説明

マイクロチューブ用一括ピッキング工具

【課題】マイクロチューブがマトリクス状に配列収納されているチューブラックから、全てのマイクロチューブを一括して他のチューブラックに移し替えることが可能なマイクロチューブ用一括ピッキング工具を提供すること。
【解決手段】弾性のある円筒状突起112をチューブラック内に配列収納されたマイクロチューブMTの全ての隙間に挿入できるように複数本配置し、円筒状突起の外径は、4つのマイクロチューブによって形成された隙間に外接する円の直径よりも大きく、円筒状突起の突起同士の隙間に、円筒状突起に把持されたマイクロチューブの頭部に当接し、押し込むことにより、円筒状突起に把持されたマイクロチューブを押し戻して把持状態を解除する複数の押し出しピン122を有していることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品、試料などが注入されるマイクロチューブをチューブラックから一度に全部抜き取るのに好適なピッキング工具に係わり、特に、研究施設や製薬工場などの創薬用保管装置で使用されるマイクロチューブ用ピッキング工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学物質の試験研究、創薬関連の研究などの分野において、薬品、試料などが注入される多数のマイクロチューブを並び立てた状態で高集積率で収納保管したり搬送したりするためにチューブラックが用いられる。そして、このチューブラックを所定の温度、湿度に保たれた自動回転棚に格納し、移載装置を用いて所望のチューブラックを自動回転棚から入出庫口へ移載し、入出庫口において作業者が所望のマイクロチューブを取り出したり、あるいは、チューブラックの所定の位置にマイクロチューブを収納したりする創薬用保管装置が提供されている。
【0003】
このような創薬用保管装置で使用されるマイクロチューブのチューブラックは、隣り合うマイクロチューブ同士を僅かな隙間でマトリクス配列と称する行と列からなる収納形態によって、できる限り多数のマイクロチューブを高集積率で収容させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−90205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなチューブラックに収容されたマイクロチューブを一括して、より大きなラックに移し替える必要がある場合、現状では、手作業で一本ずつ抜き取り、移し替えている。そのため、移し替えの作業に相当程度の手間を必要とするという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、マイクロチューブがマトリクス状に配列収納されているチューブラックから、全てのマイクロチューブを一括して他のチューブラックに移し替えることが可能なマイクロチューブ用一括ピッキング工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本請求項1に係る発明は、チューブラック内にマトリクス状に配列収納された複数のマイクロチューブの全部を一度に摘まみ上げることが可能なマイクロチューブ用一括ピッキング工具であって、弾性のある円筒状突起を前記チューブラック内に配列収納されたマイクロチューブの全ての隙間に挿入できるように複数本配置し、前記円筒状突起の外径は、4つのマイクロチューブによって形成された隙間に外接する円の直径よりも大きく、前記円筒状突起の突起同士の隙間に、前記円筒状突起に把持された前記マイクロチューブの頭部に当接し、押し込むことにより、前記円筒状突起に把持されたマイクロチューブを押し戻して把持状態を解除する複数の押し出しピンを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、チューブラック内にマトリクス状に配列収納された複数のマイクロチューブの全部を一度に摘まみ上げることが可能なマイクロチューブ用一括ピッキング工具であって、弾性のある円筒状突起を前記チューブラック内に配列収納されたマイクロチューブの全ての隙間に挿入できるように複数本配置し、前記円筒状突起の外径は、4つのマイクロチューブによって形成された隙間に外接する円の直径よりも大きく、前記円筒状突起の突起同士の隙間に、前記円筒状突起に把持された前記マイクロチューブの頭部に当接し押し込むことにより、前記円筒状突起に把持されたマイクロチューブを押し戻して把持状態を解除する複数の押し出しピンを有しているため、円筒状突起をマイクロチューブによって形成された隙間に、マイクロチューブ頭部の外周面に沿わせながら真上から押し込むことによって、円筒状突起が弾性変形し、1ラック分のマイクロチューブを一度に全部把持できる。
【0008】
また、押し出しピンを押し込むことによって、円筒状突起の弾性力によって把持されていたマイクロチューブが押し戻され、各マイクロチューブの把持状態を一括して解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態である一実施例を図1乃至図4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例によるマイクロチューブ用一括ピッキング工具100によって、チューブラックに8行12列のマトリクス状に収容された96本のマイクロチューブを把持したときの外観を示した斜視図である。図2は、図1に示したマイクロチューブ用一括ピッキング工具100を真横から見たときの側面図であり、図3は、図1に示したマイクロチューブ用一括ピッキング工具100を真下から見たときの平面図である。図4は、マイクロチューブの把持状態を解除したときの側面図である。
【0011】
マイクロチューブ用一括ピッキング工具100は、弾性のある円筒状突起112をチューブラック内にマトリクス状に配列収納されたマイクロチューブMTの全ての隙間に挿入できるように、すなわち、9行13列のマトリクス状に117本配置したピッキングプレート110を有している。この円筒状突起112の外径は、図3に示したように4つのマイクロチューブMT1〜MT4によって形成された隙間に外接する円の直径Dよりも大きくなっており、マイクロチューブMTの隙間に真上から押し込むことによって、円筒状突起112が弾性変形し、1ラック分のマイクロチューブを一度に全部把持することを可能にしている。
【0012】
ピッキングプレート110には、円筒状突起112の突起同士の隙間に、円筒状突起112に把持された前記マイクロチューブMTの頭部に当接し、押し込むことにより、前記円筒状突起112に把持されたマイクロチューブMTを押し戻して把持状態を解除する複数の押し出しピン122が挿通する穴が、チューブラックにおけるマイクロチューブの配列ピッチと同ピッチで穿孔されている。そして、押し出しピン122は、ピッキングプレート110に穿孔された穴を挿通すると共に、一端が押し出しプレート120に固設されている。その結果、図1及び図2に図示したように、円筒状突起112をマイクロチューブMTの隙間に真上から押し込んだ場合には、各押し出しピン122の一端が各マイクロチューブMTの頭部に当接し、押し出しプレート120がピッキングプレート110から持ち上げられた状態となっている。
【0013】
この押し出しプレート120は、ピッキングプレート110とほぼ同じ大きさをしており、ピッキングプレート110に固設されたコの字形状をしたハンドル130に刻設したガイド溝132に係合する凸部を有しており、このガイド溝132に案内されて上下方向に移動可能になっている。一方、図1及び図2に示した状態、すなわち、円筒状突起112により、全てのマイクロチューブMTを把持した状態を解除するには、ハンドル130を片手で支持し、他方の手で押し出しプレート120を押し込むことにより、各押し出しピン122がマイクロチューブMTの頭部を押し下げ、図4に示したように、マイクロチューブMTの把持状態が解除される。
【0014】
なお、円筒状突起112の材質は、マイクロチューブを確実に把持できるだけの十分な弾性を有するものであれば、限定されるものではないが、ウレタン等の樹脂や、ゴム等が適している。透明な材質を用いることにより、マイクロチューブの把持状態を確認し易いため、特に好ましい。また、円筒状突起112の長さは、マイクロチューブMTの姿勢を保持できる長さが必要であり、マイクロチューブの外径以上とすることが好ましい。さらに、円筒状突起112の先端は、マイクロチューブの隙間に挿入しやすくするため、図2に示したように面取りをすることが好ましい。
【実施例2】
【0015】
本発明の別の実施の形態である実施例を図5乃至図7に基づいて説明する。
【0016】
図5は、本実施例によるマイクロチューブ用一括ピッキング工具200によって、チューブラックに8行12列のマトリクス状に収容された96本のマイクロチューブを把持したときの外観を示した斜視図である。図6は、図5に示したマイクロチューブ用一括ピッキング工具200を真横から見たときの側面図であり、図7は、図5に示したマイクロチューブ用一括ピッキング工具200を真下から見たときの平面図である。なお、本実施例において、上記実施例1と共通する部材は、符号を200番台として、下2桁を同じにし詳述は割愛している。
【0017】
本実施例においては、実施例1において最も外側に位置していた円筒状突起112をなくし、その代わりに若干の傾斜を持たせた外枠215を設置している。したがって、円筒状突起212の数は、7行11列の77本となっている。最外側を外枠215とすることによって、マイクロチューブMTをより安定して把持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロチューブ用ピッキング工具の外観図である。
【図2】図1に示したマイクロチューブ用ピッキング工具の側面図である。
【図3】図1に示したマイクロチューブ用ピッキング工具を真下から見た時の平面図である。
【図4】図2に示したマイクロチューブ用ピッキング工具において把持状態を解除したときの側面図である。
【図5】本発明の別の実施例であるマイクロチューブ用ピッキング工具の外観図である。
【図6】図5に示したマイクロチューブ用ピッキング工具の側面図である。
【図7】図5に示したマイクロチューブ用ピッキング工具を真下から見た時の平面図である。
【符号の説明】
【0019】
100、200 ・・・ マイクロチューブ用ピッキング工具
110、210 ・・・ ピッキングプレート
112、212 ・・・ 円筒状突起
120、220 ・・・ 押し出しプレート
122、222 ・・・ 押し出しピン
215 ・・・ 外枠
MT ・・・ マイクロチューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブラック内にマトリクス状に配列収納された複数のマイクロチューブの全部を一度に摘まみ上げることが可能なマイクロチューブ用一括ピッキング工具において、
弾性のある円筒状突起を前記チューブラック内に配列収納されたマイクロチューブの全ての隙間に挿入できるように複数本配置し、
前記円筒状突起の外径は、4つのマイクロチューブによって形成された隙間に外接する円の直径よりも大きく、
前記円筒状突起の突起同士の隙間に、前記円筒状突起に把持された前記マイクロチューブの頭部に当接し、押し込むことにより、前記マイクロチューブを押し戻して把持状態を解除する複数の押し出しピンを有していること
を特徴とするマイクロチューブ用一括ピッキング工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−26851(P2006−26851A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211930(P2004−211930)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】