説明

マイクロヒータの取付構造

【課題】取り付け作業の時間や労力を大幅に省略でき、作業コストを低減できるとともに、加熱対象に対する緩みを防止して良好な加熱効率を維持でき、さらにマイクロヒータの交換も容易な取付構造を提供せんとする。
【解決手段】加熱対象4の外壁面40に対してマイクロヒータ2を固定してなる構造であって、マイクロヒータ2をつづら折れ状に延びる波状パターンに屈曲構成し、このマイクロヒータ2を前記外壁面40に巻き付けた上、さらにマイクロヒータ2の外側部2bに周設される締め付け部材3、3により前記外壁面40上に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象の外壁面に対してマイクロヒータを固定してなるマイクロヒータの取付構造に係わり、より詳しくは、取付け作業を効率良く行うことができ、緩みも生じにくく加熱効率を向上でき、マイクロヒータの交換も容易となる取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のマイクロヒータの取付構造としては、真っ直ぐに構成されたマイクロヒータを加熱対象の外壁面に対して溶接や銀ロー付けしながら螺旋状に巻き付けていくことが行われている(例えば、特許文献1参照。)。マイクロヒータは、ステンレス製の細い金属シース内に抵抗発熱線を挿通して隙間にマグネシア粉末(MgO)等の無機絶縁材を充填して構成され、金属シースは屈曲自在であることから、上記のとおりこれを加熱対象に巻き付ける等して取り付け、抵抗発熱線が発する熱を金属シースを介して加熱対象に伝えるものである。
【0003】
しかし、このような溶接しながらの巻き付け作業は非常に煩雑であり、長い金属シースを螺旋状に確りと巻き付け、溶接するためには、最低2人の共同作業を必要とし、時間や労力を多く要するとともに作業コストが高くなる問題があった。また、このような溶接しながらの巻き付け作業は非常に難しく、途中に緩みが生じれば伝熱効率、すなわち加熱効率が著しく低下してしまう。更に、このような溶接しながら螺旋状に巻き付けられたマイクロヒータは、交換の際の取り外しも非常に困難であり、長時間を要する大変な作業となっていた。とくに、上記特許文献1では加熱効率を向上させるべく螺旋状に巻かれたヒータ上に銅などの熱伝導率の高い金属材料を溶射法により堆積して金属膜を形成することが提案されているが、コストが掛かるとともにマイクロヒータの交換などは非常に困難となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−15903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、取り付け作業の時間や労力を大幅に省略でき、作業コストを低減できるとともに、加熱対象に対する緩みを防止して良好な加熱効率を維持でき、さらにマイクロヒータの交換も容易な取付構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題解決のために、加熱対象の外壁面に対してマイクロヒータを固定してなるマイクロヒータの取付構造において、前記マイクロヒータをつづら折れ状に延びる波状パターンに屈曲構成し、該マイクロヒータを前記外壁面に巻き付け、該マイクロヒータの外側部に周設される締め付け部材により前記加熱対象の外壁面上に固定してなることを特徴とするマイクロヒータの取付構造を提供する。
【0007】
ここで、前記マイクロヒータは、前記加熱対象の外壁面に対応した形状及び寸法を有する前記波状パターンに成形加工することが好ましい。
【0008】
また、前記締め付け部材は、前記マイクロヒータの外側部に対して点溶接により部分的に固定される。
【0009】
具体的には、外側部に前記締め付け部材が予め固定された前記マイクロヒータを、前記加熱対象の外壁面に巻き付けて構成する。
【0010】
また、前記締め付け部材としては、ワンタッチで着脱可能な締結バンドが好適である。
【0011】
また、前記締め付け部材は、前記マイクロヒータの外周部を弾性的に締め付けるためのバネ部を備えたものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本願発明に係るマイクロヒータの取付構造によれば、マイクロヒータをつづら折れ状に延びる波状パターンに屈曲構成し、該マイクロヒータを前記外壁面に巻き付け、該マイクロヒータの外側部に周設される締め付け部材により前記加熱対象の外壁面上に固定したので、溶接しながら螺旋状に巻き付ける従来の煩雑な作業の代わりに、波状パターンとした比較的短尺なマイクロヒータを外壁面に単に巻き付け、締め付け部材で固定するだけの容易かつ短時間の作業で取り付けを行うことができ、取り付け作業の時間や労力を大幅に省略でき、作業コストを低減できる。
【0013】
また、締め付け部材により波状パターンのマイクロヒータを確実に固定するので、従来の螺旋状に巻き付けながら溶接固定していた構造に比べて緩みが生じる虞がなく、常に加熱対象の外壁面に密着した状態で良好な加熱効率を維持することができる。さらに、マイクロヒータの故障等により交換が必要な場合も、螺旋状に溶接しながら巻き付けていた従来の取付構造に比べ、締め付け部材を解除してマイクロヒータを簡単に取り外すことができ、交換作業も容易となる。
【0014】
また、マイクロヒータを加熱対象の外壁面(筐体外形)に対応した形状及び寸法を有する前記波状パターンに屈曲構成したので、従来のように螺旋状に巻き付ける際に外壁面の形状(他部品等の存在による突起形状など)に応じて巻き付け方を工夫(突起を回避して巻き付ける等)するといった煩雑な作業が不要であり、単に所定部位に巻き付けるだけで着脱作業をスムーズに行うことができる。
【0015】
また、締め付け部材をマイクロヒータの外側部に対して点溶接により部分的に固定したので、使用中の締め付け部材のずれが防止でき、マイクロヒータに対する締め付け力を適切な位置で維持でき、良好な加熱効率を維持できる。
【0016】
また、外側部に締め付け部材が予め固定されたマイクロヒータを加熱対象の外壁面に巻き付けたので、このようにマイクロヒータと締め付け部材を一体化しておくことで作業性を著しく向上できる。
【0017】
また、締め付け部材がワンタッチで着脱可能な締結バンドであるので、マイクロヒータの脱着作業が飛躍的に向上する。
【0018】
また、締め付け部材がマイクロヒータの外周部を弾性的に締め付けるためのバネ部を備えているので、マイクロヒータを弾性的に締め付け、マイクロヒータや締め付け部材が熱膨張しても当該バネ部の弾性力により緩まず、マイクロヒータを加熱対象の外壁面に密着した状態を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るマイクロヒータ2を加熱対象4に取り付けた取付構造1を示す斜視図であり、図2は、取り付け前の波状パターンに屈曲構成されたマイクロヒータ2を示す平面図である。図中符合3は締め付け部材、4は加熱対象(図中の管体の仮想線で囲まれた領域)をそれぞれ示している。
【0021】
本発明の取付構造1は、図1に示すように、加熱対象4の外壁面40に対してマイクロヒータ2を固定してなる構造であって、マイクロヒータ2をつづら折れ状に延びる波状パターンに屈曲構成し、このマイクロヒータ2を前記外壁面40に巻き付けた上、さらにマイクロヒータ2の外側部2bに周設される締め付け部材3、3により前記外壁面40上に固定したことを特徴としている。
【0022】
マイクロヒータ2は、ステンレス製の金属シース20内に、先端で互いに接続されたニッケル−クロム合金やタンタル等よりなる一対の抵抗発熱線を挿通し、さらにその隙間にマグネシア粉末(MgO)等の無機絶縁材を充填し、金属シース20と抵抗発熱線とが絶縁されるように構成した二芯型のマイクロヒータであり、金属シース20の基端側20aから導出される各抵抗発熱線は、アダプタ21内でリード線22、22に接続され、これらリード線に通電することで抵抗発熱線が発熱し、該マイクロヒータ2を取り付けた加熱対象4を加熱する。なお、このマイクロヒータ2を構成する部材の素材や基本構造などは従来からと同様のものを広く採用でき、たとえばリード線の代わりに端子箱を設けたものやアダプタ端末にリード線接続用のおねじ端子を設けたものなど種々の構造が可能である。
【0023】
また、本例では二芯型のマイクロヒータとしたが、単芯型、すなわち単一の抵抗発熱線を金属シース内に収納し、同様に無機絶縁物を充填し、金属シース両端から導出される抵抗発熱線の端部をそれぞれアダプタ内でリード線に接続したものも好ましい。この場合、マイクロヒータの両端からリード線が延出することとなるが、本発明の場合、マイクロヒータを外壁面に巻き付けることで両端のリード線が互いに近接配置されることから、両リード線を効率よく配線でき、二芯型に比べて配線の引き回し等の作業性やコスト等の点で劣る虞も少ない。
【0024】
マイクロヒータ2は、加熱対象4の外壁面40に対応した形状及び寸法を有するつづら折れ状の波状パターンに屈曲構成される。具体的には、マイクロヒータ2を取り付ける外壁面40上に突出する他部品等の障害物41を避けるようにして、その折り曲げ部位の間隔、直線部位の長さ、折り曲げ部位の曲率などを設定するとともに、全体の長さも外壁面40の外径寸法に合わせて設計され、マイクロヒータ2を外壁面40に密着する状態に固定して効率よく加熱できるように構成されている。このようにマイクロヒータ2を加熱対象4に巻き付ける前に形状を定めているので、従来のように障害物を避けつつ溶接しながら巻き付けてゆくといった煩雑な作業が不要となり、マイクロヒータ2をあらかじめ定めた位置に巻き付けるだけで済み、作業効率を著しく高めることが可能となるのである。
【0025】
締め付け部材3は、マイクロヒータ2の波状に延びる長手方向に沿って2本平行に設けられ、それぞれワンタッチで着脱可能な締結バンドが用いられている。本例ではステンレス製のバンド部30の一端側30aに他端側30bを着脱可能に受け入れて締め付けるための締付金具31を設けてなるステンレスバンドとされているが、その他の材質、構造よりなる締付バンドや、鎖、ワイヤ、コイルスプリング等からなる締め付け部材を採用してもよい。
【0026】
バンド部30の途中部、本例では締付金具31が設けられる一端側30aには、バネ部32が設けられており、これにより締め付け部材3を長手方向に弾性伸縮可能とし、マイクロヒータ2を弾性的に締め付け、マイクロヒータ2や締め付け部材3が熱膨張しても当該バネ部32の弾性力により緩まず外壁面40に密着した状態を維持できるように構成されている。このバネ部32は省略してもよいが、同様の締め付け効果を有するものとすることが好ましく、たとえば耐熱性スプリング、形状記憶合金からなる締め付け部材3としたり、マイクロヒータ2を構成する金属シース20の素材よりも熱膨張率の小さい素材よりなる締め付け部材3とすること等が望ましい。
【0027】
本実施形態では、この締め付け部材3があらかじめマイクロヒータ2の外側部2bに対して点溶接により部分的に固定されており、該マイクロヒータ2とともに外壁面40に巻き付けられ、マイクロヒータ2を締め付けて固定する構造とされている。図中符号51は点溶接された締め付け部材3とマイクロヒータ2との接合部を示している。このようにマイクロヒータ2と締め付け部材3を一体化しておくことで作業性を著しく向上できるのである。
【0028】
なお、マイクロヒータ2は、締め付け部材3により外壁面40上に固定された後、さらに点溶接により外壁面40に対して部分的に固定してもよい。このようにすれば、仮に締め付け部材3が熱膨張により緩んでもマイクロヒータ2を外壁面40に密着した状態に保つことができ、加熱効率の低下を回避することができる。ただし、このような点溶接は1箇所または少数のポイントを溶接すれば十分であり、着脱の容易性は維持される。
【0029】
また、変形例として、締め付け部材3により固定される前に、マイクロヒータ2を外壁面40上に巻き付けた状態で点溶接により外壁面40に部分的に固定し、その後に締め付け部材3で固定してなる構造も好ましい実施例である。これによりマイクロヒータ2を外壁面40上の障害物を避けた設計どおりの適切な位置に容易にセットでき、締め付け部材3による固定の際にも位置がずれてしまうことを回避できるといった効果を奏する。勿論、締め付け部材3が熱膨張により緩んでもマイクロヒータ2を外壁面40に密着した状態に保つことができ、加熱効率の低下を回避することができるという効果を奏する点も、また少数のポイント溶接で十分である点については上記と同様である。
【0030】
なお、本実施形態では、予めマイクロヒータ2の外側部2bに締め付け部材3を固定したものを外壁面40に巻きつけて固定しているが、締め付け部材3を予めマイクロヒータ2に固定するのではなく分離独立した構成とし、外壁面40上に巻き付けられたマイクロヒータ2に対して、その外側部2bに締め付け部材3を更に巻き付け、マイクロヒータ2とともに外壁面40上に固定してなる構造も好ましい実施例である。そして、この場合には、締め付け部材3で固定する前に、外壁面40上に巻き付けたマイクロヒータ2を適切な位置に仮止めするべく、マイクロヒータ2を外壁面40上に巻き付けた状態で点溶接により外壁面40に部分的に固定しておくことが好ましい。これにより、上記と同様、締め付け部材3による締め付け時の位置ずれ防止の効果や、熱効率の低下防止の効果を奏することは云うまでもなく、少数のポイント溶接で十分であることも同様である。
【0031】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の代表的実施形態に係るマイクロヒータの取付構造を示す斜視図。
【図2】同じく取り付け前の波状パターンに屈曲構成されたマイクロヒータを示す平面図。
【符号の説明】
【0033】
1 取付構造
2 マイクロヒータ
2b 外側部
3 締め付け部材
4 加熱対象
20 金属シース
20a 基端側
21 アダプタ
22 リード線
30 バンド部
30a 一端側
30b 他端側
31 締付金具
32 バネ部
40 外壁面
41 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象の外壁面に対してマイクロヒータを固定してなるマイクロヒータの取付構造において、前記マイクロヒータをつづら折れ状に延びる波状パターンに屈曲構成し、該マイクロヒータを前記外壁面に巻き付け、該マイクロヒータの外側部に周設される締め付け部材により前記加熱対象の外壁面上に固定してなることを特徴とするマイクロヒータの取付構造。
【請求項2】
前記マイクロヒータを、前記加熱対象の外壁面に対応した形状及び寸法を有する前記波状パターンに屈曲構成してなる請求項1記載のマイクロヒータの取付構造。
【請求項3】
前記締め付け部材を、前記マイクロヒータの外側部に対して点溶接により部分的に固定してなる請求項1又は2記載のマイクロヒータの取付構造。
【請求項4】
外側部に前記締め付け部材が予め固定された前記マイクロヒータを、前記加熱対象の外壁面に巻き付けてなる請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロヒータの取付構造。
【請求項5】
前記締め付け部材が、ワンタッチで着脱可能な締結バンドである請求項1〜4の何れか1項に記載のマイクロヒータの取付構造。
【請求項6】
前記締め付け部材が、前記マイクロヒータの外周部を弾性的に締め付けるためのバネ部を備えている請求項1〜5の何れか1項に記載のマイクロヒータの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−153151(P2008−153151A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342404(P2006−342404)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(390007744)山里産業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】