説明

マイクログリッドの需給制御装置およびマイクログリッドの需給制御方法

【課題】電力過疎地域や離島などのマイクログリッドの周波数の安定性を向上させることが可能なマイクログリッドの需給制御技術を提供する。
【解決手段】送電網110に再生可能エネルギ利用発電設備150と、これを補う内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140を接続して負荷120に電力を供給するマイクログリッド100において、予測機能部210、需給計画部220、経済負荷配分制御部230による内燃力発電機出力231および蓄電池出力232の制御に対して、負荷周波数制御部240による系統周波数fおよび連系線潮流ΔPを用いた制御を加味して、安定な系統周波数fを維持しつつ、電力需給制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクログリッドの需給制御装置およびマイクログリッドの需給制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、負荷と発電のバランス(需給バランス)が崩れると周波数変動が生じる。そのため、負荷変動の変動周期に応じた各種周波数制御によって、時々刻々変化する負荷と発電を常にバランスさせるように内燃力発電設備の発電機の出力増減調整を実施している。
【0003】
負荷変動の変動周期に応じて、変動周期が1分程度の負荷変動に対しては、発電機の回転数をガバナフリー運転することにより制御を行う。
変動周期が20分程度の負荷変動に対しては、負荷周波数制御(LFC: Load Frequency Control)により制御を行う。
【0004】
変動周期が60分程度の変動に対しては、経済負荷配分制御(EDC: Economic Dispatching Control)で上下限制約、出力変化率制約などの発電機の特性を考慮した上で経済性を考慮した制御を行う。
【0005】
近年、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備(以下、再生可能エネルギ利用発電設備と記す)を含むマイクログリッドの開発が増加している。
【0006】
太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備は、日射量、風速などの自然条件に応じて時々刻々と出力が変動するため、特に電力過疎地域や離島など、脆弱な電力系統では系統の周波数や電圧の変動が生じ、運用上の技術的課題となることが想定される。
【0007】
これに対し例えば、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備による出力変動を、電力貯蔵装置に充放電を行わせることで、ローカルに電力系統を安定化させる電力安定化装置として非特許文献1があげられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】株式会社オーム社、2008年11月12日発行、「OHM」、第95巻、第11号、P37〜42、「風力発電用電力安定化装置の開発」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の非特許文献1の電力安定化装置はローカル制御であり、広範囲な周波数補償はできていなかった。
本発明の目的は、電力過疎地域や離島などのマイクログリッドの周波数の安定性を向上させることが可能なマイクログリッドの需給制御技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、内燃力発電設備と、再生可能エネルギ利用発電設備と、電力貯
蔵装置と、電力を消費する負荷と、を含むマイクログリッドの需給制御装置において、
気象予報値および需要実績から、長期需要予測値および短期需要予測値を演算する予測手段と、
前記長期需要予測値から、前記内燃力発電設備の起動・停止状態、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の蓄電出力を演算する需給計画手段と、
前記短期需要予測値から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する経済負荷配分制御手段と、
前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力、系統周波数、および外部の電力系統との連系線潮流から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する負荷周波数制御手段と、
を備えるマイクログリッドの需給制御装置を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、内燃力発電設備と、再生可能エネルギ利用発電設備と、電力貯蔵装置と、電力を消費する負荷と、を含むマイクログリッドの需給制御方法において、
気象予報値および需要実績から、長期需要予測値および短期需要予測値を演算する予測ステップと、
前記長期需要予測値から、前記内燃力発電設備の起動・停止状態、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の蓄電出力を演算する需給計画ステップと、
前記短期需要予測値から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する経済負荷配分制御ステップと、
前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力、系統周波数、および外部の電力系統との連系線潮流から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する負荷周波数制御ステップと、
を含むマイクログリッドの需給制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力過疎地域や離島などのマイクログリッドの周波数の安定性を向上させることが可能なマイクログリッドの需給制御技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態であるマイクログリッドの需給制御方法を実施するマイクログリッドの需給制御装置の構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムにおける需給制御機能の構成例を示すブロック図である。
【図3A】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する予測機能部の作用の一例を説明する概念図である。
【図3B】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する予測機能部の作用の一例を説明するグラフである。
【図3C】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する予測機能部の作用の一例を説明するグラフである。
【図4】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する需給計画部の作用の一例を説明する概念図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する経済負荷配分制御部の作用の一例を説明する概念図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムを構成する負荷周波数制御部の構成例をさらに詳細に例示したブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態であるマイクログリッド需給制御システムにおける負荷周波数制御部における系統周波数判定機能の制御領域の一例を示す制御領域マップである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるマイクログリッドの需給制御方法を実施するマイクログリッドの需給制御装置の構成の一例を示す概念図である。
【0015】
この図1に例示されるように、本実施の形態のマイクログリッド100は、送電網110と、これに接続される複数の負荷120、内燃力発電設備130、電力貯蔵装置140、再生可能エネルギ利用発電設備150で構成されている。
【0016】
本実施の形態のマイクログリッド100は、例えば、離島や、特定地域等に設定される比較的小規模な電力網である。
そして、マイクログリッド100の送電網110には、外部の他のマイクログリッドや、商用電力網等の外部電力系統180が、連携線111を介して接続されており、必要に応じて、外部電力系統180から電力の融通を受けることが可能になっている。
【0017】
電力貯蔵装置140は、例えば、充放電可能な二次電池やキャパシタで構成される。本実施の形態では、一例として二次電池で構成されるものとする。
再生可能エネルギ利用発電設備150は、例えば、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備である。
【0018】
この再生可能エネルギ利用発電設備150の出力は、天候や季節等に影響されて変動するため、電力貯蔵装置140に対する充電、放電を行って出力を可能な限り平準化するとともに、必要に応じて内燃力発電設備130を起動して補うことにより、負荷120による電力需要と、再生可能エネルギ利用発電設備150等の出力との需給バランスを保つ必要がある。
【0019】
そこで、本実施の形態の場合には、再生可能エネルギ利用発電設備150の出力の変動や、負荷120の消費電力の変動に応じて、マイクログリッド100の平常の基準周波数f(例えば、50Hzまたは60Hz)を可能な限り変化させることなく、内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140の動作を制御するために、マイクログリッド需給制御システム200が設けられている。
【0020】
このマイクログリッド需給制御システム200は、予測機能部210、需給計画部220、経済負荷配分制御部230、負荷周波数制御部240、実績データベース250、を備えている。
【0021】
マイクログリッド需給制御システム200は、例えば、コンピュータシステムで構成され、予測機能部210〜経済負荷配分制御部230、および負荷周波数制御部240の一部の機能は、コンピュータシステムの図示しないマイクロプロセッサ等で実行されるソフトウェアで実現される。また、負荷周波数制御部240の他の一部の機能は、コントローラ等のハードウェア回路で構成することができる。
【0022】
また、実績データベース250は、マイクログリッド需給制御システム200の内部に設けられた記憶装置、または、マイクログリッド需給制御システム200の外部に設けられた専用のデータベースシステム等で構成することができる。
【0023】
マイクログリッド需給制御システム200の負荷周波数制御部240には、送電網110に接続された周波数検出器160で測定された当該送電網110の系統周波数fが入力される。
【0024】
同様に、連携線111には、有効電力演算器170が設けられ、測定結果である連系線潮流ΔPがマイクログリッド需給制御システム200に入力される。
図2は、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムにおける需給制御機能の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図2に例示されるように、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システム200では、マイクログリッド需給制御機能は、予測機能部210、需給計画部220、経済負荷配分制御部230、負荷周波数制御部240で構成されている。
【0026】
予測機能部210は、気象予報値211、需要実績251から長期需要予測値212、短期需要予測値213を演算する。
需給計画部220は、長期需要予測値212から内燃力発電設備130の起動・停止状態である内燃力発電機起動・停止状態223、内燃力発電設備の出力である内燃力発電機出力221、電力貯蔵装置140の蓄電池出力222を演算する。
【0027】
経済負荷配分制御部230は、需給計画部220から得られる内燃力発電機起動・停止状態223、内燃力発電機出力221、蓄電池出力222と、予測機能部210から得られる短期需要予測値213に基づいて、内燃力発電設備の出力である内燃力発電機出力231、電力貯蔵装置140の蓄電池出力232を演算する。
【0028】
負荷周波数制御部240は、経済負荷配分制御部230から得られる内燃力発電機出力231、蓄電池出力232と、系統周波数f、外部電力系統180との連携線111から得られる連系線潮流ΔPから、内燃力発電設備130の出力である内燃力発電機出力241、電力貯蔵装置140の蓄電池出力242を演算して、内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140の動作を制御する。
【0029】
図3Aは、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムを構成する予測機能部の構成および作用の一例を説明する概念図である。
図3Bおよび図3Cは、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムを構成する予測機能部の作用の一例を説明するグラフである。
【0030】
図3B、図3Cを参照して、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システム200における予測機能部210によって、気象予報値211、需要実績251から演算された長期需要予測値212、短期需要予測値213の一例を示す。
【0031】
図3Bにおける長期需要予測値212の例は、現在を起点とし未来24時間先まで30分刻みの需要予測値を表す。
図3Cにおける短期需要予測値213の例は、現在を起点とし未来15分先まで1分刻みの需要予測値を表す。
【0032】
図4は、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムを構成する需給計画部の作用の一例を説明する概念図である。
図4では、需給計画部220が、長期需要予測値212から内燃力発電設備の起動・停止状態である内燃力発電機起動・停止状態223、内燃力発電設備の出力である内燃力発電機出力221、電力貯蔵装置140の蓄電池出力222を演算する例を示している。
【0033】
需給計画部220は内燃力発電機出力上下限制約(すなわち、内燃力発電機出力上限制約311、内燃力発電機出力下限制約312)、内燃力発電機出力変化率制約320、蓄電池出力上下限制約(すなわち、蓄電池出力上限制約331、蓄電池出力下限制約332)、蓄電池出力変化率制約340、蓄電池電力量上下限制約(蓄電量制約、すなわち、蓄
電池電力量上限制約351、蓄電池電力量下限制約352)、需給バランス制約360の制約条件のもと、内燃力発電設備130の燃料費と起動費を最小化する演算を行う。
【0034】
すなわち、一例として、需給計画部220は、以下の式(1)および式(2)に例示される目的関数Fにて、燃料費と起動費を最小化する演算を行う。
【0035】
【数1】

【0036】
【数2】

この式(1)、式(2)において、
F(t):時刻tの燃料費
:内燃力発電機kの起動費
δ:内燃力発電機kの起動の有無
M:評価区間(時間)
N:内燃力,蓄電池の総台数
,b,c:コスト係数
(t):時刻tでの内燃力出力(内燃力発電機出力221),蓄電池出力(蓄電池出力222)
である。
【0037】
また、制約条件として、一例として、以下の式(3)〜式(6)で示される制約がある。
式(3)は、P(t)に関する内燃力・蓄電池出力上下限制約(すなわち、内燃力発電機出力上限制約311、内燃力発電機出力下限制約312)を示している。
【0038】
【数3】

この式(3)において、
k_L:内燃力,蓄電池出力の下限制約値
k_U:内燃力,蓄電池出力の上限制約値
である。
【0039】
式(4)は、内燃力・蓄電池出力変化率制約(内燃力発電機出力変化率制約320、蓄電池出力変化率制約340)を示している。
【0040】
【数4】

この式(4)において、
ΔP(t) :時刻tの内燃力・蓄電池出力変化率
ΔPk_L:内燃力・蓄電池出力変化率の下限制約値
ΔPk_U:内燃力・蓄電池出力変化率の上限制約値
である。
【0041】
式(5)は、電池電力量制約を示している。
【0042】
【数5】

この式(5)において、
(t):時刻tの蓄電池電力量
k_L:蓄電池電力量の下限制約値
k_U:蓄電池電力量の上限制約値
0k:蓄電池電力量の初期値
である。
【0043】
式(6)は、需給バランスの制約を示している。
【0044】
【数6】

ここで、
(t):時刻tでの総負荷
である。
【0045】
なお、上述の式(1)の目的関数Fによる燃料費と起動費を最小化する問題の求解としては、例えば、数理手法,メタヒューリスティク手法を用いることができる。具体的には、分枝限定法,遺伝的アルゴリズム(GA)とその改良手法、シミュレーティッドアニーリング(SA)とその改良手法、タブサーチ(以下TSと記す)とその改良手法およびParticle
Swarm Optimization(以下PSOと記す)とその改良手法などが用いることができる。
【0046】
図5は、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムを構成する経済負荷配分制御部の作用の一例を説明する概念図である。
図5に例示されるように、本実施の形態の経済負荷配分制御部230は、予測機能部210から得られる短期需要予測値213と、需給計画部220から得られる内燃力発電機出力221、蓄電池出力222、内燃力発電機起動・停止状態223と、から内燃力発電設備の出力(内燃力発電機出力231)、電力貯蔵装置の蓄電池出力232を演算する。
【0047】
すなわち、本実施の形態の場合、一例として、経済負荷配分制御部230は、内燃力発電機出力上下限制約(内燃力発電機出力上限制約311、内燃力発電機出力下限制約312)、内燃力発電機出力変化率制約320、蓄電池出力上下限制約(蓄電池出力上限制約331、蓄電池出力下限制約332)、蓄電池出力変化率制約340、蓄電池電力量上下限制約(蓄電量制約:蓄電池電力量上限制約351、蓄電池電力量下限制約352)、需給バランス制約360の制約条件のもと、内燃力発電設備130の燃料費を最小化する。
【0048】
本実施の形態の場合、経済負荷配分制御部230は、一例として、以下の式(7)に例示される目的関数Fを用いて内燃力発電設備130の燃料費を最小化する。
なお、この式(7)は、上述の式(1)における内燃力発電設備130の起動費に関する第2項を省略したものであり、制約条件等は、式(1)の場合と同様である。
【0049】
【数7】

なお、上述の式(7)の目的関数Fによる燃料費を最小化する問題の求解としては、例えば、数理手法を用いることができる。具体的には、内点法,有効制約法などの二次計画法を用いることができる。
【0050】
図6は、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムを構成する負荷周波数制御部の構成例をさらに詳細に例示したブロック図である。
図6に例示されるように、本実施の形態の負荷周波数制御部240は、経済負荷配分制御部230から得られる内燃力発電機出力231および蓄電池出力232と、周波数検出器160から得られる系統周波数fと、外部電力系統180との連系線潮流ΔPと、に基づいて、内燃力発電設備の出力(内燃力発電機出力241)、電力貯蔵装置140の蓄電池出力242を制御する。
【0051】
すなわち、本実施の形態の負荷周波数制御部240は、系統周波数判定機能243、LPF(ローパスフィルタ)244a、LPF244b、加算器245a、加算器245b、加算器245c、不感帯設定器246a、不感帯設定器246b、系統定数器246c、リミッタ付きPI制御器247、負荷周波数制御出力配分器248(KG1,・・・KGN、およびKB1,・・,KBN)、変化率リミッタ249から構成される。
【0052】
基準周波数fの入力経路には、加算器245a、不感帯設定器246a、系統定数器246c、加算器245bが配置され、加算器245bの出力が、リミッタ付きPI制御器247への入力となっている。
【0053】
系統定数器246cには、不感帯設定器246aからの出力に乗算される系統定数(K)が設定される。
そして、基準周波数fは、加算器245aの加算入力となり、系統定数器246cの出力が加算器245bの減算入力となっている。
【0054】
系統周波数fの入力経路には、LPF244a、系統周波数判定機能243、が配置され、系統周波数判定機能243のLFC常時制御出力243aが、加算器245aの減算入力となっている。
【0055】
系統周波数判定機能243は、周波数−継続時間定義テーブル243tを備えており、入力される系統周波数fを、周波数−継続時間定義テーブル243tで判別することにより、LFC常時制御出力243a、風力/太陽光発電出力抑制243b、風力/太陽光発電解列243c、負荷出力抑制243d、負荷遮断243eを出力する判定機能を備えている。
【0056】
連系線潮流ΔPの入力経路には、LPF244a、不感帯設定器246bが設けられ、不感帯設定器246bの出力が、加算器245bの加算入力となっている。
リミッタ付きPI制御器247の出力側には、内燃力発電設備130の数(G1〜GN)と、電力貯蔵装置140の数(B1〜BN)の数だけ、負荷周波数制御出力配分器248、変化率リミッタ249、加算器245cが並列に接続されている。
【0057】
変化率リミッタ249の各々の出力は、加算器245cにおける加算入力となっている。
そして、負荷周波数制御出力配分器248の各々には、対応する内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140の各々の内燃力発電機出力231および蓄電池出力232が接続され、同様に、加算器245cには、対応する内燃力発電機出力231および蓄電池出力232が加算入力として接続されている。
【0058】
そして、負荷周波数制御部240において、系統周波数判定機能243は、基準周波数fに対して、系統周波数fが所定の変動範囲の場合には、LFC常時制御出力243aを加算器245aに出力し、偏差が不感帯を逸脱する大きさになると、系統定数器246cを介して加算器245bに減算入力され、連系線潮流ΔP側の加算入力の和がリミッタ付きPI制御器247に入力される。
【0059】
リミッタ付きPI制御器247は、比例・積分制御によって、個々の負荷周波数制御出力配分器248による内燃力発電機出力231および蓄電池出力232の配分率を制御する。
【0060】
これにより、変化率リミッタ249によって変化の上限および下限が既定される範囲で、個々の内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140の各々に対応して設けられた負荷設定器G1〜GNおよび負荷設定器B1〜BNの各々に対して、内燃力発電機出力241および蓄電池出力242を出力することで、個々の内燃力発電設備130および電力貯蔵装置140の動作を、が基準周波数fからの系統周波数fの逸脱量が所定の許容範囲に収まるように制御する。
【0061】
また、系統周波数判定機能243は、系統周波数fが基準周波数fから所定の継続時間以上にわたって許容範囲を逸脱して変化した場合には、周波数−継続時間定義テーブル243tに基づいて、風力/太陽光発電出力抑制243b、風力/太陽光発電解列243c、負荷出力抑制243d、負荷遮断243eの各制御を行う。
【0062】
以下、本実施の形態のマイクログリッド100を制御するマイクログリッド需給制御システム200の作用を説明する。
図2に例示されるように、まず、予測機能部210は、実績データベース250から読み出される過去の需要実績251および気象予報値211等の情報に基づいて、長期需要予測値212および短期需要予測値213を、需給計画部220および経済負荷配分制御部230に出力する。
【0063】
需給計画部220では、長期需要予測値212に基づいて内燃力発電機出力221、蓄電池出力222、内燃力発電機起動・停止状態223の情報を経済負荷配分制御部230に出力する。
【0064】
経済負荷配分制御部230は、予測機能部210から得られる短期需要予測値213と、需給計画部220から得られた内燃力発電機出力221、蓄電池出力222、内燃力発電機起動・停止状態223に基づいて、内燃力発電機出力231および蓄電池出力232の情報を負荷周波数制御部240に出力する。
【0065】
負荷周波数制御部240は、経済負荷配分制御部230から得られる内燃力発電機出力231および蓄電池出力232に対して、マイクログリッド100の現在の系統周波数fと、外部電力系統180の連系線潮流ΔPに基づいて、マイクログリッド100の系統周波数fの変動を所定の範囲に抑制して安定させつつ、内燃力発電設備130、電力貯蔵
装置140および再生可能エネルギ利用発電設備150と、負荷120との需給バランスを制御する。
【0066】
図7は、本実施の形態のマイクログリッド需給制御システムにおける負荷周波数制御部における系統周波数判定機能の制御領域の一例を示す制御領域マップである。
すなわち、負荷周波数制御部240おいて、系統周波数判定機能243は、周波数−継続時間定義テーブル243tに基づいて、マイクログリッド100の系統周波数fの基準周波数fに対する変動が所定の小さな範囲では、リミッタ付きPI制御器247の制御系列により、負荷設定器G1〜GNおよび負荷設定器B1〜BNの各々に対する内燃力発電機出力241および蓄電池出力242の出力を制御する。
【0067】
これが、図7の負荷周波数常時制御(領域I)である。
また、系統周波数判定機能243は、周波数−継続時間定義テーブル243tに基づいて、系統周波数fが、上述の領域Iよりも所定の継続時間以上および所定値以上増大側に変動した場合には、風力/太陽光発電出力抑制243bを再生可能エネルギ利用発電設備150に出力して、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備の出力抑制を行う(領域IIO)。
【0068】
また、系統周波数判定機能243は、領域IIOよりもさらに、系統周波数fが、所定の継続時間以上および所定値以上増大側に変動した場合には、再生可能エネルギ利用発電設備150に対して風力/太陽光発電解列243cを出力し、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した発電設備のマイクログリッド100からの解列を行う(領域IIIO)。
【0069】
また、系統周波数判定機能243は、周波数−継続時間定義テーブル243tに基づいて、系統周波数fが、上述の領域Iよりも所定の継続時間以上および所定値以上減少側に変動した場合には、負荷120に対して負荷出力抑制243dを出力することにより、負荷出力抑制を行う(領域IIU)。
【0070】
また、系統周波数判定機能243は、系統周波数fが、領域IIUよりもさらに所定の継続時間以上および所定値以上減少側に変動した場合には、負荷120に対して負荷遮断243eを出力して、負荷120をマイクログリッド100から切り離す負荷遮断(領域IIIU)を行う。
【0071】
このように、本実施の形態の場合には、例えば、電力過疎地域や離島などのマイクログリッド100において、周波数の安定性を向上させつつ、マイクログリッドの需給制御を実現できる、という効果が得られる。
【0072】
すなわち、本実施の形態によれば、内燃力発電設備130と、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギを利用した再生可能エネルギ利用発電設備150、電力貯蔵装置140で構成されるマイクログリッド100において、太陽光発電設備における日射量変動、風力発電設備における風速変動等による出力変動に対してマイクログリッド100の周波数を安定化し、電力品質を向上させることが可能となる。
【0073】
換言すれば、周波数変動等の電力品質の低下を懸念することなく、マイクログリッド100に対する再生可能エネルギ利用発電設備150の接続数を増やして、自然エネルギ等の再生可能エネルギを利用した発電の割合を大きくすることにより、発電コストを引き下げることが可能になる。
【0074】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範
囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、再生可能エネルギとしては、太陽光や風力に限らず、廃棄物やバイオマス等の燃焼エネルギ等も含むことができる。
【符号の説明】
【0075】
100 マイクログリッド
110 送電網
111 連携線
120 負荷
130 内燃力発電設備
140 電力貯蔵装置
150 再生可能エネルギ利用発電設備
160 周波数検出器
170 有効電力演算器
180 外部電力系統
200 マイクログリッド需給制御システム
210 予測機能部
211 気象予報値
212 長期需要予測値
213 短期需要予測値
220 需給計画部
221 内燃力発電機出力
222 蓄電池出力
223 内燃力発電機起動・停止状態
230 経済負荷配分制御部
231 内燃力発電機出力
232 蓄電池出力
240 負荷周波数制御部
241 内燃力発電機出力
242 蓄電池出力
243 系統周波数判定機能
243a LFC常時制御出力
243b 風力/太陽光発電出力抑制
243c 風力/太陽光発電解列
243d 負荷出力抑制
243e 負荷遮断
243t 周波数−継続時間定義テーブル
244a LPF
244b LPF
245a 加算器
245b 加算器
245c 加算器
246a 不感帯設定器
246b 不感帯設定器
246c 系統定数器
247 リミッタ付きPI制御器
248 負荷周波数制御出力配分器
249 変化率リミッタ
250 実績データベース
251 需要実績
311 内燃力発電機出力上限制約
312 内燃力発電機出力下限制約
320 内燃力発電機出力変化率制約
331 蓄電池出力上限制約
332 蓄電池出力下限制約
340 蓄電池出力変化率制約
351 蓄電池電力量上限制約
352 蓄電池電力量下限制約
360 需給バランス制約
f 系統周波数
基準周波数
ΔP 連系線潮流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃力発電設備と、再生可能エネルギ利用発電設備と、電力貯蔵装置と、電力を消費する負荷と、を含むマイクログリッドの需給制御装置において、
気象予報値および需要実績から、長期需要予測値および短期需要予測値を演算する予測手段と、
前記長期需要予測値から、前記内燃力発電設備の起動・停止状態、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の蓄電出力を演算する需給計画手段と、
前記短期需要予測値から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する経済負荷配分制御手段と、
前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力、系統周波数、および外部の電力系統との連系線潮流から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する負荷周波数制御手段と、
を備えることを特徴とするマイクログリッドの需給制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のマイクログリッドの需給制御装置において、
前記需給計画手段は、目的関数として前記内燃力発電設備の燃料費および起動費を用い、
前記目的関数の制約条件として、
前記内燃力発電設備の前記出力の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の前記出力の上限制約および下限制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の蓄電量の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力および前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の和と前記負荷との需給バランス制約、
を用いることを特徴とするマイクログリッドの需給制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のマイクログリッドの需給制御装置において、
前記経済負荷配分制御手段の目的関数に前記内燃力発電設備の燃料費を用い、
制約条件に前記内燃力発電設備の前記出力の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の上限制約および下限制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の蓄電量の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力および前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の和と前記負荷との需給バランス制約、
を用いることを特徴とするマイクログリッドの需給制御装置。
【請求項4】
請求項1記載のマイクログリッドの需給制御装置において、
前記負荷周波数制御手段は、系統周波数判定手段と、PI(比例・積分)制御手段を含むことを特徴とするマイクログリッドの需給制御装置。
【請求項5】
請求項4記載のマイクログリッドの需給制御装置において、
前記系統周波数判定手段は、系統周波数と、予め決められた前記系統周波数と継続時間の関係を定義したテーブルとから、前記再生可能エネルギ利用発電設備の出力抑制、前記再生可能エネルギ利用発電設備の解列、負荷出力抑制、負荷遮断を判別することを特徴とするマイクログリッドの需給制御装置。
【請求項6】
内燃力発電設備と、再生可能エネルギ利用発電設備と、電力貯蔵装置と、電力を消費す
る負荷と、を含むマイクログリッドの需給制御方法において、
気象予報値および需要実績から、長期需要予測値および短期需要予測値を演算する予測ステップと、
前記長期需要予測値から、前記内燃力発電設備の起動・停止状態、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の蓄電出力を演算する需給計画ステップと、
前記短期需要予測値から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する経済負荷配分制御ステップと、
前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力、系統周波数、および外部の電力系統との連系線潮流から、前記内燃力発電設備の出力、前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力を演算する負荷周波数制御ステップと、
を含むことを特徴とするマイクログリッドの需給制御方法。
【請求項7】
請求項6記載のマイクログリッドの需給制御方法において、
前記需給計画ステップでは目的関数として前記内燃力発電設備の燃料費および起動費を用い、
前記目的関数の制約条件として、
前記内燃力発電設備の前記出力の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の前記出力の上限制約および下限制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の蓄電量の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力および前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の和と前記負荷との需給バランス制約、
を用いることを特徴とするマイクログリッドの需給制御方法。
【請求項8】
請求項6記載のマイクログリッドの需給制御方法において、
前記経済負荷配分制御ステップでは、目的関数として前記内燃力発電設備の燃料費を用い、
制約条件に前記内燃力発電設備の前記出力の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の上限制約および下限制約、
前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の変化率制約、
前記電力貯蔵装置の蓄電量の上限制約および下限制約、
前記内燃力発電設備の前記出力および前記電力貯蔵装置の前記蓄電出力の和と前記負荷との需給バランス制約、
を用いることを特徴とするマイクログリッドの需給制御方法。
【請求項9】
請求項6記載のマイクログリッドの需給制御方法において、
前記負荷周波数制御ステップは、
系統周波数と、予め決められた前記系統周波数と継続時間の関係を定義したテーブルとから、前記再生可能エネルギ利用発電設備の出力抑制、前記再生可能エネルギ利用発電設備の解列、負荷出力抑制、負荷遮断を演算する系統周波数判定ステップを含むことを特徴とするマイクログリッドの需給制御方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−114900(P2011−114900A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267398(P2009−267398)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】