説明

マイクロミキサーおよびその製造方法

【課題】 効率良く分割・合流させることができるマイクロミキサーを提供するとともに、当該マイクロミキサーの製造方法を提供する。
【解決手段】 マイクロミキサーの混合部は、連続する複数のミキサー部を有し、各ミキサー部は、流路全体を上部流路および下部流路に分岐する第一の分割壁71と、この第一の分割壁の下流側に連続しつつ該流路全体を左側流路および右側流路に分割する第二の分割壁72と、上部流路を左右流路のいずれか一方に案内する第一の案内壁73と、下部流路を左右流路の他方に案内する第二の案内壁74とを備える。基板の上下部表面のうち流路が構成される部分を除いた範囲に被膜を成膜(第1次成膜工程)し、これらの範囲および第一に分割壁が形成される表面を含めた範囲にさらに被膜を成膜(第2次成膜工程)し、上面から適宜深度のエッチング後に第2次成膜工程による被膜を除去し、基板の上面・下面から適宜深度でエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミキサーおよびその製造方法に関し、特に、薄膜状の基板を深堀エッチングすることにより形成されるマイクロミキサーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学合成等の分野においては、小型装置を用いて短時間で高感度に微量流体の反応・分析を行う技術が切望されている。特に、マイクロ流路、ポンプ、バルブ、センサといった化学合成や分析に必要な要素を微細加工技術により小型化・集積化したμ−TAS(Micro Total Analysis Systems)が注目されているところである。μ−TASのうち、試薬合成に重要な要素としてマイクロミキサーがあり、このマイクロミキサーによって、必要な試薬を少量に抑え、また、試薬の流量、反応時間、加熱、冷却等の反応変数の制御性能を向上させることができる。従って、化学合成を高効率かつ安全に行うことができるのである。
【0003】
しかしながら、微細な寸法で形成されるマイクロ流路(マイクロチャンネル)では、流路寸法および流速がともに小さいことから、必然的にレイノルズ数が小さくなり、マイクロ流路内において乱流が起こりにくく、専ら層流となることが知られている。
【0004】
従って、流体の混合は、流体同士の接触界面による分子拡散が支配的となり、単に合流させる程度では効率的に混合されないことがあった。そこで、マイクロ流路内において効率的に流体を混合するための手段として、ピエゾ素子または外部磁場によって撹拌させる能動ミキサーが提案され(非特許文献1および2参照)、また、微小構造により2次流れを促進する受動ミキサーが提案されている(非特許文献3参照)。
【0005】
これらのマイクロミキサーのうち、能動ミキサーは、短い流路で効果的に混合できるという利点があるものの、アクチュエーション機能を集積化するための製造プロセスが複雑となるものであり、また、外部電源を必要とするものであった。他方、受動ミキサーは、2次流れを起こす構造であることから、流路構造が複雑とならざるを得ず、圧力損失を招来させることとなり、チャンネルごとの性能にばらつきが生じることがあった。
【0006】
これらの問題を解決すべく、液層を分割と混合を繰り返し、液層の厚みを指数関数的に薄くし、分子の拡散距離を短くする受動ミキサーが提案されている(非特許文献4および5参照)。しかしながら、前掲の受動ミキサーは、3次元的な流路構造を積層しつつ貼り合わせる等によって作製するものであることから、工程が複雑となり、また、貼り合わせ部分がずれることによって、ミキサー性能が左右されるという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Z.Yang,et al,Sensors and Actuators A,93,pp.266−272(2001)
【非特許文献2】K.S.Ryu,et al,Proc.mTAS‘03,pp.635−638(2003)
【非特許文献3】A.D.Stroock,et al,Science,295,pp.647−651(2002)
【非特許文献4】J.Branebjerg,et al,Proc.MEMS‘96,pp.441−446(1996)
【非特許文献5】W.H.Tan,et al,JSME Int.J.Series C,48,4,pp.425−435(2005)
【非特許文献6】T.Noda,et al,Proc.mTAS‘08,pp.1057−1059(2005)
【非特許文献7】T.Saito,et al,APCOT‘10,BMF11(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願の発明者らは、半導体プロセス技術、特に、深堀エッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)技術を利用して、薄膜状基板の両面から浸食させ、3次元的な流路構造を作製したマイクロミキサーを提案した(非特許文献6および7参照)。上記提案のマイクロミキサーの構造は、図6に示すように、流路を左右に分割する分割壁171が設けられ、その直前において、流路の上部を部分的に遮蔽するとともに左右いずれかの流路に案内する上部流路案内部172と、流路の下部を部分的に遮蔽しつつ前記と異なる方向の流路に案内する下部流路案内部173とを設けた構成であった。このような案内部172,173によって、流路断面全体のうち上部流入口と下部流入口とが設けられることとなり、これらを経由した流体が分割壁171で分割される左右の流路に流入させることができるものであった。
【0009】
ところが、上記構成のマイクロミキサーでは、流路の側壁付近を流れる流体の速度が遅く、上下に分かれて位置する流入口に関係なく側壁に近い流入口に流れ込むこととなり、側壁付近を流れる流体が混合されずに残る状態となることがあった。この結果、分割壁直前の流体のうち、上側に流れる流体と下側に流れる流体とが明確に分割されず、流体全体が十分に混合されないことがあった。
【0010】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、流路を左右に分割する直前において、流路を上下に分岐させることによって、効率良く分割・合流させることができるマイクロミキサーを提供するとともに、当該マイクロミキサーを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、マイクロミキサーにかかる請求項1に記載の発明は、複数の流体を供給する供給部と、該供給部から供給された複数の流体を混合する混合部と、混合後の流体を排出する排出部とを備えたマイクロミキサーであって、前記混合部は、連続する複数のミキサー部を有し、各ミキサー部は、流路全体を上部流路および下部流路に分岐する第一の分割壁と、この第一の分割壁の下流側に連続しつつ該流路全体を左側流路および右側流路に分割する第二の分割壁と、前記上部流路を左右流路のいずれか一方に案内する第一の案内壁と、前記下部流路を左右流路の他方に案内する第二の案内壁とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、流路を左右に分割する第二の分割壁の直前において第一の分割壁によって流体が上下に分岐されることとなり、側壁付近を流れる流体についても上下に分岐させた後、これらを左右の流路に案内することができる。従って、左右の流路に流入する直前において上下に分岐された流体は、強制的に左右の流路に流入されることとなることから、流路側壁付近を流れる流体についても混合され得ることとなるのである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記混合部が、前記上部流路が前記右側流路に案内され、前記下部流路が前記左側流路に案内される第一のミキサー部と、前記上部流路が前記左側流路に案内され、前記下部流路が前記右側流路に案内される第二のミキサー部とを混在された混合部であることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、第一の分割壁によって分岐される流体が右側流路および左側流路の双方を経由することが可能となる。このことにより、複数のミキサー部を経過した後の状態において、上部流路を流れる流体の一部が常に右側流路を通過すること、または、下部流路を流れる流体の一部が左側流路のみを経過することがなく、全体として流体の分散状態を進行させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記混合部が、前記第一のミキサー部と前記第二のミキサー部とを、交互に配置されてなる混合部であることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、第一の分割壁で分岐されて上部流路を流れる流体は右側流路および左側流路を順次通過し、また、下側流路を流れる流体は左側流路および右側流路を順次経過することとなり、2番目のミキサー部を経由した時点において、流路左右の壁面付近を流れる流体は、相互に交差することによって適度に分散されることとなる。
【0017】
マイクロミキサーの製造方法にかかる請求項4に記載の発明は、所定肉厚の基板の適宜位置に流路を形成する流路形成工程と、前記基板の上部表面および下部表面にそれぞれ板状部材を積層する積層工程とを含み、前記流路形成工程は、前記基板の上部表面において、前記供給部、混合部および排出部が形成される範囲を除く表面、ならびに、前記ミキサー部の第二の分割壁および第一の案内壁が形成される部分の表面に被膜を形成する第1次成膜工程と、前記第1次成膜工程により形成された被膜の表面および第一の分割壁が形成される表面に被膜を形成する第2次成膜工程と、前記基板の上部表面からエッチングする第1次エッチング工程と、前記第2次成膜工程で形成した被膜を除去する工程と、前記基板の上部表面からエッチングする第2次エッチング工程と、前記基板の下部表面において、前記供給部、混合部および排出部が形成される範囲を除く表面、ならびに、前記ミキサー部の第二の分割壁が形成される部分の表面に被膜を形成する第3次成膜工程と、前記基板の下部表面からエッチングする第3次エッチング工程とを含む浸食工程であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、第1次成膜工程および第3次成膜工程では、マイクロミキサーを形成する基板のうち、全くエッチング加工の必要性がない範囲の基板の上下表面に被膜が形成されることとなり、さらに、第2次成膜工程では、前記第1次成膜工程により被膜形成された範囲のほかに第一の分割壁が形成される範囲を含む部分に被膜を形成することができる。これにより、第1次エッチングでは、前記第2次成膜工程で被膜が形成された範囲を除く部分、すなわち、供給部および排出部と、混合部のうち流路を形成する部分をエッチングすることができる。さらに、第2次成膜工程により形成された被膜を除去した後に第2次エッチング工程を行うことにより、第1次エッチング工程による浸食される部分に第一の分割壁の表面を形成する部分を含めた範囲について浸食させることができ、第1次エッチングにおいてのみ浸食されなかった第1の分割壁が形成される範囲については、当該エッチングの深度に相当する寸法と同程度の肉厚の非浸食部分が形成されることとなる。さらに、第3次エッチングによって、基板の裏面側をエッチングすることにより、第一の分割壁を流路の内部に形成することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記基板がシリコン基板であり、前記第1次成膜工程と前記第3次成膜工程が、シリコン酸化膜を形成する成膜工程であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、熱酸化法による場合は、成膜材料を積層することなく、基板を酸化させることで被膜を形成することができる。また、塗布法による場合は、シリコン基板上の所定個所のシリコン酸化膜を容易に成膜できることとなる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記各エッチング工程が反応性イオンエッチング(RIE)によるものであり、前記第1次エッチング工程が、作製すべき前記第一の分割壁の肉厚に相当する寸法よりも大きい深度まで浸食を行うエッチング工程であり、前記第2次および第3次エッチング工程が、前記基板の肉厚の1/2の寸法から前記分割壁の1/2の寸法を差し引いた程度の深度まで浸食するエッチング工程であることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第1次エッチング工程により、流路を構成するために浸食されるべき部分をエッチングする際に、第一の分割壁を形成すべき範囲については浸食されず、その深度に相当する部分が非浸食部分として残存することとなる。そして、流路を形成するために浸食するべき深度(基板の肉厚−分割壁の肉厚)を基板の上部表面側から浸食するとともに、下部表面側からも浸食し、それぞれ、上記深度(基板の肉厚−分割壁の肉厚)の浸食を行うことによって、基板の肉厚全体(流路となる部分の全体)を浸食させることができるとともに、流路深さの1/2の位置に第一の分割壁を形成することができる。なお、第1次エッチング工程において、作製すべき第一の分割壁の肉厚よりも大きい深度まで浸食させるのは、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)によってエッチング加工がなされる場合、既に浸食されて深くなった表面よりも浸食されていない浅い表面のエッチングレートが早いことから、これらのエッチングレートを加味して大きく浸食させるのである。
【発明の効果】
【0023】
マイクロミキサーにかかる本発明によれば、混合部の一つのミキサー部に流入した異なる複数種類の流体に対し、上部流路を通過する流体と、下部流路を通過する流体とに分割し、さらに、これらの流体の流路を左右に変換することができることから、当該複数種類の流体を二層に分割した後、これを混合させることができる。従って、複数個(n個)のミキサー部を連続して設けることにより、上記分割および混合が複数回(n回)繰り返されることから、2の分割および混合が繰り返されることとなる。これにより、複数種類の流体を十分に混合させることができる。また、流体間の分子拡散を考慮しなければ、1個のミキサー部を経由することにより、分割された層の厚みは1/2となり、n個のミキサー部を経由すれば、1/2の極めて薄い層の集合流体とすることができる。そして、このような薄い層によって混合された流体は、各層の流体がともに接近することから、分子拡散の進行を期待することができる。
【0024】
製造方法にかかる本発明によれば、流路を上下に分割する第一の分割壁は、第1次エッチング工程において浸食されなかった部分が、最終的に残存することによって形成され、流路を左右に分割する第二の分割壁は、浸食されなかった部分が壁状に残存することによって形成されることとなる。さらに、第一の分割壁によって分割される上部流路側には、浸食されずに残存する第一の案内壁が形成され、下部流路の側には、同様に第二の案内壁が形成されることとなる。このようにして、第一の分割壁によって分割される上部流路および下部流路を形成するとともに、第一および第二の案内壁によって上下部流路がそれぞれ左右流路のいずれかに連続するように構成することができる。なお、前記流路は、前記エッチング工程により浸食された基板の上部表面および下部表面に板状部材を積層することによって、最終的な流路として機能することとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】マイクロミキサーにかかる実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】マイクロミキサーを構成する基板の状態を示す説明図である。
【図3】1つのミキサー部を拡大して示す説明図である。
【図4】マイクロミキサーの混合部を通過する流体の状態を示す説明図である。
【図5】マイクロミキサーの製造方法にかかる実施形態の説明図である。
【図6】従来のマイクロミキサーのミキサー部を示す説明図である。
【図7】(a)は、実験に使用したマイクロミキサーの拡大写真である。(b)は、実験に使用したマクロミキサーの全体を示す拡大写真である。
【図8】実験1における各流路の蛍光強度の測定結果のグラフである。
【図9】実験1において、マイクロミキサーの流路内を通過する流体の蛍光顕微鏡写真である。
【図10】実験2における各流路の蛍光強度の測定結果のグラフである。
【図11】実験2において、マイクロミキサーの流路内を通過する流体の蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、マイクロミキサーに係る発明の実施形態の概略を示す説明図である。この図に示すように、本実施形態は、流体が通過できる空間が形成される基板Aの両面に平滑な板状部材B,Cが積層されることによって、基板Aの空間によって流路が構成されるものである。従って、基板Aには、板状部材B,Cが積層された状態で各種機能を有する空間が形成されるものである。
【0027】
つまり、基板Aには、混合すべき流体を供給するための供給部を形成する領域(供給部形成領域)1と、供給された流体を混合する混合部を形成する領域(混合部形成領域)2と、混合後の流体を排出するための排出部を形成する領域(排出部形成領域)3とが設けられている。各領域1,2,3は、基板Aを貫通するように構成され、これらが、板状部材B,Cの積層によって流路を構成するものである。
【0028】
さらに、供給部形成領域1は、2本の分岐流路形成部11,12と、これらが合流する1本の合流路形成部13とで構成されている。これらが、板状部材B,Cによって2本の分岐流路および1本の合流路が形成されることとなる。なお、基板Aの上部表面に積層される板状部材Bには、流体の供給口4,5が貫設されており、板状部材Bを基板Aに積層するとき、当該供給口4,5が分岐流路形成部11,12の先端に連続することとなり、当該分岐流路形成部11,12によって構成される分岐流路に流体を供給することができるものである。
【0029】
また、排出部形成領域3は、同様に板状部材B,Cが積層されることによって排出部が構成されるものであって、適宜長さの流路形成領域31によって構成されている。さらに、板状部材Bには排出口6が貫設されており、板状部材Bを積層するとき、この排出口6が流路形成領域の末端に連続するように設けられている。
【0030】
ところで、混合部形成領域2には、ミキサー部が形成される領域(ミキサー部形成領域)21が設けられ、その前後には、供給部形成領域1および排出部形成領域3に連続するための流路が形成される領域(流路形成領域)22,23が設けられている。ミキサー部形成領域21は、板状部材B,Cが積層されることによって、複数のミキサー部が形成されるものである。
【0031】
ここで、ミキサー部形成領域21について詳述する。図2は、ミキサー部形成領域21の詳細を示す図であり、図3は、1つのミキサー部を示す図である。図2に示すように、ミキサー部形成領域21には、複数のミキサー部個別領域7,8・・・が連続して設けられており、個々のミキサー部個別領域7は、第一の分割壁71と、第二の分割壁72と、第一の案内壁73および第二の案内壁74が設けられている。第一の分割壁(以下、水平分割壁と表記する場合がある)71は、平面部を水平方向にしつつ基板Aの肉厚Dの方向に対し、その中央付近に設けられ、流路を上部と下部に分割するものである。第二の分割壁(以下、垂直分割壁と表記する場合がある)72は、平面部を水平分割壁71の平面部に直交する方向としつつ、流路全体の流路幅Hの方向に対し、その中央付近に設けられており、流路を左右に分割するようになっている。また、案内壁73,74は、いずれも垂直分割壁72に連続しつつ、水平分割壁71の上部表面および下部表面に立設されている。
【0032】
上記のようにミキサー部個別領域7を構成することにより、図3に示すように、ミキサー部形成領域21の流路形成領域22は、板状部材B,Cが積層されることにより、所定断面積の流路Rが形成される。そして、ミキサー部個別領域7においては、ミキサー部Mが形成されることとなる。このミキサー部Mにおいて、流路Rは、水平分割壁71によって上下に分割され、垂直分割壁72によって左右に分割される。このとき、水平分割壁71で上下に分割された流路のうち、上部側を上部流路といい、下部側を下部流路という。また、垂直分割壁72によって分割された流路のうち、左側を左側流路といい、右側を右側流路という。
【0033】
案内壁73,74のうち、第一の案内壁(以下、上部案内壁と表記する場合がある)73は、水平分割壁71よりも上部に構成され、垂直分割壁72から流路Rの一方の壁面R1に向かって斜状に形成された斜状平面(案内面)75を有するように構成されており、この案内面75によって、上部流路を流路幅Hの方向に縮小するとともに、当該上部流路を流れる流体を右側流路に案内することができる(このような機能から、以下において、右側流路に案内する案内面のことを右側案内面と表記する場合がある)。また、第二の案内壁(以下、下部案内壁と表記する場合がある)74は、水平分割壁71よりも下部に構成され、垂直分割壁72から流路Rの他方の壁面R2に向かって斜状となる斜状平面(案内面)76を有している。そして、この上部案内面76は、下部流路を縮小させつつ下部流路を流れる流体を左側流路に案内するようになっている(このような機能から、以下において、左側流路に案内する案内面のことを左側案内面と表記する場合がある)。
【0034】
なお、上部案内壁73および下部案内壁74は、複数のミキサー部において、いずれの上部案内壁73にも右側案内面が設けられ、下部案内壁には左側案内面が設けられた構成とすることも可能であるが、図2において図示されているように、次に連続する次順位のミキサー部では、上部案内壁73には左側案内面を設け、下部案内壁74には右側案内面を設ける構成としてもよい。そして、ミキサー部が3個以上配置する場合には、上記案内壁73,74に設けられる右側案内面と左側案内面とを交互に配置してもよい。さらには、複数のミキサー部のうち、1以上のいずれかのミキサー部について、右側案内面と左側案内面を交換する構成としてもよい。
【0035】
また、上記実施形態において、供給部を構成するための供給部形成領域において、二つの分岐流路形成領域11,12が構成されている状態(二種類の流体が供給される構成)のみを説明したが、三種類の流体を混合する場合は、分岐流路を3本設ければよく、そのためには分岐流路形成領域を三つ設ければよいものである。また、混合部による流体の混合後において、分子拡散による流体の混合を考慮する場合は、混合部から排出部までの流路を長く構成してもよい。この場合、混合部形成領域2と排出部形成領域3は近接して設けられているが、いずれかの流路形成領域を予め長く形成すればよいものである。
【0036】
本実施形態は、上記のような構成であるから、本実施例における混合部を通過する流体は、上下部の流路に分割された後、左右の流路に案内されて混合することとなる。すなわち、図4に示すように、流路Rを両側に分かれて流れる流体α,βのうち、上部流路を通過する流体α1,β1は、ともに右側流路に案内され、下部流路を通過する流体α2,β2は、ともに左側流路に案内されるのである。
【0037】
そこで、混合すべき流体が分岐する二つの分岐流路(分岐流路形成部11,12(図1参照)によって形成される流路)から供給され、合流流路(合流流路形成部13(図1参照)によって形成される流路)で合流するとき、一方の流体は、流路全体のうち専ら左側を流れ、他方の流体は専ら右側を流れるものと想定できる。このとき、左側を流れる流体を図4(a)のα(流体α1,α2)であるとして、右側を流れる流体を図4(a)のβ(流体β1,β2)であると想定すれば、二種類の流体α,βは、ミキサー部7を通過した時点で、各流体α,βがそれぞれ1/2ずつ混合している状態となる。
【0038】
従って、ミキサー部をn個連続させることによるときは、当該n個のミキサー部を通過した後の流体は、それぞれ1/2に分離されることとなり、分子拡散を考慮しない場合には、これらが交互に層状に形成されることとなる。さらに、流体間の分子拡散を考慮する場合には、1/2に分離されたそれぞれの流体が、接近した状態において相互に拡散することから、流体の混合が促進されることとなり得る。
【0039】
次に、前記マイクロミキサーの製造方法について説明する。図5は、混合部のうちのミキサー部(ミキサー部形成領域)を中心とするマイクロミキサーの製造方法を示す図である。マイクロミキサーの製造方法は、ミキサー部を含む混合部、供給部および排出部は、いずれも基板Aを浸食させることにより各部の形成領域を形成し(流路形成工程)、最終的に板状部材B,Cが積層されること(積層工程)によって各部が構成される。積層工程は、流路形成工程終了後の基板Aの上下表面に板状部材B,Cを単に接着することにより積層するものであることから、ここでは、基板Aに対する流路形成工程について説明する。その説明においては、各部の名称(例えば、ミキサー部)を記載するときは、当該部分の形成領域(例えば、ミキサー部形成領域)を意味するものとする。また、この図には、供給部および排出部は図示していないが、混合部と同時に浸食されることによって、貫通した長孔を形成し、これにより各部の流路を構成することとなるので、その図示を省略している。
【0040】
まず、基板Aのうち、最後まで浸食されない範囲(流路とならない部分)にマスク材を成膜する。すなわち、図5(a)に示すように、基板Aの上部表面側には、流路の両側を構成する部分81a,82aと、垂直分割壁の上部端面83aと、上部案内壁の上部端面84aにマスク材を成膜するのである。これが、第1次成膜工程である。なお、上部案内壁の上部端面84aの成膜時には、当該案内壁が右側案内面であるか、左側案内面であるかにより、当該成膜の位置が異なることとなる。
【0041】
このように、第1次成膜工程によりマスク材が成膜された部分は、次工程におけるエッチング加工によって浸食されないものである。従って、流路が形成される部分(供給部や排出部となるべき部分)にはマスク材を成膜しないのである。そして、流路が形成されない基板Aの表面にはマスク材を成膜することとなることから、図5中に示されていない基板Aの他の部分においてもマスク材が成膜されることとなるのである。
【0042】
なお、上記におけるマスク材の成膜は、スパッタ法により酸化クロムまたは窒化クロム等を成膜することができる。また、基板Aがシリコン基板である場合には、前記成膜方法に代えて、熱酸化法により、酸化雰囲気中で熱酸化させてシリコン酸化膜を成膜してもよい。
【0043】
上記成膜工程に続き、第2次成膜工程を行う。図5(b)は、成膜後の状態を示す図である。この図に示すように、上記第1次成膜工程により成膜された部分に加えて、水平分割壁が形成される部分91の表面に被膜を成膜するのである。ここでの成膜加工としては、フォトレジストによりフォトレジスト材を成膜することができる。また、第1次成膜工程においてシリコン酸化膜を成膜した場合には、フォトレジスト材を成膜するほかに、スパッタ法によりアルミニウム膜を成膜してもよい。重要なことは、第1次成膜工程により成膜された被膜の材料と、第2次成膜工程による被膜の材料とを異ならせることによって、後に第2次成膜工程による被膜のみを除去し得る状態とすることである。
【0044】
次に、基板Aの上部表面側からエッチング加工を行う。これを第1次エッチング工程という。図5(c)は第1次エッチング工程された状態を示す図である。この図に示すように、第2次成膜工程によって成膜された被膜部分はエッチングによって浸食されないことから、成膜されていない部分(流路が形成される部分)101,102のみが浸食される。 このとき、エッチング加工は、ドライエッチングやウエットエッチングのほか反応性イオンエッチング(RIE)によることができる。なお、第1次エッチング工程では、水平分割壁に相当する部分を形成することから、最終的に当該水平分割壁に必要な肉厚が残存するように、エッチングの深度が調整され、形成すべき水平分割壁の肉厚と同等程度としている。そして、後のエッチングがRIEによる場合には、既に浸食されて深くなった表面よりも浸食されていない浅い表面のエッチングレートが早いことから、当該エッチングレートを予測して第1次エッチングの深度が水平分割壁の肉厚よりも僅かに大きくなるように調整されるものである。
【0045】
その後、基板Aの上部表面のうち、第3次成膜工程により形成した被膜を除去する。図5(d)は、当該被膜を除去した状態を示す図である。この図に示すように、当該被膜を除去することにより、第1次および第2次成膜工程により形成された被膜が残存し、水平分割壁が形成される部分の被膜が除去され、当該分割壁を形成すべき部分の上面部92が表面に出現した状態となっている。
【0046】
次に、基板Aの上部表面側から再度エッチング加工を行う。これを第2次エッチング工程という。図5(e)は、エッチング後の状態を示す図である。この図に示すように、流路が形成される部分101,102と、水平分割壁が形成される部分の上面部92が浸食され、それぞれの表面が基板Aの肉厚方向中央付近に形成されることとなる。このときのエッチングについても、ドライエッチング、ウエットエッチングまたは反応性イオンエッチングなどの方法から選択されることとなる。
【0047】
以上により、基板Aの上部表面の加工を終了し、引き続き、基板Aの下部表面の加工を行うこととなる。基板Aの下部表面に対し、まず、マスク材が成膜される。これを第3次成膜工程という。図5(f)は第3次成膜工程後の状態を示す図である。この図に示すように、第3次成膜工程では、第1次成膜工程と同様に、基板Aの下部表面において、流路の両側を構成する部分81b,82bと、垂直分割壁の下部端面83bと、下部案内壁の下部端面85bとにマスク材を成膜するのである。なお、上部案内壁の下部案内壁の下部端面85bの成膜時には、当該案内壁が右側案内面であるか、左側案内面であるかにより、当該成膜の位置が異なることとなる。
【0048】
ここで、基板Aの下部表面では、流路の両側を構成する部分81b,82bおよび垂直分割壁の下部端面83bは、上部表面の流路両側81a,82a(図5(a)参照)および垂直分割壁の上部端縁83a(図5(a)参照)と対称な位置(肉厚方向に平行移動した位置)に成膜されるものである。これにより、基板Aを上部表面からエッチング加工する場合に形成される形状と、下部表面からエッチング加工する場合に形成される形状とが一致し、双方からのエッチング加工により、最終的には連続した壁状に形成されるようになっている。
【0049】
これに対し、上部案内壁の上部端面84aと、下部案内壁の下部端面85bとは、斜状部分が異なる状態となっており、基板Aの上部表面から適宜深度のエッチング加工を行うことによって上部案内壁には右側案内面が形成される一方、基板Aの下部表面から適宜深度のエッチング加工を行うことによって下部案内壁には左側案内面が形成されることとなる。
【0050】
次に、基板Aの下部表面からエッチング加工を行うのである。これを第3次エッチング工程という。図5(g)は、エッチング後の状態を示す図である。この図に示すように、流路を形成すべき部分101,102は、全て浸食されて貫通することとなり、水平分割壁を形成すべき部分は、下面部93が形成され、前記上面部92との間に所定の肉厚を有する板状の分割壁が形成されることとなる。このときのエッチングについても、ドライエッチング、ウエットエッチングまたは反応性イオンエッチングなどの方法によることができる。
【0051】
このように、最終的に水平分割壁を所定の肉厚に形成するため、第3次エッチング工程では、基板Aの下部表面からのエッチング深度が調整される。すなわち、図5(f)に図示されているように、第2次エッチング工程終了時点では、流路形成部分101,102が残存しており、水平分割壁を形成する部分は、さらに大きい肉厚で残存していることから、流路形成部分101,102の残存部分に相当する深度の浸食を行うことによって、水平分割壁を残しつつ流路を形成することができるのである。
【0052】
このとき、水平分割壁を基板Aの肉厚方向に中央に配置するためには、第1次エッチング工程では、水平分割壁の肉厚について予定する寸法に相当する深度まで浸食を行い、第2次および第3次エッチング工程では、基板Aの肉厚寸法の1/2から予定する分割壁の肉厚寸法の1/2を差し引いた深度まで浸食すればよい。なお、いずれのエッチング加工についても反応性イオンエッチング(RIE)による深堀エッチング(DRIE)とすることができる。この場合は、エッチングレートの差異を想定すれば、第1次エッチングにおける深度を水平分割壁の肉厚寸法よりも大きくすることとなる。
【0053】
最後に、基板Aの上下両面に板状部材B,Cを積層することによってマイクロミキサーが形成されることとなる(図1参照)。なお、上部表面に積層される基板Bには、供給口4,5および排出口6が貫設されるが、これは、機械的手段により貫通孔を設けてもよく、浸食によって設けることも可能である。
【0054】
製造方法にかかる実施形態は上記のような構成であるから、半導体プロセス技術、特に深堀エッチング技術を使用することによって、微細な流路(流路形成領域)を構成し、その流路の途中において水平分割壁と垂直分割壁を構成させることができる。さらに、これらの分割壁によって分割される流路間を連続させる案内壁をも構成させることができるのである。
【0055】
なお、上記製造方法においては、基板Aの上部表面に対する加工の後に下部表面の加工を行ったが、上部表面に対する第1次成膜工程の後に、または同時に、下部表面に対する第3次成膜工程を行ってもよく、所定の範囲に成膜したうえで、順次エッチング加工されれば、その順序は変更が可能である。また、第3次エッチング工程についても、第3次成膜工程の後であれば、まず、基板Aの下部表面から加工を開始してもよい。
【実施例】
【0056】
次に、上記実施形態において説明した構成のマイクロミキサーを使用して流体の混合状態を実験した。実験に使用するマイクロミキサーは、混合部の流路を幅500μm・深さ300μmとし、個々のミキサー部は、図7(a)に示すように、水平分割壁は、肉厚が10μmで流路の長さ方向に365μmで構成し、垂直分割壁は、左右の流路側壁から225μmの間隔を有し(肉厚は50μmとなり)、水平分割壁から先端までの長さを435μmとしている。さらに、図7(b)に示すように、上記構成のミキサー部を10個連続して設けたものを使用した。なお、案内壁については、第1番目のミキサー部では、上部案内壁が右側案内面を有し、下部案内壁が左側案内面を有する構成とし、第2番目のミキサー部では、上部案内壁に左側案内面を設け、下部案内壁に右側案内面を設けるようにして、以降においてこれらを交互に配置した。なお、上記マイクロミキサーの製造に際し、基板にはシリコン基板を使用し、第1次成膜工程ではシリコン酸化膜を形成し、第2次成膜工程ではフォトレジスト材をマスク材として成膜した。また、エッチング工程では、いわゆる深堀エッチングにより浸食させた。
【0057】
なお、比較例として、図6に示す従来のマイクロミキサーを製造した。従来のマイクロミキサーは、水平分割壁を有していない構成であるから、水平分割壁に関する寸法を除き、その他の寸法は、実験用のマイクロミキサーと同様とした。また、成膜工程およびエッチング工程等の製造方法についても実験用のマイクロミキサーと同様である。
【0058】
〔実験1〕
二種類の同量の流体について上記マイクロミキサーを通過させた。使用する流体は、一方が蛍光色素を含んだエタノール(以下、蛍光液という)であり、他方が蛍光色素を含まない通常のエタノール(以下、通常液という)である。混合部に流体を供給する供給部では、平面視左側の供給口(Inlet(図7(b)参照))から蛍光液を供給し、右側の供給口(Inlet(図7(b)参照))から通常液を供給する。その際、流路の平面視において右側壁面から左側壁面までの範囲で蛍光の強度を測定した。測定した地点は、第1番目のミキサー部に流体が流入する直前(図中Before mixing)と、第5番目を通過した時点(図中This work)である。また、比較例については、第5番目を通過した時点のみを測定した(図中Previous mixier)。以上の結果を図8に示す。なお、図8は、流路の平面視右端をa点、左端をb点とし、そのa−b間の距離500μmの範囲について蛍光強度をグラフ化したものである。
【0059】
図8に示すように、第1番目のミキサー部に流入する直前の蛍光強度は、通常液が流れ込んでいる側の壁面付近(a点から0〜200μmの範囲)では蛍光強度がほとんど0に近く、逆に蛍光液が流れ込む側の壁面付近(a点から300〜500μmの範囲)の蛍光強度が著しく高い状態である。これに対し、第5番目のミキサー部を通過した状態では、流路の全域に蛍光強度の値が高くなっており、蛍光液が流路全体に分散していることが判明した。
【0060】
なお、図8の比較例の結果によれば、通常液側の壁面付近(a点から0〜200μmの範囲)における蛍光強度の値が僅かに高くなっている部分もあるが、当該壁面に接近した範囲(a点から0〜100μmの範囲)では、混合前の状態と変化していない状態であった。この比較例との相違からは、本実施例のマイクロミキサーによる混合状態は極めて良好であることが判明した。
【0061】
上記実験において、本実施例のマイクロミキサーを通過する流路平面視における状態を蛍光顕微鏡により撮影した。その写真を図9に示す。図9(a)は、第1番目のミキサー部での映像であり、図9(b)は、第5番目のミキサー部の映像である。この映像から判るように、第5番目を通過する流体には、蛍光液と通常液とが層状を形成するように混合している。これらの映像において、白色に映っている部分が蛍光強度の強い部分であり、黒色で消えている部分には蛍光強度の低い流体が存在している部分が含まれている。また、水平分割壁が存在する個所では、下部流路を通過する地点は流体が平面視では見えなくなるため黒色となり、上部流路通過する流体の蛍光値が低下するため、蛍光強度が大きく低下しグレーに映っている。なお、図中破線は流路および案内壁の端面位置を補足するものである。
【0062】
上記実験1の結果に示されるように、複数のミキサー部を経過した二種類の流体が層状を形成することとなっているが、これは、上部および下部の案内壁が右側案内面または左側案内面のいずれであっても同様に層状を形成することが理解されるところである。そこで、分子拡散の程度などを考慮しつつ、案内壁の案内面を適宜変更することにより、流体の混合に最適な状態を構成することができるものである。
〔実験2〕
次に、蛍光液の量と通常液の量の割合を1:9として、上記と同様の実験を行った。その実験結果を図10に示し、蛍光顕微鏡写真を図11に示す。この結果から、図10に示されるように、第1番目のミキサー部に流入する直前では、b点付近(a点から400〜500μmの範囲)においてのみ蛍光強度の値が高い状態であるが、第5番目のミキサー部を通過した後においては、蛍光強度に多少の差があるものの、a点付近においても十分に蛍光強度に高い値を示している。また、図11に示されるように、流体の供給割合が異なる場合においても実験1と同様の層状が形成されていることが判明した。
【0063】
上記の結果から、供給量の異なる流体を混合することが可能であり、濃度を調整しつつ混合させることができるものである。従って、同量の流体を供給しつつ段階的に濃度を低下させるような流体の混合方法のほかに、混合すべき流体の供給量を変更することにより、所望の濃度の混合流体を一度の通過によって調整することを可能にするものである。
【0064】
以上のように、実験1および実験2については、第5番目のミキサー部を経過した後の上底について評価しているが、実験装置の説明のように、10個のミキサー部を連続させる場合、第10番目のミキサー部を経過した後の流体の混合状態は上記結果よりもさらに好適な状態となり得るものである。
【符号の説明】
【0065】
1 供給部形成領域
2 混合部形成領域
3 排出部形成領域
4,5 供給口
6 排出口
7,8 ミキサー部個別領域
11,12 分岐流路形成部
13 合流路形成部
21 ミキサー部形成領域
22,23 流路形成領域
31 流路形成領域
71 水平分割壁(第一の分割壁)
72 垂直分割壁(第二の分割壁)
73 上部案内壁(第一の案内壁)
74 下部案内壁(第二の案内壁)
75,76 案内面
81a,82a 上部表面の流路両側構成部分
81b,82b 下部表面の流路両端構成部分
83a 垂直分割壁(第二の分割壁)の上部端面
83b 垂直分割壁(第二の分割壁)の下部端面
84a 上部案内壁(第一の案内壁)の上部端面
85b 下部案内壁(第二の案内壁)の下部端面
91 水平分割壁(第一の分割壁)が形成される表面部分
92 水平分割壁(第一の分割壁)の上面部
93 水平分割壁(第一の分割壁)の下面部
101,102 流路が形成される部分
A 基板
B,C 板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体を供給する供給部と、該供給部から供給された複数の流体を混合する混合部と、混合後の流体を排出する排出部とを備えたマイクロミキサーであって、
前記混合部は、連続する複数のミキサー部を有し、各ミキサー部は、流路全体を上部流路および下部流路に分岐する第一の分割壁と、この第一の分割壁の下流側に連続しつつ該流路全体を左側流路および右側流路に分割する第二の分割壁と、前記上部流路を左右流路のいずれか一方に案内する第一の案内壁と、前記下部流路を左右流路の他方に案内する第二の案内壁とを備えることを特徴とするマイクロミキサー。
【請求項2】
前記混合部は、前記上部流路が前記右側流路に案内され、前記下部流路が前記左側流路に案内される第一のミキサー部と、前記上部流路が前記左側流路に案内され、前記下部流路が前記右側流路に案内される第二のミキサー部とが混在する混合部であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項3】
前記混合部は、前記第一のミキサー部と前記第二のミキサー部とが、交互に配置されてなる混合部であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロミキサー。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロミキサーを製造する方法であって、
所定肉厚の基板の適宜位置に流路を形成する流路形成工程と、前記基板の上部表面および下部表面にそれぞれ板状部材を積層する積層工程とを含み、
前記流路形成工程は、前記基板の上部表面において、前記供給部、混合部および排出部が形成される範囲を除く表面、ならびに、前記ミキサー部の第二の分割壁および第一の案内壁が形成される部分の表面に被膜を形成する第1次成膜工程と、
前記第1次成膜工程により形成された被膜の表面および第一の分割壁が形成される表面に被膜を形成する第2次成膜工程と、
前記基板の上部表面からエッチングする第1次エッチング工程と、
前記第2次成膜工程で形成した被膜を除去する工程と、
前記基板の上部表面からエッチングする第2次エッチング工程と、
前記基板の下部表面において、前記供給部、混合部および排出部が形成される範囲を除く表面、ならびに、前記ミキサー部の第二の分割壁が形成される部分の表面に被膜を形成する第3次成膜工程と、
前記基板の下部表面からエッチングする第3次エッチング工程と
を含む浸食工程であることを特徴とするマイクロミキサーの製造方法。
【請求項5】
前記基板がシリコン基板であり、前記第1次成膜工程と前記第3次成膜工程は、シリコン酸化膜を形成する成膜工程であることを特徴とする請求項4に記載のマイクロミキサーの製造方法。
【請求項6】
前記各エッチング工程が反応性イオンエッチング(RIE)によるものであり、前記第1次エッチング工程は、作製すべき前記第一の分割壁の肉厚に相当する寸法よりも大きい深度まで浸食を行うエッチング工程であり、前記第2次および第3次エッチング工程は、前記基板の肉厚の1/2の寸法から前記分割壁の1/2の寸法を差し引いた程度の深度まで浸食するエッチング工程であることを特徴とする請求項4に記載のマイクロミキサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−170854(P2012−170854A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33751(P2011−33751)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】