する磁着解除レバーKの連結枠部21の組み付けを容易にするためである。即ち、連結枠部21の各対向板部21bを僅かに拡開させた状態で、前記各組付け溝部24の開口側から磁石ホルダー12の各支点軸部18を挿入して、そのままの状態で、磁着解除レバーKの連結枠部21の間に磁石組付体Gが配置されるように、連結枠部21と磁石組付体Gを相対的に近接させると、拡開していた一対の対向板部21bが原形状に復元することにより、磁石ホルダー12の各支点軸部18は、磁着解除レバーKの連結枠部21の各対向板部21bに形成された各軸挿通孔23にそれぞれ挿通されて、磁石組付体Gに対して磁着解除レバーKが回動可能に連結される。
【0027】
磁着解除レバーKを構成する操作レバー部22は、天板部22aにおける連結枠部21の一対の対向板部21bの対向方向に沿った両端部に、一対の側板部22bが前記組付け溝部24の開口端の方向に向けて直角に連結されている。磁着解除レバーKの操作レバー部22は、一対の磁石組付体GによってポールPに磁着されているボックス固定具Fを当該ポールPから取り外すために、当該磁着解除レバーKを磁石組付体Gに対して回動させる時に、一対の側板部22bが固定具本体Aの各側面10の外側に配置されて、操作レバー部22の天板部22aが固定具本体Aの手前面3に当接するまで回動できるように、一対の側板部22bの内幅W2 は、固定具本体Aの幅W1 よりも広くなっている。
【0028】
次に、上記したボックス固定具Fを用いて、外径の異なる複数のポールP1 (P2 )に対してボックスBを固定する場合について説明する。図1ないし図3は、当該ボックス固定具Fにより固定可能な最大外径を有するポールP1 に対してボックスBを固定する例を示している。図10のボックス固定具Fの固定原理図に示されるように、当該ボックス固定具Fを構成する一対の磁石組付体Gの磁気吸引力により、ボックスBがポールPに固定された状態では、一対の磁石体Mの表面Maは、ポールPの外周面の接線方向に配置されて、当該磁石体Mの中心(方形状をした磁石体Mの表面Maの2本の対角線の交点)Sを通る垂線TがポールPの中心C0 を通過する必要がある。このことからして、ポールPの外径(D)と、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は、予め分かるので、前記式〔N=D×cos(θ/2)〕により、当該ポールPの外径(D)に対応した一対の磁石体M(又は一対の磁石組付体G)の中心Sの間隔(N)が算出される。そして、一対の磁石体Mの中心Sの間隔が(N)となるように、固定具本体Aの円弧面で構成される磁石組付体取付面2に対して一対の磁石組付体Gをスライドさせて、設定位置において、連結ボルト8及びナット17を用いて各磁石組付体Gを固定具本体Aに固定する。
【0029】
そして、図1ないし図3に示されるように、ポールP1 の外径に対応して、一対の磁石組付体Gの間隔が調整されたボックス固定具Fのボックス取付面1に対してボックスBの背面51を密着させて、当該ボックスBの内側において、当該ボックスBの底板部53に挿通された複数本のビス6を、固定具本体Aのボックス取付面1に形成されたビス下孔7に螺入させると、複数本のビス6を介して固定具本体Aのボックス取付面1にボックスBを取付けられる。ボックスBから見て、当該ボックスBに対して取付けられるボックス固定具Fの数は、一対の磁石体Mの磁気吸引力、ボックスBの重量等により決められるが、図1及び図2に示されるように、ボックスB側から見て、当該ボックスBの背面に取付けられるボックス固定具Fは、固定されたボックスBの安定性を考慮すると、当該ボックスBの背面51の上下の各端部に一つずつ取付けることが好ましい。
【0030】
次に、上下一対の各ボックス固定具Fの固定具本体Aのボックス取付面1にボックスBが取付けられた状態で、一対のボックス固定具FとポールP1 とを対向させた姿勢で、当該ボックスBをポールP1 の半径方向に沿って移動させて、一対のボックス固定具FをポールP1 の外周面に宛てがう。これにより、各ボックス固定具Fに設けられた一対の磁石組付体Gの磁気吸引力により、ボックスBは、一対のボックス固定具Fを介してポールP1 にワンタッチで固定される。ここで、各ボックス固定具Fを構成する一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は同一であるため、一対のボックス固定具Fを介してポールP1 に対してボックスBが固定された状態において、当該ボックスBは、必ずポールP1 の軸心方向に沿って配置され、当該軸心に対して傾斜配置されることはない。
【0031】
ポールP1 に対してボックスBが固定された状態では、磁着解除レバーKの連結枠部21の端面は、ポールP1 の外周面に接触することなく近接していると共に、操作レバー部22は、固定具本体Aの手前面3に対して鋭角の交差角度(α1 )を形成して、当該操作レバー部22の全体が、固定具本体Aの手前面3の前方に配置されて、ポールP1 に対する一対の磁石体Mの磁着部の接線方向に延出して配置されている。換言すると、左右一対の磁着解除レバーKは、ポールP1 (P2 )にボックスBを固定した状態で、一対の磁石体Mによる磁着を解除して、ポールP1 からボックスBを取り外す際に、人の手により操作可能な位置に配置されている。
【0032】
そして、一対の磁石体Mの磁気吸引力により、ボックスBがポールP1 に固定された状態では、図10のボックス固定具Fの固定原理図に示されるように、磁石組付体Gを構成するヨーク13の2つの折曲げ部14の各先端面14aのみがポールP1 の外周面に当接して、磁石体Mの表面MaとポールP1 の外周面との間には、僅かの隙間δが形成されて、当該磁石体Mの表面MaはポールP1 の外周面に直接に接触しない。ここで、一対の磁石体Mの各中心Sの間の距離Nを、上記計算式により算出してあるので、各磁石体MがポールP1 の外周面に対して僅かな隙間δを有して近接した状態では、当該磁石体Mの表面Maは、ポールP1 の外周面の接線方向と平行になる(図10参照)。この結果、一対の磁石体Mの各ヨーク13の折曲げ部14の計4つの先端面14aの全てが、ポールP1 の外周面に当接することになる。これに加えて、ヨーク13の各折曲げ部14は、ポールP1 の軸方向に沿っていて、各折曲げ部14 の先端面14aは、全長に亘ってポールP1 に当接するため、ポールP1 に対するヨーク13の当接状態が安定している。この結果、一対の磁石体Mの磁着力によりポールP1 に固定されるボックスBの固定状態が安定する。なお、ボックスBがポールP1 に固定された状態で、磁石体Mの外側を覆っているヨーク13の一対の折曲げ部14は、当該ポールP1 の軸方向に沿って配置される。
【0033】
ここで、磁石体Mを直接にポールP1 の外周面に当接させると、磁着は可能であるが、磁束の殆どが磁石体の前記当接部を通して流れて、磁石体Mにおける空隙を有する部分の磁気吸引力が小さくなるが、上記のように、磁石体Mの表面MaとポールP1 の外周面とを非接触にすると、磁石体Mの全表面と磁性金属製のポールP1 との間において磁束が発生し、結果的に、磁石体Mを直接にポールP1 に当接させた場合に比較して大きな磁気吸引力(磁着力)が得られる。また、磁石体MとポールP1 との間に作用する磁気吸引力は、当該磁石体MとポールP1 の外周面との間の距離の二乗に反比例するので、磁石体Mは、ポールP1 に当接しないことを条件として、当該ポールP1 の外周面との間の空隙を可能な限り小さくすることが望ましい。また、磁石体Mが直接にポールP1 の外周面に当接しないので、当接による磁石体Mの損傷、破損等も防止できる。なお、図1及び図2において、54は、ボックスBのカバーを示し、55は、ボックスBとカバー54とのヒンジ連結部を示す。
【0034】
一方、ポールP1 よりも外径の小さなポールP2 に対してボックスBを固定するには、図4に示されるように、固定具本体Aに対して磁石組付体Gを固定している連結ボルト8とナット17とを緩めて、一対の磁石体Mの中心Sの間隔NがポールP2 に対応するように、ポールP1 の場合よりも大きくした後に、再度固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gをそれぞれ固定する。そして、ポールP1 の場合と全く同様にして、ポールP2 の外周面に対して一対の磁石体Mを磁着させることにより、一対のボックス固定具Fを介してポールP2 にボックスBを固定する。
【0035】
ここで、図3及び図4の比較から理解できるように、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は、ポールPの外径が大きくなる程、大きくなる。上記例では、(θ1 >θ2 )の関係が成立する。なお、θ1 ,θ2 は、それぞれ本実施例のボックス固定具Fの最大及び最少の傾斜角度である。このため、一対一組となった二組のボックス固定具Fを介してポールP2 にボックスBを固定した状態では、磁着解除レバーKと、固定具本体Aの手前面3とのなす交差角度(α2 )は、ポールP1 に対してボックスBを固定した場合の交差角度(α1 )よりも大きくなる。
【0036】
ここで、図3及び図4において、C01,C02は、それぞれポールP1 ,P2 の中心であって、固定具本体Aに設けられた左右一対の磁石組付体取付面2の各円弧中心C1 ,C2 と異なる位置に配置されているので、ポールP1 ,P2 の外周面に対してボックス固定具Fを介してボックスBが磁着された状態において、ポールP1 ,P2 に対してボックス固定具Fが廻らないので、同じくポールP1 ,P2 に対してボックスBが廻らない。この構成も、ポールP1 に対するボックスBの固定状態の安定化に寄与する。
【0037】
更に、磁石体Mの外側がヨーク13で覆われ、この状態で当該磁石体Mが磁石ホルダー12に収納された一対の磁石組付体Gは、ポールP1 ,P2 の外径により定められる傾斜角度θ1 ,θ2 を有して固定具本体Aに対して連結ボルト8及びナット17を介してしっかり取付けられる。換言すると、ポールP1 ,P2 に対してボックスBを固定した状態で、一対の磁石組付体Gは、固定具本体Aに対して一体的に取付けられていて、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gがぐらついたり、微動したりすることはない。例えば、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gがぐらついたり、微動したりすると、ボックスBに不意な力が作用した場合に、ポールP1 ,P2 に磁着されている一対の磁石組付体Gに対してボックスBが微動したりして、ポールP1 ,P2 に対する一対の磁石組付体Gの磁着が解除され易くなる。しかし、上記したように、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gが一体的に取付けられていると、結果的に、一対の磁石組付体GとボックスBとが一体的に取付けられているようになって、前記微動等の発生がなくなって、ボックスBに作用する不意な力によっても、ポールP1 ,P2 からボックスBが外れにくくなる。
【0038】
一方、一対一組となった計二組の磁石体Mを介して磁性金属製のポールP1 (P2 )に磁着されているボックスBを当該ポールP1 (P2 )から取り外すのは容易ではない。これに対応して、請求項1の発明のボックス固定具Fには、左右一対の磁着解除レバーKが設けられているので、図11において、磁着解除レバーKの操作レバー部22を固定具本体Aの側に押し付けると、磁石ホルダー12に設けられた支点軸部18を中心にして前記磁着解除レバーKが回動されて、ポールP2 の外周面に接線方向に配置された状態で、当該外周面に近接している連結枠部21の各対向板部21bの磁石体Mの側の先端部21cがポールP2 の外周面に押圧される。この状態で、当該磁石体Mの磁着力に抗して当該磁着解除レバーKを更に回動させると、これに伴って、各対向板部21bの先端部21cのポールP1 (P2 )に対する押圧点が当該各対向板部21bの先端側に移行し、その途中において、最初にヨーク13の一対の折曲げ部14の各先端面14aのうち連結枠部21の先端側の折曲げ部14の先端面14aとポールP1 (P2 )との磁着が解除され、その後に別の先端面14aとポールP1 (P2 )との磁着が解除されて、ポールP2 の外周面に直接に当接していたヨーク13の折曲げ部14の先端面14aがポールP2 の外周面から強制的に分離される。即ち、ヨーク13の一対の折曲げ部14の各先端面14aのポールP1 (P2 )に対する磁着の解除は、時間的に分離して行われるので、ポールP1 (P2 )に対するボックスBの取り外しは、磁着力のみによりボックスBをポールP1 (P2 )に固定している当該磁着力の大きさを考慮すると、比較的容易に行える。
【0039】
そして、上記解除操作は、左右一対の磁着解除レバーKを同時に操作する方が個別操作よりも解除が確実となるので、ボックスBのカバー54と対向する位置に作業者が位置した状態で、左右の各手で一対の磁着解除レバーKを同時に操作するのが好ましい。
【0040】
ここで、段落「0025」において、一対の磁石体の傾斜配置状態において、各磁石体の表面がポールの接線方向に配置されているならば、ヨークの断面形状が対称である限り、当該ヨークの各折曲げ部の先端面は、いずれもポールの外周面に当接することを証明した。そして、図12及び図13においては、ボックス固定具Fの一対の磁石組付体Gを構成する左右一対のヨーク73は、外径の異なる各ポールP11,P12(P13,P14)の外周面に当接させた際に、当該各ポールP11,P12(P13,P14)に対してボックス固定具が廻らない状態で、各ヨーク73にそれぞれ2つずつ設けられた計4つの折曲げ部74の各先端面74aが、各ポールP11,P12(P13,P14)の外周面にいずれも当接するためには、図12及び図13で示される磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22(C23)と、各ポールP11,P12(P13,P14)の中心C11,C12(C13,C14)とが異なることが必要であることを、一般論的に説明している。図12は、前記実施例のように符号(2)で示される磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22が2つ存在する場合の模式図であり、図13は、同様に円弧中心C23が1つのみ存在する場合(左右の各磁石組付体取付面の円弧中心C23が共通の場合)の模式図である。また、図12及び図13において、63で示される直線は、「固定具本体の手前面」を示す。なお、ヨーク73は、板厚を太線表示(スケルトン表示)してある。
【0041】
図12において、各ポールP11,P12の外径が変化した場合には、ヨーク73の折曲げ部74の先端面74aは、磁石組付体取付面の円弧中心C21、C22を中心にして移動して、外径の大きな方のポールP12が、固定具本体の手前面63に近づくと共に、一対のヨーク73の間隔が狭くなって、左右一対のヨーク73の計4つの各先端面74aの全てがポールP11,P12の外周面に当接していることが分かる。しかも、各ポールP11,P12の中心C11,C12と、磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22とは異なる位置に配置されるので、各ポールP11,P12に対してヨーク73、即ちボックス固定具が廻ることもない。また、図12に示される例は、左右一対の磁石組付体取付面2にそれぞれ個別の円弧中心C1 ,C2 を有する前記実施例に近いものであって、ポールP11,P12の各中心C11,C12を結ぶ線分の延長線は、左右一対の磁石組付体取付面の各円弧中心C21,C22を結ぶ線分の垂直二等分線となる。なお、図12において、81は、磁石組付体取付面の円弧中心C21、C22を中心とする異なる外径のポールP11,P12に当接するヨーク73の先端面74aの軌跡である円弧を示す。
【0042】
また、図13においても、左右一対の磁石組付体取付面の円弧中心C23が共通である点を除いて、図12と同様のことを示している。当該円弧中心C23は、各ポールP13,P14の中心C13,C14と異なる位置に配置されているが、当該各中心C13,C14を結ぶ線分の延長線上に位置している。ここで、左右一対の磁石組付体取付面に共通の円弧中心C23と、各ポールP13,P14のいずれか一方の中心C13(C14)が一致した場合には、ボックス固定具は、左右一対の磁石組付体取付面に共通の円弧中心C23と同一の中心を有するポールに対して廻ってしまう。なお、図13において、82は、磁石組付体取付面の円弧中心C23を中心とする異なる外径のポールに当接するヨーク73の先端面74aの軌跡である円弧を示す。
【0043】
上記した請求項1の発明に係るボックス固定具Fは、ボックス取付面1にボックスBを取付けて使用する形態であるが、請求項5の発明のように、ボックスの背面側に、上記構成のボックス固定具Fと同一構成のボックス固定部を一体にして取付けられたものであっても、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できると共に、磁着解除レバーを備えている場合には、ポールからのボックスの取り外しも容易に行える。
【0044】
また、請求項1の発明に係るボックス固定具を用いてボックスを磁性金属製のポールに固定したり、或いは請求項5の発明に係るボックス固定具を一体に備えたボックスを前記ポールに固定する場合において、当該ポールとしては、工事現場に立設される仮設用のものと、常設用のものとがあり、いずれのポールに対しても使用可能であるが、工事終了後には、必ず撤去される仮設用のポールに対して使用する場合には、仮設用ポールに対するボックスの取り外しも容易となる特有の利点がある。
【0045】
また、請求項1の発明に係るボックス固定具に関しては、仮設用のポールに対してのみ請求項1の発明に係るボックス固定具を使用してボックスを固定し、常設のポールに対しては、別の固定手段によりボックスを長期に亘って固定するという選択が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
A:固定具本体
B:ボックス
C1,C2,C21〜C23:磁石組付体取付面の円弧中心
C0,C01,C02,C11〜C14:ポールの中心
F:ボックス固定具
G:磁石組付体
K:磁着解除レバー(磁着解除部)
M:磁石体
Ma:磁石体の表面
P,P1,P2,P11〜P14:磁性金属製のポール
θ:一対の磁石体の傾斜角度
δ:磁石体の表面とポールの外周面との隙間
1:ボックス取付面
2:磁石組付体取付面
9:長孔
12:磁石ホルダー
13,73:ヨーク
14,74:ヨークの折曲げ部
14a,74a:ヨークの折曲げ部の先端面
21:磁着解除レバーの連結枠部
22:磁着解除レバーの操作レバー部
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線引込み用の柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具、及び当該ポールに固定されるボックスに関するものである。なお、本明細書では「磁着」の用語が多用されるが、「磁着」とは、永久磁石の磁気吸引力を利用して、被固定物(ポール)に対して固定物(ボックス)を固定することを意味する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅内に給電用のケーブルを引き込んだり、或いは建物の工事現場等に前記ケーブルを引き込むには、その敷地内に架空電線を引き込むための配線用ポールが立設される。特に、工事現場内においては、工事中の使用電力を積算するための電力計等を収納するボックスが前記ポールに固定される。このポールの殆どは、鉄、鋼等の磁性金属製である。
【0003】
前記ポールにボックスを固定する固定具としては、特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1に開示の固定具は、バンドを用いてボックスをポールに固定するものであって、ポールの外径が異なっても同一のバンドの使用が可能な固定具となっている。即ち、多数の係止孔が一定ピッチで設けられたバンドを使用して、例えば、当該バンドをボックスの背面に固定された金具に挿通して、当該バンドの両端部を、当該バンドに設けられた係止孔を利用して前記固定具にそれぞれ係止させ、固定具に対して移動可能に設けられた締付部材に前記バンドを引っ掛けた状態で、固定具に螺合された締付ボルトにより前記締付部材をポールにおける固定具が取付けられている部分の接線方向に移動させることにより前記バンドの余長部を吸収して、当該バンドに張力を付与することにより、ポールに対してボックスを固定している。
【0004】
しかし、特許文献1の固定具は、同一のバンドが外径の異なる複数のポールに対して使用可能な利点はあるが、穴付きのバンドの使用が不可欠であるのに加え、当該穴付バンドを固定具の背面の金具に挿通させて、その両端部を固定具にそれぞれ引っ掛ける作業、及び締付ボルトを何回も廻してバンドの余長部を吸収して張力を付与させる作業が不可欠であって、特に、締付ボルトを何回も廻さないと、バンドに張力を付与できないので、この作業が極めて面倒である。また、ポールからボックスを取り外す際にも、同様にして締付ボルトを逆方向に何回も廻す必要があって、同様に面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−83998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、架空電線引込み用のポールが磁性金属製であることに着目し、傾斜配置された一対の磁石体を利用して、ポールに対してボックスをワンタッチで着脱可能にして、当該ポールに対するボックスの着脱の手間をなくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具であって、前記ボックスが取付けられるボックス取付面と、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、一対の磁石体が相対的に傾斜して配置されているため、当該一対の磁石体の双方がポールの外周面の接線方向に配置される位置において、磁性金属製の当該ポールに対して磁着される。よって、ボックス固定具の取付面にボックスを取付けて、当該ボックス固定具の一対の磁石体をポールの外周面に宛てがうのみで、当該ポールに対してボックスが磁着されるため、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できる。
【0009】
また、請求項1の発明によれば、ボックス固定具は、ボックスと別体となっているので、建築物の工事現場等に使用される仮設の磁性金属製のポールに対してのみ選択して使用することが可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されて、調整前後のいずれもポールに対して磁着可能であることを特徴としている。
【0011】
ボックス固定具を介してボックスがポールに固定された状態では、一対の磁石体の表面は、ポールの外周面に対していずれも接線方向に配置される。請求項2の発明では、一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されているため、ポールの外径に対応させて、当該一対の磁石体の相対的な傾斜角度を変更させることにより、外径の異なる複数のポールに対してボックスが固定可能となる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記一対の磁石体は、対向辺部が同一側に折り曲げられて、当該折曲げ部の先端面がポールに対する当接面となったヨークに収納され、当該ヨークの前記折曲げ部をポールの軸方向に沿わせた配置で前記一対の磁石体を介してボックスをポールに固定した状態で、前記ヨークの先端面がポールの外周面に当接して、前記磁石体の表面とポールの外周面との間に空隙を形成可能なように、前記ヨークの先端面は磁石体の表面よりも突出していることを特徴としている。
【0013】
磁性金属製のポールに対して一対の磁石体を備えたボックス固定具を介してボックスを固定する際に、当該磁石体を直接にポールの外周面に当接させると、磁着は可能であるが、磁束の殆どが磁石体の前記当接部を通して流れて、磁石体における空隙を有する部分の磁気吸引力が小さくなる。これに対して請求項3の発明のように、ポールに対して磁石体を収納しているヨークの先端面のみが当接して、磁石体の表面はポールの外周面に直接に当接しない構成にすると、当該磁石体の全表面と磁性金属製のポールとの間において磁束が発生し、結果的に、磁石体を直接にポールに当接させた場合に比較して大きな磁気吸引力(磁着力)が得られる。ここで、磁石体とポールとの間に作用する磁気吸引力は、当該磁石体とポールの外周面との間の距離の二乗に反比例するので、磁石体は、ポールに当接しないことを条件として、当該ポールの外周面との間の空隙を可能な限り小さくすることが望ましい。一方、磁石体がポールに直接に当接しないので、磁石体がポールに当接することにより発生の恐れのある当該磁石体の損傷、破損を防止できる利点もある。また、ヨークを構成している一対の折曲げ部がポールの軸方向に沿っているために、各折曲げ部の先端面は、ポールの軸方向に沿って連続して当該ポールに当接して、当該当接状態が安定している。この結果、一対の磁石体の磁着力によりポールに固定されているボックスの固定状態が安定して、ポールに対してボックスが取り外れにくくなる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、ポールに対する一対の磁石体の磁着により、当該ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部を備えていることを特徴としている。
【0015】
ポールに対する一対の磁石体の磁着力は、ポールに対してボックスを固定可能な大きさであって、軽い衝撃力が作用しても簡単には、取り外されないことが必要である。一方、ポールからボックスを取り外すには、比較的小さな力で簡単に取り外されることが好ましく、ポールに対するボックスの固定の確実性と、その取り外しの容易性は、相反する。そこで、請求項4の発明のように、ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部をボックス固定具が備えることにより、当該磁着解除部により一対の磁石体による磁着を強制解除させることが可能となって、ポールに対するボックスの固定を確実にしたうえで、当該ボックスの取り外しを容易にできる。
【0016】
請求項5の発明は、背面側にボックス固定部を一体に備えていて、柱状に形成された磁性金属製のポールに固定されるボックスであって、前記ボックス固定部は、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴としている。このため、請求項5の発明によれば、ボックス固定具がボックスと別体であることによる作用効果を除いて、請求項1の発明と同様の作用効果が奏される。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、一対の磁石体が相対的に傾斜して配置されているため、当該一対の磁石体の双方がポールの外周面の接線方向に配置される位置において、磁性金属製の当該ポールに対して磁着される。よって、ボックス固定具の取付面にボックスを取付けて、当該ボックス固定具の一対の磁石体をポールの外周面に宛てがうのみで、当該ポールに対してボックスが磁着されるため、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できる。また、一対の磁石体の相対的な傾斜角度が、ポールの外径に対応して調整可能であると、ポールの外径に対応させて、当該一対の磁石体の相対的な傾斜角度を変更させることにより、外径の異なる複数のポールに対してボックスが固定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ボックス固定具Fを用いてポールP1 にボックスBが固定された状態の斜視図である。
【図2】同様の状態をボックスBの前面から見た図である。
【図3】図2のX−X線拡大断面図である。
【図4】別のポールP2 にボックスBを取付けた状態の図2のX−X線拡大断面図に相当する図である。
【図5】図3のY−Y線拡大断面図である。
【図6】(a),(b)は、それぞれボックス固定具Fをボックス取付面1及び磁石体Mの側から見た斜視図である。
【図7】固定具本体Aと一対の磁石組付体Gとを分離させた斜視図である。
【図8】同様の状態の縦断面図である。
【図9】磁石組付体Gと磁着解除レバーKとを分離させた状態の斜視図である。
【図10】請求項1の発明に係るボックス固定具Fの固定原理を示す図である。
【図11】一対の磁着解除レバーKにより、ポールPに磁着されたボックス固定具Fが取り外される作用を示す平面図である。
【図12】一対の磁石組付体取付面2の円弧中心C21,C22がそれぞれ存在する場合におけるボックス固定具Fの左右一対のヨーク73の各先端面74aがいずれもポールP11,P12の外周面に当接することを示す模式図である。
【図13】一対の磁石組付体取付面2の円弧中心C23が共通である場合におけるボックス固定具Fの左右一対のヨーク73の各先端面74aがいずれもポールP13,P14の外周面に当接することを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、最良の実施例を挙げて、請求項1の発明を更に詳細に説明する。最初に、図1ないし図10を参照して、請求項1の発明に係るボックス固定具Fの構成について説明し、その後に、当該ボックス固定具Fを用いた磁性金属製のポールP1 に対するボックスBの固定、及びその解除について説明する。図1は、ボックス固定具Fを用いてポールP1 にボックスBが固定された状態の斜視図であり、図2は、同様の状態をボックスBの前面から見た図であり、図3は、図2のX−X線拡大断面図であり、図4は、別のポールP2 にボックスBを取付けた状態の図2のX−X線拡大断面図に相当する図であり、図5は、図3のY−Y線拡大断面図であり、図6(a),(b)は、それぞれボックス固定具Fをボックス取付面1及び磁石体Mの側から見た斜視図であり、図7は、固定具本体Aと一対の磁石組付体Gとを分離させた斜視図であり、図8は、同様の状態の縦断面図であり、図9は、磁石組付体Gと磁着解除レバーKとを分離させた状態の斜視図であり、図10は、請求項1の発明に係るボックス固定具Fの固定原理を示す図である。
【0020】
ボックス固定具Fは、図6ないし図9に示されるように、ボックスBを取付けるためのボックス取付面1を備えた固定具本体Aと、当該固定具本体Aのボックス取付面1と反対面に取付けられて、当該ボックス取付面1に対して垂直な面内に中心を有する円弧面に沿って移動可能な一対の磁石組付体Gと、各磁石組付体Gを構成する磁石ホルダー12に対して回動可能に連結される一対の磁着解除レバーKとで構成される。固定具本体A、磁石ホルダー12及び磁着解除レバーKは、いずれも樹脂で形成されている。固定具本体Aは、横断面が方形状の細長い直方体ブロック状を呈し、ポールP1 (P2 )に固定されるボックスBの幅に対応した長さ(L)を有していて、縦断面視における長手方向の中心位置に前記ボックス取付面1に対して垂直に設けられる中心線E(図3及び図4参照)に対して左右対称形状である。即ち、固定具本体Aは、ボックスBの背面51を密着させて、当該ボックスBを取付けるためのボックス取付面1と、当該ボックス取付面1と反対の面に、磁石組付体Gを取付けるための前記中心線Eに対して左右対称の一対の磁石組付体取付面2が設けられている。一対の磁石組付体取付面2は、ボックス取付面1に対して垂直な面上に位置していて、しかも前記中心線Eに対して対称な位置にそれぞれ中心C1 ,C2 を有する円弧面により、前記ボックス取付面1に対して平行な手前面3に凹状に形成されている。一対の磁石組付体取付面2の間は、凸曲面4により連結され、当該凸曲面4の長手方向の中心の最も突出した部分は、前記手前面3の延長面上に存在している。なお、円弧状の磁石組付体取付面2の半径Rは、ボックス固定具FによりボックスBを固定可能なポールP2 の最少半径(D2 /2)よりも小さい。
【0021】
また、図3、図4及び図6に示されるように、固定具本体Aにおける一対の磁石組付体取付面2の部分には、当該一対の磁石組付体取付面2の肉厚が全長に亘って一定となるように、それぞれボックス取付面1の側に開口した深い孔部5が形成されていると共に、固定具本体Aにおける前記一対の孔部5により三分割された各部分には、ボックスBの裏面に当該固定具本体Aを密着状態で固定するビス6を螺入させる複数本(実施例では3本)のビス下孔7が長手方向に沿って形成されている。ビス下孔7の深さは、当該ビス下孔7が形成された手前面3の肉厚が前記磁石組付体取付面2の肉厚と同一となるようにしてある(図3及び図4参照)。ボックス固定具Fの一対の磁石組付体取付面2には、それぞれ当該磁石組付体取付面2に対して磁石組付体Gを連結状態で取付ける連結ボルト8を挿通させる長孔9が長手方向に沿って形成され、各長孔9の両側には、一対のガイド突条11が形成されている。一対のガイド突条11の間に、磁石組付体Gの磁石ホルダー12の裏面に形成された被嵌合部12dが嵌合され、当該一対のガイド突条11と、固定具本体Aに連結ボルト8とを介して磁石組付体Gを連結固定した状態で、各磁石組付体Gが固定具本体Aの幅方向に微動するのを防止する。なお、図3及び図4に示されるように、固定具本体Aは、ボックスBの背面の全周縁に形成されたフランジ部52の間に嵌合されるため、当該固定具本体Aの長さ(L)は、ボックスBの幅方向のフランジ部52の内寸法に対応させてある。
【0022】
また、磁石組付体Gは、図7ないし図10に示されるように、浅い箱状をした磁石ホルダー12に長方形厚板状の磁石体Mが収納された構成である。磁石体Mは、磁束密度が高くて、強い磁力を有する「ネオジウム磁石」で構成され、ヨーク(継鉄)13で囲まれた状態で前記磁石ホルダー12に収納される。実施例のヨーク13は、方形状をした熱間圧延鋼鈑(SPHC)の短手方向の両端部を同一方向に折り曲げることにより、長手方向に沿った一対の折曲げ部14が対向して形成されて、内部に収容された磁石体Mの中心Sを通って、断面視において当該磁石体Mの表面Maに垂直な直線に対して左右対称形状となっている(図10参照)。ヨーク13の一対の折曲げ部14の間に磁石体Mを収容して、当該ヨーク13及び磁石体Mを前記磁石ホルダー12に収納した状態では、当該ヨーク13の各折曲げ部14の先端面14aは、磁石体Mの表面Ma、及び磁石ホルダー12の開口端面12aの双方に対して僅かに突出している。磁石ホルダー12の背面12bは、ボックス固定具Fに形成された円弧面状の磁石組付体取付面2の形状に対応した円弧面に形成され、しかも円弧面で形成された磁石ホルダー12の背面12bは、取付状態でボックス固定具Fの幅方向に沿って方形状の一対の凹部12cが形成されることにより残った部分は、ボックス固定具Fの一対の磁石組付体取付面2に形成された一対のガイド突条11の間に嵌合される被嵌合部12dとなっている。当該被嵌合部12dの機能は既述の通りである。また、磁石ホルダー12の収容凹所12gには、磁石体Mがヨーク13で覆われた状態で収容され、当該収容状態において、ヨーク13の折曲げ部14の先端面14aは、磁石体Mの表面Maよりも突出している(図10参照)。
【0023】
磁石組付体Gは、磁石体M、磁石ホルダー12及びヨーク13で構成され、当該磁石体M、磁石ホルダー12の底板部12e及びヨーク13の底板部15には、組付状態で一致して貫通形成される各貫通孔16,15a,12fがそれぞれ形成され、組付状態で一致する各貫通孔16,15a,12fに、固定具本体Aの磁石組付体取付面2の側から連結ボルト8が挿通されて、当該連結ボルト8の突出部と、当該固定具本体Aのボックス取付面1の側に形成された孔部5内に配置されたナット17との螺合により、固定具本体Aに対して磁石組付体Gが、円弧面状をした磁石組付体取付面2の曲面に沿ってスライド可能に取付けられる。なお、磁石体Mに形成された貫通孔16に挿通される連結ボルト8は、当該磁石体Mに磁着されて回転操作に支障を来すのを防止するために、非磁性体のステンレスで形成されている。固定具本体Aに対して磁石組付体Gが取付けられた状態において、互いに平行に配置されたヨーク13の一対の折曲げ部14は、固定具本体Aの長手方向に対して直交する方向に配置される。なお、磁石体Mに形成された貫通孔16の表面Maの側の部分は、連結ボルト8の頭部の形状に対応して円錐状になって、当該連結ボルト8の頭部は、磁石体Mの表面Maから突出しない。そして、ナット17を緩めて、一対の磁石組付体Gを円弧面状の磁石組付体取付面2に沿って互いに接近又は離間する方向に移動させて配置位置を変更させ、当該変更位置において各磁石組付体Gを連結ボルト8及びナット17を介して再度、磁石組付体取付面2に取付けると、一対の磁石組付体Gの間隔(N)〔図10参照〕が前記円弧面である磁石組付体取付面2に沿って移動することにより変更されて、一対の磁石組付体Gを構成している一対の磁石体Mの表面Maの延長面の交差角度である一対の磁石体の傾斜角度(θ)〔図10参照〕が変更される。これにより、同一のボックス固定具Fにより、外径(D)の異なるポールP1 (P2 )へのボックスBの固定が可能となる。なお、図10に示される符号(D)は、一般的なポールPの外径であって、図3及び図4に示されるポールP1 (P2 )の外径は、それぞれ(D1 ),(D2 )である。
【0024】
また、図10は、ポールPの外径(D)、一対の磁石組付体Gの中心の間隔(N)及び傾斜配置された一対の磁石体Mの各表面Maの延長面の交差角度である一対の磁石体の傾斜角度(θ)との関係を示している。図10において、ポールPに当接して磁着される一対の磁石組付体Gを構成する各磁石体Mの中心Sの間隔(N)は、以下の式で示される。ここで、「一対の磁石体Mの中心Sの間隔(N)」とは、正確には、断面視において、一対の磁石体Mの表面Maの中心Sを通り、しかも当該表面Maに対して垂直な直線と、ポールPの外周円とが交差する二つの点S’の間隔である。なお、図10において、C0 は、ポールPの中心を示す。
N=D×cos(θ/2)
【0025】
そして、図10において、「一対の磁石体Mの中心Sの間隔(N)」は、固定具本体Aの磁石組付体取付面2の円弧中心C1 ,C2 の位置とは無関係に、ポールPの外径(D)及び一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)のみによって、〔N=D×cos(θ/2)〕のように定められる。従って、ヨーク13は、対向辺部が同一方向に折り曲げられた各折曲げ部の高さが同一である限り、その断面形状が対称となって、ポールPの外径(D)とは無関係に、換言すると、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)とは無関係に、ポールPの中心(C0 )と磁石体Mの表面Maの中心Sとを結ぶ線分Jの延長線に対して対称に配置される。そのため、一対の磁石体Mの表面Maは、ポールPの外周面の接線方向に配置される。よって、ポールPの外径(D)とは無関係に、ヨーク13の2つの折曲げ部14の各先端面14aは、いずれも当該ポールPの外周面に当接する。
【0026】
また、図8、図9及び図11に示されるように、磁石組付体Gを構成する磁石ホルダー12の短手方向の各側面には、それぞれ支点軸部18が突設されていて、一対の支点軸部18を介して前記磁石ホルダー12に磁着解除レバーKが回動可能に取付けられている。磁着解除レバーKは、コの字形をしていて、前記磁石ホルダー12の三つの側面の外側に僅かの隙間を有して配置される連結枠部21の連結板部21aに操作レバー部22が、当該連結枠部21の一対の対向板部21bの延設方向と反対の側に延設された構成である。磁石ホルダー12の短手方向の各側面の外側に配置される一対の対向板部21bには、当該磁石ホルダー12の短手方向の各側面の外側に設けられた各支点軸部18が挿通支持される軸挿通孔23がそれぞれ形成されている。また、連結枠部21の各対向板部21bの対向面には、磁石組付体Gの磁石体Mが配置される側と反対側に開口していて、前記軸挿通孔23に通じる組付け溝部24がそれぞれ形成されている。連結枠部21の各対向板部21bの対向面に形成された各組付け溝部24は、磁石組付体Gの磁石ホルダー12に形成された一対の支点軸部18に対する磁着解除レバーKの連結枠部21の組み付けを容易にするためである。即ち、連結枠部21の各対向板部21bを僅かに拡開させた状態で、前記各組付け溝部24の開口側から磁石ホルダー12の各支点軸部18を挿入して、そのままの状態で、磁着解除レバーKの連結枠部21の間に磁石組付体Gが配置されるように、連結枠部21と磁石組付体Gを相対的に近接させると、拡開していた一対の対向板部21bが原形状に復元することにより、磁石ホルダー12の各支点軸部18は、磁着解除レバーKの連結枠部21の各対向板部21bに形成された各軸挿通孔23にそれぞれ挿通されて、磁石組付体Gに対して磁着解除レバーKが回動可能に連結される。
【0027】
磁着解除レバーKを構成する操作レバー部22は、天板部22aにおける連結枠部21の一対の対向板部21bの対向方向に沿った両端部に、一対の側板部22bが前記組付け溝部24の開口端の方向に向けて直角に連結されている。磁着解除レバーKの操作レバー部22は、一対の磁石組付体GによってポールPに磁着されているボックス固定具Fを当該ポールPから取り外すために、当該磁着解除レバーKを磁石組付体Gに対して回動させる時に、一対の側板部22bが固定具本体Aの各側面10の外側に配置されて、操作レバー部22の天板部22aが固定具本体Aの手前面3に当接するまで回動できるように、一対の側板部22bの内幅W2 は、固定具本体Aの幅W1 よりも広くなっている。
【0028】
次に、上記したボックス固定具Fを用いて、外径の異なる複数のポールP1 (P2 )に対してボックスBを固定する場合について説明する。図1ないし図3は、当該ボックス固定具Fにより固定可能な最大外径を有するポールP1 に対してボックスBを固定する例を示している。図10のボックス固定具Fの固定原理図に示されるように、当該ボックス固定具Fを構成する一対の磁石組付体Gの磁気吸引力により、ボックスBがポールPに固定された状態では、一対の磁石体Mの表面Maは、ポールPの外周面の接線方向に配置されて、当該磁石体Mの中心(方形状をした磁石体Mの表面Maの2本の対角線の交点)Sを通る垂線TがポールPの中心C0 を通過する必要がある。このことからして、ポールPの外径(D)と、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は、予め分かるので、前記式〔N=D×cos(θ/2)〕により、当該ポールPの外径(D)に対応した一対の磁石体M(又は一対の磁石組付体G)の中心Sの間隔(N)が算出される。そして、一対の磁石体Mの中心Sの間隔が(N)となるように、固定具本体Aの円弧面で構成される磁石組付体取付面2に対して一対の磁石組付体Gをスライドさせて、設定位置において、連結ボルト8及びナット17を用いて各磁石組付体Gを固定具本体Aに固定する。
【0029】
そして、図1ないし図3に示されるように、ポールP1 の外径に対応して、一対の磁石組付体Gの間隔が調整されたボックス固定具Fのボックス取付面1に対してボックスBの背面51を密着させて、当該ボックスBの内側において、当該ボックスBの底板部53に挿通された複数本のビス6を、固定具本体Aのボックス取付面1に形成されたビス下孔7に螺入させると、複数本のビス6を介して固定具本体Aのボックス取付面1にボックスBを取付けられる。ボックスBから見て、当該ボックスBに対して取付けられるボックス固定具Fの数は、一対の磁石体Mの磁気吸引力、ボックスBの重量等により決められるが、図1及び図2に示されるように、ボックスB側から見て、当該ボックスBの背面に取付けられるボックス固定具Fは、固定されたボックスBの安定性を考慮すると、当該ボックスBの背面51の上下の各端部に一つずつ取付けることが好ましい。
【0030】
次に、上下一対の各ボックス固定具Fの固定具本体Aのボックス取付面1にボックスBが取付けられた状態で、一対のボックス固定具FとポールP1 とを対向させた姿勢で、当該ボックスBをポールP1 の半径方向に沿って移動させて、一対のボックス固定具FをポールP1 の外周面に宛てがう。これにより、各ボックス固定具Fに設けられた一対の磁石組付体Gの磁気吸引力により、ボックスBは、一対のボックス固定具Fを介してポールP1 にワンタッチで固定される。ここで、各ボックス固定具Fを構成する一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は同一であるため、一対のボックス固定具Fを介してポールP1 に対してボックスBが固定された状態において、当該ボックスBは、必ずポールP1 の軸心方向に沿って配置され、当該軸心に対して傾斜配置されることはない。
【0031】
ポールP1 に対してボックスBが固定された状態では、磁着解除レバーKの連結枠部21の端面は、ポールP1 の外周面に接触することなく近接していると共に、操作レバー部22は、固定具本体Aの手前面3に対して鋭角の交差角度(α1 )を形成して、当該操作レバー部22の全体が、固定具本体Aの手前面3の前方に配置されて、ポールP1 に対する一対の磁石体Mの磁着部の接線方向に延出して配置されている。換言すると、左右一対の磁着解除レバーKは、ポールP1 (P2 )にボックスBを固定した状態で、一対の磁石体Mによる磁着を解除して、ポールP1 からボックスBを取り外す際に、人の手により操作可能な位置に配置されている。
【0032】
そして、一対の磁石体Mの磁気吸引力により、ボックスBがポールP1 に固定された状態では、図10のボックス固定具Fの固定原理図に示されるように、磁石組付体Gを構成するヨーク13の2つの折曲げ部14の各先端面14aのみがポールP1 の外周面に当接して、磁石体Mの表面MaとポールP1 の外周面との間には、僅かの隙間δが形成されて、当該磁石体Mの表面MaはポールP1 の外周面に直接に接触しない。ここで、一対の磁石体Mの各中心Sの間の距離Nを、上記計算式により算出してあるので、各磁石体MがポールP1 の外周面に対して僅かな隙間δを有して近接した状態では、当該磁石体Mの表面Maは、ポールP1 の外周面の接線方向と平行になる(図10参照)。この結果、一対の磁石体Mの各ヨーク13の折曲げ部14の計4つの先端面14aの全てが、ポールP1 の外周面に当接することになる。これに加えて、ヨーク13の各折曲げ部14は、ポールP1 の軸方向に沿っていて、各折曲げ部14 の先端面14aは、全長に亘ってポールP1 に当接するため、ポールP1 に対するヨーク13の当接状態が安定している。この結果、一対の磁石体Mの磁着力によりポールP1 に固定されるボックスBの固定状態が安定する。なお、ボックスBがポールP1 に固定された状態で、磁石体Mの外側を覆っているヨーク13の一対の折曲げ部14は、当該ポールP1 の軸方向に沿って配置される。
【0033】
ここで、磁石体Mを直接にポールP1 の外周面に当接させると、磁着は可能であるが、磁束の殆どが磁石体の前記当接部を通して流れて、磁石体Mにおける空隙を有する部分の磁気吸引力が小さくなるが、上記のように、磁石体Mの表面MaとポールP1 の外周面とを非接触にすると、磁石体Mの全表面と磁性金属製のポールP1 との間において磁束が発生し、結果的に、磁石体Mを直接にポールP1 に当接させた場合に比較して大きな磁気吸引力(磁着力)が得られる。また、磁石体MとポールP1 との間に作用する磁気吸引力は、当該磁石体MとポールP1 の外周面との間の距離の二乗に反比例するので、磁石体Mは、ポールP1 に当接しないことを条件として、当該ポールP1 の外周面との間の空隙を可能な限り小さくすることが望ましい。また、磁石体Mが直接にポールP1 の外周面に当接しないので、当接による磁石体Mの損傷、破損等も防止できる。なお、図1及び図2において、54は、ボックスBのカバーを示し、55は、ボックスBとカバー54とのヒンジ連結部を示す。
【0034】
一方、ポールP1 よりも外径の小さなポールP2 に対してボックスBを固定するには、図4に示されるように、固定具本体Aに対して磁石組付体Gを固定している連結ボルト8とナット17とを緩めて、一対の磁石体Mの中心Sの間隔NがポールP2 に対応するように、ポールP1 の場合よりも大きくした後に、再度固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gをそれぞれ固定する。そして、ポールP1 の場合と全く同様にして、ポールP2 の外周面に対して一対の磁石体Mを磁着させることにより、一対のボックス固定具Fを介してポールP2 にボックスBを固定する。
【0035】
ここで、図3及び図4の比較から理解できるように、一対の磁石体Mの傾斜角度(θ)は、ポールPの外径が大きくなる程、大きくなる。上記例では、(θ1 >θ2 )の関係が成立する。なお、θ1 ,θ2 は、それぞれ本実施例のボックス固定具Fの最大及び最少の傾斜角度である。このため、一対一組となった二組のボックス固定具Fを介してポールP2 にボックスBを固定した状態では、磁着解除レバーKと、固定具本体Aの手前面3とのなす交差角度(α2 )は、ポールP1 に対してボックスBを固定した場合の交差角度(α1 )よりも大きくなる。
【0036】
ここで、図3及び図4において、C01,C02は、それぞれポールP1 ,P2 の中心であって、固定具本体Aに設けられた左右一対の磁石組付体取付面2の各円弧中心C1 ,C2 と異なる位置に配置されているので、ポールP1 ,P2 の外周面に対してボックス固定具Fを介してボックスBが磁着された状態において、ポールP1 ,P2 に対してボックス固定具Fが廻らないので、同じくポールP1 ,P2 に対してボックスBが廻らない。この構成も、ポールP1 に対するボックスBの固定状態の安定化に寄与する。
【0037】
更に、磁石体Mの外側がヨーク13で覆われ、この状態で当該磁石体Mが磁石ホルダー12に収納された一対の磁石組付体Gは、ポールP1 ,P2 の外径により定められる傾斜角度θ1 ,θ2 を有して固定具本体Aに対して連結ボルト8及びナット17を介してしっかり取付けられる。換言すると、ポールP1 ,P2 に対してボックスBを固定した状態で、一対の磁石組付体Gは、固定具本体Aに対して一体的に取付けられていて、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gがぐらついたり、微動したりすることはない。例えば、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gがぐらついたり、微動したりすると、ボックスBに不意な力が作用した場合に、ポールP1 ,P2 に磁着されている一対の磁石組付体Gに対してボックスBが微動したりして、ポールP1 ,P2 に対する一対の磁石組付体Gの磁着が解除され易くなる。しかし、上記したように、固定具本体Aに対して一対の磁石組付体Gが一体的に取付けられていると、結果的に、一対の磁石組付体GとボックスBとが一体的に取付けられているようになって、前記微動等の発生がなくなって、ボックスBに作用する不意な力によっても、ポールP1 ,P2 からボックスBが外れにくくなる。
【0038】
一方、一対一組となった計二組の磁石体Mを介して磁性金属製のポールP1 (P2 )に磁着されているボックスBを当該ポールP1 (P2 )から取り外すのは容易ではない。これに対応して、請求項1の発明のボックス固定具Fには、左右一対の磁着解除レバーKが設けられているので、図11において、磁着解除レバーKの操作レバー部22を固定具本体Aの側に押し付けると、磁石ホルダー12に設けられた支点軸部18を中心にして前記磁着解除レバーKが回動されて、ポールP2 の外周面に接線方向に配置された状態で、当該外周面に近接している連結枠部21の各対向板部21bの磁石体Mの側の先端部21cがポールP2 の外周面に押圧される。この状態で、当該磁石体Mの磁着力に抗して当該磁着解除レバーKを更に回動させると、これに伴って、各対向板部21bの先端部21cのポールP1 (P2 )に対する押圧点が当該各対向板部21bの先端側に移行し、その途中において、最初にヨーク13の一対の折曲げ部14の各先端面14aのうち連結枠部21の先端側の折曲げ部14の先端面14aとポールP1 (P2 )との磁着が解除され、その後に別の先端面14aとポールP1 (P2 )との磁着が解除されて、ポールP2 の外周面に直接に当接していたヨーク13の折曲げ部14の先端面14aがポールP2 の外周面から強制的に分離される。即ち、ヨーク13の一対の折曲げ部14の各先端面14aのポールP1 (P2 )に対する磁着の解除は、時間的に分離して行われるので、ポールP1 (P2 )に対するボックスBの取り外しは、磁着力のみによりボックスBをポールP1 (P2 )に固定している当該磁着力の大きさを考慮すると、比較的容易に行える。
【0039】
そして、上記解除操作は、左右一対の磁着解除レバーKを同時に操作する方が個別操作よりも解除が確実となるので、ボックスBのカバー54と対向する位置に作業者が位置した状態で、左右の各手で一対の磁着解除レバーKを同時に操作するのが好ましい。
【0040】
ここで、段落「0025」において、一対の磁石体の傾斜配置状態において、各磁石体の表面がポールの接線方向に配置されているならば、ヨークの断面形状が対称である限り、当該ヨークの各折曲げ部の先端面は、いずれもポールの外周面に当接することを証明した。そして、図12及び図13においては、ボックス固定具Fの一対の磁石組付体Gを構成する左右一対のヨーク73は、外径の異なる各ポールP11,P12(P13,P14)の外周面に当接させた際に、当該各ポールP11,P12(P13,P14)に対してボックス固定具が廻らない状態で、各ヨーク73にそれぞれ2つずつ設けられた計4つの折曲げ部74の各先端面74aが、各ポールP11,P12(P13,P14)の外周面にいずれも当接するためには、図12及び図13で示される磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22(C23)と、各ポールP11,P12(P13,P14)の中心C11,C12(C13,C14)とが異なることが必要であることを、一般論的に説明している。図12は、前記実施例のように符号(2)で示される磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22が2つ存在する場合の模式図であり、図13は、同様に円弧中心C23が1つのみ存在する場合(左右の各磁石組付体取付面の円弧中心C23が共通の場合)の模式図である。また、図12及び図13において、63で示される直線は、「固定具本体の手前面」を示す。なお、ヨーク73は、板厚を太線表示(スケルトン表示)してある。
【0041】
図12において、各ポールP11,P12の外径が変化した場合には、ヨーク73の折曲げ部74の先端面74aは、磁石組付体取付面の円弧中心C21、C22を中心にして移動して、外径の大きな方のポールP12が、固定具本体の手前面63に近づくと共に、一対のヨーク73の間隔が狭くなって、左右一対のヨーク73の計4つの各先端面74aの全てがポールP11,P12の外周面に当接していることが分かる。しかも、各ポールP11,P12の中心C11,C12と、磁石組付体取付面の円弧中心C21,C22とは異なる位置に配置されるので、各ポールP11,P12に対してヨーク73、即ちボックス固定具が廻ることもない。また、図12に示される例は、左右一対の磁石組付体取付面2にそれぞれ個別の円弧中心C1 ,C2 を有する前記実施例に近いものであって、ポールP11,P12の各中心C11,C12を結ぶ線分の延長線は、左右一対の磁石組付体取付面の各円弧中心C21,C22を結ぶ線分の垂直二等分線となる。なお、図12において、81は、磁石組付体取付面の円弧中心C21、C22を中心とする異なる外径のポールP11,P12に当接するヨーク73の先端面74aの軌跡である円弧を示す。
【0042】
また、図13においても、左右一対の磁石組付体取付面の円弧中心C23が共通である点を除いて、図12と同様のことを示している。当該円弧中心C23は、各ポールP13,P14の中心C13,C14と異なる位置に配置されているが、当該各中心C13,C14を結ぶ線分の延長線上に位置している。ここで、左右一対の磁石組付体取付面に共通の円弧中心C23と、各ポールP13,P14のいずれか一方の中心C13(C14)が一致した場合には、ボックス固定具は、左右一対の磁石組付体取付面に共通の円弧中心C23と同一の中心を有するポールに対して廻ってしまう。なお、図13において、82は、磁石組付体取付面の円弧中心C23を中心とする異なる外径のポールに当接するヨーク73の先端面74aの軌跡である円弧を示す。
【0043】
上記した請求項1の発明に係るボックス固定具Fは、ボックス取付面1にボックスBを取付けて使用する形態であるが、請求項5の発明のように、ボックスの背面側に、上記構成のボックス固定具Fと同一構成のボックス固定部を一体にして取付けられたものであっても、ポールに対してボックスをワンタッチで固定できると共に、磁着解除レバーを備えている場合には、ポールからのボックスの取り外しも容易に行える。
【0044】
また、請求項1の発明に係るボックス固定具を用いてボックスを磁性金属製のポールに固定したり、或いは請求項5の発明に係るボックス固定具を一体に備えたボックスを前記ポールに固定する場合において、当該ポールとしては、工事現場に立設される仮設用のものと、常設用のものとがあり、いずれのポールに対しても使用可能であるが、工事終了後には、必ず撤去される仮設用のポールに対して使用する場合には、仮設用ポールに対するボックスの取り外しも容易となる特有の利点がある。
【0045】
また、請求項1の発明に係るボックス固定具に関しては、仮設用のポールに対してのみ請求項1の発明に係るボックス固定具を使用してボックスを固定し、常設のポールに対しては、別の固定手段によりボックスを長期に亘って固定するという選択が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
A:固定具本体
B:ボックス
C1,C2,C21〜C23:磁石組付体取付面の円弧中心
C0,C01,C02,C11〜C14:ポールの中心
F:ボックス固定具
G:磁石組付体
K:磁着解除レバー(磁着解除部)
M:磁石体
Ma:磁石体の表面
P,P1,P2,P11〜P14:磁性金属製のポール
θ:一対の磁石体の傾斜角度
δ:磁石体の表面とポールの外周面との隙間
1:ボックス取付面
2:磁石組付体取付面
9:長孔
12:磁石ホルダー
13,73:ヨーク
14,74:ヨークの折曲げ部
14a,74a:ヨークの折曲げ部の先端面
21:磁着解除レバーの連結枠部
22:磁着解除レバーの操作レバー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具であって、
前記ボックスが取付けられるボックス取付面と、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、
前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴とするポールへのボックス固定具。
【請求項2】
前記一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されて、調整前後のいずれもポールに対して磁着可能であることを特徴とする請求項1に記載のポールへのボックス固定具。
【請求項3】
前記一対の磁石体は、対向辺部が同一側に折り曲げられて、当該折曲げ部の先端面がポールに対する当接面となったヨークに収納され、当該ヨークの前記折曲げ部をポールの軸方向に沿わせた配置で前記一対の磁石体を介してボックスをポールに固定した状態で、前記ヨークの先端面がポールの外周面に当接して、前記磁石体の表面とポールの外周面との間に空隙を形成可能なように、前記ヨークの先端面は磁石体の表面よりも突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のポールへのボックス固定具。
【請求項4】
ポールに対する一対の磁石体の磁着により、当該ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポールへのボックス固定具。
【請求項5】
背面側にボックス固定部を一体に備えていて、柱状に形成された磁性金属製のポールに固定されるボックスであって、
前記ボックス固定部は、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、
前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴とするポールに固定されるボックス。
【請求項1】
柱状に形成された磁性金属製のポールにボックスを固定するためのボックス固定具であって、
前記ボックスが取付けられるボックス取付面と、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、
前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴とするポールへのボックス固定具。
【請求項2】
前記一対の磁石体の相対的な傾斜角度は、ポールの外径に対応して調整可能であると共に、調整前後においていずれも前記傾斜角度の維持が可能なように固定されて、調整前後のいずれもポールに対して磁着可能であることを特徴とする請求項1に記載のポールへのボックス固定具。
【請求項3】
前記一対の磁石体は、対向辺部が同一側に折り曲げられて、当該折曲げ部の先端面がポールに対する当接面となったヨークに収納され、当該ヨークの前記折曲げ部をポールの軸方向に沿わせた配置で前記一対の磁石体を介してボックスをポールに固定した状態で、前記ヨークの先端面がポールの外周面に当接して、前記磁石体の表面とポールの外周面との間に空隙を形成可能なように、前記ヨークの先端面は磁石体の表面よりも突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のポールへのボックス固定具。
【請求項4】
ポールに対する一対の磁石体の磁着により、当該ポールに対してボックスが取付けられた状態で、前記ポールに対する一対の磁石体の磁着を強制解除させるための磁着解除部を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポールへのボックス固定具。
【請求項5】
背面側にボックス固定部を一体に備えていて、柱状に形成された磁性金属製のポールに固定されるボックスであって、
前記ボックス固定部は、前記ポールの外周面に磁着される一対の磁石体とを備え、
前記一対の磁石体は、前記ポールの外周面に沿って磁着可能なように一方の磁石体に対して他方の磁石体が傾斜配置されていることを特徴とするポールに固定されるボックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−176932(P2011−176932A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38650(P2010−38650)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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