説明

マイクロコンピュータシステム、半導体装置、及び、無線タグ

【課題】
ユビキタスコンピューテイングに利用されるマイクロコンピュータシステムへの要望、即ち、低消費電力化とともにセキュリティの確保が可能なマイクロコンピュータシステムを提供する。
【解決手段】
システム制御を行う処理ユニット101と、プログラム及びデータを格納するRAMブロック103と、システム制御用の固定プログラムを格納するROM102と、RAMブロック103に格納する応用プログラムを取り込むための入力専用ポート106と、外部装置110との間でデータと制御信号を送受信するための入出力ポート107と、少なくとも処理ユニット101とRAMブロック103とROM102に電源供給するための内蔵電池108とを備えてなる。処理ユニット101が、応用プログラムをRAMブロック103に取り込んだ後に、入力専用ポート106の動作を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ等の小型電子機器に利用可能な電池を内蔵した低消費電力型マイクロコンピュータシステムに関し、特に、システム内に保持された応用プログラムやデータに対するセキュリティ機能を強化したマイクロコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の情報技術としてユビキタスコンピューテイングが注目されている。身の回りのあらゆるものに小型化されたマイクロコンピュータシステムが組み込まれることが期待されている。この一形態として、対象物を非接触で識別する無線タグが開発されている。
【0003】
無線タグは商品等の物につけて使う荷札であり、内蔵された不揮発性メモリに物の識別番号(ID)や価格といった属性情報を格納している。また、不揮発性メモリに、個人情報データとして、名前、住所、性別等を記録している場合もある。また、近年では、不揮発性メモリに応用プログラムを格納して実行することができ、利便性の向上が図られている。無線タグは、消費電力の大きい複雑なプロトコルや暗号処理を必要とせず低消費電力化し易いという利点もある。
【0004】
無線タグの一例として、下記の特許文献1に開示された無線タグの概略ブロック構成を、図6に示す。また、この無線タグは、電磁誘導を利用した非接触通信でデータの送受信等を行う。図7に、当該無線タグで使用されるASK(Amplitude Shift Keying)変調通信波形を示す。図6に示すように、特許文献1に開示された無線タグ部610は、CPU601、不揮発性メモリ602、電源回路605、I/O部608、RFアンテナ609から構成されている。また、I/O部608は、変調回路603、復調回路604、及び、無線周波数(RF)回路606からなり、無線タグ部610のRFアンテナ609以外の回路部分は、半導体装置607で構成されている。データの送受信に使用する無線通信波は13.56MHzの搬送波を持ち、通信データはASK振幅変調により上記搬送波に重畳される。ASK振幅変調の変調度は10%程度の低深度になっている。
【0005】
無線タグを、リーダライタ装置などの外部装置が発生する磁場中に置くと、RFアンテナ609の共振作用により交流電力が発生する。この交流電力は電源回路605内の整流回路で整流されて半導体装置607内の内部回路に供給される。
【0006】
I/O部608では、CPU601の処理で生成された通信データを外部装置に送信する場合に、変調回路603の変調動作により通信データが負荷変調されて出力される。逆に、通信データをRFアンテナ609から受信する場合に、復調回路604の復調動作により、通信波形の振幅を検出し、変調度10%の場合において、振幅が100%であれば“1”を90%であれば“0”を割り当てることで通信データを復調する。無線周波数(RF)回路606では、データ通信の入出力を切り換えている。
【0007】
復調回路604で復調されたデータ(応用プログラムのデータを含む。)は、CPU601の処理により不揮発性メモリ602に記憶される。
【0008】
しかしながら、無線タグは、電波という媒体を介して電力供給を受ける関係で、常時安定な電力を受けられるとは限らない。また、RFアンテナ609から得られる電源電圧は外部装置(リーダライタ)との距離に左右されるため、距離が離れると微弱な電力となる可能性がある。従って、無線タグに利用されるシステム及びその構成要素は,いくぶん不安定で微弱な電力でも動作が可能なように、低消費電力化されている必要がある。
【0009】
合わせて、無線タグに格納された物の識別番号(ID)や価格といった属性情報、名前、住所、性別等の個人情報、更に、無線タグに書き込まれている応用プログラムのセキュリティ等を確保する必要がある。
【特許文献1】特開2002−197429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記無線タグに代表されるユビキタスコンピューテイングに利用されるマイクロコンピュータシステムには、低消費電力化、セキュリティ確保の要望があり、これらを同時に満足するマイクロコンピュータシステムが必要になっている。
【0011】
しかしながら、現在のマイクロコンピュータシステムには、下記の問題がある。第一に、これらのマイクロコンピュータシステムに利用される不揮発性メモリは、待機時は非動作とすることにより、その消費電力を“0”に近くすることができ、書き込まれたデータを保持することが可能である。しかしながら、書き込み、または、読み出し時における消費電力が比較的大きいという問題がある。不揮発性メモリとして広く使用されているフラッシュメモリにおいては、ピーク電流で数十mA程度になる。無線タグに使用された場合、微弱電力下での動作が問題である。また、無線タグの通信距離はその消費電力で変わり、消費電力が大きいと通信距離が短くなるという問題がある。
【0012】
第二に、セキュリティ上の問題としては、製品が廃棄された場合に、廃棄した製品が第三者に渡って利用される可能性がある。これらの製品が応用プログラム及びデータの書き換え等により他の目的に利用されたり、場合によっては悪用されたりする可能性がある。
【0013】
第三に、製品が廃棄された場合、応用プログラムが製品に残留してしまうという問題がある。この場合、応用プログラム及びデータが漏洩、流出する可能性があり、セキュリティ上好ましくない。従って、製品を廃棄する場合、セキュリティを確保するための適切な処置(以下、「リジェクト処理」と称す。)を行わなければならないという問題がある。
【0014】
上述の特許文献1に開示された無線タグにおいては、これらの問題に関しては何ら考慮されておらず、当該問題が存在する。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ユビキタスコンピューテイングに利用されるマイクロコンピュータシステムへの要望、即ち、低消費電力化とともにセキュリティの確保が可能なマイクロコンピュータシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、システム制御を行う処理ユニットと、プログラム及びデータを格納するRAMブロックと、システム制御用の固定プログラムを格納するROMと、前記RAMブロックに格納する応用プログラムを取り込むための入力専用ポートと、外部装置との間でデータと制御信号を送受信するための入出力ポートと、少なくとも前記処理ユニットと前記RAMブロックと前記ROMに電源供給するための内蔵電池と、を備えてなり、前記処理ユニットが、前記応用プログラムを取り込んだ後に、前記入力専用ポートの動作を禁止することを第1の特徴とする。
【0017】
上記第1の特徴の構成とすることで、製造時、入力専用ポートを通じて応用プログラムをプログラム格納用RAMへ書き込み、書き込んだ後に入力専用ポートの動作を処理ユニットが禁止状態に設定することで、外部から応用プログラムへのアクセス経路を遮断して、応用プログラムの書き換えや漏洩、流出を防止できる。
【0018】
また、上記第1の特徴では、プログラム及びデータを格納する手段として内蔵電池で駆動されるRAMブロックを用いることにより、従来用いられていたフラッシュメモリのように書き込み或いは消去時に大きな電力を消費することなく、記憶したデータの不揮発性と低消費電力という要求を同時に満たすことが可能となる。
【0019】
また、応用プログラムをRAMブロックに書き込む構成とすることで、システムに柔軟性を与え、製造段階でのプログラムの変更を容易にすることが可能となる。製造段階の初期に応用プログラムの内容が決定されていなくても、製造の最終工程で応用プログラムを書き込むことが可能で、製造と応用プログラム開発が平行して進められ、結果として製品の短納期化が可能である。
【0020】
近年、マイクロコンピュータシステムに内蔵して利用される電池は、小型化や薄型化(厚み、約1.5mm)が進んでいる。小型でありながら3.0V仕様で500mAh(2.5V終端電圧)を越える電力容量を持つものもある。これらの電池は、無線タグなどの小型電子機器に利用でき、しかも外部からの無線による電力供給がないので安定して通信距離を大きくできる。従って、上記第1の特徴では、内蔵電池を使用することで、無線による電力供給時における通信距離の問題を解消できる。
【0021】
尚、上記第1の特徴の構成における入出力ポートは、入出力端子と入力端子と出力端子の少なくとも2種類以上の組み合わせで構成されている場合、或いは、入出力端子だけで構成されている場合が想定される。
【0022】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記第1の特徴に加えて、前記処理ユニットが、前記応用プログラムを取り込んだ後に、更に、前記RAMブロックの少なくとも前記応用プログラムを格納した記憶領域を書き込み禁止状態にすることを第2の特徴とする。
【0023】
上記第2の特徴の構成によれば、RAMブロックの少なくとも前記応用プログラムを格納した記憶領域の書き込みが禁止されることで、用途に応じて応用プログラムの書き込みを可能としながら、書き込み後は読み出し専用メモリとして機能させることが可能となり、RAMブロックに書き込まれた応用プログラムをより確実に保護することができる。例えば、悪意のある第三者によるプログラムの改竄から保護することが可能となり、更には、内蔵電池の消耗等により、電源電圧が不安定になった場合等、不用意な書き込みに対して応用プログラムの安全を図ることができる。また、内蔵電池から電力が供給されている期間中、RAMブロックの少なくとも前記応用プログラムを格納した記憶領域を機能的に読み出し専用メモリとして使用することが可能である。応用プログラムを実行させるには、CPUの制御を、ROMからプログラム格納RAMへ移して実行させることが可能である。上記第2の特徴のような構成とすることにより、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを採用する場合に比較し、前述のように低消費電力化が可能となる。更に、ROMの用途を応用プログラムの実行制御等のマイクロコンピュータシステムの制御プログラムの格納用に限定し、応用プログラムをRAMブロックに格納することにより、本発明に係るマイクロコンピュータシステムの製造後においてもプログラムの変更が可能となり用途に応じて柔軟な応用が可能となる。
【0024】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記第1の特徴に加えて、前記RAMブロックが少なくとも第1RAMと第2RAMを備えて構成され、前記処理ユニットが、第1の外部装置の要求に応じて、前記固定プログラムの一部をなす第1処理プログラムを実行して、前記応用プログラムを、前記入力専用ポートを経由して取り込み前記第1RAMに格納した後、前記入力専用ポートの動作と前記第1RAMへの書き込み動作を禁止し、前記第1RAMは、前記書き込み動作が禁止された後、読み出し専用のプログラムメモリとして動作し、前記処理ユニットは、第2の外部装置の要求に応じて、前記第1RAMに格納された前記応用プログラムを実行し、当該実行により生成されたデータを前記第2RAMに記憶することを第3の特徴とする。
【0025】
上記第3の特徴の構成によれば、上記第2の特徴の構成をより具体的に実現でき、上記第1及び第2の特徴の作用効果を奏することができる。
【0026】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記第3の特徴に加えて、前記処理ユニットが、前記固定プログラムの一部をなす第2処理プログラムを実行して、前記応用プログラムの使用回数が、前記使用回数から決定されるシステム全体の累積消費電力量と前記内蔵電池の電力容量から導出されるライフサイクルに達する直前または直後に、前記第1RAMと前記第2RAMに記憶されたプログラム及びデータをハードウェア的手段により強制的にリセットすることを第4の特徴とする。
【0027】
上記第4の特徴の構成によれば、本発明に係るマイクロコンピュータシステムのライフサイクルを把握でき、セキュリティ確保のためのリジェクト処理を行った後に安全にシステムを廃棄することができる。また、固定プログラムの一部をなす第2処理プログラムにライフサイクルを計算するプログラムを組み込むことで、応用プログラムを作成する場合、応用プログラム作成者はライフサイクル計算処理を気にせずプログラムを作成することができる。
【0028】
ところで、第1RAMと第2RAMを後述するスタティック型のランダムアクセスメモリで構成した場合において、内蔵電池が消耗してその出力電圧が低下した場合に、CPU等の処理ユニットが動作不能となった後も、当該低電源電圧状態で、第1RAMと第2RAMは記憶データを保持可能な場合がある。従って、システムとしてのライフサイクルが終了しても、第1RAMと第2RAMは依然として不揮発性メモリとして機能している可能性が高い。上記第4の特徴の構成によれば、処理ユニットが動作可能なライフサイクル期間中に、確実に第1RAMと第2RAMに対するリジェクト処理を実行することができるため、応用プログラムやデータの漏洩及び流出を確実に防止できる。
【0029】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記何れかの特徴に加えて、前記処理ユニット、前記RAMブロック、前記ROM、前記入力専用ポート、及び、前記入出力ポートを、単一の半導体基板上に形成してなることを第5の特徴とする。
【0030】
上記第5の特徴の構成によれば、処理ユニット等の機能ブロックを半導体装置として構成することで、マイクロコンピュータシステムを小型電子機器として構築することが可能である。更に、RAMブロックを不揮発性でありながら消費電力の極めて小さな書き込み可能なメモリとして用いることができる。
【0031】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記何れかの特徴に加えて、前記RAMブロックはスタティック型のランダムアクセスメモリからなることを第6の特徴とする。
【0032】
上記第6の特徴の構成によれば、書き込み或いは消去動作時に大きな電力消費を必要とすることなく、更に、待機状態においてはリーク電流しか発生しないため実質的に待機時の電力消費をなくすることが可能となるため、RAMブロックを不揮発性でありながら消費電力の極めて小さな書き込み可能なメモリとして用いることができる。
【0033】
本発明に係るマイクロコンピュータシステムは、上記何れかの特徴に加えて、前記入出力ポートが、前記外部装置との間でデータと制御信号を無線で送受信可能に構成されていることを第7の特徴とする。
【0034】
上記第7の特徴の構成によれば、本発明に係るマイクロコンピュータシステムを無線タグとして構築することが可能である。
【0035】
本発明に係る半導体装置は、上記何れかの特徴を備えたマイクロコンピュータシステムにおける前記処理ユニット、前記RAMブロック、前記ROM、前記入力専用ポート、及び、前記入出力ポートを、単一の半導体基板上に形成してなることを特徴とする。更に、本発明に係る無線タグは、上記第7の特徴を備えたマイクロコンピュータシステムを備えてなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るマイクロコンピュータシステム(以下、適宜「本発明システム」と称す。)の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0037】
〈第1実施形態〉
図1に、本発明システムの基本的な構成を概略的に示す。図1に示すように、本発明システム100は、内蔵電池108による電池駆動であり、電池108は本発明システム100の筐体(パッケージ)内に内蔵(封止)されている。本発明システム100の電源は、電池108以外からは供給されておらず、また電池108を交換するための手段は持たない。また、製造段階に電池108を装填する以外に、充電器等による充電や、太陽電池等による電力供給がなく、即ち外部からのエネルギー供給は受けない。本発明システム100は、そのライフサイクル期間中、内蔵された電池108から定常的に電力が供給される。このように電池108は、電池の交換や取り外した後に外部からの電力供給による悪意のある再利用を防止するために、上述のようにシステム内部に封止されていることが望ましい。
【0038】
図1に示すように、本発明システム100は、機能ブロックとして、本発明システム100を制御するCPU等の処理ユニット101と、処理ユニット101上で実行されるシステム制御用の固定プログラムを格納するROM102と、処理ユニット101上で実行される応用プログラム及びデータを格納するRAMブロック103を備えて構成される。従って、ROM102に格納された固定プログラムによって、処理ユニット101がシステム制御用に制御され、RAMブロック103に格納された応用プログラムによって、処理ユニット101が特定用途のために制御されるように構成されている。
【0039】
また、RAMブロック103は、応用プログラムを格納する第1RAM104と、応用プログラムの処理結果のデータを格納するための第2RAM105に分割されている。第1RAM104においては、書き込みを禁止する機能を持ち、内蔵された電池108から定常的に電流を供給することで、機能的に読み出し専用メモリとして動作させることが可能である。また、RAMブロック103に接続されたリセット信号により、記憶内容を消去することが可能である。
【0040】
更に、本発明システム100は、第1の外部装置109からRAMブロック103に格納する応用プログラムを取り込むための入力専用ポート106と、第2の外部装置110との間でデータと制御信号を送受信するための入出力ポート107を備えて構成されている。第1の外部装置109は、製造時の汎用テスタ評価や、PROMライタでの評価を想定した外部装置であり、第2の外部装置110は、本発明システム100の使用環境(送受信装置等)を想定した外部装置である。上記の各機能ブロック101〜103、入力専用ポート106、及び、入出力ポート107は、データバス111を介して相互に接続されている。尚、図1において、各機能ブロック101〜103間のアドレスバス及び制御信号バス等の記載は省略している。
【0041】
入力専用ポート106及び入出力ポート107はシリアル、パラレル等のインターフェイスの形態には特に制限はない(場合によっては、アナログ入出力や非接触の通信形態がある)が、本実施形態では、下記に示すインターフェイスを採用する。
【0042】
本実施形態では、本発明システム100の電池108以外の各機能ブロック101〜103、入力専用ポート106、及び、入出力ポート107が、単一の半導体基板上に形成され半導体装置として構成される。本発明システム100の電池108以外の部分を半導体装置に構成すれば、各機能ブロック間の接続において余分な電力消費がなく、より低消費電力化が可能で小型電子機器として構成できる。尚、本発明システム100の電池108以外の部分をプリント基板等の基板上に構成する形態であっても構わない。
【0043】
入力専用ポート106は、製造時に汎用テスタ等を用いて応用プログラムを第1RAM104に読み込むためのインターフェイスであって、本発明システム100に端子上の制約がある場合は、受信機能のみを備えたUART等のシリアル通信ポートが利用できる。汎用テスタ等の第1の外部装置109からは、応用プログラムのデータがUART通信のフォーマットに従い、シリアルに送信されてきており、入力専用ポート106の内部レジスタ(内部バッファ)に順次書き込まれる。処理ユニット101は、ROM102内に記録されている第1処理プログラム(固定プログラムの一部)を実行することで、入力専用ポート106の内部レジスタのデータ(応用プログラム)を順次第1RAM104に転送して格納する。
【0044】
このように、ROM102には、データ入力或いはRAMブロック103への書き込み、消去等の制御プログラムが格納される。更に、応用プログラムは外部装置から入力される構成とすることにより、本発明システム100は、その応用(用途)が固定されることはない。
【0045】
また、応用プログラムのデータの第1RAM104への書き込みが完了した場合は、処理ユニット101から制御レジスタ112を動作禁止状態に設定することにより、制御レジスタ112から出力される動作禁止信号によって入力専用ポート106の動作を禁止することが可能に構成されている。
【0046】
入出力ポート107は、送受信装置等の第2の外部装置110との通信を行うためのポートとして使用され、第2の外部装置110がシリアル通信を必要とした場合は、UART等のシリアル通信ポートが利用できる。応用プログラムの実行により、処理ユニット101から入出力ポート107を制御することができ、第2の外部装置110とのデータ通信を行い、そのデータ通信の結果であるデータを第2RAM105に格納することが可能である。
【0047】
図2に、製造時における応用プログラムの書き込み処理手順を示す。当該書き込み処理は、製造時ハードウェアテストの最終工程に組み込まれることが望ましい。本書き込み処理手順に沿って、本発明システム100の動作を説明することで、本発明システム100内の各機能ブロック101〜103の機能及び動作がより一層明確となる。
【0048】
図2に示す処理手順では、応用プログラムを第1RAM104に格納するための初期設定モード(ステップS11〜S16)から、応用プログラムの格納が終了して本発明システム100を待機状態に移す待機モード(ステップS17)までの説明を行う。
【0049】
ステップS11において、第1の外部装置109からクロック端子を介してクロックを供給する。次に、TEST端子を“H”(高レベル)に設定することで、テストモードに入る。このとき、入力専用ポート106は活性化されている。
【0050】
ステップS12において、本発明システム100はテストモードにおける所定のテストを実施する。これらは一般的ハードウェアテストと同等であり、処理ユニット101、ROM102、RAMブロック103、入力専用ポート106、入出力ポート107の各機能ブロックのテストをセルフテストによって実施している。テストの詳細については本願の目的とは直接関係しないので、ここでは説明を省略する。
【0051】
ステップS13において、汎用テスタ等の第1の外部装置109から応用プログラムの転送開始を示すコマンドが送信される。処理ユニット101は、入力専用ポート106を通してこのコマンドを受信すると、ROM102に格納されている第1処理プログラムの実行を開始し、転送される応用プログラムを第1RAM104上に格納するための受信準備をする。
【0052】
ステップS14において、汎用テスタ等の第1の外部装置109から、応用プログラムのデータがUARTのフォーマットに従い、順次シリアルに送信され入力専用ポート106内のレジスタ(内部バッファ)に一旦保存される。ROM102の第1処理プログラムによって、レジスタ内に保存された応用プログラムのデータは、順次第1RAM104の所定アドレスに書き込まれていく。応用プログラムの書き込みが終了すると、ROM102の第1処理プログラムは、以下のステップS15、S16、S17を実行する。
【0053】
ステップS15において、入力専用ポート106の動作を禁止する。入力専用ポート106は処理ユニット101からのレジスタ制御により、非活性化する。
【0054】
ステップS16において、第1RAM104への書き込み機能を禁止する。この時点で、第1RAM104は読み出し専用メモリとなる。
【0055】
ステップS17において、本発明システム100を待機モードとする。
【0056】
ステップS18において、TEST端子=“L”(低レベル)とすることで、本発明システム100をテストモードから開放して、通常の動作モードに入る。
【0057】
次に、本発明システム100で構成される電子機器(製品)のリジェクト処理について説明する。
【0058】
図4に、本発明システム100における消費電力モデルを記載する。この消費電力モデルでは、P1を初期設定モードにおける消費電力量、P2を待機(HALT)モードにおける消費電力量、P3を本発明システム100の1回の動作にかかる消費電力量、と夫々定義している。
【0059】
本発明システム100が、ライフサイクル期間中に消費する総消費電力量Pは、下記の数1で表すことができる。尚、数1中のNが本発明システム100の総動作回数(ライフサイクル)を表している。
【0060】
(数1)
=P1+P2×N+P3×N
【0061】
ここで、初期設定モードにおける消費電力量P1、及び、本発明システム100の1回の動作にかかる消費電力量P3は、製品の評価等を通じて実使用状況に依存して決定され得る。
【0062】
待機(HALT)モードにおける消費電力量P2は、今日の低消費型マイクロコンピュータでは、電池108の電流容量(Ah)から換算される電力容量(Wh)に対して十分に小さく、更に、RAMブロック103にスタティック型のランダムアクセスメモリを用いた場合、待機モードではリーク電流しか電力消費に寄与しないので、実質的にP2=0として扱える。
【0063】
以上より、数1で与えられるライフサイクル期間中に消費する総消費電力量Pが、電池108の初期電力容量Pに等しくなると、ライフサイクル期間が終了するので、本発明システム100のライフサイクルNが、下記の数2で与えられる。
【0064】
(数2)
N=(P−P1)/P3
【0065】
従って、ライフサイクルNは、電池108の許容電流容量及び本発明システム100の消費電力量P1,P3の評価等から実使用状況に依存して決定され得る。本処理は、ROM102に格納されている固定プログラムの一部をなす第2の処理プログラムに、応用プログラムが使用された回数nを計数するプログラムを組み込んでおき、回数nがライフサイクルNに等しくなるか、或いは、大きくなった場合に、ライフサイクル期間の終了判定をして、第1RAM104と第2RAM105に夫々格納されている応用プログラムと実行の結果であるデータを消去する消去プログラムを実行させる。
【0066】
図3に、ライフサイクルNを決定し、応用プログラム及び実行の結果であるデータを消去する処理手順を示す。
【0067】
ステップS21において、第2の外部装置110に接続されることで応用プログラムが実行される。
【0068】
ステップS22において、第1RAM104に格納された応用プログラムの仕様に応じたプログラムが実行される。
【0069】
ステップS23において、応用プログラムが終了した時、処理ユニット101の制御を第1RAM104からROM102へ移して第2処理プログラムを実行する。
【0070】
ステップS24において、使用回数nをカウントする。カウント数は処理ユニット101内のレジスタに格納され、使用される毎にカウントアップされる。
【0071】
ステップS25において、事前に決定され、応用プログラムに記録されているライフサイクル数Nと、カウントされた使用回数nを比較する。使用回数n値がライフサイクル数N以下であれば、ステップS27において処理ユニット101の制御をROM102から第1RAM104へ戻して、待機モード(HALT)状態とし、次の第2の外部装置110からの要求を待つ。使用回数nがライフサイクル数Nよりも大きければ、ステップS26において、リセット信号を用いてRAMブロック103(第1RAM104と第2RAM105を含む)の消去を行う。
【0072】
以上のようにして、製品廃棄の前にRAMブロック103内のデータを消去することで、リジェクト処理が行え、セキュリティを確保することができる。
【0073】
〈第2実施形態〉
次に、本発明システムの第2実施形態について説明する。第2実施形態では、本発明システムは無線タグに適用されている。また、本発明システムを無線タグに利用した場合の有効性について併せて説明する。
【0074】
無線タグは荷札等に使用されており、例えば、名前、住所、性別等の個人情報が記録されている。また、荷物の運搬経路の記録、例えば、運搬時刻、運搬経路、運搬手段が記録されている。これらの情報(機密データ)は、手持ちまたは据置き型リーダライタ装置(図1の第2の外部装置110に相当)と無線タグ間で送受信される。荷物に取り付けられた無線タグとリーダライタ装置は、近接させることが困難であるために、通信距離は長いことが好ましい。また、無線タグにおいては、セキュリティが重要で、無線タグのメモリ(図1の第2RAM105に相当)に記録された個人情報の管理、運搬経路の改竄等や、無線タグのメモリ(図1の第1RAM104に相当)に書き込まれている応用プログラムの保護が必要である。
【0075】
図5に、無線タグに好適な第2実施形態における本発明システム500の概略構成を示す。尚、図5において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明する。
【0076】
第2実施形態では、図1に示す第1実施形態における入出力ポート107に代えて、変調回路501、復調回路502、通信回路503、RFアンテナ504からなる、例えばASK振幅変調を利用した無線通信による入出力ポート507を備えている。ここで、本発明システム500が、第1実施形態と同様に、電池108を内蔵していることから、入出力ポート507には、電磁誘導による電力給電のための電源回路を設ける必要がない。
【0077】
図5に示すように、本発明システム500は、機能ブロックとして、本発明システム500を制御するCPU等の処理ユニット101と、処理ユニット101上で実行されるシステム制御用の固定プログラムを格納するROM102と、処理ユニット101上で実行される応用プログラム及びデータを格納するRAMブロック103を備えて構成される。従って、ROM102に格納された固定プログラムによって、処理ユニット101がシステム制御用に制御され、RAMブロック103に格納された応用プログラムによって、処理ユニット101が特定用途のために制御されるように構成されている。
【0078】
また、RAMブロック103は、応用プログラムを格納する第1RAM104と、応用プログラムの処理結果のデータを格納するための第2RAM105に分割されている。第1RAM104においては、書き込みを禁止する機能を持ち、内蔵された電池108から定常的に電流を供給することで、機能的に読み出し専用メモリとして動作させることが可能である。また、RAMブロック103に接続されたリセット信号により、記憶内容を消去することが可能である。
【0079】
入力専用ポート106は、製造時に汎用テスタ等を用いて応用プログラムを第1RAM104に書き込むためのインターフェイスで、受信機能のみを備えたUART等のシリアル通信ポートである。
【0080】
本発明システム500の電源電圧は、電池108から供給されている。電池108からの電力は、RAMブロック103を含む本発明システム500に定常的に供給されている。これにより製造時に書き込んだ応用プログラムが消去されることがない。また、電磁誘導による電力供給を受けないので、通信距離はデータ通信のための電波の届く範囲まで可能となる。これにより荷物に取り付けられた無線タグとリーダライタ装置(第2の外部装置110)の通信距離を確保することが可能となる。
【0081】
通信データを送信する際には、処理ユニット101により通信回路503にデータを設定する。送信データは変調回路501にて負荷変調されてアンテナ609から出力される。通信データをRFアンテナ504から受信する場合は、復調回路502の復調動作により、通信波形の振幅を検出して通信データを復調している。2値の割り当ては、図7に示すように、ASK振幅変調の変調度10%の場合において、振幅が100%であれば“1”を90%であれば“0”を割り当てる。復調されたデータは通信回路503で受信された後、第1RAM104に記憶された応用プログラムの制御を受けた処理ユニット101により、RAMブロック103の第2RAM105に転送され記憶される。以上の変復調方式はISO14443規格に準拠している。
【0082】
第2RAM105への書き込みは、不揮発性メモリの書き込みに比べて消費する電力が少ないため、電圧の安定化が得られて、よりシステムが安定化する。RAMブロック103がスタティック型のランダムアクセスメモリである場合は、書き込み、消去時に大きな消費電力を必要とすることなく、待機時においてはリーク電流しか発生しないために、待機時における消費電流を実質的に“0”とすることができる。このことにより、システムのライフサイクルを容易に把握し、リジェクト処理を行うことができる。
【0083】
図8に、無線タグのライフサイクル期間中の発生事象に基づく区分を示す。製造からリジェクト処理までの期間を、製造(T1)、出荷(T2)、運用(T3)、リジェクト処理(T4)の4つの段階に分けている。
【0084】
製造段階(T1)では、製造後のハードウェアテスト、及び、応用プログラムの書き込みが行われる。この処理は、図3に示すステップS11からステップS18までの処理により、応用プログラムの書き込みが行える。また、応用プログラムが書き込まれた後は、入力専用ポート106の動作を禁止することで、セキュリティの向上を図り、更には、第1RAM104の書き込みを禁止することで、応用プログラムの保護を確実にできる。
【0085】
出荷段階(T2)では、電池が封止されたおりに、本発明システム500には定常的に電力が供給されている。
【0086】
運用段階(T3)では、無線タグの使用回数は、運搬経路におけるリーダライタ装置からの書き込み回数から決定する。書き込み回数は、運搬経路においてリーダライタ装置の設置箇所で決定する。
【0087】
リジェクト処理段階(T4)では、運搬が完了した時点で、リジェクト処理を行う。リジェクト処理は、図3に示した処理手順で実行できる。運搬が完了した時点で、書き込み回数を越えた場合に、応用プログラム及び機密データの消去が行えるために、セキュリティの確保が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係るマイクロコンピュータシステムの基本的な構成を概略的に示すブロック図
【図2】本発明に係るマイクロコンピュータシステムの製造時における応用プログラムの書き込み処理手順を示すフローチャート
【図3】本発明に係るマイクロコンピュータシステムにおけるライフサイクル期間の終了時期を判定し、RAMブロックの記憶データを消去する処理手順を示すフローチャート
【図4】本発明に係るマイクロコンピュータシステムにおける消費電力モデルと消費電力の時間的推移を示す図
【図5】本発明に係るマイクロコンピュータシステムを無線タグに適用した場合の構成を概略的に示すブロック図
【図6】従来の無線タグの構成例を示すブロック図
【図7】無線タグで使用されるASK変調通信波形を示す波形図
【図8】本発明に係るマイクロコンピュータシステムを無線タグに適用した場合のライフサイクルを説明する図
【符号の説明】
【0089】
100 本発明に係るマイクロコンピュータシステム
101 処理ユニット
102 ROM
103 RAMブロック
104 第1RAM
105 第2RAM
106 入力専用ポート
107 入出力ポート
108 電池
109 第1の外部装置
110 第2の外部装置
111 データバス
112 制御レジスタ
500 無線タグ(本発明に係るマイクロコンピュータシステム)
501 変調回路
502 復調回路
503 通信回路
504 RFアンテナ
507 入出力ポート
601 CPU
602 不揮発性メモリ
603 変調回路
604 復調回路
605 電源回路
606 無線周波数(RF)回路
607 半導体装置
608 I/O部
609 RFアンテナ
610 無線タグ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム制御を行う処理ユニットと、
プログラム及びデータを格納するRAMブロックと、
システム制御用の固定プログラムを格納するROMと、
前記RAMブロックに格納する応用プログラムを取り込むための入力専用ポートと、
外部装置との間でデータと制御信号を送受信するための入出力ポートと、
少なくとも前記処理ユニットと前記RAMブロックと前記ROMに電源供給するための内蔵電池と、を備えてなり、
前記処理ユニットは、前記応用プログラムを取り込んだ後に、前記入力専用ポートの動作を禁止することを特徴とするマイクロコンピュータシステム。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記応用プログラムを取り込んだ後に、更に、前記RAMブロックの少なくとも前記応用プログラムを格納した記憶領域を書き込み禁止状態にすることを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項3】
前記RAMブロックが少なくとも第1RAMと第2RAMを備えて構成され、
前記処理ユニットは、第1の外部装置の要求に応じて、前記固定プログラムの一部をなす第1処理プログラムを実行して、前記応用プログラムを、前記入力専用ポートを経由して取り込み前記第1RAMに格納した後、前記入力専用ポートの動作と前記第1RAMへの書き込み動作を禁止し、
前記第1RAMは、前記書き込み動作が禁止された後、読み出し専用のプログラムメモリとして動作し、
前記処理ユニットは、第2の外部装置の要求に応じて、前記第1RAMに格納された前記応用プログラムを実行し、当該実行により生成されたデータを前記第2RAMに記憶することを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項4】
前記処理ユニットは、前記固定プログラムの一部をなす第2処理プログラムを実行して、前記応用プログラムの使用回数が、前記使用回数から決定されるシステム全体の累積消費電力量と前記内蔵電池の電力容量から導出されるライフサイクルに達する直前または直後に、前記第1RAMと前記第2RAMに記憶されたプログラム及びデータをハードウェア的手段により強制的にリセットすることを特徴とする請求項3に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項5】
前記処理ユニット、前記RAMブロック、前記ROM、前記入力専用ポート、及び、前記入出力ポートを、単一の半導体基板上に形成してなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項6】
前記RAMブロックはスタティック型のランダムアクセスメモリからなることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項7】
前記入出力ポートが、前記外部装置との間でデータと制御信号を無線で送受信可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のマイクロコンピュータシステム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のマイクロコンピュータシステムにおける前記処理ユニット、前記RAMブロック、前記ROM、前記入力専用ポート、及び、前記入出力ポートを、単一の半導体基板上に形成してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項7に記載のマイクロコンピュータシステムを備えてなることを特徴とする無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−18656(P2006−18656A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196819(P2004−196819)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】