説明

マイクロチップ検査システム、およびマイクロチップ検査システムに用いるプログラム

【課題】温度による影響を補正し、精度良く送液制御を行うことができるマイクロチップ検査システム、およびマイクロチップ検査システムに用いるプログラムを提供する。
【解決手段】駆動液を流路からマイクロチップに注入するマイクロポンプと、駆動液の液温を調節する液温調節手段と、流路の所定の2個所における駆動液の有無を検知して検知信号を出力する駆動液検知手段と、駆動液検知手段から得られた検知信号に基づいて流速を算出する流速算出手段と、流速算出手段の算出した流速に基づいて液温調節手段を制御する液温制御手段と、を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップ検査システム、およびマイクロチップ検査システムに用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0003】
各種の分析、検査ではこれらの分析用チップ(マイクロチップ)における分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。そのためにはシンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題であり、精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められている。本出願人はこのような用途に好適なマイクロポンプの動作原理と制御方法を例えば特許文献2に開示している。
【0004】
また、本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、マイクロポンプによって微細流路に液体を注入して試薬などを移動させ、反応部を構成する流路、次いで検出部を構成する流路へ流すことにより、反応結果を測定することができる反応検出装置を提案している(例えば、特許文献3参照)。このような反応検出装置では、複数のマイクロポンプを有するマイクロポンプユニットによって駆動液をマイクロチップに注入し、マイクロチップ内の所定の部位に液体を送り出すタイミング、液量、液量の変化率、送り方向などの送液制御を行っている。
【0005】
しかしながら、液体の温度が変わると液体の粘度が変わるため、温度によってマイクロポンプが駆動液を注入するタイミング、液量、液量の変化率などの送液制御に誤差を生じ、所定の送液を行えない場合があった。
【0006】
このような問題を解決するため、本出願人は、種々の温度に対応した値の補正テーブルを用意し、環境温度を測定するセンサを設けて、センサで測定した温度に基づいて補正テーブルを参照し、マイクロポンプを駆動する電圧を制御する方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2001−322099号公報
【特許文献3】特開2006−149379号公報
【特許文献4】特開2004−270537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4のように環境温度を測定しても測定した環境温度とマイクロポンプ内部の駆動液の液温は一致しないため、誤差が発生する。一方、マイクロポンプ内部は微小な領域であり、マイクロポンプ内の駆動液の液温を直接測定することは難しい。また、補正テーブルによって補正する方法では、多くの温度条件の補正テーブルを用意しなければ温度による液体の粘度の変化を十分補正することができない。さまざまな条件の補正テーブルを用意することは困難であり、また制御のための処理時間が多くかかるため、マイクロポンプの流量を所定の範囲に制御できないことがある。そのため、特許文献4に開示されている方法では、温度によってマイクロチップ内の所定の部位に液体を送り出すタイミング、液量、液量の変化率などの送液制御に誤差を生じ、所定の送液を行えない場合があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、液体の粘度変化による影響を補正し、精度良く送液制御を行うことができるマイクロチップ検査システム、およびマイクロチップ検査システムに用いるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0010】
1.
駆動液を流路からマイクロチップに注入するマイクロポンプと、
前記駆動液の液温を調節する液温調節手段と、
前記流路の所定の2個所における駆動液の有無を検知して検知信号を出力する駆動液検知手段と、
前記駆動液検知手段から得られた検知信号に基づいて流速を算出する流速算出手段と、
前記流速算出手段の算出した流速に基づいて前記液温調節手段を制御する液温制御手段と、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。
【0011】
2.
前記液温調節手段が配設された前記駆動液を貯蔵する駆動液タンクを有することを特徴とする1に記載のマイクロチップ検査システム。
【0012】
3.
前記駆動液検知手段は、
前記流路と直交する方向から前記流路に向かって光を照射する発光部と、
前記流路を透過した前記発光部の光を受光して光量に応じた信号を発生する受光部と、
前記受光部の信号を所定値と比較して検知信号を出力する検知部と、
を有することを特徴とする1または2に記載のマイクロチップ検査システム。
【0013】
4.
前記駆動液検知手段は、
前記流路内に配置された2つの電極と、
前記2つの電極の間を流れる電気信号を所定値と比較して検知信号を出力する検知部と、
を有することを特徴とする1または2に記載のマイクロチップ検査システム。
【0014】
5.
マイクロポンプにより駆動液をマイクロチップに注入するステップの前に、
前記マイクロチップに至る流路の所定の2個所に配置される駆動液検知手段により前記駆動液の有無を検知して検知信号を出力する駆動液検知ステップと、
前記駆動液検知ステップにおいて出力された検知信号に基づいて前記流路を流れる駆動液の流速を算出する流速算出ステップと、
前記流速算出ステップにおいて算出された流速に基づいて、前記駆動液の液温を調節する液温調節手段を制御する液温制御ステップと、
前記液温制御ステップにおいて前記液温調節手段を制御することにより得られた液温の調節された駆動液を前記マイクロチップに注入する駆動液注入ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするマイクロチップ検査システムに用いるプログラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体の粘度変化による影響を補正し、精度良く送液制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態におけるマイクロチップ検査システム80の外観図である。
【0018】
本発明のマイクロチップ検査システム80は反応検出装置82とマイクロチップ1から構成される。反応検出装置82はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。反応検出装置82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで反応検出装置82の内部にセットするようになっている。
【0019】
なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子である。
【0020】
検査担当者は図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。反応検出装置82の内部では、制御手段の指令により図1には図示せぬマイクロポンプユニット5がマイクロチップ1に駆動液等の液体を注入し、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われる。検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0021】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロポンプユニット5の一例について、図2を用いて説明する。
【0023】
図2(a)は本発明に係わるマイクロポンプユニット5の平面図であり、図2(b)は左側面図、図2(c)は右側面図である。また、図2(d)は図2(a)にA−Aで示す部分の断面図である。
【0024】
図2に示すようにマイクロポンプユニット5は、第1の基板11、第2の基板12から成る。なお、図2(a)において、第1の基板11に設けられた溝部を点線で図示している。
【0025】
図2(a)のA−Aで示す部分が一つのマイクロポンプMPを構成しており、後に説明するマイクロポンプ機構によって、例えば入出力口145から吸入した液体を入出力口146から吐出する。あるいは、逆方向に入出力口146から吸入した液体を入出力口145から吐出することもできる。図2(a)の例では、第1の基板11に8つのマイクロポンプMPが形成されている。これらのマイクロポンプMPは互いに同じ構造であるから、以下においては図2(d)を用いてその構造を説明する。
【0026】
第1の基板11は、例えば幅17mm、奥行き35mm、厚み0.2mmの大きさの長方形のシート状である。図2(d)に示すように、第1の基板11に形成された各マイクロポンプMPは、ポンプ室121、ダイヤフラム122、第1絞り流路123、第1流路124、第2絞り流路125、および第2流路126を有する。
【0027】
第1の基板11は、例えばシリコンウエハを公知のフォトリソグラフィー工程で所定の形状に加工して形成する。つまり、パターニングされたシリコン基板をICPドライエッチング装置を用いて所定の深さまでエッチングする。
【0028】
エッチング工程の後、ダイシングを行ってシリコンウエハから所定の外形形状に第1の基板11を切り出す。第1の基板11の厚みは例えば0.2mm程度である。
【0029】
図2(d)に示すように、ダイヤフラム122の外側の面には、圧電素子112が接着されている。圧電素子112の駆動のための2つの電極は、圧電素子112の両側の表面に引き出され、図示せぬフレキシブル配線と接続される。
【0030】
第2の基板12は、第1の基板11に形成された各マイクロポンプMPの流路等を第1の基板11に密着して覆う必要がある。そのため、第2の基板12の熱膨張率は第1の基板11にできるだけ近いことが望ましい。第1の基板11の材料がシリコンの場合、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス(Pyrex はCorning Glass Warks 社の登録商標)、テンパックスガラス(Tempax は Schott Glaswerk社の登録商標)などが用いられる。これらは熱膨張率がシリコン基板とほぼ同じである。第2の基板12の形状は、例えば、第1の基板11と同じ幅17mm、奥行き35mmであり、厚みは1mmである。
【0031】
次に、超音波加工などの方法を用いて、第2の基板12に入出力口145、入出力口146の孔開け加工を行う。孔開け加工の後、第2の基板12は第1の基板11と2つの辺が一致するように位置合わせを行って、例えば陽極接合により接合する。
【0032】
このようにしてマイクロポンプユニット5を作製することができる。マイクロポンプユニット5は、上に述べたマイクロポンプMPの作動によって、一方の入出力口145から液体を吸い込み、他方の入出力口146から液体を吐出する。また、圧電素子112に印加する駆動電圧を制御することによって、液体の吸入と吐出の方向を逆にすることができる。なお、第1の基板11それ自体の構造については、従来の技術の項で述べた特開2001−322099号を参照することができる。
【0033】
次にマイクロポンプユニット5の動作原理について説明する。
【0034】
第2絞り流路125は、その流入側と流出側との差圧が零に近いときは流路抵抗が低いが、差圧が大きくなると流路抵抗が大きくなる。つまり圧力依存性が大きい。第1絞り流路123は、差圧が零に近いときの流路抵抗は第2絞り流路125の場合よりも大きいが、圧力依存性がほとんどなく、差圧が大きくなっても流路抵抗は余り変化せず、差圧が大きい場合に流路抵抗が第2絞り流路125よりも小さくなる。
【0035】
このような流路抵抗特性は、流路を流れる液体(流体)が、差圧の大きさに応じて乱流となるようにするか、または差圧にかかわりなく常に層流となるようにするか、によって得ることが可能である。具体的には、例えば、第2絞り流路125を流路長の短いオリフィスとし、第1絞り流路123を第2絞り流路125と内径が同じで流路長の長いノズルとすることによって実現することが可能である。
【0036】
第1絞り流路123と第2絞り流路125のこのような流路抵抗特性を利用して、ポンプ室121に圧力を発生させるとともに、その圧力の変化の割合を制御することによって、流路抵抗の低い方に液体を吐出するようなポンプ作用を実現することができる。
【0037】
つまり、ポンプ室121の圧力を上昇させるとともに、その変化の割合を大きくしておけば、差圧が大きくなって第2絞り流路125の流路抵抗の方が第1絞り流路123の流路抵抗よりも大きくなり、ポンプ室121内の液体は第1絞り流路123から吐出する(吐出工程)。そして、ポンプ室121の圧力を下降させるとともに、その変化の割合を小さくすれば、差圧が小さく維持されて第1絞り流路123の流路抵抗の方が第2絞り流路125の流路抵抗よりも大きくなり、第2絞り流路125からポンプ室121内に液体が流入する(吸入工程)。
【0038】
これとは逆に、ポンプ室121の圧力を上昇させるとともに、その変化の割合を小さくすれば、差圧が小さく維持されて第1絞り流路123の流路抵抗の方が第2絞り流路125の流路抵抗よりも大きくなり、ポンプ室121内の液体は第2絞り流路125から吐出する(吐出工程)。そして、ポンプ室121の圧力を下降させるとともに、その変化の割合を大きくすれば、差圧が大きくなって第1絞り流路123の流路抵抗の方が第2絞り流路125の流路抵抗よりも小さくなり、第1絞り流路123からポンプ室121内に液体が流入する(吸入工程)。
【0039】
このようなポンプ室121の圧力制御は、圧電素子112に供給する駆動電圧を制御し、ダイヤフラム122の変形の量およびタイミングを制御することによって実現される。
【0040】
図3は圧電素子112に供給する駆動電圧Eと流量Qの関係を示す説明図である。圧電素子112に高い駆動電圧を印加するとポンプ室121の圧力が高まるものとする。
【0041】
図3(a−1)に示す波形ではT1<T3なので、ポンプ室121の圧力が上昇するときの変化の割合は、ポンプ室121の圧力が下降するときの変化の割合より大きい。したがって、前述の様にポンプ室121内の液体は第1絞り流路123から吐出する。
【0042】
図3(a−2)は流路123から吐出された液体の、流路124における流量Qの一例を示している。T1の期間、ポンプ室121の圧力が急に上昇するので流路124を流れる流量Qも急に上昇する。T2の休止期間の後、T3の期間はポンプ室121の圧力が緩やかに下降すると、おもに第2絞り流路125からポンプ室121内に液体が流入し、一部が第1絞り流路123からポンプ室121内に流入する。そのため、流量Qは緩やかに減少する。しかし、T3の期間に減少する流量QはT1の期間に流入した流量Qより少なく、T4の休止期間においては、初期状態よりも流量Qが増加している。このようにT1からT4のサイクルを繰り返すことにより流量Qは増加していく。
【0043】
一方、図3(b−1)に示す波形ではT7<T5なので、ポンプ室121の圧力が上昇するときの変化の割合は、ポンプ室121の圧力が下降するときの変化の割合より小さい。したがって、前述の様に第1絞り流路123からポンプ室121内に液体が流入する。
【0044】
図3(b−2)は流路123から吸入された液体の、流路124における流量Qの一例を示している。T5の期間、ポンプ室121の圧力が緩やかに上昇すると、おもに第2絞り流路125から液体が吐出し、一部が第1絞り流路123から吐出する。そのため、流量Qは緩やかに増加する。一方、T6の休止期間の後、T7の期間においてポンプ室121の圧力が急に下降すると、第1絞り流路123からポンプ室121内に液体が流入する。そのため、流量Qは急に減少する。しかし、T5の期間に増加する流量QはT7の期間に吐出した流量Qより少なく、T8の休止期間においては、初期状態よりも流量Qが減少している。このようにT5からT8のサイクルを繰り返すことにより流量Qは減少していく。
【0045】
図3において、圧電素子112に印加する最大電圧e1 は、数ボルトから数十ボルト程度、最大で100ボルト程度である。また、時間T1,T7は20μs程度、時間T2,T6は0〜数μs程度、時間T3,T5は60μs程度である。時間T4,T8は0であってもよい。駆動電圧Eの周波数は11kHz程度である。図3(a−1)および(b−1)に示す駆動電圧Eによって、流路23には、例えば図3(a−2)および図3(b−2)に示すような流量が得られる。なお、図3(a−2)および図3(b−2)における流量曲線は、ポンプ動作によって得られる流量を模式的に示したもので、実際には流体の慣性振動が重畳する。したがって、これら図に示された流量曲線に振動成分が重畳された曲線が実際に得られる流量を示すこととなる。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図4を用いて説明する。
【0047】
図4(a)、図4(b)はマイクロチップ1の外観図である。図4(a)において矢印は、後述する反応検出装置82にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図4(a)は挿入時にマイクロチップ1の上面となる面を図示している。図4(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0048】
図4(a)の検出部の窓111aと検出部の流路111bは検体と試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。213はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0049】
図4(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。次に、マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0050】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0051】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0052】
検出部111において、呈色反応の生成物や蛍光物質などの検出を光学的に行う場合は、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。本実施形態においては、検出部の窓111aと、少なくとも検出部の流路111bを形成する溝形成基板は、光透過性の材料が用いられていて、検出部111を光が透過するようになっている。
【0053】
本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。本実施形態では、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図4(c)を用いて説明する。なお、本発明の適用は図4(c)で説明するマイクロチップ1の例に限定されるものでは無く、様々な用途のマイクロチップ1に適用できる。
【0054】
図4(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0055】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部221、試薬類を収容する試薬収容部220などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部220には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図4(c)において、試薬収容部220、検体収容部221および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0056】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0057】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0058】
検体注入部213はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入部110はマイクロチップ1に駆動液を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部213から注射器などを用いて注入する。図4(c)に示すように、検体注入部213から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部221に収容される。
【0059】
次に、駆動液注入部110aから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って検体収容部221に収容されている検体を押し出し、増幅部222に検体を送り込む。
【0060】
一方、駆動液注入部110bから注入された駆動液は、連通する微細流路を通って試薬収容部220aに収容されている試薬aを押し出す。試薬収容部220aから押し出された試薬aは増幅部222に駆動液によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部222の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように反応検出装置82の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0061】
所定の反応時間の後、さらに駆動液により増幅部222から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部111に注入される。注入された溶液は検出部111の流路壁に担持されている反応物質と反応し流路壁に固定化する。
【0062】
次に、駆動液注入部110cから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220bに収容されている試薬bを押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0063】
同様に、駆動液注入部110dから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220cに収容されている試薬を押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0064】
最後に、駆動液注入部110eから駆動液を注入して、洗浄液収容部123から洗浄液を押しだし、検出部111に注入する。洗浄液によって検出部111内に残留している未反応の溶液41を洗浄する。
【0065】
洗浄後、検出部111の流路壁に吸着した反応物の濃度を光学的に測定することによって、増幅した遺伝子など被検出物を検出する。このように、駆動液注入部110から駆動液を順次注入することにより、マイクロチップ1の内部で所定の処理が行われる。
【0066】
図5は、第1の実施形態のマイクロチップ検査システム80における反応検出装置82の内部構成の一例を示す断面図である。反応検出装置82は温度調節ユニット152、光検出部150、中間流路部180、マイクロポンプユニット5、パッキン90a、90b、駆動液タンク91、液温調節ユニット195などから構成される。以下、これまでに説明した構成要素と同一の構成要素には同番号を付し、説明を省略する。
【0067】
図5は、マイクロチップ1の上面を温度調節ユニット152とマイクロポンプユニット5に密着させている状態である。マイクロチップ1は図示せぬ駆動部材により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。
【0068】
初期状態において、マイクロチップ1は図5の紙面左右方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0069】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の下面を所定の温度に調整するユニットである。
【0070】
図示せぬ制御部が、チップ検知部95がオンになった信号を受信すると、駆動部材によりマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1の下面を温度調節ユニット152とパッキン92を介して中間流路部180に押しつけて密着させる。
【0071】
マイクロチップ1の駆動液注入部110は、マイクロチップ1とパッキン92を密着させたときに、中間流路部180に設けられた対応する開口185とそれぞれ連通する位置に設けられている。中間流路部180は、中間流路182の溝を設けた透明な第1基板184と、第1基板184を覆う透明な第2基板183から構成され、中間流路182の両端には開口185と開口186が設けられている。開口186はパッキン90bを介してマイクロポンプユニット5の入出力口146と連通している。
【0072】
マイクロポンプユニット5の吸込側には、パッキン90aを介して駆動液タンク91が接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液をパッキン90aを介して吸い込むようになっている。一方、マイクロポンプユニット5の吐出側の端面に設けられた入出力口146は中間流路182を介してマイクロチップ1の駆動液注入部110と連通しているので、マイクロポンプユニット5から送り出された駆動液は、マイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された流路250に注入される。このようにして、マイクロポンプユニット5から駆動液注入部110に駆動液を注入する。
【0073】
液温調節ユニット195は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行って駆動液タンク91を所定の温度に調整するユニットである。なお、本実施形態では、液温調節ユニット195が駆動液タンク91に密着するように取り付けられているが、これに限定されるものではなく駆動液タンク91内に液温調節ユニット195を設けても良い。
【0074】
中間流路部180には中間流路182を流れる駆動液の流速を測定するため駆動液検知手段190が設けられている。駆動液検知手段190は、第1発光部193、第1受光部191と、第2発光部194、第2受光部192と図5には図示せぬ第1検知部310、第2検知部320から構成される(図6参照)。
【0075】
第1発光部193、第2発光部194はLED、ランプなどの発光素子である。第1受光部191、第2受光部192は、例えばフォトダイオードなどの受光素子であり、それぞれ対向する位置にある第1発光部193、第2発光部194が発光する光を透明な中間流路部180を介して受光する。駆動液が中間流路182を流れると、中間流路182を透過する光量が減少し、第1受光部191、第2受光部192の信号電流も減少する。
【0076】
第1検知部310、第2検知部320はオペアンプなどの増幅器、所定値と比較するコンパレータ、電源部などから構成される。第1検知部310、第2検知部320はそれぞれ第1受光部191、第2受光部192の信号電流を電圧に変換し、所定電圧と比較して駆動液の検知信号を出力する。
【0077】
第1発光部193、第1受光部191と第2発光部194と第2受光部192は図5のように中間流路182の離れた位置に配置されている。後に詳しく説明するように、図5には図示せぬ流速算出部410(図6参照)は、第1検知部310、第2検知部320が検知信号を発生した時刻の時間差から駆動液の流速を算出する。
【0078】
なお、本実施形態では中間流路部180の流速を測定するように駆動液検知手段190を設けているが、駆動液検知手段190を設ける場所は中間流路部180に限定されるものではない。また、中間流路部180は必ずしも必要ではなく、例えば、マイクロポンプユニット5の第1流路124の流速を測定するように駆動液検知手段190を設けて良い。
【0079】
また、本実施形態では中間流路182の駆動液を透過光によって検知しているが、透過光に限定されるものではなく、反射光によって駆動液を検知しても良い。
【0080】
さらに、図2に図示したマイクロポンプユニット5の例ではマイクロポンプMPが8つ設けられているが、全てのマイクロポンプMPを使用する必要はない。図3に図示したマイクロチップ1の場合は、5つのマイクロポンプMPが連通するよう駆動液注入部110を配置すれば良い。
【0081】
マイクロチップ1の検出部111では、検体とマイクロチップ1内に貯蔵された試薬が反応して、例えば呈色、発光、蛍光、混濁などをおこす。本実施形態では図4で説明したように、検出部111でおこる試薬の反応結果を光学的に検出する。光検出部150は第3発光部150aと第3受光部150bから成り、マイクロチップ1の検出部111を透過する光を検出できるように配置されている。
【0082】
図6は、本発明の第1の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【0083】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory),ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って反応検出装置80の各部を集中制御する。
【0084】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0085】
チップ検知部95はマイクロチップ1が規制部材に当接すると検知信号をCPU98に送信する。CPU98は検知信号を受信すると、機構駆動部32に指令し所定の手順でマイクロチップ1を下降または上昇させる。
【0086】
ポンプ駆動部500は各マイクロポンプMPの圧電素子112を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部412の指令を受けて、図3に示すような波形の駆動電圧Eを発生して圧電素子112を駆動する。
【0087】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0088】
本実施形態の駆動液検知手段190は第1発光部193、第1受光部191、第2発光部194、第2受光部192、第1検知部310、第2検知部320から成る。第1発光部193、第2発光部194はCPU98の指令により発光する。第1検知部310、第2検知部320は、駆動液の通過による光量の変化を検知して検知信号を発生し、CPU98に入力する。流速算出部410は第1受光部191と第2受光部192から入力された検知信号の時間差tから流速Vを算出する。流速算出部410は本発明の流速算出手段である。
【0089】
第1受光部191と第2受光部192の間の距離xとすると流速Vは次の式(1)で求められる。なお、中間流路182の断面積Sは一定である。
【0090】
V=x/t・・・・・・・(1)
中間流路182の断面積Sは一定なので、流量Qは次の式(2)で求められる。
【0091】
Q=V×S・・・・・・・(1)
液温制御部411は、流量Qを求めた後、液温−流量テーブル301を参照して目標の液温を求め、液温調節ユニット195に指令する。液温制御部411は本発明の液温制御手段、液温調節ユニット195は本発明の液温調節手段である。
【0092】
図7は液温と流量の関係の一例を示すグラフである。
【0093】
液温をパラメータとして、同じ駆動条件でマイクロポンプMPを駆動し、中間流路182の流量を測定した結果である。図7の横軸は液温(℃)、縦軸は流量Q(nl/s)である。このように液温が上がると駆動液の粘度が減り、流量Qは増加する。液温−流量テーブル301は、図7のグラフに示す液温と流量の関係を表にしたものである。
【0094】
図8は本発明の実施形態において、マイクロチップ検査システム80による検査の手順を説明するフローチャートである。
【0095】
なお、温度調節ユニット152は反応検出装置80の電源投入時に通電され、所定の温度になっているものとする。
【0096】
S101:マイクロチップ1を挿入するステップである。
【0097】
検査担当者は、挿入口83からマイクロチップ1を図示せぬ規制部材に当接するまで挿入する。
【0098】
S102:機構を下降させるステップである。
【0099】
挿入口83から挿入されたマイクロチップ1が図示せぬ規制部材に当接し、CPU98がチップ検知部95から検知信号を検知すると、CPU98は機構駆動部32を制御し、パッキン92と温度調節ユニット152に適当な圧力で密着するまで下降させる。
【0100】
S103:流速を算出するステップである。
【0101】
CPU98は後に詳しく述べる流速測定ルーチンをコールし、中間流路182を流れる駆動液の検知情報から流速を算出する。
【0102】
S104:ステップS103で測定した流速が所定の範囲か、否か判定するステップである。
【0103】
所定の流速はマイクロポンプMPの仕様によって異なるが、例えば所定の流速の±10%の範囲であれば良い。
【0104】
流速が所定の範囲外の場合、(ステップS104;No)、ステップS105に進む。
【0105】
流速が所定の範囲内の場合、(ステップS104;Yes)、ステップS107に進む。
【0106】
S105:液温調整を行うステップである。
【0107】
液温制御部411は、ステップS103で測定した流速から流量Qを求め、液温−流量テーブル301を参照して目標の液温を液温調節ユニット195に指令する。
【0108】
S106:待機するステップである。
【0109】
液温制御部411は、液温が目標の液温になるまでの時間を予測し、その間待機する。あるいは、液温調節ユニット195が目標の液温になったことを知らせる信号を発信する機能を持つ場合は、当該信号を受信するまで待機するようにしても良い。
【0110】
本ステップ終了後、ステップS103に戻り再度流速を測定する。
【0111】
S107:駆動液をマイクロチップ1に注入するステップである。
【0112】
ポンプ駆動制御部412は所定のシーケンスに従って、ポンプ駆動部500に指令してマイクロポンプMPを駆動し、マイクロチップ1の駆動液注入部110に駆動液を順次注入する。注入された駆動液は、マイクロチップ1の流路内の検体や試薬を所定のシーケンスで検出部111まで送り込み、反応させる。
【0113】
S108:検出部111の反応結果を検出するステップである。
【0114】
所定の反応時間経過後、CPU98は、発光部150aを発光させてマイクロチップ1の検出部111を照明し、検出部111を透過した透過光を受光した受光部150bからの入力信号をCPU98に内蔵するA/D変換器でデジタル値に変換し、測光値を得る。
【0115】
S109:反応結果を表示するステップである。
【0116】
CPU98は、光検出部150が測光した結果から演算し、反応結果を表示部84に表示する。
【0117】
以上で検査の手順は終了である。
【0118】
次に、図9と図10を用いて流速測定ルーチンの手順を説明する。図9は流速測定ルーチンのフローチャート、図10は流速測定時における駆動液4の動きを説明する説明図である。図10は中間流路部180の駆動液検知手段190が設けられた部分を拡大した断面であり、中間流路182内の駆動液4の先端の位置を示している。初期状態では駆動液4の先端の位置は図10(a)に示す位置になっているものとする。
【0119】
以下、図9のフローチャートに沿って図10を説明する。
【0120】
S204:逆方向に送液するステップである。
【0121】
ポンプ駆動制御部412は、ポンプ駆動部500に指令してマイクロポンプMPを駆動し逆方向に送液する。なお、逆方向はマイクロチップ1に駆動液4を注入する方向と逆方向であり、図10(b)に矢印Bで示す。
【0122】
S205:第1検知部310が駆動液を検知したか、否か、判定するステップである。
【0123】
流速算出部410は、第1受光部が受光している
光量から第1検知部310が駆動液を検知したか、否か、を判定する。
【0124】
駆動液4を検知した場合、(ステップS205;Yes)、ステップS205に戻る。
【0125】
駆動液4を検知していない場合、(ステップS205;No)、ステップS206に進む。図10(b)は、ステップS204で駆動液4が逆方向に送液され、第1検知部310が駆動液4を検知しないところまで送液された状態を図示している。
【0126】
S206:ポンプ駆動を停止するステップである。
【0127】
ポンプ駆動制御部412は、ポンプ駆動部500に指令してマイクロポンプMPの駆動を停止する。
【0128】
S207:正方向に送液するステップである。
【0129】
ポンプ駆動制御部412は、ポンプ駆動部500に指令してマイクロポンプMPを駆動し正方向に送液する。なお、正方向はマイクロチップ1に駆動液を注入する方向であり、図10(c)に矢印Fで示す。
【0130】
S208:第1検知部310が駆動液を検知したか、否か、判定するステップである。
【0131】
流速算出部410は、第1検知部310が駆動液を検知したか、否か、を判定する。
【0132】
駆動液4を検知していない場合、(ステップS208;No)、ステップS208に戻る。
【0133】
駆動液4を検知した場合、(ステップS208;Yes)、ステップS209に進む。
【0134】
S209:時間を計測するカウンタをスタートするステップである。
【0135】
流速算出部410は、時間を計測する内部カウンタを初期化し、カウントを開始する。
【0136】
ステップS208で駆動液4の先端が第1受光部191の位置を通過したので、内部カウンタにより時間の計測を開始する。
【0137】
S210:第2検知部320が駆動液を検知したか、否か、判定するステップである。
【0138】
流速算出部410は、第2検知部320が駆動液4を検知したか、否か、を判定する。
【0139】
駆動液4を検知していない場合、(ステップS210;No)、ステップS210に戻る。
【0140】
駆動液4を検知した場合、(ステップS210;Yes)、ステップS211に進む。
【0141】
本ステップでは、図10(c)のように駆動液4の先端が第2受光部192の位置を通過する。
【0142】
S211:時間を計測するカウンタを停止するステップである。
【0143】
流速算出部410は、時間を計測する内部カウンタを停止する。
【0144】
ステップS210で駆動液4の先端が第2受光部192の位置を通過したので、内部カウンタを停止する。
【0145】
S212:ポンプ駆動を停止するステップである。
【0146】
ポンプ駆動制御部412は、ポンプ駆動部500に指令してマイクロポンプMPの駆動を停止する。
【0147】
S213:流速を算出するステップである。
【0148】
流速算出部410は、時間を計測する内部カウンタの値から流速を算出する。
【0149】
以上でサブルーチンは終了し、メインルーチンに戻る。
【0150】
このように、マイクロポンプMPが駆動液をマイクロチップ1に注入する工程S107の前に、工程S103においてマイクロチップ1に駆動液を注入する流路である中間流路182を駆動液が通過した情報を駆動液検知手段190が検知する。この情報に基づいて流速算出部410は流速を算出し、工程S105において駆動液の温度を制御するので、マイクロチップ1に注入する駆動液の流速は、液温やマイクロポンプMPの特性のバラツキにかかわらず所定の範囲内である。このことにより、マイクロチップ内の所定の部位に液体を送り出すタイミング、液量、液量の変化率などの送液制御に誤差を生じることなく、所定の送液を行うことができる。
【0151】
次に、第2の実施形態のマイクロチップ検査システム80における駆動液検知手段190について図11、図12を用いて説明する。図11は、第2の実施形態のマイクロチップ検査システム80における駆動液検知手段190の一例を示す断面図である。図12は、第2の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。以下、今までに説明した同じ機能要素には同番号を付し、説明を省略する。
【0152】
本実施形態の駆動液検知手段190は、中間流路182の内壁に設けられた2組の電極と、電極間に電圧を印加し、電極間に駆動液4が接触したときに流れる電流の変化から駆動液を検知する第1検知部310、第2検知部320から構成される。第1検知部310は電極311と電極312間に電圧を印加する電源と、電極311と電極312間の電流を検知する回路を内蔵し、電流が所定値以上流れると検知信号を出力する。また、同様に第2検知部320は電極321と電極322間に電圧を印加する電源と、電極321と電極322間の電流を検知する回路を内蔵し、駆動液の通過によって電流が所定値以上流れると検知信号を出力する。
【0153】
第1検知部310、第2検知部320が出力する検知信号は、図12に示すようにCPU98に入力される。
【0154】
反応検出装置80による検査の手順は図8、図9、図10で説明した手順と同様に第1検知部310、第2検知部320の検知信号に基づいて各工程を行う。
【0155】
本実施形態では中間流路182の内壁に電極を設けることができるので、配置の自由度が大きく、不透明な流路にも適用することができる。
【0156】
以上このように、本発明によれば、液体の粘度変化による影響を補正し、精度良く送液制御を行うことができるマイクロチップ検査システム、およびマイクロチップ検査システムに用いるプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の実施形態におけるマイクロチップ検査システム80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるマイクロポンプユニット5の一例についての説明図である。
【図3】圧電素子112に供給する駆動電圧Eと流量Qの関係を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例についての説明図である。
【図5】第1の実施形態のマイクロチップ検査システム80における反応検出装置82の内部構成の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【図7】液温と流量の関係の一例を示すグラフである。
【図8】マイクロチップ検査システム80の検査の手順を説明するフローチャートである。
【図9】流速測定の手順を説明する流速測定ルーチンのフローチャートである。
【図10】流速測定時における駆動液4の動きを説明する説明図である。
【図11】第2の実施形態のマイクロチップ検査システム80における駆動液検知手段190の一例を示す断面図である。
【図12】第2の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0158】
1 マイクロチップ
4 駆動液
5 マイクロポンプユニット
80 マイクロチップ検査システム
82 反応検出装置
83 挿入口
84 表示部
90 パッキン
91 駆動液タンク
110 駆動液注入部
111 検出部
150 光検出部
190 駆動液検知手段
191 第1受光部
192 第2受光部
193 第1発光部
194 第2発光部
195 液温調節ユニット
213 検体注入部
310 第1検知部
320 第2検知部
410 流速算出部
411 液温制御部
412 ポンプ駆動制御部
MP マイクロポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動液を流路からマイクロチップに注入するマイクロポンプと、
前記駆動液の液温を調節する液温調節手段と、
前記流路の所定の2個所における駆動液の有無を検知して検知信号を出力する駆動液検知手段と、
前記駆動液検知手段から得られた検知信号に基づいて流速を算出する流速算出手段と、
前記流速算出手段の算出した流速に基づいて前記液温調節手段を制御する液温制御手段と、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。
【請求項2】
前記液温調節手段が配設された前記駆動液を貯蔵する駆動液タンクを有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ検査システム。
【請求項3】
前記駆動液検知手段は、
前記流路と直交する方向から前記流路に向かって光を照射する発光部と、
前記流路を透過した前記発光部の光を受光して光量に応じた信号を発生する受光部と、
前記受光部の信号を所定値と比較して検知信号を出力する検知部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ検査システム。
【請求項4】
前記駆動液検知手段は、
前記流路内に配置された2つの電極と、
前記2つの電極の間を流れる電気信号を所定値と比較して検知信号を出力する検知部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ検査システム。
【請求項5】
マイクロポンプにより駆動液をマイクロチップに注入するステップの前に、
前記マイクロチップに至る流路の所定の2個所に配置される駆動液検知手段により前記駆動液の有無を検知して検知信号を出力する駆動液検知ステップと、
前記駆動液検知ステップにおいて出力された検知信号に基づいて前記流路を流れる駆動液の流速を算出する流速算出ステップと、
前記流速算出ステップにおいて算出された流速に基づいて、前記駆動液の液温を調節する液温調節手段を制御する液温制御ステップと、
前記液温制御ステップにおいて前記液温調節手段を制御することにより得られた液温の調節された駆動液を前記マイクロチップに注入する駆動液注入ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするマイクロチップ検査システムに用いるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−128706(P2008−128706A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311247(P2006−311247)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】