説明

マイクロウエーブ及びRFエネルギーの存在下での金属含有鉱石の還元処理

金属含有材料を用意するステップ(5)と、対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって前記金属含有材料を加熱するステップ(2)と、マイクロウエーブ(MW)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップ(3)と、ラジオ周波数(RF)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップ(4)と、還元剤に前記金属含有材料を暴露するステップ(8)とを含む金属含有材料を還元するための方法。MW及びRFエネルギーへの暴露中に誘電加熱をしないこの方法によって、金属含有鉱石及び精鉱のエネルギー効率のよりよい化学還元が可能になり、金属化収率が増加する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、鉱石又は精鉱(例えば、金属含有酸化物)中の金属の処理、詳細には、例えば、酸化鉄を含有する鉱石又は精鉱中の、鉄を化学的に還元するための方法に関する。
【0002】
抽出冶金は、金属の酸化物、硫化物、塩化物、及び炭酸化物などの鉱石を該鉱石の金属成分に転換することに関する。これは、通常、化学的還元を含む方法によって実施される。抽出冶金法全てで極めて重要であるのは、金属鉱石の還元を大規模で経済的に実施することの必要性である。
【0003】
多様な鉱石形態中の鉄の還元は、多数の工業プロセス、例えば、鉄、並びにニッケル、バナジウム、及びチタンなどの非鉄金属の製造において重要である。それから還元手段によって鉄を抽出し得る鉱石及び精鉱の例として、イルメナイト、チタン磁鉄鉱、バナジン磁鉄鉱、鉄鉱石、褐鉄鉱系ラテライト、及び腐食岩系ラテライトが挙げられる。一部の工業プロセスでは、鉱石又は精鉱から金属を除去すること、例えば、イルメナイトからの鉄不純物の除去が望ましい。他の工業プロセスでは、所望の生成物であるのが、鉱石又は精鉱から抽出された金属、例えば、鉄鉱石からの抽出鉄である。
【0004】
イルメナイト中の酸化チタンから鉄を分離するのに適用し得るプロセス経路が、現在数種存在する。これらの経路として以下が挙げられる:
a)アルカリ金属及びアルカリ水酸化物と一緒にイルメナイト鉱石を溶融することによって酸可溶性塩を生成させること;
b)鉱酸を使用してイルメナイトを直接浸出すること;
c)イルメナイトを還元した後、還元鉄及び不純物を浸出すること;
d)炭素還元し、溶解することによって銑鉄、及び二酸化チタンを含有するスラグを生成させること;及び
e)分離によって鉄を選択的に塩素化すること。
【0005】
従来の加熱プロセス及び化学的方法を使用することによって鉄を還元している。従来の加熱プロセスは、対流、伝導、及び/又は輻射による加熱を包含する。通常、鉄含有鉱石を処理するのに、少なくとも1000℃の温度が必要である。例えば、鉄鉱石の直接還元では、
(i)SL/RN法は、1100℃の温度を必要とする;
(ii)DRC法は、1100℃の温度を必要とする;
(iii)HyL法は、1000℃の温度を必要とする;及び
(iv)MIDREX法は、760〜930℃の温度を必要とする。
【0006】
かなり最近、マイクロウエーブ(MW)エネルギーを使用することによって鉱石を加熱することが示唆された。特に、米国特許第4906290号明細書及び米国特許第6277168号明細書には、MWエネルギーを加えることを含む、金属鉱石を還元するための方法が記載されている。米国特許第4906290号明細書には、既に活性のある形態の炭素、又は、複合材をMWエネルギーで照射することを含むMWエネルギーによって炭化温度まで容易に乾燥及び加熱し得るある他の炭素含有材料と予め緊密に混合された粒子状の鉱石又は精鉱を乾燥及び加熱するという浸出又は溶解前駆体方法が記載されている。米国特許第6277168号明細書には、MWエネルギーを加えて鉱石粉末及び任意選択の還元剤を形成することにより作製された塊から金属を抽出することによって金属含有鉱石から金属を直接に調製するための方法が記載されている。
【0007】
しかし、誘電加熱(例えば、MW加熱)の使用は、かなり大量の体積の鉱石を高温(>1000℃)まで加熱する複雑さ及び費用の観点から、大規模では経済的に実行不可能であるとされてきた。したがって、対流、伝導及び/又は輻射以外の加熱方法に依存する工業的な抽出冶金には経済的な偏見が存在する。
【0008】
従来技術の課題及び欠点の少なくとも一部を解決し、金属含有鉱石及び精鉱を化学的に還元するためのエネルギー効率のよい方法を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
したがって、本発明は、
金属含有材料を用意するステップと、
対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって前記金属含有材料を加熱するステップと、
マイクロウエーブ(MW)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップと、
ラジオ周波数(RF)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップと、
還元剤に前記金属含有材料を暴露するステップとを含む金属含有材料を還元するための方法を提供する。
【0010】
他の態様では、本発明は、
鉄含有鉱石又は精鉱を用意するステップと、
対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって、前記鉱石又は精鉱を加熱するステップと、
還元剤に前記鉱石又は精鉱を暴露するステップとを含み、前記鉱石又は精鉱の一部又は全部が鉄まで還元される、鉄含有鉱石又は精鉱を化学的に還元するための抽出冶金方法であって、
前記鉱石又は精鉱がまた、前記鉱石又は精鉱の前記加熱と同時に、マイクロウエーブ(MW)エネルギー及びラジオ周波数(RF)エネルギーに暴露され、MW及びRFエネルギーの水準が、前記鉱石又は精鉱をさらに加熱することが殆ど又は全くないように選択され、還元過程中、前記鉱石又は精鉱の温度が、850℃、好ましくは650℃を超えないことを特徴とする抽出冶金方法を提供する。
【0011】
驚くべきことに本発明者らは、従来の加熱手段と一緒にマイクロウエーブ(MW)及びラジオ周波数(RF)エネルギーを加えると、従来のプロセスを使用して可能であるよりも低い温度及び短い滞留時間で金属含有材料中の金属が、還元及び/又は金属化されることを見出した。したがって、本発明によって、鉱石/精鉱を高温まで加熱する必要なしで金属鉱石/精鉱を還元することが可能になる。したがって、この方法は、エネルギー効率がよく、環境にやさしい。というのは、エネルギー消費が低減し、高温での操業に対して必要である装置への大きな資本支出が避けられるからである。
【0012】
本発明では、対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって金属含有材料を加熱することは、好ましくは、加熱エネルギーの重要な供給源としてMW又はRFエネルギーを使用することを不要にする。有利には、金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギー(誘電エネルギー)に暴露すると、温度が、50℃未満、より好ましくは、20℃未満、さらにより好ましくは、10℃未満、最も好ましくは、5℃未満上昇する。
【0013】
従来の加熱手段と一緒にマイクロウエーブ(MW)及びラジオ周波数(RF)エネルギーを加えると、驚くべきことに、従来のプロセスを使用して可能であるよりも低い温度及び短い滞留時間で金属含有材料中の金属が、直接に還元及び/又は金属化されることが見出された。この驚くべき効果は、MW及びRFが問題の材料を還元するための「触媒」として作用することに似ている。
【0014】
「直接還元」という用語は、金属含有材料中の金属の還元であって、金属含有材料が還元過程中、固体状態のままであるような還元を記述するために使用される。
【0015】
本明細書で使用される「金属化」という用語は、正の酸化状態(0を超える)にある金属を酸化状態ゼロの金属まで還元することを記述するために使用される。
【0016】
明確にそうではないと指示されていない限り、本明細書に記載の各態様は、1つ又は複数の任意の他の態様と組み合わせ得る。特に、好ましい又は有利であると指示されている任意の特徴は、1つ又は複数の好ましい又は有利であると指示されている任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0017】
本発明者らはまた、MW又はRFエネルギーのうちのただ1つが、金属含有材料に加えられた場合、従来の還元及び/又は金属化法に比較して、反応速度が向上し、還元及び/又は金属化の程度が改良されることを観察した。しかし、驚くべきことに、従来の方法を超える改良は、MWとRFエネルギーの双方が印加された場合、はるかに大きい。
【0018】
本明細書に記載の金属含有材料を還元するための方法は、驚くべきことに、従来の方法を超えて、金属含有材料の還元方法を改良することが見出された。理論に拘束されることを望むものではないが、金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギーに暴露すると、材料の構造が変化することによって、材料が還元剤によってより還元されやすくなると考えられる。したがって、主プロセス段階は、材料の構造の変化が所望である任意のプロセスに適用し得ることを理解されたい。
【0019】
したがって、本発明はまた、
金属含有材料を用意するステップと、
対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって前記金属含有材料を加熱するステップと、
マイクロウエーブ(MW)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップと、
ラジオ周波数(RF)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップとを含む金属含有材料を処理するための方法を提供する。
【0020】
本方法は、例えば、金属含有材料を酸化する、焙焼する、仮焼する、及び/又は脱ヒドロキシル化するために使用し得る。
【0021】
本発明で使用するための金属含有材料として、例えば、鉱石及び精鉱を挙げ得る。
【0022】
金属含有材料は、正の酸化状態にある少なくとも1つの金属、例えば、Fe中のFe3+を含み、このFe3+は、本発明の還元方法を使用してより低い酸化状態、例えば、Fe2+又はFeに還元し得る。
【0023】
好ましくは、金属含有材料は、遷移金属、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、バナジウム、銅、チタン、クロム、亜鉛を含む。遷移金属は、遷移金属酸化物及び/又は硫化物の形態であってよい。より好ましくは、金属含有材料は、鉄含有鉱石を、最も好ましくは、酸化鉄含有鉱石を含む。本発明で使用するための金属含有鉱石の例として、以下の2つ以上の混合物を含めて、イルメナイト、チタン磁鉄鉱、バナジン磁鉄鉱、鉄鉱石、赤鉄鉱、褐鉄鉱系ラテライト、及び腐食岩系ラテライトが挙げられる。好ましい鉱石は、イルメナイト又は鉄鉱石であるか、或いは、それらを含む。イルメナイトの組成を以下で簡単に議論する。
【0024】
本明細書で使用されるイルメナイトという用語は、鉱物FeTiOを含む。しかし、鉱物砂床からのイルメナイトの組成が、化学量論組成、FeTiO(47.4%FeO及び52.6%TiO)に合致することは稀であることを理解されたい。したがって、本明細書で使用されるイルメナイトという用語はまた、非化学量論組成を包含することを理解されたい。
【0025】
さらに、天然のイルメナイトは、FeTiOに富む鉱物であり、少量のMnO、MgO、Fe及び/又はTiをその構造中に含有し、二価の鉄イオンの一部がMn2+及びMg2+によって置換されている。得られる一般式は、(Fe,Mn,Mg)TiOである。
【0026】
海岸砂床のイルメナイトは、徐々に組成及び構造の変成を受けることはよく知られている。イルメナイト中のFe2+は、大気への長期の暴露の結果として徐々にFe3+に転換する。Fe3+は、天然水によって鉱物粒から浸出され得る。この過程は、風化と呼ばれる。風化によってイルメナイト中のチタンが濃縮される。イルメナイトの風化によって、擬ルチルの形成が反応1に従ってもたらされる。
【0027】
反応1:3FeTiO+2H+0.5O=FeTi+Fe2++H
【0028】
変成は、擬ルチルからの鉄の益々の浸出とともに継続し、擬ルチルが完全に崩壊し、反応2に示されるようにアナターゼが形成される。
【0029】
反応2:FeTi+4H=3TiO+2Fe2++2HO+0.5O
【0030】
極端な場合では、風化によってTiOに近い組成を有する非晶質材料が形成される。この非晶質材料は、一般に、白チタン石と呼称される。
【0031】
したがって、本明細書で使用されるイルメナイトという用語はまた、他の鉱石、例えば、イルメナイト−赤鉄鉱固溶体、ルチル、及び多様な量の他の酸化物、並びにシリケート鉱物の不純物と一緒にイルメナイトを含む組成物を包含することを理解されたい。
【0032】
金属含有材料は、通常、約100mm未満、好ましくは、50mm未満の直径を有する破砕鉱石小片の形態で供給されることになる。金属含有材料は、5〜30mm、好ましくは、10〜20mmの直径を有するペレット(ペレット化された微粒子)の形態で供給し得る。加えて、又は、代替として、金属含有材料は、5mm未満、好ましくは、1mm未満、より好ましくは、0.5mm未満の直径を有する個別粒子の形態で供給し得る。
【0033】
金属含有材料は、本発明の還元過程の前に予備酸化し得る。多様な方法を使用することによって金属含有材料を予備酸化し得ることを理解されたい。例えば、金属含有材料は、酸素(空気又は酸素富化流いずれかとして)に暴露することによって酸化し得る。この酸化は、適切な反応器(ロータリーキルン、多重炉型焙焼器、又は循環式流動床)で例えば、800℃を超える温度で実施し得る。
【0034】
いかなる特定の理論にも拘束されるのを望むものでないが、予備酸化は、酸化物表面の構造及び反応性の変化を引き起こすことによって、例えば、イルメナイト中の金属酸化物の還元を促進し得ると考えられる。
【0035】
金属含有材料中の金属の百分率は、具体的な材料に応じて変わることになることを理解されたい。通常、金属酸化物及び/又は硫化物は、金属含有材料の最高95重量%、例えば、20〜60重量%を占めることになる。
【0036】
通常、電気エネルギー(例えば、電気抵抗加熱素子)、又は、固体、液体、若しくはガスの形態の燃料を使用することによって金属含有材料を加熱し得る(対流及び/又は伝導及び/又は輻射)。これらの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0037】
適切な固体燃料の例として、石炭、及び、木材又はオガ屑などのセルロース系材料の1つ又は複数が挙げられる。石炭として、褐炭、瀝青炭、コークス、無煙炭、及びカーボナイズド石炭が挙げられる。
【0038】
適切な液体燃料の例として、燃料油、軽油、重油、ジーゼル、及びケロシンの1つ又は複数が挙げられる。
【0039】
適切なガス燃料の例として、処理することによって合成ガスを形成し得る天然ガス、発生炉ガス、又は改質炉ガスが挙げられる。
【0040】
金属含有材料は、それが全還元過程中固体状態であるように、材料の融点未満の温度まで加熱される。好ましくは、金属含有材料は、約1200℃を超えない温度、より好ましくは、約850℃を超えない温度、最も好ましくは、約650℃を超えない温度まで前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱される。例えば、金属含有材料は、好ましくは、400〜850℃の範囲の温度まで前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱し得る。
【0041】
本発明者らは、金属化及び/又は還元の速度及び程度における最も有意な改良が、好ましくは、850℃未満、より好ましくは、650℃未満の低温で観察されることを知見した。
【0042】
従来の還元方法を使用するこれらの低温では、風化することによって主としてFe(III)酸化物が形成された酸化鉄は、従来方法と誘電方法の双方によって金属化されることになる。しかし、鉄が風化して(Fe(III)まで酸化されて)おらず、基本的にFeO・TiOである鉄含有イルメナイトは、従来の方法によって還元されることが知見されていない。本発明の誘電条件下でのみ還元されることが知見されている。
【0043】
本発明では、対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段による金属含有材料の加熱では、好ましくは、金属を有意に加熱するためにMW又はRFエネルギー(誘電加熱)は使用されない。有利には、金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギー(誘電エネルギー)に暴露することによって、温度が、50℃未満、より好ましくは、20℃未満、さらにより好ましくは、10℃未満、最も好ましくは、5℃未満上昇する。
【0044】
本発明で使用されるMW及びRFエネルギーは、金属含有材料をMW及びRFに暴露した場合、材料及び/又は系が有意に加熱されないように選ばれる。
【0045】
処理すべき材料に応じて、材料及び/又は系を実質的に加熱することなく、金属化の速度及び/又は程度が有意に増加するのが観察されるようなMW及びRFエネルギーの領域が存在することを本発明者らは見出した。この領域外では、MW及びRFエネルギーを加えることによって、材料が有意な程度まで加熱される。MW及びRFの出力密度は、材料を加熱するのに必要とされるよりも小さいことを理解されたい。
【0046】
RF及びMW放射は、電磁スペクトルの隣接セクションを占め、MWがラジオ波より高周波数であることはよく知られている。数種の周波数は、ISM(工業、科学及び医学)などの国際条約によって保全されている。これらは、ISM帯域、又は工業、科学及び医学帯域と呼ばれる国際的に合意され認められた周波数帯域である。ISMは、以下のようにRF帯域を定義し:
(i)13.56MHz±0.05%
(ii)27.12MHz±0.6%
(iii)40.68MHz±0.05%
及びMW帯域を以下のように定義する:
(i)896MHz
(ii)915MHz
(iii)2450MHz±50MHz。
【0047】
金属含有材料を上記のRF及び/又はMWISM帯域に暴露すると、前記材料及び/又は系を有意に加熱することなく、還元及び/又は金属化の反応速度及び/又は百分率が増加することが見出された。好ましくは、RF帯域は、13.56MHz±0.05%である。
【0048】
大きな工業規模の機械では、MW帯域は、好ましくは896MHz又は915MHzである。しかし、小さい実験室規模の機械では、MW帯域が2450MHz±50MHzであることが好ましい場合がある。
【0049】
MW及びRFは、高周波数場を生成させる方法を参照して区別し得る。マイクロウエーブ系は、マグネトロン及びクライストロンを利用することによって電磁場を発生させ、共鳴及び非共鳴空洞を利用することによって電界を加える。ラジオ周波数系は、高出力真空管を使用することによって電磁場を発生させ、コンデンサ及び電極を使用することによって電界を加える。
【0050】
MW及びRFエネルギーは、ある範囲の電界強度及び電界強度比にわたって、相互に独立に又は組み合わせて加え得る。
【0051】
マイクロウエーブエネルギーをかけた流動床で鉱物を処理することに関する従来技術では、10Vm−1の範囲の高電界強度が望ましいことが教示されている。さらに、Q値は、可能な限り大きくすべきであることが教示されている。「Q」係数は、貯蔵された電磁エネルギーと消散した電磁エネルギーの比である。通常、従来技術では、最小Q値20,000に向かうことが教示されている。
【0052】
従来技術と異なり、低Q値、好ましくは、1〜1,600の範囲の値が有利であることを本発明者らは見出した。所与の実験に対するQ値の特定の範囲は、空洞内に存在する材料によって決まることになる。さらに、RF及びMWが低電界強度を有することが好ましい。
【0053】
好ましくは、空洞に加えられるMWエネルギーの電界ピーク強度は、5,000Vm−1を超えない、より好ましくは、それは1,500Vm−1を超えない、最も好ましくは、それは850Vm−1を超えない。
【0054】
好ましくは、空洞に加えられるMWエネルギーの電界ピーク強度は、300〜5,000Vm−1、より好ましくは、500〜3,000Vm−1の範囲である。
【0055】
好ましくは、空洞に加えられるRFエネルギーの電界ピーク強度は、100,000Vm−1を超えない、より好ましくは、それは25,000Vm−1を超えない、最も好ましくは、それは12,000Vm−1を超えない。
【0056】
好ましくは、空洞に加えられるRFエネルギーの電界ピーク強度は、3,000〜100,000Vm−1、より好ましくは、4,500〜60,000Vm−1の範囲である。
【0057】
好ましくは、MWエネルギー:RFエネルギーの電界強度比は、1:4〜1:20である。
【0058】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものでないが、金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギーに暴露すると、材料の構造が変化することによって材料が還元剤により還元されやすくなると考えられる。比較的小さい出力水準では、驚くべきことに、MW及びRF源による追加の加熱が殆ど又は全くなくても、鉱石又は精鉱の金属化が有意に改良されることが知見された。
【0059】
誘導加熱と誘電加熱の間には相違が存在するということを理解するのが重要である。誘導加熱では、加熱すべきワークピース又は負荷物は、一次側として誘導加熱コイルを有する変圧器の二次側抵抗を形成する。対照的に、誘電加熱では、加熱すべき負荷物は、アプリケータコンデンサに結合する損失性コンデンサを形成する。誘導加熱では、抵抗性負荷物中に電流を誘起するのはコイルからの磁界であるが、誘電加熱では、加熱効果をもたらすのは、アプリケータのプレート間に生成する電界である。したがって、誘導加熱は、大電流(及び、磁界)であることを特徴とし、誘電加熱は、高電圧(及び、電界)であることを特徴とする。好ましくは、通常10〜10Hzで動作する、高周波源、通常、高出力発振器を用いて通常行われる誘導加熱は、本発明で金属含有材料を対流的及び/又は伝導的及び/又は輻射的に加熱するために本発明で使用されない。本発明では、誘導加熱は、「前記金属含有材料をRFエネルギーに暴露する」という用語から排除される。本発明では、好ましくは、金属含有材料を有意に加熱するために、誘電加熱を使用しない。
【0060】
金属含有材料は、前記材料をMWエネルギー及び/又はRFエネルギーに暴露する前に前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱し得る。或いは、金属含有材料は、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱される前に、MWエネルギー及び/又はRFエネルギーに暴露することもできる。代替として、又は組み合わせて、金属含有材料は、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱しつつ、MWエネルギー及び/又はRFエネルギーに暴露することもできる。
【0061】
好ましくは、金属含有材料は、MWエネルギー、RFエネルギーに暴露され、同時に、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱される。
【0062】
還元剤は、固体、液体、又はガスであってよい。好ましくは、還元剤は、固体、又はガスであり、最も好ましくは、ガスである。
【0063】
適切な固体の還元剤の例として、炭素、瀝青、石炭、コークス、及び無煙炭の1つ又は複数が挙げられる。
【0064】
適切なガス状還元剤の例として、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、及び炭化水素の1つ又は複数が挙げられる。好ましくは、還元ガスは、一酸化炭素及び/又は水素を含み、より好ましくは、ガスは、水素であるか、又は水素を含む。
【0065】
還元剤(固体及び/又は液体及び/又はガス)は、金属含有材料中に含まれていてもよい。
【0066】
還元剤がガスである場合、ガスは、金属含有材料が配置されている反応空洞内に連続的に導入し得る。還元ガスは、金属含有金属中の酸化金属を還元する。出てくるガスは、反応空洞から連続的に除去し得る。
【0067】
好ましくは、十分な還元ガスを金属含有材料上に通過させることによって金属含有材料中の酸化金属イオンに対して化学量論上過剰の還元ガスを維持する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態は、鉱石及び/又は精鉱中の酸化鉄を還元するための方法に関する。還元反応は、好ましくは、250℃〜1200℃、より好ましくは、300℃〜950℃、最も好ましくは、400℃〜850℃の温度で行われる。還元反応は、還元ガス雰囲気、好ましくは、水素雰囲気で行い得る。金属含有材料は、低強度MW及びRF周波数エネルギー、好ましくは、小規模反応では約2450MHzのMWエネルギー、及び大規模反応では896MHz又は915MHzのMWエネルギー、並びに約13.56MHzのRFエネルギーに暴露される。
【0069】
さて、以下の図面を参照して、単に例示を目的として、本発明をさらに説明することにする。
【0070】
本発明は、図1に示すブロックダイアグラムを参照することによってさらによく理解し得る。このダイアグラムは、反応空洞1;加熱素子2;MW源3;RF源4;鉱物供給口5;生成物排出口6;還元排ガス7;及び還元供給ガス8を含む本発明の一実施形態を示すダイアグラムである。
【0071】
このダイアグラムの各コンポーネントは、より詳細に以下で議論されることになる。
【0072】
反応空洞1は、金属含有材料を収容するためのものである。それはまた、MWとRFエネルギーの双方を閉じ込めることになる。
【0073】
加熱素子2は、金属含有材料が対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱されることが可能になるように位置する。加熱素子2は、ガス、液体、又は固体燃焼で、抵抗加熱素子を利用し得る。
【0074】
MW源3及びRF源4は、前記空洞1に結合することによって、金属含有材料が前記空洞内に置かれた場合、それがMW及びRFエネルギーに暴露されるのが可能になる。
【0075】
MW及びRFエネルギーは、好ましくは、相互に独立に、及び対流及び/又は伝導及び/又は輻射加熱手段から独立に制御可能である。
【0076】
鉱物供給口5は、それから金属含有材料を空洞に導入し得る、空洞1内への入口を提供する。
【0077】
生成物排出口6は、それから還元材料を排出し得る出口を提供する。好ましくは、この還元材料は、金属状態の金属を含むことになる。
【0078】
入口及び出口は、MW放射が空洞から逃げるのを防止、又は少なくとも最小化するように設計される。
【0079】
還元供給ガス8は、それが金属含有材料と反応する反応空洞1内に連続的に供給し得る。還元排ガスはまた、前記空洞1から連続的に除去し得る。
【0080】
従来の炉を本発明で使用するために適合化させ得るが、EP0914752に記載のものなどのハイブリッド炉が好ましい。
【0081】
EP0914752には、RF及びMWアシスト炉が記載されている。このハイブリッド炉のこれまでの使用は、セラミック、セラミック−金属複合材、金属粉末コンポーネント、及びエンジニアリングセラミックの加熱に限られていた。MW及びRF源は、独立に制御され、炉室に加えられる。従来の炉は、MW及びRF源と独立に運転し得る。
【0082】
従来技術では、MWエネルギーは、鉱石の選択された鉱物相を優先的に加熱するのに使用されることが知られている。これと逆に、本発明で使用される加熱手段は、金属含有材料の特定の相を優先的に加熱するのを実質的に回避する。イルメナイトに加えられるMW及びRFエネルギーが、イルメナイトを炉温を超えて有意に加熱しないことは、図2で知り得る。
【0083】
金属含有材料を還元するための本発明の方法は、従来技術で知られている方法を越える多数の利点を有する。1つの利点は、本明細書記載の方法を使用して観察される還元速度の向上である。特に、高温で及び誘電界(MW及びRF)なしで行われる反応の還元速度は、本発明で必要とされるより低い温度でMWエネルギー及びRFエネルギーの存在下で行われる反応の還元速度より小さいことが観察された。これの当然の結果は、抽出冶金法における有意なエネルギーの節約及び排出物の低減である。特に、ガス排出物の低減が観察され、これは、本発明の比エネルギー消費の低減と結びつく。さらに、本方法は、所与の温度における金属化の程度の増加を実現し、また、現在可能な温度よりも低い温度での金属化を可能にする。
【0084】
これは、図3で例示され、そこでは、従来の還元法(すなわち、MW又はRFエネルギーの非使用)を使用するのに比較して、低温でのイルメナイトの金属化の速度及び程度が顕著に改良されることが示される。改良は、850℃で観察し得る。しかし、改良は、750℃でより顕著であり、650℃でさらに顕著である。
【0085】
本発明を、以下の非限定的実施例を参照しながらさらに例示することにする。
【0086】
本明細書記載の実験に対する一般的な手順を以下に示す。
【0087】
実験で使用されるMW発生器(2.450GHzで2.0kW)は、SAIREMモデルGMP20Tであった。
【0088】
実験で使用されるRF発生器(13.56MHzで1kW)は、RF Power ProductsモデルR10S(75 207 09 040)であった。
【0089】
RF整合器(13.56MHz)は、RF Power ProductsモデルSPR876(76 226 59 010)であった。
【0090】
輻射加熱系は、定格11.8V、0.58kWのKanthal Super1800であった。48Aで3.5kWの負荷に対して、6つの素子が必要であり、それらの素子は、直列に結線された。
【0091】
輻射素子の寸法は以下の通りであった:
LU端子長180mm;
LE加熱帯長200mm;
シャンク中心間の距離30mm;及び
重量約69g。
【0092】
制御系には、Eurotherm Thyristorモデル461 240V、25Aを使用した。Eurotherm dual loop温度制御器モデル900EPC、及び熱電対R型を使用した。
【0093】
キルンは、以下の寸法であった;460×480×540mm。
【0094】
実験で使用された空洞は、空洞殻への電磁エネルギー損失を最小にし、空洞負荷内への電磁エネルギー消散を最大にするマイクロウエーブ界向けの効率のよいアプリケータとなるように設計された。加えて、空洞は、電極その他の形態のラジオ周波数アプリケータを収める。空洞は、誘導子及び整合コンデンサなどのラジオ周波数同調コンポーネントにマイクロウエーブ界がアクセスするのを防止するような方式で設計される。
【0095】
空洞内には、絶縁ファイバボード(Rath KVS 161/302);Superkanthal抵抗加熱素子、石英マッフル、並びに試料を挿入した場合、石英ルツボ、及び石英製ガス供給ラインが存在する。当該の鉱物試料をルツボ内に置く。
【0096】
炉温を指定の温度に設定する。炉の条件が安定するまで放置する。試料を秤量し、試料ホルダー内に注ぐ。試料を含有する試料ホルダーを試料室内のガス供給管上に載せ、試料室を閉じる。適切なガス混合物を導入する前に、試料室及びマッフルを窒素でパージする。加えることが可能の場合、MW及び/又はRFをこの段階で炉の空洞内に導入する。MW及び/又はRFが加えられた実施例では、試料を空洞内に挿入する前にMW及び/又はRF発生器に電源を入れた。実験の開始時に、試料ホルダーを炉内に揚げる。実験中、関係するデータを記録する。指定の反応時間後、試料を炉内から下げ、試料室に入れる。試料室及びマッフルを窒素でパージし、試料を冷却する。実験後、試料を秤量し、重量減を計算する。試料を分析するために、選択された試料を調製する。
【0097】
電界強度を参照して、特定の送入マイクロウエーブ及びRF出力レベルを加えた。発生器からの送入出力レベル、及び反射出力レベルを測定した。実験全てにおいて、別段の指示がない限り、参照された出力レベルは全て、送入出力レベルである。加えて、MW出力は、900Wに調整され、RF出力は、300Wに調整された。
【0098】
試料での実際の電界強度を測定しなかった。その代わり、電界ピーク強度を以下の式に従って計算した:
【数1】


式中:
maxは、最大電界強度である。
Pは、消散電界出力である。
は、電界空洞の体積である。
は、電界空洞の「線質係数」である。空洞が、空である場合、RF及びMWアシスト空洞に対するQ係数は、低く、2と20間であり、平均9である。というのは、大部分のエネルギーは、誘電負荷内に消散し、空洞それ自体に貯蔵されていないからである。
ωは、2πfであり、式中、fは、周波数であり、
マイクロウエーブに対して、f=915MHz又は2450MHz、
ラジオ周波数に対してf=13.56MHzである。
【0099】
以下の実施例では、定量的な質量損失データ及びメスバウアー分析を使用することによって金属化の程度を求めた。57Feメスバウアー測定を従来の透過ジオメトリで行った。三角参照波形によって駆動されたK3 Austin Associates線型モータを使用することによって共鳴プロフィルを走査した。Kr−CO(2気圧)比例カウンタを使用することによって50mCi57Co(Rh)放射線源からの透過14.4keV共鳴放射を検出した。
【0100】
各試料を特別に設計した粉末−クランプホルダー(φ=1.5cm)に載せた。試料量40〜50mgを、メノウ乳棒及び乳鉢においてアセトン下で粉砕し、無機緩衝材料と完全に混合し、試料及び緩衝剤の混合物を試料ホルダー中に分散させることによって、透過メスバウアー測定のために均一厚さのディスクに成形した。
【0101】
14.4keV共鳴放射を選択するように設定された弁別器窓の典型的な計数レートは、10000カウント/秒の範囲であった。PCAに基づくマルチチャネル分析器の1024チャネルそれぞれで数十万カウントを取得するために、6〜12時間の間、各スペクトル及びそのミラーイメージのデータ取得を継続した。ライン幅Γ=0.27mm/sを与えた一連の測定の前後で測定された厚さ25μmのα−FeホイルによってXスケール速度(エネルギー)を較正した。分析の前に、各スペクトルに、そのミラーイメージ及び続いて加えられた隣接チャネルを重ねた。これは、幾何学的なベースライン歪を除去する働きを行い、分析のために使用された最終データセット中の(√N)統計散乱を低減させる。データをローレンツライン形状に理論的にフィットさせるためにフィッティングプログラム、NORMOSを使用することによって、スペクトル中の多様なサブコンポーネント相を脱たたみこみさせた。
【0102】
実施例1〜4では、本発明の方法を使用してイルメナイト精鉱試料を還元した。同じ条件下であるが、MW又はRFエネルギーがない条件で行われた実験とその結果とを比較した。実験1〜4で使用されたイルメナイト試料を以下に記載する。
【0103】
乾式篩によって求められたイルメナイト試料の粒径分布を表1に示す。
【0104】
【表1】


Mettler Toledo HR73水分分析器によって120℃で求められたイルメナイト試料の水分含量は0.32%である。N雰囲気中、950℃での重量減は、0.60%である。950℃での試験時間は60分であった。
【0105】
イルメナイト試料について行われた表2の鉱物分析によって、存在する主な相は、イルメナイト(80.36%)、変成イルメナイト(4.73%)、Ti赤鉄鉱(11.48%)、及びルチル(0.41%)であることが分かった。イルメナイトとして73%のFe2+及び11%のFe3+、並びに赤鉄鉱として16%のFe3+の存在を示す鉱物分析をメスバウアー分析が支持する。
【0106】
【表2】

【0107】
実施例1
CO/H下のイルメナイトの還元
CO70%、H15%、及びCO2%からなり、残りは窒素からなる還元雰囲気下、850℃と1050℃間の温度で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図(4〜8)に示すように比較した。
【0108】
実施例2
水素下でのイルメナイトの還元
100%からなる還元雰囲気下、650℃と850℃間の温度で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図(9〜11)に示すように比較した。
【0109】
実施例3
水素下での予備酸化イルメナイトの還元
100%水素下600℃で、従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元する前に、空気下、600℃と950℃間の温度でイルメナイトを予備酸化した。金属化の程度に及ぼす次の還元中の酸化温度及び誘電アシストを加えることの影響を図12に示す。
【0110】
空気下、950℃で60分間にわたり予備酸化した試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。次いで、100%水素下、550℃と750℃間の温度で試料を還元した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図(13〜16)に示すように比較した。
【0111】
実施例4
CO下での予備酸化イルメナイト仮焼物の還元
空気下、950℃で60分間にわたり予備酸化した試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。次いで、100%CO下、750℃と950℃間の温度で試料を還元した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図(17〜18)に示すように比較した。
【0112】
実施例5では、本発明の方法を使用して、水素及び一酸化炭素下でチタン磁鉄鉱鉱石を還元した。同じ条件下であるが、MW又はRFエネルギーがない条件で行われた実験とその結果とを比較した。実験5で使用された磁鉄鉱試料を以下に記載する。
【0113】
チタン磁鉄鉱及びチタン磁赤鉄鉱は、鉱石中の主な鉄含有相であり、合わせて鉱石質量のうちの85%を占め、鉄の96%超を含有する。鉱石は、かなりの量の磁赤鉄鉱(γ−Fe)成分を含有する。磁赤鉄鉱は、元の磁鉄鉱と密接に関係があり、緊密に相互成長している。磁赤鉄鉱は、準安定であり、加熱する(2000〜700℃)と赤鉄鉱(α−Fe)に転換する。
【0114】
鉱石中のチタンの主たるホストはチタン磁鉄鉱及びチタン磁赤鉄鉱(93%)であり、残りの7%のホストはイルメナイトである。チタン磁鉄鉱及びチタン磁赤鉄鉱を合わせて、平均±8.2質量%のチタンを含有する。
【0115】
鉱石中のバナジウムの主たるホストもチタン磁鉄鉱及びチタン磁赤鉄鉱(>85%)である。他のよく定義されて明確なV含有又はVに富む相は同定されなかった。
【0116】
鉱石の粒径分布及び化学組成を表3及び図19に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
実施例5
水素下の還元
100%からなる還元雰囲気下、600℃と900℃間の温度で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図20〜23に示すように比較した。
【0119】
実施例6及び7では、本発明の方法を使用して赤鉄鉱試料を還元した。同じ条件下であるが、MW又はRFエネルギーがない条件で行われた実験とその結果とを比較した。実験6及び7で使用された赤鉄鉱試料を以下に記載する。試料は、主として、赤鉄鉱(±91%)からなり、残りは主として、ケイ酸塩(7.1%)及びリン酸塩化合物(1.0%)を含む。ケイ酸塩は主として、石英、雲母(白雲母)、及びカオリン/パイロフィライトからなる。リン酸塩化合物の鉱物は、スバンベルジャイト−ウッドホウザイト固溶体相であると思われる。
【0120】
したがって、赤鉄鉱は、鉱石中の主な鉄含有相であり、99と100%間の鉄が赤鉄鉱をホストとし、非常に微小から痕跡までの量の針鉄鉱が随伴する。石英及び雲母に随伴する鉄は、主として赤鉄鉱由来であり、この赤鉄鉱は、これらの相と緊密に相互成長している。化学組成を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
実施例6
水素下での赤鉄鉱(微粉)の還元
100%からなる還元雰囲気下、400℃と600℃間の温度で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図24に示すように比較した。
【0123】
実施例7
一酸化炭素下の微粉の還元
CO100%からなる還元雰囲気下、600℃と800℃間の温度で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。金属化の程度及び金属化速度に及ぼす温度及び誘電出力の影響を調査し、以下の図25及び26に示すように比較した。
【0124】
実施例8では、本発明の方法を使用して褐鉄鉱系ラテライト試料を還元した。同じ条件下であるが、MW又はRFエネルギーがない条件で行われた実験とその結果とを比較した。実験8で使用された褐鉄鉱系ラテライト試料を以下に記載する。
【0125】
試料を乾燥し、−1180+425μm画分を必要な試験研究のために取り出した。この画分は、流動床反応器から微粉が失われるのを少なくするのに最適であることが分かった。残念なことに、他の粒径の画分は、本装置の制約のために試験研究から除外された。褐鉄鉱系ニッケルラテライト試料の粒径分布を図27に示すが、この図に本試験研究で使用された画分が例示されている。Mettler Toledo HR73水分分析器によって120℃で求められた試料の水分含量は、3.23%である。窒素雰囲気下700℃での重量減(15分後)は14.58%である。重量減は、自由水分の減少のためのみでなく、化学結合した水の減少及び脱ヒドロキシル化反応のためでもある。
【0126】
【表5】

【0127】
標題試料の化学組成は、褐鉄鉱系ニッケルラテライト鉱石の典型的な化学成分に合致する(表5)。標題試料のSi含量は、褐鉄鉱系ニッケルラテライト鉱石の典型的なSi濃度より大きい。
【0128】
褐鉄鉱系ニッケルラテライト試料は、主として、針鉄鉱、赤鉄鉱、磁鉄鉱、石英、及びクロム鉄鉱からなる。この試料は、豊富な褐鉄鉱と、より少量の針鉄鉱、赤鉄鉱、磁鉄鉱、石英、及びCrスピネルとであることを特徴とする。褐鉄鉱は、一般に、主としてその非晶質性のために不明確な相である。それは、一般に、水和度が大きい非晶質酸化鉄として記載される。褐鉄鉱は、その中で、赤鉄鉱化が部分的から完全までの磁鉄鉱、Crスピネル、及び石英の粒及び小片が存在するマトリックスを形成する。本試料では、褐鉄鉱は、Fe及びNiを支配的に含有する相である。それはまた、比較的大量のAl及びSi、並びにしばしば痕跡又は微量のTi及びCrを含有する。針鉄鉱及び針鉄鉱−赤鉄鉱は、褐鉄鉱マトリックス内、又は明確な二次魚卵状ノジュールとしてのいずれかで存在する。針鉄鉱ノジュールは、通常、褐鉄鉱膜によって囲まれている。針鉄鉱は、いくらかのNiをホストする。
【0129】
磁鉄鉱の小片及び粒は、多様な程度で赤鉄鉱化されていた。非常に微細な金属Niのインクルージョンが、磁鉄鉱の保存残部内に存在し、岩石の固有の地質学的成分である可能性がある。
【0130】
クロム鉄鉱(Crスピネル)の小片及び粒は、極めて普通であり、大抵の場合、褐鉄鉱マトリックス内のインクルージョンとして存在する。クロム鉄鉱は、部分的に赤鉄鉱化した磁鉄鉱脈と交替する場合が多い。クロム鉄鉱は、富Cr針鉄鉱膜によって囲まれていることもある。Crスピネルは、通常、かなりの量のAl、Fe、及びMgを含有する。
【0131】
実施例8
褐鉄鉱系ニッケルラテライト試料の還元
CO18%、H50%、CO2%、残余窒素からなる還元雰囲気下、700℃で試験を行った。試料を流動床反応器内に入れ、次いでそれをハイブリッド炉内に挿入した。従来の条件下(すなわち、いかなるMW及びRF界もない条件で)及び誘電条件下(すなわち、MW及びRF界の存在で)で還元反応を行った。鉄の金属化の程度、並びに三価及び二価鉄の還元速度に及ぼす誘電出力の影響を調査し、以下の図28〜30に示すように比較した。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の一実施形態のブロックフローダイアグラムである。
【図2】MW及びRF界の印加下での炉及び試料の測定温度の比較を示す図である。
【図3】水素下でイルメナイトを金属化するための速度を温度の関数として示す図である(MW出力は900Wであり、RF出力は300Wである)。
【図4】イルメナイトの金属化の向上程度に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図5】イルメナイトの還元に及ぼす誘電出力の影響を示す図である。
【図6】CO70%及びH15%下、850℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図7】CO70%及びH15%下、900℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図8】CO70%及びH15%下、950℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図9】水素100%下、650℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図10】水素100%下、750℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図11】水素100%下、850℃でのイルメナイトの金属化速度を示す図である。
【図12】質量減(金属化)に及ぼす予備酸化温度の影響を示す図である。
【図13】還元温度の影響を示す図である。
【図14】950℃で予備酸化され、次いで水素下600℃及び750℃で60分間にわたり還元された場合、イルメナイトの還元に及ぼす出力の影響を示す図である。
【図15】950℃で予備酸化後、水素下600℃での予備酸化イルメナイト仮焼物の還元速度を示す図である。
【図16】950℃で予備酸化後、水素下の還元速度に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図17】950℃、60分間の予備酸化後、金属化に及ぼす還元温度の影響を示す図である。
【図18】950℃で予備酸化後、850℃での予備酸化イルメナイト仮焼物の金属化速度を示す図である。
【図19】チタン磁鉄鉱試料に対する粒径分布を示す図である。流動床反応器実験では、+106μm−1700μm画分(影付)を使用した。
【図20】水素下600℃での磁鉄鉱の金属化を示す図である。
【図21】温度の関数としての向上比を示す図である。
【図22】磁鉄鉱の金属化の向上に及ぼすMW出力の影響を示す図である。
【図23】磁鉄鉱の金属化の向上に及ぼすRF出力の影響を示す図である。質量減は、還元及び金属化の直接的な測定値である。
【図24】水素下の赤鉄鉱鉄鉱石微粉の還元を示す図である。PMW=900W、及びPRF=300Wを送る。
【図25】一酸化炭素下の赤鉄鉱鉄鉱石微粉の還元の程度及び速度に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図26】水素下及び一酸化炭素下での赤鉄鉱鉄鉱石微粉の還元に対する質量減の比較を示す図である。
【図27】試験研究で使用された粒径画分を示す褐鉄鉱系ニッケルラテライト試料の粒径分布を示す図である。
【図28】従来及び誘電アシスト条件下での三価鉄の還元の比較を示す図である。
【図29】従来及び誘電アシスト条件下での二価鉄の形成及び還元の比較を示す図である。
【図30】従来及び誘電アシスト条件下での金属鉄形成の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有材料を用意するステップと、
対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって前記金属含有材料を加熱するステップと、
マイクロウエーブ(MW)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップと、
ラジオ周波数(RF)エネルギーに前記金属含有材料を暴露するステップと、
還元剤に前記金属含有材料を暴露するステップと
を含む、金属含有材料を還元するための方法。
【請求項2】
金属含有材料が、鉱石又は精鉱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属含有材料が鉄を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
鉱石が、イルメナイト、チタン磁鉄鉱、鉄鉱石、褐鉄鉱系ラテライト、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、赤鉄鉱、及び腐食岩系ラテライトの1つ又は複数から選択される、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属含有材料が、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって、約1200℃を超えない温度まで加熱される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金属含有材料が、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって、850℃を超えない温度まで加熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属含有材料が、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって、400〜850℃の範囲の温度まで加熱される、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギーに暴露するステップが、前記材料を有意に加熱しない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
金属含有材料をMW及び/又はRFエネルギーに暴露するステップが、前記材料を10℃未満まで加熱する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
空洞に加えられるMWエネルギーの電界ピーク強度が、300〜5,000Vm−1の範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
空洞に加えられるRFエネルギーの電界ピーク強度が、3,000〜100,000Vm−1の範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
還元剤が、一酸化炭素及び/又は水素から選択されるガスを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
還元剤が、炭素を含む固体材料を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
還元剤が、金属含有材料中に含まれている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
金属含有材料が、前記材料をMWエネルギー及び/又はRFエネルギーに暴露する前に、前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって加熱される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって金属含有材料を加熱しつつ、前記材料がMW及び/又はRFエネルギーに暴露される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
金属含有材料が、MWエネルギー及びRFエネルギーに同時に暴露される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
鉄含有鉱石又は精鉱を用意するステップと、
対流及び/又は伝導及び/又は輻射手段によって、前記鉱石又は精鉱を加熱するステップと、
還元剤に前記鉱石又は精鉱を暴露するステップと
を含み、前記鉱石又は精鉱の一部又は全部が、鉄まで還元される、鉄含有鉱石又は精鉱を化学的に還元するための抽出冶金方法であって、
前記鉱石又は精鉱がまた、前記鉱石又は精鉱の前記加熱と同時に、マイクロウエーブ(MW)エネルギー及びラジオ周波数(RF)エネルギーに暴露され、MW及びRFエネルギーの水準が、前記鉱石又は精鉱をさらに加熱することが殆ど又は全くないように選択され、還元過程中、前記鉱石又は精鉱の温度が、850℃、好ましくは650℃を超えないことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2009−528449(P2009−528449A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556844(P2008−556844)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000704
【国際公開番号】WO2007/099315
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(507132721)
【Fターム(参考)】