説明

マイクロカプセル化消火剤及びその製造方法、並びに消火性複合材料

【課題】 モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない臭素化アルカンを主成分とする消火能力に優れたマイクロカプセル化消火剤を提供する。
【解決手段】
破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、CnH2n+2-xBrx(ただしnは1〜3の整数であり、xは2又は3である。)により表される臭素化アルカンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤であって、前記殻が硅素系ゲルからなる第一の殻層と、ゼラチン又はその誘導体からなる第二の殻層とからなるマイクロカプセル化消火剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の火災の消火に有効なマイクロカプセル化消火剤、及びその製造方法、並びにかかるマイクロカプセル化消火剤を含有する消火性複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている消火剤のなかでガス状又は液状のフッ素化炭化水素は極めて有効である。このようなフッ素化炭化水素を使用した消火剤として、GB 2265309 A(特許文献1)は、部分的又は完全にフッ素化された不燃性炭化水素(0℃ を超える沸点を有する)と、それを保護すべき部位に噴霧するための加圧ガスとを含有する鎮火剤を開示している。この消火剤が高い性能を発揮するのは、(a) 高密度の消火ガスが非燃性雰囲気を作り出して、高温表面に空気が入り込むのを遮断し、(b) 高温の炎により分解して発生したフッ素ラジカルが、燃焼の動力学的連鎖を切断するためであると考えられる。また電気機器の消火でも短絡や故障を起こすことがないため、水、泡状消火剤又は無機炭酸塩粉末で消火ができない所でも使用できるという利点がある。このため、フッ素化炭化水素の消火剤は、海底施設、海上フロート施設、航空機、記録保管所、原子力発電所等における消火に適する。
【0003】
しかし、液体、気体又はエアロゾル状の消火剤による消火作業は容易でない。そのため、高温により自動的に消火性ガスを発生するマイクロカプセル化した消火剤が開発された。例えば、特開昭第57-195128号(特許文献2)は、液体ハロゲン化炭化水素を含有する微粒樹脂カプセルを、前記微粒樹脂カプセルの破裂温度未満の温度で発泡する樹脂に分散させた消火性ガス放出プラスチック発泡体を開示している。また特開昭第58-132056号(特許文献3)は、ハロゲン化炭化水素を含有した微粒樹脂カプセルを混入した油性又は水性の消火性塗料を開示している。これらの文献は、ハロゲン化炭化水素として、ジブロモテトラフルオロエタン、ブロモクロロメタン及びブロモクロロジフルオロメタンを記載している。同様の記載はロシア特許第1696446号にもある。
【0004】
しかしながら、これらのハロゲン化炭化水素からなる消火剤にはオゾン層を破壊するという問題がある。そのため、1987年のモントリオール議定書でこれらのハロゲン化炭化水素の生産は禁止され、使用は制限されている。
【0005】
モントリオール議定書で禁止されていない物質を用いた消火剤として、RU 2161520(特許文献4)は、CnF2n+2(ただしn=5〜7)又はCmF2m+1(ただしmは1又は2)の式により表されるハロゲン置換炭化水素からなる消火液と、130〜190℃の温度で破裂する球状ポリマー殻とからなるマイクロカプセルを開示している。マイクロカプセルの大きさは100〜400μmである。しかし、この種のハロゲン化炭化水素は“温室効果”をもたらし、1997年の京都議定書で禁止された。
【0006】
そこで、大気中に蓄積しない液状の消火剤として、臭素化炭化水素が提案された[WO 98/15322(特許文献5)]。しかし、この臭素化炭化水素は、火元が小さい場合にはガス化した大部分が消火に利用されず、また樹脂や塗料に添加した場合には大気中に急速に揮発してしまう。
【0007】
【特許文献1】GB 2265309 A
【特許文献2】特開昭第57-195128号公報
【特許文献3】特開昭第58-132056号公報
【特許文献4】RU 2161520公報
【特許文献5】WO 98/15322公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない臭素化アルカンを主成分とする消火能力に優れたマイクロカプセル化消火剤を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、かかるマイクロカプセル化消火剤の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらにもう一つの目的は、かかるマイクロカプセル化消火剤を含有する消火性複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマイクロカプセル化消火剤は、破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤であって、前記消火液が炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有することを特徴とする。
【0012】
前記臭素化アルカンはCnH2n+2-xBrx(ただしnは1〜3の整数であり、xは2又は3である。)により表されるのが好ましい。
【0013】
前記ポリマー殻は第一の殻層及び第二の殻層からなるのが好ましい。前記第一の殻層は硅素系ゲルからなり、前記第二の殻層はゼラチン又はその誘導体からなるのが好ましい。前記硅素系ゲルはアルコキシシランの加水分解生成物であるのが好ましい。
【0014】
前記マイクロカプセルの平均外径は50〜400μmであり、前記殻の平均厚さは3〜20μmであるのが好ましい。
【0015】
前記消火液の含有量は前記マイクロカプセル全体の75〜95質量%であるのが好ましい。
【0016】
前記臭素化アルカンはジブロモメタンであるのが好ましい。
【0017】
破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤を製造する本発明の方法は、(1) 臭素化アルカンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化させることにより、臭素化アルカン小滴を形成し、(2) 得られた乳化液のpHを4〜4.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、前記臭素化アルカン小滴の外周にゼラチン又はその誘導体からなる殻を形成し、(3) 前記殻を固化することを特徴とする。
【0018】
前記工程(3) において、グルタルアルデヒドを添加することにより前記殻を一次固化させるのが好ましい。前記乳化液にさらにレゾルシンを添加してpHを1〜2まで低下させた後、ホルムアルデヒドを添加し、昇温することにより、前記殻を二次固化させるのが好ましい。
【0019】
本発明の好ましい一実施態様によるマイクロカプセル化消火剤(破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有する消火液からなるコアとを有する。)の製造方法は、(1) アルコキシシランを含有する臭素化アルカンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化させるとともに、前記アルコキシシランを加水分解することにより、硅素系ゲルからなる第一の殻層を有する臭素化アルカン小滴を形成し、(2) 得られた乳化液のpHを4〜4.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、前記第一の殻層の外周にゼラチン又はその誘導体からなる第二の殻層を形成し、(3) 前記第二の殻層を固化することを特徴とする。
【0020】
前記工程(3) において、グルタルアルデヒドを添加することにより前記第二の殻層を一次固化させるのが好ましい。前記乳化液にさらにレゾルシンを添加してpHを1〜2まで低下させた後、ホルムアルデヒドを添加し、昇温することにより、前記第二の殻層を二次固化させるのが好ましい。
【0021】
本発明の消火性複合材料は、上記マイクロカプセル化消火剤が充填された硬化樹脂からなることを特徴とする。
【0022】
本発明の消火性塗料は、上記マイクロカプセル化消火剤を含有することを特徴とする。
【0023】
本発明の消火性織布は、上記マイクロカプセル化消火剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のマイクロカプセル化消火剤は、破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、炭素数1〜3の臭素化アルカンからなる消火液コアとを有するので、火災の熱や炎により確実に破裂して消火を行うことができるとともに、モントリオール議定書及び京都議定書により生産及び使用の制限を受けない。従って、本発明のマイクロカプセル化消火剤は、樹脂や塗料等に配合して消火性複合材を得るのに好適である。特に本発明の好ましいマイクロカプセル化消火剤のポリマー殻は、アルコキシシランの加水分解生成物からなる第一の殻層と、ゼラチン又はその誘導体からなる第二の殻層を有するので、保存状態では臭素化アルカンからなる消火液が漏洩することがないが、火災時には確実に破裂し、臭素化アルカン消火液をガス状態で放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[1] マイクロカプセル化消火剤
主として火元を消すのに使用する本発明のマイクロカプセル化消火剤は、熱や炎により殻が破裂し、内部の消火液をガス化させて放出する。このような消火作用を有効に発揮するため、本発明のマイクロカプセル化消火剤は以下の構成及び特性を有するのが好ましい。
【0026】
(A) 消火液
マイクロカプセルのコアを形成する消火液は、炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有する。臭素化アルカンは、一般式:CnH2n+2-xBrx(ただしnは1〜3の整数であり、xは2又は3である。)により表されるのが好ましい。臭素化アルカンの具体例としては、ジブロモメタン、トリブロモメタン等が挙げられる。消火液は臭素化アルカン100%でも良いが、必要に応じて炭素数7〜9のパーフルオロアルカンを含有しても良い。パーフルオロアルカンの具体例としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。臭素化アルカン/(臭素化アルカン+パーフルオロアルカン)の質量比は70%以上が好ましい。火災の熱又は炎により揮発するために、消火液の気化温度は45〜160℃であるのが好ましい。また消火液が凝固すると体積が大きく減少し、マイクロカプセル殻を破壊するおそれがあるので、消火液の融点は−40℃以下が好ましい。
【0027】
(B) マイクロカプセル
マイクロカプセルのポリマー殻は好ましくは第一の殻層及び第二の殻層からなり、第一の殻層は硅素系ゲルからなり、第二の殻層はゼラチン又はその誘導体からなる。硅素系ゲルはアルコキシシランの加水分解生成物で、アルコキシシランからゾルゲル法により形成するのが好ましい。ゼラチン又はその誘導体からなる第二の殻層は、グルタルアルデヒドにより一次固化され、レゾルシン及びホルムアルデヒドにより二次固化されているのが好ましい。マイクロカプセルの破裂温度は100〜300℃が好ましく、130〜280℃がより好ましい。
【0028】
マイクロカプセルの平均外径は50〜400μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。ポリマー殻の平均厚さは3〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましく、5〜7μmが最も好ましい。第一の殻層の平均膜厚は0.1〜3μm、例えば1μmであるのが好ましい。また第二の殻層の平均膜厚は1〜18μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。
【0029】
消火液の割合は、マイクロカプセル全体の75〜95質量%であるのが好ましく80〜95質量%であるのがより好ましい。
【0030】
[2] マイクロカプセル化消火剤の製造方法
(A) 第一の殻層の形成
ゼラチンの水溶液に消火液を添加して撹拌し、乳化させる。消火液には、予め1〜2質量%のアルコキシシラン(例えばテトラエトキシシラン等)を入れておくのが好ましい。乳化温度は例えば40℃であり、乳化時間は5〜10分間が好ましい。アルコキシシランを含有する場合、消火液小滴の表面には、アルコキシシランの加水分解生成物(硅素系ゲル)の薄膜(第一の殻層)が形成される。
【0031】
(B) 第二の殻層の形成
第一の殻層を有する消火液小滴が分散したゼラチン水溶液に、燐酸ナトリウム水溶液[例えば5質量%]を添加し、次いでH2SO4水溶液[例えば10質量%]を添加してpHを4〜4.5に調整すると、ゼラチンのコアセルベーションが起こる。混合液を徐々に冷却して1〜1.5時間で25〜35℃に低下させると、第一の殻層の上に第二の殻層としてゼラチン膜が形成される。混合液をさらに5〜15℃まで冷却し、この温度に約1時間以上保持する。
【0032】
(C) ゼラチン膜の固化
さらにグルタルアルデヒド水溶液[例えば25質量%]を加え、5〜15℃に1時間以上保持すると、ゼラチン膜の一次固化が起こる。混合液を20〜30℃に加熱した後、レゾルシン水溶液[例えば15質量%]を加え、pHを1〜2に低下させる。その後、ホルムアルデヒド水溶液[例えば37質量%]を加え、混合液を30〜35℃に上昇させ、30分間以上保持すると、ゼラチン膜の二次固化が起こる。
【0033】
(D) マイクロカプセルの捕集
撹拌を行ってマイクロカプセルを沈殿させ、上澄み液を除去する。デカンテーション法によりマイクロカプセルを2〜3回水洗した後、濾別し、乾燥する。このようにして、二層の殻を有するマイクロカプセル化消火剤が得られる。
【0034】
本発明のマイクロカプセル化消火剤は粉体状であり、樹脂、塗料、繊維等に配合することができる。
【0035】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
(1) 原料水溶液の調製
5 gのゼラチンを95 gの蒸留水に入れ、室温で20分間保持し、次いで50℃に30分間加熱して、5質量%のゼラチン水溶液を調製した。
【0037】
5 gの燐酸ナトリウムを95 gの蒸留水に加え、60〜70℃で1〜2時間撹拌し、5質量%の燐酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0038】
レゾルシン15 gを85 gの蒸留水に入れ、室温で39分間撹拌して、15質量%のレゾルシン水溶液を調製した。
【0039】
(2) マイクロカプセルの製造
5質量%のゼラチン水溶液に40℃で50 mlのジブロモメタン(気化温度=98.5℃,融点=−52.8℃、1質量%のテトラエトキシシランを含有)を添加し、3〜5分間撹拌して乳化させ、テトラエトキシシランの加水分解生成物からなる第一の殻層を有するジブロモメタンの液滴を形成した。次いで5質量%の燐酸ナトリウム水溶液12 mlを加え、ゼラチンのコアセルベーションを行った。10質量%の硫酸を加えてpHを4.2〜4.3とし、32〜33℃に冷却して1〜1.5時間保持した。次いで8〜12℃まで冷却して1時間保持し、ジブロモメタン液滴上の第一の殻層の上に第二の殻層としてゼラチン膜を形成した。
【0040】
25質量%のグルタルアルデヒド水溶液5 mlを添加し、8〜12℃に1時間保持した後、20〜25℃まで徐々に昇温して3時間保持し、ゼラチン膜を一次固化させた。さらに15質量%のレゾルシン水溶液18.3 mlを加えて15分間撹拌した後、10質量%の硫酸水溶液を加えてPHを1.3〜1.4とした。続いて37質量%のホルムアルデヒド水溶液29 mlを加えて30℃に3時間保持し、ゼラチン膜を二次固化させた。その後攪拌を停止すると、マイクロカプセルは沈殿した。上澄みを捨て、マイクロカプセルをデカンテーション法により2〜3回水洗した。濾過及び乾燥により、平均外径200〜300μmで、消火液の含有量が95質量%の粉体状のマイクロカプセル化消火剤を得た。マイクロカプセルの破裂温度は230℃であった。
【0041】
実施例2
消火液として質量比で80:20のジブロモメタンとトリブロモメタンの混合物(気化温度:111℃、融点:−45℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜300μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は89質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は270℃であった。
【0042】
実施例3
消火液として、質量比で80:20のジブロモメタンとパーフルオロヘキサンの混合物(気化温度:88℃、融点:−55℃)を使用した以外実施例1と同じ方法により、平均外径200〜400μmのマイクロカプセル化消火剤を作製した。消火液の含有量は90質量%であり、マイクロカプセル殻の破裂温度は190〜200℃であった。
【0043】
200 mm×200 mm×200 mmの寸法を有し、側壁に穴を有する上蓋付きの実験箱の中に、30 gのディーゼルオイル及び実施例1〜3の各マイクロカプセル化消火剤を入れ、上蓋を閉めた。ディーゼルオイルに点火すると、炎によりマイクロカプセルが破裂し、消火された。マイクロカプセル化消火剤の使用量及び消火に要した時間を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例4
36.4 gの液状未硬化エポキシ樹脂に、3.6 gのポリエチレンポリアミン系硬化剤、及び実施例1の60 gのマイクロカプセル化消火剤を配合し、混練した。得られたペーストをシリコーン系離型剤を塗布したアルミニウム枠(200 mm×200 mm×20 mmの寸法を有する)に入れ、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られたマイクロカプセル化消火剤を含有するエポキシ樹脂板を実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に立てかけ、ディーゼルオイルに点火した。炎が出ると、マイクロカプセルは破裂し、1〜3秒後に火は消えた。
【0046】
実施例5
液状未硬化エポキシ樹脂、硬化剤及びマイクロカプセル化消火剤を混練してなる実施例4と同じペーストを、実施例1〜3に用いたのと同じ実験箱の内壁に塗布し、20〜25℃に48時間保持して硬化させた。得られた塗膜の平均厚さは1〜2mmであった。ディーゼルオイルを点火すると、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
【0047】
実施例6
60 gの水性塗料に実施例1の40 gのマイクロカプセル化消火剤を加え、20〜25℃で24時間乾燥させ、マイクロカプセル化消火剤を含有する平均厚さ1〜2mmの塗膜を形成した。実施例5と同様に着火したところ、炎が出てから1〜2秒で火は消えた。
【0048】
実施例7
実施例2のマイクロカプセル化消火剤をポリビニルアルコール水溶液に分散し、得られた懸濁液にパイル織布を含浸させた。マイクロカプセル化消火剤が分散したパイル織布に対して実施例6と同じ実験をしたところ、同様に消火された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤であって、前記消火液が炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有することを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記臭素化アルカンがCnH2n+2-xBrx(ただしnは1〜3の整数であり、xは2又は3である。)により表されることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記殻が第一の殻層及び第二の殻層からなることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項4】
請求項2に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記第一の殻層が硅素系ゲルからなり、前記第二の殻層がゼラチン又はその誘導体からなることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記硅素系ゲルがアルコキシシランの加水分解生成物であることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記マイクロカプセルの平均外径が50〜400μmであり、前記殻の平均厚さが3〜20μmであることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記消火液の含有量が前記マイクロカプセル全体の75〜95質量%であることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤において、前記臭素化アルカンがジブロモメタンであることを特徴とするマイクロカプセル化消火剤。
【請求項9】
破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤を製造する方法であって、(1) 臭素化アルカンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化させることにより、臭素化アルカン小滴を形成し、(2) 得られた乳化液のpHを4〜4.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、前記臭素化アルカン小滴の外周にゼラチン又はその誘導体からなる殻を形成し、(3) 前記殻を固化することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記工程(3) でグルタルアルデヒドを添加することにより前記殻を一次固化させることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記乳化液にさらにレゾルシンを添加してpHを1〜2まで低下させた後、ホルムアルデヒドを添加し、昇温することにより、前記殻を二次固化させることを特徴とする方法。
【請求項12】
破裂温度が100〜300℃のポリマー殻と、炭素数1〜3の臭素化アルカンを含有する消火液からなるコアとを有するマイクロカプセル化消火剤を製造する方法であって、(1) アルコキシシランを含有する臭素化アルカンをゼラチン又はその誘導体の水溶液に入れて乳化させるとともに、前記アルコキシシランを加水分解することにより、硅素系ゲルからなる第一の殻層を有する臭素化アルカン小滴を形成し、(2) 得られた乳化液のpHを4〜4.5に低下させるとともに5〜15℃まで冷却することにより、前記第一の殻層の外周にゼラチン又はその誘導体からなる第二の殻層を形成し、(3) 前記第二の殻層を固化することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記工程(3) でグルタルアルデヒドを添加することにより前記第二の殻層を一次固化させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロカプセル化消火剤の製造方法において、前記乳化液にさらにレゾルシンを添加してpHを1〜2まで低下させた後、ホルムアルデヒドを添加し、昇温することにより、前記第二の殻層を二次固化させることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が充填された硬化樹脂からなる消火性複合材料。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が充填された消火性塗膜。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロカプセル化消火剤が含浸された消火性織布。

【公開番号】特開2008−36417(P2008−36417A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182654(P2007−182654)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(597113930)
【Fターム(参考)】